3.8. Red Hat OpenStack Platform 16.1.7 メンテナンスリリース (2021 年 12 月 9 日)

本リリースノートには主に、今回リリースされた Red Hat OpenStack Platform のデプロイメント時に考慮すべきテクノロジープレビューの項目、推奨事項、既知の問題、非推奨になった機能について記載します。

3.8.1. アドバイザリーの一覧

本リリースには、以下のアドバイザリーが含まれています。

RHBA-2021:3762
Red Hat OpenStack Platform 16.1.7 のバグ修正および機能拡張アドバイザリー
RHSA-2022:1679
Red Hat OpenStack Platform 16.1 (python-django20) に関するセキュリティー更新
RHSA-2021:5071
Red Hat OpenStack Platform 16.1 (python-eventlet) に関するセキュリティー更新
RHSA-2022:1679
中程度: Red Hat OpenStack Platform 16.1 (etcd) に関するセキュリティー更新
RHBA-2021:5073
Red Hat OpenStack Platform 16.1.7 コンテナーのバグ修正アドバイザリー
RHBA-2021:5074
Red Hat OpenStack Platform 16.1.7 director イメージのバグ修正アドバイザリー

3.8.2. バグ修正

以下のバグは、Red Hat OpenStack Platform の本リリースで修正されています。

(BZ#2098594)
今回の更新以前は、appstreambaseos リポジトリーが、Red Hat Subscription Manager により有効にされるリポジトリーに常に追加され、それらをオーバーライドすることができませんでした。今回の更新で、$REG_REPOS 変数を定義しても、ベースリポジトリーが追加されなくなりました。今回の修正により、追加するリポジトリーを完全に制御できるようになりましたが、baseos(および必要に応じて appstream) と同等のリポジトリーを含むすべてのリポジトリーを含める必要があります。
BZ#1930255

以前のリリースでは、iSCSI または FC ターゲットが RHOSP ホストに接続されていない場合、Dell EMC XtremIO ドライバーを使用する Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) デプロイメントでは、タイムアウトするまでボリュームの接続操作を待機していました。これにより、ボリュームの接続操作が失敗しました。

今回のリリースで、Dell EMC XtremIO ドライバーのポートフィルタリングのサポートが追加され、使用されていない iSCSI ポートまたは FC ポートが無視されるようになりました。

BZ#1938212

今回の更新以前は、Shared File Systems サービス (manila) ダッシュボードには動的なフォーム要素があり、その名前により、フォームが応答しなくなる可能性があります。そのため、共有ネットワーク内での共有グループ、共有ネットワーク、およびファイル共有の作成が機能しませんでした。

今回の更新により、名前が問題となる可能性がある動的要素がエンコードされるようになりました。そのため、共有ネットワーク内での共有グループ、共有ネットワーク、およびファイル共有の作成が正常に機能するようになりました。

BZ#1945306

以前のリリースでは、Dell EMC PowerStore ポートが複数の用途 (iSCSI、レプリケーション等) に設定された場合、誤った REST フィルタリングにより、cinder ドライバーはアクセス可能な iSCSI ターゲットが見つからなかったと報告していました。

今回のリリースでは、Dell EMC PowerStore REST フィルター機能が修正されました。

BZ#1947415

今回の更新以前は、ユーザーが DEFAULT ボリュームタイプを削除する際に失敗が発生していました。

今回の更新により、cinder.conf ファイルの default_volume_type パラメーターの値として設定されていない場合に、DEFAULT のボリューム種別を削除できるようになりました。default_volume_type パラメーターのデフォルト値は DEFAULT です。したがって、DEFAULT のボリューム種別を削除できるように、これを tripleo などの適切なボリューム種別に設定する必要があります。

BZ#1952574
今回の更新以前は、TLS-Everywhere アーキテクチャーで環境がデプロイされ、システムでの認証を設定するのに非推奨の authconfig ユーティリティーが使用されていた場合、authselect ユーティリティーを使用して RHEL 8 システムを設定する必要がありました。このアクションを実行しないと、Missing required answers in the answer file という名前のインヒビターにより leapp プロセスが失敗しました。回避策は、アップグレード環境ファイルの LeappInitCommandsudo leapp answer --section authselect_check.confirm=True --add を追加することでした。今回の更新により、設定エントリーが不要になり、アップグレードは介入なしで完了するようになりました。
BZ#1959866

今回の更新以前は、OpenStack コンポーネントの tripleo 検証中に、以下の例外エラーが発生しました。

Unhandled exception during validation run.

