ベアメタルプロビジョニング

Red Hat OpenStack Platform 15

Bare Metal サービス (Ironic) のインストール、設定、および使用方法

概要

本ガイドには、Red Hat OpenStack Platform 環境のオーバークラウドに Bare Metal サービスをインストール、設定、および使用するための手順を記載しています。

前書き

本ガイドには、オーバークラウドに Bare Metal サービス (ironic) をインストールして設定し、そのサービスを使用してエンドユーザー向けの物理マシンのプロビジョニングと管理を行うための手順を記載しています。

Bare Metal サービスのコンポーネントは、Red Hat OpenStack Platform director で OpenStack 環境 (オーバークラウド) を構成するベアメタルノードのプロビジョニングと管理を行うためにアンダークラウドの一部としても使用されます。director による Bare Metal サービスの使用方法についての詳細は、『director のインストール と使用方法』 を参照してください。

第1章 Bare Metal サービスについて

OpenStack Bare Metal サービス (ironic) は、エンドユーザー向けの物理マシンのプロビジョニングと管理に必要なコンポーネントを提供します。オーバークラウドの Bare Metal サービスは、以下の OpenStack サービスと対話します。

  • OpenStack Compute (nova) は、スケジューリング、テナントレベルのクォータ設定、IP の割り当ての機能と、仮想マシンインスタンスを管理するためのユーザー向けの API を提供します。一方、Bare Metal サービスは、ハードウェア管理のための管理 API を提供します。
  • OpenStack Identity (keystone) は、要求の認証機能を提供し、Bare Metal サービスが他の OpenStack サービスを特定するのを補助します。
  • OpenStack Image サービス (glance) は、イメージとイメージのメタデータを管理します。
  • OpenStack Networking (neutron) は、DHCP とネットワーク設定を提供します。
  • OpenStack Object Storage (swift) は、特定のドライバーがイメージの一時的な URL を公開するために使用されます。

Bare Metal サービスは、iPXE を使用して物理マシンをプロビジョニングします。以下の図は、ユーザーがデフォルトのドライバーを使用して新規マシンを起動した場合、プロビジョニングプロセス中に OpenStack のサービスがどのように対話するかを概説しています。

The PXE Provisioning Process

第2章 ベアメタルプロビジョニングのプランニング

本章では、インストールの前提条件、ハードウェア要件、ネットワーク要件など、Bare Metal サービスを設定するための要件について説明します。

2.1. インストールの前提条件

本ガイドでは、アンダークラウドに director をインストール済みで、Bare Metal サービスと残りのオーバークラウドをインストールする準備が整っていることを前提とします。director のインストールについての詳しい情報は、『director のインストールと使用方法』 の「director のインストール」を参照して ください。

注記

ベアメタルノードは、OpenStack インストール環境のコントロールプレーンネットワークに直接アクセスできるため、オーバークラウドの Bare Metal サービスは、信頼済みのテナント環境向けに設計されています。オーバークラウドの Ironic サービス用にカスタムのコンポーザブルネットワークを実装する場合、ユーザーはコントロールプレーンにアクセスする必要はありません。

2.2. ハードウェア要件

オーバークラウドの要件

Bare Metal サービスを有効にしたオーバークラウドのハードウェア要件は、標準のオーバークラウドと同じです。詳しい情報は、director のインストールと 使用方法』の「オーバークラウドの要件 」を参照してください。

ベアメタルマシンの要件

プロビジョニングするベアメタルマシンのハードウェア要件は、インストールするオペレーティングシステムによって異なります。

プロビジョニングするベアメタルマシンには、すべて以下に示す項目が必要です。

  • ベアメタルネットワークに接続するための NIC 1 つ。
  • ironic-conductor サービスから到達可能なネットワークに接続された電源管理インターフェース (例: IPMI)。コンポーザブルロールを使用して ironic-conductor を別の場所で実行している場合以外は、デフォルトでは ironic-conductor は全コントローラーノード上で実行されます。
  • ベアメタルネットワーク上での PXE ブート。デプロイメント内のその他すべての NIC については PXE ブートを無効にしてください。

2.3. ネットワーク要件

ベアメタルネットワーク:

Bare Metal サービスは、このプライベートネットワークを使用して以下の操作を行います。

  • オーバークラウド上のベアメタルマシンのプロビジョニングと管理
  • 再デプロイ前のベアメタルノードのクリーニング
  • ベアメタルノードへのテナントアクセス

ベアメタルネットワークは、ベアメタルシステムを検出するための DHCP および PXE ブートの機能を提供します。このネットワークは、Bare Metal サービスが PXE ブートと DHCP 要求に対応できるように、トランキングされたインターフェースでネイティブの VLAN を使用する必要があります。

ベアメタルネットワークを設定するには、2 とおりの方法があります。

  • Ironic Conductor サービス用にフラットなベアメタルネットワークを使用する。このネットワークは、コントロールプレーン上の Ironic サービスにルーティングする必要があります。分離したベアメタルネットワークを定義すると、ベアメタルノードは PXE ブートすることができません。
  • カスタムのコンポーザブルネットワークを使用して、オーバークラウドに Ironic サービスを実装する。
注記

ベアメタルノードは、OpenStack インストール環境のコントロールプレーンネットワークに直接アクセスできるため、オーバークラウドの Bare Metal サービスは、信頼済みのテナント環境向けに設計されています。オーバークラウドの Ironic サービス用にカスタムのコンポーザブルネットワークを実装する場合、ユーザーはコントロールプレーンにアクセスする必要はありません。

ネットワークのタグ付け:

  • コントロールプレーンネットワーク (director のプロビジョニングネットワーク) は常にタグなしです。
  • ベアメタルネットワークは、プロビジョニングのためにタグなしである必要があり、また Ironic API にアクセスできなければなりません。
  • その他のネットワークはタグ付けすることができます。

オーバークラウドコントローラー:

Bare Metal サービスを有効にしたコントローラーノードは、ベアメタルネットワークにアクセス可能である必要があります。

ベアメタルノード:

ベアメタルノードの PXE ブートに使用するように設定されている NIC は、ベアメタルネットワークにアクセス可能である必要があります。

2.3.1. デフォルトのベアメタルネットワーク

このアーキテクチャーでは、ベアメタルネットワークはコントロールプレーンネットワークとは分離されています。ベアメタルネットワークは、テナントネットワークとしても機能するフラットネットワークです。

  • ベアメタルネットワークは、OpenStack のオペレーターが作成します。このネットワークには、director のプロビジョニングネットワークへのルートが必要です。
  • Ironic ユーザーは、パブリックの OpenStack API とベアメタルネットワークにアクセスすることができます。ベアメタルネットワークは、director のプロビジョニングネットワークにルーティングされるので、ユーザーはコントロールプレーンにも間接的にアクセスできます。
  • Ironic は、ノードのクリーニングにベアメタルネットワークを使用します。

デフォルトのベアメタルネットワークアーキテクチャー図

Default bare metal network architecture diagram

2.3.2. カスタムコンポーザブルネットワーク

このアーキテクチャーでは、ベアメタルネットワークはコントロールプレーンにアクセスできないカスタムコンポーザブルネットワークです。コントロールプレーンへのアクセスを制限したい場合には、このネットワークの作成が推奨されます。

  • カスタムコンポーザブルベアメタルネットワークは、OpenStack のオペレーターが作成します。
  • Ironic ユーザーは、パブリックの OpenStack API とカスタムコンポーザブルベアメタルネットワークにアクセスすることができます。
  • Ironic は、ノードのクリーニングにカスタムコンポーザブルベアメタルネットワークを使用します。

第3章 Bare Metal サービスを有効にしたオーバークラウドのデプロイ

director を使用したオーバークラウドのデプロイメントについての詳しい情報は、『director の インストールと使用方法』 を参照してください。本章では、ironic 固有のデプロイメント手順のみを説明します。

3.1. Ironic のテンプレートの作成

環境ファイルを使用して、Bare Metal サービスを有効にしたオーバークラウドをデプロイします。テンプレートは、director ノードの /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services/ironic-overcloud.yaml にあります。

テンプレートへの記入

提供されているテンプレートまたは追加の yaml ファイル (例: ~/templates/ironic.yaml) で、追加の設定を指定することができます。

  • ベアメタルと仮想インスタンスの両方を備えたハイブリッドのデプロイメントでは、NovaSchedulerDefaultFilters の一覧に AggregateInstanceExtraSpecsFilter を追加する必要があります。NovaSchedulerDefaultFilters をどこにも設定していない場合には、ironic.yaml に設定することができます。サンプルは、「テンプレートの例」を参照してください。

    注記

    SR-IOV を使用している場合には、NovaSchedulerDefaultFilters はすでに tripleo-heat-templates/environments/neutron-sriov.yaml で設定されています。このリストに AggregateInstanceExtraSpecsFilter を追記してください。

  • 初回のデプロイメントおよび再デプロイメントの前に実行されるクリーニングの種別は、IronicCleaningDiskErase で設定されます。デフォルトでは、これは deployment/ironic/ironic-conductor-container-puppet.yaml によって「full」に設定されます。この設定を「metadata」にすると、パーティションテーブルのみがクリーニングされるので処理速度を大幅に向上させることができますが、複数のテナントがある環境ではデプロイメントのセキュリティーレベルが低くなるため、信頼済みのテナント環境でのみ適用すべきです。
  • IronicEnabledDrivers パラメーターを使用してドライバーを追加することができます。デフォルトでは、ipmiidrac、および ilo が有効です。

設定パラメーターの全一覧は、『オーバークラウドのパラメーター』の「 Bare Metal (ironic)パラメーター」を参照し てください。

3.2. ネットワーク設定

デフォルトのフラットベアメタルネットワークを使用する場合には、ironic が使用するブリッジ br-baremetal を作成する必要があります。これは、追加のテンプレートで指定することができます。

~/templates/network-environment.yaml

parameter_defaults:
  NeutronBridgeMappings: datacentre:br-ex,baremetal:br-baremetal
  NeutronFlatNetworks: datacentre,baremetal

コントローラーのプロビジョニングネットワーク (コントローラープレーン) をベアメタルネットワークとして再利用できるように、このネットワークにブリッジを設定するか、専用のネットワークを追加してブリッジを設定することができます。設定の要件は同じですが、ベアメタルネットワークはプロビジョニングに使用するので VLAN タグ付けはできません。

~/templates/nic-configs/controller.yaml

network_config:
    -
      type: ovs_bridge
          name: br-baremetal
          use_dhcp: false
          members:
            -
              type: interface
              name: eth1
注記

ベアメタルノードは、OpenStack インストール環境のコントロールプレーンネットワークに直接アクセスできるため、オーバークラウドの Bare Metal サービスは、信頼済みのテナント環境向けに設計されています。

3.2.1. カスタムプロビジョニングネットワークの設定

テナントがアンダークラウドネットワークと干渉する場合があるので、デフォルトのフラットプロビジョニングネットワークにより、お客様の環境でセキュリティー上の問題が発生する可能性があります。このリスクを避けるために、コントロールプレーンにアクセスすることのできない、ironic サービス用のカスタムコンポーザブルベアメタルプロビジョニングネットワークを設定することができます。

  1. Identity に管理ユーザーとしてアクセスするためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. network_data.yaml ファイルをコピーします。

    (undercloud) [stack@host01 ~]$ cp /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/network_data.yaml .
  3. 新しい network_data.yaml ファイルを編集し、オーバークラウドプロビジョニング用の新規ネットワークを追加します。

    # custom network for Overcloud provisioning
    - name: OcProvisioning
    name_lower: oc_provisioning
    vip: true
    vlan: 205
    ip_subnet: '172.23.3.0/24'
    allocation_pools: [{'start': '172.23.3.10', 'end': '172.23.3.200'}]
  4. 新規ネットワークを使用するために、network_environments.yaml ファイルおよび nic-configs/controller.yaml ファイルを更新します。

    1. network_environments.yaml ファイルで、VLAN を追加し Ironic ネットワークを再マッピングします。

      ServiceNetMap:
         IronicApiNetwork: oc_provisioning
         IronicNetwork: oc_provisioning
    2. nic-configs/controller.yaml ファイルにおいて、インターフェースおよび必要なパラメーターを追加します。

      $network_config:
           - type: vlan
               vlan_id:
                 get_param: OcProvisioningNetworkVlanID
               addresses:
               - ip_netmask:
                   get_param: OcProvisioningIpSubnet
  5. roles_data.yaml ファイルをコピーします。

    (undercloud) [stack@host01 ~]$ cp /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/roles_data.yaml .
  6. 新しい roles_data.yaml を編集し、コントローラー用の新規ネットワークを追加します。

      networks:
       ...
        - OcProvisioning
  7. デプロイコマンドに新しい network_data.yaml ファイルと roles_data.yaml ファイルを追加します。

    -n /home/stack/network_data.yaml \
    -r /home/stack/roles_data.yaml \

3.3. テンプレートの例

テンプレートファイルの例を以下に示します。このファイルは、お使いの環境の要件を満たさない可能性があります。このサンプルを使用する前には、お使いの環境内の既存の設定に干渉しないことを確認してください。

~/templates/ironic.yaml

parameter_defaults:

    NovaSchedulerDefaultFilters:
        - RetryFilter
        - AggregateInstanceExtraSpecsFilter
        - AvailabilityZoneFilter
        - DiskFilter
        - ComputeFilter
        - ComputeCapabilitiesFilter
        - ImagePropertiesFilter

    IronicCleaningDiskErase: metadata

この例では、以下のように設定されています。

  • AggregateInstanceExtraSpecsFilter は、ハイブリッドデプロイメント向けに、仮想インスタンスとベアメタルインスタンスの両方を許可します。
  • 初回のデプロイメントまたは再デプロイメントの前に実行されるディスククリーニングでは、パーティションテーブル (metadata) のみが消去されます。

