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リリースノート

Red Hat OpenStack Platform 9

Red Hat OpenStack Platform 9 リリースの詳細

OpenStack Documentation Team

Red Hat Customer Content Services

概要

本書には、Red Hat OpenStack Platform の主要機能、機能拡張、既知の問題について記載します。

第1章 はじめに

Red Hat OpenStack Platform は、Red Hat Enterprise Linux をベースとして、プライベートまたはパブリックの Infrastructure-as-a-Service (IaaS) クラウドを構築するための基盤を提供します。これにより、スケーラビリティーが極めて高く、耐障害性に優れたプラットフォームをクラウド対応のワークロード開発にご利用いただくことができます。
現在、Red Hat のシステムは、OpenStack Mitaka をベースとして、利用可能な物理ハードウェアをプライベート、パブリック、またはハイブリッドのクラウドプラットフォームに変換できるようにパッケージされています。これには以下のコンポーネントが含まれます。
  • 完全に分散されたオブジェクトストレージ
  • 永続的なブロックレベルのストレージ
  • 仮想マシンのプロビジョニングエンジンおよびイメージストレージ
  • 認証および認可メカニズム
  • 統合されたネットワーク
  • ユーザーおよび管理用の Web ブラウザーベースの GUI
Red Hat OpenStack Platform IaaS クラウドは、コンピューティング、ストレージ、ネットワークのリソースを制御する連結されたサービスのコレクションにより実装されます。クラウドは、Web ベースのインターフェースで管理されます。これにより、管理者は OpenStack リソースの制御、プロビジョニング、自動化を行うことができます。また、OpenStack のインフラストラクチャーは、クラウドのエンドユーザーも利用することができる豊富な API で円滑に運用されます。

1.1. 本リリースについて

Red Hat OpenStack Platform の本リリースは、OpenStack「Mitaka」リリースをベースとしており、Red Hat OpenStack Platform 固有の追加機能や既知の問題、解決済みの問題が含まれています。
本書には、Red Hat OpenStack Platform 固有の変更のみを記載しています。OpenStack「Mitaka」のリリースノートは、https://wiki.openstack.org/wiki/ReleaseNotes/Mitaka で参照してください。
Red Hat OpenStack Platform は、他の Red Hat 製品が提供するコンポーネントを使用します。これらのコンポーネントのサポートに関する詳しい情報は、以下のリンクを参照してください。
Red Hat OpenStack Platform を評価するには、以下のリンク先で登録してください。

注記

Red Hat Enterprise Linux High Availability Add-On は、Red Hat OpenStack Platform の各種ユースケースで利用することができます。このアドオンに関する詳細情報は、http://www.redhat.com/products/enterprise-linux-add-ons/high-availability/ で参照してください。また、Red Hat OpenStack Platform と併用できるパッケージバージョンに関する情報は、https://access.redhat.com/ja/solutions/2137271 を参照してください。

1.2. 要件

本バージョンの Red Hat OpenStack Platform は、Red Hat Enterprise Linux 7.2 ベースでサポートされています。
Red Hat OpenStack Platform の Dashboard は、OpenStack のリソースやサービスを管理することができる Web ベースのインターフェースです。本リリースの Dashboard は、以下の Web ブラウザーの最新安定版をサポートします。
  • Chrome
  • Firefox
  • Firefox ESR
  • Internet Explorer 11 以降 (互換モード が無効な場合)

1.3. デプロイメント制限事項

Red Hat OpenStack Platform のデプロイメント制限事項の一覧は、「Deployment Limits for Red Hat OpenStack Platform」の記事を参照してください。

1.4. データベースサイズの管理

Red Hat OpenStack Platform 環境内における MariaDB データベースのサイズの維持管理に関する推奨プラクティスは、「Database Size Management for Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」の記事を参照してください。

1.5. 認定済みのドライバーとプラグイン

Red Hat OpenStack Platform の認定済みドライバー/プラグインの一覧は、「Component, Plug-In, and Driver Support in Red Hat OpenStack Platform」の記事を参照してください。

1.6. 認定済みゲストオペレーティングシステム

Red Hat OpenStack Platform の認定済みゲストオペレーティングシステムの一覧は、「Certified Guest Operating Systems in Red Hat OpenStack Platform and Red Hat Enterprise Virtualization」の記事を参照してください。

1.7. ハイパーバイザーのサポート

Red Hat OpenStack Platform は、 libvirt ドライバー (コンピュートノード上で KVM をハイパーバイザーとして使用) または VMware vCenter ハイパーバイザードライバーと共に使用する場合のみがサポート対象となります。VMware vCenter ドライバーの設定については、『VMware 統合ガイド』を参照してください。現在サポートされている VMware の構成は、Red Hat OpenStack Platform と vCenter で、Neutron/NSX または Neutron/Nuage のいずれかの組み合わせで提供されるネットワークを使用します。Neutron/Nuage に関する詳しい説明は、https://access.redhat.com/articles/2172831 の記事を参照してください。
Ironic は、Red Hat OpenStack Platform 7 (Kilo) リリースから完全にサポートされています。Ironic により、一般的なテクノロジー (PXE ブートや IPMI) を使用したベアメタルマシンのプロビジョニングが可能となり、多様なハードウェアに対応する一方で、ベンダー固有の機能を追加するためのプラグ可能なドライバーをサポートすることができます。
Red Hat は、非推奨の VMware の「direct-to-ESX」ハイパーバイザーや KVM 以外の libvirt ハイパーバイザーなど、他の Compute 仮想化ドライバーに対するサポートは提供していません。

1.8. コンテンツ配信ネットワーク (CDN) チャンネル

本項では、Red Hat OpenStack Platform 9 のデプロイに必要なチャンネルおよびリポジトリーの設定について説明します。
コンテンツ配信ネットワーク (CDN) から Red Hat OpenStack Platform 9 をインストールすることができます。そのためには、正しいチャンネルを使用するように subscription-manager を設定します。
CDN チャンネルを有効にするには、以下のコマンドを実行します。
#subscription-manager repos --enable=[reponame]
CDN チャンネルを無効にするには、以下のコマンドを実行します。
#subscription-manager repos --disable=[reponame]

表1.1 必須チャンネル

チャンネル リポジトリー名
Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMS) rhel-7-server-rpms
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - RH Common (RPMs) rhel-7-server-rh-common-rpms
Red Hat Enterprise Linux High Availability (for RHEL 7 Server) rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms
Red Hat OpenStack Platform 9 for RHEL 7 (RPMs) rhel-7-server-openstack-9-rpms
Red Hat OpenStack Platform 9 director for RHEL 7 (RPMs) rhel-7-server-openstack-9-director-rpms
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - Extras (RPMs) rhel-7-server-extras-rpms

表1.2 任意チャンネル

チャンネル リポジトリー名
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - Optional rhel-7-server-optional-rpms
Red Hat OpenStack Platform 9 Operational Tools for RHEL 7 (RPMs) rhel-7-server-openstack-9-optools-rpms
無効にするチャンネル

以下の表には、Red Hat OpenStack Platform 9 が正常に機能するために無効にする必要のあるチャンネルをまとめています。

表1.3 無効にするチャンネル

チャンネル リポジトリー名
Red Hat CloudForms Management Engine "cf-me-*"
Red Hat Enterprise Virtualization "rhel-7-server-rhev*"
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - Extended Update Support "*-eus-rpms"

警告

Red Hat OpenStack Platform のリポジトリーは、Extra Packages for Enterprise Linux (EPEL) ソフトウェアリポジトリーで提供されているパッケージと競合する場合があります。EPEL ソフトウェアリポジトリーを有効にしているシステムでの Red Hat OpenStack Platform の使用はサポートされていません。

1.9. 製品サポート

以下のリソースをご利用いただけます。
カスタマーポータル
Red Hat カスタマーポータルでは、OpenStack デプロイメントのプランニング、デプロイ、メンテナンスを支援するために、以下のような幅広いリソースを提供しています。
  • ナレッジベース記事およびソリューション
  • テクニカルブリーフ
  • 製品マニュアル
  • サポートケース管理
カスタマーポータルには https://access.redhat.com/ からアクセスしてください。
メーリングリスト
Red Hat は、OpenStack ユーザーに適した公開メーリングリストを提供しています。
  • rhsa-announce メーリングリストは、Red Hat OpenStack Platform など、全 Red Hat 製品のセキュリティー関連の修正リリースに関する通知を提供します。
    https://www.redhat.com/mailman/listinfo/rhsa-announce からサブスクライブしてください。

