第8章 アイデンティティー管理

8.1. セキュアな LDAP 通信

Identity サービス (Keystone) が LDAP サーバーに対して認証を行うか、LDAP サーバーから識別情報を取得するように設定した場合に、CA 証明書を使用して Identity サービスの LDAP 通信をセキュリティー保護することができます。

Active Directory から CA 証明書の取得し、CA 証明書ファイルを Privacy Enhanced Mail (PEM) ファイル形式に変換し、Identity サービス用にセキュアな LDAP 通信を設定する必要があります。CA 信頼が設定された場所および方法に応じて、3 つの方法のいずれかでこの設定を行うことができます。

8.1.1. Active Directory からの CA 証明書の取得

以下のコード例を使用して Active Directory に対してクエリーを実行し、CA 証明書を取得します。CA_NAME は証明書の名前に置き換え、その他のパラメーターは実際の設定に応じて変更することができます。

CA_NAME="WIN2012DOM-WIN2012-CA"
AD_SUFFIX="dc=win2012dom,dc=com" LDAPURL="ldap://win2012.win2012dom.com"
ADMIN_DN="cn=Administrator,cn=Users,$AD_SUFFIX"
ADMINPASSWORD="MyPassword"

CA_CERT_DN="cn=latexmath:[$CA_NAME,cn=certification authorities,cn=public key services,cn=services,cn=configuration,$]AD_SUFFIX"

TMP_CACERT=/tmp/cacert.`date +'%Y%m%d%H%M%S'`.$$.pem

ldapsearch -xLLL -H
latexmath:[$LDAPURL -D `echo \"$]ADMIN_DN"`-W -s base -b`echo
"$CA_CERT_DN"` objectclass=* cACertificate

8.1.2. CA 証明書の PEM ファイル形式への変換

/path/cacert.pem という名前のファイルを作成し、Active Directory から CA 証明書を取得するための LDAP クエリーの内容をヘッダーとフッターの間に追加します。

-----BEGIN CERTIFICATE-----
MIIDbzCCAlegAwIBAgIQQD14hh1Yz7tPFLXCkKUOszANB... -----END
CERTIFICATE-----

トラブルシューティングを行う場合には、以下のクエリーを実行して LDAP が稼働しているかをチェックし、PEN 証明書ファイルが正しく作成されたことを確認してください。

LDAPTLS_CACERT=/path/cacert.pem ldapsearch -xLLL -ZZ -H $LDAPURL -s base -b "" "objectclass=*" currenttime

このクエリーによって、以下のような結果が返されるはずです。

dn: currentTime:
20141022050611.0Z

CA 証明書が Web サーバーでホストされていた場合には、以下のコマンドを実行して CA 証明書を取得することができます。

  • $HOST=redhat.com
  • $PORT=443
# echo Q | openssl s_client -connect $HOST:$PORT | sed -n -e '/BEGIN CERTIFICATE/,/END CERTIFICATE/ p'

8.1.3. Identity サービスのセキュアな LDAP 通信を設定する方法

8.1.3.1. 方法 1

CA 信頼が PEM ファイルを使用して LDAP レベルで設定されている場合は、この方法を使用してください。CA 証明書ファイルの場所は手動で指定します。以下の手順では、Identity サービスだけでなく、OpenLDAP ライブラリーを使用する全アプリケーションの LDAP 通信が保護されます。

  1. CA 証明書チェーンが含まれているファイルを PEM 形式で /etc/openldap/certs ディレクトリーにコピーします。
  2. /etc/openldap/ldap.conf を編集して以下のディレクティブを追加します。[CA_FILE] は CA 証明書ファイルの場所と名前に置き換えます。

    TLS_CACERT /etc/openldap/certs/[CA_FILE]
  3. horizon コンテナーを再起動します。

    # systemctl restart tripleo_horizon

8.1.3.2. 方法 2

CA 信頼が Network Security Services (NSS) データベースを介して LDAP ライブラリーレベルで設定されている場合は、この方法を使用します。certutil コマンドを使用して、OpenLDAP ライブラリーが使用する NSS 証明書データベースに CA 証明書をインポートし、信頼します。以下の手順では、Identity サービスだけでなく、OpenLDAP ライブラリーを使用する全アプリケーションの LDAP 通信が保護されます。

  1. 証明書をインポートして信頼します。[CA_FILE] は CA 証明書ファイルの場所と名前に置き換えます。

    # certutil -d /etc/openldap/certs -A -n "My CA" -t CT,, -a -i [CA_FILE]
    # certutil -d /etc/openldap/certs -A -n "My CA" -t CT,, -a -i [CA_FILE]
  2. CA 証明書が正しくインポートされていることを確認します。

    # certutil -d /etc/openldap/certs -L

    CA 証明書がリストされ、信頼の属性が CT,, に設定されます。

  3. horizon コンテナーを再起動します。

    # systemctl restart tripleo_horizon

8.1.3.3. 方法 3

CA 信頼が PEM ファイルを使用して Keystone レベルで設定されている場合は、この方法を使用します。このメソッドでは、Identity サービスと LDAP サーバー間の通信を保護するために Identity サービスに TLS を設定します。

ただし、上記の 2 つのメソッドとは異なり、このメソッドでは、Identity サービスの LDAP 通信のみが保護され、OpenLDAP ライブラリーを使用する他のアプリケーションの LDAP 通信は保護されません。

以下の手順では、openstack-config コマンドを使用して、/var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf ファイルの値を編集します。

  1. TLS を有効化します。

    # openstack-config --set /var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf ldap use_tls True
  2. 証明書の場所を指定します。[CA_FILE] は CA 証明書ファイルの名前に置き換えます。

    # openstack-config --set /var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf ldap tls_cacertfile [CA_FILE]
  3. LDAP サーバーから受信した TLS セッションに対して実行するクライアント証明書チェックを指定します。[CERT_BEHAVIOR] は、以下にあげる動作のいずれか 1 つに置き換えてください。

    demand
    LDAP サーバーにより証明書が常に要求されます。証明書が提供されなかった場合、または提供された証明書が既存の認証局ファイルに対して検証できなかった場合には、セッションは終了します。
    allow
    LDAP サーバーにより証明書が常に要求されます。証明書が提供されなくてもセッションは通常どおり続行されます。証明書が提供されたにもかかわらず、既存の認証局ファイルに対して検証できなかった場合、その証明書は無視され、セッションは通常どおり続行されます。
    never
    証明書は一切要求されません。
    # openstack-config --set /var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf ldap tls_req_cert [CERT_BEHAVIOR]
  4. keystone と horizon のコンテナーを再起動します。

    # systemctl restart tripleo_keystone
    # systemctl restart tripleo_horizon