3.2. Red Hat OpenStack Platform 16.1.1 メンテナンスリリース (2020 年 8 月 27 日)

本リリースノートには主に、今回リリースされた Red Hat OpenStack Platform のデプロイメント時に考慮すべきテクノロジープレビューの項目、推奨事項、既知の問題、非推奨になった機能について記載します。

3.2.1. バグ修正

以下のバグは、Red Hat OpenStack Platform の本リリースで修正されています。

BZ#1845726

director のこの拡張機能により、OpenStack のアップグレード準備を行うために、オーバークラウドノードに Leapp ユーティリティーが自動的にインストールされます。https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_openstack_platform/16.1/html-single/release_notes/index 今回の機能拡張には、2 つの新たな Heat パラメーター (LeappRepoInitCommand および LeappInitCommand) が含まれます。また、以下のデフォルトのリポジトリーがある場合は、UpgradeLeappCommandOptions の値を渡す必要はありません。

--enablerepo rhel-8-for-x86_64-baseos-eus-rpms --enablerepo rhel-8-for-x86_64-appstream-eus-rpms --enablerepo rhel-8-for-x86_64-highavailability-eus-rpm1866372s --enablerepo advanced-virt-for-rhel-8-x86_64-rpms --enablerepo ansible-2.9-for-rhel-8-x86_64-rpms --enablerepo fast-datapath-for-rhel-8-x86_64-rpms
BZ#1847463

今回の更新により、ML2/OVS から ML2/OVN へのインプレースマイグレーション中 generate-inventory ステップが失敗する原因となっていたバグが修正されました。

Red Hat OpenStack Platform 16.1.0 (GA リリース) では、ML2/OVS から ML2/OVN への移行はサポートされていませんでした。Red Hat OpenStack Platform 16.1.1 の時点では、NFV 以外のデプロイメントのインプレースアップグレードがサポートされます。ただし、ML2/OVS から ML2/OVN への移行[1] で説明するさまざまな例外、制限、および要件が適用されます。

[1] ML2/OVS から ML2/OVN への移行

BZ#1850991

今回の更新以前は、Red Hat Ceph Storage Dashboard が無効であっても、Dashboard リスナーが HA Proxy 設定に作成されていました。その結果、Ceph を使用する Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) のアップグレードに失敗する可能性がありました。

今回の更新によりサービス定義が更新され、Ceph MGR サービスを Dashboard サービスと区別し、Dashboard サービスが有効でなければ設定されないようになりました。これにより、アップグレードが正常に実行されます。

BZ#1851914

オーバークラウドのデプロイメントステップには、tripleo-bootstrap および tripleo-ssh-known-hosts ロールを common_roles としてタグ付けする古い Ansible 構文が含まれていました。この古い構文により、Ansible が common_roles タグを使用しない場合に common_roles にタグ付けされたタスクが実行されました。この構文が原因で、13 から 16.1 への system_upgrade プロセス中にエラーが発生していました。

今回の更新により、新しい構文を使用して tripleo-bootstrap および tripleo-ssh-known-hosts ロールを common_roles としてタグ付けできるようになりました。13 から 16.1 の system_upgrade プロセス中にエラーが発生しなくなり、回避策として --playbook upgrade_steps_playbook.yaml オプションを system_upgrade プロセスに追加する必要がなくなりました。

BZ#1852620
今回の更新で、パブリック TLS 証明書を使用した Transport Layer Security (TLS) Everywhere の正常なデプロイメントを阻害していたバグが修正されました。
(BZ#2098594)
今回の更新により、Red Hat OpenStack Platform 13 から 16.1 へのアップグレード失敗の原因となっていた Red Hat Ceph Storage (RHCS) バージョンの互換性の問題が修正されました。今回の修正以前は、アップグレード中に実行される検証が、RHCS3 クラスターでは機能しましたが RHCS4 クラスターでは機能しませんでした。検証が RHCS3 および RHCS4 クラスターの両方で機能するようになりました。
BZ#1853275

今回の更新以前は、Leapp のアップグレードを実行する前に、director は Red Hat Ceph Storage OSD に noout フラグを設定していませんでした。その結果、アップグレード後に OSD がバランスをとり直すのに追加の時間が必要でした。

今回の更新により、ディレクターは Leapp のアップグレード前に noout フラグを設定するようになり、これによりアップグレードプロセスが迅速化されました。また、director は Leapp のアップグレード後に noout フラグの設定を解除します。

BZ#1853433

今回の更新以前は、NFS 共有がマウントされていると、Leapp のアップグレードに失敗する場合がありました。特に、Compute サービス (nova) または Image サービス (glance) を実行するノードで NFS マウントが使用されている場合、これらのノードがハングアップしていました。

今回の更新により、Leapp のアップグレード前に、director は /var/lib/nova/instances/var/lib/glance/images、および GlanceNodeStagingUri パラメーターで定義する Image サービスのステージングエリアをアンマウントするようになりました。

(BZ#2098594)

今回の更新により、leapp によるアップグレード時にコンピュートノードが予期せぬ挙動を示す原因となっていた GRUB パラメーターの命名規則が修正されました。

従来は、GRUB パラメーターに廃止された TRIPELO 接頭辞が存在することが原因で問題が生じていました。

GRUB の /etc/default/grub ファイルの tripleo kernel 引数パラメーターが更新され、これにより leapp が正しくアップグレードできるようになりました。そのために、roles_data.yaml ファイルのすべてのロールに追加された新規サービスの OS::TripleO::Services::BootParams サービスに upgrade_tasks を追加しました。