第2章 最も重要な新機能

本項には、Red Hat OpenStack Platform の今回のリリースにおける最も重要な新機能について概説します。

2.1. Red Hat OpenStack Platform director

本項には、director の最も重要な新機能について説明します。
オーバークラウドデプロイメント上の OpenStack Telemetry (ceilometer) への変更
OpenStack Platform 9 director でデプロイしたオーバークラウドでは、OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi) および OpenStack Telemetry Alarming (aodh) の新しいコンポーネントを使用するようになりました。
オーバークラウドデプロイメント上の OpenStack Identity (keystone) への変更
Red Hat OpenStack Platform 9 director でデプロイしたオーバークラウドでは、OpenStack Identity (keystone) をスタンドアロンのサービスではなく「httpd」下の WSGI アプリケーションとして設定するようになりました。この変更は、サービスのセキュリティー強化を目的としています。
オーバークラウドデプロイメントに含まれる OpenStack Clustering (sahara)
Red Hat OpenStack Platform 9 director でデプロイしたオーバークラウドに OpenStack Clustering (sahara) が含まれるようになりました。
Red Hat OpenStack Platform 8 から 9 へのオーバークラウドのアップグレード
Red Hat OpenStack Platform director は、オーバークラウドを Red Hat OpenStack Platform 9 にアップグレードする機能を提供します。これには、OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi)、OpenStack Telemetry Alarming (aodh)、OpenStack Clustering (sahara) などの新規コンポーネントのインストールが含まれます。また、アップグレードプロセスにより、OpenStack Identity (keystone) サービスは、スタンドアロンのサービスとしてではなく、「httpd」下の WSGI アプリケーションとして稼働するための変更も行われます。
Red Hat OpenStack 8 に対する後方互換性
Red Hat OpenStack Platform 9 director では、Red Hat OpenStack Platform 8 を使用するオーバークラウドを管理することが可能です。このため、アンダークラウドのホストを最新のバージョンにアップグレードしても、以前のバージョンのオーバークラウドを引き続き管理できます。これは、Red Hat OpenStack Platform のコア製品よりもライフサイクルの短い director のライフサイクルのサポートに役立ちます。

2.2. Block Storage

本項には、Block Storage サービスの最も重要な新機能について説明します。
スナップショットのバックアップ
スナップショットのバックアップが可能となり、追加のデータ保護層が提供されるようになりました。
ボリュームのレプリケーションの向上 (API v2.1)
レプリケーション API で、ボリュームごとのレプリケーションが可能となりました。ハードウェアの障害発生時に、ホストされている全ボリュームがセカンダリーデバイスにフェイルオーバーするように、ストレージバックエンド全体を設定することができます。
Dashboard を使用したボリュームの暗号化
Dashboard を使用してボリュームの暗号化を管理できるようになりました。

2.3. Compute

本項には、Compute サービスの最も重要な新機能について説明します。
libosinfo からの Libvirt ハードウェアポリシー
オペレーティングシステムの情報のデータベース (libosinfo) を使用することにより、ゲストのパフォーマンスが最適化されるようになりました。このデータベースには、オペレーティングシステムおよびサポートしている仮想ハードウェアについてのメタデータが格納されています。libosinfo との統合により、ユーザーは os_name イメージプロパティーをオペレーティングシステムの有効な短い ID (例: rhel7、winxp など) または URI に設定することができます。これで、Compute サービスは、ゲストのオペレーティングシステムのその他のオプションプロパティーを自動的に確認することができるので、各ゲストに手動で設定する必要のあるプロパティーの数が削減されます。
パフォーマンスに基づいた、NFV および HPC のワークロードの配置ポリシー
以前のリリースでは、専用の CPU リソースと NUMA トポロジーに対応したインスタンスに対するサポートが追加されました。この機能は、デフォルトでは、Simultaneous multithreading (SMT) を使用する仮想 CPU には兄弟スレッド (利用可能な場合) を優先的に使用します。今回のリリースでは、この動作はイメージのプロパティーとフレーバーの追加仕様で設定できるようになりました。
  • prefer: デフォルトの設定。ゲストの仮想 CPU は、兄弟スレッド (利用可能な場合) に優先的に配置されます。ホストの SMT サポートの有無は問いません。
  • isolate: スレッドを分離され、ゲストの仮想 CPU を異なる物理コアに配置します。SMT 対応のシステムでは、それらのコアには別のゲストの仮想 CPU が配置されないようにしてください。
  • require: 兄弟スレッドの使用を強制します。ホストには SMT サポートが必要です。

2.4. Identity

本項には、Identity サービスの最も重要な新機能について説明します。
フェデレーション
今回のリリースでは、フェデレーションのサポートが追加され、Red Hat OpenStack Platform 環境で、既存の認証プロバイダーその環境内のリソースにアクセスできるように設定することが可能となりました。
Apache HTTPD における Identity サービス
今回の更新で、Red Hat OpenStack Platform director は Apache 下で WSGI を使用して Identity サービスを実行するように設定するようになりました。その結果、Identity サービスは eventlet としてではなく、Apache HTTPD サービス下で実行されるようになりました。

2.5. Image サービス

本項には、Image サービスの最も重要な新機能について説明します。
イメージの署名と信頼性の向上
今回のリリースでは、Image service の認証トークンの処理が改善され、信頼済みのユーザーからのイメージのアップロードが正しく処理されるようになりました。以前のリリースでは、イメージのアップロード中にユーザーの認証トークンの期限が切れてアップロードが失敗する場合がありました。
ボリュームバックエンドのアップロード/ダウンロード
Object Storage での保管と同じ方法で、Block Storage ボリュームからイメージのアップロードおよびダウンロードができるようになりました。

2.6. OpenStack Networking

本項には、Networking サービスの最も重要な新機能について説明します。
QoS ポリシーのロールベースのアクセス制御 (RBAC)
本リリースでは、QoS ポリシーのロールベースアクセス制御 (RBAC) が追加され、QoS ポリシーを特定のプロジェクトに適用できるようになりました。たとえば、優先度の低いネットワークトラフィックを許可する QoS ポリシーを作成して、特定のプロジェクトにのみ適用することが可能です。
外部ネットワーク向けの RBAC
RBAC フレームワークを使用して外部ネットワークを制御できるようになりました。これにより、ネットワークは全テナントではなく特定のテナントが利用できるようにすることができるので、ルーターと Floating IP の外部ゲートウェイとして使用することができます。
プロジェクトのネットワークの完全削除
以前のリリースでは、ネットワーク、ルーター、ポートなど、過去にプロジェクトに割り当てられた古いリソースがプロジェクトの削除後にも残っている場合がありました。これらの古いリソースは、手動で削除する必要があり、その際には削除する順序を間違わないように注意する必要もありました。Red Hat OpenStack Platform 9 ではこの問題に対処し、特定のプロジェクトに以前に割り当てられた neutron リソースを手動で削除する代わりに、neutron purge コマンドですべて削除できるようになりました。
タイムスタンプのフィールド
Neutron のコアリソースであるネットワーク、サブネット、ポートにタイムスタンプのフィールドが追加されました。これにより、より強力なシステム監視オプションが提供され、特定の期間を指定して Neutron の情報を問い合わせることができるようになりました。
説明のフィールド
セキュリティーグループのルール、ネットワーク、ポート、ルーター、Floating IP にオプションの説明フィールドが追加されました。これにより、ユーザーはそれらのエンティティーについての情報を保管することができます。

2.7. Telemetry

本項には、Telemetry サービスの最も重要な新機能について説明します。
Gnocchi の統合
Gnocchi は ceilometer に完全に統合され、バックエンドとしてフルサポートされるようになりました。Gnocchi バックエンドを設定すると、データアクセス時の ceilometerの応答時間が向上します。
ceilometer Alarm に代わる Aodh
アラーム機能には、別個の Aodh プロジェクトが使用されるようになりました。Red Hat OpenStack Platform 8 から 9 にアップグレードするデプロイメントは、自動的に移行されます。

2.8. 高可用性

本項には、高可用性の最も重要な新機能について説明します。
Keystone の制約の除去
今回のリリースでは、Keystone に対する Pacemaker の制約がなくなりました。その結果、Keystone はOpenStack サービスの可用性に影響を及ぼすことなく起動/停止/再起動ができるようになりました。また、Keystone サービスのステータスに依存することなく、OpenStack のサービスを起動/停止/再起動することも可能となりました。

