Red Hat Training
A Red Hat training course is available for Red Hat OpenStack Platform
director のインストールと使用方法
Red Hat OpenStack Platform director を使用した OpenStack クラウド作成のエンドツーエンドシナリオ
OpenStack Documentation Team
rhos-docs@redhat.com
概要
第1章 はじめに
Red Hat OpenStack Platform director は、完全な OpenStack 環境のインストールおよび管理を行うためのツールセットです。director は、主に OpenStack プロジェクト TripleO (「OpenStack-On-OpenStack」の略語) をベースとしてます。このプロジェクトは、OpenStack のコンポーネントを活用して、完全に機能する OpenStack 環境をインストールします。これには、OpenStack ノードとして使用するベアメタルシステムをプロビジョニングし、制御する新しい OpenStack のコンポーネントが含まれます。
Red Hat OpenStack Platform director は、アンダークラウドとオーバークラウドという 2 つの主要な概念を採用しています。以下の数項では、それぞれの概念について説明します。
1.1. アンダークラウド
アンダークラウドは、director の主要ノードで、OpenStack をインストールした単一システムです。このノードには、OpenStack 環境 (オーバークラウド) を構成する OpenStack ノードのプロビジョニング/管理のためのコンポーネントが含まれます。アンダークラウドを形成するコンポーネントは、複数の機能を提供します。
- 環境のプランニング
- アンダークラウドは、ユーザーが特定のノードロールを作成するためのプランニング機能を提供します。アンダークラウドには、コンピュート、コントローラー、さまざまなストレージロールなどのデフォルトのノードセットが含まれるだけでなく、カスタムロールを使用する機能も提供されています。さらに、各ノードロールにどの OpenStack Platform サービスを含めるかを選択でき、新しいノード種別をモデル化するか、独自のホストで特定のコンポーネントを分離する方法を提供します。
- ベアメタルシステムの制御
- アンダークラウドは、各ノードの Intelligent Platform Management Interface (IPMI) などのアウトバウンド管理インターフェースを使用して電源管理機能を制御し、PXE ベースのサービスを使用してハードウェア属性を検出し、各ノードに OpenStack をインストールします。この機能により、ベアメタルシステムを OpenStack ノードとしてプロビジョニングする方法が提供されます。電源管理ドライバーの完全一覧については、「付録B 電源管理ドライバー」を参照します。
- Orchestration
- アンダークラウドでは、環境のプランとして機能する YAML テンプレートセットが提供されています。アンダークラウドは、これらのプランをインポートして、その指示に従い、目的の OpenStack 環境を作成します。このプランには、環境作成プロセスの途中にある特定のポイントで、カスタマイズを組み込めるようにするフックも含まれます。
- コマンドラインツールおよび Web UI
- Red Hat OpenStack Platform director は、ターミナルベースのコマンドラインインターフェースまたは Web ベースのユーザーインターフェースで、これらのアンダークラウド機能を実行します。
- アンダークラウドのコンポーネント
アンダークラウドは、OpenStack のコンポーネントをベースのツールセットとして使用します。これには、以下のコンポーネントが含まれます。
- OpenStack Identity (keystone): director のコンポーネントの認証および承認
- OpenStack Bare Metal (Ironic) および OpenStack Compute (Nova): ベアメタルノードの管理
- OpenStack Networking (Neutron) および Open vSwitch: ベアメタルノードのネットワークの制御
- OpenStack Image サービス (Glance): ベアメタルマシンへ書き込むイメージの格納
- OpenStack Orchestation (Heat) および Puppet: director がオーバークラウドイメージをディスクに書き込んだ後のノードのオーケストレーションおよび設定
OpenStack Telemetry (Ceilometer): 監視とデータの収集。これには、以下が含まれます。
- OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi): メトリック向けの時系列データベース
- OpenStack Telemetry Alarming (aodh): モニタリング向けのアラームコンポーネント
- OpenStack Telemetry Event Storage (panko): モニタリング向けのイベントストレージ
- OpenStack Workflow サービス (mistral): プランのインポートやデプロイなど、特定の director 固有のアクションに対してワークフローセットを提供します。
- OpenStack Messaging Service (zaqar): OpenStack Workflow サービスのメッセージサービスを提供します。
OpenStack Object Storage (swift): 以下のさまざまな OpenStack Platform のコンポーネントに対してオブジェクトストレージを提供します。
- OpenStack Image サービスのイメージストレージ
- OpenStack Bare Metal のイントロスペクションデータ
- OpenStack Workflow サービスのデプロイメントプラン
1.2. オーバークラウド
オーバークラウドは、アンダークラウドを使用して構築した Red Hat OpenStack Platform 環境で、以下のノード種別の 1 つまたは複数で構成されます。これには、作成予定の OpenStack Platform 環境をベースに定義するさまざまなロールが含まれます。アンダークラウドには、以下などのオーバークラウドノードのロールがデフォルトで含まれます。
- コントローラー
OpenStack 環境に管理、ネットワーク、高可用性の機能を提供するノード。理想的な OpenStack 環境には、このノード 3 台で高可用性クラスターを構成することを推奨します。
デフォルトのコントローラーノードには、以下のコンポーネントが含まれます。
- OpenStack Dashboard (horizon)
- OpenStack Identity (keystone)
- OpenStack Compute (nova) API
- OpenStack Networking (neutron)
- OpenStack Image サービス (glance)
- OpenStack Block Storage (cinder)
- OpenStack Object Storage (swift)
- OpenStack Orchestration (heat)
- OpenStack Telemetry (ceilometer)
- OpenStack Telemetry Metrics (gnocchi)
- OpenStack Telemetry Alarming (aodh)
- OpenStack Telemetry Event Storage (panko)
- OpenStack Clustering (sahara)
- OpenStack Shared File Systems (manila)
- OpenStack Bare Metal (ironic)
- MariaDB
- Open vSwitch
- 高可用性サービス向けの Pacemaker および Galera
- Compute
これらのノードは OpenStack 環境にコンピュートリソースを提供します。コンピュートノードをさらに追加して、環境を徐々にスケールアウトすることができます。デフォルトのコンピュートノードには、以下のコンポーネントが含まれます。
- OpenStack Compute (nova)
- KVM/QEMU
- OpenStack Telemetry (ceilometer) エージェント
- Open vSwitch
- ストレージ
OpenStack 環境にストレージを提供するノード。これには、以下のストレージ用のノードが含まれます。
- Ceph Storage ノード: ストレージクラスターを構成するために使用します。各ノードには、Ceph Object Storage Daemon (OSD) が含まれており、Ceph Storage ノードをデプロイする場合には、director により Ceph Monitor がコンピュートノードにインストールされます。
Block storage (Cinder): HA コントローラーノードの外部ブロックストレージとして使用します。このノードには、以下のコンポーネントが含まれます。
- OpenStack Block Storage (cinder) ボリューム
- OpenStack Telemetry (ceilometer) エージェント
- Open vSwitch
Object Storage (swift): これらのノードは、OpenStack Swift の外部ストレージ層を提供します。コントローラーノードは、Swift プロキシーを介してこれらのノードにアクセスします。このノードには、以下のコンポーネントが含まれます。
- OpenStack Object Storage (swift) のストレージ
- OpenStack Telemetry (ceilometer) エージェント
- Open vSwitch
1.3. 高可用性
Red Hat OpenStack Platform director は、OpenStack Platform 環境に高可用性サービスを提供するためにコントローラーノードクラスターを使用します。director は、各コントローラーノードにコンポーネントの複製セットをインストールし、それらをまとめて単一のサービスとして管理します。このタイプのクラスター構成では、1 つのコントローラーノードが機能しなくなった場合にフォールバックするので、OpenStack のユーザーには一定の運用継続性が提供されます。
OpenStack Platform director は、複数の主要なソフトウェアを使用して、コントローラーノード上のコンポーネントを管理します。
- Pacemaker: Pacemaker はクラスターリソースマネージャーで、クラスター内の全ノードにおける OpenStack コンポーネントの可用性を管理/監視します。
- HA Proxy: クラスターに負荷分散およびプロキシーサービスを提供します。
- Galera: クラスター全体の OpenStack Platform データベースを複製します。
- Memcached: データベースのキャッシュを提供します。
Red Hat OpenStack Platform director は複数のコントローラーノードの高可用性を一括に自動設定します。ただし、電源管理制御を有効化するには、ノードを手動で設定する必要があります。本ガイドでは、これらの手順を記載しています。
1.4. Ceph Storage
一般的に、OpenStack を使用する大規模な組織では、数千単位またはそれ以上のクライアントにサービスを提供します。OpenStack クライアントは、ブロックストレージリソースを消費する際には、それぞれに固有のニーズがある可能性が高く、Glance (イメージ)、Cinder (ボリューム)、Nova (コンピュート) を単一ノードにデプロイすると、数千単位のクライアントがある大規模なデプロイメントでの管理ができなくなる可能性があります。このような課題は、OpenStack をスケールアウトすることによって解決できます。
ただし、実際には、Red Hat Ceph Storage などのソリューションを活用して、ストレージ層を仮想化する必要もでてきます。ストレージ層の仮想化により、Red Hat OpenStack Platform のストレージ層を数十テラバイト規模からペタバイトさらにはエクサバイトのストレージにスケーリングすることが可能です。Red Hat Ceph Storage は、市販のハードウェアを使用しながらも、高可用性/高パフォーマンスのストレージ仮想化層を提供します。仮想化によってパフォーマンスが低下するというイメージがありますが、Ceph はブロックデバイスイメージをクラスター全体でオブジェクトとしてストライプ化するため、大きい Ceph のブロックデバイスイメージはスタンドアロンのディスクよりもパフォーマンスが優れているということになります。Ceph ブロックデバイスでは、パフォーマンスを強化するために、キャッシュ、Copy On Write クローン、Copy On Read クローンもサポートされています。
Red Hat Ceph Storage に関する情報は、Red Hat Ceph Storage を参照してください。
第2章 要件
本章では、director を使用して Red Hat OpenStack Platform をプロビジョニングする環境をセットアップするための主要な要件を記載します。これには、director のセットアップ/アクセス要件や OpenStack サービス用に director がプロビジョニングするホストのハードウェア要件が含まれます。
Red Hat OpenStack Platform をデプロイする前には、利用可能なデプロイメントメソッドの特性を考慮することが重要です。詳しくは、「Installing and Managing Red Hat OpenStack Platform」の記事を参照してください。
2.1. 環境要件
最小要件
- Red Hat OpenStack Platform director 用のホストマシン 1 台
- Red Hat OpenStack Platform コンピュートノード用のホストマシン 1 台
- Red Hat OpenStack Platform コントローラーノード用のホストマシン 1 台
推奨要件
- Red Hat OpenStack Platform director 用のホストマシン 1 台
- Red Hat OpenStack Platform コンピュートノード用のホストマシン 3 台
- Red Hat OpenStack Platform コントローラーノード用のホストマシン 3 台
- クラスター内に Red Hat Ceph Storage ノード用のホストマシン 3 台
以下の点に注意してください。
- 全ノードにはベアメタルシステムを使用することを推奨します。最低でも、コンピュートノードにはベアメタルシステムが必要です。
- director は電源管理制御を行うため、オーバークラウドのベアメタルシステムにはすべて、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) が必要です。
- オーバークラウドのコンピュートノードを POWER (ppc64le) ハードウェアにデプロイする場合は、「付録G POWER 版 Red Hat OpenStack Platform (テクノロジープレビュー)」に記載の概要を一読してください。
Open vSwitch (OVS) 2.4.0 を OVS 2.5.0 にアップグレードせずに Red Hat Enterprise Linux 7.3 カーネルへのアップグレードを実行しないようにしてください。カーネルのみがアップグレードされると、OVS は機能しなくなります。
2.2. アンダークラウドの要件
director をホストするアンダークラウドシステムは、オーバークラウド内の全ノードのプロビジョニングおよび管理を行います。
- Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする、8 コア 64 ビット x86 プロセッサー
- 最小 16 GB の RAM
ルートディスク上に最小 100 GB の空きディスク領域。この領域の内訳は以下のとおりです。
- コンテナーイメージ用に 10 GB
- QCOW2 イメージの変換とノードのプロビジョニングプロセスのキャッシュ用に 10 GB
- 一般用途、ログの記録、メトリック、および将来の拡張用に 80 GB 以上
- 最小 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード。ただし、特にオーバークラウド環境で多数のノードをプロビジョニングする場合には、ネットワークトラフィックのプロビジョニング用に 10 Gbps インターフェースを使用することを推奨します。
- ホストのオペレーティングシステムに Red Hat Enterprise Linux 7.4 がインストール済みであること
- ホストの SELinux が有効化されていること
2.2.1. 仮想化サポート
Red Hat は、以下のプラットフォーム上の仮想化アンダークラウドのみをサポートします。
プラットフォーム | 備考 |
---|---|
Kernel-based Virtual Machine (KVM) |
認定済みのハイパーバイザーとしてリストされている Red Hat Enterprise Linux 5、6、7 でホストされていること |
Red Hat Enterprise Virtualization |
認定済みのハイパーバイザーとしてリストされている Red Hat Enterprise Virtualization 3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、4.0 でホストされていること |
Microsoft Hyper-V |
Red Hat Customer Portal Certification Catalogue に記載の Hyper-V のバージョンでホストされていること |
VMware ESX および ESXi |
Red Hat Customer Portal Certification Catalogue に記載の ESX および ESXi のバージョンでホストされていること |
Red Hat OpenStack Platform director では、ホストのオペレーティングシステムに最新バージョンの Red Hat Enterprise Linux を使用する必要があります。このため、仮想化プラットフォームは下層の Red Hat Enterprise Linux バージョンもサポートする必要があります。
仮想マシンの要件
仮想アンダークラウドのリソース要件は、ベアメタルのアンダークラウドの要件と似ています。ネットワークモデル、ゲスト CPU 機能、ストレージのバックエンド、ストレージのフォーマット、キャッシュモードなどプロビジョニングの際には、さまざまなチューニングオプションを考慮する必要があります。
ネットワークの考慮事項
仮想化アンダークラウドに関する以下のネットワーク考慮事項にご留意ください。
- 電源管理
-
アンダークラウドの仮想マシンには、オーバークラウドのノードにある電源管理のデバイスへのアクセスが必要です。これには、ノードの登録の際に、
pm_addr
パラメーターに IP アドレスを設定してください。 - プロビジョニングネットワーク
-
プロビジョニング (
ctlplane
) ネットワークに使用する NIC には、オーバークラウドのベアメタルノードの NIC に対する DHCP 要求をブロードキャストして、対応する機能が必要です。仮想マシンの NIC をベアメタルの NIC と同じネットワークに接続するブリッジを作成します。
一般的に、ハイパーバイザーのテクノロジーにより、アンダークラウドが不明なアドレスのトラフィックを伝送できない場合に問題が発生します。Red Hat Enterprise Virtualization を使用する場合には、anti-mac-spoofing
を無効にしてこれを回避してください。VMware ESX または ESXi を使用している場合は、偽装転送を承諾してこれを回避します。
アーキテクチャーの例
これは、KVM サーバーを使用した基本的なアンダークラウドの仮想化アーキテクチャー例です。これは、ネットワークやリソースの要件に合わせてビルド可能な基盤としての使用を目的としています。
KVM ホストは Linux ブリッジを 2 つ使用します。
- br-ex (eth0)
- アンダークラウドへの外部アクセスを提供します。
- 外部ネットワークの DHCP サーバーは、仮想 NIC (eth0) を使用してアンダークラウドにネットワーク設定を割り当てます。
- アンダークラウドがベアメタルサーバーの電源管理インターフェースにアクセスできるようにします。
- br-ctlplane (eth1)
- ベアメタルのオーバークラウドノードと同じネットワークに接続します。
- アンダークラウドは、仮想 NIC (eth1) を使用して DHCP および PXE ブートの要求に対応します。
- オーバークラウドのベアメタルサーバーは、このネットワークの PXE 経由で起動します。
KVM ホストには、以下のパッケージが必要です。
$ yum install libvirt-client libvirt-daemon qemu-kvm libvirt-daemon-driver-qemu libvirt-daemon-kvm virt-install bridge-utils rsync
以下のコマンドは、KVM ホストにアンダークラウドの仮想マシンして、適切なブリッジに接続するための仮想 NIC を 2 つ作成します。
$ virt-install --name undercloud --memory=16384 --vcpus=4 --location /var/lib/libvirt/images/rhel-server-7.3-x86_64-dvd.iso --disk size=100 --network bridge=br-ex --network bridge=br-ctlplane --graphics=vnc --hvm --os-variant=rhel7
このコマンドにより、libvirt
ドメインが起動して virt-manager
に接続し、段階を追ってインストールプロセスが進められます。または、以下のオプションを使用してキックスタートファイルを指定して、無人インストールを実行することもできます。
--initrd-inject=/root/ks.cfg --extra-args "ks=file:/ks.cfg"
インストールが完了したら、root
ユーザーとしてインスタンスに SSH 接続して、「4章アンダークラウドのインストール」の手順に従います。
バックアップ
以下のように、仮想化アンダークラウドをバックアップするためのソリューションは複数あります。
- オプション 1: 『director のアンダークラウドのバックアップと復元』ガイドの手順に従います。
- オプション 2: アンダークラウドをシャットダウンして、アンダークラウドの仮想マシンストレージのバックアップのコピーを取ります。
- オプション 3: ハイパーバイザーがライブまたはアトミックのスナップショットをサポートする場合は、アンダークラウドの仮想マシンのスナップショットを作成します。
KVM サーバーを使用する場合は、以下の手順でスナップショットを作成してください。
-
qemu-guest-agent
がアンダークラウドのゲスト仮想マシンで実行していることを確認してください。 - 実行中の仮想マシンのライブスナップショットを作成します。
$ virsh snapshot-create-as --domain undercloud --disk-only --atomic --quiesce
- QCOW バッキングファイルのコピー (読み取り専用) を作成します。
$ rsync --sparse -avh --progress /var/lib/libvirt/images/undercloud.qcow2 1.qcow2
- QCOW オーバーレイファイルをバッキングファイルにマージして、アンダークラウドの仮想マシンが元のファイルを使用するように切り替えます。
$ virsh blockcommit undercloud vda --active --verbose --pivot
2.3. ネットワーク要件
アンダークラウドのホストには、最低でも 2 つのネットワークが必要です。
- プロビジョニングネットワーク: オーバークラウドで使用するベアメタルシステムの検出がしやすくなるように、DHCP および PXE ブート機能を提供します。このネットワークは通常、director が PXE ブートおよび DHCP の要求に対応できるように、トランキングされたインターフェースでネイティブ VLAN を使用する必要があります。一部のサーバーのハードウェアの BIOS は、VLAN からの PXE ブートをサポートしていますが、その BIOS が、ブート後に VLAN をネイティブ VLAN に変換する機能もサポートする必要があります。この機能がサポートされていない場合には、アンダークラウドに到達できません。現在この機能を完全にサポートしているサーバーハードウェアはごく一部です。プロビジョニングネットワークは、オーバークラウドノード上で Intelligent Platform Management Interface (IPMI) により電源管理を制御するのに使用するネットワークでもあります。
- 外部ネットワーク: 全ノードへのリモート接続に使用する別個のネットワーク。このネットワークに接続するこのインターフェースには、静的または外部の DHCP サービス経由で動的に定義された、ルーティング可能な IP アドレスが必要です。
これは、必要なネットワークの最小数を示します。ただし、director は他の Red Hat OpenStack Platform ネットワークトラフィックをその他のネットワーク内に分離することができます。Red Hat OpenStack Platform は、ネットワークの分離に物理インターフェースとタグ付けされた VLAN の両方をサポートしています。
以下の点に注意してください。
標準的な最小限のオーバークラウドのネットワーク構成には、以下が含まれます。
- シングル NIC 構成: ネイティブの VLAN および異なる種別のオーバークラウドネットワークのサブネットを使用するタグ付けされた VLAN 上にプロビジョニングネットワーク用の NIC を 1 つ。
- デュアル NIC 構成: プロビジョニングネットワーク用の NIC を 1 つと、外部ネットワーク用の NIC を 1 つ。
- デュアル NIC 構成: ネイティブの VLAN 上にプロビジョニングネットワーク用の NIC を 1 つと、異なる種別のオーバークラウドネットワークのサブネットを使用するタグ付けされた VLAN 用の NIC を 1 つ。
- 複数 NIC 構成: 各 NIC は、異なる種別のオーバークラウドネットワークのサブセットを使用します。
- 追加の物理 NIC は、個別のネットワークの分離、ボンディングインターフェースの作成、タグ付された VLAN トラフィックの委譲に使用することができます。
- ネットワークトラフィックの種別を分離するのに VLAN を使用している場合には、802.1Q 標準をサポートするスイッチを使用してタグ付けされた VLAN を提供します。
- オーバークラウドの作成時には、全オーバークラウドマシンで 1 つの名前を使用して NIC を参照します。理想としては、混乱を避けるため、対象のネットワークごとに、各オーバークラウドノードで同じ NIC を使用してください。たとえば、プロビジョニングネットワークにはプライマリー NIC を使用して、OpenStack サービスにはセカンダリー NIC を使用します。
- プロビジョニングネットワークの NIC は director マシン上でリモート接続に使用する NIC とは異なります。director のインストールでは、プロビジョニング NIC を使用してブリッジが作成され、リモート接続はドロップされます。director システムへリモート接続する場合には、外部 NIC を使用します。
プロビジョニングネットワークには、環境のサイズに適した IP 範囲が必要です。以下のガイドラインを使用して、この範囲に含めるべき IP アドレスの総数を決定してください。
- プロビジョニングネットワークに接続されているノード 1 台につき最小で 1 IP アドレスを含めます。
- 高可用性を設定する予定がある場合には、クラスターの仮想 IP 用に追加の IP アドレスを含めます。
環境のスケーリング用の追加の IP アドレスを範囲に追加します。
注記プロビジョニングネットワーク上で IP アドレスが重複するのを避ける必要があります。詳しい説明は、「ネットワークのプランニング」を参照してください。
注記ストレージ、プロバイダー、テナントネットワークなどを対象とする IP アドレスの使用範囲のプランニングに関する情報は、『ネットワークガイド』を参照してください。
- すべてのオーバークラウドシステムをプロビジョニング NIC から PXE ブートするように設定して、同システム上の外部 NIC およびその他の NIC の PXE ブートを無効にします。また、プロビジョニング NIC の PXE ブートは、ハードディスクや CD/DVD ドライブよりも優先されるように、起動順序の最上位に指定します。
- オーバークラウドのベアメタルシステムにはすべて、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) などのサポート対象の電源管理インターフェースが必要です。このインターフェースにより、director は各ノードの電源管理を制御することが可能となります。
- 各オーバークラウドシステムの詳細 (プロビジョニング NIC の MAC アドレス、IPMI NIC の IP アドレス、IPMI ユーザー名、IPMI パスワード) をメモしてください。この情報は、後でオーバークラウドノードを設定する際に役立ちます。
- インスタンスが外部のインターネットからアクセス可能である必要がある場合には、パブリックネットワークから Floating IP アドレスを割り当てて、そのアドレスをインスタンスに関連付けます。インスタンスは、引き続きプライベートの IP アドレスを確保しますが、ネットワークトラフィックは NAT を使用して、Floating IP アドレスに到達します。Floating IP アドレスは、複数のプライベート IP アドレスではなく、単一のインスタンスにのみ割り当て可能である点に注意してください、ただし、Floating IP アドレスは、単一のテナントで使用するように確保され、そのテナントは必要に応じて特定のインスタンスに関連付け/関連付け解除することができます。この構成を使用すると、インフラストラクチャーが外部のインターネットに公開されるので、適切なセキュリティープラクティスを順守しているかどうかを確認する必要があるでしょう。
- 1 つのブリッジには単一のインターフェースまたは単一のボンディングのみをメンバーにすると、Open vSwitch でネットワークループが発生するリスクを緩和することができます。複数のボンディングまたはインターフェースが必要な場合には、複数のブリッジを設定することが可能です。
- オーバークラウドノードが Red Hat Content Delivery Network やネットワークタイムサーバーなどの外部のサービスに接続できるようにするには、DNS によるホスト名解決を使用することを推奨します。
OpenStack Platform の実装のセキュリティーレベルは、その環境のセキュリティーレベルと同等です。ネットワーク環境内の適切なセキュリティー原則に従って、ネットワークアクセスが正しく制御されるようにします。以下に例を示します。
- ネットワークのセグメント化を使用して、ネットワークトラフィックを軽減し、機密データを分離します。フラットなネットワークはセキュリティーレベルがはるかに低くなります。
- サービスアクセスとポートを最小限に制限します。
- 適切なファイアウォールルールとパスワードが使用されるようにします。
- SELinux が有効化されていることを確認します。
システムのセキュリティー保護については、以下のドキュメントを参照してください。
2.4. オーバークラウドの要件
以下の項では、オーバークラウドのインストール内の個別システムおよびノードの要件について詳しく説明します。
2.4.1. Compute ノードの要件
コンピュートノードは、仮想マシンインスタンスが起動した後にそれらを稼働させる役割を果たします。コンピュートノードは、ハードウェアの仮想化をサポートしている必要があります。また、ホストする仮想マシンインスタンスの要件をサポートするのに十分なメモリーとディスク容量も必要です。
- プロセッサー
- Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能をサポートする 64 ビット x86 プロセッサーで Intel VT または AMD-V のハードウェア仮想化拡張機能が有効化されていること。このプロセッサーには最小でも 4 つのコアが搭載されていることを推奨しています。
- IBM POWER 8 プロセッサー
- メモリー
- 最小で 6 GB のメモリー。これに、仮想マシンインスタンスに割り当てるメモリー容量に基づいて、追加の RAM を加算します。
- ディスク領域
- 最小 40 GB の空きディスク領域
- ネットワークインターフェースカード
- 最小 1 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード (実稼働環境では最低でも NIC を 2 枚使用することを推奨)。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けの場合には追加のネットワークインターフェースを使用します。
- 電源管理
- 各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。
2.4.2. コントローラーノードの要件
コントローラーノードは、Red Hat OpenStack Platform 環境の中核となるサービス (例: Horizon Dashboard、バックエンドのデータベースサーバー、Keystone 認証、高可用性サービスなど) をホストする役割を果たします。
- プロセッサー
- Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能のサポートがある 64 ビットの x86 プロセッサー
- メモリー
最小のメモリー容量は 32 GB です。ただし、推奨のメモリー容量は、仮想 CPU の数によって異なります (CPU コアをハイパースレッディングの値で乗算した数値に基づいています)。以下の計算を参考にしてください。
コントローラーの最小メモリー容量の算出:
- 1 仮想 CPU あたり 1.5 GB のメモリーを使用します。たとえば、仮想 CPU が 48 個あるマシンにはメモリーは 72 GB 必要です。
コントローラーの推奨メモリー容量の算出:
- 1 仮想 CPU あたり 3 GB のメモリーを使用します。たとえば、仮想 CPU が 48 個あるマシンにはメモリーは 144 GB 必要です。
メモリーの要件に関する詳しい情報は、Red Hat カスタマーポータルで「Red Hat OpenStack Platform で、クラスター化されたコントローラーに必要なハードウェア(CPU、メモリー)要件 」の記事を参照してください。
- ディスクストレージとレイアウト
デフォルトでは、Telemetry (
gnocchi
) と Object Storage (swift
) のサービスはいずれもコントローラーにインストールされ、ルートディスクを使用するように設定されます。これらのデフォルトは、コモディティーハードウェア上に構築される小型のオーバークラウドのデプロイに適しています。これは、概念検証およびテストの標準的な環境です。これらのデフォルトにより、最小限のプランニングでオーバークラウドをデプロイすることができますが、ワークロードキャパシティーとパフォーマンスの面ではあまり優れていません。ただし、Telemetry がストレージに絶えずアクセスするため、エンタープライズ環境では、これによって大きなボトルネックが生じる可能性があります。これにより、ディスク I/O が過度に使用されて、その他すべてのコントローラーサービスに深刻な影響をもたらします。このタイプの環境では、オーバークラウドのプランニングを行って、適切に設定する必要があります。
Red Hat は、Telemetry と Object Storage の両方の推奨設定をいくつか提供しています。詳しくは、『Deployment Recommendations for Specific Red Hat OpenStack Platform Services』を参照してください。
- ネットワークインターフェースカード
- 最小 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けの場合には追加のネットワークインターフェースを使用します。
- 電源管理
- 各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。
2.4.3. Ceph Storage ノードの要件
Ceph Storage ノードは、Red Hat OpenStack Platform 環境でオブジェクトストレージを提供する役割を果たします。
- プロセッサー
- Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能のサポートがある 64 ビットの x86 プロセッサー
- メモリー
- メモリー要件はストレージ容量によって異なります。ハードディスク容量 1 TB あたり最小で 1 GB のメモリーを使用するのが理想的です。
- ディスク領域
- ストレージ要件はメモリーの容量によって異なります。ハードディスク容量 1 TB あたり最小で 1 GB のメモリーを使用するのが理想的です。
- ディスクのレイアウト
Red Hat Ceph Storage ノードの推奨設定では、少なくとも 3 つ、またはそれ以上ののディスクを以下と同様のレイアウトで構成する必要があります。
-
/dev/sda
: ルートディスク。director は、主なオーバークラウドイメージをディスクにコピーします。 -
/dev/sdb
: ジャーナルディスク。このディスクは、/dev/sdb1
、/dev/sdb2
、/dev/sdb3
などのように、Ceph OSD ジャーナル向けにパーティションを分割します。ジャーナルディスクは通常、システムパフォーマンスの向上に役立つ Solid State Drive (SSD) です。 /dev/sdc
以降: OSD ディスク。ストレージ要件で必要な数のディスクを使用します。注記Red Hat OpenStack Platform director では
ceph-ansible
が使われますが、OSD を Ceph Storage ノードのルートディスクにインストールすることには対応していません。つまり、サポートされる Ceph Storage ノード用に少なくとも 2 つのディスクが必要になります。
-
- ネットワークインターフェースカード
- 最小で 1 x 1 Gbps ネットワークインターフェースカード (実稼働環境では、最低でも NIC を 2 つ以上使用することを推奨します)。ボンディングインターフェース向けの場合や、タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合には、追加のネットワークインターフェースを使用します。特に大量のトラフィックにサービスを提供する OpenStack Platform 環境を構築する場合には、ストレージノードには 10 Gbps インターフェースを使用することを推奨します。
- 電源管理
- 各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。
Ceph Storage クラスターを使用するオーバークラウドのインストールについては、『Deploying an Overcloud with Containerized Red Hat Ceph』ガイドを参照してください。
2.4.4. Object Storage ノードの要件
Object Storage ノードは、オーバークラウドのオブジェクトストレージ層を提供します。Object Storage プロキシーは、コントローラーノードにインストールされます。ストレージ層には、ノードごとに複数のディスクを持つベアメタルノードが必要です。
- プロセッサー
- Intel 64 または AMD64 CPU 拡張機能のサポートがある 64 ビットの x86 プロセッサー
- メモリー
- メモリー要件はストレージ容量によって異なります。ハードディスク容量 1 TB あたり最小で 1 GB のメモリーを使用するのが理想的です。最適なパフォーマンスを得るには、特にワークロードが小さいファイル (100 GB 未満) の場合にはハードディスク容量 1 TB あたり 2 GB のメモリーを使用することを推奨します。
- ディスク領域
ストレージ要件は、ワークロードに必要とされる容量により異なります。アカウントとコンテナーのデータを保存するには SSD ドライブを使用することを推奨します。アカウントおよびコンテナーデータとオブジェクトの容量比率は、約 1 % です。たとえば、ハードドライブの容量 100 TB ごとに、アカウントおよびコンテナーデータの SSD 容量は 1 TB 用意するようにします。
ただし、これは保存したデータの種類により異なります。保存するオブジェクトサイズの大半が小さい場合には、SSD の容量がさらに必要です。オブジェクトが大きい場合には (ビデオ、バックアップなど)、SSD の容量を減らします。
- ディスクのレイアウト
推奨のノード設定には、以下のようなディスクレイアウトが必要です。
-
/dev/sda
: ルートディスク。director は、主なオーバークラウドイメージをディスクにコピーします。 -
/dev/sdb
: アカウントデータに使用します。 -
/dev/sdc
: コンテナーデータに使用します。 -
/dev/sdc
以降: オブジェクトサーバーディスク。ストレージ要件で必要な数のディスクを使用します。
-
- ネットワークインターフェースカード
- 最小 2 枚の 1 Gbps ネットワークインターフェースカード。タグ付けされた VLAN トラフィックを委譲する場合や、ボンディングインターフェース向けの場合には追加のネットワークインターフェースを使用します。
- 電源管理
- 各コントローラーノードには、Intelligent Platform Management Interface (IPMI) 機能などのサポート対象の電源管理インターフェースがサーバーのマザーボードに搭載されている必要があります。
2.5. リポジトリーの要件
アンダークラウドおよびオーバークラウドにはいずれも、Red Hat コンテンツ配信ネットワーク (CDN) か Red Hat Satellite 5 または 6 を利用した Red Hat リポジトリーへのアクセスが必要です。Red Hat Satellite サーバーを使用する場合は、必要なリポジトリーをお使いの OpenStack Platform 環境に同期してください。以下の CDN チャネル名一覧をガイドとして使用してください。
Open vSwitch (OVS) 2.4.0 を OVS 2.5.0 にアップグレードせずに Red Hat Enterprise Linux 7.3 カーネルへのアップグレードを実行しないようにしてください。カーネルのみがアップグレードされると、OVS は機能しなくなります。
表2.1 OpenStack Platform リポジトリー
名前 | リポジトリー | 要件の説明 |
---|---|---|
Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMS) |
|
x86_64 システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー |
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - Extras (RPMs) |
|
Red Hat OpenStack Platform の依存関係が含まれます。 |
Red Hat Enterprise Linux 7 Server - RH Common (RPMs) |
|
Red Hat OpenStack Platform のデプロイと設定ツールが含まれます。 |
Red Hat Satellite Tools for RHEL 7 Server RPMs x86_64 |
|
Red Hat Satellite 6 でのホスト管理ツール |
Red Hat Enterprise Linux High Availability (for RHEL 7 Server) (RPMs) |
|
Red Hat Enterprise Linux の高可用性ツール。コントローラーノードの高可用性に使用します。 |
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 12 for RHEL 7 (RPMs) |
|
Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー。Red Hat OpenStack Platform director のパッケージも含まれます。 |
Red Hat Ceph Storage OSD 2 for Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMs) |
|
(Ceph Storage ノード向け) Ceph Storage Object Storage デーモンのリポジトリー。Ceph Storage ノードにインストールします。 |
Red Hat Ceph Storage MON 2 for Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMs) |
|
(Ceph Storage ノード向け) Ceph Storage Monitor デーモンのリポジトリー。Ceph Storage ノードを使用して OpenStack 環境にあるコントローラーノードにインストールします。 |
Red Hat Ceph Storage Tools 2 for Red Hat Enterprise Linux 7 Server (RPMs) |
|
Ceph Storage クラスターと通信するためのノード用のツールを提供します。このリポジトリーは、Ceph Storage クラスターを使用するオーバークラウドをデプロイする際に、全ノードに有効化する必要があります。 |
IBM POWER 用の OpenStack Platform リポジトリー
これらのリポジトリーは、「付録G POWER 版 Red Hat OpenStack Platform (テクノロジープレビュー)」で説明する機能に使われます。
名前 | リポジトリー | 要件の説明 |
---|---|---|
Red Hat Enterprise Linux for IBM Power, little endian |
|
ppc64le システム用ベースオペレーティングシステムのリポジトリー |
Red Hat OpenStack Platform 12 for RHEL 7 (RPMs) |
|
ppc64le システム用 Red Hat OpenStack Platform のコアリポジトリー |
オフラインのネットワークで Red Hat OpenStack Platform 環境用リポジトリーを設定するには、「オフライン環境で Red Hat OpenStack Platform Director を設定する 」の記事を参照してください。
第3章 オーバークラウドのプランニング
以下の項には、ノードロールの定義、ネットワークトポロジーのプランニング、ストレージなど、Red Hat OpenStack Platform 環境のさまざまな面のプランニングに関するガイドラインを記載します。
3.1. ノードのデプロイメントロールのプランニング
director はオーバークラウドの構築に、デフォルトで複数のノード種別を提供します。これらのノード種別は以下のとおりです。
- コントローラー
環境を制御するための主要なサービスを提供します。これには、Dashboard (Horizon)、認証 (Keystone)、イメージストレージ (Glance)、ネットワーク (Neutron)、オーケストレーション (Heat)、高可用性サービスが含まれます。高可用性の場合は、Red Hat OpenStack Platform 環境にコントローラーノードが 3 台必要です。
注記1 台のノードで構成される環境はテスト目的で使用することができます。2 台のノードまたは 4 台以上のノードで構成される環境はサポートされません。
- Compute
- ハイパーバイザーとして機能し、環境内で仮想マシンを実行するのに必要な処理能力を提供する物理サーバー。基本的な Red Hat OpenStack Platform 環境には少なくとも 1 つのコンピュートノードが必要です。
- Ceph-Storage
- Red Hat Ceph Storage を提供するホスト。Ceph Storage ホストはクラスターに追加され、クラスターをスケーリングします。このデプロイメントロールはオプションです。
- Cinder-Storage
- OpenStack の Cinder サービスに外部ブロックストレージを提供するホスト。このデプロイメントロールはオプションです。
- Swift-Storage
- OpenStack の Swift サービスに外部オブジェクトストレージを提供するホスト。このデプロイメントロールはオプションです。
以下の表には、オーバークラウドの構成例と各シナリオで使用するノードタイプの定義をまとめています。
表3.1 各種シナリオに使用するノードデプロイメントロール
コントローラー |
Compute |
Ceph-Storage |
Swift-Storage |
Cinder-Storage |
合計 | |
小規模のオーバークラウド |
1 |
1 |
- |
- |
- |
2 |
中規模のオーバークラウド |
1 |
3 |
- |
- |
- |
4 |
追加のオブジェクトおよびブロックストレージのある中規模のオーバークラウド |
1 |
3 |
- |
1 |
1 |
6 |
高可用性の中規模オーバークラウド |
3 |
3 |
- |
- |
- |
6 |
高可用性で Ceph Storage のある中規模オーバークラウド |
3 |
3 |
3 |
- |
- |
9 |
さらに、個別のサービスをカスタムのロールに分割するかどうかを検討します。コンポーザブルロールのアーキテクチャーに関する詳しい情報は『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドの「コンポーザブルサービスとカスタムロール」を参照してください。
3.2. ネットワークのプランニング
ロールとサービスを適切にマッピングして相互に正しく通信できるように、環境のネットワークトポロジーおよびサブネットのプランニングを行うことが重要です。Red Hat OpenStack Platform では、自律的に動作してソフトウェアベースのネットワーク、静的/Floating IP アドレス、DHCP を管理する Neutron ネットワークサービスを使用します。director は、オーバークラウド環境の各コントローラーノードに、このサービスをデプロイします。
Red Hat OpenStack Platform は、さまざまなサービスをマッピングして、お使いの環境の各種サブネットに割り当てられたネットワークトラフィックの種別を分類します。これらのネットワークトラフィック種別は以下のとおりです。
表3.2 ネットワーク種別の割り当て
ネットワーク種別 |
説明 |
そのネットワーク種別を使用するノード |
IPMI |
ノードの電源管理に使用するネットワーク。このネットワークは、アンダークラウドのインストール前に事前定義されます。 |
全ノード |
プロビジョニング / コントロールプレーン |
director は、このネットワークトラフィック種別を使用して、PXE ブートで新規ノードをデプロイし、オーバークラウドベアメタルサーバーに OpenStack Platform のインストールをオーケストレーションします。このネットワークは、アンダークラウドのインストール前に事前定義されます。 |
全ノード |
内部 API |
内部 API ネットワークは、API 通信、RPC メッセージ、データベース通信経由で OpenStack のサービス間の通信を行う際に使用します。 |
コントローラー、コンピュート、Cinder Storage、Swift Storage |
テナント |
Neutron は、VLAN 分離 (各テナントネットワークがネットワーク VLAN) または VXLAN か GRE 経由のトンネリングを使用した独自のネットワークを各テナントに提供します。ネットワークトラフィックは、テナントのネットワークごとに分割されます。テナントネットワークにはそれぞれ IP サブネットが割り当てられています。また、ネットワーク名前空間が複数あると、複数のテナントネットワークが同じアドレスを使用できるので、競合は発生しません。 |
コントローラー、コンピュート |
ストレージ |
Block Storage、NFS、iSCSI など。理想的には、これはパフォーマンス上の理由から、完全に別のスイッチファブリックに分離した方がよいでしょう。 |
全ノード |
ストレージ管理 |
OpenStack Object Storage (swift) は、このネットワークを使用して、参加するレプリカノード間でデータオブジェクトを同期します。プロキシーサービスは、ユーザー要求と背後にあるストレージ層の間の仲介インターフェースとして機能します。プロキシーは、受信要求を受け取り、必要なレプリカの位置を特定して要求データを取得します。Ceph バックエンドを使用するサービスは、Ceph と直接対話せずにフロントエンドのサービスを使用するため、ストレージ管理ネットワーク経由で接続を確立します。RBD ドライバーは例外で、このトラフィックは直接 Ceph に接続する点に注意してください。 |