(BZ#2098594)

今回の更新で、Leapp によるアップグレード時にベアメタルノードが応答しなくなる問題が修正されました。

以前のリリースでは、Leapp は移行時に SR-IOV Virtual Function (VF) 等の一時的なインターフェイスを処理しませんでした。そのため、Leapp はアップグレード時に VF インターフェイスを検出せず、ノードがリカバリー不能な状態になっていました。

サービス OS::TripleO::Services::NeutronSriovAgent は、すべての VF を削除するように Physical Function (PF) を設定し、アップグレードの前にワークロードを移行するようになりました。Leapp によるアップグレードが正常に完了したら、--no-activate フラグを設定して os-net-config を再度実行し、VF を確立し直します。

3.2.2. 機能拡張

Red Hat OpenStack Platform の今回のリリースでは、以下の機能拡張が提供されています。

BZ#1666684

本リリースでは、ML2/OVN デプロイメントで SR-IOV とネイティブの OVN DHCP の組み合わせを使用することができます。ML2/OVN デプロイメントの SR-IOV は、Networking サービス (neutron) の DHCP エージェントを必要としなくなりました。

SR-IOV NIC をサポートするハイパーバイザー上で仮想マシンがブートすると、コントローラーノードまたはネットワークノードの OVN コントローラーは、仮想マシンからの DHCP、内部 DNS、および IPv6 ルーター要請の要求に応答することができます。

この機能は、RHOSP 16.1.0 ではテクノロジープレビューとして提供されていました。今回のリリースで、サポート対象の機能になりました。

本リリースでは、機能に以下の制限が適用されます。

  • すべてのポートに対して HA シャーシグループが 1 つしかないため、すべての外部ポートは単一のゲートウェイノード上でスケジュールされる。
  • 外部ポートは論理ルーターのゲートウェイポートと共存しないため、VLAN テナントネットワークでは、VF (直接) ポートでの North-South ルーティングは SR-IOV では機能しない。Bug #1875852 を参照してください。
BZ#1671811

Red Hat OpenStack Platform 16.1 の最初のメンテナンスリリースでは、ML2/OVS および SR-IOV メカニズムドライバーを使用するルーティング対応プロバイダーネットワークがサポートされます。

ルーティング対応プロバイダーネットワークを使用すると、1 つのプロバイダーネットワークを有効にして、複数のレイヤー 2 ネットワーク (ブロードキャストドメイン) またはセグメントに対応することができます。これにより、オペレーターはユーザーに対して 1 つのネットワークだけを提供することができます。これは、エッジ DCN デプロイメントおよびスパイン/リーフ型ルーティング対応データセンターデプロイメントの一般的なネットワーク種別です。

詳細は、https://access.redhat.com/documentation/ja-jp/red_hat_openstack_platform/16.1/html-single/networking_guide/index#deploy-routed-prov-networks_rhosp-network を参照してください。

3.2.3. テクノロジープレビュー

BZ#1703958
今回の更新では、OVN プロバイダードライバーにおいて、同じロードバランサーリスナー上で TCP および UDP プロトコルの両方がサポートされます。
BZ#1801721
Red Hat OpenStack Platform 16.1 では、テクノロジープレビューとして Load-balancing サービス (Octavia) が UDP プロトコルをサポートします。

3.2.4. 既知の問題

現時点における Red Hat OpenStack Platform の既知の問題は以下のとおりです。

BZ#1849235
UpgradeLevelNovaCompute パラメーターを '' に設定しない場合、RHOSP 13 から RHOSP 16 にアップグレードするとライブマイグレーションを行うことができません。
BZ#1861363
OSP 16.0 で、ピニングされたインスタンスのライブマイグレーションが完全にサポートされるようになりました。この機能のバグにより、リアルタイム CPU ポリシーが設定され複数のリアルタイム CPU を持つインスタンスを正常に移行することができません。したがって、リアルタイムインスタンスのライブマイグレーションを行うことができません。現在、回避策はありません。
BZ#1866562

現在、Red Hat OpenStack Platform が tripleo-ipa を使用して TLS-e を設定してデプロイされている場合、コンピュートノードをスケールダウンしたり削除したりすることはできません。これは、従来ローカルホストとしてアンダークラウドに委譲されていたクリーンアップロールが、mistral コンテナーから呼び出されるようになったためです。

詳細は、In an environment with TLSe setup with tripleo-ipa, Compute node replacement procedure fails to remove compute node を参照してください。

BZ#1867458

Leapp の問題により、Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) 13 から RHOSP 16.1 への Fast Forward Upgrade に失敗します。

RHEL 7 から RHEL 8 への Leapp アップグレードにより、古い RHOSP パッケージがすべて削除され、オペレーティングシステムのアップグレードおよびリブートが実行されます。Leapp は overcloud upgrade run 段階で os-net-config パッケージをインストールするため、リブート後に sriov_config サービスが Virtual Function (VF) および switchdev モードを設定する際に os-net-config-sriov 実行ファイルを利用することができません。その結果、VF は設定されず、switchdev モードは Physical Function (PF) インターフェイスに適用されません。

回避策としては、VF を手動で作成して switchdev モードを VF インターフェイスに適用し、VF インターフェイスを再起動する方法があります。