第1章 はじめに

本ドキュメントでは、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 6 から Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 へのアップグレードプロセスの概要について説明します。
現在 RHEL OpenStack Platform 5 (Icehouse) リリースを使用していて RHEL OpenStack Platform 7 (Kilo) リリースにアップグレードする予定の場合には、最初に RHEL OpenStack Platform 6 (Juno) リリースにアップグレードする必要があります。このアップグレードの実行手順は、https://access.redhat.com/documentation/ja-JP/Red_Hat_Enterprise_Linux_OpenStack_Platform/6/ の「アップグレード」から入手できます。
Red Hat では、Red Hat Enterprise Linux 7 をベースとする Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 へのアップグレードのみをサポートしています。このアップグレードパスに対応するには、以下に記載するアップグレード方式を推奨します。それぞれの方式についての説明は、「アップグレード方式の比較」に記載しています。また、「アップグレード方式の比較」には、各方式を更に詳しく説明した章へのリンクも記載しています。コンポーネントに関する詳細は、https://access.redhat.com/documentation/ja-JP/Red_Hat_Enterprise_Linux_OpenStack_Platform/ から コンポーネントの概要 を参照してください。
本書では、「一括アップグレード」「個別アップグレード」の両方のシナリオで、高可用性と非高可用性の両方の手順を説明します。高可用性と非高可用性の主な相違点は、高可用性のアップグレードでは Pacemaker サービスが適切に有効化/無効化されているようにする必要があることです。
以下のアップグレード方式はすべて、正常に機能する RHEL OpenStack Platform 7 (Kilo) にアップグレードすることができます。並行稼働によるクラウド移行方式を使用して、デプロイメントが RHEL OpenStack Platform 7 director に対応するようにさらなるアップグレード手順を実行することを推奨します。RHEL OpenStack Platform 7 の並行稼働のクラウド移行では、別のインストーラーでデプロイされた既存の OpenStack クラウドを RHEL OpenStack Platform 7 director にアップグレードします。

1.1. アップグレード方式の比較

Red Hat は、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 へのアップグレードに以下の方式を推奨しています。以下の表では、それぞれの方式を簡単に説明します。

表1.1 アップグレード方式

方式 説明 メリット デメリット
一括方式
この方法では、OpenStack サービスをすべて同時に停止してアップグレードを実行し、アップグレードプロセスの完了後に全サービスを再度稼働させます。
詳しい情報は「3章OpenStack の一括アップグレード」を参照してください。
このアップグレードプロセスは、すべてが停止した状態で、オーケストレーションの必要がないため、簡単に行うことができます。サービスは停止しますが、Red Hat Enterprise Linux バージョン (7.0 から 7.1 へ) のアップグレードの必要がない場合には、仮想マシンのワークロードの稼働状態を維持することができます。
全サービスが同時に使用できなくなります。大規模な環境の場合は、このアップグレードにより、データベーススキーマのアップグレード完了までのダウンタイムが長時間に及ぶ可能性があります。あらかじめテスト環境でアップグレード手順のリハーサルを実行し、特定の時間帯にダウンタイムを計画してアップグレードを行うことによって、ダウンタイムによる影響を軽減することができます。
稼働中の Compute を使用してサービス別にアップグレードする方式
この方法は、サービス別のアップグレードの一種ですが、Compute Service のアップグレード方法が異なります。この方法では、アップグレード済みのコンピュートノードと並行して旧バージョンのコンピュートノードを実行することが可能な Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 の機能を活用することができます。
この方法は、Compute Service の中断が最小限に抑えられます。小規模なサービスの場合はわずか数分ですが、新たにアップグレードされたコンピュートホストへワークロードを移動するには、より長い移行時間を要します。既存のワークロードは無期限で稼働させることが可能です。また、データベース移行を待つ必要はありません。
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 (Kilo) のコンピュートノードを稼働させるのに追加のハードウェアリソースが必要となる場合があります。
すべての方法に共通する注意事項
  • 全ホストが本リリース用の正しいチャンネルにサブスクライブされていることを確認してください。
  • アップグレード時には、一部のサービスを停止する必要があります。
  • コンピュートノードを再起動したり、インスタンスを明示的にシャットダウンしたりしない限りは、アップグレードプロセスは、実行中のインスタンスには影響を及ぼしません。
  • 旧ハイブリッドドライバーは非推奨となったため、OpenStack Networking をアップグレードするには、/etc/nova/nova.conf で正しい libvirt_vif_driver を設定する必要があります。そのためには、Compute API ホストで以下のコマンドを実行してください。
    Red Hat では USB ドライブや SD メモリーカードへのインストールはサポートしていません。

警告

Red Hat では以下のサポートはありません。
  • Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform のベータリリースからサポート対象リリース (例: 6 または 7) へのアップグレード
  • Compute Networking (nova-networking) から Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 の OpenStack Networking (neutron) へのアップグレード。ネットワークのアップグレードは、OpenStack Networking (neutron) バージョンを Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 6 から 7 にアップグレードする場合のみがサポート対象となっています。