コントローラー、Ceph Storage、Cinder Storage、Swift Storage |
外部 |
グラフィカルシステム管理用の OpenStack Dashboard (Horizon)、OpenStack サービス用のパブリック API をホストして、インスタンスへの受信トラフィック向けに SNAT を実行します。外部ネットワークがプライベート IP アドレスを使用する場合には (RFC-1918 に準拠)、インターネットからのトラフィックに対して、さらに NAT を実行する必要があります。 |
コントローラー |
Floating IP |
受信トラフィックが Floating IP アドレスとテナントネットワーク内のインスタンスに実際に割り当てられた IP アドレスとの間の 1 対 1 の IP アドレスマッピングを使用してインスタンスに到達できるようにします。外部ネットワークからは分離した VLAN 上で Floating IP をホストする場合には、Floating IP VLAN をコントローラーノードにトランキングして、オーバークラウドの作成後に Neutron を介して VLAN を追加します。これにより、複数のブリッジに接続された複数の Floating IP ネットワークを作成する手段が提供されます。VLAN は、トランキングされますが、インターフェースとしては設定されません。その代わりに、Neutron は各 Floating IP ネットワークに選択したブリッジ上の VLAN セグメンテーション ID を使用して、OVS ポートを作成します。 |
コントローラー |
管理 |
SSH アクセス、DNS トラフィック、NTP トラフィックなどのシステム管理機能を提供します。このネットワークは、コントローラー以外のノード用のゲートウェイとしても機能します。 |
全ノード |
一般的な Red Hat OpenStack Platform のシステム環境では通常、ネットワーク種別の数は物理ネットワークのリンク数を超えます。全ネットワークを正しいホストに接続するには、オーバークラウドは VLAN タグ付けを使用して、1 つのインターフェースに複数のネットワークを提供します。ネットワークの多くは、サブネットが分離されていますが、インターネットアクセスまたはインフラストラクチャーにネットワーク接続ができるようにルーティングを提供するレイヤー 3 のゲートウェイが必要です。
デプロイ時に neutron VLAN モード (トンネリングは無効) を使用する場合でも、プロジェクトネットワーク (GRE または VXLAN でトンネリング) をデプロイすることを推奨します。これには、デプロイ時にマイナーなカスタマイズを行う必要があり、将来ユーティリティーネットワークまたは仮想化ネットワークとしてトンネルネットワークを使用するためのオプションが利用可能な状態になります。VLAN を使用してテナントネットワークを作成することは変わりませんが、テナントの VLAN を消費せずに特別な用途のネットワーク用に VXLAN トンネルを作成することも可能です。また、テナント VLAN を使用するデプロイメントに VXLAN 機能を追加することは可能ですが、サービスを中断せずにテナント VLAN を既存のオーバークラウドに追加することはできません。
director は、トラフィック種別の中から 6 つを特定のサブネットまたは VLAN にマッピングする方法を提供します。このようなトラフィック種別には、以下が含まれます。
- 内部 API
- ストレージ
- ストレージ管理
- テナントネットワーク
- 外部
- 管理
未割り当てのネットワークは、プロビジョニングネットワークと同じサブネットに自動的に割り当てられます。
下図では、ネットワークが個別の VLAN に分離されたネットワークトポロジーの例を紹介しています。各オーバークラウドノードは、ボンディングで 2 つ (nic2
および nic3
) のインターフェースを使用して、対象の VLAN 経由でこれらのネットワークを提供します。また、各オーバークラウドのノードは、ネイティブの VLAN (nic1
) を使用するプロビジョニングネットワークでアンダークラウドと通信します。
以下の表は、異なるネットワークのレイアウトをマッピングするネットワークトラフィック例が記載されています。
表3.3 ネットワークマッピング
マッピング |
インターフェースの総数 |
VLAN の総数 | |
外部アクセスのあるフラットネットワーク |
ネットワーク 1: プロビジョニング、内部 API、ストレージ、ストレージ管理、テナントネットワーク ネットワーク 2: 外部、Floating IP (オーバークラウドの作成後にマッピング) |
2 |
2 |
分離ネットワーク |
ネットワーク 1: プロビジョニング ネットワーク 2: 内部 API ネットワーク 3: テナントネットワーク ネットワーク 4: ストレージ ネットワーク 5: ストレージ管理 ネットワーク 6: ストレージ管理 ネットワーク 7: 外部、Floating IP (オーバークラウドの作成後にマッピング) |
3 (ボンディングインターフェース 2 つを含む) |
7 |
3.3. ストレージのプランニング
任意のドライバーまたはバックエンド種別のバックエンド cinder ボリュームを使用するゲストインスタンスで LVM を使用すると、パフォーマンスとボリュームの可視性/可用性で問題が生じます。このような問題は、LVM フィルターを使用すると緩和することができます。詳しくは、『ストレージガイド』の「第 2.1 項 バックエンド」および KCS の記事 3213311 「Using LVM on a cinder volume exposes the data to the compute host」を参照してください。
director は、オーバークラウド環境にさまざまなストレージオプションを提供します。オプションは以下のとおりです。
- Ceph Storage ノード
director は、Red Hat Ceph Storage を使用して拡張可能なストレージノードセットを作成します。オーバークラウドは、各種ノードを以下の目的で使用します。
- イメージ: Glance は仮想マシンのイメージを管理します。イメージは変更できないため、OpenStack はイメージバイナリーブロブとして処理し、それに応じてイメージをダウンロードします。Ceph ブロックデバイスでイメージを格納するには、Glance を使用することができます。
- ボリューム: Cinder ボリュームはブロックデバイスです。OpenStack は、仮想マシンの起動や、実行中の仮想マシンへのボリュームのアタッチにボリュームを使用し、Cinder サービスを使用してボリュームを管理します。さらに、イメージの CoW (Copy-on-Write) のクローンを使用して仮想マシンを起動する際には Cinder を使用します。
ゲストディスク: ゲストディスクは、ゲストオペレーティングシステムのディスクです。デフォルトでは、Nova で仮想マシンを起動すると、ディスクは、ハイパーバイザーのファイルシステム上のファイルとして表示されます (通常
/var/lib/nova/instances/<uuid>/
の配下)。Cinder を使用せずに直接 Ceph 内にある全仮想マシンを起動することができます。これは、ライブマイグレーションのプロセスで簡単にメンテナンス操作を実行できるため好都合です。また、ハイパーバイザーが停止した場合には、nova evacuate
をトリガーして仮想マシンをほぼシームレスに別の場所で実行することもできるので便利です。重要Ceph で仮想マシンを起動するには (一時バックエンドまたはボリュームからの起動)、Glance のイメージ形式は
RAW
でなければなりません。Ceph は、仮想マシンディスクのホスティングで QCOW2 や VMDK などのその他の形式はサポートしていません。
その他の情報については、『Red Hat Ceph Storage Architecture Guide』を参照してください。
- Swift Storage ノード
- director は、外部オブジェクトストレージノードを作成します。これは、オーバークラウド環境でコントローラーノードをスケーリングまたは置き換える必要があるが、高可用性クラスター外にオブジェクトストレージを保持する必要がある場合に便利です。
第4章 アンダークラウドのインストール
Red Hat OpenStack Platform 環境の構築では、最初にアンダークラウドシステムに director をインストールします。これには、必要なサブスクリプションやリポジトリーを有効化するために複数の手順を実行する必要があります。
4.1. director のインストールユーザーの作成
director のインストールプロセスでは、root 以外のユーザーがコマンドを実行する必要があります。以下のコマンドを使用して、stack
という名前のユーザーを作成して、パスワードを設定します。
[root@director ~]# useradd stack [root@director ~]# passwd stack # specify a password
sudo
を使用する際に、このユーザーがパスワードを要求されないようにします。
[root@director ~]# echo "stack ALL=(root) NOPASSWD:ALL" | tee -a /etc/sudoers.d/stack [root@director ~]# chmod 0440 /etc/sudoers.d/stack
新規作成した stack
ユーザーに切り替えます。
[root@director ~]# su - stack [stack@director ~]$
stack
ユーザーで director のインストールを続行します。
4.2. テンプレートとイメージ用のディレクトリーの作成
director はシステムのイメージと Heat テンプレートを使用して、オーバークラウド環境を構築します。これらのファイルを整理するには、イメージとテンプレート用にディレクトリーを作成するように推奨します。
[stack@director ~]$ mkdir ~/images [stack@director ~]$ mkdir ~/templates
本書の他の項では、2 つのディレクトリーを使用して特定のファイルを保存します。
4.3. システムのホスト名設定
director では、インストールと設定プロセスにおいて完全修飾ドメイン名が必要です。つまり、director のホストのホスト名を設定する必要がある場合があります。以下のコマンドで、ホストのホスト名をチェックします。
[stack@director ~]$ hostname # Checks the base hostname [stack@director ~]$ hostname -f # Checks the long hostname (FQDN)
いずれのコマンドでも正しいホスト名が返されない場合やエラーが報告される場合には、hostnamectl
でホスト名を設定します。
[stack@director ~]$ sudo hostnamectl set-hostname manager.example.com [stack@director ~]$ sudo hostnamectl set-hostname --transient manager.example.com
director では、/etc/hosts
にシステムのホスト名とベース名も入力する必要があります。たとえば、システムの名前が manager.example.com
の場合には、/etc/hosts
に以下のように入力する必要があります。
127.0.0.1 manager.example.com manager localhost localhost.localdomain localhost4 localhost4.localdomain4
4.4. システムの登録
Red Hat OpenStack Platform director をインストールするには、まず Red Hat サブスクリプションマネージャーを使用してホストシステムを登録し、必要なチャンネルをサブスクライブします。
コンテンツ配信ネットワークにシステムを登録します。プロンプトが表示されたら、カスタマーポータルのユーザー名とパスワードを入力します。
[stack@director ~]$ sudo subscription-manager register
Red Hat OpenStack Platform director のエンタイトルメントプール ID を検索します。以下に例を示します。
[stack@director ~]$ sudo subscription-manager list --available --all --matches="Red Hat OpenStack" Subscription Name: Name of SKU Provides: Red Hat Single Sign-On Red Hat Enterprise Linux Workstation Red Hat CloudForms Red Hat OpenStack Red Hat Software Collections (for RHEL Workstation) Red Hat Virtualization SKU: SKU-Number Contract: Contract-Number Pool ID: Valid-Pool-Number-123456 Provides Management: Yes Available: 1 Suggested: 1 Service Level: Support-level Service Type: Service-Type Subscription Type: Sub-type Ends: End-date System Type: Physical
Pool ID
の値を特定して、Red Hat OpenStack Platform 12 のエンタイトルメントをアタッチします。[stack@director ~]$ sudo subscription-manager attach --pool=Valid-Pool-Number-123456
デフォルトのリポジトリーをすべて無効にしてから、必要な Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。
[stack@director ~]$ sudo subscription-manager repos --disable=* [stack@director ~]$ sudo subscription-manager repos --enable=rhel-7-server-rpms --enable=rhel-7-server-extras-rpms --enable=rhel-7-server-rh-common-rpms --enable=rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms --enable=rhel-7-server-openstack-12-rpms
これらのリポジトリーには、director のインストールに必要なパッケージが含まれます。
「リポジトリーの要件」でリストしたリポジトリーのみを有効にします。追加のリポジトリーを使用すると、パッケージとソフトウェアの競合が発生する場合があります。他のリポジトリーは有効にしないでください。
システムで更新を実行して、ベースシステムパッケージを最新の状態にします。
[stack@director ~]$ sudo yum update -y [stack@director ~]$ sudo reboot
システムは、director をインストールできる状態になりました。
4.5. director パッケージのインストール
以下のコマンドを使用して、director のインストールおよび設定に必要なコマンドラインツールをインストールします。
[stack@director ~]$ sudo yum install -y python-tripleoclient
これにより、director のインストールに必要なパッケージがすべてインストールされます。
Ceph Storage ノードを使ってオーバークラウドを作成する場合は、さらに ceph-ansible
パッケージをインストールします。
[stack@director ~]$ sudo yum install -y ceph-ansible
4.6. director の設定
director のインストールプロセスには、ネットワーク設定を判断する特定の設定が必要です。この設定は、stack
ユーザーのホームディレクトリーに undercloud.conf
として配置されているテンプレートに保存されています。
Red Hat は、インストールに必要な設定を判断しやすいように、基本テンプレートを提供しています。このテンプレートは、stack
ユーザーのホームディレクトリーにコピーします。
[stack@director ~]$ cp /usr/share/instack-undercloud/undercloud.conf.sample ~/undercloud.conf
undercloud.conf
ファイルにはアンダークラウドを構成するための設定が含まれています。パラメーターを省略したり、コメントアウトした場合には、アンダークラウドのインストールでデフォルト値が使用されます。
テンプレートには、[DEFAULT]
と [auth]
の 2 つのセクションがあります。[DEFAULT]
セクションには、以下のパラメーターが含まれます。
- undercloud_hostname
- アンダークラウドの完全修飾ホスト名を定義します。設定されている場合には、アンダークラウドのインストールで全システムのホスト名が設定されます。設定されていない場合には、アンダークラウドは現在のホスト名を使用しますが、ユーザーは適切に全システムのホスト名の設定を行う必要があります。
- local_ip
-
director のプロビジョニング NIC 用に定義する IP アドレス。これは、director が DHCP および PXE ブートサービスに使用する IP アドレスでもあります。環境内の既存の IP アドレスまたはサブネットと競合するなど、プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用する場合以外は、この値はデフォルトの
192.168.24.1/24
のままにします。 - network_gateway
オーバークラウドインスタンスのゲートウェイ。外部ネットワークにトラフィックを転送するアンダークラウドのホストです。director に別の IP アドレスを使用する場合または外部ゲートウェイを直接使用する場合以外は、この値はデフォルト (
192.168.24.1
) のままにします。注記director の設定スクリプトは、適切な
sysctl
カーネルパラメーターを使用して IP フォワーディングを自動的に有効にする操作も行います。- undercloud_public_host
-
SSL/TLS を使用する際に、director のパブリック API 用に定義する IP アドレス。これは、SSL/TLS で外部の director エンドポイントにアクセスするための IP アドレスです。director の設定により、この IP アドレスは
/32
ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとしてソフトウェアブリッジに接続されます。 - undercloud_admin_host
-
SSL/TLS を使用する際に、director の管理 API 用に定義する IP アドレス。これは、SSL/TLS で管理エンドポイントにアクセスするための IP アドレスです。director の設定により、この IP アドレスは
/32
ネットマスクを使用するルーティングされた IP アドレスとしてソフトウェアブリッジに接続されます。 - undercloud_nameservers
- アンダークラウドのホスト名解決に使用する DNS ネームサーバーの一覧
- undercloud_ntp_servers
- アンダークラウドの日付と時間を同期できるようにする Network Time Protocol サーバーの一覧
- undercloud_service_certificate
- OpenStack SSL/TLS 通信の証明書の場所とファイル名。理想的には、信頼できる認証局から、この証明書を取得します。それ以外の場合は、「付録A SSL/TLS 証明書の設定」のガイドラインを使用して独自の自己署名の証明書を作成します。これらのガイドラインには、自己署名の証明書か認証局からの証明書に拘らず、証明書の SELinux コンテキストを設定する方法が含まれています。
- generate_service_certificate
-
アンダークラウドのインストール時に SSL/TLS 証明書を生成するかを定義します。これは
undercloud_service_certificate
パラメーターに使用します。アンダークラウドのインストールで、作成された証明書/etc/pki/tls/certs/undercloud-[undercloud_public_vip].pem
を保存します。certificate_generation_ca
パラメーターで定義される CA はこの証明書を署名します。 - certificate_generation_ca
-
要求した証明書を署名する CA の
certmonger
のニックネーム。generate_service_certificate
パラメーターを設定した場合のみこのオプションを使用します。local
CA を選択する場合は、certmonger はローカルの CA 証明書を/etc/pki/ca-trust/source/anchors/cm-local-ca.pem
に抽出して、トラストチェーンに追加します。 - service_principal
- この証明書を使用するサービスの Kerberos プリンシパル。CA で FreeIPA などの Kerberos プリンシパルが必要な場合にのみ使用します。
- local_interface
director のプロビジョニング NIC 用に選択するインターフェース。これは、director が DHCP および PXE ブートサービスに使用するデバイスでもあります。どのデバイスが接続されているかを確認するには、
ip addr
コマンドを使用します。以下にip addr
コマンドの出力結果の例を示します。2: eth0: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc pfifo_fast state UP qlen 1000 link/ether 52:54:00:75:24:09 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff inet 192.168.122.178/24 brd 192.168.122.255 scope global dynamic eth0 valid_lft 3462sec preferred_lft 3462sec inet6 fe80::5054:ff:fe75:2409/64 scope link valid_lft forever preferred_lft forever 3: eth1: <BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 1500 qdisc noop state DOWN link/ether 42:0b:c2:a5:c1:26 brd ff:ff:ff:ff:ff:ff
この例では、外部 NIC は
eth0
を、プロビジョニング NIC は未設定のeth1
を使用します。今回は、local_interface
をeth1
に設定します。この設定スクリプトにより、このインターフェースがinspection_interface
パラメーターで定義したカスタムのブリッジにアタッチされます。- local_mtu
-
local_interface
に使用する MTU - network_cidr
-
オーバークラウドインスタンスの管理に director が使用するネットワーク。これは、アンダークラウドの
neutron
が管理するプロビジョニングネットワークです。プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用しない限り、この値はデフォルト (192.168.24.0/24
) のままにします。 - masquerade_network
-
外部アクセス向けにマスカレードするネットワークを定義します。これにより、プロビジョニングネットワークにネットワークアドレス変換 (NAT) の範囲が提供され、director 経由で外部アクセスが可能になります。プロビジョニングネットワークに別のサブネットを使用しない限り、この値はデフォルト (
192.168.24.0/24
) のままにします。 - dhcp_start; dhcp_end
- オーバークラウドノードの DHCP 割り当て範囲 (開始アドレスと終了アドレス)。ノードを割り当てるのに十分な IP アドレスがこの範囲に含まれるようにします。
- hieradata_override
-
hieradata
オーバーライドファイルへのパス。設定されている場合は、アンダークラウドのインストールでこのファイルが/etc/puppet/hieradata
にコピーされ、この階層の最初のファイルとして設定されます。サービスに対して、undercloud.conf
パラメーター以外に、サービスに対するカスタム設定を行うには、これを使用します。 - net_config_override
-
ネットワーク設定のオーバーライドテンプレートへのパス。これが設定されている場合にはアンダークラウドは JSON 形式のテンプレートを使用して
os-net-config
でネットワークを設定します。これは、undercloud.conf
に設定されているネットワークパラメーターを無視します。/usr/share/instack-undercloud/templates/net-config.json.template
の例を参照してください。 - inspection_interface
-
ノードのイントロスペクションに director が使用するブリッジ。これは、director の設定により作成されるカスタムのブリッジです。
LOCAL_INTERFACE
でこのブリッジをアタッチします。これは、デフォルトのbr-ctlplane
のままにします。 - inspection_iprange
-
director のイントロスペクションサービスが PXE ブートとプロビジョニングプロセスの際に使用する IP アドレス範囲。開始アドレスと終了アドレスの定義には、
192.168.24.100,192.168.24.120
などのように、コンマ区切りの値を使用します。この範囲には、使用するノードに十分な数の IP アドレスが含まれるようにし、dhcp_start
とdhcp_end
の範囲とは競合しないように設定してください。 - inspection_extras
-
イントロスペクション時に追加のハードウェアコレクションを有効化するかどうかを定義します。イントロスペクションイメージでは
python-hardware
またはpython-hardware-detect
パッケージが必要です。 - inspection_runbench
-
ノードイントロスペクション時に一連のベンチマークを実行します。有効にするには、
true
に設定します。このオプションは、登録ノードのハードウェアを検査する際にベンチマーク分析を実行する場合に必要です。詳細は、「ノードのハードウェアの検査」を参照してください。 - inspection_enable_uefi
- UEFI のみのファームウェアを使用するノードのイントロスペクションをサポートするかどうかを定義します。詳しくは、「付録D 代替ブートモード」を参照してください。
- enable_node_discovery
-
イントロスペクションの ramdisk を PXE ブートする不明なノードを自動的に登録します。新規ノードは、
fake_pxe
ドライバーをデフォルトとして使用しますが、discovery_default_driver
を設定して上書きすることもできます。また、イントロスペクションルールを使用して、新しく登録したノードにドライバーの情報を指定することもできます。 - discovery_default_driver
-
自動的に登録されるノード用のデフォルトドライバーを設定します。
enable_node_discovery
を有効化して、enabled_drivers
一覧にそのドライバーを追加する必要があります。サポート対象のドライバー一覧は、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。 - undercloud_debug
-
アンダークラウドサービスのログレベルを
DEBUG
に設定します。この値はtrue
に設定して有効化します。 - undercloud_update_packages
- アンダークラウドのインストール時にパッケージを更新するかどうかを定義します。
- enable_tempest
-
検証ツールをインストールするかどうかを定義します。デフォルトは、
false
に設定されていますが、true
で有効化することができます。 - enable_telemetry
-
アンダークラウドに OpenStack Telemetry サービス (ceilometer、aodh、panko、gnocchi) をインストールするかどうかを定義します。Red Hat OpenStack Platform 12 では、Telemetry のメトリックバックエンドは gnocchi によって提供されます。
enable_telemetry
パラメーターをtrue
に設定すると、Telemetry サービスが自動的にインストール/設定されます。このノードで Telemetry サービスを使用しない場合には、この値はfalse
に指定してください。 - enable_ui
-
director の Web UI をインストールするかどうかを定義します。これにより、グラフィカル Web インターフェースを使用して、オーバークラウドのプランニングやデプロイメントが可能になります。詳しい情報は「7章WEB UI を使用した基本的なオーバークラウドの設定」を参照してください。UI は、
undercloud_service_certificate
またはgenerate_service_certificate
のいずれかを使用して SSL/TLS を有効化している場合にのみ使用できる点にご注意ください。 - enable_validations
- 検証の実行に必要なアイテムをインストールするかどうかを定義します。
- enable_legacy_ceilometer_api
-
アンダークラウドでレガシーの OpenStack Telemetry サービス (Ceilometer) API を有効化するかどうかを定義します。レガシーの API は非推奨で、今後のリリースで削除される点に注意してください。
enable_telemetry
でインストールされる新しいコンポーネントを使用してください。 - enable_novajoin
-
アンダークラウドの
novajoin
メタデータサービスをインストールするかどうかを定義します。 - ipa_otp
-
IPA サーバーにアンダークラウドノードを登録するためのワンタイムパスワードを定義します。これは、
enable_novajoin
が有効な場合に必要です。 - ipxe_enabled
-
iPXE か標準の PXE のいずれを使用するか定義します。デフォルトは
true
で iPXE を有効化します。false
に指定すると、標準の PXE に設定されます。詳しい情報は、「付録D 代替ブートモード」を参照してください。 - scheduler_max_attempts
- スケジューラーがインスタンスのデプロイを試行する最大回数。これは、スケジューリング時に競合状態にならないように、1 度にデプロイする予定のベアメタルノードの数以上に指定するようにしてください。
- clean_nodes
- デプロイメントを再実行する前とイントロスペクションの後にハードドライブを消去するかどうかを定義します。
- enabled_drivers
- アンダークラウド用に有効化するベアメタルのドライバー一覧。サポートされるドライバー一覧については、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。
[auth]
セクションには、以下のパラメーターが含まれます。
- undercloud_db_password、undercloud_admin_token、undercloud_admin_password、undercloud_glance_passwm など
残りのパラメーターは、全 director サービスのアクセス詳細を指定します。値を変更する必要はありません。
undercloud.conf
で空欄になっている場合には、これらの値は director の設定スクリプトによって自動的に生成されます。設定スクリプトの完了後には、すべての値を取得することができます。重要これらのパラメーターの設定ファイルの例では、プレースホルダーの値に
<None>
を使用しています。これらの値を<None>
に設定すると、デプロイメントでエラーが発生します。
これらのパラメーターの値は、お使いのネットワークに応じて変更してください。完了したら、ファイルを保存して以下のコマンドを実行します。
[stack@director ~]$ openstack undercloud install
このコマンドで、director の設定スクリプトを起動します。director により、追加のパッケージがインストールされ、undercloud.conf
の設定に合わせてサービスを設定します。このスクリプトは、完了までに数分かかります。
設定スクリプトにより、完了時には 2 つのファイルが生成されます。
-
undercloud-passwords.conf
: director サービスの全パスワード一覧 -
stackrc
: director のコマンドラインツールへアクセスできるようにする初期化変数セット
この設定は、全 OpenStack Platform のサービスを自動的に起動します。以下のコマンドを使用して、有効化されたサービスを確認してください。
[stack@director ~]$ sudo systemctl list-units openstack-*
インストールにより、docker
グループに stack
ユーザーも追加され、その stack
ユーザーはコンテナー管理コマンドにアクセスできるようになります。stack
ユーザーのパーミッションを最新の状態に更新するには、以下のコマンドを実行します。
[stack@director ~]$ exec su -l stack
このコマンドでは再度ログインを要求されます。stack ユーザーのパスワードを入力します。
stack
ユーザーを初期化してコマンドラインツールを使用するには、以下のコマンドを実行します。
[stack@director ~]$ source ~/stackrc
プロンプトには、OpenStack コマンドがアンダークラウドに対して認証および実行されることが表示されるようになります。
(undercloud) [stack@director ~]$
director のコマンドラインツールが使用できるようになりました。
4.7. オーバークラウドノードのイメージの取得
director では、オーバークラウドのノードをプロビジョニングする際に、複数のディスクが必要です。必要なディスクは以下のとおりです。
- イントロスペクションのカーネルおよび ramdisk: PXE ブートでベアメタルシステムのイントロスペクションに使用
- デプロイメントカーネルおよび ramdisk: システムのプロビジョニングおよびデプロイメントに使用
- オーバークラウドカーネル、ramdisk、完全なイメージ: ノードのハードディスクに書き込まれるベースのオーバークラウドシステム
rhosp-director-images
および rhosp-director-images-ipa
パッケージからこれらのイメージを取得します。
(undercloud) [stack@director ~]$ sudo yum install rhosp-director-images rhosp-director-images-ipa
stack
ユーザーのホームの images
ディレクトリー (/home/stack/images
) にアーカイブを展開します。
(undercloud) [stack@director ~]$ cd ~/images (undercloud) [stack@director images]$ for i in /usr/share/rhosp-director-images/overcloud-full-latest-12.0.tar /usr/share/rhosp-director-images/ironic-python-agent-latest-12.0.tar; do tar -xvf $i; done
これらのイメージを director にインポートします。
(undercloud) [stack@director images]$ openstack overcloud image upload --image-path /home/stack/images/
このコマンドにより、bm-deploy-kernel
、bm-deploy-ramdisk
、overcloud-full
、overcloud-full-initrd
、overcloud-full-vmlinuz
のイメージが director にアップロードされます。これらは、デプロイメントおよびオーバークラウド用のイメージです。スクリプトにより、director の PXE サーバーにイントロスペクションイメージもインストールされます。
CLI でイメージの一覧を表示します。
(undercloud) [stack@director images]$ openstack image list +--------------------------------------+------------------------+ | ID | Name | +--------------------------------------+------------------------+ | 765a46af-4417-4592-91e5-a300ead3faf6 | bm-deploy-ramdisk | | 09b40e3d-0382-4925-a356-3a4b4f36b514 | bm-deploy-kernel | | ef793cd0-e65c-456a-a675-63cd57610bd5 | overcloud-full | | 9a51a6cb-4670-40de-b64b-b70f4dd44152 | overcloud-full-initrd | | 4f7e33f4-d617-47c1-b36f-cbe90f132e5d | overcloud-full-vmlinuz | +--------------------------------------+------------------------+
この一覧には、イントロスペクションの PXE イメージは表示されません。director は、これらのファイルを /httpboot
にコピーします。
(undercloud) [stack@director images]$ ls -l /httpboot total 341460 -rwxr-xr-x. 1 root root 5153184 Mar 31 06:58 agent.kernel -rw-r--r--. 1 root root 344491465 Mar 31 06:59 agent.ramdisk -rw-r--r--. 1 ironic-inspector ironic-inspector 337 Mar 31 06:23 inspector.ipxe
デフォルトの overcloud-full.qcow2
イメージは、フラットなパーティションイメージですが、ディスクイメージ全体をインポート、使用することも可能です。詳しい情報は、「付録C 完全なディスクイメージ」を参照してください。
4.8. アンダークラウドの Neutron サブネットでのネームサーバーの設定
オーバークラウドで cdn.redhat.com
などの外部のホスト名を解決する予定の場合は、オーバークラウドノード上にネームサーバーを設定することを推奨します。ネットワークを分離していない標準のオーバークラウドの場合には、ネームサーバーはアンダークラウドの neutron
のサブネットを使用して定義されます。環境でネームサーバーを定義するには、以下のコマンドを使用してください。
(undercloud) [stack@director images]$ openstack subnet list (undercloud) [stack@director images]$ openstack subnet set --dns-nameserver [nameserver1-ip] --dns-nameserver [nameserver2-ip] [subnet-uuid]
サブネットを表示してネームサーバーを確認します。
(undercloud) [stack@director images]$ openstack subnet show [subnet-uuid] +-------------------+-----------------------------------------------+ | Field | Value | +-------------------+-----------------------------------------------+ | ... | | | dns_nameservers | 8.8.8.8 | | ... | | +-------------------+-----------------------------------------------+
サービストラフィックを別のネットワークに分離する場合は、オーバークラウドのノードはネットワーク環境ファイルの DnsServer
パラメーターを使用します。
4.9. アンダークラウドのバックアップ
Red Hat では、アンダークラウドホストと Red Hat OpenStack Platform director から重要なデータをバックアップする手順を記載したガイドを提供しています。『director のアンダークラウドのバックアップと復元』ガイドを参照してください。
4.10. アンダークラウドの設定完了
これでアンダークラウドの設定が完了しました。次の章では、ノードの登録、検査、さまざまなノードロールのタグ付けなど、オーバークラウドの基本的な設定について説明します。
第5章 コンテナーレジストリー情報の設定
コンテナー化されたオーバークラウドには、必要なコンテナーイメージを含むレジストリーへのアクセスが必要です。本章では、Red Hat OpenStack Platform 向けのコンテナーイメージを使用するためのレジストリーおよびオーバークラウドの設定の準備方法について説明します。
本ガイドでは、レジストリーを使用するためのユースケースをいくつか記載しています。これらのユースケースの 1 つを試す前には、イメージを準備するコマンドの使用方法をよく理解しておくことを推奨します。詳しくは、「container image prepare コマンドの使用方法」を参照してください。
レジストリーの方法の選択
Red Hat OpenStack Platform は以下のレジストリータイプをサポートしています。
- リモートレジストリー
-
オーバークラウドは、
registry.access.redhat.com
から直接コンテナーイメージをプルします。これは、初期設定を生成するための最も簡単な方法ですが、それぞれのオーバークラウドノードが Red Hat Container Catalog から各イメージを直接プルするので、ネットワークの輻輳が生じてデプロイメントが遅くなる可能性があります。また、Red Hat Container Catalog にアクセスするためのインターネットアクセスが 全オーバークラウドノードに必要です。 - ローカルレジストリー
-
アンダークラウドにローカルレジストリーを作成し、
registry.access.redhat.com
からプルしたイメージを同期します。オーバークラウドは、アンダークラウドからコンテナーイメージをプルします。この方法では、内部にレジストリーを保管することが可能なので、デプロイメントを迅速化してネットワークの輻輳を軽減することができます。ただし、アンダークラウドは基本的なレジストリーとしてのみ機能し、コンテナーイメージのライフサイクル管理は限定されます。 - Satellite サーバー
- Red Hat Satellite 6 サーバーを介して、コンテナーイメージの全アプリケーションライフサイクルを管理し、イメージを公開します。オーバークラウドは、Satellite サーバーからイメージをプルします。この方法は、Red Hat OpenStack Platform コンテナーを保管、管理、デプロイするためのエンタープライズ級のソリューションを提供します。
上記のリストから方法を選択し、レジストリー情報の設定を続けます。
5.1. container image prepare コマンドの使用方法
本項では、openstack overcloud container image prepare
コマンドの使用方法について説明します。これには、このコマンドのさまざまなオプションについての概念的な情報も含まれます。このコマンドを使用する適切なユースケースとエンドツーエンドの手順は、レジストリーの方法の選択に記載しています。
オーバークラウド用のコンテナーイメージ環境ファイルの生成
openstack overcloud container image prepare
コマンドの主要な用途の 1 つに、オーバークラウドが使用するイメージの一覧が記載されたファイルの作成があります。このファイルは、 openstack overcloud deploy
などのオーバークラウドのデプロイのコマンドで追加します。openstack overcloud container image prepare
コマンドは、この機能に以下のオプションを使用します。
--output-env-file
- 作成される環境ファイルの名前を定義します。
以下のスニペットは、このファイルの内容の例を示しています。
parameter_defaults: DockerAodhApiImage: registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-aodh-api:latest DockerAodhConfigImage: registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-aodh-api:latest ...
インポート方法に対応したコンテナーイメージ一覧の生成
OpenStack Platform コンテナーイメージを異なるレジストリーソースにインポートする必要がある場合には、イメージの一覧を生成することができます。この一覧の構文は主に、アンダークラウド上のコンテナーレジストリーにコンテナーをインポートするのに使用されますが、Red Hat Satellite 6 などの別の方法に適した形式の一覧に変更することができます。
openstack overcloud container image prepare
コマンドでは、この機能に以下のオプションを使用します。
--output-images-file
- 作成されるインポート一覧のファイル名を定義します。
このファイルの内容の例を以下に示します。
container_images: - imagename: registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-aodh-api:latest - imagename: registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-aodh-evaluator:latest ...
コンテナーイメージの名前空間の設定
--output-env-file
と --output-images-file
のオプションには、作成されるイメージの場所を生成するための名前空間が必要です。openstack overcloud container image prepare
コマンドでは、以下のオプションを使用して、プルするコンテナーイメージの場所を設定します。
--namespace
- コンテナーイメージ用の名前空間を定義します。これには通常、ホスト名または IP アドレスにディレクトリーを付けて指定します。
--prefix
- イメージ名の前に追加するプレフィックスを定義します。
その結果、director は以下のような形式のイメージ名を生成します。
-
[NAMESPACE]/[PREFIX][IMAGE NAME]
コンテナーイメージタグの設定
openstack overcloud container image prepare
コマンドは、デフォルトでは各コンテナーイメージに latest
タグを使用しますが、以下のオプションを使用して、イメージのバージョンに特定のタグを選択することが可能です。
--tag
- 全イメージ用のタグを設定します。すべての OpenStack Platform コンテナーイメージで、同じタグを使用してバージョンの同期性を提供します。
openstack overcloud container image tag discover
コマンドを使用して、イメージ用の最新バージョンタグを確認することもできます。以下に例を示します。
$ sudo openstack overcloud container image tag discover \ --image registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-base:latest \ --tag-from-label version-release
このコマンドは、openstack-base
イメージの version-release
ラベルをベースにして、そのイメージに利用可能なタグをチェックし、最新バージョンのタグを出力します。
タグ検出のコマンドは sudo
アクセスで実行する必要があります。このコマンドは、sudo
権限を必要とする docker
をサブプロセスとして使用します。
5.2. その他のサービス用のコンテナーイメージの追加
director はコアの OpenStack Platform サービス [1]一部の追加の機能は、追加のコンテナーイメージが必要なサービスを使用します。これらのサービスは、環境ファイルで有効化します。openstack overcloud container image prepare
コマンドは、以下のオプションを使用して環境ファイルとそれらの対応するコンテナーイメージを追加します。
-e
- 追加のコンテナーイメージを有効化するための環境ファイルを指定します。
デプロイメントに環境ファイルを追加する方法については、「オーバークラウド作成時の環境ファイルの追加」を参照してください。
以下の表は、コンテナーイメージを使用する追加のサービスのサンプル一覧とそれらの対応する環境ファイルがある /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates
ディレクトリー内の場所をまとめています。
サービス | 環境ファイル |
---|---|
Ceph Storage |
|
Collectd |
|
Congress |
|
Fluentd |
|
OpenStack Bare Metal (ironic) |
|
OpenStack Data Processing (sahara) |
|
OpenStack EC2-API |
|
Sensu |
|
以下の項には、追加するサービスの例を記載します。
Ceph Storage
Red Hat Ceph Storage クラスターをオーバークラウドでデプロイする場合には、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/ceph-ansible/ceph-ansible.yaml
環境ファイルを追加する必要があります。このファイルは、オーバークラウドで、コンテナー化されたコンポーザブルサービスを有効化します。director は、これらのサービスが有効化されていることを確認した上で、それらのイメージを準備する必要があります。
この環境ファイルに加えて、Ceph Storage コンテナーの場所を定義する必要があります。これは、OpenStack Platform サービスの場所とは異なります。--set
オプションを使用して以下のパラメーターを Ceph Storage 固有に設定してください。
--set ceph_namespace
-
Ceph Storage コンテナーイメージ用の名前空間を定義します。これは、
--namespace
オプションと同様に機能します。 --set ceph_image
-
Ceph Storage コンテナーイメージの名前を定義します。通常これは、
rhceph-2-rhel7
です。 --set ceph_tag
-
Ceph Storage コンテナーイメージに使用するタグを定義します。これは、
--tag
オプションと同じように機能します。
以下のスニペットは、コンテナーイメージファイル内に Ceph Storage が含まれている例です。
$ openstack overcloud container image prepare \ ... -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/ceph-ansible/ceph-ansible.yaml \ --set ceph_namespace=registry.access.redhat.com/rhceph \ --set ceph_image=rhceph-2-rhel7 \ --set ceph_tag=<CEPH_TAG> ...
