第28章 ガイド付きデシジョンテーブルのヒットポリシー

ヒットポリシーは、ガイド付きデシジョンテーブルのルール (行) を適用する順番 (上から下、優先順位を指定した順など) を指定します。

次のヒットポリシーが利用できます。

  • None: (デフォルトのヒットポリシー) 複数の行を実行できます。競合している行については検証により警告されます。(ガイド付きデシジョンテーブル以外のスプレッドシート使用して) アップロードされているデシジョンテーブルには、このヒットポリシーが適用されます。
  • Resolved Hit: 指定されている優先順位に従って同時に実行できる行は 1 つだけです。リストされている順序は無視されます (たとえば、行 10 の優先順位を行 5 よりも高くできます)。したがって、視覚的な分かりやすさを基準に行の順番を決め、それとは別に優先順位を指定することができます。
  • Unique Hit: 同時に実行できる行は 1 つだけです。一致する条件は重複しないようにする必要があります。複数の行が実行すると、開発時に検証により警告が生成されます。
  • First Hit: 同時に実行できる行は 1 つだけです。テーブルの順番に従って、上から下に実行します。
  • Rule Order: 複数の行を実行できます。行の競合は期待されるため、報告されません。

図28.1 利用可能なヒットポリシー

hit policies image 1

28.1. ヒットポリシーの例: 映画観賞券の割引価格を定めるデシジョンテーブル

以下の表は、顧客の年齢、学生かどうか、軍隊経験の有無、またはこの 3 つの全条件をもとにして映画観賞券の割引価格を求める時に使用するデシジョンテーブル例の一部です。

表28.1 映画観賞券で利用可能な割引価格を定めたデシジョンテーブル例

行番号割引の種類割引価格

1

高齢者 (60 歳以上)

10%

2

学生

10%

3

軍隊経験

10%

以下の例では、最終的に適用される割引合計は、テーブルに指定したヒットポリシーによって変わります。

  • None/Rule Order: ヒットポリシー None および Rule Order では、適用可能なルールがすべて組み込まれ、それぞれの顧客に適用される割引が積み重ねられます。

    例: 現在学生で、軍隊経験がある高齢者には、3 つの割引がすべて適用され、合計 30% の割引になります。

    重要な相違点: None では、複数の行が適用されると警告が作成されます。Rule Order では、この警告が作成されません。

  • First Hit/Resolved Hit: ヒットポリシー First Hit ポリシーおよび Resolved Hit ポリシーでは、割引の中から 1 つだけが適用されます。

    First Hit の場合は、リストの中で最初に満たされた割引が適用され、その他の割引は適用されません。

    例: 現在学生で、軍隊経験がある高齢者には、テーブルに最初にリストされている高齢者割引 10% だけが適用されます。

    Resolved Hit の場合は、テーブルの修正が必要になります。テーブルで優先順位の例外を割り当てた割引が、リストされた順番にかかわらず最初に適用されます。この例外を割り当てるには、割引 (行) の優先順位を指定する新しい列を追加します。

    例: 軍隊経験者向けの割引の優先順位が、高齢者向けまたは学生向けの割引よりも高く設定されている場合、現在学生で、軍隊経験がある高齢者には、軍隊経験者の割引 10% が適用されます (高齢者向けまたは学生向け割引は適用されません)。

    Resolved Hit ポリシーを適用して修正したデシジョンテーブルをご覧ください。

    表28.2 Resolved Hit ポリシーを適用して修正したデシジョンテーブル

    行番号割引の種類優先する行割引価格

    1

    高齢者 (60 歳以上)

     

    10%

    2

    学生

     

    10%

    3

    軍隊経験

    1

    10%

    この修正したテーブルでは、軍人経験者向けの割引が事実上の行 1 になるため、高齢者向けと学生向けの割引よりも優先され、その後でその他の割引が追加されます。優先順位は、行 1 に対する優先だけを指定する必要があり、行 1 および行 2 の両方に指定する必要はありません。この変更により、行のヒット順は、3 → 1 → 2 となり、さらに行が増えた場合はこの後に続きます。

    注記

    ここで変更した行の順番は、軍隊経験者向けの割引を行 1 に移動して First Hit ポリシーをテーブルに適用した場合と同じになります。ただし、ルールを特定の順番で並べ (アルファベット順)、ルールの適用順を変更したい場合は、Resolved Hit ポリシーが便利です。

    重要な相違点: First Hit を使用すると、ルールの適用順はリストした順番に固定されます。Resolved Hit を使用すると、指定された優先順位の例外を除いて、リストされた順にルールが適用されます。

  • Unique Hit: テーブルの修正が必要になります。Unique Hit ポリシーを使用する場合は、一度に複数の行を適用できないように行を作成する必要があります。ただし、ルールを 1 つまたは複数適用するかどうかは、行ごとに指定できます。この方法では、Unique Hit ポリシーを使用した場合に重複の警告が表示されないように、デシジョンテーブルの粒度をより細かくできます。

    Unique Hit ポリシーを適用して修正したデシジョンテーブルをご覧ください。

    表28.3 Unique Hit ポリシーを適用して修正デシジョンテーブル

    行番号高齢者 (65 歳以上)学生軍隊経験割引価格

    1

    はい

    いいえ

    いいえ

    10%

    2

    いいえ

    はい

    いいえ

    10%

    3

    いいえ

    いいえ

    はい

    10%

    4

    はい

    はい

    いいえ

    20%

    5

    はい

    いいえ

    はい

    20%

    6

    いいえ

    はい

    はい

    20%

    7

    はい

    はい

    はい

    30%

    この修正したテーブルでは、各行が一意で、重複はできず、1 つまたは複数の割引が適用されます。

28.1.1. ガイド付きデシジョンテーブルの種類

Red Hat Process Automation Manager では、拡張エントリーテーブルと制限エントリーテーブルの 2 種類のデシジョンテーブルに対応します。

  • 拡張エントリー: 拡張エントリーのデシジョンテーブルの列定義には、パターン、フィールド、演算子を指定します。値は指定しません。値またはステート (state) は、デシジョンテーブルの本体に保持されます。

    Extended entry
  • 制限エントリー: 制限エントリーのデシジョンテーブルの列定義には、パターン、フィールド、演算子に加えて、値を指定します。デシジョンテーブルの本体には、デシジョンテーブルのステート (state) をブール値で指定します。正の値 (チェックボックスを選択した場合) はその列が適用されます。負の値 (チェックボックスを選択しない場合) はその列が適用されないことを示しています。

    Limited entry