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第1章 ネットワークの概要

OpenStack Networking サービス (コード名: neutron) は、Red Hat OpenStack Platform 13 のソフトウェア定義ネットワークのコンポーネントです。

ソフトウェア定義ネットワーク (SDN) を使用することで、ネットワーク管理者は下層の機能の抽象化によりネットワークサービスを管理することができます。サーバーのワークロードを仮想環境に移行しても、データの送受信のためにそれらのサーバーがネットワーク接続を必要とすることに変わりありません。SDN は、ルーターやスイッチなどのネットワーク装置を同じ仮想化領域に移動することで、このニーズに対応します。すでにネットワークの基本概念に精通している場合には、接続先のサーバーと同様に、これらの物理ネットワークの概念が仮想化されていると考えるのに無理はないでしょう。

1.1. ネットワークの仕組み

ネットワークという用語は、コンピューター間で情報を移動させる動作のことを指します。最も基本的なレベルでは、ネットワークインターフェイスカード (NIC) がインストールされた 2 つのマシンをケーブルでつなぐことで達成されます。OSI ネットワークモデルでは、ケーブルがレイヤー 1 に相当します。

3 台以上のコンピューターを使用する場合には、スイッチというデバイスを追加してこの設定をスケールアウトする必要があります。エンタープライズスイッチには複数のイーサネットポートがあり、追加のマシンを接続することができます。複数のマシンで設定されるネットワークは、ローカルエリアネットワーク (LAN) と呼ばれます。

複雑さが増すので、スイッチは OSI モデルの新たなレイヤー (レイヤー 2) に相当します。各 NIC には、ハードウェアごとに一意な MAC アドレス番号が割り当てられ、この番号を使用することにより、同じスイッチに接続された複数のマシンはお互いを認識することができます。スイッチは、どの MAC アドレスがどのポートに結線されているかのリストを管理するので、コンピューター間でデータ送信を試みる際に、スイッチはそれら両方のコンピューターがどこに配置されているかを認識し、MAC アドレスからポートへのマッピングを監視する CAM (Content Addressable Memory) のエントリーを調整します。

1.1.1. VLAN

VLAN を使用して、同じスイッチ上で動作しているコンピューターのネットワークトラフィックを分割することができます。つまり、それぞれ別のネットワークのメンバーとなるようにポートを設定することで、スイッチを論理的に分割することができます。この場合、それぞれのネットワークは、セキュリティー上の理由からトラフィックを分割するのに使用できる、小規模な LAN ということになります。

たとえば、スイッチに合計 24 個のポートがある場合に、ポート 1 - 6 を VLAN200 に、ポート 7 - 18 を VLAN201 に、それぞれ割り当てることができます。その結果、VLAN200 に接続されているコンピューターは、VLAN201 のコンピューターと完全に分離され、直接通信することはできなくなります。通信する必要があれば、スイッチの VLAN200 部分と VLAN201 部分が 2 つの別個の物理スイッチであったかのように、トラフィックはルーターを通過する必要があります。相互に通信が可能な VLAN の組み合わせを制御するには、ファイアウォールも有用です。