11.2. トランザクションの概念

11.2.1. トランザクション

トランザクションは 2 つ以上のアクションで構成されており、アクションすべてが成功または失敗する必要があります。成功した場合はコミット、失敗した場合はロールバックが結果的に実行されます。ロールバックでは、トランザクションがコミットを試行する前に、各メンバーの状態が元の状態に戻ります。

よく設計されたトランザクションの通常の標準は Atomic, Consistent, Isolated, and Durable (ACID) です。

11.2.2. トランザクションの ACID プロパティー

ACID は 原子性 (Atomicity)、一貫性 (Consistency)、独立性 (Isolation)、永続性 (Durability) の略語です。通常、この用語はデータベースやトランザクション操作において使用されます。

原子性 (Atomicity)
トランザクションの原子性を保つには、すべてのトランザクションメンバーが同じ決定を行う必要があります。これらのメンバーはコミットまたはロールバックを行います。原子性が保たれない場合の結果はヒューリスティックな結果と呼ばれます。
一貫性
一貫性とは、データベーススキーマの観点から、データベースに書き込まれたデータが有効なデータであることを保証するという意味です。データベースあるいは他のデータソースは常に一貫した状態でなければなりません。一貫性のない状態の例には、操作が中断される前にデータの半分が書き込まれてしまったフィールドなどがあります。すべてのデータが書き込まれた場合や、書き込みが完了しなかった時に書き込みがロールバックされた場合に、一貫した状態となります。
分離
独立性とは、トランザクションのスコープ外のプロセスがデータを変更できないように、トランザクションで操作されたデータが変更前にロックされる必要があることを意味します。
持続性 (Durability)
持続性とは、トランザクションのメンバーがコミットするよう指示されてから外部で問題が発生した場合に、問題が解決されるとすべてのメンバーがトランザクションを継続してコミットできることを意味します。このような問題には、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、またはその他の関与するシステムが関連することがあります。

11.2.3. トラザクションコーディネーターまたはトランザクションマネージャー

JBoss EAP のトランザクションでは、トランザクションコーディネーターとトランザクションマネージャー (TM) という言葉は、ほとんど同じことを意味します。トランザクションコーディネーターという言葉は通常、分散 JTS トランザクションのコンテキストで使用されます。

JTA トランザクションでは、TM は JBoss EAP 内で実行され、2 フェーズコミットのプロトコルでトランザクションの参加者と通信します。

TM はトランザクションの参加者に対して、他のトランザクションの参加者の結果に従い、データをコミットするか、ロールバックするか指示します。こうすることで、確実にトランザクションが ACID 標準に準拠するようにします。

11.2.4. トランザクションの参加者

トランザクションの参加者は、状態をコミットまたはロールバックできるトランザクション内のリソースであり、一般的にデータベースまたは JMS ブローカーを生成します。ただし、トランザクションインターフェースを実装することにより、アプリケーションコードがトランザクションの参加者として動作することもできます。トランザクションの各参加者は、状態をコミットまたはロールバックできるかどうかを独自に決定します。そして、すべての参加者がコミットできる場合のみ、トランザクション全体が成功します。コミットできない参加者がある場合は、各参加者がそれぞれの状態をロールバックし、トランザクション全体が失敗します。TM は、コミットおよびロールバック操作を調整し、トランザクションの結果を判断します。

11.2.5. Java Transaction API (JTA)

Java Transaction API (JTA) は Java Enterprise Edition 仕様の一部です。これは JSR 907: Java™ Transaction API (JTA) で定義されています。

JTA の実装は、JBoss EAP アプリケーションサーバーの Narayana プロジェクトに含まれる TM を使用して実行されます。TM により、単一のグローバルトランザクションを使用してアプリケーションがさまざまなリソース (データベースや JMS ブローカーなど) を割り当てできるようになります。グローバルトランザクションは XA トランザクションと呼ばれます。一般的に、このようなトランザクションには XA 機能を持つリソースが含まれますが、XA 以外のリソースがグローバルトランザクションに含まれることもあります。非 XA リソースを XA 対応リソースとして動作させるのに役に立つ複数の最適化があります。詳細は、「1 フェーズコミット (1PC) の LRCO 最適化」を参照してください。