2.9. その他の機能

Fast-POST (Object Storage) でのコンテナーの更新
この機能により、オブジェクトのコンテンツを完全に再コピーする必要なく、メタデータを高速かつ効率的に更新することができます。
プラグインサポートの更新とデプロイメントの向上 (Data Processing)
director を使用して OpenStack Data Processing サービス (sahara) の迅速なデプロイメントと自動アップグレードができるようになりました。また、このサービスは、CDH 5.5.0 プラグインをサポートするようになりました。
高可用性のユーザビリティーの向上
Identity サービスに対する Pacemaker の制約がなくなり、Identity サービスは、他の OpenStack サービスの可用性に影響を及ぼすことなく、起動/停止/再起動できるようになりました。また、Identity サービスのステータスに依存することなく、OpenStack サービスの起動/停止/再起動も可能となりました。

2.10. テクノロジープレビュー

本項では、Red Hat OpenStack Platform 9 のテクノロジープレビュー機能について説明します。

注記

テクノロジープレビューと記した機能のサポート範囲についての詳しい情報は、「テクノロジプレビュー機能のサポート範囲」 を参照してください。

2.10.1. 新規テクノロジープレビュー

以下の新機能はテクノロジープレビューとして提供されます。
Google Cloud Storage バックアップドライバー (Block Storage)
Block Storage サービスで、ボリュームのバックアップの保管に Google Cloud Storage を使用するように設定できるようになりました。この機能は、多額な費用のかかるセカンダリークラウドを単に災害復旧の目的で維持管理する方法の代わりとなるオプションを提供します。
Shared File System サービス
Shared File System サービス (manila) は、引き続きテクノロジープレビューとして同梱されています。今回のリリースでは、以下のドライバーでサービスをテストすることができます。
  • NetApp (manila.share.drivers.netapp.common.NetAppDriver)
  • CephFS ネイティブドライバー (manila.share.drivers.cephfs.cephfs_native.CephFSNativeDriver)
新しい CephFS ネイティブドライバーにより、Shared File System サービスは、Ceph ネットワークプロトコルを使用して、共有用の CephFS ファイルシステムをゲストにエクスポートします。このファイルシステムをマウントするには、インスタンスに Ceph クライアントをインストールしておく必要があります。CephFS ファイルシステムも、Red Hat Ceph Storage 2.0 にテクノロジープレビューとして同梱されています。
保管中のデータの暗号化 (Object Storage)
暗号化された形式 (CTR モード、鍵長 256 ビットの AES を使用) でオブジェクトを保管できるようになりました。この機能は、オブジェクトを保護して、Object Storage クラスター内でセキュリティーコンプライアンスを維持するためのオプションを提供します。
OpenDaylight Beryllium SR2
今回のリリースでは、OpenDaylight Beryllium SR2 がテクノロジープレビューとして提供されるようになりました。
Red Hat SSO
今回のリリースには、keycloak-httpd-client-install パッケージのバージョンが 1 つ含まれています。このパッケージは、Apache mod_auth_mellon SAML Service Provider を Keycloak SAML IdP のクライアントとして設定するのに役立つコマンドラインツールを提供します。

2.10.2. 以前にリリースされたテクノロジープレビュー

以下の機能は引き続きテクノロジープレビューとして提供しています。
セル
OpenStack Compute には、コンピュートリソースを分割するために nova-cells パッケージにより提供されるセルの概念が採用されています。セルに関する詳しい情報は、「Schedule Hosts and Cells」を参照してください。
また、Red Hat OpenStack Platform は、リージョン、アベイラビリティーゾーン、ホストアグリゲートという Red Hat OpenStack Platform 内のコンピュートリソースを分割する方法を完全にサポートしています。詳しくは「Manage Host Aggregates」を参照してください。
分散仮想ルーティング
Distributed Virtual Routing (DVR) により、L3 ルーターを Compute ノードに直接配置することができます。これにより、インスタンスのトラフィックは、初めにネットワークノード経由でルーティングする必要なく、コンピュートノード間 (East-West、水平方向) で転送されます。
DNS-as-a-Service (DNSaaS)
Red Hat OpenStack Platform 8 以降のバージョンには、Designate としても知られる DNS-as-a-Service (DNSaaS) のテクノロジープレビューが含まれています。DNSaaS にはドメインとレコードの管理のための REST API が実装されており、マルチテナントに対応しています。また DNSaaS は OpenStack Identity サービス (keystone) と統合して認証を行います。さらに DNSaaS には Compute (nova) および OpenStack Networking (neutron) の通知と統合するフレームワークが実装されており、DNS レコードの自動生成が可能です。DNSaaS は PowerDNS および Bind9 の統合もサポートしています。
Erasure Code (EC)
Object Storage サービスには、アクセス頻度の低いデータを大量に格納するデバイスを対象に EC ストレージポリシータイプが実装されています。EC ストレージポリシーは、データの可用性を維持しつつコストとストレージの要件を低減する (必要なキャパシティーはトリプルレプリケーションの約 1/3 )、独自のリングと設定可能なパラメーターセットを使用します。EC にはより多くの CPU およびネットワークリソースが必要なため、EC をポリシーとして実装すると、クラスターの EC 機能に関連付けられた全ストレージデバイスを分離することができます。
File Share サービス
OpenStack File Share サービスは、OpenStack の共有ファイルシステムのプロビジョニングと管理を行うための、シームレスで簡単な方法を提供します。プロビジョニング後はこれらの共有ファイルシステムをインスタンスでセキュアに使用 (マウント) することができます。File Share サービスは、プロビジョニングした共有を堅牢に管理することも可能で、クォータの設定、アクセスの設定、 スナップショットの作成、その他の役立つ管理タスクを実行する手段を提供します。
Firewall-as-a-Service (FWaaS)
Firewall-as-a-Service プラグインは、OpenStack Networking (neutron) に境界ファイアウォール管理機能を提供します。FWaaS は iptables を使用して、ファイアウォールポリシーをプロジェクト内の全仮想ルーターに適用し、1 プロジェクトあたりで 1 つのファイアウォールポリシーと論理ファイアウォールインスタンスをサポートします。FWaaS は、OpenStack Networking (neutron) ルーターでトラフィックをフィルタリングすることによって境界で稼働します。インスタンスレベルで稼働するセキュリティーグループとは、この点が異なります。
運用ツール
運用ツールとは、トラブルシューティングを円滑に行うためのロギング/モニタリングツールです。一元化された、使いやすい分析/検索ダッシュボードにより、トラブルシューティングが簡素化され、サービスの可用性チェック、閾値警報管理、データの収集/グラフ表示などの機能が利用できるようになりました。
VPN-as-a-Service (VPNaaS)
VPN-as-a-Service により、OpenStack 内でVPN 接続を作成/管理することができます。
Benchmarking サービス

Rally は、マルチノードの OpenStack デプロイメント、クラウドの検証、ベンチマーキング、およびプロファイリングを自動化/統合するためのベンチマーキングツールです。SLA、パフォーマンス、および安定性を継続的に向上させる OpenStack CI/CD システム向けの基本ツールとして使用することができます。Rally は、以下のコアコンポーネントで構成されます。
  1. サーバープロバイダー: 異なる仮想化テクノロジー (LXS、Virsh など) およびクラウドサプライヤーと対話するための統合インターフェースを提供します。ssh アクセスを介して、1 つの L3 ネットワーク内で対話を行います。
  2. デプロイエンジン: サーバープロバイダーから取得したサーバーを使用して、ベンチマーキングの手順が実行される前に OpenStack ディストリビューションをデプロイします。
  3. 検証: デプロイしたクラウドに対して特定のテストセットを実行して正しく機能するかどうかを確認し、結果を収集してから人間が判読可能な形式で提示します。
  4. ベンチマークエンジン: パラメーター化されたベンチマークシナリオの書き込みを許可し、クラウドに対して実行します。
DPDK Accelerated Open vSwitch
Data Plane Development Kit (DPDK) は、ライブラリーのセットとユーザー空間ドライバーで構成されます。このキットは、パケットの処理を迅速化し、アプリケーションが NIC と直接やりとりして独自のパケット処理を実行できるようにします。特定のユースケースでは、最大でワイヤースピードのパフォーマンスを実現します。また、OVS+DPDK により、Open vSwitch のパフォーマンスが大幅に向上するとともに、中核的な機能が維持されます。ホストの物理 NIC からゲストインスタンス内のアプリケーションへ (およびゲストインスタンス間) のパケットの切り替えがほぼすべてユーザー空間で処理できるようになります。
本リリースでは、OpenStack Networking (neutron) OVS プラグインが更新されて、OVS+DPDK バックエンドの設定をサポートするようになりました。OpenStack プロジェクトでは、neutron API を使用してネットワーク、サブネット、およびその他のネットワークコンストラクトをプロビジョニングする一方で、OVS+DPDK を使用してインスタンスのネットワークパフォーマンスを向上させます。
OpenDaylight の統合
Red Hat OpenStack Platform 8 以降のバージョンでは、OpenDaylight SDN コントローラーとの統合がテクノロジープレビューとして提供されるようになりました。OpenDaylight は、多数の異なるアプリケーションをサポートする、柔軟性の高いモジュール型のオープン SDN プラットフォームです。Red Hat OpenStack Platform 8 に導入されている OpenDaylight のディストリビューションは、OVSDB NetVirt を使用する OpenStack デプロイメントをサポートするために必要なモジュールに限定されており、アップストリームの Beryllium バージョンをベースとしています。テクノロジープレビューを提供しているのは、opendaylight および networking-odl のパッケージです。
リアルタイム KVM の統合

