4.2. ネットワークのプランニング

ロールとサービスを適切にマッピングして相互に正しく通信できるように、環境のネットワークトポロジーおよびサブネットのプランニングを行うことが重要です。Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7 では、自律的に動作してソフトウェアベースのネットワーク、静的/Floating IP アドレス、DHCP を管理する Neutron ネットワークサービスを使用します。director は、オーバークラウド環境の各コントローラーノードに、このサービスをデプロイします。
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform は、さまざまなサービスをマッピングして、お使いの環境の各種サブネットに割り当てられたネットワークトラフィックの種別を分類します。これらのネットワークトラフィック種別は以下のとおりです。

表4.2 ネットワーク種別の割り当て

ネットワーク種別
説明
そのネットワーク種別を使用するノード
IPMI
ノードの電源管理に使用するネットワーク。このネットワークは、アンダークラウドのインストール前に事前定義されます。
全ノード
プロビジョニング
director は、このネットワークトラフィック種別を使用して、PXE ブートで新規ノードをデプロイし、オーバークラウドベアメタルサーバーに OpenStack Platform のインストールをオーケストレーションします。このネットワークは、アンダークラウドのインストール前に事前定義されます。
全ノード
内部 API
内部 API ネットワークは、API 通信、RPC メッセージ、データベース通信経由で OpenStack のサービス間の通信を行う際に使用します。
コントローラー、コンピュート、Cinder Storage、Swift Storage
テナント
Neutron は、VLAN 分離 (各テナントネットワークがネットワーク VLAN) または VXLAN か GRE 経由のトンネリングを使用した独自のネットワークを各テナントに提供します。ネットワークトラフィックは、テナントのネットワークごとに分割されます。テナントネットワークには IP サブネットが割り当てられおり、複数のテナントネットワークが同じアドレスを使用する場合があります。
コントローラー、コンピュート
ストレージ
Block Storage、NFS、iSCSI など。理想的には、これはパフォーマンスの関係上、全く別のスイッチファブリックに分離します。
全ノード
ストレージ管理
OpenStack Object Storage (swift) は、このネットワークを使用して、参加するレプリカノード間でデータオブジェクトを同期します。プロキシーサービスは、ユーザー要求と背後にあるストレージ層の間の仲介インターフェースとして機能します。プロキシーは、受信要求を受け取り、必要なレプリカの位置を特定して要求データを取得します。Ceph バックエンドを使用するサービスは、Ceph と直接対話せずにフロントエンドのサービスを使用するため、ストレージ管理ネットワーク経由で接続を確立します。RBD ドライバーは例外で、このトラフィックは直接 Ceph に接続する点に注意してください。
コントローラー、Ceph Storage、Cinder Storage、Swift Storage
外部
グラフィカルシステム管理用の OpenStack Dashboard (Horizon)、OpenStack サービス用のパブリック API をホストして、インスタンスへの受信トラフィック向けに SNAT を実行します。外部ネットワークがプライベート IP アドレスを使用する場合には (RFC-1918 に準拠)、インターネットからのトラフィックに対して、さらに NAT を実行する必要があります。
コントローラー
Floating IP
受信トラフィックが Floating IP アドレスとテナントネットワーク内のインスタンスに実際に割り当てられた IP アドレスとの間の 1 対 1 の IP アドレスマッピングを使用してインスタンスに到達できるようにします。外部ネットワークからは分離した VLAN 上で Floating IP をホストする場合には、Floating IP VLAN をコントローラーノードにトランキングして、オーバークラウドの作成後に Neutron を介して VLAN を追加します。これにより、複数のブリッジに接続された複数の Floating IP ネットワークを作成する手段が提供されます。VLAN は、トランキングされますが、インスタンスとしては設定されません。その代わりに、Neutron は各 Floating IP ネットワークに選択したブリッジ上の VLAN セグメンテーション ID を使用して、OVS ポートを作成します。
コントローラー
一般的な Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform のシステム環境では通常、ネットワーク種別の数は物理ネットワークのリンク数を超えます。全ネットワークを正しいホストに接続するには、オーバークラウドにおいて VLAN タグ付けを使用して、1 つのインターフェースに複数のネットワークを提供します。

注記

デプロイ時に neutron VLAN モード (トンネリングは無効) を使用する場合でも、プロジェクトネットワーク (GRE または VXLAN でトンネリング) をデプロイすることを推奨します。これには、デプロイ時にマイナーなカスタマイズを行う必要があり、将来ユーティリティーネットワークまたは仮想化ネットワークとしてトンネルネットワークを使用するためのオプションが利用可能な状態になります。VLAN を使用してテナントネットワークを作成することは変わりませんが、テナントの VLAN を消費せずに特別な用途のネットワーク用に VXLAN トンネルを作成することも可能です。また、テナント VLAN を使用するデプロイメントに VXLAN 機能を追加することは可能ですが、サービスを中断せずにテナント VLAN を既存のオーバークラウドに追加することはできません。
director は、トラフィック種別の中から 5 つを特定のサブネットにや VLAN にマッピングする方法を提供します。このようなトラフィック種別には、以下が含まれます。
  • 内部 API
  • ストレージ
  • ストレージ管理
  • テナントネットワーク
  • 外部
未割り当てのネットワークは、プロビジョニングネットワークと同じサブネットに自動的に割り当てられます。
下図では、ネットワークが個別の VLAN に分離されたネットワークトポロジーの例を紹介しています。各オーバークラウドノードは、ボンディングで 2 つ (nic2 および nic3) のインターフェースを使用して、対象の VLAN 経由でこれらのネットワークを提供します。また、各オーバークラウドのノードは、ネイティブの VLAN (nic1) を使用するプロビジョニングネットワークでアンダークラウドと通信します。
Example VLAN Topology using Bonded Interfaces

図4.1 ボンディングインターフェースを使用する VLAN トポロジーの例

本ガイドでは、希望の環境をベースに複数のシナリオを提供しています。以下の表では、各シナリオのネットワークトラフィックマッピングを定義します。

表4.3 ネットワークマッピング

マッピング
インターフェースの総数
VLAN の総数
基本環境
ネットワーク 1: プロビジョニング、内部 API、ストレージ、ストレージ管理、テナントネットワーク
ネットワーク 2: 外部、Floating IP (オーバークラウドの作成後にマッピング)
2
2
Ceph Storage の高度な環境
ネットワーク 1: プロビジョニング
ネットワーク 2: 内部 API
ネットワーク 3: テナントネットワーク
ネットワーク 4: ストレージ
ネットワーク 5: ストレージ管理
ネットワーク 6: 外部、Floating IP (オーバークラウドの作成後にマッピング)
3 (ボンディングインターフェース 2 つを含む)
6