本書では、JTA という用語は以下の 2 つのことを意味します。

  1. Java EE 仕様によって定義される Java Transaction API。
  2. TM がトランザクションをどのように処理するかを示します。

TM は JTA トランザクションモードで動作し、データはメモリーによって共有されます。また、トランザクションコンテキストはリモート EJB 呼び出しによって転送されます。JTS モードでは、データは CORBA (Common Object Request Broker Architecture) メッセージを送信して共有され、トランザクションコンテキストは IIOP 呼び出しによって転送されます。複数の JBoss EAP サーバー上におけるトランザクションの分散は両方のモードでサポートされます。

11.2.6. Java Transaction Service (JTS)

Java Transaction Service (JTS) は、Object Transaction Service (OTS) と Java のマッピングです。Java EE アプリケーションは JTA API を使用してトランザクションを管理します。JTA API はトランザクションマネージャーが JTS モードに切り替わったときに JTS トランザクション実装と対話します。JTS は IIOP プロトコル上で動作します。JTS を使用するトランザクションマネージャーは Object Request Broker (ORB) と呼ばれるプロセスと Common Object Request Broker Architecture (CORBA) と呼ばれる通信標準を使用してお互いに通信します。詳細は、JBoss EAP『設定ガイド』の「ORB 設定」を参照してください。

アプリケーションの観点で JTA API を使用すると、JTS トラザクションは JTA トランザクションと同じように動作します。

注記

JBoss EAP に含まれる JTS の実装は、分散トランザクションをサポートします。完全準拠の JTS トランザクションとの違いは、外部のサードパーティー ORB との相互運用性です。この機能は、JBoss EAP ではサポートされません。サポートされる設定では、複数の JBoss EAP コンテナーでのみトランザクションが分散されます。

11.2.7. XML トランザクションサービス

XML トランザクションサービス (XTS) コンポーネントは、ビジネストランザクションのプライベートおよびパブリック web サービスの調整をサポートします。XTS を使用すると、複雑なビジネストランザクションを制御され信頼できる状態で調整できます。XTS API は WS-Coordination、WS-Atomic Transaction、および WS-Business Activity プロトコルを基にしたトランザクションコーディネーションモデルをサポートします。

11.2.7.1. XTS によって使用されるプロトコルの概要

WS-Coordination (WS-C) 仕様は、異なるコーディネーションプロトコルがプラグインできるようにするフレームワークを定義し、クライアント、サービス、および参加者の間で作業を調整します。

WS-Transaction (WS-T) プロトコルは、WS-C によって提供されるコーディネーションフレームワークを利用する WS-Atomic Transaction (WS-AT) および WS-Business Activity (WS-BA) の 2 つのトランザクションコーディネーションプロトコルで構成されます。WS-T は、既存の従来のトランザクション処理システムを統一するために開発され、これらのシステム間で確実に通信が行われるようにします。

11.2.7.2. Web Services-Atomic Transaction (WS-AT) プロセス

アトミックトランザクション (AT) は、ACID セマンティックが適切である場合に短期間の対話をサポートするよう設計されています。AT の範囲内では、web サービスは通常 WS-T の制御下でブリッジングを用いてデータベースやメッセージキューなどの XA リソースにアクセスします。トランザクションが終了すると、参加者は AT の決定結果を XA リソースに伝搬し、各参加者によって適切なコミットまたはロールバックが実行されます。

