Red Hat Training

A Red Hat training course is available for Red Hat OpenStack Platform

第2章 NFV ソフトウェア

2.1. ETSI NFV アーキテクチャー

欧州電気通信標準化機構 (ETSI) は、ヨーロッパの情報通信技術 (ICT: Information and Communication Technology) の標準を開発する独立した標準化組織です。

ネットワーク機能仮想化 (NFV) は、プロプライエタリーのハードウェアデバイスの使用に伴う問題への対処に重点を置いています。NFV を使用すると、ユースケースの要件や経済的な利点によっては、ネットワーク固有の設備をインストールする必要性が軽減されます。ETSI Industry Specification Group for Network Functions Virtualization (ETSI ISG NFV) は、VF を確実にサポートするために必要な要件、リファレンスアーキテクチャー、インフラストラクチャー仕様を設定します。

Red Hat では、通信事業者 (CSP) の IT とネットワークのコンバージェンス実現を支援するオープンソースベースのクラウド最適化ソリューションを提供しています。Red Hat は、Single Root I/O Virtualization (SR-IOV) や Open vSwitch with Data Plane Development Kit (OVS-DPDK) などの NFV 機能を Red Hat OpenStack に追加します。

2.2. NFV ETSI のアーキテクチャーおよびコンポーネント

140 OpenStack NFV product guide updates 0221 reference arch

通常、ネットワーク機能仮想化 (NFV) プラットフォームには、以下のコンポーネントが含まれます。

  • Virtualized Network Functions (VNF): ルーター、ファイアウォール、ロードバランサー、ブロードバンドのゲートウェイ、モバイルパケットのプロセッサー、サービス提供ノード、シグナリング、位置情報サービスなどのネットワーク機能のソフトウェア実装。
  • NFV Infrastructure (NFVi): インフラストラクチャーを構成する物理リソース (コンピュート、ストレージ、ネットワーク) および仮想化層。このネットワークには、仮想マシン間およびホスト全体でパケットを転送するためのデータパスが含まれます。これにより、基盤のハードウェアの情報を考慮せずに VNF をインストールできます。NFVi は、NFV スタックの基盤を形成します。NFVi は、マルチテナントをサポートし、Virtual Infrastructure Manager (VIM) で管理されます。Enhanced Platform Awareness (EPA) は低レベルの CPU および NIC アクセラレーション機能を VNF に公開し、仮想マシンのパケット転送のパフォーマンス (スループット、レイテンシー、ジッター) を向上させます。
  • NFV Management and Orchestration (MANO): VNF のライフサイクル全体で必要とされる全サービス管理タスクにフォーカスする管理およびオーケストレーション層。MANO の主要な目的は、オペレーターが顧客に提供するネットワーク機能のサービス定義、自動化、エラーの相関、監視、ライフサイクル管理を物理インフラストラクチャーから切り離せるようにすることです。このような切り離しを行うには、Virtual Network Function Manager (VNFM) が提供する管理層が追加で必要になります。VNFM は、直接対話するか、VFN ベンダーが提供する Element Management System (EMS) を使用して、仮想マシンのライフサイクルや VNF を管理します。MANO が定義するコンポーネントで他に重要なのは、NFVO として知られるオーケストレーターです。NFVO は、最上部のオペレーション/ビジネスサポートシステム (OSS/BSS) や、最下部の VNFM など、さまざまなデータベースやシステムにインターフェースを提供します。NFVO は、顧客向けの新規サービスを構築する場合には、VNFM に対して VNF のインスタンス化をトリガーするかを尋ねます (これにより、複数の仮想マシンが作成される場合があります)。
  • オペレーション/ビジネスサポートシステム (OSS/BSS: Operations/Business Support System): オペレーションサポートや請求など必要不可欠なビジネス機能アプリケーションを提供します。OSS/BSS は、NFV に適応する必要があり、レガシーシステムと新規の MANO コンポーネントを統合しています。BSS システムは、サービスサブスクリプションをベースにポリシーを設定して、レポートと請求を管理します。
  • システム管理、自動化、ライフサイクル管理: NFVi プラットフォームのインフラストラクチャーコンポーネントやライフサイクルのシステム管理、自動化を管理します。

2.3. Red Hat NFV のコンポーネント

Red Hat の NFV 向けのソリューションには、ETSI モデルに含まれる NFV フレームワークの異なるコンポーネントとしての役割を果たすことのできる各種製品が含まれます。NFV ソリューションには、Red Hat ポートフォリオの以下の製品が統合されます。

  • Red Hat OpenStack Platform: IT および NFV ワークロードをサポートします。Enhanced Platform Awareness (EPA) 機能は、SR-IOV や OVS-DPDK をサポートする CPU ピニング、ヒュージページ、Non-Uniform Memory Access (NUMA) アフィニティー、ネットワークアダプター (NIC) などを使用して、決定的なパフォーマンスの向上を図ることができます。
  • Red Hat Enterprise Linux および Red Hat Enterprise Linux Atomic Host: VNF として仮想マシンやコンテナーを作成します。
  • Red Hat Ceph Storage: サービスプロバイダーのワークロードに関するすべてのニーズに対応する弾力性があり、統一された高性能なストレージ層を提供します。
  • Red Hat JBoss Middleware および Red Hat 提供の OpenShift Enterprise: オプションで OSS/BSS コンポーネントの最新化に使用することができます。
  • Red Hat CloudForms: VNF マネージャーを提供し、統合された画面に、VIM や NFVI などの複数のソースのデータを表示することができます。
  • Red Hat Satellite および Red Hat 提供の Ansible: オプションとして、システムの管理、自動化、ライフサイクル管理を強化します。

2.4. NFV インストールの概要

Red Hat OpenStack Platform director は完全な OpenStack 環境をインストールおよび管理します。director は、アップストリームの OpenStack TripleO プロジェクトをベースとしています。TripleO とは、「OpenStack-On-OpenStack」の頭文字の「O」が 3 つあることを意味しています。このプロジェクトは、OpenStack コンポーネントを活用して、完全に機能する OpenStack 環境をインストールします。これには、アンダークラウドと呼ばれる、最小限の OpenStack ノードが含まれます。アンダークラウドは、オーバークラウド (実稼働環境用の OpenStack ノードとして使用される一連のベアメタルシステム) のプロビジョニングと制御を行います。director は、リーンかつ堅牢な Red Hat OpenStack Platform の完全な環境を簡単にインストールできる方法を提供します。

アンダークラウドおよびオーバークラウドのインストールに関する詳細は、『Red Hat OpenStack Platform director のインストールと使用方法』 を参照してください。

NFV のプランニングガイドラインと設定についての詳細は、『ネットワーク機能仮想化 (NFV) のプランニングおよび設定ガイド』 を参照してください。