Red Hat Training

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Identity Management のインストール

Red Hat Enterprise Linux 8

IdM サーバーとクライアントのインストール方法

Red Hat Customer Content Services

概要

環境に応じて、Red Hat Identity Management (IdM) をインストールして DNS および認証局 (CA) サービスを提供することも、既存の DNS および CA インフラストラクチャーを使用するように IdM を設定することもできます。
IdM サーバー、レプリカ、およびクライアントを手動で、または Ansible Playbook を使用してインストールできます。さらに、キックスタートファイルを使用して、システムのインストール中にクライアントを IdM ドメインに自動的に参加させることができます。

多様性を受け入れるオープンソースの強化

Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ を参照してください。

Identity Management では、次のような用語の置き換えが計画されています。

  • ブラックリスト から ブロックリスト
  • ホワイトリスト から 許可リスト
  • スレーブ から セカンダリー
  • マスター という言葉は、文脈に応じて、より正確な言葉に置き換えられています。

    • IdM マスター から IdM サーバー
    • CA 更新マスター から CA 更新サーバー
    • CRL マスター から CRL パブリッシャーサーバー
    • マルチマスター から マルチサプライヤー

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第1章 このガイドの使い方

Identity Management (IdM) ドメインには、レプリカとも呼ばれる IdM サーバーと IdM クライアントが含まれます。IdM デプロイメントの インストールは常にプライマリー IdM サーバーのインストールから始まりますが、次のインストール手順の順序は対象のトポロジーによって異なります。たとえば、IdM クライアントをインストールする前または後に IdM レプリカをインストールできます。さらに、特定の IdM デプロイメントでは Active Directory との信頼 が必要ですが、そうでないものもあります。

パート I. Identity Management のインストール

第2章 IdM サーバーをインストールするためのシステムの準備

ここでは、Identity Managementt (IdM) サーバーのインストール要件を取り上げます。インストールの前に、システムがこれらの要件を満たしていることを確認してください。

2.1. 前提条件

  • ホストコンピューターに Identity Management (IdM) サーバーをインストールするには、root 特権が必要です。

2.2. ハードウェア推奨事項

ハードウェアでは、RAM の容量を適切に確保することが最も重要になります。システムに十分な RAM があるようにしてください。一般的な RAM の要件は次のとおりです。

  • 10,000 ユーザーおよび 100 グループには、最低 4 GB の RAM と 4 GB のスワップ領域を割り当てます。
  • 100,000 ユーザーおよび 50,000 グループには、最低 16 GB の RAM と 4 GB のスワップ領域を割り当てます。

大規模なデプロイメントでは、データのほとんどがキャッシュに保存されるため、ディスクスペースを増やすよりも RAM を増やす方が効果的です。通常、メモリーを増やすと、キャッシュ機能により、サイズが大きいデプロイメントでパフォーマンスが改善されます。

注記

基本的なユーザーエントリーまたは証明書のあるシンプルなホストエントリーのサイズは約 5 ~ 10 KB になります。

2.3. IdM のカスタム設定要件

DNS、Kerberos、Apache、Directory Server などのサービスのカスタム設定を行わずに、クリーンなシステムに Identity Managementt (IdM) をインストールします。

IdM サーバーのインストールは、システムファイルを上書きして、IdM ドメインを設定します。IdM は、元のシステムファイルを /var/lib/ipa/sysrestore/ にバックアップします。ライフサイクルの最後に Identity Management サーバーをアンインストールすると、このファイルが復元します。

IdM における IPv6 要件

IdM システムでは、カーネルで IPv6 プロトコルが有効になっている必要があり、localhost (::1) はそれを使用できます。IPv6 が無効になっていると、IdM サービスが使用する CLDAP プラグインが初期化に失敗します。

注記

ネットワーク上で IPv6 を有効にする必要はありません。必要に応じて、IPv6 アドレスを有効にせずに IPv6 スタックを有効にすることができます。

IdM における暗号化タイプのサポート

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、Advanced Encryption Standard (AES)、Camel、Data Encryption Standard (DES) などの暗号化タイプをサポートする Kerberos プロトコルのバージョン 5 を使用します。

サポート対象の暗号化タイプのリスト

IdM サーバーおよびクライアントの Kerberos ライブラリーは、より多くの暗号化タイプに対応している可能性がありますが、IdM Kerberos Distribution Center (KDC) は以下の暗号化タイプのみに対応します。

  • aes256-cts:normal
  • aes256-cts:special (デフォルト)
  • aes128-cts:normal
  • aes128-cts:special (デフォルト)
  • aes128-sha2:normal
  • aes128-sha2:special
  • aes256-sha2:normal
  • aes256-sha2:special
  • camellia128-cts-cmac:normal
  • camellia128-cts-cmac:special
  • camellia256-cts-cmac:normal
  • camellia256-cts-cmac:special

RC4 暗号化タイプがデフォルトで無効

以下の RC4 暗号化は、新しい暗号化タイプ AES-128 および AES-256 よりも安全ではないと見なされるため、RHEL 8 では非推奨となり、デフォルトで無効にされています。

  • arcfour-hmac:normal
  • arcfour-hmac:special

以前の Active Directory 環境と互換性を確保するために RC4 サポートを手動で有効にする方法は、AD および RHEL で一般的な暗号化タイプに対応 を参照してください。

DES および 3DES 暗号化のサポートが削除される

セキュリティー上の理由から、DES アルゴリズムへの対応は RHEL 7 では非推奨となりました。RHEL 8.3.0 で最近、Kerberos パッケージがリベースされ、RHEL 8 からシングル DES (DES) およびトリプル DES (3DES) 暗号化タイプのサポートが削除されました。

注記

標準の RHEL 8 IdM インストールでは、DES または 3DES 暗号化タイプはデフォルトでは使用されず、Kerberos のアップグレードによる影響はありません。

DES や 3DES 暗号化 のみ を使用するようにサービスまたはユーザーを手動で設定すると (レガシークライアントなど)、最新の Kerberos パッケージに更新した後にサービスが中断される可能性があります。

  • Kerberos 認証エラー
  • unknown enctype 暗号化エラー
  • DES で暗号化されたデータベースマスターキー (K/M) を使用する KDC が起動に失敗する

Red Hat では、お使いの環境で DES または 3DES 暗号化を使用しないことを推奨します。

注記

DES および 3DES 暗号化タイプは、ご利用環境で使用するように設定している場合に限り無効にする必要があります。

IdM でのシステム全体の暗号化ポリシーへの対応

IdM は、DEFAULT システム全体の暗号化ポリシーを使用します。このポリシーは、現在の脅威モデルに安全な設定を提供します。TLS プロトコルの 1.2 と 1.3、IKEv2 プロトコル、および SSH2 プロトコルが使用できます。RSA 鍵と Diffie-Hellman パラメーターは長さが 2048 ビット以上であれば許容されます。このポリシーでは、DES、3DES、RC4、DSA、TLS v1.0、およびその他の弱いアルゴリズムを使用できません。

注記

FUTURE システム全体の暗号化ポリシーの使用中は、IdM サーバーをインストールできません。IdM サーバーをインストールする場合は、DEFAULT システム全体の暗号化ポリシーを使用していることを確認してください。

2.4. FIPS コンプライアンス

RHEL 8.3.0 以降では、連邦情報処理規格 (FIPS) 140 モードが有効になっているシステムに、新しい IdM サーバーまたはレプリカをインストールできます。

IdM を FIPS モードでインストールするには、まずホストで FIPS モードを有効にしてから、IdM をインストールします。IdM インストールスクリプトは、FIPS が有効かどうかを検出し、IdM が FIPS 140 標準に準拠する暗号化タイプのみを使用するように設定します。

  • aes256-cts:normal
  • aes256-cts:special
  • aes128-cts:normal
  • aes128-cts:special
  • aes128-sha2:normal
  • aes128-sha2:special
  • aes256-sha2:normal
  • aes256-sha2:special

IdM 環境が FIPS に準拠するには、すべて の IdM レプリカで FIPS モードが有効になっている必要があります。

特にクライアントを IdM レプリカにプロモートする場合、Red Hat では IdM クライアントでも FIPS モードを有効にすることを推奨します。最終的には、管理者が FIPS 要件を満たす方法を判別する必要があります。Red Hat は FIPS 基準を強要しません。

FIPS 準拠の IdM への移行

既存の IdM インストールを非 FIPS 環境から FIPS 準拠のインストールに移行することはできません。これは技術的な問題ではなく、法的および規制上の制限です。

FIPS 準拠のシステムを運用するには、すべての暗号化キー素材を FIPS モードで作成する必要があります。さらに、暗号鍵マテリアルは、安全にラップされ、非 FIPS 環境でラップ解除されない限り、FIPS 環境から決して出てはなりません。

シナリオで FIPS 非準拠の IdM レルムから FIPS 準拠の IdM レルムへの移行が必要な場合は、次のことを行う必要があります。

  1. FIPS モードで新しい IdM レルムを作成します。
  2. すべてのキーマテリアルをブロックするフィルターを使用して、非 FIPS レルムから新しい FIPS モードレルムへのデータ移行を実行します。

移行フィルターは以下をブロックする必要があります。

  • KDC マスターキー、キータブ、および関連するすべての Kerberos キーマテリアル
  • ユーザーパスワード
  • CA、サービス、ユーザー証明書を含むすべての証明書
  • OTP トークン
  • SSH キーと指紋
  • DNSSEC KSK および ZSK
  • すべての Vault エントリー
  • AD 信頼関連のキーマテリアル

事実上、新しい FIPS インストールは別のインストールとなります。厳密なフィルタリングを行ったとしても、このような移行は FIPS 140 認定を通過できない可能性があります。FIPS 監査人がこの移行にフラグを立てる場合があります。

関連情報

2.5. FIPS モードが有効なフォレスト間の信頼のサポート

FIPS モードが有効な場合に Active Directory (AD) ドメインでフォレスト間の信頼を確立するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • RHEL 8.4.0 以降の IdM サーバーを使用する。
  • 信頼の設定時に、AD 管理アカウントで認証する必要がある。FIPS モードが有効な場合には、共有シークレットを使用して信頼を確立することはできません。
重要

RADIUS 認証は FIPS に準拠していません。RADIUS プロトコルは MD5 ハッシュ機能を使用してクライアントとサーバー間のパスワードを暗号化し、FIPS モードでは、OpenSSL は MD5 ダイジェストアルゴリズムの使用を無効にするためです。ただし、RADIUS サーバーが IdM サーバーと同じホストで実行されている場合は、How to configure FreeRADIUS authentication in FIPS mode で説明されている手順を実行して、問題を回避して MD5 を有効にすることができます。

関連情報

2.6. IdM のタイムサービス要件

以下のセクションでは、chronyd を使用して、IdM ホストを中央タイムソースと同期させる方法を説明します。

2.6.1. IdM で chronyd を同期に使用する方法

chronyd を使用して、ここで説明するように、IdM ホストを中央タイムソースと同期させることができます。

IdM の基礎となる認証メカニズムである Kerberos は、プロトコルの一部としてタイムスタンプを使用します。IdM クライアントのシステム時間が、KDC (Key Distribution Center) のシステム時間と比べて 5 分以上ずれると、Kerberos 認証に失敗します。

IdM インストールスクリプトは、IdM サーバーおよびクライアントが中央タイムソースと同期したままになるように、chronyd Network Time Protocol (NTP) クライアントソフトウェアを自動設定します。

IdM インストールコマンドに NTP オプションを指定しないと、インストーラーは、ネットワークの NTP サーバーを参照する _ntp._udp DNS サービス (SRV) レコードを検索し、その IP アドレスで chrony を設定します。_ntp._udp SRV レコードがない場合は、chronydchrony パッケージに同梱の設定を使用します。

注記

RHEL 8 では chronyd が優先されるため、ntpd は非推奨となっており、IdM サーバーは Network Time Protocol (NTP) サーバーとして設定されず、NTP クライアントとしてのみ設定されます。RHEL 7 の NTP サーバー の IdM サーバーロールも、RHEL 8 では非推奨になりました。

2.6.2. IdM インストールコマンドの NTP 設定オプションのリスト

chronyd を使用して、IdM ホストを中央タイムソースと同期させることができます。

IdM インストールコマンド (ipa-server-installipa-replica-installipa-client-install) のいずれかを指定して、設定時に chronyd クライアントソフトウェアを設定できます。

表2.1 IdM インストールコマンドの NTP 設定オプションのリスト

オプション動作

--ntp-server

これを使用して NTP サーバーを 1 つ指定します。複数回使用して、複数のサーバーを指定できます。

--ntp-pool

複数の NTP サーバーのプールを指定して、1 つのホスト名として解決する場合には、これを使用します。

-N, --no-ntp

chronyd の設定、起動、有効化はしないでください。

2.6.3. IdM が NTP タイムサーバーを参照できるようにする方法

この手順では、Network Time Protocol (NTP) タイムサーバーとの同期できるように、IdM で必要とされる設定があるかどうかを確認します。

前提条件

  • お使いの環境で NTP タイムサーバーを設定している。この例では、以前に設定したタイムサーバーのホスト名は ntpserver.example.com である。

手順

  1. 環境内で NTP サーバーの DNS サービス (SRV) レコード検索を実行します。

    [user@server ~]$ dig +short -t SRV _ntp._udp.example.com
    0 100 123 ntpserver.example.com.
  2. 以前の dig 検索でタイムサーバーが返されない場合は、ポート 123 でタイムサーバーを参照する _ntp._udp SRV レコードを追加します。このプロセスは、お使いの DNS ソリューションにより異なります。

検証手順

  • _ntp._udp SRV レコードの検索時に、DNS がポート 123 でタイムサーバーのエントリーが返されることを確認します。

    [user@server ~]$ dig +short -t SRV _ntp._udp.example.com
    0 100 123 ntpserver.example.com.

2.6.4. 関連情報

2.7. IdM のホスト名および DNS 要件

サーバーおよびレプリカシステムのホスト名と DNS 要件を以下に示します。また、システムが要件を満たしていることを確認する方法も説明します。

これらの要件は、統合 DNS のある Identity Management (IdM) サーバーおよび統合 DNS のないすべての Identity Management (IdM) サーバーに適用されます。

警告

DNS レコードは、稼働中の LDAP ディレクトリーサービス、Kerberos、Active Directory 統合など、ほぼすべての IdM ドメイン機能で必須となります。以下の点を確認し、十分注意してください。

  • テスト済みの機能する DNS サービスが利用可能である。
  • サービスが適切に設定されている。

この要件は、統合 DNS の 有無に関わらず、IdM サーバーに適用されます。

サーバーのホスト名の検証

ホスト名は、完全修飾ドメイン名 (例: server.idm.example.com) である必要があります。

重要

.company など、単一ラベルのドメイン名を使用しないでください。IdM ドメインは、トップレベルドメインと、1 つ以上のサブドメイン (example.comcompany.example.com など) で設定する必要があります。

完全修飾ドメイン名は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 数字、アルファベット文字、およびハイフン (-) のみが使用される有効な DNS 名である。ホスト名でアンダーライン (_) を使用すると DNS が正常に動作しません。
  • すべてが小文字である。大文字は使用できません。
  • ループバックアドレスに解決されない。127.0.0.1 ではなく、システムのパブリック IP アドレスに解決される必要があります。

ホスト名を検証するには、インストールするシステムで hostname ユーティリティーを使用します。

# hostname
server.idm.example.com

hostname の出力は、localhost または localhost6 以外である必要があります。

正引きおよび逆引きの DNS 設定の確認
  1. サーバーの IP アドレスを取得します。

    1. ip addr show コマンドを実行すると、IPv4 アドレスと IPv6 アドレスの両方が表示されます。以下の例では、スコープがグローバルであるため、対応する IPv6 アドレスは 2001:DB8::1111 となります。

      [root@server ~]# ip addr show
      ...
      2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP group default qlen 1000
      	link/ether 00:1a:4a:10:4e:33 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
      	inet 192.0.2.1/24 brd 192.0.2.255 scope global dynamic eth0
      		valid_lft 106694sec preferred_lft 106694sec
      	inet6 2001:DB8::1111/32 scope global dynamic
       		valid_lft 2591521sec preferred_lft 604321sec
      	inet6 fe80::56ee:75ff:fe2b:def6/64 scope link
      	       valid_lft forever preferred_lft forever
      ...
  2. dig ユーティリティーを使用して、正引き DNS 設定を確認します。

    1. dig +short server.idm.example.com A コマンドを実行します。返される IPv4 アドレスは、ip addr show により返される IP アドレスと一致する必要があります。

      [root@server ~]# dig +short server.idm.example.com A
      192.0.2.1
    2. dig +short server.idm.example.com AAAA コマンドを実行します。このコマンドに返されるアドレスは、ip addr show により返される IPv6 アドレスと一致する必要があります。

      [root@server ~]# dig +short server.idm.example.com AAAA
      2001:DB8::1111
      注記

      dig により AAAA レコードの出力が返されなくても、設定が間違っているわけではありません。出力されないのは、DNS にシステムの IPv6 アドレスが設定されていないためです。ネットワークで IPv6 プロトコルを使用する予定がない場合は、この状況でもインストールを続行できます。

  3. 逆引き DNS 設定 (PTR レコード) を確認します。dig ユーティリティーを使用し、IP アドレスを追加します。

    以下のコマンドで別のホスト名が表示されたり、ホスト名が表示されない場合、逆引き DNS 設定は正しくありません。

    1. dig +short -x IPv4_address コマンドを実行します。出力には、サーバーホスト名が表示されるはずです。以下に例を示します。

      [root@server ~]# dig +short -x 192.0.2.1
      server.idm.example.com
    2. 前の手順で実行した dig +short -x server.idm.example.com AAAA コマンドにより IPv6 アドレスが返された場合は、dig を使用して IPv6 アドレスのクエリーを実行します。出力には、サーバーホスト名が表示されるはずです。以下に例を示します。

      [root@server ~]# dig +short -x 2001:DB8::1111
      server.idm.example.com
      注記

      前の手順で dig +short server.idm.example.com AAAA コマンドにより IPv6 アドレスが返されなかった場合は、AAAA レコードのクエリーを実行しても、何も出力されません。この場合、これは正常な動作で、誤った設定を示すものではありません。

      警告

      逆引き DNS (PTR レコード) の検索が複数のホスト名を返すと、httpd、および IdM に関連付けられた他のソフトウェアで予期しない動作が表示される場合があります。Red Hat は、1 つの IP につき 1 つの PTR レコードを設定することを強く推奨します。

DNS フォワーダーの規格準拠の確認 (統合 DNS の場合のみ必要)

IdM DNS サーバーで使用するすべての DNS フォワーダーが EDNS0 (Extension Mechanisms for DNS) および DNSSEC (DNS Security Extensions) の規格に準拠していることを確認します。具体的には、フォワーダーごとに、次のコマンドの出力を確認します。

$ dig +dnssec @IP_address_of_the_DNS_forwarder . SOA

コマンドの出力には、以下の情報が含まれます。

  • 状態 - NOERROR
  • フラグ - ra
  • EDNS フラグ - do
  • ANSWER セクションには RRSIG レコードが必要です。

出力に上記のいずれかの項目がない場合は、使用している DNS フォワーダーのドキュメントに従い、EDNS0 と DNSSEC に対応し、ともに有効になっていることを確認してください。BIND サーバーの最新バージョンでは、dnssec-enable yes; オプションが /etc/named.conf ファイルに設定されている必要があります。

dig により生成された出力の例

;; ->>HEADER<<- opcode: QUERY, status: NOERROR, id: 48655
;; flags: qr rd ra ad; QUERY: 1, ANSWER: 2, AUTHORITY: 0, ADDITIONAL: 1

;; OPT PSEUDOSECTION:
; EDNS: version: 0, flags: do; udp: 4096

;; ANSWER SECTION:
. 31679 IN SOA a.root-servers.net. nstld.verisign-grs.com. 2015100701 1800 900 604800 86400
. 31679 IN RRSIG SOA 8 0 86400 20151017170000 20151007160000 62530 . GNVz7SQs [...]
/etc/hosts ファイルの確認

/etc/hosts ファイルが以下のいずれかの条件を満たすことを確認します。

  • このファイルには、ホストのエントリーが含まれません。ホストの IPv4 および IPv6 の localhost エントリーリストのみを表示します。
  • このファイルには、ホストのエントリーが含まれ、ファイルには以下の条件がすべて満たされます。

    • 最初の 2 つのエントリーは、IPv4 および IPv6 の localhost エントリーです。
    • その次のエントリーは、IdM サーバーの IPv4 アドレスとホスト名を指定します。
    • IdM サーバーの FQDN は、IdM サーバーの省略名の前に指定します。
    • IdM サーバーのホスト名は、localhost エントリーには含まれません。

    以下は、適切に設定された /etc/hosts ファイルの例になります。

127.0.0.1   localhost localhost.localdomain \
localhost4 localhost4.localdomain4
::1         localhost localhost.localdomain \
localhost6 localhost6.localdomain6
192.0.2.1	server.idm.example.com	server
2001:DB8::1111	server.idm.example.com	server

2.8. IdM のポート要件

Identity Management (IdM) は、複数の ポート を使用して、そのサービスと対話します。IdM サーバーが動作するには、このようなポートを開いて IdM サーバーへの着信接続に利用できるようにする必要があります。別のサービスで現在使用されているポートや、ファイアウォール によりブロックされているポートは使用しないでください。

表2.2 IdM ポート

サービスポートプロトコル

HTTP/HTTPS

80、443

TCP

LDAP/LDAPS

389、636

TCP

Kerberos

88、464

TCP および UDP

DNS

53

TCP および UDP (任意)

注記

IdM はポート 80 および 389 を使用します。これは、以下のような安全なプラクティスです。

  • IdM は通常、ポート 80 に到着するリクエストをポート 443 にリダイレクトします。ポート 80 (HTTP) は、Online Certificate Status Protocol (OCSP) 応答および証明書失効リスト (CRL) の提供にのみ使用されます。いずれもデジタル署名されているため、中間者攻撃に対してセキュリティーが保護されます。
  • ポート 389 (LDAP) は、暗号化に STARTLS および Generic Security Services API (GSSAPI) を使用します。

さらに、内部で使用されるポート 8080、8443、および 749 が未使用である必要があります。これらのポートは開かず、ファイアウォールによりブロックされたままにしてください。

表2.3 firewalld サービス

サービス名詳細は、次を参照してください。

freeipa-ldap

/usr/lib/firewalld/services/freeipa-ldap.xml

freeipa-ldaps

/usr/lib/firewalld/services/freeipa-ldaps.xml

dns

/usr/lib/firewalld/services/dns.xml

2.9. IdM で必要なポートの開放

手順

  1. firewalld サービスが実行されていることを確認します。

    • firewalld が実行中であることを確認するには、次のコマンドを実行します。

      # systemctl status firewalld.service
    • firewalld を起動し、システム起動時に自動的に起動するように設定するには、次のコマンドを実行します。

      # systemctl start firewalld.service
      # systemctl enable firewalld.service
  2. firewall-cmd ユーティリティーを使用して必要なポートを開きます。以下のいずれかのオプションを選択します。

    1. firewall-cmd --add-port コマンドを使用して個別のポートをファイアウォールに追加します。たとえば、デフォルトゾーンでポートを開くには、次のコマンドを実行します。

      # firewall-cmd --permanent --add-port={80/tcp,443/tcp,389/tcp,636/tcp,88/tcp,88/udp,464/tcp,464/udp,53/tcp,53/udp}
    2. firewall-cmd --add-service コマンドを使用して、firewalld サービスをファイアウォールに追加します。たとえば、デフォルトゾーンでポートを開くには、次のコマンドを実行します。

      # firewall-cmd --permanent --add-service={freeipa-4,dns}

      firewall-cmd を使用してシステムでポートを開く方法は firewall-cmd(1) の man ページを参照してください。

  3. firewall-cmd 設定を再ロードして、変更が即座に反映されるようにします。

    # firewall-cmd --reload

    実稼働システムで firewalld を再ロードすると、DNS の接続がタイムアウトになる可能性があることに注意してください。必要な場合は、以下の例のように firewall-cmd コマンドで --runtime-to-permanent オプションを指定して、タイムアウトが発生しないようにし、変更を永続化します。

    # firewall-cmd --runtime-to-permanent
  4. オプション:ポートが現在利用可能であるかを確認するには、nc ユーティリティー、telnet ユーティリティー、または nmap ユーティリティーを使用して、ポートへの接続またはポートスキャンの実行を行います。
注記

さらに、着信および送信トラフィックの両方でネットワークベースのファイアウォールを開く必要があることに注意してください。

2.10. IdM サーバーに必要なパッケージのインストール

RHEL 8 では、Identity Management (IdM) サーバーのインストールに必要なパッケージはモジュールとして同梱されています。IdM サーバーモジュールストリームは DL1 ストリームと呼ばれ、このストリームからパッケージをダウンロードする前に、このストリームを有効にする必要があります。以下の手順は、IdM の環境設定に必要なパッケージのダウンロード方法を示しています。

前提条件

  • RHEL システムを新しくインストールしている。
  • 必要なリポジトリーを利用できるようにしている。

    RHSM を使用して特定のリポジトリーを有効または無効にする方法は、Red Hat Subscription Manager でオプションの設定 を参照してください。

    • RHEL システムがクラウドで実行している場合は、登録を省略します。必要なリポジトリーは、Red Hat Update Infrastructure (RHUI) から入手できます。
  • IdM モジュールストリームを有効にしていない。

手順

  1. idm:DL1 ストリームを有効にします。

    # yum module enable idm:DL1
  2. idm:DL1 ストリーム経由で配信される RPM に切り替えます。

    # yum distro-sync
  3. IdM の要件に応じて、以下のいずれかのオプションを選択します。

    • 統合 DNS のない IdM サーバーのインストールに必要なパッケージをダウンロードします。

      # yum module install idm:DL1/server
    • 統合 DNS のある IdM サーバーのインストールに必要なパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

      # yum module install idm:DL1/dns
    • Active Directory と信頼関係のある IdM サーバーのインストールに必要なパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

      # yum module install idm:DL1/adtrust
    • adtrust プロファイルや dns プロファイルからパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

      # yum module install idm:DL1/{dns,adtrust}
    • IdM クライアントのインストールに必要なパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

      # yum module install idm:DL1/client
重要

別のストリームが有効になっていて、そのストリームからパッケージをダウンロードしたあとに、新しいモジュールストリームに切り替える場合は、インストール済みの関連コンテンツをすべて明示的に削除し、現在のモジュールストリームを無効にしてから、新しいモジュールストリームを有効にする必要があります。現在のストリームを無効にせずに新しいストリームを有効にしようとすると、エラーが発生します。続行方法の詳細は 後続のストリームへの切り替え を参照してください。

警告

モジュールからパッケージを個別にインストールすることは可能ですが、そのモジュールの API 外のパッケージをインストールすると、Red Hat のサポート範囲は、そのモジュールに関連する場合に制限されます。たとえば、bind-dyndb-ldap をリポジトリーから直接インストールして、カスタムの 389 Directory Server セットアップで使用する場合に発生した問題は、IdM でも発生する場合を除きサポートされません。

2.11. IdM インストール用の正しいファイルモード作成マスクの設定

Identity Management (IdM) のインストールプロセスでは、root アカウントのファイルモード作成マスク (umask) が 0022 に設定されている必要があります。これにより、root 以外のユーザーがインストール中に作成されたファイルを読み取ることができます。別の umask が設定されている場合は、IdM サーバーをインストールすると警告が表示されます。インストールを続行すると、サーバーの一部の機能が正しく実行されません。たとえば、このサーバーから IdM レプリカをインストールすることはできません。インストール後、umask を元の値に戻すことができます。

前提条件

  • root 権限があります。

手順

  1. (オプション) 現在の umask を表示します。

    # umask
    0027
  2. umask0022 に設定します。

    # umask 0022
  3. (オプション) IdM のインストールが完了したら、umask を元の値に戻します。

    # umask 0027

2.12. fapolicyd ルールが IdM インストールおよび操作をブロックしないようにする

RHEL ホストで fapolicyd ソフトウェアフレームワークを使用してユーザー定義のポリシーに基づいてアプリケーションの実行を制御する場合、Identity Management (IdM)サーバーのインストールに失敗する可能性があります。インストールおよび操作が正常に完了するには Java プログラムが必要になるため、Java および Java クラスが fapolicyd ルールによってブロックされていないことを確認してください。

詳細は、fapolicy restrictions causing IdM installation failures KCS を参照してください。

2.13. IdM インストールコマンドのオプション

ipa-server-installipa-replica-installipa-dns-installipa-ca-install などのコマンドには、対話型インストールに関する追加情報の確認に使用できる数多くのオプションがあります。これらのオプションを使用して、無人インストールのスクリプトを作成することもできます。

以下の表は、異なるコンポーネントで最も一般的なオプションの一部を示しています。特定のコンポーネントのオプションは、複数のコマンド間で共有されます。たとえば、ipa-ca-install コマンドおよび ipa-server-install コマンドの両方で --ca-subject オプションを使用できます。

オプションの完全なリストについては、ipa-server-install (1)ipa-replica-install (1)ipa-dns-install (1)、および ipa-ca-install (1) の man ページを参照してください。

表2.4 一般的なオプション: ipa-server-install および ipa-replica-installで利用できます。

引数説明

-d--debug

詳細な出力のためにデバッグロギングを有効にします。

-U--unattended

ユーザー入力を要求しない無人インストールセッションを有効にします。

--hostname=server.idm.example.com

IdM サーバーマシンの完全修飾ドメイン名。数字、小文字のアルファベット、およびハイフン (-) のみが使用できます。

--ip-address 127.0.0.1

サーバーの IP アドレスを指定します。このオプションでは、ローカルインターフェイスに関連付けられている IP アドレスのみを使用できます。

--dirsrv-config-file <LDIF_file_name>

ディレクトリーサーバーインスタンスの設定を変更するのに使用する LDIF ファイルへのパス。

-n example.com

IdM ドメインに使用する LDAP サーバードメインの名前。これは、通常 IdM サーバーのホスト名に基づいています。

-p <directory_manager_password>

LDAP サービス用のスーパーユーザーの cn=Directory Manager のパスワード。

-a <ipa_admin_password>

Kerberos レルムに対して認証する admin IdM 管理者アカウントのパスワード。ipa-replica-install の場合は、代わりに -w を使用します。

-r <KERBEROS_REALM_NAME>

EXAMPLE.COM など、IdM ドメイン用に作成する Kerberos レルムの名前を大文字で入力します。ipa-replica-install では、既存の IdM デプロイメントの Kerberos レルムの名前を指定します。

--setup-dns

IdM ドメイン内に DNS サービスを設定するように、インストールスクリプトに指示します。

--setup-ca

このレプリカに CA をインストールして設定します。CA が設定されていないと、証明書操作は CA がインストールされている別のレプリカに転送されます。ipa-server-install の場合、CA はデフォルトでインストールされ、このオプションを使用する必要はありません。

表2.5 CA オプション: ipa-ca-install および ipa-server-installで利用できます。

引数説明

--ca-subject=<SUBJECT>

CA 証明書のサブジェクト識別名を指定します (デフォルト:CN=Certificate Authority,O=REALM.NAME)。相対識別名 (RDN) は LDAP 順で、最も具体的な RDN が最初に使用されます。

--subject-base=<SUBJECT>

IdM によって発行される証明書のサブジェクトベースを指定します (デフォルト O=REALM.NAME)。相対識別名 (RDN) は LDAP 順で、最も具体的な RDN が最初に使用されます。

--external-ca

外部 CA によって署名される証明書署名要求を生成します。

--ca-signing-algorithm=<ALGORITHM>

IdM CA 証明書の署名アルゴリズムを指定します。使用できる値は SHA1withRSA、SHA256withRSA、SHA512withRSA です。デフォルトは SHA256withRSA です。外部 CA がデフォルトの署名アルゴリズムをサポートしていない場合は、--external-ca でこのオプションを使用します。

表2.6 DNS オプション: ipa-dns-install、または --setup-dnsを使用する場合は ipa-server-install および ipa-replica-install で利用できます。

引数説明

--forwarder=192.0.2.1

DNS サービスで使用する DNS フォワーダーを指定します。複数のフォワーダーを指定するには、このオプションを複数回使用します。

--no-forwarders

フォワーダーではなく DNS サービスを使用するルートサーバーを使用します。

--no-reverse

DNS ドメインの設定時に、逆引き DNS ゾーンが作成されないようにします。逆引き DNS ゾーンがすでに設定されている場合は、既存の逆引き DNS ゾーンが使用されます。

このオプションを使用しない場合、デフォルト値は true になります。これにより、インストールスクリプトで逆引き DNS を設定するように指示します。

関連情報

  • ipa-server-install(1) の man ページ
  • ipa-replica-install(1) の man ページ
  • ipa-dns-install (1) の man ページ
  • ipa-ca-install (1) の man ページ

第3章 IdM サーバーのインストール: 統合 DNS と統合 CA を root CA として使用する場合

統合 DNS のある新しい Identity Management (IdM) サーバーをインストールすると、次のような利点があります。

  • ネイティブの IdM ツールを使用すると、メンテナンスおよび DNS レコードの管理のほとんどを自動化できます。たとえば、DNS SRV レコードは、セットアップ中に自動的に作成され、その後は自動的に更新されます。
  • IdM サーバーのインストール時にグローバルフォワーダーを設定すると、インターネットとの安定した接続を確立できます。グローバルフォワーダーは、Active Directory との信頼関係にも便利です。
  • IdM ドメインからのメールが、IdM ドメイン外のメールサーバーによってスパムと見なされないように、DNS 逆ゾーンを設定できます。

統合 DNS のある IdM のインストールにはいくつかの制限があります。

  • IdM DNS は、一般用途の DNS サーバーとして使用することは想定されていません。高度な DNS 機能の一部はサポートされていません。詳細は、IdM サーバーで利用可能な DNS サービスを 参照してください。

本章では、認証局 (CA) をルート CA として新しい IdM サーバーをインストールする方法を説明します。

注記

ipa-server-install コマンドのデフォルト設定は、統合 CA をルート CA とします。--external-ca--ca-less が指定された場合など、CA オプションがない場合、IdM サーバーは統合 CA とインストールされます。

3.1. 対話型インストール

ipa-server-install ユーティリティーを使用して対話型インストールを実行している間、レルム、管理者のパスワード、Directory Manager のパスワードなど、システムの基本設定を指定するように求められます。

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

手順

  1. ipa-server-install ユーティリティーを実行します。

    # ipa-server-install
  2. スクリプトにより、統合 DNS サービスの設定が求められます。yes を入力します。

    Do you want to configure integrated DNS (BIND)? [no]: yes
  3. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      Server host name [server.idm.example.com]:
      Please confirm the domain name [idm.example.com]:
      Please provide a realm name [IDM.EXAMPLE.COM]:
      警告

      名前は慎重に指定してください。インストール完了後に変更することはできません。

  4. Directory Server のスーパーユーザー (cn=Directory Manager) のパスワードと、Identity Management (IdM) の管理者システムユーザーアカウント (admin) のパスワードを入力します。

    Directory Manager password:
    IPA admin password:
  5. スクリプトにより、サーバーごとの DNS フォワーダー設定のプロンプトが表示されます。

    Do you want to configure DNS forwarders? [yes]:
    • サーバーごとの DNS フォワーダーを設定するには、yes を入力して表示されたコマンドラインの指示に従います。インストールプロセスにより、IdM LDAP にフォワーダーの IP アドレスが追加されます。

      • フォワードポリシーのデフォルト設定は、 ipa-dns-install(1) の man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
    • DNS 転送を使用しない場合は、no と入力します。

      DNS フォワーダーがないと、IdM ドメインのホストは、インフラストラクチャー内にある他の内部 DNS ドメインから名前を解決できません。ホストは、DNS クエリーを解決するためにパブリック DNS サーバーでのみ残ります。

  6. そのサーバーと関連する IP アドレスの DNS 逆引き (PTR) レコードを設定する必要性を確認するスクリプトプロンプトが出されます。

    Do you want to search for missing reverse zones? [yes]:

    検索を実行して欠落している逆引きゾーンが見つかると、PTR レコードの逆引きゾーンを作成するかどうかが尋ねられます。

    Do you want to create reverse zone for IP 192.0.2.1 [yes]:
    Please specify the reverse zone name [2.0.192.in-addr.arpa.]:
    Using reverse zone(s) 2.0.192.in-addr.arpa.
    注記

    オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

  7. サーバー設定をする場合は、yes と入力します。

    Continue to configure the system with these values? [no]: yes
  8. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  9. インストールスクリプトが完了したら、次の方法で DNS レコードを更新します。

    1. 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

      重要

      IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

    2. タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。

3.2. 非対話型インストール

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

手順

  1. オプションで必要な情報をすべて指定して、ipa-server-install ユーティリティーを実行します。非対話型インストールで最低限必要なオプションは次のとおりです。

    • --realm - Kerberos レルム名を指定します。
    • --ds-password - Directory Server のスーパーユーザーである Directory Manager (DM) のパスワードを指定します。
    • --admin-password - Identity Management (IdM) の管理者である admin のパスワードを指定します。
    • --unattended - インストールプロセスでホスト名およびドメイン名のデフォルトオプションを選択するようにします。

    統合 DNS のあるサーバーをインストールする場合は、以下のオプションも追加します。

    • --setup-dns - 統合 DNS 名を設定します。
    • --forwarder または --no-forwarders - DNS フォワーダーを設定するかを指定します。
    • --auto-reverse または --no-reverse - IdM DNS で作成する必要がある逆引き DNS ゾーンの自動検出を設定するかどうかを指定します。

    以下に例を示します。

    # ipa-server-install --realm IDM.EXAMPLE.COM --ds-password DM_password --admin-password admin_password --unattended --setup-dns --forwarder 192.0.2.1 --no-reverse
  2. インストールスクリプトが完了したら、次の方法で DNS レコードを更新します。

    1. 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

      重要

      IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

    2. タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。

関連情報

  • ipa-server-install で使用できるオプションの完全リストを表示するには、ipa-server-install --help コマンドを実行します。

第4章 IdM サーバーのインストール: 統合 DNS と外部 CA を root CA として使用する場合

統合 DNS のある新しい Identity Management (IdM) サーバーをインストールすると、次のような利点があります。

  • ネイティブの IdM ツールを使用すると、メンテナンスおよび DNS レコードの管理のほとんどを自動化できます。たとえば、DNS SRV レコードは、セットアップ中に自動的に作成され、その後は自動的に更新されます。
  • IdM サーバーのインストール時にグローバルフォワーダーを設定すると、インターネットとの安定した接続を確立できます。グローバルフォワーダーは、Active Directory との信頼関係にも便利です。
  • IdM ドメインからのメールが、IdM ドメイン外のメールサーバーによってスパムと見なされないように、DNS 逆ゾーンを設定できます。

統合 DNS のある IdM のインストールにはいくつかの制限があります。

  • IdM DNS は、一般用途の DNS サーバーとして使用することは想定されていません。高度な DNS 機能の一部はサポートされていません。詳細は、IdM サーバーで利用可能な DNS サービスを 参照してください。

本章では、外部の認証局 (CA) をルート CA として新しい IdM サーバーをインストールする方法を説明します。

4.1. 対話型インストール

ipa-server-install ユーティリティーを使用して対話型インストールを実行している間、レルム、管理者のパスワード、Directory Manager のパスワードなど、システムの基本設定を指定するように求められます。

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

以下の手順に従って、サーバーをインストールします。

  • 統合 DNS のあるサーバー
  • 外部認証局 (CA) をルート CA とするサーバー

前提条件

  • --external-ca-type オプションで指定する外部 CA のタイプを決定している。詳細は、ipa-server-install (1) の man ページを参照すること。
  • Microsoft 証明書サービス認証局 (MS CS CA) を外部 CA として使用している場合は、--external-ca-profile オプションで指定する証明書プロファイルまたはテンプレートを決定している。デフォルトでは、SubCA テンプレートが使用される。

    --external-ca-type および --external-ca-profile オプションの詳細は、ルート CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に使用されるオプション を参照してください。

手順

  1. --external-ca オプションを使用して ipa-server-install ユーティリティーを実行します。

    # ipa-server-install --external-ca
    • Microsoft 証明書サービス (MS CS) CA を使用している場合は、--external-ca-type オプションと、任意で --external-ca-profile オプションを使用します。

      [root@server ~]# ipa-server-install --external-ca --external-ca-type=ms-cs --external-ca-profile=<oid>/<name>/default
    • MS CS を使用して IdM CA の署名証明書を生成していない場合は、他のオプションは必要ありません。

      # ipa-server-install --external-ca
  2. スクリプトにより、統合 DNS サービスの設定が求められます。yes または no を入力します。この手順では、統合 DNS のあるサーバーをインストールします。

    Do you want to configure integrated DNS (BIND)? [no]: yes
    注記

    統合 DNS のないサーバーをインストールする場合は、以下の手順にある DNS 設定のプロンプトが表示されません。DNS のないサーバーをインストールする手順の詳細は、6章IdM サーバーのインストール: 統合 DNS がなく統合 CA が root CA としてある場合 を参照してください。

  3. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      Server host name [server.idm.example.com]:
      Please confirm the domain name [idm.example.com]:
      Please provide a realm name [IDM.EXAMPLE.COM]:
      警告

      名前は慎重に指定してください。インストール完了後に変更することはできません。

  4. Directory Server のスーパーユーザー (cn=Directory Manager) のパスワードと、Identity Management (IdM) の管理者システムユーザーアカウント (admin) のパスワードを入力します。

    Directory Manager password:
    IPA admin password:
  5. スクリプトにより、サーバーごとの DNS フォワーダー設定のプロンプトが表示されます。

    Do you want to configure DNS forwarders? [yes]:
    • サーバーごとの DNS フォワーダーを設定するには、yes を入力して表示されたコマンドラインの指示に従います。インストールプロセスにより、IdM LDAP にフォワーダーの IP アドレスが追加されます。

      • フォワードポリシーのデフォルト設定は、 ipa-dns-install(1) の man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
    • DNS 転送を使用しない場合は、no と入力します。

      DNS フォワーダーがないと、IdM ドメインのホストは、インフラストラクチャー内にある他の内部 DNS ドメインから名前を解決できません。ホストは、DNS クエリーを解決するためにパブリック DNS サーバーでのみ残ります。

  6. そのサーバーと関連する IP アドレスの DNS 逆引き (PTR) レコードを設定する必要性を確認するスクリプトプロンプトが出されます。

    Do you want to search for missing reverse zones? [yes]:

    検索を実行して欠落している逆引きゾーンが見つかると、PTR レコードの逆引きゾーンを作成するかどうかが尋ねられます。

    Do you want to create reverse zone for IP 192.0.2.1 [yes]:
    Please specify the reverse zone name [2.0.192.in-addr.arpa.]:
    Using reverse zone(s) 2.0.192.in-addr.arpa.
    注記

    オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

  7. サーバー設定をする場合は、yes と入力します。

    Continue to configure the system with these values? [no]: yes
  8. Certificate System インスタンスの設定時、このユーティリティーが証明書署名要求 (CSR) の場所 (/root/ipa.csr) を出力します。

    ...
    