11.2.7.2.1. アトミックトランザクション (AT) プロセス
  1. AT を開始する際、クライアントは最初に WS-T をサポートする WS-C Activation Coordinator web サービスを見つけます。
  2. クライアントは、http://schemas.xmlsoap.org/ws/2004/10/wsat をコーディネーション型として指定して、WS-C CreateCoordinationContext メッセージをサービスに送信します。
  3. クライアントは適切な WS-T コンテキストをアクティベーションサービスから受け取ります。
  4. CreateCoordinationContext メッセージの応答であるトランザクションコンテキストの CoordinationType 要素は、WS-AT ネームスペース http://schemas.xmlsoap.org/ws/2004/10/wsat に設定されています。また、参加者を登録できるアトミックトランザクションコーディネーターエンドポイントである WS-C Registration Service への参照も含まれます。
  5. クライアントは通常、続いて Web サービスの呼び出しを行い、Web サービスによるすべての変更をコミットまたはロールバックしてトランザクションを完了します。完了できるようにするには、エンドポイントがコーディネーションコンテキストで返された登録サービスに登録メッセージを送信し、クライアントを完了プロトコルの参加者として登録する必要があります。
  6. クライアントを登録したら、クライアントアプリケーションは web サービスと対話してビジネスレベルの作業を達成します。クライアントは、ビジネス web サービスが呼び出されるごとに、トランザクションコンテキストを SOAP ヘッダーブロックの挿入し、各呼び出しがトランザクションによって暗黙的にスコープ付けされます。WS-AT 対応 web サービスをサポートするツールキットは、SOAP ヘッダーブロックで見つかったコンテキストをバックエンド操作と関連付ける機能を提供します。これにより、web サービスによる変更がクライアントと同じトランザクションの範囲内で行われるようにし、トランザクションコーディネーターによるコミットまたはロールバックの対象になるようにします。
  7. 必要なアプリケーションの作業がすべて完了したら、クライアントはサービス状態の変更を永続する目的でトランザクションを終了することができます。完了参加者は、トランザクションをコミットまたはロールバックするようコーディネーターに指示します。コミットまたはロールバック操作が完了すると、トランザクションの結果を示すために状態が参加者に返されます。

詳細は、『Naryana Project Documentation』の「WS-Coordination」を参照してください。

11.2.7.2.2. Microsoft .NET クライアントとの WS-AT の相互運用性

WS-AT 仕様の .NET 実装の違いにより、xts サブシステムと Microsoft .NET クライアントとの通信に問題が発生することがあります。WS-AT 仕様の .NET 実装はすべての呼び出しが非同期になるよう強制します。

.NET クライアントとの相互運用性を有効にするため、JBoss EAP の xts サブシステムでは非同期登録のオプションを利用できます。XTS 非同期登録はデフォルトでは無効になっており、必要な場合のみ有効にする必要があります。

非同期登録を有効にして .NET クライアントとの WS-AT の相互運用性を維持するには、以下の管理 CLI コマンドを実行します。

/subsystem=xts:write-attribute(name=async-registration, value=true)

11.2.7.3. Web Services-Business Activity (WS-BA) プロセス

Web Services-Business Activity (WS-BA) は、既存のビジネスプロセスおよびワークフローシステムがプロプライエタリーメカニズムをラップし、実装およびビジネス境界全体で相互運用できるようにする、web サービスアプリケーションのプロトコルを定義します。

要求時のみ参加者が状態をトランザクションコーディネーターに伝える WS-AT プロトコルモデルとは異なり、WS-BA 内の子アクティビティーは要求を待たずに結果を直接コーディネーターに指定できます。参加者はいつでもアクティビティーを終了するかコーディネーターへ失敗を通知するかを選択できます。失敗を特定するためにトランザクションの最後まで待たずに、通知を使用してゴールを編集し、処理を継続できるため、この機能はタスクが失敗したときに便利です。

11.2.7.3.1. WS-BA プロセス
  1. サービスは作業をするよう要求されます。
  2. これらのサービスに作業を元に戻す機能があるのであれば、WS-BA が後でその作業の取り消しを決定した場合に備えて WS-BA に通知します。WS-BA に障害が発生した場合は、元に戻す undo 動作を実行するようサービスに指示することができます。

