第9章 OVN-Kubernetes ネットワークプラグイン

9.1. egress IP アドレスの設定

クラスター管理者は、1 つ以上の egress IP アドレスを namespace に、または namespace 内の特定の pod に割り当てるように、OVN-Kubernetes の Container Network Interface (CNI) ネットワークプラグインを設定することができます。

9.1.1. Egress IP アドレスアーキテクチャーの設計および実装

Red Hat OpenShift Service on AWS の egress IP アドレス機能を使用すると、1 つ以上の namespace の 1 つ以上の Pod からのトラフィックに、クラスターネットワーク外のサービスに対する一貫したソース IP アドレスを持たせることができます。

たとえば、クラスター外のサーバーでホストされるデータベースを定期的にクエリーする Pod がある場合があります。サーバーにアクセス要件を適用するために、パケットフィルタリングデバイスは、特定の IP アドレスからのトラフィックのみを許可するよう設定されます。この特定の Pod のみからサーバーに確実にアクセスできるようにするには、サーバーに要求を行う Pod に特定の egress IP アドレスを設定できます。

namespace に割り当てられた egress IP アドレスは、特定の宛先にトラフィックを送信するために使用されるスロールーターとは異なります。

ROSA with HCP では、アプリケーション Pod と ingress ルーター Pod が同じノード上で実行されます。このシナリオでアプリケーションプロジェクトの Egress IP アドレスを設定する場合、アプリケーションプロジェクトからルートに要求を送信するときに IP アドレスは使用されません。

重要

EgressIP 機能を持つコントロールプレーンノードへの egress IP アドレスの割り当てはサポートされていません。

次の例は、いくつかのパブリッククラウドプロバイダーのノードからのアノテーションを示しています。アノテーションは、読みやすくするためにインデントされています。

AWS での cloud.network.openshift.io/egress-ipconfig アノテーションの例

cloud.network.openshift.io/egress-ipconfig: [
  {
    "interface":"eni-078d267045138e436",
    "ifaddr":{"ipv4":"10.0.128.0/18"},
    "capacity":{"ipv4":14,"ipv6":15}
  }
]

次のセクションでは、容量計算で使用するためにサポートされているパブリッククラウド環境の IP アドレス容量を説明します。

9.1.1.1. Amazon Web Services (AWS) の IP アドレス容量の制限

AWS では、IP アドレスの割り当てに関する制約は、設定されているインスタンスタイプによって異なります。詳細は、IP addresses per network interface per instance type を参照してください。

9.1.1.2. egress IP の Pod への割り当て

1 つ以上の egress IP を namespace に、または namespace の特定の Pod に割り当てるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • クラスター内の 1 つ以上のノードに k8s.ovn.org/egress-assignable: "" ラベルがなければなりません。
  • EgressIP オブジェクトが存在し、これは namespace の Pod からクラスターを離脱するトラフィックのソース IP アドレスとして使用する 1 つ以上の egress IP アドレスを定義します。
重要

egress IP の割り当て用にクラスター内のノードにラベルを付ける前に EgressIP オブジェクトを作成する場合、Red Hat OpenShift Service on AWS は k8s.ovn.org/egress-assignable: "" ラベルですべての egress IP アドレスを最初のノードに割り当てる可能性があります。

egress IP アドレスがクラスター内のノード全体に広く分散されるようにするには、EgressIP オブジェクトを作成する前に、egress IP アドレスをホストする予定のノードにラベルを常に適用します。

9.1.1.3. egress IP のノードへの割り当て

EgressIP オブジェクトを作成する場合、k8s.ovn.org/egress-assignable: "" ラベルのラベルが付いたノードに以下の条件が適用されます。

  • egress IP アドレスは一度に複数のノードに割り当てられることはありません。
  • egress IP アドレスは、egress IP アドレスをホストできる利用可能なノード間で均等に分散されます。
  • EgressIP オブジェクトの spec.EgressIPs 配列が複数の IP アドレスを指定する場合は、以下の条件が適用されます。

    • 指定された IP アドレスを複数ホストするノードはありません。
    • トラフィックは、指定された namespace の指定された IP アドレス間でほぼ均等に分散されます。
  • ノードが利用不可の場合、そのノードに割り当てられる egress IP アドレスは自動的に再割り当てされます (前述の条件が適用されます)。

Pod が複数の EgressIP オブジェクトのセレクターに一致する場合、EgressIP オブジェクトに指定される egress IP アドレスのどれが Pod の egress IP アドレスとして割り当てられるのかという保証はありません。

さらに、EgressIP オブジェクトが複数の送信 IP アドレスを指定する場合、どの送信 IP アドレスが使用されるかは保証されません。たとえば、Pod が 10.10.20.110.10.20.2 の 2 つの egress IP アドレスを持つ EgressIP オブジェクトのセレクターと一致する場合、各 TCP 接続または UDP 会話にいずれかが使用される可能性があります。

9.1.1.4. egress IP アドレス設定のアーキテクチャー図

以下の図は、egress IP アドレス設定を示しています。この図では、クラスターの 3 つのノードで実行される 2 つの異なる namespace の 4 つの Pod について説明します。ノードには、ホストネットワークの 192.168.126.0/18 CIDR ブロックから IP アドレスが割り当てられます。