このエラーは、コードの変数が参照されても割り当てられないことが原因で発生しました。

今回の更新でこの問題が修正され、このエラーなしで検証が実行されるようになりました。

BZ#1962365
今回の更新以前は、RHEL 8 で提供されなくなったカーネルモジュールがロードされているため、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のインプレースアップグレードツール LEAPP が停止しました。また、LEAPP により、RHEL が Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) でサポートされていないバージョンにアップグレードされていました。今回の更新で、この 2 つの問題の回避策に必要な手動設定が不要になりました。詳細は、BZ1962365 を参照してください。
BZ#1974831
今回の更新により、RHOSP Load-balancing サービス (octavia) が複数の amphorae に障害が発生したロードバランサーをフェイルオーバーできなかった問題が解決されました。
BZ#1975790
これまでは、Load-balancing サービス amphora への設定変更によって haproxy のリロードが発生すると、プロセスが大量のメモリーを消費し、メモリー割り当てエラーが発生する可能性がありました。この問題は、amphora の amphora-haproxy namespace では lo インターフェイスで発生しませんでした。今回の更新により、namespace の問題が修正され、この問題が解決されました。
BZ#1977792

今回の更新以前は、iSCSI ポータルへの接続中に例外が処理されませんでした。たとえば、iscsiadm -m session の失敗などです。これは、一部の障害パターンで _connect_vol スレッドが予期せず中断する可能性があるために発生しました。この中断により、_connct_vol スレッドからの結果を待つ間に後続のステップでハングアップが発生します。

今回の更新で、iSCSI ポータルへの接続中の例外が _connect_vol メソッドで正しく処理され、スレッドの結果を更新せずに予期せず中断することがなくなりました。

BZ#1980829

今回の更新以前は、KernelArgs パラメーターを変更すると、バージョン 13 から 16 への Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) Fast Forward Upgrade (FFU) プロセスでエラーが発生していました。

  • 重複エントリーが /etc/default/grub に表示されまる。
  • 重複するエントリーがカーネルコマンドラインに表示される。
  • RHOSP のアップグレード時にノードがリブートされる。

    これらのエラーは、KernelArgs パラメーターまたは文字列の値の順序が変更された場合や、KernelArgs パラメーターが追加される際に発生しました。

    今回の更新により、TripleO は kernel-boot-params-baremetal-ansible.yaml にアップグレードタスクを追加し、TRIPLEO_HEAT_TEMPLATE_KERNEL_ARGSGRUB_TRIPLEO_HEAT_TEMPLATE_KERNEL_ARGS に移行しました。

    この変更は、RHOSP バージョン 13 からバージョン 16 への FFU プロセス中に、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) をバージョン 7 からバージョン 8 にアップグレードするのに使用される RHEL のインプレースアップグレードツールである LEAPP に対応するために行われました。LEAPP は、/etc/default/grub でパラメーターが GRUB_ で始まる場合にのみ GRUB パラメーターを認識します。

    今回の更新に関わらず、KernelArgs の値を手動で検査して、対応するロール内のすべてのホストの値と一致するようにする必要があります。

    KernelArgs の値は、デフォルトの tripleo-heat-templates またはサードパーティーの heat テンプレートのいずれかからの PreNetworkConfig 実装から取得できます。

    不一致が見つかる場合は、対応するロールの KernelArgs パラメーターの値を、ホスト上の KernelArgs の値と一致するようにします。openstack overcloud upgrade prepare コマンドを実行する前に、これらのチェックを実施します。

    以下のスクリプトを使用して KernelArgs の値を確認することができます。

    tripleo-ansible-inventory --static-yaml-inventory inventory.yaml
    KernelArgs='< KernelArgs_ FROM_THT >'
    ansible -i inventory.yaml ComputeSriov -m shell -b -a "cat /proc/cmdline | grep '${KernelArgs}'"
(BZ#2098594)
これまでは、RHOSP Load-balancing サービス (octavia) の任意の機能として、ログオフロードはデプロイメント中に適切に設定されませんでした。この問題により、Load-balancing サービスは amphora からログを受け取りませんでした。今回の更新で問題が解決されました。
BZ#1987104

今回の更新以前は、暗号化されたボリュームのスナップショットからボリュームを作成すると、ボリュームが使用できなくなる可能性がありました。宛先ボリュームが元のボリュームと同じサイズである場合は、暗号化されたボリュームのスナップショットから暗号化されたボリュームを作成する場合、新規ボリューム内のデータが省略されて切り捨てられます。これにより、サイズの不一致が生じました。

今回の更新により、RBD バックエンドが暗号化ヘッダーに対応し、データを切り捨てなくなり、暗号化されたボリュームのスナップショットからボリュームを作成してもエラーが生じなくなりました。

BZ#1997351
今回の更新以前は、ML2-OVN でデプロイされた Red Hat OpenStack Platform (RHOSP)13 環境を RHOSP 16.1 にアップグレードすると、SELinux の拒否問題により、アップグレードプロセスがコントローラーノードで失敗していました。今回の更新で、正しい SELinux ラベルが OVN に適用され、問題が解決されています。詳しくは、Red Hat ナレッジベースのソリューション OVN fails to configure after reboot during OSP-13 → OSP-16.1 FFU を参照してください。
BZ#2008976
今回の更新以前は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のインプレースアップグレードツール LEAPP の python2 パッケージの削除に失敗していました。この失敗の原因は、LEAPP パッケージを保持する DNF exclude オプションが原因でした。今回の更新で、必要な LEAPP パッケージが正常に削除されるように、自動化が追加されました。
BZ#2015325
今回の更新以前は、RHEL リポジトリーのアップグレード可能な mariadb-server パッケージにより、パッケージマネージャーはホストで mariadb-server パッケージをアップグレードし、これにより同じホストですでに存在していたコンテナー化された mariadb-server と干渉していました。今回の更新により、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) director は、コンテナー化された MariaDB も存在するホストから mariadb-server パッケージを削除し、RHOSP FFU プロセスは続行します。