Compute サービスにリアルタイム KVM が統合されたことにより、ホストの CPU で実行されているカーネルタスクなどを原因とする CPU のレイテンシーによる影響が軽減され、CPU ピニングが提供する仮想 CPU スケジューリングの保証がさらに強化されました。この機能は、CPU のレイテンシー短縮の重要度が高いネットワーク機能仮想化 (NFV) などのワークロードには極めて重要です。
コンテナー化されたコンピュートノード

Red Hat OpenStack Platform director には、OpenStack のコンテナー化プロジェクト (Kolla) のサービスとオーバークラウドのコンピュートノードを統合する機能があります。これには、Red Hat Enterprise Linux Atomic Host をベースのオペレーティングシステムや個別のコンテナーとして使用して、異なる OpenStack サービスを実行するコンピュートノードを作成する機能が含まれます。

第3章 リリースの情報

本リリースノートは主に、今回リリースされた Red Hat OpenStack Platform のデプロイメント中に考慮すべきテクノロジープレビューの項目、推奨事項、既知の問題、非推奨となった機能について記載しています。
Red Hat OpenStack Platform の本リリースのサポートライフサイクル中にリリースされたアップデートについての注記は、各アップデートに付属のアドバイザリーテキスト、または『Red Hat OpenStack Platform Technical Notes』に記載されます。このドキュメントは以下のページから入手できます。

3.1. 機能拡張

Red Hat OpenStack Platform の今回のリリースでは、以下の機能拡張が提供されています。
BZ#1238592
以前のリリースでは、「nova list」コマンドを実行すると、コンピュートノードで障害が発生したインスタンスも実行中として表示されていました。今回のリリースでは、インスタンスの状態はホストするコンピュートノードが停止した場合には更新されるようになったため、ユーザーは「nova list」の出力をアップタイムのモニタリングで信頼できるようになりました。
BZ#1183796
Ceph ベースの一時ディスクのスナップショットには、RBD ベースのスナップショットとクローン作成が使用されるようになりました。今回の更新では、データがノード間で転送されるのではなく、Ceph サーバー内で操作されるため、Ceph のスナップショット作成のパフォーマンスが改善されます。
BZ#1316599
今回の機能拡張により、コンテナーまたはアカウントサーバーにオブジェクトのリストを逆の順序にするように指示する機能が追加されました。この機能により、ミドルウェア内のバージョン付きのオブジェクトを特定することができます。
その結果、内部のアーキテクチャーが安全上の理由で再編成されるのに加えて、必要な場合にはクライアントアプリケーションに逆順のリストを提供できます。
BZ#1316594
今回の機能拡張により、レプリカの配置が改善され、割り当てが重複しないように保護されるようになりました。
この機能は、従来の Swift レイアウトでは、単一のパーティションの 2 つのレプリカを同じデバイスに間違って割り当てると、耐久性が暗黙のうちに損なわれていたために追加されました。
その結果、割り当ての重複は防がれるようになり、計算済みの耐久性保証が守られるようになりました。ただし、そのためにはデバイスの数がレプリカの数よりも少なくならないようにする必要があるため、特定の誤った古いリングを無効と見なすことができるので、レプリカの数よりもゾーン数を少なくすることが引き続き可能です。
BZ#1300417
今回の更新で、新たに機能が拡張され、「OS::Neutron::ProviderNet」リソースに新たなブール型プロパティー「router_external」が追加されました。このオプションにより、テンプレートの作成者は、ネットワークに外部ルーターを含むかどうかを指定することができます。
BZ#1170372
今回の更新で、Keystone の eventlet システムがアップストリームで非推奨となりました。
Red Hat OpenStack Platform director は Keystone が Apache 下で WSGI を使用して実行するように設定するようになりました。この変更は、Keystone デプロイメントは WSGI 内で実行することを Keystone プロジェクトが推奨していることが理由で適用されました。
その結果、Keystone サービスは、Apache httpd サービス下で実行されるようになりました。
BZ#1325673
今回の更新で、QoS ポリシーのロールベースアクセス制御 (RBAC) が追加され、QoS ポリシーを特定のプロジェクトに適用できるようになりました。たとえば、優先度の低いネットワークトラフィックを許可する QoS ポリシーを作成して、特定のプロジェクトにのみ適用することが可能です。
BZ#1327866
今回の更新で、新たに機能が拡張され、Bare Metal Provisioning サービスがイメージをデプロイするのに適したディスクデバイスを名前またはパスを使用して特定できるようになりました。一部のデバイスには、永続名 (例: RAID) があります。この新機能により、オペレーターはディスクの WWN、シリアル、モデル名などを使用する代わりに、デバイスの永続名を使用することができます。
BZ#1337755
今回の機能拡張で、iSCSI ドライバーのインバンドクリーニングがサポートされるようになりました。iSCSI ドライバーを使用して、ディスクの消去やインバンド RAID 設定などのクリーニングステップをノードで実行することができます。
クリーニングステップを実行することにより、ironic でノードをリサイクルする際にセキュリティーが強化され、以前のテナントからの全データを消去したり、マシンのセキュリティーが侵害されていないかどうかをチェックしたりすることができます。
その結果、pxe_ipmitool、pxe_drac、pxe_iboot、pxe_ilo、pxe_amt、pxe_wol、その他のドライバーでインバンドクリーニングステップを実行することができるようになりました。
BZ#1339762
今回の更新により、Aodh API 用のクライアントが提供されるようになりました。このクライアントは、「aodhclient」で提供されている Python API と、「aodh」コマンドとしてインストールされるコマンドラインスクリプトで構成されます。Python API とコマンドラインスクリプトの両方で、Aodh API 全体が実装されます。
BZ#1348905
今回の機能拡張により、CPU が固定されているインスタンスを退避すると、すでに同じピニング設定のインスタンスを処理しているハイパーバイザーでホストされるようになりました。
この機能は、リソーストラッカーではホスト上の CPU ピニングがトラッキングされないために追加されました。
その結果、NUMATopologyFilter フィルターには、退避させるインスタンスと同じ CPU ピニング設定のインスタンスをすでに管理するホストを渡すという条件が追加されました。
BZ#1348606
Red Hat OpenStack Platform 9 に python-wsgi_intercept パッケージが追加されました。
このパッケージは、ptyhon-gabbi のインストールの依存関係にあり、同様にopenstack-gnocchi には ptyhon-gabbi が必要です。
その結果、openstack-gnocchi と python-gabbi は依存関係のエラーが発生することなくインストールできるようになりました。
BZ#1337648
CDH バージョン 5.5 は CDH プラグインのパッケージ済みバージョンで利用できるようになり、デフォルトで有効化されます。
BZ#1334469
今回のリリースでは、Heat で「map_merge」機能がサポートされています。この機能により、ユーザーは複数のマップをマージして、その値でマージする前の値を上書きすることができます。これは、設定データを含むマップで単一の統合されたマップを構成する場合に役立ちます。