3.4. オーバークラウドでの Ironic イントロスペクションの有効化

オーバークラウドの Bare Metal イントロスペクションを有効にするには、ironic.yaml 環境ファイルおよび ironic-inspector.yaml 環境ファイルの両方をデプロイコマンドに追加します。これらのファイルは、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services ディレクトリーにあります。以下の例を使用して、実際の環境に対応する ironic インスペクターの設定の詳細情報を追加します。

parameter_defaults:
  IronicInspectorSubnets:
    - ip_range: 192.168.101.201,192.168.101.250
  IPAImageURLs: '["http://192.168.24.1:8088/agent.kernel", "http://192.168.24.1:8088/agent.ramdisk"]'
  IronicInspectorInterface: 'br-baremetal'

IronicInspectorSubnets

このパラメーターには複数の IP 範囲を含めることができ、スパインおよびリーフの両方に使用することができます。

IPAImageURLs

このパラメーターには、IPA カーネルおよび ramdisk に関する詳細が含まれます。多くの場合、アンダークラウドで使用するイメージと同じものを使用することができます。このパラメーターを省略する場合には、各コントローラーに代わりの URL を設定してください。

IronicInspectorInterface

このパラメーターを使用して、ベアメタルのネットワークインターフェースを指定します。

注記

コンポーザブル Ironic ロールまたは IronicConductor ロールを使用する場合には、ロールファイルの Ironic ロールに IronicInspector サービスを含める必要があります。

ServicesDefault:
  OS::TripleO::Services::IronicInspector

3.5. オーバークラウドのデプロイ

Bare Metal サービスを有効にするには、オーバークラウドの初回または再デプロイメントの時に、-e オプションを使用して ironic の環境ファイルを残りのオーバークラウド設定と共に追加します。

以下に例を示します。

$ openstack overcloud deploy \
  --templates \
  -e ~/templates/node-info.yaml \
  -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \
  -e ~/templates/network-environment.yaml \
  -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services/ironic-overcloud.yaml \
  -e ~/templates/ironic.yaml \

オーバークラウドのデプロイについての詳しい情報は、『 director のインストール と使用方法』の「 デプロイメントコマンドのオプション 」および「オーバークラウド 作成時の環境ファイル の追加」を参照してください。

3.6. Bare Metal サービスのテスト

OpenStack Integration Test Suite を使用して、Red Hat OpenStack デプロイメントを検証することができます。詳しい情報は、『 OpenStack Integration Test Suite Guide 』を参照してください。

Bare Metal サービスを検証するその他の方法

  1. Identity に管理ユーザーとしてアクセスするためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. nova-compute サービスがコントローラーノードで実行中であることを確認します。

    $ openstack compute service list -c Binary -c Host -c Status
  3. デフォルトの ironic ドライバーを変更した場合には、必要なドライバーを必ず有効にしてください。

    $ openstack baremetal driver list
  4. ironic のエンドポイントがリストされていることを確認します。

    $ openstack catalog list

第4章 デプロイ後の Bare Metal サービスの設定

本項では、デプロイ後のオーバークラウドの設定に必要な手順について説明します。

4.1. OpenStack Networking の設定

DHCP、PXE ブート、およびその他の必要な場合に OpenStack Networking が Bare Metal サービスと通信するように設定します。ベアメタルネットワークを設定するには、2 とおりの方法があります。

  • Ironic Conductor サービス用にフラットなベアメタルネットワークを使用する。このネットワークは、コントロールプレーンネットワーク上の Ironic サービスにルーティングする必要があります。
  • カスタムのコンポーザブルネットワークを使用して、オーバークラウドに Ironic サービスを実装する。

本項の手順に従って、ベアメタルマシンのプロビジョニングに使用する単一のフラットなネットワーク向けに OpenStack Networking を設定するか、あるいは未使用の分離ネットワークまたはフラットネットワークに依存しない新たなコンポーザブルネットワークを設定します。この設定では、ML2 プラグインと Open vSwitch エージェントを使用します。

以下の手順に記載するすべてのステップを、OpenStack Networking サービスをホストするサーバーに root ユーザーとしてログインして実行します。

4.1.1. OpenStack Networking がフラットなベアメタルネットワーク上の Bare Metal サービスと通信するための設定

  1. Identity に管理ユーザーとしてアクセスするためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. ベアメタルインスタンスをプロビジョニングするためのフラットなネットワークを作成します。

    $ openstack network create \
      --provider-network-type flat \
      --provider-physical-network baremetal \
      --share NETWORK_NAME

    NETWORK_NAME は、このネットワークの名前に置き換えます。仮想ネットワークの実装先となる物理ネットワークの名前 (この場合は baremetal) は、以前の手順で ~/templates/network-environment.yaml ファイルの NeutronBridgeMappings パラメーターで設定されています。

  3. フラットネットワーク上にサブネットを作成します。

    $ openstack subnet create \
      --network NETWORK_NAME \
      --subnet-range NETWORK_CIDR \
      --ip-version 4 \
      --gateway GATEWAY_IP \
      --allocation-pool start=START_IP,end=END_IP \
      --dhcp SUBNET_NAME

    以下の値を置き換えてください。

    • SUBNET_NAME は、サブネットの名前に置き換えます。
    • NETWORK_NAME は、以前のステップで作成済みのプロビジョニングネットワークの名前に置き換えます。
    • NETWORK_CIDR は、サブネットが示す IP アドレスブロックの Classless Inter-Domain Routing (CIDR) 表記に置き換えます。START_IP で始まり END_IP で終る範囲で指定する IP アドレスブロックは、NETWORK_CIDR で指定されている IP アドレスブロックの範囲内に入る必要があります。
    • GATEWAY_IP は、新しいサブネットのゲートウェイとして機能するルーターインターフェースの IP アドレスまたはホスト名に置き換えます。このアドレスは、NETWORK_CIDR で指定されている IP アドレスブロック内で、かつ START_IP で始まり END_IP で終わる範囲で指定されている IP アドレスブロック外でなければなりません。
    • START_IP は、Floating IP アドレスを確保する新規サブネット内の IP アドレス範囲の開始アドレスを示す IP アドレスに置き換えます。
    • END_IP は、Floating IP アドレスを確保する新規サブネット内の IP アドレス範囲の終了アドレスを示す IP アドレスに置き換えます。
  4. ネットワークとサブネット用のルーターを作成して、OpenStack Networking サービスがメタデータ要求に応答するようにします。

    $ openstack router create ROUTER_NAME

    ROUTER_NAME は、ルーターの名前に置き換えます。

  5. サブネットを新しいルーターに接続します。

    $ openstack router add subnet ROUTER_NAME BAREMETAL_SUBNET

    ROUTER_NAME をルーターの名前に、BAREMETAL_SUBNET を以前のステップで作成したサブネットの ID または名前に、それぞれ置き換えます。これにより、cloud-init からのメタデータ要求に対応すると共に、ノードを設定することができます。

4.1.2. OpenStack Networking がカスタムコンポーザブルベアメタルネットワーク上の Bare Metal サービスと通信するための設定

  1. デプロイメント中に作成する OcProvisioning ネットワークと一致する VLAN ID で、VLAN ネットワークを作成します。クリーニングネットワークのデフォルト名と一致するように、新しいネットワークの名前を provisioning と設定します。

    (overcloud) [stack@host01 ~]$ openstack network create \
      --share \
      --provider-network-type vlan \
      --provider-physical-network datacentre \
      --provider-segment 205 provisioning

    オーバークラウドネットワークの名前が provisioning ではない場合には、コントローラーにログインし、以下のコマンドを実行して名前を変更し、ネットワークを再起動します。

    heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo vi /var/lib/config-data/puppet-generated/ironic/etc/ironic/ironic.conf
    heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo podman restart ironic_conductor

4.2. ノードのクリーニングの設定

デフォルトでは、Bare Metal サービスは、ノードのクリーニングに provisioning という名前のネットワークを使用するように設定されます。ただし、OpenStack Networking ではネットワーク名は一意ではないので、テナントが同じ名前を使用してネットワークを作成して Bare Metal サービスとの競合が発生する可能性があります。このため、ネットワーク名の代わりにネットワークの UUID を使用することを推奨します。

  1. Bare Metal サービスを実行しているコントローラー上のプロバイダーネットワークの UUID を指定して、クリーニングを設定します。

    ~/templates/ironic.yaml

    parameter_defaults:
        IronicCleaningNetwork: UUID

    UUID は、以前のステップで作成したベアメタルネットワークの UUID に置き換えます。

    UUID は、openstack network show コマンドで確認することができます。

    openstack network show NETWORK_NAME -f value -c id
    注記

    ネットワークの UUID は、オーバークラウドの初回のデプロイメントが完了するまで利用できないので、この設定はデプロイ後に実行する必要があります。

  2. 「オーバークラウドのデプロイ」 の説明に従って openstack overcloud deploy コマンドを実行し、オーバークラウドを再デプロイして変更を適用します。
  3. 以下の行をコメント解除して、<None> をベアメタルネットワークの UUID に置き換えます。

    cleaning_network = <None>
  4. Bare Metal サービスを再起動します。

    # systemctl restart openstack-ironic-conductor.service

openstack overcloud deploy コマンドでオーバークラウドを再デプロイすると、手動で加えていた変更はすべて元に戻るので、次回 openstack overcloud deploy コマンドを使用する前に、(前のステップで説明した) クリーニングの設定を ~/templates/ironic.yaml に必ず追加してください。

4.2.1. 手動によるノードのクリーニング

ノードのクリーニングを手動で開始するには、そのノードが manageable の状態でなければなりません。

ノードのクリーニングには 2 つのモードがあります。

メタデータのみのクリーニング: 対象のノード上の全ディスクからパーティションを削除します。この方法は、より高速なクリーニングサイクルですが、パーティションテーブルのみが削除されるので、セキュリティーレベルはより低くなります。このモードは、信頼済みのテナント環境でのみ使用してください。

完全なクリーニング: ATA のセキュア消去を使用するか、細断処理を行って、全ディスクから全データを削除します。処理の完了まで数時間かかる場合があります。

metadata のクリーニングを開始するには、以下のコマンドを実行します。

$ openstack baremetal node clean _UUID_ \
    --clean-steps '[{"interface": "deploy", "step": "erase_devices_metadata"}]'

full クリーニングを開始するには、以下のコマンドを実行します。

$ openstack baremetal node clean _UUID_ \
    --clean-steps '[{"interface": "deploy", "step": "erase_devices"}]'

UUID は、クリーニングするノードの UUID に置き換えます。

クリーニングが正常に完了すると、ノードの状態は manageable に戻ります。状態が clean failed の場合には、last_error のフィールドで失敗の原因を調査してください。

4.3. ベアメタルフレーバーの作成

デプロイメントの一部として使用するフレーバーを作成する必要があります。このフレーバーの仕様 (メモリー、CPU、ディスク) は、ベアメタルノードのハードウェア仕様以下にする必要があります。

  1. Identity に管理ユーザーとしてアクセスするためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. 既存のフレーバーを一覧表示します。

    $ openstack flavor list
  3. Bare Metal サービス向けに新規フレーバーを作成します。

    $ openstack flavor create \
      --id auto --ram RAM \
      --vcpus VCPU --disk DISK \
      --property baremetal=true \
      --public baremetal

    RAM はメモリー量、VCPU は仮想 CPU 数、DISK はディスクストレージの値に置き換えます。baremetal プロパティーは、ベアメタルを仮想インスタンスと区別するために使用されます。

  4. 新規フレーバーが正しい値で作成されたことを確認します。

    $ openstack flavor list

4.4. ベアメタルイメージの作成

デプロイメントには 2 セットのイメージが必要です。

  • デプロイイメージ は、Bare Metal サービスがベアメタルノードをブートしてユーザーイメージをベアメタルノードにコピーするのに使用されます。デプロイイメージは、カーネル イメージと ramdisk イメージで構成されます。
  • ユーザーイメージ は、ベアメタルノードにデプロイされるイメージです。ユーザーイメージにも カーネル イメージと ramdisk イメージが含まれますが、追加で メイン イメージも含まれます。メインイメージは、ルートパーティションイメージまたは完全なディスクイメージのいずれかです。

    • 完全なディスクイメージ は、パーティションテーブルとブートローダーを含むイメージです。完全なディスクイメージを使用してデプロイされたノードはローカルブートをサポートするので、Bare Metal サービスはデプロイ後のノードのリブートは制御しません。
    • ルートパーティションイメージ には、オペレーティングシステムのルートパーティションのみが含まれています。ルートパーティションを使用する場合には、デプロイイメージが Image サービスに読み込まれた後に、ノードのプロパティーにデプロイイメージをノードのブートイメージとして設定することができます。デプロイ後のノードのリブートでは、netboot を使用してユーザーイメージがプルダウンされます。

本項に記載する例では、ルートパーティションイメージを使用してベアメタルノードをプロビジョニングします。

4.4.1. デプロイイメージの準備

デプロイイメージを作成する必要はありません。アンダークラウドによるオーバークラウドのデプロイ時に、すでにデプロイイメージが使用されているためです。デプロイイメージは、以下に示したように、カーネルイメージと ramdisk イメージの 2 つのイメージで構成されます。

/tftpboot/agent.kernel
/tftpboot/agent.ramdisk

これらのイメージは、削除したり他の場所でアンパックしたりしていない限りは、多くの場合、ホームディレクトリーにあります。ホームディレクトリーにない場合でも、rhosp-director-images-ipa パッケージがインストールされているので、これらのイメージは /usr/share/rhosp-director-images/ironic-python-agent*.tar ファイル内にあります。

