第5章 LVM 論理ボリュームの管理

論理ボリュームは、ファイルシステム、データベース、またはアプリケーションが使用できる仮想のブロックストレージデバイスです。LVM 論理ボリュームを作成する場合は、物理ボリューム (PV) をボリュームグループ (Volume Group: VG) に統合します。これによりディスク領域のプールが作成され、そこから LVM 論理ボリューム (Logical Volume: LV) を割り当てます。

5.1. 論理ボリュームの概要

管理者は、標準のディスクパーティションとは異なり、データを破棄せずに論理ボリュームを拡大または縮小できます。ボリュームグループの物理ボリュームが別のドライブまたは RAID アレイにある場合は、ストレージデバイスに論理ボリュームを分散することもできます。

論理ボリュームを、ボリュームに必要なデータよりも小さい容量に縮小すると、データが失われる可能性があります。さらに、ファイルシステムの中には縮小できないものもあります。柔軟性を最大限にするために、現在のニーズに合わせて論理ボリュームを作成し、過剰なストレージ容量を未割り当ての状態にします。必要に応じて、未割り当ての領域を使用するように、論理ボリュームを安全に拡張できます。

重要

AMD システム、Intel システム、ARM システム、および IBM Power Systems サーバーで、ブートローダーは LVM ボリュームを読み取ることができません。このため、/boot パーティションは、LVM ではなく標準のパーティションで作成してください。IBM Z の場合は、zipl ブートローダーによりリニアマッピングを使用した LVM 論理ボリューム上の /boot に対応しています。デフォルトのインストールプロセスでは、/ パーティションと swap パーティションは常に LVM ボリューム内に、/boot パーティションは別途、物理ボリューム上に作成されます。

以下は、論理ボリュームの種類になります。

リニアボリューム
リニアボリュームは、複数の物理ボリュームの領域を 1 つの論理ボリュームに統合します。たとえば、60GB ディスクが 2 つある場合は、120GB の論理ボリュームを作成できます。物理ストレージは連結されます。
ストライプ化論理ボリューム

LVM 論理ボリュームにデータを書き込む際に、ファイルシステムは、基になる物理ボリューム全体にデータを分配します。このとき、ストライプ化論理ボリュームを作成すると、データを物理ボリュームに書き込む方法を制御できます。順次の読み取りおよび書き込みが大量に行われる場合には、これによりデータ I/O の効率を向上できます。

ストライピングは、ラウンドロビン式で、指定した数の物理ボリュームにデータを書き込んでいくことで、パフォーマンスを向上させます。I/O は、ストライピングでは並行して実行されます。これにより、ストライプで追加される各物理ボリュームでは、ほぼ直線的なパフォーマンスの向上が期待できます。

RAID 論理ボリューム
LVM は、RAID レベル 0、1、4、5、6、10 に対応します。RAID 論理ボリュームはクラスターには対応していません。RAID 論理ボリュームを作成するとき、LVM は、データまたはアレイ内のパリティーサブボリュームごとに、サイズが 1 エクステントのメタデータサブボリュームを作成します。
シンプロビジョニングされた論理ボリューム (シンボリューム)
シンプロビジョニングされた論理ボリュームを使用すると、利用可能な物理ストレージよりも大きな論理ボリュームを作成できます。シンプロビジョニングされたボリュームセットを作成すると、システムは要求されるストレージの全量を割り当てる代わりに、実際に使用する容量を割り当てることができます。
スナップショットボリューム
LVM スナップショット機能により、サービスを中断せずに任意の時点でデバイスの仮想イメージを作成できます。スナップショットの取得後に作成元のデバイスに変更が加えられると、データが変更する前に、これから変更する部分のコピーがスナップショット機能により作成されるため、このコピーを使用して、デバイスの状態を再構築できます。
シンプロビジョニングされたスナップショットボリューム
シンプロビジョニングされたスナップショットボリュームを使用すると、同じデータボリュームにより多くの仮想デバイスを格納できます。シンプロビジョニングされたスナップショットは、特定のタイミングでキャプチャーする際にすべてのデータをコピーしていないため、便利です。
キャッシュボリューム
LVM は、高速ブロックデバイス (SSD ドライブなど) を、大規模で低速なブロックデバイスのライトバックまたはライトスルーのキャッシュとして使用することに対応します。既存の論理ボリュームのパフォーマンスを改善するためにキャッシュ論理ボリュームを作成したり、大規模で低速なデバイスと共に小規模で高速なデバイスで設定される新規のキャッシュ論理ボリュームを作成したりできます。