OpenStack Bare Metal (ironic)
オーバークラウドで OpenStack Bare Metal (ironic) をデプロイする場合には、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services-docker/ironic.yaml
環境ファイルを追加して、director がイメージを準備できるようにする必要があります。以下のスニペットは、この環境ファイルの追加方法の例を示しています。
$ openstack overcloud container image prepare \ ... -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services-docker/ironic.yaml \ ...
OpenStack Data Processing (sahara)
オーバークラウドで OpenStack Data Processing (sahara) をデプロイする場合には、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services-docker/sahara.yaml
環境ファイルを追加して、director がイメージを準備できるようにする必要があります。以下のスニペットは、この環境ファイルの追加方法の例を示しています。
$ openstack overcloud container image prepare \ ... -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/services-docker/sahara.yaml \ ...
5.3. リモートレジストリーを使用するためのオーバークラウド設定
Red Hat では、オーバークラウドのコンテナーイメージを registry.access.redhat.com
でホストしています。リモートレジストリーからイメージをプルする方法では、レジストリーはすでに設定済みで、必要なのはプルするイメージの URL と名前空間だけなので、最も簡単です。ただし、オーバークラウドの作成中には、オーバークラウドノードがリモートリポジトリーからすべてのイメージをプルするので、外部接続で輻輳が生じる場合があります。これが問題となる場合には、以下のいずれかの手段を取ることができます。
- ローカルレジストリーを設定する: 「ローカルレジストリーとしてアンダークラウドを使用するためのオーバークラウドの設定」
- Red Hat Satellite 6 でイメージをホストする: 「Satellite サーバーをイメージレジストリーとする設定」
イメージを直接 registry.access.redhat.com
からオーバークラウドデプロイメントにプルするには、イメージパラメーターを指定するための環境ファイルが必要となります。以下のコマンドにより、この環境ファイルが自動的に作成されます。
最新のイメージのタグを確認します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ sudo openstack overcloud container image tag discover \ --image registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-base:latest \ --tag-from-label version-release
このコマンドの出力を、以下の
<TAG>
の値に使います。環境ファイルを作成します。
(undercloud) $ openstack overcloud container image prepare \ --namespace=registry.access.redhat.com/rhosp12 \ --prefix=openstack- \ --tag=<TAG> \ --output-env-file=/home/stack/templates/overcloud_images.yaml
任意のサービス用の環境ファイルを指定するには、
-e
オプションを使用します。「container image prepare コマンドの使用方法」の「その他のサービス用のコンテナーイメージの追加」を参照してください。Ceph Storage を使用する場合には、「container image prepare コマンドの使用方法」の「Ceph Storage」に記載した追加のパラメーターを含めてください。
-
これで、イメージの場所が記載された
overcloud_images.yaml
環境ファイルがアンダークラウド上に作成されます。このファイルをデプロイメントで指定します。
レジストリーの設定を使用する準備が整いました。「6章CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定」に記載の手順に進んでください。
5.4. ローカルレジストリーとしてアンダークラウドを使用するためのオーバークラウドの設定
アンダークラウド上でローカルレジストリーを設定して、オーバークラウドのコンテナーイメージを保管することができます。この方法は、以下の操作を伴います。
-
director が、
registry.access.redhat.com
から各イメージをプルします。 - director がオーバークラウドを作成します。
- オーバークラウドの作成中に、ノードが適切なイメージをアンダークラウドからプルします。
これにより、コンテナーイメージのネットワークトラフィックは、 内部ネットワーク内に留まるので、外部ネットワークとの接続で輻輳が発生せず、デプロイメントプロセスを迅速化することができます。
イメージを registry.access.redhat.com
からローカルレジストリーにプルするには、以下の手順を実行します。
最新のイメージのタグを確認します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ sudo openstack overcloud container image tag discover \ --image registry.access.redhat.com/rhosp12/openstack-base:latest \ --tag-from-label version-release
このコマンドの出力を、以下の
<TAG>
の値に使います。ローカルレジストリーにイメージをプルするためのテンプレートを作成します。
(undercloud) $ openstack overcloud container image prepare \ --namespace=registry.access.redhat.com/rhosp12 \ --prefix=openstack- \ --tag=<TAG> \ --output-images-file /home/stack/local_registry_images.yaml
任意のサービス用の環境ファイルを指定するには、
-e
オプションを使用します。「container image prepare コマンドの使用方法」の「その他のサービス用のコンテナーイメージの追加」を参照してください。Ceph Storage を使用する場合には、「container image prepare コマンドの使用方法」の「Ceph Storage」に記載した追加のパラメーターを含めてください。
注記このステップの
openstack overcloud container image prepare
コマンドは、registry.access.redhat.com
上のレジストリーをターゲットにして、アンダークラウドにインポートするイメージのリストを生成します。ここでは、後半のステップで使用するopenstack overcloud container image prepare
コマンドとは異なる値を指定します。これで、コンテナーイメージの情報が含まれた
local_registry_images.yaml
という名前のファイルが作成されます。local_registry_images.yaml
ファイルを使ってイメージをプルします。(undercloud) $ sudo openstack overcloud container image upload \ --config-file /home/stack/local_registry_images.yaml \ --verbose
ネットワークおよびアンダークラウドディスクの速度によっては、必要なイメージをプルするのに時間がかかる場合があります。
注記コンテナーイメージは、およそ 10 GB のディスク領域を使用します。
ローカルイメージの名前空間を特定します。名前空間は、以下のパターンを使用します。
<REGISTRY IP ADDRESS>:8787/rhosp12
undercloud.conf
ファイルのlocal_ip
パラメーターであらかじめ設定した、アンダークラウドの IP アドレスを使用します。または、以下のコマンドを使用して完全な名前空間を取得します。(undercloud) $ docker images | grep -v redhat.com | grep -o '^.*rhosp12' | sort -u
アンダークラウド上のローカルレジストリーで使用するためのテンプレートを作成します。以下に例を示します。
(undercloud) $ openstack overcloud container image prepare \ --namespace=192.168.24.1:8787/rhosp12 \ --prefix=openstack- \ --tag=<TAG> \ --output-env-file=/home/stack/templates/overcloud_images.yaml
任意のサービス用の環境ファイルを指定するには、
-e
オプションを使用します。「container image prepare コマンドの使用方法」の「その他のサービス用のコンテナーイメージの追加」を参照してください。Ceph Storage を使用する場合には、「container image prepare コマンドの使用方法」の「Ceph Storage」に記載した追加のパラメーターを含めてください。
注記このステップの
openstack overcloud container image prepare
コマンドは、アンダークラウド上のレジストリーをターゲットにして、オーバークラウドで使用するイメージのリストを生成します。ここでは、前のステップで使用したopenstack overcloud container image prepare
コマンドとは異なる値を指定します。-
これで、アンダークラウド上のイメージの場所が記載された
overcloud_images.yaml
環境ファイルが作成されます。このファイルをデプロイメントで指定します。
レジストリーの設定を使用する準備が整いました。「6章CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定」に記載の手順に進んでください。
5.5. Satellite サーバーをイメージレジストリーとする設定
Red Hat Satellite 6 では、名前が 30 文字を超えるコンテナーイメージは同期されないという既知の問題があります。この問題は、Satellite 6.2 の次のマイナーリリースで修正される予定です。この問題のホットフィックスは、現在提供されています (詳しくは、BZ#1424689 を参照してください)。
Red Hat Satellite 6 には、レジストリーの同期機能が備わっています。これにより、複数のイメージを Satellite サーバーにプルし、アプリケーションライフサイクルの一環として管理することができます。また、他のコンテナー対応システムも Satellite をレジストリーとして使うことができます。コンテナーイメージ管理の詳細は、『Red Hat Satellite 6 コンテンツ管理ガイド』の「コンテナーイメージの管理」を参照してください。
以下の手順は、Red Hat Satellite 6 の hammer
コマンドラインツールを使用した例を示しています。組織には、例として ACME
という名称を使用しています。この組織は、実際に使用する Satellite 6 の組織に置き換えてください。
イメージを registry.access.redhat.com
からローカルレジストリーにプルするには、以下の手順を実行します。
イメージをローカルレジストリーにプルするためのテンプレートを作成します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud container image prepare \ --namespace=rhosp12 \ --prefix=openstack- \ --output-images-file /home/stack/satellite_images \
任意のサービス用の環境ファイルを指定するには、
-e
オプションを使用します。「container image prepare コマンドの使用方法」の「その他のサービス用のコンテナーイメージの追加」を参照してください。Ceph Storage を使用する場合には、「container image prepare コマンドの使用方法」の「Ceph Storage」に記載した追加のパラメーターを含めてください。
注記このステップの
openstack overcloud container image prepare
コマンドは、registry.access.redhat.com
上のレジストリーをターゲットにして、イメージのリストを生成します。ここでは、後半のステップで使用するopenstack overcloud container image prepare
コマンドとは異なる値を指定します。-
これで、コンテナーイメージの情報が含まれた
satellite_images
という名前のファイルが作成されます。このファイルを使用して、コンテナーイメージを Satellite 6 サーバーに同期します。 satellite_images
ファイルから YAML 固有の情報を削除して、イメージ一覧のみが記載されたフラットファイルに変換します。この操作は、以下のsed
コマンドで実行します。(undercloud) $ sed -i "s/- imagename: //g" ~/satellite_images (undercloud) $ sed -i "s/:.*//g" ~/satellite_images (undercloud) $ sed -i "1d" ~/satellite_images
これにより、Satellite サーバーにプルするイメージのリストが提供されます。
-
satellite_images
ファイルを、Satellite 6 のhammer
ツールが含まれるシステムにコピーします。あるいは、『Hammer CLI ガイド』に記載の手順に従って、hammer
ツールをアンダークラウドにインストールします。 以下の
hammer
コマンドを実行して、実際の Satellite 組織に新規製品 (OSP12 Containers
) を作成します。$ hammer product create \ --organization "ACME" \ --name "OSP12 Containers"
このカスタム製品に、イメージを保管します。
製品にベースコンテナーイメージを追加します。
$ hammer repository create \ --organization "ACME" \ --product "OSP12 Containers" \ --content-type docker \ --url https://registry.access.redhat.com \ --docker-upstream-name rhosp12/openstack-base \ --name base
satellite_images
ファイルからオーバークラウドのコンテナーイメージを追加します。$ while read IMAGE; do \ IMAGENAME=$(echo $IMAGE | cut -d"/" -f2 | sed "s/openstack-//g" | sed "s/:.*//g") ; \ hammer repository create \ --organization "ACME" \ --product "OSP12 Containers" \ --content-type docker \ --url https://registry.access.redhat.com \ --docker-upstream-name $IMAGE \ --name $IMAGENAME ; done < satellite_images
コンテナーイメージを同期します。
$ hammer product synchronize \ --organization "ACME" \ --name "OSP12 Containers"
Satellite サーバーが同期を完了するまで待ちます。
注記設定によっては、
hammer
から Satellite サーバーのユーザー名およびパスワードが要求される場合があります。設定ファイルを使って自動的にログインするようにhammer
を設定することができます。詳細は、『Hammer CLI ガイド』の「認証」セクションを参照してください。base
イメージに利用可能なタグを確認します。$ hammer docker tag list --repository "base" \ --organization "ACME" \ --product "OSP12 Containers"
これにより、OpenStack Platform コンテナーイメージのタグが表示されます。タグを選択し、この後のステップで使用するために書き留めておきます。
アンダークラウドに戻り、Satellite サーバー上のイメージ用に環境ファイルを生成します。これには、以下のデータが使われます。
-
--namespace
: Satellite サーバー上のレジストリーの URL およびポート。Red Hat Satellite のデフォルトのレジストリーポートは 5000 です。例:--namespace=satellite6.example.com:5000
-
--prefix=
: プレフィックスは、Satellite 6 組織およびコンテナーを保管する製品名に基づきます。たとえば、組織名がACME
の場合、プレフィックスはacme-osp12_containers-
となります。 -
--tag=<TAG>
: 前のステップで記録した OpenStack Platform コンテナーイメージのタグ -e
: このオプションを使用して、オーバークラウド用に追加のサービスの各環境ファイルを指定します。 詳しい情報は、「container image prepare コマンドの使用方法」の「その他のサービス用のコンテナーイメージの追加」を参照してください。環境ファイルを生成するコマンドの例を以下に示します。
(undercloud) $ openstack overcloud container image prepare \ --namespace=satellite6.example.com:5000 \ --prefix=acme-osp12_containers- \ --tag=<TAG> \ --output-env-file=/home/stack/templates/overcloud_images.yaml
Ceph Storage を使用する場合は、以下の追加パラメーターを使います。
-
--set ceph_namespace
: Ceph Storage イメージ用に設定する Satellite サーバー上のレジストリーの URL およびポート。これは、--namespace
と同じ値にする必要があります。 -
--set ceph_image
: Satellite サーバー上の Ceph Storage イメージの名前。これは、OpenStack Platform のイメージと同じ命名規則に従います。例:acme-osp12_containers-rhceph-2-rhel7
--set ceph_tag
: Ceph Storage コンテナーイメージのタグ。latest
に設定します。詳しい説明は 「container image prepare コマンドの使用方法」の「Ceph Storage」を参照してください。
注記このステップの
openstack overcloud container image prepare
コマンドは、Satellite サーバーをターゲットにします。ここでは、前のステップで使用したopenstack overcloud container image prepare
コマンドとは異なる値を指定します。
-
-
これで、Satellite サーバー上のイメージの場所が記載された
overcloud_images.yaml
環境ファイルが作成されます。このファイルをデプロイメントで指定します。
レジストリーの設定を使用する準備が整いました。「6章CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定」に記載の手順に進んでください。
第6章 CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定
本章では、CLI ツールを使用した OpenStack Platform 環境の基本的な設定手順を説明します。基本設定のオーバークラウドには、カスタムの機能は含まれていませんが、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドに記載の手順に従って、この基本的なオーバークラウドに高度な設定オプションを追加して、仕様に合わせてカスタマイズすることができます。
本章の例では、すべてのノードが電源管理に IPMI を使用したベアメタルシステムとなっています。電源管理の種別およびそのオプションに関する詳細は、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。
ワークフロー
- ノード定義のテンプレートを作成して director で空のノードを登録します。
- 全ノードのハードウェアを検査します。
- ロールにノードをタグ付けします。
- 追加のノードプロパティーを定義します。
要件
- 「4章アンダークラウドのインストール」で作成した director ノード
- ノードに使用するベアメタルマシンのセット。必要なノード数は、作成予定のオーバークラウドのタイプにより異なります (オーバークラウドロールに関する情報は「ノードのデプロイメントロールのプランニング」を参照してください)。これらのマシンは、各ノード種別の要件セットに従う必要があります。これらの要件については、「オーバークラウドの要件」を参照してください。これらのノードにはオペレーティングシステムは必要ありません。director が Red Hat Enterprise Linux 7 のイメージを各ノードにコピーします。
ネイティブ VLAN として設定したプロビジョニングネットワーク用のネットワーク接続 1 つ。全ノードは、このネイティブに接続して、「ネットワーク要件」で設定した要件に準拠する必要があります。この章の例では、以下の IP アドレスの割り当てで、プロビジョニングサブネットとして 192.168.24.0/24 を使用します。
表6.1 プロビジョニングネットワークの IP 割り当て
ノード名
IP アドレス
MAC アドレス
IPMI IP アドレス
director
192.168.24.1
aa:aa:aa:aa:aa:aa
不要
コントローラー
定義済みの DHCP
bb:bb:bb:bb:bb:bb
192.168.24.205
Compute
定義済みの DHCP
cc:cc:cc:cc:cc:cc
192.168.24.206
- その他のネットワーク種別はすべて、OpenStack サービスにプロビジョニングネットワークを使用しますが、ネットワークトラフィックの他のタイプに追加でネットワークを作成することができます。
- コンテナーイメージのソース。コンテナーイメージのソースを含む環境ファイルの生成方法については、「5章コンテナーレジストリー情報の設定」を参照してください。
6.1. オーバークラウドへのノードの登録
director では、手動で作成したノード定義のテンプレートが必要です。このファイル (instackenv.json
) は、JSON 形式のファイルを使用して、ノードのハードウェアおよび電源管理の情報が含まれます。たとえば、2 つのノードを登録するテンプレートは、以下のようになります。
{ "nodes":[ { "mac":[ "bb:bb:bb:bb:bb:bb" ], "name":"node01", "cpu":"4", "memory":"6144", "disk":"40", "arch":"x86_64", "pm_type":"pxe_ipmitool", "pm_user":"admin", "pm_password":"p@55w0rd!", "pm_addr":"192.168.24.205" }, { "mac":[ "cc:cc:cc:cc:cc:cc" ], "name":"node02", "cpu":"4", "memory":"6144", "disk":"40", "arch":"x86_64", "pm_type":"pxe_ipmitool", "pm_user":"admin", "pm_password":"p@55w0rd!", "pm_addr":"192.168.24.206" } ] }
このテンプレートでは、以下の属性を使用します。
- name
- ノードの論理名
- pm_type
-
使用する電源管理ドライバー。この例では IPMI ドライバーを使用します (
pxe_ipmitool
)。 - pm_user; pm_password
- IPMI のユーザー名およびパスワード
- pm_addr
- IPMI デバイスの IP アドレス
- mac
- (オプション) ノード上のネットワークインターフェースの MAC アドレス一覧。各システムのプロビジョニング NIC の MAC アドレスのみを使用します。
- cpu
- (オプション) ノード上の CPU 数
- memory
- (オプション) メモリーサイズ (MB)
- disk
- (オプション) ハードディスクのサイズ (GB)
- arch
- (オプション) システムアーキテクチャー
電源管理の種別およびそのオプションに関する詳細は、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。
テンプレートの作成後に、stack
ユーザーのホームディレクトリー (/home/stack/instackenv.json
) にファイルを保存して、以下のコマンドを使用して director にインポートします。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud node import ~/instackenv.json
このコマンドでテンプレートをインポートして、テンプレートから director に各ノードを登録します。
ノードを登録して設定が完了した後に、CLI でこれらのノードの一覧を表示します。
(undercloud) $ openstack baremetal node list
6.2. ノードのハードウェアの検査
director は各ノードでイントロスペクションプロセスを実行することができます。このプロセスを実行すると、各ノードが PXE を介してイントロスペクションエージェントを起動します。このエージェントは、ノードからハードウェアのデータを収集して、director に送り返します。次に director は、director 上で実行中の OpenStack Object Storage (swift) サービスにこのイントロスペクションデータを保管します。director は、プロファイルのタグ付け、ベンチマーキング、ルートディスクの手動割り当てなど、さまざまな目的でハードウェア情報を使用します。
ポリシーファイルを作成して、イントロスペクションの直後にノードをプロファイルに自動でタグ付けすることも可能です。ポリシーファイルを作成してイントロスペクションプロセスに組み入れる方法に関する詳しい情報は、「付録E プロファイルの自動タグ付け」を参照してください。または、「プロファイルへのノードのタグ付け」に記載の手順に従って、ノードをプロファイルに手動でタグ付けすることもできます。
以下のコマンドを実行して、各ノードのハードウェア属性を検証します。
(undercloud) $ openstack overcloud node introspect --all-manageable --provide
-
--all-manageable
オプションは、管理状態のノードのみをイントロスペクションします。上記の例では、すべてのノードが対象です。 -
--provide
オプションは、イントロスペクション後に全ノードをavailable
の状態にします。
別のターミナルウィンドウで以下のコマンドを使用してイントロスペクションの進捗状況をモニタリングします。
(undercloud) $ sudo journalctl -l -u openstack-ironic-inspector -u openstack-ironic-inspector-dnsmasq -u openstack-ironic-conductor -f
このプロセスが最後まで実行されて正常に終了したことを確認してください。ベアメタルの場合には、通常 15 分ほどかかります。
イントロスペクション完了後には、すべてのノードが available
の状態に変わります。
ノードイントロスペクションの個別実行
available
の状態のノードで個別にイントロスペクションを実行するには、ノードを管理モードに設定して、イントロスペクションを実行します。
(undercloud) $ openstack baremetal node manage [NODE UUID] (undercloud) $ openstack overcloud node introspect [NODE UUID] --provide
イントロスペクションが完了すると、ノードは available
の状態に変わります。
初回のイントロスペクション後のノードイントロスペクションの実行
--provide
オプションを指定したので、初回のイントロスペクションの後には、全ノードが available
の状態に入るはずです。初回のイントロスペクション後に全ノードにイントロスペクションを実行するには、すべてのノードを manageable
の状態にして、一括のイントロスペクションコマンドを実行します。
(undercloud) $ for node in $(openstack baremetal node list --fields uuid -f value) ; do openstack baremetal node manage $node ; done (undercloud) $ openstack overcloud node introspect --all-manageable --provide
イントロスペクション完了後には、すべてのノードが available
の状態に変わります。
ネットワークイントロスペクションの実行によるインターフェース情報の取得
ネットワークイントロスペクションにより、Link Layer Discovery Protocol (LLDP) データがネットワークスイッチから取得されます。以下のコマンドにより、ノード上の全インターフェースに関する LLDP 情報のサブセット、または特定のノードおよびインターフェースに関するすべての情報が表示されます。この情報は、トラブルシューティングに役立ちます。director では、デフォルトで LLDP データ収集が有効になっています。
ノード上のインターフェースのリストを取得するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface list [NODE UUID]
例:
(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface list c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9 +-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+ | Interface | MAC Address | Switch Port VLAN IDs | Switch Chassis ID | Switch Port ID | +-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+ | p2p2 | 00:0a:f7:79:93:19 | [103, 102, 18, 20, 42] | 64:64:9b:31:12:00 | 510 | | p2p1 | 00:0a:f7:79:93:18 | [101] | 64:64:9b:31:12:00 | 507 | | em1 | c8:1f:66:c7:e8:2f | [162] | 08:81:f4:a6:b3:80 | 515 | | em2 | c8:1f:66:c7:e8:30 | [182, 183] | 08:81:f4:a6:b3:80 | 559 | +-----------+-------------------+------------------------+-------------------+----------------+
インターフェースのデータおよびスイッチポートの情報を表示するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface show [NODE UUID] [INTERFACE]
例:
(undercloud) $ openstack baremetal introspection interface show c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9 p2p1 +--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+ | Field | Value | +--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+ | interface | p2p1 | | mac | 00:0a:f7:79:93:18 | | node_ident | c89397b7-a326-41a0-907d-79f8b86c7cd9 | | switch_capabilities_enabled | [u'Bridge', u'Router'] | | switch_capabilities_support | [u'Bridge', u'Router'] | | switch_chassis_id | 64:64:9b:31:12:00 | | switch_port_autonegotiation_enabled | True | | switch_port_autonegotiation_support | True | | switch_port_description | ge-0/0/2.0 | | switch_port_id | 507 | | switch_port_link_aggregation_enabled | False | | switch_port_link_aggregation_id | 0 | | switch_port_link_aggregation_support | True | | switch_port_management_vlan_id | None | | switch_port_mau_type | Unknown | | switch_port_mtu | 1514 | | switch_port_physical_capabilities | [u'1000BASE-T fdx', u'100BASE-TX fdx', u'100BASE-TX hdx', u'10BASE-T fdx', u'10BASE-T hdx', u'Asym and Sym PAUSE fdx'] | | switch_port_protocol_vlan_enabled | None | | switch_port_protocol_vlan_ids | None | | switch_port_protocol_vlan_support | None | | switch_port_untagged_vlan_id | 101 | | switch_port_vlan_ids | [101] | | switch_port_vlans | [{u'name': u'RHOS13-PXE', u'id': 101}] | | switch_protocol_identities | None | | switch_system_name | rhos-compute-node-sw1 | +--------------------------------------+------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------+
ハードウェアイントロスペクション情報の取得
Bare Metal サービスでは、ハードウェア検査時に追加のハードウェア情報を取得するためのパラメーター (inspection_extras) がデフォルトで有効になっています。これらのハードウェア情報を使って、オーバークラウドを設定することができます。undercloud.conf
ファイルの inspection_extras パラメーターに関する詳細は、「director の設定」を参照してください。
たとえば、numa_topology コレクターは、このハードウェア inspection_extras の一部で、各 NUMA ノードに関する以下の情報が含まれます。
- RAM (キロバイト単位)
- 物理 CPU コアおよびそのシブリングスレッド
- NUMA ノードに関連付けられた NIC
この情報を取得するには、ベアメタルノードの UUID を指定して、openstack baremetal introspection data save _UUID_ | jq .numa_topology
コマンドを実行します。
取得されるベアメタルノードの NUMA 情報の例を、以下に示します。
{ "cpus": [ { "cpu": 1, "thread_siblings": [ 1, 17 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 2, "thread_siblings": [ 10, 26 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 0, "thread_siblings": [ 0, 16 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 5, "thread_siblings": [ 13, 29 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 7, "thread_siblings": [ 15, 31 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 7, "thread_siblings": [ 7, 23 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 1, "thread_siblings": [ 9, 25 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 6, "thread_siblings": [ 6, 22 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 3, "thread_siblings": [ 11, 27 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 5, "thread_siblings": [ 5, 21 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 4, "thread_siblings": [ 12, 28 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 4, "thread_siblings": [ 4, 20 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 0, "thread_siblings": [ 8, 24 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 6, "thread_siblings": [ 14, 30 ], "numa_node": 1 }, { "cpu": 3, "thread_siblings": [ 3, 19 ], "numa_node": 0 }, { "cpu": 2, "thread_siblings": [ 2, 18 ], "numa_node": 0 } ], "ram": [ { "size_kb": 66980172, "numa_node": 0 }, { "size_kb": 67108864, "numa_node": 1 } ], "nics": [ { "name": "ens3f1", "numa_node": 1 }, { "name": "ens3f0", "numa_node": 1 }, { "name": "ens2f0", "numa_node": 0 }, { "name": "ens2f1", "numa_node": 0 }, { "name": "ens1f1", "numa_node": 0 }, { "name": "ens1f0", "numa_node": 0 }, { "name": "eno4", "numa_node": 0 }, { "name": "eno1", "numa_node": 0 }, { "name": "eno3", "numa_node": 0 }, { "name": "eno2", "numa_node": 0 } ] }
6.3. ベアメタルノードの自動検出
auto-discovery を使用すると、最初に instackenv.json
ファイルを作成せずに、アンダークラウドノードを登録してそのメタデータを生成することができます。この改善により、最初のノード情報取得に費す時間を短縮できます。たとえば、IPMI IP アドレスを照合し、その後に instackenv.json
ファイルを作成する必要がなくなります。
要件
- すべてのオーバークラウドノードの BMC が、IPMI を通じて director にアクセスできるように設定されていること
- すべてのオーバークラウドノードが、アンダークラウドのコントロールプレーンネットワークに接続された NIC から PXE ブートするように設定されていること
自動検出の有効化
undercloud.conf
でベアメタルの自動検出を有効にします。enable_node_discovery = True discovery_default_driver = pxe_ipmitool
-
enable_node_discovery
: 有効にすると、PXE を使ってイントロスペクション ramdisk をブートするすべてのノードが Ironic に登録されます。 -
discovery_default_driver
: 検出されたノードに使用するドライバーを設定します。例:pxe_ipmitool
-
IPMI の認証情報を Ironic に追加します。
IPMI の認証情報を
ipmi-credentials.json
という名前のファイルに追加します。以下の例で使用しているユーザー名とパスワードの値は、お使いの環境に応じて置き換える必要があります。[ { "description": "Set default IPMI credentials", "conditions": [ {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true} ], "actions": [ {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_username", "value": "SampleUsername"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_password", "value": "RedactedSecurePassword"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_address", "value": "{data[inventory][bmc_address]}"} ] } ]
IPMI の認証情報ファイルを Ironic にインポートします。
$ openstack baremetal introspection rule import ipmi-credentials.json
自動検出のテスト
- 必要なノードの電源をオンにします。
openstack baremetal node list
を実行します。新しいノードがenroll
の状態でリストに表示されるはずです。$ openstack baremetal node list +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+ | UUID | Name | Instance UUID | Power State | Provisioning State | Maintenance | +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+ | c6e63aec-e5ba-4d63-8d37-bd57628258e8 | None | None | power off | enroll | False | | 0362b7b2-5b9c-4113-92e1-0b34a2535d9b | None | None | power off | enroll | False | +--------------------------------------+------+---------------+-------------+--------------------+-------------+
各ノードにリソースクラスを設定します。
$ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node set $NODE --resource-class baremetal ; done
各ノードにカーネルと ramdisk を設定します。
$ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node manage $NODE ; done $ openstack overcloud node configure --all-manageable
全ノードを利用可能な状態に設定します。
$ for NODE in `openstack baremetal node list -c UUID -f value` ; do openstack baremetal node provide $NODE ; done
ルールを使用して異なるベンダーのハードウェアを検出する方法
異種のハードウェアが混在する環境では、イントロスペクションルールを使って、認証情報の割り当てやリモート管理を行うことができます。たとえば、DRAC を使用する Dell ノードを処理するには、別の検出ルールが必要になる場合があります。
以下の内容で、
dell-drac-rules.json
という名前のファイルを作成します。この例で使用しているユーザー名およびパスワードの値は、お使いの環境に応じて置き換える必要があります。[ { "description": "Set default IPMI credentials", "conditions": [ {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true}, {"op": "ne", "field": "data://inventory.system_vendor.manufacturer", "value": "Dell Inc."} ], "actions": [ {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_username", "value": "SampleUsername"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_password", "value": "RedactedSecurePassword"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/ipmi_address", "value": "{data[inventory][bmc_address]}"} ] }, { "description": "Set the vendor driver for Dell hardware", "conditions": [ {"op": "eq", "field": "data://auto_discovered", "value": true}, {"op": "eq", "field": "data://inventory.system_vendor.manufacturer", "value": "Dell Inc."} ], "actions": [ {"action": "set-attribute", "path": "driver", "value": "idrac"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_username", "value": "SampleUsername"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_password", "value": "RedactedSecurePassword"}, {"action": "set-attribute", "path": "driver_info/drac_address", "value": "{data[inventory][bmc_address]}"} ] } ]
ルールを Ironic にインポートします。
$ openstack baremetal introspection rule import dell-drac-rules.json
6.4. プロファイルへのノードのタグ付け
各ノードのハードウェアを登録、検査した後には、特定のプロファイルにノードをタグ付けします。このプロファイルタグにより、ノードがフレーバーに照合され、次にそのフレーバーがデプロイメントロールに割り当てられます。以下の例では、コントローラーノードのロール、フレーバー、プロファイル、ノード間の関係を示しています。
タイプ | 説明 |
---|---|
ロール |
|
フレーバー |
|
プロファイル |
|
ノード |
また、各ノードに |
アンダークラウドのインストール時に、デフォルトプロファイルのフレーバー compute
、control
、swift-storage
、ceph-storage
、block-storage
が作成され、大半の環境で変更なしに使用することができます。
多くのノードでは、プロファイルの自動タグ付けを使用します。詳しい情報は、「付録E プロファイルの自動タグ付け」を参照してください。
特定のプロファイルにノードをタグ付けする場合には、各ノードの properties/capabilities
パラメーターに profile
オプションを追加します。たとえば、2 つのノードをタグ付けしてコントローラープロファイルとコンピュートプロファイルをそれぞれ使用するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:compute,boot_option:local' 58c3d07e-24f2-48a7-bbb6-6843f0e8ee13 (undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:control,boot_option:local' 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0
profile:compute
と profile:control
オプションを追加することで、この 2 つのノードがそれぞれのプロファイルにタグ付けされます。
これらのコマンドは、各ノードのブート方法を定義する boot_option:local
パラメーターも設定します。お使いのハードウェアによっては、boot_mode
パラメーターを uefi
に追加して、ノードが BIOS モードの代わりに UEFI を使用してブートするようにする必要がある場合もあります。詳しい情報は、「UEFI ブートモード」を参照してください。
ノードのタグ付けが完了した後には、割り当てたプロファイルまたはプロファイルの候補を確認します。
(undercloud) $ openstack overcloud profiles list
カスタムロールのプロファイル
カスタムロールを使用する場合には、これらの新規ロールに対応するために追加のフレーバーやプロファイルを作成する必要があるかもしれません。たとえば、Networker ロールの新規フレーバーを作成するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack flavor create --id auto --ram 4096 --disk 40 --vcpus 1 networker (undercloud) $ openstack flavor set --property "cpu_arch"="x86_64" --property "capabilities:boot_option"="local" --property "capabilities:profile"="networker" networker
この新規プロファイルにノードを割り当てます。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:networker,boot_option:local' dad05b82-0c74-40bf-9d12-193184bfc72d
6.5. ノードのルートディスクの定義
一部のノードは、複数のディスクを使用する場合があります。このため、director はプロビジョニング中に、ルートディスクに使用するディスクを特定する必要があります。
director がルートディスクを容易に特定できるようにするには、以下のようなプロパティーを使用することができます。
-
model
(文字列): デバイスの ID -
vendor
(文字列): デバイスのベンダー -
serial
(文字列): ディスクのシリアル番号 -
hctl
(文字列): SCSI のホスト:チャネル:ターゲット:Lun -
size
(整数):デバイスのサイズ (GB) -
wwn
(文字列): ストレージの一意識別子 -
wwn_with_extension
(文字列): ベンダー拡張が末尾に付いたストレージの一意識別子 -
wwn_vendor_extension
(文字列): ベンダーのストレージの一意識別子 -
rotational
(ブール値): 回転式デバイス (HDD) には true、そうでない場合 (SSD) には false。 -
name
(文字列): デバイス名 (例: /dev/sdb1)
name
は、永続デバイス名が付いたデバイスのみに使用します。name
で他のデバイスのルートディスクを設定しないでください。この値は、ノードのブート時に変更される可能性があります。
以下の例では、root デバイスを特定するディスクのシリアル番号を使用して、オーバークラウドイメージをデプロイするドライブを指定します。
各ノードのハードウェアイントロスペクションからのディスク情報を確認します。以下のコマンドは、ノードからのディスク情報を表示します。
(undercloud) $ openstack baremetal introspection data save 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0 | jq ".inventory.disks"
たとえば、1 つのノードのデータで 3 つのディスクが表示される場合があります。
[ { "size": 299439751168, "rotational": true, "vendor": "DELL", "name": "/dev/sda", "wwn_vendor_extension": "0x1ea4dcc412a9632b", "wwn_with_extension": "0x61866da04f3807001ea4dcc412a9632b", "model": "PERC H330 Mini", "wwn": "0x61866da04f380700", "serial": "61866da04f3807001ea4dcc412a9632b" } { "size": 299439751168, "rotational": true, "vendor": "DELL", "name": "/dev/sdb", "wwn_vendor_extension": "0x1ea4e13c12e36ad6", "wwn_with_extension": "0x61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6", "model": "PERC H330 Mini", "wwn": "0x61866da04f380d00", "serial": "61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6" } { "size": 299439751168, "rotational": true, "vendor": "DELL", "name": "/dev/sdc", "wwn_vendor_extension": "0x1ea4e31e121cfb45", "wwn_with_extension": "0x61866da04f37fc001ea4e31e121cfb45", "model": "PERC H330 Mini", "wwn": "0x61866da04f37fc00", "serial": "61866da04f37fc001ea4e31e121cfb45" } ]
以下の例では、ルートデバイスを、シリアル番号 61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6
の disk 2 に設定します。そのためには、ノードの定義に root_device
パラメーターを追加する必要があります。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --property root_device='{"serial": "61866da04f380d001ea4e13c12e36ad6"}' 1a4e30da-b6dc-499d-ba87-0bd8a3819bc0
各ノードの BIOS を設定して、選択したルートディスクからの起動が含まれるようにします。推奨のブート順は最初がネットワークブートで、次にルートディスクブートです。
これにより、director がルートディスクとして使用する特定のディスクを識別しやすくなります。オーバークラウドの作成の開始時には、director はこのノードをプロビジョニングして、オーバークラウドのイメージをこのディスクに書き込みます。
6.6. 環境ファイルを使用したオーバークラウドのカスタマイズ
アンダークラウドには、オーバークラウドの作成プランとして機能するさまざまな Heat テンプレートが含まれます。YAML フォーマットの環境ファイルを使って、オーバークラウドの特性をカスタマイズすることができます。このファイルで、コア Heat テンプレートコレクションのパラメーターおよびリソースを上書きします。必要に応じていくつでも環境ファイルを追加することができますが、後で実行される環境ファイルで定義されているパラメーターとリソースが優先されることになるため、環境ファイルの順番は重要です。以下の一覧は、環境ファイルの順序の例です。
- 各ロールおよびそのフレーバーごとのノード数。オーバークラウドを作成するには、この情報の追加は不可欠です。
- コンテナー化された OpenStack サービスのコンテナーイメージの場所。このファイルは、「5章コンテナーレジストリー情報の設定」で説明したオプションのいずれかで作成されたものです。
-
任意のネットワーク分離ファイル。Heat テンプレートコレクションの初期化ファイル (
environments/network-isolation.yaml
) から開始して、次にカスタムの NIC 設定ファイル、最後に追加のネットワーク設定の順番です。 - 外部のロードバランシングの環境ファイル
- Ceph Storage、NFS、iSCSI などのストレージ環境ファイル
- Red Hat CDN または Satellite 登録用の環境ファイル
- その他のカスタム環境ファイル
カスタム環境ファイルは、別のディレクトリーで管理することを推奨します (たとえば、templates
ディレクトリー)。
