ネットワークのセキュリティー保護
セキュリティー保護されたネットワークおよびネットワーク通信の設定
概要
多様性を受け入れるオープンソースの強化
Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ を参照してください。
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第1章 2 台のシステム間で OpenSSH を使用した安全な通信の使用
SSH (Secure Shell) は、クライアント/サーバーアーキテクチャーを使用する 2 つのシステム間で安全な通信を提供し、ユーザーがリモートでサーバーホストシステムにログインできるようにするプロトコルです。FTP、Telnet などの他のリモート通信プロトコルとは異なり、SSH はログインセッションを暗号化するため、侵入者が接続して暗号化されていないパスワードを入手するのが困難になります。
Red Hat Enterprise Linux には、基本的な OpenSSH
パッケージ (一般的な openssh
パッケージ、openssh-server
パッケージ、および openssh-clients
パッケージ) が含まれます。OpenSSH
パッケージには、OpenSSL
パッケージ (openssl-libs
) が必要です。このパッケージは、重要な暗号化ライブラリーをいくつかインストールして、暗号化通信を提供する OpenSSH
を有効にします。
1.1. SSH と OpenSSH
SSH (Secure Shell) は、リモートマシンにログインしてそのマシンでコマンドを実行するプログラムです。SSH プロトコルは、安全でないネットワーク上で、信頼されていないホスト間で安全な通信を提供します。また、X11 接続と任意の TCP/IP ポートを安全なチャンネルで転送することもできます。
SSH プロトコルは、リモートシェルのログインやファイルコピー用に使用する場合に、システム間の通信の傍受や特定ホストの偽装など、セキュリティーの脅威を軽減します。これは、SSH クライアントとサーバーがデジタル署名を使用してそれぞれの ID を確認するためです。さらに、クライアントシステムとサーバーシステムとの間の通信はすべて暗号化されます。
ホストキーは、SSH プロトコルのホストを認証します。ホスト鍵は、OpenSSH の初回インストール時、またはホストの初回起動時に自動的に生成される暗号鍵です。
OpenSSH は、Linux、UNIX、および同様のオペレーティングシステムでサポートされている SSH プロトコルの実装です。OpenSSH クライアントとサーバー両方に必要なコアファイルが含まれます。OpenSSH スイートは、以下のユーザー空間ツールで構成されます。
-
SSH
は、リモートログインプログラム (SSH クライアント) です。 -
sshd
は、OpenSSH SSH デーモンです。 -
scp
は、安全なリモートファイルコピープログラムです。 -
sftp
は、安全なファイル転送プログラムです。 -
ssh-agent
は、秘密鍵をキャッシュする認証エージェントです。 -
ssh-add
は、秘密鍵の ID をssh-agent
に追加します。 -
ssh-keygen
が、ssh
の認証キーを生成、管理、および変換します。 -
ssh-copy-id
は、ローカルの公開鍵をリモート SSH サーバーのauthorized_keys
ファイルに追加するスクリプトです。 -
ssh-keyscan
- SSH パブリックホストキーを収集します。
RHEL 9 では、Secure copy protocol (SCP) がデフォルトで SSH File Transfer Protocol (SFTP) に置き換えられています。これは、CVE-2020-15778 など、SCP が原因のセキュリティーの問題が発生しているためです。
使用しているシナリオで SFTP が利用できない場合や互換性がない場合は、-O
オプションを使用して、元の SCP/RCP プロトコルを強制的に使用できます。
追加情報は Red Hat Enterprise Linux 9 の記事の OpenSSH SCP プロトコルが非推奨に を参照してください。
現在、SSH のバージョンには、バージョン 1 と新しいバージョン 2 の 2 つがあります。RHEL の OpenSSH スイートは、SSH バージョン 2 のみをサポートします。このスイートは、バージョン 1 で知られているエクスプロイトに対して脆弱ではない拡張キー交換アルゴリズムを備えています。
RHEL コア暗号化サブシステムの 1 つである OpenSSH は、システム全体の暗号化ポリシーを使用します。これにより、弱い暗号スイートおよび暗号化アルゴリズムがデフォルト設定で無効になります。ポリシーを変更するには、管理者が update-crypto-policies
コマンドを使用して設定を調節するか、システム全体の暗号化ポリシーを手動でオプトアウトする必要があります。
OpenSSH スイートは、2 セットの設定ファイルを使用します。1 つはクライアントプログラム (つまり、ssh
、scp
、および sftp
) 用で、もう 1 つはサーバー (sshd
デーモン) 用です。
システム全体の SSH 設定情報が /etc/ssh/
ディレクトリーに保存されます。ユーザー固有の SSH 設定情報は、ユーザーのホームディレクトリーの ~/.ssh/
に保存されます。OpenSSH 設定ファイルの詳細なリストは、sshd (8)
の man ページの FILES
セクションを参照してください。
関連情報
-
man -k ssh
コマンドを使用してリスト表示される man ページ - システム全体の暗号化ポリシーの使用
1.2. OpenSSH サーバーの設定および起動
お使いの環境と OpenSSH サーバーの起動に必要となる基本設定には、以下の手順を使用します。デフォルトの RHEL インストールを行うと、sshd
デーモンがすでに起動し、サーバーのホスト鍵が自動的に作成されることに注意してください。
前提条件
-
openssh-server
パッケージがインストールされている。
手順
現行セッションで
sshd
デーモンを開始し、ブート時に自動的に起動するように設定します。# systemctl start sshd # systemctl enable sshd
デフォルトの
0.0.0.0
(IPv4) または::
とは異なるアドレスを指定するには、以下を行います。(IPv6)/etc/ssh/sshd_config
設定ファイルのListenAddress
ディレクティブ、および低速な動的ネットワーク設定を使用するには、network-online.target
ターゲットユニットの依存関係をsshd.service
ユニットファイルに追加します。これを行うには、以下の内容で/etc/systemd/system/sshd.service.d/local.conf
ファイルを作成します。[Unit] Wants=network-online.target After=network-online.target
-
/etc/ssh/sshd_config
設定ファイルの OpenSSH サーバーの設定がシナリオの要件を満たしているかどうかを確認します。 必要に応じて、
/etc/issue
ファイルを編集して、クライアント認証を行う前に OpenSSH サーバーに表示される welcome メッセージを変更します。以下に例を示します。Welcome to ssh-server.example.com Warning: By accessing this server, you agree to the referenced terms and conditions.
Banner
オプションが/etc/ssh/sshd_config
でコメントアウトされておらず、その値に/etc/issue
が含まれていることを確認します。# less /etc/ssh/sshd_config | grep Banner Banner /etc/issue
ログインに成功すると表示されるメッセージを変更するには、サーバーの
/etc/motd
ファイルを編集する必要があります。詳細は、pam_motd
の man ページを参照してください。systemd
設定を再読み込みし、sshd
を再起動して変更を適用します。# systemctl daemon-reload # systemctl restart sshd
検証
sshd
デーモンが実行していることを確認します。# systemctl status sshd ● sshd.service - OpenSSH server daemon Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/sshd.service; enabled; vendor preset: enabled) Active: active (running) since Mon 2019-11-18 14:59:58 CET; 6min ago Docs: man:sshd(8) man:sshd_config(5) Main PID: 1149 (sshd) Tasks: 1 (limit: 11491) Memory: 1.9M CGroup: /system.slice/sshd.service └─1149 /usr/sbin/sshd -D -oCiphers=aes128-ctr,aes256-ctr,aes128-cbc,aes256-cbc -oMACs=hmac-sha2-256,> Nov 18 14:59:58 ssh-server-example.com systemd[1]: Starting OpenSSH server daemon... Nov 18 14:59:58 ssh-server-example.com sshd[1149]: Server listening on 0.0.0.0 port 22. Nov 18 14:59:58 ssh-server-example.com sshd[1149]: Server listening on :: port 22. Nov 18 14:59:58 ssh-server-example.com systemd[1]: Started OpenSSH server daemon.
SSH クライアントを使用して SSH サーバーに接続します。
# ssh user@ssh-server-example.com ECDSA key fingerprint is SHA256:dXbaS0RG/UzlTTku8GtXSz0S1++lPegSy31v3L/FAEc. Are you sure you want to continue connecting (yes/no/[fingerprint])? yes Warning: Permanently added 'ssh-server-example.com' (ECDSA) to the list of known hosts. user@ssh-server-example.com's password:
関連情報
-
sshd(8)
およびsshd_config(5)
の man ページ。
1.3. 鍵ベースの認証用の OpenSSH サーバーの設定
システムのセキュリティーを強化するには、OpenSSH サーバーでパスワード認証を無効にして鍵ベースの認証を有効にします。
前提条件
-
openssh-server
パッケージがインストールされている。 -
サーバーで
sshd
デーモンが実行している。
手順
テキストエディターで
/etc/ssh/sshd_config
設定を開きます。以下に例を示します。# vi /etc/ssh/sshd_config
PasswordAuthentication
オプションをno
に変更します。PasswordAuthentication no
新しいデフォルトインストール以外のシステムで
PubkeyAuthentication no
が設定されていないことと、KbdInteractiveAuthentication
ディレクティブがno
に設定されていることを確認します。リモートで接続している場合は、コンソールもしくは帯域外アクセスを使用せず、パスワード認証を無効にする前に、鍵ベースのログインプロセスをテストします。NFS がマウントされたホームディレクトリーで鍵ベースの認証を使用するには、SELinux ブール値
use_nfs_home_dirs
を有効にします。# setsebool -P use_nfs_home_dirs 1
sshd
デーモンを再読み込みし、変更を適用します。# systemctl reload sshd
関連情報
-
sshd(8)
、sshd_config(5)
、およびsetsebool(8)
の man ページ。
1.4. SSH 鍵ペアの生成
以下の手順を使用して、ローカルシステムに SSH 鍵ペアを生成し、生成された公開鍵を OpenSSH サーバーにコピーします。サーバーが正しく設定されている場合は、パスワードなしで OpenSSH サーバーにログインできます。
root
で次の手順を完了すると、鍵を使用できるのは root
だけとなります。
手順
SSH プロトコルのバージョン 2 用の ECDSA 鍵ペアを生成するには、次のコマンドを実行します。
$ ssh-keygen -t ecdsa Generating public/private ecdsa key pair. Enter file in which to save the key (/home/joesec/.ssh/id_ecdsa): Enter passphrase (empty for no passphrase): Enter same passphrase again: Your identification has been saved in /home/joesec/.ssh/id_ecdsa. Your public key has been saved in /home/joesec/.ssh/id_ecdsa.pub. The key fingerprint is: SHA256:Q/x+qms4j7PCQ0qFd09iZEFHA+SqwBKRNaU72oZfaCI joesec@localhost.example.com The key's randomart image is: +---[ECDSA 256]---+ |.oo..o=++ | |.. o .oo . | |. .. o. o | |....o.+... | |o.oo.o +S . | |.=.+. .o | |E.*+. . . . | |.=..+ +.. o | | . oo*+o. | +----[SHA256]-----+
ssh-keygen
コマンドまたは Ed25519 鍵ペアに-t rsa
オプションを指定して RSA 鍵ペアを生成するには、ssh-keygen -t ed25519
コマンドを実行します。公開鍵をリモートマシンにコピーするには、次のコマンドを実行します。
$ ssh-copy-id joesec@ssh-server-example.com /usr/bin/ssh-copy-id: INFO: attempting to log in with the new key(s), to filter out any that are already installed joesec@ssh-server-example.com's password: ... Number of key(s) added: 1 Now try logging into the machine, with: "ssh 'joesec@ssh-server-example.com'" and check to make sure that only the key(s) you wanted were added.
