6.4. HA シングルトンサービス

クラスター化されたシングルトンサービス (高可用性 (HA) シングルトンとも呼ばれます) は、クラスターの複数のノードにデプロイされるサービスです。このサービスはいずれかのノードでのみ提供されます。シングルトンサービスが実行されているノードは、通常マスターノードと呼ばれます。

マスターノードが失敗またはシャットダウンした場合に、残りのノードから別のマスターが選択され、新しいマスターでサービスが再開されます。マスターが停止し、別のマスターが引き継ぐまでの短い間を除き、サービスは 1 つのノードのみによって提供されます。

HA シングルトン ServiceBuilder API

JBoss EAP 7 では、プロセスを大幅に簡略化するシングルトンサービスを構築するための新しいパブリック API が導入されました。

SingletonServiceBuilder 実装により、サービスは非同期的に開始されるようインストールされ、Modular Service Container (MSC) のデッドロックが回避されます。

HA シングルトンサービス選択ポリシー

HA シングルトンを起動するノードの優先順位がある場合は、ServiceActivator クラスで選択ポリシーを設定できます。

JBoss EAP は、以下の 2 つの選択ポリシーを提供します。

  • 単純な選択ポリシー

    単純な選択ポリシーでは、相対的な経過時間に基づいてマスターノードが選択されます。必要な経過時間は、利用可能なノードのリストのインデックスである position プロパティーで、以下のように設定されます。

    • position = 0 最も古いノードを参照します。これはデフォルトです。
    • position = 1 2 番目に古いノードを参照します。

    position を負の値にして最も新しいノードを示すこともできます。

    • position = -1 最も新しいノードを参照します。
    • position = -2 2 番目に新しいノードを参照します。
  • ランダムな選択ポリシー

    ランダムな選択ポリシーでは、シングルトンサービスのプロバイダーとなるランダムなメンバーが選択されます。

HA シングルトンサービスの優先度

HA シングルトンサービスの選択ポリシーは、任意で 1 つ以上の優先されるサーバーを指定することができます。優先されるサーバーが利用できる場合は、そのポリシーにおけるすべてのシングルトンアプリケーションでそのサーバーがマスターになります。

優先度は、ノード名またはアウトバウンドソケットバインディング名を介して定義することができます。

注記

ノードの優先度は常に選択ポリシーの結果よりも優先されます。

デフォルトでは、JBoss EAP の高可用性設定によって、優先されるサーバーがない default という名前の簡単な選択ポリシーが提供されます。優先度を設定するには、カスタムポリシーを作成し、優先されるサーバーを定義します。

クォーラム

ネットワークパーティションがある場合、シングルトンサービスに潜在的な問題が存在します。この問題はスプリットブレインと呼ばれ、ノードの各サブセットは他のサブセットと通信できません。サーバーの各セットは他のセットのすべてのサーバーに障害が発生したと見なし、唯一障害が発生していないクラスターとして動作します。これによってデータの整合性に問題が発生する可能性があります。

JBoss EAP では、選択ポリシーでクォーラムを指定してスプリットブレインを防ぐことができます。クォーラムは、シングルトンプロバイダーの選択が行われる前に存在するノードの最小数を指定します。

典型的なデプロイメントでは、N/2 + 1 をクォーラムとして使用します。N は予想されるクラスターサイズになります。 この値は実行時に更新でき、アクティブなすべてのシングルトンサービスに即時反映されます。

HA シングルトンサービスアプリケーションの作成

以下に、アプリケーションを作成し、クラスター全体のシングルトンサービスとしてデプロイするのに必要な手順の簡単な例を示します。この例では、頻繁にシングルトンサービスをクエリーし、そのシングルトンサービスが実行されているノードの名前を取得します。

シングルトンの挙動を確認するには、最低でも 2 つのサーバーにアプリケーションをデプロイする必要があります。シングルトンサービスが同じノードで実行されているかまたは値がリモートで取得されているかは透過的です。

  1. SingletonService クラスを作成します。クエリーサービスによって呼び出される getValue() メソッドは、実行されているノードに関する情報を提供します。

    class SingletonService implements Service<Node> {
        private Logger LOG = Logger.getLogger(this.getClass());
        private InjectedValue<Group> group;
    
        SingletonService(InjectedValue<Group> group) {
            this.group = group;
        }
    