イメージを抽出して Image サービスにアップロードします。

$ openstack image create \
  --container-format aki \
  --disk-format aki \
  --public \
  --file ./tftpboot/agent.kernel bm-deploy-kernel
$ openstack image create \
  --container-format ari \
  --disk-format ari \
  --public \
  --file ./tftpboot/agent.ramdisk bm-deploy-ramdisk

4.4.2. ユーザーイメージの準備

最後に必要となるイメージは、ベアメタルノードにデプロイされるユーザーイメージです。ユーザーイメージには、カーネルイメージと ramdisk イメージに加えて、メインイメージが含まれます。これらのパッケージをダウンロードしてインストールするには、まずご自分の要件に合わせて完全なディスクイメージの環境変数を設定する必要があります。

4.4.3. ディスクイメージの環境変数

ディスクイメージのビルドプロセスとして、director にはベースイメージと、新規オーバークラウドイメージのパッケージを取得するための登録情報が必要です。これらの属性は、以下に示す Linux の環境変数を使用して定義します。

注記

イメージのビルドプロセスにより、イメージは一時的に Red Hat サブスクリプションに登録され、システムがイメージのビルドプロセスを完了すると登録を解除します。

ディスクイメージをビルドするには、Linux の環境変数をお使いの環境と要件に応じて設定します。

DIB_LOCAL_IMAGE
完全なディスクイメージのベースに使用するローカルイメージを設定します。
REG_ACTIVATION_KEY
登録プロセスにおいて、ログイン情報の代わりにアクティベーションキーを使用します。
REG_AUTO_ATTACH
最も互換性のあるサブスクリプションを自動的にアタッチするかどうかを定義します。
REG_BASE_URL
イメージのパッケージが含まれるコンテンツ配信サーバーのベース URL。カスタマーポータル Subscription Management のデフォルトプロセスでは https://cdn.redhat.com を使用します。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用している場合は、このパラメーターをお使いの Satellite サーバーのベース URL に設定します。
REG_ENVIRONMENT
組織内の環境に登録します。
REG_METHOD
登録の方法を設定します。Red Hat カスタマーポータルに登録するには portal を使用します。Red Hat Satellite 6 で登録するには、satellite を使用します。
REG_ORG
イメージを登録する組織
REG_POOL_ID
製品のサブスクリプション情報のプール ID
REG_PASSWORD
イメージを登録するユーザーアカウントのパスワードを指定します。
REG_REPOS
リポジトリー名のコンマ区切り文字列。この文字列の各リポジトリーは subscription-manager で有効にされます。
REG_SAT_URL
オーバークラウドノードを登録する Satellite サーバーのベース URL。このパラメーターには、HTTPS URL ではなく、Satellite の HTTP URL を使用します。たとえば、https://satellite.example.com ではなく http://satellite.example.com を使用します。
REG_SERVER_URL
使用するサブスクリプションサービスのホスト名を指定します。Red Hat カスタマーポータルの場合のデフォルトは subscription.rhn.redhat.com です。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用する場合は、このパラメーターをお使いの Satellite サーバーのホスト名に設定します。
REG_USER
イメージを登録するアカウントのユーザー名を指定します。

4.4.4. ユーザーイメージのインストール

  1. カスタマーポータル (ログインが必要) から Red Hat Enterprise Linux KVM ゲストイメージをダウンロードします。
  2. DIB_LOCAL_IMAGE をダウンロードしたイメージとして定義します。

    $ export DIB_LOCAL_IMAGE=rhel-8.0-x86_64-kvm.qcow2
  3. 登録情報を設定します。Red Hat カスタマーポータルを使用する場合には、以下の情報を設定する必要があります。

    $ export REG_USER='USER_NAME'
    $ export REG_PASSWORD='PASSWORD'
    $ export REG_AUTO_ATTACH=true
    $ export REG_METHOD=portal
    $ export https_proxy='IP_address:port' (if applicable)
    $ export http_proxy='IP_address:port' (if applicable)

    Red Hat Satellite を使用する場合には、以下の情報を設定する必要があります。

    $ export REG_USER='USER_NAME'
    $ export REG_PASSWORD='PASSWORD'
    $ export REG_SAT_URL='<SATELLITE URL>'
    $ export REG_ORG='<SATELLITE ORG>'
    $ export REG_ENV='<SATELLITE ENV>'
    $ export REG_METHOD=<METHOD>

    オフラインのリポジトリーがある場合には、DIB_YUM_REPO_CONF をローカルリポジトリーの設定として定義することができます。

    $ export DIB_YUM_REPO_CONF=<path-to-local-repository-config-file>
  4. diskimage-builder ツールを使用してユーザーイメージを作成します。

    $ disk-image-create rhel8 baremetal -o rhel-image

    このコマンドにより、カーネルは rhel-image.vmlinuz として、初期 ramdisk は rhel-image.initrd として、それぞれ抽出されます。

  5. イメージを Image サービスにアップロードします。

    $ KERNEL_ID=$(openstack image create \
      --file rhel-image.vmlinuz --public \
      --container-format aki --disk-format aki \
      -f value -c id rhel-image.vmlinuz)
    $ RAMDISK_ID=$(openstack image create \
      --file rhel-image.initrd --public \
      --container-format ari --disk-format ari \
      -f value -c id rhel-image.initrd)
    $ openstack image create \
      --file rhel-image.qcow2   --public \
      --container-format bare \
      --disk-format qcow2 \
      --property kernel_id=$KERNEL_ID \
      --property ramdisk_id=$RAMDISK_ID \
      rhel-image

4.5. デプロイインターフェースの設定

ベアメタルノードをプロビジョニングする場合には、オーバークラウド上の Ironic サービスは、ベアメタルノード上のディスクにベースオペレーティングシステムのイメージを書き込みます。デフォルトでは、デプロイインターフェースは iSCSI マウントにイメージをマウントし、そのイメージを各ノードのディスクにコピーします。あるいは、直接デプロイ を使用して、ディスクイメージを HTTP の保管場所から直接ベアメタルノード上のディスクに書き込むこともできます。

4.5.1. デプロイプロセスの概要

プロビジョニングプロセスでは、デプロイインターフェースが重要な役割を果たします。デプロイインターフェースはデプロイメントをオーケストレーションし、イメージをターゲットディスクに転送するメカニズムを定義します。

前提条件
  • ironic-conductor を実行する Bare Metal サービスノードに設定された依存関係パッケージ。
  • OpenStack Compute (nova) が Bare Metal サービスのエンドポイントを使用するように設定されていること。
  • 利用可能なハードウェア用にフレーバーが作成され、nova が正しいフレーバーから新規ノードを起動すること。
  • Glance で以下のイメージが利用可能であること。

    • bm-deploy-kernel
    • bm-deploy-ramdisk
    • user-image
    • user-image-vmlinuz
    • user-image-initrd
  • Ironic API サービスに登録するためのハードウェア
ワークフロー

以下に示すワークフローの例を使用して、標準的なデプロイプロセスについて説明します。使用する ironic ドライバーインターフェースによって、一部の手順が異なる場合があります。

  1. Nova スケジューラーが Nova API からインスタンスのブート要求を受け取る。
  2. Nova スケジューラーが該当するハイパーバイザーを識別し、ターゲットの物理ノードを識別する。
  3. Nova Compute マネージャーが選択したハイパーバイザーのリソースを要求する。
  4. Nova のブート要求が指定するネットワークインターフェースに基づき、Nova Compute マネージャーがバインド前のテナント仮想インターフェース (VIF) を Networking サービスに作成する。
  5. Nova Compute が Nova Compute の仮想レイヤーから driver.spawn を呼び出し、必要なすべての情報が含まれる子タスクを作成する。子タスク作成プロセス中に、仮想ドライバーは以下の処理を完了します。

    1. デプロイイメージ、インスタンスの UUID、要求された機能、およびフレーバーの特性に関する情報で、ターゲットの ironic ノードを更新する。
    2. ironic API をコールして、ターゲットノードの電源およびデプロイインターフェースを検証する。
    3. VIF をノードに接続する。それぞれの neutron ポートは、任意の ironic ポートまたはグループにアタッチすることができます。ポートグループはポートに優先します。
    4. コンフィグドライブを生成する。
  6. Nova ironic 仮想ドライバーが、Ironic API を使用してベアメタルノードに対応する Ironic Conductor にデプロイ要求を発行する。
  7. 仮想インターフェースが接続され、PXE/TFTP オプションを設定するために Neutron API が DHCP を更新する。
  8. ironic ノードのブートインターフェースが (i)PXE 設定を準備し、デプロイカーネルおよび ramdisk をキャッシュする。
  9. ironic ノードの管理インターフェースがコマンドを発行し、ノードのネットワークブートを有効にする。
  10. 必要に応じて、ironic ノードのデプロイインターフェースがインスタンスイメージ、カーネル、および ramdisk をキャッシュする。
  11. ironic ノードの電源インターフェースがノードに電源投入を指示する。
  12. ノードがデプロイ ramdisk を起動する。
  13. iSCSI デプロイメントの場合には、Conductor が iSCSI 経由でイメージを物理ノードにコピーする。直接デプロイメントの場合には、デプロイ ramdisk が一時 URL からイメージをダウンロードする。この URL は、Swift API と互換性のあるオブジェクトストアまたは HTTP の URL でなければなりません。
  14. ノードのブートインターフェースがインスタンスイメージを参照するように PXE 設定を切り替え、ramdisk エージェントにノードのソフトパワーオフを指示する。ソフトパワーオフに失敗した場合には、ベアメタルノードの電源は IPMI/BMC により切断されます。
  15. デプロイインターフェースがネットワークインターフェースにすべてのプロビジョニングポートの削除を指示し、テナントポートをノードにバインドし、ノードの電源を投入する。

これで、新規ベアメタルノードのプロビジョニングの状態が active になります。

4.5.2. オーバークラウドにおける直接デプロイインターフェースの設定

iSCSI デプロイインターフェースがデフォルトのデプロイインターフェースです。ただし、直接デプロイインターフェースを有効にして、イメージを HTTP の保管場所からターゲットディスクにダウンロードすることができます。

注記

オーバークラウドノードのメモリー tmpfs には、少なくとも 8 GB の RAM が必要です。

手順
  1. カスタム環境ファイル /home/stack/templates/direct_deploy.yaml を作成または変更し、IronicEnabledDeployInterfaces パラメーターおよび IronicDefaultDeployInterface パラメーターを指定します。

    parameter_defaults:
      IronicEnabledDeployInterfaces: direct
      IronicDefaultDeployInterface: direct

    iscsi を使用するようにノードを登録する場合には、IronicEnabledDeployInterfaces パラメーターに iscsi の値を含めます。

    parameter_defaults:
      IronicEnabledDeployInterfaces: direct,iscsi
      IronicDefaultDeployInterface: direct
  2. デフォルトでは、各ノードの Bare Metal サービス (ironic) エージェントは、HTTP リンクを通じて Object Storage サービス (swift) に保管されているイメージを取得します。あるいは、Ironic は、ironic-conductor HTTP サーバーを通じて、このイメージを直接ノードにストリーミングすることもできます。イメージを提供するサービスを変更するには、/home/stack/templates/direct_deploy.yaml ファイルの IronicImageDownloadSourcehttp に設定します。

    parameter_defaults:
      IronicEnabledDeployInterfaces: direct
      IronicDefaultDeployInterface: direct
      IronicImageDownloadSource: http
  3. オーバークラウドのデプロイメントにカスタム環境ファイルを追加します。

    $ openstack overcloud deploy \
      --templates \
      ...
      -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services/ironic.yaml \
      -e /home/stack/templates/direct_deploy.yaml \
      ...