セッションで
ssh-agent
プログラムを使用しない場合は、上記のコマンドで、最後に変更した~/.ssh/id*.pub
公開鍵をコピーします (インストールされていない場合)。別の公開キーファイルを指定したり、ssh-agent
により、メモリーにキャッシュされた鍵よりもファイル内の鍵の方が優先順位を高くするには、-i
オプションを指定してssh-copy-id
コマンドを使用します。
システムを再インストールする際に、生成しておいた鍵ペアを引き続き使用する場合は、~/.ssh/
ディレクトリーのバックアップを作成します。再インストール後に、このディレクトリーをホームディレクトリーにコピーします。これは、(root
を含む) システムの全ユーザーで実行できます。
検証
パスワードなしで OpenSSH サーバーにログインします。
$ ssh joesec@ssh-server-example.com Welcome message. ... Last login: Mon Nov 18 18:28:42 2019 from ::1
関連情報
-
ssh-keygen (1)
およびssh-copy-id (1)
の man ページ
1.5. スマートカードに保存された SSH 鍵の使用
Red Hat Enterprise Linux では、OpenSSH クライアントでスマートカードに保存されている RSA 鍵および ECDSA 鍵を使用できるようになりました。この手順に従って、パスワードの代わりにスマートカードを使用した認証を有効にします。
前提条件
-
クライアントで、
opensc
パッケージをインストールして、pcscd
サービスを実行している。
手順
PKCS #11 の URI を含む OpenSC PKCS #11 モジュールが提供する鍵のリストを表示し、その出力を keys.pub ファイルに保存します。
$ ssh-keygen -D pkcs11: > keys.pub $ ssh-keygen -D pkcs11: ssh-rsa AAAAB3NzaC1yc2E...KKZMzcQZzx pkcs11:id=%02;object=SIGN%20pubkey;token=SSH%20key;manufacturer=piv_II?module-path=/usr/lib64/pkcs11/opensc-pkcs11.so ecdsa-sha2-nistp256 AAA...J0hkYnnsM= pkcs11:id=%01;object=PIV%20AUTH%20pubkey;token=SSH%20key;manufacturer=piv_II?module-path=/usr/lib64/pkcs11/opensc-pkcs11.so
リモートサーバー (example.com) でスマートカードを使用した認証を有効にするには、公開鍵をリモートサーバーに転送します。前の手順で作成された keys.pub で
ssh-copy-id
コマンドを使用します。$ ssh-copy-id -f -i keys.pub username@example.com
手順 1 の
ssh-keygen -D
コマンドの出力にある ECDSA 鍵を使用して example.com に接続するには、鍵を一意に参照する URI のサブセットのみを使用できます。以下に例を示します。$ ssh -i "pkcs11:id=%01?module-path=/usr/lib64/pkcs11/opensc-pkcs11.so" example.com Enter PIN for 'SSH key': [example.com] $
~/.ssh/config
ファイルで同じ URI 文字列を使用して、設定を永続化できます。$ cat ~/.ssh/config IdentityFile "pkcs11:id=%01?module-path=/usr/lib64/pkcs11/opensc-pkcs11.so" $ ssh example.com Enter PIN for 'SSH key': [example.com] $
OpenSSH は
p11-kit-proxy
ラッパーを使用し、OpenSC PKCS #11 モジュールが PKCS#11 キットに登録されているため、以前のコマンドを簡素化できます。$ ssh -i "pkcs11:id=%01" example.com Enter PIN for 'SSH key': [example.com] $
PKCS #11 の URI の id=
の部分を飛ばすと、OpenSSH が、プロキシーモジュールで利用可能な鍵をすべて読み込みます。これにより、必要な入力の量を減らすことができます。
$ ssh -i pkcs11: example.com
Enter PIN for 'SSH key':
[example.com] $
関連情報
- Fedora 28:Better smart card support in OpenSSH
-
p11-kit(8)
、opensc.conf(5)
、pcscd(8)
、ssh(1)
、およびssh-keygen(1)
の man ページ
1.6. OpenSSH のセキュリティーの強化
以下のヒントは、OpenSSH を使用する際にセキュリティーを高めるのに役に立ちます。OpenSSH 設定ファイル /etc/ssh/sshd_config
を変更するには、sshd
デーモンを再読み込みして有効にする必要があることに注意してください。
# systemctl reload sshd
ほとんどのセキュリティー強化の設定変更により、最新のアルゴリズムまたは暗号スイートに対応していないクライアントとの互換性が低下します。
安全ではない接続プロトコルの無効化
- SSH を本当の意味で有効なものにするため、OpenSSH スイートに置き換えられる安全ではない接続プロトコルを使用しないようにします。このような接続プロトコルを使用すると、ユーザーのパスワード自体は SSH を使用した 1 回のセッションで保護されても、その後に Telnet を使用してログインした時に傍受されてしまうためです。このため、telnet、rsh、rlogin、ftp などの安全ではないプロトコルを無効にすることを検討してください。
鍵ベースの認証の有効化およびパスワードベースの認証の無効化
認証用パスワードを無効にして鍵のペアのみを許可すると、攻撃対象領域が減ってユーザーの時間を節約できる可能性があります。クライアントにおいて、
ssh-keygen
ツールを使用して鍵のペアを生成し、ssh-copy-id
ユーティリティーを使用して OpenSSH サーバーのクライアントから公開鍵をコピーします。OpenSSH サーバーでパスワードベースの認証を無効にするには、/etc/ssh/sshd_config
のPasswordAuthentication
オプションをno
に変更します。PasswordAuthentication no
鍵のタイプ
ssh-keygen
コマンドは、デフォルトで RSA 鍵のペアを生成しますが、-t
オプションを使用して ECDSA 鍵または Ed25519 鍵を生成するように指定できます。ECDSA (Elliptic Curve Digital Signature Algorithm) は、同等の対称鍵強度で RSA よりも優れたパフォーマンスを提供します。また、短いキーも生成します。Ed25519 公開鍵アルゴリズムは、RSA、DSA、および ECDSA より安全で高速な歪曲エドワーズ曲線の実装です。サーバーホストの鍵の RSA、ECDSA、および Ed25519 がない場合は、OpenSSH が自動的に作成します。RHEL でホストの鍵の作成を設定するには、インスタンス化したサービス
sshd-keygen@.service
を使用します。たとえば、RSA 鍵タイプの自動作成を無効にするには、次のコマンドを実行します。# systemctl mask sshd-keygen@rsa.service
注記cloud-init
が有効になっているイメージでは、ssh-keygen
ユニットが自動的に無効になります。これは、ssh-keygen template
サービスがcloud-init
ツールに干渉し、ホストキーの生成で問題が発生する可能性があるためです。これらの問題を回避するには、cloud-init
が実行している場合に、etc/systemd/system/sshd-keygen@.service.d/disable-sshd-keygen-if-cloud-init-active.conf
ドロップイン設定ファイルによりssh-keygen
ユニットが無効になります。SSH 接続の特定の鍵タイプを除外するには、
/etc/ssh/sshd_config
で該当行をコメントアウトしてsshd
サービスを再読み込みします。たとえば、Ed25519 ホストキーだけを許可するには、次のコマンドを実行します。# HostKey /etc/ssh/ssh_host_rsa_key # HostKey /etc/ssh/ssh_host_ecdsa_key HostKey /etc/ssh/ssh_host_ed25519_key
重要Ed25519 アルゴリズムは FIPS-140 に準拠していないため、OpenSSH は FIPS モードの Ed25519 キーでは機能しません。
デフォルト以外のポート
デフォルトでは、
sshd
デーモンは TCP ポート 22 をリッスンします。ポートを変更すると、自動ネットワークスキャンに基づく攻撃にシステムがさらされる可能性が減るため、あいまいさによりセキュリティーが向上します。ポートは、/etc/ssh/sshd_config
設定ファイルのPort
ディレクティブを使用して指定できます。また、デフォルト以外のポートを使用できるように、デフォルトの SELinux ポリシーも更新する必要があります。そのためには、
policycoreutils-python-utils
パッケージのsemanage
ツールを使用します。# semanage port -a -t ssh_port_t -p tcp <port_number>
さらに、
firewalld
設定を更新します。# firewall-cmd --add-port <port_number>/tcp # firewall-cmd --remove-port=22/tcp # firewall-cmd --runtime-to-permanent
前のコマンドの <port_number> は、
Port
ディレクティブを使用して指定した新しいポート番号に置き換えます。
Root ログイン
PermitRootLogin
はデフォルトでprohibit-password
に設定されています。これにより、root としてログインしてパスワードを使用する代わりに鍵ベースの認証が使用され、ブルートフォース攻撃を防ぐことでリスクが軽減します。警告root ユーザーとしてログインを有効にすることは、どのユーザーがどの特権コマンドを実行するかを監査できないため、安全ではありません。管理コマンドを使用するには、ログインして、代わりに
sudo
を使用します。
X セキュリティー拡張機能の使用
Red Hat Enterprise Linux クライアントの X サーバーは、X セキュリティー拡張を提供しません。そのため、クライアントは X11 転送を使用して信頼できない SSH サーバーに接続するときに別のセキュリティー層を要求できません。ほとんどのアプリケーションは、この拡張機能を有効にしても実行できません。
デフォルトでは、
/etc/ssh/ssh_config.d/50-redhat.conf
ファイルのForwardX11Trusted
オプションがyes
に設定され、ssh -X remote_machine
コマンド (信頼できないホスト) とssh -Y remote_machine
コマンド (信頼できるホスト) には違いがありません。シナリオで X11 転送機能を必要としない場合は、
/etc/ssh/sshd_config
設定ファイルのX11Forwarding
ディレクティブをno
に設定します。
特定のユーザー、グループ、またはドメインへのアクセス制限
/etc/ssh/sshd_config
設定ファイルのAllowUsers
ディレクティブおよびAllowGroups
ディレクティブを使用すると、特定のユーザー、ドメイン、またはグループのみが OpenSSH サーバーに接続することを許可できます。AllowUsers
およびAllowGroups
を組み合わせて、アクセスをより正確に制限できます。以下に例を示します。AllowUsers *@192.168.1.*,*@10.0.0.*,!*@192.168.1.2 AllowGroups example-group
この設定行は、192.168.1.* サブネットおよび 10.0.0.* のサブネットのシステムの全ユーザーからの接続を許可します (192.168.1.2 アドレスのシステムを除く)。すべてのユーザーは、
example-group
グループに属している必要があります。OpenSSH サーバーは、その他のすべての接続を拒否します。OpenSSH サーバーは、
/etc/ssh/sshd_config
内のすべての Allow および Deny ディレクティブを渡す接続のみを許可します。たとえば、AllowUsers
ディレクティブに、AllowGroups
ディレクティブにリストされているグループの一部ではないユーザーがリストされている場合、そのユーザーはログインできません。許可リストは、許可されていない新しいユーザーまたはグループもブロックするため、許可リスト (Allow で始まるディレクティブ) の使用は、拒否リスト (Deny で始まるオプション) を使用するよりも安全です。
システム全体の暗号化ポリシーの変更
OpenSSH は、RHEL のシステム全体の暗号化ポリシーを使用し、デフォルトのシステム全体の暗号化ポリシーレベルは、現在の脅威モデルに安全な設定を提供します。暗号化の設定をより厳格にするには、現在のポリシーレベルを変更します。
# update-crypto-policies --set FUTURE Setting system policy to FUTURE
警告システムがインターネット上で通信する場合、
FUTURE
ポリシーの厳密な設定により、相互運用性の問題が発生する可能性があります。
システム全体の暗号化ポリシーにより、SSH プロトコルの特定の暗号のみを無効にすることもできます。詳細は、セキュリティーの強化 ドキュメントの サブポリシーを使用したシステム全体の暗号化ポリシーのカスタマイズ セクションを参照してください。
OpenSSH サーバーのシステム全体の暗号化ポリシーをオプトアウトするには、/etc/ssh/sshd_config.d/
ディレクトリーにあるドロップイン設定ファイルに暗号化ポリシーを指定します。このとき、辞書式順序で 50-redhat.conf
ファイルよりも前に来るように、50 未満の 2 桁の数字接頭辞と、.conf
という接尾辞を付けます (例: 49-crypto-policy-override.conf
)。
詳細は、sshd_config(5)
の man ページを参照してください。
OpenSSH クライアントのシステム全体の暗号化ポリシーをオプトアウトするには、次のいずれかのタスクを実行します。
-
指定のユーザーの場合は、
~/.ssh/config
ファイルのユーザー固有の設定でグローバルのssh_config
を上書きします。 -
システム全体の場合は、
/etc/ssh/ssh_config.d/
ディレクトリーにあるドロップイン設定ファイルに暗号化ポリシーを指定します。このとき、辞書式順序で50-redhat.conf
ファイルよりも前に来るように、50 未満の 2 桁の接頭辞と、.conf
という接尾辞を付けます (例:49-crypto-policy-override.conf
)。
関連情報
-
sshd_config(5)
、ssh-keygen(1)
、crypto-policies(7)
、およびupdate-crypto-policies(8)
の man ページ - セキュリティー強化 ドキュメントの システム全体の暗号化ポリシーの使用
- ssh サービスのみに対して特定のアルゴリズムと暗号を無効化する方法 の記事
1.7. SSH ジャンプホストを使用してリモートサーバーに接続
この手順に従って、ジャンプホストとも呼ばれる中間サーバーを介してローカルシステムをリモートサーバーに接続します。
前提条件
- ジャンプホストでローカルシステムからの SSH 接続に対応している。
- リモートサーバーが、ジャンプホストからのみ SSH 接続を受け入れる。
手順
ローカルシステムの
~/.ssh/config
ファイルを編集してジャンプホストを定義します。以下に例を示します。Host jump-server1 HostName jump1.example.com
-
Host
パラメーターは、ssh
コマンドで使用できるホストの名前またはエイリアスを定義します。値は実際のホスト名と一致可能ですが、任意の文字列にすることもできます。 -
HostName
パラメーターは、ジャンプホストの実際のホスト名または IP アドレスを設定します。
-
ProxyJump
ディレクティブを使用してリモートサーバーのジャンプ設定を、ローカルシステムの~/.ssh/config
ファイルに追加します。以下に例を示します。Host remote-server HostName remote1.example.com ProxyJump jump-server1
ローカルシステムを使用して、ジャンプサーバー経由でリモートサーバーに接続します。
$ ssh remote-server
このコマンドは、設定手順 1 および 2 を省略したときの
ssh -J jump-server1 remote-server
コマンドと同じです。
ジャンプサーバーをさらに指定することもできます。また、完全なホスト名を指定する場合は、設定ファイルへのホスト定義の追加を飛ばすこともできます。以下に例を示します。
$ ssh -J jump1.example.com,jump2.example.com,jump3.example.com remote1.example.com
ジャンプサーバーのユーザー名または SSH ポートが、リモートサーバーの名前およびポートと異なる場合は、上記のコマンドのホスト名のみの表記を変更します。以下に例を示します。
$ ssh -J johndoe@jump1.example.com:75,johndoe@jump2.example.com:75,johndoe@jump3.example.com:75 joesec@remote1.example.com:220
関連情報
-
ssh_config(5)
およびssh(1)
の man ページ
1.8. ssh-agent を使用して SSH キーでリモートマシンに接続する手順
パスフレーズを SSH 接続を開始するたびに入力しなくて済むようにするには、ssh-agent
ユーティリティーを使用して SSH 秘密鍵をキャッシュします。秘密鍵とパスフレーズのセキュリティーが確保されます。
前提条件
- SSH デーモンが実行中で、ネットワーク経由で到達可能なリモートホストがある。
- リモートホストにログインするための IP アドレスまたはホスト名および認証情報を把握している。
- パスフレーズで SSH キーペアを生成し、公開鍵をリモートマシンに転送している。
手順
オプション: キーを使用してリモートホストに対して認証できることを確認します。
SSH を使用してリモートホストに接続します。
$ ssh example.user1@198.51.100.1 hostname
秘密鍵へのアクセス権を付与する鍵の作成時に指定したパスフレーズを入力します。
$ ssh example.user1@198.51.100.1 hostname host.example.com
ssh-agent
を起動します。$ eval $(ssh-agent) Agent pid 20062
ssh-agent
にキーを追加します。$ ssh-add ~/.ssh/id_rsa Enter passphrase for ~/.ssh/id_rsa: Identity added: ~/.ssh/id_rsa (example.user0@198.51.100.12)
検証
オプション: SSH を使用してホストマシンにログインします。
$ ssh example.user1@198.51.100.1 Last login: Mon Sep 14 12:56:37 2020
パスフレーズを入力する必要がないことに注意してください。
1.9. 関連情報
-
sshd(8)
、ssh(1)
、scp(1)
、sftp(1)
、ssh-keygen(1)
、ssh-copy-id(1)
、ssh_config(5)
、sshd_config(5)
、update-crypto-policies(8)
、およびcrypto-policies(7)
の man ページ - OpenSSH のホームページ
- 非標準設定でのアプリケーションとサービスの SELinux 設定
- Controlling network traffic using firewalld
第2章 ssh
システムロールを使用した安全な通信の設定
管理者は、sshd
システムロールを使用して SSH サーバーを設定し、ssh
システムロールを使用し、Ansible Core パッケージを使用して同時に任意の数の RHEL システムで SSH クライアントを一貫して設定できます。
2.1. ssh
Server のシステムロール変数
sshd
システムロール Playbook では、設定と制限に応じて、SSH 設定ファイルのパラメーターを定義できます。
これらの変数が設定されていない場合には、システムロールは RHEL のデフォルト値と同じ sshd_config
ファイルを作成します。
どのような場合でも、ブール値は sshd
設定で適切に yes
と no
としてレンダリングされます。リストを使用して複数行の設定項目を定義できます。以下に例を示します。
sshd_ListenAddress: - 0.0.0.0 - '::'
レンダリングは以下のようになります。
ListenAddress 0.0.0.0 ListenAddress ::
sshd
システムロールの変数
sshd_enable
-
false
に設定すると、ロールは完全に無効になります。デフォルトはtrue
です。 sshd_skip_defaults
-
true
に設定すると、システムロールではデフォルト値が適用されません。代わりに、sshd
ディクショナリーまたはsshd_<OptionName>
変数のいずれかを使用して、設定のデフォルトの完全なセットを指定します。デフォルトはfalse
です。 sshd_manage_service
-
false
に設定すると、サービスは管理されません。つまり、サービスは起動時に有効にならず、開始またはリロードされません。Ansible サービスモジュールは現在、AIX のenabled