    Configuring certificate server (pki-tomcatd): Estimated time 3 minutes 30 seconds
      [1/8]: creating certificate server user
      [2/8]: configuring certificate server instance
    The next step is to get /root/ipa.csr signed by your CA and re-run /sbin/ipa-server-install as:
    /sbin/ipa-server-install --external-cert-file=/path/to/signed_certificate --external-cert-file=/path/to/external_ca_certificate

    この場合は、以下を行います。

    1. /root/ipa.csr にある CSR を外部 CA に提出します。このプロセスは、外部 CA として使用するサービスにより異なります。
    2. 発行した証明書と、Base64 エンコードされたブロブ (PEM ファイルか Windows CA からの Base_64 証明書) で CA を発行する CA 証明書チェーンを取得します。繰り返しになりますが、プロセスは各証明書サービスによって異なります。通常は Web ページか通知メールにダウンロードリンクがあり、管理者が必要なすべての証明書をダウンロードできるようになっています。

      重要

      CA 証明書のみではなく、CA 用の完全な証明書チェーンを取得してください。

    3. 新たに発行された CA 証明書と CA チェーンファイルの場所と名前を指定して ipa-server-install を再度実行します。以下に例を示します。

      # ipa-server-install --external-cert-file=/tmp/servercert20170601.pem --external-cert-file=/tmp/cacert.pem
  9. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  10. インストールスクリプトが完了したら、次の方法で DNS レコードを更新します。

    1. 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

      重要

      IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

    2. タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。
注記

ipa-server-install --external-ca コマンドは、次のエラーにより失敗する場合があります。

ipa         : CRITICAL failed to configure ca instance Command '/usr/sbin/pkispawn -s CA -f /tmp/configuration_file' returned non-zero exit status 1
Configuration of CA failed

この失敗は、*_proxy 環境変数が設定されていると発生します。問題の解決方法は、トラブルシューティング: 外部 CA インストールの失敗 を参照してください。

4.2. トラブルシューティング: 外部 CA インストールの失敗

ipa-server-install --external-ca コマンドが、次のエラーにより失敗します。

ipa         : CRITICAL failed to configure ca instance Command '/usr/sbin/pkispawn -s CA -f /tmp/configuration_file' returned non-zero exit status 1
Configuration of CA failed

env|grep proxy を実行すると、以下のような変数が表示されます。

# env|grep proxy
http_proxy=http://example.com:8080
ftp_proxy=http://example.com:8080
https_proxy=http://example.com:8080

エラー内容:

*_proxy 環境変数が原因でサーバーをインストールできません。

解決方法:

  1. 次のシェルスクリプトを使用して *_proxy 環境変数の設定を解除します。

    # for i in ftp http https; do unset ${i}_proxy; done
  2. pkidestroy ユーティリティーを実行して、インストールに失敗した認証局 (CA) サブシステムを削除します。

    # pkidestroy -s CA -i pki-tomcat; rm -rf /var/log/pki/pki-tomcat /etc/sysconfig/pki-tomcat /etc/sysconfig/pki/tomcat/pki-tomcat /var/lib/pki/pki-tomcat /etc/pki/pki-tomcat /root/ipa.csr
  3. インストールに失敗した Identity Management (IdM) サーバーを削除します。

    # ipa-server-install --uninstall
  4. ipa-server-install --external-ca を再度実行します。

第5章 IdM サーバーのインストール: 統合 DNS があり外部 CA がない場合

統合 DNS のある新しい Identity Management (IdM) サーバーをインストールすると、次のような利点があります。

  • ネイティブの IdM ツールを使用すると、メンテナンスおよび DNS レコードの管理のほとんどを自動化できます。たとえば、DNS SRV レコードは、セットアップ中に自動的に作成され、その後は自動的に更新されます。
  • IdM サーバーのインストール時にグローバルフォワーダーを設定すると、インターネットとの安定した接続を確立できます。グローバルフォワーダーは、Active Directory との信頼関係にも便利です。
  • IdM ドメインからのメールが、IdM ドメイン外のメールサーバーによってスパムと見なされないように、DNS 逆ゾーンを設定できます。

統合 DNS のある IdM のインストールにはいくつかの制限があります。

  • IdM DNS は、一般用途の DNS サーバーとして使用することは想定されていません。高度な DNS 機能の一部はサポートされていません。詳細は、IdM サーバーで利用可能な DNS サービスを 参照してください。

本章では、認証局 (CA) がない場合に新しい IdMt サーバーをインストールする方法を説明します。

5.1. CA なしで IdM サーバーをインストールするために必要な証明書

認証局(CA)なしで Identity Management (IdM) サーバーをインストールするために必要な証明書を提供する必要があります。説明されているコマンドラインオプションを使用すると、これらの証明書を ipa-server-install ユーティリティーに提供できます。

重要

インポートした証明書ファイルには、LDAP サーバーおよび Apache サーバーの証明書を発行した CA の完全な証明書チェーンが含まれている必要があるため、自己署名のサードパーティーサーバー証明書を使用してサーバーまたはレプリカをインストールすることはできません。

LDAP サーバー証明書および秘密鍵
  • --dirsrv-cert-file - LDAP サーバー証明書の証明書ファイルおよび秘密鍵ファイルを提供します。
  • --dirsrv-pin - --dirsrv-cert-file に指定されたファイルにある秘密鍵にアクセスするパスワードを提供します。
Apache サーバー証明書および秘密鍵
  • --http-cert-file - Apache サーバー証明書の証明書および秘密鍵ファイルを提供します。
  • --http-pin - --http-cert-file に指定したファイルにある秘密鍵にアクセスするパスワードを提供します。
LDAP および Apache のサーバー証明書を発行した CA の完全な CA 証明書チェーン
  • --dirsrv-cert-file および --http-cert-file - 完全な CA 証明書チェーンまたはその一部が含まれる証明書ファイルを提供します。

以下の形式の --dirsrv-cert-file オプションおよび --http-cert-file オプションを指定して、ファイルを指定できます。

  • PEM (Privacy-Enhanced Mail) がエンコードした証明書 (RFC 7468)。Identity Management インストーラーは、連結した PEM エンコードオブジェクトを受け付けることに注意してください。
  • 識別名エンコーディングルール (DER)
  • PKCS #7 証明書チェーンオブジェクト
  • PKCS #8 秘密鍵オブジェクト
  • PKCS #12 アーカイブ

--dirsrv-cert-file オプションおよび --http-cert-file オプションを複数回指定して、複数のファイルを指定できます。

完全な CA 証明書チェーンを提供する証明書ファイル (一部の環境では必要ありません)
  • --ca-cert-file - LDAP、Apache Server、および Kerberos KDC の証明書を発行した CA の CA 証明書が含まれるファイル。このオプションは、他のオプションにより提供される証明書ファイルに CA 証明書が存在しない場合に使用します。

--ca-cert-file を使用して提供されるファイルと、--dirsrv-cert-file--http-cert-file を使用して提供されるファイルには、LDAP および Apache のサーバー証明書を発行した CA の完全 CA 証明書チェーンが含まれる必要があります。

Kerberos 鍵配布センター (KDC) の PKINIT 証明書および秘密鍵
  • PKINIT 証明書がある場合は、次の 2 つのオプションを使用します。

    • --pkinit-cert-file - Kerberos KDC SSL の証明書および秘密鍵を提供します。
    • --pkinit-pin - --pkinit-cert-file に指定されたファイルにある Kerberos KDC の秘密鍵にアクセスするパスワードを提供します。
  • PKINIT 証明書がなく、自己署名証明書を使用してローカル KDC で IdM サーバーを設定する場合は、次のオプションを使用します。

    • --no-pkinit - pkinit 設定手順を無効にします。

関連情報

  • このオプションで使用できる証明書ファイル形式に関する詳細は、ipa-server-install(1) の man ページを参照すること。
  • RHEL IdM PKINIT 証明書の作成に必要な PKINIT 拡張機能の詳細は、RHEL IdM PKINIT KDC 証明書と拡張機能 を参照すること。

5.2. 対話型インストール

ipa-server-install ユーティリティーを使用して対話型インストールを実行している間、レルム、管理者のパスワード、Directory Manager のパスワードなど、システムの基本設定を指定するように求められます。

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

手順

  1. ipa-server-install ユーティリティーを実行し、必要な証明書をすべて提供します。以下に例を示します。

    [root@server ~]# ipa-server-install \
        --http-cert-file /tmp/server.crt \
        --http-cert-file /tmp/server.key \
        --http-pin secret \
        --dirsrv-cert-file /tmp/server.crt \
        --dirsrv-cert-file /tmp/server.key \
        --dirsrv-pin secret \
        --ca-cert-file ca.crt

    提供される証明書の詳細は、CA なしで IdM サーバーをインストールするために必要な証明書 を参照してください。

  2. スクリプトにより、統合 DNS サービスの設定が求められます。yes または no を入力します。この手順では、統合 DNS のあるサーバーをインストールします。

    Do you want to configure integrated DNS (BIND)? [no]: yes
    注記

    統合 DNS のないサーバーをインストールする場合は、以下の手順にある DNS 設定のプロンプトが表示されません。DNS のないサーバーをインストールする手順の詳細は、IdM サーバーのインストール: 統合 DNS がなく統合 CA が root CA としてある場合 を参照してください。

  3. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      Server host name [server.idm.example.com]:
      Please confirm the domain name [idm.example.com]:
      Please provide a realm name [IDM.EXAMPLE.COM]:
      警告

      名前は慎重に指定してください。インストール完了後に変更することはできません。

  4. Directory Server のスーパーユーザー (cn=Directory Manager) のパスワードと、Identity Management (IdM) の管理者システムユーザーアカウント (admin) のパスワードを入力します。

    Directory Manager password:
    IPA admin password:
  5. スクリプトにより、サーバーごとの DNS フォワーダー設定のプロンプトが表示されます。

    Do you want to configure DNS forwarders? [yes]:
    • サーバーごとの DNS フォワーダーを設定するには、yes を入力して表示されたコマンドラインの指示に従います。インストールプロセスにより、IdM LDAP にフォワーダーの IP アドレスが追加されます。

      • フォワードポリシーのデフォルト設定は、 ipa-dns-install(1) の man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
    • DNS 転送を使用しない場合は、no と入力します。

      DNS フォワーダーがないと、IdM ドメインのホストは、インフラストラクチャー内にある他の内部 DNS ドメインから名前を解決できません。ホストは、DNS クエリーを解決するためにパブリック DNS サーバーでのみ残ります。

  6. そのサーバーと関連する IP アドレスの DNS 逆引き (PTR) レコードを設定する必要性を確認するスクリプトプロンプトが出されます。

    Do you want to search for missing reverse zones? [yes]:

    検索を実行して欠落している逆引きゾーンが見つかると、PTR レコードの逆引きゾーンを作成するかどうかが尋ねられます。

    Do you want to create reverse zone for IP 192.0.2.1 [yes]:
    Please specify the reverse zone name [2.0.192.in-addr.arpa.]:
    Using reverse zone(s) 2.0.192.in-addr.arpa.
    注記

    オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

  7. サーバー設定をする場合は、yes と入力します。

    Continue to configure the system with these values? [no]: yes
  8. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  9. インストールスクリプトが完了したら、次の方法で DNS レコードを更新します。

    1. 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

      重要

      IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

    2. タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。

第6章 IdM サーバーのインストール: 統合 DNS がなく統合 CA が root CA としてある場合

本章では、統合 DNS を使用しないで新しい Identity Management (IdM) サーバーをインストールする方法を説明します。

注記

Red Hat では、IdM デプロイメントにおける基本的な使用のために IdM 統合 DNS をインストールすることを強く推奨します。IdM サーバーが DNS も管理する場合には、DNS とネイティブの IdM ツールが密接に統合されるため、DNS レコード管理の一部が自動化できます。

詳細は、Planning your DNS services and host names を参照してください。

6.1. 対話型インストール

ipa-server-install ユーティリティーを使用して対話型インストールを実行している間、レルム、管理者のパスワード、Directory Manager のパスワードなど、システムの基本設定を指定するように求められます。

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

この手順では、以下のサーバーをインストールします。

  • 統合 DNS のないサーバー
  • 統合 Identity Management (IdM) の認証局 (CA) をルート CA とするサーバー (デフォルトの CA 設定)

手順

  1. ipa-server-install ユーティリティーを実行します。

    # ipa-server-install
  2. スクリプトにより、統合 DNS サービスの設定が求められます。Enter を押して、no オプションを選択します。

    Do you want to configure integrated DNS (BIND)? [no]:
  3. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      Server host name [server.idm.example.com]:
      Please confirm the domain name [idm.example.com]:
      Please provide a realm name [IDM.EXAMPLE.COM]:
      警告

      名前は慎重に指定してください。インストール完了後に変更することはできません。

  4. Directory Server のスーパーユーザー (cn=Directory Manager) のパスワードと、IdM の管理者システムユーザーアカウント (admin) のパスワードを入力します。

    Directory Manager password:
    IPA admin password:
  5. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      NetBIOS domain name [EXAMPLE]:
      Do you want to configure chrony with NTP server or pool address? [no]:
  6. サーバー設定をする場合は、yes と入力します。

    Continue to configure the system with these values? [no]: yes
  7. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  8. インストールスクリプトは、以下の出力例の DNS リソースレコード でファイル (/tmp/ipa.system.records.UFRPto.db) を生成します。これらのレコードを既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

    ...
    Restarting the KDC
    Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
    Restarting the web server
    ...
    重要

    既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

関連情報

6.2. 非対話型インストール

この手順では、統合 DNS のないサーバー、または統合 Identitiy Management (IdM) 認証局 (CA) を root CA (デフォルトの CA 設定) として持つサーバーをインストールします。

注記

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

手順

  1. 必要に応じて必要な情報をすべて指定して、ipa-server-install ユーティリティーを実行します。非対話型インストールで最低限必要なオプションは次のとおりです。

    • --realm - Kerberos レルム名を指定します。
    • --ds-password - Directory Server のスーパーユーザーである Directory Manager (DM) のパスワードを指定します。
    • --admin-password - IdM 管理者である admin のパスワードを指定します。
    • --unattended - インストールプロセスでホスト名およびドメイン名のデフォルトオプションを選択するようにします。

    以下に例を示します。

    # ipa-server-install --realm IDM.EXAMPLE.COM --ds-password DM_password --admin-password admin_password --unattended
  2. インストールスクリプトは、以下の出力例の DNS リソースレコード でファイル (/tmp/ipa.system.records.UFRPto.db) を生成します。これらのレコードを既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

    ...
    Restarting the KDC
    Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
    Restarting the web server
    ...
    重要

    既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

関連情報

  • DNS システムに追加する必要がある DNS リソースレコードの詳細は、外部 DNS システムの IdM DNS レコード を参照してください。
  • ipa-server-install で使用できるオプションの完全リストを表示するには、ipa-server-install --help コマンドを実行します。

6.3. 外部 DNS システムの IdM DNS レコード

統合 DNS を使用せずに IdM サーバーをインストールした後、IdM サーバーの LDAP リソースレコードおよび Kerberos DNS リソースレコードを外部 DNS システムに追加する必要があります。

ipa-server-install インストールスクリプトは、ファイル名が /tmp/ipa.system.records.<random_characters>.db 形式の DNS リソースレコードのリストを含むファイルを生成し、そのレコードを追加する手順を表示します。

Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.6zdjqxh3.db

以下は、ファイルの内容の例になります。

_kerberos-master._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos-master._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos.example.com. 86400 IN TXT "EXAMPLE.COM"
_kpasswd._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.example.com.
_kpasswd._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.example.com.
_ldap._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 389 server.example.com.
注記

IdM サーバーの LDAP リソースレコードおよび Kerberos DNS リソースレコードを DNS システムに追加したら、DNS 管理ツールが ipa-ca の PTR レコードを追加していないことを確認します。DNS に ipa-ca の PTR レコードが存在すると、その後の IdM レプリカのインストールに失敗する場合があります。

第7章 IdM サーバーのインストール: 統合 DNS なしで外部 CA を root CA として使用する場合

本章では、統合 DNS なしで、外部認証局 (CA) をルート CA として使用する Identity Management (IdM) サーバーを新規インストールする方法を説明します。

注記

Red Hat では、IdM デプロイメントにおける基本的な使用のために IdM 統合 DNS をインストールすることを強く推奨します。IdM サーバーが DNS も管理する場合には、DNS とネイティブの IdM ツールが密接に統合されるため、DNS レコード管理の一部が自動化できます。

詳細は、Planning your DNS services and host names を参照してください。

7.1. ルート CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に使用されるオプション

以下の条件のいずれかが該当する場合、ルート CA として外部 CA と共に Identity Management IdM 認証局 (CA) をインストールすることができます。

  • ipa-server-install コマンドを使用して、新しい IdM サーバーまたはレプリカをインストールしようとしている。
  • ipa-ca-install コマンドを使用して、CA コンポーネントを既存の IdM サーバーにインストールしようとしている。

ルート CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に証明書署名要求 (CSR) を作成するのに使用できる次の両方のコマンドオプションを使用可能です。

--external-ca-type=TYPE
外部 CA のタイプ。設定可能な値は generic および ms-cs です。デフォルト値は generic です。生成される CSR に Microsoft Certificate Services (MS CS) で必要なテンプレート名を追加するには、ms-cs を使用します。デフォルト以外のプロファイルを使用するには、--external-ca-type=ms-cs と共に --external-ca-profile オプションを使用します。
--external-ca-profile=PROFILE_SPEC

IdM CA の証明書を発行する際に MS CS が適用する証明書プロファイルまたはテンプレートを指定します。

--external-ca-profile オプションは、--external-ca-type が ms-cs の場合にのみ使用できます。

MS CS テンプレートは、以下のいずれかの方法で特定できます。

  • <oid>:<majorVersion>[:<minorVersion>]:証明書テンプレートは、オブジェクト識別子 (OID) およびメジャーバージョンで指定できます。任意でマイナーバージョンを指定することもできます。
  • <name>:証明書テンプレートは、名前で指定できます。名前には : 文字を含めることができず、OID を指定できません。そうでなければ、OID ベースのテンプレート指定子構文が優先されます。
  • default:この指定子を使用する場合には、テンプレート名 SubCA が使用されます。

特定のシナリオでは、Active Directory (AD) 管理者は、AD CS に組み込まれているテンプレートである Subordinate 認証局 (SCA) テンプレートを使用して、組織のニーズにより適した一意のテンプレートを作成できます。たとえば、新しいテンプレートでは有効期間や拡張機能をカスタマイズできます。関連付けられたオブジェクト識別子 (OID) は、AD 証明書テンプレート コンソールにあります。

AD 管理者が元の組み込みテンプレートを無効にしている場合は、IdM CA の証明書を要求する際に新しいテンプレートの OID または名前を指定する必要があります。AD 管理者に、新しいテンプレートの名前または OID を提供するよう依頼します。

元の SCA AD CS テンプレートがまだ有効にされている場合は、追加で --external-ca-profile オプションを使用せずに --external-ca-type=ms-cs を指定して使用できます。この場合、subCA 外部 CA プロファイルが使用されます。これは、SCA AD CS テンプレートに対応するデフォルトの IdM テンプレートです。

7.2. 対話型インストール

ipa-server-install ユーティリティーを使用して対話型インストールを実行している間、レルム、管理者のパスワード、Directory Manager のパスワードなど、システムの基本設定を指定するように求められます。

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

以下の手順に従って、サーバーをインストールします。

  • 統合 DNS のないサーバー
  • 外部認証局 (CA) をルート CA とするサーバー

前提条件

  • --external-ca-type オプションで指定する外部 CA のタイプを決定している。詳細は、ipa-server-install (1) の man ページを参照すること。
  • Microsoft 証明書サービス認証局 (MS CS CA) を外部 CA として使用している場合は、--external-ca-profile オプションで指定する証明書プロファイルまたはテンプレートを決定している。デフォルトでは、SubCA テンプレートが使用される。

    --external-ca-type および --external-ca-profile オプションの詳細は、ルート CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に使用されるオプション を参照してください。

手順

  1. --external-ca オプションを使用して ipa-server-install ユーティリティーを実行します。

    • Microsoft 証明書サービス (MS CS) CA を使用している場合は、--external-ca-type オプションと、任意で --external-ca-profile オプションを使用します。

      [root@server ~]# ipa-server-install --external-ca --external-ca-type=ms-cs --external-ca-profile=<oid>/<name>/default
    • MS CS を使用して IdM CA の署名証明書を生成していない場合は、他のオプションは必要ありません。

      # ipa-server-install --external-ca
  2. スクリプトにより、統合 DNS サービスの設定が求められます。Enter を押して、no オプションを選択します。

    Do you want to configure integrated DNS (BIND)? [no]:
  3. このスクリプトでは、いくつかの設定を入力することが求められます。括弧で囲まれた値が推奨されるデフォルト値になります。

    • デフォルト値を使用する場合は Enter を押します。
    • カスタム値を指定する場合は、指定する値を入力します。

      Server host name [server.idm.example.com]:
      Please confirm the domain name [idm.example.com]:
      Please provide a realm name [IDM.EXAMPLE.COM]:
      警告

      名前は慎重に指定してください。インストール完了後に変更することはできません。

  4. Directory Server のスーパーユーザー (cn=Directory Manager) のパスワードと、IdM の管理者システムユーザーアカウント (admin) のパスワードを入力します。

    Directory Manager password:
    IPA admin password:
  5. サーバー設定をする場合は、yes と入力します。

    Continue to configure the system with these values? [no]: yes
  6. Certificate System インスタンスの設定時、このユーティリティーが証明書署名要求 (CSR) の場所 (/root/ipa.csr) を出力します。

    ...
    
    Configuring certificate server (pki-tomcatd): Estimated time 3 minutes 30 seconds
      [1/8]: creating certificate server user
      [2/8]: configuring certificate server instance
    The next step is to get /root/ipa.csr signed by your CA and re-run /sbin/ipa-server-install as:
    /sbin/ipa-server-install --external-cert-file=/path/to/signed_certificate --external-cert-file=/path/to/external_ca_certificate

    この場合は、以下を行います。

    1. /root/ipa.csr にある CSR を外部 CA に提出します。このプロセスは、外部 CA として使用するサービスにより異なります。
    2. 発行した証明書と、Base64 エンコードされたブロブ (PEM ファイルか Windows CA からの Base_64 証明書) で CA を発行する CA 証明書チェーンを取得します。繰り返しになりますが、プロセスは各証明書サービスによって異なります。通常は Web ページか通知メールにダウンロードリンクがあり、管理者が必要なすべての証明書をダウンロードできるようになっています。

      重要

      CA 証明書のみではなく、CA 用の完全な証明書チェーンを取得してください。

    3. 新たに発行された CA 証明書と CA チェーンファイルの場所と名前を指定して ipa-server-install を再度実行します。以下に例を示します。

      # ipa-server-install --external-cert-file=/tmp/servercert20170601.pem --external-cert-file=/tmp/cacert.pem
  7. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  8. インストールスクリプトは、以下の出力例の DNS リソースレコード でファイル (/tmp/ipa.system.records.UFRPto.db) を生成します。これらのレコードを既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

    ...
    Restarting the KDC
    Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
    Restarting the web server
    ...
    重要

    既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

関連情報

  • DNS システムに追加する必要がある DNS リソースレコードの詳細は、外部 DNS システムの IdM DNS レコード を参照してください。
  • ipa-server-install --external-ca コマンドは、次のエラーにより失敗する場合があります。

    ipa         : CRITICAL failed to configure ca instance Command '/usr/sbin/pkispawn -s CA -f /tmp/pass:quotes[configuration_file]' returned non-zero exit status 1
    Configuration of CA failed

    この失敗は、*_proxy 環境変数が設定されていると発生します。問題の解決方法は、トラブルシューティング: 外部 CA インストールの失敗 を参照してください。

7.3. 非対話型インストール

この手順では、以下のサーバーをインストールします。

  • 統合 DNS のないサーバー
  • 外部認証局 (CA) をルート CA とするサーバー
注記

ipa-server-install インストールスクリプトにより、/var/log/ipaserver-install.log にログファイルが作成されます。ログは、インストールに失敗した時の問題特定に役立ちます。

前提条件

  • --external-ca-type オプションで指定する外部 CA のタイプを決定している。詳細は、ipa-server-install (1) の man ページを参照すること。
  • Microsoft 証明書サービス認証局 (MS CS CA) を外部 CA として使用している場合は、--external-ca-profile オプションで指定する証明書プロファイルまたはテンプレートを決定している。デフォルトでは、SubCA テンプレートが使用される。

    --external-ca-type および --external-ca-profile オプションの詳細は、ルート CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に使用されるオプション を参照してください。

手順

  1. 必要に応じて必要な情報をすべて指定して、ipa-server-install ユーティリティーを実行します。外部 CA をルート CA として使用する IdM サーバーを非対話的にインストールする場合の最小要件オプションは以下のとおりです。

    • --external-ca - 外部 CA をルート CA として指定します。
    • --realm - Kerberos レルム名を指定します。
    • --ds-password - Directory Server のスーパーユーザーである Directory Manager (DM) のパスワードを指定します。
    • --admin-password - IdM 管理者である admin のパスワードを指定します。
    • --unattended - インストールプロセスでホスト名およびドメイン名のデフォルトオプションを選択するようにします。

      以下に例を示します。

      # ipa-server-install --external-ca --realm IDM.EXAMPLE.COM --ds-password DM_password --admin-password admin_password --unattended

    Microsoft 証明書サービス (MS CS) CA を使用している場合は、--external-ca-type オプションと、任意で --external-ca-profile オプションを使用します。詳細は、root CA として外部 CA と共に IdM CA をインストールする際に使用されるオプション を参照してください。

  2. Certificate System インスタンスの設定時、このユーティリティーが証明書署名要求 (CSR) の場所 (/root/ipa.csr) を出力します。

    ...
    
    Configuring certificate server (pki-tomcatd). Estimated time: 3 minutes
      [1/11]: configuring certificate server instance
    The next step is to get /root/ipa.csr signed by your CA and re-run /usr/sbin/ipa-server-install as:
    /usr/sbin/ipa-server-install --external-cert-file=/path/to/signed_certificate --external-cert-file=/path/to/external_ca_certificate
    The ipa-server-install command was successful

    この場合は、以下を行います。

    1. /root/ipa.csr にある CSR を外部 CA に提出します。このプロセスは、外部 CA として使用するサービスにより異なります。
    2. 発行した証明書と、Base64 エンコードされたブロブ (PEM ファイルか Windows CA からの Base_64 証明書) で CA を発行する CA 証明書チェーンを取得します。繰り返しになりますが、プロセスは各証明書サービスによって異なります。通常は Web ページか通知メールにダウンロードリンクがあり、管理者が必要なすべての証明書をダウンロードできるようになっています。

      重要

      CA 証明書のみではなく、CA 用の完全な証明書チェーンを取得してください。

    3. 新たに発行された CA 証明書と CA チェーンファイルの場所と名前を指定して ipa-server-install を再度実行します。以下に例を示します。

      # ipa-server-install --external-cert-file=/tmp/servercert20170601.pem --external-cert-file=/tmp/cacert.pem --realm IDM.EXAMPLE.COM --ds-password DM_password --admin-password admin_password --unattended
  3. インストールスクリプトにより、サーバーが設定されます。動作が完了するまで待ちます。
  4. インストールスクリプトは、以下の出力例の DNS リソースレコードでファイル (/tmp/ipa.system.records.UFRPto.db) を生成します。これらのレコードを既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

    ...
    Restarting the KDC
    Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
    Restarting the web server
    ...
重要

既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

関連情報

7.4. 外部 DNS システムの IdM DNS レコード

統合 DNS を使用せずに IdM サーバーをインストールした後、IdM サーバーの LDAP リソースレコードおよび Kerberos DNS リソースレコードを外部 DNS システムに追加する必要があります。

ipa-server-install インストールスクリプトは、ファイル名が /tmp/ipa.system.records.<random_characters>.db 形式の DNS リソースレコードのリストを含むファイルを生成し、そのレコードを追加する手順を表示します。

Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.6zdjqxh3.db

以下は、ファイルの内容の例になります。

_kerberos-master._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos-master._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.example.com.
_kerberos.example.com. 86400 IN TXT "EXAMPLE.COM"
_kpasswd._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.example.com.
_kpasswd._udp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.example.com.
_ldap._tcp.example.com. 86400 IN SRV 0 100 389 server.example.com.
注記

IdM サーバーの LDAP リソースレコードおよび Kerberos DNS リソースレコードを DNS システムに追加したら、DNS 管理ツールが ipa-ca の PTR レコードを追加していないことを確認します。DNS に ipa-ca の PTR レコードが存在すると、その後の IdM レプリカのインストールに失敗する場合があります。

第8章 LDIF ファイルからのカスタムデータベース設定を使用した IdM サーバーまたはレプリカのインストール

Directory Server データベースのカスタム設定を使用して、IdM サーバーおよび IdM レプリカをインストールできます。以下の手順は、データベース設定で LDAP データ交換形式 (LDIF) ファイルを作成する方法と、その設定を IdM サーバーおよびレプリカインストールコマンドに渡す方法を示しています。

前提条件

手順

  1. カスタムデータベース設定で LDIF 形式のテキストファイルを作成します。LDAP 属性の変更はダッシュ (-) で区切ります。この例では、idle タイムアウトおよび最大ファイルディスクリプターにデフォルト以外の値を設定します。

    dn: cn=config
    changetype: modify
    replace: nsslapd-idletimeout
    nsslapd-idletimeout=1800
    -
    replace: nsslapd-maxdescriptors
    nsslapd-maxdescriptors=8192
  2. --dirsrv-config-file パラメーターを使用して、LDIF ファイルをインストールスクリプトに渡します。

    1. IdM サーバーをインストールするには、次のコマンドを実行します。

      # ipa-server-install --dirsrv-config-file filename.ldif
    2. IdM レプリカをインストールするには、次のコマンドを実行します。

      # ipa-replica-install --dirsrv-config-file filename.ldif

第9章 IdM サーバーのインストールに関するトラブルシューティング

次のセクションでは、失敗した IdM サーバーのインストールについての情報を収集する方法、一般的なインストールの問題を解決する方法を説明します。

9.1. IdM サーバーインストールエラーログの確認

Identity Management (IdM) サーバーをインストールすると、以下のログファイルにデバッグ情報が追加されます。

  • /var/log/ipaserver-install.log
  • /var/log/httpd/error_log
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors

ログファイルの最後の行は成功または失敗を報告し、ERROR および DEBUG エントリーで追加のコンテキストを把握できます。

失敗した IdM サーバーのインストールをトラブルシューティングするには、ログファイルの最後でエラーを確認し、この情報を使用して、対応する問題を解決します。

前提条件

  • IdM ログファイルの内容を表示するには、root 権限が必要である。

手順

  1. tail コマンドを使用して、ログファイルの最後の行を表示します。以下の例では、/var/log/ipaserver-install.log の最後の 10 行を表示しています。

    [user@server ~]$ sudo tail -n 10 /var/log/ipaserver-install.log
    [sudo] password for user:
    value = gen.send(prev_value)
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipapython/install/common.py", line 65, in _install
    for unused in self._installer(self.parent):
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipaserver/install/server/init.py", line 564, in main
    master_install(self)
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipaserver/install/server/install.py", line 291, in decorated
    raise ScriptError()
    
    2020-05-27T22:59:41Z DEBUG The ipa-server-install command failed, exception: ScriptError:
    2020-05-27T22:59:41Z ERROR The ipa-server-install command failed. See /var/log/ipaserver-install.log for more information
  2. ログファイルを対話的に確認するには、less ユーティリティーを使用してログファイルの最後を開き、 および キーを使用して移動します。以下の例では、/var/log/ipaserver-install.log ファイルを対話的に開きます。

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipaserver-install.log
  3. ログファイルの残りで、このレビュープロセスを繰り返して、追加のトラブルシューティング情報を収集します。

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/httpd/error_log
    
    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
    
    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors

関連情報

9.2. IdM CA インストールエラーの確認

Identity Management (IdM) サーバーに認証局 (CA) サービスをインストールすると、デバッグ情報が以下の場所 (推奨される優先順位) に追加されます。

場所説明

/var/log/pki/pki-ca-spawn.$TIME_OF_INSTALLATION.log

問題の概要と、pkispawn インストールプロセスの Python トレース

journalctl -u pki-tomcatd@pki-tomcat の出力

pki-tomcatd@pki-tomcat サービスからのエラー

/var/log/pki/pki-tomcat/ca/debug.$DATE.log

公開鍵インフラストラクチャー (PKI) 製品のアクティビティーの大規模な JAVA スタックトレース

/var/log/pki/pki-tomcat/ca/signedAudit/ca_audit ログファイル

PKI 製品の監査ログ

  • /var/log/pki/pki-tomcat/ca/system
  • /var/log/pki/pki-tomcat/ca/transactions
  • /var/log/pki/pki-tomcat/catalina.$DATE.log

証明書を使用するサービスプリンシパル、ホスト、およびその他のエンティティーの証明書操作の低レベルのデバッグデータ

注記

オプションの CA コンポーネントのインストール中に IdM サーバー全体のインストールに失敗した場合に、ログには CA の詳細が記録されません。全体的なインストールプロセスに失敗したことを示すメッセージが /var/log/ipaserver-install.log ファイルに記録されます。Red Hat では、CA インストールの失敗に関する詳細は、上記に記載のログファイルを確認することを推奨します。

CA サービスをインストールしてルート CA が外部 CA の場合は唯一例外で、この動作に該当しません。外部 CA の証明書に問題がある場合は、エラーが /var/log/ipaserver-install.log に記録されます。

失敗した IdM CA インストールをトラブルシューティングするには、これらのログファイルの最後でエラーを確認し、その情報を使用して、対応する問題を解決します。

前提条件

  • IdM ログファイルの内容を表示するには、root 権限が必要である。

手順

  1. ログファイルを対話的に確認するには、less ユーティリティーを使用してログファイルの最後を開き、 および キーを使用して移動し、ScriptError を検索します。以下の例では、/var/log/pki/pki-ca-spawn.$TIME_OF_INSTALLATION.log を開きます。

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/pki/pki-ca-spawn.20200527185902.log
  2. 上記のすべてのログファイルを使用してこの確認プロセスを繰り返して、追加のトラブルシューティング情報を収集します。

関連情報

9.3. 部分的な IdM サーバーインストールの削除

IdM サーバーのインストールに失敗した場合は、設定ファイルの一部が残される場合があります。IdM サーバーのインストールを再度試みて失敗し、インストールスクリプトでは IPA が設定済みと報告されます。

既存の部分的な IdM 設定を使用したシステムの例

[root@server ~]# ipa-server-install

The log file for this installation can be found in /var/log/ipaserver-install.log
IPA server is already configured on this system.
If you want to reinstall the IPA server, please uninstall it first using 'ipa-server-install --uninstall'.
The ipa-server-install command failed. See /var/log/ipaserver-install.log for more information

この問題を解決するには、部分的な IdM サーバー設定をアンインストールし、インストールプロセスを再試行します。

前提条件

  • root 権限があること。

手順

  1. IdM サーバーとして設定するホストから、IdM サーバーソフトウェアをアンインストールします。

    [root@server ~]# ipa-server-install --uninstall
  2. インストールに繰り返し失敗したことが原因で IdM サーバーのインストールに問題が生じた場合は、オペレーティングシステムを再インストールします。

    カスタマイズなしの新規インストールシステムというのが、IdM サーバーのインストール要件の 1 つとなっています。インストールに失敗した場合は、予期せずにシステムファイルが変更されてホストの整合性が保てない可能性があります。

関連情報

関連情報

9.4. 関連情報

第10章 IdM サーバーのアンインストール

以下の手順に従って、server123.idm.example.com (server123) という名前の Identity Management (IdM) サーバーをアンインストールします。

前提条件

  • server123 への root アクセス権限がある。
  • IdM 管理者の認証情報がある。

手順

  1. IdM 環境で統合 DNS が使用されている場合は、server123 が唯一の 有効な DNS サーバーではないことを確認してください。

    [root@server123 ~]# ipa server-role-find --role 'DNS server'
    ----------------------
    2 server roles matched
    ----------------------
      Server name: server456.idm.example.com
      Role name: DNS server
      Role status: enabled
    [...]
    ----------------------------
    Number of entries returned 2
    ----------------------------

    トポロジー内の残りの DNS サーバーが server123 だけの場合は、DNS サーバーロールを別の IdM サーバーに追加します。詳細は、ipa-dns-install(1) man ページを参照してください。

  2. IdM 環境で統合認証局 (CA) が使用されている場合は、以下を行います。

    1. server123 が唯一の 有効 な CA サーバーではないことを確認します。

      [root@server123 ~]# ipa server-role-find --role 'CA server'
      ----------------------
      2 server roles matched
      ----------------------
        Server name: server123.idm.example.com
        Role name: CA server
        Role status: enabled
      
        Server name: r8server.idm.example.com
        Role name: CA server
        Role status: enabled
      ----------------------------
      Number of entries returned 2
      ----------------------------

      トポロジー内の残りの CA サーバーが server123 だけの場合は、CA サーバーロールを別の IdM サーバーに追加します。詳細は、ipa-ca-install(1) man ページを参照してください。

    2. IdM 環境で vault を有効にしている場合は、server123.idm.example.com が唯一の 有効な Key Recovery Authority (KRA) サーバーではないことを確認します。

      [root@server123 ~]# ipa server-role-find --role 'KRA server'
      ----------------------
      2 server roles matched
      ----------------------
        Server name: server123.idm.example.com
        Role name: KRA server
        Role status: enabled
      
        Server name: r8server.idm.example.com
        Role name: KRA server
        Role status: enabled
      ----------------------------
      Number of entries returned 2
      ----------------------------

      トポロジー内の残りの KRA サーバーが server123 だけの場合は、KRA サーバーロールを別の IdM サーバーに追加します。詳細は、man ipa-kra-install(1) を参照してください。

    3. server123.idm.example.com が CA 更新サーバーではないことを確認します。

      [root@server123 ~]# ipa config-show | grep 'CA renewal'
        IPA CA renewal master: r8server.idm.example.com

      server123 が CA 更新サーバーである場合は、CA 更新サーバーロールを別のサーバーに移動する方法の詳細について、IdM CA 更新サーバーの変更およびリセット を参照してください。

    4. server123.idm.example.com が現在の証明書失効リスト (CRL) パブリッシャーではないことを確認します。

      [root@server123 ~]# ipa-crlgen-manage status
      CRL generation: disabled

      出力に、CRL の生成が server123 で有効になっていることが示されている場合は、CRL パブリッシャーロールを別のサーバーに移動する方法の詳細について、IdM CA サーバーでの CRL の生成 を参照してください。

  3. トポロジー内の別の IdM サーバーに接続します。

    $ ssh idm_user@server456
  4. サーバーで、IdM 管理者の認証情報を取得します。

    [idm_user@server456 ~]$ kinit admin
  5. トポロジー内のサーバーに割り当てられた DNA ID 範囲を表示します。

    [idm_user@server456 ~]$ ipa-replica-manage dnarange-show
    server123.idm.example.com: 1001-1500
    server456.idm.example.com: 1501-2000
    [...]

