第3章 環境の管理

3.1. セルフホスト型エンジンの管理

3.1.1. セルフホスト型エンジンの保守

3.1.1.1. セルフホスト型エンジンメンテナンスモードの説明

メンテナンスモードを使用すると、高可用性エージェントからの干渉を受けずに Manager 仮想マシンを起動、停止、変更したり、Manager に干渉することなく環境内のセルフホスト型エンジンノードを再起動および変更したりできます。

3 つのメンテナンスモードがあります。

  • global - クラスター内のすべての高可用性エージェントは、Manager 仮想マシンの状態を監視できなくなります。グローバルメンテナンスモードは、Red Hat Virtualization の新しいバージョンへのアップグレードなど、ovirt-engine サービスの停止を必要とするセットアップまたはアップグレード操作に適用する必要があります。
  • local - コマンドを発行しているノードの高可用性エージェントは、Manager 仮想マシンの状態を監視できません。ローカルメンテナンスモードでは、ノードは Manager 仮想マシンのホスティングを免除されます。このモードに設定されたときに Manager 仮想マシンをホストしている場合、使用可能なノードがあれば、Manager は別のノードに移行します。セルフホスト型エンジンノードにシステムの変更または更新を適用する場合は、ローカルメンテナンスモードをお勧めします。
  • none - メンテナンスモードを無効にして、高可用性エージェントが動作していることを確認します。

3.1.1.2. ローカルメンテナンスモードの設定

ローカルメンテナンスモードを有効にすると、単一のセルフホスト型エンジンノードで高可用性エージェントが停止します。

管理ポータルからのローカルメンテナンスモードの設定

  1. セルフホスト型エンジンノードをローカルメンテナンスモードにします。

    1. 管理ポータルで、ComputeHosts をクリックし、セルフホスト型エンジンノードを選択します。
    2. ManagementMaintenance をクリックしてから OK をクリックします。そのノードに対してローカルメンテナンスモードが自動的にトリガーされます。
  2. メンテナンスタスクを完了したら、メンテナンスモードを無効にします。

    1. 管理ポータルで ComputeHosts をクリックし、セルフホスト型エンジンノードを選択します。
    2. ManagementActivate をクリックします。

コマンドラインからローカルメンテナンスモードを設定

  1. セルフホスト型エンジンノードにログインし、ローカルメンテナンスモードにします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=local
  2. メンテナンスタスクを完了したら、メンテナンスモードを無効にします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=none

3.1.1.3. グローバルメンテナンスモードの設定

グローバルメンテナンスモードを有効にすると、クラスター内のすべてのセルフホスト型エンジンノードで高可用性エージェントが停止します。

管理ポータルからグローバルメンテナンスモードを設定

  1. すべてのセルフホスト型エンジンノードをグローバルメンテナンスモードにします。

    1. 管理ポータルで ComputeHosts をクリックし、セルフホスト型エンジンノードを選択します。
    2. More Actions ( moreactions ) をクリックしてから、Enable Global HA Maintenance をクリックします。
  2. メンテナンスタスクを完了したら、メンテナンスモードを無効にします。

    1. 管理ポータルで ComputeHosts をクリックし、セルフホスト型エンジンノードを選択します。
    2. More Actions ( moreactions ) をクリックしてから、Disable Global HA Maintenance をクリックします。

コマンドラインからグローバルメンテナンスモードを設定

  1. セルフホスト型エンジンノードにログインし、グローバルメンテナンスモードにします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=global
  2. メンテナンスタスクを完了したら、メンテナンスモードを無効にします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=none

3.1.2. Manager 仮想マシンの管理

hosted-engine ユーティリティーは、Manager 仮想マシンの管理に役立つ多くのコマンドを提供します。hosted-engine は、任意のセルフホスト型エンジンノードで実行できます。利用可能なコマンドをすべて表示するには、hosted-engine --help を実行します。特定のコマンドの詳細については、hosted-engine --command --help を実行してください。

3.1.2.1. セルフホスト型エンジン設定の更新

セルフホスト型エンジン設定を更新するには、hosted-engine --set-shared-config コマンドを使用します。このコマンドは、初期デプロイ後に共有ストレージドメインのセルフホスト型エンジン設定を更新します。

