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3.3. コマンドラインツールの使用
Red Hat Enterprise Linux でユーザーを管理する最も簡単な方法は、「ユーザー管理ツールの使用」 で説明のとおり ユーザー管理 アプリケーションを使用することです。しかし、コマンドラインツールを好む場合や X Window System がインストールされていない場合には、表3.1「ユーザーとグループを管理するためのコマンドラインユーティリティ」 に一覧表示されているコマンドラインユーティリティを使用することができます。
表3.1 ユーザーとグループを管理するためのコマンドラインユーティリティ
ユーティリティ | 詳細 |
---|---|
useradd , usermod , userdel | ユーザーアカウントを追加/修正/削除するための標準ユーティリティです。 |
groupadd , groupmod , groupdel | グループを追加/修正/削除するための標準ユーティリティです。 |
gpasswd | /etc/group 設定ファイルを管理するための標準ユーティリティです。 |
pwck , grpck | パスワード、グループ、関連シャドウファイルを検証するためのユーティリティです。 |
pwconv , pwunconv | 通常のパスワードをシャドウパスワードに変換するため、または逆にシャドウパスワードから通常のパスワードに変換するためのユーティリティです。 |
3.3.1. 新規ユーザーの追加
システムにユーザーを追加するには、
root
としてシェルプロンプトで以下を入力します:
useradd
[options] username
options は 表3.2「useradd のコマンドラインオプション」 で説明のとおり、コマンドラインのオプションです。
デフォルトでは、
useradd
コマンドはロックされたユーザーアカウントを作成します。アカウントのロックを解除するには、root
として以下のコマンドを実行して、パスワードを割り当てます:
passwd
username
オプションとして、パスワードエージングポリシーを設定することもできます。パスワードエージングを有効にする方法については、『Red Hat Enterprise Linux 6 Security Guide』 を参照してください。
表3.2 useradd のコマンドラインオプション
オプション | 詳細 |
---|---|
-c 'comment' | comment はあらゆる文字列と置換できます。このオプションは、通常ユーザーの氏名を指定するために使用されます。 |
-d home_directory | デフォルトの /home/username/ の代わりに使用するホームディレクトリです。 |
-e date | YYYY-MM-DD の形式でアカウントを無効にする日付です。 |
-f days | パスワードが失効してからアカウントが無効になるまでの日数です。0 を指定すると、パスワードが失効した直後にアカウントは無効になります。-1 を指定すると、パスワードが失効した後でもアカウントは無効になりません。 |
-g group_name | ユーザーのデフォルトグループ用のグループ名またはグループ番号です。グループはここで指定される以前から存在していなければなりません。 |
-G group_list | ユーザーがメンバーとなる追加 (デフォルト以外) のグループ名またはグループ番号の一覧で、カンマで区切られています。グループはここで指定される以前から存在していなければなりません。 |
-m | ホームディレクトリが存在しない場合は作成します。 |
-M | ホームディレクトリを作成しません。 |
-N | ユーザー用のユーザープライベートグループを作成しません。 |
-p password | crypt で暗号化されたパスワードです。 |
-r | UID が 500 より小さく、ホームディレクトリがないシステムアカウントを作成します。 |
-s | ユーザーのログインシェルです。デフォルトでは /bin/bash に設定されています。 |
-u uid | ユーザーのユーザー ID です。一意の番号で 499 より大きい数でなければなりません。 |
プロセスの説明
以下のステップは、シャドウパスワードが有効なシステム上で
useradd juan
コマンドを実行したときに発生する内容を解説したものです:
/etc/passwd
にjuan
の新しい行が作成されます:juan:x:501:501::/home/juan:/bin/bash
この行には以下の特徴があります。- ユーザー名
juan
で始まります。 - パスワードフィールドには
x
があり、システムがシャドウパスワードを使用していることを示しています。 - 499 より大きい数字の UID が作成されます。Red Hat Enterprise Linux では、500 より小さい数字の UID はシステム使用のために保有されています。これらはユーザー用には割り当てないことをお勧めします。
- 499 より大きい数字の GID が作成されます。Red Hat Enterprise Linux では、500 より小さい数字の GID はシステム使用のために保有されています。これらはユーザー用には割り当てないことをお勧めします。
- オプションの GECOS 情報は空白のままです。GECOS フィールドは、氏名や電話番号などユーザーの追加情報を提供するために使用されます。
juan
のホームディレクトリは/home/juan/
に設定されています。- デフォルトのシェルは
/bin/bash
に設定されています。
juan
用の新しい行が/etc/shadow
に作成されます:juan:!!:14798:0:99999:7:::
この行には以下の特徴があります。- ユーザー名
juan
で始まります。 - 2 つの感嘆符 (
!!
) が/etc/shadow
ファイルのパスワードフィールドに表示され、アカウントがロックされます。注記
暗号化されたパスワードが-p
フラグを使用して渡される場合、/etc/shadow
ファイル内のユーザー用の新しい行に置かれます。 - パスワードは有効期限なしに設定されています。
juan
というグループ用の新しい行が/etc/group
に作成されます:juan:x:501:
ユーザーと同じ名前のグループは、ユーザープライベートグループ と呼ばれます。ユーザープライベートグループの詳細については 「ユーザープライベートグループ」 を参照して下さい。/etc/group
に作成された行には、以下の特徴があります。- グループ名
juan
で始まります。 - パスワードフィールドに
x
が表示され、システムがシャドウグループパスワードを使用していることを示しています。 - GID は
/etc/passwd
内に表示されているユーザーjuan
の GID と一致します。
juan
というグループ用の新しい行が/etc/gshadow
に作成されます:juan:!::
この行には以下の特徴があります。- グループ名
juan
で始まります。 - 1 つの感嘆符 (
!
) が/etc/gshadow
ファイルのパスワードフィールドに表示され、グループがロックされます。 - その他のフィールドはすべて空白です。
- ユーザー
juan
用のディレクトリが/home/
ディレクトリ内に作成されます:~]#
ls -l /home
total 4 drwx------. 4 juan juan 4096 Mar 3 18:23 juanこのディレクトリは、ユーザーjuan
とグループjuan
が所有しています。ユーザーjuan
に のみ 読み取り、書き込み 及び 実行 の権限が与えられています。その他のパーミッションはすべて拒否されます。 /etc/skel/
ディレクトリ (デフォルトのユーザー設定を含む) 内のファイルが、新しい/home/juan/
ディレクトリにコピーされます:~]#
ls -la /home/juan
total 28 drwx------. 4 juan juan 4096 Mar 3 18:23 . drwxr-xr-x. 5 root root 4096 Mar 3 18:23 .. -rw-r--r--. 1 juan juan 18 Jun 22 2010 .bash_logout -rw-r--r--. 1 juan juan 176 Jun 22 2010 .bash_profile -rw-r--r--. 1 juan juan 124 Jun 22 2010 .bashrc drwxr-xr-x. 2 juan juan 4096 Jul 14 2010 .gnome2 drwxr-xr-x. 4 juan juan 4096 Nov 23 15:09 .mozilla
この時点で、
juan
と呼ばれるロックされたアカウントがシステム上に存在します。管理者は、これをアクティベートするには passwd
コマンドを使用してアカウントにパスワードを割り当てる必要があります。パスワードエージングのガイドラインを設定するというオプションもあります。