2.7. Galera で MariaDB を複製する
Red Hat Enterprise Linux 9 の Galera ソリューションを使用して、MariaDB データベースをレプリケートできます。
2.7.1. MariaDB Galera クラスターの概要
Galera レプリケーションは、複数の MariaDB サーバーで設定される同期マルチソース MariaDB Galera クラスター の作成に基づいています。レプリカが通常読み取り専用である従来のプライマリー/レプリカ設定とは異なり、MariaDB Galera クラスターのノードはすべて書き込み可能にすることができます。
Galera レプリケーションと MariaDB データベースとの間のインターフェイスは、書き込みセットレプリケーション API (wsrep API) で定義されます。
MariaDB Galera クラスター の主な機能は以下のとおりです。
- 同期のレプリケーション
- アクティブ/アクティブのマルチソーストポロジー
- クラスターノードへの読み取りおよび書き込み
- 自動メンバーシップ制御、失敗したノードのクラスターからの削除
- 自動ノードの参加
- 行レベルの並列レプリケーション
- ダイレクトクライアント接続: ユーザーはクラスターノードにログインし、レプリケーションの実行中にノードを直接操作できます。
同期レプリケーションとは、サーバーがトランザクションに関連付けられた書き込みセットをクラスター内のすべてのノードにブロードキャストすることで、コミット時にトランザクションをレプリケートすることを意味します。クライアント (ユーザーアプリケーション) はデータベース管理システム (DBMS) に直接接続し、ネイティブの MariaDB と同様の動作が発生します。
同期レプリケーションは、クラスター内の 1 つのノードで発生した変更が、クラスター内の他のノードで同時に発生することを保証します。
そのため、同期レプリケーションには、非同期のレプリケーションと比べて次のような利点があります。
- 特定のクラスターノード間の変更の伝播に遅延がない
- すべてのクラスターノードには常に一貫性がある
- いずれかのクラスターノードがクラッシュしても、最新の変更は失われない
- すべてのクラスターノードのトランザクションが並列に実行する
- クラスター全体にわたる因果関係
2.7.2. MariaDB Galera クラスターを構築するためのコンポーネント
MariaDB Galera クラスター を構築するには、システムに以下のパッケージをインストールする必要があります。
-
mariadb-server-galera
: MariaDB Galera クラスター のサポートファイルとスクリプトが含まれます。 -
mariadb-server
: MariaDB アップストリームがパッチを適用し、書き込みセットレプリケーション API (wsrep API) を組み込みます。この API は、Galera レプリケーションと MariaDB との間のインターフェイスを提供します。 galera
: MariaDB アップストリームがパッチを適用し、MariaDB の完全サポートを追加します。galera
パッケージには、以下の内容が含まれます。- Galera Replication Library は、レプリケーション機能全体を提供します。
- Galera Arbitrator ユーティリティーは、スプリットブレインのシナリオで投票に参加するクラスターメンバーとして使用できます。ただし、Galera Arbitrator は実際のレプリケーションには参加できません。
-
Galera Arbitrator ユーティリティーのデプロイに使用される Galera Systemd service および Galera wrapper script。RHEL 9 は、
/usr/lib/systemd/system/garbd.service
および/usr/sbin/garb-systemd
にあるこれらのファイルのアップストリームバージョンを提供します。
2.7.3. MariaDB Galera クラスターのデプロイメント
MariaDB Galera Cluster パッケージをデプロイし、設定を更新できます。新しいクラスターを形成するには、クラスターの最初のノードをブートストラップする必要があります。
前提条件
MariaDB Galera Cluster パッケージをインストールします。
# dnf install mariadb-server-galera
その結果、次のパッケージが依存関係とともにインストールされます。
-
mariadb-server-galera
-
mariadb-server
galera
MariaDB Galera Cluster を構築するのに必要なパッケージの詳細は、Components to build MariaDB Cluster を参照してください。
-
MariaDB サーバーのレプリケーション設定は、システムを初めてクラスターに追加する前に更新する必要があります。
デフォルト設定は、
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルで配布されます。MariaDB Galera クラスター をデプロイする前に、以下の文字列で開始するように、すべてのノードの
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルにwsrep_cluster_address
オプションを設定します。gcomm://
初期ノードでは、
wsrep_cluster_address
を空のリストとして設定できます。wsrep_cluster_address="gcomm://"
その他のすべてのノードに
wsrep_cluster_address
を設定して、実行中のクラスターに属するノードへのアドレスを追加します。以下に例を示します。wsrep_cluster_address="gcomm://10.0.0.10"
Galera Cluster アドレスの設定方法は、Galera Cluster Address を参照してください。
手順
ノードで以下のラッパーを実行して、新規クラスターの最初のノードをブートストラップします。
# galera_new_cluster
このラッパーにより、MariaDB サーバーデーモン (
mariadbd
) に--wsrep-new-cluster
オプションが指定されて実行されるようになります。このオプションは、接続する既存クラスターがないという情報を提供します。したがって、ノードは新規 UUID を作成し、新しいクラスターを特定します。注記mariadb
サービスは、複数の MariaDB サーバープロセスと対話する systemd メソッドをサポートします。したがって、複数の MariaDB サーバーを実行している場合は、インスタンス名を接尾辞として指定して、特定のインスタンスをブートストラップできます。# galera_new_cluster mariadb@node1
各ノードで次のコマンドを実行して、その他のノードをクラスターに接続します。
# systemctl start mariadb
その結果、ノードはクラスターに接続し、それ自体をクラスターの状態と同期します。
2.7.4. 新規ノードの MariaDB Galera クラスターへの追加
新規ノードを MariaDB Galera クラスター に追加するには、以下の手順に従います。
この手順に従って、既存のノードを再接続することもできます。
手順
特定のノードで、
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
設定ファイルの[mariadb]
セクション内にあるwsrep_cluster_address
オプションで、1 つ以上の既存クラスターメンバーにアドレスを指定します。[mariadb] wsrep_cluster_address="gcomm://192.168.0.1"
新規ノードを既存クラスターノードのいずれかに接続すると、クラスター内のすべてのノードを表示できるようになります。
ただし、
wsrep_cluster_address
のクラスターの全ノードを表示することが推奨されます。したがって、1 つ以上のクラスターノードがダウンしても、その他のクラスターノードに接続することでノードがクラスターに参加できます。すべてのメンバーがメンバーシップに同意すると、クラスターの状態が変更します。新規ノードの状態がクラスターの状態と異なる場合、新しいノードは Incremental State Transfer (IST) または State Snapshot Transfer (SST) のいずれかを要求し、他のノードとの一貫性を確保します。
2.7.5. MariaDB Galera クラスターの再起動
すべてのノードを同時にシャットダウンすると、クラスターが終了し、実行中のクラスターは存在しなくなります。ただし、クラスターのデータは引き続き存在します。
クラスターを再起動するには、MariaDB Galera クラスターの設定の説明に従って、最初のノードをブートストラップします。
クラスターがブートストラップされず、最初のノードの mariadbd
が systemctl start mariadb
コマンドでのみ起動した場合、ノードは /etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルの wsrep_cluster_address
オプションに記載されている少なくとも 1 つのノードに接続しようとします。ノードが現在実行していない場合は、再起動に失敗します。