2.3. クイックスタートサンプルの使用

JBoss EAP で提供されるクイックスタートサンプルは Maven プロジェクトです。

2.3.1. Maven

Apache Maven は、ソフトウェアプロジェクトの作成、管理、および構築を行う Java アプリケーションの開発で使用される分散型ビルド自動化ツールです。Maven は Project Object Model (POM) と呼ばれる標準の設定ファイルを利用して、プロジェクトの定義や構築プロセスの管理を行います。POM はモジュールやコンポーネントの依存関係、ビルドの順番、結果となるプロジェクトパッケージングのターゲットを記述し、XML ファイルを使用して出力します。こうすることで、プロジェクトが正しく統一された状態で構築されるようにします。

Maven は、リポジトリーを使用してアーカイブを行います。Maven リポジトリーには Java ライブラリー、プラグイン、およびその他のビルドアーティファクトが格納されています。デフォルトのパブリックリポジトリーは Maven 2 Central Repository ですが、複数の開発チームの間で共通のアーティファクトを共有する目的で、社内のプライベートおよび内部リポジトリーとすることが可能です。また、サードパーティーのリポジトリーも利用できます。詳細は Apache Maven プロジェクトおよび Introduction to Repositories ガイドを参照してください。

JBoss EAP には、Jakarta EE 開発者が JBoss EAP 6 でアプリケーションを構築する際に使用する要件の多くが含まれる Maven リポジトリーが含まれます。

JBoss EAP で Maven を使用する方法の詳細は、JBoss EAPDevelopment GuideUsing Maven with JBoss EAP を参照してください。

2.3.2. クイックスタートでの Maven の使用

アプリケーションをビルドし、JBoss EAP 7 にデプロイするのに必要なアーティファクトと依存関係はパブリックリポジトリーでホストされます。JBoss EAP 7 のクイックスタートでは、Maven settings.xml ファイルを設定して、クイックスタートをビルドするときにこれらのリポジトリーを使用する必要がなくなりました。Maven リポジトリーはクイックスタートプロジェクト POM ファイルに設定されるようになりました。この設定方法は、クイックスタートを容易に使えるようにするために利用できますが、ビルドが遅くなる可能性があるため、通常は本番プロジェクトでの使用は推奨されません。

Red Hat CodeReady Studio には Maven が含まれるため、個別にダウンロードおよびインストールする必要はありません。

Maven コマンドラインを使用してアプリケーションをビルドおよびデプロイする場合は、最初に Apache Maven プロジェクトから Maven をダウンロードし、Maven のドキュメントに記載されている手順に従ってインストールします。

2.3.3. クイックスタートのダウンロードおよび実行

2.3.3.1. クイックスタートのダウンロード

JBoss EAP には、さまざまな Jakarta EE の技術を使用してアプリケーションを作成するのに役立つ包括的なクイックスタートコードサンプルが含まれています。クイックスタートは Red Hat カスタマーポータルからダウンロードできます。

  1. Red Hat カスタマーポータルの JBoss EAP ダウンロードページ にログインします。
  2. Version ドロップダウンメニューで 7.4 を選択します。
  3. 一覧で Red Hat JBoss Enterprise Application Platform 7.4.0 Quickstarts を見つけ、Download をクリックしてクイックスタートが含まれる ZIP ファイルをダウンロードします。
  4. ZIP ファイルを希望の場所に保存します。
  5. ZIP ファイルを展開します。

2.3.3.2. Red Hat CodeReady Studio でのクイックスタートの実行

クイックスタートのダウンロード完了後、Red Hat Developer Studio にインポートし、JBoss EAP にデプロイできます。

クイックスタートの Red Hat CodeReady Studio へのインポート

各クイックスタートには、プロジェクトおよび設定情報が含まれる POM ファイルが同梱されています。この POM ファイルを使用すると、簡単にクイックスタートを Red Hat CodeReady Studio にインポートできます。

重要

Red Hat CodeReady Studio へのインポート時にクイックスタートプロジェクトフォルダーが IDE ワークスペース内にある場合、IDE は無効なプロジェクト名と WAR アーカイブ名を生成します。作業を開始する前に、クイックスタートプロジェクトフォルダーが IDE ワークスペースの外部にあることを確認してください。

  1. Red Hat CodeReady Studio を起動します。
  2. FileImport の順に選択します。
  3. MavenExisting Maven Projects の順に選択し、Next をクリックします。

    図2.1 既存の Maven プロジェクトのインポート

    The *Import* window.
  4. 対象のクイックスタートのディレクトリー (helloworld など) を参照し、OK をクリックします。Projects リストボックスに、選択したクイックスタートプロジェクトの pom.xml ファイルが示されます。