詳しい説明は、http://docs.openstack.org/developer/heat/template_guide/hot_spec.html#map-merge を参照してください。
BZ#1365175
OpenDaylight OpenStack neutron ドライバーは、neutron プロジェクトから分離され、新たなパッケージ python-networking-odl に移動しました。このドライバーの最新バージョンは、引き続き Red Hat OpenStack Platform インストール環境の一部として使用することができます。
BZ#1337762
今回の機能拡張により、エージェントドライバー (「agent_」というプレフィックスが付いたドライバー) でパーティションイメージをデプロイすることができるようになりました。
この機能は、OpenStack Bare Metal Provisioning (ironic) 内の全ドライバーが完全なディスクイメージ (ブートローダーおよびその他のプロパティーを含むパーティションテーブルを格納するイメージ) をデプロイ可能にする必要があるために追加されました。これには、root ファイルシステムを使用するイメージであるパーティションイメージも含まれます。
その結果、エージェントドライバーはパーティションイメージと完全なディスクイメージをデプロイすることができるようになりました。
BZ#1347347
OpenStack Data Processing サービス (sahara) が OSP director  でデプロイできるようになりました。現在のリリースは、Sahara を全コントローラーノードにデプロイして利用できるようにします。OSP director に Sahara が統合されている最初のリリースであるため、サービスの設定は最小限ですが、インストーラーに追加の負担がかからないようにもなっています。Sahara はオーバークラウドのコントローラーノードでデフォルトで有効化されます。
BZ#1228451
今回の更新で、アベイラビリティーゾーンは、DHCP やルーターなどのサービスを実行するネットワークノードをグループ化するようになりました。これは、ネットワークノード上のエージェントの属性として定義され、ネットワークリソースを高可用性に設定するのに使用されます。オペレーターは、異なるアベイラビリティーゾーン下の異なる電源に接続されたノードをグループ化して、 リソースのスケジューリングを高可用性で設定すると、それらのリソースは異なるアベイラビリティーゾーンに対してスケジュールされます。これにより、ユーザーは 1 つのアベイラビリティーゾーンを複数のルーターおよびネットワークに関連付けして、複数のゾーンにリスクを分散することができます。
BZ#1348609
Red Hat OpenStack Platform 9 に python-colorama パッケージが追加されました。
このパッケージは、ptyhon-gabbi のインストールの依存関係にあり、同様にopenstack-gnocchi には ptyhon-gabbi が必要です。
その結果、openstack-gnocchi と python-gabbi は依存関係のエラーが発生することなくインストールできるようになりました。
BZ#1337739
今回の機能拡張により、手動のクリーニングが追加され、オペレーターはノードを管理可能な状態から直接クリーニングモードに切り替えることができるようになりました。
この機能は、オペレーターが RAID のビルドやデバイスの消去などのさまざまな理由でクリーニングステップを実行できるように追加されました。
その結果、オペレーターは、OpenStack Bare Metal (ironic) API を使用して、実行する必要のあるステップを具体的に選択した上で ironic ノードのクリーニングプロセスを手動で開始することができます。
BZ#1334467
今回の機能拡張で、Orchestration (heat) の API コールを使用して、リソースを unhealthy としてマークして、その後のスタックの更新で置き換えられるようにすることができるようになりました。
たとえば、「ResourceGroup」内のサーバーでエラーが発生した場合にはブラックリストする (インデックスは不連続で、置き換えられたリソースには新しい名前が付けられる) のではなく、サーバーが unhealthy としてマークされ、Heat がそのサーバーをグループ内の同じ名前とインデックスの新しいサーバーに置き換えます。
「mark-unhealthy」コマンドを実行すると、リソースは CHECK_FAILED の状態になります。その後にスタックの更新が実行されると、unhealthy なリソースは (*_FAILED の状態の全リソースで実行するのと同様に) 置き換えられます。
BZ#1334468
ユーザーは、環境内でリソースレジストリーを使用することで、リソースに対する削除の操作を一時停止するフックを設定することができます。これにより、ユーザーはリソースの削除時に特定の操作を行って、重要な要素が削除される場合には追加の検証を実行することができます。その結果、pre-delete フックが設定されたリソースが削除される際には、そのリソースが {'unset_hook': 'pre-delete'} でデータとしてシグナルされるまで Heat は操作を一時停止します。
BZ#1334463
複数の環境ファイルが指定されている場合には、クライアントの代わりにエンジンで統合されます。これにより、Heat がスタックを正しくオーケストレーションするのに十分な情報が提供されます。

3.2. 既知の問題

現時点における Red Hat OpenStack Platform の既知の問題は以下のとおりです。
BZ#1226859
Ceph Storage ノードの 0 台からのスケールアップはサポートされていません。
BZ#1336237
Red Hat Ceph を永続ストレージ用バックエンドとして使用する場合には、Compute サービスは利用可能なストレージ容量を正しく計算しません。厳密に言うと、Compute がレプリケーションを考慮に入れず、単に利用可能なストレージを加算してしまいます。その結果、利用可能なストレージ容量は実際の容量を大幅に上回る値が提示され、予期しないストレージオーバーサブスクリプションが発生してしまう可能性があります。

一時ストレージの正しい容量を確認するには、代わりに Ceph サービスに対して直接クエリーを実行してください。
BZ#1362528
現在、インターフェース上の dhcpv6 は、NIC のテンプレートを使用して無効にすることはできません。このため、dhcpv6 サーバーを実行するネットワークに接続されたインターフェース上で IP の割り当てと IPv6 ルートを制御できません。回避策として、以下の行を /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth4 に追加してください。

IPV6_AUTOCONF=no

3.3. 非推奨の機能

本項には、サポートされなくなった機能、または今後のリリースでサポートされなくなる予定の機能について記載します。
BZ#1373985
アップストリームのプロジェクトに従って、Red Hat OpenStack Platform 9 では LBaaS v1 API は非推奨になり、Red Hat OpenStack Platform 10 では削除される予定です。本製品を新たにご使用になるお客様は、LBaaS v2 API を利用することをお勧めします。
BZ#1346936
お客様からのフィードバックにより、エンタープライズクラウドには、商用に提供されているデータベースのサポートは絶対的に必要であることが明らかになりました。そのため、多くのお客様にはメリットをもたらさない完全なオープンソースのソリューションを構築するのではなく、この需要を満たすためのパートナーシップ構築を成功させるための取り組みに力を入れる方針を決定しました。

この方針に従って、これまでテクノロジープレビューとして提供してきた OpenStack Trove サービスは Red Hat OpenStack Platform 10 以降のバージョンには同梱されなくなりました。Red Hat では、実稼働環境で即使用できる DBaaS サービスをお客様に提供するために、信頼できるパートナーと連携して開発を進めています。このオプションについての詳しい情報は、担当のセールスアカウントマネージャーまでお問い合わせください。
BZ#1341838
Heat の環境ファイル puppet-ceph-external.yaml の旧バージョンはサポートされなくなりました。このファイルの新しいバージョンが 9.0 のテンプレートに同梱されており、旧バージョンの代わりに使用する必要があります。旧バージョンの puppet-ceph-external.yaml ファイルに加えたカスタマイズはいずれも新しいバージョンに取り入れる必要があります。

第4章 テクニカルノート

本章には、コンテンツ配信ネットワークからリリースされる Red Hat OpenStack Platform「Mitaka」のエラータアドバイザリーの補足情報を記載します。

4.1. RHEA-2016:1597 — Red Hat OpenStack Platform 9 リリース候補版のアドバイザリー

本項に記載するバグは、アドバイザリー RHEA-2016:1597 で対応しています。このアドバイザリーについての詳しい情報は、https://access.redhat.com/errata/RHEA-2016:1597.html を参照してください。

4.1.1. 全般

BZ#1341486
今回の更新では、LBaaS ダッシュボードが Horizon から移動して、別個のプラグインとなりました。
そのため、LBaaS ダッシュボードは「yum install neutron-lbaas-ui」でインストールできるようになりました。この変更を適用するには、httpd を再起動する必要があります。

4.1.2. keycloak-httpd-client-install

BZ#1343228
今回のリリースには、keycloak-httpd-client-install パッケージのテクノロジープレビュー版が同梱されています。このパッケージは、Apache mod_auth_mellon SAML Service Provider を Keycloak SAML IdP のクライアントとして設定するのに役立つコマンドラインツールを提供します。

4.1.3. mariadb-galera

BZ#1346067
以前のリリースでは、「mariadb-galera」の RPM に、Galera の SSL 通信で使用するための TLS 証明書を生成するステップが含まれていましたが、インストールした RPM をコンテナーで使用して、そのコンテナーがレプリケートされると、TLS 証明書自体もレプリケートされていたため、元の TLS 証明書と全く同じ証明書がコンテナーのコピーに含まれてしまい、その証明書が実際に使用された場合にはセキュリティー上の問題が発生していました。
今回の更新では、RPM パッケージは、この証明書を生成しなくなりました。
その結果、コンテナーに含まれてしまう可能性のある証明書は生成されなくなりました。証明書は、Galera の SSL 設定で必要とされている場合に、手動で生成することができます。Red Hat OpenStack director は現在 Galera を SSL には設定しない点に注意してください。

