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第2章 アンダークラウドのプランニング

2.1. コンテナー化されたアンダークラウド

アンダークラウド は、最終的な OpenStack Platform 環境 (オーバークラウド と呼ばれる) の設定、インストール、および管理をコントロールするノードです。アンダークラウド自体は、コンテナー化された OpenStack Platform コンポーネントを使用して、OpenStack Platform director と呼ばれるツールセットを作成します。この場合、アンダークラウドはレジストリーソースからコンテナーイメージのセットをプルし、コンテナーの設定を生成し、各 OpenStack Platform サービスをコンテナーとして実行します。その結果、アンダークラウドにより、オーバークラウドを作成/管理するためのツールセットとして機能する、コンテナー化されたサービスのセットが提供されます。

アンダークラウドおよびオーバークラウドの両方でコンテナーが使用されているので、どちらも同じアーキテクチャーを使用してコンテナーをプル、設定、および実行します。このアーキテクチャーは、ノードプロビジョニング用の OpenStack Orchestration サービス (Heat とも呼ばれる) ならびにサービスおよびコンテナー設定用の Ansible をベースにしています。異常発生時のトラブルシューティングに役立つので、Heat および Ansible に関する知識を習得することを推奨します。

2.2. アンダークラウドネットワークの準備

アンダークラウドでは、2 つの主要ネットワークへのアクセスが必要です。

  • プロビジョニングまたはコントロールプレーンネットワーク: director は、このネットワークを使用してノードをプロビジョニングし、Ansible 設定の実行時に SSH 経由でこれらのノードにアクセスします。アンダークラウドからオーバークラウドノードへの SSH アクセスにも、このネットワークが使用されます。アンダークラウドは、このネットワークに他のノードのイントロスペクションおよびプロビジョニング用 DHCP サービスを提供します。つまり、このネットワーク上にその他の DHCP サービスが存在している必要はありません。director がこのネットワークのインターフェースを設定します。
  • 外部ネットワーク: アンダークラウドは、このネットワークを使用して OpenStack Platform リポジトリー、コンテナーイメージソース、および DNS サーバーや NTP サーバー等の他のサーバーにアクセスすることができます。通常は、このネットワークを使用してご自分のワークステーションからアンダークラウドにアクセスします。つまり、外部ネットワークにアクセスするためには、アンダークラウド上で手動でインターフェースを設定する必要があります。

結果的に、アンダークラウドには少なくとも 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカードが必要です。ただし、特にオーバークラウド環境で多数のノードをプロビジョニングする場合には、プロビジョニングネットワークのトラフィック用に 10 Gbps インターフェースの使用を推奨します。

以下の点に注意してください。

  • プロビジョニング/コントロールプレーン用には、ワークステーションから director マシンへのアクセスに使用する NIC とは別の NIC を使用してください。director のインストールでは、プロビジョニング NIC を使用してブリッジが作成され、リモート接続はドロップされます。director システムへリモート接続する場合には、外部 NIC を使用します。
  • プロビジョニングネットワークには、環境のサイズに適した IP 範囲が必要です。以下のガイドラインを使用して、この範囲に含めるべき IP アドレスの総数を決定してください。

    • イントロスペクション中は、プロビジョニングネットワークに接続されているノードごとに少なくとも 1 つの一時 IP アドレスを含めます。
    • デプロイメント中は、プロビジョニングネットワークに接続されているノードごとに少なくとも 1 つの永続的な IP アドレスを含めます。
    • プロビジョニングネットワーク上のオーバークラウド高可用性クラスターの仮想 IP 用に、追加の IP アドレスを含めます。
    • 環境のスケーリング用に、この範囲にさらに IP アドレスを追加します。