『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドを使用して、オーバークラウドの詳細機能をカスタマイズできます。
基本的なオーバークラウドでは、ブロックストレージにローカルの LVM ストレージを使用しますが、この設定はサポートされません。ブロックストレージには、外部ストレージソリューション (Red Hat Ceph Storage 等) を使用することを推奨します。
6.7. CLI ツールを使用したオーバークラウドの作成
OpenStack 環境作成における最後の段階では、openstack overcloud deploy
コマンドを実行して OpenStack 環境を作成します。このコマンドを実行する前に、キーオプションやカスタムの環境ファイルの追加方法を十分に理解しておく必要があります。
バックグラウンドプロセスとして openstack overcloud deploy
を実行しないでください。バックグラウンドのプロセスとして開始された場合にはオーバークラウドの作成は途中で停止してしまう可能性があります。
オーバークラウドのパラメーター設定
以下の表では、openstack overcloud deploy
コマンドを使用する際の追加パラメーターを一覧表示します。
表6.2 デプロイメントパラメーター
パラメーター | 説明 |
---|---|
|
デプロイする Heat テンプレートが格納されているディレクトリー。空欄にした場合には、コマンドはデフォルトのテンプレートの場所である |
|
作成または更新するスタックの名前 |
|
デプロイメントのタイムアウト (分単位) |
|
ハイパーバイザーに使用する仮想化タイプ |
|
時刻の同期に使用する Network Time Protocol (NTP) サーバー。コンマ区切りリストで複数の NTP サーバーを指定することも可能です (例: |
|
環境変数 no_proxy のカスタム値を定義します。これにより、プロキシー通信から特定のホスト名は除外されます。 |
|
オーバークラウドノードにアクセスする SSH ユーザーを定義します。通常、SSH アクセスは |
|
オーバークラウドデプロイメントに渡す追加の環境ファイル。複数回指定することが可能です。 |
|
デプロイメントに追加する環境ファイルが格納されているディレクトリー。このコマンドは、これらの環境ファイルを最初に番号順、その後にアルファベット順で処理します。 |
|
オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかの致命的でないエラーが発生した場合に終了します。どのようなエラーが発生してもデプロイメントが失敗するので、このオプションを使用することを推奨します。 |
|
オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかのクリティカルではない警告が発生した場合に終了します。 |
|
オーバークラウドに対する検証チェックを実行しますが、オーバークラウドを実際には作成しません。 |
|
オーバークラウドのデプロイ後の設定を省略します。 |
|
オーバークラウドのデプロイ後の設定を強制的に行います。 |
|
|
|
引数とパラメーターが記載された YAML ファイルへのパス |
|
カスタマーポータルまたは Satellite 6 にオーバークラウドノードを登録します。 |
|
オーバークラウドノードに使用する登録方法。Red Hat Satellite 6 または Red Hat Satellite 5 は |
|
登録に使用する組織 |
|
すでに登録済みでもシステムを登録します。 |
|
オーバークラウドノードを登録する Satellite サーバーのベース URL。このパラメーターには、HTTPS URL ではなく、Satellite の HTTP URL を使用します。たとえば、https://satellite.example.com ではなく http://satellite.example.com を使用します。オーバークラウドの作成プロセスではこの URL を使用して、どのサーバーが Red Hat Satellite 5 または Red Hat Satellite 6 サーバーであるかを判断します。Red Hat Satellite 6 サーバーの場合は、オーバークラウドは |
|
登録に使用するアクティベーションキー |
環境ファイルの parameter_defaults
セクションに追加する Heat テンプレートのパラメーターの使用が優先されるため、一部のコマンドラインパラメーターは古いか非推奨となっています。以下の表では、非推奨となったパラメーターと、それに相当する Heat テンプレートのパラメーターを対照しています。
表6.3 非推奨の CLI パラメーターと Heat テンプレートのパラメーターの対照表
パラメーター | 説明 | Heat テンプレートのパラメーター |
---|---|---|
|
スケールアウトするコントローラーノード数 |
|
|
スケールアウトするコンピュートノード数 |
|
|
スケールアウトする Ceph Storage ノードの数 |
|
|
スケールアウトする Cinder ノード数 |
|
|
スケールアウトする Swift ノード数 |
|
|
コントローラーノードに使用するフレーバー |
|
|
コンピュートノードに使用するフレーバー |
|
|
Ceph Storage ノードに使用するフレーバー |
|
|
Cinder ノードに使用するフレーバー |
|
|
Swift Storage ノードに使用するフレーバー |
|
|
フラットなネットワークが neutron プラグインで設定されるように定義します。外部ネットワークを作成ができるようにデフォルトは「datacentre」に設定されています。 |
|
|
各ハイパーバイザーで作成する Open vSwitch ブリッジ。デフォルト値は「br-ex」で、通常この値は変更する必要はないはずです。 |
|
|
使用する論理ブリッジから物理ブリッジへのマッピング。ホスト (br-ex) の外部ブリッジを物理名 (datacentre) にマッピングするようにデフォルト設定されています。これは、デフォルトの Floating ネットワークに使用されます。 |
|
|
ネットワークノード向けにインターフェースを br-ex にブリッジするインターフェースを定義します。 |
|
|
Neutron のテナントネットワーク種別 |
|
|
neutron テナントネットワークのトンネリング種別。複数の値を指定するには、コンマ区切りの文字列を使用します。 |
|
|
テナントネットワークを割り当てに使用できる GRE トンネリングの ID 範囲 |
|
|
テナントネットワークを割り当てに使用できる VXLAN VNI の ID 範囲 |
|
|
サポートされる Neutron ML2 および Open vSwitch VLAN マッピングの範囲。デフォルトでは、物理ネットワーク「datacentre」上の VLAN を許可するように設定されています。 |
|
|
neutron テナントネットワークのメカニズムドライバー。デフォルトでは、「openvswitch」に設定されており、複数の値を指定するにはコンマ区切りの文字列を使用します。 |
|
|
VLAN で区切られたネットワークまたは neutron でのフラットネットワークを使用するためにトンネリングを無効化します。 |
パラメーターのマッピングなし |
|
オーバークラウドの作成プロセスでは、デプロイメントの前に一連のチェックが行われます。このオプションは、デプロイメント前のチェックで何らかの致命的なエラーが発生した場合に終了します。どのようなエラーが発生してもデプロイメントが失敗するので、このオプションを使用することを推奨します。 |
パラメーターのマッピングなし |
これらのパラメーターは、Red Hat OpenStack Platform の今後のリリースで削除される予定です。
オプションの完全一覧については、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack help overcloud deploy
6.8. オーバークラウド作成時の環境ファイルの追加
オーバークラウドをカスタマイズするには、-e
を指定して、環境ファイルを追加します。必要に応じていくつでも環境ファイルを追加することができますが、後で実行される環境ファイルで定義されているパラメーターとリソースが優先されることになるため、環境ファイルの順番は重要です。以下の一覧は、環境ファイルの順序の例です。
- 各ロールおよびそのフレーバーごとのノード数。オーバークラウドを作成するには、この情報の追加は不可欠です。
- コンテナー化された OpenStack サービスのコンテナーイメージの場所。このファイルは、「5章コンテナーレジストリー情報の設定」で説明したオプションのいずれかで作成されたものです。
-
任意のネットワーク分離ファイル。Heat テンプレートコレクションの初期化ファイル (
environments/network-isolation.yaml
) から開始して、次にカスタムの NIC 設定ファイル、最後に追加のネットワーク設定の順番です。 - 外部のロードバランシングの環境ファイル
- Ceph Storage、NFS、iSCSI などのストレージ環境ファイル
- Red Hat CDN または Satellite 登録用の環境ファイル
- その他のカスタム環境ファイル
-e
オプションを使用してオーバークラウドに追加した環境ファイルはいずれも、オーバークラウドのスタック定義の一部となります。以下のコマンドは、追加するカスタム環境ファイルを使用してオーバークラウドの作成を開始する方法の一例です。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \ -e /home/stack/templates/node-info.yaml\ -e /home/stack/templates/overcloud_images.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \ -e /home/stack/templates/network-environment.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/ceph-ansible/ceph-ansible.yaml \ -e /home/stack/templates/ceph-custom-config.yaml \ --ntp-server pool.ntp.org \
このコマンドでは、以下の追加オプションも使用できます。
- --templates
-
/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates
の Heat テンプレートコレクションをベースとして使用し、オーバークラウドを作成します。 - -e /home/stack/templates/node-info.yaml
各ロールに使用するノード数とフレーバーを定義する環境ファイルを追加します。以下に例を示します。
parameter_defaults: OvercloudControllerFlavor: control OvercloudComputeFlavor: compute OvercloudCephStorageFlavor: ceph-storage ControllerCount: 3 ComputeCount: 3 CephStorageCount: 3
- -e /home/stack/templates/overcloud_images.yaml
- コンテナーイメージのソースが含まれる環境ファイルを追加します。詳細は、「5章コンテナーレジストリー情報の設定」を参照してください。
- -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml
- オーバークラウドデプロイメントのネットワーク分離を初期化する環境ファイルを追加します。
- -e /home/stack/templates/network-environment.yaml
- ネットワーク分離をカスタマイズする環境ファイルを追加します。
- -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/ceph-ansible/ceph-ansible.yaml
- Ceph Storage サービスを有効化するための環境ファイルを追加します。
- -e /home/stack/templates/ceph-custom-config.yaml
- Ceph Storage の設定をカスタマイズするための環境ファイルを追加します。
- --ntp-server pool.ntp.org
- 時刻の同期に NTP サーバーを使用します。コントローラーノードクラスターの同期を保つには、このオプションが必要です。
director は、「9章オーバークラウド作成後のタスクの実行」に記載の再デプロイおよびデプロイ後の機能にこれらの環境ファイルを必要とします。これらのファイルが含まれていない場合には、オーバークラウドが破損する可能性があります。
オーバークラウド設定を後で変更する予定の場合には、以下の作業を行う必要があります。
- カスタムの環境ファイルおよび Heat テンプレートのパラメーターを変更します。
-
同じ環境ファイルを指定して
openstack overcloud deploy
コマンドを再度実行します。
オーバークラウドを手動で編集しても、director を使用してオーバークラウドスタックの更新を行う際に director の設定で上書きされてしまうので、設定は直接編集しないでください。
環境ファイルディレクトリーの追加
--environment-directory
オプションを使用して、環境ファイルを格納しているディレクトリー全体を追加することも可能です。デプロイメントコマンドにより、このディレクトリー内の環境ファイルは、最初に番号順、その後にアルファベット順で処理されます。この方法を使用する場合には、ファイル名に数字のプレフィックスを使用することを推奨します。以下に例を示します。
(undercloud) $ ls -1 ~/templates 00-node-info.yaml 10-network-isolation.yaml 20-network-environment.yaml 30-storage-environment.yaml 40-rhel-registration.yaml
以下のデプロイメントコマンドを実行してディレクトリーを追加します。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates --environment-directory ~/templates
回答ファイルの使用
回答ファイルは、テンプレートおよび環境ファイルの追加を簡素化する YAML ファイルです。回答ファイルでは、以下のパラメーターを使用します。
- テンプレート
-
使用するコア Heat テンプレートコレクション。これは、
--templates
のコマンドラインオプションの代わりとして機能します。 - 環境
-
追加する環境ファイルの一覧。これは、
--environment-file
(-e
) のコマンドラインオプションの代わりとして機能します。
たとえば、回答ファイルには以下の内容を含めることができます。
templates: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/ environments: - ~/templates/00-node-info.yaml - ~/templates/10-network-isolation.yaml - ~/templates/20-network-environment.yaml - ~/templates/30-storage-environment.yaml - ~/templates/40-rhel-registration.yaml
以下のデプロイメントコマンドを実行して回答ファイルを追加します。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --answers-file ~/answers.yaml
6.9. オーバークラウドプランの管理
openstack overcloud deploy
コマンドを使用する代わりに、director を使用してインポートしたプランを管理することもできます。
新規プランを作成するには、以下のコマンドを stack
ユーザーとして実行します。
(undercloud) $ openstack overcloud plan create --templates /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates my-overcloud
このコマンドは、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates
内のコア Heat テンプレートコレクションからプランを作成します。director は、入力内容に基づいてプランに名前を指定します。この例では、my-overcloud
という名前です。director は、この名前をオブジェクトストレージコンテナー、ワークフロー環境、オーバークラウドスタック名のラベルとして使用します。
以下のコマンドを使用して環境ファイルからパラメーターを追加します。
(undercloud) $ openstack overcloud parameters set my-overcloud ~/templates/my-environment.yaml
以下のコマンドを使用してプランをデプロイします。
(undercloud) $ openstack overcloud plan deploy my-overcloud
以下のコマンドを使用して既存のプランを削除します。
(undercloud) $ openstack overcloud plan delete my-overcloud
openstack overcloud deploy
コマンドは基本的に、これらのコマンドをすべて使用して既存のプランの削除、環境ファイルを使用した新規プランのアップロード、プランのデプロイを行います。
6.10. オーバークラウドのテンプレートおよびプランの検証
オーバークラウドの作成またはスタックの更新を実行する前に、Heat テンプレートと環境ファイルにエラーがないかどうかを検証します。
レンダリングされたテンプレートの作成
オーバークラウドのコア Heat テンプレートは、Jinja2 形式となっています。テンプレートを検証するには、以下のコマンドを使用して Jinja 2 のフォーマットなしでバージョンをレンダリングします。
(undercloud) $ openstack overcloud plan create --templates /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates overcloud-validation (undercloud) $ mkdir ~/overcloud-validation (undercloud) $ cd ~/overcloud-validation (undercloud) $ swift download overcloud-validation
その後の検証テストには ~/overcloud-validation
のレンダリング済みテンプレートを使用します。
テンプレート構文の検証
以下のコマンドを使用して、テンプレート構文を検証します。
(undercloud) $ openstack orchestration template validate --show-nested --template ~/overcloud-validation/overcloud.yaml -e ~/overcloud-validation/overcloud-resource-registry-puppet.yaml -e [ENVIRONMENT FILE] -e [ENVIRONMENT FILE]
検証には、overcloud-resource-registry-puppet.yaml
の環境ファイルにオーバークラウド固有のリソースを含める必要があります。環境ファイルをさらに追加するには、このコマンドに -e
オプションを使用してください。また、--show-nested
オプションを追加して、ネストされたテンプレートからパラメーターを解決します。
このコマンドは、テンプレート内の構文エラーを特定します。テンプレートの構文の検証が正常に行われた場合には、出力には、作成されるオーバークラウドのテンプレートのプレビューが表示されます。
6.11. オーバークラウド作成の監視
オーバークラウドの作成プロセスが開始され、director によりノードがプロビジョニングされます。このプロセスは完了するまで多少時間がかかります。オーバークラウドの作成のステータスを確認するには、stack
ユーザーとして別のターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack stack list --nested
openstack stack list --nested
コマンドは、オーバークラウド作成の現在の段階を表示します。
6.12. オーバークラウドへのアクセス
director は、director ホストからオーバークラウドに対話するための設定を行い、認証をサポートするスクリプトを作成して、stack
ユーザーのホームディレクトリーにこのファイル (overcloudrc
) を保存します。このファイルを使用するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ source ~/overcloudrc
これで、director のホストの CLI からオーバークラウドと対話するために必要な環境変数が読み込まれます。コマンドプロンプトが変わり、オーバークラウドと対話していることが示されます。
(overcloud) $
director のホストとの対話に戻るには、以下のコマンドを実行します。
(overcloud) $ source ~/stackrc (undercloud) $
オーバークラウドの各ノードには、heat-admin
と呼ばれるユーザーが含まれます。stack
ユーザーには、各ノードに存在するこのユーザーに SSH 経由でアクセスすることができます。SSH でノードにアクセスするには、希望のノードの IP アドレスを特定します。
(undercloud) $ openstack server list
次に、heat-admin
ユーザーとノードの IP アドレスを使用して、ノードに接続します。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.24.23
6.13. オーバークラウド作成の完了
これで、コマンドラインツールを使用したオーバークラウドの作成が完了しました。作成後の機能については、「9章オーバークラウド作成後のタスクの実行」を参照してください。
第7章 WEB UI を使用した基本的なオーバークラウドの設定
本章では、Web UI を使用した OpenStack Platform 環境の基本的な設定手順を説明します。基本設定のオーバークラウドには、カスタムの機能は含まれていませんが、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドに記載の手順に従って、この基本的なオーバークラウドに高度な設定オプションを追加して、仕様に合わせてカスタマイズすることができます。
本章の例では、すべてのノードが電源管理に IPMI を使用したベアメタルシステムとなっています。電源管理の種別およびそのオプションに関する詳細は、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。
ワークフロー
- ノードの定義テンプレートと手動の登録を使用して、空のノードを登録します。
- 全ノードのハードウェアを検査します。
- director にオーバークラウドプランをアップロードします。
- ノードをロールに割り当てます。
要件
- 「4章アンダークラウドのインストール」で作成した、UI が有効な director ノード
- ノードに使用するベアメタルマシンのセット。必要なノード数は、作成予定のオーバークラウドのタイプにより異なります (オーバークラウドロールに関する情報は「ノードのデプロイメントロールのプランニング」を参照してください)。これらのマシンは、各ノード種別の要件セットに従う必要があります。これらの要件については、「オーバークラウドの要件」を参照してください。これらのノードにはオペレーティングシステムは必要ありません。director が Red Hat Enterprise Linux 7 のイメージを各ノードにコピーします。
- ネイティブ VLAN として設定したプロビジョニングネットワーク用のネットワーク接続 1 つ。全ノードは、このネイティブに接続して、「ネットワーク要件」で設定した要件に準拠する必要があります。
- その他のネットワーク種別はすべて、OpenStack サービスにプロビジョニングネットワークを使用しますが、ネットワークトラフィックの他のタイプに追加でネットワークを作成することができます。
7.1. Web UI へのアクセス
director の Web UI には SSL 経由でアクセスします。たとえば、アンダークラウドの IP アドレスが 192.168.24.1 の場合には、UI にアクセスするためのアドレスは https://192.168.24.1
です。Web UI はまず、以下のフィールドが含まれるログイン画面を表示します。
-
Username: director の管理ユーザー。デフォルトは
admin
です。 -
Password: 管理ユーザーのパスワード。アンダークラウドホストのターミナルで
stack
ユーザーとしてsudo hiera admin_password
を実行してパスワードを確認してください。
UI へのログイン時に、UI は OpenStack Identity のパブリック API にアクセスして、他のパブリック API サービスのエンドポイントを取得します。これらのサービスには、以下が含まれます。
コンポーネント | UI の目的 |
---|---|
OpenStack Identity ( |
UI への認証と他のサービスのエンドポイント検出 |
OpenStack Orchestration ( |
デプロイメントのステータス |
OpenStack Bare Metal ( |
ノードの制御 |
OpenStack Object Storage ( |
Heat テンプレートコレクションまたはオーバークラウドの作成に使用したプランのストレージ |
OpenStack Workflow ( |
director タスクのアクセスおよび実行 |
OpenStack Messaging ( |
特定のタスクのステータスを検索する Websocket ベースのサービス |
UI は、これらのパブリック API と直接対話します。そのため、クライアントシステムにはそのエンドポイントへのアクセスが必要です。director は、パブリック仮想 IP (undercloud.conf
ファイルの undercloud_public_host
) 上の SSL/TLS で暗号化されたパスを介してこれらのエンドポイントを公開します。各パスは、サービスに対応します。たとえば、https://192.168.24.2:443/keystone
は OpenStack Identity パブリック API にマッピングします。
エンドポイントを変更したり、エンドポイントアクセスに別の IP を使用したりする予定の場合には、director UI は /var/www/openstack-tripleo-ui/dist/tripleo_ui_config.js
ファイルから設定を読み取ります。このファイルは以下のパラメーターを使用します。
パラメーター | 説明 |
---|---|
|
OpenStack Identity ( |
|
OpenStack Orchestration ( |
|
OpenStack Bare Metal ( |
|
OpenStack Object Storage ( |
|
OpenStack Workflow ( |
|
OpenStack Messaging ( |
|
OpenStack Messaging ( |
|
UI は複数の言語に翻訳されており、ログイン画面から、または UI 内で選択することができます。ITEF 言語コードを元に、特定の言語を除外することができます。次の言語コードを除外することができます: |
以下は tripleo_ui_config.js
ファイルのサンプルです。192.168.24.2
はアンダークラウドのパブリック仮想 IP です。
window.tripleOUiConfig = { 'keystone': 'https://192.168.24.2:443/keystone/v2.0', 'heat': 'https://192.168.24.2:443/heat/v1/%(tenant_id)s', 'ironic': 'https://192.168.24.2:443/ironic', 'mistral': 'https://192.168.24.2:443/mistral/v2', 'swift': 'https://192.168.24.2:443/swift/v1/AUTH_%(tenant_id)s', 'zaqar-websocket': 'wss://192.168.24.2:443/zaqar', "zaqar_default_queue": "tripleo", 'excludedLanguages': [], 'loggers': ["console","zaqar"] };
7.2. Web UI のナビゲーション
UI は主に 3 つのセクションで構成されています。
- プラン
UI 上部のメニューアイテム。このページは UI のメインセクションとして機能し、オーバークラウドの作成に使用するプラン、各ロールに割り当てるノード、現在のオーバークラウドのステータスを定義できます。このセクションでは、デプロイメントワークフローが提供され、デプロイメントのパラメーターの設定やロールへのノードの割り当てなどオーバークラウドの作成プロセスをステップごとにガイドします。
- ノード
UI 上部のメニューアイテム。このページはノードの設定セクションとして機能し、新規ノードの登録や登録したノードのイントロスペクションの手段を提供します。このセクションには、電源の状態、イントロスペクションのステータス、プロビジョニングの状態、およびハードウェア情報なども表示されます。
各ノードの右端にあるオーバーフローメニュー項目 (3 つの点) をクリックすると、選択したノードのディスク情報が表示されます。
- 検証
ページ右側のパネル。このセクションには、以下の時点で実施される、さまざまなシステムチェックが表示されます。
- デプロイメント前
- デプロイメント後
- イントロスペクション前
- アップグレード前
- アップグレード後
これらの検証タスクは、デプロイメントの特定の時点で自動的に実行されますが、手動で実行することもできます。実行する検証タスクの 再生 ボタンをクリックします。各検証タスクのタイトルをクリックして実行するか、検証タイトルをクリックして詳細情報を表示します。
7.3. WEB UI を使用したオーバークラウドプランのインポート
director UI には、オーバークラウドの設定の前にプランが必要です。このプランは通常、/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates
にあるアンダークラウド上のテンプレートなど、Heat テンプレートコレクションです。さらに、ハードウェアや環境の要件に合わせてプランをカスタマイズすることができます。オーバークラウドのカスタマイズに関する詳しい情報は『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドを参照してください。
プランには、オーバークラウドの設定に関する主要な手順が表示されます。
- ハードウェアの準備: ノードの登録およびイントロスペクション
- デプロイメントの設定の指定: オーバークラウドのパラメーターの設定と追加する環境ファイルの定義
- ロールの設定とノードの割り当て: ロールへのノード割り当てと、ロール固有のパラメーターの変更
- デプロイ: オーバークラウド作成の開始
アンダークラウドのインストールと設定を実行すると、プランが自動的にアップロードされます。Web UI に複数のプランをインポートすることも可能です。プラン 画面のパンくずリストで すべてのプラン をクリックすると、現在の プラン のリストが表示されます。プランを切り替えるには、カードをクリックします。
プランのインポート をクリックすると、以下の情報を尋ねるウィンドウが表示されます。
-
プラン名:
overcloud
など、プランのプレーンテキスト名 - アップロードの種別: Tar アーカイブ (tar.gz)、全 ローカルフォルダー (Google Chrome のみ) のいずれをアップロードするかを選択します。
- プランファイル: ブラウザーをクリックして、ローカルのファイルシステム上のプランを選択します。
director の Heat テンプレートコレクションをクライアントのマシンにコピーする必要がある場合には、ファイルをアーカイブしてコピーします。
$ cd /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/ $ tar -cf ~/overcloud.tar * $ scp ~/overcloud.tar user@10.0.0.55:~/.
director UI がプランをアップロードしたら、プランが プラン のリストに表示され、設定を行うことができます。選択するプランのカードをクリックします。
7.4. WEB UI を使用したノードの登録
オーバークラウド設定の最初の手順は、ノードの登録です。以下のいずれかで、ノードの登録プロセスを開始します。
- プラン 画面の 1 ハードウェアの準備 にある ノードの登録 をクリックします。
- ノード 画面の ノードの登録 をクリックします。
ノードの登録 ウィンドウが表示されます。
director には、登録するノードの一覧が必要です。以下のいずれかの方法でリストを取得できます。
- ノード定義テンプレートのアップロード: これには、ファイルからアップロード ボタンをクリックして、ファイルを選択してください。ノードの定義テンプレートの構文については、「オーバークラウドへのノードの登録」を参照してください。
- 各ノードの手動登録: これには、新規追加 をクリックして、ノードの詳細を提供します。
手動登録に必要な情報は以下のとおりです。
- 名前
- ノードのプレーンテキスト名。RFC3986 の非予約文字のみを使用するようにしてください。
- ドライバー
-
使用する電源管理ドライバー。この例では IPMI ドライバーを使用しますが (
pxe_ipmitool
)、他のドライバーも利用できます。利用可能なドライバーについては、「付録B 電源管理ドライバー」を参照してください。 - IPMI IP アドレス
- IPMI デバイスの IP アドレス
- IPMI ポート
- IPMI デバイスにアクセスするためのポート
- IPMI のユーザー名およびパスワード
- IPMI のユーザー名およびパスワード
- アーキテクチャー
- (オプション) システムアーキテクチャー
- CPU 数
- (オプション) ノード上の CPU 数
- メモリー (MB)
- (オプション) メモリーサイズ (MB)
- ディスク (GB)
- (オプション) ハードディスクのサイズ (GB)
- NIC の MAC アドレス
- ノード上のネットワークインターフェースの MAC アドレス一覧。各システムのプロビジョニング NIC の MAC アドレスのみを使用します。
UI では、Dell Remote Access Controller (DRAC) 電源管理を使用するノードの登録を行うこともできます。これらのノードでは、pxe_drac
ドライバーが使われます。詳細は、「Dell Remote Access Controller (DRAC)」を参照してください。
ノードの情報を入力した後に、ウィンドウの下の ノードの登録 をクリックします。
director によりノードが登録されます。登録が完了すると、UI を使用してノードのイントロスペクションを実行できるようになります。
7.5. Web UI を使用したノードのハードウェアのイントロスペクション
director UI は各ノードでイントロスペクションプロセスを実行することができます。このプロセスを実行すると、各ノードが PXE を介してイントロスペクションエージェントを起動します。このエージェントは、ノードからハードウェアのデータを収集して、director に送り返します。次に director は、director 上で実行中の OpenStack Object Storage (swift) サービスにこのイントロスペクションデータを保管します。director は、プロファイルのタグ付け、ベンチマーキング、ルートディスクの手動割り当てなど、さまざまな目的でハードウェア情報を使用します。
ポリシーファイルを作成して、イントロスペクションの直後にノードをプロファイルに自動でタグ付けすることも可能です。ポリシーファイルを作成してイントロスペクションプロセスに組み入れる方法に関する詳しい情報は、「付録E プロファイルの自動タグ付け」を参照してください。または、UI を使用してプロファイルにノードをタグ付けすることもできます。手動でのノードのタグ付けに関する情報は、「Web UI を使用したロールへのノードの割り当て」を参照してください。
イントロスペクションのプロセスを開始するには以下のステップを実行します。
- ノード 画面に移動します。
- イントロスペクションを行うノードをすべて選択します。
- イントロスペクション をクリックします。
このプロセスが最後まで実行されて正常に終了したことを確認してください。ベアメタルの場合には、通常 15 分ほどかかります。
イントロスペクションのプロセスを完了したら、プロビジョニングの状態 が manageable
に設定されているノードをすべて選択して、プロビジョン ボタンをクリックします。プロビジョニングの状態 が available
になるまで待ちます。
ノードのタグ付けおよびプロビジョニングの準備ができました。
7.6. Web UI を使用したプロファイルへのノードのタグ付け
各ノードにプロファイルのセットを割り当てることができます。それぞれのプロファイルが、個々のフレーバーおよびロールに対応します (詳細は、「プロファイルへのノードのタグ付け」を参照してください)。
ノード 画面には、さらにトグルメニューがあり、ノードのタグ付け などのその他のノード管理操作を選択することができます。
ノードのセットをタグ付けするには、以下の手順を実行します。
- タグ付けするノードをチェックボックスで選択します。
- メニュートグルをクリックします。
- ノードのタグ付け をクリックします。
既存のプロファイルを選択します。新規プロファイルを作成するには、カスタムプロファイルを指定する を選択して カスタムプロファイル に名前を入力します。
注記カスタムプロファイルを作成する場合は、プロファイルタグを新規フレーバーに割り当てる必要もあります。新規フレーバー作成についての詳しい情報は、「プロファイルへのノードのタグ付け」を参照してください。
- 確認 をクリックしてノードをタグ付けします。
7.7. WEB UI を使用したオーバークラウドプランのパラメーターの編集
プラン 画面では、アップロードしたプランをカスタマイズすることができます。2 デプロイメントの設定の指定 で、設定の編集 リンクをクリックして、ベースのオーバークラウドの設定を変更します。
ウィンドウには、2 つの主要なタブが表示されます。
- 全体の設定
このタブでは、オーバークラウドからの異なる機能を追加する方法を提供します。これらの機能は、プランの
capabilities-map.yaml
ファイルに定義されており、機能毎に異なるファイルを使用します。たとえば、Storage で Storage Environment を選択すると、プランはenvironments/storage-environment.yaml
ファイルにマッピングされ、オーバークラウドの NFS、iSCSI、Ceph の設定を行うことができます。Other タブには、プランで検出されているが、プランに含まれるカスタムの環境ファイルを追加するのに役立つcapabilities-map.yaml
には記載されていない環境ファイルが一覧表示されます。追加する機能を選択したら、変更の保存 をクリックしてください。- パラメーター
このタブには、オーバークラウドのさまざまなベースレベルパラメーターおよび環境ファイルパラメーターが含まれます。パラメーターを変更した場合には 変更の保存 をクリックしてください。
7.8. Web UI を使用したロールへのノードの割り当て
各ノードのハードウェアを登録、検査した後には、プランの画面からロールに割り当てます。
ロールにノードを割り当てるには、プラン の画面で 3 ロールの設定とノードの割り当て セクションまでスクロールします。各ロールで、スピナーウィジェットを使ってノード数をロールに割り当てます。それぞれのロールで利用可能なノードの数は、「Web UI を使用したプロファイルへのノードのタグ付け」でタグ付けしたノードに基づきます。
この操作により、各ロールの *Count
パラメーターが変更されます。たとえば、コントローラーロールのノード数を 3 に変更すると、ControllerCount
パラメーターが 3
に設定されます。デプロイメント設定の パラメーター タブで、これらのカウント値を表示および編集することもできます。詳細は、「WEB UI を使用したオーバークラウドプランのパラメーターの編集」を参照してください。
7.9. WEB UI を使用したロールパラメーターの編集
各ノードのロールにより、ロール固有のパラメーターを設定する手段が提供されます。プラン の画面で 3 ロールの設定とノードの割り当て セクションまでスクロールします。ロール名の横にある Edit Role Parameters アイコン (鉛筆のアイコン) をクリックします。
ウィンドウには、2 つの主要なタブが表示されます。
- パラメーター
これには、さまざまなロール固有のパラメーターが含まれます。たとえば、コントローラーロールを編集する場合には、
OvercloudControlFlavor
パラメーターを使用して、そのロールのデフォルトのフレーバーを変更することができます。ロール固有のパラメーターを変更したら、変更の保存 をクリックします。- サービス
これにより、選択したロールのサービス固有のパラメーターが定義されます。左のパネルでは、選択して変更したサービス一覧が表示されます。たとえば、タイムゾーンを変更するには、
OS::TripleO:Services:Timezone
サービスをクリックしてTimeZone
パラメーターを希望のタイムゾーンに変更します。サービス固有のパラメーターを変更したら、変更の保存 をクリックしてください。- ネットワーク設定
ネットワーク設定では、オーバークラウドのさまざまなネットワークに対して IP アドレスまたはサブネットの範囲を定義できます。
ロールのサービスパラメーターは UI に表示されますが、デフォルトではサービスは無効になっている場合があります。「WEB UI を使用したオーバークラウドプランのパラメーターの編集」の説明に沿って、これらのサービスを有効化することができます。これらのサービスの有効化に関する情報は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドの コンポーザブルロール のセクションも参照してください。
7.10. WEB UI を使用したオーバークラウドの作成開始
オーバークラウドプランが設定されたら、オーバークラウドのデプロイメントを開始することができます。これには、4 デプロイ セクションまでスクロールして、検証とデプロイ をクリックしてください。
アンダークラウドの検証をすべて実行しなかった場合や、すべての検証に合格しなかった場合には、警告メッセージが表示されます。アンダークラウドのホストが要件を満たしていることを確認してから、デプロイメントを実行してください。
デプロイメントの準備ができたら デプロイ をクリックしてください。
UI では、定期的に オーバークラウド作成の進捗がモニタリングされ、現在の進捗の割合を示すプログレスバーが表示されます。詳細情報の表示 リンクでは、オーバークラウドにおける現在の OpenStack Orchestration スタックのログが表示されます。
オーバークラウドのデプロイメントが完了するまで待ちます。
オーバークラウドの作成プロセスが完了したら、4 デプロイ セクションに、現在のオーバークラウドの状況と以下の詳細が表示されます。
- オーバークラウドの IP アドレス: オーバークラウドにアクセスするための IP アドレス
-
パスワード: オーバークラウドの
admin
ユーザーのパスワード
この情報を使用してオーバークラウドにアクセスします。
7.11. オーバークラウド作成の完了
これで director の UI を使用したオーバークラウドの作成が完了しました。作成後の機能については、「9章オーバークラウド作成後のタスクの実行」を参照してください。
第8章 事前にプロビジョニングされたノードを使用した基本的なオーバークラウドの設定
本章では、OpenStack Platform 環境を設定します。事前にプロビジョニングされたノードを使用して OpenStack Platform 環境を設定する基本的な手順を説明します。以下のシナリオは、標準のオーバークラウド作成のシナリオとはさまざまな点で異なります。
- 外部ツールを使用してノードをプロビジョニングしてから、director でオーバークラウドの設定のみを制御することができます。
- director のプロビジョニングの方法に依存せずにノードを使用することができます。これは、電源管理制御なしでオーバークラウドを作成する場合や、DHCP/PXE ブートの制限があるネットワークを使用する場合に便利です。
- director は、ノードの管理に OpenStack Compute (nova)、OpenStack Bare Betal (ironic) または OpenStack Image (glance) を使用しません。
- 事前にプロビジョニングされたノードは、カスタムのパーティションレイアウトを使用します。
このシナリオでは、カスタム機能のない基本的な設定を行いますが、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドに記載の手順に従って、この基本的なオーバークラウドに高度な設定オプションを追加して、仕様に合わせてカスタマイズすることができます。
事前プロビジョニングされたノードと director がプロビジョニングしたノードが混在するオーバークラウド環境はサポートされていません。
要件
- 「4章アンダークラウドのインストール」で作成した director ノード
- ノードに使用するベアメタルマシンのセット。必要なノード数は、作成予定のオーバークラウドのタイプにより異なります (オーバークラウドロールに関する情報は「ノードのデプロイメントロールのプランニング」を参照してください)。これらのマシンは、各ノード種別の要件セットに従う必要があります。これらの要件については、「オーバークラウドの要件」を参照してください。これらのノードには Red Hat Enterprise Linux 7.3 のオペレーティングシステムが必要です。
- 事前にプロビジョニングされたノードを管理するためのネットワーク接続 1 つ。このシナリオでは、オーケストレーションエージェントの設定のために、ノードへの SSH アクセスが中断されないようにする必要があります。
コントロールプレーンネットワーク用のネットワーク接続 1 つ。このネットワークには、主に 2 つのシナリオがあります。
プロビジョニングネットワークをコントロールプレーンとして使用するデフォルトのシナリオ。このネットワークは通常、事前にプロビジョニングされたノードから director への Layer 3 (L3) を使用したルーティング可能なネットワーク接続です。このシナリオの例では、以下の IP アドレスの割り当てを使用します。
表8.1 プロビジョニングネットワークの IP 割り当て
ノード名 IP アドレス director
192.168.24.1
コントローラー
192.168.24.2
Compute
192.168.24.3
- 別のネットワークを使用するシナリオ。director のプロビジョニングネットワークがプライベートのルーティング不可能なネットワークの場合には、サブネットからノードの IP アドレスを定義して、パブリック API エンドポイント経由で director と通信することができます。このシナリオには特定の注意事項があります。これについては、本章の後半の「オーバークラウドノードに別のネットワークを使用する方法」で考察します。
- この例で使用するその他すべてのネットワーク種別には、OpenStack サービス用のコントロールプレーンネットワークも使用しますが、他のネットワークトラフィック種別用に追加のネットワークを作成することができます。
8.1. ノード設定のためのユーザーの作成
このプロセスの後半では、director が オーバークラウドノードに stack
ユーザーとして SSH アクセスする必要があります。
各オーバークラウドノードで、
stack
という名前のユーザーを作成して、それぞれにパスワードを設定します。たとえば、コントローラーノードでは以下のコマンドを使用します。[root@controller ~]# useradd stack [root@controller ~]# passwd stack # specify a password
sudo
を使用する際に、このユーザーがパスワードを要求されないようにします。[root@controller ~]# echo "stack ALL=(root) NOPASSWD:ALL" | tee -a /etc/sudoers.d/stack [root@controller ~]# chmod 0440 /etc/sudoers.d/stack
事前にプロビジョニングされた全ノードで
stack
ユーザーの作成と設定が完了したら、director ノードから各オーバークラウドノードにstack
ユーザーの公開 SSH 鍵をコピーします。たとえば、director の公開 SSH 鍵をコントローラーノードにコピーするには、以下のコマンドを実行します。[stack@director ~]$ ssh-copy-id stack@192.168.24.2
8.2. ノードのオペレーティングシステムの登録
ノードごとに Red Hat サブスクリプションへのアクセスが必要です。以下の手順は、各ノードを Red Hat コンテンツ配信ネットワークに登録する方法を説明しています。各ノードで以下の手順を実行してください。
登録コマンドを実行して、プロンプトが表示されたらカスタマーポータルのユーザー名とパスワードを入力します。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager register
Red Hat OpenStack Platform director 12 のエンタイトルメントプールを検索します。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager list --available --all --matches="Red Hat OpenStack"
上記のステップで特定したプール ID を使用して、Red Hat OpenStack Platform 12 のエンタイトルメントをアタッチします。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager attach --pool=pool_id
デフォルトのリポジトリーをすべて無効にします。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager repos --disable=*
必要な Red Hat Enterprise Linux リポジトリーを有効にします。
x86_64 システムの場合には、以下のコマンドを実行します。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager repos --enable=rhel-7-server-rpms --enable=rhel-7-server-extras-rpms --enable=rhel-7-server-rh-common-rpms --enable=rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms --enable=rhel-7-server-openstack-12-rpms --enable=rhel-7-server-rhceph-2-osd-rpms --enable=rhel-7-server-rhceph-2-mon-rpms --enable=rhel-7-server-rhceph-2-tools-rpms
POWER システムの場合には、以下のコマンドを実行します。
[root@controller ~]# sudo subscription-manager repos --enable=rhel-7-for-power-le-rpms --enable=rhel-7-server-openstack-12-for-power-le-rpms
重要「リポジトリーの要件」でリストしたリポジトリーのみを有効にします。追加のリポジトリーを使用すると、パッケージとソフトウェアの競合が発生する場合があります。他のリポジトリーは有効にしないでください。
システムを更新して、ベースシステムのパッケージを最新の状態にします。
[root@controller ~]# sudo yum update -y [root@controller ~]# sudo reboot
このノードをオーバークラウドに使用する準備ができました。
8.3. ノードへのユーザーエージェントのインストール
事前にプロビジョニングされたノードはそれぞれ、OpenStack Orchestration (heat) エージェントを使用して director と通信します。各ノード上のエージェントは、director をポーリングして、そのノードに合わせたメタデータを取得します。このメタデータにより、エージェントは各ノードを設定できます。
各ノードでオーケストレーションエージェントの初期パッケージをインストールします。
[root@controller ~]# sudo yum -y install python-heat-agent*
8.4. director への SSL/TLS アクセスの設定
director が SSL/TLS を使用する場合は、事前にプロビジョニングされたノードには、director の SSL/TLS 証明書の署名に使用する認証局ファイルが必要です。独自の認証局を使用する場合には、各オーバークラウドノード上で以下のステップを実行します。
-
事前にプロビジョニングされた各ノードの
/etc/pki/ca-trust/source/anchors/
ディレクトリーに認証局ファイルをコピーします。 各オーバークラウドノード上で以下のコマンドを実行します。
[root@controller ~]# sudo update-ca-trust extract
これにより、オーバークラウドノードが director のパブリック API に SSL/TLS 経由でアクセスできるようにします。
8.5. コントロールプレーンのネットワークの設定
事前にプロビジョニングされたオーバークラウドノードは、標準の HTTP 要求を使用して director からメタデータを取得します。これは、オーバークラウドノードでは以下のいずれかに対して L3 アクセスが必要であることを意味します。
-
director のコントロールプレーンネットワーク。これは、
undercloud.conf
ファイルのnetwork_cidr
パラメーターで定義されたサブネットです。ノードには、このサブネットへの直接アクセスまたはルーティング可能なアクセスのいずれかが必要です。 -
undercloud.conf
ファイルのundercloud_public_host
パラメーターとして指定された director のパブリック API のエンドポイント。コントロールプレーンへの L3 ルートがない場合や、director をポーリングしてメタデータを取得するのに SSL/TLS 通信を使用する場合に、このオプションを利用できます。オーバークラウドがパブリック API エンドポイントを使用するための追加の設定手順については、「オーバークラウドノードに別のネットワークを使用する方法」を参照してください。
director は、コントロールプレーンネットワークを使用して標準のオーバークラウドを管理、設定します。事前にプロビジョニングされたノードを使用したオーバークラウドの場合には、director が事前にプロビジョニングされたノードと通信する方法に対応するために、ネットワーク設定を変更する必要がある場合があります。
ネットワーク分離の使用
ネットワークを分離すると、コントロールプレーンなど、固有のネットワークを使用するようにサービスをグループ化できます。『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドには、ネットワーク分離の方法が複数記載されています。また、コントロールプレーン上のノードに固有の IP アドレスを定義することも可能です。ネットワーク分離や予測可能なノード配置方法の策定に関する詳しい情報は、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドの以下のセクションを参照してください。
ネットワーク分離を使用する場合には、NIC テンプレートに、アンダークラウドのアクセスに使用する NIC を含めないようにしてください。これらのテンプレートにより NIC が再構成され、デプロイメント時に接続性や設定の問題が発生する可能性があります。
IP アドレスの割り当て
ネットワーク分離を使用しない場合には、単一のコントロールプレーンを使用して全サービスを管理することができます。これには、各ノード上のコントロールプレーンの NIC を手動で設定して、コントロールプレーンネットワークの範囲内の IP アドレスを使用するようにする必要があります。director のプロビジョニングネットワークをコントロールプレーンとして使用する場合には、選択したオーバークラウドの IP アドレスが、プロビジョニング (dhcp_start
および dhcp_end
) とイントロスペクション (inspection_iprange
) の両方の DHCP 範囲外になるようにしてください。
標準のオーバークラウド作成中には、director はプロビジョニング/コントロールプレーンネットワークのオーバークラウドノードに IP アドレスを自動的に割り当てるための OpenStack Networking (neutron) ポートを作成します。ただし、これにより、各ノードに手動で設定した IP アドレスとは異なるアドレスを director が割り当ててしまう可能性があります。このような場合には、予測可能な IP アドレス割り当て方法を使用して、director がコントロールプレーン上で事前にプロビジョニングされた IP の割り当てを強制的に使用するようにしてください。
予測可能可能な IP アドレス割り当て方法の例では、以下のように IP アドレスを割り当てた環境ファイル (ctlplane-assignments.yaml
) を使用します。
resource_registry: OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml parameter_defaults: DeployedServerPortMap: controller-ctlplane: fixed_ips: - ip_address: 192.168.24.2 subnets: - cidr: 24 compute-ctlplane: fixed_ips: - ip_address: 192.168.24.3 subnets: - cidr: 24
この例では、OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort
リソースはパラメーターセットを director に渡して、事前にプロビジョニングされたノードの IP 割り当てを定義します。DeployedServerPortMap
パラメーターは、各オーバークラウドノードに対応する IP アドレスおよびサブネット CIDR を定義します。このマッピングは以下を定義します。
-
割り当ての名前は、
<node_hostname>-<network>
の形式です (例:controller-ctlplane
、compute-ctlplane
)。 以下のパラメーターパターンを使用する IP 割り当て
-
fixed_ips/ip_address
: コントロールプレーンの固定 IP アドレスを定義します。複数の IP アドレスを定義する場合には、複数のip_address
パラメーターを一覧で指定してください。 -
subnets/cidr
: サブネットの CIDR 値を定義します。
-
本章の後半のステップでは、作成された環境ファイル (ctlplane-assignments.yaml
) を openstack overcloud deploy
コマンドの一部として使用します。