ノード 1 とノード 3 の両方に k8s.ovn.org/egress-assignable: "" というラベルが付けられるため、egress IP アドレスの割り当てに利用できます。

図の破線は、pod1、pod2、および pod3 からのトラフィックフローが Pod ネットワークを通過し、クラスターがノード 1 およびノード 3 から出る様子を示しています。外部サービスが、EgressIP オブジェクトの例で選択した Pod からトラフィックを受信する場合、ソース IP アドレスは 192.168.126.10 または 192.168.126.102 のいずれかになります。トラフィックはこれらの 2 つのノード間でほぼ均等に分散されます。

図にある次のリソースの詳細を以下に示します。

Namespace オブジェクト

namespace は以下のマニフェストで定義されます。

namespace オブジェクト

apiVersion: v1
kind: Namespace
metadata:
  name: namespace1
  labels:
    env: prod
---
apiVersion: v1
kind: Namespace
metadata:
  name: namespace2
  labels:
    env: prod

EgressIP オブジェクト

以下の EgressIP オブジェクトは、env ラベルが prod に設定される namespace のすべての Pod を選択する設定を説明しています。選択された Pod の egress IP アドレスは 192.168.126.10 および 192.168.126.102 です。

EgressIP オブジェクト

apiVersion: k8s.ovn.org/v1
kind: EgressIP
metadata:
  name: egressips-prod
spec:
  egressIPs:
  - 192.168.126.10
  - 192.168.126.102
  namespaceSelector:
    matchLabels:
      env: prod
status:
  items:
  - node: node1
    egressIP: 192.168.126.10
  - node: node3
    egressIP: 192.168.126.102

前述の例の設定では、Red Hat OpenShift Service on AWS は両方の egress IP アドレスを使用可能なノードに割り当てます。status フィールドは、egress IP アドレスの割り当ての有無および割り当てられる場所を反映します。

9.1.2. EgressIP オブジェクト

以下の YAML は、EgressIP オブジェクトの API について説明しています。オブジェクトの範囲はクラスター全体です。これは namespace では作成されません。

apiVersion: k8s.ovn.org/v1
kind: EgressIP
metadata:
  name: <name> 1
spec:
  egressIPs: 2
  - <ip_address>
  namespaceSelector: 3
    ...
  podSelector: 4
    ...
1
EgressIPs オブジェクトの名前。
2
1 つ以上の IP アドレスの配列。
3
egress IP アドレスを関連付ける namespace の 1 つ以上のセレクター。
4
オプション: egress IP アドレスを関連付けるための指定された namespace の Pod の 1 つ以上のセレクター。これらのセレクターを適用すると、namespace 内の Pod のサブセットを選択できます。

以下の YAML は namespace セレクターのスタンザについて説明しています。

namespace セレクタースタンザ

namespaceSelector: 1
  matchLabels:
    <label_name>: <label_value>

1
namespace の 1 つ以上のマッチングルール。複数のマッチングルールを指定すると、一致するすべての namespace が選択されます。

以下の YAML は Pod セレクターのオプションのスタンザについて説明しています。

Pod セレクタースタンザ

podSelector: 1
  matchLabels:
    <label_name>: <label_value>

1
オプション: 指定された namespaceSelector ルールに一致する、namespace の Pod の 1 つ以上のマッチングルール。これが指定されている場合、一致する Pod のみが選択されます。namespace の他の Pod は選択されていません。

以下の例では、EgressIP オブジェクトは 192.168.126.11 および 192.168.126.102 egress IP アドレスを、app ラベルが web に設定されており、env ラベルが prod に設定されている namespace にある Pod に関連付けます。

EgressIP オブジェクトの例

apiVersion: k8s.ovn.org/v1
kind: EgressIP
metadata:
  name: egress-group1
spec:
  egressIPs:
  - 192.168.126.11
  - 192.168.126.102
  podSelector:
    matchLabels:
      app: web
  namespaceSelector:
    matchLabels:
      env: prod

以下の例では、EgressIP オブジェクトは、192.168.127.30 および 192.168.127.40 egress IP アドレスを、environment ラベルが development に設定されていない Pod に関連付けます。

EgressIP オブジェクトの例

apiVersion: k8s.ovn.org/v1
kind: EgressIP
metadata:
  name: egress-group2
spec:
  egressIPs:
  - 192.168.127.30
  - 192.168.127.40
  namespaceSelector:
    matchExpressions:
    - key: environment
      operator: NotIn
      values:
      - development

9.1.3. egress IP アドレスをホストするノードのラベル付け

Red Hat OpenShift Service on AWS が 1 つ以上の egress IP アドレスをノードに割り当てることができるように、k8s.ovn.org/egress-assignable="" ラベルをクラスター内のノードに適用できます。

前提条件

  • ROSA CLI (rosa) をインストールしている。
  • クラスター管理者としてクラスターにログインしている。

手順

  • 1 つ以上の egress IP アドレスをホストできるようにノードにラベルを付けるには、以下のコマンドを入力します。

    $ rosa edit machinepool <machinepool_name> --cluster=<cluster_name> --labels "k8s.ovn.org/egress-assignable="
    重要

    このコマンドは、マシンプール上の既存のノードラベルをすべて置き換えます。既存のノードラベルを確実に保持するには、必要なラベルを --labels フィールドに含める必要があります。

9.1.4. 次のステップ

9.1.5. 関連情報