をサポートしていないため、コンテナーまたは AIX 内で実行する場合を除き、デフォルトはtrue
になります。 sshd_allow_reload
-
false
に設定すると、設定の変更後にsshd
はリロードされません。これはトラブルシューティングで役立ちます。変更した設定を適用するには、sshd
を手動で再読み込みします。AIX を除き、デフォルトはsshd_manage_service
と同じ値になります。AIX では、sshd_manage_service
のデフォルトはfalse
ですが、sshd_allow_reload
のデフォルトはtrue
です。 sshd_install_service
true
に設定すると、ロールはsshd
サービスのサービスファイルをインストールします。これにより、オペレーティングシステムで提供されるファイルが上書きされます。2 番目のインスタンスを設定し、sshd_service
変数も変更する場合を除き、true
に設定しないでください。デフォルトはfalse
です。ロールは、以下の変数でテンプレートとして参照するファイルを使用します。
sshd_service_template_service (default: templates/sshd.service.j2) sshd_service_template_at_service (default: templates/sshd@.service.j2) sshd_service_template_socket (default: templates/sshd.socket.j2)
sshd_service
-
この変数により
sshd
サービス名が変更されます。これは、2 つ目のsshd
サービスインスタンスを設定するのに役立ちます。 sshd
設定が含まれるディクショナリー。以下に例を示します。
sshd: Compression: yes ListenAddress: - 0.0.0.0
sshd_config(5)
は、sshd
ディクショナリーのすべてのオプションを一覧表示します。sshd_<OptionName>
ディクショナリーの代わりに、
sshd_
接頭辞とオプション名で構成される単純な変数を使用して、オプションを定義できます。簡単な変数は、sshd
ディクショナリーの値をオーバーライドします。以下に例を示します。sshd_Compression: no
sshd_config(5)
は、sshd
のすべてのオプションを一覧表示します。sshd_manage_firewall
デフォルトのポート
22
以外のポートを使用している場合は、この変数をtrue
に設定します。true
に設定すると、sshd
ロールはfirewall
ロールを使用してポートアクセスを自動的に管理します。注記sshd_manage_firewall
変数はポートのみを追加できます。ポートは削除できません。ポートを削除するには、firewall
システムロールを直接使用します。firewall
システムロールを使用したポート管理の詳細は、Configuring ports by using System Roles を参照してください。sshd_manage_selinux
デフォルトのポート
22
以外のポートを使用している場合は、この変数をtrue
に設定します。true
に設定すると、sshd
ロールはselinux
ロールを使用してポートアクセスを自動的に管理します。注記sshd_manage_selinux
変数はポートのみを追加できます。ポートは削除できません。ポートを削除するには、selinux
システムロールを直接使用します。sshd_match
andsshd_match_1
tosshd_match_9
-
ディクショナリーのリスト、または Match セクションのディレクトリーのみ。これらの変数は、
sshd
ディクショナリーで定義されている一致ブロックをオーバーライドしないことに注意してください。すべてのソースは作成された設定ファイルに反映されます。 sshd_backup
-
false
に設定すると、元のsshd_config
ファイルはバックアップされません。デフォルトはtrue
です。
sshd
システムロールのセカンダリー変数
これらの変数を使用して、サポートされている各プラットフォームに対応するデフォルトを上書きすることができます。
sshd_packages
- この変数を使用して、インストール済みパッケージのデフォルトリストを上書きできます。
sshd_config_owner
、sshd_config_group
、sshd_config_mode
-
このロールは、これらの変数を使用して生成する
openssh
設定ファイルの所有権およびパーミッションを設定できます。 sshd_config_file
-
このロールが作成した
openssh
サーバー設定を保存するパス。 sshd_config_namespace
この変数のデフォルト値は null です。これは、ロールがシステムのデフォルトを含む設定ファイルの内容全体を定義することを意味します。または、この変数を使用して、他のロールから、またはドロップインディレクトリーをサポートしないシステムの 1 つの Playbook 内の複数の場所から、このロールを呼び出すことができます。
sshd_skip_defaults
変数は無視され、この場合、システムのデフォルトは使用されません。この変数が設定されている場合、ロールは指定された namespace の下の既存の設定ファイルの設定スニペットに指定する設定を配置します。シナリオにロールを複数回適用する必要がある場合は、アプリケーションごとに異なる namespace を選択する必要があります。
注記openssh
設定ファイルの制限は引き続き適用されます。たとえば、設定ファイルで指定した最初のオプションだけが、ほとんどの設定オプションで有効です。技術的には、ロールは他の一致ブロックが含まれていない限り、スニペットを "Match all" ブロックに配置し、既存の設定ファイル内の以前の一致ブロックに関係なく適用されるようにします。これにより、異なるロール呼び出しから競合しないオプションを設定できます。
sshd_binary
-
openssh
のsshd
実行可能ファイルへのパス。 sshd_service
-
sshd
サービスの名前。デフォルトでは、この変数には、ターゲットプラットフォームが使用するsshd
サービスの名前が含まれます。ロールがsshd_install_service
変数を使用する場合は、これを使用してカスタムのsshd
サービスの名前を設定することもできます。 sshd_verify_hostkeys
-
デフォルトは
auto
です。auto
に設定すると、生成された設定ファイルに存在するホストキーがすべてリスト表示され、存在しないパスが生成されます。また、パーミッションおよびファイルの所有者はデフォルト値に設定されます。これは、サービスが最初の試行で開始できることを確認するためにデプロイメント段階でロールが使用される場合に便利です。このチェックを無効にするには、この変数を空のリスト[]
に設定します。 sshd_hostkey_owner
,sshd_hostkey_group
,sshd_hostkey_mode
-
これらの変数を使用して、
sshd_verify_hostkeys
からホストキーの所有権とパーミッションを設定します。 sshd_sysconfig
-
RHEL 8 以前のバージョンをベースとするシステムでは、この変数は
sshd
サービスの追加の詳細を設定します。true
に設定すると、このロールはsshd_sysconfig_override_crypto_policy
およびsshd_sysconfig_use_strong_rng
変数に基づいて、/etc/sysconfig/sshd
設定ファイルも管理します。デフォルトはfalse
です。 sshd_sysconfig_override_crypto_policy
RHEL 8 では、これを
true
に設定すると、sshd
ディクショナリーまたはsshd_<OptionName>
形式で次の設定オプションを使用して、システム全体の暗号化ポリシーをオーバーライドできます。-
Ciphers
-
MACs
-
GSSAPIKexAlgorithms
-
GSSAPIKeyExchange
(FIPS-only) -
KexAlgorithms
-
HostKeyAlgorithms
-
PubkeyAcceptedKeyTypes
CASignatureAlgorithms
デフォルトは
false
です。RHEL 9 では、この変数は影響を及ぼしません。代わりに、
sshd
ディクショナリーまたはsshd_<OptionName>
形式で次の設定オプションを使用して、システム全体の暗号化ポリシーをオーバーライドできます。-
Ciphers
-
MACs
-
GSSAPIKexAlgorithms
-
GSSAPIKeyExchange
(FIPS-only) -
KexAlgorithms
-
HostKeyAlgorithms
-
PubkeyAcceptedAlgorithms
-
HostbasedAcceptedAlgorithms
-
CASignatureAlgorithms
RequiredRSASize
sshd_config_file
変数で定義されたドロップインディレクトリーのカスタム設定ファイルに、これらのオプションを入力する場合は、暗号化ポリシーを含む/etc/ssh/sshd_config.d/50-redhat.conf
ファイルより辞書順に前にあるファイル名を使用します。
-
sshd_sysconfig_use_strong_rng
-
RHEL 8 以前のバージョンをベースとするシステムでは、この変数により、
sshd
が、引数として指定されたバイト数を使用してopenssl
乱数ジェネレーターを強制的に再シードできます。デフォルトは0
で、この機能を無効にします。システムにハードウェア乱数ジェネレーターがない場合は、この機能を有効にしないでください。
2.2. sshd
システムロールを使用した OpenSSH サーバーの設定
sshd
システムロールを使用して、Ansible Playbook を実行することで複数の SSH サーバーを設定できます。
sshd
システムロールは、SSH および SSHD 設定を変更する他のシステムロール (ID 管理 RHEL システムロールなど) とともに使用できます。設定が上書きされないようにするには、sshd
ロールがネームスペース (RHEL 8 以前のバージョン) またはドロップインディレクトリー (RHEL 9) を使用していることを確認してください。
前提条件
-
1 つ以上の 管理対象ノード (
sshd
システムロールで設定するシステム) へのアクセスおよびパーミッション。 コントロールノード (このシステムから Red Hat Ansible Core は他のシステムを設定) へのアクセスおよびパーミッション。
コントロールノードでは、
-
ansible-core
パッケージおよびrhel-system-roles
パッケージがインストールされている。
-
RHEL 8.0-8.5 では、別の Ansible リポジトリーへのアクセス権を指定されており、Ansible をベースにする自動化用の Ansible Engine 2.9 が含まれています。Ansible Engine には、ansible
、ansible-playbook
などのコマンドラインユーティリティー、docker
や podman
などのコネクター、プラグインとモジュールが多く含まれています。Ansible Engine を入手してインストールする方法の詳細は、ナレッジベースのアーティクル記事 How to download and install Red Hat Ansible Engine を参照してください。
RHEL 8.6 および 9.0 では、Ansible Core (ansible-core
パッケージとして提供) が導入されました。これには、Ansible コマンドラインユーティリティー、コマンド、およびビルトイン Ansible プラグインのセットが含まれています。RHEL は、AppStream リポジトリーを介してこのパッケージを提供し、サポート範囲は限定的です。詳細については、ナレッジベースの Scope of support for the Ansible Core package included in the RHEL 9 and RHEL 8.6 and later AppStream repositories を参照してください。
- マネージドノードが記載されているインベントリーファイルがある。
手順
sshd
システムロールの Playbook の例をコピーします。# cp /usr/share/doc/rhel-system-roles/sshd/example-root-login-playbook.yml path/custom-playbook.yml
以下の例のように、テキストエディターでコピーした Playbook を開きます。
# vim path/custom-playbook.yml --- - hosts: all tasks: - name: Configure sshd to prevent root and password login except from particular subnet include_role: name: rhel-system-roles.sshd vars: sshd: # root login and password login is enabled only from a particular subnet PermitRootLogin: no PasswordAuthentication: no Match: - Condition: "Address 192.0.2.0/24" PermitRootLogin: yes PasswordAuthentication: yes
Playbook は、以下のように、マネージドノードを SSH サーバーとして設定します。
-
パスワードと
root
ユーザーのログインが無効である -
192.0.2.0/24
のサブネットからのパスワードおよびroot
ユーザーのログインのみが有効である
設定に合わせて変数を変更できます。詳細は、sshd システムロール変数 を参照してください。
-
パスワードと
オプション: Playbook の構文を確認します。
# ansible-playbook --syntax-check path/custom-playbook.yml
インベントリーファイルで Playbook を実行します。
# ansible-playbook -i inventory_file path/custom-playbook.yml ... PLAY RECAP ************************************************** localhost : ok=12 changed=2 unreachable=0 failed=0 skipped=10 rescued=0 ignored=0
検証
SSH サーバーにログインします。
$ ssh user1@10.1.1.1
詳細は以下のようになります。
-
user1
は、SSH サーバーのユーザーです。 -
10.1.1.1
は、SSH サーバーの IP アドレスです。
-
SSH サーバーの
sshd_config
ファイルの内容を確認します。$ cat /etc/ssh/sshd_config.d/00-ansible_system_role.conf # # Ansible managed # PasswordAuthentication no PermitRootLogin no Match Address 192.0.2.0/24 PasswordAuthentication yes PermitRootLogin yes
192.0.2.0/24
サブネットから root としてサーバーに接続できることを確認します。IP アドレスを確認します。
$ hostname -I 192.0.2.1
IP アドレスが
192.0.2.1
-192.0.2.254
範囲にある場合は、サーバーに接続できます。root
でサーバーに接続します。$ ssh root@10.1.1.1
関連情報
-
/usr/share/doc/rhel-system-roles/sshd/README.md
ファイル。 -
ansible-playbook(1)
の man ページ。
2.3. ssh
システムロール変数
ssh
システムロール Playbook では、設定および制限に応じて、クライアント SSH 設定ファイルのパラメーターを定義できます。
これらの変数が設定されていない場合には、システムロールは RHEL のデフォルト値と同じグローバル ssh_config
ファイルを作成します。
どのような場合でも、ブール値は ssh
設定で適切に yes
または no
とレンダリングされます。リストを使用して複数行の設定項目を定義できます。以下に例を示します。
LocalForward: - 22 localhost:2222 - 403 localhost:4003
レンダリングは以下のようになります。
LocalForward 22 localhost:2222 LocalForward 403 localhost:4003
設定オプションでは、大文字と小文字が区別されます。
ssh
システムロールの変数
ssh_user
-
システムロールでユーザー固有の設定を変更するように、既存のユーザー名を定義できます。ユーザー固有の設定は、指定したユーザーの
~/.ssh/config
に保存されます。デフォルト値は null で、すべてのユーザーに対するグローバル設定を変更します。 ssh_skip_defaults
-
デフォルトは
auto
です。auto
に設定すると、システムロールはシステム全体の設定ファイル/etc/ssh/ssh_config
を読み取り、そこで定義した RHEL のデフォルトを保持します。ssh_drop_in_name
変数を定義してドロップイン設定ファイルを作成すると、ssh_skip_defaults
変数が自動的に無効化されます。 ssh_drop_in_name
システム全体のドロップインディレクトリーに置かれたドロップイン設定ファイルの名前を定義します。この名前は、変更する設定ファイルを参照するテンプレート
/etc/ssh/ssh_config.d/{ssh_drop_in_name}.conf
で使用されます。システムがドロップインディレクトリーに対応していない場合、デフォルト値は null です。システムがドロップインディレクトリーに対応している場合、デフォルト値は00-ansible
です。警告システムがドロップインディレクトリーに対応していない場合は、このオプションを設定すると、プレイに失敗します。
推奨される形式は
NN-name
です。NN
は、設定ファイルの指定に使用する 2 桁の番号で、name
はコンテンツまたはファイルの所有者を示す名前になります。ssh
- 設定オプションとその値が含まれる dict。
ssh_OptionName
-
dict の代わりに、
ssh_
接頭辞とオプション名で設定される単純な変数を使用してオプションを定義できます。簡単な変数は、ssh
dict の値を上書きします。 ssh_additional_packages
-
このロールは、一般的なユースケースに必要な
openssh
パッケージおよびopenssh-clients
パッケージを自動的にインストールします。ホストベースの認証用にopenssh-keysign
などの追加のパッケージをインストールする必要がある場合は、この変数で指定できます。 ssh_config_file
ロールが生成した設定ファイルを保存するパス。デフォルト値:
-
システムにドロップインディレクトリーがある場合、デフォルト値は
/etc/ssh/ssh_config.d/{ssh_drop_in_name}.conf
テンプレートで定義されます。 -
システムにドロップインディレクトリーがない場合、デフォルト値は
/etc/ssh/ssh_config
になります。 -
ssh_user
変数が定義されている場合、デフォルト値は~/.ssh/config
になります。
-
システムにドロップインディレクトリーがある場合、デフォルト値は
ssh_config_owner
,ssh_config_group
,ssh_config_mode
-
作成した設定ファイルの所有者、グループ、およびモード。デフォルトでは、ファイルの所有者は
root:root
で、モードは0644
です。ssh_user
が定義されている場合、モードは0600
で、owner と group はssh_user
変数で指定したユーザー名から派生します。
2.4. ssh
システムロールを使用した OpenSSH クライアントの設定
ssh
システムロールを使用して、Ansible Playbook を実行して複数の SSH クライアントを設定できます。
ssh
システムロールは、SSH および SSHD 設定を変更する他のシステムロール (ID 管理 RHEL システムロールなど) とともに使用できます。設定が上書きされないようにするには、ssh
ロールがドロップインディレクトリー (RHEL 8 から デフォルト) を使用していることを確認してください。
前提条件
-
1 つ以上の 管理対象ノード (
ssh
システムロールで設定するシステム) へのアクセスおよびパーミッション。 コントロールノード (このシステムから Red Hat Ansible Core は他のシステムを設定) へのアクセスおよびパーミッション。
コントロールノードでは、
-
ansible-core
パッケージおよびrhel-system-roles
パッケージがインストールされている。
-
RHEL 8.0-8.5 では、別の Ansible リポジトリーへのアクセス権を指定されており、Ansible をベースにする自動化用の Ansible Engine 2.9 が含まれています。Ansible Engine には、ansible
、ansible-playbook
などのコマンドラインユーティリティー、docker
や podman
などのコネクター、プラグインとモジュールが多く含まれています。Ansible Engine を入手してインストールする方法の詳細は、ナレッジベースのアーティクル記事 How to download and install Red Hat Ansible Engine を参照してください。
RHEL 8.6 および 9.0 では、Ansible Core (ansible-core