        @Override
        public void start(StartContext context) throws StartException {
            LOG.infof("Singleton service is starting on node '%s'.", this.group.getValue().getLocalNode());
        }
    
        @Override
        public void stop(StopContext context) {
            LOG.infof("Singleton service is stopping on node '%s'.", this.group.getValue().getLocalNode());
        }
    
        @Override
        public Node getValue() throws IllegalStateException, IllegalArgumentException {
            return this.group.getValue().getLocalNode();
        }
    }
  2. クエリーサービスを作成します。シングルトンサービスの getValue() メソッドを呼び出し、それが稼働しているノードの名前を取得して、サーバーログに結果を書き込みます。

    class QueryingService implements Service<Void> {
    
        private Logger LOG = Logger.getLogger(this.getClass());
        private ScheduledExecutorService executor;
    
        @Override
        public void start(StartContext context) throws StartException {
            LOG.info("Querying service is starting.");
    
            executor = Executors.newSingleThreadScheduledExecutor();
            executor.scheduleAtFixedRate(() -> {
    
                @SuppressWarnings("unchecked")
                ServiceController<Node> service = (ServiceController<Node>) context.getController().getServiceContainer()
                        .getService(ServiceActivator.SINGLETON_SERVICE_NAME);
                try {
                    Node node = service.awaitValue(5, TimeUnit.SECONDS);
                    LOG.infof("Singleton service is running on node '%s'.", node);
                } catch (InterruptedException | TimeoutException | IllegalStateException e) {
                    LOG.warn("Failed to query singleton service.");
                }
    
            }, 5, 5, TimeUnit.SECONDS);
        }
    
        @Override
        public void stop(StopContext context) {
            LOG.info("Querying service is stopping.");
    
            executor.shutdown();
        }
    
        @Override
        public Void getValue() throws IllegalStateException, IllegalArgumentException {
            return null;
        }
    
    }
  3. ServiceActivator クラスを実装し、シングルトンサービスとクエリーサービスの両方を構築およびインストールします。

    public class ServiceActivator implements org.jboss.msc.service.ServiceActivator {
    
        private final Logger LOG = Logger.getLogger(ServiceActivator.class);
        static final ServiceName SINGLETON_SERVICE_NAME =
                ServiceName.parse("org.jboss.as.quickstarts.ha.singleton.service.primary-only");
        private static final ServiceName QUERYING_SERVICE_NAME =
                ServiceName.parse("org.jboss.as.quickstarts.ha.singleton.service.primary-only.querying");
    
        @Override
        public void activate(ServiceActivatorContext serviceActivatorContext) {
            try {
                SingletonPolicy policy = (SingletonPolicy) serviceActivatorContext
                        .getServiceRegistry()
                        .getRequiredService(ServiceName.parse(SingletonDefaultRequirement.SINGLETON_POLICY.getName()))
                        .awaitValue();
    
                InjectedValue<Group> group = new InjectedValue<>();
    
                Service<Node> service = new SingletonService(group);
    
                policy.createSingletonServiceBuilder(SINGLETON_SERVICE_NAME, service)
                        .build(serviceActivatorContext.getServiceTarget())
                        .addDependency(ServiceName.parse("org.wildfly.clustering.default-group"), Group.class, group)
                        .install();
    
                serviceActivatorContext.getServiceTarget()
                        .addService(QUERYING_SERVICE_NAME, new QueryingService())
                        .setInitialMode(ServiceController.Mode.ACTIVE)
                        .install();
    
                LOG.info("Singleton and querying services activated.");
            } catch (InterruptedException e) {
                throw new ServiceRegistryException(e);
            }
        }
    }
  4. ServiceActivator クラスの名前 (例: org.jboss.as.quickstarts.ha.singleton.service.primary.ServiceActivator) が含まれる、org.jboss.msc.service.ServiceActivator という名前のファイルを META-INF/services/ ディレクトリーに作成します。

完全な作業例は、JBoss EAP に同梱される ha-singleton-service クイックスタートを参照してください。このクイックスタートには、バックアップサービスでインストールされるシングルトンサービスを実証する 2 つ目の例も含まれています。バックアップサービスは、シングルトンサービスの実行用に選択されていないすべてのノード上で実行されます。また、このクイックスタートは異なる選択ポリシーの設定方法についても実証します。