第1章 インストールのための環境準備
1.1. システム要件
ネットワーク接続されたベースシステムには、以下の要件が適用されます。
- 64 ビットアーキテクチャー
- Red Hat Enterprise Linux 7 Server の最新バージョン
- 最低 4 コア 2.0 GHz CPU
- Satellite Server が機能するには、最低 20 GB のメモリーが必要です。また、最低 4 GB のスワップ領域が推奨されます。最低値よりも少ないメモリーで実行している Satellite は正常に動作しないことがあります。
- 一意なホスト名 (小文字、数字、ドット (.)、ハイフン (-) を使用できます)
- 現在の Red Hat Satellite サブスクリプション
- 管理ユーザー (root) アクセス
- システム umask 0022
- 完全修飾ドメイン名を使用した完全な正引きおよび逆引きの DNS 解決
Satellite Server または Capsule Server をインストールする前に、環境がインストール要件を満たしていることを確認する必要があります。
Satellite Server は、新規にプロビジョニングされたシステムにインストールする必要があり、このシステムで Satellite Server の実行以外の機能は提供されません。
Red Hat Satellite Server と Capsule Server のバージョンは同じでなければなりません。たとえば、Satellite 6.2 Server は 6.5 Capsule Server を実行できず、Satellite 6.5 Server は 6.2 Capsule Server を実行できません。Satellite Server と Capsule Server のバージョンが一致しないと、警告なしで Capsule Server が失敗します。
自己登録の Satellites はサポートされません。
コンテンツホストが多数ある場合には、「大規模なデプロイメントに関する考慮事項」を参照して、お使いの環境が正しく設定されていることを確認してください。
Capsule Server のスケーリングの詳細については、「Capsule Server のスケーラビリティーに関する考慮事項」を参照してください。
認定ハイパーバイザー
Red Hat Satellite は、Red Hat Enterprise Linux の実行をサポートするハイパーバイザーで稼働する物理システムおよび仮想マシン両方を完全にサポートしています。認定ハイパーバイザーに関する詳細は、「Red Hat Enterprise Linux の実行が認定されているハイパーバイザー 」を参照してください。
FIPS モード
FIPS モードで稼働する Red Hat Enterprise Linux システムに、Satellite Server および Capsule Server をインストールできます。詳細は、『Red Hat Enterprise Linux セキュリティーガイド』の「FIPS モードの有効化」を参照してください。
1.2. ストレージの要件とガイドライン
このセクションでは、最小ストレージ要件を紹介し、Capsule Server のインストールのストレージに関するガイドラインについて説明します。
1.2.1. ストレージ要件
以下の表には、特定のディレクトリーに推奨されるストレージ要件が詳述されています。これらの値は、期待されるユースケースシナリオに基づき、個別の環境に応じて異なることがあります。表を参照する場合には、ご自身にあったユースケースに注目してください。たとえば、Capsule Server で Pulp を有効化せずに使用できます。そのような場合には、/var/lib/pulp/
など、Pulp 関連のディレクトリーと同レベルのストレージ要件は必要ありません。
以下の表では、ランタイムサイズは Red Hat Enterprise Linux 5、6、および 7 のリポジトリーと同期して測定されています。
表1.1 Capsule Server インストールのストレージ要件
ディレクトリー | インストールサイズ | ランタイムサイズ |
---|---|---|
/var/cache/pulp/ |
1M バイト |
20 GB (最小) |
/var/lib/pulp/ |
1 MB |
500 GB |
/var/lib/mongodb/ |
3.5 GB |
50 GB |
/opt |
500 MB |
適用外 |
1.2.2. ストレージのガイドライン
Capsule Server をインストールして効率性を向上する場合には、以下のガイドラインを考慮してください。
-
Capsule Server データの多くは
/var
ディレクトリーに格納されるため、LVM ストレージに/var
をマウントして、システムがスケーリングできるようにしてください。 -
/var/lib/pulp/
ディレクトリーと/var/lib/mongodb/
ディレクトリーには、ハードディスクドライブ (HDD) ではなく、帯域幅が高く、レーテンシーの低いストレージおよび SSD (ソリッドステートドライブ) を使用するようにしてください。Red Hat Satellite には I/O を大量に使用する操作が多数あるため、高レイテンシーで低帯域幅のストレージを使用すると、パフォーマンス低下の問題が発生します。インストールに、毎秒 60 - 80 メガバイトのスピードがあることを確認してください。fio