パッケージとして提供) が導入されました。これには、Ansible コマンドラインユーティリティー、コマンド、およびビルトイン Ansible プラグインのセットが含まれています。RHEL は、AppStream リポジトリーを介してこのパッケージを提供し、サポート範囲は限定的です。詳細については、ナレッジベースの Scope of support for the Ansible Core package included in the RHEL 9 and RHEL 8.6 and later AppStream repositories を参照してください。
- マネージドノードが記載されているインベントリーファイルがある。
手順
以下の内容を含む新しい
playbook.yml
ファイルを作成します。--- - hosts: all tasks: - name: "Configure ssh clients" include_role: name: rhel-system-roles.ssh vars: ssh_user: root ssh: Compression: true GSSAPIAuthentication: no ControlMaster: auto ControlPath: ~/.ssh/.cm%C Host: - Condition: example Hostname: example.com User: user1 ssh_ForwardX11: no
この Playbook は、以下の設定を使用して、マネージドノードで
root
ユーザーの SSH クライアント設定を行います。- 圧縮が有効になっている。
-
ControlMaster multiplexing が
auto
に設定されている。 -
example.com
ホストに接続するためのexample
エイリアスがuser1
である。 -
ホストエイリアスの
example
が作成されている。(これはユーザー名がuser1
のexample.com
ホストへの接続を表します。) - X11 転送が無効化されている。
必要に応じて、これらの変数は設定に合わせて変更できます。詳細は、ssh システムロール変数 を参照してください。
オプション: Playbook の構文を確認します。
# ansible-playbook --syntax-check path/custom-playbook.yml
インベントリーファイルで Playbook を実行します。
# ansible-playbook -i inventory_file path/custom-playbook.yml
検証
テキストエディターで SSH 設定ファイルを開いて、マネージドノードが正しく設定されていることを確認します。以下に例を示します。
# vi ~root/.ssh/config
上記の Playbook の例の適用後に、設定ファイルの内容は以下のようになるはずです。
# Ansible managed Compression yes ControlMaster auto ControlPath ~/.ssh/.cm%C ForwardX11 no GSSAPIAuthentication no Host example Hostname example.com User user1
2.5. 非排他的な設定のための sshd
システムロールの使用
通常、sshd
システムロールを適用すると、設定全体が上書きされます。これは、たとえば別のシステムロールや Playbook などを使用して、以前に設定を調整している場合に問題が発生する可能性があります。他のオプションをそのまま維持しながら、選択した設定オプションのみに sshd
システムロールを適用するには、非排他的設定を使用できます。
RHEL 8 以前では、設定スニペットを使用して非排他的設定を適用することができます。詳細は、RHEL 8 ドキュメントの Using the SSH Server System Role for non-exclusive configuration を参照してください。
RHEL 9 では、ドロップインディレクトリーのファイルを使用して、非排他的設定を適用することができます。デフォルトの設定ファイルは、/etc/ssh/sshd_config.d/00-ansible_system_role.conf
としてドロップインディレクトリーにすでに配置されています。
前提条件
-
1 つ以上の 管理対象ノード (
sshd
システムロールで設定するシステム) へのアクセスおよびパーミッション。 コントロールノード (このシステムから Red Hat Ansible Core は他のシステムを設定) へのアクセスおよびパーミッション。
コントロールノードでは、
-
ansible-core
パッケージがインストールされている。 - マネージドノードが記載されているインベントリーファイルがある。
- 別の RHEL システムロールの Playbook。
-
手順
sshd_config_file
変数を含む設定スニペットを Playbook に追加します。--- - hosts: all tasks: - name: <Configure sshd to accept some useful environment variables> include_role: name: rhel-system-roles.sshd vars: sshd_config_file: /etc/ssh/sshd_config.d/<42-my-application>.conf sshd: # Environment variables to accept AcceptEnv: LANG LS_COLORS EDITOR
sshd_config_file
変数で、sshd
システムロールが設定オプションを書き込む.conf
ファイルを定義します。設定ファイルが適用される順序を指定するには、2 桁の接頭辞 (例:
42-
) を使用します。Playbook をインベントリーに適用すると、ロールは
sshd_config_file
変数で定義されるファイルに次の設定オプションを追加します。# Ansible managed # AcceptEnv LANG LS_COLORS EDITOR
検証
オプション: Playbook の構文を確認します。
# ansible-playbook --syntax-check playbook.yml -i inventory_file
関連情報
-
/usr/share/doc/rhel-system-roles/sshd/README.md
ファイル。 -
ansible-playbook(1)
の man ページ。
第3章 TLS キーと証明書の作成と管理
TLS (Transport Layer Security) プロトコルを使用して、2 つのシステム間で送信される通信を暗号化できます。この標準は、秘密鍵と公開鍵、デジタル署名、および証明書を用いた非対称暗号化を使用します。
3.1. TLS 証明書
TLS (Transport Layer Security) は、クライアントサーバーアプリケーションが情報を安全に受け渡すことを可能にするプロトコルです。TLS は、公開鍵と秘密鍵のペアのシステムを使用して、クライアントとサーバー間で送信される通信を暗号化します。TLS は、SSL (Secure Sockets Layer) の後継プロトコルです。
TLS は、X.509 証明書を使用して、ホスト名や組織などの ID を、デジタル署名を使用する公開鍵にバインドします。X.509 は、公開鍵証明書の形式を定義する標準です。
セキュアなアプリケーションの認証は、アプリケーションの証明書の公開鍵値の整合性によって異なります。攻撃者が公開鍵を独自の公開鍵に置き換えると、真のアプリケーションになりすまして安全なデータにアクセスできるようになります。この種の攻撃を防ぐには、すべての証明書が証明局 (CA) によって署名されている必要があります。CA は、証明書の公開鍵値の整合性を確認する信頼できるノードです。
CA はデジタル署名を追加して公開鍵に署名し、証明書を発行します。デジタル署名は、CA の秘密鍵でエンコードされたメッセージです。CA の公開鍵は、CA の証明書を配布することによって、アプリケーションで使用できるようになります。アプリケーションは、CA の公開鍵を使用して CA のデジタル署名をデコードして、証明書が有効で署名されていることを確認します。
CA によって署名された証明書を取得するには、公開鍵を生成し、署名のために CA に送信する必要があります。これは、証明書署名要求 (CSR) と呼ばれます。CSR には、証明書の識別名 (DN) も含まれています。どちらのタイプの証明書にも提供できる DN 情報には、国を表す 2 文字の国コード、州または県の完全な名前、市または町、組織の名前、メールアドレスを含めることも、空にすることもできます。現在の商用 CA の多くは、Subject Alternative Name 拡張を好み、CSR の DN を無視します。
RHEL は、TLS 証明書GnuTLS と OpenSSL を操作するための 2 つの主要なツールキットを提供します。openssl
パッケージの openssl
ユーティリティーを使用して、証明書を作成、読み取り、署名、および検証できます。gnutls-utils
パッケージで提供される certtool
ユーティリティーは、異なる構文を使用して同じ操作を行うことができ、特にバックエンドの異なるライブラリーセットを使用できます。
関連情報
- RFC 5280:インターネット X.509 公開鍵インフラストラクチャー証明書および証明書失効リスト (CRL) プロファイル
-
openssl (1)
、x509(1)
、ca (1)
、req (1)
、およびcerttool (1)
の man ページ
3.2. OpenSSL を使用したプライベート CA の作成
プライベート証明機関 (CA) は、シナリオで内部ネットワーク内のエンティティーを検証する必要がある場合に役立ちます。たとえば、管理下にある CA によって署名された証明書に基づく認証を使用して VPN ゲートウェイを作成する場合、または商用 CA への支払いを希望しない場合は、プライベート CA を使用します。このようなユースケースで証明書に署名するために、プライベート CA は自己署名証明書を使用します。
前提条件
-
sudo
を使用して管理コマンドを入力するための root
権限または権限がある。そのような特権を必要とするコマンドは、#
でマークされています。
手順
CA の秘密鍵を生成します。たとえば、次のコマンドは、256 ビットの楕円曲線デジタル署名アルゴリズム (ECDSA) キーを作成します。
$ openssl genpkey -algorithm ec -pkeyopt ec_paramgen_curve:P-256 -out <ca.key>
キー生成プロセスの時間は、ホストのハードウェアとエントロピー、選択したアルゴリズム、およびキーの長さによって異なります。
前のコマンドで生成された秘密鍵を使用して署名された証明書を作成します。
$ openssl req -key <ca.key> -new -x509 -days 3650 -addext keyUsage=critical,keyCertSign,cRLSign -subj "/CN=<Example CA>" -out <ca.crt>
生成された
ca.crt
ファイルは、10 年間、他の証明書の署名に使用できる自己署名 CA 証明書です。プライベート CA の場合、<Example CA> を共通名 (CN) として任意の文字列に置き換えることができます。CA の秘密鍵に安全なアクセス許可を設定します。次に例を示します。
# chown <root>:<root> <ca.key> # chmod 600 <ca.key>
次のステップ
自己署名 CA 証明書をクライアントシステムのトラストアンカーとして使用するには、CA 証明書をクライアントにコピーし、クライアントのシステム全体のトラストストアに
root
として追加します。# trust anchor <ca.crt>
詳細は、4章共通システム証明書の使用 を参照してください。
検証
証明書署名要求 (CSR) を作成し、CA を使用して要求に署名します。CA は、CSR に基づいて証明書を正常に作成する必要があります。次に例を示します。
$ openssl x509 -req -in <client-cert.csr> -CA <ca.crt> -CAkey <ca.key> -CAcreateserial -days 365 -extfile <openssl.cnf> -extensions <client-cert> -out <client-cert.crt> Signature ok subject=C = US, O = Example Organization, CN = server.example.com Getting CA Private Key
詳細は、「プライベート CA を使用した OpenSSL での CSR の証明書の発行」 を参照してください。
自己署名 CA に関する基本情報を表示します。
$ openssl x509 -in <ca.crt> -text -noout Certificate: … X509v3 extensions: … X509v3 Basic Constraints: critical CA:TRUE X509v3 Key Usage: critical Certificate Sign, CRL Sign …
秘密鍵の一貫性を確認します。
$ openssl pkey -check -in <ca.key> Key is valid -----BEGIN PRIVATE KEY----- MIGHAgEAMBMGByqGSM49AgEGCCqGSM49AwEHBG0wawIBAQQgcagSaTEBn74xZAwO 18wRpXoCVC9vcPki7WlT+gnmCI+hRANCAARb9NxIvkaVjFhOoZbGp/HtIQxbM78E lwbDP0BI624xBJ8gK68ogSaq2x4SdezFdV1gNeKScDcU+Pj2pELldmdF -----END PRIVATE KEY-----
関連情報
-
openssl (1)
、ca (1)
、genpkey (1)
、x509(1)
、およびreq (1)
の man ページ
3.3. OpenSSL を使用した TLS サーバー証明書の秘密鍵と CSR の作成
認証局 (CA) からの有効な TLS 証明書がある場合にのみ、TLS 暗号化通信チャネルを使用できます。証明書を取得するには、最初にサーバーの秘密鍵と証明書署名要求 (CSR) を作成する必要があります。
手順
以下のようにサーバーシステムで秘密鍵を生成します。
$ openssl genpkey -algorithm ec -pkeyopt ec_paramgen_curve:P-256 -out <server-private.key>
オプション: 次の例のように、選択したテキストエディターを使用して、CSR の作成を簡素化する設定ファイルを準備します。
$ vim <example_server.cnf> [server-cert] keyUsage = critical, digitalSignature, keyEncipherment, keyAgreement extendedKeyUsage = serverAuth subjectAltName = @alt_name [req] distinguished_name = dn prompt = no [dn] C = <US> O = <Example Organization> CN = <server.example.com> [alt_name] DNS.1 = <example.com> DNS.2 = <server.example.com> IP.1 = <192.168.0.1> IP.2 = <::1> IP.3 = <127.0.0.1>
extendedKeyUsage = serverAuth
オプションは、証明書の使用を制限します。前に作成した秘密鍵を使用して CSR を作成します。
$ openssl req -key <server-private.key> -config <example_server.cnf> -new -out <server-cert.csr>
-config
オプションを省略すると、req
ユーティリティーは次のような追加情報の入力を求めます。You are about to be asked to enter information that will be incorporated into your certificate request. What you are about to enter is what is called a Distinguished Name or a DN. There are quite a few fields but you can leave some blank For some fields there will be a default value, If you enter '.', the field will be left blank. ----- Country Name (2 letter code) [XX]: <US> State or Province Name (full name) []: <Washington> Locality Name (eg, city) [Default City]: <Seattle> Organization Name (eg, company) [Default Company Ltd]: <Example Organization> Organizational Unit Name (eg, section) []: Common Name (eg, your name or your server's hostname) []: <server.example.com> Email Address []: <server@example.com>
次のステップ
- 署名のために選択した CA に CSR を送信します。または、信頼できるネットワーク内での内部使用シナリオでは、署名にプライベート CA を使用します。詳細は、「プライベート CA を使用した OpenSSL での CSR の証明書の発行」 を参照してください。
検証
要求された証明書を CA から取得したら、次の例のように、証明書の中で人間が判読できる部分が要件と一致することを確認します。
$ openssl x509 -text -noout -in <server-cert.crt> Certificate: … Issuer: CN = Example CA Validity Not Before: Feb 2 20:27:29 2023 GMT Not After : Feb 2 20:27:29 2024 GMT Subject: C = US, O = Example Organization, CN = server.example.com Subject Public Key Info: Public Key Algorithm: id-ecPublicKey Public-Key: (256 bit) … X509v3 extensions: X509v3 Key Usage: critical Digital Signature, Key Encipherment, Key Agreement X509v3 Extended Key Usage: TLS Web Server Authentication X509v3 Subject Alternative Name: DNS:example.com, DNS:server.example.com, IP Address:192.168.0.1, IP …
関連情報
-
openssl (1)
、x509(1)
、genpkey (1)
、req (1)
、およびconfig (5)
のman ページ
3.4. OpenSSL を使用した TLS クライアント証明書の秘密鍵と CSR の作成
認証局 (CA) からの有効な TLS 証明書がある場合にのみ、TLS 暗号化通信チャネルを使用できます。証明書を取得するには、最初にクライアントの秘密鍵と証明書署名要求 (CSR) を作成する必要があります。
手順
次の例のように、クライアントシステムで秘密鍵を生成します。
$ openssl genpkey -algorithm ec -pkeyopt ec_paramgen_curve:P-256 -out <client-private.key>
オプション: 次の例のように、選択したテキストエディターを使用して、CSR の作成を簡素化する設定ファイルを準備します。
$ vim <example_client.cnf> [client-cert] keyUsage = critical, digitalSignature, keyEncipherment extendedKeyUsage = clientAuth subjectAltName = @alt_name [req] distinguished_name = dn prompt = no [dn] CN = <client.example.com> [clnt_alt_name] email= <client@example.com>
extendedKeyUsage = clientAuth
オプションは、証明書の使用を制限します。前に作成した秘密鍵を使用して CSR を作成します。
$ openssl req -key <client-private.key> -config <example_client.cnf> -new -out <client-cert.csr>
-config
オプションを省略すると、req
ユーティリティーは次のような追加情報の入力を求めます。You are about to be asked to enter information that will be incorporated into your certificate request. … Common Name (eg, your name or your server's hostname) []: <client.example.com> Email Address []: <client@example.com>
次のステップ
- 署名のために選択した CA に CSR を送信します。または、信頼できるネットワーク内での内部使用シナリオでは、署名にプライベート CA を使用します。詳細は、「プライベート CA を使用した OpenSSL での CSR の証明書の発行」 を参照してください。
検証
次の例のように、証明書の中で人間が判読できる部分が要件と一致することを確認します。
$ openssl x509 -text -noout -in <client-cert.crt> Certificate: … X509v3 Extended Key Usage: TLS Web Client Authentication X509v3 Subject Alternative Name: email:client@example.com …