WS-BA プロトコルは補正ベースのトランザクションモデルを利用します。ビジネスアクティビティーの参加が作業を完了すると、アクティビティーを終了することを選択できます。この選択は、その後のロールバックを許可しません。この代わりに、参加者はアクティビティーを完了し、後で別の参加者が障害をコーディネーターに通知した場合に、行った作業を補正できることをコーディネーターに伝えることができます。この場合、コーディネーターは終了していない各参加者に障害を補正するよう要求し、適切であると見なされる補正アクションを実行する機会を与えます。すべての参加者が障害なしで終了または完了した場合、コーディネーターは完了した各参加者に対してアクティビティーがクローズしたことを通知します。

詳細は、『Naryana Project Documentation』の「WS-Coordination」を参照してください。

11.2.7.4. トランザクションブリッジングの概要

トランザクションブリッジングは、Java EE と WS-T ドメインをリンクするプロセスを説明します。トランザクションブリッジコンポーネントである txbridge は双方向のリンクを提供し、トランザクションのいずれの型も、別の型と使用するよう設計されているビジネスロジックを含めることができます。ブリッジによって使用される技術は、介入とプロトコルマッピングの組み合わせです。

トランザクションブリッジでは、介入されるコーディネーターは既存のトランザクションに登録され、プロトコルマッピングの追加タスクを実行します。 これらのトランザクション型が異なっても、その親コーディネーターに対してはネイティブトランザクション型のリソースとして見られ、その子に対してはネイティブトランザクション型のコーディネーターとして見られます。

トランザクションブリッジは org.jboss.jbossts.txbridge パッケージとそのサブパッケージにあります。これは、クラスの 2 つのセットによって構成され、セットごとに各方向のブリッジング用になります。

詳細は、『Naryana Project Documentation』の「TXBridge Guide」を参照してください。

11.2.8. XA リソースおよび XA トランザクション

XA は eXtended Architecture を表し、複数のバックエンドデータストアを使用するトランザクションを定義するために X/Open Group によって開発されました。XA 標準は、グローバル TM とローカルリソースマネージャーとの間のインターフェースを定義します。XA では、4 つの ACID プロパティーすべてを保持しながらアプリケーションサーバー、データベース、キャッシュ、メッセージキューなどの複数のリソースが同じトランザクションに参加できるようにします。4 つの ACID プロパティーの 1 つは原子性であり、これは参加者の 1 つが変更のコミットに失敗した場合に他の参加者がトランザクションを中止し、トランザクションが発生する前の状態に戻すことを意味します。XA リソースは XA グローバルトランザクションに参加できるリソースです。

XA トランザクションは、複数のリソースにまたがることができるトランザクションです。これには、コーディネートを行う TM が関係します。 この TM は、すべてが 1 つのグローバル XA トランザクションに関与する 1 つ以上のデータベースまたは他のトランザクションリソースを持ちます。

11.2.9. XA リカバリー

TM は X/Open XA 仕様を実装し、複数の XA リソースで XA トランザクションをサポートします。

XA リカバリーは、トランザクションの参加者であるリソースのいずれかがクラッシュしたり使用できなくなったりしても、トランザクションの影響を受けたすべてのリソースが確実に更新またはロールバックされるようにするプロセスのことです。JBoss EAP の範囲内では、XA データソース、JMS メッセージキュー、JCA リソースアダプターなどの XA リソースまたはサブシステムに対して、transactions サブシステムが XA リカバリーのメカニズムを提供します。

XA リカバリーはユーザーの介入がなくても実行されます。XA リカバリーに失敗すると、エラーがログ出力に記録されます。サポートが必要な場合は、Red Hat グローバルサポートサービスまでご連絡ください。XA リカバリープロセスは、デフォルトで 2 分ごとに開始される定期リカバリースレッドにより開始されます。定期リカバリースレッドにより、未完了のすべてのトランザクションが処理されます。

注記

未確定なトランザクションのリカバリーを完了するには 4 -8 分ほどかかることがあります。 これはリカバリープロセスを複数回実行する必要がある場合があるためです。