ツールを使用すると、このデータが取得できます。fio
ツールの詳細な使用方法は、Red Hat ナレッジベースのソリューション「Impact of Disk Speed on Satellite 6 Operations」を参照してください。 -
/var/lib/qpidd/
ディレクトリーでは、goferd
サービスが管理するコンテンツホスト 1 つに対して使用される容量は 2 MB を少し超えます。たとえば、コンテンツホストの数が 10,000 個の場合、/var/lib/qpidd/
に 20 GB のディスク容量が必要になります。 -
/var/cache/pulp/
と/var/lib/pulp/
ディレクトリーに同じボリュームを使用することで、同期後に/var/cache/pulp/
から/var/lib/pulp/
にコンテンツを移動する時間を短縮できます。
ファイルシステムのガイドライン
-
XFS ファイルシステムは、
ext4
では存在する inode の制限がないため、Red Hat Satellite 6 では XFS ファイルシステムを使用してください。Capsule Server は多くのシンボリックリンクを使用するため、ext4
とデフォルトの数の inode を使用する場合は、システムで inode が足りなくなる可能性が高くなります。 -
MongoDB は従来の I/O を使用してデータファイルにアクセスしないので、MogoDB では NFS を使用しないでください。また、NFS でデータファイルとジャーナルファイルの両方がホストされている場合にはパフォーマンスの問題が発生します。NFS を使用する必要がある場合は、
/etc/fstab
ファイルでbg
、nolock
、およびnoatime
のオプションを使用してボリュームをマウントします。 - 入出力レイテンシーが高すぎるため、GFS2 ファイルシステムは使用しないでください。
NFS マウントを使用する場合の SELinux の考慮事項
NFS 共有を使用して /var/lib/pulp
ディレクトリーをマウントすると、SELinux は同期プロセスをブロックします。これを避けるには、以下の行を /etc/fstab
に追加して、ファイルシステムテーブル内の /var/lib/pulp
ディレクトリーの SELinux コンテキストを指定します。
nfs.example.com:/nfsshare /var/lib/pulp/content nfs context="system_u:object_r:httpd_sys_rw_content_t:s0" 1 2
NFS 共有が既にマウントされている場合は、上記の方法を使用して再マウントし、以下のコマンドを入力します。
# chcon -R system_u:object_r:httpd_sys_rw_content_t:s0 /var/lib/pulp
重複パッケージ
異なるリポジトリーで重複するパッケージは、ディスク上に一度しか格納されないため、重複するパッケージを含む追加リポジトリーで必要なストレージが少なくて済みます。ストレージの多くは、/var/lib/mongodb/
ディレクトリーおよび /var/lib/pulp/
ディレクトリーに使用されます。これらのエンドポイントは手動で設定できません。ストレージの問題を回避するために、ストレージが /var
ファイルシステムで利用可能であることを確認してください。
一時的なストレージ
/var/cache/pulp/
ディレクトリーは、同期中にコンテンツを一時的に保管するために使用されます。RPM 形式のコンテンツの場合、このディレクトリーには保管されるファイルは最大 5 RPM になります。各ファイルは、同期後に /var/lib/pulp/
ディレクトリーに移動します。デフォルトでは、同時に最大 8 個の RPM コンテンツ同期タスクを実行でき、それぞれに対して最大 1 GB のメタデータが使用されます。
ISO イメージ
ISO 形式のコンテンツについては、同期タスクごとに ISO ファイルはすべて、タスクが完了するまで /var/cache/pulp/
に保存されます。タスクが完了すると /var/lib/pulp/
ディレクトリーに移動します。
インストールや更新に ISO イメージを使用する予定の場合には、外部ストレージを提供するか、ISO ファイルを一時的に保存するために /var/tmp
に領域を空けるようにする必要があります。
たとえば、4 つの ISO ファイル (それぞれのサイズが 4 GB) を同期している場合は、/var/cache/pulp/
ディレクトリーに合計 16 GB 必要になります。これらのファイルに必要な一時ディスク容量は通常 RPM コンテンツのサイズを超えるので、同期する ISO ファイルの数を考慮してください。
ソフトウェアコレクション
ソフトウェアコレクションは、/opt/rh/
ディレクトリーと /opt/theforeman/
ディレクトリーにインストールされます。
/opt
ディレクトリーへのインストールには、root ユーザーによる書き込みパーミッションおよび実行パーミッションが必要です。
シンボリックリンク
/var/lib/pulp/
および /var/lib/mongodb/
にはシンボリックリンクは使用できません。
ログのストレージ
ログファイルは、/var/log/messages/
、/var/log/httpd/
、および /var/lib/foreman-proxy/openscap/content/
