第1章 Red Hat CloudForms について
CloudForms Management Engine は、企業が仮想環境の管理に関する課題に対応するために必要なインサイトや、制御、自動化の機能を提供します。この技術により、仮想インフラストラクチャーがすでに存在する企業において可視性および制御の向上を図ることができるだけでなく、仮想デプロイメントに着手する企業においても管理の行き届いた仮想インフラストラクチャーを構築、運用できるようになります。
Red Hat CloudForms 4.0 は、CloudForms Management Engine という単一のコンポーネントで形成されています。Red Hat CloudForms には、以下の機能セットが含まれます。
- インサイト: 検出、監視、使用状況、パフォーマンス、レポート、分析、チャージバック、トレンド
- 制御: セキュリティー、コンプライアンス、警告、ポリシーベースのリソース、設定強化
- 自動化: IT プロセス、タスクおよびイベント、プロビジョニング、ワークロード管理およびオーケストレーション
- 統合: システム管理、ツールおよびプロセス、イベントコンソール、構成管理データベース (CMDB: Configuration Management Database)、ロールベースアドミニストレーション (RBA: Role-Based Administration)、Web サービス
1.1. アーキテクチャー
以下の図は、CloudForms Management Engine の機能について記載しています。この機能は、それぞれが連携することで堅牢性の高い仮想インフラストラクチャーの管理、保守が提供されるように設計されています。
このアーキテクチャーは以下のコンポーネントで構成されています。
- セキュアで、高パフォーマンスな事前定義済みの仮想マシンとして提供される CloudForms Management Engine アプライアンス (別称アプライアンス)。HTTPS 通信をサポートします。
- アプライアンス内に存在する CloudForms Management Engine サーバー (サーバー)。SmartProxy と仮想管理データベース (VMDB) の間の通信を行うソフトウェア層です。これには、HTTPs 通信のサポートが含まれます。
- アプライアンス内か、アプライアンスにアクセスできる別のコンピューターに存在する仮想管理データベース (VMDB)。仮想インフラストラクチャーについて収集された最も信頼できるインテリジェンスソースで、このデータベースではアプライアンスタスクに関するステータス情報も保持します。
- サーバーとアプライアンスの表示/制御に使用する Web インターフェースの CloudForms Management Engine コンソール (コンソール)。このコンソールは、Web 2.0マッシュアップおよび Web サービス (WS Management) インターフェースから使用します。
- アプライアンスまたは ESX Server のいずれかに存在することができる SmartProxy。SmartProxy がサーバーに組み込まれていない場合には、アプライアンスからデプロイすることができます。ストレージの場所毎に SmartProxy を設定して、各ストレージに SmartProxy が表示される状態でなければなりません。SmartProxy は、アプライアンスの代わりに、標準ポート 443 で HTTPS 経由で通信を行います。
1.2. 要件
CloudForms Management Engine を使用するには、以下の要件を満たす必要があります。
以下の Web ブラウザーのいずれかを使用してください。
- Mozilla の延長サポート版 (ESR) でサポートされる Mozilla Firefox のバージョン
- Internet Explorer 8 以降
- Google Chrome for Business
- 最小解像度 1280x1024 以上のモニター
- Adobe Flash Player 9 以降 (本書の公開時点では、http://www.adobe.com/products/flashplayer/ からアクセスできます)
- エンタープライズ環境に CloudForms Management Engine アプライアンスがすでにインストールされ、有効化されている必要があります。
- SmartProxy は、制御する仮想マシンとクラウドインスタンスに表示されている必要があります。
- 制御するリソースは、SmartProxy に関連付ける必要があります。
Red Hat では、ブラウザーの制約により、複数タブ対応のブラウザーでも 1 つのタブからのログインだけをサポートとします。コンソールの設定は、アクティブなタブのみで保存されます。同様の理由から、CloudForms Management Engine では、ブラウザーの 戻る ボタンを押して希望の結果が得られるという保証はありません。Red Hat は、コンソールで提供されるブレッドクラムを使用することを推奨します。
1.3. 用語について
以下の用語は、本書全体で使用されます。これらの用語を確認してから、本書を読み進めてください。
- アカウントロール
