第31章 Red Hat ビルドの OptaPlanner で提供される例
Red Hat Process Automation Manager には、Red Hat ビルドの OptaPlanner のサンプルが複数同梱されています。たとえばコードなどを確認して、ニーズに合ったものに変更できます。
Red Hat は、Red Hat Process Automation Manager ディストリビューションに含まれるコードサンプルのサポートはしていません。
OptaPlanner サンプルには、教育関連のコンテストで出題された問題を解決するものもあります。以下の表の Contest
列には、このようなコンテストが掲載されています。また、コンテストの目的として、現実的 か、非現実的 かの識別をしています。現実的なコンテスト とは、以下の基準を満たす、独立した公式コンテストを指します。
- 明確に定義された実際のユースケースであること
- 実際に制約があること
- 実際のデータセットが複数あること
- 特定のハードウェアで特定の時間内に結果を再現できること
- 教育機関および/または企業の運用研究コミュニティーが真剣に参加していること
現実的なコンテストでは、競合のソフトウェアや教育研究と OptaPlanner を客観的に比較できます。
表31.1 サンプルの概要
例 | ドメイン | サイズ | コンテスト | ディレクトリー名 |
---|---|---|---|---|
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 無意味 (不正が可能) |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (連鎖変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的でない TSP Web |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 2 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 2 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的 ITC 2007 track 3 |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | ほぼ現実的 ROADEF 2012 |
| |
エンティティークラス 1 つ (連鎖変数 1 つ) シャドウエンティティークラス 1 つ (自動シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的でない VRP Web |
| |
時間枠がある中での 配送経路 | 配送経路すべて (シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的でない VRP Web |
|
エンティティークラス 1 つ (変数 2 つ) (シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | ほぼ現実的 MISTA 2013 |
| |
エンティティークラス 1 つ (連鎖変数 1 つ) (シャドウ変数 1 つ) シャドウエンティティークラス 1 つ (自動シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 2 つ (同じ階層) (変数 2 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的 ITC 2007 track 1 |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的 INRC 2010 |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | 現実的でない TTP |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 2 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | ほぼ現実的 ICON Energy |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 =
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 2 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (連鎖変数 1 つ) (シャドウ変数 4 つ) シャドウエンティティークラス 1 つ (自動シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
| |
エンティティークラス 1 つ (変数 1 つ) シャドウエンティティークラス 1 つ (自動シャドウ変数 1 つ) |
エンティティー ⇐
値 ⇐
探索空間 ⇐ | いいえ (弊社が定義) |
|
31.1. N クィーン
n サイズのチェスボードで、他のクィーンに取られない場所に n 個のクィーンを置きます。最も一般的な n クィーンパズルは、n = 8 の 8 個のクィーンパズルです。
制約:
- n 列および n 行のチェスボードを使用します。
- チェスボードに n 個のクィーンを置きます。
- クィーンが他のクィーンに取られないように配置します。クィーンは、同じ水平線上、垂直線上、対角線上にある他のクィーンを取ることができます。
本書では、4 つのクイーンパズルを主な例として多用しています。
以下が提案された解です。
図31.1 クィーン 4 個のパズルの誤った解
上記の解は、A1
と B0
(および B0
と D0
) のクィーンがお互いに駒を取れるので間違っています。B0
のクィーンをどかせば他のクィーンに取られないようにするという制約は順守できますが、n 個のクィーンを置くという制約に違反します。
以下は正しい解です。
図31.2 クィーン 4 個のパズルの正しい解
すべての制約が満たされているので、これが正解です。
n クィーンパズルでは、正解が複数存在する場合が多々あります。指定した n に対して考えられるすべての解を見つけるのではなく、指定の n に対する正しい解を 1 つ導き出すことに焦点をあてます。
問題の規模
4queens has 4 queens with a search space of 256. 8queens has 8 queens with a search space of 10^7. 16queens has 16 queens with a search space of 10^19. 32queens has 32 queens with a search space of 10^48. 64queens has 64 queens with a search space of 10^115. 256queens has 256 queens with a search space of 10^616.
n クィーンは、初心者用のサンプルとして実装されているため、最適化はされていません。それにもかかわらず、クィーンが 64 個になっても簡単に処理できます。何点か変更を加えると、クィーンが 5000 個以上になっても簡単に対応できることが立証されています。
31.1.1. N クィーンのドメインモデル
この例では、4 つのクィーンの問題を解決するドメインモデルを使用します。
ドメインモデルの作成
適切なドメインモデルを使用すると、プランニングの問題をより簡単に理解し、解決することができます。
以下は、n クィーンの例のドメインモデルです。
public class Column { private int index; // ... getters and setters }
public class Row { private int index; // ... getters and setters }
public class Queen { private Column column; private Row row; public int getAscendingDiagonalIndex() {...} public int getDescendingDiagonalIndex() {...} // ... getters and setters }
探索空間の計算
Queen
インスタンスにはColumn
(例: 0 は列 A、1 は列 B) およびRow
(例: 0 は行 0、1 は行 1) が含まれます。列と行をもとに、昇順の対角線、および降順の対角線を計算することができます。
列と行のインデックスは、チェスボードの左上隅から数えています。
public class NQueens { private int n; private List<Column> columnList; private List<Row> rowList; private List<Queen> queenList; private SimpleScore score; // ... getters and setters }
解の求め方
1 つの
NQueens
インスタンスにはQueen
インスタンスの一覧が含まれています。これがSolution
実装として提供され、Solver が解決して読み出します。
たとえば、4 クイーンのサンプルでは、NQueens の getN()
メソッドが常に 4 を返します。
図31.3 クィーン 4 個の解
表31.2 ドメインモデルの解の詳細
columnIndex | rowIndex | ascendingDiagonalIndex (columnIndex + rowIndex) | descendingDiagonalIndex (columnIndex - rowIndex) | |
---|---|---|---|---|
A1 | 0 | 1 | 1 (**) | -1 |
B0 | 1 | 0 (*) | 1 (**) | 1 |
C2 | 2 | 2 | 4 | 0 |
D0 | 3 | 0 (*) | 3 | 3 |
(*) や (**) のように、クィーン 2 つが同じ行、列、対角線を共有する場合は、2 つの駒が互いを取ることができます。