8.6. オーバークラウドノードに別のネットワークを使用する方法
デフォルトでは、director はオーバークラウドのコントロールプレーンとしてプロビジョニングネットワークを使用しますが、このネットワークが分離されて、ルーティング不可能な場合には、ノードは設定中に director の内部 API との通信ができません。このような状況では、ノードに別のネットワークを定義して、パブリック API 経由で director と通信できるように設定する必要がある場合があります。
このシナリオには、以下のような複数の要件があります。
- オーバークラウドノードは、「コントロールプレーンのネットワークの設定」からの基本的なネットワーク設定に対応する必要があります。
- パブリック API エンドポイントを使用できるように director 上で SSL/TLS を有効化する必要があります。詳しい情報は、「director の設定」と「付録A SSL/TLS 証明書の設定」を参照してください。
-
director 向けにアクセス可能な完全修飾ドメイン名 (FQDN) を定義する必要があります。この FQDN は、director にルーティング可能な IP アドレスを解決する必要があります。
undercloud.conf
ファイルのundercloud_public_host
パラメーターを使用して、この FQDN を設定します。
本項に記載する例では、主要なシナリオとは異なる IP アドレスの割り当てを使用します。
表8.2 プロビジョニングネットワークの IP 割り当て
ノード名 | IP アドレスまたは FQDN |
---|---|
director (内部 API) |
192.168.24.1 (プロビジョニングネットワークおよびコントロールプレーン) |
director (パブリック API) |
10.1.1.1 / director.example.com |
オーバークラウドの仮想 IP |
192.168.100.1 |
コントローラー |
192.168.100.2 |
Compute |
192.168.100.3 |
以下の項では、オーバークラウドノードに別のネットワークが必要な場合の追加の設定について説明します。
オーケストレーションの設定
アンダークラウドの SSL/TLS 通信を有効化している場合には、director は、大半のサービスにパブリック API エンドポイントを提供します。ただし、OpenStack Orchestration (heat) は、メタデータのデフォルトのプロバイダーとして内部エンドポイントを使用します。そのため、オーバークラウドノードがパブリックエンドポイントの OpenStack Orchestration にアクセスできるように、アンダークラウドを変更する必要があります。この変更には、director 上の Puppet hieradata の変更などが含まれます。
undercloud.conf
の hieradata_override
を使用すると、アンダークラウド設定用に追加で Puppet hieradata を指定することができます。以下の手順を使用して、OpenStack Orchestration に関連する hieradata を変更してください。
-
hieradata_override
ファイルをまだ使用していない場合には、新しいファイルを作成します。以下の例では、/home/stack/hieradata.yaml
にあるファイルを使用します。 /home/stack/hieradata.yaml
に以下の hieradata を追加します。heat_clients_endpoint_type: public heat::engine::default_deployment_signal_transport: TEMP_URL_SIGNAL
これにより、デフォルトの
internal
からpublic
にエンドポイントが変更され、TempURL を使用するシグナルの方法が OpenStack Object Storage (swift) から変更されます。undercloud.conf
で、hieradata_override
パラメーターを hieradata ファイルのパスに設定します。hieradata_override = /home/stack/hieradata.yaml
-
openstack overcloud install
コマンドを再度実行して、新規設定オプションを実装します。
これにより、オーケストレーションメタデータが director のパブリック API 上の URL を使用するように切り替えられます。
IP アドレスの割り当て
IP の割り当て方法は、「コントロールプレーンのネットワークの設定」と似ていますが、コントロールプレーンはデプロイしたサーバーからルーティング可能ではないので、DeployedServerPortMap
パラメーターを使用して、コントロールプレーンにアクセスする仮想 IP アドレスなど、選択したオーバークラウドノードのサブネットから IP アドレスを割り当てます。以下は、このネットワークアーキテクチャーに対応するように、「コントロールプレーンのネットワークの設定」の ctlplane-assignments.yaml
環境ファイルを変更したバージョンです。
resource_registry: OS::TripleO::DeployedServer::ControlPlanePort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml OS::TripleO::Network::Ports::ControlPlaneVipPort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-neutron-port.yaml OS::TripleO::Network::Ports::RedisVipPort: /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/network/ports/noop.yaml 1 parameter_defaults: NeutronPublicInterface: eth1 EC2MetadataIp: 192.168.100.1 2 ControlPlaneDefaultRoute: 192.168.100.1 DeployedServerPortMap: control_virtual_ip: fixed_ips: - ip_address: 192.168.100.1 subnets: - cidr: 24 controller0-ctlplane: fixed_ips: - ip_address: 192.168.100.2 subnets: - cidr: 24 compute0-ctlplane: fixed_ips: - ip_address: 192.168.100.3 subnets: - cidr: 24
- 1
RedisVipPort
リソースは、network/ports/noop.yaml
にマッピングされます。このマッピングは、デフォルトの Redis VIP アドレスがコントロールプレーンから割り当てられていることが理由です。このような場合には、noop
を使用して、このコントロールプレーンマッピングを無効化します。- 2
EC2MetadataIp
とControlPlaneDefaultRoute
パラメーターは、コントロールプレーンの仮想 IP アドレスの値に設定されます。デフォルトの NIC 設定テンプレートでは、これらのパラメーターが必須で、デプロイメント中に実行される検証に合格するには、ping 可能な IP アドレスを使用するように設定する必要があります。または、これらのパラメーターが必要ないように NIC 設定をカスタマイズします。
8.7. 事前にプロビジョニングされたノードでのオーバークラウドの作成
オーバークラウドのデプロイメントには、「CLI ツールを使用したオーバークラウドの作成」に記載の標準の CLI の方法を使用します。事前にプロビジョニングされたノードの場合は、デプロイメントコマンドに追加のオプションと、コア Heat テンプレートコレクションからの環境ファイルが必要です。
-
--disable-validations
: 事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーで使用しないサービスに対する基本的な CLI 検証を無効化します。無効化しないと、デプロイメントに失敗します。 -
environments/deployed-server-environment.yaml
: 事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーを作成、設定するための主要な環境ファイル。この環境ファイルは、OS::Nova::Server
リソースをOS::Heat::DeployedServer
リソースに置き換えます。 -
environments/deployed-server-bootstrap-environment-rhel.yaml
: 事前にプロビジョニングされたサーバー上でブートストラップのスクリプトを実行する環境ファイル。このスクリプトは、追加パッケージをインストールして、オーバークラウドノードの基本設定を提供します。 -
environments/deployed-server-pacemaker-environment.yaml
: 事前にプロビジョニングされたコントローラーノードで Pacemaker の設定を行う環境ファイル。このファイルに登録されるリソースの名前空間は、deployed-server/deployed-server-roles-data.yaml
からのコントローラーのロール名を使用します。デフォルトでは、ControllerDeployedServer
となっています。 deployed-server/deployed-server-roles-data.yaml
: カスタムロールのサンプルファイル。これは、デフォルトのroles_data.yaml
が複製されたファイルですが、各ロールのdisable_constraints: True
パラメーターも含まれています。このパラメーターは、生成されたロールテンプレートのオーケストレーションの制約を無効にします。これらの制約は、事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーで使用しないサービスが対象です。独自のカスタムロールファイルを使用する場合には、各ロールに
disable_constraints: True
パラメーターを追加するようにしてください。以下に例を示します。- name: ControllerDeployedServer disable_constraints: True CountDefault: 1 ServicesDefault: - OS::TripleO::Services::CACerts - OS::TripleO::Services::CephMon - OS::TripleO::Services::CephExternal - OS::TripleO::Services::CephRgw ...
以下は、事前にプロビジョニングされたアーキテクチャー固有の環境ファイルを使用したオーバークラウドデプロイメントのコマンド例です。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy \ [other arguments] \ --disable-validations \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-environment.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-bootstrap-environment-rhel.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-pacemaker-environment.yaml \ -r /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/deployed-server-roles-data.yaml
これにより、オーバークラウドの設定が開始されますが、デプロイメントのスタックは、オーバークラウドのノードリソースが CREATE_IN_PROGRESS
の段階に入ると一時停止します。
2017-01-14 13:25:13Z [overcloud.Compute.0.Compute]: CREATE_IN_PROGRESS state changed 2017-01-14 13:25:14Z [overcloud.Controller.0.Controller]: CREATE_IN_PROGRESS state changed
このように一時停止されるのは、オーバークラウドノード上のオーケストレーションエージェントがメタデータサーバーをポーリングするのを director が待っているためです。次のセクションでは、メタデータサーバーのポーリングを開始するようにノードを設定する方法を説明します。
8.8. メタデータサーバーのポーリング
デプロイメントは進行中ですが、CREATE_IN_PROGRESS
の段階で一時停止されます。次のステップでは、オーバークラウドノードのオーケストレーションエージェントが director 上のメタデータサーバーをポーリングするように設定します。この操作には、2 つの方法があります。
初期のデプロイメントの場合のみに自動設定を使用します。ノードをスケールアップする場合には自動設定を使用しないでください。
自動設定
director のコア Heat テンプレートコレクションには、オーバークラウドノード上で Heat エージェントの自動設定を行うスクリプトが含まれます。このスクリプトで、director との認証を行ってオーケストレーションサービスに対してクエリーを実行するには、stack
ユーザーとして stackrc
ファイルを読み込む必要があります。
[stack@director ~]$ source ~/stackrc
また、このスクリプトでは、追加の環境変数でノードのロールやその IP アドレスを定義する必要があります。これらの環境変数は以下のとおりです。
- OVERCLOUD_ROLES
- 設定するロールのスペース区切りの一覧。これらのロールは、ロールデータファイルで定義したロールに相関します。
- [ROLE]_hosts
- ロールごとに、環境変数と、ロールに含まれるノードの IP アドレス (スペース区切りの一覧) が必要です。
以下のコマンドは、これらの環境変数の設定例です。
(undercloud) $ export OVERCLOUD_ROLES="ControllerDeployedServer ComputeDeployedServer" (undercloud) $ export ControllerDeployedServer_hosts="192.168.100.2" (undercloud) $ export ComputeDeployedServer_hosts="192.168.100.3"
スクリプトを実行して、各オーバークラウドノード上にオーケストレーションエージェントを設定します。
(undercloud) $ /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/deployed-server/scripts/get-occ-config.sh
このスクリプトは、スクリプトを実行する同じユーザーを使用して SSH 経由で事前にプロビジョニングされたノードにアクセスします。今回の場合は、スクリプトは、stack
ユーザーの認証を行います。
このスクリプトは、以下を行います。
- 各ノードのメタデータ URL を確認するために director のオーケストレーションサービスにクエリーを実行します。
- ノードにアクセスして、固有のメタデータ URL で各ノードのエージェントを設定します。
- オーケストレーションエージェントサービスを再起動します。
スクリプトが完了したら、オーバークラウドノードは director 上でオーケストレーションサービスのポーリングを開始します。スタックのデプロイメントが続行されます。
手動による設定
事前にプロビジョニングされたノードでオーケストレーションエージェントを手動で設定する場合には、以下のコマンドを使用して、各ノードの URL に関して director 上のオーケストレーションサービスにクエリーを実行します。
[stack@director ~]$ source ~/stackrc (undercloud) $ for STACK in $(openstack stack resource list -n5 --filter name=deployed-server -c stack_name -f value overcloud) ; do STACKID=$(echo $STACK | cut -d '-' -f2,4 --output-delimiter " ") ; echo "== Metadata URL for $STACKID ==" ; openstack stack resource metadata $STACK deployed-server | jq -r '.["os-collect-config"].request.metadata_url' ; echo ; done
これにより、各ノードのスタック名やメタデータの URL が表示されます。
== Metadata URL for ControllerDeployedServer 0 == http://192.168.24.1:8080/v1/AUTH_6fce4e6019264a5b8283e7125f05b764/ov-edServer-ts6lr4tm5p44-deployed-server-td42md2tap4g/43d302fa-d4c2-40df-b3ac-624d6075ef27?temp_url_sig=58313e577a93de8f8d2367f8ce92dd7be7aac3a1&temp_url_expires=2147483586 == Metadata URL for ComputeDeployedServer 0 == http://192.168.24.1:8080/v1/AUTH_6fce4e6019264a5b8283e7125f05b764/ov-edServer-wdpk7upmz3eh-deployed-server-ghv7ptfikz2j/0a43e94b-fe02-427b-9bfe-71d2b7bb3126?temp_url_sig=8a50d8ed6502969f0063e79bb32592f4203a136e&temp_url_expires=2147483586
各オーバークラウドノード上で以下を行います。
既存の
os-collect-config.conf
テンプレートを削除して、エージェントによって手動の変更が上書きされないようにします。$ sudo /bin/rm -f /usr/libexec/os-apply-config/templates/etc/os-collect-config.conf
/etc/os-collect-config.conf
ファイルを対応するメタデータ URL を使用するように設定します。たとえば、コントローラーノードは以下を使用します。[DEFAULT] collectors=request command=os-refresh-config polling_interval=30 [request] metadata_url=http://192.168.24.1:8080/v1/AUTH_6fce4e6019264a5b8283e7125f05b764/ov-edServer-ts6lr4tm5p44-deployed-server-td42md2tap4g/43d302fa-d4c2-40df-b3ac-624d6075ef27?temp_url_sig=58313e577a93de8f8d2367f8ce92dd7be7aac3a1&temp_url_expires=2147483586
- ファイルを保存します。
os-collect-config
サービスを再起動します。[stack@controller ~]$ sudo systemctl restart os-collect-config
サービスを設定して再起動した後に、オーケストレーションエージェントは director のオーケストレーションサービスをポーリングしてオーバークラウドの設定を行います。デプロイメントスタックは作成を続行して、各ノードのスタックは最終的に CREATE_COMPLETE
に変わります。
8.9. オーバークラウド作成の監視
オーバークラウドの設定プロセスが開始されます。このプロセスは完了するまで多少時間がかかります。オーバークラウドの作成のステータスを確認するには、stack
ユーザーとして別のターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
[stack@director ~]$ source ~/stackrc (undercloud) $ heat stack-list --show-nested
heat stack-list --show-nested
コマンドは、オーバークラウド作成の現在の段階を表示します。
8.10. オーバークラウドへのアクセス
director は、director ホストからオーバークラウドに対話するための設定を行い、認証をサポートするスクリプトを作成して、stack
ユーザーのホームディレクトリーにこのファイル (overcloudrc
) を保存します。このファイルを使用するには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ source ~/overcloudrc
これで、director のホストの CLI からオーバークラウドと対話するために必要な環境変数が読み込まれます。コマンドプロンプトが変わり、オーバークラウドと対話していることが示されます。
(overcloud) $
director のホストとの対話に戻るには、以下のコマンドを実行します。
(overcloud) $ source ~/stackrc (undercloud) $
8.11. 事前にプロビジョニングされたノードのスケーリング
事前にプロビジョニングされたノードをスケーリングするプロセスは、「10章オーバークラウドのスケーリング」に記載の標準のスケーリングの手順と似ていますが、事前にプロビジョニングされたノードを新たに追加するプロセスは異なります。これは、事前にプロビジョニングされたノードが OpenStack Bare Metal (ironic) および OpenStack Compute (nova) からの標準の登録および管理プロセスを使用しないためです。
事前にプロビジョニングされたノードのスケールアップ
事前にプロビジョニングされたノードでオーバークラウドをスケールアップする際には、各ノードで director のノード数に対応するようにオーケストレーションエージェントを設定する必要があります。
ノードのスケールアップの大まかなプロセスは以下のとおりです。
- 「要件」の説明に従って、事前にプロビジョニングされたノードを準備します。
- ノードをスケールアップします。手順については「10章オーバークラウドのスケーリング」を参照してください。
- デプロイメントコマンドを実行した後に、director が新しいノードリソースを作成するまで待ちます。「メタデータサーバーのポーリング」の手順に従って、事前にプロビジョニングされたノードが director のオーケストレーションサーバーのメタデータ URL をポーリングするように設定します。
事前にプロビジョニングされたノードのスケールダウン
事前にプロビジョニングされたノードでオーバークラウドをスケールダウンするには、「10章オーバークラウドのスケーリング」に記載の通常のスケールダウンの手順に従います。
スタックからオーバークラウドノードを削除したら、それらのノードの電源をオフにします。標準のデプロイメントでは、director のベアメタルサービスがこの機能を制御しますが、事前にプロビジョニングされたノードでは、これらのノードを手動でシャットダウンするか、物理システムごとに電源管理制御を使用します。スタックからノードを削除した後にノードの電源をオフにしないと、稼動状態が続き、オーバークラウド環境の一部として再接続されてしまう可能性があります。
削除したノードの電源をオフにした後には、再プロビジョニングしてベースのオペレーティングシステムの設定に戻し、それらのノードが意図せずにオーバークラウドに加わってしまうことがないようにします。
オーバークラウドから以前に削除したノードは、再プロビジョニングしてベースオペレーティングシステムを新規インストールしてからでなければ、再利用しないようにしてください。スケールダウンのプロセスでは、オーバークラウドスタックからノードを削除するだけで、パッケージはアンインストールされません。
8.12. 事前にプロビジョニングされたオーバークラウドの削除
標準のオーバークラウドと同じ手順で、事前にプロビジョニングされたノードを使用するオーバークラウド全体を削除します。詳しい情報は、「オーバークラウドの削除」を参照してください。
オーバークラウドの削除後には、全ノードの電源をオフにしてから再プロビジョニングして、ベースオペレーティングシステムの設定に戻します。
オーバークラウドから削除したノードは、再プロビジョニングしてベースオペレーティングシステムを新規インストールしてからでなければ再利用しないでください。削除のプロセスでは、オーバークラウドスタックを削除するだけで、パッケージはアンインストールされません。
8.13. オーバークラウド作成の完了
これで、事前にプロビジョニングされたノードを使用したオーバークラウドの作成が完了しました。作成後の機能については、「9章オーバークラウド作成後のタスクの実行」を参照してください。
第9章 オーバークラウド作成後のタスクの実行
本章では、任意のオーバークラウドを作成後に実行するタスクについて考察します。
9.1. コンテナー化されたサービスの管理
オーバークラウドでは、OpenStack Platform サービスの大半をコンテナー内で実行します。特定の状況では、1 つのホスト上で個別のサービスを制御する必要がある場合があります。本項には、オーバークラウドノード上で、コンテナー化されたサービスを管理するために実行することのできる一般的な docker
コマンドについて記載します。docker
を使用したコンテナー管理に関する包括的な情報は、『コンテナーの使用ガイド』の「Docker フォーマットのコンテナーイメージの使用方法」を参照してください。
これらのコマンドを実行する前には、オーバークラウドノードにログイン済みであることを確認し、これらのコマンドをアンダークラウドで実行しないようにしてください。
コンテナーとイメージの一覧表示
実行中のコンテナーを一覧表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker ps
停止中またはエラーの発生したコンテナーも一覧表示するには、コマンドに --all
オプションを追加します。
$ sudo docker ps --all
コンテナーイメージを一覧表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker images
コンテナーのプロパティーの確認
コンテナーまたはコンテナーイメージのプロパティーを確認するには、docker inspect
コマンドを使用します。たとえば、keystone
コンテナーを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker inspect keystone
基本的なコンテナー操作の管理
コンテナー化されたサービスを再起動するには、docker restart
コマンドを使用します。たとえば、keystone
コンテナーを再起動するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker restart keystone
コンテナー化されたサービスを停止するには、docker stop
コマンドを使用します。たとえば、keystone
のコンテナーを停止するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker stop keystone
停止されているコンテナー化されたサービスを起動するには、docker start
コマンドを使用します。たとえば、keystone
のコンテナーを起動するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker start keystone
コンテナー内のサービス設定ファイルに加えた変更は、コンテナーの再起動後には元に戻ります。これは、コンテナーがノードのローカルファイルシステム上の /var/lib/config-data/puppet-generated/
にあるファイルに基づいてサービス設定を再生成するためです。たとえば、keystone
コンテナー内の /etc/keystone/keystone.conf
を編集してコンテナーを再起動すると、そのコンテナーはノードのローカルシステム上にある /var/lib/config-data/puppet-generated/keystone/etc/keystone/keystone.conf
を使用して設定を再生成します。再起動前にコンテナー内で加えられた変更は、この設定によって上書きされます。
コンテナーのモニター
コンテナー化されたサービスのログを確認するには、docker logs
コマンドを使用します。たとえば、keystone
のログを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker logs keystone
コンテナーへのアクセス
コンテナー化されたサービスのシェルに入るには、docker exec
コマンドを使用して /bin/bash
を起動します。たとえば、keystone
コンテナーのシェルに入るには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker exec -it keystone /bin/bash
keystone
コンテナーのシェルに root ユーザーとして入るには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker exec --user 0 -it <NAME OR ID> /bin/bash
コンテナーから出るには、以下のコマンドを実行します。
# exit
OpenStack Platform のコンテナー化されたサービスのトラブルシューティングに関する情報は、「コンテナー化されたサービスのエラー」を参照してください。
9.2. オーバークラウドのテナントネットワークの作成
オーバークラウドには、インスタンス用のテナントネットワークが必要です。source コマンドで overcloud
を読み込んで、Neutron で初期テナントネットワークを作成します。以下に例を示します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack network create default (overcloud) $ openstack subnet create default --network default --gateway 172.20.1.1 --subnet-range 172.20.0.0/16
上記のステップにより、default
という名前の基本的な Neutron ネットワークが作成されます。オーバークラウドは、内部 DHCP メカニズムを使用したこのネットワークから、IP アドレスを自動的に割り当てます。
作成したネットワークを確認します。
(overcloud) $ openstack network list +-----------------------+-------------+--------------------------------------+ | id | name | subnets | +-----------------------+-------------+--------------------------------------+ | 95fadaa1-5dda-4777... | default | 7e060813-35c5-462c-a56a-1c6f8f4f332f | +-----------------------+-------------+--------------------------------------+
9.3. オーバークラウドの外部ネットワークの作成
インスタンスに Floating IP を割り当てることができるように、オーバークラウドで外部ネットワークを作成する必要があります。
ネイティブ VLAN の使用
以下の手順では、外部ネットワーク向けの専用インターフェースまたはネイティブの VLAN が設定されていることが前提です。
source コマンドで overcloud
を読み込み、Neutron で外部ネットワークを作成します。以下に例を示します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack network create public --external --provider-network-type flat --provider-physical-network datacentre (overcloud) $ openstack subnet create public --network public --dhcp --allocation-pool start=10.1.1.51,end=10.1.1.250 --gateway 10.1.1.1 --subnet-range 10.1.1.0/24
以下の例では、public
という名前のネットワークを作成します。オーバークラウドには、デフォルトの Floating IP プールにこの特定の名前が必要です。このネットワークは、「オーバークラウドの検証」の検証テストでも重要となります。
このコマンドにより、ネットワークと datacentre
の物理ネットワークのマッピングも行われます。デフォルトでは、datacentre
は br-ex
ブリッジにマッピングされます。オーバークラウドの作成時にカスタムの Neutron の設定を使用していない限りは、このオプションはデフォルトのままにしてください。
非ネイティブ VLAN の使用
ネイティブ VLAN を使用しない場合には、以下のコマンドでネットワークを VLAN に割り当てます。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack network create public --external --provider-network-type vlan --provider-physical-network datacentre --provider-segment 104 (overcloud) $ openstack subnet create public --network public --dhcp --allocation-pool start=10.1.1.51,end=10.1.1.250 --gateway 10.1.1.1 --subnet-range 10.1.1.0/24
provider:segmentation_id
の値は、使用する VLAN を定義します。この場合は、104 を使用します。
作成したネットワークを確認します。
(overcloud) $ openstack network list +-----------------------+-------------+--------------------------------------+ | id | name | subnets | +-----------------------+-------------+--------------------------------------+ | d474fe1f-222d-4e32... | public | 01c5f621-1e0f-4b9d-9c30-7dc59592a52f | +-----------------------+-------------+--------------------------------------+
9.4. 追加の Floating IP ネットワークの作成
Floating IP ネットワークは、以下の条件を満たす限りは、br-ex
だけでなく、どのブリッジにも使用することができます。
-
ネットワーク環境ファイルで、
NeutronExternalNetworkBridge
が"''"
に設定されている。 デプロイ中に追加のブリッジをマッピングしている。たとえば、
br-floating
という新規ブリッジをfloating
という物理ネットワークにマッピングするには、環境ファイルで以下の設定を使用します。parameter_defaults: NeutronBridgeMappings: "datacentre:br-ex,floating:br-floating"
オーバークラウドの作成後に Floating IP ネットワークを作成します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack network create ext-net --external --provider-physical-network floating --provider-network-type vlan --provider-segment 105 (overcloud) $ openstack subnet create ext-subnet --network ext-net --dhcp --allocation-pool start=10.1.2.51,end=10.1.2.250 --gateway 10.1.2.1 --subnet-range 10.1.2.0/24
9.5. オーバークラウドのプロバイダーネットワークの作成
プロバイダーネットワークは、デプロイしたオーバークラウドの外部に存在するネットワークに物理的に接続されたネットワークです。これは、既存のインフラストラクチャーネットワークや、Floating IP の代わりにルーティングによって直接インスタンスに外部アクセスを提供するネットワークを使用することができます。
プロバイダーネットワークを作成する際には、ブリッジマッピングを使用する物理ネットワークに関連付けます。これは、Floating IP ネットワークの作成と同様です。コンピュートノードは、仮想マシンの仮想ネットワークインターフェースをアタッチされているネットワークインターフェースに直接接続するため、プロバイダーネットワークはコントローラーとコンピュートの両ノードに追加します。
たとえば、使用するプロバイダーネットワークが br-ex ブリッジ上の VLAN の場合には、以下のコマンドを使用してプロバイダーネットワークを VLAN 201 上に追加します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack network create provider_network --provider-physical-network datacentre --provider-network-type vlan --provider-segment 201 --share
このコマンドにより、共有ネットワークが作成されます。また、--share
と指定する代わりにテナントを指定することも可能です。そのネットワークは、指定されたテナントに対してのみ提供されます。プロバイダーネットワークを外部としてマークした場合には、そのネットワークでポートを作成できるのはオペレーターのみとなります。
Neutron が DHCP サービスをテナントのインスタンスに提供するように設定するには、プロバイダーネットワークにサブネットを追加します。
(overcloud) $ openstack subnet create provider-subnet --network provider_network --dhcp --allocation-pool start=10.9.101.50,end=10.9.101.100 --gateway 10.9.101.254 --subnet-range 10.9.101.0/24
他のネットワークがプロバイダーネットワークを介して外部にアクセスする必要がある場合があります。このような場合には、新規ルーターを作成して、他のネットワークがプロバイダーネットワークを介してトラフィックをルーティングできるようにします。
(overcloud) $ openstack router create external (overcloud) $ openstack router set --external-gateway provider_network external
このルーターに他のネットワークを接続します。たとえば、subnet1
という名前のサブネットがある場合には、以下のコマンドを実行してルーターに接続することができます。
(overcloud) $ openstack router add subnet external subnet1
これにより、subnet1
がルーティングテーブルに追加され、subnet1
を使用するトラフィックをプロバイダーネットワークにルーティングできるようになります。
9.6. オーバークラウドの検証
オーバークラウドは、OpenStack Integration Test Suite (tempest) ツールセットを使用して、一連の統合テストを行います。本項には、統合テストの実行準備に関する情報を記載します。OpenStack Integration Test Suite の使用方法に関する詳しい説明は、『OpenStack Integration Test Suite Guide』を参照してください。
Integration Test Suite の実行前
アンダークラウドからこのテストを実行する場合は、アンダークラウドのホストがオーバークラウドの内部 API ネットワークにアクセスできるようにします。たとえば、172.16.0.201/24 のアドレスを使用して内部 API ネットワーク (ID: 201) にアクセスするにはアンダークラウドホストに一時的な VLAN を追加します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ sudo ovs-vsctl add-port br-ctlplane vlan201 tag=201 -- set interface vlan201 type=internal (undercloud) $ sudo ip l set dev vlan201 up; sudo ip addr add 172.16.0.201/24 dev vlan201
OpenStack Integration Test Suite を実行する前に、heat_stack_owner
ロールがオーバークラウドに存在することを確認してください。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack role list +----------------------------------+------------------+ | ID | Name | +----------------------------------+------------------+ | 6226a517204846d1a26d15aae1af208f | swiftoperator | | 7c7eb03955e545dd86bbfeb73692738b | heat_stack_owner | +----------------------------------+------------------+
このロールが存在しない場合は、作成します。
(overcloud) $ openstack role create heat_stack_owner
Integration Test Suite の実行後
検証が完了したら、オーバークラウドの内部 API への一時接続を削除します。この例では、以下のコマンドを使用して、以前にアンダークラウドで作成した VLAN を削除します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ sudo ovs-vsctl del-port vlan201
9.7. オーバークラウド環境の変更
オーバークラウドを変更して、別機能を追加したり、操作の方法を変更したりする場合があります。オーバークラウドを変更するには、カスタムの環境ファイルと Heat テンプレートに変更を加えて、最初に作成したオーバークラウドから openstack overcloud deploy
コマンドをもう 1 度実行します。たとえば、「CLI ツールを使用したオーバークラウドの作成」の方法を使用してオーバークラウドを作成した場合には、以下のコマンドを再度実行します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \ -e ~/templates/node-info.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \ -e ~/templates/network-environment.yaml \ -e ~/templates/storage-environment.yaml \ --ntp-server pool.ntp.org
director は Heat 内の overcloud
スタックを確認してから、環境ファイルと Heat テンプレートのあるスタックで各アイテムを更新します。オーバークラウドは再度作成されずに、既存のオーバークラウドに変更が加えられます。
新規環境ファイルを追加する場合には、openstack overcloud deploy
コマンドで -e
オプションを使用して そのファイルを追加します。以下に例を示します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \ -e ~/templates/new-environment.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \ -e ~/templates/network-environment.yaml \ -e ~/templates/storage-environment.yaml \ -e ~/templates/node-info.yaml \ --ntp-server pool.ntp.org
これにより、環境ファイルからの新規パラメーターやリソースがスタックに追加されます。
director により後で上書きされてしまう可能性があるので、オーバークラウドの設定には手動で変更を加えないことを推奨します。
9.8. オーバークラウドへの仮想マシンのインポート
既存の OpenStack 環境があり、仮想マシンを Red Hat OpenStack Platform 環境に移行する予定がある場合には、以下の手順を使用します。
実行中のサーバーのスナップショットを作成して新規イメージを作成し、そのイメージをダウンロードします。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack server image create instance_name --name image_name (overcloud) $ openstack image save image_name --file exported_vm.qcow2
エクスポートしたイメージをオーバークラウドにアップロードして、新しいインスタンスを起動します。
(overcloud) $ openstack image create imported_image --file exported_vm.qcow2 --disk-format qcow2 --container-format bare (overcloud) $ openstack server create imported_instance --key-name default --flavor m1.demo --image imported_image --nic net-id=net_id
各仮想マシンのディスクは、既存の OpenStack 環境から新規の Red Hat OpenStack Platform にコピーする必要があります。QCOW を使用したスナップショットでは、元の階層化システムが失われます。
9.9. オーバークラウドのコンピュートノードからの仮想マシンの移行
オーバークラウドのコンピュートノードでメンテナンスを行う場合があります。ダウンタイムを防ぐには、そのコンピュートノード上の仮想マシンを同じオーバークラウド内の別のコンピュートノードに移行します。
director は、すべてのコンピュートノードがセキュアな移行を提供するように設定します。全コンピュートノードには、各ホストの nova
ユーザーが移行プロセス中に他のコンピュートノードにアクセスすることができるようにするための共有 SSH キーも必要です。director は、OS::TripleO::Services::NovaCompute
コンポーザブルサービスを使用してこのキーを作成します。このコンポーザブルサービスは、全コンピュートロールにデフォルトで含まれているメインのサービスの 1 つです (『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』の「コンポーザブルサービスとカスタムロール」を参照)。
インスタンスを移行するには、以下の手順を実行します。
アンダークラウドから、再起動するコンピュートノードを選択し、そのノードを無効にします。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service list (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --disable
コンピュートノード上の全インスタンスを一覧表示します。
(overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
以下のコマンドの 1 つを使用して、インスタンスを移行します。
選択した特定のホストにインスタンスを移行します。
(overcloud) $ openstack server migrate [instance-id] --live [target-host]--wait
nova-scheduler
により対象のホストが自動的に選択されるようにします。(overcloud) $ nova live-migration [instance-id]
一度にすべてのインスタンスのライブマイグレーションを行います。
$ nova host-evacuate-live [hostname]
注記nova
コマンドで非推奨の警告が表示される可能性がありますが、安全に無視することができます。
- 移行が完了するまで待ちます。
正常に移行したことを確認します。
(overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
- 選択したコンピュートノードのインスタンスがなくなるまで、移行を続けます。
これにより、コンピュートノードからすべてのインスタンスが移行されます。インスタンスのダウンタイムなしにノードでメンテナンスを実行できるようになります。コンピュートノードを有効な状態に戻すには、以下のコマンドを実行します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --enable
9.10. Ansible 自動化の実行
director を使用すると、Ansible ベースの自動化を OpenStack Platform 環境で実行することができます。director は、tripleo-ansible-inventory
コマンドを使用して、環境内にノードの動的インベントリーを生成します。
動的インベントリーツールには、アンダークラウドとデフォルトの controller
および compute
オーバークラウドノードのみが含まれます。他のロールはサポートされていません。
ノードの動的インベントリーを表示するには、stackrc
を読み込んだ後に tripleo-ansible-inventory
コマンドを実行します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ tripleo-ansible-inventory --list
--list
オプションを指定すると、全ホストの詳細が表示されます。
これにより、JSON 形式で動的インベントリーが出力されます。
{"overcloud": {"children": ["controller", "compute"], "vars": {"ansible_ssh_user": "heat-admin"}}, "controller": ["192.168.24.2"], "undercloud": {"hosts": ["localhost"], "vars": {"overcloud_horizon_url": "http://192.168.24.4:80/dashboard", "overcloud_admin_password": "abcdefghijklm12345678", "ansible_connection": "local"}}, "compute": ["192.168.24.3"]}
お使いの環境で Ansible のプレイブックを実行するには、ansible
コマンドを実行し、-i
オプションを使用して動的インベントリーツールの完全パスを追加します。以下に例を示します。
(undercloud) $ ansible [HOSTS] -i /bin/tripleo-ansible-inventory [OTHER OPTIONS]
[HOSTS]
は使用するホストの種別に置き換えます。以下に例を示します。-
全コントローラーノードの場合には
controller
-
全コンピュートノードの場合には
compute
-
controller
およびcompute
など、全オーバークラウドの子ノードの場合にはovercloud
-
アンダークラウドの場合には
undercloud
-
全ノードの場合には
"*"
-
全コントローラーノードの場合には
[OTHER OPTIONS]
は追加の Ansible オプションに置き換えてください。役立つオプションには以下が含まれます。-
--ssh-extra-args='-o StrictHostKeyChecking=no'
は、ホストキーのチェックを省略します。 -
-u [USER]
は、Ansible の自動化を実行する SSH ユーザーを変更します。オーバークラウドのデフォルトの SSH ユーザーは、動的インベントリーのansible_ssh_user
パラメーターで自動的に定義されます。-u
オプションは、このパラメーターより優先されます。 -
-m [MODULE]
は、特定の Ansible モジュールを使用します。デフォルトはcommand
で Linux コマンドを実行します。 -
-a [MODULE_ARGS]
は選択したモジュールの引数を定義します。
-
オーバークラウドの Ansible 自動化は、標準のオーバークラウドスタックとは異なります。つまり、この後に openstack overcloud deploy
コマンドを実行すると、オーバークラウドノード上の OpenStack Platform サービスに対する Ansible ベースの設定を上書きする可能性があります。
9.11. オーバークラウドの削除防止
heat stack-delete overcloud
コマンドで誤って削除されないように、Heat には特定のアクションを制限するポリシーセットが含まれます。/etc/heat/policy.json
を開いて、以下のパラメーターを検索します。
"stacks:delete": "rule:deny_stack_user"
このパラメーターの設定を以下のように変更します。
"stacks:delete": "rule:deny_everybody"
ファイルを保存します。
これにより heat
クライアントでオーバークラウドが削除されないように阻止されます。オーバークラウドを削除できるように設定するには、ポリシーを元の値に戻します。
9.12. オーバークラウドの削除
オーバークラウドはすべて、必要に応じて削除することができます。
既存のオーバークラウドを削除します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud delete overcloud
オーバークラウドが削除されていることを確認します。
(undercloud) $ openstack stack list
削除には、数分かかります。
削除が完了したら、デプロイメントシナリオの標準ステップに従って、オーバークラウドを再度作成します。
9.13. トークンのフラッシュ間隔の確認
Identity Service (keystone) は、他の OpenStack サービスに対するアクセス制御にトークンベースのシステムを使用します。ある程度の期間が過ぎた後には、データベースに未使用のトークンが多数蓄積されます。デフォルトの cronjob は毎日トークンをフラッシュします。環境をモニタリングして、必要に応じてトークンのフラッシュ間隔を調節することを推奨します。
オーバークラウドでは、KeystoneCronToken
の値を使用して間隔を調整することができます。詳しい情報は、『オーバークラウドのパラメーター』ガイドを参照してください。
第10章 オーバークラウドのスケーリング
コンピュートインスタンスの高可用性 (またはインスタンス HA。『コンピュートインスタンスの高可用性』で説明) を使用している場合は、アップグレードとスケールアップはできません。操作を試みても失敗します。
HA を有効化しているインスタンスがある場合には、アップグレードまたはスケールアップを実行する前に無効にしてください。そのためには、「ロールバック」に記載の ロールバック の操作を実行してください。
オーバークラウドの作成後に、ノードを追加または削除する必要がある場合があります。たとえば、オーバークラウドのコンピュートノードを追加する場合などです。このような状況では、オーバークラウドの更新が必要です。
以下の表を使用して、各ノード種別のスケーリングに対するサポートを判断してください。
表10.1 各ノード種別のスケーリングサポート
ノード種別 |
スケールアップ |
スケールダウン |
備考 |
コントローラー |
☓ |
☓ | |
Compute |
Y |
Y | |
Ceph Storage ノード |
Y |
☓ |
オーバークラウドを最初に作成する際に Ceph Storage ノードを 1 つ以上設定する必要があります。 |
Block Storage ノード |
☓ |
☓ | |
Object Storage ノード |
Y |
Y |
リングを手動で管理する必要があります (「Object Storage ノードの置き換え」に説明を記載)。 |
オーバークラウドをスケーリングする前には、空き領域が少なくとも 10 GB あることを確認してください。この空き領域は、イメージの変換やノードのプロビジョニングプロセスのキャッシュに使用されます。
10.1. ノードのさらなる追加
director のノードプールにさらにノードを追加するには、登録する新規ノードの詳細を記載した新しい JSON ファイル (例: newnodes.json
) を作成します。
{ "nodes":[ { "mac":[ "dd:dd:dd:dd:dd:dd" ], "cpu":"4", "memory":"6144", "disk":"40", "arch":"x86_64", "pm_type":"pxe_ipmitool", "pm_user":"admin", "pm_password":"p@55w0rd!", "pm_addr":"192.168.24.207" }, { "mac":[ "ee:ee:ee:ee:ee:ee" ], "cpu":"4", "memory":"6144", "disk":"40", "arch":"x86_64", "pm_type":"pxe_ipmitool", "pm_user":"admin", "pm_password":"p@55w0rd!", "pm_addr":"192.168.24.208" } ] }
これらのパラメーターについての説明は、「オーバークラウドへのノードの登録」を参照してください。
以下のコマンドを実行して、これらのノードを登録します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud node import newnodes.json
新規ノードを追加した後には、それらのイントロスペクションプロセスを起動します。各新規ノードに以下のコマンドを使用します。
(undercloud) $ openstack baremetal node manage [NODE UUID] (undercloud) $ openstack overcloud node introspect [NODE UUID] --provide
このコマンドは、ノードのハードウェアプロパティーの検出とベンチマークを実行します。
イントロスペクションプロセスの完了後には、各新規ノードを任意のロールにタグ付けしてスケーリングします。たとえば、コンピュートノードの場合には、以下のコマンドを使用します。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:compute,boot_option:local' [NODE UUID]