- CloudForms Management Engine の異なる部分や機能に対してユーザーが アクセスできるレベル。仮想インフラストラクチャーやコンソールの部分へのアクセスを制限または許可するように割り当て可能なアカウントロールが各種存在します。
- アクション
- 条件が評価された後に実行される動作
- アラート
- CloudForms Management Engine のアラートにより、仮想環境において極めて重要な設定の変更があった場合や上限/下限に達した場合に通知が出されます。これらの通知は、メールまたは SNMP トラップの形式を取ることができます。
- 分析プロファイル
- ホスト、仮想マシン、インスタンスのカスタマイズスキャン。カテゴリー、ファイル、イベントログ、レジストリーのエントリーからの情報を収集することができます。
- クラウド
- オンデマンドおよび高可用性のコンピューティングリソースのプール。これらのリソースの使用量は、ユーザー要件に合わせてスケーリングされ、コストの算出のため使用量が計測されます。
- CloudForms Management Engine アプライアンス
- 仮想管理データベース (VMDB) および CloudForms Management Engine サーバーのある仮想マシン
- CloudForms Management Engine Console
- CloudForms Management Engine アプライアンスへの Web ベースのインターフェース
- CloudForms Management Engine ロール
- CloudForms Management Engine サーバーが実行できる操作を定義するために CloudForms Management Engine サーバーに割り当てるアクセスレベル。
- CloudForms Management Engine サーバー
- CloudForms Management Engine アプライアンス上で実行して、SmartProxy や VMDB と通信を行うアプリケーション
- クラスター
- 高可用性や負荷分散を提供するためにまとめられたホスト
- 条件
- イベントによりトリガーされる制御ポリシーテスト。これにより次のアクションが決まります。
- 検出
- 仮想マシンやクラウドプロバイダーの検索に CloudForms Management Engine サーバーが実行するプロセス
- ドリフト
- 別の時点の仮想マシン、インスタンス、ホスト、クラスターとの比較
- イベント
- 条件を確認するためのトリガー
- イベントモニター
- 外部プロバイダーにイベントが発生していないかをモニタリングして、CloudForms Management Engine サーバーにイベントを送信する CloudForms Management Engine アプライアンス上のソフトウェア
- ホスト
- 仮想マシンのホスティングや監視を行う機能を持つハイパーバイザーを実行するコンピューター。サポートされるハイパーバイザーには、RHEV-H、VMware ESX ホスト、Windows Hyper-V ホストが含まれます。
- インスタンス/クラウドインスタンス
- CPU、メモリー、ネットワークインターフェースなどのスケーラブルなハードウェアリソースセットを使用する、事前定義されたイメージをベースにしたオンデマンドの仮想マシン
- 管理/登録済みの仮想マシン
- ホストに接続されており、VMDB に存在する仮想マシン。また、プロバイダーに接続されており、VMDB に存在するテンプレート。テンプレートはホストには接続できない点に注意してください。
- 管理/非登録の仮想マシン
- リポジトリーに存在する仮想マシンまたはテンプレートまたは、プロバイダーやホストに接続されておらず、VMDB に存在する仮想マシンまたはテンプレート。仮想マシンがプロバイダーのインベントリーから削除された場合には、以前登録済みと認識されていた仮想マシンが非登録になる場合があります。
- プロバイダー
- 複数のホスト上にある複数の仮想マシンを管理するソフトウェアがインストールされているコンピューター
- ポリシー
- 仮想マシンの管理に使用するイベント、条件、アクションの組み合わせ
- ポリシープロファイル
- ポリシーセット
- 更新
- ストレージの場所、リポジトリー、仮想マシンまたはインスタンスなど他のリソースとプロバイダまたはホストとの関係やこれらのリソースの電源情報を確認するために CloudForms Management Engine サーバーが実行するプロセス。
- リージョン
- リージョンは、レポートやチャート用の中央データベースを作成するために使用します。リージョンは主に複数の VMDB を 1つのマスター VMDB にレポートように集約する際に使用します。
- リソーし
- ホスト、プロバイダー、インスタンス、仮想マシン、リポジトリー、またはデータストア
- リソースプール
- CPU やメモリーリソースが割り当てられる仮想マシングループ
- リポジトリー
- 仮想マシンを含むデータストアリソースの配置場所
- SmartProxy
- SmartProxy とは、CloudForms Management Engine アプライアンスの代わりにホスト、プロバイダー、ストレージ、仮想マシンでアクションを実行するソフトウェアエージェントです。