    デプロイメントが完了するまで待ちます。

注記

IronicDefaultDeployInterface を指定しない、または別のデプロイインターフェースを使用する場合には、ノードを作成または更新する際にデプロイインターフェースを指定します。

+

$ openstack baremetal node create --driver ipmi --deploy-interface direct
$ openstack baremetal node set <NODE> --deploy-interface direct

4.6. ベアメタルノードとしての物理マシンの追加

ベアメタルノードの登録には 2 つの方法があります。

  1. ノードの詳細情報を記載したインベントリーファイルを作成し、そのファイルを Bare Metal サービスにインポートしてノードを利用できるようにします。
  2. 物理ノードをベアメタルノードとして登録してから、手動でハードウェア情報を追加し、各イーサネットの MAC アドレス用にポートを作成します。これらの手順は、overcloudrc ファイルが配置されている任意のノードで実行できます。

本項では、両方の方法について詳しく説明します。

物理マシンの登録後、新規リソースは Compute に直ぐには通知されません。これは、Compute のリソーストラッカーが定期的にしか同期していないためです。次の定期タスクが実行されると、変更が認識されるようになります。この値 scheduler_driver_task_period は、/etc/nova/nova.conf で更新することができます。デフォルトの間隔は 60 秒です。

4.6.1. インベントリーファイルを使用したベアメタルノードの登録

  1. ノードの詳細情報を記載したファイル overcloud-nodes.yaml を作成します。1 つのファイルで複数のノードを登録することが可能です。

    nodes:
        - name: node0
          driver: ipmi
          driver_info:
            ipmi_address: <IPMI_IP>
            ipmi_username: <USER>
            ipmi_password: <PASSWORD>
          properties:
            cpus: <CPU_COUNT>
            cpu_arch: <CPU_ARCHITECTURE>
            memory_mb: <MEMORY>
            local_gb: <ROOT_DISK>
            root_device:
                serial: <SERIAL>
          ports:
            - address: <PXE_NIC_MAC>

    以下の値を置き換えてください。

    • <IPMI_IP> は、Bare Metal コントローラーのアドレスに置き換えます。
    • <USER> は、ユーザー名に置き換えます。
    • <PASSWORD> は、パスワードに置き換えます。
    • <CPU_COUNT> は、CPU の数に置き換えます。
    • <CPU_ARCHITECTURE> は、CPU のアーキテクチャー種別に置き換えます。
    • <MEMORY> は、メモリー容量 (MiB 単位) に置き換えます。
    • <ROOT_DISK> は、ルートディスクの容量 (GiB 単位) に置き換えます。
    • <MAC_ADDRESS> は、PXE ブートで使用する NIC の MAC アドレスに置き換えます。

      マシンに複数のディスクがある場合に限り、root_device を含める必要があります。<SERIAL> は、デプロイメントに使用するディスクのシリアル番号に置き換えます。

  2. Identity を管理ユーザーとして使用するためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  3. インベントリーファイルを ironic にインポートします。

    $ openstack baremetal create overcloud-nodes.yaml
  4. これで、ノードは enroll の状態となります。
  5. 各ノードでデプロイカーネルとデプロイ ramdisk を指定します。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --driver-info deploy_kernel=KERNEL_UUID \
      --driver-info deploy_ramdisk=INITRAMFS_UUID

    以下の値を置き換えてください。

    • NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。
    • KERNEL_UUID は、Image サービスにアップロードした カーネル デプロイイメージの一意識別子に置き換えます。この値は以下のコマンドで確認します。

      $ openstack image show bm-deploy-kernel -f value -c id
    • INITRAMFS_UUID は、Image サービスにアップロードした ramdisk イメージの一意識別子に置き換えます。この値は以下のコマンドで確認します。

      $ openstack image show bm-deploy-ramdisk -f value -c id
  6. ノードのプロビジョニング状態を available に設定します。

    $ openstack baremetal node manage _NODE_UUID_
    $ openstack baremetal node provide _NODE_UUID_

    ノードのクリーニングを有効にしている場合には、Bare Metal サービスがノードをクリーニングします。

  7. ノードが正常に登録されたことを確認します。

    $ openstack baremetal node list

    ノードを登録した後にその状態が表示されるまで時間がかかる場合があります。

4.6.2. ベアメタルノードの手動登録

  1. Identity を管理ユーザーとして使用するためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. 新しいノードを追加します。

    $ openstack baremetal node create --driver ipmi --name NAME

    ノードを作成するには、ドライバー名を指定する必要があります。この例では ipmi を使用しています。異なるドライバーを使用するには、IronicEnabledDrivers パラメーターを設定してそのドライバーを有効にする必要があります。サポートされているドライバーについての詳しい情報は、「付録A Bare Metal のドライバー」を参照してください。

    重要

    ノードの一意識別子を書き留めておきます。

  3. ノードのドライバーの情報を更新して、Bare Metal サービスがノードを管理できるようにします。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --driver_info PROPERTY=VALUE \
      --driver_info PROPERTY=VALUE

    以下の値を置き換えてください。

    • NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。
    • PROPERTY は、ironic driver-properties コマンドで返された必要なプロパティーに置き換えます。
    • VALUE は、プロパティーの有効な値に置き換えます。
  4. ノードドライバーのデプロイカーネルとデプロイ ramdisk を指定します。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --driver-info deploy_kernel=KERNEL_UUID \
      --driver-info deploy_ramdisk=INITRAMFS_UUID

    以下の値を置き換えてください。

    • NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。
    • KERNEL_UUID は、Image サービスにアップロードされた .kernel イメージの一意識別子に置き換えます。
    • INITRAMFS_UUID は、Image サービスにアップロードされた .initramfs イメージの一意識別子に置き換えます。
  5. ノードのプロパティーを更新して、ノード上のハードウェアの仕様と一致するようにします。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --property cpus=CPU \
      --property memory_mb=RAM_MB \
      --property local_gb=DISK_GB \
      --property cpu_arch=ARCH

    以下の値を置き換えてください。

    • NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。
    • CPU は、CPU の数に置き換えます。
    • RAM_MB は、メモリー (MB 単位) に置き換えます。
    • DISK_GB は、ディスク容量 (GB 単位) に置き換えます。
    • ARCH は、アーキテクチャー種別に置き換えます。
  6. オプション: 初回のデプロイの後には、ironic-conductor から PXE を使用する代わりに、ノードのディスクにインストールされたローカルのブートローダーからリブートするようにノードを設定します。ノードのプロビジョニングに使用するフレーバーでも、ローカルブートの機能を設定する必要があります。ローカルブートを有効にするには、ノードのデプロイに使用するイメージに grub2 が含まれている必要があります。ローカルブートを以下のように設定します。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --property capabilities="boot_option:local"

    NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。

  7. プロビジョニングネットワーク上の NIC の MAC アドレスを使用してポートを作成することにより、Bare Metal サービスにノードのネットワークカードを通知します。

    $ openstack baremetal port create --node NODE_UUID MAC_ADDRESS

    NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。MAC_ADDRESS は、PXE ブートに使用する NIC の MAC アドレスに置き換えます。

  8. 複数のディスクがある場合には、ルートデバイスのヒントを設定してください。これにより、デプロイメントに使用すべきディスクがデプロイ ramdisk に通知されます。

    $ openstack baremetal node set NODE_UUID \
      --property root_device={"PROPERTY": "VALUE"}

    以下の値に置き換えてください。

    • NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。
    • PROPERTY と VALUE は、デプロイメントに使用するディスクの情報に置き換えます (例: root_device='{"size": 128}')。

      以下のプロパティーがサポートされています。

      • model (文字列): デバイスの ID
      • vendor (文字列): デバイスのベンダー
      • serial (文字列): ディスクのシリアル番号
      • hctl (文字列): SCSI のホスト、チャンネル、ターゲット、Lun
      • size (整数):デバイスのサイズ (GB 単位)
      • wwn (文字列): 一意のストレージ ID
      • wwn_with_extension (文字列): ベンダー拡張子を追加した一意のストレージ ID
      • wwn_vendor_extension (文字列): 一意のベンダーストレージ ID
      • rotational (ブール値): 回転式デバイス (HDD) には true、そうでない場合 (SSD) には false
      • name (文字列): デバイス名 (例: /dev/sdb1)。このプロパティーは、永続デバイス名が付いたデバイスにのみ使用してください。

        注記

        複数のプロパティーを指定する場合には、デバイスはそれらの全プロパティーと一致する必要があります。

  9. ノードの設定を検証します。

    $ openstack baremetal node validate NODE_UUID
    +------------+--------+---------------------------------------------+
    | Interface  | Result | Reason                                      |
    +------------+--------+---------------------------------------------+
    | boot       | False  | Cannot validate image information for node  |
    |            |        | a02178db-1550-4244-a2b7-d7035c743a9b        |
    |            |        | because one or more parameters are missing  |
    |            |        | from its instance_info. Missing are:        |
    |            |        | ['ramdisk', 'kernel', 'image_source']       |
    | console    | None   | not supported                               |
    | deploy     | False  | Cannot validate image information for node  |
    |            |        | a02178db-1550-4244-a2b7-d7035c743a9b        |
    |            |        | because one or more parameters are missing  |
    |            |        | from its instance_info. Missing are:        |
    |            |        | ['ramdisk', 'kernel', 'image_source']       |
    | inspect    | None   | not supported                               |
    | management | True   |                                             |
    | network    | True   |                                             |
    | power      | True   |                                             |
    | raid       | True   |                                             |
    | storage    | True   |                                             |
    +------------+--------+---------------------------------------------+

    NODE_UUID は、ノードの一意識別子に置き換えます。もしくは、ノードの論理名を使用します。openstack baremetal node validate コマンドの出力には、各インターフェースが True または None のいずれかと報告されるはずです。None とマークされたインターフェースは、設定していないか、ドライバーがサポートしていないインターフェースです。

    注記

    「ramdisk」、「kernel」、および「image_source」のパラメーターが指定されていないと、インターフェースの検証に失敗する場合があります。Compute サービスは、デプロイメントプロセスの最初に未指定のパラメーターを設定するので、この結果は問題ありません。

4.7. ホストアグリゲートを使用した物理マシンと仮想マシンのプロビジョニングの分離

OpenStack Compute は、ホストアグリゲートを使用してアベイラビリティーゾーンをパーティション分割し、特定の共有プロパティーが指定されたノードをグループ化します。インスタンスがプロビジョニングされると、Compute のスケジューラーがフレーバーのプロパティーをホストアグリゲートに割り当てられたプロパティーと比較して、インスタンスが正しいアグリゲート内の正しいホストに (物理マシン上または仮想マシンとして) プロビジョニングされたことを確認します。

本項の手順を実施して、以下の操作を行います。

  • baremetal プロパティーをフレーバーに追加して、true または false に設定する。
  • 一致する baremetal プロパティーを設定して、ベアメタルホスト用とコンピュートノード用のホストアグリゲートを別々に作成する。1 つのアグリゲートでグループ化されたノードは、このプロパティーを継承します。

ホストアグリゲートの作成

  1. ベアメタル用のフレーバーで baremetal プロパティーを true に設定します。

    $ openstack flavor set baremetal --property baremetal=true
  2. 仮想インスタンスに使用するフレーバーで baremetal プロパティーを false に設定します。

    $ openstack flavor set FLAVOR_NAME --property baremetal=false
  3. baremetal-hosts という名前のホストアグリゲートを作成します。

    $ openstack aggregate create --property baremetal=true baremetal-hosts
  4. 各コントローラーノードを baremetal-hosts アグリゲートに追加します。

    $ openstack aggregate add host baremetal-hosts HOSTNAME
    注記

    NovaIronic サービスでコンポーザブルロールを作成していた場合には、このサービスがあるノードをすべて baremetal-hosts アグリゲートに追加します。デフォルトでは、NovaIronic サービスがあるのはコントローラーノードのみです。

  5. virtual-hosts という名前のホストアグリゲートを作成します。

    $ openstack aggregate create --property baremetal=false virtual-hosts
  6. 各コンピュートノードを virtual-hosts アグリゲートに追加します。

    $ openstack aggregate add host virtual-hosts HOSTNAME
  7. オーバークラウドのデプロイ時に以下の Compute フィルタースケジューラーを追加していなかった場合には、この時点で /etc/nova/nova.confscheduler_default_filters セクションの既存リストに追加します。

    AggregateInstanceExtraSpecsFilter

第5章 ベアメタルノードの管理

本章では、登録済みのベアメタルノードで物理マシンをプロビジョニングする方法について説明します。インスタンスは、コマンドラインまたは OpenStack Dashboard で起動することができます。

5.1. コマンドラインインターフェースを使用したインスタンスの起動

openstack コマンドラインインターフェースを使用してベアメタルインスタンスをデプロイします。

コマンドライン上でのインスタンスのデプロイ

  1. Identity に管理ユーザーとしてアクセスするためのシェルを設定します。

    $ source ~/overcloudrc
  2. インスタンスをデプロイします。

    $ openstack server create \
      --nic net-id=NETWORK_UUID \
      --flavor baremetal \
      --image IMAGE_UUID \
      INSTANCE_NAME

    以下の値を置き換えてください。

    • NETWORK_UUID は、Bare Metal サービスで使用するために作成したネットワークの一意識別子に置き換えます。
    • IMAGE_UUID は、Image サービスにアップロードされたディスクイメージの一意識別子に置き換えます。
    • INSTANCE_NAME は、ベアメタルインスタンスの名前に置き換えます。

    セキュリティーグループにインスタンスを割り当てるには、--security-group SECURITY_GROUP オプションを指定します。SECURITY_GROUP は、そのセキュリティーグループの名前に置き換えてください。インスタンスを複数のグループに追加するには、このオプションを繰り返します。セキュリティーグループの管理についての詳しい情報は、『 Users and Identity Management Guide 』を参照してください。

  3. インスタンスのステータスを確認します。

    $ openstack server list --name INSTANCE_NAME

5.2. Dashboard を使用したインスタンスの起動

Dashboard のグラフィカルユーザーインターフェースを使用してベアメタルインスタンスをデプロイします。

Dashboard でのインスタンスのデプロイ

  1. http[s]://DASHBOARD_IP/dashboard で Dashboard にログインします。
  2. プロジェクト > コンピュート > インスタンス の順にクリックします。
  3. インスタンスの起動 をクリックします。

    • 詳細 タブで インスタンス名 を指定して、インスタンス数1 を選択します。
    • ソース タブで ブートソース の選択 から イメージ を 選択し、上 向き矢印( 矢印)の記号をクリックしてオペレーティングシステムのディスクイメージを選択します。選択したイメージが 割り当て済み に移動します。
    • フレーバー タブで baremetal を選択します。
    • ネットワーク タブで、 (上向き矢印) および (下向き矢印) ボタンを使用して必要なネットワークを 利用可能 から 割り当て済み に移動します。ここでは、必ず Bare Metal サービス用に作成した共有ネットワークを選択してください。
    • インスタンスをセキュリティーグループに割り当てるには、セキュリティーグループ タブで矢印を使用してそのグループを 割り当て済み に移動します。
  4. インスタンスの起動 をクリックします。

5.3. Bare Metal Provisioning サービスでのポートグループの設定

注記

ベアメタルノード向けのポートグループ機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト目的にのみご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビュー機能についての詳しい情報は、「対象範囲の詳細」を参照してください。

ポートグループ (ボンディング) の機能により、複数のネットワークインターフェースを単一の「ボンディングされた」インターフェースに統合することができます。ポートグループの設定は常に、個別のポート設定に優先します。

