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第13章 ポリシーベースの複号を使用して暗号化ボリュームの自動アンロックの設定

ポリシーベースの複号 (PBD) は、物理マシンおよび仮想マシンにおいて、ハードドライブで暗号化した root ボリュームおよびセカンダリーボリュームのロックを解除できるようにする一連の技術です。PBD は、ユーザーパスワード、TPM (Trusted Platform Module) デバイス、システムに接続する PKCS #11 デバイス (たとえばスマートカード) などのさまざまなロックの解除方法、もくしは特殊なネットワークサーバーを使用します。

PBD を使用すると、ポリシーにさまざまなロックの解除方法を組み合わせて、さまざまな方法で同じボリュームのロックを解除できるようにすることができます。RHEL における PBD の現在の実装は、Clevis フレームワークと、ピン と呼ばれるプラグインで構成されます。各ピンは、個別のアンロック機能を提供します。現在利用できるピンは以下のとおりです。

  • tang - ネットワークサーバーを使用してボリュームのロックを解除できます
  • tpm2 - TPM2 ポリシーを使用してボリュームのロックを解除できます
  • sss - Shamir's Secret Sharing (SSS) 暗号方式を使用して高可用性システムをデプロイできます

13.1. NBDE (Network-Bound Disk Encryption)

Network Bound Disc Encryption (NBDE) は、ポリシーベースの復号 (PBD) のサブカテゴリーであり、暗号化されたボリュームを特別なネットワークサーバーにバインドできるようにします。NBDE の現在の実装には、Tang サーバー自体と、Tang サーバー用の Clevis ピンが含まれます。

RHEL では、NBDE は次のコンポーネントとテクノロジーによって実装されます。

図13.1 LUKS1 で暗号化したボリュームを使用する場合の NBDE スキーム(luksmeta パッケージは、LUKS2 ボリュームには使用されません)

RHEL Security Guide 453350 0717 ECE NBDE

Tang は、ネットワークのプレゼンスにデータをバインドするためのサーバーです。セキュリティーが保護された特定のネットワークにシステムをバインドする際に利用可能なデータを含めるようにします。Tang はステートレスで、TLS または認証は必要ありません。エスクローベースのソリューション (サーバーが暗号鍵をすべて保存し、使用されたことがあるすべての鍵に関する知識を有する) とは異なり、Tang はクライアントの鍵と相互作用することはないため、クライアントから識別情報を得ることがありません。

Clevis は、自動化された復号用のプラグイン可能なフレームワークです。NBDE では、Clevis は、LUKS ボリュームの自動アンロックを提供します。clevis パッケージは、クライアントで使用される機能を提供します。

Clevis ピン は、Clevis フレームワークへのプラグインです。このようなピンの 1 つは、NBDE サーバー (Tang) との相互作用を実装するプラグインです。

Clevis および Tang は、一般的なクライアントおよびサーバーのコンポーネントで、ネットワークがバインドされた暗号化を提供します。RHEL では、LUKS と組み合わせて使用され、ルートおよび非ルートストレージボリュームを暗号化および復号して、ネットワークにバインドされたディスク暗号化を実現します。

クライアントおよびサーバーのコンポーネントはともに José ライブラリーを使用して、暗号化および複号の操作を実行します。

NBDE のプロビジョニングを開始すると、Tang サーバーの Clevis ピンは、Tang サーバーの、アドバタイズされている非対称鍵の一覧を取得します。もしくは、鍵が非対称であるため、Tang の公開鍵の一覧を帯域外に配布して、クライアントが Tang サーバーにアクセスしなくても動作できるようにします。このモードは オフラインプロビジョニング と呼ばれます。

Tang 用の Clevis ピンは、公開鍵のいずれかを使用して、固有で、暗号論的に強力な暗号鍵を生成します。この鍵を使用してデータを暗号化すると、この鍵は破棄されます。Clevis クライアントは、使いやすい場所に、このプロビジョニング操作で生成した状態を保存する必要があります。データを暗号化するこのプロセスは プロビジョニング手順 と呼ばれています。

LUKS バージョン 2 (LUKS2) は、RHEL のデフォルトのディスク暗号化形式であるため、NBDE のプロビジョニング状態は、LUKS2 ヘッダーにトークンとして保存されます。luksmeta パッケージによる NBDE のプロビジョニング状態は、LUKS1 で暗号化したボリュームにのみ使用されます。

Tang 用の Clevis ピンは、規格を必要とせずに LUKS1 と LUKS2 の両方をサポートします。Clevis はプレーンテキストファイルを暗号化できますが、ブロックデバイスの暗号化には cryptsetup ツールを使用する必要があります。詳細については、 Encrypting block devices using LUKS を参照してください。

クライアントがそのデータにアクセスする準備ができると、プロビジョニング手順で生成したメタデータを読み込み、応答して暗号鍵を戻します。このプロセスは 復旧手順 と呼ばれます。

Clevis は、NBDE ではピンを使用して LUKS ボリュームをバインドしているため、自動的にロックが解除されます。バインドプロセスが正常に終了すると、提供されている Dracut アンロックを使用してディスクをアンロックできます。

注記

kdump カーネルクラッシュのダンプメカニズムが、システムメモリーのコンテンツを LUKS で暗号化したデバイスに保存するように設定されている場合には、2 番目のカーネル起動時にパスワードを入力するように求められます。

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