1.2. High Availability Add-On の概念

Red Hat High Availability Add-On クラスターの主要な概念を以下に示します。

1.2.1. フェンシング

クラスター内のノードの 1 つと通信が失敗した場合に、障害が発生したクラスターノードがアクセスする可能性があるリソースへのアクセスを、その他のノードが制限したり、解放したりできるようにする必要があります。当該クラスターノードが応答しない可能性があるため、当該クラスターノードと通信して行うことはできません。代わりに、フェンスエージェントを使用した、フェンシングと呼ばれる外部メソッドを指定する必要があります。フェンスデバイスは、クラスターが使用する外部デバイスのことで、このデバイスを使用して、不安定なノードによる共有リソースへのアクセスを制限したり、クラスターノードでハードリブートを実行します。

フェンスデバイスが設定されていないと、以前使用していたリソースが解放されていることを切断されているクラスターノードが把握できず、他のクラスターノードでサービスを実行できなくなる可能性があります。また、クラスターノードがそのリソースを解放したとシステムが誤って想定し、データが破損または損失する可能性もあります。フェンスデバイスが設定されていないと、データの整合性は保証できず、クラスター設定はサポートされません。

フェンシングの進行中は、他のクラスター操作を実行できません。クラスターノードの再起動後にフェンシングが完了するか、クラスターノードがクラスターに再度参加するまで、クラスターの通常の動作を再開することができません。

フェンシングの詳細は Fencing in a Red Hat High Availability Cluster を参照してください。

1.2.2. クォーラム

クラスターの整合性と可用性を維持するために、クラスターシステムは、クォーラム と呼ばれる概念を使用してデータの破損や損失を防ぎます。クラスターノードの過半数がオンラインになると、クラスターでクォーラムが確立されます。クラスターでクォーラムが確立されない場合は、障害によるデータ破損の可能性を小さくするために、Pacemaker はデフォルトですべてのリソースを停止します。

クォーラムは、投票システムを使用して確立されます。クラスターノードが通常どおり機能しない場合や、クラスターの他の部分との通信が失われた場合に、動作している過半数のノードが、問題のあるノードを分離するように投票し、必要に応じて、接続を切断して別のノードに切り替えてサービスを継続 (フェンス) します。

たとえば、6 ノードクラスターで、4 つ以上のクラスターノードが動作している場合にクォーラムが確立されます。過半数のノードがオフラインまたは利用できない状態になると、クラスターでクォーラムが確立されず、Pacemaker がクラスター化サービスを停止します。

Pacemaker におけるクォーラム機能は、スプレットブレイン と呼ばれる状況が発生しないようにします。スプレットブレインは、クラスターが通信から分離されたあとも、各部分が別のクラスターとして機能し続けることで、同じデータの書き込みや、データの破壊または損失が発生する可能性がある現象です。スプリットブレイン状態の詳細と、一般的なクォーラムの概念は Exploring Concepts of RHEL High Availability Clusters - Quorum を参照してください。

Red Hat High Availability Add-On クラスターは、スプリットブレインの状況を回避するために、votequorum サービスをフェンシングと併用します。クラスターの各システムには多くの投票数が割り当てられ、過半数の票を取得しているものだけがクラスターの操作を継続できます。

1.2.3. クラスターリソース

クラスターリソース は、クラスターサービスで管理するプログラム、データ、またはアプリケーションのインスタンスです。このようなリソースは、クラスター環境でリソースを管理する標準インターフェイスを提供する エージェント により抽象化されます。

リソースを健全な状態に保つために、リソースの定義に監視操作を追加できます。リソースの監視操作を指定しない場合は、デフォルトで監視操作が追加されます。

クラスター内のリソースの動作は、制約 を指定することで設定できます。以下の制約のカテゴリーを設定できます。

  • 場所の制約 - リソースを実行できるノードを設定する
  • 順序の制約 - リソースを実行する順序を設定する
  • コロケーションの制約 - 他のリソースに対して相対的なリソースの配置先を設定する

クラスターの最も一般的な設定要素の 1 つがリソースセットです。リソースセットはまとめて配置し、順番に起動し、その逆順で停止する必要があります。この設定を簡略化するために、Pacemaker では グループ という概念がサポートされます。