4.1.4. opendaylight

BZ#1362605
今回のリリースでは、OpenDaylight Beryllium SR2 がテクノロジープレビューとして提供されるようになりました。

4.1.5. openstack-aodh

BZ#1336053
今回リベースされたパッケージの openstack-aodh-2.0.1-3.el7ost バージョンには、aodh の更新が含まれています。
変更事項の全一覧は、http://docs.openstack.org/releasenotes/aodh/mitaka.html#id2 でアップストリームのリリースノートを参照してください。
BZ#1339762
今回の更新により、Aodh API 用のクライアントが提供されるようになりました。このクライアントは、「aodhclient」で提供されている Python API と、「aodh」コマンドとしてインストールされるコマンドラインスクリプトで構成されます。Python API とコマンドラインスクリプトの両方で、Aodh API 全体が実装されます。
BZ#1341764
今回リベースされた aodh パッケージの openstack-aodh-2.0.1-1.el7ost バージョンには、重要な修正が含まれています。

* Bug 1575530: この更新で、パーティションコーディネーターの機能が修正および改善され、入力タスクがパーティションメンバー間で正しく分散されるようになりました。
BZ#1353519
以前のリリースでは、「gnocchi_aggregation_by_metrics_threshold」の種別のアラームの作成時にエバリュエーターがエラーをスローして例外が発生していました。
今回の更新では、「needed_overlap」が常にアグリゲーションに適用されるように設定することでこの問題に対処しています。
BZ#1357880
今回の更新の前には、複合アラームは、リフレッシュする度に通知を送信し続けていました。このため、ログファイルに不要な通知が記録されていました。
今回の更新では、アラームをリフレッシュする度に通知が送られないようにすることでこの問題に対処しています。

4.1.6. openstack-ceilometer

BZ#1304982
以前のリリースでは、gnocchi-dispatcher のオプションは、デフォルトでは「ceilometer.conf」に記載されていなかったので、手動で追加する必要がありました。今回の更新では、ceilometer をインストールすると、gnocchi-dispatcher オプションがデフォルトで含まれるようになりました。
BZ#1337961
今回の更新の前には、時間ベースのフィールドではイベントをフィルタリングすることはできませんでした。
そのため、「le」および「ge」クエリーは時間ベースのフィールドでは機能しませんでした。
今回の更新で新たなクエリー演算子が追加された結果、「le」および「ge」の演算子は時間ベースのクエリーで機能するようになりました。
BZ#1349350
Telemetry (ceilometer) dbsync は、「sqlalchemy-migrate」コードを引き続き実行しているために、古いアラームテーブルを作成します。このため、Aodh dbsync は Alembic への参照を確認できず、SQLAlchemy に必要なテーブルを作成するように要求しますが、それらのテーブルはすでに存在しているので、何も操作は行われず、データベースには Aodh Alembic の最新バージョンがスタンプされます。
この問題を回避するには、ceilometer dbsync でアラームテーブルを作成しないようにしてください。

4.1.7. openstack-cinder

BZ#1312944
今回の更新で、Google Cloud バックアップドライバーに必要な python ライブラリーがあることを確認する RPM 要件が追加されました。
BZ#1333547
以前のリリースでは、python-taskflow は適切なバージョンの python-networkx に対する依存関係がありませんでした。
そのため、「cinder create volume」が想定通りに機能しませんでした。
今回の更新で、python-taskflow パッケージに正しい依存関係が設定され、「cinder create volume」は想定通りに機能するようになりました。

4.1.8. openstack-gnocchi

BZ#1341704
今回リベースされた openstack-gnocchi パッケージの openstack-gnocchi-2.1.1-1.el7ost バージョンにより、重要な更新が追加されました。
詳しい情報は、https://launchpad.net/gnocchi/+milestone/2.1.1 でアップストリームのリリースマイルストーンを参照してください。

4.1.9. openstack-heat

BZ#1334463
複数の環境ファイルが指定されている場合には、クライアントの代わりにエンジンで統合されます。これにより、Heat がスタックを正しくオーケストレーションするのに十分な情報が提供されます。
BZ#1334468
ユーザーは、環境内でリソースレジストリーを使用することで、リソースに対する削除の操作を一時停止するフックを設定することができます。これにより、ユーザーはリソースの削除時に特定の操作を行って、重要な要素が削除される場合には追加の検証を実行することができます。その結果、pre-delete フックが設定されたリソースが削除される際には、そのリソースが {'unset_hook': 'pre-delete'} でデータとしてシグナルされるまで Heat は操作を一時停止します。

4.1.10. openstack-ironic

BZ#1291382
以前のリリースでは、iPXE ドライバーに条件があり、ノードを UEFI ブートモードで設定できませんでした。そのため、iPXE ドライバーのユーザーは、ノードを UEFI に設定できず、代わりに BIOS を使わざるを得ませんでした。
今回の更新により、この条件は削除され、iPXE ドライバーのユーザーは UEFI モードでノードをデプロイできるようになりました。
BZ#1337739
今回の機能拡張により、手動のクリーニングが追加され、オペレーターはノードを管理可能な状態から直接クリーニングモードに切り替えることができるようになりました。
この機能は、オペレーターが RAID のビルドやデバイスの消去などのさまざまな理由でクリーニングステップを実行できるように追加されました。
その結果、オペレーターは、OpenStack Bare Metal (ironic) API を使用して、実行する必要のあるステップを具体的に選択した上で ironic ノードのクリーニングプロセスを手動で開始することができます。
BZ#1337755
今回の機能拡張で、iSCSI ドライバーのインバンドクリーニングがサポートされるようになりました。iSCSI ドライバーを使用して、ディスクの消去やインバンド RAID 設定などのクリーニングステップをノードで実行することができます。
クリーニングステップを実行することにより、ironic でノードをリサイクルする際にセキュリティーが強化され、以前のテナントからの全データを消去したり、マシンのセキュリティーが侵害されていないかどうかをチェックしたりすることができます。
その結果、pxe_ipmitool、pxe_drac、pxe_iboot、pxe_ilo、pxe_amt、pxe_wol、その他のドライバーでインバンドクリーニングステップを実行することができるようになりました。

4.1.11. openstack-neutron

BZ#1328773
以前のリリースでは、「ipset」は Open vSwitch (OVS) および Linux Bridge neutron エージェントの依存関係として宣言されていませんでしたが、ipset は openstack-neutron パッケージの依存関係であるため、ノードで Open vSwitch または Linux Bridge エージェントのパッケージがインストールされても「openstack-neutron」はインストールされませんでした。ipset は、L2 エージェントのセキュリティーグループ設定に必要です。
今回の更新で ipset は openstack-openvswitch-agent の依存関係となり、openstack-linuxbridge-agent パッケージは ipset に依存するようになりました。
BZ#1328781
以前のリリースでは、openstack-neutron-common パッケージには shadow-utils パッケージは必要ありませんでした。このため、openstack-neutron-common パッケージのインストール時に「neutron」ユーザーが作成されず、neutron はハイパーバイザー上でコマンドを実行できませんでした。今回の更新により、openstack-neutron-common パッケージには shadow-utils パッケージが必須となり、「neutron」ユーザーが正しく作成されるようになりました。
BZ#1346822
以前のリリースでは、エージェントの起動時に br-int および br-tun 用のブリッジポートがない場合には、「int-br-ex」および「phy-br-ex」のパッチポートがあるかどうかをチェックしてからそれらのブリッジを追加していましたが、ポートの有無のチェックに使用されていた get_port_ofport() の関数は、@_ofport_retry デコレーションが原因でチェックを再試行していました。
そのため、再起動に余分な時間がかかっていました。
今回の更新により、ポートの有無は get_port_ofport() の代わりに port_exists() でチェックされるようになったので、br-int および br-tun 用のブリッジポートがない場合にも起動が遅くなることはなくなりました。

4.1.12. openstack-nova

BZ#1328957
今回の更新により、openstack-nova パッケージはアップストリームのバージョン 13.1.0 にリベースされました。
BZ#1331420
以前のリリースでは、インスタンスのブート時に、セキュリティーグループが指定されていなかった場合には、nova API がデフォルトのセキュリティーグループを自動的に追加していました。この操作は、オプションが 「port_security_enabled=False」に指定されているネットワークには実行されるべきではありません。
そのため、ポートセキュリティーが無効になっているネットワークに接続されたインスタンスをユーザーが起動しようとすると、ブートプロセスが失敗していました。
今回の更新により、nova は port_security_enabled=False に設定されたネットワーク上のインスタンス用に作成されたポートには、デフォルトのセキュリティーグループを追加しなくなりました。
その結果、ブートプロセスは想定通りに機能するようになり、インスタンスにアタッチされるポートにはデフォルトのセキュリティーグループはアタッチされなくなりました。