ポートグループに物理ネットワークがある場合には、そのポートグループ内の全ポートに同じ物理ネットワークを使用すべきです。Bare Metal Provisioning サービスは、configdrive を使用するインスタンスでのポートグループの設定をサポートしています。

注記

Bare Metal Provisioning サービス API バージョン 1.26 は、ポートグループの設定をサポートしています。

5.3.1. スイッチの設定

Bare Metal Provisioning デプロイメントでポートグループを設定するには、スイッチ上でポートグループを手動設定する必要があります。スイッチによって名前が異なる場合があるため、スイッチ上のモードとプロパティーが、ベアメタル側のモードとプロパティーに対応している状態にする必要があります。

注記

iPXE を使用するデプロイメントを起動する必要がある場合、プロビジョニングとクリーニングにはポートグループを使用できません。

ポートグループのフォールバック機能により、接続でエラーが発生した際に、1 つのポートグループ内の全ポートを個々のスイッチポートにフォールバックさせることができます。スイッチがポートグループのフォールバックをサポートしているかどうかに応じて、「--support-standalone-ports」と「--unsupport-standalone-ports」のオプションを使用することができます。

5.3.2. Bare Metal Provisioning サービスでのポートグループの設定

  1. ポートグループが属する先のノード、その名前、アドレス、モード、プロパティー、スタンドアロンポートへのフォールバックをサポートするかどうかを指定して、ポートグループを作成します。

    # openstack baremetal port group create --node NODE_UUID --name NAME --address MAC_ADDRESS --mode MODE  --property miimon=100 --property xmit_hash_policy="layer2+3" --support-standalone-ports

    また、openstack baremetal port group set コマンドを使用してポートグループを更新することもできます。

    アドレスを指定しない場合には、デプロイされるインスタンスのポートグループアドレスは OpenStack Networking のポートと同じになります。neutron ポートが接続されていない場合には、ポートグループは設定されません。

    インターフェースの接続中には、ポートグループの優先度はポートよりも高くなるので、最初に使用されます。現在、インターフェースの接続要求で、ポートグループとポートのどちらを優先するかを指定することは できません。ポートのないポートグループは無視されます。

    注記

    ポートグループは、手動でスタンドアロンモードに設定する必要があります。そのためには、イメージ内で設定するか、configdrive を生成してノードの instance_info に追加します。ポートグループの設定が機能するには、cloud-init バージョン 0.7.7 以降を使用している必要があります。

  2. ポートをポートグループに関連付けます。

    • ポートの作成中

      # openstack baremetal port create --node NODE_UUID --address MAC_ADDRESS --port-group test
    • ポートの更新中

      # openstack baremetal port set PORT_UUID --port-group PORT_GROUP_UUID
  3. cloud-init 対応のイメージまたはボンディングをサポートしているイメージを提供することにより、インスタンスを起動します。

    ポートグループが適切に設定されているかを確認するには、以下のコマンドを実行します。

    # cat /proc/net/bonding/bondX

    X は、cloud-init が設定済みの各ポートグループに対して自動生成する番号です。0 で始まり、ポートグループを設定するたびに 1 つずつ増えます。

5.4. ホストから IP アドレスへのマッピングの確認

各 IP アドレスが割り当てられているホストおよびベアメタルノードを確認するには、以下のコマンドを使用します。

この機能により、ホストに直接アクセスする必要なく、ホストから IP へのマッピングをアンダークラウドで確認することが可能です。

(undercloud) [stack@host01 ~]$ openstack stack output show overcloud HostsEntry --max-width 80

+--------------+---------------------------------------------------------------+
| Field        | Value                                                         |
+--------------+---------------------------------------------------------------+
| description  | The content that should be appended to your /etc/hosts if you |
|              | want to get                                                   |
|              | hostname-based access to the deployed nodes (useful for       |
|              | testing without                                               |
|              | setting up a DNS).                                            |
|              |                                                               |
| output_key   | HostsEntry                                                    |
| output_value | 172.17.0.10 overcloud-controller-0.localdomain overcloud-     |
|              | controller-0                                                  |
|              | 10.8.145.18 overcloud-controller-0.external.localdomain       |
|              | overcloud-controller-0.external                               |
|              | 172.17.0.10 overcloud-controller-0.internalapi.localdomain    |
|              | overcloud-controller-0.internalapi                            |
|              | 172.18.0.15 overcloud-controller-0.storage.localdomain        |
|              | overcloud-controller-0.storage                                |
|              | 172.21.2.12 overcloud-controller-0.storagemgmt.localdomain    |
|              | overcloud-controller-0.storagemgmt                            |
|              | 172.16.0.15 overcloud-controller-0.tenant.localdomain         |
|              | overcloud-controller-0.tenant                                 |
|              | 10.8.146.13 overcloud-controller-0.management.localdomain     |
|              | overcloud-controller-0.management                             |
|              | 10.8.146.13 overcloud-controller-0.ctlplane.localdomain       |
|              | overcloud-controller-0.ctlplane                               |
|              |                                                               |
|              | 172.17.0.21 overcloud-compute-0.localdomain overcloud-        |
|              | compute-0                                                     |
|              | 10.8.146.12 overcloud-compute-0.external.localdomain          |
|              | overcloud-compute-0.external                                  |
|              | 172.17.0.21 overcloud-compute-0.internalapi.localdomain       |
|              | overcloud-compute-0.internalapi                               |
|              | 172.18.0.20 overcloud-compute-0.storage.localdomain           |
|              | overcloud-compute-0.storage                                   |
|              | 10.8.146.12 overcloud-compute-0.storagemgmt.localdomain       |
|              | overcloud-compute-0.storagemgmt                               |
|              | 172.16.0.16 overcloud-compute-0.tenant.localdomain overcloud- |
|              | compute-0.tenant                                              |
|              | 10.8.146.12 overcloud-compute-0.management.localdomain        |
|              | overcloud-compute-0.management                                |
|              | 10.8.146.12 overcloud-compute-0.ctlplane.localdomain          |
|              | overcloud-compute-0.ctlplane                                  |
|              |                                                               |
|              |                                                               |
|              |                                                               |
|              |                                                               |
|              | 10.8.145.16  overcloud.localdomain                            |
|              | 10.8.146.7  overcloud.ctlplane.localdomain                    |
|              | 172.17.0.19  overcloud.internalapi.localdomain                |
|              | 172.18.0.19  overcloud.storage.localdomain                    |
|              | 172.21.2.16  overcloud.storagemgmt.localdomain                |
+--------------+---------------------------------------------------------------+

特定のホストに絞り込むには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) [stack@host01 ~]$ openstack stack output show overcloud HostsEntry -c output_value -f value | grep overcloud-controller-0

172.17.0.12 overcloud-controller-0.localdomain overcloud-controller-0
10.8.145.18 overcloud-controller-0.external.localdomain overcloud-controller-0.external
172.17.0.12 overcloud-controller-0.internalapi.localdomain overcloud-controller-0.internalapi
172.18.0.12 overcloud-controller-0.storage.localdomain overcloud-controller-0.storage
172.21.2.13 overcloud-controller-0.storagemgmt.localdomain overcloud-controller-0.storagemgmt
172.16.0.19 overcloud-controller-0.tenant.localdomain overcloud-controller-0.tenant
10.8.146.13 overcloud-controller-0.management.localdomain overcloud-controller-0.management
10.8.146.13 overcloud-controller-0.ctlplane.localdomain overcloud-controller-0.ctlplane

ホストをベアメタルノードにマッピングするには、以下のコマンドを実行します。

(undercloud) [stack@host01 ~]$ openstack baremetal node list --fields uuid name instance_info -f json
[
  {
    "UUID": "c0d2568e-1825-4d34-96ec-f08bbf0ba7ae",
    "Instance Info": {
      "root_gb": "40",
      "display_name": "overcloud-compute-0",
      "image_source": "24a33990-e65a-4235-9620-9243bcff67a2",
      "capabilities": "{\"boot_option\": \"local\"}",
      "memory_mb": "4096",
      "vcpus": "1",
      "local_gb": "557",
      "configdrive": "******",
      "swap_mb": "0",
      "nova_host_id": "host01.lab.local"
    },
    "Name": "host2"
  },
  {
    "UUID": "8c3faec8-bc05-401c-8956-99c40cdea97d",
    "Instance Info": {
      "root_gb": "40",
      "display_name": "overcloud-controller-0",
      "image_source": "24a33990-e65a-4235-9620-9243bcff67a2",
      "capabilities": "{\"boot_option\": \"local\"}",
      "memory_mb": "4096",
      "vcpus": "1",
      "local_gb": "557",
      "configdrive": "******",
      "swap_mb": "0",
      "nova_host_id": "host01.lab.local"
    },
    "Name": "host3"
  }
]

5.5. 仮想ネットワークインターフェースの接続と切断

Bare Metal Provisioning サービスには、仮想ネットワークインターフェース (たとえば、OpenStack Networking サービスで使用される仮想ネットワークインターフェース) と物理ネットワークインターフェース (NIC) との間のマッピングを管理するための API があります。これらのインターフェースは各 Bare Metal Provisioning ノードに対して設定可能で、openstack baremetal node vif* コマンドを使用して仮想ネットワークインターフェース (VIF) から物理ネットワークインターフェース (PIF) へのマッピングロジックを設定することができます。

以下の例で、VIF を接続および切断する手順を説明します。

  1. ベアメタルノードに現在接続されている VIF の ID を一覧表示します。

    $ openstack baremetal node vif list baremetal-0
    +--------------------------------------+
    | ID                                   |
    +--------------------------------------+
    | 4475bc5a-6f6e-466d-bcb6-6c2dce0fba16 |
    +--------------------------------------+
  2. VIF がアタッチされた後に、Bare Metal サービスは OpenStack Networking サービス内の仮想ポートを実際の物理ポートの MAC アドレスで更新します。

    これは、以下のコマンドで確認できます。

    $ openstack port show 4475bc5a-6f6e-466d-bcb6-6c2dce0fba16 -c mac_address -c fixed_ips
    +-------------+-----------------------------------------------------------------------------+
    | Field       | Value                                                                       |
    +-------------+-----------------------------------------------------------------------------+
    | fixed_ips   | ip_address='192.168.24.9', subnet_id='1d11c677-5946-4733-87c3-23a9e06077aa' |
    | mac_address | 00:2d:28:2f:8d:95                                                           |
    +-------------+-----------------------------------------------------------------------------+
  3. baremetal-0 ノードを作成したネットワーク上に新規ポートを作成します。

    $ openstack port create --network baremetal --fixed-ip ip-address=192.168.24.24 baremetal-0-extra
  4. インスタンスからポートを削除します。

    $ openstack server remove port overcloud-baremetal-0 4475bc5a-6f6e-466d-bcb6-6c2dce0fba16
  5. その IP アドレスがリストには存在しなくなったことを確認します。

    $ openstack server list
  6. そのノードに接続されている VIF があるかどうかを確認します。

    $ openstack baremetal node vif list baremetal-0
    $ openstack port list
  7. 新規作成されたポートを追加します。

    $ openstack server add port overcloud-baremetal-0 baremetal-0-extra
  8. 新しい IP アドレスに新しいポートが表示されることを確認します。

    $ openstack server list
    +--------------------------------------+-------------------------+--------+------------------------+----------------+---------+
    | ID                                   | Name                    | Status | Networks               | Image          | Flavor  |
    +--------------------------------------+-------------------------+--------+------------------------+----------------+---------+
    | 53095a64-1646-4dd1-bbf3-b51cbcc38789 | overcloud-controller-2  | ACTIVE | ctlplane=192.168.24.7  | overcloud-full | control |
    | 3a1bc89c-5d0d-44c7-a569-f2a3b4c73d65 | overcloud-controller-0  | ACTIVE | ctlplane=192.168.24.8  | overcloud-full | control |
    | 6b01531a-f55d-40e9-b3a2-6d02be0b915b | overcloud-controller-1  | ACTIVE | ctlplane=192.168.24.16 | overcloud-full | control |
    | c61cc52b-cc48-4903-a971-073c60f53091 | overcloud-novacompute-0overcloud-baremetal-0 | ACTIVE | ctlplane=192.168.24.24 | overcloud-full | compute |
    +--------------------------------------+-------------------------+--------+------------------------+----------------+---------+
  9. VIF ID が新規ポートの UUID であるかどうかを確認します。

    $ openstack baremetal node vif list baremetal-0
    +--------------------------------------+
    | ID                                   |
    +--------------------------------------+
    | 6181c089-7e33-4f1c-b8fe-2523ff431ffc |
    +--------------------------------------+
  10. OpenStack Networking ポートの MAC アドレスが更新され、Bare Metal サービスポートの中の 1 つと一致しているかどうかを確認します。

    $ openstack port show 6181c089-7e33-4f1c-b8fe-2523ff431ffc -c mac_address -c fixed_ips
    +-------------+------------------------------------------------------------------------------+
    | Field       | Value                                                                        |
    +-------------+------------------------------------------------------------------------------+
    | fixed_ips   | ip_address='192.168.24.24', subnet_id='1d11c677-5946-4733-87c3-23a9e06077aa' |
    | mac_address | 00:2d:28:2f:8d:95                                                            |
    +-------------+------------------------------------------------------------------------------+
  11. 新規 IP アドレスを認識するように、ベアメタルノードを再起動します。

    $ openstack server reboot overcloud-baremetal-0

    インターフェースを接続または切断した後には、ベアメタルの OS は変更されたネットワークインターフェースを削除/追加/変更します。ポートを置き換える場合、DHCP 要求が新規 IP アドレスを取得しますが、古い DHCP リースがまだ有効なので、多少時間がかかる場合があります。変更を即時に適用する最も簡単な方法は、ベアメタルホストをリブートすることです。