現在の設定値を表示するには、hosted-engine --get-shared-config コマンドを使用します。

利用可能なすべての設定キーの一覧とそれに対応するタイプを表示するには、以下のコマンドを入力します。

# hosted-engine --set-shared-config key --type=type --help

type は次のいずれかです。

he_local

ローカルホストの /etc/ovirt-hosted-engine/hosted-engine.conf のローカルインスタンスに値を設定し、そのホストのみが新しい値を使用するようにします。新しい値を有効にするには、ovirt-ha-agent サービスおよび ovirt-ha-broker サービスを再起動します。

he_shared

共有ストレージの /etc/ovirt-hosted-engine/hosted-engine.conf に値を設定するため、設定の変更後にデプロイされるすべてのホストがこれらの値を使用します。ホストで新しい値を有効にするには、そのホストを再デプロイします。

ha

ローカルストレージの /var/lib/ovirt-hosted-engine-ha/ha.conf に値を設定します。新しい設定はすぐに有効になります。

broker

ローカルストレージの /var/lib/ovirt-hosted-engine-ha/broker.conf に値を設定します。ovirt-ha-broker サービスを再起動して、新しい設定を有効にします。

3.1.2.2. メール通知の設定

セルフホスト型エンジンノードの HA 状態遷移に対して、SMTP を使用して電子メール通知を設定できます。更新できるキーには、smtp-serversmtp-portsource-emaildestination-emails、および state_transition が含まれます。

電子メール通知の設定:

  1. セルフホスト型エンジンノードで、smtp-server キーを目的の SMTP サーバーアドレスに設定します。

    # hosted-engine --set-shared-config smtp-server smtp.example.com --type=broker
    注記

    セルフホスト型エンジン設定ファイルが更新されたことを確認するには、次のコマンドを実行します。

    # hosted-engine --get-shared-config smtp-server --type=broker
    broker : smtp.example.com, type : broker
  2. デフォルトの SMTP ポート (ポート 25) が設定されていることを確認します。

    # hosted-engine --get-shared-config smtp-port --type=broker
    broker : 25, type : broker
  3. SMTP サーバーが電子メール通知の送信に使用する電子メールアドレスを指定します。指定できるアドレスは 1 つだけです。

    # hosted-engine --set-shared-config source-email source@example.com --type=broker
  4. 電子メール通知を受け取る宛先電子メールアドレスを指定します。複数のメールアドレスを指定するには、各アドレスをコンマで区切ります。

    # hosted-engine --set-shared-config destination-emails destination1@example.com,destination2@example.com --type=broker

SMTP がセルフホスト型エンジン環境用に適切に設定されていることを確認するには、セルフホスト型エンジンノードの HA 状態を変更し、電子メール通知が送信されたかどうかを確認します。たとえば、HA エージェントをメンテナンスモードにすることで、HA の状態を変更できます。詳細については、セルフホスト型エンジンの更新 を参照してください。

3.1.3. 追加ホスト上のセルフホスト型エンジン用に予約されたメモリースロットの設定

Manager 用仮想マシンのシャットダウンまたは移行が必要な場合、Manager 用仮想マシンを再起動または移行できるだけの十分なメモリーがセルフホスト型エンジンノードに必要です。このメモリーは、スケジューリングポリシーを使用して、複数のセルフホスト型エンジンノードで予約できます。スケジューリングポリシーは、仮想マシンを起動または移行する前に、Manager 仮想マシンを起動するのに十分なメモリーが指定された数の追加のセルフホスト型エンジンノードに残っているかどうかを確認します。スケジューリングポリシーについての詳細は、管理ガイドスケジューリングポリシーの作成 を参照してください。

Red Hat Virtualization Manager へ他のセルフホストエンジンノードを追加するには、Manager へのセルフホスト型エンジンノードの追加 を参照してください。

追加ホスト上のセルフホスト型エンジン用に予約されたメモリースロットの設定

  1. クラスターの ComputeClusters をクリックして、セルフホスト型エンジンノードを含むクラスターを選択します。
  2. Edit をクリックします。
  3. Scheduling Policy タブをクリックします。
  4. + をクリックして、HeSparesCount を選択します。
  5. Manager 仮想マシンを起動するのに十分な空きメモリーを予約する追加のセルフホスト型エンジンノードの数を入力します。
  6. OK をクリックします。

3.1.4. Red Hat Virtualization Manager へのセルフホスト型エンジンノードの追加

セルフホスト型エンジンノードは、通常のホストと同じ方法で追加しますが、セルフホスト型エンジンノードとしてホストをデプロイするという追加のステップが必要です。共有ストレージドメインは自動的に検出され、ノードは必要に応じて Manager 用仮想マシンをホストするフェイルオーバー用ホストとして使用できます。セルフホスト型エンジン環境に通常のホストをアタッチできますが、Manager 用仮想マシンはホストできません。Manager 用仮想マシンの高可用性を確保するためには、セルフホスト型エンジンノードを最低でも 2 つ用意します。追加のホストは、REST API を使用して追加することもできます。REST API ガイドホスト を参照してください。