2.3. 環境規模の判断

アンダークラウドをインストールする前に、環境の規模を判断することが重要です。検討すべき項目を以下に示します。

  • オーバークラウド内のノードの数: アンダークラウドは、オーバークラウド内の各ノードを管理します。オーバークラウドノードのプロビジョニングには、アンダークラウドのリソースが使用されます。したがって、オーバークラウドノードを適切にプロビジョニングし管理するには、アンダークラウドに十分なリソースを提供する必要があります。
  • アンダークラウドで実行する同時操作の数: アンダークラウド上の OpenStack サービスの多くは、ワーカー のセットを使用します。それぞれのワーカーは、そのサービスに固有の操作を実行します。複数のワーカーを用いると、同時に操作を実行することができます。アンダークラウドのワーカー数のデフォルト値は、アンダークラウド CPU の合計スレッド数の半分です[1]。たとえば、アンダークラウドが 16 スレッドの CPU を持つ場合、デフォルトでは director は 8 つのワーカーを提供します。デフォルトでは、director のサービスに最小および最大のワーカー数が適用される点にも注意してください。
サービス最小値最大値

OpenStack Orchestration (heat)

4

24

その他すべてのサービス

2

12

アンダークラウドの CPU およびメモリーの最低要件を以下に示します。

  • Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする、8 スレッド 64 ビット x86 プロセッサー。これにより、各アンダークラウドサービスに 4 つのワーカーが提供されます。
  • 最小 24 GB の RAM。

より多くのワーカーを使用する場合には、アンダークラウドにより多くの仮想 CPU およびメモリーが必要になります。以下の要件に従ってください。

  • 最小値: 1 スレッドあたり 1.5 GB のメモリーを使用します。たとえば、48 スレッドのマシンには 72 GB の RAM が必要です。これは、Heat 用 24 ワーカーとその他のサービス用 12 ワーカーを提供するのに最低限必要なリソースです。
  • 推奨値: 1 スレッドあたり 3 GB のメモリーを使用します。たとえば、48 スレッドのマシンには 144 GB の RAM が必要です。これは、Heat 用 24 ワーカーとその他のサービス用 12 ワーカーを提供するのに推奨されるリソースです。

2.4. アンダークラウドのディスクサイズ

アンダークラウド用として、ルートディスク上に少なくとも 100 GB の空きディスク領域があることが推奨されます。この領域の内訳は以下のとおりです。

  • コンテナーイメージ用に 20 GB
  • QCOW2 イメージの変換とノードのプロビジョニングプロセスのキャッシュ用に 10 GB
  • 一般用途、ログの記録、メトリック、および将来の拡張用に 70 GB 以上

2.5. アンダークラウドのリポジトリー

アンダークラウドのインストールおよび設定には、以下のリポジトリーが必要です。

表2.1 コアリポジトリー

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMS)

rhel-7-server-rpms

x86_64 システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat Enterprise Linux 7 Server - Extras (RPMs)

rhel-7-server-extras-rpms

Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。

Red Hat Enterprise Linux 7 Server - RH Common (RPMs)

rhel-7-server-rh-common-rpms

Red Hat OpenStack Platform のデプロイと設定ツールが含まれます。

Red Hat Satellite Tools for RHEL 7 Server RPMs x86_64

rhel-7-server-satellite-tools-6.3-rpms

Red Hat Satellite 6 でのホスト管理ツール

Red Hat Enterprise Linux High Availability (for RHEL 7 Server) (RPMs)

rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms

Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。

Red Hat OpenStack Platform 14 for RHEL 7 (RPMs)

rhel-7-server-openstack-14-rpms

Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー。Red Hat OpenStack Platform director のパッケージが含まれます。

表2.2 Ceph 用リポジトリー

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Ceph Storage Tools 3 for Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMs)

rhel-7-server-rhceph-3-tools-rpms

ノードが Ceph Storage クラスターと通信するためのツールが提供されます。オーバークラウドで Ceph Storage を使用する場合には、アンダークラウドにこのリポジトリーからの ceph-ansible パッケージが必要です。

IBM POWER 用リポジトリー

これらのリポジトリーは、POWER PC アーキテクチャー上で Openstack Platform を構築するのに使われます。コアリポジトリーの該当リポジトリーの代わりに、これらのリポジトリーを使用してください。

名前リポジトリー要件の説明

Red Hat Enterprise Linux for IBM Power, little endian

rhel-7-for-power-le-rpms

ppc64le システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー

Red Hat OpenStack Platform 14 for RHEL 7 (RPMs)

rhel-7-server-openstack-14-for-power-le-rpms

ppc64le システム用 Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー



[1] ここでは、スレッド数とは CPU コア数にハイパースレッディングの値を掛けたものを指します。