5.6. Bare Metal サービスの通知の設定

Bare Metal サービスを設定して、サービス内で発生するさまざまなイベントの通知を表示することができます。このような通知は、課金目的やデータストアの監視などで外部のサービスが使用することができます。本項では、この通知を有効にする方法について説明します。

Bare Metal サービスの通知を有効にするには、ironic.conf 設定ファイルで以下のオプションを設定する必要があります。

  • [DEFAULT] セクションの notification_level オプションは、通知送信の最小の優先度を決定します。このオプションの値は、debuginfowarningerrorcritical のいずれかに設定することができます。オプションが warning に設定されると、優先度が warningerror、または critical のいずれかである通知はすべて送信されますが、優先度が debug または info の通知は送信させません。このオプションが設定されていない場合には、通知は一切送信されません。利用可能な各通知の優先度は、以下に記載しています。
  • [oslo_messaging_notifications] セクションの transport_url のオプションは、通知の送信に使用されるメッセージバスを決定します。このオプションが設定されていない場合には、RPC に使われるデフォルトのトランスポートが使用されます。

通知はすべて、メッセージバス内の ironic_versioned_notifications トピックで発行されます。通常は、メッセージバスを通過する各種別のメッセージは、メッセージの内容を説明しているトピックに関連付けられます。

注記

通知は失われる可能性があり、通知がメッセージバスを通ってエンドユーザーに届く保証はありません。

5.7. 電源異常からの自動復帰の設定

Ironic には、ノードの電源、クリーニング、およびレスキューアボートの失敗を記録する文字列フィールド fault があります。

表5.1 Ironic ノードの異常

異常説明

power failure

電源の同期に失敗したため (リトライ回数の最大値の超過)、ノードはメンテナンスモードに移行しています。

clean failure

クリーニング操作に失敗したため、ノードはメンテナンスモードに移行しています。

rescue abort failure

レスキューアボート時のクリーニング操作に失敗したため、ノードはメンテナンスモードに移行しています。

none

異常は発生していません。

Conductor は、このフィールドの値を定期的に確認します。Conductor が power failure の状態を検出し、ノードの電源の復旧に成功すると、ノードはメンテナンスモードから抜け出し動作状態に戻ります。

注記

オペレーターが手動でノードをメンテナンスモードに切り替えた場合には、Conductor が自動的にノードをメンテナンスモードから移行させることはありません。

デフォルトの間隔は 300 秒ですが、hieradata を使用して director からこの間隔を設定することができます。

ironic::conductor::power_failure_recovery_interval

電源異常からの自動復帰を無効にするには、値を 0 に設定します。

5.8. オーバークラウドノードのイントロスペクション

オーバークラウドノードのイントロスペクションを実施して、ノードの詳細を監視することができます。

  1. source コマンドで rc ファイルを読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  2. イントロスペクションコマンドを実行します。

    $ openstack baremetal introspection start [--wait] <NODENAME>

    <NODENAME> は、検査するノードの名前に置き換えます。

  3. イントロスペクションのステータスを確認します。

    $ openstack baremetal introspection status <NODENAME>

    <NODENAME> は、ノード名に置き換えます。

第6章 インスタンスとしてのベアメタルノードの使用

このユースケースでは、ベアメタルノードを下層のハードウェアとして使用するインスタンスをデプロイすることができます。Sahara は、ビッグデータクラスター作成時に 2 つの内部タスクを実行します。

  1. Heat は、インスタンスの作成 (必須ネットワークを含む) に使用されます。
  2. インスタンスの準備が整ったら (openstack server listACTIVE の状態)、sahara は各ノードに接続して、指定されたビッグデータプラグインの設定を適用します。これには、ビッグデータインスタンスの準備が整うまでの追加のソフトウェアのインストール、サービスの起動、およびその他のタスクが含まれます。

6.1. 前提条件

  • オーバークラウド上で Bare Metal Provisioning (ironic) と Data Processing (sahara) をデプロイする際には、デフォルトのパラメーターを使用します。
  • ベアメタルノードはすべて、事前定義済みのフレーバー(本項では baremetal_flavorと呼ぶ)の下でグループ化される必要があります。
  • 仮想ノードとベアメタルノードを組み合わせた混合設定はテスト済みではないため、サポートされない場合があります。

通常、仮想インスタンスはプライベートプロジェクトネットワークに接続され、パブリックネットワーク上の Floating IP プールを介してアクセス可能となります。ただし、ironic によって管理されるベアメタルマシンが単一のネットワークでのみアクセス可能な場合には、問題が発生する場合があります。そのため、sahara のクラスターは Floating IP アドレスプールを使用せずに、そのネットワークのみを使用するように設定すべきです。この問題は、ベアメタルノードに限られず、sahara が仮想マシンのみで使用されている場合にも発生する可能性があります。

6.2. イメージの生成

sahara-image-elements (追加の baremetal スイッチを含む) を使用してベアメタルノード用のイメージを生成する必要がある可能性があります。その場合は、カーネルと initrd イメージも生成する必要があります。ただし、通常 sahara-image-elements によって生成されるイメージは完全なディスクイメージとして機能するため、ベアメタルイメージを生成する必要が全くない場合もあります。フレーバーには一時ディスクが必要で、それによりさらにパーティションイメージが必要となるため、ベアメタルイメージは、MapR プラグインに必要な場合があります。現在、生成スクリプトには、ベアメタルイメージの作成を妨げる既知の問題があります。これは、今後の更新で解決される見込みです。

イメージが生成されたら、イメージを glance にアップロードし、続いてイメージを sahara で登録する必要があります。

6.3. クラスターの作成

CDH プラグインを使用したテストシナリオの例を以下に示します。

  1. CDH ノードグループテンプレートおよびクラスターテンプレートの標準的なセットを作成します。ただし、このユースケースでは、新規の baremetal_flavor を指定する必要があり、Floating IP アドレスプールは必要ない可能性があります。たとえば、以下のように割り当てます。

    • 1x manager
    • 1x master-core
    • 1x master-additional
    • 1x worker-nm-dn
  2. dfs_replication1 に設定して有効化します。
  3. フレーバーを baremetal_flavor に設定します。
  4. クラスターを作成します。作成されるクラスターは、正常に初期化され、デプロイされるインスタンスはベアメタルノードを使用するはずです。

第7章 cinder ボリュームからのブート

本項では、OpenStack Block Storage (cinder) で作成したボリュームを OpenStack Bare Metal (ironic) で作成したベアメタルインスタンスに接続する方法について説明します。

7.1. ベアメタルノード向けの cinder ボリュームブート

OpenStack Block Storage (cinder) に保管されるブロックストレージデバイスからベアメタルノードをブートすることができます。OpenStack Bare Metal (ironic) は、iSCSI インターフェースを介してベアメタルノードをボリュームに接続します。

ironic は、オーバークラウドのデプロイメント時にこの機能を有効にします。ただし、デプロイメントの前に以下の条件を考慮してください。

  • オーバークラウドでは、cinder iSCSI バックエンドを有効にする必要があります。オーバークラウドのデプロイメント時に CinderEnableIscsiBackend heat パラメーターを true に設定します。
  • Red Hat Ceph Storage バックエンドでは、cinder ボリュームブート機能を使用することはできません。
  • ブートディスクで rd.iscsi.firmware=1 カーネルパラメーターを設定する必要があります。

7.2. cinder ボリュームブート用ノードの設定

cinder ボリュームから正常に起動するには、各ベアメタルノードで特定のオプションを設定する必要があります。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. source コマンドでオーバークラウドの認証情報を読み込みます。

    $ source ~/overcloudrc
  3. iscsi_boot 機能を true に、storage-interface を選択したノードの cinder に、それぞれ設定します。

    $ openstack baremetal node set --property capabilities=iscsi_boot:true --storage-interface cinder <NODEID>

    <NODEID> を選択したノードの ID に置き換えてください。

  4. ノードの iSCSI コネクターを作成します。

    $ openstack baremetal volume connector create --node <NODEID> --type iqn --connector-id iqn.2010-10.org.openstack.node<NUM>

    各ノードのコネクター ID は一意でなければなりません。この例では、コネクターは iqn.2010-10.org.openstack.node<NUM> です。ここで、<NUM> は各ノードの通し番号です。

7.3. ブートディスクでの iSCSI カーネルパラメーターの設定

イメージ上のカーネルで iSCSI ブートを有効にする必要があります。そのためには、QCOW2 イメージをマウントし、イメージ上で iSCSI コンポーネントを有効にします。

前提条件

  1. Red Hat Enterprise Linux QCOW2 イメージをダウンロードして、アンダークラウドの /home/stack/ ディレクトリーにコピーします。以下のページから、QCOW2 形式で Red Hat Enterprise Linux KVM イメージをダウンロードすることができます。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. QCOW2 イメージをマウントし、root ユーザーとしてアクセスします。

    1. nbd カーネルモジュールを読み込みます。

      $ sudo modprobe nbd
    2. QCOW イメージを /dev/nbd0 として接続します。

      $ sudo qemu-nbd --connect=/dev/nbd0 <IMAGE>
    3. NBD 上のパーティションを確認します。

      $ sudo fdisk /dev/nbd0 -l

      新しい Red Hat Enterprise Linux QCOW2 イメージには、パーティションが 1 つだけ含まれます。通常、そのパーティションは NBD の /dev/nbd0p1 という名前です。

    4. イメージのマウントポイントを作成します。

      mkdir /tmp/mountpoint
    5. イメージをマウントします。

      sudo mount /dev/nbd0p1 /tmp/mountpoint/
    6. イメージがホストのデバイス情報にアクセスできるように、dev ディレクトリーをマウントします。

      sudo mount -o bind /dev /tmp/mountpoint/dev
    7. ルートディレクトリーをマウントポイントに変更します。

      sudo chroot /tmp/mountpoint /bin/bash
  3. イメージ上で iSCSI を設定します。

    注記

    このステップの一部のコマンドにより、以下のエラーが返される場合があります。

    lscpu: cannot open /proc/cpuinfo: No such file or directory

    このエラーは重要ではないので、エラーを無視して構いません。

    1. resolv.conf ファイルを一時的な場所に移動します。

      # mv /etc/resolv.conf /etc/resolv.conf.bak
    2. Red Hat コンテンツ配信ネットワークの DNS 要求を解決するために、一時的な resolv.conf ファイルを作成します。以下の例では、ネームサーバーに 8.8.8.8 を使用しています。

      # echo "nameserver 8.8.8.8" > /etc/resolv.conf
    3. マウントしたイメージを Red Hat コンテンツ配信ネットワークに登録します。

      # subscription-manager register

      コマンドにより要求されたら、ユーザー名およびパスワードを入力します。

    4. Red Hat Enterprise Linux が含まれるサブスクリプションをアタッチします。

      # subscription-manager list --all --available
      # subscription-manager attach --pool <POOLID>

      <POOLID> をサブスクリプションのプール ID に置き換えます。

    5. デフォルトのリポジトリーを無効にします。

      # subscription-manager repos --disable "*"
    6. Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。

      • Red Hat Enterprise Linux 7:

        # subscription-manager repos --enable "rhel-7-server-rpms"
      • Red Hat Enterprise Linux 8:

        # subscription-manager repos --enable "rhel-8-for-x86_64-baseos-rpms"
    7. iscsi-initiator-utils パッケージをインストールします。

      # yum install -y iscsi-initiator-utils
    8. マウントしたイメージの登録を解除します。

      # subscription-manager unregister
    9. 元の resolv.conf ファイルを復元します。

      # mv /etc/resolv.conf.bak /etc/resolv.conf
    10. マウントされたイメージのカーネルバージョンを確認します。

      # rpm -qa kernel

      たとえば、出力が kernel-3.10.0-1062.el7.x86_64 の場合、カーネルバージョンは 3.10.0-1062.el7.x86_64 になります。次のステップのために、このカーネルバージョンを書き留めておきます。

      注記

      新しい Red Hat Enterprise Linux QCOW2 イメージには、1 つのカーネルバージョンしかインストールされません。複数のカーネルバージョンがインストールされている場合は、最新のものを使用してください。

    11. initramfs イメージに network および iscsi dracut モジュールを追加します。

      # dracut --force --add "network iscsi" /boot/initramfs-<KERNELVERSION>.img <KERNELVERSION>

      <KERNELVERSION>rpm -qa kernel から取得したバージョンに置き換えます。以下の例では、カーネルバージョンに 3.10.0-1062.el7.x86_64 を使用しています。

      # dracut --force --add "network iscsi" /boot/initramfs-3.10.0-1062.el7.x86_64.img 3.10.0-1062.el7.x86_64
    12. /etc/default/grub 設定ファイルを編集し、GRUB_CMDLINE_LINUX パラメーターに rd.iscsi.firmware=1 を追加します。

      # vi /etc/default/grub

      GRUB_CMDLINE_LINUX パラメーターに rd.iscsi.firmware=1 カーネル引数を追加した例を以下に示します。

      GRUB_CMDLINE_LINUX="console=tty0 crashkernel=auto console=ttyS0,115200n8 no_timer_check net.ifnames=0 rd.iscsi.firmware=1"