関連情報
-
openssl (1)
、x509(1)
、genpkey (1)
、req (1)
、およびconfig (5)
のman ページ
3.5. プライベート CA を使用した OpenSSL での CSR の証明書の発行
システムが TLS 暗号化通信チャネルを確立できるようにするには、認証局 (CA) が有効な証明書をシステムに提供する必要があります。プライベート CA がある場合は、システムからの証明書署名要求 (CSR) に署名することにより、要求された証明書を作成できます。
前提条件
- プライベート CA が設定済みである。詳細は、「OpenSSL を使用したプライベート CA の作成」 を参照してください。
- CSR を含むファイルがある。CSR の作成例は、「OpenSSL を使用した TLS サーバー証明書の秘密鍵と CSR の作成」 にあります。
手順
オプション: 任意のテキストエディターを使用して、次の例のように、証明書に拡張機能を追加するための OpenSSL 設定ファイルを準備します。
$ vim <openssl.cnf> [server-cert] extendedKeyUsage = serverAuth [client-cert] extendedKeyUsage = clientAuth
x509
ユーティリティーを使用して、CSR に基づいて証明書を作成します。次に例を示します。$ openssl x509 -req -in <server-cert.csr> -CA <ca.crt> -CAkey <ca.key> -days 365 -extfile <openssl.cnf> -extensions <server-cert> -out <server-cert.crt> Signature ok subject=C = US, O = Example Organization, CN = server.example.com Getting CA Private Key
関連情報
-
openssl (1)
、ca (1)
、およびx509(1)
のman ページ
3.6. GnuTLS を使用したプライベート CA の作成
プライベート証明機関 (CA) は、シナリオで内部ネットワーク内のエンティティーを検証する必要がある場合に役立ちます。たとえば、管理下にある CA によって署名された証明書に基づく認証を使用して VPN ゲートウェイを作成する場合、または商用 CA への支払いを希望しない場合は、プライベート CA を使用します。このようなユースケースで証明書に署名するために、プライベート CA は自己署名証明書を使用します。
前提条件
-
sudo
を使用して管理コマンドを入力するための root
権限または権限がある。そのような特権を必要とするコマンドは、#
でマークされています。 システムにはすでに GnuTLS がインストールされている。インストールしていない場合は、次のコマンドを使用できます。
$ dnf install gnutls-utils
手順
CA の秘密鍵を生成します。たとえば、次のコマンドは、256 ビットの楕円曲線デジタル署名アルゴリズム (ECDSA) キーを作成します。
$ certtool --generate-privkey --sec-param High --key-type=ecdsa --outfile <ca.key>
キー生成プロセスの時間は、ホストのハードウェアとエントロピー、選択したアルゴリズム、およびキーの長さによって異なります。
証明書のテンプレートファイルを作成します。
お気に入りのテキストエディター (vi など) でファイルを作成します。
$ vi <ca.cfg>
ファイルを編集して、必要な証明書の詳細を含めます。
organization = "Example Inc." state = "Example" country = EX cn = "Example CA" serial = 007 expiration_days = 365 ca cert_signing_key crl_signing_key
手順 1 で生成した秘密鍵を使用して署名された証明書を作成します。
生成された <ca.crt> ファイルは、1 年間他の証明書に署名するために使用できる自己署名 CA 証明書です。<ca.crt> ファイルは公開キー (証明書) です。ロードされたファイル <ca.key> が秘密鍵です。このファイルは安全な場所に保管してください。
$ certtool --generate-self-signed --load-privkey <ca.key> --template <ca.cfg> --outfile <ca.crt>
CA の秘密鍵に安全なアクセス許可を設定します。次に例を示します。
# chown <root>:<root> <ca.key> # chmod 600 <ca.key>
次のステップ
自己署名 CA 証明書をクライアントシステムのトラストアンカーとして使用するには、CA 証明書をクライアントにコピーし、クライアントのシステム全体のトラストストアに
root
として追加します。# trust anchor <ca.crt>
詳細は、4章共通システム証明書の使用 を参照してください。
検証
自己署名 CA に関する基本情報を表示します。
$ certtool --certificate-info --infile <ca.crt> Certificate: … X509v3 extensions: … X509v3 Basic Constraints: critical CA:TRUE X509v3 Key Usage: critical Certificate Sign, CRL Sign
証明書署名要求 (CSR) を作成し、CA を使用して要求に署名します。CA は、CSR に基づいて証明書を正常に作成する必要があります。次に例を示します。
CA の秘密鍵を生成します。
$ certtool --generate-privkey --outfile <example-server.key>
お気に入りのテキストエディター (vi など) でファイルを作成します。
$ vi <example-server.cfg>
ファイルを編集して、必要な証明書の詳細を含めます。
signing_key encryption_key key_agreement tls_www_server country = "US" organization = "Example Organization" cn = "server.example.com" dns_name = "example.com" dns_name = "server.example.com" ip_address = "192.168.0.1" ip_address = "::1" ip_address = "127.0.0.1"
以前に作成した秘密キ鍵を使用してリクエストを生成します
$ certtool --generate-request --load-privkey <example-server.key> --template <example-server.cfg> --outfile <example-server.crq>
証明書を生成し、CA の秘密鍵で署名します。
$ certtool --generate-certificate --load-request <example-server.crq> --load-privkey <example-server.key> --load-ca-certificate <ca.crt> --load-ca-privkey <ca.key> --outfile <example-server.crt>
関連情報
-
certtool(1)
およびtrust(1)
の man ページ
-
3.7. GnuTLS を使用した TLS サーバー証明書の秘密鍵と CSR の作成
証明書を取得するには、最初にサーバーの秘密鍵と証明書署名要求 (CSR) を作成する必要があります。
手順
以下のようにサーバーシステムで秘密鍵を生成します。
$ certtool --generate-privkey --sec-param High --outfile <example-server.key>
オプション: 次の例のように、選択したテキストエディターを使用して、CSR の作成を簡素化する設定ファイルを準備します。
$ vim <example_server.cnf> signing_key encryption_key key_agreement tls_www_server country = "US" organization = "Example Organization" cn = "server.example.com" dns_name = "example.com" dns_name = "server.example.com" ip_address = "192.168.0.1" ip_address = "::1" ip_address = "127.0.0.1"
前に作成した秘密鍵を使用して CSR を作成します。
$ certtool --generate-request --template <example-server.cfg> --load-privkey <example-server.key> --outfile <example-server.crq>
--template
オプションを省略すると、certool
ユーティリティーは次のような追加情報の入力を求めます。You are about to be asked to enter information that will be incorporated into your certificate request. What you are about to enter is what is called a Distinguished Name or a DN. There are quite a few fields but you can leave some blank For some fields there will be a default value, If you enter '.', the field will be left blank. ----- Generating a PKCS #10 certificate request... Country name (2 chars): <US> State or province name: <Washington> Locality name: <Seattle> Organization name: <Example Organization> Organizational unit name: Common name: <server.example.com>
次のステップ
- 署名のために選択した CA に CSR を送信します。または、信頼できるネットワーク内での内部使用シナリオでは、署名にプライベート CA を使用します。詳細は、「プライベート CA を使用した GnuTLS での CSR の証明書の発行」 を参照してください。
検証
要求された証明書を CA から取得したら、次の例のように、証明書の中で人間が判読できる部分が要件と一致することを確認します。
$ certtool --certificate-info --infile <example-server.crt> Certificate: … Issuer: CN = Example CA Validity Not Before: Feb 2 20:27:29 2023 GMT Not After : Feb 2 20:27:29 2024 GMT Subject: C = US, O = Example Organization, CN = server.example.com Subject Public Key Info: Public Key Algorithm: id-ecPublicKey Public-Key: (256 bit) … X509v3 extensions: X509v3 Key Usage: critical Digital Signature, Key Encipherment, Key Agreement X509v3 Extended Key Usage: TLS Web Server Authentication X509v3 Subject Alternative Name: DNS:example.com, DNS:server.example.com, IP Address:192.168.0.1, IP …
関連情報
-
certtool(1)
の man ページ
3.8. GnuTLS を使用した TLS クライアント証明書の秘密鍵と CSR の作成
証明書を取得するには、最初にクライアントの秘密鍵と証明書署名要求 (CSR) を作成する必要があります。
手順
次の例のように、クライアントシステムで秘密鍵を生成します。
$ certtool --generate-privkey --sec-param High --outfile <example-client.key>
オプション: 次の例のように、選択したテキストエディターを使用して、CSR の作成を簡素化する設定ファイルを準備します。
$ vim <example_client.cnf> signing_key encryption_key tls_www_client cn = "client.example.com" email = "client@example.com"
前に作成した秘密鍵を使用して CSR を作成します。
$ certtool --generate-request --template <example-client.cfg> --load-privkey <example-client.key> --outfile <example-client.crq>
--template
オプションを省略すると、certtool
ユーティリティーは次のような追加情報の入力を求めます。Generating a PKCS #10 certificate request... Country name (2 chars): <US> State or province name: <Washington> Locality name: <Seattle> Organization name: <Example Organization> Organizational unit name: Common name: <server.example.com>
次のステップ
- 署名のために選択した CA に CSR を送信します。または、信頼できるネットワーク内での内部使用シナリオでは、署名にプライベート CA を使用します。詳細は、「プライベート CA を使用した GnuTLS での CSR の証明書の発行」 を参照してください。
検証
次の例のように、証明書の中で人間が判読できる部分が要件と一致することを確認します。
$ certtool --certificate-info --infile <example-client.crt> Certificate: … X509v3 Extended Key Usage: TLS Web Client Authentication X509v3 Subject Alternative Name: email:client@example.com …
関連情報
-
certtool(1)
の man ページ
3.9. プライベート CA を使用した GnuTLS での CSR の証明書の発行
システムが TLS 暗号化通信チャネルを確立できるようにするには、認証局 (CA) が有効な証明書をシステムに提供する必要があります。プライベート CA がある場合は、システムからの証明書署名要求 (CSR) に署名することにより、要求された証明書を作成できます。
前提条件
- プライベート CA が設定済みである。詳細は、「GnuTLS を使用したプライベート CA の作成」 を参照してください。
- CSR を含むファイルがある。CSR の作成例は、「GnuTLS を使用した TLS サーバー証明書の秘密鍵と CSR の作成」 にあります。
手順
オプション: 任意のテキストエディターを使用して、次の例のように、証明書に拡張機能を追加するための GnuTLS 設定ファイルを準備します。
$ vi <server-extensions.cfg> honor_crq_extensions ocsp_uri = "http://ocsp.example.com"
certtool
ユーティリティーを使用して、CSR に基づいて証明書を作成します。次に例を示します。$ certtool --generate-certificate --load-request <example-server.crq> --load-ca-privkey <ca.key> --load-ca-certificate <ca.crt> --template <server-extensions.cfg> --outfile <example-server.crt>
関連情報
-
certtool(1)
の man ページ
第4章 共通システム証明書の使用
共有システム証明書ストレージは、NSS、GnuTLS、OpenSSL、および Java が、システムの証明書アンカーと、拒否リスト情報を取得するデフォルトソースを共有します。トラストストアには、デフォルトで、Mozilla CA リスト (信頼できるリストおよび信頼できないリスト) が含まれています。システムでは、コア Mozilla CA リストを更新したり、別の証明書リストを選択したりできます。
4.1. システム全体のトラストストア
RHEL では、統合されたシステム全体のトラストストアが /etc/pki/ca-trust/
ディレクトリーおよび /usr/share/pki/ca-trust-source/
ディレクトリーに置かれています。/usr/share/pki/ca-trust-source/
のトラスト設定は、/etc/pki/ca-trust/
の設定よりも低い優先順位で処理されます。
証明書ファイルは、インストールされているサブディレクトリーによって扱われ方が異なります。
トラストアンカーの所属先
-
/usr/share/pki/ca-trust-source/anchors/
または -
/etc/pki/ca-trust/source/anchors/
-
信頼されていない証明書の保存先
-
/usr/share/pki/ca-trust-source/blocklist/
または -
/etc/pki/ca-trust/source/blocklist/
-
拡張 BEGIN TRUSTED ファイル形式の証明書の配置先
-
/usr/share/pki/ca-trust-source/
または -
/etc/pki/ca-trust/source/
-
階層暗号化システムでは、トラストアンカーとは、他のパーティーが信頼できると想定する権威あるエンティティーです。X.509 アーキテクチャーでは、ルート証明書はトラストチェーンの元となるトラストアンカーです。チェーンの検証を有効にするには、信頼元がまずトラストアンカーにアクセスできる必要があります。
関連情報
-
update-ca-trust(8)
およびtrust(1)
の man ページ
4.2. 新しい証明書の追加
新しいソースでシステムのアプリケーションを確認するには、対応する証明書をシステム全体のストアに追加し、update-ca-trust
コマンドを使用します。
前提条件
-
ca-certificates
パッケージがシステムにインストールされている。
手順
システムで信頼されている CA のリストに、シンプルな PEM または DER のファイルフォーマットに含まれる証明書を追加するには、
/usr/share/pki/ca-trust-source/anchors/
ディレクトリーまたは/etc/pki/ca-trust/source/anchors/
ディレクトリーに証明書ファイルをコピーします。以下に例を示します。# cp ~/certificate-trust-examples/Cert-trust-test-ca.pem /usr/share/pki/ca-trust-source/anchors/
システム全体のトラストストア設定を更新するには、
update-ca-trust
コマンドを実行します。# update-ca-trust
update-ca-trust
を事前に実行しなくても、Firefox ブラウザーは追加された証明書を使用できますが、CA を変更するたびに update-ca-trust
コマンドを入力してください。Firefox、Chromium および GNOME Web などのブラウザーはファイルをキャッシュするので、ブラウザーのキャッシュをクリアするか、ブラウザーを再起動して、現在のシステム証明書の設定を読み込む必要がある場合があります。
関連情報
-
update-ca-trust(8)
およびtrust(1)
の man ページ
4.3. 信頼されているシステム証明書の管理
trust
コマンドを使用すると、システム全体の共有トラストストアの証明書を便利な方法で管理できます。
トラストアンカーのリスト表示、抽出、追加、削除、または変更を行うには、
trust
コマンドを使用します。このコマンドの組み込みヘルプを表示するには、引数を付けずに、または--help
ディレクティブを付けて実行します。$ trust usage: trust command <args>... Common trust commands are: list List trust or certificates extract Extract certificates and trust extract-compat Extract trust compatibility bundles anchor Add, remove, change trust anchors dump Dump trust objects in internal format See 'trust <command> --help' for more information
すべてのシステムのトラストアンカーおよび証明書のリストを表示するには、
trust list
コマンドを実行します。$ trust list pkcs11:id=%d2%87%b4%e3%df%37%27%93%55%f6%56%ea%81%e5%36%cc%8c%1e%3f%bd;type=cert type: certificate label: ACCVRAIZ1 trust: anchor category: authority pkcs11:id=%a6%b3%e1%2b%2b%49%b6%d7%73%a1%aa%94%f5%01%e7%73%65%4c%ac%50;type=cert type: certificate label: ACEDICOM Root trust: anchor category: authority ...