注記: Dashboard の既知のバグが原因で、デフォルトのセキュリティーグループがインスタンスにアタッチされているように表示されますが、これはインスタンスの起動を初めて試みた時にだけに生じる問題です。
BZ#1332599
serial_console が有効化されている場合には、インスタンスの起動と停止を繰り返すと、最終的には Compute サービスでポートが足りなくなります。この問題が起こると、インスタンスの起動を試みた時に「SocketPortRangeExhaustedException」エラーが発生して、インスタンスは起動できなくなります。これは、Compute サービスがインスタンスの作成時ではなく起動時にポートを作成し、また、インスタンスの停止時ではなく削除時にだけポートを解放することが原因です。

今回の更新では、libvirt の視点からゲストを破棄する方法でシリアルポートも解放されるようになりました。これにより、シリアルポートはインスタンスが必要としなくなるとすぐに解放されるので、そのポートは再度利用できるようになります。
BZ#1335835
スナップショットの作成時に Compute API は、イメージ API 要求からディスクおよびコンテナーの形式についての情報を省略するようになりました。これで、ドライバーは正しいスナップショットイメージの形式を使用することになります。また、これにより、ベースイメージが使用しているのとは異なる形式に変換された場合にスナップショットが BadRequest で失敗しないようになりました。
BZ#1341612
以前のリリースでは、BZ#1332599 に報告されているように、ハードリブートの後にインスタンスはシリアルポートを失うという問題の再発が発見されていました。そのため、シリアルコンソールでインスタンスを接続するのは不可能でした。この問題は、ホスト上のシリアルポートは解放されているのに、ドメイン XML がそれらのポートを定義しているままの状態で、ブート中にホストでポートを取得するプロセスが実行されなかったことが原因となって、ハードリブートプロセス中に発生していました。
この問題に対処するために、nova はドメインを破棄した後に libvirt からそのドメインの定義を解除するようになりました。
BZ#1342578
SR-IOV の Virtual Function (VF) デバイスをインスタンスに割り当てる際に、対応する Physical Function (PF) デバイスは、データベースで利用不可として正しくマスキングされますが、以前のリリースでは、インスタンスを削除しても PF が利用可能な状態に更新されませんでした。その結果、インスタンスが削除された後に、そのインスタンスが使用していた PCI デバイスはデータベースから全く解放されませでした。

今回の更新により、nova は PCI デバイスのインメモリーツリーを維持管理して、その情報を定期的にデータベースにフラッシュするようになりました。これは、利用可能なデバイスに関するデータベースの情報を更新するのに役立ちます。
BZ#1342953
以前のリリースでは、openstack-nova-compute 用の systemd ユニットファイルが libvirtd の必要な依存関係に含まれていませんでした。そのため、libvirtd が実行済みでない場合に openstack-nova-compute を再起動すると操作が失敗していました。今回の更新で依存関係が追加されました。
BZ#1348905
今回の機能拡張により、CPU が固定されているインスタンスを退避すると、すでに同じピニング設定のインスタンスを処理しているハイパーバイザーでホストされるようになりました。
この機能は、リソーストラッカーではホスト上の CPU ピニングがトラッキングされないために追加されました。
その結果、NUMATopologyFilter フィルターには、退避させるインスタンスと同じ CPU ピニング設定のインスタンスをすでに管理するホストを渡すという条件が追加されました。

4.1.13. openstack-packstack

BZ#1332525
以前のリリースでは、ceilometer のインストールが無効になっている場合に、Packstack は gnocchi データベースの作成を試みました。その際に、gnocchi データベースの作成に必要なパラメーターの一部が渡されなかったため、ceilometer を無効にすると Packstack のインストールが失敗していました。今回のリリースでは、Packstack は ceilometer が無効な場合でも、gnocchi データベースの作成を試みなくなりました。

4.1.14. openstack-puppet-modules

BZ#1337250
以前のリリースでは、HTTP ダウンロード中に iPXE がフリーズして、Bare Metal Provisioning (ironic) サービスがハングしていました。

今回の更新では、エラーが発生した場合に iPXE がネットワークからブートを再試行するようになりました。「--timeout」オプションを使用して、フリーズが無限に続かないようにすることができ、HTTP ダウンロード中にはフリーズが発生しなくなりました。
BZ#1349891
VPNaaS および LBaaS の設定を行うサービスプロバイダーは、サービスの起動には決して含まれないファイルを追加で作成していました。このため、LBaaS が有効化されている場合には、neutron-server が起動できませんでした。

以前のリリースでは、サービスプロバイダーが直接 /etc/neutron/neutron.conf に追加されるように LBaaS サービス設定プロバイダーが更新されましたが、これと同じように動作するように VPNaaS を更新しても、LBaaS によって設定された「service_provider」の値が上書きされてしまいました。また、逆の場合も、VPNaaS によって設定された「service_provider」の値は LBaaS により上書きされてしまいました。この問題に対処するために、今回の更新では「neutron_config」プロバイダーを ini_setting から openstackconfig に移動して、サービスプロバイダーを管理するための変数を neutron::server に追加しました。これにより、VPNaaS および LBaaS がお互いの「service_provider」の値を上書きしないようになり、LBaaS を有効にしても neutron-server の起動は妨げられなくなりました。
BZ#1353971
Ceph の puppet モジュール (puppet-ceph) では、key の caps パラメーターの変更時に、CephX キーリングが更新されませんでした。そのため、新しい「メトリック」のプールで動作する caps が CephX キーリングに追加されなかったので、オーバークラウドのアップグレードに失敗しました。

今回の更新では、「rbd_keyring」または「linvirt_rbd_secret_uuid」のいずれかが変更された場合に、puppet-ceph が virsh のシークレットを再生成するか、そのキーを更新するようになりました。これにより、シークレットまたは caps の変更時には CephX キーリングが必要に応じて更新されます。

4.1.15. openstack-selinux

BZ#1315457
以前のリリースでは、Compute API が Apache を使用して WSGI で起動できるようにするための SELinux ポリシーが設定されていない場合には、audit.log に AVC が記録されていました。

今回の更新で、Compute は HTTP のポートとボンディングできるようになり、Apache を使用して WSGI で起動する際にエラーが発生することなく実行できるようになりました。
BZ#1325623
以前のリリースでは、Apache を使用して WSGI で Block Storage API を実行する際に、SELinux が「enforce」モードの場合には、AVC がログ記録され、SELinux は「/usr/sbin/httpd」が「/var/log/cinder/cinder-api.log」ファイルへのアクセスを妨げていました。

今回の更新により、「httpd」は Block Storage API ログファイルへのアクセスが許可されるようになりました。その結果、WSGI で Block Storage API は AVC がログ記録されることなく実行できるようになりました。

4.1.16. openstack-swift

BZ#1316594
今回の機能拡張により、レプリカの配置が改善され、割り当てが重複しないように保護されるようになりました。
この機能は、従来の Swift レイアウトでは、単一のパーティションの 2 つのレプリカを同じデバイスに間違って割り当てると、耐久性が暗黙のうちに損なわれていたために追加されました。
その結果、割り当ての重複は防がれるようになり、計算済みの耐久性保証が守られるようになりました。ただし、そのためにはデバイスの数がレプリカの数よりも少なくならないようにする必要があるため、特定の誤った古いリングを無効と見なすことができるので、レプリカの数よりもゾーン数を少なくすることが引き続き可能です。
BZ#1316599
今回の機能拡張により、コンテナーまたはアカウントサーバーにオブジェクトのリストを逆の順序にするように指示する機能が追加されました。この機能により、ミドルウェア内のバージョン付きのオブジェクトを特定することができます。
その結果、内部のアーキテクチャーが安全上の理由で再編成されるのに加えて、必要な場合にはクライアントアプリケーションに逆順のリストを提供できます。

4.1.17. python-ceilometerclient

BZ#1315324
以前のリリースでは、「gnocchi-resource-threshold」の種別で作成したアラームには、「project_id」と「user_id」用のフィールドが空欄でした

今回の更新では、「gnocchi-resource-threshold」の種別のアラームの「project_id」と「user_id」のフィールドには、データが自動的に設定されるようになりました。

4.1.18. python-colorama

BZ#1348609
Red Hat OpenStack Platform 9 に python-colorama パッケージが追加されました。
このパッケージは、ptyhon-gabbi のインストールの依存関係にあり、同様にopenstack-gnocchi には ptyhon-gabbi が必要です。
その結果、openstack-gnocchi と python-gabbi は依存関係のエラーが発生することなくインストールできるようになりました。