      これらの変更を保存します。

      注記

      このステップで grub メニュー設定を再ビルドしないでください。この手順の後のステップで、grub メニューを一時仮想マシンとして再ビルドします。

    13. マウントされたイメージからホストオペレーティングシステムに戻ります。

      # exit
  4. イメージをアンマウントします。

    1. 一時的なマウントポイントから dev ディレクトリーをアンマウントします。

      $ sudo umount /tmp/mountpoint/dev
    2. マウントポイントからイメージをアンマウントします。

      $ sudo umount /tmp/mountpoint
    3. QCOW2 イメージを /dev/nbd0/ から切断します。

      $ sudo qemu-nbd --disconnect /dev/nbd0
  5. イメージ上で grub メニュー設定を再ビルドします。

    1. libguestfs-tools パッケージをインストールします。

      $ sudo yum -y install libguestfs-tools
      重要

      アンダークラウドに libguestfs-tools パッケージをインストールする場合は、アンダークラウドの tripleo_iscsid サービスとのポートの競合を避けるために iscsid.socket を無効にします。

      $ sudo systemctl disable --now iscsid.socket
    2. QEMU を直接使用するように libguestfs バックエンドを設定します。

      $ export LIBGUESTFS_BACKEND=direct
    3. イメージ上の grub 設定を更新します。

      $ guestfish -a <IMAGE> -m /dev/sda1 sh "/sbin/grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg"

7.4. cinder でのブートボリュームの作成および使用

iSCSI 対応イメージを OpenStack Image Storage (glance) にアップロードして、OpenStack Block Storage (cinder) にブートボリュームを作成する必要があります。

手順

  1. アンダークラウドに stack ユーザーとしてログインします。
  2. iSCSI 対応イメージを glance にアップロードします。

    $ openstack image create --disk-format qcow2 --container-format bare --file rhel-server-7.7-x86_64-kvm.qcow2 rhel-server-7.7-iscsi
  3. イメージからボリュームを作成します。

    $ openstack volume create --size 10 --image rhel-server-7.7-iscsi --bootable rhel-test-volume
  4. cinder のブートボリュームを使用するベアメタルインスタンスを作成します。

    $ openstack server create --flavor baremetal --volume rhel-test-volume --key default rhel-test

第8章 ML2 networking-ansible

本項では、OpenStack Networking (neutron) の networking-ansible ML2 ドライバー、OpenStack Bare Metal (ironic) との統合、およびオーバークラウドでこのドライバーの有効化および設定を行う手順について説明します。

8.1. Modular Layer 2 (ML2) networking-ansible

OpenStack Networking (neutron) に含まれる networking-ansible は、Ansible Engine Networking を使用してネットワークスイッチを管理する ML2 ドライバーです。また、このドライバーは、OpenStack Bare Metal (ironic) と統合して、ベアメタルゲスト用にスイッチポート上の VLAN 設定も行います。つまり、VLAN neutron ネットワークを使用するベアメタルゲストによって、このドライバーは Ansible Engine Networking を使用して物理スイッチを設定します。

現在の networking-ansible ドライバーには、以下の機能が備わっています。

  • OpenStack でネットワークを作成する際に、スイッチに VLAN を定義する
  • OpenStack でポートを作成または更新する際に、スイッチ上のアクセスポートに VLAN を割り当てる
  • OpenStack でポートを削除する際に、スイッチ上のアクセスポートから VLAN を削除する

8.2. networking-ansible のネットワーク要件

以下の一覧で、networking-ansible 機能を有効にするためのネットワーク要件の概要を説明します。

  • Ansible Network Automation 対応のネットワークスイッチ。現在、Red Hat では Juniper Networks (Junos) スイッチの使用のみをサポートしています。
  • ネットワークスイッチには、Ansible Network Automation がデバイスと対話できるようにするため、SSH ユーザーも必要です。このユーザーには、スイッチでの特定の権限が必要です。

    • アクセスモード
    • VLAN のポートへの割り当て
    • VLAN の作成

    セキュリティー上の理由から、SSH ユーザーにはスイッチへの管理者アクセス権限を付与しないでください。

  • スイッチが使用する VLAN を準備します。準備には、スイッチ上で各 VLAN を作成してから各 VLAN を削除する操作が含まれます。
  • ベアメタルゲスト用に予約済みのネットワークスイッチポートは、初めに、イントロスペクション専用のネットワークに接続するよう設定する必要があります。これ以外では、これらのポートに追加設定は必要ありません。

8.3. networking-ansible 用の Openstack Bare Metal (ironic) の要件

networking-ansible ドライバーは、Openstack Bare Metal (ironic) サービスと統合します。正常に統合するためには、以下の推奨事項に従ってオーバークラウドに ironic サービスをデプロイします。

  • オーバークラウドには、プロビジョニングネットワークが必要です。以下のいずれかのオプションを使用します。

    • Ironic サービス用のブリッジネットワーク。
    • Ironic サービス用のカスタムコンポーザブルネットワーク。

    プロビジョニングネットワークのその他の設定例については、「3章Bare Metal サービスを有効にしたオーバークラウドのデプロイ」を参照してください。

  • オーバークラウドには、プロビジョニングプロセスの後に使用するベアメタルシステム用のテナントネットワークが必要です。本ガイドの例では、br-baremetal という名前のブリッジにマッピングされた、デフォルトの baremetal ネットワークを使用します。このネットワークには、VLAN ID の範囲も必要です。以下の Heat パラメーターセットは、本ガイドの例に合わせてこれらの値を設定します。

    parameter_defaults:
      NeutronNetworkVLANRanges: baremetal:1200:1299
      NeutronFlatNetworks: datacentre,baremetal
      NeutronBridgeMappings: datacentre:br-ex,baremetal:br-baremetal
  • オーバークラウドはイントロスペクションサービスを使用して、特定のハードウェア情報を自動的に識別し、他のサービスで使用できるようマッピングします。マッピングしたインターフェースとポート間の詳細情報を networking-ansible が使用できるように、ironic イントロスペクションサービスを有効にすることを推奨します。このタスクは手動で行うこともできます。

OpenStack Bare Metal (ironic) のデプロイについての詳しい情報は、「3章Bare Metal サービスを有効にしたオーバークラウドのデプロイ」を参照してください。

8.4. networking-ansible ML2 機能の有効化

この手順では、オーバークラウドで networking-ansible ML2 ドライバーを有効にする方法を説明します。この設定では、デプロイメントに 2 つの環境ファイルを追加する必要があります。

/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/neutron-ml2-ansible.yaml
このファイルは、networking-ansible ドライバーを有効にし、ネットワーク種別を vlan に設定します。このファイルは、コア Heat テンプレートコレクションにすでに存在します。
/home/stack/templates/ml2-ansible-hosts.yaml
スイッチの詳細情報が含まれるファイルです。このファイルは手動で作成します。

手順

  1. /home/stack/templates/ml2-ansible-hosts.yaml を作成し、以下の初期コンテンツを追加します。

    parameter_defaults:
      ML2HostConfigs:
  2. ML2HostConfigs パラメーターには、スイッチの詳細情報が含まれる dict 値が必要です。dict の各初期キーは、スイッチの名前です。この値によって、OpenStack Networking (neutron) ML2 設定に特定の ansible:[switchname] セクションが定義されます。各スイッチ名のキーには、実際のスイッチの詳細情報が含まれる個別の dict が必要です。たとえば、スイッチを 3 つ設定する場合、スイッチキーを 3 つ追加します。

    parameter_defaults:
      ML2HostConfigs:
        switch1:
          [SWITCH DETAILS]
        switch2:
          [SWITCH DETAILS]
        switch3:
          [SWITCH DETAILS]
  3. 各スイッチには、dict 内に特定のキー値ペアが必要です。

    ansible_network_os
    (必須) スイッチのオペレーティングシステム。現在、Red Hat では Junos のみをサポートしています。
    ansible_host
    (必須) スイッチの IP またはホスト名。
    ansible_user
    (必須) Ansible がスイッチにアクセスする際に使用するユーザー。
    ansible_ssh_pass
    (必須) Ansible がスイッチにアクセスするために使用する SSH パスワード。
    mac
    ネットワークデバイスのシャーシ MAC ID。これを使用して、Link Layer Discovery Protocol (LLDP) MAC アドレス値を、ML2HostConfigs 設定で定義されたスイッチ名にマッピングします。この値は、イントロスペクションを使用してポート自動設定を実行する際に必要です。
    manage_vlans
    OpenStack Networking (neutron) が物理デバイス上の VLAN の作成と削除を制御するかどうかを定義するブール型変数。この機能によって、スイッチは各 Neutron ネットワークに対応する ID を持つ VLAN を作成および削除します。スイッチにこれらの VLAN が事前定義されていて、Neutron でスイッチに VLAN を作成したり削除したりする必要がない場合は、このパラメーターを false に設定します。デフォルト値は true です。
  4. 以下の例は、全 ML2HostConfigs パラメーターで、これらの値を対応するキーにマッピングする方法を示しています。

    parameter_defaults:
      ML2HostConfigs:
        switch1:
          ansible_network_os: juno
          ansible_host: 10.0.0.1
          ansible_user: ansible
          ansible_ssh_pass: "p@55w0rd!"
          mac: 01:23:45:67:89:AB
          manage_vlans: false
  5. /home/stack/templates/ml2-ansible-hosts.yaml ファイルを保存します。
  6. オーバークラウドのデプロイメントコマンドの実行時に、-e オプション指定して /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/neutron-ml2-ansible.yaml/home/stack/templates/ml2-ansible-hosts.yaml ファイルを追加します。以下の例で、これらのファイルの追加方法を説明します。

    $ openstack overcloud deploy --templates \
      ...
      -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/neutron-ml2-ansible.yaml \
      -e /home/stack/templates/ml2-ansible-hosts.yaml \
      ...

director は、neutron_api コンテナーの OpenStack Networking (neutron) API の一部としてドライバーを有効にします。

8.5. networking-ansible 用ネットワーク設定

Bare Metal Provisioning および networking-ansible ドライバーを有効にしてオーバークラウドをデプロイしたら、ベアメタルノード用に以下のネットワークを作成します。

プロビジョニングネットワーク
ベアメタルシステムは、このネットワークを初期作成に使用します。
テナントネットワーク
ベアメタルシステムは、プロビジョニング後にこのネットワークに切り替え、このネットワークを内部通信に使用します。

手順

  1. プロビジョニングネットワークおよびサブネットを作成します。この操作は、使用しているプロビジョニングネットワークの種別により異なります。プロビジョニングネットワークの設定については、「4章デプロイ後の Bare Metal サービスの設定」を参照してください。
  2. テナントネットワークおよびサブネットを作成します。

    $ openstack network create --provider-network-type vlan --provider-physical-network baremetal tenant-net
    $ openstack subnet create --network tenant-net --subnet-range 192.168.3.0/24 --allocation-pool start=192.168.3.10,end=192.168.3.20 tenant-subnet

    networking-ansible が機能するように、必ず --provider-network-type オプションを vlan に設定してください。

8.6. ベアメタルゲスト用のポート設定

ベアメタルゲストには、スイッチに接続するためのポート情報が必要です。この操作には、2 つの方式があります。

  • 自動: ノードのイントロスペクション。自動方式では、各スイッチの mac 値を ML2HostConfigs パラメーターの一部として設定する必要があります。
  • 手動: OpenStack Networking (neutron) ポート設定の定義。お使いのオーバークラウドにベアメタルイントロスペクション機能がない場合には、この手法を使用します。

手順

  • 自動:

    1. イントロスペクションコマンドを実行します。

      $ openstack baremetal introspection start [--wait] <NODENAME>

      イントロスペクション中に、ベアメタルノードはスイッチの MAC アドレスを取得します。networking-ansible ML2 ドライバーはこの MAC アドレスを使用して、各スイッチの ML2HostConfigs パラメーターの mac パラメーターに定義されたものと同じ MAC アドレスにマッピングします。

    2. イントロスペクションが完了するまで待ちます。
  • 手動:

    1. ベアメタルノードのポートを作成します。以下のコマンド例を、ポート作成のベースとして使用します。

      $ openstack baremetal port create [NODE NIC MAC] --node [NODE UUID] \
          --local-link-connection port_id=[SWICH PORT ID] \
          --local-link-connection switch_info=[SWITCH NAME] \
          --local-link-connection switch_id=[SWITCH MAC]

      以下の大かっこ内の値は、実際の環境の情報に置き換えてください。

      [NODE NIC MAC]
      スイッチに接続された NIC の MAC アドレス。
      --node [NODE UUID]
      新しいポートを使用するノードの UUID。
      --local-link-connection port_id=[SWITCH PORT ID]
      ベアメタルノードに接続するスイッチ上のポート ID。
      --local-link-connection switch_info=[SWITCH NAME]
      ベアメタルノードに接続するスイッチの名前。スイッチ名は、ML2HostConfigs パラメーターで定義した各スイッチ名と一致していなければなりません。
      --local-link-connection switch_id=[SWITCH MAC]
      スイッチの MAC アドレス。この値は、ML2HostConfigs パラメーターのスイッチ設定の各 mac 値と一致していなければなりません。これは、switch_info の使用に対する代替オプションです。

8.7. networking-ansible ML2 機能のテスト

ベアメタルノードの networking-ansible 設定が完了したら、動作を確かめるために機能をテストします。これを行うには、ベアメタルに関する負荷を作成する必要があります。

前提条件

  • OpenStack Baremetal (ironic) サービスが設定されたオーバークラウド
  • 有効な networking-ansible ML2 ドライバー
  • スイッチのアクセス情報が含まれる ML2HostConfigs パラメーター
  • 登録済みのベアメタルノード

    1. スイッチ上のノード接続に使用する各ベアメタルポートの設定
  • 初期プロビジョニング用に OpenStack Networking (neutron) で定義された VLAN ベースのプロビジョニングネットワーク
  • 内部通信用に OpenStack Networking (neutron) で定義された VLAN ベースのテナントネットワーク