    出力は、DNA ID 範囲が server123 と server456 の両方に割り当てられていることを示しています。

  6. server123 がトポロジー内で DNA ID 範囲が割り当てられた唯一の IdM サーバーである場合、server456 でテスト IdM ユーザーを作成して、サーバーに DNA ID 範囲が割り当てられていることを確認します。

    [idm_user@server456 ~]$ ipa user-add test_idm_user
  7. トポロジーから server123.idm.example.com を削除します。

    [idm_user@server456 ~]$ ipa server-del server123.idm.example.com
    重要

    server123 を削除してトポロジーが切断されると、スクリプトが警告を発します。削除を続行できるようにするために、残りのレプリカ間でレプリカ合意を作成する方法は、CLI を使用した 2 台のサーバー間のレプリケーションの設定 を参照してください。

    注記

    ipa server-del コマンドを実行すると、ドメインca 接尾辞の両方について、server123 に関連するすべてのレプリケーションデータと合意が削除されます。これは、最初に ipa-replica-manage del server123 コマンドを使用してこれらのデータを削除する必要があったドメインレベル 0 IdM トポロジーとは対照的です。ドメインレベル 0 の IdM トポロジーは、RHEL 7.2 以前で実行されているトポロジーです。ipa domainlevel-get コマンドを使用して、現在のドメインレベルを表示します。

  8. server123.idm.example.com に戻り、既存の IdM インストールをアンインストールします。

    [root@server123 ~]# ipa-server-install --uninstall
    ...
    Are you sure you want to continue with the uninstall procedure? [no]: yes
  9. server123.idm.example.com を指定しているネームサーバー (NS) の DNS レコードがすべて DNS ゾーンから削除されていることを確認してください。使用する DNS が IdM により管理される統合 DNS であるか、外部 DNS であるかに関わらず、確認を行なってください。IdM から DNS レコードを削除する方法は、Deleting DNS records in the IdM CLI を参照してください。

第11章 IdM サーバーの名前変更

既存の Identity Management (IdM) サーバーのホスト名は変更できません。異なる名前のレプリカでサーバーを置き換えます。

手順

  1. 既存のサーバーの代わりになる新しいレプリカをインストールし、このレプリカに必要なホスト名と IP アドレスが指定されるようにします。詳細は、IdM レプリカのインストール を参照してください。

    重要

    アンインストールするサーバーが証明書失効リスト (CRL) パブリッシャーサーバーである場合は、続行する前に別のサーバーを CRL パブリッシャーサーバーに指定してください。

    移行手順のコンテキストでこの設定を行う方法は、以下のセクションを参照してください。

  2. 既存の IdM サーバーインスタンスを停止します。

    [root@old_server ~]# ipactl stop
  3. IdM サーバーのアンインストール の説明に従って、既存のサーバーをアンインストールします。

第12章 IdM の更新およびダウンロード

12.1. IdM パッケージの更新

yum ユーティリティーを使用して、システムの Identity Management (IdM) パッケージを更新できます。

前提条件

手順

  • 以下のオプションのいずれかを選択します。

    • プロファイルに関連し、利用可能な更新がある IdM パッケージをすべて更新するには、次のコマンドを実行します。

      # yum upgrade ipa-*
    • 有効になっているリポジトリーから、プロファイルで利用可能な最新バージョンに合わせて、パッケージをインストールまたは更新するには、次のコマンドを実行します。

      # yum distro-sync ipa-*

少なくとも 1 台のサーバーで IdM パッケージを更新すると、トポロジー内のその他のすべてのサーバーでパッケージを更新しなくても、更新されたスキーマを受け取ります。これは、新しいスキーマを使用する新しいエントリーを、その他のサーバー間で確実に複製できます。

警告

複数の IdM サーバーを更新する場合は、サーバーを更新してから別のサーバーを更新するまで、10 分以上お待ちください。ただし、サーバーの更新が成功するまでに必要な時間は、デプロイメントされたトポロジー、接続のレイテンシー、更新で生成した変更の数により異なります。

複数のサーバーで、同時、またはあまり間隔をあけずに更新を行うと、トポロジー全体でアップグレード後のデータ変更を複製する時間が足りず、複製イベントが競合する可能性があります。

重要

Red Hat は、次のバージョンにアップグレードすることのみを推奨します。たとえば、RHEL 8.8 の IdM にアップグレードする場合は、RHEL 8.7 の IdM からアップグレードすることを推奨します。以前のバージョンからアップグレードすると、問題が発生する可能性があります。

12.2. IdM パッケージのダウングレード

Red Hat は、Identity Management のダウングレードをサポートしていません。

12.3. 関連情報

  • yum(8) man ページ

第13章 IdM クライアントをインストールするためのシステムの準備

本章では、Identity Management (IdM) クライアントをインストールするのに必要なシステムの条件を説明します。

13.1. IdM クライアントのインストールをサポートする RHEL のバージョン

IdM サーバーが Red Hat Enterprise Linux 8 の最新マイナーバージョンで実行されている Identity Management デプロイメントでは、以下の最新マイナーバージョンで実行されているクライアントがサポートされます。

  • RHEL 7
  • RHEL 8
  • RHEL 9
注記
他のクライアントシステム (Ubuntu など) は IdM 8 サーバーと連携できますが、Red Hat では、これらのクライアントのサポートを提供していません。
IMPORTANT
IdM デプロイメントを FIPS 準拠にする予定の場合、Red Hat は環境を RHEL 9 に移行することを強く推奨します。RHEL 9 は、FIPS 140-3 に準拠する予定の最初の RHEL メジャーバージョンです。

13.2. IdM クライアントの DNS 要件

デフォルトでは、クライアントインストーラーは、ホスト名の親であるすべてのドメインの DNS SRV レコード _ldap._tcp.DOMAIN を検索します。たとえば、クライアントマシンのホスト名が client1.idm.example.com である場合は、インストーラーが _ldap._tcp.idm.example.com_ldap._tcp.example.com、および _ldap._tcp.com の DNS SRV レコードから IdM サーバーのホスト名を取得しようとします。その後、検出されたドメインを使用して、クライアントコンポーネント (SSSD や Kerberos 5 設定など) をマシン上で設定します。

しかし、IdM クライアントのホスト名を、プライマリー DNS ドメインの一部にする必要はありません。クライアントマシンのホスト名が IdM サーバーのサブドメインでない場合は、IdM ドメインを ipa-client-install コマンドの --domain オプションとして渡します。これにより、クライアントのインストール後に、SSSD コンポーネントと Kerberos コンポーネントの両方の設定ファイルにドメインが設定され、IdM サーバーの自動検出に使用されます。

関連情報

13.3. IdM クライアントのポート要件

Identity Management (IdM) クライアントは、IdM サーバーの複数のポートに接続し、サービスと通信します。

IdM クライアントでこれらのポートを 送信方向 に開く必要があります。firewalld などの、送信パケットにフィルターを設定しないファイアウォールを使用している場合は、ポートを送信方向で使用できます。

関連情報

13.4. IdM クライアントの IPv6 要件

Identity Management (IdM) では、IdM に登録するホストのカーネルで IPv6 プロトコルを有効にする必要はありません。たとえば、内部ネットワークで IPv4 プロトコルのみを使用する場合には、System Security Services Daemon (SSSD) が IPv4 だけを使用して IdM サーバーと通信するように設定できます。/etc/sssd/sssd.conf ファイルの [domain/NAME] セクションに次の行を追加して、これを設定できます。

lookup_family_order = ipv4_only

関連情報

  • lookup_family_order オプションの詳細は、sssd.conf(5) の man ページを参照してください。

13.5. idm:client ストリームからの IdM クライアントパッケージのインストール

RHEL 8 では、Identity Management (IdM) クライアントのインストールに必要なパッケージはモジュールとして同梱されます。

idm:client ストリームは、idm モジュールのデフォルトのストリームです。お使いのマシンにサーバーコンポーネントをインストールする必要がない場合は、このストリームを使用して IdM クライアントパッケージをダウンロードします。長期サポート対象の IdM クライアントソフトウェアを一貫して使用する必要があり、サーバーコンポーネントが必要でない場合は、idm:client ストリームの使用が推奨されます。

重要

ホストに IdM レプリカをインストールする予定がある場合は、idm:client ストリームを使用しないでください。その場合は、代わりに idm:DL1 ストリームを使用して ください。

前提条件

  • 以前に idm:DL1 ストリームを有効にし、そこからパッケージをダウンロードした場合は、idm:client ストリームに切り替える際に、関連するインストール済みコンテンツをすべて排他的に削除し、idm:DL1 を無効にしてから、idm:client ストリームを有効にする必要があります。

    続行方法の詳細は 後続のストリームへの切り替え を参照してください。

    重要

    現在のストリームを無効にせずに新しいストリームを有効にしようとすると、エラーが発生します。

手順

  • IdM クライアントのインストールに必要なパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

    # yum module install idm

13.6. idm:DL1 ストリームからの IdM クライアントパッケージのインストール

RHEL 8 では、Identity Management (IdM) クライアントのインストールに必要なパッケージはモジュールとして同梱されます。

idm:DL1 からパッケージをダウンロードするには、このストリームを有効にする必要があります。マシン上に IdM サーバーコンポーネントをインストールする必要がある場合は、このストリームを使用して IdM クライアントパッケージをダウンロードしてください。

前提条件

  • 以前に idm:client ストリームを有効にし、そこからパッケージをダウンロードした場合は、idm:DL1 ストリームに切り替える際に、関連するインストール済みコンテンツをすべて排他的に削除し、idm:client を無効にしてから、idm:DL1 ストリームを有効にする必要がある。

    続行方法の詳細は 後続のストリームへの切り替え を参照してください。

    重要

    現在のストリームを無効にせずに新しいストリームを有効にしようとすると、エラーが発生します。

手順

  1. idm:DL1 ストリーム経由で配信される RPM に切り替えるには、次のコマンドを実行します。

    # yum module enable idm:DL1
    # yum distro-sync
  2. IdM クライアントのインストールに必要なパッケージをダウンロードするには、次のコマンドを実行します。

    # yum module install idm:DL1/client

第14章 IdM クライアントのインストール

ここでは、ipa-client-install ユーティリティーを使用して、システムを Identity Management (IdM) クライアントとして設定する方法を説明します。システムを IdM クライアントとして設定すると、IdM ドメインに登録され、システムがドメインの IdM サーバーで IdM サービスを使用できるようになります。

Identity Management (IdM) クライアントを正しくインストールするには、クライアントの登録に使用できる認証情報を指定する必要があります。

14.1. 前提条件

14.2. ユーザー認証情報でクライアントのインストール: 対話的なインストール

この手順に従い、登録権限のあるユーザーの認証情報を使用してシステムをドメインに登録し、Identity Management (IdM) クライアントを対話的にインストールします。

前提条件

  • クライアントを IdM ドメインに登録する権限を持つユーザーの認証情報がある。たとえば、登録管理者 (Enrollment Administrator) ロールを持つ hostadmin ユーザーなどが該当する。

手順

  1. IdM クライアントとして設定するシステムで ipa-client-install ユーティリティーを実行します。

    # ipa-client-install --mkhomedir

    以下のいずれか条件に該当する場合は、--enable-dns-updates オプションを追加して、クライアントシステムの IP アドレスで DNS レコードを更新します。

    • クライアントを登録する IdM サーバーが、統合 DNS とともにインストールされた場合。
    • ネットワーク上の DNS サーバーが、GSS-TSIG プロトコルを用いた DNS エントリー更新を受け入れる場合。
    # ipa-client-install --enable-dns-updates --mkhomedir

    DNS 更新を有効にすると、クライアントが以下の条件に当てはまる場合に便利です。

    • クライアントに、DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) を使用して発行した動的 IP アドレスがある。
    • クライアントに、静的 IP アドレスが割り当てられたばかりで、IdM サーバーがそのアドレスを認識していない。
  2. インストールスクリプトは、DNS レコードなどの必要な設定をすべて自動的に取得しようとします。

    • IdM DNS ゾーンで SRV レコードが正しく設定されていると、スクリプトはその他に必要な値をすべて自動的に検出し、表示します。yes を入力して確定します。

      Client hostname: client.example.com
      Realm: EXAMPLE.COM
      DNS Domain: example.com
      IPA Server: server.example.com
      BaseDN: dc=example,dc=com
      
      Continue to configure the system with these values? [no]: yes
    • システムを別の値でインストールする場合は no を入力します。その後、ipa-client-install を再度実行し、コマンドラインオプションを ipa-client-install に追加して必要な値を指定します。以下に例を示します。

      • --hostname
      • --realm
      • --domain
      • --server
      • --mkhomedir
      重要

      完全修飾ドメイン名は、有効な DNS 名である必要があります。

      • 数字、アルファベット、およびハイフン (-) のみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
      • ホスト名がすべて小文字である。大文字は使用できません。
    • スクリプトが一部の設定を自動的に取得できなかった場合は、値を入力するように求められます。
  3. スクリプトにより、アイデンティティーがクライアントの登録に使用されるユーザーの入力が求められます。たとえば、登録管理者 (Enrollment Administrator) ロールを持つ hostadmin ユーザーなどが該当します。

    User authorized to enroll computers: hostadmin
    Password for hostadmin@EXAMPLE.COM:
  4. インストールスクリプトにより、クライアントが設定されます。動作が完了するまで待ちます。

    Client configuration complete.

関連情報

  • クライアントインストールスクリプトが DNS レコードを検索する方法は、ipa-client-install(1) の man ページにある DNS Autodiscovery セクションを参照してください。

14.3. ワンタイムパスワードでクライアントのインストール: 対話的なインストール

以下の手順に従って、ワンタイムパスワードを使用してシステムをドメインに登録し、Identity Management (IdM) クライアントを対話的にインストールします。

前提条件

  • ドメインのサーバーに、クライアントシステムを IdM ホストとして追加している。ipa host-add コマンドに --random オプションを使用して、登録のワンタイムパスワードを無作為に生成します。

    注記

    ipa host-add <client_fqdn> コマンドでは、クライアントの FQDN が DNS を介して解決可能である必要があります。解決できない場合は、--ip address オプションを使用して IdM クライアントシステムの IP アドレスを指定するか、--force オプションを使用します。

    $ ipa host-add client.example.com --random
     --------------------------------------------------
     Added host "client.example.com"
     --------------------------------------------------
      Host name: client.example.com
      Random password: W5YpARl=7M.n
      Password: True
      Keytab: False
      Managed by: server.example.com
    注記

    生成されたパスワードは、IdM ドメインへのマシン登録に使用した後は無効になります。登録の完了後、このパスワードは適切なホストキータブに置き換えられます。

手順

  1. IdM クライアントとして設定するシステムで ipa-client-install ユーティリティーを実行します。

    --password オプションを使用して、無作為に生成されたワンタイムパスワードを提供します。パスワードに特殊文字が含まれることが多いため、パスワードを一重引用符 (') で囲みます。

    # ipa-client-install --mkhomedir --password=password

    以下のいずれか条件に該当する場合は、--enable-dns-updates オプションを追加して、クライアントシステムの IP アドレスで DNS レコードを更新します。

    • クライアントを登録する IdM サーバーが、統合 DNS とともにインストールされた場合。
    • ネットワーク上の DNS サーバーが、GSS-TSIG プロトコルを用いた DNS エントリー更新を受け入れる場合。
    # ipa-client-install --password 'W5YpARl=7M.n' --enable-dns-updates --mkhomedir

    DNS 更新を有効にすると、クライアントが以下の条件に当てはまる場合に便利です。

    • クライアントに、DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol) を使用して発行した動的 IP アドレスがある。
    • クライアントに、静的 IP アドレスが割り当てられたばかりで、IdM サーバーがそのアドレスを認識していない。
  2. インストールスクリプトは、DNS レコードなどの必要な設定をすべて自動的に取得しようとします。

    • IdM DNS ゾーンで SRV レコードが正しく設定されていると、スクリプトはその他に必要な値をすべて自動的に検出し、表示します。yes を入力して確定します。

      Client hostname: client.example.com
      Realm: EXAMPLE.COM
      DNS Domain: example.com
      IPA Server: server.example.com
      BaseDN: dc=example,dc=com
      
      Continue to configure the system with these values? [no]: yes
    • システムを別の値でインストールする場合は no を入力します。その後、ipa-client-install を再度実行し、コマンドラインオプションを ipa-client-install に追加して必要な値を指定します。以下に例を示します。

      • --hostname
      • --realm
      • --domain
      • --server
      • --mkhomedir
      重要

      完全修飾ドメイン名は、有効な DNS 名である必要があります。

      • 数字、アルファベット、およびハイフン (-) のみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
      • ホスト名がすべて小文字である。大文字は使用できません。
    • スクリプトが一部の設定を自動的に取得できなかった場合は、値を入力するように求められます。
  3. インストールスクリプトにより、クライアントが設定されます。動作が完了するまで待ちます。

    Client configuration complete.

関連情報

  • クライアントインストールスクリプトが DNS レコードを検索する方法は、ipa-client-install(1) の man ページにある DNS Autodiscovery セクションを参照してください。

14.4. クライアントのインストール: 非対話的なインストール

非対話的なインストールでは、コマンドラインオプションを使用して、ipa-client-install ユーティリティーに必要な情報をすべて提供する必要があります。ここでは、非対話的なインストールに最低限必要なオプションを説明します。

クライアント登録の認証方法のオプション

利用可能なオプションは以下のとおりです。

  • --principal および --password - クライアントを登録する権限のあるユーザーの認証情報を指定します。
  • --random - クライアントに対して無作為に生成されたワンタイムパスワードを指定します。
  • --keytab - 前回登録時のキータブを指定します。
無人インストールのオプション

--unattended オプション - ユーザーによる確認を必要とせずにインストールを実行できるようにします。

SRV レコードが IdM DNS ゾーンで正しく設定されている場合は、スクリプトが自動的に必要な値をすべて検出します。スクリプトが自動的に値を検出できない場合は、以下のようなコマンドラインオプションを使用して指定してください。

  • --hostname - クライアントマシンの静的完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。

    重要

    FQDN は有効な DNS 名である必要があります。

    • 数字、アルファベット、およびハイフンのみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。大文字は使用できません。
  • --domain - 既存の IdM デプロイメントのプライマリー DNS ドメインを指定します (例: example.com)。この名前は、IdM Kerberos レルム名を小文字で表しています。
  • --server - 接続する IdM サーバーの FQDN を指定します。このオプションが使用されると、Kerberos の DNS 自動検出が無効になり、KDC および管理サーバーの固定リストが設定されます。通常の状態では、サーバーのリストはプライマリー IdM DNS ドメインから取得されるため、このオプションは必須ではありません。
  • --realm - 既存の IdM デプロイメントの Kerberos レルムを指定します。通常、IdM インストールで使用するプライマリー DNS ドメインを大文字で表したものです。通常の状態では、レルム名は IdM サーバーから取得されるため、このオプションは必須ではありません。

非対話的なインストールを行う基本的な ipa-client-install コマンドの例は次のとおりです。

# ipa-client-install --password 'W5YpARl=7M.n' --mkhomedir --unattended

 

非対話的なインストールを行う、追加のオプションを指定した ipa-client-install コマンドの例は次のとおりです。

# ipa-client-install --password 'W5YpARl=7M.n' --domain idm.example.com --server server.idm.example.com --realm IDM.EXAMPLE.COM --mkhomedir --unattended

関連情報

  • ipa-client-install により許可されるオプションの完全リストは、ipa-client-install(1) の man ページを参照してください。

14.5. クライアントインストール後に事前設定された IdM の削除

ipa-client-install スクリプトは、/etc/openldap/ldap.conf ファイルおよび /etc/sssd/sssd.conf ファイルから、以前の LDAP 設定および System Security Services Daemon (SSSD) 設定を削除します。クライアントをインストールする前にこれらのファイルの設定を変更すると、スクリプトにより新しいクライアントの値が追加されますが、コメントアウトされます。以下に例を示します。

BASE   dc=example,dc=com
URI    ldap://ldap.example.com

#URI ldaps://server.example.com # modified by IPA
#BASE dc=ipa,dc=example,dc=com # modified by IPA

Identity Management (IdM) の新しい設定値を適用するには、以下を行います。

  1. /etc/openldap/ldap.conf および /etc/sssd/sssd.conf を開きます。
  2. 以前の設定を削除します。
  3. 新しい IdM 設定のコメントを解除します。
  4. システム全体の LDAP 設定に依存するサーバープロセスの中には、再起動しないと変更が適用されない場合があります。openldap ライブラリーを使用するアプリケーションでは通常、起動時に設定がインポートされます。

14.6. IdM クライアントのテスト

コマンドラインインターフェイスにより、ipa-client-install が正常に実行されたことが通知されますが、独自のテストを行うこともできます。

Identity Management (IdM) クライアントが、サーバーに定義したユーザーに関する情報を取得できることをテストするには、サーバーに定義したユーザーを解決できることを確認します。たとえば、デフォルトの admin ユーザーを確認するには、次のコマンドを実行します。

[user@client ~]$ id admin
uid=1254400000(admin) gid=1254400000(admins) groups=1254400000(admins)

認証が適切に機能することをテストするには、root 以外のユーザーで su を実行し、root に切り替えます。

[user@client ~]$ su -
Last login: Thu Oct 18 18:39:11 CEST 2018 from 192.168.122.1 on pts/0
[root@client ~]#

14.7. IdM クライアントのインストール時に実行する接続

IdM クライアントのインストール時に実行する要求 には、Identity Management (IdM) のクライアントインストールツールである ipa-client-install により実行される操作の一覧が記載されています。

表14.1 IdM クライアントのインストール時に実行する要求

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレスを検出。(任意) A/AAAA および SSHFP レコードを追加。

IdM レプリカ上のポート 88 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。

検出または設定された IdM サーバー上の IdM Apache ベースの Web サービスへの JSON-RPC 呼び出し

HTTPS

IdM クライアント登録。LDAP の方法が失敗した場合に CA 証明書チェーンを取得。必要な場合は証明書の発行を要求。

SASL GSSAPI 認証、プレーン LDAP、またはこの両方を使用した、IdM サーバー上のポート 389 (TCP/TCP6) への要求

LDAP

IdM クライアント登録、SSSD プロセスによるアイデンティティーの取得、ホストプリンシパルの Kerberos キーの取得。

ネットワークタイムプロトコル (NTP) の検出および解決 (任意)

NTP

クライアントシステムと NTP サーバー間の時間を同期。

14.8. インストール後のデプロイメント実行時の IdM クライアントのサーバーとの通信

Identity Management (IdM) フレームワークのクライアント側は 2 つの異なるアプリケーションで実装されます。

  • ipa コマンドラインインターフェイス (CLI)
  • (オプション) ブラウザーベースの Web UI

CLI のインストール後の操作 は、IdM クライアントのインストール後のデプロイメント実行時に CLI により実行される操作を表示します。Web UI のインストール後の操作 は、IdM クライアントのポストインストールのデプロイメント実行時に Web UI により実行される操作を示します。

表14.2 CLI のインストール後の操作

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレス検出。

IdM レプリカ上のポート 88 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) およびポート 464 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。Kerberos パスワードの変更。IdM Web UI への認証。

検出または設定された IdM サーバー上の IdM Apache ベースの Web サービスへの JSON-RPC 呼び出し

HTTPS

ipa ユーティリティーの使用。

表14.3 Web UI のインストール後の操作

操作使用プロトコル目的

検出または設定された IdM サーバー上の IdM Apache ベースの Web サービスへの JSON-RPC 呼び出し

HTTPS

IdM Web UI ページの取得。

関連情報

  • SSSD デーモンが IdM および Active Directory サーバーで利用可能なサービスと通信する方法の詳細は、SSSD 通信パターン を参照してください。
  • certmonger デーモンが IdM および Active Directory サーバーで利用可能なサービスと通信する方法の詳細は、Certmonger 通信パターン を参照してください。

14.9. SSSD 通信パターン

システムセキュリティーサービスデーモン (System Security Services Daemon: SSSD) は、リモートディレクトリーと認証メカニズムにアクセスするシステムサービスです。Identity Management (IdM) クライアントに設定すると、認証、認可、その他の ID 情報、およびその他のポリシー情報を提供する IdM サーバーに接続します。IdM サーバーと Active Directory (AD) が信頼関係にある場合、SSSD は AD にも接続し、Kerberos プロトコルを使用して AD ユーザーの認証を実行します。デフォルトでは SSSD は Kerberos を使用してローカル以外のユーザーを認証します。特別な状況では、代わりに LDAP プロトコルを使用するように SSSD を設定することがあります。

SSSD は、複数のサーバーと通信するように設定できます。以下の表は、IdM での SSSD の一般的な通信パターンを示しています。

表14.4 IdM サーバーとの通信時における IdM クライアントの SSSD の通信パターン

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレス検出。

Identity Management レプリカおよび Active Directory ドメインコントローラー上のポート 88 (TCP/TCP6 と UDP/UDP6)、464 (TCP/TCP6 と UDP/UDP6)、および 749 (TCP/TCP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。Kerberos パスワードの変更。

SASL GSSAPI 認証、プレーン LDAP、またはこの両方を使用した、IdM サーバー上のポート 389 (TCP/TCP6) への要求

LDAP

IdM ユーザーおよびホストの情報を取得。HBAC および sudo ルールのダウンロード。マップ、SELinux ユーザーコンテキスト、SSH 公開鍵、および IdM LDAP に保存されるその他の情報の自動マウント。

(任意) スマートカード認証の場合、OCSP (Online Certificate Status Protocol) レスポンダーへの要求 (設定されている場合)。通常、ポート 80 で行われますが、クライアント証明書にある OCSP レスポンダー URL の実際の値により異なります。

HTTP

スマートカードにインストールされた証明書の状態に関する情報の取得。

表14.5 Active Directory ドメインコントローラーとの通信時における信頼エージェントとして機能する IdM サーバー上の SSSD の通信パターン

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレス検出。

Identity Management レプリカおよび Active Directory ドメインコントローラー上のポート 88 (TCP/TCP6 と UDP/UDP6)、464 (TCP/TCP6 と UDP/UDP6)、および 749 (TCP/TCP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。Kerberos パスワードの変更。Kerberos をリモートで管理。

ポート 389 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) およびポート 3268 (TCP/TCP6) への要求

LDAP

Active Directory ユーザーおよびグループ情報のクエリー。Active Directory ドメインコントローラーの検出。

(任意) スマートカード認証の場合、OCSP (Online Certificate Status Protocol) レスポンダーへの要求 (設定されている場合)。通常、ポート 80 で行われますが、クライアント証明書にある OCSP レスポンダー URL の実際の値により異なります。

HTTP

スマートカードにインストールされた証明書の状態に関する情報の取得。

14.10. Certmonger の通信パターン

Certmonger は、Identity Management (IdM) サーバーおよび IdM クライアント上で実行するデーモンで、ホスト上のサービスに関連する SSL 証明書の更新を適時更新できるようにします。表14.6「Certmonger の通信パターン」 は、IdM サーバーで certmonger ユーティリティーにより実行される操作を示しています。

表14.6 Certmonger の通信パターン

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレス検出。

IdM レプリカ上のポート 88 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) およびポート 464 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。

検出または設定された IdM サーバー上の IdM Apache ベースの Web サービスへの JSON-RPC 呼び出し

HTTPS

新しい証明書の要求。

IdM サーバーのポート 8080 (TCP/TCP6) でのアクセス

HTTP

OCSP (Online Certificate Status Protocol) レスポンダーおよび証明書の状態の取得。

(最初にインストールされたサーバーまたは証明書の追跡が移動したサーバー上) IdM サーバーのポート 8443 (TCP/TCP6) でのアクセス

HTTPS

IdM サーバー上での認証局の管理 (IdM サーバーおよびレプリカのインストール時のみ)。サーバーの certmonger は、CA 関連の証明書の更新のために、ポート 8080 および 8443 上の独自のローカルサーバーにのみ接続します。

第15章 キックスタートによる IdM クライアントのインストール

キックスタートの登録により、Red Hat Enterprise Linux のインストール時に新しいシステムが自動的に Identity Management (IdM) ドメインに追加されます。

15.1. キックスタートによるクライアントのインストール

以下の手順に従って、キックスタートファイルを使用して Identity Management (IdM) クライアントをインストールします。

前提条件

  • キックスタートの登録前に sshd サービスを開始しない。クライアントを登録する前に sshd を開始すると、SSH キーが自動的に生成されますが、「クライアントインストール用のキックスタートファイル」 のキックスタートファイルは同じ目的でスクリプトを使用し、これが推奨される方法になります。

手順

  1. IdM サーバーでホストエントリーを事前作成し、エントリーの一時パスワードを設定します。

    $ ipa host-add client.example.com --password=secret

    キックスタートがこのパスワードを使用して、クライアントのインストール時に認証し、最初の認証試行後に無効にします。クライアントが正常にインストールされると、キータブを使用して認証が行われます。

  2. 「クライアントインストール用のキックスタートファイル」 に記載されている内容でキックスタートファイルを作成します。network コマンドを使用して、ネットワークがキックスタートファイルで適切に設定されているようにしてください。
  3. キックスタートファイルを使用して、IdM クライアントをインストールします。

15.2. クライアントインストール用のキックスタートファイル

キックスタートファイルを使用して、Identity Management (IdM) クライアントをインストールできます。キックスタートファイルの内容は、こちらで概説されている特定の要件を満たしている必要があります。

インストールするパッケージリストに含まれる ipa-client パッケージ

キックスタートファイルの %packages セクションに、ipa-client パッケージを追加します。以下に例を示します。

%packages
...
ipa-client
...
IdM クライアントのインストール後の手順

インストール後の手順には以下が含まれている必要があります。

  • 登録前に SSH キーが確実に生成されるようにする手順
  • 以下を指定して ipa-client-install ユーティリティーを実行する手順

たとえば、ワンタイムパスワードを使用し、DNS からではなくコマンドラインから必要なオプションを取得するキックスタートインストールのポストインストール手順は次のようになります。

%post --log=/root/ks-post.log

# Generate SSH keys; ipa-client-install uploads them to the IdM server by default
/usr/libexec/openssh/sshd-keygen rsa

# Run the client install script
/usr/sbin/ipa-client-install --hostname=client.example.com --domain=EXAMPLE.COM --enable-dns-updates --mkhomedir -w secret --realm=EXAMPLE.COM --server=server.example.com

任意で、キックスタートファイルに以下のような他のオプションを含めることもできます。

  • 非対話的なインストールでは、--unattended オプションを ipa-client-install に追加します。
  • クライアントのインストールスクリプトがマシンの証明書を要求できるようにするには、以下を行います。

    • --request-cert オプションを ipa-client-install に追加します。
    • キックスタートの chroot 環境で、getcert ユーティリティーおよび ipa-client-install ユーティリティーの両方に対して /dev/null にシステムバスのアドレスを設定します。これには、キックスタートファイルのポストインストール手順で ipa-client-install 手順の前に次の行を追加します。

      # env DBUS_SYSTEM_BUS_ADDRESS=unix:path=/dev/null getcert list
      # env DBUS_SYSTEM_BUS_ADDRESS=unix:path=/dev/null ipa-client-install

15.3. IdM クライアントのテスト

コマンドラインインターフェイスにより、ipa-client-install が正常に実行されたことが通知されますが、独自のテストを行うこともできます。

Identity Management (IdM) クライアントが、サーバーに定義したユーザーに関する情報を取得できることをテストするには、サーバーに定義したユーザーを解決できることを確認します。たとえば、デフォルトの admin ユーザーを確認するには、次のコマンドを実行します。

[user@client ~]$ id admin
uid=1254400000(admin) gid=1254400000(admins) groups=1254400000(admins)

認証が適切に機能することをテストするには、root 以外のユーザーで su を実行し、root に切り替えます。

[user@client ~]$ su -
Last login: Thu Oct 18 18:39:11 CEST 2018 from 192.168.122.1 on pts/0
[root@client ~]#

第16章 IdM クライアントのインストールに関するトラブルシューティング

次のセクションでは、失敗した IdM クライアントのインストールについての情報を収集する方法、一般的なインストールの問題を解決する方法を説明します。

16.1. IdM クライアントのインストールエラーの確認

Identity Management(IdM) クライアントをインストールすると、デバッグ情報が /var/log/ipaclient-install.log に追加されます。クライアントのインストールに失敗した場合には、インストーラーは障害をログに記録し、変更をロールバックしてホストに変更を加えます。インストールが失敗する理由は、インストーラーがロールバック手順も記録するため、ログファイルの最後には存在しない可能性があります。

失敗した IdM クライアントのインストールをトラブルシューティングするには、/var/log/ipaclient-install.log ファイルの ScriptError とラベルが付いた行を確認し、この情報を使用して、対応する問題を解決します。

前提条件

  • IdM ログファイルの内容を表示するには、root 権限が必要である。

手順

  1. grep ユーティリティーを使用して、/var/log/ipaserver-install.log ファイルからキーワード ScriptError があれば、すべて取得します。

    [user@server ~]$ sudo grep ScriptError /var/log/ipaclient-install.log
    [sudo] password for user:
    2020-05-28T18:24:50Z DEBUG The ipa-client-install command failed, exception: ScriptError: One of password / principal / keytab is required.
  2. ログファイルを対話的に確認するには、less ユーティリティーを使用してログファイルの最後を開き、 および キーを使用して移動します。

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipaclient-install.log

関連情報

16.2. クライアントインストールが DNS レコードの更新に失敗した場合の問題の解決

IdM クライアントインストーラーは、nsupdate コマンドで PTR、SSHFP、および追加の DNS レコードを作成します。ただし、クライアントソフトウェアのインストールおよび設定後にクライアントが DNS レコードを更新できない場合には、インストールプロセスは失敗します。

この問題を修正するには、/var/log/client-install.log で設定を確認し、DNS エラーを確認します。

前提条件

  • IdM 環境の DNS ソリューションとして IdM DNS を使用している。

手順

  1. クライアントが所属する DNS ゾーンの動的更新が有効になっていることを確認します。

    [user@server ~]$ ipa dnszone-mod idm.example.com. --dynamic-update=TRUE
  2. DNS サービスを実行している IdM サーバーで、TCP プロトコルと UDP プロトコルの両方でポート 53 が開かれていることを確認します。

    [user@server ~]$ sudo firewall-cmd --permanent --add-port=53/tcp --add-port=53/udp
    [sudo] password for user:
    success
    [user@server ~]$ firewall-cmd --runtime-to-permanent
    success
  3. grep ユーティリティーを使用して、/var/log/client-install.log から nsupdate コマンドの内容を取得し、どの DNS レコードの更新に失敗しているかを確認します。

    [user@server ~]$ sudo grep nsupdate /var/log/ipaclient-install.log

関連情報

16.3. クライアントのインストールが IdM Kerberos レルムへの参加に失敗した場合の問題の解決

クライアントが IdM Kerberos レルムに参加できない場合には、IdM クライアントのインストールプロセスに失敗します。

Joining realm failed: Failed to add key to the keytab
child exited with 11

Installation failed. Rolling back changes.

