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68.8. 論理ボリュームのスナップショット

LVM スナップショット機能を使用すると、サービスを中断することなく、ある時点でのボリュームの仮想イメージ (/dev/sda など) を作成できます。

68.8.1. スナップショットボリュームの概要

スナップショットを作成した後で元のボリューム (スナップショットの元になるボリューム) を変更すると、スナップショット機能は、ボリュームの状態を再構築できるように、変更前の変更されたデータ領域のコピーを作成します。スナップショットを作成しても、作成元への完全な読み取り/書き込みのアクセスは引き続き可能です。

スナップショットは、スナップショットの作成後に変更したデータ部分のみをコピーするため、スナップショット機能に必要なストレージは最小限になります。たとえば、コピー元がほとんど更新されない場合は、作成元の 3 ~ 5 % の容量があれば十分にスナップショットを維持できます。バックアップ手順に代わるものではありません。スナップショットコピーは仮想コピーであり、実際のメディアバックアップではありません。

作成元のボリュームへの変更を保管するために確保する領域は、スナップショットのサイズによって異なります。たとえば、スナップショットを作成してから作成元を完全に上書きする場合に、その変更の保管に必要なスナップショットのサイズは、作成元のボリュームと同等か、それ以上になります。スナップショットのサイズは定期的に監視する必要があります。たとえば、/usr など、その大部分が読み取り用に使用されるボリュームの短期的なスナップショットに必要な領域は、/home のように大量の書き込みが行われるボリュームの長期的なスナップショットに必要な領域よりも小さくなります。

スナップショットが満杯になると、作成元のボリュームの変更を追跡できなくなるため、そのスナップショットは無効になります。ただし、スナップショットが無効になるのを防ぐために、使用量が snapshot_autoextend_threshold 値を超えるたびにスナップショットを自動的に拡張するように LVM を設定できます。スナップショットは完全にサイズ変更可能で、次の操作を実行できます。

  • ストレージ容量に余裕がある場合は、スナップショットボリュームのサイズを大きくして、削除されないようにすることができます。
  • スナップショットのボリュームサイズが必要以上に大きければ、そのボリュームのサイズを縮小して、他の論理ボリュームで必要となる領域を確保できます。

スナップショットボリュームには、次の利点があります。

  • 最も一般的な用途は、継続的にデータを更新している稼動中のシステムを停止せずに、論理ボリューム上でバックアップを実行する必要がある場合にスナップショットを撮ることです。
  • スナップショットファイルシステムで fsck コマンドを実行し、ファイルシステムの整合性をチェックすれば、複製元のファイルシステムを修復する必要があるかどうかを判断できます。
  • スナップショットは読み取りおよび書き込み用であるため、スナップショットを撮ってそのスナップショットにテストを実行することにより、実際のデータに触れることなく、実稼働データにアプリケーションのテストを実行できます。
  • LVM ボリュームを作成して、Red Hat の仮想化と併用することが可能です。LVM スナップショットを使用して、仮想ゲストイメージのスナップショットを作成できます。このスナップショットは、最小限のストレージを使用して、既存のゲストの変更や新規ゲストの作成を行う上で利便性の高い方法を提供します。

68.8.2. 元のボリュームのスナップショット作成

-s または --size 引数の後に必要なサイズを指定して lvcreate コマンドを使用し、元のボリューム (作成元) のスナップショットを作成します。ボリュームのスナップショットは書き込み可能です。デフォルトでは、シンプロビジョニングされたスナップショットと比較すると、通常のアクティベーションコマンドを実行中に、作成元のボリュームを使用して、スナップショットのボリュームを有効にします。LVM は、元のボリュームのサイズとボリュームに必要なメタデータサイズの合計よりも大きいスナップショットボリュームの作成をサポートしていません。これより大きいスナップショットボリュームを指定すると、LVM は作成元のサイズに必要なスナップショットボリュームを作成します。

注記

クラスター内のノードは LVM スナップショットをサポートしていません。共有ボリュームグループ内にスナップショットボリュームは作成できません。ただし、共有論理ボリューム上でデータの一貫したバックアップ作成が必要な場合は、ボリュームを排他的にアクティブにした上で、スナップショットを作成できます。

次の手順は、origin という名前の論理ボリュームを作成し、その論理ボリュームから、snap という名前のスナップショットボリュームを作成します。

前提条件

手順

  1. ボリュームグループ vg001 から、論理ボリューム origin を作成します。

    # lvcreate -L 1G -n origin vg001
    Logical volume "origin" created.
  2. 名前が snap で、サイズが 100 MB のスナップショット論理ボリューム /dev/vg001/origin を作成します。