デプロイメント中に使用するブートイメージを設定します。bm-deploy-kernel
および bm-deploy-ramdisk
イメージの UUID を確認します。
(undercloud) $ openstack image list +--------------------------------------+------------------------+ | ID | Name | +--------------------------------------+------------------------+ | 09b40e3d-0382-4925-a356-3a4b4f36b514 | bm-deploy-kernel | | 765a46af-4417-4592-91e5-a300ead3faf6 | bm-deploy-ramdisk | | ef793cd0-e65c-456a-a675-63cd57610bd5 | overcloud-full | | 9a51a6cb-4670-40de-b64b-b70f4dd44152 | overcloud-full-initrd | | 4f7e33f4-d617-47c1-b36f-cbe90f132e5d | overcloud-full-vmlinuz | +--------------------------------------+------------------------+
新規ノードの deploy_kernel
および deploy_ramdisk
設定にこれらの UUID を設定します。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --driver-info deploy_kernel='09b40e3d-0382-4925-a356-3a4b4f36b514' [NODE UUID] (undercloud) $ openstack baremetal node set --driver-info deploy_ramdisk='765a46af-4417-4592-91e5-a300ead3faf6' [NODE UUID]
オーバークラウドをスケーリングするには、ロールに必要なノード数を指定して openstack overcloud deploy
を再実行する必要があります。たとえば、コンピュートノード 5 台にスケーリングするには、以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates --compute-scale 5 [OTHER_OPTIONS]
上記のコマンドにより、オーバークラウドのスタック全体が更新されます。このコマンドが更新するのは、スタックのみである点に注意してください。オーバークラウドの削除や、スタックの置き換えは行われません。
コンピュート以外のノードに対する同様のスケジューリングパラメーターなど、最初に作成したオーバークラウドからの環境ファイルおよびオプションをすべて追加するようにしてください。
10.2. コンピュートノードの削除
オーバークラウドからコンピュートノードを削除する必要がある状況が出てくる可能性があります。たとえば、問題のあるコンピュートノードを置き換える必要がある場合などです。
オーバークラウドからコンピュートノードを削除する前に、インスタンスをそのノードから別のコンピュートノードに移行してください。詳しくは、「オーバークラウドのコンピュートノードからの仮想マシンの移行」を参照してください。
次に、オーバークラウド上でノードの Compute サービスを無効化します。これにより、ノードで新規インスタンスがスケジューリングされないようになります。
$ source ~/stack/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service list (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --disable
アンダークラウドに戻ります。
(overcloud) $ source ~/stack/stackrc
オーバークラウドノードを削除するには、ローカルのテンプレートファイルを使用して overcloud
スタックへの更新が必要です。最初に、オーバークラウドスタックの UUID を特定します。
(undercloud) $ openstack stack list
削除するノードの UUID を特定します。
(undercloud) $ openstack server list
以下のコマンドを実行してスタックからノードを削除し、それに応じてプランを更新します。
(undercloud) $ openstack overcloud node delete --stack [STACK_UUID] --templates -e [ENVIRONMENT_FILE] [NODE1_UUID] [NODE2_UUID] [NODE3_UUID]
オーバークラウドの作成時に追加の環境ファイルを渡した場合には、オーバークラウドに、不要な変更が手動で加えられないように、ここで -e
または --environment-file
オプションを使用して環境ファイルを再度指定します。
操作を続行する前に、openstack overcloud node delete
コマンドが完全に終了したことを確認します。openstack stack list
コマンドを使用して、overcloud
スタックが UPDATE_COMPLETE
のステータスに切り替わっているかどうかをチェックしてください。
最後に、ノードの Compute サービスを削除します。
(undercloud) $ source ~/stack/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service list (overcloud) $ openstack compute service delete [service-id]
ノードの Open vSwitch エージェントも削除します。
(overcloud) $ openstack network agent list (overcloud) $ openstack network agent delete [openvswitch-agent-id]
オーバークラウドから自由にノードを削除して、別の目的でそのノードを再プロビジョニングすることができます。
10.3. コンピュートノードの置き換え
コンピュートノードに障害が発生した場合に、機能しているノードに置き換えることができます。コンピュートノードを置き換えるには、以下の手順を使用します。
- 既存のコンピュートノードからインスタンスを移行して、ノードをシャットダウンします。この手順は「オーバークラウドのコンピュートノードからの仮想マシンの移行」を参照してください。
- オーバークラウドからコンピュートノードを削除します。この手順は「コンピュートノードの削除」を参照してください。
- 新しいコンピュートノードでオーバークラウドをスケーリングアウトします。その手順は、「ノードのさらなる追加」を参照してください。
このプロセスでは、インスタンスの可用性に影響を与えることなく、ノードを置き換えることができるようにします。
10.4. コントローラーノードの置き換え
特定の状況では、高可用性クラスター内のコントローラーノードに障害が発生することがあり、その場合は、そのコントローラーノードをクラスターから削除して新しいコントローラーノードに置き換える必要があります。このステップには、クラスター内の他のノードとの接続を確認する作業も含まれます。
本項では、コントローラーノードの置き換えの手順について説明します。このプロセスでは openstack overcloud deploy
コマンドを実行してコントローラーノードの置き換えを要求し、オーバークラウドを更新します。このプロセスは、自動的には完了しない点に注意してください。オーバークラウドスタックの更新プロセスの途中で、openstack overcloud deploy
コマンドによりエラーが報告されて、オーバークラウドスタックの更新が停止します。この時点で、プロセスに手動での介入が必要となり、その後に openstack overcloud deploy
のプロセスを続行することができます。
以下の手順は、高可用性環境のみに適用します。コントローラーノード 1 台の場合には、この手順は使用しないでください。
10.4.1. 事前のチェック
オーバークラウドコントローラーノードの置き換えを試みる前に、Red Hat OpenStack Platform 環境の現在の状態をチェックしておくことが重要です。このチェックしておくと、コントローラーの置き換えプロセス中に複雑な事態が発生するのを防ぐことができます。以下の事前チェックリストを使用して、コントローラーノードの置き換えを実行しても安全かどうかを確認してください。チェックのためのコマンドはすべてアンダークラウドで実行します。
アンダークラウドで、
overcloud
スタックの現在の状態をチェックします。$ source stackrc (undercloud) $ openstack stack list --nested
overcloud
スタックと後続の子スタックは、CREATE_COMPLETE
またはUPDATE_COMPLETE
のステータスである必要があります。アンダークラウドデータベースのバックアップを実行します。
(undercloud) $ mkdir /home/stack/backup (undercloud) $ sudo mysqldump --all-databases --quick --single-transaction | gzip > /home/stack/backup/dump_db_undercloud.sql.gz
- アンダークラウドで、新規ノードのプロビジョニング時にイメージのキャッシュと変換に対応できる 10 GB の空きストレージ領域があるかどうかをチェックします。
コントローラーノードで実行中の Pacemaker の状態をチェックします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドで Pacemaker のステータス情報を取得します。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 'sudo pcs status'
出力には、既存のノードで実行中のサービスと、障害が発生しているノードで停止中のサービスがすべて表示されるはずです。
オーバークラウドの MariaDB クラスターの各ノードで以下のパラメーターをチェックします。
-
wsrep_local_state_comment: Synced
wsrep_cluster_size: 2
実行中のコントローラーノードで以下のコマンドを使用して、パラメーターをチェックします (IP アドレスにはそれぞれ 192.168.0.47 と 192.168.0.46 を使用します)。
(undercloud) $ for i in 192.168.0.47 192.168.0.46 ; do echo "*** $i ***" ; ssh heat-admin@$i "sudo mysql -p\$(sudo hiera -c /etc/puppet/hiera.yaml mysql::server::root_password) --execute=\"SHOW STATUS LIKE 'wsrep_local_state_comment'; SHOW STATUS LIKE 'wsrep_cluster_size';\""; done
-
RabbitMQ のステータスをチェックします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドを実行してステータスを取得します。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo docker exec \$(sudo docker ps -f name=rabbitmq-bundle -q) rabbitmqctl cluster_status"
running_nodes
キーには、障害が発生しているノードは表示されず、稼働中のノード 2 台のみが表示されるはずです。フェンシングが有効化されている場合には無効にします。たとえば、実行中のコントローラーノードの IP アドレスが 192.168.0.47 の場合には、以下のコマンドを実行してフェンシングを無効にします。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs property set stonith-enabled=false"
以下のコマンドを実行してフェンシングのステータスを確認します。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs property show stonith-enabled"
director ノードで
nova-compute
サービスをチェックします。(undercloud) $ sudo systemctl status openstack-nova-compute (undercloud) $ openstack hypervisor list
出力では、メンテナンスモードに入っていないすべてのノードが
up
のステータスで表示されるはずです。アンダークラウドサービスがすべて実行中であることを確認します。
(undercloud) $ sudo systemctl -t service
10.4.2. Ceph monitor デーモンの削除
本手順では、ストレージクラスターから ceph-mon
デーモンを削除します。コントローラーノードが Ceph monitor サービスを実行している場合には、以下のステップを完了して、ceph-mon デーモンを削除してください。この手順は、コントローラーが到達可能であることを前提としています。
新しい Ceph monitor デーモンは、クラスターに新しいコントローラーが追加された後に追加されます。
置き換えるコントローラーに接続して、root になります。
# ssh heat-admin@192.168.0.47 # sudo su -
注記コントローラーが到達不可能な場合には、ステップ 1 と 2 をスキップして、稼働している任意のコントローラーノードでステップ 3 から手順を続行してください。
root として monitor を停止します。
# systemctl stop ceph-mon@<monitor_hostname>
例:
# systemctl stop ceph-mon@overcloud-controller-2
クラスターから monitor を削除します。
# ceph mon remove <mon_id>
Ceph monitor ノード上で、
/etc/ceph/ceph.conf
から monitor のエントリーを削除します。たとえば、controller-2 を削除した場合には、controller-2 の IP アドレスとホスト名を削除します。編集前:
mon host = 172.18.0.21,172.18.0.22,172.18.0.24 mon initial members = overcloud-controller-2,overcloud-controller-1,overcloud-controller-0
編集後:
mon host = 172.18.0.22,172.18.0.24 mon initial members = overcloud-controller-1,overcloud-controller-0
オーバークラウドノードの
/etc/ceph/ceph.conf
に同じ変更を適用します。注記置き換え用のコントローラーノードが追加されると、director によって関連するノード上の
ceph.conf
ファイルが更新されます。通常、設定ファイルは director によってのみ管理され、手動で編集する必要はありませんが、 このステップでは、新規ノードが追加される前に他のノードが再起動してしまった場合に一貫性を保つために、ファイルを編集しています。オプションとして、monitor データをアーカイブして、別のサーバーに保存します。
# mv /var/lib/ceph/mon/<cluster>-<daemon_id> /var/lib/ceph/mon/removed-<cluster>-<daemon_id>
10.4.3. ノードの置き換え
削除するノードのインデックスを特定します。ノードのインデックスは、nova list
の出力に表示されるインスタンス名のサフィックスです。
(undercloud) $ openstack server list +--------------------------------------+------------------------+ | ID | Name | +--------------------------------------+------------------------+ | 861408be-4027-4f53-87a6-cd3cf206ba7a | overcloud-compute-0 | | 0966e9ae-f553-447a-9929-c4232432f718 | overcloud-compute-1 | | 9c08fa65-b38c-4b2e-bd47-33870bff06c7 | overcloud-compute-2 | | a7f0f5e1-e7ce-4513-ad2b-81146bc8c5af | overcloud-controller-0 | | cfefaf60-8311-4bc3-9416-6a824a40a9ae | overcloud-controller-1 | | 97a055d4-aefd-481c-82b7-4a5f384036d2 | overcloud-controller-2 | +--------------------------------------+------------------------+
この例では、overcloud-controller-1
ノードを削除して、overcloud-controller-3
に置き換えます。初めにノードをメンテナンスモードに切り替えて、director が障害の発生したノードを再プロビジョニングしないようにします。nova list
で表示されるインスタンスの ID を、openstack baremetal node list
で表示されるノード ID と相関させます。
(undercloud) $ openstack baremetal node list +--------------------------------------+------+--------------------------------------+ | UUID | Name | Instance UUID | +--------------------------------------+------+--------------------------------------+ | 36404147-7c8a-41e6-8c72-a6e90afc7584 | None | 7bee57cf-4a58-4eaf-b851-2a8bf6620e48 | | 91eb9ac5-7d52-453c-a017-c0e3d823efd0 | None | None | | 75b25e9a-948d-424a-9b3b-f0ef70a6eacf | None | None | | 038727da-6a5c-425f-bd45-fda2f4bd145b | None | 763bfec2-9354-466a-ae65-2401c13e07e5 | | dc2292e6-4056-46e0-8848-d6e96df1f55d | None | 2017b481-706f-44e1-852a-2ee857c303c4 | | c7eadcea-e377-4392-9fc3-cf2b02b7ec29 | None | 5f73c7d7-4826-49a5-b6be-8bfd558f3b41 | | da3a8d19-8a59-4e9d-923a-6a336fe10284 | None | cfefaf60-8311-4bc3-9416-6a824a40a9ae | | 807cb6ce-6b94-4cd1-9969-5c47560c2eee | None | c07c13e6-a845-4791-9628-260110829c3a | +--------------------------------------+------+--------------------------------------+
ノードをメンテナンスモードに切り替えます。
(undercloud) $ openstack baremetal node maintenance set da3a8d19-8a59-4e9d-923a-6a336fe10284
新規ノードを control
プロファイルでタグ付けします。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --property capabilities='profile:control,boot_option:local' 75b25e9a-948d-424a-9b3b-f0ef70a6eacf
オーバークラウドのデータベースは、置き換え手順の実行中に稼働し続ける必要があります。この手順の実行中に Pacemaker が Galera を停止しないようにするには、実行中のコントローラーノードを選択して、そのコントローラーノードの IP アドレスを使用して、アンダークラウドで以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 "sudo pcs resource unmanage galera"
削除するノードインデックスを定義する YAML ファイルを作成します (~/templates/remove-controller.yaml
)。
parameters: ControllerRemovalPolicies: [{'resource_list': ['1']}]
Corosync 内での settle の試行回数を減らすことによって、置き換えプロセスをスピードアップすることができます。~/templates/remove-controller.yaml
環境ファイルで CorosyncSettleTries
パラメーターを指定します。
parameter_defaults: CorosyncSettleTries: 5
ノードインデックスを特定した後には、オーバークラウドを再デプロイして、remove-controller.yaml
環境ファイルを追加します。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates --control-scale 3 -e ~/templates/remove-controller.yaml [OTHER OPTIONS]
オーバークラウドの作成時に追加の環境ファイルまたはオプションを渡した場合には、予定外の変更がオーバークラウドに加えられないように、その環境ファイルまたはオプションをここで再度渡してください。
ただし、-e ~/templates/remove-controller.yaml
が必要なのは、この場合には 1 回のみである点に注意してください。
director は古いノードを削除して、新しいノードを作成してから、オーバークラウドスタックを更新します。以下のコマンドを使用すると、オーバークラウドスタックのステータスをチェックすることができます。
(undercloud) $ openstack stack list --nested
10.4.4. 手動での介入
ControllerNodesPostDeployment
の段階中には、オーバークラウドスタックの更新が ControllerDeployment_Step1
で UPDATE_FAILED
エラーにより停止します。これは、一部の Puppet モジュールがノードの置き換えをサポートしていないためです。処理のこの時点で手動による介入が必要です。以下に記載する設定ステップに従ってください。
コントローラーノードの IP アドレスの一覧を取得します。以下に例を示します。
(undercloud) $ openstack server list -c Name -c Networks +------------------------+-----------------------+ | Name | Networks | +------------------------+-----------------------+ | overcloud-compute-0 | ctlplane=192.168.0.44 | | overcloud-controller-0 | ctlplane=192.168.0.47 | | overcloud-controller-2 | ctlplane=192.168.0.46 | | overcloud-controller-3 | ctlplane=192.168.0.48 | +------------------------+-----------------------+
各ノードの Corosync 設定から障害の発生したノードを削除して、Corosync を再起動します。この例では、
overcloud-controller-0
とovercloud-controller-2
にログインして以下のコマンドを実行します。(undercloud) $ for NAME in overcloud-controller-0 overcloud-controller-2; do IP=$(openstack server list -c Networks -f value --name $NAME | cut -d "=" -f 2) ; ssh heat-admin@$IP "sudo pcs cluster localnode remove overcloud-controller-1; sudo pcs cluster reload corosync"; done
残りのノードの中の 1 台にログインして、
crm_node
コマンドで対象のノードをクラスターから削除します。(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.0.47 [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo crm_node -R overcloud-controller-1 --force
このノードにログインした状態を維持します。
障害が発生したノードを RabbitMQ クラスターから削除します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo docker exec -it $(sudo docker ps -f name=rabbitmq-bundle -q) rabbitmqctl forget_cluster_node rabbit@overcloud-controller-1
Galera クラスター内のノードの一覧を更新し、クラスターをリフレッシュします。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs resource update galera cluster_host_map="overcloud-controller-0:overcloud-controller-0.internalapi.localdomain;overcloud-controller-3:overcloud-controller-3.internalapi.localdomain;overcloud-controller-2:overcloud-controller-2.internalapi.localdomain" wsrep_cluster_address="gcomm://overcloud-controller-0.internalapi.localdomain,overcloud-controller-3.internalapi.localdomain,overcloud-controller-2.internalapi.localdomain" [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs resource cleanup galera [heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs resource manage galera
新規ノードをクラスターに追加します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs cluster node add overcloud-controller-3
新規コントローラーノードを起動します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs cluster start overcloud-controller-3
手動の設定が完了しました。コントローラーにログインした状態を維持します。
別のターミナルを開き、オーバークラウドのデプロイメントコマンドを再度実行して、スタックの更新を継続します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates --control-scale 3 [OTHER OPTIONS]
オーバークラウドの作成時に追加の環境ファイルまたはオプションを渡した場合には、予定外の変更がオーバークラウドに加えられないように、その環境ファイルまたはオプションをここで再度渡してください。ただし、remove-controller.yaml
ファイルは必要なくなった点に注意してください。
10.4.5. オーバークラウドサービスの最終処理
オーバークラウドのスタックの更新が完了したら、新たに追加されたコントローラーノード上で Pacemaker がコントローラーサービスを実行できるように、適切なクラスターノードのプロパティーを設定します。既存のコントローラーノードのどれかで (たとえば、overcloud-controller-0
)、以下のコマンドを実行します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ for i in $(sudo pcs property | grep overcloud-controller-0: | cut -d' ' -f 3- | tr ' ' '\n' | grep role); do sudo pcs property set --node overcloud-controller-3 $i; done
これ以降、新たに追加されたコントローラーノードで、Pacemaker の管理するサービスが実行されます。
最終のステータスチェックを実行して、サービスが正しく実行されていることを確認します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs status
エラーが発生したサービスがある場合には、pcs resource cleanup
コマンドを使用して、問題の解決後にそのサービスを再起動します。
director を終了します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ exit
10.4.6. L3 エージェントのルーターホスティングの最終処理
オーバークラウドと対話できるようにするために、source コマンドで overcloudrc
ファイルを読み込みます。ルーターをチェックして、L3 エージェントがオーバークラウド環境内のルーターを適切にホストしていることを確認します。以下の例では、r1
という名前のルーターを使用します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ neutron l3-agent-list-hosting-router r1
このリストには、新しいノードの代わりに、依然として古いノードが表示される場合があります。これを置き換えるには、環境内の L3 ネットワークエージェントを一覧表示します。
(overcloud) $ neutron agent-list | grep "neutron-l3-agent"
新しいノードと古いノード上でエージェントの UUID を特定します。新しいノードのエージェントにルーターを追加し、古いノードからそのルーターを削除します。以下に例を示します。
(overcloud) $ neutron l3-agent-router-add fd6b3d6e-7d8c-4e1a-831a-4ec1c9ebb965 r1 (overcloud) $ neutron l3-agent-router-remove b40020af-c6dd-4f7a-b426-eba7bac9dbc2 r1
ルーターに対して最終チェックを実行し、すべてがアクティブであることを確認します。
(overcloud) $ neutron l3-agent-list-hosting-router r1
古いコントローラーノードをポイントしている既存の Neutron エージェントを削除します。以下に例を示します。
(overcloud) $ neutron agent-list -F id -F host | grep overcloud-controller-1 | ddae8e46-3e8e-4a1b-a8b3-c87f13c294eb | overcloud-controller-1.localdomain | (overcloud) $ neutron agent-delete ddae8e46-3e8e-4a1b-a8b3-c87f13c294eb
10.4.7. Compute サービスの最終処理
削除されたノードの Compute サービスはオーバークラウドにまだ存在しているので、削除する必要があります。source コマンドで overcloudrc
ファイルを読み込み、オーバークラウドと対話できるようにします。削除したノードの Compute サービスをチェックします。
[stack@director ~]$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service list --host overcloud-controller-1.localdomain
削除したノードのコンピュートサービスを削除します。
(overcloud) $ for SERVICE in $(openstack compute service list --host overcloud-controller-1.localdomain -f value -c ID) ; do openstack compute service delete $SERVICE ; done
10.4.8. 結果
障害が発生したコントローラーノードと、関連サービスが新しいノードに置き換えられました。
「Object Storage ノードの置き換え」のように Object Storage でリングファイルの自動構築を無効にした場合には、新規ノード用に Object Storage リングファイルを手動で構築する必要があります。リングファイルの手動構築についての詳しい情報は、「Object Storage ノードの置き換え」を参照してください。
10.5. Ceph Storage ノードの置き換え
director では、director で作成したクラスター内の Ceph Storage ノードを置き換えることができます。手順については、『Deploying an Overcloud with Containerized Red Hat Ceph』ガイドを参照してください。
10.6. Object Storage ノードの置き換え
本項では、クラスターの整合性を保ちながら Object Storage ノードを置き換える方法を説明します。以下の例では、2 台のノードで構成される Object Storage クラスターで、overcloud-objectstorage-1
を置き換える必要があります。この手順は、ノードを 1 台追加して、overcloud-objectstorage-1
を削除することを目的とします (実際には置き換えます)。
~/templates/swift-upscale.yaml という名前の環境ファイルを作成して、以下の内容を記載します。
parameter_defaults: ObjectStorageCount: 3
ObjectStorageCount
は、環境内で Object Storage ノードをいくつ指定するかを定義します。今回の例では、ノードを 2 つから 3 つにスケーリングします。openstack overcloud deploy
の一部として、オーバークラウドの残りの環境ファイル (ENVIRONMENT_FILES) と合わせてswift-upscale.yaml
を追加します。$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates ENVIRONMENT_FILES -e swift-upscale.yaml
注記swift-upscale.yaml
ファイルのパラメーターが以前の環境ファイルのパラメーターよりも優先されるように、このファイルを環境ファイルの一覧の最後に追加します。デプロイメントが完了したら、オーバークラウドには別の Object Storage ノードが追加されています。
データは新しいノード用に複製する必要があります。ノードを削除する前に (この場合は
overcloud-objectstorage-1
)、replication pass が新規ノードで完了するのを待つ必要があります。/var/log/swift/swift.log
で複製パスの進捗を確認することができます。パスが完了すると、Object Storage サービスは以下のようなエントリーをログに残します。Mar 29 08:49:05 localhost object-server: Object replication complete. Mar 29 08:49:11 localhost container-server: Replication run OVER Mar 29 08:49:13 localhost account-server: Replication run OVER
リングから以前のノードを削除するには、
swift-upscale.yaml
のObjectStorageCount
の数を減らして以前のリングを省略します。今回は 3 から 2 に減らします。parameter_defaults: ObjectStorageCount: 2
新規環境ファイル (
remove-object-node.yaml
) を作成します。このファイルは、以前に指定した Object Storage ノードを特定し、削除します。以下の内容ではovercloud-objectstorage-1
の削除を指定します。parameter_defaults: ObjectStorageRemovalPolicies: [{'resource_list': ['1']}]
デプロイメントのコマンドで両環境ファイルを指定します。
(undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates ENVIRONMENT_FILES -e swift-upscale.yaml -e remove-object-node.yaml ...
director は、オーバークラウドから Object Storage ノードを削除して、オーバークラウド上の残りのノードを更新し、ノードの削除に対応します。
10.7. ノードのブラックリスト登録
オーバークラウドノードがデプロイメントの更新を受け取らないように除外することができます。これは、既存のノードがコア Heat テンプレートコレクションから更新されたパラメーターセットやリソースを受け取らないように除外した状態で、新規ノードをスケーリングする場合に役立ちます。つまり、ブラックリストに登録されているノードは、スタック操作の影響を受けなくなります。
ブラックリストを作成するには、環境ファイルの DeploymentServerBlacklist
パラメーターを使います。
ブラックリストの設定
DeploymentServerBlacklist
パラメーターは、サーバー名のリストです。新たな環境ファイルを作成するか、既存のカスタム環境ファイルにパラメーター値を追加して、ファイルをデプロイメントコマンドに渡します。
parameter_defaults: DeploymentServerBlacklist: - overcloud-compute-0 - overcloud-compute-1 - overcloud-compute-2
パラメーター値のサーバー名には、実際のサーバーホスト名ではなく、OpenStack Orchestation (Heat) で定義されている名前を使用します。
openstack overcloud deploy
コマンドで、この環境ファイルを指定します。以下に例を示します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack overcloud deploy --templates \ -e server-blacklist.yaml \ [OTHER OPTIONS]
Heat はリスト内のサーバーをすべてブラックリストし、Heat デプロイメントの更新を受け取らないようにします。スタック操作が完了した後には、ブラックリストに登録されたサーバーは以前の状態のままとなります。操作中に os-collect-config
エージェントの電源をオフにしたり、停止したりすることもできます。
- ノードをブラックリストに登録する場合には、注意が必要です。ブラックリストを有効にした状態で要求された変更を適用する方法を十分に理解していない限り、ブラックリストは使用しないでください。ブラックリスト機能を使うと、スタックがハングしたり、オーバークラウドが誤って設定されたりする場合があります。たとえば、クラスター設定の変更が Pacemaker クラスターの全メンバーに適用される場合には、この変更の間に Pacemaker クラスターのメンバーをブラックリストに登録すると、クラスターが機能しなくなる場合があります。
- 更新またはアップグレードの操作中にブラックリストを使わないでください。これらの操作には、特定のサーバーに対する変更を分離するための独自の方法があります。詳細は、『Upgrading Red Hat OpenStack Platform』のドキュメントを参照してください。
- サーバーをブラックリストに追加すると、そのサーバーをブラックリストから削除するまでは、それらのノードにはさらなる変更は適用されません。これには、更新、アップグレード、スケールアップ、スケールダウン、およびノードの置き換えが含まれます。
ブラックリストのクリア
その後のスタック操作のためにブラックリストをクリアするには、DeploymentServerBlacklist
を編集して空の配列を使用します。
parameter_defaults: DeploymentServerBlacklist: []
DeploymentServerBlacklist
パラメーターを単に削除しないでください。パラメーターを削除しただけの場合には、オーバークラウドデプロイメントには、前回保存された値が使用されます。
第11章 ノードの再起動
アンダークラウドおよびオーバークラウドでノードを再起動する必要がある場合があります。以下の手順では、異なるノード種別を再起動する方法を説明します。以下の点に注意してください。
- 1 つのロールで全ノードを再起動する場合には、各ノードを個別に再起動することを推奨しています。この方法は、再起動中にそのロールのサービスを保持するのに役立ちます。
- OpenStack Platform 環境の全ノードを再起動する場合、再起動の順序は以下のリストを参考にしてください。
推奨されるノード再起動順
- director の再起動
- コントローラーノードの再起動
- Ceph Storage ノードの再起動
- コンピュートノードの再起動
- Object Storage ノードの再起動
11.1. director の再起動
director ノードを再起動するには、以下のプロセスに従います。
ノードを再起動します。
$ sudo reboot
- ノードが起動するまで待ちます。
全サービスのステータスを確認します。
$ sudo systemctl list-units "openstack*" "neutron*" "openvswitch*"
注記再起動後に
openstack-nova-compute
が有効になるまでに約 10 分かかる場合があります。オーバークラウドとそのノードが存在しているかどうかを確認します。
$ source ~/stackrc $ openstack server list $ openstack baremetal node list $ openstack stack list
11.2. コントローラーノードの再起動
コントローラーノードを再起動するには、以下のプロセスに従います。
再起動するノードを選択します。そのノードにログインして再起動します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo reboot
クラスター内の残りのコントローラーノードは、再起動中も高可用性サービスが保持されます。
- ノードが起動するまで待ちます。
ノードにログインして、クラスターのステータスを確認します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo pcs status
このノードは、クラスターにもう 1 度参加します。
注記再起動後に失敗するサービスがあった場合には、sudo
pcs resource cleanup
を実行し、エラーを消去して各リソースの状態をStarted
に設定します。エラーが引き続き発生する場合には、Red Hat にアドバイス/サポートをリクエストしてください。コントローラーノード上の全コンテナーがアクティブであることを確認します。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo docker ps
- ノードからログアウトして、次に再起動するコントローラーノードを選択し、すべてのコントローラーノードが再起動されるまでこの手順を繰り返します。
11.3. Ceph Storage ノードの再起動
Ceph Storage のノードを再起動するには、以下のプロセスに従います。
Ceph MON またはコントローラーノードにログインして、Ceph Storage クラスターのリバランスを一時的に無効にします。
$ sudo ceph osd set noout $ sudo ceph osd set norebalance
- 再起動する最初の Ceph Storage ノードを選択して、ログインします。
ノードを再起動します。
$ sudo reboot
- ノードが起動するまで待ちます。
ノードにログインして、クラスターのステータスを確認します。
$ sudo ceph -s
pgs
がpgmap
により通常通りに報告されていることを確認します (active+clean
)。- ノードからログアウトして、次のノードを再起動し、ステータスを確認します。全 Ceph Storage ノードが再起動されるまで、このプロセスを繰り返します。
完了したら、Ceph MON またはコントローラーノードにログインして、クラスターのリバランスを再度有効にします。
$ sudo ceph osd unset noout $ sudo ceph osd unset norebalance
最終のステータスチェックを実行して、クラスターが
HEALTH_OK
を報告していることを確認します。$ sudo ceph status
11.4. コンピュートノードの再起動
コンピュートノードを個別に再起動して、OpenStack Platform 環境のインスタンスのダウンタイムがゼロになるようにします。この操作は、以下のワークフローに従って実行します。
- 再起動するコンピュートノードを選択します。
- インスタンスを別のコンピュートノードに移行します。
- 空のコンピュートノードを再起動します。
全コンピュートノードとその UUID を一覧表示します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack server list --name compute
再起動するコンピュートノードを選択してから、まず最初に以下のプロセスに従ってそのノードのインスタンスを移行します。
アンダークラウドから、再起動するコンピュートノードを選択し、そのノードを無効にします。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service list (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --disable
コンピュートノード上の全インスタンスを一覧表示します。
(overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
以下のコマンドの 1 つを使用して、インスタンスを移行します。
選択した特定のホストにインスタンスを移行します。
(overcloud) $ openstack server migrate [instance-id] --live [target-host]--wait
nova-scheduler
により対象のホストが自動的に選択されるようにします。(overcloud) $ nova live-migration [instance-id]
一度にすべてのインスタンスのライブマイグレーションを行います。
$ nova host-evacuate-live [hostname]
注記nova
コマンドで非推奨の警告が表示される可能性がありますが、安全に無視することができます。
- 移行が完了するまで待ちます。
正常に移行したことを確認します。
(overcloud) $ openstack server list --host [hostname] --all-projects
- 選択したコンピュートノードのインスタンスがなくなるまで、移行を続けます。
インスタンスの設定および移行に関する詳しい説明については、「オーバークラウドのコンピュートノードからの仮想マシンの移行」を参照してください。
以下の手順に従ってコンピュートノードを再起動します。
コンピュートノードにログインして、再起動します。
[heat-admin@overcloud-compute-0 ~]$ sudo reboot
- ノードが起動するまで待ちます。
コンピュートノードを再度有効化します。
$ source ~/overcloudrc (overcloud) $ openstack compute service set [hostname] nova-compute --enable
コンピュートノードが有効化されているかどうかを確認します。
(overcloud) $ openstack compute service list
11.5. Object Storage ノードの再起動
Object Storage ノードを再起動するには、以下のプロセスに従います。
再起動する Object Storage ノードを選択します。そのノードにログインして再起動します。
[heat-admin@overcloud-objectstorage-0 ~]$ sudo reboot
- ノードが起動するまで待ちます。
ノードにログインして、コンテナーのステータスを確認します。
[heat-admin@overcloud-objectstorage-0 ~]$ sudo docker ps
- ノードからログアウトして、次の Object Storage ノードでこのプロセスを繰り返します。
第12章 director の問題のトラブルシューティング
director プロセスの特定の段階で、エラーが発生する可能性があります。本項では、一般的な問題の診断に関する情報を提供します。
director のコンポーネントの共通ログを確認してください。
-
/var/log
ディレクトリーには、多数の OpenStack Platform の共通コンポーネントのログや、標準の Red Hat Enterprise Linux アプリケーションのログが含まれています。 journald
サービスは、さまざまなコンポーネントのログを提供します。Ironic はopenstack-ironic-api
とopenstack-ironic-conductor
の 2 つのユニットを使用する点に注意してください。同様に、ironic-inspector
はopenstack-ironic-inspector
とopenstack-ironic-inspector-dnsmasq
の 2 つのユニットを使用します。該当するコンポーネントごとに両ユニットを使用します。以下に例を示します。$ source ~/stackrc (undercloud) $ sudo journalctl -u openstack-ironic-inspector -u openstack-ironic-inspector-dnsmasq
-
ironic-inspector
は、/var/log/ironic-inspector/ramdisk/
に ramdisk ログを gz 圧縮の tar ファイルとして保存します。ファイル名には、日付、時間、ノードの IPMI アドレスが含まれます。イントロスペクションの問題を診断するには、これらのログを使用します。
12.1. ノード登録のトラブルシューティング
ノード登録における問題は通常、ノードの情報が間違っていることが原因で発生します。このような場合には、ironic
を使用して、登録したノードデータの問題を修正します。以下にいくつか例を示します。
割り当てられたポートの UUID を確認します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack baremetal port list --node [NODE UUID]
MAC アドレスを更新します。
(undercloud) $ openstack baremetal port set --address=[NEW MAC] [PORT UUID]
以下のコマンドを実行します。
(undercloud) $ openstack baremetal node set --driver-info ipmi_address=[NEW IPMI ADDRESS] [NODE UUID]
12.2. ハードウェアイントロスペクションのトラブルシューティング
イントロスペクションのプロセスは最後まで実行する必要があります。ただし、Ironic の Discovery Daemon (ironic-inspector
) は、検出する ramdisk が応答しない場合にはデフォルトの 1 時間が経過するとタイムアウトします。検出する ramdisk のバグが原因とされる場合もありますが、通常は特に BIOS の起動設定などの環境の誤設定が原因で発生します。
以下には、環境設定が間違っている場合の一般的なシナリオと、診断/解決方法に関するアドバイスを示します。
ノードのイントロスペクション開始におけるエラー
通常、イントロスペクションプロセスは、openstack overcloud node introspect
コマンドを使用します。ただし、ironic-inspector
で直接イントロスペクションを実行している場合には、「AVAILABLE」の状態のノードの検出に失敗する可能性があります。このコマンドは、デプロイメント用であり、検出用ではないためです。検出前に、ノードのステータスを「MANAGEABLE」に変更します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack baremetal node manage [NODE UUID]
検出が完了したら、状態を「AVAILABLE」に戻してからプロビジョニングを行います。
(undercloud) $ openstack baremetal node provide [NODE UUID]
検出プロセスの停止
イントロスペクションのプロセスを停止します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack baremetal introspection abort [NODE UUID]
プロセスがタイムアウトするまで待つことも可能です。必要であれば、/etc/ironic-inspector/inspector.conf
の timeout
設定を別の時間 (分単位) に変更します。
イントロスペクション ramdisk へのアクセス
イントロスペクションの ramdisk は、動的なログイン要素を使用します。これは、イントロスペクションのデバッグ中にノードにアクセスするための一時パスワードまたは SSH キーのいずれかを提供できることを意味します。以下のプロセスを使用して、ramdisk アクセスを設定します。
以下のように
openssl passwd -1
コマンドに一時パスワードを指定して MD5 ハッシュを生成します。$ openssl passwd -1 mytestpassword $1$enjRSyIw$/fYUpJwr6abFy/d.koRgQ/
/httpboot/inspector.ipxe
ファイルを編集して、kernel
で開始する行を特定し、rootpwd
パラメーターと MD5 ハッシュを追記します。以下に例を示します。kernel http://192.2.0.1:8088/agent.kernel ipa-inspection-callback-url=http://192.168.0.1:5050/v1/continue ipa-inspection-collectors=default,extra-hardware,logs systemd.journald.forward_to_console=yes BOOTIF=${mac} ipa-debug=1 ipa-inspection-benchmarks=cpu,mem,disk rootpwd="$1$enjRSyIw$/fYUpJwr6abFy/d.koRgQ/" selinux=0
または、
sshkey
パラメーターに SSH 公開キーを追記します。注記rootpwd
およびsshkey
のパラメーターにはいずれも引用符が必要です。イントロスペクションを開始し、
arp
コマンドまたは DHCP のログから IP アドレスを特定します。$ arp $ sudo journalctl -u openstack-ironic-inspector-dnsmasq
一時パスワードまたは SSH キーを使用して、root ユーザーとして SSH 接続します。
$ ssh root@192.168.24.105
イントロスペクションストレージのチェック
director は OpenStack Object Storage (swift) を使用して、イントロスペクションプロセス中に取得したハードウェアデータを保存します。このサービスが稼働していない場合には、イントロスペクションは失敗する場合があります。以下のコマンドを実行して、OpenStack Object Storage に関連したサービスをすべてチェックし、このサービスが稼働中であることを確認します。
$ sudo systemctl list-units openstack-swift*
12.3. workflow および execution のトラブルシューティング
OpenStack Workflow (mistral) サービスは、複数の OpenStack タスクをワークフローにグループ化します。Red Hat OpenStack Platform は、これらのワークフローセットを使用して、CLI と Web UI で共通の機能を実行します。これには、ベアメタルノードの制御、検証、プラン管理、オーバークラウドのデプロイメントが含まれます。
たとえば openstack overcloud deploy
コマンドを実行すると、OpenStack Workflow サービスは 2 つのワークフローを実行します。最初はデプロイメントプランのアップロードです。
Removing the current plan files Uploading new plan files Started Mistral Workflow. Execution ID: aef1e8c6-a862-42de-8bce-073744ed5e6b Plan updated
2 つ目は、オーバークラウドのデプロイメントを開始します。
Deploying templates in the directory /tmp/tripleoclient-LhRlHX/tripleo-heat-templates Started Mistral Workflow. Execution ID: 97b64abe-d8fc-414a-837a-1380631c764d 2016-11-28 06:29:26Z [overcloud]: CREATE_IN_PROGRESS Stack CREATE started 2016-11-28 06:29:26Z [overcloud.Networks]: CREATE_IN_PROGRESS state changed 2016-11-28 06:29:26Z [overcloud.HeatAuthEncryptionKey]: CREATE_IN_PROGRESS state changed 2016-11-28 06:29:26Z [overcloud.ServiceNetMap]: CREATE_IN_PROGRESS state changed ...