11.2.10. XA リカバリープロセスの制限

XA リカバリーには以下の制限があります。

  • トランザクションログが正常にコミットされたトランザクションから消去されないことがあります。

    XAResource のコミットメソッドが正常に完了し、トランザクションをコミットした後、コーディネーターがログをアップデートできるようになる前に JBoss EAP サーバーがクラッシュした場合、サーバーの再起動時に以下の警告メッセージが表示されることがあります。

    ARJUNA016037: Could not find new XAResource to use for recovering non-serializable XAResource XAResourceRecord

    これは、リカバリー時に JBoss トランザクションマネージャー (TM) はログのトランザクション参加者を確認し、コミットを再試行しようとするからです。最終的に、JBoss TM はリソースがコミットされたと見なし、コミットを再試行しなくなります。このような場合、トランザクションはコミットされデータの損失はないため、警告を無視しても問題ありません。

    警告が表示されないようにするには、com.arjuna.ats.jta.xaAssumeRecoveryComplete プロパティーの値を true に設定します。このプロパティーは、登録された XAResourceRecovery インスタンスから新しい XAResource インスタンスが見つからないとチェックされます。true に設定すると、リカバリーで、以前のコミットの試行が成功したと見なされ、これ以上リカバリーを試行しなくてもインスタンスをログから削除できます。このプロパティーはグローバルであり、適切に使用しないと XAResource インスタンスがコミットされていない状態のままになるため、注意して使用する必要があります。

    注記

    JBoss EAP 7.2 には、トランザクションが正常にコミットされた後にトランザクションログを消去する拡張機能が実装されているため、上記の状況は頻繁に発生しません。

  • XAResource.prepare() の最後にサーバーがクラッシュすると、JTS トランザクションに対するロールバックは呼び出されません。

    XAResource.prepare() メソッド呼び出しの完了後に JBoss EAP サーバーがクラッシュすると、参加している XAResource インスタンスはすべて準備済みの状態でロックされ、サーバーの再起動時にその状態を維持します。トランザクションがタイムアウトするか、データベース管理者が手動でリソースをロールバックしてトランザクションログを消去するまで、トランザクションはロールバックされずリソースはロックされたままになります。詳細は、「https://issues.jboss.org/browse/JBTM-2124」を参照してください。

  • 周期リカバリーはコミットされたトランザクションで発生する可能性があります。

    サーバーに過剰な負荷がかかっている場合、サーバーログには以下の警告メッセージとそれに続くスタックトレースが含まれる場合があります。

    ARJUNA016027: Local XARecoveryModule.xaRecovery got XA exception XAException.XAER_NOTA: javax.transaction.xa.XAException

    負荷が大きい場合、トランザクションにかかる処理時間が周期的リカバリープロセスのアクティビティーと重なることがあります。周期的リカバリープロセスは進行中のトランザクションを検出し、ロールバックを開始しようとしますが、トランザクションは完了するまで続行されます。周期的リカバリーはロールバックの開始に失敗し、ロールバックの失敗がサーバーログに記録されます。この問題の根本的な原因は、今後のリリースで修正される予定ですが、現時点では回避方法を使用できます。

    com.arjuna.ats.jta.orphanSafetyInterval プロパティーの値をデフォルト値の 10000 ミリ秒よりも大きくし、リカバリープロセスの 2 つのフェーズの間隔を増やします。40000 ミリ秒の値が推奨されます。この設定では問題は解決されないことに注意してください。問題が発生して警告メッセージがログに記録される可能性が減少します。詳細は、「https://developer.jboss.org/thread/266729」を参照してください。

11.2.11. 2 フェーズコミットプロトコル

2 フェーズコミット (2PC) プロトコルは、トランザクションの結果を決定するアルゴリズムを参照します。2PC は XA トランザクションを完了するプロセスとしてトランザクションマネージャー (TM) によって開始されます。

フェーズ 1: 準備

最初のフェーズでは、トランザクションをコミットできるか、あるいはロールバックする必要があるかをトランザクションの参加者がトランザクションコーディネーターに通知します。