3.8.3. 機能強化

Red Hat OpenStack Platform の今回のリリースでは、以下の機能拡張が提供されています。

BZ#1814278

今回の機能拡張で、Red Hat OpenStack Platform ノードにポリシーベースのルーティングを使用できるようになりました。これにより、os-net-config で複数のルーティングテーブルおよびルーティングルールを設定することができます。

複数のリンクを持つホストでは、ポリシーベースのルーティングはルーティングテーブルを使用し、送信元のアドレスに応じて特定のインターフェイス経由でトラフィックを送信することができます。インターフェイスごとにルーティングルールを定義することもできます。

BZ#1900500

ハイパーバイザーのホスト名を検出するロジックが修正され、Compute サービス (nova) の libvirt ドライバーと一貫性のある結果を返すようになりました。今回の修正により、最小帯域幅を確保する QoS 機能を使用する際に、resource_provider_hypervisors オプションを指定する必要がなくなりました。

今回の更新で、デフォルトのハイパーバイザー名を置き換えるために、Modular Layer 2 と Open Virtual Network メカニズムドライバーの組み合わせ (ML2/OVN) に、新しいオプション resource_provider_default_hypervisor が追加されました。このオプションは、ユーザーがカスタマイズする必要がある場合に、resource_provider_hypervisors オプションでインターフェイスまたはブリッジのリストを指定せずに root リソースプロバイダーを見つけます。この新しいオプションは、ovs-agent[ovs] ini-section と、sriov-agent[sriov_nic] ini-section にあります。

BZ#1930806

今回の機能拡張により、新たな CinderRpcResponseTimeout パラメーターおよび CinderApiWsgiTimeout パラメーターが追加され、Block Storage サービス (cinder) での RPC および API WSGI タイムアウトの調整がサポートされるようになりました。大規模なデプロイメントや、システムの負荷が原因でトランザクションが遅延する可能性がある場合には、デフォルトのタイムアウト値が適切ではない場合があります。

RPC および API WSGI タイムアウトを調整して、トランザクションが早期にタイムアウトしないようにできるようになりました。

BZ#1956887
従来は、collectd の PluginInstanceFormat パラメーターには、'none'、'name'、'uuid'、または 'metadata' のいずれかの値のみが使用できました。今回の更新により、PluginInstanceFormat パラメーターで複数の値を指定できるようになりました。これにより、collectd メトリックの plugin_instance ラベルでより多くの情報が送信されるようになりました。
BZ#1959492

今回の更新により、tripleo validator コマンドが、キーと値のペア形式で変数と環境変数を受け入れるようになりました。以前のリリースでは、JSON ディクショナリーのみが環境変数を許可しました。

openstack tripleo validator run \
[--extra-vars key1=<val1>[,key2=val2 --extra-vars key3=<val3>] \
| --extra-vars-file EXTRA_VARS_FILE] \
[--extra-env-vars key1=<val1>[,key2=val2 --extra-env-vars key3=<val3>]]
(--validation <validation_id>[,<validation_id>,...] | --group <group>[,<group>,...])

$ openstack tripleo validator run --validation check-cpu,check-ram --extra-vars minimal_ram_gb=8 --extra-vars minimal_cpu_count=2

サポートされるオプションの完全なリストを確認するには、以下のコマンドを実行します。

$ openstack tripleo validator run --help

3.8.4. リリースノート

本項では、Red Hat OpenStack Platform の注目すべき変更点や推奨プラクティスなど、今回のリリースに関する重要な情報を記載しています。お使いのデプロイメントに最大限の効果をもたらすために、以下の情報を考慮する必要があります。

BZ#1969895
今回の更新により、collectd コンテナーのメモリー上限が 512 MB に増えました。この上限を超えると、コンテナーが再起動します。

3.8.5. 既知の問題

現時点における Red Hat OpenStack Platform の既知の問題は以下のとおりです。

BZ#1898198

現在、ポートの MAC-IP アドレスが不明な場合に、特定の実際のシナリオをシミュレートできない既知の問題があります。RHOSP Networking サービス (neutron) は、DHCP またはセキュリティーグループが設定されていない場合でも、ポートの MAC-IP を直接指定します。

回避策:RHOSP 16.1.7 にアップグレードし、ML2/OVN v21.03 をインストールします。DHCP とポートセキュリティーが無効にされている場合、ポートの address フィールドには MAC-IP アドレスのペアが含まれず、ML2/OVN は MAC のラーニング機能を使用してトラフィックを必要なポートにだけ送信することができます。