空の Kerberos キータブが原因で、これに失敗します。

前提条件

  • システムファイルを削除するには、root 権限が必要です。

手順

  1. /etc/krb5.keytab を削除します。

    [user@client ~]$ sudo rm /etc/krb5.keytab
    [sudo] password for user:
    [user@client ~]$ ls /etc/krb5.keytab
    ls: cannot access '/etc/krb5.keytab': No such file or directory
  2. IdM クライアントのインストールを再試行します。

関連情報

16.4. 関連情報

第17章 IdM クライアントの再登録

クライアントのハードウェア障害などの理由で、クライアントマシンが破壊され、IdM サーバーとの接続が失われた場合は、キータブがあればクライアントを再登録できます。この場合は、同じホスト名でクライアントを IdM 環境に戻します。

17.1. IdM におけるクライアントの再登録

クライアントのハードウェア障害などの理由で、クライアントマシンが破壊され、IdM サーバーとの接続が失われた場合は、キータブがあればクライアントを再登録できます。この場合は、同じホスト名でクライアントを IdM 環境に戻します。

再登録の間、クライアントは新しい鍵 (Kerberos および SSH ) を生成しますが、LDAP データベースのクライアントのアイデンティティーは変更されません。再登録後、ホストは、IdM サーバーとの接続を失う前と同じ FQDN を持つ同じ LDAP オブジェクトに、キーとその他の情報を保持します。

重要

ドメインエントリーがアクティブなクライアントのみを再登録できます。クライアントをアンインストール (ipa-client-install --uninstall を使用) した場合や、ホストエントリーを無効 (ipa host-disable を使用) にした場合は再登録できません。

クライアントの名前を変更すると、再登録することができません。これは、IdM では、LDAP にあるクライアントのエントリーのキー属性がクライアントのホスト名 (FQDN) であるためです。クライアントの再登録中はクライアントの LDAP オブジェクトは変更されませんが、クライアントの名前を変更すると、クライアントの鍵とその他の情報は新しい FQDN を持つ異なる LDAP オブジェクトに格納されます。そのため、IdM からホストをアンインストールし、ホストのホスト名を変更して、新しい名前で IdM クライアントとしてインストールするのが、クライアントの名前を変更する唯一の方法です。クライアントの名前を変更する方法は IdM クライアントシステムの名前変更 を参照してください。

クライアント再登録中に行われること

再登録時に、IdM は以下を行います。

  • 元のホスト証明書を破棄する。
  • 新規の SSH 鍵を作成する。
  • 新規のキータブを生成する。

17.2. ユーザー認証情報でクライアントの再登録: 対話的な再登録

以下の手順に従って、承認されたユーザーのクレデンシャルを使用して、Identity Management (IdM) クライアントを対話的に再登録します。

  1. 同じホスト名のクライアントマシンを再作成します。
  2. クライアントマシンで ipa-client-install --force-join コマンドを実行します。

    # ipa-client-install --force-join
  3. スクリプトにより、アイデンティティーがクライアントの再登録に使用されるユーザーの入力が求められます。たとえば、登録管理者 (Enrollment Administrator) ロールを持つ hostadmin ユーザーなどが該当します。

    User authorized to enroll computers: hostadmin
    Password for hostadmin@EXAMPLE.COM:

関連情報

17.3. クライアントのキータブでクライアントの再登録: 非対話的な再登録

前提条件

  • /tmp/root などのディレクトリーに元のクライアントキータブファイルをバックアップします。

手順

以下の手順に従って、クライアントシステムのキータブを使用して、Identity Management (IdM) クライアントを非対話的に再登録します。たとえば、クライアントのキータブを使用した再登録は自動インストールに適しています。

  1. 同じホスト名のクライアントマシンを再作成します。
  2. バックアップした場所から、再作成したクライアントマシンの /etc/ ディレクトリーにキータブファイルをコピーします。
  3. ipa-client-install ユーティリティーを使用してクライアントを再登録し、--keytab オプションでキータブの場所を指定します。

    # ipa-client-install --keytab /etc/krb5.keytab
    注記

    登録を開始するために認証する場合は、--keytab オプションで指定するキータブのみが使用されます。再登録中、IdM はクライアントに対して新しいキータブを生成します。

17.4. IdM クライアントのテスト

コマンドラインインターフェイスにより、ipa-client-install が正常に実行されたことが通知されますが、独自のテストを行うこともできます。

Identity Management (IdM) クライアントが、サーバーに定義したユーザーに関する情報を取得できることをテストするには、サーバーに定義したユーザーを解決できることを確認します。たとえば、デフォルトの admin ユーザーを確認するには、次のコマンドを実行します。

[user@client ~]$ id admin
uid=1254400000(admin) gid=1254400000(admins) groups=1254400000(admins)

認証が適切に機能することをテストするには、root 以外のユーザーで su を実行し、root に切り替えます。

[user@client ~]$ su -
Last login: Thu Oct 18 18:39:11 CEST 2018 from 192.168.122.1 on pts/0
[root@client ~]#

第18章 IdM クライアントのアンインストール

管理者は、環境から Identity Management (IdM) クライアントを削除できます。

18.1. IdM クライアントのアンインストール

クライアントをアンインストールすると、クライアントが Identity Management (IdM) ドメインから削除され、SSSD (System Security Services Daemon) などの特定のシステムサービスの IdM 設定もすべて削除されます。これにより、クライアントシステムの以前の設定が復元します。

手順

  1. ipa-client-install --uninstall コマンドを入力します。

    [root@client ~]# ipa-client-install --uninstall
  2. (オプション) IdM ユーザーの Kerberos Ticket-granting Ticket (TGT) を取得できないことを確認します。

    [root@client ~]# kinit admin
    kinit: Client 'admin@EXAMPLE.COM' not found in Kerberos database while getting initial credentials
    [root@client ~]#

    Kerberos TGT チケットが正常に返された場合には、IdM クライアントのアンインストール: 以前に複数回インストールを行った場合の追加手順 にあるアンインストール手順を実行してください。

  3. クライアントで、特定した Keytab から以前の Kerberos プリンシパル (/etc/krb5.keytab を除く) を削除します。

    [root@client ~]# ipa-rmkeytab -k /path/to/keytab -r EXAMPLE.COM
  4. IdM サーバーで、IdM からクライアントホストの DNS エントリーをすべて削除します。

    [root@server ~]# ipa dnsrecord-del
    Record name: old-client-name
    Zone name: idm.example.com
    No option to delete specific record provided.
    Delete all? Yes/No (default No): yes
    ------------------------
    Deleted record "old-client-name"
  5. IdM サーバーで、IdM LDAP サーバーからクライアントホストエントリーを削除します。これにより、すべてのサービスが削除され、そのホストに発行されたすべての証明書が無効になります。

    [root@server ~]# ipa host-del client.idm.example.com
    重要

    クライアントホストエントリーを、別の IP アドレスまたは別のホスト名を使用して今後再登録する場合に、IdM LDAP サーバーからクライアントホストエントリーを削除することが重要です。

18.2. IdM クライアントのアンインストール: 以前に複数回インストールを行った場合の追加手順

ホストを Identity Management (IdM) クライアントとして複数回、インストールしてアンインストールすると、アンインストール手順で IdM Kerberos 設定が復元されない可能性があります。

このような場合は、IdM Kerberos 設定を手動で削除する必要があります。極端なケースでは、オペレーティングシステムを再インストールする必要があります。

前提条件

  • ipa-client-install --uninstall コマンドを使用して、ホストから IdM クライアント設定をアンインストールしている。ただし、IdM サーバーから IdM ユーザーの Kerberos Ticket-granting Ticket (TGT) をまだ取得できます。
  • /var/lib/ipa-client/sysrestore ディレクトリーが空で、ディレクトリー内のファイルを使用してシステムの以前の IdM クライアント設定を復元できないことを確認している。

手順

  1. /etc/krb5.conf.ipa ファイルを確認します。

    • /etc/krb5.conf.ipa ファイルの内容が、IdM クライアントのインストール前の krb5.conf ファイルの内容と同じ場合は、以下の手順を実行します。

      1. /etc/krb5.conf ファイルを削除します。

        # rm /etc/krb5.conf
      2. /etc/krb5.conf.ipa ファイルの名前を /etc/krb5.conf に変更します。

        # mv /etc/krb5.conf.ipa /etc/krb5.conf
    • /etc/krb5.conf.ipa ファイルの内容が、IdM クライアントのインストール前の krb5.conf ファイルの内容と同じでない場合には、オペレーティングシステムのインストール直後の状態には Kerberos 設定を復元できます。
    1. krb5-libs パッケージを再インストールします。

      # yum reinstall krb5-libs

      このコマンドは、依存関係として krb5-workstation パッケージと、/etc/krb5.conf ファイルの元のバージョンを再インストールします。

  2. var/log/ipaclient-install.log ファイルが存在する場合は削除します。

検証手順

  • IdM ユーザー認証情報の取得を試みます。取得には失敗するはずです。

    [root@r8server ~]# kinit admin
    kinit: Client 'admin@EXAMPLE.COM' not found in Kerberos database while getting initial credentials
    [root@r8server ~]#

/etc/krb5.conf ファイルは、出荷時状態に復元されています。したがって、ホスト上の IdM ユーザーの Kerberos TGT を取得できません。

第19章 IdM クライアントシステムの名前変更

ここでは、Identity Management (IdM) クライアントシステムのホスト名を変更する方法を説明します。

警告

クライアントの名前は手動で変更します。ホスト名の変更が絶対に必要である場合のみ実行してください。

IdM クライアントの名前を変更するには、以下を行います。

  1. ホストを準備します。詳細は、名前を変更するための IdM クライアントの準備 を参照してください。
  2. ホストから IdM クライアントをアンインストールします。詳しくは クライアントのアンインストール を参照してください。
  3. ホストの名前を変更します。詳しくは クライアントの名前の変更 を参照してください。
  4. 新しい名前でホストに IdM クライアントをインストールします。詳しくは クライアントの再インストール を参照してください。
  5. IdM クライアントのインストール後にホストを設定します。詳しくはサービスの再追加、証明書の再生成、およびホストグループの再追加 を参照してください。

19.1. 名前を変更するための IdM クライアントの準備

現在のクライアントをアンインストールする前に、クライアントの設定を書き留めます。新しいホスト名のマシンを再登録した後にこの設定を適用します

  • マシンで実行しているサービスを特定します。

    • ipa service-find コマンドを使用して、証明書のあるサービスを特定して出力します。

      $ ipa service-find old-client-name.example.com
    • さらに、各ホストには ipa service-find の出力に表示されないデフォルトの host service があります。ホストサービスのサービスプリンシパルは ホストプリンシパル とも呼ばれ、host/old-client-name.example.com になります。
  • ipa service-find old-client-name.example.com により表示されるすべてのサービスプリンシパルは、old-client-name.example.com 上の対応するキータブの場所を決定します。

    # find / -name "*.keytab"

    クライアントシステムの各サービスには、ldap/old-client-name.example.com@EXAMPLE.COM のように service_name/host_name@REALM の形式を取る Kerberos プリンシパルがあります。

  • マシンが所属するすべてのホストグループを特定します。

    # ipa hostgroup-find old-client-name.example.com

19.2. IdM クライアントのアンインストール

クライアントをアンインストールすると、クライアントが Identity Management (IdM) ドメインから削除され、SSSD (System Security Services Daemon) などの特定のシステムサービスの IdM 設定もすべて削除されます。これにより、クライアントシステムの以前の設定が復元します。

手順

  1. ipa-client-install --uninstall コマンドを入力します。

    [root@client ~]# ipa-client-install --uninstall
  2. (オプション) IdM ユーザーの Kerberos Ticket-granting Ticket (TGT) を取得できないことを確認します。

    [root@client ~]# kinit admin
    kinit: Client 'admin@EXAMPLE.COM' not found in Kerberos database while getting initial credentials
    [root@client ~]#

    Kerberos TGT チケットが正常に返された場合には、IdM クライアントのアンインストール: 以前に複数回インストールを行った場合の追加手順 にあるアンインストール手順を実行してください。

  3. クライアントで、特定した Keytab から以前の Kerberos プリンシパル (/etc/krb5.keytab を除く) を削除します。

    [root@client ~]# ipa-rmkeytab -k /path/to/keytab -r EXAMPLE.COM
  4. IdM サーバーで、IdM からクライアントホストの DNS エントリーをすべて削除します。

    [root@server ~]# ipa dnsrecord-del
    Record name: old-client-name
    Zone name: idm.example.com
    No option to delete specific record provided.
    Delete all? Yes/No (default No): yes
    ------------------------
    Deleted record "old-client-name"
  5. IdM サーバーで、IdM LDAP サーバーからクライアントホストエントリーを削除します。これにより、すべてのサービスが削除され、そのホストに発行されたすべての証明書が無効になります。

    [root@server ~]# ipa host-del client.idm.example.com
    重要

    クライアントホストエントリーを、別の IP アドレスまたは別のホスト名を使用して今後再登録する場合に、IdM LDAP サーバーからクライアントホストエントリーを削除することが重要です。

19.3. IdM クライアントのアンインストール: 以前に複数回インストールを行った場合の追加手順

ホストを Identity Management (IdM) クライアントとして複数回、インストールしてアンインストールすると、アンインストール手順で IdM Kerberos 設定が復元されない可能性があります。

このような場合は、IdM Kerberos 設定を手動で削除する必要があります。極端なケースでは、オペレーティングシステムを再インストールする必要があります。

前提条件

  • ipa-client-install --uninstall コマンドを使用して、ホストから IdM クライアント設定をアンインストールしている。ただし、IdM サーバーから IdM ユーザーの Kerberos Ticket-granting Ticket (TGT) をまだ取得できます。
  • /var/lib/ipa-client/sysrestore ディレクトリーが空で、ディレクトリー内のファイルを使用してシステムの以前の IdM クライアント設定を復元できないことを確認している。

手順

  1. /etc/krb5.conf.ipa ファイルを確認します。

    • /etc/krb5.conf.ipa ファイルの内容が、IdM クライアントのインストール前の krb5.conf ファイルの内容と同じ場合は、以下の手順を実行します。

      1. /etc/krb5.conf ファイルを削除します。

        # rm /etc/krb5.conf
      2. /etc/krb5.conf.ipa ファイルの名前を /etc/krb5.conf に変更します。

        # mv /etc/krb5.conf.ipa /etc/krb5.conf
    • /etc/krb5.conf.ipa ファイルの内容が、IdM クライアントのインストール前の krb5.conf ファイルの内容と同じでない場合には、オペレーティングシステムのインストール直後の状態には Kerberos 設定を復元できます。
    1. krb5-libs パッケージを再インストールします。

      # yum reinstall krb5-libs

      このコマンドは、依存関係として krb5-workstation パッケージと、/etc/krb5.conf ファイルの元のバージョンを再インストールします。

  2. var/log/ipaclient-install.log ファイルが存在する場合は削除します。

検証手順

  • IdM ユーザー認証情報の取得を試みます。取得には失敗するはずです。

    [root@r8server ~]# kinit admin
    kinit: Client 'admin@EXAMPLE.COM' not found in Kerberos database while getting initial credentials
    [root@r8server ~]#

/etc/krb5.conf ファイルは、出荷時状態に復元されています。したがって、ホスト上の IdM ユーザーの Kerberos TGT を取得できません。

19.4. ホストシステムの名前変更

必要に応じてマシンの名前を変更します。以下に例を示します。

# hostnamectl set-hostname new-client-name.example.com

これで、新しいホスト名で、Identity Management (IdM) クライアントを IdM ドメインに再インストールできるようになります。

19.5. IdM クライアントの再インストール

クライアントのインストール の手順に従って、名前を変更したホストにクライアントをインストールします。

19.6. サービスの再追加、証明書の再生成、およびホストグループの再追加

手順

  1. Identity Management (IdM) サーバーで、名前を変更するための IdM クライアントの準備 に定義された各サービスに新しいキータブを追加します。

    [root@server ~]# ipa service-add service_name/new-client-name
  2. 名前を変更するための IdM クライアントの準備 で割り当てた証明書のあるサービスに対して証明書を生成します。これには、以下を行います。

    • IdM 管理ツールの使用
    • certmonger ユーティリティーの使用
  3. 名前を変更するための IdM クライアントの準備 で特定されたホストグループにクライアントを再追加します。

第20章 IdM レプリカをインストールするためのシステムの準備

ここでは、Identity Management (IdM) レプリカのインストール要件を取り上げます。インストールの前に、システムがこれらの要件を満たしていることを確認してください。

  1. ターゲットシステムが、IdM サーバーのインストールに関する一般的な要件を満たしている ことを確認してください。
  2. ターゲットシステムが、IdM レプリカのインストールに関する追加のバージョン要件を満たしている ことを確認してください。
  3. ターゲットシステムを IdM ドメインに登録する権限を付与します。詳細については、ニーズに最適な次のセクションのいずれかを参照してください。

20.1. レプリカバージョンの要件

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 8 レプリカは、RHEL 7.4 以降で実行している Identity Management (IdM) サーバーとのみ機能します。RHEL 8 で実行している IdM レプリカを既存のデプロイメントに導入する前に、すべての IdM サーバーを RHEL 7.4 以降にアップグレードし、ドメインレベルを 1 に変更します。

さらに、レプリカが、同じまたはそれ以降のバージョンの IdM を実行している必要があります。以下に例を示します。

  • Red Hat Enterprise Linux 8 に IdM サーバーをインストールし、IdM 4.x パッケージを使用している。
  • レプリカが Red Hat Enterprise Linux 8 以降にインストールされ、バージョン 4.x 以降の IdM を使用している。

これにより、設定が適切にサーバーからレプリカにコピーされます。

IdM ソフトウェアバージョンの表示方法は、IdM ソフトウェアのバージョンを表示する方法 を参照してください。

20.2. IdM ソフトウェアのバージョンを表示する方法

IdM バージョン番号は次の方法で表示できます。

  • IdM WebUI
  • ipa コマンド
  • rpm コマンド

 

WebUI を介したバージョンの表示

IdM WebUI では、右上のユーザー名メニューから About を選択して、ソフトウェアバージョンを表示できます。

IdM ソフトウェアバージョンの確認
ipa コマンドによるバージョンの表示

コマンドラインから、ipa --version コマンドを使用します。

[root@server ~]# ipa --version
VERSION: 4.8.0, API_VERSION: 2.233
rpm コマンドによるバージョンの表示

IdM サービスが適切に動作していない場合は、rpm ユーティリティーを使用して、現在インストールされている ipa-server パッケージのバージョン番号を確認できます。

[root@server ~]# rpm -q ipa-server
ipa-server-4.8.0-11.module+el8.1.0+4247+9f3fd721.x86_64

20.3. IdM クライアントでのレプリカのインストールの認可

ipa-replica-install ユーティリティーを実行して既存の Identity Management (IdM) クライアントを レプリカのインストール する場合は、以下の 方法 1 または 方法 2 を選択して、レプリカのインストールを認証します。以下のいずれかが当てはまる場合は、方法 1 を選択します。

  • 上級システム管理者に手順の初期部分を実行させ、下級システム管理者にその他の作業を実行させたい場合。
  • レプリカのインストールを自動化する。
方法 1 - ipaservers ホストグループ
  1. IdM 管理者として IdM ホストにログインします。

    $ kinit admin
  2. クライアントマシンを ipaservers ホストグループに追加します。

    $ ipa hostgroup-add-member ipaservers --hosts client.idm.example.com
      Host-group: ipaservers
      Description: IPA server hosts
      Member hosts: server.idm.example.com, client.idm.example.com
    -------------------------
    Number of members added 1
    -------------------------
注記

ipaservers グループのメンバーシップは、管理者の認証情報と同様に、マシンに昇格した特権を付与します。したがって、次の手順では、ipa-replica-install ユーティリティーを、経験豊富ではないシステム管理者が、ホストで正常に実行できます。

方法 2 - 特権ユーザーの認証情報

特権ユーザーの認証情報を提供することで、レプリカのインストールを認可するには、以下のいずれかの方法を選択します。

  • ipa-replica-install ユーティリティーを起動したら、Identity Management (IdM) から認証情報の入力を求められます。これがデフォルトの動作です。
  • ipa-replica-install ユーティリティーを実行する直前に、特権ユーザーとしてクライアントにログインします。デフォルトの特権ユーザーは admin です。

    $ kinit admin

関連情報

20.4. IdM に登録されていないシステムでのレプリカのインストールの認可

Identity Management (IdM) ドメインに登録されていないシステムで レプリカのインストール を行う場合、ipa-replica-install ユーティリティーはまずシステムをクライアントとして登録してから、レプリカコンポーネントをインストールします。このシナリオでは、以下の 方法 1 または 方法 2 を選択して、レプリカのインストールを認証します。以下のいずれかが当てはまる場合は、方法 1 を選択します。

  • 上級システム管理者に手順の初期部分を実行させ、下級システム管理者にその他の作業を実行させたい場合。
  • レプリカのインストールを自動化する。
方法 1 - IdM サーバーで生成されたランダムなパスワード

ドメイン内の任意のサーバーで、次のコマンドを入力します。

  1. 管理者としてログインします。

    $ kinit admin
  2. 外部システムを IdM ホストとして追加します。ipa host-add コマンドに --random オプションを使用して、後続のレプリカのインストールに使用される無作為なワンタイムパスワードを生成します。

    $ ipa host-add replica.example.com --random
    --------------------------------------------------
    Added host "replica.example.com"
    --------------------------------------------------
      Host name: replica.example.com
      Random password: W5YpARl=7M.n
      Password: True
      Keytab: False
      Managed by: server.example.com

    生成されたパスワードは、IdM ドメインへのマシン登録に使用した後は無効になります。登録の完了後、このパスワードは適切なホストキータブに置き換えられます。

  3. システムを ipaservers ホストグループに追加します。

    $ ipa hostgroup-add-member ipaservers --hosts replica.example.com
      Host-group: ipaservers
      Description: IPA server hosts
      Member hosts: server.example.com, replica.example.com
    -------------------------
    Number of members added 1
    -------------------------
注記

ipaservers グループのメンバーシップは、管理者の認証情報と同様に、マシンに昇格した特権を付与します。したがって、次の手順では、生成されたランダムパスワードを提供する経験豊富ではないシステム管理者により、ホストで ipa-replica-install ユーティリティーを正常に実行できます。

方法 2 - 特権ユーザーの認証情報

この方法を使用し、特権ユーザーの認証情報を提供してレプリカのインストールを承認してください。デフォルトの特権ユーザーは admin です。

IdM レプリカインストールユーティリティーを実行する前に、アクションは必要ありません。インストール時に、ipa-replica-install コマンドにプリンシパル名およびパスワードのオプション (--principal admin --admin-password パスワード) を直接追加します。

関連情報

第21章 IdM レプリカのインストール

次のセクションでは、Identity Management (IdM) レプリカをインストールする方法を説明します。レプリカのインストールプロセスでは、既存のサーバーの設定をコピーし、その設定を基にしてレプリカをインストールします。

前提条件

注記

一度に IdM レプリカをインストールします。同時に複数のレプリカをインストールすることはサポートされません。

手順

各タイプのレプリカのインストール手順は、以下を参照してください。

レプリカのインストール手順をトラブルシューティングするには、以下を参照してください。

インストール後は、以下を参照してください。

21.1. 統合 DNS および CA を使用した IdM レプリカのインストール

以下の手順に従って、Identity Management (IdM) レプリカをインストールします。

  • 統合 DNS あるサーバー
  • 認証局 (CA) あり

これは、たとえば、統合 CA で IdM サーバーをインストールした後に、耐障害性のために CA サービスを複製します。

重要

CA のあるレプリカを設定する場合は、レプリカの CA 設定がサーバーの CA 設定を反映する必要があります。

たとえば、サーバーに統合された IdM CA がルート CA として含まれている場合は、新しいレプリカも統合 CA をルート CA としてインストールする必要があります。この場合、他の CA 設定は使用できません。

ipa-replica-install コマンドに --setup-ca オプションを含めると、初期サーバーの CA 設定がコピーされます。

前提条件

手順

  1. 以下のオプションを使用して、ipa-replica-install を実行します。

    • レプリカを DNS サーバーとして設定する --setup-dns
    • --forwarder - サーバーごとのフォワーダーを指定します。サーバーごとのフォワーダーを使用しない場合は --no-forwarder を指定します。フェイルオーバーのためにサーバーごとのフォワーダーを複数指定するには、--forwarder を複数回使用します。

      注記

      ipa-replica-install ユーティリティーは、--no-reverse--no-host-dns などの DNS 設定に関する複数のオプションを受け入れます。詳細は、ipa-replica-install(1) の man ページを参照してください。

    • レプリカに CA を含める --setup-ca

    たとえば、IdM サーバーが管理していないすべての DNS 要求を、IP アドレス 192.0.2.1 で実行している DNS サーバーに転送する統合 DNS サーバーおよび CA にレプリカをセットアップするには、次のコマンドを実行します。

    # ipa-replica-install --setup-dns --forwarder 192.0.2.1 --setup-ca
  2. インストールスクリプトが完了したら、親ドメインから IdM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが ipa.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

    重要

    IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

21.2. 統合 DNS を使用し CA を省略した IdM レプリカのインストール

以下の手順に従って、Identity Management (IdM) レプリカをインストールします。

  • 統合 DNS あるサーバー
  • 認証局 (CA) がすでにインストールされている IdM 環境に CA がない場合。レプリカは、すべての証明書操作を、CA がインストールされている IdM サーバーに転送します。

前提条件

手順

  1. 以下のオプションを使用して、ipa-replica-install を実行します。

    • レプリカを DNS サーバーとして設定する --setup-dns
    • --forwarder - サーバーごとのフォワーダーを指定します。サーバーごとのフォワーダーを使用しない場合は --no-forwarder を指定します。フェイルオーバーのためにサーバーごとのフォワーダーを複数指定するには、--forwarder を複数回使用します。

    たとえば、IdM サーバーが管理していないすべての DNS 要求を、IP アドレス 192.0.2.1 で実行している DNS サーバーに転送する統合 DNS サーバーにレプリカをセットアップするには、次のコマンドを実行します。

    # ipa-replica-install --setup-dns --forwarder 192.0.2.1
    注記

    ipa-replica-install ユーティリティーは、--no-reverse--no-host-dns などの DNS 設定に関する複数のオプションを受け入れます。詳細は、ipa-replica-install(1) の man ページを参照してください。

  2. インストールスクリプトが完了したら、親ドメインから IdM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが ipa.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

    重要

    IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

21.3. 統合 DNS を省略し CA を使用した IdM レプリカのインストール

以下の手順に従って、Identity Management (IdM) レプリカをインストールします。

  • 統合 DNS のないサーバー
  • 認証局 (CA) あり
重要

CA のあるレプリカを設定する場合は、レプリカの CA 設定がサーバーの CA 設定を反映する必要があります。

たとえば、サーバーに統合された IdM CA がルート CA として含まれている場合は、新しいレプリカも統合 CA をルート CA としてインストールする必要があります。この場合、他の CA 設定は使用できません。

ipa-replica-install コマンドに --setup-ca オプションを含めると、初期サーバーの CA 設定がコピーされます。

前提条件

手順

  1. --setup-ca オプションを指定して ipa-replica-install を実行します。

    # ipa-replica-install --setup-ca
  2. 新規作成された IdM DNS サービスレコードを DNS サーバーに追加します。

    1. IdM DNS サービスレコードを nsupdate 形式のファイルにエクスポートします。

      $ ipa dns-update-system-records --dry-run --out dns_records_file.nsupdate
    2. nsupdate ユーティリティーおよび dns_records_file.nsupdate ファイルを使用して DNS サーバーに DNS 更新リクエストを送信します。詳細は、RHEL 7 ドキュメントの nsupdate を使用した外部 DNS レコード更新 を参照してください。または、DNS レコードの追加については、お使いの DNS サーバーのドキュメントを参照してください。

21.4. 統合 DNS および CA を使用しない IdM レプリカのインストール

以下の手順に従って、Identity Management (IdM) レプリカをインストールします。

  • 統合 DNS のないサーバー
  • 必要な証明書を手動で用意し、認証局 (CA) なし。最初のサーバーが CA なしでインストールされていることを前提とします。
重要

インポートした証明書ファイルには、LDAP サーバーおよび Apache サーバーの証明書を発行した CA の完全な証明書チェーンが含まれている必要があるため、自己署名のサードパーティーサーバー証明書を使用してサーバーまたはレプリカをインストールすることはできません。

前提条件

手順

  • ipa-replica-install を実行して、次のオプションを追加して必要な証明書ファイルを指定します。

    • --dirsrv-cert-file
    • --dirsrv-pin
    • --http-cert-file
    • --http-pin

    このようなオプションを使用して提供されるファイルに関する詳細は、「CA なしで IdM サーバーをインストールするために必要な証明書」 を参照してください。

    以下に例を示します。

    # ipa-replica-install \
        --dirsrv-cert-file /tmp/server.crt \
        --dirsrv-cert-file /tmp/server.key \
        --dirsrv-pin secret \
        --http-cert-file /tmp/server.crt \
        --http-cert-file /tmp/server.key \
        --http-pin secret
    注記

    --ca-cert-file オプションを追加しないでください。ipa-replica-install ユーティリティーは、インストールした最初のサーバーから証明書のこの部分を自動的に取得します。

21.5. IdM 非表示レプリカのインストール

非表示の (予期しない) レプリカは、実行中で利用可能なサービスをすべて備えた Identity Management (IdM) サーバーです。ただし、DNS に SRV レコードがなく、LDAP サーバーロールが有効になっていません。そのため、クライアントはサービス検出を使用して非表示のレプリカを検出することができません。

非表示のレプリカの詳細は、The hidden replica mode を参照してください。

前提条件

手順

  • 非表示のレプリカをインストールするには、次のコマンドを実行します。

    ipa-replica-install --hidden-replica

このコマンドは、DNS SRV レコードがなく、LDAP サーバーのロールが無効になっているレプリカをインストールすることに注意してください。

また、既存のレプリカモードを非表示にすることもできます。詳細は 非表示レプリカの降格または昇格 を参照してください。

21.6. IdM レプリカのテスト

レプリカの作成後、レプリカが想定どおりにデータを複製するかどうかを確認します。以下の手順を使用できます。

手順

  1. 新しいレプリカでユーザーを作成します。

    [admin@new_replica ~]$ ipa user-add test_user
  2. ユーザーが他のレプリカでも表示されるようにします。

    [admin@another_replica ~]$ ipa user-show test_user

21.7. IdM レプリカのインストール時に実行する接続

IdM レプリカのインストール時に実行する要求 には、Identity Management (IdM) のレプリカインストールツールである ipa-replica-install により実行される操作のリストが記載されています。

表21.1 IdM レプリカのインストール時に実行する要求

操作使用プロトコル目的

クライアントシステムに設定した DNS リゾルバーに対する DNS 解決

DNS

IdM サーバーの IP アドレス検出。

検出された IdM サーバーのポート 88 (TCP/TCP6 および UDP/UDP6) への要求

Kerberos

Kerberos チケットの取得。

検出または設定された IdM サーバー上の IdM Apache ベースの Web サービスへの JSON-RPC 呼び出し

HTTPS

IdM クライアントの登録。必要な場合はレプリカキーの取得および証明書の発行。

SASL GSSAPI 認証、プレーン LDAP、またはこれら両方を使用した、IdM サーバー上のポート 389 (TCP/TCP6) への要求

LDAP

IdM クライアントの登録。CA 証明書チェーンの取得。LDAP データの複製。

IdM サーバー上のポート 22 (TCP/TCP6) への要求

SSH

接続が機能していることを確認。

(任意) IdM サーバーのポート 8443 (TCP/TCP6) でのアクセス

HTTPS

IdM サーバー上での認証局の管理 (IdM サーバーおよびレプリカのインストール時のみ)

第22章 IdM レプリカのインストールに関するトラブルシューティング

以下のセクションでは、失敗した IdM レプリカのインストールに関する情報を収集するプロセスと、一般的なインストールの問題を解決する方法を説明します。

22.1. IdM レプリカのインストールエラーログファイル

Identity Management (IdM) レプリカをインストールすると、レプリカ の以下のログファイルにデバッグ情報が追加されます。

  • /var/log/ipareplica-install.log
  • /var/log/ipareplica-conncheck.log
  • /var/log/ipaclient-install.log
  • /var/log/httpd/error_log
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors
  • /var/log/ipaserver-install.log

レプリカのインストールプロセスでは、レプリカが接続している IdM サーバー の次のログファイルにデバッグ情報を追加します。

  • /var/log/httpd/error_log
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
  • /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors

各ログファイルの最後の行では成功または失敗を報告し、ERROR および DEBUG エントリーで追加のコンテキストを把握できます。

22.2. IdM レプリカのインストールエラーの確認

IdM レプリカのインストールの失敗をトラブルシューティングするには、新しいレプリカとサーバーのインストールエラーログファイルの最後にあるエラーを確認し、この情報を使用して対応する問題を解決します。

前提条件

  • IdM ログファイルの内容を表示するには、root 権限が必要である。

手順

  1. tail コマンドを使用して、プライマリーログファイル /var/log/ipareplica-install.log からの最新のエラーを表示します。以下の例は、最後の 10 行を表示しています。

    [user@replica ~]$ sudo tail -n 10 /var/log/ipareplica-install.log
    [sudo] password for user:
      func(installer)
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipaserver/install/server/replicainstall.py", line 424, in decorated
      func(installer)
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipaserver/install/server/replicainstall.py", line 785, in promote_check
      ensure_enrolled(installer)
    File "/usr/lib/python3.6/site-packages/ipaserver/install/server/replicainstall.py", line 740, in ensure_enrolled
      raise ScriptError("Configuration of client side components failed!")
    
    2020-05-28T18:24:51Z DEBUG The ipa-replica-install command failed, exception: ScriptError: Configuration of client side components failed!
    2020-05-28T18:24:51Z ERROR Configuration of client side components failed!
    2020-05-28T18:24:51Z ERROR The ipa-replica-install command failed. See /var/log/ipareplica-install.log for more information
  2. ログファイルを対話的に確認するには、less ユーティリティーを使用してログファイルの最後を開き、 および キーを使用して移動します。

    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipareplica-install.log
  3. (オプション) /var/log/ipareplica-install.log は、レプリカのインストールの主なログファイルですが、レプリカおよびサーバーの追加のファイルを使用して、このレビュープロセスを繰り返して、追加のトラブルシューティング情報を収集できます。

    レプリカの場合:

    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipareplica-conncheck.log
    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipaclient-install.log
    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/httpd/error_log
    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors
    [user@replica ~]$ sudo less -N +G /var/log/ipaserver-install.log

    サーバーの場合:

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/httpd/error_log
    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/access
    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/dirsrv/slapd-INSTANCE-NAME/errors

関連情報

22.3. IdM CA インストールエラーログファイル

Identity Management (IdM) レプリカに認証局 (CA) サービスをインストールすると、レプリカの複数の場所にデバッグ情報と、レプリカが通信する IdM サーバーが追加されます。

表22.1 レプリカの場合 (推奨される優先順位):

場所説明

/var/log/pki/pki-ca-spawn.$TIME_OF_INSTALLATION.log

問題の概要と、pkispawn インストールプロセスの Python トレース

journalctl -u pki-tomcatd@pki-tomcat の出力

pki-tomcatd@pki-tomcat サービスからのエラー

/var/log/pki/pki-tomcat/ca/debug.$DATE.log

公開鍵インフラストラクチャー (PKI) 製品のアクティビティーの大規模な JAVA スタックトレース

/var/log/pki/pki-tomcat/ca/signedAudit/ca_audit

PKI 製品の監査ログ

  • /var/log/pki/pki-tomcat/ca/system
  • /var/log/pki/pki-tomcat/ca/transactions
  • /var/log/pki/pki-tomcat/catalina.$DATE.log

証明書を使用するサービスプリンシパル、ホスト、およびその他のエンティティーの証明書操作の低レベルのデバッグデータ

レプリカが問い合わせするサーバー:

  • /var/log/httpd/error_log ログファイル

既存の IdM レプリカに CA サービスをインストールすると、以下のログファイルにデバッグ情報が書き込まれます。

  • /var/log/ipareplica-ca-install.log ログファイル
注記

オプションの CA コンポーネントのインストール中に IdM レプリカ全体のインストールに失敗した場合に、ログには CA の詳細が記録されません。全体的なインストールプロセスに失敗したことを示すメッセージが /var/log/ipareplica-install.log ファイルに記録されます。Red Hat では、CA インストールの失敗に関する詳細は、上記に記載のログファイルを確認することを推奨します。

CA サービスをインストールしてルート CA が外部 CA の場合は唯一例外で、この動作に該当しません。外部 CA の証明書に問題がある場合は、エラーは /var/log/ipareplica-install.log に記録されます。

22.4. IdM CA インストールエラーの確認

IdM CA インストールの失敗をトラブルシューティングするには、CA インストールエラーログファイルの最後にあるエラーを確認し、この情報を使用して対応する問題を解決します。

前提条件

  • IdM ログファイルの内容を表示するには、root 権限が必要である。

手順

  1. ログファイルを対話的に確認するには、less ユーティリティーを使用してログファイルの最後を開き、 および キーを使用して移動し、ScriptError を検索します。以下の例では、/var/log/pki/pki-ca-spawn.$TIME_OF_INSTALLATION.log を開きます。

    [user@server ~]$ sudo less -N +G /var/log/pki/pki-ca-spawn.20200527185902.log
  2. すべての CA インストールエラーログファイルでこのレビュープロセスを繰り返して、追加のトラブルシューティング情報を収集します。

関連情報

22.5. 部分的な IdM レプリカインストールの削除

IdM レプリカのインストールに失敗した場合は、設定ファイルの一部が残される可能性があります。IdM レプリカのインストールを試みる追加の試行に失敗し、インストールスクリプトで IPA がすでに設定されていると報告されます。

既存の部分的な IdM 設定を使用したシステムの例

[root@server ~]# ipa-replica-install
Your system may be partly configured.
Run /usr/sbin/ipa-server-install --uninstall to clean up.

IPA server is already configured on this system.
If you want to reinstall the IPA server, please uninstall it first using 'ipa-server-install --uninstall'.
The ipa-replica-install command failed. See /var/log/ipareplica-install.log for more information

この問題を解決するには、レプリカから IdM ソフトウェアをアンインストールし、IdM トポロジーからレプリカを削除し、インストールプロセスを再試行します。

前提条件

  • root 権限があること。

手順

  1. IdM レプリカとして設定するホストで IdM サーバーソフトウェアをアンインストールします。

    [root@replica ~]# ipa-server-install --uninstall
  2. トポロジー内の他のすべてのサーバーで ipa server-del コマンドを使用して、適切にインストールされていないレプリカへの参照を削除します。

    [root@other-replica ~]# ipa server-del replica.idm.example.com
  3. レプリカのインストールを試行します。
  4. インストールに繰り返し失敗したことが原因で IdM レプリカのインストールに問題が生じた場合は、オペレーティングシステムを再インストールします。

    カスタマイズなしの新規インストールシステムというのが、IdM レプリカのインストール要件の 1 つとなっています。インストールに失敗した場合は、予期せずにシステムファイルが変更されてホストの整合性が保てない可能性があります。

関連情報

22.6. 無効な認証情報エラーの解決

IdM レプリカのインストールが Invalid credentials エラーで失敗すると、ホスト上のシステムクロックが相互に同期しなくなる可能性があります。

[27/40]: setting up initial replication
Starting replication, please wait until this has completed.
Update in progress, 15 seconds elapsed
[ldap://server.example.com:389] reports: Update failed! Status: [49 - LDAP error: Invalid credentials]

[error] RuntimeError: Failed to start replication
Your system may be partly configured.
Run /usr/sbin/ipa-server-install --uninstall to clean up.

ipa.ipapython.install.cli.install_tool(CompatServerReplicaInstall): ERROR    Failed to start replication
ipa.ipapython.install.cli.install_tool(CompatServerReplicaInstall): ERROR    The ipa-replica-install command failed. See /var/log/ipareplica-install.log for more information

クロックと同期されていないタイミングで、--no-ntp または -N オプションを使用して、レプリカのインストールを試みると、サービスは Kerberos で認証できないため、インストールに失敗します。

この問題を解決するには、両方のホストのクロックを同期し、インストールプロセスを再試行します。

前提条件

  • システム時間を変更するには、root 権限が必要です。

手順

  1. システムクロックは、手動または chronyd により同期します。

    手動同期

    サーバー上のシステム時間を表示し、この時間と一致するようにレプリカの時間設定します。

    [user@server ~]$ date
    Thu May 28 21:03:57 EDT 2020
    
    [user@replica ~]$ sudo timedatectl set-time '2020-05-28 21:04:00'
  2. IdM レプリカのインストールを再試行します。

関連情報

  • Red Hat テクニカルサポートサブスクリプションがあり、IdM レプリカのインストールが失敗する問題を解決できない場合は、Red Hat カスタマーポータル でテクニカルサポートケースを作成し、レプリカの sosreport サーバーとレプリカの sosreport を提供します。
  • sosreport ユーティリティーは、設定の詳細、ログ、およびシステム情報を RHEL システムから収集します。sosreport ユーティリティーの詳細については、sosreport の概要、および、Red Hat Enterprise Linux で sosreport を作成する方法 を参照してください。

22.7. 関連情報

第23章 IdM レプリカのアンインストール

IdM 管理者は、トポロジーから Identity Management (IdM) レプリカを削除できます。詳細は IdM サーバーのアンインストール を参照してください。

第24章 既存の IdM サーバーへの DNS のインストール

この手順に従って、もともと DNS サービスなしでインストールされた Identity Management (IdM) サーバーに DNS サービスをインストールします。

前提条件

手順

  1. (必要に応じて)DNS が IdM サーバーにまだインストールされていないことを確認します。

    [root@r8server ~]# ipa server-role-show r8server.idm.example.com
    Role name: DNS server
      Server name: r8server.idm.example.com
      Role name: DNS server
      Role status: absent

    この出力で、IdM DNS がサーバーで利用できないことが確認できます。

  2. idm:DL1 ストリームを有効にします。

    [root@r8server ~]# yum module enable idm:DL1
  3. ipa-dns-server パッケージとその依存関係をダウンロードします。

    [root@r8server ~]# yum module install idm:DL1/dns
  4. スクリプトを起動して、サーバーに DNS をインストールします。

    [root@r8server ~]# ipa-dns-install
    1. スクリプトにより、サーバーごとの DNS フォワーダー設定のプロンプトが表示されます。

      Do you want to configure DNS forwarders? [yes]:
      • サーバーごとの DNS フォワーダーを設定するには、yes を入力して表示されたコマンドラインの指示に従います。インストールプロセスにより、IdM LDAP にフォワーダーの IP アドレスが追加されます。

        • フォワードポリシーのデフォルト設定は、 ipa-dns-install(1) の man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
      • DNS 転送を使用しない場合は、no と入力します。

        DNS フォワーダーがないと、IdM ドメインのホストは、インフラストラクチャー内にある他の内部 DNS ドメインから名前を解決できません。ホストは、DNS クエリーを解決するためにパブリック DNS サーバーでのみ残ります。

    2. そのサーバーと関連する IP アドレスの DNS 逆引き (PTR) レコードを設定する必要性を確認するスクリプトプロンプトが出されます。

      Do you want to search for missing reverse zones? [yes]:

      検索を実行して欠落している逆引きゾーンが見つかると、PTR レコードの逆引きゾーンを作成するかどうかが尋ねられます。

      Do you want to create reverse zone for IP 192.0.2.1 [yes]:
      Please specify the reverse zone name [2.0.192.in-addr.arpa.]:
      Using reverse zone(s) 2.0.192.in-addr.arpa.
      注記

      オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

関連情報

  • man ipa-dns-install(1)

第25章 IdM サーバーからの統合 IdM DNS サービスのアンインストール

Identity Management (IdM) デプロイメントに統合 DNS を備えたサーバーが複数ある場合は、サーバーの 1 つから統合 DNS サービスを削除することに決定する場合があります。削除するためには、まず IdM サーバーの使用を完全に停止してから、統合 DNS なしで IdM を再インストールする必要があります。

注記

IdM サーバーに DNS ロールを追加することはできますが、IdM では、IdM サーバーから DNS ロールのみを削除する方法はありません。ipa-dns-install コマンドには --uninstall オプションがありません。