手順

  1. ベアメタルシステムを作成します。

    openstack server create --flavor baremetal --image overcloud-full --key default --network tenant-net test1

    オーバークラウドは、まずプロビジョニングネットワークにベアメタルシステムを作成します。作成が完了すると、networking-ansible ドライバーによってスイッチ上のポート設定が変更され、ベアメタルシステムがテナントネットワークを使用するようになります。

第9章 Bare Metal サービスのトラブルシューティング

以下の項には、Bare Metal サービスを有効にした環境における問題を診断するのに役立つ可能性のある情報と手順を記載します。

9.1. PXE ブートエラー

Permission Denied エラー

Bare Metal サービスノードのコンソールで「Permission Denied」エラーが表示された場合には、以下に示すように、必ず適切な SELinux コンテキストを /httpboot および /tftpboot ディレクトリーに適用してください。

# semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/httpboot(/.*)?"
# restorecon -r -v /httpboot
# semanage fcontext -a -t tftpdir_t "/tftpboot(/.*)?"
# restorecon -r -v /tftpboot

/pxelinux.cfg/XX-XX-XX-XX-XX-XX でのブートプロセスのフリーズ

以下の図に示したように、ノードのコンソールで、IP アドレスは取得されているがプロセスが停止しているように表示されている場合:

PXE Process Freezes During Boot

これは、ironic.conf ファイルで誤った PXE ブートテンプレートを使用している可能性があることを示しています。

$ grep ^pxe_config_template ironic.conf
pxe_config_template=$pybasedir/drivers/modules/ipxe_config.template

デフォルトのテンプレートは ipxe_config.template です。

9.2. ベアメタルノードの起動後のログインエラー

ノードのコンソールのログインプロンプトで、設定手順中に設定した root パスワードを使用してログインを試みてもログインできない場合には、デプロイしたイメージでブートしていないことを意味します。deploy-kernel/deploy-ramdisk イメージにスタックしてしまって、システムが正しいイメージをまだ取得していない可能性があります。

この問題を修正するには、Compute または Bare Metal サービスノードの /httpboot/pxelinux.cfg/MAC_ADDRESS にある PXE ブートの設定ファイルをチェックして、このファイルにリストされている全 IP アドレスがベアメタルネットワークの IP アドレスに対応していることを確認してください。

注記

Bare Metal サービスノードが認識している唯一のネットワークはベアメタルネットワークです。エンドポイントの 1 つがこのネットワーク上にない場合には、そのエンドポイントはブートプロセスの一環として Bare Metal サービスノードに到達することはできません。

たとえば、ファイルの kernel の行は以下のようになります。

kernel http://192.168.200.2:8088/5a6cdbe3-2c90-4a90-b3c6-85b449b30512/deploy_kernel selinux=0 disk=cciss/c0d0,sda,hda,vda iscsi_target_iqn=iqn.2008-10.org.openstack:5a6cdbe3-2c90-4a90-b3c6-85b449b30512 deployment_id=5a6cdbe3-2c90-4a90-b3c6-85b449b30512 deployment_key=VWDYDVVEFCQJNOSTO9R67HKUXUGP77CK ironic_api_url=http://192.168.200.2:6385 troubleshoot=0 text nofb nomodeset vga=normal boot_option=netboot ip=${ip}:${next-server}:${gateway}:${netmask} BOOTIF=${mac}  ipa-api-url=http://192.168.200.2:6385 ipa-driver-name=ipmi boot_mode=bios initrd=deploy_ramdisk coreos.configdrive=0 || goto deploy
上記の例の kernel 行の値対応する情報

http://192.168.200.2:8088

/etc/ironic/ironic.conf ファイルのパラメーター http_url。この IP アドレスはベアメタルネットワーク上にある必要があります。

5a6cdbe3-2c90-4a90-b3c6-85b449b30512

ironic node-list 内のベアメタルノードの UUID

deploy_kernel

これは、/httpboot/<NODE_UUID>/deploy_kernel としてコピーされた Image サービス内のデプロイカーネルイメージです。

http://192.168.200.2:6385

/etc/ironic/ironic.conf ファイル内のパラメーター api_url。この IP アドレスはベアメタルネットワーク上にある必要があります。

ipmi

このノードの Bare Metal サービスが使用している IPMI ドライバー。

deploy_ramdisk

これは、/httpboot/<NODE_UUID>/deploy_ramdisk としてコピーされた Image サービス内のデプロイ ramdisk イメージです。

/httpboot/pxelinux.cfg/MAC_ADDRESSironic.conf ファイルの間で値が一致していない場合:

  1. ironic.conf ファイル内の値を更新します。
  2. Bare Metal サービスを再起動します。
  3. Bare Metal インスタンスを再デプロイします。

9.3. Bare Metal サービスが正しいホスト名を取得しない

Bare Metal サービスが正しいホスト名を取得しない場合は、cloud-init でエラーが発生していることを意味します。この問題を修正するには、ベアメタルのサブネットを OpenStack Networking サービス内のルーターに接続します。meta-data エージェントへの要求はこれで正しくルーティングされるようになるはずです。

9.4. Bare Metal サービスのコマンド実行時に OpenStack Identity サービスの認証情報が無効

Identity サービスへの認証で問題がある場合には、ironic.conf ファイルの identity_uri パラメーターをチェックして、keystone AdminURL から /v2.0 が削除されていることを確認してください。たとえば、identity_urihttp://IP:PORT に設定します。

9.5. ハードウェアの登録

ハードウェア登録での問題は、ノードの登録情報が誤っていることが原因となっている可能性があります。プロパティー名と値が正しく入力されていることを確認してください。プロパティー名に誤りやタイプミスがあってもノードの情報には正常に追加されますが、そのプロパティー名は無視されます。

ノードの情報を更新します。以下の例では、登録するノードのメモリー使用量を 2 GB に更新します。

$ openstack baremetal node set --property memory_mb=2048 NODE_UUID

9.6. No Valid Host エラー

Compute スケジューラーがインスタンスを起動するのに適切なベアメタルノードを見つけられない場合、NoValidHost エラーが /var/log/nova/nova-conductor.log に表示されるか、起動に失敗した直後に Dashboard に表示されます。通常これは、Compute が想定するリソースとベアメタルノードが提供するリソースが一致しないことが原因です。

  1. 利用可能なハイパーバイザーのリソースを確認します。

    $ openstack hypervisor stats show

    このコマンドで返されるリソースは、Bare Metal が提供するリソースと一致する必要があります。

  2. Compute がベアメタルノードをハイパーバイザーとして認識していることを確認します。

    $ openstack hypervisor list

    ノードは UUID で識別され、一覧に表示されるはずです。

  3. ベアメタルノードの詳細を確認します。

    $ openstack baremetal node list
    $ openstack baremetal node show NODE_UUID

    ノードの詳細が、Compute によって返された情報と一致することを確認します。

  4. 選択したフレーバーがベアメタルノードで利用可能なリソースを超えていないことを確認します。

    $ openstack flavor show FLAVOR_NAME
  5. openstack baremetal node list の出力をチェックして、ベアメタルノードがメンテナンスモードに入っていないことを確認します。必要な場合には、メンテナンスモードを解除してください。

    $ openstack baremetal node maintenance unset NODE_UUID
  6. openstack baremetal node list の出力をチェックして、ベアメタルノードが available の状態であることを確認します。必要な場合には、ノードを available に切り替えます。

    $ openstack baremetal node provide NODE_UUID

付録A Bare Metal のドライバー

ベアメタルノードは、Bare Metal サービスで有効にしたドライバーの 1 つを使用するように設定することができます。各ドライバーは、プロビジョニングメソッドと電源管理のタイプで構成されます。ドライバーによっては追加の設定が必要な場合があります。このセクションに記述された各ドライバーはプロビジョニングに PXE を使用します。ドライバーは電源管理タイプ別にリストされます。

ironic.yaml ファイルの IronicEnabledHardwareTypes パラメーターを使用して、ドライバーを追加することができます。デフォルトでは、ipmiredfishidrac、および ilo が有効です。

サポートされているプラグインとドライバーの全一覧は、「Component, Plug-In, and Driver Support in Red Hat OpenStack Platform」のアーティクルを参照してください。

A.1. Intelligent Platform Management Interface (IPMI)

IPMI は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。この電源管理タイプを使用するには、全 Bare Metal サービスノードで IPMI が共有ベアメタルネットワークに接続されている必要があります。ipmi ドライバーを有効にし、ノードの driver_info に以下の情報を設定します。

  • ipmi_address: IPMI NIC の IP アドレス
  • ipmi_username: IPMI のユーザー名
  • ipmi_password: IPMI のパスワード

A.2. Redfish

Distributed Management Task Force (DMTF) の開発した、IT インフラストラクチャー向け標準 RESTful API。

  • redfish_username: Redfish のユーザー名
  • redfish_password: Redfish のパスワード
  • redfish_address: Redfish コントローラーの IP アドレス
  • redfish_system_id: システムリソースへの正規のパス。このパスには、そのシステムの root サービス、バージョン、パス/一意 ID を含める必要があります (例: /redfish/v1/Systems/CX34R87)。
  • redfish_verify_ca: ブール値、または CA_BUNDLE ファイルもしくは信頼済み CA の証明書が含まれるディレクトリーへのパス。True に設定すると、ドライバーはホストの証明書を検証します。False の場合には、ドライバーは SSL 証明書の検証を無視します。パスを設定すると、ドライバーは指定された証明書またはディレクトリー内の証明書の 1 つを使用します。デフォルトは True です。

A.3. Dell Remote Access Controller (DRAC)

DRAC は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。この電源管理タイプを使用するには、全 Bare Metal サービスノードで DRAC が共有ベアメタルネットワークに接続されている必要があります。idrac ドライバーを有効にし、ノードの driver_info に以下の情報を設定します。

  • drac_address: DRAC NIC の IP アドレス
  • drac_username: DRAC のユーザー名
  • drac_password: DRAC のパスワード

A.4. Integrated Remote Management Controller (iRMC)

富士通の iRMC は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。Bare Metal サービスノードでこの電源管理タイプを使用するには、このノードに、共有ベアメタルネットワークに接続された iRMC インターフェースが 1 つ必要です。irmc ドライバーを有効にし、ノードの driver_info に以下の情報を設定します。

  • irmc_address: iRMC インターフェースの NIC の IP アドレス
  • irmc_username: iRMC のユーザー名
  • irmc_password: iRMC のパスワード

IPMI を使用してブートモードを設定する場合、または SCCI を使用してセンサーデータを取得する場合には、追加で以下のステップを完了する必要があります。

  1. ironic.conf でセンサーメソッドを有効にします。

    $ openstack-config --set /etc/ironic/ironic.conf \
       irmc sensor_method METHOD

    METHODscci または ipmitool に置き換えます。

  2. SCCI を有効にした場合は、python-scciclient パッケージをインストールします。

    # dnf install python-scciclient
  3. Bare Metal Conductor サービスを再起動します。

    # systemctl restart openstack-ironic-conductor.service
注記

iRMC ドライバーを使用するには、iRMC S4 以降が必要です。

A.5. Integrated Lights-Out (iLO)

Hewlett-Packard の iLO は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。この電源管理タイプを使用するには、全ベアメタルノードで iLO インターフェースが共有ベアメタルネットワークに接続されている必要があります。ilo ドライバーを有効にし、ノードの driver_info に以下の情報を設定します。

  • ilo_address: iLO インターフェースの NIC の IP アドレス
  • ilo_username: iLO のユーザー名
  • ilo_password: iLO のパスワード

python-proliantutils パッケージもインストールして、Bare Metal Conductor サービスを再起動する必要があります。

# dnf install python-proliantutils
# systemctl restart openstack-ironic-conductor.service

A.6. 次世代電源管理ドライバーへの移行

Red Hat OpenStack Platform では ハードウェアタイプ とも呼ばれる次世代ドライバーが使用され、従来のドライバーがこれに置き換えられています。

従来のドライバーとそれと等価な次世代ハードウェアタイプの対比を、以下の表に示します。

従来のドライバー新しいハードウェアタイプ

pxe_ipmitool

ipmi

pxe_drac

idrac

pxe_ilo

ilo

pxe_ucs

cisco-ucs-managed

pxe_irmc

irmc

fake_pxe

fake-hardware

OpenStack Platform 15 では、これらの従来ドライバーは削除され、使用できなくなっています。OpenStack Platform 15 に アップグレードする前に ハードウェアタイプに変更する必要があります。

手順

  1. 有効なハードウェアタイプの最新の一覧を確認します。

    $ source ~/overcloud
    $ openstack baremetal driver list --type dynamic
  2. 有効ではないハードウェアタイプのドライバーを使用する場合には、環境ファイルの IronicEnabledHardwareTypes パラメーターを使用してそのドライバーを有効にします。

    parameter_defaults:
      IronicEnabledHardwareTypes: ipmi,redfish,idrac
  3. ファイルを保存し、オーバークラウドのデプロイコマンドを実行します。

    $ openstack overcloud deploy -e [ENVIRONMENT_FILE] -r [ROLES_DATA] -n [NETWORK_DATA]

    ご自分のオーバークラウドに関連する環境ファイルおよびデータファイルをすべて追加するようにしてください。

  4. 以下のコマンドを実行します。OLDDRIVER および NEWDRIVER 変数を、実際の電源管理タイプに置き換えてください。

    $ source ~/overcloud
    $ OLDDRIVER="pxe_ipmitool"
    $ NEWDRIVER="ipmi"
    $ for NODE in $(openstack baremetal node list --driver $OLDDRIVER -c UUID -f value) ; do openstack baremetal node set $NODE --driver $NEWDRIVER; done