の場所で確認できます。ログファイルのサイズを管理するには、logrotate 設定ファイルを使用します。詳細は、Red Hat Enterprise Linux 7 『システム管理者のガイド』の「ログローテーション」 を参照してください。
1.3. サポート対象オペレーティングシステム
オペレーティングシステムは、ディスク、ローカル ISO イメージ、キックスタート、または Red Hat がサポートする他の任意の方法でインストールできます。Red Hat Satellite Server と Red Hat Satellite Capsule Server は、Satellite 6.5 のインストール時に入手可能な Red Hat Enterprise Linux 7 Server の最新バージョンでのみサポートされています。EUS または z-stream を含む Red Hat Enterprise Linux の以前のバージョンはサポートされません。
Red Hat Satellite Server および Red Hat Satellite Capsule Server には、@Base
パッケージグループを含む Red Hat Enterprise Linux インストールが必要です。他のパッケージセットの変更や、サーバーの運用に直接必要でないサードパーティーの構成やソフトウェアは含めないようにしてください。機能強化や Red Hat 以外のセキュリティーソフトウェアもこの制限に含まれます。インフラストラクチャーにこのようなソフトウェアが必要な場合は、Satellite Server が完全に機能することを最初に確認し、その後でシステムのバックアップを作成して、Red Hat 以外のソフトウェアを追加します。
新たにプロビジョニングされたシステムで、Satellite Server および Capsule Server をインストールし、Capsule Server は Red Hat コンテンツ配信ネットワーク (CDN) に登録しないでください。Red Hat は、Satellite 以外を実行するシステムの使用はサポートしません。
1.4. ポートとファイアウォールの要件
For the components of Satellite architecture to communicate, ensure that the required network ports are open and free on the base operating system. You must also ensure that the required network ports are open on any network-based firewalls.
The installation of a Capsule Server fails if the ports between Satellite Server and Capsule Server are not open before installation starts.
以下の表では、宛先ポートおよびネットワークトラフィックの方向を紹介します。この情報を使用して、ネットワークベースのファイアウォールを設定してください。クラウドソリューションによっては、ネットワークベースのファイアウォールと同様にマシンが分離されるので、特にマシン間の通信ができるように設定する必要があります。アプリケーションベースのファイアウォールを使用する場合には、アプリケーションベースのファイアウォールで、テーブルに記載のアプリケーションすべてを許可して、ファイアウォールに既知の状態にするようにしてください。可能であれば、アプリケーションのチェックを無効にして、プロトコルをベースにポートの通信を開放できるようにしてください。
統合 Capsule
Satellite Server には Capsule が統合されており、Satellite Server に直接接続されたホストは、以下の表のコンテキストでは Satellite のクライアントになります。これには、Capsule Server が実行されているベースシステムが含まれます。
Capsule のクライアント
Satellite と統合された Capsule ではなく、Capsule のクライアントであるホストには、Satellite Server へのアクセスが必要ありません。Satellite トポロジーの詳細は『Red Hat Satellite 6 のプランニング』の「Capsule ネットワーク」を参照してください。
使用している設定に応じて、必要なポートは変わることがあります。
表1.2 Capsule に通信するクライアント向けポート
ポート | プロトコル | サービス | 用途 |
---|---|---|---|
80 |
TCP |
HTTP |
Anaconda、yum、および Katello 証明書アップデートの取得向け |
443 |
TCP |
HTTPS |
Anaconda、yum、Telemetry サービス、および Puppet |
5647 |
TCP |
amqp |
Capsule の Qpid ディスパッチルータと通信する Katello エージェント |
8000 |
TCP |
HTTPS |
キックスタートテンプレートをホストにダウンロードする Anaconda、iPXE ファームウェアのダウンロード向け |
8140 |
TCP |
HTTPS |
マスター接続に対する Puppet エージェント |