前提条件

  • IdM サーバーに統合 DNS がインストールされている。
  • 当該統合 DNS が、IdM トポロジー内の最後の統合 DNS サービスではない。

手順

  1. 冗長な DNS サービスを特定し、当該サービスをホストする IdM レプリカで IdM サーバーのアンインストール の手順を実行します。
  2. 同じホスト上で、ユースケースに応じて、統合 DNS なしで統合 CA をルート CA とするサーバー または 統合 DNS なしで、外部 CA をルート CA とするサーバー のいずれかの手順を実行します。

第26章 CA を使用しないデプロイメントで IdM CA サービスを IdM サーバーに追加

以前に認証局 (CA) コンポーネントなしで Identity Management (IdM) ドメインをインストールした場合は、ipa-ca-install コマンドを使用して IdM CA サービスをドメインに追加できます。要件に応じて、次のいずれかのオプションを選択できます。

注記

サポートされている CA 設定の詳細については、CA サービスの計画 を参照してください。

26.1. ルート CA として最初の IdM CA を既存の IdM ドメインにインストール

以前に認証局 (CA) コンポーネントなしで Identity Management (IdM) をインストールした場合は、後で CA を IdM サーバーにインストールできます。この手順に従って、外部ルート CA に従属しない IdM CA をidmserver サーバーにインストールします。

前提条件

  • idmserver に対する root 権限がある。
  • IdM サーバーが idmserver にインストールされている。
  • IdM デプロイメントには CA がインストールされていません。
  • IdM Directory Manager パスワードを把握している。

手順

  1. idmserver に、IdM Certificate Server CA をインストールします。

    [root@idmserver ~] ipa-ca-install
  2. トポロジー内の各 IdM ホストで、ipa-certupdate ユーティリティーを実行して、IdM LDAP からの新しい証明書に関する情報でホストを更新します。

    重要

    IdM CA 証明書の生成後に ipa-certupdate を実行しない場合、証明書は他の IdM マシンに配布されません。

26.2. ルート CA として外部 CA を使用する最初の IdM CA を既存の IdM ドメインにインストール

以前に認証局 (CA) コンポーネントなしで Identity Management (IdM) をインストールした場合は、後で CA を IdM サーバーにインストールできます。この手順に従って、idmserver サーバーに外部ルート CA に従属する IdM CA をインストールし、その間に 0 個または複数の中間 CA を配置します。

前提条件

  • idmserver に対する root 権限がある。
  • IdM サーバーが idmserver にインストールされている。
  • IdM デプロイメントには CA がインストールされていません。
  • IdM Directory Manager パスワードを把握している。

手順

  1. インストールを開始します。

    [root@idmserver ~] ipa-ca-install --external-ca
  2. コマンドラインインターフェイスから、証明書署名要求 (CSR) が保存されたことが通知されるまで待ちます。
  3. CSR を外部 CA に送信します。
  4. 発行された証明書を IdM サーバーにコピーします。
  5. 外部 CA ファイルへの証明書および完全パスを ipa-ca-install に追加してインストールを続行します。

    [root@idmserver ~]# ipa-ca-install --external-cert-file=/root/master.crt --external-cert-file=/root/ca.crt
  6. トポロジー内の各 IdM ホストで、ipa-certupdate ユーティリティーを実行して、IdM LDAP からの新しい証明書に関する情報でホストを更新します。

    重要

    IdM CA 証明書の生成後に ipa-certupdate を実行できないということは、証明書が他の IdM マシンに配布されないことを意味します。

第27章 CA を使用したデプロイで IdM CA サービスを IdM サーバーに追加

Identity Management (IdM) 環境にすでに IdM 認証局 (CA) サービスがインストールされているが、特定の IdM サーバー idmserver が CA なしの IdM レプリカとしてインストールされている場合は、ipa-ca-install を使用して CA サービスを idmserver に追加できます。

注記

この手順は、次の両方のシナリオで同じです。

  • IdMCA はルート CA です。
  • IdM CA は、外部のルート CA に従属しています。

前提条件

  • idmserver に対する root 権限がある。
  • IdM サーバーが idmserver にインストールされている。
  • IdM デプロイメントには、別の IdM サーバーに CA がインストールされています。
  • IdM Directory Manager パスワードを把握している。

手順

  • idmserver に、IdM Certificate Server CA をインストールします。

    [root@idmserver ~] ipa-ca-install

第28章 IdM サーバーからの IdM CA サービスのアンインストール

トポロジー内に CA ロール を持つ Identity Management (IdM) レプリカが 5 つ以上あり、冗長な証明書のレプリケーションが原因でパフォーマンスの問題が発生する場合、(RH) は IdM レプリカから冗長な CA サービスインスタンスを削除することを推奨します。そのためには、当該 IdM レプリカの使用を完全に停止してから、CA サービスを使用せずに IdM を再インストールする必要があります。

注記

IdM レプリカに CA ロールを 追加 することはできますが、IdM では、IdM レプリカから CA ロールのみを 削除 する方法はありません。ipa-ca-install コマンドには --uninstall オプションがありません。

前提条件

  • トポロジー内の 5 つ以上の IdM サーバーに IdM CA サービスがインストールされている。

手順

  1. 冗長な CA サービスを特定し、当該サービスをホストする IdM レプリカで IdM サーバーのアンインストール の手順を実行します。
  2. 同じホスト上で、IdM サーバーのインストール: 統合 DNS を使用し、CA を使用しない の手順に従います。

第29章 レプリケーショントポロジーの管理

本章では、Identity Management(IdM) ドメイン内のサーバー間のレプリケーションを管理する方法を説明します。

29.1. レプリカ合意、トポロジー接尾辞、およびトポロジーセグメントの説明

レプリカを作成すると、Identity Management (IdM) が初期サーバーとレプリカ間にレプリカ合意を作成します。複製されるデータはトポロジーの接尾辞に保存され、2 つのレプリカの接尾辞間でレプリカ合意があると、接尾辞がトポロジーセグメントを形成します。これらの概念は、以下のセクションで詳細に説明されています。

29.1.1. IdM レプリカ間のレプリカ合意

管理者が、既存のサーバーに基づいてレプリカを作成すると、Identity Management (IdM) は、初期サーバーとレプリカとの間に レプリカ合意 を作成します。レプリカ合意は、データと設定が 2 台のサーバー間で継続的に複製されることを保証します。

IdM は、複数の読み取り/書き込みレプリカ複製 を使用します。この設定では、レプリカ合意に参加しているすべてのレプリカが更新の受信と提供を行うので、サプライヤーとコンシューマーとみなされます。レプリカ合意は常に双方向です。

図29.1 サーバーとレプリカ合意

サーバー 2 台の間に 2 つのレプリカ合意があるイメージ: Directory Server データベースに関連するデータのレプリカ合意と、Certificate System データに関連する証明書レプリカ合意

IdM は、2 種類のレプリカ合意を使用します。

ドメインのレプリカ合意
この合意は、識別情報を複製します。
証明書のレプリカ合意
この合意は、証明書情報を複製します。

両方の複製チャンネルは独立しています。2 台のサーバー間で、いずれかまたは両方の種類のレプリカ合意を設定できます。たとえば、サーバー A とサーバー B にドメインレプリカ合意のみが設定されている場合は、証明書情報ではなく ID 情報だけが複製されます。

29.1.2. トポロジー接尾辞

トポロジー接尾辞は、レプリケートされるデータを保存します。IdM は、domainca の 2 種類のトポロジー接尾辞に対応します。それぞれの接尾辞は、個別のサーバーである個別のレプリケーショントポロジーを表します。

レプリカ合意が設定されると、同じタイプのトポロジー接尾辞を 2 つの異なるサーバーに結合します。

domain 接尾辞: dc=example,dc=com

domain 接尾辞には、ドメイン関連のデータがすべて含まれています。

2 つのレプリカの domain 接尾辞間でレプリカ合意が設定されると、ユーザー、グループ、およびポリシーなどのディレクトリーデータが共有されます。

ca 接尾辞: o=ipaca

ca 接尾辞には、Certificate System コンポーネントのデータが含まれます。これは認証局 (CA) がインストールされているサーバーにのみ存在します。

2 つのレプリカの ca 接尾辞間でレプリカ合意が設定されると、証明書データが共有されます。

図29.2 トポロジー接尾辞

トポロジー接尾辞

新規レプリカのインストール時には、ipa-replica-install スクリプトが 2 つのサーバー間に初期トポロジーレプリカ合意をセットアップします。

例29.1 トポロジー接尾辞の表示

ipa topologysuffix-find コマンドでトポロジー接尾辞のリストが表示されます。

$ ipa topologysuffix-find
---------------------------
2 topology suffixes matched
---------------------------
  Suffix name: ca
  Managed LDAP suffix DN: o=ipaca

  Suffix name: domain
  Managed LDAP suffix DN: dc=example,dc=com
----------------------------
Number of entries returned 2
----------------------------

29.1.3. トポロジーセグメント

2 つのレプリカの接尾辞間でレプリカ合意があると、接尾辞は トポロジーセグメント を形成します。各トポロジーセグメントは、左ノード右ノード で設定されます。ノードは、レプリカ合意に参加しているサーバーを表します。

IdM のトポロジーセグメントは常に双方向です。各セグメントは、サーバー A からサーバー B、およびサーバー B からサーバー A への 2 つのレプリカ合意を表します。そのため、データは両方の方向でレプリケートされます。

図29.3 トポロジーセグメント

トポロジーセグメント

例29.2 トポロジーセグメントの表示

ipa topologysegment-find コマンドで、ドメインまたは CA 接尾辞に設定されたトポロジーセグメントが表示されます。たとえば、ドメイン接尾辞の場合は、以下のようになります。

$ ipa topologysegment-find
Suffix name: domain
-----------------
1 segment matched
-----------------
  Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com
  Left node: server1.example.com
  Right node: server2.example.com
  Connectivity: both
----------------------------
Number of entries returned 1
----------------------------

この例では、ドメイン関連のデータのみが server1.example.comserver2.example.com の 2 つのサーバー間で複製されます。

特定セグメントの詳細を表示するには、ipa topologysegment-show コマンドを使用します。

$ ipa topologysegment-show
Suffix name: domain
Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com
  Segment name: server1.example.com-to-server2.example.com
  Left node: server1.example.com
  Right node: server2.example.com
  Connectivity: both

29.2. トポロジーグラフを使用したレプリケーショントポロジーの管理

Web UI のトポロジーグラフは、ドメイン内のサーバー間の関係を表示します。Web UI を使用すると、トポロジーの表現を操作および変換できます。

トポロジーグラフへのアクセス

トポロジーグラフにアクセスするには、以下を実行します。

  1. IPA ServerTopologyTopology Graph を選択します。
  2. トポロジーに加えた変更がグラフに反映されていない場合は、Refresh をクリックします。

トポロジーグラフの解釈

ドメインのレプリカ合意に参加しているサーバーは、オレンジ色の矢印によって接続されます。CA のレプリカ合意に参加しているサーバーは、青色の矢印によって接続されます。

トポロジーグラフの例: 推奨されるトポロジー

以下の推奨トポロジーの例は、4 台のサーバーに対して考えられる推奨トポロジーの 1 つを示しています。各サーバーは少なくとも 2 つの他のサーバーに接続されており、複数のサーバーが CA サーバーです。

図29.4 推奨されるトポロジーの例

mng top rec
トポロジーグラフの例: 推奨されないトポロジー

推奨されないトポロジーの例では、server1 が単一障害点になります。その他のすべてのサーバーは、このサーバーとのレプリカ合意がありますが、他のサーバーとは合意がありません。したがって、server1 が失敗すると、他のすべてのサーバーは分離されます。

このようなトポロジーの作成は避けてください。

図29.5 推奨されないトポロジーの例: 単一障害点

mng top single

トポロジービューのカスタマイズ

マウスをドラッグして、個別のトポロジーノードを移動できます。

図29.6 トポロジーグラフのノードの移動

グラフのカスタマイズ 1

マウスのホイールを使用して、トポロジーグラフを拡大および縮小できます。

図29.7 トポロジーグラフのズーム

グラフのカスタマイズ 2

マウスの左ボタンを保持することで、トポロジーグラフのキャンバスを移動できます。

図29.8 トポロジーグラフのキャンバスの移動

グラフのカスタマイズ 3

29.3. Web UI を使用した 2 台のサーバー間のレプリケーションの設定

Identity Management (IdM) の Web インターフェイスを使用すると、2 つのサーバーを選択し、そのサーバー間に新しいレプリカ合意を作成できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。

手順

  1. トポロジーグラフで、サーバーノードの 1 つにマウスを合わせます。

    図29.9 ドメインまたは CA オプション

    mng top domain ca
  2. 作成するトポロジーセグメントのタイプに応じて、domain または円の ca 部分をクリックします。
  3. 新しいレプリカ合意を表す新しい矢印が、マウスポインターの下に表示されます。マウスを他のサーバーノードに移動し、そこでクリックします。

    図29.10 新規セグメントの作成

    mng top drag
  4. Add Topology Segment ウィンドウで Add をクリックして、新規セグメントのプロパティーを確認します。

2 台のサーバー間の新しいトポロジーセグメントは、サーバーをレプリカ合意に参加させます。トポロジーグラフには、更新されたレプリケーショントポロジーが表示されるようになりました。

図29.11 新規に作成されたセグメント

mng top three

29.4. Web UI を使用した 2 台のサーバー間のレプリケーションの停止

Identity Management (IdM) の Web インターフェイスを使用して、サーバーからレプリカ合意を削除できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。

手順

  1. 削除するレプリカ合意を表す矢印をクリックします。これにより、矢印がハイライト表示されます。

    図29.12 トポロジーセグメントのハイライト表示

    mng top highlight
  2. Delete をクリックします。
  3. Confirmation ウィンドウで OK をクリックします。

IdM は、2 台のサーバー間のトポロジーセグメントを削除します。これにより、そのレプリカ合意が削除されます。トポロジーグラフには、更新されたレプリケーショントポロジーが表示されるようになりました。

図29.13 トポロジーセグメントの削除

mng top delete segment

29.5. CLI を使用した 2 つのサーバー間のレプリケーションの設定

ipa topologysegment-add コマンドを使用して、2 台のサーバー間のレプリカ合意を設定できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。

手順

  1. ipa topologysegment-add コマンドを使用して、2 つのサーバーのトポロジーセグメントを作成します。プロンプトが表示されたら、以下を指定します。

    • 必要なトポロジー接尾辞: domain または ca
    • 2 つのサーバーを表す、左ノードと右のノード
    • オプションで、セグメントのカスタム名

      以下に例を示します。

      $ ipa topologysegment-add
      Suffix name: domain
      Left node: server1.example.com
      Right node: server2.example.com
      Segment name [server1.example.com-to-server2.example.com]: new_segment
      ---------------------------
      Added segment "new_segment"
      ---------------------------
        Segment name: new_segment
        Left node: server1.example.com
        Right node: server2.example.com
        Connectivity: both

      新しいセグメントを追加すると、サーバーをレプリカ合意に参加させます。

  2. オプション:ipa topologysegment-show コマンドを使用して、新しいセグメントが設定されたことを確認します。

    $ ipa topologysegment-show
    Suffix name: domain
    Segment name: new_segment
      Segment name: new_segment
      Left node: server1.example.com
      Right node: server2.example.com
      Connectivity: both

29.6. CLI を使用した 2 つのサーバー間のレプリケーションの停止

ipa topology_segment-del コマンドを使用して、コマンドラインからレプリカ合意を終了できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。

手順

  1. レプリケーションを停止するには、サーバー間の対応するレプリケーションセグメントを削除する必要があります。これを実行するには、セグメント名を知っている必要があります。

    名前が分からない場合は、ipa topologysegment-find コマンドを使用してすべてのセグメントを表示し、出力で必要なセグメントを見つけます。プロンプトが表示されたら、必要なトポロジー接尾辞 (domain または ca) を指定します。以下に例を示します。

    $ ipa topologysegment-find
    Suffix name: domain
    ------------------
    8 segments matched
    ------------------
      Segment name: new_segment
      Left node: server1.example.com
      Right node: server2.example.com
      Connectivity: both
    
    ...
    
    ----------------------------
    Number of entries returned 8
    ----------------------------
  2. ipa topologysegment-del コマンドを使用して、2 台のサーバー間のトポロジーセグメントを削除します。

    $ ipa topologysegment-del
    Suffix name: domain
    Segment name: new_segment
    -----------------------------
    Deleted segment "new_segment"
    -----------------------------

    セグメントを削除すると、レプリカ合意が削除されます。

  3. オプション:ipa topologysegment-find コマンドを使用して、セグメントが表示されなくなったことを確認します。

    $ ipa topologysegment-find
    Suffix name: domain
    ------------------
    7 segments matched
    ------------------
      Segment name: server2.example.com-to-server3.example.com
      Left node: server2.example.com
      Right node: server3.example.com
      Connectivity: both
    
    ...
    
    ----------------------------
    Number of entries returned 7
    ----------------------------

29.7. Web UI を使用したトポロジーからのサーバーの削除

Identity Management (IdM) の Web インターフェイスを使用して、トポロジーからサーバーを削除できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。
  • 削除するサーバーが、残りのトポロジーで他のサーバーに接続する 唯一のサーバーではない。この場合、他のサーバーが分離されますが、これは許可されていません。
  • 削除するサーバーが、最後の CA または DNS サーバー ではない
警告

サーバーの削除は元に戻せないアクションです。サーバーを削除すると、トポロジーに戻す唯一の方法は、マシンに新しいレプリカをインストールすることです。

手順

サーバーコンポーネントをマシンからアンインストールせずにトポロジーからサーバーを削除するには、以下を実行します。

  1. IPA ServerTopologyIPA Servers を選択します。
  2. 削除するサーバーの名前をクリックします。

    図29.14 サーバーの選択

    mng top delete
  3. Delete Server をクリックします。

29.8. CLI を使用したトポロジーからのサーバーの削除

コマンドラインインターフェイスを使用して、トポロジーからサーバーを削除できます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。
  • 削除するサーバーが、残りのトポロジーで他のサーバーに接続する 唯一のサーバーではない。この場合、他のサーバーが分離されますが、これは許可されていません。
  • 削除するサーバーが、最後の CA または DNS サーバー ではない
重要

サーバーの削除は元に戻せないアクションです。サーバーを削除すると、トポロジーに戻す唯一の方法は、マシンに新しいレプリカをインストールすることです。

手順

server1.example.com を削除するには、次のコマンドを実行します。

  1. 別のサーバーで ipa server-del コマンドを実行して、server1.example.com を削除します。このコマンドは、サーバーを参照するすべてのトポロジーセグメントを削除します。

    [user@server2 ~]$ ipa server-del
    Server name: server1.example.com
    Removing server1.example.com from replication topology, please wait...
    ----------------------------------------------------------
    Deleted IPA server "server1.example.com"
    ----------------------------------------------------------
  2. オプション: server1.example.com で、ipa server-install --uninstall コマンドを実行して、マシンからサーバーコンポーネントをアンインストールします。

    [root@server1 ~]# ipa server-install --uninstall

29.9. Web UI を使用した IdM サーバーでのサーバーロールの表示

IdM サーバーにインストールされるサービスに基づいて、さまざまな サーバーロール を実行できます。以下に例を示します。

  • CA サーバー
  • DNS サーバー
  • キーリカバリー認証局 (KRA) サーバー

サポートされるサーバーロールの完全なリストは、IPA ServerTopologyServer Rolesを参照してください。

注記
  • Role status が absent の場合は、トポロジー内でそのロールを実行しているサーバーがないことを示しています。
  • Role status が enabled の場合は、トポロジー内でそのロールを実行しているサーバーが 1 台以上あることを示しています。

図29.15 Web UI でのサーバーロール

server role absent

29.10. CLI を使用した IdM サーバーでのサーバーロールの表示

IdM サーバーにインストールされるサービスに基づいて、さまざまな サーバーロール を実行できます。以下に例を示します。

  • CA サーバー
  • DNS サーバー
  • キーリカバリー認証局 (KRA) サーバー

以下のコマンドを使用して、トポロジー内でどのサーバーがどのロールを実行するかを表示できます。

  • ipa config-show コマンドを実行すると、すべての CA サーバーおよび現行の CA 更新サーバーが表示されます。
$ ipa config-show
  ...
  IPA masters: server1.example.com, server2.example.com, server3.example.com
  IPA CA servers: server1.example.com, server2.example.com
  IPA CA renewal master: server1.example.com
  • ipa server-show コマンドは、特定のサーバーで有効なロールのリストを表示します。たとえば、server.example.com で有効にしたロールのリストは、以下のようになります。
$ ipa server-show
Server name: server.example.com
  ...
  Enabled server roles: CA server, DNS server, KRA server
  • ipa server-find --servrole は、特定のサーバーロールが有効になっているすべてのサーバーを検索します。たとえば、すべての CA サーバーを検索するには、以下を実行します。
$ ipa server-find --servrole "CA server"
---------------------
2 IPA servers matched
---------------------
  Server name: server1.example.com
  ...

  Server name: server2.example.com
  ...
----------------------------
Number of entries returned 2
----------------------------

29.11. レプリカの CA 更新サーバーおよび CRL パブリッシャーサーバーへのプロモート

IdM デプロイメントで組み込み認証局 (CA) を使用する場合は、IdM CA サーバーの 1 つが CA サブシステム証明書の更新を管理する CA 更新サーバーとして機能します。IdM CA サーバーの 1 つは、証明書失効リストを生成する IdM CRL パブリッシャーサーバーとしても機能します。デフォルトでは、CA 更新サーバーおよび CRL パブリッシャーサーバーロールは、システム管理者が ipa-server-install または ipa-ca-install コマンドを使用して CA ロールをインストールした最初のサーバーにインストールされます。

前提条件

  • IdM 管理者認証情報がある。

29.12. 非表示レプリカの降格または昇格

レプリカのインストール後、レプリカの表示状態を設定できます。

非表示のレプリカの詳細は、非表示のレプリカモード を参照してください。

レプリカが CA 更新サーバーである場合は、このレプリカを非表示にする前に、サービスを別のレプリカに移動します。

詳細は Changing and resetting IdM CA renewal server を参照してください。

注記

RHEL 8.1 で導入された非表示のレプリカ機能は、RHEL 8.2 以降で完全にサポートされています。

手順

  • レプリカを非表示にするには、次のコマンドを実行します。

    # ipa server-state replica.idm.example.com --state=hidden

    次のコマンドを実行すれば、レプリカを表示できます

    # ipa server-state replica.idm.example.com --state=enabled

第30章 IdM Healthcheck ツールのインストールおよび実行

IdM Healthcheck ツールと、ツールのインストールおよび実行方法について詳しく説明します。

注記
  • Healthcheck ツールは、RHEL 8.1 以降でのみ利用できます。

30.1. IdM の Healthcheck

Identity Management (IdM) の Healthcheck ツールは、IdM 環境の健全性に影響を与える可能性のある問題を検出するのに役立ちます。

注記

Healthcheck ツールは、Kerberos 認証なしで使用できるコマンドラインツールです。

独立したモジュール

Healthcheck は、以下をテストする独立したモジュールで構成されています。

  • レプリケーションの問題
  • 証明書の有効性
  • 認証局インフラストラクチャーの問題
  • IdM および Active Directory の信頼の問題
  • ファイルのパーミッションと所有権の正しい設定

2 つの出力形式

Healthcheck では、以下の出力が生成されます。これは、output-type オプションを使用して設定できます。

  • JSON: マシンが判読できる出力 (デフォルト)
  • human: 人間が判読できる出力

--output-file オプションで別の出力先ファイルを指定できます。

結果

Healthcheck の各モジュールは、次のいずれかの結果を返します。

SUCCESS
想定どおりに設定されています。
WARNING
エラーではありませんが、注意または評価することを推奨します。
ERROR
想定どおりに設定されていません。
CRITICAL
想定どおりに設定されておらず、影響が受ける可能性が高いと見られます。

30.2. IdM Healthcheck のインストール

以下の手順に従って、IdM Healthcheck ツールをインストールします。

手順

  • ipa-healthcheck パッケージをインストールします。

    [root@server ~]# yum install ipa-healthcheck
    注記

    RHEL 8.1 および 8.2 システムでは、代わりに yum install /usr/bin/ipa-healthcheck コマンドを使用します。

検証手順

  • --failures-only オプションを使用して、ipa-healthcheck にエラーのみを報告させます。IdM インストールが完全に機能していれば、空の結果 [] が返されます。

    [root@server ~]# ipa-healthcheck --failures-only
    []

関連情報

  • ipa-healthcheck --help を使用して、サポートされるすべての引数を表示します。

30.3. IdM Healthcheck の実行

Healthcheck は、ログローテーション を使用して手動で実行することも、また自動でも実行できます。

前提条件

手順

  • Healthcheck を手動で実行するには、ipa-healthcheck コマンドを実行します。

    [root@server ~]# ipa-healthcheck

関連情報

すべてのオプションは、man ipa-healthcheck の man ページを参照してください。

30.4. 関連情報

第31章 Ansible Playbook で Identity Management サーバーのインストール

Ansible を使用してシステムを IdM サーバーとして設定する方法を説明します。システムを IdM サーバーとして設定すると、IdM ドメインを確立し、システムが IdM クライアントに IdM サービスを提供できるようになります。ipaserver Ansible ロールを使用してデプロイメントを管理できます。

前提条件

  • Ansibleと IdM の概念を理解している:

    • Ansible ロール
    • Ansible ノード
    • Ansible インベントリー
    • Ansible タスク
    • Ansible モジュール
    • Ansible プレイおよび Playbook

31.1. Ansible と、IdM をインストールする利点

Ansible は、システムの設定、ソフトウェアのデプロイ、ローリング更新の実行に使用する自動化ツールです。Ansible には Identity Management (IdM) のサポートが含まれるため、Ansible モジュールを使用して、IdM サーバー、レプリカ、クライアント、または IdM トポロジー全体の設定などのインストールタスクを自動化できます。

IdM のインストールに Ansible を使用する利点

以下のリストは、手動インストールとは対照的に、Ansible を使用して Identity Management をインストールする利点を示しています。

  • 管理ノードにログインする必要はありません。
  • デプロイする各ホストに個別に設定する必要はありません。代わりに、完全なクラスターをデプロイするためのインベントリーファイルを 1 つ使用できます。
  • ユーザーおよびホストを追加するなど、後で管理タスクにインベントリーファイルを再利用できます。IdM には関係のないタスクであっても、インベントリーファイルを再利用できます。

31.2. ansible-freeipa パッケージのインストール

以下の手順に従って、Identity Management (IdM) をインストールおよび管理する Ansible ロールとモジュールを提供する ansible-freeipa パッケージをインストールします。

前提条件

  • マネージドノード で以下を行っている。

    • 管理ノードが、静的 IP アドレスと作業パッケージマネージャーを備えた Red Hat Enterprise Linux 8 システムである。
  • コントローラー で以下を行っている。

    • コントローラーが、有効なサブスクリプションを備えた Red Hat Enterprise Linux システムである。そうでない場合は、公式の Ansible ドキュメントの Installation guide で、代替のインストール方法を参照してください。
    • コントローラーから、SSH プロトコルで管理ノードに到達できる。管理ノードが、コントローラーの /root/.ssh/known_hosts ファイルのリストに記載されていることを確認します。

手順

Ansible コントローラーで以下の手順を使用します。

  1. システムが RHEL 8.5 以前で実行されている場合は、必要なリポジトリーを有効にします。

    # subscription-manager repos --enable ansible-2.8-for-rhel-8-x86_64-rpms
  2. システムが RHEL 8.5 以前で実行されている場合は、ansible パッケージをインストールします。

    # yum install ansible
  3. ansible-freeipa パッケージをインストールします。

    # yum install ansible-freeipa

    ロールとモジュールは、/usr/share/ansible/roles/ および /usr/share/ansible/plugins/modules ディレクトリーにインストールされます。

31.3. ファイルシステム内の Ansible ロールの場所

デフォルトでは、ansible-freeipa ロールは /usr/share/ansible/roles/ ディレクトリーにインストールされます。ansible-freeipa パッケージの構造は以下のとおりです。

  • /usr/share/ansible/roles/ ディレクトリーには、Ansible コントローラーの ipaserver ロール、ipareplica ロール、および ipaclient ロールが保存されています。各ロールディレクトリーには、サンプル、基本的な概要、ライセンス、および Markdown ファイルの README.md のロールに関する情報が保存されています。

    [root@server]# ls -1 /usr/share/ansible/roles/
    ipaclient
    ipareplica
    ipaserver
  • /usr/share/doc/ansible-freeipa/ ディレクトリーには、Markdown ファイルの README.md に、各ロールおよびトポロジーに関する情報が保存されています。また、playbooks/ サブディレクトリーも保存されています。

    [root@server]# ls -1 /usr/share/doc/ansible-freeipa/
    playbooks
    README-client.md
    README.md
    README-replica.md
    README-server.md
    README-topology.md
  • /usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/ ディレクトリーは、Playbook のサンプルを保存します。

    [root@server]# ls -1 /usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/
    install-client.yml
    install-cluster.yml
    install-replica.yml
    install-server.yml
    uninstall-client.yml
    uninstall-cluster.yml
    uninstall-replica.yml
    uninstall-server.yml

31.4. 統合 DNS と、root CA としての統合 CA を使用したデプロイメントのパラメーターの設定

以下の手順に従って、IdM 統合 DNS ソリューションを使用する環境で、統合 CA を持つ IdM サーバーを root CA としてインストールするようにインベントリーファイルを設定します。

注記

この手順のインベントリーは、INI 形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーを作成します。

    $ mkdir MyPlaybooks
  2. ~/MyPlaybooks/inventory ファイルを作成します。
  3. 編集するインベントリーファイルを開きます。IdM サーバーとして使用するホストの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。FQDN が以下の基準を満たしていることを確認してください。

    • 英数字およびハイフン (-) のみが使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。
  4. IdM ドメインおよびレルムの情報を指定します。
  5. 以下のオプションを追加して、統合 DNS を使用することを指定します。

    ipaserver_setup_dns=yes
  6. DNS 転送設定を指定します。以下のいずれかのオプションを選択します。

    • インストーラーが /etc/resolv.conf ファイルからのフォワーダーを使用する場合は、ipaserver_auto_forwarders=yes オプションを使用します。/etc/resolv.conf ファイルで指定する nameserver が localhost 127.0.0.1 アドレスである場合、または仮想プライベートネットワークにあり、使用している DNS サーバーが通常パブリックインターネットから到達できない場合は、このオプションは使用しないでください。
    • ipaserver_forwarders を使用して、フォワーダーを手動で指定します。インストールプロセスにより、インストールした IdM サーバーの /etc/named.conf ファイルに、フォワーダーの IP アドレスが追加されます。
    • 代わりに使用する root DNS サーバーを設定する場合は、ipaserver_no_forwarders=yes オプションを使用します。

      注記

      DNS フォワーダーがないと、環境は分離され、インフラストラクチャー内の他の DNS ドメインからの名前は解決されません。

  7. DNS の逆引きレコードとゾーンの設定を指定します。次のいずれかのオプションを選択します。

    • ゾーンがすでに解決可能であっても、ipaserver_allow_zone_overlap=yes オプションを使用して (リバース) ゾーンの作成を許可します。
    • ipaserver_reverse_zones オプションを使用して、手動でリバースゾーンを指定します。
    • インストーラーが DNS ゾーンを逆引きで作成しない場合は、ipaserver_no_reverse=yes オプションを使用します。

      注記

      オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

  8. adminDirectory Manager のパスワードを指定します。Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイルから Vault ファイルを参照します。あるいは、安全性は低くなりますが、インベントリーファイルにパスワードを直接指定します。
  9. (必要に応じて) IdM サーバーで使用する個別の firewalld ゾーンを指定します。カスタムゾーンを設定しないと、サービスがデフォルトの firewalld ゾーンに追加されます。事前定義されたデフォルトゾーンは public です。

    重要

    指定する firewalld ゾーンは存在し、永続的でなければなりません。

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを除く)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    [...]

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを含む)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    
    [...]

    カスタムの firewalld 損を使用したインベントリーファイルの例

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    ipaserver_firewalld_zone=custom zone

    Ansible Vault ファイルに保存された admin パスワードおよび Directory Manager パスワードを使用して IdM サーバーを設定する Playbook の例

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

    インベントリーファイルの admin パスワードおよび Directory Manager パスワードを使用して IdM サーバーを設定する Playbook の例

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server
      hosts: ipaserver
      become: true
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

関連情報

  • フォワードポリシーのデフォルト設定は、ipa-dns-install(1) man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
  • ipaserver ロールが使用する DNS 変数の詳細は、/usr/share/doc/ansible-freeipa ディレクトリーの README-server.md ファイルにある DNS Variables セクションを参照してください。
  • インベントリーファイルの詳細は、How to build your inventory を参照してください。

31.5. 外部 DNS と、root CA としての統合 CA を使用したデプロイメントのパラメーターの設定

以下の手順に従って、外部 DNS ソリューションを使用する環境で、統合 CA の IdM サーバーを root CA としてインストールするようにインベントリーファイルを設定します。

注記

この手順のインベントリーファイルは、INI形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーを作成します。

    $ mkdir MyPlaybooks
  2. ~/MyPlaybooks/inventory ファイルを作成します。
  3. 編集するインベントリーファイルを開きます。IdM サーバーとして使用するホストの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。FQDN が以下の基準を満たしていることを確認してください。

    • 英数字およびハイフン (-) のみが使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。
  4. IdM ドメインおよびレルムの情報を指定します。
  5. ipaserver_setup_dns オプションが no に設定されているか、存在しないことを確認します。
  6. adminDirectory Manager のパスワードを指定します。Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイルから Vault ファイルを参照します。あるいは、安全性は低くなりますが、インベントリーファイルにパスワードを直接指定します。
  7. (必要に応じて) IdM サーバーで使用する個別の firewalld ゾーンを指定します。カスタムゾーンを設定しないと、サービスがデフォルトの firewalld ゾーンに追加されます。事前定義されたデフォルトゾーンは public です。

    重要

    指定する firewalld ゾーンは存在し、永続的でなければなりません。

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを除く)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    [...]

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを含む)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    
    [...]

    カスタムの firewalld 損を使用したインベントリーファイルの例

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    ipaserver_firewalld_zone=custom zone

    Ansible Vault ファイルに保存された admin パスワードおよび Directory Manager パスワードを使用して IdM サーバーを設定する Playbook の例

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

    インベントリーファイルの admin パスワードおよび Directory Manager パスワードを使用して IdM サーバーを設定する Playbook の例

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server
      hosts: ipaserver
      become: true
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

関連情報

31.6. Ansible Playbook を使用して、統合 CA を root CA として備えた IdM サーバーをデプロイメント

以下の手順に従って、Ansible Playbook を使用して、統合された認証局 (CA) を備えた IdM サーバーをデプロイします。

注記

この手順のインベントリーは、INI 形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

前提条件

  • 以下のいずれかの手順を選択して、シナリオに対応するパラメーターを設定している。

  • ipaserver ロールで使用できる変数について、/usr/share/doc/ansible-freeipa/README-server.md ファイルの説明を読み、理解している。

手順

  1. ansible-playbook コマンドを、Playbook ファイルの名前 (install-server.yml など) で実行します。-i オプションでインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i ~/MyPlaybooks/inventory ~/MyPlaybooks/install-server.yml

    -v オプション、-vv オプション、または -vvv オプションを使用して、詳細のレベルを指定します。

    コマンドラインインターフェイス (CLI) で Ansible Playbook スクリプトの出力を表示できます。次の出力は、失敗したタスクが 0 個のため、スクリプトが正常に実行されたことを示しています。

    PLAY RECAP
    server.idm.example.com : ok=18   changed=10   unreachable=0    failed=0    skipped=21   rescued=0    ignored=0
  2. 以下のいずれかのオプションを選択します。

    • IdM デプロイメントで外部 DNS を使用する場合: /tmp/ipa.system.records.UFRPto.db ファイルに含まれる DNS リソースレコードを、既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

      ...
      Restarting the KDC
      Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
      Restarting the web server
      ...
    重要

    既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

    • IdM デプロイメントで統合 DNS を使用している場合は、次のコマンドを実行します。

      • 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

        重要

        IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

      • タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。

関連情報

31.7. 統合 DNS と、ルート CA としての外部 CA を使用したデプロイメントのパラメーターの設定

以下の手順に従って、IdM 統合 DNS ソリューションを使用する環境で、外部 CA を持つ IdM サーバーを root CA としてインストールするようにインベントリーファイルを設定します。

注記

この手順のインベントリーファイルは、INI形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーを作成します。

    $ mkdir MyPlaybooks
  2. ~/MyPlaybooks/inventory ファイルを作成します。
  3. 編集するインベントリーファイルを開きます。IdM サーバーとして使用するホストの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。FQDN が以下の基準を満たしていることを確認してください。

    • 英数字およびハイフン (-) のみが使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。
  4. IdM ドメインおよびレルムの情報を指定します。
  5. 以下のオプションを追加して、統合 DNS を使用することを指定します。

    ipaserver_setup_dns=yes
  6. DNS 転送設定を指定します。以下のいずれかのオプションを選択します。

    • インストールプロセスで /etc/resolv.conf ファイルのフォワーダーを使用する場合は、ipaserver_auto_forwarders=yes を使用します。/etc/resolv.conf ファイルで指定する nameserver が localhost 127.0.0.1 アドレスである場合、または仮想プライベートネットワークにあり、使用している DNS サーバーが通常パブリックインターネットから到達できない場合は、このオプションを使用することが推奨されません。
    • ipaserver_forwarders を使用して、フォワーダーを手動で指定します。インストールプロセスにより、インストールした IdM サーバーの /etc/named.conf ファイルに、フォワーダーの IP アドレスが追加されます。
    • 代わりに使用する root DNS サーバーを設定する場合は、ipaserver_no_forwarders=yes オプションを使用します。

      注記

      DNS フォワーダーがないと、環境は分離され、インフラストラクチャー内の他の DNS ドメインからの名前は解決されません。

  7. DNS の逆引きレコードとゾーンの設定を指定します。次のいずれかのオプションを選択します。

    • ゾーンがすでに解決可能であっても、ipaserver_allow_zone_overlap=yes オプションを使用して (リバース) ゾーンの作成を許可します。
    • ipaserver_reverse_zones オプションを使用して、手動でリバースゾーンを指定します。
    • インストールプロセスで DNS ゾーンの逆引きを作成しない場合は、ipaserver_no_reverse=yes オプションを使用します。

      注記

      オプションで、逆引きゾーンの管理に IdM を使用できます。代わりに、この目的で外部 DNS サービスを使用することもできます。

  8. adminDirectory Manager のパスワードを指定します。Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイルから Vault ファイルを参照します。あるいは、安全性は低くなりますが、インベントリーファイルにパスワードを直接指定します。
  9. (必要に応じて) IdM サーバーで使用する個別の firewalld ゾーンを指定します。カスタムゾーンを設定しないと、サービスがデフォルトのfirewalld ゾーンに追加されます。事前定義されたデフォルトゾーンは public です。

    重要

    指定する firewalld ゾーンは存在し、永続的でなければなりません。

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを除く)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    [...]

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを含む)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    
    [...]

    カスタムの firewalld 損を使用したインベントリーファイルの例

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=yes
    ipaserver_auto_forwarders=yes
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    ipaserver_firewalld_zone=custom zone
    
    [...]