4.1.19. python-cradox

BZ#1343144
Time Series Database-as-a-Service (gnocchi) の Ceph Storage ドライバーは、「python-cradox」ライブラリーに対する依存関係があったため、Ceph バックエンドを使用する gnocchi は失敗していました。

今回の更新で、「python-cradox」は「openstack-puppet-modules」パッケージによってインストールされるようになりました。「python-cradox」は Ceph librados ライブラリー向けの Python ライブラリーで、「ctypes」の代わりに「cython」を使用します。その結果、Ceph バックエンドを使用する Time Series Database-as-a-Service はエラーが発生することなく実行されるようになりました。

4.1.20. python-django-horizon

BZ#1041987
今回の更新で、Ceilometer アラーム API を使用するための API が Horizon に追加されました。これにより、今後 API を使用する開発が可能になります。ただし、現在はこの API の GUI フロントエンドはありません。
BZ#1093899
今回の更新により、Cinder ボリュームの暗号化のサポートが Horizon に追加されました。この機能により、管理者は暗号化されたボリューム種別を GUI から管理することができます。その結果、Horizon を使用してボリューム種別を追加、変更、削除できるようになりました。
BZ#1351736
今回の更新で、「python-django-horizon」パッケージはバージョン 9.0.1 にリベースされました。

このリベースで修正された主要な問題には以下が含まれます。
* 「Create Network」のワークフローのバグ
* メタデータウィジェットでの既存のメタデータ表示の問題
* ローカリゼーションに関連したさまざまな問題

4.1.21. python-heatclient

BZ#1281557
「stack-delete」コマンドを実行すると、削除を要求した直後に、Heat スタックに関する情報が表示されていました。Heat スタックの削除は、非同期の操作なので、表示されるステータスは「DELETE_IN_PROGRESS」には変わってない可能性があり、ユーザーの混乱を招く場合がありました。

今回のリリースでは、「stack-delete」コマンドは情報を表示しないようになりました。この動作は、OpenStack の各種サービスの delete コマンドと一貫しています。

4.1.22. python-oslo-concurrency

BZ#1346385
今回のリリースには、oslo.concurrency 3.7.1 からの更新が含まれています。これにより、CVE-2015-5162 のセキュリティーの脆弱性の対処に必要とされる新たなプロセスの制限が設けられます。この脆弱性と修正に関する詳しい情報は、https://bugs.launchpad.net/ossa/+bug/1449062 を参照してください。

4.1.23. python-wsgi_intercept

BZ#1348606
Red Hat OpenStack Platform 9 に python-wsgi_intercept パッケージが追加されました。
このパッケージは、ptyhon-gabbi のインストールの依存関係にあり、同様にopenstack-gnocchi には ptyhon-gabbi が必要です。
その結果、openstack-gnocchi と python-gabbi は依存関係のエラーが発生することなくインストールできるようになりました。

4.2. RHEA-2016:1599 — Red Hat OpenStack Platform 9 director リリース候補版のアドバイザリー

本項に記載するバグは、アドバイザリー RHEA-2016:1599 で対応しています。このアドバイザリーについての詳しい情報は、https://access.redhat.com/errata/RHEA-2016:1599.html を参照してください。

4.2.1. instack-undercloud

BZ#1320816
以前のリリースでは、アンダークラウドの Keystone エンドポイントのカタログに ironic-inspector が含まれていなかったため、カタログを使用して ironic-inspector の API エンドポイントを検出することができませんでした。今回の修正により、ironic-inspector API エンドポイントが Keystone のカタログに追加され、このカタログを介して ironic-inspector API のエンドポイントを検出できるようになりました。
BZ#1341350
以前のリリースでは、Glance がバックエンドとして使用している Swift との通信を試みると、低速な環境ではタイムアウトが発生して、イメージのアップロードなどの一部のGlance の操作が失敗していました。今回の修正により、Swift プロキシーサーバーのデフォルトの node_timeout 値が 60 秒に延長され、低速な環境で Swift をイメージストレージバックエンドとして使用する場合の Glance のイメージアップロード操作における信頼性が強化されました。

4.2.2. ipxe

BZ#1353361
以前のリリースでは、ipxe-bootimages RPM が director のリポジトリーに含まれていなかったため、director のインストールが失敗していました。今回の更新では、パッケージが director のリポジトリーに追加され、その RPM は director のインストールの一部として含まれるようになりました。

4.2.3. openstack-tripleo-heat-templates

BZ#1290121
以前のリリースでは、オーバークラウドの Pacemaker のリソースの大半が Keystone のリソースに依存していました。このため、設定を変更したあとに Keystone のリソースを再起動すると、依存するリソースがすべて再起動されてしまい、動作が中断されていました。今回の修正により、オーバークラウドの Pacemaker リソース (Keystone を含む) が依存関係として使用するためのフェイク openstack-core が導入され、Keystone のリソースを再起動しても、他のサービスは中断されなくなりました。
BZ#1337511
以前のリリースでは、director の Heat テンプレートで、ManagementNetValueSpecs パラメーターは間違ったデータタイプ (文字列) を使用していました。このため、管理ネットワークを含むオーバークラウドのデプロイメントで以下のエラーが発生して失敗していました。

Property error: resources.ManagementNetwork.properties.ManagementNetValueSpecs: Value must be a string.

今回の修正により、ManagementNetValueSpecs のデータタイプが文字列から json に変更され、エラーは表示されなくなりました。
BZ#1340453
以前のリリースでは、オーバークラウドで /etc/heat/heat.conf が設定される前にドメインのリソースが作成されていましたが、ドメインリソースはそのファイルの設定に依存していたため、それらのリソースは正しく作成されず、ユーザーは Heat スタックを作成できませんでした。ユーザーは、Pacemaker の Heat Engine リソースを手動で再起動して、この問題を回避する必要がありました。

今回のリリースでは、Heat サービスのデプロイメントステップは正しい順序に変更され、問題は修正されました。
BZ#1341838
Heat の環境ファイル puppet-ceph-external.yaml の旧バージョンはサポートされなくなりました。このファイルの新しいバージョンが 9.0 のテンプレートに同梱されており、旧バージョンの代わりに使用する必要があります。旧バージョンの puppet-ceph-external.yaml ファイルに加えたカスタマイズはいずれも新しいバージョンに取り入れる必要があります。
BZ#1344307
今回のパッチで、Dashboard のヘルプの URL が更新されました。この URL は、アップストリームの OpenStack ドキュメントではなく、正式な Red Hat OpenStack Platform のドキュメントをポイントするようになりました。
BZ#1349180
デフォルトの newtork-isolation.yaml ファイルには、director の Heat テンプレートでデフォルトの network-management.yaml ファイルと競合する値が記載されていました。オーバークラウドの作成時に、network-management.yaml の後に network-isolation.yaml を記載すると、デプロイメントでは管理ネットワークが非アクティブ化されます。今回の更新で、これらのファイルが競合しないようにリファクタリングされ、デプロイメントは network-management.yaml と network-isolationl.yaml をどのような順序でも競合なしで処理できるようになりました。
BZ#1353637
オーバークラウドでは、httpd でアクセスされるようになった Keystone の代わりとなるフェイク openstack-core リソースを使用しますが、外部のロードバランサーを使用している場合にはオーバークラウドは openstack-core を作成しませんでした。このため、openstack-core に必要な Pacemaker の制約の作成時にpuppet が失敗していました。今回の修正により、どのようなデプロイメント設定でも、openstack-core リソースが確実に作成されるようになりました。その結果、デプロイメントは成功し、必要な制約が作成されるようになりました。
BZ#1356107
OpenStack Platform 9 デプロイメントでは、「client.openstack」ユーザー向けに追加の CephX キーが必要ですが、director のコマンドラインクライアントは、既存のデプロイメントにはこのキーを生成せずに、「ceph.openstack」キーリングを更新してシークレットは空にします。アップグレードを実行する前には、新しい CephX キーを生成し、環境ファイルで CephClientKey パラメーターを使用してそのキーを渡してください。以下に例を示します。

  parameter_defaults:
    CephClientKey: 'my_cephx_key'

新しいキーを生成するには、以下のコマンドを実行します。

$ ceph-authtool --gen-print-key

4.2.4. os-collect-config

BZ#1350489
オーバークラウド上の「os-collect-config」サービスは、RPM の更新時に再起動していたため、オーバークラウドの更新が失敗していました。今回の修正でこの動作は変更され、「os-collect-config」は RPM の更新では再起動されなくなりました。オーバークラウドの更新は、「os-collect-config」の更新後にも成功するようになりました。「os-collect-config」は、「os-refresh-config」が実行されると、自動で正常に再起動される点に注意してください。

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