    # lvcreate --size 100M --name snap --snapshot /dev/vg001/origin
      Logical volume "snap" created.

    元の論理ボリュームにファイルシステムが含まれている場合は、任意のディレクトリー上でスナップショット論理ボリュームをマウントしてから、そのファイルシステムのコンテンツにアクセスし、元のファイルシステムが更新を継続している間にバックアップを実行できます。

  3. 元のボリュームと、使用されているスナップショットボリュームの現在の割合を表示します。

    # lvs -a -o +devices
      LV      VG    Attr       LSize  Pool Origin Data% Meta% Move Log Cpy%Sync Convert Devices
     origin vg001  owi-a-s---  1.00g                                                  /dev/sde1(0)
      snap vg001  swi-a-s--- 100.00m     origin 0.00                                 /dev/sde1(256)

    lvdisplay /dev/vg001/origin コマンドを使用して、論理ボリューム /dev/vg001/origin のステータスと、すべてのスナップショット論理ボリュームおよびそれらのステータス (アクティブまたは非アクティブなど) を表示することもできます。

    警告

    複製元ボリュームが変更されると、スナップショットのサイズが拡大されるため、lvs コマンドを使用して、スナップショットボリュームのパーセンテージを定期的に監視して、満杯にならないように確認することが重要です。スナップショットは、100% になると完全に消失します。これは、作成元ボリュームの変更されていない部分に書き込みが行われるため、スナップショットが必ず破損するためです。

  4. ただし、使用量が 100% の場合にスナップショットが無効になるのを回避するために、使用量が snapshot_autoextend_threshold 値を超えるたびにスナップショットを自動的に拡張するように LVM を設定できます。/etc/lvm.conf ファイルから snapshot_autoextend_threshold および snapshot_autoextend_percent オプションの既存の値を表示し、要件に従ってそれらを編集します。

    次の例では、snapshot_autoextend_threshold オプションを 100 未満の値に設定し、snapshot_autoextend_percent オプションをスナップショットボリュームを拡張するための要件に応じた値に設定します。

    # vi /etc/lvm.conf
    snapshot_autoextend_threshold = 70
    snapshot_autoextend_percent = 20

    次のコマンドを実行して、このスナップショットを手動で拡張することもできます。

    # lvextend -L+100M /dev/vg001/snap
    注記

    この機能には、ボリュームグループに未割り当てのスペースが必要です。同様に、スナップショットの自動拡張を実行しても、スナップショットに必要なサイズとして計算される最大サイズを超えて拡張されることはありません。スナップショットのサイズが複製元のボリュームを包含できるまで拡大されると、スナップショットの自動拡張はモニターされなくなります。

関連情報

  • lvcreate (8)lvextend (8)、および lvs (8) の man ページ
  • /etc/lvm/lvm.conf ファイル

68.8.3. スナップショットと元のボリュームのマージ

--merge オプションを指定して lvconvert コマンドを使用し、スナップショットを元のボリューム (作成元) にマージします。データやファイルを失った場合や、システムを以前の状態に復元する必要がある場合に、システムのロールバックを実行できます。スナップショットボリュームをマージすると、作成された論理ボリュームには、元のボリュームの名前、マイナー番号、および UUID が含まれます。マージの進行中、作成元に対する読み取りまたは書き込みは、マージ中のスナップショットに対して実行されているかのように見えます。マージが完了すると、マージされたスナップショットは削除されます。

作成元のボリュームとスナップショットボリュームの両方が起動されておらず、アクティブでない場合、マージはすぐに開始されます。それ以外の場合は、作成元またはスナップショットのいずれかがアクティブ化され、両方が閉じられた後にマージが開始されます。スナップショットを閉じることができない作成元 (root ファイルシステムなど) にマージできるのは、作成元のボリュームがアクティブ化された後です。

手順

  1. スナップショットボリュームをマージします。以下のコマンドは、スナップショットボリューム vg001/snap をその 作成元 にマージします。

    # lvconvert --merge vg001/snap
    Merging of volume vg001/snap started.
      vg001/origin: Merged: 100.00%
  2. 元のボリュームを表示します。

    # lvs -a -o +devices
      LV      VG    Attr       LSize  Pool Origin Data% Meta% Move Log Cpy%Sync Convert Devices
      origin vg001  owi-a-s---  1.00g                                                  /dev/sde1(0)

関連情報

  • lvconvert(8) の man ページ