  10. インストールの最初ステップ用の Playbook を作成します。証明書署名要求 (CSR) を生成し、それをコントローラーからマネージドノードにコピーする指示を入力します。

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server Step 1
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
      vars:
        ipaserver_external_ca: yes
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present
    
      post_tasks:
      - name: Copy CSR /root/ipa.csr from node to "{{ groups.ipaserver[0] + '-ipa.csr' }}"
        fetch:
          src: /root/ipa.csr
          dest: "{{ groups.ipaserver[0] + '-ipa.csr' }}"
          flat: yes
  11. インストールの最終ステップ用に、別の Playbook を作成します。

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server Step -1
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
      vars:
        ipaserver_external_cert_files: "/root/chain.crt"
    
      pre_tasks:
      - name: Copy "{{ groups.ipaserver[0] + '-chain.crt' }}" to /root/chain.crt on node
        copy:
          src: "{{ groups.ipaserver[0] + '-chain.crt' }}"
          dest: "/root/chain.crt"
          force: yes
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

関連情報

  • フォワードポリシーのデフォルト設定は、ipa-dns-install(1) man ページに記載されている --forward-policy の説明を参照してください。
  • ipaserver ロールが使用する DNS 変数の詳細は、/usr/share/doc/ansible-freeipa ディレクトリーの README-server.md ファイルにある DNS Variables セクションを参照してください。
  • インベントリーファイルの詳細は、How to build your inventory を参照してください。

31.8. 外部 DNS と、ルート CA としての外部 CA を使用したデプロイメントのパラメーターの設定

以下の手順に従って、外部 DNS ソリューションを使用する環境で、外部 CA を持つ IdM サーバーを root CA としてインストールするようにインベントリーファイルを設定します。

注記

この手順のインベントリーファイルは、INI形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーを作成します。

    $ mkdir MyPlaybooks
  2. ~/MyPlaybooks/inventory ファイルを作成します。
  3. 編集するインベントリーファイルを開きます。IdM サーバーとして使用するホストの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。FQDN が以下の基準を満たしていることを確認してください。

    • 英数字およびハイフン (-) のみが使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。
  4. IdM ドメインおよびレルムの情報を指定します。
  5. ipaserver_setup_dns オプションが no に設定されているか、存在しないことを確認します。
  6. adminDirectory Manager のパスワードを指定します。Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイルから Vault ファイルを参照します。あるいは、安全性は低くなりますが、インベントリーファイルにパスワードを直接指定します。
  7. (必要に応じて) IdM サーバーで使用する個別の firewalld ゾーンを指定します。カスタムゾーンを設定しないと、サービスがデフォルトの firewalld ゾーンに追加されます。事前定義されたデフォルトゾーンは public です。

    重要

    指定する firewalld ゾーンは存在し、永続的でなければなりません。

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを除く)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    [...]

    必要なサーバー情報を含むインベントリーファイルの例 (パスワードを含む)

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    
    [...]

    カスタムの firewalld 損を使用したインベントリーファイルの例

    [ipaserver]
    server.idm.example.com
    
    [ipaserver:vars]
    ipaserver_domain=idm.example.com
    ipaserver_realm=IDM.EXAMPLE.COM
    ipaserver_setup_dns=no
    ipaadmin_password=MySecretPassword123
    ipadm_password=MySecretPassword234
    ipaserver_firewalld_zone=custom zone
    
    [...]

  8. インストールの最初ステップ用の Playbook を作成します。証明書署名要求 (CSR) を生成し、それをコントローラーからマネージドノードにコピーする指示を入力します。

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server Step 1
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
      vars:
        ipaserver_external_ca: yes
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present
    
      post_tasks:
      - name: Copy CSR /root/ipa.csr from node to "{{ groups.ipaserver[0] + '-ipa.csr' }}"
        fetch:
          src: /root/ipa.csr
          dest: "{{ groups.ipaserver[0] + '-ipa.csr' }}"
          flat: yes
  9. インストールの最終ステップ用に、別の Playbook を作成します。

    ---
    - name: Playbook to configure IPA server Step -1
      hosts: ipaserver
      become: true
      vars_files:
      - playbook_sensitive_data.yml
      vars:
        ipaserver_external_cert_files: "/root/chain.crt"
    
      pre_tasks:
      - name: Copy "{{ groups.ipaserver[0] + '-chain.crt' }}" to /root/chain.crt on node
        copy:
          src: "{{ groups.ipaserver[0] + '-chain.crt' }}"
          dest: "/root/chain.crt"
          force: yes
    
      roles:
      - role: ipaserver
        state: present

関連情報

31.9. 外部 CA を root CA として備えた IdM サーバーの Ansible Playbook を使用したデプロイメント

以下の手順に従って、Ansible Playbook を使用して、外部認証局 (CA) を備えた IdM サーバーをデプロイします。

注記

この手順のインベントリーファイルは、INI形式を使用します。または、YAML 形式または JSON 形式を使用できます。

前提条件

  • 以下のいずれかの手順を選択して、シナリオに対応するパラメーターを設定している。

  • ipaserver ロールで使用できる変数について、/usr/share/doc/ansible-freeipa/README-server.md ファイルの説明を読み、理解している。

手順

  1. ansible-playbook コマンドに、インストールの最初ステップの指示を含む Playbook ファイルの名前 (install-server-step1.yml など) を指定して実行します。-i オプションでインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i ~/MyPlaybooks/inventory ~/MyPlaybooks/install-server-step1.yml

    -v オプション、-vv オプション、または -vvv オプションを使用して、詳細のレベルを指定します。

    コマンドラインインターフェイス (CLI) で Ansible Playbook スクリプトの出力を表示できます。次の出力は、失敗したタスクが 0 個のため、スクリプトが正常に実行されたことを示しています。

    PLAY RECAP
    server.idm.example.com : ok=18   changed=10   unreachable=0    failed=0    skipped=21   rescued=0    ignored=0
  2. コントローラー上の ipa.csr 証明書署名要求ファイルを見つけ、これを外部 CA に送信します。
  3. 外部 CA が署名した IdM CA 証明書をコントローラーファイルシステムに配置して、次のステップの Playbook で見つけられるようにします。
  4. ansible-playbook コマンドに、インストールの最終ステップの指示を含む Playbook ファイルの名前 (install-server-step2.yml など) を指定して実行します。-i オプションでインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook -v -i ~/MyPlaybooks/inventory ~/MyPlaybooks/install-server-step2.yml
  5. 以下のいずれかのオプションを選択します。

    • IdM デプロイメントで外部 DNS を使用する場合: /tmp/ipa.system.records.UFRPto.db ファイルに含まれる DNS リソースレコードを、既存の外部 DNS サーバーに追加します。DNS レコードの更新プロセスは、特定の DNS ソリューションによって異なります。

      ...
      Restarting the KDC
      Please add records in this file to your DNS system: /tmp/ipa.system.records.UFRBto.db
      Restarting the web server
      ...
    重要

    既存の DNS サーバーに DNS レコードを追加するまで、サーバーのインストールは完了しません。

    • IdM デプロイメントで統合 DNS を使用している場合は、次のコマンドを実行します。

      • 親ドメインから ldM DNS ドメインに DNS 委譲を追加します。たとえば、IdM DNS ドメインが idm.example.com の場合は、ネームサーバー (NS) レコードを親ドメイン example.com に追加します。

        重要

        IdM DNS サーバーをインストールするたびに、この手順を繰り返します。

      • タイムサーバーの _ntp._udp サービス (SRV) レコードを IdM DNS に追加します。IdM DNS に新たにインストールした IdM サーバーのタイムサーバーの SRV レコードが存在すると、このプライマリー IdM サーバーが使用するタイムサーバーと同期するように、今後のレプリカおよびクライアントインストールが自動的に設定されます。

関連情報

ルート CA として 統合 CA を使用して IdM サーバーをデプロイする方法については、Ansible Playbook を使用して、統合 CA を root CA として備えた IdM サーバーをデプロイメント を参照してください。

31.10. Ansible Playbook を使用した IdM サーバーのアンインストール

注記

既存の Identity Management (IdM) デプロイメントでは、レプリカサーバー は置き替え可能なな用語です。

以下の手順に従って、Ansible Playbook を使用して IdM レプリカをアンインストールします。この例では、以下のように設定されています。

  • IdM 設定は、server123.idm.example.com からアンインストールされます。
  • server123.idm.example.com と関連するホストエントリーが IdM トポロジーから削除されます。

前提条件

  • コントロールノードでは、

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • ansible-freeipa パッケージをインストールしている。
    • ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成した。この例では、FQDN は server123.idm.example.com です。
    • ipaadmin_passwordSecret.yml Ansible Vault に保存している。
    • ipaserver_remove_from_topology オプションを機能させるには、システムが RHEL 8.9 以降で実行されている必要があります。
  • マネージドノードでは、

    • システムが RHEL 7.6 以降で実行されている。

手順

  1. Ansible Playbook ファイル uninstall-server.yml を次の内容で作成します。

    ---
    - name: Playbook to uninstall an IdM replica
      hosts: ipaserver
      become: true
    
      roles:
      - role: ipaserver
        ipaserver_remove_from_domain: true
        state: absent

    ipaserver_remove_from_domain オプションは、IdM トポロジーからホストを登録解除します。

    注記

    server123.idm.example.com を削除するとトポロジーが切断される場合は、削除は中止されます。詳細は、Ansible Playbook を使用した IdM サーバーのアンインストール (トポロジーが切断された場合でも) を参照してください。

  2. レプリカをアンインストールします。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i <path_to_inventory_directory>/hosts <path_to_playbooks_directory>/uninstall-server.yml
  3. server123.idm.example.com を指しているネームサーバー (NS) DNS レコードがすべて DNS ゾーンから削除されていることを確認してください。使用する DNS が IdM により管理される統合 DNS であるか、外部 DNS であるかに関わらず、確認を行なってください。IdM から DNS レコードを削除する方法は、 Deleting DNS records in the IdM CLI を参照してください。

31.11. Ansible Playbook を使用した IdM サーバーのアンインストール (トポロジーが切断された場合でも)

注記

既存の Identity Management (IdM) デプロイメントでは、レプリカサーバー は置き替え可能なな用語です。

IdM トポロジーが切断されたとしても、Ansible Playbook を使用して IdM レプリカをアンインストールするには、以下の手順を実行します。この例では、server456.idm.example.com を使用して、レプリカと、トポロジーから server123.idm.example.com の FQDN を持つ関連付けられたホストエントリーを削除します。これにより、特定のレプリカが server456.idm.example.com および残りのトポロジーから切断されます。

注記

remove_server_from_domain のみを使用してトポロジーからレプリカを削除しても、トポロジーは切断されないため、他のオプションは必要ありません。トポロジーが切断される結果となった場合は、ドメインの保持したい部分を指定する必要があります。その場合、以下を実行する必要があります。

  • ipaserver_remove_on_server 値を指定します。
  • ipaserver_ignore_topology_disconnect を True に設定します。

前提条件

  • コントロールノードでは、

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • システムが RHEL 8.9 以降で実行されている。
    • ansible-freeipa パッケージをインストールしている。
    • ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成した。この例では、FQDN は server123.idm.example.com です。
    • ipaadmin_passwordSecret.yml Ansible Vault に保存している。
  • マネージドノードでは、

    • システムが RHEL 7.6 以降で実行されている。

手順

  1. Ansible Playbook ファイル uninstall-server.yml を次の内容で作成します。

    ---
    - name: Playbook to uninstall an IdM replica
      hosts: ipaserver
      become: true
    
      roles:
      - role: ipaserver
        ipaserver_remove_from_domain: true
        ipaserver_remove_on_server: server456.idm.example.com
        ipaserver_ignore_topology_disconnect: true
        state: absent
    注記

    通常の状況では、server123 を削除してもトポロジーが切断されない場合で、ipaserver_remove_on_server の値が設定されていない場合は、server123 が削除されたレプリカは server123 のレプリカ合意を使用して自動的に決定されます。

  2. レプリカをアンインストールします。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i <path_to_inventory_directory>/hosts <path_to_playbooks_directory>/uninstall-server.yml
  3. server123.idm.example.com を指しているネームサーバー (NS) DNS レコードがすべて DNS ゾーンから削除されていることを確認してください。使用する DNS が IdM により管理される統合 DNS であるか、外部 DNS であるかに関わらず、確認を行なってください。IdM から DNS レコードを削除する方法は、 Deleting DNS records in the IdM CLI を参照してください。

31.12. 関連情報

第32章 Ansible Playbook で Identity Management レプリカのインストール

Ansible を使用してシステムを IdM レプリカとして設定すると、IdM ドメインに登録され、ドメインの IdM サーバーにある IdM サービスをシステムが使用できるようになります。

デプロイメントは、Ansible ロール ipareplica で管理されます。このロールは、自動検出モードを使用して、IdM サーバー、ドメイン、およびその他の設定を識別できます。ただし、複数のレプリカを階層のようなモデルでデプロイし、そのレプリカのグループを異なるタイミングでデプロイする場合には、グループごとに特定のサーバーまたはレプリカを定義する必要があります。

前提条件

  • Ansible コントロールノードに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
  • Ansibleと IdM の概念を理解している:

    • Ansible ロール
    • Ansible ノード
    • Ansible インベントリー
    • Ansible タスク
    • Ansible モジュール
    • Ansible プレイおよび Playbook

32.1. IdM レプリカをインストールするためのベース変数、サーバー変数、およびクライアント変数の指定

IdM レプリカをインストールするためのインベントリーファイルを設定するには、以下の手順を完了します。

前提条件

  • 次の要件を満たすように Ansible コントロールノードを設定している。

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • Ansible コントローラーに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
    • この例では、~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成したことを前提としている。
    • この例では、secret.yml Ansible ボールトに ipaadmin_password が保存されていることを前提としている。

手順

  1. 編集するインベントリーファイルを開きます。IdM レプリカとなるホストの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を指定します。FQDN は有効な DNS 名である必要があります。

    • 数字、アルファベット、およびハイフン (-) のみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。

      レプリカの FQDN のみが定義されている単純なインベントリーホストファイルの例

      [ipareplicas]
      replica1.idm.example.com
      replica2.idm.example.com
      replica3.idm.example.com
      [...]

      IdM サーバーがデプロイされており、SRV レコードが IdM DNS ゾーンに適切に設定されている場合、スクリプトはその他に必要な値をすべて自動的に検出します。

  2. [オプション] トポロジーの設計方法に基づいて、インベントリーファイルに追加情報を入力します。

    シナリオ 1

    自動検出を回避し、[ipareplicas] セクションに記載されているすべてのレプリカが特定の IdM サーバーを使用するようにするには、インベントリーファイルの [ipaservers] セクションにそのサーバーを設定します。

    IdM サーバーとレプリカの FQDN が定義されているインベントリーホストファイルの例

    [ipaservers]
    server.idm.example.com
    
    [ipareplicas]
    replica1.idm.example.com
    replica2.idm.example.com
    replica3.idm.example.com
    [...]

    シナリオ 2

    または、自動検出を回避して、特定のサーバーで特定のレプリカをデプロイする場合は、インベントリーファイルの [ipareplicas] セクションに、特定のレプリカのサーバーを個別に設定します。

    特定のレプリカ用に特定の IdM サーバーが定義されたインベントリーファイルの例

    [ipaservers]
    server.idm.example.com
    replica1.idm.example.com
    
    [ipareplicas]
    replica2.idm.example.com
    replica3.idm.example.com ipareplica_servers=replica1.idm.example.com

    上記の例では、replica3.idm.example.com が、すでにデプロイされた replica1.idm.example.com を複製元として使用します。

    シナリオ 3

    1 つのバッチに複数のレプリカをデプロイする場合は、多層レプリカのデプロイメントが役に立ちます。インベントリーファイルにレプリカの特定グループ (例: [ipareplicas_tier1] および [ipareplicas_tier2]) を定義し、Playbook install-replica.yml で各グループに個別のプレイを設計します。

    レプリカ階層が定義されているインベントリーファイルの例

    [ipaservers]
    server.idm.example.com
    
    [ipareplicas_tier1]
    replica1.idm.example.com
    
    [ipareplicas_tier2]
    replica2.idm.example.com \ ipareplica_servers=replica1.idm.example.com,server.idm.example.com

    ipareplica_servers の最初のエントリーが使用されます。次のエントリーは、フォールバックオプションとして使用されます。IdM レプリカのデプロイに複数の層を使用する場合は、最初に tier1 からレプリカをデプロイし、次に tier2 からレプリカをデプロイするように、Playbook に個別のタスクが必要です。

    レプリカグループごとに異なるプレイを定義した Playbook ファイルの例

    ---
    - name: Playbook to configure IPA replicas (tier1)
      hosts: ipareplicas_tier1
      become: true
    
      roles:
      - role: ipareplica
        state: present
    
    - name: Playbook to configure IPA replicas (tier2)
      hosts: ipareplicas_tier2
      become: true
    
      roles:
      - role: ipareplica
        state: present

  3. [オプション] firewalld と DNS に関する追加情報を入力します。

    シナリオ 1

    レプリカが、デフォルトのゾーンの代わりに指定した firewalld ゾーンを使用するようにする場合は、インベントリーファイルに指定できます。これは、たとえば、デフォルトとして設定されているパブリックゾーンの代わりに、IdM インストールに内部 firewalld ゾーンを使用する場合に役立ちます。

    カスタムゾーンを設定しないと、サービスがデフォルトの firewalld ゾーンに追加されます。事前定義されたデフォルトゾーンは public です。

    重要

    指定する firewalld ゾーンは存在し、永続的でなければなりません。

    カスタム firewalld 帯を持つシンプルなインベントリーホストファイルの例

    [ipaservers]
    server.idm.example.com
    
    [ipareplicas]
    replica1.idm.example.com
    replica2.idm.example.com
    replica3.idm.example.com
    [...]
    
    [ipareplicas:vars]
    ipareplica_firewalld_zone=custom zone

    シナリオ 2

    レプリカが IdM DNS サービスをホストするようにする場合は、ipareplica_setup_dns=yes 行を [ipareplicas:vars] セクションに追加します。また、サーバーごとの DNS フォワーダーを使用するかどうかを指定します。

    • サーバーごとのフォワーダーを設定するには、ipareplica_forwarders 変数と文字列のリストを [ipareplicas:vars] セクションに追加します (例: ipareplica_forwarders=192.0.2.1,192.0.2.2)。
    • サーバーごとにフォワーダーを設定しない場合は、ipareplica_no_forwarders=yes の行を [ipareplicas:vars] セクションに追加します。
    • レプリカの /etc/resolv.conf ファイルにリスト表示されているフォワーダーに基づいてサーバーごとにフォワーダーを設定するには、[ipareplicas:vars] セクションに ipareplica_auto_forwarders を追加します。

    レプリカに DNS とサーバーごとのフォワーダーを設定する手順を含むインベントリーファイルの例

    [ipaservers]
    server.idm.example.com
    
    [ipareplicas]
    replica1.idm.example.com
    replica2.idm.example.com
    replica3.idm.example.com
    [...]
    
    [ipareplicas:vars]
    ipareplica_setup_dns=yes
    ipareplica_forwarders=192.0.2.1,192.0.2.2

    シナリオ 3

    ipaclient_configure_dns_resolve および ipaclient_dns_servers オプション (使用可能な場合) を使用して DNS リゾルバーを指定し、クラスターのデプロイメントを簡素化します。これは、IdM デプロイメントが統合 DNS を使用している場合に特に便利です。

    DNS リゾルバーを指定するインベントリーファイルスニペット:

    [...]
    [ipaclient:vars]
    ipaclient_configure_dns_resolver=true
    ipaclient_dns_servers=192.168.100.1

    注記

    ipaclient_dns_servers リストには IP アドレスのみを含める必要があります。ホスト名を含めることはできません。

関連情報

  • ipareplica 変数の詳細は、/usr/share/ansible/roles/ipareplica/README.md Markdown ファイルを参照してください。

32.2. Ansible Playbook を使用して IdM レプリカをインストールするための認証情報の指定

この手順は、IdM レプリカのインストールに認可を設定します。

前提条件

  • 次の要件を満たすように Ansible コントロールノードを設定している。

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • Ansible コントローラーに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
    • この例では、~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成したことを前提としている。
    • この例では、secret.yml Ansible ボールトに ipaadmin_password が保存されていることを前提としている。

手順

  1. レプリカをデプロイする権限のあるユーザーのパスワード (IdM の admin など) を指定します。

    • Red Hat は、Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイルから Vault ファイルを参照する (install-replica.yml など) ことを推奨します。

      Ansible Vault ファイルのインベントリーファイルおよびパスワードのプリンシパルを使用した Playbook ファイルの例

      - name: Playbook to configure IPA replicas
        hosts: ipareplicas
        become: true
        vars_files:
        - playbook_sensitive_data.yml
      
        roles:
        - role: ipareplica
          state: present

      Ansible Vault の使用方法は、公式の Ansible Vault ドキュメントを参照してください。

    • あまり安全ではありませんが、インベントリーファイルで admin の認証情報を直接提供します。インベントリーファイルの [ipareplicas:vars] セクションで ipaadmin_password オプションを使用します。インベントリーファイルと、Playbook ファイル install-replica.yml は以下のようになります。

      インベントリーの hosts.replica ファイルの例

      [...]
      [ipareplicas:vars]
      ipaadmin_password=Secret123

      インベントリーファイルのプリンシパルおよびパスワードを使用した Playbook の例

      - name: Playbook to configure IPA replicas
        hosts: ipareplicas
        become: true
      
        roles:
        - role: ipareplica
          state: present

    • または、安全性は低くなりますが、レプリカをインベントリーファイルに直接デプロイすることを許可されている別のユーザーの認証情報を提供します。別の認証ユーザーを指定するには、ユーザー名に ipaadmin_principal オプションを使用し、パスワードに ipaadmin_password オプションを使用します。インベントリーファイルと、Playbook ファイル install-replica.yml は以下のようになります。

      インベントリーの hosts.replica ファイルの例

      [...]
      [ipareplicas:vars]
      ipaadmin_principal=my_admin
      ipaadmin_password=my_admin_secret123

      インベントリーファイルのプリンシパルおよびパスワードを使用した Playbook の例

      - name: Playbook to configure IPA replicas
        hosts: ipareplicas
        become: true
      
        roles:
        - role: ipareplica
          state: present

関連情報

  • Ansible ロール ipareplica で使用できるオプションの詳細は、Markdown ファイル /usr/share/ansible/roles/ipareplica/README.md を参照してください。

32.3. Ansible Playbook で IdM レプリカのデプロイメント

以下の手順に従って、Ansible Playbook を使用して IdM レプリカをデプロイします。

手順

  • Ansible Playbook を使用して IdM レプリカをインストールするには、ansible-playbook コマンドに Playbook ファイルの名前 (install-replica.yml など) を使用します。-i オプションでインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i <path_to_inventory_directory>/hosts.replica <path_to_playbooks_directory>/install-replica.yml

    -v オプション、-vv オプション、または -vvv オプションを使用して、詳細のレベルを指定します。

    Ansible には、Ansible Playbook スクリプトの実行が通知されます。次の出力は、失敗したタスクが 0 個のため、スクリプトが正常に実行されたことを示しています。

    PLAY RECAP
    replica.idm.example.com : ok=18   changed=10   unreachable=0    failed=0    skipped=21   rescued=0    ignored=0

これで、IdM レプリカがインストールされました。

32.4. Ansible Playbook を使用した IdM レプリカのアンインストール

注記

既存の Identity Management (IdM) デプロイメントでは、レプリカサーバー は置き替え可能なな用語です。IdM サーバーをアンインストールする方法の詳細は、Ansible Playbook を使用した IdM サーバーのアンインストール または トポロジーが切断される場合でも Ansible Playbook を使用して IdM サーバーをアンインストールする を参照してください。

第33章 Ansible Playbook で Identity Management クライアントのインストール

Ansible を使用して、システムを Identity Management (IdM) クライアントとして設定する方法を説明します。システムを IdM クライアントとして設定すると、IdM ドメインに登録され、システムがドメインの IdM サーバーで IdM サービスを使用できるようになります。

デプロイメントは、Ansible ロール ipaclient により管理されます。デフォルトでは、ロールは自動検出モードを使用して、IdM サーバー、ドメイン、およびその他の設定を特定します。ロールは、Ansible Playbook がインベントリーファイルなどに指定した設定を使用するように変更できます。

前提条件

  • Ansible コントロールノードに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
  • Ansibleと IdM の概念を理解している:

    • Ansible ロール
    • Ansible ノード
    • Ansible インベントリー
    • Ansible タスク
    • Ansible モジュール
    • Ansible プレイおよび Playbook

33.1. 自動検出クライアントインストールモードでインベントリーファイルのパラメーターの設定

Ansible Playbook を使用して Identity Management クライアントをインストールするには、インベントリーファイルでターゲットホストパラメーターを設定します (例: inventory/hosts)。

  • ホストに関する情報
  • タスクの承認

インベントリーファイルは、所有するインベントリープラグインに応じて、多数ある形式のいずれかになります。INI-like 形式は Ansible のデフォルトで、以下の例で使用されています。

注記

RHEL でグラフィカルユーザーインターフェイスでスマートカードを使用するには、Ansible Playbook に ipaclient_mkhomedir 変数を含めるようにします。

前提条件

手順

  1. IdM クライアントになるホストの完全修飾ホスト名 (FQDN) を指定します。完全修飾ドメイン名は、有効な DNS 名である必要があります。

    • 数字、アルファベット、およびハイフン (-) のみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。大文字は使用できません。

    SRV レコードが IdM DNS ゾーンで正しく設定されている場合は、スクリプトが自動的に必要な値をすべて検出します。

    クライアントの FQDN のみが定義されている単純なインベントリーホストファイルの例

    [ipaclients]
    client.idm.example.com
    [...]

  2. クライアントを登録するための認証情報を指定します。以下の認証方法を使用できます。

    • クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード。以下はデフォルトのオプションになります。

      • Red Hat は、Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイル (install-client.yml など) から Vault ファイルを直接参照することを推奨します。

        Ansible Vault ファイルのインベントリーファイルおよびパスワードのプリンシパルを使用した Playbook ファイルの例

        - name: Playbook to configure IPA clients with username/password
          hosts: ipaclients
          become: true
          vars_files:
          - playbook_sensitive_data.yml
        
          roles:
          - role: ipaclient
            state: present

      • あまり安全ではありませんが、inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションに ipaadmin_password オプションを使用して、admin の認証情報を提供します。また、別の認証ユーザーを指定するには、ユーザー名に ipaadmin_principal オプション、パスワードに ipaadmin_password オプションを使用します。inventory/hosts インベントリーファイルと、Playbook ファイル install-client.yml は以下のようになります。

        インベントリーホストファイルの例

        [...]
        [ipaclients:vars]
        ipaadmin_principal=my_admin
        ipaadmin_password=Secret123

        インベントリーファイルのプリンシパルおよびパスワードを使用した Playbook の例

        - name: Playbook to unconfigure IPA clients
          hosts: ipaclients
          become: true
        
          roles:
          - role: ipaclient
            state: true

    • 以前登録した クライアントキータブ が利用できる場合は、以下を行います。

      このオプションは、システムが Identity Management クライアントとして登録されたことがある場合に使用できます。この認証方法を使用するには、#ipaclient_keytab オプションのコメントを解除して、キータブを保存するファイルへのパスを指定します (例: inventory/hosts[ipaclient:vars] セクション)。

    • 登録時に生成される ランダムなワンタイムパスワード (OTP)。この認証方法を使用するには、インベントリーファイルの ipaclient_use_otp=yes オプションを使用します。たとえば、inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションで ipaclient_use_otp=yes オプションのコメントを解除できます。OTP では、以下のいずれかのオプションも指定する必要があります。

      • クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード (例: inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションに ipaadmin_password の値を指定)。
      • 管理者キータブ (例: inventory/hosts[ipaclients:vars] セクションに ipaadmin_keytab の値を指定)。
  3. (オプション) ipaclient_configure_dns_resolve および ipaclient_dns_servers オプション (使用可能な場合) を使用して DNS リゾルバーを指定し、クラスターのデプロイメントを簡素化します。これは、IdM デプロイメントが統合 DNS を使用している場合に特に便利です。

    DNS リゾルバーを指定するインベントリーファイルスニペット:

    [...]
    [ipaclients:vars]
    ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}"
    ipaclient_domain=idm.example.com
    ipaclient_configure_dns_resolver=true
    ipaclient_dns_servers=192.168.100.1

    注記

    ipaclient_dns_servers リストには IP アドレスのみを含める必要があります。ホスト名を含めることはできません。

  4. RHEL 8.9 以降では、ipaclient_subid: true オプションを指定して、IdM ユーザーのサブ ID 範囲を IdM レベルで設定することもできます。

関連情報

33.2. クライアントのインストール時に自動検出ができない場合に備えてインベントリーファイルのパラメーターの設定

Ansible Playbook を使用して Identity Management クライアントをインストールするには、インベントリーファイルでターゲットホストパラメーターを設定します (例: inventory/hosts)。

  • ホストと、IdM サーバーおよび IdM ドメインまたは IdM レルムに関する情報
  • タスクの承認

インベントリーファイルは、所有するインベントリープラグインに応じて、多数ある形式のいずれかになります。INI-like 形式は Ansible のデフォルトで、以下の例で使用されています。

注記

RHEL でグラフィカルユーザーインターフェイスでスマートカードを使用するには、Ansible Playbook に ipaclient_mkhomedir 変数を含めるようにします。

前提条件

手順

  1. IdM クライアントになるホストの完全修飾ホスト名 (FQDN) を指定します。完全修飾ドメイン名は、有効な DNS 名である必要があります。

    • 数字、アルファベット、およびハイフン (-) のみを使用できる。たとえば、アンダーラインは使用できないため、DNS の障害が発生する原因となる可能性があります。
    • ホスト名がすべて小文字である。大文字は使用できません。
  2. inventory/hosts ファイルの関連セクションに、他のオプションを指定します。

    • [ipaservers] セクションのサーバーの FQDN は、クライアントが登録される IdM サーバーを示します。
    • 以下のいずれかのオプションを使用できます。

      • クライアントが登録される IdM サーバーの DNS ドメイン名を指定する [ipaclients:vars] セクションの ipaclient_domain オプション
      • IdM サーバーが制御する Kerberos レルムの名前を示す [ipaclients:vars] セクションの ipaclient_realm オプション

        クライアント FQDN、サーバーの FQDN、およびドメインが定義されているインベントリーホストファイルの例

        [ipaclients]
        client.idm.example.com
        
        [ipaservers]
        server.idm.example.com
        
        [ipaclients:vars]
        ipaclient_domain=idm.example.com
        [...]

  3. クライアントを登録するための認証情報を指定します。以下の認証方法を使用できます。

    • クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード。以下はデフォルトのオプションになります。

      • Red Hat は、Ansible Vault を使用してパスワードを保存し、Playbook ファイル (install-client.yml など) から Vault ファイルを直接参照することを推奨します。

        Ansible Vault ファイルのインベントリーファイルおよびパスワードのプリンシパルを使用した Playbook ファイルの例

        - name: Playbook to configure IPA clients with username/password
          hosts: ipaclients
          become: true
          vars_files:
          - playbook_sensitive_data.yml
        
          roles:
          - role: ipaclient
            state: present

    • 安全性は低くなりますが、inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションの ipaadmin_password オプションを使用して、admin の認証情報が提供されます。また、別の認証ユーザーを指定するには、ユーザー名に ipaadmin_principal オプション、パスワードに ipaadmin_password オプションを使用します。これにより、Playbook ファイル install-client.yml は、以下のようになります。

      インベントリーホストファイルの例

      [...]
      [ipaclients:vars]
      ipaadmin_principal=my_admin
      ipaadmin_password=Secret123

      インベントリーファイルのプリンシパルおよびパスワードを使用した Playbook の例

      - name: Playbook to unconfigure IPA clients
        hosts: ipaclients
        become: true
      
        roles:
        - role: ipaclient
          state: true

    • 以前登録した クライアントキータブ が利用できる場合は、以下を行います。

      このオプションは、システムが Identity Management クライアントとして登録されたことがある場合に使用できます。この認証方法を使用するには、ipaclient_keytab オプションをコメント解除します。たとえば、inventory/hosts[ipaclient:vars] セクションにあるように、キータブを格納しているファイルへのパスを指定します。

    • 登録時に生成される ランダムなワンタイムパスワード (OTP)。この認証方法を使用するには、インベントリーファイルの ipaclient_use_otp=yes オプションを使用します。たとえば、inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションで、#ipaclient_use_otp=yes オプションをコメント解除できます。OTP では、以下のいずれかのオプションも指定する必要があります。

      • クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード (例: inventory/hosts ファイルの [ipaclients:vars] セクションに ipaadmin_password の値を指定)。
      • 管理者キータブ (例: inventory/hosts[ipaclients:vars] セクションに ipaadmin_keytab の値を指定)。
  4. RHEL 8.9 以降では、ipaclient_subid: true オプションを指定して、IdM ユーザーのサブ ID 範囲を IdM レベルで設定することもできます。

関連情報

  • Ansible ロール ipaclient で使用できるオプションの詳細は、/usr/share/ansible/roles/ipaclient/README.md を参照してください。
  • subID 範囲の手動管理

33.3. install-client.yml ファイルのパラメーターの確認

Playbook ファイル install-client.yml には、IdM クライアントのデプロイメント手順が含まれています。

手順

  • ファイルを開き、Playbook の命令がデプロイメントのプランニング内容に対応するかどうかを確認します。通常、内容は以下のようになります。

    ---
    - name: Playbook to configure IPA clients with username/password
      hosts: ipaclients
      become: true
    
      roles:
      - role: ipaclient
        state: present

    以下は、個々のエントリーが意味するものです。

    • hosts エントリーは、ipa-client-install スクリプトを実行するホストの FQDNs を ansaible スクリプトが検索する inventory/hosts のセクションを指定します。
    • become: true エントリーは、ipa-client-install スクリプトの実行時に root の認証情報が呼び出されるように指定します。
    • role: ipaclient エントリーは、ホストにインストールされるロールを指定します。この場合は ipa クライアントロールになります。
    • state: present エントリーは、アンインストール (absent) ではなくクライアントをインストールするように指定します。

33.4. Ansible Playbook で IdM クライアント登録の認可オプション

インベントリーおよび Playbook ファイルの例を使用した IdM クライアント登録の個別認証オプションは以下のとおりです。

表33.1 Ansible で IdM クライアント登録の認可オプション

認可オプション備考インベントリーファイルの例Playbook ファイル install-client.yml の例

クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード - オプション 1

Ansible vault に保存されているパスワード

[ipaclients:vars]
[...]
- name: Playbook to configure IPA clients with username/password
  hosts: ipaclients
  become: true
  vars_files:
  - playbook_sensitive_data.yml

  roles:
  - role: ipaclient
    state: present

クライアントを登録する権限のあるユーザーのパスワード - オプション 2

インタベントリーファイルに格納されるパスワード

[ipaclients:vars]
ipaadmin_password=Secret123
- name: Playbook to configure IPA clients
  hosts: ipaclients
  become: true

  roles:
  - role: ipaclient
    state: true

ランダムなワンタイムパスワード (OTP) - オプション 1

OTP および管理者パスワード

[ipaclients:vars]
ipaadmin_password=Secret123
ipaclient_use_otp=true
- name: Playbook to configure IPA clients
  hosts: ipaclients
  become: true

  roles:
  - role: ipaclient
    state: true

ランダムなワンタイムパスワード (OTP) - オプション 2

OTP および管理者キータブ

[ipaclients:vars]
ipaadmin_keytab=/root/admin.keytab
ipaclient_use_otp=true
- name: Playbook to configure IPA clients
  hosts: ipaclients
  become: true

  roles:
  - role: ipaclient
    state: true

前回登録時のクライアントキータブ

 
[ipaclients:vars]
ipaclient_keytab=/root/krb5.keytab
- name: Playbook to configure IPA clients
  hosts: ipaclients
  become: true

  roles:
  - role: ipaclient
    state: true
注記

RHEL 8.8 以降、上記の 2 つの OTP 承認シナリオでは、kinit コマンドを使用した管理者の TGT の要求は、最初に指定または検出された IdM サーバーで行われます。したがって、Ansible コントロールノードを追加変更する必要はありません。RHEL 8.8 より前は、制御ノードに krb5-workstation パッケージが必要でした。

33.5. Ansible Playbook を使用した IdM クライアントのデプロイ

Ansible Playbook を使用して IdM 環境に IdM クライアントをデプロイするには、この手順を完了します。

手順

  • Ansible Playbook を使用して IdM クライアントをインストールする場合は、ansible-playbook コマンドに Playbook ファイルの名前 (install-client.yml など) を指定します。-i オプションでインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory/hosts install-client.yml

    -v オプション、-vv オプション、または -vvv オプションを使用して、詳細のレベルを指定します。

    Ansible には、Ansible Playbook スクリプトの実行が通知されます。次の出力は、失敗したタスクがないため、スクリプトが正常に実行されたことを示しています。

    PLAY RECAP
    client1.idm.example.com : ok=18 changed=10 unreachable=0 failed=0 skipped=21 rescued=0 ignored=0
    注記

    Ansible は、さまざまな色を使用して、実行中のプロセスに関するさまざまな情報を提供します。/etc/ansible/ansible.cfg ファイルの [colors] セクションで、デフォルトの色を変更できます。

    [colors]
    [...]
    #error = red
    #debug = dark gray
    #deprecate = purple
    #skip = cyan
    #unreachable = red
    #ok = green
    #changed = yellow
    [...]