トラストアンカーをシステム全体のトラストストアに保存するには、
trust anchor
サブコマンドを使用し、証明書のパスを指定します。<path.to/certificate.crt> を、証明書およびそのファイル名へのパスに置き換えます。# trust anchor <path.to/certificate.crt>
証明書を削除するには、証明書のパス、または証明書の ID を使用します。
# trust anchor --remove <path.to/certificate.crt> # trust anchor --remove "pkcs11:id=<%AA%BB%CC%DD%EE>;type=cert"
関連情報
trust
コマンドのすべてのサブコマンドは、以下のような詳細な組み込みヘルプを提供します。$ trust list --help usage: trust list --filter=<what> --filter=<what> filter of what to export ca-anchors certificate anchors ... --purpose=<usage> limit to certificates usable for the purpose server-auth for authenticating servers ...
関連情報
-
update-ca-trust(8)
およびtrust(1)
の man ページ
第5章 TLS の計画および実施
TLS (トランスポート層セキュリティー) は、ネットワーク通信のセキュリティー保護に使用する暗号化プロトコルです。優先する鍵交換プロトコル、認証方法、および暗号化アルゴリズムを設定してシステムのセキュリティー設定を強化する際には、対応するクライアントの範囲が広ければ広いほど、セキュリティーのレベルが低くなることを認識しておく必要があります。反対に、セキュリティー設定を厳密にすると、クライアントとの互換性が制限され、システムからロックアウトされるユーザーが出てくる可能性もあります。可能な限り厳密な設定を目指し、互換性に必要な場合に限り、設定を緩めるようにしてください。
5.1. SSL プロトコルおよび TLS プロトコル
Secure Sockets Layer (SSL) プロトコルは、元々はインターネットを介した安全な通信メカニズムを提供するために、Netscape Corporation により開発されました。その後、このプロトコルは、Internet Engineering Task Force (IETF) により採用され、Transport Layer Security (TLS) に名前が変更になりました。
TLS プロトコルは、アプリケーションプロトコル層と、TCP/IP などの信頼性の高いトランスポート層の間にあります。これは、アプリケーションプロトコルから独立しているため、さまざまなプロトコルの下に階層化できます。(HTTP、FTP、SMTP など)
プロトコルのバージョン | 推奨される使用方法 |
---|---|
SSL v2 | 使用しないでください。深刻なセキュリティー上の脆弱性があります。RHEL 7 以降、コア暗号ライブラリーから削除されました。 |
SSL v3 | 使用しないでください。深刻なセキュリティー上の脆弱性があります。RHEL 8 以降、コア暗号ライブラリーから削除されました。 |
TLS 1.0 | 使用は推奨されません。相互運用性を保証した方法では軽減できない既知の問題があり、最新の暗号スイートには対応しません。RHEL 9 では、すべての暗号化ポリシーで無効になります。 |
TLS 1.1 | 必要に応じて相互運用性の目的で使用します。最新の暗号スイートには対応しません。RHEL 9 では、すべての暗号化ポリシーで無効になります。 |
TLS 1.2 | 最新の AEAD 暗号スイートに対応します。このバージョンは、システム全体のすべての暗号化ポリシーで有効になっていますが、このプロトコルの必須ではない部分に脆弱性があります。また、TLS 1.2 では古いアルゴリズムも使用できます。 |
TLS 1.3 | 推奨されるバージョン。TLS 1.3 は、既知の問題があるオプションを取り除き、より多くのネゴシエーションハンドシェイクを暗号化することでプライバシーを強化し、最新の暗号アルゴリズムをより効果的に使用することで速度を速めることができます。TLS 1.3 は、システム全体のすべての暗号化ポリシーでも有効になっています。 |
5.2. RHEL 9 における TLS のセキュリティー上の検討事項
RHEL 9 では、TLS 設定はシステム全体の暗号化ポリシーメカニズムを使用して実行されます。1.2 未満の TLS バージョンはサポートされなくなりました。DEFAULT
、FUTURE
、および LEGACY
暗号化ポリシーは、TLS 1.2 および 1.3 のみを許可します。詳細は、Using system-wide cryptographic policies を参照してください。
RHEL 9 に含まれるライブラリーが提供するデフォルト設定は、ほとんどのデプロイメントで十分に安全です。TLS 実装は、可能な場合は、安全なアルゴリズムを使用する一方で、レガシーなクライアントまたはサーバーとの間の接続は妨げません。セキュリティーが保護されたアルゴリズムまたはプロトコルに対応しないレガシーなクライアントまたはサーバーの接続が期待できないまたは許可されない場合に、厳密なセキュリティー要件の環境で、強化設定を適用します。
TLS 設定を強化する最も簡単な方法は、update-crypto-policies --set FUTURE
コマンドを実行して、システム全体の暗号化ポリシーレベルを FUTURE
に切り替えます。
LEGACY
暗号化ポリシーで無効にされているアルゴリズムは、Red Hat の RHEL 9 セキュリティーのビジョンに準拠しておらず、それらのセキュリティープロパティーは信頼できません。これらのアルゴリズムを再度有効化するのではなく、使用しないようにすることを検討してください。たとえば、古いハードウェアとの相互運用性のためにそれらを再度有効化することを決めた場合は、それらを安全でないものとして扱い、ネットワークの相互作用を個別のネットワークセグメントに分離するなどの追加の保護手段を適用します。パブリックネットワーク全体では使用しないでください。
RHEL システム全体の暗号化ポリシーに従わない場合、またはセットアップに適したカスタム暗号化ポリシーを作成する場合は、カスタム設定で必要なプロトコル、暗号スイート、および鍵の長さについて、以下の推奨事項を使用します。
5.2.1. プロトコル
最新バージョンの TLS は、最高のセキュリティーメカニズムを提供します。TLS 1.2 は、LEGACY
暗号化ポリシーを使用する場合でも最小バージョンになりました。古いプロトコルバージョンを再度有効にするには、暗号化ポリシーをオプトアウトするか、カスタムポリシーを提供することで可能ですが、この結果生成される設定はサポートされません。
RHEL 9 は TLS バージョン 1.3 をサポートしていますが、このプロトコルのすべての機能が RHEL 9 コンポーネントで完全にサポートされているわけではない点に注意してください。たとえば、接続レイテンシーを短縮する 0-RTT (Zero Round Trip Time) 機能は、Apache Web サーバーではまだ完全にはサポートされていません。
FIPS モードで実行されている RHEL 9.2 以降のシステムでは、FIPS 140-3 標準の要件に従って、TLS 1.2 接続で Extended Master Secret (EMS) 拡張機能 (RFC 7627) を使用する必要があります。したがって、EMS または TLS 1.3 をサポートしていないレガシークライアントは、FIPS モードで実行されている RHEL 9 サーバーに接続できません。FIPS モードの RHEL 9 クライアントは、EMS なしで TLS 1.2 のみをサポートするサーバーに接続できません。TLS Extension "Extended Master Secret" enforced with Red Hat Enterprise Linux 9.2 を参照してください。
5.2.2. 暗号化スイート
旧式で、安全ではない暗号化スイートではなく、最近の、より安全なものを使用してください。暗号化スイートの eNULL および aNULL は、暗号化や認証を提供しないため、常に無効にしてください。RC4 や HMAC-MD5 をベースとした暗号化スイートには深刻な欠陥があるため、可能な場合はこれも無効にしてください。いわゆるエクスポート暗号化スイートも同様です。エクスポート暗号化スイートは意図的に弱くなっているため、侵入が容易になっています。
128 ビット未満のセキュリティーしか提供しない暗号化スイートでは直ちにセキュリティーが保護されなくなるというわけではありませんが、使用できる期間が短いため考慮すべきではありません。アルゴリズムが 128 ビット以上のセキュリティーを使用している場合は、少なくとも数年間は解読不可能であることが期待されているため、強く推奨されます。3DES 暗号は 168 ビットを使用していると言われていますが、実際に提供されているのは 112 ビットのセキュリティーであることに注意してください。
サーバーの鍵が危険にさらされた場合でも、暗号化したデータの機密性を保証する (完全な) 前方秘匿性 (PFS) に対応する暗号スイートを常に優先します。ここでは、速い RSA 鍵交換は除外されますが、ECDHE および DHE は使用できます。この 2 つを比べると、ECDHE の方が速いため推奨されます。
また、AES-GCM などの AEAD 暗号は、パディングオラクル攻撃の影響は受けないため、CBC モード暗号よりも推奨されます。さらに、多くの場合、特にハードウェアに AES 用の暗号化アクセラレーターがある場合、AES-GCM は CBC モードの AES よりも高速です。
ECDSA 証明書で ECDHE 鍵交換を使用すると、トランザクションは純粋な RSA 鍵交換よりもさらに高速になります。レガシークライアントに対応するため、サーバーには証明書と鍵のペアを 2 つ (新しいクライアント用の ECDSA 鍵と、レガシー用の RSA 鍵) インストールできます。
5.2.3. 公開鍵の長さ
RSA 鍵を使用する際は、SHA-256 以上で署名され、鍵の長さが 3072 ビット以上のものが常に推奨されます (これは、実際に 128 ビットであるセキュリティーに対して十分な大きさです)。
システムのセキュリティー強度は、チェーンの中の最も弱いリンクが示すものと同じになります。たとえば、強力な暗号化だけではすぐれたセキュリティーは保証されません。鍵と証明書も同様に重要で、認証機関 (CA) が鍵の署名に使用するハッシュ機能と鍵もまた重要になります。
5.3. アプリケーションで TLS 設定の強化
RHEL では、システム全体の暗号化ポリシー は、暗号化ライブラリーを使用するアプリケーションが、既知の安全でないプロトコル、暗号化、またはアルゴリズムを許可しないようにするための便利な方法を提供します。
暗号化設定をカスタマイズして、TLS 関連の設定を強化する場合は、このセクションで説明する暗号化設定オプションを使用して、必要最小量でシステム全体の暗号化ポリシーを上書きできます。
いずれの設定を選択しても、サーバーアプリケーションが サーバー側が指定した順序 で暗号を利用することを確認し、使用される暗号化スイートの選択がサーバーでの設定順に行われるように設定してください。
5.3.1. TLS を使用するように Apache HTTP サーバーを設定
Apache HTTP Server
は、TLS のニーズに OpenSSL
ライブラリーおよび NSS
ライブラリーの両方を使用できます。RHEL 9 では、mod_ss パッケージで mod_ssl
機能が提供されます。
# dnf install mod_ssl
mod_ssl
パッケージは、/etc/httpd/conf.d/ssl.conf
設定ファイルをインストールします。これは、Apache HTTP Server
の TLS 関連の設定を変更するのに使用できます。
httpd-manual
パッケージをインストールして、TLS 設定を含む Apache HTTP Server
の完全ドキュメントを取得します。/etc/httpd/conf.d/ssl.conf
設定ファイルで利用可能なディレクティブの詳細は、/usr/share/httpd/manual/mod/mod_ssl.html
を参照してください。さまざまな設定の例は、/usr/share/httpd/manual/ssl/ssl_howto.html
ファイルに記載されています。
/etc/httpd/conf.d/ssl.conf
設定ファイルの設定を修正する場合は、少なくとも下記の 3 つのディレクティブを確認してください。
SSLProtocol
- このディレクティブを使用して、許可する TLS または SSL のバージョンを指定します。
SSLCipherSuite
- 優先する暗号化スイートを指定する、もしくは許可しないスイートを無効にするディレクティブです。
SSLHonorCipherOrder
-
コメントを解除して、このディレクティブを
on
に設定すると、接続先のクライアントは指定した暗号化の順序に従います。
たとえば、TLS 1.2 プロトコルおよび 1.3 プロトコルだけを使用する場合は、以下を実行します。
SSLProtocol all -SSLv3 -TLSv1 -TLSv1.1
詳細は、Deploying web servers and reverse proxies の Configuring TLS encryption on an Apache HTTP Server の章を参照してください。
5.3.2. TLS を使用するように Nginx HTTP およびプロキシーサーバーを設定
Nginx
で TLS 1.3 サポートを有効にするには、/etc/nginx/nginx.conf
設定ファイルの server
セクションで、ssl_protocols
オプションに TLSv1.3
値を追加します。
server { listen 443 ssl http2; listen [::]:443 ssl http2; .... ssl_protocols TLSv1.2 TLSv1.3; ssl_ciphers .... }
詳細は、Deploying web servers and reverse proxies の Adding TLS encryption to an Nginx web server の章を参照してください。
5.3.3. TLS を使用するように Dovecot メールサーバーを設定
Dovecot
メールサーバーのインストールが TLS を使用するように設定するには、/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
設定ファイルを修正します。このファイルで利用可能な基本的な設定ディレクティブの一部は、/usr/share/doc/dovecot/wiki/SSL.DovecotConfiguration.txt
ファイルで説明されています。このファイルは Dovecot
の標準インストールに含まれています。
/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
設定ファイルの設定を修正する場合は、少なくとも下記の 3 つのディレクティブを確認してください。
ssl_protocols
- このディレクティブを使用して、許可または無効にする TLS または SSL のバージョンを指定します。
ssl_cipher_list
- 優先する暗号化スイートを指定する、もしくは許可しないスイートを無効にするディレクティブです。
ssl_prefer_server_ciphers
-
コメントを解除して、このディレクティブを
yes
に設定すると、接続先のクライアントは指定した暗号化の順序に従います。
たとえば、/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
内の次の行が、TLS 1.1 以降だけを許可します。
ssl_protocols = !SSLv2 !SSLv3 !TLSv1
第6章 IPsec を使用した VPN の設定
RHEL 9 では、仮想プライベートネットワーク (VPN) は IPsec
プロトコルを使用して設定できます。これは、Libreswan
アプリケーションによりサポートされます。
6.1. IPsec VPN 実装としての Libreswan
RHEL では、仮想プライベートネットワーク (VPN) は IPsec プロトコルを使用して設定できます。これは、Libreswan アプリケーションによりサポートされます。Libreswan は、Openswan アプリケーションの延長であり、Openswan ドキュメントの多くの例は Libreswan でも利用できます。
VPN の IPsec プロトコルは、IKE (Internet Key Exchange) プロトコルを使用して設定されます。IPsec と IKE は同義語です。IPsec VPN は、IKE VPN、IKEv2 VPN、XAUTH VPN、Cisco VPN、または IKE/IPsec VPN とも呼ばれます。Layer 2 Tunneling Protocol (L2TP) も使用する IPsec VPN のバリアントは、通常、L2TP/IPsec VPN と呼ばれ、optional
のリポジトリーによって提供される xl2tpd
パッケージが必要です。
Libreswan は、オープンソースのユーザー空間の IKE 実装です。IKE v1 および v2 は、ユーザーレベルのデーモンとして実装されます。IKE プロトコルも暗号化されています。IPsec プロトコルは Linux カーネルで実装され、Libreswan は、VPN トンネル設定を追加および削除するようにカーネルを設定します。
IKE プロトコルは、UDP ポート 500 および 4500 を使用します。IPsec プロトコルは、以下の 2 つのプロトコルで設定されます。
- 暗号セキュリティーペイロード (ESP) (プロトコル番号が 50)
- 認証ヘッダー (AH) (プロトコル番号 51)
AH プロトコルの使用は推奨されていません。AH のユーザーは、null 暗号化で ESP に移行することが推奨されます。
IPsec プロトコルは、以下の 2 つの操作モードを提供します。
- トンネルモード (デフォルト)
- トランスポートモード