前提条件

手順

  1. 管理ポータルで ComputeHosts をクリックします。
  2. New をクリックします。

    ホストの追加設定に関する情報は、管理ガイドNew Host および Edit Host ウィンドウの設定とコントロールの説明 を参照してください。

  3. ドロップダウンリストを使用して、新規ホスト用の Data Center および Host Cluster を選択します。
  4. 新規ホストの NameAddress を入力します。SSH Port フィールドには、標準の SSH ポートであるポート 22 が自動入力されます。
  5. Manager がホストにアクセスするために使用する認証メソッドを選択します。

    • パスワード認証を使用するには、root ユーザーのパスワードを入力します。
    • または、SSH PublicKey フィールドに表示される鍵をホスト上の /root/.ssh/authorized_keys にコピーして、公開鍵認証を使用します。
  6. ホストにサポート対象の電源管理カードが搭載されている場合は、オプションとして電源管理を設定できます。電源管理の設定に関する詳細は、管理ガイドホスト電源管理の設定の説明 を参照してください。
  7. Hosted Engine タブをクリックします。
  8. Deploy を選択します。
  9. OK をクリックします。

3.1.5. 既存ホストをセルフホスト型エンジンノードとして再インストール

セルフホスト型エンジン環境内の既存の標準ホストは、Manager 仮想マシンをホストするセルフホスト型エンジンノードに変換できます。

警告

ホストのオペレーティングシステムをインストールまたは再インストールする場合、Red Hat では、ホストにアタッチされている既存 OS 以外のストレージを最初にデタッチすることを強く推奨しています。これは、ディスクを誤って初期化してデータが失われる可能性を避けるためです。

手順

  1. ComputeHosts をクリックし、ホストを選択します。
  2. ManagementMaintenance をクリックしてから OK をクリックします。
  3. InstallationReinstall をクリックします。
  4. Hosted Engine タブをクリックし、ドロップダウンリストから DEPLOY を選択します。
  5. OK をクリックします。

ホストは、セルフホスト型エンジンの設定で再インストールされ、管理ポータルで王冠アイコンのフラグが付加されます。

3.1.6. Manager 仮想マシンをレスキューモードで起動

このトピックでは、Manager 仮想マシンが起動しないときにレスキューモードで起動する方法について説明します。詳細は、Red Hat Enterprise Linux System 管理者ガイドレスキューモードでの起動 を参照してください。

  1. ホストエンジンノードの 1 つに接続します。

    $ ssh root@host_address
  2. セルフホスト型エンジンをグローバルメンテナンスモードにします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=global
  3. Manager 仮想マシンの実行中のインスタンスがすでに存在するか確認します。

    # hosted-engine --vm-status

    Manager 仮想マシンインスタンスが実行されている場合は、そのホストに接続します。

    # ssh root@host_address
  4. 仮想マシンをシャットダウンします。

    # hosted-engine --vm-shutdown
    注記

    仮想マシンがシャットダウンしない場合は、次のコマンドを実行します。

    # hosted-engine --vm-poweroff
  5. Manager 仮想マシンを一時停止モードで起動します。

    hosted-engine --vm-start-paused
  6. 一時的な VNC パスワードを設定します。

    hosted-engine --add-console-password

    このコマンドは、VNC を使用して Manger 仮想マシンにログインするために必要な情報を出力します。

  7. VNC で Manager 用仮想マシンにログインします。Manager 仮想マシンはまだ一時停止しているため、フリーズしているように見えます。
  8. ホストで次のコマンドを使用して、Manager 仮想マシンを再開します。

    警告

    次のコマンドを実行すると、ブートローダーメニューが表示されます。ブートローダーが通常のブートプロセスを続行する前に、レスキューモードに入る必要があります。このコマンドを続行する前に、レスキューモードへの遷移に関する次の手順を読んでください。

    # /usr/bin/virsh -c qemu:///system?authfile=/etc/ovirt-hosted-engine/virsh_auth.conf resume HostedEngine
  9. Manager 仮想マシンをレスキューモードで起動します。
  10. グローバルメンテナンスモードを無効にします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=none

これで、Manager 仮想マシンでレスキュータスクを実行できます。

3.1.7. セルフホスト型エンジン環境からのホストの削除

セルフホスト型エンジンノードを環境から削除するには、ノードをメンテナンスモードにし、アンデプロイし、オプションでそれを削除します。HA サービスが停止し、セルフホスト型エンジン設定ファイルが削除された後は、そのノードを通常のホストとして管理できます。