Workflow オブジェクト
OpenStack Workflow では、以下のオブジェクトを使用して、ワークフローを記録します。
- Actions
- Shell スクリプトの実行や HTTP 要求の実行など、関連タスクが実行された場合に OpenStack が実行する特定の指示。OpenStack のコンポーネントには、OpenStack Workflow が使用する Actions が含まれます。
- Tasks
- 実行するアクションと、アクションの実行後の結果を定義します。これらのタスクには通常、アクションまたはアクションに関連付けられたワークフローが含まれます。タスクが完了したら、ワークフローは、タスクが成功したか否かによって、別のタスクに指示を出します。
- Workflows
- グループ化されて、特定の順番で実行されるタスクセット
- Executions
- 実行する特定のアクション、タスク、またはワークフローを定義します。
Workflow のエラー診断
OpenStack Workflow では、実行に関して着実にログを取ることもできるので、特定のコマンドが失敗した場合に問題を特定しやすくなります。たとえば、ワークフローの実行に失敗した場合には、どの部分で失敗したかを特定することができます。ワークフローの実行に失敗した状態 (ERROR
) のものを表示します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack workflow execution list | grep "ERROR"
失敗したワークフローの実行の UUID を取得して (例: dffa96b0-f679-4cd2-a490-4769a3825262)、実行とその出力を表示します。
(undercloud) $ openstack workflow execution show dffa96b0-f679-4cd2-a490-4769a3825262 (undercloud) $ openstack workflow execution output show dffa96b0-f679-4cd2-a490-4769a3825262
これにより、実行で失敗したタスクに関する情報を取得できます。openstack workflow execution show
は、実行に使用したワークフローも表示します (例: tripleo.plan_management.v1.publish_ui_logs_to_swift
)。以下のコマンドを使用して完全なワークフロー定義を表示することができます。
(undercloud) $ openstack workflow definition show tripleo.plan_management.v1.publish_ui_logs_to_swift
これは、特定のタスクがワークフローのどの部分で発生するかを特定する際に便利です。
同様のコマンド構文を使用して、アクションの実行と、その結果を表示することもできます。
(undercloud) $ openstack action execution list (undercloud) $ openstack action execution show 8a68eba3-0fec-4b2a-adc9-5561b007e886 (undercloud) $ openstack action execution output show 8a68eba3-0fec-4b2a-adc9-5561b007e886
これは、問題を引き起こす固有のアクションを特定する際に便利です。
12.4. オーバークラウドの作成のトラブルシューティング
デプロイメントが失敗する可能性のあるレイヤーは 3 つあります。
- Orchestration (Heat および Nova サービス)
- Bare Metal Provisioning (Ironic サービス)
- デプロイメント後の設定 (Puppet)
オーバークラウドのデプロイメントがこれらのレベルで失敗した場合には、OpenStack クライアントおよびサービスログファイルを使用して、失敗したデプロイメントの診断を行います。
12.4.1. Orchestration
多くの場合は、オーバークラウドの作成に失敗した後に、Heat により失敗したオーバークラウドスタックが表示されます。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack stack list --nested --property status=FAILED +-----------------------+------------+--------------------+----------------------+ | id | stack_name | stack_status | creation_time | +-----------------------+------------+--------------------+----------------------+ | 7e88af95-535c-4a55... | overcloud | CREATE_FAILED | 2015-04-06T17:57:16Z | +-----------------------+------------+--------------------+----------------------+
スタック一覧が空の場合には、初期の Heat 設定に問題があることが分かります。Heat テンプレートと設定オプションをチェックし、さらに openstack overcloud deploy
を実行後のエラーメッセージを確認してください。
12.4.2. Bare Metal Provisioning
ironic
をチェックして、全登録ノードと現在の状態を表示します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack baremetal node list +----------+------+---------------+-------------+-----------------+-------------+ | UUID | Name | Instance UUID | Power State | Provision State | Maintenance | +----------+------+---------------+-------------+-----------------+-------------+ | f1e261...| None | None | power off | available | False | | f0b8c1...| None | None | power off | available | False | +----------+------+---------------+-------------+-----------------+-------------+
プロビジョニングプロセスでよく発生する問題を以下に示します。
結果の表の「Provision State」および「Maintenance」の列を確認します。以下をチェックしてください。
- 空の表または、必要なノード数よりも少ない
- 「Maintenance」が True に設定されている
-
プロビジョニングの状態が
manageable
に設定されている。これにより、登録または検出プロセスに問題があることが分かります。たとえば、「Maintenance」が True に自動的に設定された場合は通常、ノードの電源管理の認証情報が間違っています。
-
「Provision State」が
available
の場合には、ベアメタルのデプロイメントが開始される前に問題が発生します。 -
「Provision State」が
active
で、「Power State」がpower on
の場合には、ベアメタルのデプロイメントは正常に完了しますが、問題は、デプロイメント後の設定ステップで発生することになります。 -
ノードの「Provision State」が
wait call-back
の場合には、このノードではまだ Bare Metal Provisioning プロセスが完了していません。このステータスが変わるまで待ってください。ステータスが変わらない場合には、問題のあるノードの仮想コンソールに接続して、出力を確認します。 「Provision State」が
error
またはdeploy failed
の場合には、このノードの Bare Metal Provisioning は失敗しています。ベアメタルノードの詳細を確認してください。(undercloud) $ openstack baremetal node show [NODE UUID]
エラーの説明が含まれる
last_error
フィールドがないか確認します。エラーメッセージは曖昧なため、ログを使用して解明します。(undercloud) $ sudo journalctl -u openstack-ironic-conductor -u openstack-ironic-api
-
wait timeout error
が表示されており、「Power State」がpower on
の場合には、問題のあるノードの仮想コンソールに接続して、出力を確認します。
12.4.3. デプロイメント後の設定
設定ステージでは多くのことが発生する可能性があります。たとえば、設定に問題があるために、特定の Puppet モジュールの完了に失敗する可能性があります。本項では、これらの問題を診断するプロセスを説明します。
オーバークラウドスタックからのリソースをすべて表示して、どのスタックに問題があるのかを確認します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack stack resource list overcloud --filter status=FAILED
このコマンドにより、問題のあるリソースの全リストが表示されます。
問題のあるリソースを表示します。
(undercloud) $ openstack stack resource show overcloud [FAILED RESOURCE]
resource_status_reason
のフィールドの情報で診断に役立つ可能性のあるものを確認します。
nova
コマンドを使用して、オーバークラウドノードの IP アドレスを表示します。
(undercloud) $ openstack server list
デプロイされたノードの 1 つに heat-admin
ユーザーとしてログインします。たとえば、スタックのリソース一覧から、コントローラーノード上にエラーが発生していることが判明した場合には、コントローラーノードにログインします。heat-admin
ユーザーには、sudo アクセスが設定されています。
(undercloud) $ ssh heat-admin@192.168.24.14
os-collect-config
ログを確認して、考えられる失敗の原因をチェックします。
[heat-admin@overcloud-controller-0 ~]$ sudo journalctl -u os-collect-config
場合によっては、Nova によるノードへのデプロイメントが完全に失敗する可能性があります。このような場合にはオーバークラウドのロール種別の 1 つの OS::Heat::ResourceGroup
が失敗していることが示されるため、nova
を使用して問題を確認します。
(undercloud) $ openstack server list (undercloud) $ openstack server show [SERVER ID]
最もよく表示されるエラーは、No valid host was found
のエラーメッセージです。このエラーのトラブルシューティングについては、「"No Valid Host Found" エラーのトラブルシューティング」を参照してください。その他の場合は、以下のログファイルを参照してトラブルシューティングを実施してください。
-
/var/log/nova/*
-
/var/log/heat/*
-
/var/log/ironic/*
コントローラーノードのデプロイ後のプロセスは、5 つの主なステップで構成されます。以下のステップが含まれます。
表12.1 コントローラーノードの設定ステップ
手順 |
説明 |
|
Pacemaker、RabbitMQ、Memcached、Redis、および Galera を含むロードバランシング用のソフトウェアの初期設定 |
|
Pacemaker の設定、HAProxy、MongoDB、Galera、Ceph Monitor、OpenStack Platform の各種サービス用のデータベースの初期化を含む、クラスターの初期設定 |
|
OpenStack Object Storage ( |
|
サービス起動順序やサービス起動パラメーターを決定するための制約事項を含む、Pacemaker でのサービスの起動設定値の設定 |
|
OpenStack Identity ( |
12.5. プロビジョニングネットワークでの IP アドレスの競合に対するトラブルシューティング
宛先のホストに、すでに使用中の IP アドレスが割り当てられている場合には、検出およびデプロイメントのタスクは失敗します。この問題を回避するには、プロビジョニングネットワークのポートスキャンを実行して、検出の IP アドレス範囲とホストの IP アドレス範囲が解放されているかどうかを確認することができます。
アンダークラウドホストで以下のステップを実行します。
nmap
をインストールします。
$ sudo yum install nmap
nmap
を使用して、アクティブなアドレスの IP アドレス範囲をスキャンします。この例では、192.168.24.0/24 の範囲をスキャンします。この値は、プロビジョニングネットワークの IP サブネットに置き換えてください (CIDR 表記のビットマスク)。
$ sudo nmap -sn 192.168.24.0/24
nmap
スキャンの出力を確認します。
たとえば、アンダークラウドおよびサブネット上に存在するその他のホストの IP アドレスを確認する必要があります。アクティブな IP アドレスが undercloud.conf の IP アドレス範囲と競合している場合には、オーバークラウドノードのイントロスペクションまたはデプロイを実行する前に、IP アドレスの範囲を変更するか、IP アドレスを解放するかのいずれかを行う必要があります。
$ sudo nmap -sn 192.168.24.0/24 Starting Nmap 6.40 ( http://nmap.org ) at 2015-10-02 15:14 EDT Nmap scan report for 192.168.24.1 Host is up (0.00057s latency). Nmap scan report for 192.168.24.2 Host is up (0.00048s latency). Nmap scan report for 192.168.24.3 Host is up (0.00045s latency). Nmap scan report for 192.168.24.5 Host is up (0.00040s latency). Nmap scan report for 192.168.24.9 Host is up (0.00019s latency). Nmap done: 256 IP addresses (5 hosts up) scanned in 2.45 seconds
12.6. "No Valid Host Found" エラーのトラブルシューティング
/var/log/nova/nova-conductor.log
に、以下のエラーが含まれる場合があります。
NoValidHost: No valid host was found. There are not enough hosts available.
これは、Nova Scheduler が新規インスタンスを起動するのに適したベアメタルノードを検出できなかったことを意味し、そうなると通常は、Nova が検出を想定しているリソースと、Ironic が Nova に通知するリソースが一致しなくなります。その場合には、以下の点をチェックしてください。
イントロスペクションが正常に完了することを確認してください。または、各ノードに必要な Ironic ノードのプロパティーが含まれていることをチェックしてください。各ノードに以下のコマンドを実行します。
$ source ~/stackrc (undercloud) $ openstack baremetal node show [NODE UUID]
properties
JSON フィールドのcpus
、cpu_arch
、memory_mb
、local_gb
キーに有効な値が指定されていることを確認してください。使用する Nova フレーバーが、必要なノード数において、上記の Ironic ノードプロパティーを超えていないかどうかを確認します。
(undercloud) $ openstack flavor show [FLAVOR NAME]
-
openstack baremetal node list
の出力で、available
の状態のノードの数が十分かどうかを確認します。ノードの状態がmanageable
の場合は通常、イントロスペクションに失敗しています。 また、ノードがメンテナンスモードではないことを確認します。
openstack baremetal node list
を使用してチェックしてください。通常、自動でメンテナンスモードに切り替わるノードは、電源の認証情報が間違っています。認証情報を確認して、メンテナンスモードをオフにします。(undercloud) $ openstack baremetal node maintenance unset [NODE UUID]
-
Automated Health Check (AHC) ツールを使用して、自動でノードのタグ付けを行う場合には、各フレーバー/フレーバーに対応するノードが十分に存在することを確認します。
properties
フィールドのcapabilities
キーにopenstack baremetal node show
がないか確認します。たとえば、コンピュートロールのタグを付けられたノードには、profile:compute
が含まれているはずです。 イントロスペクションの後に Ironic から Nova にノードの情報が反映されるには若干時間がかかります。これは通常、director のツールが原因です。ただし、一部のステップを手動で実行した場合には、短時間ですが、Nova でノードが利用できなくなる場合があります。以下のコマンドを使用して、システム内の合計リソースをチェックします。
(undercloud) $ openstack hypervisor stats show
12.7. オーバークラウド作成後のトラブルシューティング
オーバークラウドを作成した後には、将来そのオーバークラウドで特定の操作を行うようにすることができます。たとえば、利用可能なノードをスケーリングしたり、障害の発生したノードを置き換えたりすることができます。このような操作を行うと、特定の問題が発生する場合があります。本項には、オーバークラウド作成後の操作が失敗した場合の診断とトラブルシューティングに関するアドバイスを記載します。
12.7.1. オーバークラウドスタックの変更
director を使用して overcloud
スタックを変更する際に問題が発生する場合があります。スタックの変更例には、以下のような操作が含まれます。
- ノードのスケーリング
- ノードの削除
- ノードの置き換え
スタックの変更は、スタックの作成と似ており、director は要求されたノード数が利用可能かどうかをチェックして追加のノードをプロビジョニングしたり、既存のノードを削除したりしてから、Puppet の設定を適用します。overcloud
スタックを変更する場合に従うべきガイドラインを以下に記載します。
第一段階として、「デプロイメント後の設定」に記載したアドバイスに従います。この手順と同じステップを、overcloud
Heat スタック更新の問題の診断に役立てることができます。特に、以下のコマンドを使用して問題のあるリソースを特定します。
openstack stack list --show-nested
-
全スタックを一覧表示します。
--show-nested
はすべての子スタックとそれぞれの親スタックを表示します。このコマンドは、スタックでエラーが発生した時点を特定するのに役立ちます。 openstack stack resource list overcloud
-
overcloud
スタック内の全リソースとそれらの状態を一覧表示します。このコマンドは、スタック内でどのリソースが原因でエラーが発生しているかを特定するのに役立ちます。このリソースのエラーの原因となっている Heat テンプレートコレクションと Puppet モジュール内のパラメーターと設定を特定することができます。 openstack stack event list overcloud
-
overcloud
スタックに関連するすべてのイベントを時系列で一覧表示します。これには、スタック内の全リソースのイベント開始/完了時間とエラーが含まれます。この情報は、リソースの障害点を特定するのに役立ちます。
以下のセクションには、特定の種別のノード上の問題診断に関するアドバイスを記載します。
12.7.2. コントローラーサービスのエラー
オーバークラウドコントローラーノードには、Red Hat OpenStack Platform のサービスの大部分が含まれます。同様に、高可用性のクラスターで複数のコントローラーノードを使用することができます。ノード上の特定のサービスに障害が発生すると、高可用性のクラスターは一定レベルのフェイルオーバーを提供します。ただし、オーバークラウドをフル稼働させるには、障害のあるサービスの診断が必要となります。
コントローラーノードは、Pacemaker を使用して高可用性クラスター内のリソースとサービスを管理します。Pacemaker Configuration System (pcs
) コマンドは、Pacemaker クラスターを管理するツールです。クラスター内のコントローラーノードでこのコマンドを実行して、設定およびモニタリングの機能を実行します。高可用性クラスター上のオーバークラウドサービスのトラブルシューティングに役立つコマンドを以下にいくつか記載します。
pcs status
- 有効なリソース、エラーが発生したリソース、オンラインのノードなど、クラスター全体のステータス概要を提供します。
pcs resource show
- リソースの一覧をそれぞれのノードで表示します。
pcs resource disable [resource]
- 特定のリソースを停止します。
pcs resource enable [resource]
- 特定のリソースを起動します。
pcs cluster standby [node]
- ノードをスタンバイモードに切り替えます。そのノードはクラスターで利用できなくなります。このコマンドは、クラスターに影響を及ぼさずに特定のノードメンテナンスを実行するのに役立ちます。
pcs cluster unstandby [node]
- ノードをスタンバイモードから解除します。ノードはクラスター内で再度利用可能となります。
これらの Pacemaker コマンドを使用して障害のあるコンポーネントおよびノードを特定します。コンポーネントを特定した後には、/var/log/
でそれぞれのコンポーネントのログファイルを確認します。
12.7.3. コンテナー化されたサービスのエラー
オーバークラウドのデプロイメント中またはデプロイメント後にコンテナー化されたサービスでエラーが発生した場合には、 以下の推奨事項に従って、エラーの根本的な原因を特定してください。
これらのコマンドを実行する前には、オーバークラウドノードにログイン済みであることを確認し、これらのコマンドをアンダークラウドで実行しないようにしてください。
コンテナーログの確認
各コンテナーは、主要プロセスからの標準出力を保持します。この出力はログとして機能し、コンテナー実行時に実際に何が発生したのかを特定するのに役立ちます。たとえば、keystone
コンテナーのログを確認するには、以下のコマンドを使用します。
$ sudo docker logs keystone
大半の場合は、このログにコンテナーのエラーの原因が記載されています。
コンテナーの検査
状況によっては、コンテナーに関する情報を検証する必要がある場合があります。たとえば、以下のコマンドを使用して keystone
コンテナーのデータを確認します。
$ sudo docker inspect keystone
これにより、ローレベルの設定データが含まれた JSON オブジェクトが提供されます。 その出力を jq
コマンドにパイプして、特定のデータを解析することが可能です。たとえば、keystone
コンテナーのマウントを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker inspect keystone | jq .[0].Mounts
--format
オプションを使用して、データを単一行に解析することができます。これは、コンテナーデータのセットに対してコマンドを実行する場合に役立ちます。たとえば、 keystone
コンテナーを実行するのに使用するオプションを再生成するには、以下のように inspect
コマンドに --format
オプションを指定して実行します。
$ sudo docker inspect --format='{{range .Config.Env}} -e "{{.}}" {{end}} {{range .Mounts}} -v {{.Source}}:{{.Destination}}{{if .Mode}}:{{.Mode}}{{end}}{{end}} -ti {{.Config.Image}}' keystone
--format
オプションは、Go 構文を使用してクエリーを作成します。
これらのオプションを docker run
コマンドとともに使用して、トラブルシューティング目的のコンテナーを再度作成します。
$ OPTIONS=$( sudo docker inspect --format='{{range .Config.Env}} -e "{{.}}" {{end}} {{range .Mounts}} -v {{.Source}}:{{.Destination}}{{if .Mode}}:{{.Mode}}{{end}}{{end}} -ti {{.Config.Image}}' keystone ) $ sudo docker run --rm $OPTIONS /bin/bash
コンテナー内でのコマンドの実行
状況によっては、特定の Bash コマンドでコンテナー内の情報を取得する必要がある場合があります。このような場合には、以下の docker
コマンドを使用して、稼働中のコンテナー内でコマンドを実行します。たとえば、keystone
コンテナーで次のコマンドを実行します。
$ sudo docker exec -ti keystone <COMMAND>
-ti
オプションを指定すると、コマンドは対話式の擬似ターミナルで実行されます。
<COMMAND>
は必要なコマンドに置き換えます。たとえば、各コンテナーには、サービスの接続を確認するためのヘルスチェックスクリプトがあります。keystone
にヘルスチェックスクリプトを実行するには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker exec -ti keystone /openstack/healthcheck
コンテナーのシェルにアクセスするには、 /bin/bash
をコマンドとして使用する docker exec
を実行します。
$ sudo docker exec -ti keystone /bin/bash
コンテナーのエクスポート
コンテナーが失敗した場合には、ファイルの詳細を調べる必要があります。この場合は、コンテナーの全ファイルシステムを tar
アーカイブとしてエクスポートすることができます。たとえば、keystone
コンテナーのファイルシステムをエクスポートするには、以下のコマンドを実行します。
$ sudo docker export keystone -o keystone.tar
このコマンドにより keystone.tar
アーカイブが作成されます。これを抽出して、調べることができます。
12.7.4. Compute サービスのエラー
Compute ノードは、Compute サービスを使用して、ハイパーバイザーベースの操作を実行します。これは、このサービスを中心にコンピュートノードのメインの診断が行われていることを意味します。以下に例を示します。
コンテナーのステータスを表示します。
$ sudo docker ps -f name=nova_compute
-
コンピュートノードの主なログファイルは
/var/log/containers/nova/nova-compute.log
です。コンピュートノードの通信で問題が発生した場合に、通常はこのログが診断を開始するのに適した場所です。 - コンピュートノードでメンテナンスを実行する場合には、既存のインスタンスをホストから稼働中のコンピュートノードに移行し、ノードを無効にします。ノードの移行についての詳しい情報は、「オーバークラウドのコンピュートノードからの仮想マシンの移行」を参照してください。
12.7.5. Ceph Storage サービスのエラー
Red Hat Ceph Storage クラスターで発生した問題については、『Red Hat Ceph Storage Configuration Guide』の"「Logging Configuration Reference」"を参照してください。この項には、全 Ceph Storage サービスのログ診断についての情報が記載されています。
12.8. アンダークラウドの調整
このセクションでのアドバイスは、アンダークラウドのパフォーマンスを向上に役立たせることが目的です。必要に応じて、推奨事項を実行してください。
-
Identity Service (keystone) は、他の OpenStack サービスに対するアクセス制御にトークンベースのシステムを使用します。ある程度の期間が過ぎた後には、データベースに未使用のトークンが多数蓄積されます。デフォルトの cronjob は毎日トークンをフラッシュします。環境をモニタリングして、トークンのフラッシュ間隔を調節することを推奨します。アンダークラウドの場合は、
crontab -u keystone -e
のコマンドで間隔を調整することができます。この変更は一時的で、openstack undercloud update
を実行すると、この cronjob の設定はデフォルトに戻ってしまう点に注意してください。 Heat は、
openstack overcloud deploy
を実行するたびにデータベースのraw_template
テーブルにある全一時ファイルのコピーを保存します。raw_template
テーブルは、過去のテンプレートをすべて保持し、サイズが増加します。raw_templates
テーブルにある未使用のテンプレートを削除するには、以下のように、日次の cron ジョブを作成して、未使用のまま 1 日以上データベースに存在するテンプレートを消去してください。0 04 * * * /bin/heat-manage purge_deleted -g days 1
openstack-heat-engine
およびopenstack-heat-api
サービスは、一度に過剰なリソースを消費する可能性があります。そのような場合は/etc/heat/heat.conf
でmax_resources_per_stack=-1
を設定して、Heat サービスを再起動します。$ sudo systemctl restart openstack-heat-engine openstack-heat-api
directorには、同時にノードをプロビジョニングするリソースが十分にない場合があります。同時に提供できるノード数はデフォルトで 10 個となっています。同時にプロビジョニングするノード数を減らすには、
/etc/nova/nova.conf
のmax_concurrent_builds
パラメーターを 10 未満に設定して Nova サービスを再起動します。$ sudo systemctl restart openstack-nova-api openstack-nova-scheduler
/etc/my.cnf.d/server.cnf
ファイルを編集します。調整が推奨される値は、以下のとおりです。- max_connections
- データベースに同時接続できる数。推奨の値は 4096 です。
- innodb_additional_mem_pool_size
- データベースがデータのディクショナリーの情報や他の内部データ構造を保存するのに使用するメモリープールサイズ (バイト単位)。デフォルトは通常 8 M ですが、アンダークラウドの理想の値は 20 M です。
- innodb_buffer_pool_size
- データベースがテーブルやインデックスデータをキャッシュするメモリー領域つまり、バッファープールのサイズ (バイト単位)。通常デフォルトは 128 M で、アンダークラウドの理想の値は 1000 M です。
- innodb_flush_log_at_trx_commit
- コミット操作の厳密な ACID 準拠と、コミット関連の I/O 操作を再編成してバッチで実行することによって実現可能なパフォーマンス向上の間のバランスを制御します。1 に設定します。
- innodb_lock_wait_timeout
- データベースのトランザクションが、行のロック待ちを中断するまでの時間 (秒単位)。
- innodb_max_purge_lag
- この変数は、解析操作が遅れている場合に INSERT、UPDATE、DELETE 操作を遅延させる方法を制御します。10000 に設定します。
- innodb_thread_concurrency
- 同時に実行するオペレーティングシステムのスレッド数の上限。理想的には、各 CPU およびディスクリソースに対して少なくとも 2 つのスレッドを提供します。たとえば、クワッドコア CPU と単一のディスクを使用する場合は、スレッドを 10 個使用します。
オーバークラウドを作成する際には、Heat に十分なワーカーが配置されているようにします。通常、アンダークラウドに CPU がいくつあるかにより左右されます。ワーカーの数を手動で設定するには、
/etc/heat/heat.conf
ファイルを編集してnum_engine_workers
パラメーターを必要なワーカー数 (理想は 4) に設定し、Heat エンジンを再起動します。$ sudo systemctl restart openstack-heat-engine
12.9. SOS レポートの作成
Red Hat に連絡して OpenStack Platform に関するサポートを受ける必要がある場合は、SOS レポート
を生成する必要がある場合があります。SOS レポート
の作成方法についての詳しい説明は、以下のナレッジベースの記事を参照してください。
12.10. アンダークラウドとオーバークラウドの重要なログ
以下のログを使用して、トラブルシューティングの際にアンダークラウドとオーバークラウドの情報を割り出します。
表12.2 アンダークラウドの重要なログ
情報 | ログの場所 |
---|---|
OpenStack Compute のログ |
|
OpenStack Compute API の対話 |
|
OpenStack Compute コンダクターのログ |
|
OpenStack Orchestration ログ |
|
OpenStack Orchestration API の対話 |
|
OpenStack Orchestration CloudFormations ログ |
|
OpenStack Bare Metal コンダクターのログ |
|
OpenStack Bare Metal API の対話 |
|
イントロスペクション |
|
OpenStack Workflow Engine ログ |
|
OpenStack Workflow Executor のログ |
|
OpenStack Workflow API の対話 |
|
表12.3 オーバークラウドの重要なログ
情報 | ログの場所 |
---|---|
cloud-init ログ |
|
オーバークラウドの設定 (最後に実行した Puppet のサマリー) |
|
オーバークラウドの設定 (最後に実行した Puppet からのレポート) |
|
オーバークラウドの設定 (全 Puppet レポート) |
|
オーバークラウドの設定 (実行した Puppet 毎の標準出力) |
|
オーバークラウドの設定 (実行した Puppet 毎の標準エラー出力) |
|
高可用性ログ |
|
付録A SSL/TLS 証明書の設定
アンダークラウドがパブリックエンドポイントの通信に SSL/TLS を使用するように設定できます。ただし、独自の認証局で発行した SSL 証明書を使用する場合には、その証明書には以下の項に記載する設定のステップが必要です。
オーバークラウドの SSL/TLS 証明書作成については、『オーバークラウドの高度なカスタマイズ』ガイドの「オーバークラウドのパブリックエンドポイントでの SSL/TLS の有効化」を参照してください。
A.1. 署名ホストの初期化
署名ホストとは、新規証明書を生成し、認証局を使用して署名するホストです。選択した署名ホスト上で SSL 証明書を作成したことがない場合には、ホストを初期化して新規証明書に署名できるようにする必要がある可能性があります。
/etc/pki/CA/index.txt
ファイルは、すべての署名済み証明書の記録を保管します。このファイルが存在しているかどうかを確認してください。存在していない場合には、空のファイルを作成します。
$ sudo touch /etc/pki/CA/index.txt
/etc/pki/CA/serial
ファイルは、次に署名する証明書に使用する次のシリアル番号を特定します。このファイルが存在するかどうかを確認し、存在しない場合には、新規ファイルを作成して新しい開始値を指定します。
$ sudo echo '1000' | sudo tee /etc/pki/CA/serial
A.2. 認証局の作成
通常、SSL/TLS 証明書の署名には、外部の認証局を使用します。場合によっては、独自の認証局を使用する場合もあります。たとえば、内部のみの認証局を使用するように設定する場合などです。
たとえば、キーと証明書のペアを生成して、認証局として機能するようにします。
$ openssl genrsa -out ca.key.pem 4096 $ openssl req -key ca.key.pem -new -x509 -days 7300 -extensions v3_ca -out ca.crt.pem
openssl req
コマンドは、認証局に関する特定の情報を要求します。それらの情報を指定してください。
これで、ca.crt.pem
という名前の認証局ファイルが作成されます。
A.3. クライアントへの認証局の追加
SSL/TLS を使用して通信することを目的としている外部のクライアントの場合は、Red Hat OpenStack Platform 環境にアクセスする必要のある各クライアントに認証局ファイルをコピーします。クライアントへのコピーが完了したら、そのクライアントで以下のコマンドを実行して、認証局のトラストバンドルに追加します。
$ sudo cp ca.crt.pem /etc/pki/ca-trust/source/anchors/ $ sudo update-ca-trust extract
A.4. SSL/TLS キーの作成
以下のコマンドを実行して、SSL/TLS キー (server.key.pem
) を生成します。このキーは、さまざまな段階で、アンダークラウドとオーバークラウドの証明書を生成するのに使用します。
$ openssl genrsa -out server.key.pem 2048
A.5. SSL/TLS 証明書署名要求の作成
次の手順では、アンダークラウドおよびオーバークラウドのいずれかの証明書署名要求を作成します。
カスタマイズするデフォルトの OpenSSL 設定ファイルをコピーします。
$ cp /etc/pki/tls/openssl.cnf .