8443 |
TCP |
HTTPS |
サブスクリプション管理サービスおよび Telemetry サービス |
9090 |
TCP |
HTTPS |
Capsule のスマートプロキシーへの SCAP レポートの送信、プロビジョニング中の検出イメージ向け |
5000 |
TCP |
HTTPS |
Docker レジストリーのための Katello への接続 |
53 |
TCP および UDP |
DNS |
Capsule の DNS サービスに問い合わせるクライアント DNS (オプション) |
67 |
UDP |
DHCP |
Capsule ブロードキャストと、Capsule からプロビジョニングするクライアントに対する DHCP ブロードキャストを行うクライアント (オプション) |
69 |
UDP |
TFTP |
プロビジョニングのために Capsule から PXE ブートイメージファイルをダウンロードするクライアント (オプション) |
表1.3 Satellite に通信する Capsule 向けポート
ポート | プロトコル | サービス | 用途 |
---|---|---|---|
80 |
TCP |
HTTP |
Anaconda、yum、および Katello 証明書アップデートの取得向け |
443 |
TCP |
HTTPS |
Katello、Foreman、Foreman API、および Pulp への接続 |
5646 |
TCP |
amqp |
Capsule の Qpid ディスパッチルーターから Satellite の Qpid ディスパッチルーターへの通信 |
5647 |
TCP |
amqp |
Satellite の Qpid ディスパッチルーターと通信する Katello エージェント |
5000 |
TCP |
HTTPS |
Docker レジストリーのための Katello への接続 |
表1.4 クライアントに通信する Capsule 向けポート
ポート | プロトコル | サービス | 用途 |
---|---|---|---|
7 |
TCP および UDP |
ICMP |
DHCP Capsule からクライアントネットワークへ、IP アドレスが空きであることを確認するために ICMP ECHO を送信 (オプション) |
68 |
UDP |
DHCP |
クライアントブロードキャストと、Capsule からプロビジョニングするクライアントに対する DHCP ブロードキャストを行うクライアント (オプション) |
8443 |
TCP |
HTTP |
プロビジョニング中に検出済みホストに送信する Capsule からクライアントへの "reboot" コマンド (オプション) |
Satellite Server に直接接続された管理対象ホストは、統合された Capsule のクライアントとなるため、このコンテキストではクライアントになります。これには、Capsule Server が稼働しているベースシステムが含まれます。
表1.5 オプションのネットワークポート
ポート | プロトコル | サービス | 用途 |
---|---|---|---|
22 |
TCP |
SSH |
Remote Execution (Rex) および Ansible 向けの Satellite および Capsule からの通信 |
7911 |
TCP |
DHCP |
|
DHCP Capsule は ICMP ECHO を送信して、IP アドレスが空であることを確認します。応答なし などが返されるはずです。ICMP はネットワークベースのファイアウォールで切断される場合がありますが、どのような 応答でも IP アドレスの割り当てが妨げられます。
1.5. Satellite Server およびクライアントから Capsule Server への接続の有効化
Satellite Server およびクライアントから Capsule Server への受信接続を有効にし、再起動後にこれらのルールが保持されるようにすることができます。外部の Capsule Server を使用しない場合は、この接続を有効にする必要はありません。
使用されるポートの詳細は「ポートとファイアウォールの要件」を参照してください。
Capsule をインストールするベースシステムにファイアウォールを設定します。
# firewall-cmd --add-port="53/udp" --add-port="53/tcp" \ --add-port="67/udp" --add-port="69/udp" \ --add-port="80/tcp" --add-port="443/tcp" \ --add-port="5000/tcp" --add-port="5647/tcp" \ --add-port="8000/tcp" --add-port="8140/tcp" \ --add-port="8443/tcp" --add-port="9090/tcp"
変更を永続化します。
# firewall-cmd --runtime-to-permanent
1.6. ファイアウォール設定の確認
firewall-cmd
コマンドを使用して、ファイアウォール設定の変更を確認できます。
ファイアウォール設定の確認
# firewall-cmd --list-all
詳細情報は、『Red Hat Enterprise Linux 7 セキュリティーガイド』の「firewalld の概要」を参照してください。