フェーズ 2: コミット

2 番目のフェーズでは、トランザクションコーディネーターがトランザクション全体をコミットするか、またはロールバックするかを決定します。いずれの参加者もコミットできない場合、トランザクションはロールバックしなければなりません。それ以外の場合、トランザクションはコミットできます。コーディネーターは何を行うかをリソースに指示し、リソースはその完了時にコーディネーターに通知します。この時点で、トランザクションは完了します。

11.2.12. トランザクションタイムアウト

原子性を確保し、トランザクションを ACID 標準に準拠させるために、トランザクションの一部が長期間実行される場合があります。トランザクションの参加者は、コミット時にデータベーステーブルまたはキュー内のメッセージの一部である XA リソースをロックする必要があります。また、TM は各トランザクション参加者からの応答を待ってからすべての参加者にコミットあるいはロールバックの指示を出す必要があります。ハードウェアあるいはネットワークの障害のため、リソースが永久にロックされることがあります。

トランザクションのタイムアウトをトランザクションと関連付け、ライフサイクルを制御することができます。タイムアウトのしきい値がトランザクションのコミットあるいはロールバック前に渡された場合、タイムアウトにより、自動的にトランザクションがロールバックされます。

トランザクションサブシステム全体に対しデフォルトのタイムアウト値を設定できます。 または、デフォルトのタイムアウト値を無効にし、トランザクションごとにタイムアウトを指定できます。

11.2.13. 分散トランザクション

分散トランザクションは、複数の JBoss EAP サーバー上に参加者が存在するトランザクションです。Java Transaction Service (JTS) 仕様では、異なるベンダーのアプリケーションサーバー間で JTS トランザクションを分散可能にすることが規定されています。Java Transaction API (JTA) はこれを定義していませんが、JBoss EAP は JBoss EAP サーバー間での分散 JTA トランザクションをサポートしています。

注記

異なるベンダーのサーバー間でのトランザクション分散はサポートされません。

注記

他のベンダーのアプリケーションサーバーのドキュメントでは、分散トランザクションという用語が XA トランザクションを意味することがあります。JBoss EAP のドキュメントでは、複数の JBoss EAP アプリケーションサーバー間で分散されるトランザクションを分散トランザクションと呼びます。また、本書では、異なるリソースで構成されるトランザクション (データベースリソースや JMS リソースなど) を XA トランザクションと呼びます。詳細は、「Java Transaction Service (JTS)」および「XA データソースおよび XA トランザクション」を参照してください。

11.2.14. ORB 移植性 API

Object Request Broker (ORB) とは、複数のアプリケーションサーバーで分散されるトランザクションの参加者、コーディネーター、リソース、および他のサービスにメッセージを送受信するプロセスのことです。ORB は標準的なインターフェース記述言語 (IDL) を使用してメッセージを通信し解釈します。Common Object Request Broker Architecture (CORBA) は JBoss EAP の ORB によって使用される IDL です。

ORB を使用する主なタイプのサービスは、Java Transaction Service (JTS) 仕様を使用する分散 Java トランザクションのシステムです。特に、レガシーシステムなどのその他のシステムでは、通信にリモートエンタープライズ JavaBeans、JAX-WS、または JAX-RS Web サービスなどのその他のメカニズムではなく ORB を使用できます。

ORB 移植性 API は ORB とやりとりするメカニズムを提供します。この API は ORB への参照を取得するメソッドや、ORB からの受信接続をリッスンするモードにアプリケーションを置くメソッドを提供します。API のメソッドの一部はすべての ORB によってサポートされていません。このような場合、例外が発生します。

API は 2 つの異なるクラスによって構成されます。

  • com.arjuna.orbportability.orb
  • com.arjuna.orbportability.oa

ORB Portability API に含まれるメソッドとプロパティーの詳細は、Red Hat カスタマーポータルの JBoss EAP Javadocs バンドルを参照してください。