Ansible Playbook を使用して、ホストに IdM クライアントをインストールしました。

33.6. Ansible インストール後の Identity Management クライアントのテスト

コマンドラインインターフェイス (CLI) により、ansible-playbook コマンドが成功したことが表示されますが、独自のテストを行うこともできます。

Identity Management クライアントが、サーバーに定義したユーザーに関する情報を取得できることをテストするには、サーバーに定義したユーザーを解決できることを確認します。たとえば、デフォルトの admin ユーザーを確認するには、次のコマンドを実行します。

[user@client1 ~]$ id admin
uid=1254400000(admin) gid=1254400000(admins) groups=1254400000(admins)

認証が適切に機能していることをテストするには、別の既存 IdM ユーザーで su - を実行します。

[user@client1 ~]$ su - idm_user
Last login: Thu Oct 18 18:39:11 CEST 2018 from 192.168.122.1 on pts/0
[idm_user@client1 ~]$

33.7. Ansible Playbook での IdM クライアントのアンインストール

以下の手順に従って、Ansible Playbook を使用して IdM クライアントと機能していたホストをアンインストールします。

前提条件

  • IdM 管理者の認証情報

手順

  • IdM クライアントをアンインストールするには、uninstall-client.yml など Playbook ファイルの名前を指定して ansible-playbook コマンドを実行します。-i オプションでインベントリーファイルを指定し、必要に応じて -v-vv または -vvv オプションを使用して詳細レベルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory/hosts uninstall-client.yml
重要

クライアントをアンインストールすると、基本的な IdM 設定のみがホストから削除されますが、クライアントの再インストールを行うことになった場合に備え、ホストに設定ファイルが残されます。また、アンインストールには以下の制限があります。

  • IdM LDAP サーバーからクライアントホストエントリーは削除されない。アンインストールすると、ホストの登録が解除されるだけである。
  • クライアントにあるサービスは、IdM から削除されない。
  • クライアントの DNS エントリーは、IdM サーバーから削除されない。
  • /etc/krb5.keytab を除き、以前の Keytab のプリンシパルは削除されない。

アンインストールを行うと、IdM CA がホスト向けに発行した証明書がすべて削除されることに注意してください。

関連情報

パート II. IdM および AD の統合

第34章 IdM と AD との間の信頼のインストール

Identity Management IdM サーバーと Active Directory (AD) の間の信頼を作成する方法について詳しく説明します。この場合、両方のサーバーは同じフォレスト内にあります。

注記
RHEL 7 では、同期信頼 は、RHEL システムを Active Directory (AD) へ間接的に統合する場合に考えられる 2 つの方法でした。RHEL 8 では、同期は非推奨になりました。IdM と AD を統合するには、代わりに信頼アプローチを使用します。同期から信頼に移行する場合は、Linux ドメインと Active Directory ドメインを統合する際の同期から信頼への既存環境の移行 を参照してください。

前提条件

  • Planning a cross-forest trust between Identity Management and Active Directory を読んでいる。
  • ドメインコントローラーとともに、AD がインストールされている。
  • IdM サーバーがインストールされ、実行している。

  • Kerberos では、通信に最大 5 分の遅延が必要になるため、AD サーバーおよび IdM サーバーの両方でクロックが同期されている必要がある。
  • NetBIOS 名は、Active Directory ドメインの特定に不可欠であるため、各サーバーで一意の NetBIOS 名を信頼に配置する。

    • Active Directory または IdM ドメインの NetBIOS 名は通常、対応する DNS ドメインの最初の部分になります。DNS ドメインが ad.example.com の場合、NetBIOS 名は通常 AD になります。ただし、必須ではありません。重要なのは、NetBIOS 名がピリオドなしの 1 つの単語であるということです。NetBIOS 名は最長 15 文字です。
  • IdM システムでは、カーネル内で IPv6 プロトコルが有効になっている必要がある。

    • IPv6 が無効になっていると、IdM サービスが使用する CLDAP プラグインが初期化に失敗します。

34.1. サポート対象の Windows Server バージョン

以下のフォレストおよびドメイン機能レベルを使用する Active Directory (AD) フォレストとの信頼関係を確立できます。

  • フォレスト機能レベルの範囲 - Windows Server 2012 ~ Windows Server 2016
  • ドメイン機能レベルの範囲: Windows Server 2012 - Windows Server 2016

Identity Management (IdM) は、以下のオペレーティングシステムを実行している Active Directory ドメインコントローラーとの信頼の確立に対応しています。

  • Windows Server 2022 (RHEL 8.7 以降)
  • Windows Server 2019
  • Windows Server 2016
  • Windows Server 2012 R2
  • Windows Server 2012
注記

RHEL 8.4 では、Identity Management (IdM) は、Windows Server 2008 R2 以前のバージョンを実行している Active Directory ドメインコントローラーとの間で Active Directory への信頼を確立することに対応していません。RHEL IdM との信頼関係を確立する際に、SMB 暗号化が必要になりました。これは、Windows Server 2012 以降でのみ対応しています。

34.2. 信頼の仕組み

Identity Management (IdM) と Active Directory (AD) の間の信頼は、レルム間の Kerberos 信頼で確立されます。このソリューションでは、Kerberos 機能を使用して、異なる ID ソース間で信頼関係を確立します。したがって、すべての AD ユーザーは次のことができます。

  • ログインして、Linux システムおよびリソースにアクセスする。
  • シングルサインオン (SSO) を使用する。

IdM オブジェクトはすべて、信頼の IdM で管理されます。

AD オブジェクトはすべて、信頼の AD で管理されます。

複雑な環境では、1 つの IdM フォレストを、複数の AD フォレストに接続できます。この設定により、組織のさまざまな機能の作業を、より適切に分離できます。Linux 管理者は Linux インフラストラクチャーを完全に制御できますが、AD 管理者はユーザーと、ユーザーに関連するポリシーに集中できます。このような場合、IdM が制御する Linux レルムは、AD リソースドメインまたはレルムに似ていますが、Linux システムが含まれています。

AD の観点から観ると、Identity Management は、1 つの AD ドメインを持つ個別の AD フォレストを表します。AD フォレストの root ドメインと IdM ドメインとの間にフォレスト間の信頼が確立されると、AD フォレストドメインのユーザーは、IdM ドメインの Linux マシンおよびサービスと相互作用できます。

注記

信頼環境では、IdM は ID ビューを使用して、IdM サーバーの AD ユーザーの POSIX 属性を設定できます。

34.3. AD 管理者権限

AD (Active Directory) と IdM (Identity Management) との間で信頼を構築する場合は、適切な AD 権限のある AD 管理者アカウントを使用する必要があります。

このような AD 管理者は、以下のいずれかのグループのメンバーである必要があります。

  • AD フォレスト内のエンタープライズ管理グループ
  • AD フォレスト用のフォレストルートドメインのドメイン管理グループ

関連情報

34.4. AD および RHEL で一般的な暗号化タイプに対応

デフォルトでは、Identity Management は RC4、AES-128、および AES-256 の Kerberos 暗号化タイプに対応するレルム間の信頼を確立します。さらに、デフォルトでは、SSSD と Samba Winbind は RC4、AES-128、および AES-256 の Kerberos 暗号化タイプに対応します。

RC4 暗号化は、新しい暗号化タイプ AES-128 および AES-256 よりも安全ではないと見なされるため、デフォルトで非推奨となり、無効にされています。一方、Active Directory (AD) ユーザーの認証情報と AD ドメイン間の信頼は RC4 暗号化をサポートしており、AES 暗号化タイプに対応していない可能性があります。

一般的な暗号化タイプがないと、RHEL ホストと AD ドメイン間の通信が機能しないか、一部の AD アカウントが認証できない可能性があります。この状況に対処するには、以下に説明する設定の 1 つを変更します。

34.4.1. AD での AES 暗号化の有効化 (推奨)

AD フォレストの Active Directory (AD) ドメイン間の信頼を確保して、強力な AES 暗号化の種類に対応するには、Microsoft の記事 AD DS: Security: Kerberos "Unsupported etype" error when accessing a resource in a trusted domain を参照してください。

34.4.2. GPO を使用した Active Directory で AES 暗号化タイプの有効化

本セクションでは、グループポリシーオブジェクト (GPO) を使用して、Active Directory (AD) で AES 暗号化タイプを有効にする方法を説明します。IdM クライアントで Samba サーバーを実行するなど、RHEL の特定の機能には、この暗号化タイプが必要です。

RHEL は、弱い DES および RC4 の暗号化タイプをサポートしなくなった点に注意してください。

前提条件

  • グループポリシーを編集できるユーザーとして AD にログインしている。
  • Group Policy Management Console がコンピューターにインストールされている。

手順

  1. Group Policy Management Console を開きます。
  2. デフォルトドメインポリシー を右クリックして、編集 を選択します。Group Policy Management Editor を閉じます。
  3. コンピューターの設定ポリシーWindows の設定セキュリティーの設定ローカルポリシーセキュリティーオプション に移動します。
  4. ネットワーク セキュリティー: Kerberos で許可する暗号化の種類を設定する をダブルクリックします。
  5. AES256_HMAC_SHA1 を選択し、必要に応じて、将来の暗号化タイプ を選択します。
  6. OK をクリックします。
  7. Group Policy Management Editor を閉じます。
  8. デフォルトのドメインコントローラーポリシー に対して手順を繰り返します。
  9. Windows ドメインコントローラー (DC) がグループポリシーを自動的に適用するまで待ちます。または、GPO を DC に手動で適用するには、管理者権限を持つアカウントを使用して次のコマンドを入力します。

    C:\> gpupdate /force /target:computer

34.4.3. RHEL での RC4 サポートの有効化

AD ドメインコントローラーに対する認証が行われるすべての RHEL ホストで、以下に概説する手順を実行します。

手順

  1. update-crypto-policies コマンドを使用して、DEFAULT 暗号化ポリシーに加え AD-SUPPORT 暗号化サブポリシーを有効にします。

    [root@host ~]# update-crypto-policies --set DEFAULT:AD-SUPPORT
    Setting system policy to DEFAULT:AD-SUPPORT
    Note: System-wide crypto policies are applied on application start-up.
    It is recommended to restart the system for the change of policies
    to fully take place.
  2. ホストを再起動します。
重要

AD-SUPPORT 暗号化サブポリシーは、RHEL 8.3 以降でのみ利用できます。

  • RHEL 8.2 以前は RC4 のサポートを有効にするには、cipher = RC4-128+ でカスタム暗号化モジュールポリシーを作成および有効にします。詳細は、サブポリシーを使用したシステム全体の暗号化ポリシーのカスタマイズ を参照してください。
  • RHEL 8.0 および RHEL 8.1 で RC4 のサポートを有効にするには、/etc/crypto-policies/back-ends/krb5.config ファイルの permitted_enctypes オプションに +rc4 を追加します。

    [libdefaults]
    permitted_enctypes = aes256-cts-hmac-sha1-96 aes256-cts-hmac-sha384-192 camellia256-cts-cmac aes128-cts-hmac-sha1-96 aes128-cts-hmac-sha256-128 camellia128-cts-cmac +rc4

34.4.4. 関連情報

34.5. IdM と AD との間の通信に必要なポート

Active Directory (AD) 環境と Identity Management (IdM) 環境間の通信を有効にするには、AD ドメインコントローラーおよび IdM サーバーのファイアウォールで次のポートを開きます。

表34.1 AD 信頼に必要なポート

サービスポートプロトコル

エンドポイント解決ポートマッパー

135

TCP

NetBIOS-DGM

138

TCP および UDP

NetBIOS-SSN

139

TCP および UDP

Microsoft-DS

445

TCP および UDP

動的 RPC

49152-65535

TCP

AD グローバルカタログ

3268

TCP

LDAP

389

TCP および UDP

注記

信頼のために IdM サーバーで TCP ポートの 389 を開く必要はありませんが、IdM サーバーと通信しているクライアントに必要です。

TCP ポート 135 は、DCE RPC エンドポイントマッパーが機能するために必要であり、IdM-AD 信頼の作成中に使用されます。

ポートを開くには、以下の方法を使用できます。

  • firewalld サービス - 特定ポートを有効にするか、そのポートが含まれる以下のサービスを有効にすることができます。

    • freeipa 信頼の設定
    • LDAP を用いた FreeIPA
    • Kerberos
    • DNS

    詳細は CLI を使用したポートの制御 を参照してください。

注記

RHEL 8.2 以前を使用している場合、freeipa-trust firewalld サービスには 1024-1300 の RPC ポート範囲が含まれていますが、これは正しくありません。RHEL 8.2 以前では、freeipa-trust firewalld サービスを有効にすることに加えて、TCP ポート範囲 49152-65535 を手動で開く必要があります。

この問題は、RHEL8.3 以降の バグ 1850418 - freeipa-trust.xml 定義を更新して正しい動的 RPC 範囲を含める で修正されています。

表34.2 信頼の IdM サーバーで必要なポート

サービスポートプロトコル

Kerberos

88、464

TCP および UDP

LDAP

389

TCP

DNS

53

TCP および UDP

表34.3 AD 信頼で IdM クライアントに必要なポート

サービスポートプロトコル

Kerberos

88

UDP および TCP

注記

libkrb5 ライブラリーは UDP を使用し、KDC (Key Distribution Center) から送信されるデータが大きすぎると、TCP プロトコルにフォールバックします。Active Directory は、PAC (Privilege Attribute Certificate) を Kerberos チケットに割り当てます。これによりサイズが増加し、TCP プロトコルを使用する必要があります。要求のフォールバックと再送信を回避するため、デフォルトでは、Red Hat Enterprise Linux 7.4 以降の SSSD ではユーザー認証に TCP が使用されます。libkrb5 が TCP を使用する前にサイズを設定する場合は、/etc/krb5.conf ファイルに udp_preference_limit を設定します。詳細は、man ページの krb5.conf(5) を参照してください。

以下の図は、IdM クライアントによって送信され、IdM サーバーと AD ドメインコントローラーによって受信および応答された通信を示しています。ファイアウォールで受信および送信ポートとプロトコルを設定するには、Red Hat は、FreeIPA サービスの定義がすでにある firewalld サービスを使用することを推奨しています。

diagram showing the ports and protocols that IdM clients use when communicating with IdM servers and AD Domain Controllers

関連情報

34.6. 信頼用の DNS およびレルムの設定の設定

信頼で Identity Management (IdM) と Active Directory (AD) を接続する前に、サーバーが相互に認識し、ドメイン名を正しく解決できるようにする必要があります。次の間でドメイン名を使用できるように DNS を設定するには:

  • 統合 DNS サーバーおよび認証局を使用する 1 台のプライマリー IdM サーバー
  • 1 台の AD ドメインコントローラー

DNS 設定には以下が必要です。

  • IdM サーバーに DNS ゾーンの設定
  • AD での条件付き DNS 転送の設定
  • DNS 設定の正確性の確認

34.6.1. 一意のプライマリー DNS ドメイン

Windows では、すべてのドメインが Kerberos レルムと DNS ドメインを同時に設定します。ドメインコントローラーが管理するすべてのドメインには、独自の専用 DNS ゾーンが必要です。Identity Management (IdM) がフォレストとして Active Directory (AD) に信頼される場合も同様です。AD は、IdM に独自の DNS ドメインがあることを想定します。信頼の設定を機能させるには、DNS ドメインを Linux 環境専用にする必要があります。

各システムには、独自の固有プライマリー DNS ドメインが設定されている必要があります。以下に例を示します。

  • ad.example.com (AD の場合) および idm.example.com (IdM の場合)
  • example.com (AD の場合) および idm.example.com (IdM の場合)
  • ad.example.com (AD の場合) および example.com (IdM の場合)

最も便利な管理ソリューションは、各 DNS ドメインが統合 DNS サーバーで管理されている環境ですが、規格に準拠した DNS サーバーも使用できます。

Kerberos レルム名は、プライマリー DNS ドメイン名を大文字にしたもの
Kerberos レルム名は、プライマリー DNS ドメイン名と同じで、すべて大文字にする必要があります。たとえば、AD のドメイン名が ad.example.com で、IdM のドメイン名が idm.example.com の場合、Kerberos レルム名は AD.EXAMPLE.COM および IDM.EXAMPLE.COM になります。
DNS レコードが信頼内の全 DNS ドメインから解決可能である
すべてのマシンが、信頼関係内で関連するすべての DNS ドメインの DNS レコードを解決できるようにする必要があります。
IdM ドメインおよび AD DNS ドメイン
IdM に参加しているシステムは、複数の DNS ドメインに分散できます。Red Hat では、Active Directory が所有するクライアントとは異なる DNS ゾーンに IdM クライアントをデプロイすることを推奨しています。プライマリー IdM DNS ドメインには、AD 信頼に対応するのに適切な SRV レコードが必要です。
注記

IdM と Active Directory との間の信頼がある一部の環境では、Active Directory DNS ドメインの一部であるホストに IdM クライアントをインストールできます。ホストは、これにより、Linux に焦点を合わせた IdM の機能の恩恵を受けることができます。これは推奨される設定ではなく、いくつかの制限があります。詳細は Active Directory DNS ドメインで IdM クライアントの設定 を参照してください。

次のコマンドを実行して、システム設定に必要な固有の SRV レコードのリストを取得できます。

$ ipa dns-update-system-records --dry-run

生成されるリストは、たとえば以下のようになります。

IPA DNS records:
  _kerberos-master._tcp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.idm.example.com.
  _kerberos-master._udp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.idm.example.com.
  _kerberos._tcp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.idm.example.com.
  _kerberos._tcp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 88 server.idm.example.com.
  _kerberos.idm.example.com. 86400 IN TXT "IDM.EXAMPLE.COM"
  _kpasswd._tcp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.idm.example.com.
  _kpasswd._udp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 464 server.idm.example.com.
  _ldap._tcp.idm.example.com. 86400 IN SRV 0 100 389 server.idm.example.com.
  _ipa-ca.idm.example.com. 86400 IN A 192.168.122.2

同じ IdM レルムにあるその他の DNS ドメインでは、AD への信頼を設定する際に SRV レコードを設定する必要はありません。これは、AD ドメインコントローラーが、KDC の検索に SRV レコードではなく、信頼の名前接尾辞のルーティング情報を使用するためです。

34.6.2. IdM Web UI での DNS 正引きゾーンの設定

IdM Web UI を使用して Identity Management (IdM) サーバーに DNS 転送ゾーンを追加するには、次の手順に従います。

DNS 正引きゾーンを使用すると、特定のゾーンの DNS クエリーを別の DNS サーバーに転送できます。たとえば、Active Directory (AD) ドメインの DNS クエリーを AD DNS サーバーに転送することができます。

前提条件

  • 管理者権限のあるユーザーアカウントを使用して IdM Web UI にアクセスする。
  • DNS サーバーを正しく設定している。

手順

  1. 管理者権限で IdM Web UI にログインします。詳細は Web ブラウザーで IdM Web UI へのアクセス を参照してください。
  2. Network Services タブをクリックします。
  3. DNS タブをクリックします。
  4. ドロップダウンメニューで、DNS Forward Zones 項目をクリックします。

    Screenshot of the IdM Web UI displaying the contents of the DNS drop-down submenu of the "Network Services" tab. The DNS drop-down menu has four options: DNS Zones - DNS Forward Zones - DNS Servers - DNS Global Configuration. "DNS Forward Zones" is highlighted.

  5. Add ボタンをクリックします。
  6. Add DNS forward zone ダイアログボックスにゾーン名を追加します。
  7. Zone forwarders 項目で、Add ボタンをクリックします。
  8. Zone forwarders フィールドに正引きゾーンを作成するサーバーの IP アドレスを追加します。
  9. Add ボタンをクリックします。

    Screenshot of the "Add DNS forward zone" pop-up window with text entry fields for "Zone name" - "Reverse zone IP network" - "Zone forwarders." The "Forward policy" option has three radial buttons for "forward first" - "forward only" - "forward disabled." There is a checkbox for "Skip overlap check" and there are four buttons at the bottom: "Add" - "Add and Add Another" - "Add and Edit" - "Cancel."

正引きゾーンが DNS 設定に追加されており、DNS 正引きゾーン設定で確認できます。Web UI は、ポップアップメッセージ DNS Forward Zone successfully added. で、成功を通知します。

注記

設定に正引きゾーンを追加した後に、Web UI に DNSSEC 検証の失敗に関する警告が表示される場合があります。

Screenshot displaying a pop-up window that reads "DNSSEC validation failed - record ad.example.com SOA failed DNSSEC validation on server 192.168.122.2. Please verify your DNSSEC configuration or disable DNSSEC validation on all IPA servers."

DNSSEC (Domain Name System Security Extensions) は、DNS データをデジタル署名で保護し、攻撃から DNS を保護します。このサービスは、IdM サーバーでデフォルトで有効になっています。リモート DNS サーバーが DNSSEC を使用していないため、警告が表示されます。Red Hat は、リモート DNS サーバーで DNSSEC を有効にすることを推奨します。

リモートサーバーで DNSSEC 検証を有効にできない場合は、IdM サーバーで DNSSEC を無効にすることができます。

  1. 編集する適切な設定ファイルを選択します。

    • IdM サーバーが RHEL 8.0 または RHEL 8.1 を使用している場合は、/etc/named.conf ファイルを開きます。
    • IdM サーバーが RHEL 8.2 以降を使用している場合は、/etc/named/ipa-options-ext.conf ファイルを開きます。
  2. 以下の DNSSEC パラメーターを追加します。

    dnssec-enable no;
    dnssec-validation no;
  3. 設定ファイルを保存して閉じます。
  4. DNS サービスを再起動します。

    # systemctl restart named-pkcs11

検証手順

  • nslookup コマンドを、リモート DNS サーバーの名前で使用します。

    $ nslookup ad.example.com
    Server:        192.168.122.2
    Address:       192.168.122.2#53
    
    No-authoritative answer:
    Name:          ad.example.com
    Address:       192.168.122.3

    ドメイン転送を正しく設定すると、リモート DNS サーバーの IP アドレスが表示されます。

34.6.3. CLI での DNS 正引きゾーンの設定

コマンドラインインターフェイス (CLI) を使用して、新しい DNS 転送ゾーンを Identity Management (IdM) サーバーに追加するには、次の手順に従います。

DNS 正引きゾーンを使用すると、特定のゾーンの DNS クエリーを別の DNS サーバーに転送できます。たとえば、Active Directory (AD) ドメインの DNS クエリーを AD DNS サーバーに転送することができます。

前提条件

  • 管理者権限のあるユーザーアカウントを使用して CLI にアクセスする。
  • DNS サーバーを正しく設定している。

手順

  • AD ドメインの DNS 正引きゾーンを作成し、--forwarder オプションを使用してリモート DNS サーバーの IP アドレスを指定します。

    # ipa dnsforwardzone-add ad.example.com --forwarder=192.168.122.3 --forward-policy=first
注記

設定に新しい正引きゾーンを追加した後に、/var/log/messages システムログに DNSSEC 検証の失敗に関する警告が表示される場合があります。

named-pkcs11[2572]: no valid DS resolving 'host.ad.example.com/A/IN':  192.168.100.25#53

DNSSEC (Domain Name System Security Extensions) は、DNS データをデジタル署名で保護し、攻撃から DNS を保護します。このサービスは、IdM サーバーでデフォルトで有効になっています。リモート DNS サーバーが DNSSEC を使用していないため、警告が表示されます。Red Hat は、リモート DNS サーバーで DNSSEC を有効にすることを推奨します。

リモートサーバーで DNSSEC 検証を有効にできない場合は、IdM サーバーで DNSSEC を無効にすることができます。

  1. 編集する適切な設定ファイルを選択します。

    • IdM サーバーが RHEL 8.0 または RHEL 8.1 を使用している場合は、/etc/named.conf ファイルを開きます。
    • IdM サーバーが RHEL 8.2 以降を使用している場合は、/etc/named/ipa-options-ext.conf ファイルを開きます。
  2. 以下の DNSSEC パラメーターを追加します。

    dnssec-enable no;
    dnssec-validation no;
  3. 設定ファイルを保存して閉じます。
  4. DNS サービスを再起動します。

    # systemctl restart named-pkcs11

検証手順

  • nslookup コマンドを、リモート DNS サーバーの名前で使用します。

    $ nslookup ad.example.com
    Server:        192.168.122.2
    Address:       192.168.122.2#53
    
    No-authoritative answer:
    Name:          ad.example.com
    Address:       192.168.122.3

    ドメイン転送が正しく設定されている場合、nslookup 要求はリモート DNS サーバーの IP アドレスを表示します。

34.6.4. AD での DNS 転送の設定

Active Directory (AD) で Identity Management (IdM) サーバーの DNS 転送を設定するには、次の手順に従います。

前提条件

  • AD を使用する Windows Server がインストールされている。
  • 両方のサーバーで DNS ポートが開いている。

手順

  1. Windows サーバーにログインします。
  2. Server Manager を開きます。
  3. DNS Manager を開きます。
  4. Conditional Forwarders で、以下を含む新しい条件フォワーダーを追加します。

    • IdM サーバーの IP アドレス
    • server.idm.example.com などの完全修飾ドメイン名
  5. 設定を保存します。

34.6.5. DNS 設定の確認

信頼を設定する前に、Identity Management (IdM) サーバーおよび Active Directory (AD) サーバーが自身を解決でき、相互に解決できることを確認します。

前提条件

  • sudo パーミッションでログインする必要があります。

手順

  1. UDP サービスレコードの Kerberos、および TCP サービスレコード上の LDAP に、DNS クエリーを実行します。

    [admin@server ~]# dig +short -t SRV _kerberos._udp.idm.example.com.
    0 100 88 server.idm.example.com.
    
    [admin@server ~]# dig +short -t SRV _ldap._tcp.idm.example.com.
    0 100 389 server.idm.example.com.

    コマンドは、すべての IdM サーバーをリストで表示する必要があります。

  2. IdM Kerberos レルム名を使用して、TXT レコードに DNS クエリーを実行します。取得した値は、IdM のインストール時に指定した Kerberos レルムと一致することが予想されます。

    [admin@server ~]# dig +short -t TXT _kerberos.idm.example.com.
    "IDM.EXAMPLE.COM"

    前の手順で想定されるレコードがすべて返されなかった場合は、欠落しているレコードで DNS 設定を更新します。

    • IdM 環境で統合 DNS サーバーを使用する場合は、システムレコードを更新するオプションを指定せずに ipa dns-update-system-records コマンドを実行します。

      [admin@server ~]$ ipa dns-update-system-records
    • IdM 環境で統合 DNS サーバーを使用しない場合は、以下を行います。

      1. IdM サーバーで、IdM DNS レコードをファイルにエクスポートします。

        [admin@server ~]$ ipa dns-update-system-records --dry-run --out dns_records_file.nsupdate

        このコマンドは、関連する IdM DNS レコードで dns_records_file.nsupdate という名前のファイルを作成します。

      2. nsupdate ユーティリティーおよび dns_records_file.nsupdate ファイルを使用して DNS サーバーに DNS 更新リクエストを送信します。詳細は、RHEL 7 ドキュメントの nsupdate を使用した外部 DNS レコード更新 を参照してください。または、DNS レコードの追加については、お使いの DNS サーバーのドキュメントを参照してください。
  3. IdM が、TCP サービスレコードで Kerberos および LDAP の DNS クエリーを実行するコマンドを使用して、AD のサービスレコードを解決できることを確認します。

    [admin@server ~]# dig +short -t SRV _kerberos._tcp.dc._msdcs.ad.example.com.
    0 100 88 addc1.ad.example.com.
    
    [admin@server ~]# dig +short -t SRV _ldap._tcp.dc._msdcs.ad.example.com.
    0 100 389 addc1.ad.example.com.

34.7. Active Directory DNS ドメインで IdM クライアントの設定

Active Directory が制御する DNS ドメインにクライアントシステムがあり、そのクライアントが RHEL 機能の恩恵を受けるために IdM Server に参加できるようにする必要がある場合は、Active Directory DNS ドメインのホスト名を使用してクライアントにアクセスするようにユーザーを設定できます。

重要

これは推奨される設定ではなく、いくつかの制限があります。Red Hat は、Active Directory が所有する DNS ゾーンとは異なる DNS ゾーンに常に IdM クライアントをデプロイメントし、IdM ホスト名を介して IdM クライアントにアクセスすることを推奨します。

IdM クライアントの設定は、Kerberos でシングルサインオンを必要とするかどうかによって異なります。

34.7.1. Kerberos シングルサインオンを使用しない IdM クライアントの設定

パスワード認証は、IdM クライアントが Active Directory DNS ドメインに存在する場合に、IdM クライアントのリソースにアクセスするためにユーザーが利用できる唯一の認証方法です。Kerberos Single Sign-On を使用せずにクライアントを設定するには、次の手順に従います。

手順

  1. --domain=IPA_DNS_Domain を指定して IdM クライアントをインストールし、SSSD (System Security Services Daemon) が IdM サーバーと通信できるようにします。

    [root@idm-client.ad.example.com ~]# ipa-client-install --domain=idm.example.com

    このオプションは、Active Directory DNS ドメインの SRV レコードの自動検出を無効にします。

  2. /etc/krb5.conf 設定ファイルの [domain_realm] セクションで、Active Directory ドメインの既存のマッピングを見つけます。

    .ad.example.com = IDM.EXAMPLE.COM
    ad.example.com = IDM.EXAMPLE.COM
  3. 両方の行を、Active Directory DNS ゾーンの Linux クライアントの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を IdM レルムにマッピングするエントリーに置き換えます。

    idm-client.ad.example.com = IDM.EXAMPLE.COM

    デフォルトのマッピングを置き換えても、Kerberos が Active Directory ドメインの要求を IdM Kerberos Distribution Center (KDC) に送信しないようにします。Kerberos は、SRV DNS レコードを介して自動検出を使用して KDC を見つけます。

34.7.2. シングルサインオンなしで SSL 証明書の要求

SSL ベースのサービスでは、元 (A/AAAA) のレコードと CNAME レコードの両方が証明書に含まれている必要があるため、すべてのシステムホスト名に対応する dNSName 拡張レコードを持つ証明書が必要です。現在、IdM は、IdM データベース内のオブジェクトをホストする証明書のみを発行します。

シングルサインオンが利用できない説明されたセットアップでは、IdM は、データベースに FQDN のホストオブジェクトをすでに持っており、certmonger はこの名前を使用して証明書を要求できます。

前提条件

手順

  • certmonger を使用して、FQDN を使用して証明書をリクエストします。

    [root@idm-client.ad.example.com ~]# ipa-getcert request -r \
          -f /etc/httpd/alias/server.crt \
          -k /etc/httpd/alias/server.key \
          -N CN=ipa-client.ad.example.com \
          -D ipa-client.ad.example.com \
          -K host/idm-client.ad.example.com@IDM.EXAMPLE.COM \
          -U id-kp-serverAuth

certmonger サービスは、/etc/krb5.keytab ファイルに保存されているデフォルトのホストキーを使用して、IdM 認証局 (CA) に対して認証を行います。

34.7.3. Kerberos シングルサインオンで IdM クライアントの設定

IdM クライアントのリソースにアクセスするために Kerberos シングルサインオンが必要な場合、クライアントは idm-client.idm.example.com などの IdM DNS ドメイン内になければなりません。IdM クライアントの A/AAAA レコードを参照する Active Directory DNS ドメインで CNAME レコード idm-client.ad.example.com を作成する必要があります。

Kerberos ベースのアプリケーションサーバーの場合、MIT Kerberos は、アプリケーションのキータブで利用可能なホストベースのプリンシパルの受け入れを可能にする方法をサポートします。

手順

  • IdM クライアントでは、/etc/krb5.conf 設定ファイルの [libdefaults] セクションにある次のオプションを設定して、Kerberos サーバーのターゲットに使用される Kerberos プリンシパルに関する厳格なチェックを無効にします。

    ignore_acceptor_hostname = true

34.7.4. シングルサインオンで SSL 証明書の要求

SSL ベースのサービスでは、元 (A/AAAA) のレコードと CNAME レコードの両方が証明書に含まれている必要があるため、すべてのシステムホスト名に対応する dNSName 拡張レコードを持つ証明書が必要です。現在、IdM は、IdM データベース内のオブジェクトをホストする証明書のみを発行します。

この手順に従って、IdM で ipa-client.example.com のホストオブジェクトを作成し、実際の IdM マシンのホストオブジェクトがこのホストを管理できることを確認します。

前提条件

手順

  1. IdM サーバーに新しいホストオブジェクトを作成します。

    [root@idm-server.idm.example.com ~]# ipa host-add idm-client.ad.example.com --force

    ホスト名は CNAME であり、A/AAAA レコードではないため、--force オプションを使用します。

  2. IdM サーバーで、IdM DNS ホスト名が、IdM データベースの Active Directory ホストエントリーを管理できるようにします。

    [root@idm-server.idm.example.com ~]# ipa host-add-managedby idm-client.ad.example.com \
          --hosts=idm-client.idm.example.com
  3. これで、Active Directory DNS ドメイン内のホスト名に dNSName 拡張レコードを使用して、IdM クライアントの SSL 証明書を要求できるようになります。

    [root@idm-client.idm.example.com ~]# ipa-getcert request -r \
          -f /etc/httpd/alias/server.crt \
          -k /etc/httpd/alias/server.key \
          -N CN=`hostname --fqdn` \
          -D `hostname --fqdn` \
          -D idm-client.ad.example.com \
          -K host/idm-client.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM \
          -U id-kp-serverAuth

34.8. 信頼の設定

本セクションでは、コマンドラインを使用して、IdM に Identity Management (IdM)/Active Directory (AD) 信頼を設定する方法を説明します。

前提条件

34.8.1. 信頼用の IdM サーバーの準備

AD との信頼を確立する前に、IdM サーバーで ipa-adtrust-install ユーティリティーを使用して IdM ドメインを準備する必要があります。

注記

ipa-adtrust-install コマンドを自動的に実行するシステムは、AD 信頼コントローラーになります。ただし、ipa-adtrust-install は、IdM サーバーで 1 回のみ実行する必要があります。

前提条件

  • IdM サーバーがインストールされている。
  • パッケージをインストールし、IdM サービスを再起動するには、root 権限が必要です。

手順

  1. 必要なパッケージをインストールします。

    [root@ipaserver ~]# yum install ipa-server-trust-ad samba-client
  2. IdM 管理ユーザーとして認証します。

    [root@ipaserver ~]# kinit admin
  3. ipa-adtrust-install ユーティリティーを実行します。

    [root@ipaserver ~]# ipa-adtrust-install

    統合 DNS サーバーとともに IdM がインストールされていると、DNS サービスレコードが自動的に作成されます。

    IdM が統合 DNS サーバーなしで IdM をインストールすると、ipa-adtrust-install は、続行する前に DNS に手動で追加する必要があるサービスレコードのリストを出力します。

  4. スクリプトにより、/etc/samba/smb.conf がすでに存在し、書き換えられることが求められます。

    WARNING: The smb.conf already exists. Running ipa-adtrust-install will break your existing Samba configuration.
    
    Do you wish to continue? [no]: yes
  5. このスクリプトは、従来の Linux クライアントが信頼できるユーザーと連携できるようにする互換性プラグインである slapi-nis プラグインを設定するように求めるプロンプトを表示します。

    Do you want to enable support for trusted domains in Schema Compatibility plugin?
    This will allow clients older than SSSD 1.9 and non-Linux clients to work with trusted users.
    
    Enable trusted domains support in slapi-nis? [no]: yes
  6. プロンプトが表示されたら、IdM ドメインの NetBIOS 名を入力するか、Enter を押して提案された名前を使用します。

    Trust is configured but no NetBIOS domain name found, setting it now.
    Enter the NetBIOS name for the IPA domain.
    Only up to 15 uppercase ASCII letters, digits and dashes are allowed.
    Example: EXAMPLE.
    
    NetBIOS domain name [IDM]:
  7. SID 生成タスクを実行して、既存ユーザーに SID を作成するように求められます。

    Do you want to run the ipa-sidgen task? [no]: yes

    これはリソースを集中的に使用するタスクであるため、ユーザー数が多い場合は別のタイミングで実行できます。

  8. (必要に応じて) デフォルトでは、Windows Server 2008 以降での動的 RPC ポートの範囲は 49152-65535 として定義されます。ご使用の環境に異なる動的 RPC ポート範囲を定義する必要がある場合は、Samba が異なるポートを使用するように設定し、ファイアウォール設定でそのポートを開くように設定します。以下の例では、ポート範囲を 55000-65000 に設定します。

    [root@ipaserver ~]# net conf setparm global 'rpc server dynamic port range' 55000-65000
    [root@ipaserver ~]# firewall-cmd --add-port=55000-65000/tcp
    [root@ipaserver ~]# firewall-cmd --runtime-to-permanent
  9. 信頼の DNS 設定の確認 に従って、DNS が適切に設定されていることを確認します。

    重要

    Red Hat では、IdM または AD が統合 DNS サーバーを使用しない場合に、ipa-adtrust-install を実行してから 信頼に対する DNS 設定の確認 に従って DNS 設定を検証することが強く推奨されます。

  10. ipa サービスを再起動します。

    [root@ipaserver ~]# ipactl restart
  11. smbclient ユーティリティーを使用して、Samba が IdM からの Kerberos 認証に応答することを確認します。

    [root@ipaserver ~]# smbclient -L server.idm.example.com -U user_name --use-kerberos=required
    lp_load_ex: changing to config backend registry
        Sharename       Type      Comment
        ---------       ----      -------
        IPC$            IPC       IPC Service (Samba 4.15.2)
    ...

34.8.2. コマンドラインで信頼関係の設定

コマンドラインを使用して信頼関係を設定するには、次の手順に従います。Identity Management (IdM) サーバーには、3 種類の信頼関係を設定できます。

  • 一方向の信頼 — デフォルトのオプション。一方向の信頼により、Active Directory (AD) ユーザーおよびグループは IdM のリソースにアクセスできますが、その逆はできません。IdM ドメインは AD フォレストを信頼しますが、AD フォレストは IdM ドメインを信頼しません。
  • 双方向の信頼 — 双方向の信頼により、AD ユーザーおよびグループが IdM のリソースにアクセスできるようになります。

    信頼境界を使用して Kerberos プロトコルに S4U2Self および S4U2Proxy の Microsoft 拡張を必要とする、Microsoft SQL Server などのソリューションに、双方向の信頼を設定する必要があります。RHEL IdM ホスト上にあるアプリケーションは、AD ユーザーに関する S4U2Self または S4U2Proxy の情報を Active Directory ドメインコントローラーから要求する場合があり、双方向の信頼でこの機能が提供されます。

    この双方向の信頼機能では、IdM ユーザーは Windows システムにログインできないだけでなく、IdM の双方向信頼では、AD の一方向信頼ソリューションと比較して、権限が追加でユーザーに付与されるわけではありません。

    • 双方向の信頼を作成するには、コマンドに --two-way=true オプションを追加します。
  • 外部信頼: 異なるフォレストの IdM と AD ドメインとの間の信頼関係です。フォレストの信頼では常に IdM と Active Directory フォレストのルートドメインとの間で信頼関係を確立する必要がありますが、IdM からフォレスト内の任意のドメインへの外部の信頼関係も確立できます。管理上または組織上の理由で、フォレストの root ドメイン間でフォレストの信頼を確立できない場合に限り、これが推奨されます。

    • 外部の信頼を作成するには、コマンドに --external=true オプションを追加します。

以下の手順では、一方向の信頼関係を作成する方法を示します。

前提条件

手順

  • ipa trust-add コマンドを使用して、AD ドメインと IdM ドメインに信頼関係を作成します。

    • SSSD が SID に基づいて AD ユーザーの UID および GID を自動的に生成できるようにするには、Active Directory domain ID 範囲タイプとの信頼関係を作成します。これが最も一般的な設定です。

      [root@server ~]# ipa trust-add --type=ad ad.example.com --admin <ad_admin_username> --password --range-type=ipa-ad-trust
    • Active Directory でユーザーに POSIX 属性を設定し ( uidNumbergidNumberなど)、SSSD でこの情報を処理する場合は、Active Directory domain with POSIX attributes ID 範囲タイプとの信頼関係を作成します。

      [root@server ~]# ipa trust-add --type=ad ad.example.com --admin <ad_admin_username> --password --range-type=ipa-ad-trust-posix
警告

信頼の作成時に ID 範囲タイプを指定しないと、IdM はフォレストルートドメインの AD ドメインコントローラーから詳細を要求することで、適切な範囲タイプを自動的に選択しようとします。IdM が POSIX 属性を検出しない場合、信頼インストールスクリプトは Active Directory domain ID 範囲を選択します。

IdM がフォレストルートドメインの POSIX 属性を検出すると、信頼インストールスクリプトは、Active Directory domain with POSIX attributes ID 範囲を選択し、UID および GID が AD に正しく定義されていることを前提とします。POSIX 属性が AD で正しく設定されていない場合は、AD ユーザーを解決できません。

たとえば、IdM システムへのアクセスを必要とするユーザーおよびグループがフォレストルートドメインの一部ではなく、フォレストドメインの子ドメインにある場合は、インストールスクリプトで、子 AD ドメインで定義された POSIX 属性が検出されない場合があります。この場合、Red Hat は、信頼の確立時に POSIX ID 範囲タイプを明示的に選択することを推奨します。

34.8.3. IdM Web UI で信頼関係の設定

IdM Web UI を使用して IdM 側で Identity Management (IdM)/Active Directory (AD) 信頼関係を設定するには、次の手順に従います。

前提条件

  • DNS が正しく設定されている。IdM サーバーおよび AD サーバーはどちらも、相手の名前を解決できる。
  • 対応しているバージョンの AD および IdM がデプロイされている。
  • Kerberos チケットを取得している。
  • Web UI で信頼を作成する前に、信頼用の IdM サーバーの準備 に従って、信頼用に IdM サーバーを準備している。
  • IdM 管理者としてログインしている。

手順

  1. 管理者権限で IdM Web UI にログインします。詳細は Web ブラウザーで IdM Web UI へのアクセス を参照してください。
  2. IdM Web UI で、IPA Server タブをクリックします。
  3. IPA Server タブで、Trusts タブをクリックします。
  4. ドロップダウンメニューで、Trusts オプションを選択します。

    The Trusts section of the IdM WebUI displays a drop-down menu with two options

  5. Add ボタンをクリックします。
  6. Add Trust ダイアログボックスで、Active Directory ドメインの名前を入力します。
  7. Account フィールドおよび Password フィールドに、Active Directory 管理者の管理者認証情報を追加します。

    ipa trust add

  8. (オプション) AD ユーザーおよびグループが IdM のリソースにアクセスできるようにする場合は、Two-way trust を選択します。ただし、IdM の双方向の信頼では、AD の一方向の信頼ソリューションと比較して、ユーザーに追加の権限が付与されません。デフォルトのフォレスト間信頼の SID フィルタリング設定により、両方のソリューションの安全性は同じであると見なされます。
  9. (オプション) AD フォレストのルートドメインではない AD ドメインで信頼を設定する場合は、External trust を選択します。フォレストの信頼では常に IdM と Active Directory フォレストのルートドメインとの間で信頼関係を確立する必要がありますが、IdM から AD フォレスト内の任意のドメインへの外部の信頼関係も確立できます。
  10. (オプション) デフォルトでは、信頼インストールスクリプトは適切な ID 範囲タイプの検出を試みます。以下のオプションのいずれかを選択して、ID 範囲タイプを明示的に設定することもできます。

    1. SSSD が SID に基づいて AD ユーザーの UID および GID を自動的に生成するには、Active Directory domain ID 範囲タイプを選択します。これが最も一般的な設定です。
    2. Active Directory でユーザーに POSIX 属性を設定し (uidNumbergidNumberなど)、SSSD がこの情報を処理する必要がある場合は、Active Directory domain with POSIX attributes ID 範囲タイプを選択します。

      The Range Type section of the IdM WebUI displays 3 radio buttons to choose the appropriate range type - Detect

      警告

      Range type 設定をデフォルトの Detect オプションに残すと、IdM はフォレストルートドメインの AD ドメインコントローラーから詳細を要求することで、適切な範囲タイプを自動的に選択しようとします。IdM が POSIX 属性を検出しない場合、信頼インストールスクリプトは Active Directory domain ID 範囲を選択します。