手順

  1. 管理ポータルで ComputeHosts をクリックし、セルフホスト型エンジンノードを選択します。
  2. ManagementMaintenance をクリックしてから OK をクリックします。
  3. InstallationReinstall をクリックします。
  4. Hosted Engine タブをクリックし、ドロップダウンリストから UNDEPLOY を選択します。このアクションにより、ovirt-ha-agent および ovirt-ha-broker サービスが停止し、セルフホスト型エンジン設定ファイルが削除されます。
  5. OK をクリックします。
  6. 必要に応じて、Remove をクリックします。これにより、Remove Host(s) 確認ウィンドウが開きます。
  7. OK をクリックします。

3.1.8. セルフホスト型エンジンの更新

セルフホスト型エンジンを現在お使いのバージョンから最新のバージョンに更新するには、環境をグローバルメンテナンスモードに切り替え、続いてマイナーバージョン間の標準更新手順に従う必要があります。

グローバルメンテナンスモードの有効化

Manager 用仮想マシンの設定またはアップグレード作業を実施する前に、セルフホスト型エンジン環境をグローバルメンテナンスモードに切り替える必要があります。

手順

  1. セルフホスト型エンジンノードのいずれかにログインして、グローバルメンテナンスモードを有効にします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=global
  2. 作業を進める前に、環境がグローバルメンテナンスモードにあることを確認します。

    # hosted-engine --vm-status

    クラスターがグローバルメンテナンスモードにあることを示すメッセージが表示されるはずです。

Red Hat Virtualization Manager の更新

手順

  1. Manager マシンで、更新されたパッケージが利用可能かどうかを確認します。

    # engine-upgrade-check
  2. setup パッケージを更新します。

    # yum update ovirt\*setup\* rh\*vm-setup-plugins
  3. engine-setup スクリプトで Red Hat Virtualization Manager を更新します。engine-setup スクリプトにより、設定に関する質問への回答が求められます。その後、ovirt-engine サービスの停止、更新パッケージのダウンロード/インストール、データベースのバックアップ/更新、インストール後設定の実施を経てから、ovirt-engine サービスが起動します。

    # engine-setup

    スクリプトが正常に完了すると、以下のメッセージが表示されます。

    Execution of setup completed successfully
    注記

    engine-setup スクリプトは、Red Hat Virtualization Manager のインストールプロセス中にも使用され、指定した設定値が保存されます。更新時に、設定をプレビューすると保存された値が表示されますが、インストール後に engine-config を使用して設定を更新した場合、この値は最新ではない可能性があります。たとえば、インストール後に engine-config を使用して SANWipeAfterDeletetrue に更新した場合、engine-setup は設定プレビューに "Default SAN wipe after delete: False" を出力します。ただし、更新された値が engine-setup によって上書きされることはありません。

    重要

    更新プロセスに時間がかかる場合があります。完了するまでプロセスを停止しないでください。

  4. Manager にインストールされているベースオペレーティングシステムと、オプションパッケージを更新します。

    # yum update --nobest
    重要

    更新中に必要な Ansible パッケージの競合が発生した場合は、RHV Manager で yum update を実行できない (ansible の競合) を参照してください。

    重要

    カーネルパッケージが更新された場合は、以下を実行します。

    1. グローバルメンテナンスモードを無効にします。
    2. マシンを再起動して更新を完了します。
グローバルメンテナンスモードの無効化

手順

  1. Manager 用仮想マシンにログインし、シャットダウンします。
  2. セルフホスト型エンジンノードのいずれかにログインして、グローバルメンテナンスモードを無効にします。

    # hosted-engine --set-maintenance --mode=none

    グローバルメンテナンスモードを終了すると、ovirt-ha-agent が Manager 用仮想マシンを起動し、続いて Manager が自動的に起動します。Manager が起動するまでに最大で 10 分程度かかる場合があります。

  3. 環境が動作していることを確認します。

    # hosted-engine --vm-status

    情報の一覧に、Engine status が含まれます。Engine status の値は、以下のようになるはずです。

    {"health": "good", "vm": "up", "detail": "Up"}
    注記

    仮想マシンが起動中で Manager がまだ動作していない場合、Engine status は以下のようになります。

    {"reason": "bad vm status", "health": "bad", "vm": "up", "detail": "Powering up"}

    このような場合は、数分間待ってからやり直してください。

3.1.9. セルフホスト型エンジンで Manager の FQDN を変更

ovirt-engine-rename コマンドを使用して、Manager の完全修飾ドメイン名 (FQDN) のレコードを更新できます。

詳細については、Ovirt Engine Rename Tool を使用した Manager の名前変更 を参照してください。