    図2.2 Maven プロジェクトの選択

    The *Maven Projects* selection window.
  5. Finish をクリックします。

helloworld クイックスタートの実行

helloworld クイックスタートを実行すると、JBoss EAP サーバーが適切に設定および実行されたことを簡単に検証できます。

  1. サーバーを定義していない場合は、JBoss EAP サーバーを Red Hat CodeReady Studio に追加します。Getting Started with CodeReady ToolsDownloading, Installing, and Setting Up JBoss EAP from within the IDE を参照してください。
  2. Project Explorer タブの helloworld プロジェクトを右クリックし、Run AsRun on Server の順に選択します。

    図2.3 Run As - Run on Server

    The *Run As* → *Run on Server* screen capture.
  3. サーバーリストから JBoss EAP 7.4 サーバーを選択し、Next をクリックします。

    図2.4 Run on Server

    The *Run on Server* window.
  4. helloworld クイックスタートはすでにリストされ、サーバーで設定できる状態です。Finish をクリックしてクイックスタートをデプロイします。

    図2.5 サーバーで設定されたリソースの変更

    The *Add and Remove Resources* window.
  5. 結果を検証します。

    • Server タブで、JBoss EAP 7.4 サーバーの状態が Started に変わります。
    • Console タブに、JBoss EAP サーバーの起動と helloworld クイックスタートのデプロイメントに関するメッセージが表示されます。

      WFLYUT0021: Registered web context: /helloworld
      WFLYSRV0010: Deployed "helloworld.war" (runtime-name : "helloworld.war")
    • helloworld アプリケーションは http://localhost:8080/helloworld で利用でき、Hello World! というテキストが表示されます。

helloworld クイックスタートの詳細は、helloworld クイックスタート を参照してください。

bean-validation クイックスタートの実行

bean-validation などの一部のクイックスタートは、ユーザーインターフェイスレイヤーの代わりに Arquillian テストを提供して機能を示します。

  1. bean-validation クイックスタートを Red Hat CodeReady Studio にインポートします。
  2. Servers タブでサーバーを右クリックし、Start を選択して JBoss EAP サーバーを起動します。Servers タブが表示されない場合またはサーバーが未定義の場合は、JBoss EAP サーバーを Red Hat CodeReady Studio に追加します。Getting Started with CodeReady ToolsDownloading, Installing, and Setting Up JBoss EAP from within the IDE を参照してください。
  3. Project Explorer タブの bean-validation プロジェクトを右クリックし、Run AsMaven Build の順に選択します。
  4. 以下を Goals 入力フィールドに入力し、Run を実行します。

    clean verify -Parq-remote

    図2.6 設定の編集

    The *Edit Configuration* window.
  5. 結果を検証します。

    Console タブに bean-validation Arquillian テストの結果が表示されます。

    -------------------------------------------------------
     T E S T S
    -------------------------------------------------------
    Running org.jboss.as.quickstarts.bean_validation.test.MemberValidationTest
    Tests run: 5, Failures: 0, Errors: 0, Skipped: 0, Time elapsed: 2.189 sec
    
    Results :
    
    Tests run: 5, Failures: 0, Errors: 0, Skipped: 0
    
    [INFO] ------------------------------------------------------------------------
    [INFO] BUILD SUCCESS
    [INFO] ------------------------------------------------------------------------

2.3.3.3. コマンドラインでのクイックスタートの実行

Maven を使用すると、コマンドラインから簡単にクイックスタートをビルドおよびデプロイできます。Maven がインストールされていない場合は Apache Maven プロジェクトを参照し、ダウンロードとインストールを行ってください。

README.md ファイルは、システム要件、Maven の設定、ユーザーの追加、およびクイックスタートの実行に関する一般的な情報が含まれるクイックスタートのルートディレクトリーにあります。

各クイックスタートには、クリックスタートを実行するための特定の手順と Maven コマンドが含まれる独自の README.md ファイルも含まれます。

コマンドラインでの helloworld クイックスタートの実行

  1. helloworld クイックスタートのルートディレクトリーにある README.md ファイルを確認します。
  2. JBoss EAP サーバーを起動します。

    $ EAP_HOME/bin/standalone.sh
  3. helloworld クイックスタートディレクトリーへ移動します。
  4. クイックスタートの README.md ファイルにある Maven コマンドを使用して、クイックスタートをビルドおよびデプロイします。

    $ mvn clean install wildfly:deploy
  5. helloworld アプリケーションは http://localhost:8080/helloworld で使用でき、Hello World! というテキストが表示されます。