IKE を使用せずに IPsec を使用してカーネルを設定できます。これは、手動キーリング と呼ばれます。また、ip xfrm
コマンドを使用して手動キーを設定できますが、これはセキュリティー上の理由からは強く推奨されません。Libreswan は、Netlink インターフェイスを使用して Linux カーネルと通信します。カーネルはパケットの暗号化と復号化を実行します。
Libreswan は、ネットワークセキュリティーサービス (NSS) 暗号化ライブラリーを使用します。NSS は、連邦情報処理標準 (FIPS) の公開文書 140-2 での使用が認定されています。
Libreswan および Linux カーネルが実装する IKE/IPsec の VPN は、RHEL で使用することが推奨される唯一の VPN 技術です。その他の VPN 技術は、そのリスクを理解せずに使用しないでください。
RHEL では、Libreswan はデフォルトで システム全体の暗号化ポリシー に従います。これにより、Libreswan は、デフォルトのプロトコルとして IKEv2 を含む現在の脅威モデルに対して安全な設定を使用するようになります。詳細は、Using system-wide crypto policies を参照してください。
IKE/IPsec はピアツーピアプロトコルであるため、Libreswan では、ソースおよび宛先、またはサーバーおよびクライアントという用語を使用しません。終了点 (ホスト) を参照する場合は、代わりに左と右という用語を使用します。これにより、ほとんどの場合、両方の終了点で同じ設定も使用できます。ただし、管理者は通常、ローカルホストに左を使用し、リモートホストに右を使用します。
leftid
と rightid
オプションは、認証プロセス内の各ホストの識別として機能します。詳細は、man ページの ipsec.conf(5)
を参照してください。
6.2. Libreswan の認証方法
Libreswan は複数の認証方法をサポートしますが、それぞれは異なるシナリオとなっています。
事前共有キー (PSK)
事前共有キー (PSK) は、最も簡単な認証メソッドです。セキュリティー上の理由から、PSK は 64 文字未満は使用しないでください。FIPS モードでは、PSK は、使用される整合性アルゴリズムに応じて、、最低強度の要件に準拠する必要があります。authby=secret
接続を使用して PSK を設定できます。
Raw RSA 鍵
Raw RSA 鍵 は、静的なホスト間またはサブネット間の IPsec 設定で一般的に使用されます。各ホストは、他のすべてのホストのパブリック RSA 鍵を使用して手動で設定され、Libreswan はホストの各ペア間で IPsec トンネルを設定します。この方法は、多数のホストでは適切にスケーリングされません。
ipsec newhostkey
コマンドを使用して、ホストで Raw RSA 鍵を生成できます。ipsec showhostkey
コマンドを使用して、生成された鍵をリスト表示できます。leftrsasigkey=
の行は、CKA ID キーを使用する接続設定に必要です。Raw RSA 鍵に authby=rsasig
接続オプションを使用します。
X.509 証明書
X.509 証明書 は、共通の IPsec ゲートウェイに接続するホストが含まれる大規模なデプロイメントに一般的に使用されます。中央の 認証局 (CA) は、ホストまたはユーザーの RSA 証明書に署名します。この中央 CA は、個別のホストまたはユーザーの取り消しを含む、信頼のリレーを行います。
たとえば、openssl
コマンドおよび NSS certutil
コマンドを使用して X.509 証明書を生成できます。Libreswan は、leftcert=
設定オプションの証明書のニックネームを使用して NSS データベースからユーザー証明書を読み取るため、証明書の作成時にニックネームを指定します。
カスタム CA 証明書を使用する場合は、これを Network Security Services(NSS) データベースにインポートする必要があります。ipsec import
コマンドを使用して、PKCS #12 形式の証明書を Libreswan NSS データベースにインポートできます。
Libreswan は、section 3.1 of RFC 4945 で説明されているように、すべてのピア証明書のサブジェクト代替名 (SAN) としてインターネット鍵 Exchange(IKE) ピア ID を必要とします。require-id-on-certificated=
オプションを変更してこのチェックを無効にすると、システムが中間者攻撃に対して脆弱になる可能性があります。
SHA-2 で RSA を使用した X.509 証明書に基づく認証に authby=rsasig
接続オプションを使用します。authby=
を ecdsa
に設定し、authby=rsa-sha2
を介した SHA-2 による RSA Probabilistic Signature Scheme (RSASSA-PSS) デジタル署名ベースの認証を設定することにより、SHA-2 を使用する ECDSA デジタル署名に対してさらに制限することができます。デフォルト値は authby=rsasig,ecdsa
です。
証明書と authby=
署名メソッドが一致する必要があります。これにより、相互運用性が向上し、1 つのデジタル署名システムでの認証が維持されます。
NULL 認証
null 認証 は、認証なしでメッシュの暗号化を取得するために使用されます。これは、パッシブ攻撃は防ぎますが、アクティブ攻撃は防ぎません。ただし、IKEv2 は非対称認証メソッドを許可するため、NULL 認証はインターネットスケールのオポチュニスティック IPsec にも使用できます。このモデルでは、クライアントはサーバーを認証しますが、サーバーはクライアントを認証しません。このモデルは、TLS を使用して Web サイトのセキュリティーを保護するのと似ています。NULL 認証に authby=null
を使用します。
量子コンピューターに対する保護
上記の認証方法に加えて、Post-quantum Pre-shared Key (PPK) メソッドを使用して、量子コンピューターによる潜在的な攻撃から保護することができます。個々のクライアントまたはクライアントグループは、帯域外で設定された事前共有鍵に対応する PPK ID を指定することにより、独自の PPK を使用できます。
事前共有鍵が設定されている IKEv1 を使用すると、量子攻撃者からの保護が提供されます。IKEv2 の再設計は、この保護をネイティブに提供しません。Libreswan は、Post-quantum Pre-shared Key (PPK) を使用して、量子攻撃に対して IKEv2 接続を保護します。
任意の PPK 対応を有効にする場合は、接続定義に ppk=yes
を追加します。PPK が必要な場合は ppk=insist
を追加します。次に、各クライアントには、帯域外で通信する (および可能であれば量子攻撃に対して安全な) シークレット値を持つ PPK ID を付与できます。PPK はランダム性において非常に強力で、辞書の単語に基づいていません。PPK ID および PPK データは ipsec.secrets
に保存されます。以下に例を示します。
@west @east : PPKS "user1" "thestringismeanttobearandomstr"
PPKS
オプションは、静的な PPK を参照します。実験的な関数は、ワンタイムパッドに基づいた動的 PPK を使用します。各接続では、ワンタイムパッドの新しい部分が PPK として使用されます。これを使用すると、ファイル内の動的な PPK の部分がゼロで上書きされ、再利用を防ぐことができます。複数のタイムパッドマテリアルが残っていないと、接続は失敗します。詳細は、man ページの ipsec.secrets(5)
を参照してください。
動的 PPK の実装はサポート対象外のテクノロジープレビューとして提供されます。注意して使用してください。
6.3. Libreswan のインストール
Libreswan IPsec/IKE 実装を通じて VPN を設定する前に、対応するパッケージをインストールし、ipsec
サービスを開始して、ファイアウォールでサービスを許可する必要があります。
前提条件
-
AppStream
リポジトリーが有効になっている。
手順
libreswan
パッケージをインストールします。# dnf install libreswan
Libreswan を再インストールする場合は、古いデータベースファイルを削除し、新しいデータベースを作成します。
# systemctl stop ipsec # rm /var/lib/ipsec/nss/*db # ipsec initnss
ipsec
サービスを開始して有効にし、システムの起動時にサービスを自動的に開始できるようにします。# systemctl enable ipsec --now
ファイアウォールで、
ipsec
サービスを追加して、IKE プロトコル、ESP プロトコル、および AH プロトコルの 500/UDP ポートおよび 4500/UDP ポートを許可するように設定します。# firewall-cmd --add-service="ipsec" # firewall-cmd --runtime-to-permanent
6.4. ホスト間の VPN の作成
raw RSA キーによる認証を使用して、左 および 右 と呼ばれる 2 つのホスト間に、ホストツーホスト IPsec VPN を作成するように Libreswan を設定できます。
前提条件
-
Libreswan がインストールされ、
ipsec
サービスが各ノードで開始している。
手順
各ホストで Raw RSA 鍵ペアを生成します。
# ipsec newhostkey
前の手順で生成した鍵の
ckaid
を返します。左 で次のコマンドを実行して、そのckaid
を使用します。以下に例を示します。# ipsec showhostkey --left --ckaid 2d3ea57b61c9419dfd6cf43a1eb6cb306c0e857d
上のコマンドの出力により、設定に必要な
leftrsasigkey=
行が生成されます。次のホスト (右) でも同じ操作を行います。# ipsec showhostkey --right --ckaid a9e1f6ce9ecd3608c24e8f701318383f41798f03
/etc/ipsec.d/
ディレクトリーで、新しいmy_host-to-host.conf
ファイルを作成します。上の手順のipsec showhostkey
コマンドの出力から、RSA ホストの鍵を新規ファイルに書き込みます。以下に例を示します。conn mytunnel leftid=@west left=192.1.2.23 leftrsasigkey=0sAQOrlo+hOafUZDlCQmXFrje/oZm [...] W2n417C/4urYHQkCvuIQ== rightid=@east right=192.1.2.45 rightrsasigkey=0sAQO3fwC6nSSGgt64DWiYZzuHbc4 [...] D/v8t5YTQ== authby=rsasig
鍵をインポートしたら、
ipsec
サービスを再起動します。# systemctl restart ipsec
接続を読み込みます。
# ipsec auto --add mytunnel
トンネルを確立します。
# ipsec auto --up mytunnel
ipsec
サービスの開始時に自動的にトンネルを開始するには、以下の行を接続定義に追加します。auto=start
6.5. サイト間 VPN の設定
2 つのネットワークを結合してサイト間の IPsec VPN を作成する場合は、その 2 つのホスト間の IPsec トンネルを作成します。これにより、ホストは終了点として動作し、1 つまたは複数のサブネットからのトラフィックが通過できるように設定されます。したがって、ホストを、ネットワークのリモート部分にゲートウェイとして見なすことができます。
サイト間の VPN の設定は、設定ファイル内で複数のネットワークまたはサブネットを指定する必要がある点のみが、ホスト間の VPN とは異なります。
前提条件
- ホスト間の VPN が設定されている。
手順
ホスト間の VPN の設定が含まれるファイルを、新規ファイルにコピーします。以下に例を示します。
# cp /etc/ipsec.d/my_host-to-host.conf /etc/ipsec.d/my_site-to-site.conf
上の手順で作成したファイルに、サブネット設定を追加します。以下に例を示します。
conn mysubnet also=mytunnel leftsubnet=192.0.1.0/24 rightsubnet=192.0.2.0/24 auto=start conn mysubnet6 also=mytunnel leftsubnet=2001:db8:0:1::/64 rightsubnet=2001:db8:0:2::/64 auto=start # the following part of the configuration file is the same for both host-to-host and site-to-site connections: conn mytunnel leftid=@west left=192.1.2.23 leftrsasigkey=0sAQOrlo+hOafUZDlCQmXFrje/oZm [...] W2n417C/4urYHQkCvuIQ== rightid=@east right=192.1.2.45 rightrsasigkey=0sAQO3fwC6nSSGgt64DWiYZzuHbc4 [...] D/v8t5YTQ== authby=rsasig
6.6. リモートアクセスの VPN の設定
ロードウォーリアーとは、モバイルクライアントと動的に割り当てられた IP アドレスを使用する移動するユーザーのことです。モバイルクライアントは、X.509 証明書を使用して認証します。
以下の例では、IKEv2
の設定を示しています。IKEv1
XAUTH プロトコルは使用していません。
サーバー上では以下の設定になります。
conn roadwarriors ikev2=insist # support (roaming) MOBIKE clients (RFC 4555) mobike=yes fragmentation=yes left=1.2.3.4 # if access to the LAN is given, enable this, otherwise use 0.0.0.0/0 # leftsubnet=10.10.0.0/16 leftsubnet=0.0.0.0/0 leftcert=gw.example.com leftid=%fromcert leftxauthserver=yes leftmodecfgserver=yes right=%any # trust our own Certificate Agency rightca=%same # pick an IP address pool to assign to remote users # 100.64.0.0/16 prevents RFC1918 clashes when remote users are behind NAT rightaddresspool=100.64.13.100-100.64.13.254 # if you want remote clients to use some local DNS zones and servers modecfgdns="1.2.3.4, 5.6.7.8" modecfgdomains="internal.company.com, corp" rightxauthclient=yes rightmodecfgclient=yes authby=rsasig # optionally, run the client X.509 ID through pam to allow or deny client # pam-authorize=yes # load connection, do not initiate auto=add # kill vanished roadwarriors dpddelay=1m dpdtimeout=5m dpdaction=clear
ロードウォーリアーのデバイスであるモバイルクライアントでは、上記の設定に多少変更を加えて使用します。
conn to-vpn-server ikev2=insist # pick up our dynamic IP left=%defaultroute leftsubnet=0.0.0.0/0 leftcert=myname.example.com leftid=%fromcert leftmodecfgclient=yes # right can also be a DNS hostname right=1.2.3.4 # if access to the remote LAN is required, enable this, otherwise use 0.0.0.0/0 # rightsubnet=10.10.0.0/16 rightsubnet=0.0.0.0/0 fragmentation=yes # trust our own Certificate Agency rightca=%same authby=rsasig # allow narrowing to the server’s suggested assigned IP and remote subnet narrowing=yes # support (roaming) MOBIKE clients (RFC 4555) mobike=yes # initiate connection auto=start
6.7. メッシュ VPN の設定
any-to-any VPN とも呼ばれるメッシュ VPN ネットワークは、全ノードが IPsec を使用して通信するネットワークです。この設定では、IPsec を使用できないノードの例外が許可されます。メッシュの VPN ネットワークは、以下のいずれかの方法で設定できます。
- IPSec を必要とする。
- IPsec を優先するが、平文通信へのフォールバックを可能にする。
ノード間の認証は、X.509 証明書または DNSSEC (DNS Security Extensions) を基にできます。