カスタムの openssl.cnf
ファイルを編集して、director に使用する SSL パラメーターを設定します。変更するパラメーターの種別には以下のような例が含まれます。
[req] distinguished_name = req_distinguished_name req_extensions = v3_req [req_distinguished_name] countryName = Country Name (2 letter code) countryName_default = AU stateOrProvinceName = State or Province Name (full name) stateOrProvinceName_default = Queensland localityName = Locality Name (eg, city) localityName_default = Brisbane organizationalUnitName = Organizational Unit Name (eg, section) organizationalUnitName_default = Red Hat commonName = Common Name commonName_default = 192.168.0.1 commonName_max = 64 [ v3_req ] # Extensions to add to a certificate request basicConstraints = CA:FALSE keyUsage = nonRepudiation, digitalSignature, keyEncipherment subjectAltName = @alt_names [alt_names] IP.1 = 192.168.0.1 DNS.1 = instack.localdomain DNS.2 = vip.localdomain DNS.3 = 192.168.0.1
commonName_default
は以下のいずれか 1 つに設定します。
-
IP アドレスを使用して SSL/TLS 経由でアクセスする場合には、
undercloud.conf
でundercloud_public_vip
パラメーターを使用します。 - 完全修飾ドメイン名を使用して SSL/TLS でアクセスする場合には、代わりにドメイン名を使用します。
alt_names
セクションを編集して、以下のエントリーを追加します。
-
IP
: SSL 経由で director にアクセスするためのクライアントの IP アドレス一覧 -
DNS
: SSL 経由で director にアクセスするためのクライアントのドメイン名一覧。alt_names
セクションの最後に DNS エントリーとしてパブリック API の IP アドレスも追加します。
openssl.cnf
に関する詳しい情報については、man openssl.cnf
を実行します。
次のコマンドを実行し、手順 1 で作成したキーストアより公開鍵を使用して証明書署名要求を生成します (server.csr.pem
)。
$ openssl req -config openssl.cnf -key server.key.pem -new -out server.csr.pem
「SSL/TLS キーの作成」で作成した SSL/TLS キーを -key
オプションで必ず指定してください。
次の項では、この server.csr.pem
ファイルを使用して SSL/TLS 証明書を作成します。
A.6. SSL/TLS 証明書の作成
以下のコマンドで、アンダークラウドまたはオーバークラウドの証明書を作成します。
$ sudo openssl ca -config openssl.cnf -extensions v3_req -days 3650 -in server.csr.pem -out server.crt.pem -cert ca.crt.pem -keyfile ca.key.pem
上記のコマンドでは、以下のオプションを使用しています。
-
v3 拡張機能を指定する設定ファイル。この値は、「
-config
」オプションとして追加します。 -
認証局を介して証明書を生成し、署名するために、「SSL/TLS 証明書署名要求の作成」で設定した証明書署名要求。この値は、「
-in
」オプションで設定します。 -
証明書への署名を行う、「認証局の作成」で作成した認証局。この値は
-cert
オプションとして追加します。 -
「認証局の作成」で作成した認証局の秘密鍵。この値は
-keyfile
オプションとして追加します。
このコマンドを実行すると、server.crt.pem
という名前の証明書が作成されます。この証明書は、「SSL/TLS キーの作成」で作成した SSL/TLS キーとともに使用して SSL/TLS を有効にします。
A.7. アンダークラウドで証明書を使用する場合
以下のコマンドを実行して、証明書とキーを統合します。
$ cat server.crt.pem server.key.pem > undercloud.pem
このコマンドにより、undercloud.pem
が作成されます。undercloud.conf
ファイルの undercloud_service_certificate
オプションにこのファイルの場所を指定します。このファイルには、HAProxy ツールが読み取ることができるように、特別な SELinux コンテキストも必要です。以下の例を目安にしてください。
$ sudo mkdir /etc/pki/instack-certs $ sudo cp ~/undercloud.pem /etc/pki/instack-certs/. $ sudo semanage fcontext -a -t etc_t "/etc/pki/instack-certs(/.*)?" $ sudo restorecon -R /etc/pki/instack-certs
undercloud.conf
ファイルの undercloud_service_certificate
オプションに undercloud.pem
の場所を追記します。以下に例を示します。
undercloud_service_certificate = /etc/pki/instack-certs/undercloud.pem
また、「認証局の作成」で作成した認証局をアンダークラウドの信頼済み認証局の一覧に認証局を追加して、アンダークラウド内の異なるサービスが認証局にアクセスできるようにします。
$ sudo cp ca.crt.pem /etc/pki/ca-trust/source/anchors/ $ sudo update-ca-trust extract
「director の設定」に記載の手順に従ってアンダークラウドのインストールを続行します。
付録B 電源管理ドライバー
IPMI は、director が電源管理制御に使用する主要な手法ですが、director は他の電源管理タイプもサポートします。この付録では、サポートされる電源管理機能の一覧を提供します。「オーバークラウドへのノードの登録」には、以下の電源管理設定を使用します。
B.1. Dell Remote Access Controller (DRAC)
DRAC は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。
- pm_type
-
このオプションは
pxe_drac
に設定します。 - pm_user; pm_password
- DRAC のユーザー名およびパスワード
- pm_addr
DRAC ホストの IP アドレス
-
このドライバーを有効化するには、
undercloud.conf
ファイルのenabled_drivers
オプションにpxe_drac
を追加してから、openstack undercloud install
コマンドを再実行します。
-
このドライバーを有効化するには、
B.2. Integrated Lights-Out (iLO)
Hewlett-Packard の iLO は、電源管理やサーバー監視などの帯域外 (OOB) リモート管理機能を提供するインターフェースです。
- pm_type
-
このオプションは
pxe_ilo
に設定します。 - pm_user; pm_password
- iLO のユーザー名およびパスワード
- pm_addr
iLO インターフェースの IP アドレス
-
このドライバーを有効化するには、
undercloud.conf
ファイルのenabled_drivers
オプションにpxe_ilo
を追加してから、openstack undercloud install
コマンドを再実行します。 また director では、iLO 向けに追加のユーティリティーセットが必要です。
python-proliantutils
パッケージをインストールしてopenstack-ironic-conductor
サービスを再起動します。$ sudo yum install python-proliantutils $ sudo systemctl restart openstack-ironic-conductor.service
- HP ノードは、正常にイントロスペクションするには 2015 年のファームウェアバージョンが必要です。ファームウェアバージョン 1.85 (2015 年 5 月 13 日) を使用したノードで、director は正常にテストされています。
- 共有 iLO ポートの使用はサポートされません。
-
このドライバーを有効化するには、
B.3. Cisco Unified Computing System (UCS)
Cisco の UCS は、コンピュート、ネットワーク、ストレージのアクセス、仮想化リソースを統合するデータセンタープラットフォームです。このドライバーは、UCS に接続されたベアメタルシステムの電源管理を重視しています。
- pm_type
-
このオプションは
pxe_ucs
に設定します。 - pm_user; pm_password
- UCS のユーザー名およびパスワード
- pm_addr
- UCS インターフェースの IP アドレス
- pm_service_profile
使用する UCS サービスプロファイル。通常
org-root/ls-[service_profile_name]
の形式を取ります。たとえば、以下のとおりです。"pm_service_profile": "org-root/ls-Nova-1"
-
このドライバーを有効化するには、
undercloud.conf
ファイルのenabled_drivers
オプションにpxe_ucs
を追加してから、openstack undercloud install
コマンドを再実行します。 また director では、iLO 向けに追加のユーティリティーセットが必要です。
python-UcsSdk
パッケージをインストールしてopenstack-ironic-conductor
サービスを再起動します。$ sudo yum install python-UcsSdk $ sudo systemctl restart openstack-ironic-conductor.service
-
このドライバーを有効化するには、
B.4. Fujitsu Integrated Remote Management Controller (iRMC)
Fujitsu の iRMC は、LAN 接続と拡張された機能を統合した Baseboard Management Controller (BMC) です。このドライバーは、iRMC に接続されたベアメタルシステムの電源管理にフォーカスしています。
iRMC S4 以降のバージョンが必要です。
- pm_type
-
このオプションを
pxe_irmc
に設定します。 - pm_user; pm_password
- iRMC インターフェースのユーザー名とパスワード
- pm_addr
- iRMC インターフェースの IP アドレス
- pm_port (オプション)
- iRMC の操作に使用するポート。デフォルトは 443 です。
- pm_auth_method (オプション)
-
iRMC 操作の認証方法。
basic
またはdigest
を使用します。デフォルトはbasic
です。 - pm_client_timeout (オプション)
- iRMC 操作のタイムアウト (秒単位)。デフォルトは 60 秒です。
- pm_sensor_method (オプション)
センサーデータの取得方法。
ipmitool
またはscci
です。デフォルトはipmitool
です。-
このドライバーを有効化するには、
undercloud.conf
ファイルのenabled_drivers
オプションにpxe_irmc
を追加してから、openstack undercloud install
コマンドを再実行します。 センサーの方法として SCCI を有効にした場合には、director には、追加のユーティリティーセットも必要です。
python-scciclient
パッケージをインストールして、openstack-ironic-conductor
サービスを再起動します。$ yum install python-scciclient $ sudo systemctl restart openstack-ironic-conductor.service
-
このドライバーを有効化するには、
B.5. Virtual Baseboard Management Controller (VBMC)
director は仮想マシンを KVM ホスト上のノードとして使用することができます。エミュレーションされた IPMI デバイスを使用して電源管理を制御します。これにより、「オーバークラウドへのノードの登録」からの標準の IPMI パラメーターを使用することができますが、仮想ノードに対して使用することになります。
このオプションでは、ベアメタルノードの代わりに仮想マシンを使用するので、テストおよび評価の目的でのみ利用することができます。Red Hat OpenStack Platform のエンタープライズ環境には推奨しません。
KVM ホストの設定
KVM ホスト上で、OpenStack Platform リポジトリーを有効化して python-virtualbmc
パッケージをインストールします。
$ sudo subscription-manager repos --enable=rhel-7-server-openstack-12-rpms $ sudo yum install -y python-virtualbmc
vbmc
コマンドを使用して、各仮想マシン用に仮想 Baseboard Management Controller (BMC) を作成します。たとえば、Node01
および Node02
という名前の仮想マシンに BMC を作成する場合は、以下のコマンドを実行します。
$ vbmc add Node01 --port 6230 --username admin --password p455w0rd! $ vbmc add Node02 --port 6231 --username admin --password p455w0rd!
これにより、各 BMC にアクセスするポートが定義され、各 BMC の認証情報が設定されます。
仮想マシンごとに異なるポートを使用してください。1025 未満のポート番号には、システムの root 権限が必要です。
以下のコマンドで各 BMC を起動します。
$ vbmc start Node01 $ vbmc start Node02
KVM ホストの再起動後には、このステップを繰り返す必要があります。
ノードの登録
ノードの登録ファイル (/home/stack/instackenv.json
) で以下のパラメーターを使用します。
- pm_type
-
このオプションを
pxe_ipmitool
に設定します。 - pm_user; pm_password
- ノードの仮想 BMC デバイスの IPMI ユーザー名とパスワード
- pm_addr
- ノードが含まれている KVM ホストの IP アドレス
- pm_port
- KVM ホスト上の特定のノードにアクセスするポート
- mac
- ノード上のネットワークインターフェースの MAC アドレス一覧。各システムのプロビジョニング NIC の MAC アドレスのみを使用します。
例:
{ "nodes": [ { "pm_type": "pxe_ipmitool", "mac": [ "aa:aa:aa:aa:aa:aa" ], "pm_user": "admin", "pm_password": "p455w0rd!", "pm_addr": "192.168.0.1", "pm_port": "6230", "name": "Node01" }, { "pm_type": "pxe_ipmitool", "mac": [ "bb:bb:bb:bb:bb:bb" ], "pm_user": "admin", "pm_password": "p455w0rd!", "pm_addr": "192.168.0.1", "pm_port": "6231", "name": "Node02" } ] }
既存のノードの移行
既存のノードは、非推奨の pxe_ssh
を使用する設定から新しい仮想 BMC の方法を使用するように移行することができます。以下のコマンドは、ノードが pxe_ipmitool
ドライバーを使用するようにし、そのパラメーターを以下のように設定します。
openstack baremetal node set Node01 \ --driver pxe_ipmitool \ --driver-info ipmi_address=192.168.0.1 \ --driver-info ipmi_port=6230 \ --driver-info ipmi_username="admin" \ --driver-info ipmi_password="p455w0rd!"
B.6. フェイク PXE ドライバー
このドライバーは、電源管理なしにベアメタルデバイスを使用する方法を提供します。これは、director が登録されたベアメタルデバイスを制御しないので、イントロスペクションとデプロイの特定の時点に手動で電源をコントロールする必要があることを意味します。
このオプションは、テストおよび評価の目的でのみ利用いただけます。Red Hat OpenStack Platform のエンタープライズ環境には推奨していません。
- pm_type
このオプションは
fake_pxe
に設定します。- このドライバーは、電源管理を制御しないので、認証情報は使用しません。
-
このドライバーを有効化するには、
undercloud.conf
ファイルのenabled_drivers
オプションにfake_pxe
を追加してから、openstack undercloud install
コマンドを再実行します。 -
ノードのイントロスペクションを実行する際には、
openstack overcloud node introspect
コマンドを実行した後にノードの電源を手動でオフにします。 -
オーバークラウドのデプロイ実行時には、
ironic node-list
コマンドでノードのステータスを確認します。ノードのステータスがdeploying
からdeploy wait-callback
に変わるまで待ってから、手動でノードの電源をオンにします。 -
オーバークラウドのプロビジョニングプロセスが完了したら、ノードを再起動します。プロビジョニングが完了したかどうかをチェックするには、
ironic node-list
コマンドでノードのステータスをチェックし、active
に変わるのを待ってから、すべてのオーバークラウドノードを手動で再起動します。
付録C 完全なディスクイメージ
メインのオーバークラウドイメージは、フラットパーティションイメージです。これは、パーティション情報またはブートローダーがイメージ自体に含まれていないことを意味します。director は、起動時に別のカーネルと ramdisk を使用し、オーバークラウドイメージをディスクに書き込む際には基本的なパーティションレイアウトを作成しますが、パーティションレイアウト、ブートローダー、および強化されたセキュリティー機能が含まれる完全なディスクイメージを作成することが可能です。
以下のプロセスでは、director のイメージ構築機能を使用します。Red Hat では、本項に記載の指針に従ったイメージ構築のみをサポートしています。これらとは異なる仕様でのカスタムのイメージ構築はサポートされていません。
セキュリティーが強化されたイメージには、セキュリティーが重要な機能となるRed Hat OpenStack Platform のデプロイメントに必要な追加のセキュリティー対策が含まれます。イメージをセキュアにするためには、以下のような推奨事項があります。
-
/tmp
ディレクトリーは、別のボリュームまたはパーティションにマウントされ、rw
、nosuid
、nodev
、noexec
、relatime
のフラグが付きます。 -
/var
、/var/log
、/var/log/audit
のディレクトリーは、別のボリュームまたはパーティションにマウントされ、rw
およびrelatime
のフラグが付きます。 -
/home
ディレクトリーは、別のパーティションまたはボリュームにマウントされ、rw
、nodev
、relatime
のフラグが付きます。 GRUB_CMDLINE_LINUX
の設定に以下の変更を加えます。-
監査を有効にするには、
audit=1
を追加して、追加のカーネルブートフラグを付けます。 -
nousb
を追加して、ブートローダー設定を使用した USB のカーネルサポートを無効にします。 -
crashkernel=auto
を設定して、セキュアでないブートフラッグを削除します。
-
監査を有効にするには、
-
セキュアでないモジュール (
usb-storage
、cramfs
、freevxfs
、jffs2
、hfs
、hfsplus
、squashfs
、udf
、vfat
) をブラックリストに登録して、読み込まれないようにします。 -
イメージから、セキュアでないパッケージ (
kexec-tools
によりインストールされたkdump
とtelnet
) を削除します。 -
セキュリティーに必要な新しい
screen
パッケージを追加します。
セキュリティー強化されたイメージを構築するには、以下の手順を実行する必要があります。
- ベースの Red Hat Enterprise Linux 7 イメージをダウンロードします。
- 登録固有の環境変数を設定します。
- パーティションスキーマとサイズを変更してイメージをカスタマイズします。
- イメージを作成します。
- そのイメージをデプロイメントにアップロードします。
以下の項では、これらのタスクを実行する手順について詳しく説明します。
C.1. ベースのクラウドイメージのダウンロード
完全なディスクイメージを構築する前に、 ベースとして使用する Red Hat Enterprise Linux の既存のクラウドイメージをダウンロードする必要があります。Red Hat カスタマーポータルにナビゲートして、ダウンロードする KVM ゲストイメージを選択します。たとえば、Red Hat Enterprise Linux 7.4 用の KVM ゲストイメージは以下のページにあります。
C.2. 環境変数の設定
完全なディスクイメージの構築プロセスとして、director にはベースイメージと、新規クラウドイメージのパッケージを取得するための登録情報が必要です。これらは、Linux の環境変数を使用して定義します。
イメージの構築プロセスにより、イメージは一時的に Red Hat サブスクリプションに登録され、システムがイメージの構築プロセスを完了すると登録を解除します。
セキュリティー強化された完全なイメージを構築するには、Linux の環境変数をお使いの環境と要件に応じて設定します。
- DIB_LOCAL_IMAGE
- ベースに使用するローカルイメージを設定します。
- REG_ACTIVATION_KEY
- 登録プロセスの一部で代わりにアクティベーションキーを使用します。
- REG_AUTO_ATTACH
- 最も互換性のあるサブスクリプションを自動的にアタッチするかどうかを定義します。
- REG_BASE_URL
-
パッケージをプルするためのコンテンツ配信サーバーのベース URL。カスタマーポータルサブスクリプション管理のデフォルトのプロセスでは
https://cdn.redhat.com
を使用します。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用している場合は、このパラメーターにお使いの Satellite サーバーのベース URL を使用する必要があります。 - REG_ENVIRONMENT
- 1 つの組織内の 1 つの環境に登録します。
- REG_METHOD
-
登録の方法を設定します。Red Hat カスタマーポータルに登録するには
portal
を使用します。Red Hat Satellite 6 で登録するには、satellite
を使用します。 - REG_ORG
- イメージを登録する組織。
- REG_POOL_ID
- 製品のサブスクリプション情報のプール ID
- REG_PASSWORD
- イメージを登録するユーザーアカウントのパスワードを指定します。
- REG_REPOS
コンマ区切りのリポジトリー名の文字列 (空白なし)。この文字列の各リポジトリーは
subscription-manager
で有効化されます。セキュリティー強化された完全なディスクイメージには以下のリポジトリーを使用します。-
rhel-7-server-rpms
-
rhel-7-server-extras-rpms
-
rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms
-
rhel-7-server-optional-rpms
-
rhel-7-server-openstack-12-rpms
-
- REG_SERVER_URL
-
使用するサブスクリプションサービスのホスト名を指定します。Red Hat カスタマーポータルの場合のデフォルトは
subscription.rhn.redhat.com
です。Red Hat Satellite 6 サーバーを使用する場合は、このパラメーターにお使いの Satellite サーバーのホスト名を使用する必要があります。 - REG_USER
- イメージを登録するアカウントのユーザー名を指定します。
Red Hat カスタマーポータルにローカルの QCOW2 をイメージ一時的に登録するための環境変数のセットをエクスポートする一連のコマンドの例を以下に示します。
$ export DIB_LOCAL_IMAGE=./rhel-server-7.4-x86_64-kvm.qcow2 $ export REG_METHOD=portal $ export REG_USER="[your username]" $ export REG_PASSWORD="[your password]" $ export REG_REPOS="rhel-7-server-rpms \ rhel-7-server-extras-rpms \ rhel-ha-for-rhel-7-server-rpms \ rhel-7-server-optional-rpms \ rhel-7-server-openstack-12-rpms"
C.3. ディスクレイアウトのカスタマイズ
デフォルトでは、セキュリティーが強化されたイメージのサイズは 20G で、事前定義されたパーティショニングサイズを使用します。ただし、オーバークラウドのコンテナーイメージを収容するには、パーティショニングレイアウトを若干変更する必要があります。
パーティション | 以前のサイズ | 新しいサイズ |
---|---|---|
|
6G |
8G |
|
1G |
1G |
|
7G |
10G |
|
5G |
5G |
|
900M |
900M |
|
100M |
100M |
Total |
20G |
25G |
これにより、イメージサイズが 25G に拡張されます。また、必要に応じて、パーティショニングレイアウトとディスクサイズをさらに変更することも可能です。
パーティショニングレイアウトとディスクサイズを変更するには、以下の手順に従ってください。
-
DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG
環境変数を使用してパーティショニングスキーマを変更します。 -
DIB_IMAGE_SIZE
環境変数を更新して、イメージのグローバルサイズを変更します。
C.3.1. パーティショニングスキーマの変更
パーティショニングスキーマを編集して、パーティショニングサイズを変更したり、新規パーティションの作成や既存のパーティションの削除を行うことができます。新規パーティショニングスキーマは以下の環境変数で定義することができます。
$ export DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG='<yaml_schema_with_partitions>'
以下の YAML 構成は、オーバークラウドのコンテナーイメージをプルするのに十分なスペースを提供する、変更後のパーティショニングレイアウトを示しています。
export DIB_BLOCK_DEVICE_CONFIG=''' - local_loop: name: image0 - partitioning: base: image0 label: mbr partitions: - name: root flags: [ boot,primary ] size: 8G mkfs: type: xfs label: "img-rootfs" mount: mount_point: / fstab: options: "rw,relatime" fck-passno: 1 - name: tmp size: 1G mkfs: type: xfs mount: mount_point: /tmp fstab: options: "rw,nosuid,nodev,noexec,relatime" - name: var size: 10G mkfs: type: xfs mount: mount_point: /var fstab: options: "rw,relatime" - name: log size: 5G mkfs: type: xfs mount: mount_point: /var/log fstab: options: "rw,relatime" - name: audit size: 900M mkfs: type: xfs mount: mount_point: /var/log/audit fstab: options: "rw,relatime" - name: home size: 100M mkfs: type: xfs mount: mount_point: /home fstab: options: "rw,nodev,relatime" '''
サンプルの YAML コンテンツをイメージのパーティションスキーマのベースとして使用します。パーティションサイズとレイアウトを必要に応じて変更します。
パーティションサイズはデプロイメント後には変更できないので、正しいパーティションサイズを定義してください。
C.3.2. イメージサイズの変更
変更後のパーティショニングスキーマの合計は、デフォルトのディスクサイズ (20G) を超える可能性があります。そのような場合には、イメージサイズを変更する必要がある場合があります。イメージサイズを変更するには、イメージの作成に使用した設定ファイルを編集します。
/usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images.yaml
のコピーを作成します。
# cp /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images.yaml \ /home/stack/overcloud-hardened-images-custom.yaml
設定ファイルで DIB_IMAGE_SIZE
を編集して、必要に応じて値を調整します。
...
environment:
DIB_PYTHON_VERSION: '2'
DIB_MODPROBE_BLACKLIST: 'usb-storage cramfs freevxfs jffs2 hfs hfsplus squashfs udf vfat bluetooth'
DIB_BOOTLOADER_DEFAULT_CMDLINE: 'nofb nomodeset vga=normal console=tty0 console=ttyS0,115200 audit=1 nousb'
DIB_IMAGE_SIZE: '25' 1
COMPRESS_IMAGE: '1'
- 1
- この値は、新しいディスクサイズの合計に応じて調整してください。
このファイルを保存します。
director がオーバークラウドをデプロイする際には、オーバークラウドイメージの RAW バージョンを作成します。これは、アンダークラウドに、その RAW イメージを収容するのに必要な空き容量がなければならないことを意味します。たとえば、セキュリティー強化されたイメージのサイズを 40G に増やした場合には、アンダークラウドのハードディスクに 40G の空き容量が必要となります。
C.4. セキュリティー強化された完全なディスクイメージの作成
環境変数を設定してイメージをカスタマイズした後には、openstack overcloud image build
コマンドを使用してイメージを作成します。
# openstack overcloud image build \
--image-name overcloud-hardened-full \
--config-file /home/stack/overcloud-hardened-images-custom.yaml \ 1
--config-file /usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images-rhel7.yaml
- 1
- これは、「イメージサイズの変更」の新規ディスクサイズが含まれたカスタムの設定ファイルです。異なるカスタムディスクサイズを 使用していない 場合には、代わりに元の
/usr/share/openstack-tripleo-common/image-yaml/overcloud-hardened-images.yaml
ファイルを使用してください。
これにより、overcloud-hardened-full.qcow2
という名前のイメージが作成され、必要なセキュリティー機能がすべて含まれます。
C.5. セキュリティー強化された完全なディスクイメージのアップロード
OpenStack Image (glance) サービスにイメージをアップロードして、Red Hat OpenStack Platform director から使用を開始します。セキュリティー強化されたイメージをアップロードするには、以下の手順を実行してください。
新規作成されたイメージの名前を変更し、イメージディレクトリーに移動します。
# mv overcloud-hardened-full.qcow2 ~/images/overcloud-full.qcow2
オーバークラウドの古いイメージをすべて削除します。
# openstack image delete overcloud-full # openstack image delete overcloud-full-initrd # openstack image delete overcloud-full-vmlinuz
新規オーバークラウドイメージをアップロードします。
# openstack overcloud image upload --image-path /home/stack/images --whole-disk
既存のイメージをセキュリティー強化されたイメージに置き換える場合は、--update-existing
フラグを使用します。これにより、元の overcloud-full
イメージは、自分で作成した、セキュリティー強化された新しいイメージに置き換えられます。
付録D 代替ブートモード
ノードのデフォルトブートモードは、iPXE を使用した BIOS です。以下の項では、ノードのプロビジョニングおよび検査の際に director が使用する代替ブートモードについて説明します。
D.1. 標準の PXE
iPXE ブートプロセスは、HTTP を使用してイントロスペクションおよびデプロイメントのイメージをブートします。旧システムは、TFTP を介してブートする標準の PXE ブートのみをサポートしている場合があります。
iPXE から PXE に変更するには、director ホスト上の undercloud.conf
ファイルを編集して、ipxe_enabled
を False
に設定します。
ipxe_enabled = False
このファイルを保存して、アンダークラウドのインストールを実行します。
$ openstack undercloud install
このプロセスに関する詳しい情報は、「Changing from iPXE to PXE in Red Hat OpenStack Platform director」の記事を参照してください。
D.2. UEFI ブートモード
デフォルトのブートモードは、レガシー BIOS モードです。新しいシステムでは、レガシー BIOS モードの代わりに UEFI ブートモードが必要な可能性があります。その場合には、undercloud.conf
ファイルで以下のように設定します。
ipxe_enabled = True inspection_enable_uefi = True
このファイルを保存して、アンダークラウドのインストールを実行します。
$ openstack undercloud install
登録済みの各ノードのブートモードを uefi
に設定します。たとえば、capabilities
プロパティーに boot_mode
パラメーターを追加する場合や既存のパラメーターを置き換える場合には、以下のコマンドを実行します。
$ NODE=<NODE NAME OR ID> ; openstack baremetal node set --property capabilities="boot_mode:uefi,$(openstack baremetal node show $NODE -f json -c properties | jq -r .properties.capabilities | sed "s/boot_mode:[^,]*,//g")" $NODE
このコマンドで profile
および boot_option
のケイパビリティーが保持されていることを確認してください
また、各フレーバーのブートモードを uefi
に設定します。以下に例を示します。
$ openstack flavor set --property capabilities:boot_mode='uefi' control
付録E プロファイルの自動タグ付け
イントロスペクションプロセスでは、一連のベンチマークテストを実行します。director は、これらのテストからデータを保存します。このデータをさまざまな方法で使用するポリシーセットを作成することができます。以下に例を示します。
- ポリシーにより、パフォーマンスの低いノードまたは不安定なノードを特定して、オーバークラウドで使用されないように隔離することができます。
- ポリシーにより、ノードを自動的に特定のプロファイルにタグ付けするかどうかを定義することができます。
E.1. ポリシーファイルの構文
ポリシーファイルは、JSON 形式で、ルールセットが記載されます。各ルールは、description、condition、action を定義します。
説明
これは、プレーンテキストで記述されたルールの説明です。
例:
"description": "A new rule for my node tagging policy"
conditions
condition は、以下のキー/値のパターンを使用して評価を定義します。
- field
- 評価するフィールドを定義します。フィールドの種別については、「プロファイルの自動タグ付けのプロパティー」を参照してください。
- op
評価に使用する演算を定義します。これには、以下が含まれます。
-
eq
: 等しい -
ne
: 等しくない -
lt
: より小さい -
gt
: より大きい -
le
: より小さいか等しい -
ge
: より大きいか等しい -
in-net
: IP アドレスが指定のネットワーク内にあることをチェックします。 -
matches
: 指定の正規表現と完全に一致する必要があります。 -
contains
: 値には、指定の正規表現が含まれる必要があります。 -
is-empty
: フィールドが空欄であることをチェックします。
-
- invert
- 評価の結果をインバージョン (反転) するかどうかを定義するブール値
- multiple
複数の結果が存在する場合に、使用する評価を定義します。これには、以下が含まれます。
-
any
: いずれかの結果が一致する必要があります。 -
all
: すべての結果が一致する必要があります。 -
first
: 最初の結果が一致する必要があります。
-
- value
- 評価内の値を定義します。フィールドと演算の結果でその値となった場合には、条件は true の結果を返します。そうでない場合には、条件は false の結果を返します。
例:
"conditions": [ { "field": "local_gb", "op": "ge", "value": 1024 } ],
Actions
action は、condition が true として返された場合に実行されます。これには、action
キーと、action
の値に応じて追加のキーが使用されます。
-
fail
: イントロスペクションが失敗します。失敗のメッセージには、message
パラメーターが必要です。 -
set-attribute
: Ironic ノードで属性を設定します。Ironic の属性へのパス (例:/driver_info/ipmi_address
) であるpath
フィールドと、設定するvalue
が必要です。 -
set-capability
: Ironic ノードでケイパビリティーを設定します。新しいケイパビリティーに応じた名前と値を指定するname
およびvalue
のフィールドが必要です。同じケイパビリティーの既存の値は置き換えられます。たとえば、これを使用してノードのプロファイルを定義します。 -
extend-attribute
:set-attribute
と同じですが、既存の値を一覧として扱い、その一覧に値を追記します。オプションのunique
パラメーターが True に設定すると、対象の値がすでに一覧に含まれている場合には何も追加されません。
例:
"actions": [ { "action": "set-capability", "name": "profile", "value": "swift-storage" } ]
E.2. ポリシーファイルの例
以下は、適用するイントロスペクションルールを記載した JSON ファイル (rules.json
) の一例です。
[ { "description": "Fail introspection for unexpected nodes", "conditions": [ { "op": "lt", "field": "memory_mb", "value": 4096 } ], "actions": [ { "action": "fail", "message": "Memory too low, expected at least 4 GiB" } ] }, { "description": "Assign profile for object storage", "conditions": [ { "op": "ge", "field": "local_gb", "value": 1024 } ], "actions": [ { "action": "set-capability", "name": "profile", "value": "swift-storage" } ] }, { "description": "Assign possible profiles for compute and controller", "conditions": [ { "op": "lt", "field": "local_gb", "value": 1024 }, { "op": "ge", "field": "local_gb", "value": 40 } ], "actions": [ { "action": "set-capability", "name": "compute_profile", "value": "1" }, { "action": "set-capability", "name": "control_profile", "value": "1" }, { "action": "set-capability", "name": "profile", "value": null } ] } ]
上記の例は、3 つのルールで構成されています。
- メモリーが 4096 MiB 未満の場合には、イントロスペクションが失敗します。このようなルールを適用して、クラウドに含まれるべきではないノードを除外することができます。
- ハードドライブのサイズが 1 TiB 以上のノードの場合は swift-storage プロファイルが無条件で割り当てられます。
-
ハードドライブが 1 TiB 未満だが 40 GiB を超えているノードは、コンピュートノードまたはコントロールノードのいずれかに割り当てることができます。
openstack overcloud profiles match
コマンドを使用して、後で最終選択できるように 2 つのケイパビリティー (compute_profile
とcontrol_profile
) を割り当てています。この設定が機能するように、既存のプロファイルのケイパビリティーは削除しています。削除しなかった場合には、そのケイパビリティーが優先されてしまいます。
他のノードは変更されません。
イントロスペクションルールを使用して profile
機能を割り当てる場合は常に、既存の値よりこの割り当てた値が優先されます。ただし、既存のプロファイル機能があるノードについては、[PROFILE]_profile
機能は無視されます。
E.3. ポリシーファイルのインポート
以下のコマンドで、ポリシーファイルを director にインポートします。
$ openstack baremetal introspection rule import rules.json
次にイントロスペクションプロセスを実行します。
$ openstack overcloud node introspect --all-manageable
イントロスペクションが完了したら、ノードとノードに割り当てられたプロファイルを確認します。
$ openstack overcloud profiles list
イントロスペクションルールで間違いがあった場合には、すべてを削除できます。
$ openstack baremetal introspection rule purge
E.4. プロファイルの自動タグ付けのプロパティー
プロファイルの自動タグ付けは、各条件の field
の属性に対する以下のノードプロパティーを評価します。
プロパティー | 説明 |
---|---|
memory_mb |
ノードのメモリーサイズ (MB) |
cpus |
ノードの CPU の合計コア数 |
cpu_arch |
ノードの CPU のアーキテクチャー |
local_gb |
ノードのルートディスクのストレージの合計容量。ノードのルートディスクの設定についての詳しい説明は、「ノードのルートディスクの定義」を参照してください。 |
付録F セキュリティーの強化
以下の項では、アンダークラウドのセキュリティーを強化するための推奨事項について説明します。
F.1. HAProxy の SSL/TLS の暗号およびルールの変更
アンダークラウドで SSL/TLS を有効化した場合には (「director の設定」を参照)、HAProxy 設定を使用する SSL/TLS の暗号とルールを強化することをお勧めします。これにより、POODLE TLS 脆弱性 などの SSL/TLS の脆弱性を回避することができます。
hieradata_override
のアンダークラウド設定オプションを使用して、以下の hieradata を設定します。
- tripleo::haproxy::ssl_cipher_suite
- HAProxy で使用する暗号スイート
- tripleo::haproxy::ssl_options
- HAProxy で使用する SSL/TLS ルール
たとえば、以下のような暗号およびルールを使用することができます。
-
暗号:
ECDHE-ECDSA-CHACHA20-POLY1305:ECDHE-RSA-CHACHA20-POLY1305:ECDHE-ECDSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-ECDSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-RSA-AES256-GCM-SHA384:DHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:DHE-RSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-ECDSA-AES128-SHA256:ECDHE-RSA-AES128-SHA256:ECDHE-ECDSA-AES128-SHA:ECDHE-RSA-AES256-SHA384:ECDHE-RSA-AES128-SHA:ECDHE-ECDSA-AES256-SHA384:ECDHE-ECDSA-AES256-SHA:ECDHE-RSA-AES256-SHA:DHE-RSA-AES128-SHA256:DHE-RSA-AES128-SHA:DHE-RSA-AES256-SHA256:DHE-RSA-AES256-SHA:ECDHE-ECDSA-DES-CBC3-SHA:ECDHE-RSA-DES-CBC3-SHA:EDH-RSA-DES-CBC3-SHA:AES128-GCM-SHA256:AES256-GCM-SHA384:AES128-SHA256:AES256-SHA256:AES128-SHA:AES256-SHA:DES-CBC3-SHA:!DSS
-
ルール:
no-sslv3 no-tls-tickets
hieradata オーバーライドファイル (haproxy-hiera-overrides.yaml
) を作成して、以下の内容を記載します。
tripleo::haproxy::ssl_cipher_suite: ECDHE-ECDSA-CHACHA20-POLY1305:ECDHE-RSA-CHACHA20-POLY1305:ECDHE-ECDSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:ECDHE-ECDSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-RSA-AES256-GCM-SHA384:DHE-RSA-AES128-GCM-SHA256:DHE-RSA-AES256-GCM-SHA384:ECDHE-ECDSA-AES128-SHA256:ECDHE-RSA-AES128-SHA256:ECDHE-ECDSA-AES128-SHA:ECDHE-RSA-AES256-SHA384:ECDHE-RSA-AES128-SHA:ECDHE-ECDSA-AES256-SHA384:ECDHE-ECDSA-AES256-SHA:ECDHE-RSA-AES256-SHA:DHE-RSA-AES128-SHA256:DHE-RSA-AES128-SHA:DHE-RSA-AES256-SHA256:DHE-RSA-AES256-SHA:ECDHE-ECDSA-DES-CBC3-SHA:ECDHE-RSA-DES-CBC3-SHA:EDH-RSA-DES-CBC3-SHA:AES128-GCM-SHA256:AES256-GCM-SHA384:AES128-SHA256:AES256-SHA256:AES128-SHA:AES256-SHA:DES-CBC3-SHA:!DSS tripleo::haproxy::ssl_options: no-sslv3 no-tls-tickets
暗号のコレクションは、改行なしで 1 行に記述します。
undercloud.conf
ファイルで先程作成した hierradata オーバーライドファイルを使用するように hieradata_override
パラメーターを設定してから openstack undercloud install
を実行します。
[DEFAULT] ... hieradata_override = haproxy-hiera-overrides.yaml ...
付録G POWER 版 Red Hat OpenStack Platform (テクノロジープレビュー)
この機能は、本リリースでは テクノロジープレビュー として提供しているため、Red Hat では全面的にはサポートしていません。これは、テスト目的のみでご利用いただく機能で、実稼働環境にデプロイすべきではありません。テクノロジープレビューについての詳しい情報は「対象範囲の詳細」を参照してください。
Red Hat OpenStack Platform を新規インストールする場合は、オーバークラウドのコンピュートノードを POWER (ppc64le) ハードウェアにデプロイする必要があります。コンピュートノードのクラスターには、同じアーキテクチャーのシステムを使用するか、x86_64 と ppc64le のシステムを混在させることができます。アンダークラウド、コントローラーノード、Ceph Storage ノード、およびその他のシステムはすべて x86_64 ハードウェアでのみサポートされています。
概要:
- アンダークラウドを x86_64 ノードにデプロイする。
- x86_64 ノードをオーバークラウドコントローラーノードとして使用する準備を行い、それらのノードをプロビジョニングできる状態にする。
- 事前にプロビジョニングされた ppc64le ノードをオーバークラウドコンピュートノードとして使用する準備を行う。
-
カスタム
roles_data.yaml
ファイルを生成し、ppc64le ノード用のComputeAlt
ロールを追加する。 - オーバークラウドをデプロイする。
- アンダークラウドのメタデータサーバーをポーリングする。
- オーバークラウドのデプロイメントが正常に完了したことを確認する。
IBM POWER ベースのコンピュートノードを使用する Red Hat OpenStack Platform のデプロイ:
- アンダークラウドを x86_64 ノードにデプロイします。「1章はじめに」から「5章コンテナーレジストリー情報の設定」に記載の手順に従います。
- x86_64 ノードをオーバークラウドコントローラーノードとして使用する準備を行い、それらのノードをプロビジョニングできる状態にします。コントローラーノード用に、少なくとも 1 つのノードが必要です。高可用性用の追加のコントローラーノードや追加の x86_64 コンピュートノードを必要に応じて準備します。「6章CLI ツールを使用した基本的なオーバークラウドの設定」から「環境ファイルを使用したオーバークラウドのカスタマイズ」に記載の手順に従います。
- 事前にプロビジョニングされた ppc64le ノードをオーバークラウドコンピュートノードとして使用する準備を行います。コンピュートノード用に、少なくとも 1 つのノードが必要です。必要に応じて、高可用性のために別のコンピュートノードを準備します。「8章事前にプロビジョニングされたノードを使用した基本的なオーバークラウドの設定」から「コントロールプレーンのネットワークの設定」に記載の手順に従います。
director ノードでカスタム
roles_data.yaml
ファイルを生成し、ppc64le ノード用のComputeAlt
ロールを追加します。以下に例を示します。(undercloud) [stack@director ~]$ openstack overcloud roles generate \ --roles-path /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/roles/ \ -o /home/stack/roles_data.yaml \ Controller Compute ComputeAlt BlockStorage ObjectStorage CephStorage
オーバークラウドをデプロイします。お使いの環境で必要となる標準の環境ファイルに加えて、カスタム
roles_data.yaml
ファイルおよびcomputealt.yaml
環境ファイルを指定します。以下に例を示します。(undercloud) [stack@director ~]$ openstack overcloud deploy \ --templates /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates \ -r /home/stack/roles_data.yaml \ --disable-validations \ --ntp-server pool.ntp.org \ -e /home/stack/templates/ctlplane-assignments.yaml \ -e /home/stack/templates/node-info.yaml \ -e /home/stack/templates/overcloud_images.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/computealt.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-bootstrap-environment-rhel.yaml \ -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml \ -e /home/stack/templates/network-environment.yaml \ -e /home/stack/templates/storage-environment.yaml
このコマンドでは、以下のオプションが使われています。
- --templates
-
/usr/share/openstack-tripleo-heat-templates
の Heat テンプレートコレクションをベースとして使用し、オーバークラウドを作成します。 - -r /home/stack/roles_data.yaml
-
デプロイメントに必要なロールのマッピング情報には、カスタム
roles_data.yaml
ファイルを使用します。 - --disable-validations
- 事前にプロビジョニングされたインフラストラクチャーで使用しないサービスに対する基本的な CLI 検証を無効化します。無効化しないと、デプロイメントに失敗します。
- --ntp-server pool.ntp.org
- 時刻の同期に NTP サーバーを使用します。オーバークラウドノードクラスターの同期を保つためには、このオプションが必要です。
- -e /home/stack/templates/ctlplane-assignments.yaml
- コントロールプレーンのネットワークを設定する環境ファイルを追加します。詳細は、「コントロールプレーンのネットワークの設定」を参照してください。
- -e /home/stack/templates/node-info.yaml
- 各ロールに使用するノード数とフレーバーを定義する環境ファイルを追加します。
- -e /home/stack/templates/overcloud_images.yaml
- コンテナーイメージのソースが含まれる環境ファイルを追加します。詳細は、「5章コンテナーレジストリー情報の設定」を参照してください。
- -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/computealt.yaml
- ppc64le ノードを定義する環境ファイルを追加します。
- -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/deployed-server-bootstrap-environment-rhel.yaml
- 事前にプロビジョニングされたサーバー上でブートストラップのスクリプトを実行する環境ファイルを追加します。このスクリプトは、追加パッケージをインストールして、オーバークラウドノードの基本設定を提供します。
- -e /usr/share/openstack-tripleo-heat-templates/environments/network-isolation.yaml
- オーバークラウドデプロイメントのネットワーク分離を初期化する環境ファイルを追加します。
- -e /home/stack/templates/network-environment.yaml
- ネットワーク分離をカスタマイズする環境ファイルを追加します。
- -e /home/stack/templates/storage-environment.yaml
ストレージの設定を初期化する環境ファイルを追加します。
注記デプロイメントのスタックは、オーバークラウドノードのリソースが
CREATE_IN_PROGRESS
の段階に入ると一時停止します。この一時停止は、director がオーバークラウドノード上のオーケストレーションエージェントがメタデータサーバーをポーリングするのを待っているためです。次のステップに進み、メタデータサーバーのポーリングを開始します。
- アンダークラウドのメタデータサーバーをポーリングします。「メタデータサーバーのポーリング」を参照してください。
-
オーバークラウドのデプロイメントが正常に完了したことを確認します。「オーバークラウド作成の監視」 と 「オーバークラウドへのアクセス」 を参照してください。事前にプロビジョニングされた ppc64le ノードと、director によってプロビジョニングされた x86_64 ノードを含む全コンピュートノードを一覧表示するには、
openstack hypervisor list
を実行します。