- SmartProxy は、CloudForms Management Engine アプライアンスまたは ESX サーバーのバージョンに配備されるように設定することができます。SmartProxy は、CloudForms Management Engine アプライアンスからデプロイして、VMFS ストレージへの可視性を提供します。ストレージの場所には SmartProxy を設定して、各ストレージから SmartProxy が見える状態でなければなりません。SmartProxy は CloudForms Management Engine アプライアンスの代わりに機能します。SmartProxy は、CloudForms Management Engine サーバーに組み込まれていない場合には、CloudForms Management Engine アプライアンスに標準ポート 443 で HTTPS 経由で通信を行います。
- SmartState 分析
- 仮想マシンまたはインスタンスの詳細を収集するために SmartProxy が実行するプロセス。これらの詳細には、アカウント、ドライバー、ネットワークの情報、ハードウェア、セキュリティー修正などが含まれます。このプロセスも、ホストやクラスター上にある CloudForms Management Engine サーバーで実行されます。このデータは、VMDB に保存されます。
- SmartTags
- 検索可能なインデックスをカスタマイズで作成して、クラウドやインフラストラクチャー内のリソースを検索できるようにする記述子
- ストレージの場所
- リソースに接続されており、デジタルの情報が含まれる VMware データストアなどのデバイス
- タグ
- CloudForms Management Engine ユーザーが定義する記述名、またはリソースの分類に使用する仕組み
- テンプレート
- テンプレートとは、事前設定済みの仮想マシンのコピーのことで、オリジナルの仮想マシンのインストール済みソフトウェアおよびその設定に加えて、ハードウェア設定がキャプチャーされるように設計されています。
- 管理対象外の仮想マシン
- データストアにあるファイルで、VMDB で仮想マシンに関連付けられていないもの。これらのファイルは、CloudForms Management Engine サーバーに設定情報が含まれていないプロバイダーに登録されている可能性があります。この原因として、プロバイダーが検出されていないか、プロバイダーは検出されているがセキュリティー認証が提示されていないかが考えられます。
- 仮想マシン
- 物理マシンと同様に機能するシステムのソフトウェア実装。仮想マシンは、物理ホストまたは一連の物理ホストのハードウェアインフラストラクチャーを使用して、システムをスケーラブルかつオンデマンド形式でプロビジョニングします。
- 仮想管理データベース (VMDB)
- リソースやユーザーの情報、仮想エンタープライズの管理に必要な他の情報を保存するために CloudForms Management Engine アプライアンスが使用するデータベース
- 仮想サムネイル
- プロバイダーや仮想マシンなどのリソースを示す Web インターフェースの画像。リソースを一目で確認することができます。各仮想サムネイルは 4 つに分割されており、ソフトウェアや電源の状態などリソースに関する情報を提供します。
- ゾーン
- CloudForms Management Engine インフラストラクチャーは、フェールオーバーの設定やトラフィックの分離を行うゾーンに整理することができます。ゾーンは、環境をベースに作成することができます。たとえば、ゾーンは地理的場所、ネットワークの場所、または機能をベースにすることができます。初回起動字には、新規サーバーはデフォルトのゾーンに配置されます。
1.4. ヘルプとフィードバック
本ガイドに記載されている手順で問題が発生した場合には、Red Hat カスタマーポータル (http://access.redhat.com) をご利用ください。カスタマーポータルでは、以下のような機能を提供しています。
- Red Hat 製品に関する技術情報のナレッジベース記事の検索、閲覧
- Red Hat グローバルサポートサービス (GSS) へのサポートケース提出
- その他の製品ドキュメントの参照
Red Hat では、Red Hat のソフトウェアおよびテクノロジーに関するディスカッションの場として、数多くのメーリングリストをホストしています。一般公開されているメーリングリストの一覧は、https://www.redhat.com/mailman/listinfo に記載しています。各メーリングリストをクリックすると、そのメーリングリストをサブスクライブしたり、アーカイブを参照したりすることができます。
1.5. ドキュメントのフィードバック
本文に誤植を見つけられた場合や本文に関するご意見、ご提案がありましたら場合はぜひお知らせください。カスタマーポータルから GSS にバグ報告を提出してください。
バグ報告を提出される時には、マニュアルの識別子 デプロイメントプランニングガイド
を必ずご記入いただくようにお願いします。
本書を改善するためのご意見やご提案をお寄せいただく場合は、できるだけ具体的にご説明ください。また、エラーを発見された場合は、エラーの場所を特定する必要があるため、そのセクション番号と該当部分の前後の文章も含めてご報告いただくようお願いします。
Comments