      IdM がフォレストルートドメインの POSIX 属性を検出すると、信頼インストールスクリプトは、Active Directory domain with POSIX attributes ID 範囲を選択し、UID および GID が AD に正しく定義されていることを前提とします。POSIX 属性が AD で正しく設定されていない場合は、AD ユーザーを解決できません。

      たとえば、IdM システムへのアクセスを必要とするユーザーおよびグループがフォレストルートドメインの一部ではなく、フォレストドメインの子ドメインにある場合は、インストールスクリプトで、子 AD ドメインで定義された POSIX 属性が検出されない場合があります。この場合、Red Hat は、信頼の確立時に POSIX ID 範囲タイプを明示的に選択することを推奨します。

  11. Add をクリックします。

検証手順

  • 信頼が IdM サーバーに正常に追加されると、IdM Web UI で緑色のポップアップ画面が表示されます。これは、以下を示しています。

    • ドメイン名が存在する。
    • Windows Server のユーザー名およびパスワードが正しく追加されている。

      The Trusts section of the IdM WebUI displays a list of the trusts added and 2 buttons

これで、信頼接続と Kerberos 認証のテストを続行します。

34.8.4. Ansible を使用した信頼関係の設定

Ansible Playbook を使用して Identity Management (IdM) と Active Directory (AD) の間に一方向の信頼協定を設定するには、次の手順に従います。3 種類の信頼関係を設定できます。

  • 一方向の信頼 — デフォルトのオプション。一方向の信頼により、Active Directory (AD) ユーザーおよびグループは IdM のリソースにアクセスできますが、その逆はできません。IdM ドメインは AD フォレストを信頼しますが、AD フォレストは IdM ドメインを信頼しません。
  • 双方向の信頼 — 双方向の信頼により、AD ユーザーおよびグループが IdM のリソースにアクセスできるようになります。

    信頼境界を使用して Kerberos プロトコルに S4U2Self および S4U2Proxy の Microsoft 拡張を必要とする、Microsoft SQL Server などのソリューションに、双方向の信頼を設定する必要があります。RHEL IdM ホスト上にあるアプリケーションは、AD ユーザーに関する S4U2Self または S4U2Proxy の情報を Active Directory ドメインコントローラーから要求する場合があり、双方向の信頼でこの機能が提供されます。

    この双方向の信頼機能では、IdM ユーザーは Windows システムにログインできないだけでなく、IdM の双方向信頼では、AD の一方向信頼ソリューションと比較して、権限が追加でユーザーに付与されるわけではありません。

    • 双方向の信頼を作成するには、two_way: true の変数を Playbook タスクに追加します。
  • 外部信頼: 異なるフォレストの IdM と AD ドメインとの間の信頼関係です。フォレストの信頼では常に IdM と Active Directory フォレストのルートドメインとの間で信頼関係を確立する必要がありますが、IdM からフォレスト内の任意のドメインへの外部の信頼関係も確立できます。管理上または組織上の理由で、フォレストの root ドメイン間でフォレストの信頼を確立できない場合に限り、これが推奨されます。

    • 外部信頼を作成するには、以下の変数を external: trueの Playbook タスクに追加します。

前提条件

  • Windows 管理者のユーザー名およびパスワード
  • IdM admin パスワード。
  • 信頼用の IdM サーバーの準備ができている
  • IdM 4.8.7 バージョン以降の IdM を使用している。サーバーにインストールされている IdM のバージョンを表示するには、ipa --version を実行します。
  • 次の要件を満たすように Ansible コントロールノードを設定している。

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • Ansible コントローラーに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
    • この例では、~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成したことを前提としている。
    • この例では、secret.yml Ansible ボールトに ipaadmin_password が保存されていることを前提としている。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに移動します。

    $ cd ~/MyPlaybooks/
  2. ユースケースに基づいて、以下のいずれかのシナリオを選択します。

    • SSSD が SID に基づいて AD ユーザーおよびグループの UID および GID を自動的に生成する ID マッピング信頼合意を作成するには、以下の内容で add-trust.yml Playbook を作成します。

      ---
      - name: Playbook to create a trust
        hosts: ipaserver
      
        vars_files:
        - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml
        tasks:
          - name: ensure the trust is present
            ipatrust:
              ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}"
              realm: ad.example.com
              admin: Administrator
              password: secret_password
              range_type: ipa-ad-trust
              state: present

      上記の例では、以下のようになります。

      • realm は、AD レルム名文字列を定義します。
      • admin は AD ドメイン管理者文字列を定義します。
      • Password は、AD ドメイン管理者のパスワード文字列を定義します。
    • SSSD が AD に保存されている POSIX 属性 (uidNumbergidNumber など) を処理する POSIX 信頼合意を作成するには、以下の内容で add-trust.yml Playbook を作成します。

      ---
      - name: Playbook to create a trust
        hosts: ipaserver
      
        vars_files:
        - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml
        tasks:
          - name: ensure the trust is present
            ipatrust:
              ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}"
              realm: ad.example.com
              admin: Administrator
              password: secret_password
              range_type: ipa-ad-trust-posix
              state: present
    • フォレストルートドメインの AD ドメインコントローラーからの詳細を要求して、IdM が適切な範囲タイプ ipa-ad-trust または ipa-ad-trust-posix を選択しようとする信頼合意を作成するには、以下の内容を含む add-trust.yml Playbook を作成します。

      ---
      - name: Playbook to create a trust
        hosts: ipaserver
      
        vars_files:
        - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml
        tasks:
          - name: ensure the trust is present
            ipatrust:
              ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}"
              realm: ad.example.com
              admin: Administrator
              password: secret_password
              state: present
    警告

    信頼の作成時に ID 範囲タイプを指定せず、IdM が AD フォレストルートドメインの POSIX 属性を検出しない場合は、信頼インストールスクリプトで Active Directory ドメイン ID 範囲を選択します。

    IdM がフォレストルートドメインの POSIX 属性を検出すると、信頼インストールスクリプトは、Active Directory domain with POSIX attributes ID 範囲を選択し、UID および GID が AD に正しく定義されていることを前提とします。

    ただし、POSIX 属性が AD で正しく設定されていない場合は、AD ユーザーを解決できません。たとえば、IdM システムへのアクセスを必要とするユーザーおよびグループがフォレストルートドメインの一部ではなく、フォレストドメインの子ドメインにある場合は、インストールスクリプトで、子 AD ドメインで定義された POSIX 属性が検出されない場合があります。この場合、Red Hat は、信頼の確立時に POSIX ID 範囲タイプを明示的に選択することを推奨します。

  3. ファイルを保存します。
  4. Ansible Playbook を実行します。Playbook ファイル、secret.yml ファイルを保護するパスワードを格納するファイル、およびインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory add-trust.yml

関連情報

  • /usr/share/doc/ansible-freeipa/README-trust.md
  • /usr/share/doc/ansible-freeipa/playbooks/trust

34.8.5. Kerberos 設定の確認

Kerberos 設定を確認するには、Identity Management (IdM) ユーザーのチケットを取得できるかどうか、および IdM ユーザーがサービスチケットを要求できるかどうかを検証します。

手順

  1. Active Directory (AD) ユーザーのチケットを要求します。

    [root@ipaserver ~]# kinit user@AD.EXAMPLE.COM
  2. IdM ドメイン内のサービスのサービスチケットを要求します。

    [root@server ~]# kvno -S host server.idm.example.com

    AD サービスチケットが正常に許可されると、その他の要求されたすべてのチケットと共に記載されたレルム間の TGT (Ticket-Granting Ticket) があります。TGT の名前は、krbtgt/IPA.DOMAIN@AD.DOMAIN です。

[root@server ]# klist
Ticket cache: KEYRING:persistent:0:krb_ccache_hRtox00
Default principal: user@AD.EXAMPLE.COM

Valid starting       Expires              Service principal
03.05.2016 18:31:06  04.05.2016 04:31:01  host/server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM
	renew until 04.05.2016 18:31:00
03.05.2016 18:31:06 04.05.2016 04:31:01 krbtgt/IDM.EXAMPLE.COM@AD.EXAMPLE.COM
	renew until 04.05.2016 18:31:00
03.05.2016 18:31:01  04.05.2016 04:31:01  krbtgt/AD.EXAMPLE.COM@AD.EXAMPLE.COM
	renew until 04.05.2016 18:31:00

localauth プラグインは、Kerberos プリンシパルをローカルの System Security Services Daemon (SSSD) ユーザー名にマッピングします。これにより、AD ユーザーは Kerberos 認証を使用し、GSSAPI 認証に対応する Linux サービスに直接アクセスできます。

34.8.6. IdM で信頼設定の確認

信頼を設定する前に、Identity Management (IdM) サーバーおよび Active Directory (AD) サーバーが自身を解決でき、相互に解決できることを確認します。

前提条件

  • 管理者権限でログインしている。

手順

  1. UDP サービスレコード上の MS DC Kerberos、および TCP サービスレコード上の LDAP に、DNS クエリーを実行します。

    [root@server ~]# dig +short -t SRV _kerberos._udp.dc._msdcs.idm.example.com.
    0 100 88 server.idm.example.com.
    
    [root@server ~]# dig +short -t SRV _ldap._tcp.dc._msdcs.idm.example.com.
    0 100 389 server.idm.example.com.

    以下のコマンドは、ipa-adtrust-install を実行した IdM サーバーをリスト表示します。ipa-adtrust-install が IdM サーバーで実行していない場合、通常は最初の信頼関係を確立する前に出力が空になります。

  2. TCP サービスレコード上の Kerberos と LDAP で DNS クエリーを実行して、IdM が AD のサービスレコードを解決できることを確認します。

    [root@server ~]# dig +short -t SRV _kerberos._tcp.dc._msdcs.ad.example.com.
    0 100 88 addc1.ad.example.com.
    
    [root@ipaserver ~]# dig +short -t SRV _ldap._tcp.dc._msdcs.ad.example.com.
    0 100 389 addc1.ad.example.com.

.

34.8.7. AD で信頼設定の確認

信頼の設定後に、以下を確認します。

  • Identity Management (IdM) がホストするサービスが、Active Directory (AD) サーバーから解決できる。
  • AD サービスは、AD サーバーで解決できる。

前提条件

  • 管理者権限でログインしている。

手順

  1. AD サーバーに、サービスレコードを検索する nslookup.exe ユーティリティーを設定します。

    C:\>nslookup.exe
    > set type=SRV
  2. UDP サービスレコード上の Kerberos、および TCP サービスレコード上の LDAP に、ドメイン名を入力します。

    > _kerberos._udp.idm.example.com.
    _kerberos._udp.idm.example.com.       SRV service location:
        priority                = 0
        weight                  = 100
        port                    = 88
        svr hostname   = server.idm.example.com
    > _ldap._tcp.idm.example.com
    _ldap._tcp.idm.example.com       SRV service location:
        priority                = 0
        weight                  = 100
        port                    = 389
        svr hostname   = server.idm.example.com
  3. サービスの種類を TXT に変更し、IdM Kerberos レルム名で TXT レコードに DNS クエリーを実行します。

    C:\>nslookup.exe
    > set type=TXT
    > _kerberos.idm.example.com.
    _kerberos.idm.example.com.        text =
    
        "IDM.EXAMPLE.COM"
  4. UDP サービスレコード上の MS DC Kerberos、および TCP サービスレコード上の LDAP に、DNS クエリーを実行します。

    C:\>nslookup.exe
    > set type=SRV
    > _kerberos._udp.dc._msdcs.idm.example.com.
    _kerberos._udp.dc._msdcs.idm.example.com.        SRV service location:
        priority = 0
        weight = 100
        port = 88
        svr hostname = server.idm.example.com
    > _ldap._tcp.dc._msdcs.idm.example.com.
    _ldap._tcp.dc._msdcs.idm.example.com.        SRV service location:
        priority = 0
        weight = 100
        port = 389
        svr hostname = server.idm.example.com

    Active Directory は、その他の AD ドメインコントローラーや IdM 信頼コントローラーなど、AD 固有のプロトコル要求に応答できるドメインコントローラーの検出のみを想定します。ipa-adtrust-install ツールを使用して、IdM サーバーを信頼コントローラーに昇格し、どのサーバーが信頼コントローラーであるかを確認するには、ipa server-role-find --role 'AD trust controller' コマンドを使用します。

  5. AD サービスが AD サーバーで解決可能であることを検証します。

    C:\>nslookup.exe
    > set type=SRV
  6. UDP サービスレコード上の Kerberos、および TCP サービスレコード上の LDAP に、ドメイン名を入力します。

    > _kerberos._udp.dc._msdcs.ad.example.com.
    _kerberos._udp.dc._msdcs.ad.example.com. 	SRV service location:
        priority = 0
        weight = 100
        port = 88
        svr hostname = addc1.ad.example.com
    > _ldap._tcp.dc._msdcs.ad.example.com.
    _ldap._tcp.dc._msdcs.ad.example.com. 	SRV service location:
        priority = 0
        weight = 100
        port = 389
        svr hostname = addc1.ad.example.com

34.8.8. 信頼エージェントの作成

信頼エージェントは、AD ドメインコントローラーに対して ID ルックアップを実行できる IdM サーバーです。

たとえば、Active Directory と信頼できる IdM サーバーのレプリカを作成する場合は、そのレプリカを信頼エージェントとして設定できます。レプリカには、AD 信頼エージェントロールが自動的にインストールされていません。

前提条件

  • IdM は、Active Directory 信頼でインストールされます。
  • sssd-tools パッケージがインストールされている。

手順

  1. 既存の信頼コントローラーで、ipa-adtrust-install --add-agents コマンドを実行します。

    [root@existing_trust_controller]# ipa-adtrust-install --add-agents

    このコマンドは、対話型設定セッションを開始し、エージェントの設定に必要な情報の入力を求めます。

  2. 信頼エージェントで IdM サービスを再起動します。

    [root@new_trust_agent]# ipactl restart
  3. 信頼エージェントの SSSD キャッシュからすべてのエントリーを削除します。

    [root@new_trust_agent]# sssctl cache-remove
  4. レプリカに AD 信頼エージェントロールがインストールされていることを確認します。

    [root@existing_trust_controller]# ipa server-show new_replica.idm.example.com
    ...
    Enabled server roles: CA server, NTP server, AD trust agent

関連情報

  • --add-agents オプションの詳細は、man ページの ipa-adtrust-install(1) を参照してください。
  • 信頼エージェントの詳細は、Planning Identity Management の Trust controllers and trust agents を参照してください。

34.8.9. CLI での POSIX ID 範囲の自動プライベートグループマッピングの有効化

デフォルトでは、SSSD は、AD に保存されている POSIX データに依存する POSIX 信頼を確立している場合は、Active Directory(AD) ユーザーのプライベートグループをマッピングしません。AD ユーザーにプライマリーグループが設定されていない場合、IdM はこれを解決できません。

この手順では、コマンドラインで auto_private_groups SSSD パラメーターに hybrid オプションを設定して、ID 範囲の自動プライベートグループマッピングを有効にする方法を説明します。これにより、IdM は、AD にプライマリーグループが設定されていない AD ユーザーを解決できます。

前提条件

  • IdM 環境と AD 環境との間で、POSIX フォレスト間の信頼が正常に確立されました。

手順

  1. すべての ID 範囲を表示し、変更する AD ID 範囲を書き留めます。

    [root@server ~]# ipa idrange-find
    ----------------
    2 ranges matched
    ----------------
      Range name: IDM.EXAMPLE.COM_id_range
      First Posix ID of the range: 882200000
      Number of IDs in the range: 200000
      Range type: local domain range
    
      Range name: AD.EXAMPLE.COM_id_range
      First Posix ID of the range: 1337000000
      Number of IDs in the range: 200000
      Domain SID of the trusted domain: S-1-5-21-4123312420-990666102-3578675309
      Range type: Active Directory trust range with POSIX attributes
    ----------------------------
    Number of entries returned 2
    ----------------------------
  2. ipa idrange-mod コマンドを使用して、AD ID 範囲の自動プライベートグループの動作を調整します。

    [root@server ~]# ipa idrange-mod --auto-private-groups=hybrid AD.EXAMPLE.COM_id_range
  3. SSSD キャッシュをリセットして、新しい設定を有効にします。

    [root@server ~]# sss_cache -E

34.8.10. IdM WebUI での POSIX ID 範囲の自動プライベートグループマッピングの有効化

デフォルトでは、SSSD は、AD に保存されている POSIX データに依存する POSIX 信頼を確立している場合は、Active Directory(AD) ユーザーのプライベートグループをマッピングしません。AD ユーザーにプライマリーグループが設定されていない場合、IdM はこれを解決できません。

この手順では、Identity Management(IdM)WebUI の auto_private_groups SSSD パラメーター の hybrid オプションを設定して、ID 範囲の自動プライベートグループマッピングを有効にする方法を説明します。これにより、IdM は、AD にプライマリーグループが設定されていない AD ユーザーを解決できます。

前提条件

  • IdM 環境と AD 環境との間で、POSIX フォレスト間の信頼が正常に確立されました。

手順

  1. ユーザー名とパスワードを使用して IdM Web UI にログインします。
  2. IPA ServerID Ranges タブを開きます。
  3. AD.EXAMPLE.COM_id_range など、変更する ID 範囲を選択します。
  4. Auto private groups ドロップダウンメニューから、hybrid オプションを選択します。

    Screenshot of the ID Ranges tab of the IPA Server section of the IdM WebUI. A user selects the hybrid option from the Auth private groups dropdown menu.

  5. Save ボタンをクリックして変更を保存します。

34.9. フォレスト間の信頼設定に関するトラブルシューティング

Identity Management (IdM) 環境と Active Directory (AD) フォレストの間で、フォレスト間で信頼を設定するプロセスのトラブルシューティングについて詳しく説明します。

34.9.1. AD とのフォレスト間の信頼を確立する際の一連のイベント

ipa trust-add コマンドを使用して、Active Directory (AD) ドメインコントローラー (DC) とのフォレスト間の信頼を確立すると、コマンドを実行したユーザーに代わってコマンドが動作し、IdM サーバーで次のアクションを実行します。フォレスト間の信頼を確立する際に問題が発生した場合は、このリストを使用して、問題を絞り込み、トラブルシューティングすることができます。

パート 1: コマンドによる設定と入力の確認

  1. IdM サーバーに Trust Controller のロールがあることを確認します。
  2. ipa trust-add コマンドに渡されたオプションを確認します。
  3. 信頼されたフォレストルートドメインに関連付けられている ID 範囲を確認します。ID 範囲の種類とプロパティーを ipatrust-add コマンドのオプションとして指定しなかった場合、それらは Active Directory から検出されます。

パート 2: コマンドによる Active Directory ドメインへの信頼確立の試行

  1. 信頼方向ごとに個別の信頼オブジェクトを作成します。各オブジェクトは両サイド (IdM と AD) で作成されます。一方向の信頼を確立する場合、各サイドに 1 つのオブジェクトのみが作成されます。
  2. IdM サーバーは Samba スイートを使用して Active Directory のドメインコントローラー機能を処理し、ターゲット AD PDC 上に信頼オブジェクトを作成します。

    1. IdM サーバーは、ターゲット DC 上の IPC$ 共有への安全な接続を確立します。RHEL 8.4 以降、接続には、セッションに使用される AES ベースの暗号化で接続が十分に保護されていることを保証するために、少なくとも WindowsServer2012 以降での SMPB3 プロトコルが必要です。
    2. IdM サーバーは、LSA QueryTrustedDomainInfoByName 呼び出しを使用して、信頼されたドメインオブジェクト (TDO) の存在をクエリーします。
    3. TDO がすでに存在する場合は、LSA DeleteTrustedDomain 呼び出しを使用してその TDO を削除します。

      注記

      信頼の確立に使用される AD ユーザーアカウントに、Incoming Forest Trust Builders グループのメンバーなど、フォレストルートに対する完全な Enterprise Admin (EA) または Domain Admin (DA) 特権がない場合、この呼び出しは失敗します。古い TDO が自動的に削除されない場合、AD 管理者は手動で AD から削除する必要があります。

    4. IdM サーバーは、LSA CreateTrustedDomainEx2 呼び出しを使用して新しい TDO を作成します。TDO クレデンシャルは、Samba が提供する 128 文字のランダムなパスワードジェネレーターを使用してランダムに生成されます。
    5. 次に、新しい TDO を LSA SetInformationTrustedDomain 呼び出しで変更し、信頼でサポートされている暗号化タイプが適切に設定されていることを確認します。

      1. Active Directory の設計に基づき、RC4 キーが使用されていない場合でも、RC4_HMAC_MD5 暗号化タイプが有効になっている。
      2. AES128_CTS_HMAC_SHA1_96 および AES256_CTS_HMAC_SHA1_96 暗号化タイプが有効になっている。
  3. フォレストの信頼の場合、LSA SetInformationTrustedDomain 呼び出しでフォレスト内のドメインに推移的に到達できることを確認します。
  4. LSA RSetForestTrustInformation 呼び出しを使用して、他のフォレスト (AD と通信する場合は IdM、IdM と通信する場合は AD) に関する信頼トポロジー情報を追加します。

    注記

    この手順により、次の 3 つの理由のいずれかで競合が発生する可能性があります。

    1. LSA_SID_DISABLED_CONFLICT エラーとして報告される SID namespace の競合。この競合は解決できません。
    2. LSA_NB_DISABLED_CONFLICT エラーとして報告される NetBIOS namesapce の競合。この競合は解決できません。
    3. LSA_TLN_DISABLED_CONFLICT エラーとして報告される、DNS namespace とトップレベル名 (TLN) の競合。別のフォレストが原因で TLN の競合が発生した場合、IdM サーバーは自動的に解決できます。

    TLN の競合を解決するために、IdM サーバーは次の手順を実行します。

    1. 競合するフォレストのフォレスト信頼情報を取得します。
    2. IdM DNS namespace 間の除外エントリーを AD フォレストに追加します。
    3. 競合するフォレストのフォレスト信頼情報を設定します。
    4. 元のフォレストへの信頼確立を再試行します。

    IdM サーバーは、フォレストの信頼を変更できる AD 管理者の権限で ipa trust-add コマンドを認証した場合にのみ、これらの競合を解決できます。これらの権限にアクセスできない場合、元のフォレストの管理者は、Windows UI の Active Directory Domains and Trusts セクションで上記の手順を手動で実行する必要があります。

  5. 存在しない場合は、信頼されたドメインの ID 範囲を作成します。
  6. フォレストの信頼については、フォレストのトポロジーの詳細について、フォレストのルートから Active Directory ドメインコントローラーにクエリーします。IdM サーバーはこの情報を使用して、信頼されたフォレストから追加のドメインの追加 ID 範囲を作成します。

34.9.2. AD の信頼を確立するための前提条件のチェックリスト

次のチェックリストを使用して、AD ドメインとの信頼を作成するための前提条件を確認できます。

表34.4 テーブル

コンポーネント設定詳細

製品バージョン

Active Directory ドメインは、サポートされているバージョンの Windows Server を使用しています。

サポート対象の Windows Server バージョン

AD 管理者権限

Active Directory 管理アカウントは、次のいずれかのグループのメンバーです。

  • AD フォレストの Enterprise Admin (EA) グループ
  • AD フォレスト用のフォレストルートドメインの Domain Admins (DA) グループ
 

ネットワーク

IPv6 サポートは、すべての IdM サーバーの Linux カーネルで有効になっています。

IdM における IPv6 要件

日時

両方のサーバーの日付と時刻の設定が一致していることを確認します。

IdM のタイムサービス要件

暗号化タイプ

次の AD アカウントに AES 暗号化キーがあります。

  • AD 管理者
  • AD ユーザーアカウント
  • AD サービス

最近 AD で AES 暗号化を有効にした場合は、次の手順で新しい AES キーを生成します。

  1. フォレスト内の AD ドメイン間の信頼関係を再確立します。
  2. AD 管理者、ユーザーアカウント、およびサービスのパスワードを変更します。

ファイアウォール

双方向通信のために、IdM サーバーと AD ドメインコントローラーで必要なすべてのポートを開いています。

IdM と AD との間の通信に必要なポート

DNS

  • IdM と AD には、それぞれ固有のプライマリー DNS ドメインがあります。
  • IdM ドメインと AD DNS ドメインは重複していません。
  • LDAP および Kerberos サービスの適切な DNS サービス (SRV) レコード。
  • 信頼内のすべての DNS ドメインから DNS レコードを解決できます。
  • Kerberos レルム名は、プライマリー DNS ドメイン名を大文字にしたものです。たとえば、DNS ドメイン example.com には、対応する Kerberos レルム EXAMPLE.COM があります。

信頼用の DNS およびレルムの設定の設定

Topology

信頼コントローラーとして設定した IdM サーバーとの信頼を確立しようとしていることを確認します。

信頼コントローラーおよび信頼エージェント

34.9.3. AD の信頼を確立する試みのデバッグログを収集

IdM 環境と AD ドメイン間の信頼確立で問題が発生した場合は、次の手順を使用して詳細なエラーログを有効にし、信頼を確立する試みのログを収集できるようにします。これらのログを確認してトラブルシューティング作業に役立てたり、Red Hat テクニカルサポートケースで提供したりできます。

前提条件

  • IdM サービスを再起動するには root 権限が必要です。

手順

  1. IdM サーバーのデバッグを有効にするには、次の内容でファイル /etc/ipa/server.conf を作成します。

    [global]
    debug=True
  2. httpd サービスを再起動して、デバッグ設定をロードします。

    [root@trust_controller ~]# systemctl restart httpd
  3. smb および winbind サービスを停止します。

    [root@trust_controller ~]# systemctl stop smb winbind
  4. smb および winbind サービスのデバッグログレベルを設定します。

    [root@trust_controller ~]# net conf setparm global 'log level' 100
  5. IdM フレームワークで使用される Samba クライアントコードのデバッグログを有効にするには、/usr/share/ipa/smb.conf.empty 設定ファイルを編集して次の内容にします。

        [global]
        log level = 100
  6. 以前の Samba ログを削除します。

    [root@trust_controller ~]# rm /var/log/samba/log.*
  7. smb サービスおよび winbind サービスを起動します。

    [root@trust_controller ~]# systemctl start smb winbind
  8. 詳細モードを有効にして信頼の確率を試みる際に、タイムスタンプを出力します。

    [root@trust_controller ~]# date; ipa -vvv trust-add --type=ad ad.example.com
  9. 失敗したリクエストについては、次のエラーログファイルを確認してください。

    1. /var/log/httpd/error_log
    2. /var/log/samba/log.*
  10. デバッグを無効にします。

    [root@trust_controller ~]# mv /etc/ipa/server.conf /etc/ipa/server.conf.backup
    [root@trust_controller ~]# systemctl restart httpd
    [root@trust_controller ~]# systemctl stop smb winbind
    [root@trust_controller ~]# net conf setparm global 'log level' 0
    [root@trust_controller ~]# mv /usr/share/ipa/smb.conf.empty /usr/share/ipa/smb.conf.empty.backup
    [root@trust_controller ~]# systemctl start smb winbind
  11. (オプション) 認証問題の原因を判断できない場合は、以下を行います。

    1. 最近生成したログファイルを収集してアーカイブします。

      [root@trust_controller ~]# tar -cvf debugging-trust.tar /var/log/httpd/error_log /var/log/samba/log.*
    2. Red Hat テクニカルサポートケースを開き、試行からのタイムスタンプとデバッグログを提供します。

34.10. 他のフォレストのサービスへのクライアントアクセスに関するトラブルシューティング

Identity Management (IdM) 環境と Active Directory (AD) 環境の間に信頼を設定した後、一方のドメインのクライアントがもう一方のドメインのサービスにアクセスできないという問題が発生する場合があります。次の図を使用して、問題のトラブルシューティングを行ってください。

34.10.1. AD フォレストルートドメイン内のホストが IdM サーバーのサービスをリクエストする場合の情報の流れ

次の図は、Active Directory (AD) クライアントが Identity Management (IdM) ドメインのサービスをリクエストする際の情報の流れを説明しています。

AD クライアントから IdM サービスにアクセスする際に問題が発生した場合は、この情報を使用してトラブルシューティングの作業を絞り込み、問題の原因を特定できます。

diagram showing how an AD client communicates with an AD Domain Controller and an IdM server

  1. AD クライアントは AD Kerberos Distribution Center (KDC) に接続して、IdM ドメインのサービスに対して TGS リクエストを実行します。
  2. AD KDC は、サービスが信頼された IdM ドメインに属していることを認識します。
  3. AD KDC は、信頼された IdM KDC への参照とともに、クライアントにレルム間のチケット保証チケット (TGT) を送信します。
  4. AD クライアントは、レルム間 TGT を使用して IdM KDC へのチケットをリクエストします。
  5. IdM KDC は、クロスレルム TGT で送信される特権属性証明書 (MS-PAC) を検証します。
  6. IPA-KDB プラグインは、LDAP ディレクトリーをチェックして、外部プリンシパルがリクエストされたサービスのチケットを取得できるかどうかを確認する場合があります。
  7. IPA-KDB プラグインは、MS-PAC をデコードし、データを検証およびフィルタリングします。LDAP サーバーで検索を行い、、ローカルグループなどの追加情報で MS-PAC を拡張する必要があるかどうかを確認します。
  8. 次に、IPA-KDB プラグインは PAC をエンコードして署名し、サービスチケットに添付して AD クライアントに送信します。
  9. AD クライアントは、IdM KDC によって発行されたサービスチケットを使用して IdM サービスに接続できるようになります。

34.10.2. AD 子ドメイン内のホストが IdM サーバーのサービスをリクエストする場合の情報の流れ

次の図は、子ドメイン内の Active Directory (AD) ホストが Identity Management (IdM) ドメインのサービスをリクエストする際の情報の流れを説明しています。このシナリオでは、AD クライアントは子ドメインの Kerberos Distribution Center (KDC) に接続し、次に AD フォレストルートの KDC に接続し、最後に IdM KDC に接続して IdM サービスへのアクセスをリクエストします。

AD クライアントから IdM サービスにアクセスする際に問題が発生し、AD クライアントが AD フォレストルートの子ドメインであるドメインに属する場合、この情報を使用してトラブルシューティングの作業を絞り込み、問題の原因を特定できます。

diagram showing how an AD client in a chile domain communicates with multiple layers of AD Domain Controllers and an IdM server

  1. AD クライアントは 独自ドメイン内の AD Kerberos Distribution Center (KDC) に接続して、IdM ドメインのサービスに対して TGS リクエストを実行します。
  2. 子ドメインである child.ad.example.com 内の AD KDC は、サービスが信頼された IdM ドメインに属していることを認識します。
  3. 子ドメイン内の AD KDC は、AD フォレストルートドメイン ad.example.com の参照チケットをクライアントに送信します。
  4. AD クライアントは、IdM ドメインのサービスについて、AD フォレストルートドメインの KDC に接続します。
  5. フォレストルートドメインの KDC は、サービスが信頼された IdM ドメインに属していることを認識します。
  6. AD KDC は、信頼された IdM KDC への参照とともに、クライアントにレルム間のチケット保証チケット (TGT) を送信します。
  7. AD クライアントは、レルム間 TGT を使用して IdM KDC へのチケットをリクエストします。
  8. IdM KDC は、クロスレルム TGT で送信される特権属性証明書 (MS-PAC) を検証します。
  9. IPA-KDB プラグインは、LDAP ディレクトリーをチェックして、外部プリンシパルがリクエストされたサービスのチケットを取得できるかどうかを確認する場合があります。
  10. IPA-KDB プラグインは、MS-PAC をデコードし、データを検証およびフィルタリングします。LDAP サーバーで検索を行い、、ローカルグループなどの追加情報で MS-PAC を拡張する必要があるかどうかを確認します。
  11. 次に、IPA-KDB プラグインは PAC をエンコードして署名し、サービスチケットに添付して AD クライアントに送信します。
  12. AD クライアントは、IdM KDC によって発行されたサービスチケットを使用して IdM サービスに接続できるようになります。

34.10.3. IdM クライアントが AD サーバーのサービスをリクエストする場合の情報の流れ

次の図は、Identity Management (IdM) と Active Directory (AD) の間に双方向の信頼を設定した場合に、IdM クライアントが AD ドメインでサービスをリクエストする場合の情報の流れを説明しています。

IdM クライアントから AD サービスにアクセスする際に問題が発生した場合は、この情報を使用してトラブルシューティングの取り組みを絞り込み、問題の原因を特定できます。

注記

デフォルトでは、IdM は AD への一方向の信頼を確立します。つまり、AD フォレスト内のリソースに対してレルム間のチケット保証チケット (TGT) を発行することはできません。信頼された AD ドメインからサービスへのチケットをリクエストできるようにするには、双方向の信頼を設定します。

diagram showing how an IdM client communicates with an IdM server and an AD Domain Controller

  1. IdM クライアントは、接続する AD サービスの IdM Kerberos Distribution Center (KDC) にチケット保証チケット (TGT) を要求します。
  2. IdM KDC は、サービスが AD レルムに属していることを認識し、レルムが既知で信頼されていること、およびクライアントがそのレルムからサービスをリクエストできることを確認します。
  3. IdM Directory Server からのユーザープリンシパルに関する情報を使用して、IdM KDC は、ユーザープリンシパルに関する特権属性証明書 (MS-PAC) レコードを使用してレルム間 TGT を作成します。
  4. IdM KDC は、レルム間 TGT を IdM クライアントに送り返します。
  5. IdM クライアントは AD KDC に接続して、AD サービスのチケットをリクエストし、IdM KDC によって提供される MS-PAC を含むレルム間 TGT を提示します。
  6. AD サーバーは PAC を検証およびフィルタリングし、AD サービスのチケットを返します。
  7. これで、IPA クライアントは AD サービスに接続できます。

34.11. コマンドラインを使用した信頼の削除

コマンドラインインターフェイスを使用して IdM 側の Identity Management (IdM)/Active Directory (AD) 信頼を削除するには、次の手順に従います。

前提条件

手順

  1. ipa trust-del コマンドを使用して、IdM から信頼設定を削除します。

    [root@server ~]# ipa trust-del ad_domain_name
    ------------------------------
    Deleted trust "ad_domain_name"
    ------------------------------
  2. Active Directory 設定から信頼オブジェクトを削除します。
注記

信頼設定を削除しても、IdM が AD ユーザー用に作成した ID 範囲は自動的に削除されません。この場合、信頼を再度追加すると、既存の ID 範囲が再利用されます。また、AD ユーザーが IdM クライアントでファイルを作成した場合、その POSIX ID はファイルのメタデータに保持されます。

AD 信頼に関連するすべての情報を削除するには、信頼設定と信頼オブジェクトを削除した後、AD ユーザー ID 範囲を削除します。

# ipa idrange-del AD.EXAMPLE.COM_id_range
# systemctl restart sssd

検証手順

  • ipa trust-show を実行して、信頼が削除されたことを確認します。

    [root@server ~]# ipa trust-show ad.example.com
    ipa: ERROR: ad.example.com: trust not found

34.12. IdM Web UI を使用した信頼の削除

IdM Web UI を使用して Identity Management (IdM)/Active Directory (AD) 信頼を削除するには、次の手順に従います。

前提条件

手順

  1. 管理者権限で IdM Web UI にログインします。詳細は Web ブラウザーで IdM Web UI へのアクセス を参照してください。
  2. IdM Web UI で、IPA Server タブをクリックします。
  3. IPA Server タブで、Trusts タブをクリックします。
  4. 削除する信頼を選択します。

    A screenshot of the IdM Web UI displaying the "Trusts" page which is a subpage of the "IPA Server" tab. This page has a table listing "Realm names" and checkbox next to the first entry of "AD.EXAMPLE.COM" is checked.

  5. Delete ボタンをクリックします。
  6. Remove trusts ダイアログボックスで、Delete をクリックします。

    A screenshot of a pop-up window titled "Remove trusts." The content of the warning is "Are you sure you want to delete selected entries?" and lists "AD.EXAMPLE.COM" below. There are "Delete" and "Cancel" buttons at the bottom right.

  7. Active Directory 設定から信頼オブジェクトを削除します。
注記

信頼設定を削除しても、IdM が AD ユーザー用に作成した ID 範囲は自動的に削除されません。この場合、信頼を再度追加すると、既存の ID 範囲が再利用されます。また、AD ユーザーが IdM クライアントでファイルを作成した場合、その POSIX ID はファイルのメタデータに保持されます。

AD 信頼に関連するすべての情報を削除するには、信頼設定と信頼オブジェクトを削除した後、ID Ranges タブで AD ユーザー ID 範囲を削除します。

検証手順

  • 信頼が正常に削除されていると、Web UI はテキストが付いた緑色のポップアップを表示します。

    A screenshot of the IdM Web UI displaying the "Trusts" page with a pop-up window at the top that says "1 item(s) deleted." The table on the "Trusts" page does not have any entries.

34.13. Ansible を使用した信頼の削除

Ansible Playbook を使用して IdM 側の Identity Management (IdM)/Active Directory (AD) 信頼を削除するには、次の手順に従います。

前提条件

  • IdM 管理者として Kerberos チケットを取得している。詳細は Web UI で IdM にログイン: Kerberos チケットの使用 を参照してください。
  • 次の要件を満たすように Ansible コントロールノードを設定している。

    • Ansible バージョン 2.14 以降を使用している。
    • Ansible コントローラーに ansible-freeipa パッケージがインストールされている。
    • この例では、~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を使用して Ansible インベントリーファイル を作成したことを前提としている。
    • この例では、secret.yml Ansible ボールトに ipaadmin_password が保存されていることを前提としている。

手順

  1. ~/MyPlaybooks/ ディレクトリーに移動します。

    $ cd ~/MyPlaybooks/
  2. 以下の内容を含む del-trust.yml Playbook を作成します。

    ---
    - name: Playbook to delete trust
      hosts: ipaserver
    
      vars_files:
      - /home/user_name/MyPlaybooks/secret.yml
      tasks:
        - name: ensure the trust is absent
          ipatrust:
            ipaadmin_password: "{{ ipaadmin_password }}"
            realm: ad.example.com
            state: absent

    この例では、realm は AD レルム名の文字列を定義します。

  3. ファイルを保存します。
  4. Ansible Playbook を実行します。Playbook ファイル、secret.yml ファイルを保護するパスワードを格納するファイル、およびインベントリーファイルを指定します。

    $ ansible-playbook --vault-password-file=password_file -v -i inventory del-trust.yml
注記

信頼設定を削除しても、IdM が AD ユーザー用に作成した ID 範囲は自動的に削除されません。この場合、信頼を再度追加すると、既存の ID 範囲が再利用されます。また、AD ユーザーが IdM クライアントでファイルを作成した場合、その POSIX ID はファイルのメタデータに保持されます。

AD 信頼に関連するすべての情報を削除するには、信頼設定と信頼オブジェクトを削除した後、AD ユーザー ID 範囲を削除します。

# ipa idrange-del AD.EXAMPLE.COM_id_range
# systemctl restart sssd

検証手順

  • ipa trust-show を実行して、信頼が削除されたことを確認します。

    [root@server ~]# ipa trust-show ad.example.com
    ipa: ERROR: ad.example.com: trust not found

関連情報

34.14. AD への信頼を削除した後の ID 範囲の削除

IdM 環境と Active Directory (AD) 環境間の信頼を削除している場合は、それに関連付けられている ID 範囲を削除することを推奨します。

警告

信頼できるドメインに関連付けられた ID 範囲に割り当てられた ID は、IdM に登録されているシステムのファイルおよびディレクトリーの所有権に引き続き使用される可能性があります。

削除した AD 信頼に対応する ID 範囲を削除すると、AD ユーザーが所有するファイルおよびディレクトリーの所有権を解決できなくなります。

前提条件

  • AD 環境への信頼を削除している。

手順

  1. 現在使用されている ID 範囲をすべて表示します。

    [root@server ~]# ipa idrange-find
  2. 削除した信頼に関連付けられた ID 範囲の名前を識別します。ID 範囲の名前の最初の部分は、信頼の名前 (AD.EXAMPLE.COM_id_range など) になります。
  3. 範囲を削除します。

    [root@server ~]# ipa idrange-del AD.EXAMPLE.COM_id_range
  4. SSSD サービスを再起動して、削除した ID 範囲への参照を削除します。

    [root@server ~]# systemctl restart sssd

関連情報

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