これらの接続は通常の Libreswan 設定であるため、オポチュニスティック IPsec に通常の IKEv2 認証方法を使用できます。ただし、right=%opportunisticgroup
エントリーで定義されるオポチュニスティック IPsec を除きます。一般的な認証方法は、一般に共有される認証局 (CA) を使用して、X.509 証明書に基づいてホストを相互に認証させる方法です。クラウドデプロイメントでは通常、標準の手順の一部として、クラウド内の各ノードに証明書を発行します。
1 つのホストが侵害されると、グループの PSK シークレットも侵害されるため、PreSharedKey (PSK) 認証は使用しないでください。
NULL 認証を使用すると、認証なしでノード間に暗号化をデプロイできます。これを使用した場合、受動的な攻撃者からのみ保護されます。
以下の手順では、X.509 証明書を使用します。この証明書は、Dogtag Certificate System などの任意の種類の CA 管理システムを使用して生成できます。Dogtag は、各ノードの証明書が PKCS #12 形式 (.p12 ファイル) で利用可能であることを前提としています。これには、秘密鍵、ノード証明書、およびその他のノードの X.509 証明書を検証するのに使用されるルート CA 証明書が含まれます。
各ノードでは、その X.509 証明書を除いて、同じ設定を使用します。これにより、ネットワーク内で既存ノードを再設定せずに、新規ノードを追加できます。PKCS #12 ファイルには分かりやすい名前が必要であるため、名前には node を使用します。これにより、すべてのノードに対して、この名前を参照する設定ファイルが同一になります。
前提条件
-
Libreswan がインストールされ、
ipsec
サービスが各ノードで開始している。 新しい NSS データベースが初期化されている。
すでに古い NSS データベースがある場合は、古いデータベースファイルを削除します。
# systemctl stop ipsec # rm /var/lib/ipsec/nss/*db
次のコマンドを使用して、新しいデータベースを初期化できます。
# ipsec initnss
手順
各ノードで PKCS #12 ファイルをインポートします。この手順では、PKCS #12 ファイルの生成に使用するパスワードが必要になります。
# ipsec import nodeXXX.p12
IPsec required
(private)、IPsec optional
(private-or-clear)、およびNo IPsec
(clear) プロファイルに、以下のような 3 つの接続定義を作成します。# cat /etc/ipsec.d/mesh.conf conn clear auto=ondemand 1 type=passthrough authby=never left=%defaultroute right=%group conn private auto=ondemand type=transport authby=rsasig failureshunt=drop negotiationshunt=drop ikev2=insist left=%defaultroute leftcert=nodeXXXX leftid=%fromcert 2 rightid=%fromcert right=%opportunisticgroup conn private-or-clear auto=ondemand type=transport authby=rsasig failureshunt=passthrough negotiationshunt=passthrough # left left=%defaultroute leftcert=nodeXXXX 3 leftid=%fromcert leftrsasigkey=%cert # right rightrsasigkey=%cert rightid=%fromcert right=%opportunisticgroup
- 1
auto
変数にはいくつかのオプションがあります。ondemand
接続オプションは、IPsec 接続を開始するオポチュニスティック IPsec や、常にアクティブにする必要のない明示的に設定した接続に使用できます。このオプションは、カーネル内にトラップ XFRM ポリシーを設定し、そのポリシーに一致する最初のパケットを受信したときに IPsec 接続を開始できるようにします。オポチュニスティック IPsec を使用する場合も、明示的に設定した接続を使用する場合も、次のオプションを使用すると、IPsec 接続を効果的に設定および管理できます。
add
オプション-
接続設定をロードし、リモート開始に応答できるように準備します。ただし、接続はローカル側から自動的に開始されません。コマンド
ipsec auto --up
を使用して、IPsec 接続を手動で開始できます。 start
オプション- 接続設定をロードし、リモート開始に応答できるように準備します。さらに、リモートピアへの接続を即座に開始します。このオプションは、永続的かつ常にアクティブな接続に使用できます。
- 2
leftid
変数とrightid
変数は、IPsec トンネル接続の右チャネルと左チャネルを識別します。これらの変数を使用して、ローカル IP アドレスの値、またはローカル証明書のサブジェクト DN を取得できます (設定している場合)。- 3
leftcert
変数は、使用する NSS データベースのニックネームを定義します。ネットワークの IP アドレスを対応するカテゴリーに追加します。たとえば、すべてのノードが 10.15.0.0/16 ネットワーク内に存在し、すべてのノードで IPsec 暗号化を使用する必要がある場合は、次のコマンドを実行します。
# echo "10.15.0.0/16" >> /etc/ipsec.d/policies/private
特定のノード (10.15.34.0/24 など) を IPsec の有無にかかわらず機能させるには、そのノードを private-or-clear グループに追加します。
# echo "10.15.34.0/24" >> /etc/ipsec.d/policies/private-or-clear
ホストを、10.15.1.2 など、IPsec の機能がない clear グループに定義する場合は、次のコマンドを実行します。
# echo "10.15.1.2/32" >> /etc/ipsec.d/policies/clear
/etc/ipsec.d/policies
ディレクトリーのファイルは、各新規ノードのテンプレートから作成することも、Puppet または Ansible を使用してプロビジョニングすることもできます。すべてのノードでは、例外のリストが同じか、異なるトラフィックフローが期待される点に注意してください。したがって、あるノードで IPsec が必要になり、別のノードで IPsec を使用できないために、ノード間の通信ができない場合もあります。
ノードを再起動して、設定したメッシュに追加します。
# systemctl restart ipsec
検証
2 つのノード間に IPsec トンネルを開くことで手順を確認できます。
ping
コマンドを使用して IPsec トンネルを開きます。# ping <nodeYYY>
インポートされた証明書を含む NSS データベースを表示します。
# certutil -L -d sql:/etc/ipsec.d Certificate Nickname Trust Attributes SSL,S/MIME,JAR/XPI west u,u,u ca CT,,
ノードが開いたトンネルを確認します。
# ipsec trafficstatus 006 #2: "private#10.15.0.0/16"[1] ...nodeYYY, type=ESP, add_time=1691399301, inBytes=512, outBytes=512, maxBytes=2^63B, id='C=US, ST=NC, O=Example Organization, CN=east'
関連情報
-
ipsec.conf(5)
man ページ。 -
authby
変数の詳細は、6.2.Libreswan の認証方法 を参照してください。
6.8. FIPS 準拠の IPsec VPN のデプロイメント
この手順を使用して、Libreswan に基づく FIPS 準拠の IPsec VPN ソリューションをデプロイします。次の手順では、FIPS モードの Libreswan で使用可能な暗号化アルゴリズムと無効になっている暗号化アルゴリズムを識別することもできます。
前提条件
-
AppStream
リポジトリーが有効になっている。
手順
libreswan
パッケージをインストールします。# dnf install libreswan
Libreswan を再インストールする場合は、古い NSS データベースを削除します。
# systemctl stop ipsec # rm /var/lib/ipsec/nss/*db
ipsec
サービスを開始して有効にし、システムの起動時にサービスを自動的に開始できるようにします。# systemctl enable ipsec --now
ファイアウォールで、
ipsec
サービスを追加して、IKE プロトコル、ESP プロトコル、および AH プロトコルの 500/UDP ポートおよび 4500/UDP ポートを許可するように設定します。# firewall-cmd --add-service="ipsec" # firewall-cmd --runtime-to-permanent
システムを FIPS モードに切り替えます。
# fips-mode-setup --enable
システムを再起動して、カーネルを FIPS モードに切り替えます。
# reboot
検証
Libreswan が FIPS モードで実行していることを確認するには、次のコマンドを実行します。
# ipsec whack --fipsstatus 000 FIPS mode enabled
または、
systemd
ジャーナルでipsec
ユニットのエントリーを確認します。$ journalctl -u ipsec ... Jan 22 11:26:50 localhost.localdomain pluto[3076]: FIPS Mode: YES
FIPS モードで使用可能なアルゴリズムを表示するには、次のコマンドを実行します。
# ipsec pluto --selftest 2>&1 | head -6 Initializing NSS using read-write database "sql:/var/lib/ipsec/nss" FIPS Mode: YES NSS crypto library initialized FIPS mode enabled for pluto daemon NSS library is running in FIPS mode FIPS HMAC integrity support [disabled]
FIPS モードで無効化されたアルゴリズムをクエリーするには、次のコマンドを実行します。
# ipsec pluto --selftest 2>&1 | grep disabled Encryption algorithm CAMELLIA_CTR disabled; not FIPS compliant Encryption algorithm CAMELLIA_CBC disabled; not FIPS compliant Encryption algorithm NULL disabled; not FIPS compliant Encryption algorithm CHACHA20_POLY1305 disabled; not FIPS compliant Hash algorithm MD5 disabled; not FIPS compliant PRF algorithm HMAC_MD5 disabled; not FIPS compliant PRF algorithm AES_XCBC disabled; not FIPS compliant Integrity algorithm HMAC_MD5_96 disabled; not FIPS compliant Integrity algorithm HMAC_SHA2_256_TRUNCBUG disabled; not FIPS compliant Integrity algorithm AES_XCBC_96 disabled; not FIPS compliant DH algorithm MODP1536 disabled; not FIPS compliant DH algorithm DH31 disabled; not FIPS compliant
FIPS モードで許可されているすべてのアルゴリズムと暗号のリストを表示するには、次のコマンドを実行します。
# ipsec pluto --selftest 2>&1 | grep ESP | grep FIPS | sed "s/^.*FIPS//" aes_ccm, aes_ccm_c aes_ccm_b aes_ccm_a NSS(CBC) 3des NSS(GCM) aes_gcm, aes_gcm_c NSS(GCM) aes_gcm_b NSS(GCM) aes_gcm_a NSS(CTR) aesctr NSS(CBC) aes aes_gmac NSS sha, sha1, sha1_96, hmac_sha1 NSS sha512, sha2_512, sha2_512_256, hmac_sha2_512 NSS sha384, sha2_384, sha2_384_192, hmac_sha2_384 NSS sha2, sha256, sha2_256, sha2_256_128, hmac_sha2_256 aes_cmac null NSS(MODP) null, dh0 NSS(MODP) dh14 NSS(MODP) dh15 NSS(MODP) dh16 NSS(MODP) dh17 NSS(MODP) dh18 NSS(ECP) ecp_256, ecp256 NSS(ECP) ecp_384, ecp384 NSS(ECP) ecp_521, ecp521
6.9. パスワードによる IPsec NSS データベースの保護
デフォルトでは、IPsec サービスは、初回起動時に空のパスワードを使用して Network Security Services (NSS) データベースを作成します。パスワード保護を追加するには、以下の手順を実行します。
前提条件
-
/var/lib/ipsec/nss/
ディレクトリーには NSS データベースファイルが含まれます。
手順
Libreswan の
NSS
データベースのパスワード保護を有効にします。# certutil -N -d sql:/var/lib/ipsec/nss Enter Password or Pin for "NSS Certificate DB": Enter a password which will be used to encrypt your keys. The password should be at least 8 characters long, and should contain at least one non-alphabetic character. Enter new password:
前の手順で設定したパスワードを追加した
/etc/ipsec.d/nsspassword
ファイルを作成します。以下に例を示します。# cat /etc/ipsec.d/nsspassword NSS Certificate DB:MyStrongPasswordHere
nsspassword
ファイルは以下の構文を使用することに注意してください。token_1_name:the_password token_2_name:the_password
デフォルトの NSS ソフトウェアトークンは
NSS Certificate DB
です。システムが FIPS モードで実行し場合は、トークンの名前がNSS FIPS 140-2 Certificate DB
になります。選択したシナリオに応じて、
nsspassword
ファイルの完了後にipsec
サービスを起動または再起動します。# systemctl restart ipsec
検証
NSS データベースに空でないパスワードを追加した後に、
ipsec
サービスが実行中であることを確認します。# systemctl status ipsec ● ipsec.service - Internet Key Exchange (IKE) Protocol Daemon for IPsec Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/ipsec.service; enabled; vendor preset: disable> Active: active (running)...
必要に応じて、初期化の成功を示すエントリーが
Journal
ログに含まれていることを確認します。# journalctl -u ipsec ... pluto[6214]: Initializing NSS using read-write database "sql:/var/lib/ipsec/nss" pluto[6214]: NSS Password from file "/etc/ipsec.d/nsspassword" for token "NSS Certificate DB" with length 20 passed to NSS pluto[6214]: NSS crypto library initialized ...
関連情報
-
certutil(1)
man ページ。 - Government Standards ナレッジベースアーティクル
6.10. TCP を使用するように IPsec VPN を設定
Libreswan は、RFC 8229 で説明されているように、IKE パケットおよび IPsec パケットの TCP カプセル化に対応します。この機能により、UDP 経由でトラフィックが転送されないように、IPsec VPN をネットワークに確立し、セキュリティーのペイロード (ESP) を強化できます。フォールバックまたはメインの VPN トランスポートプロトコルとして TCP を使用するように VPN サーバーおよびクライアントを設定できます。TCP カプセル化にはパフォーマンスコストが大きくなるため、UDP がシナリオで永続的にブロックされている場合に限り、TCP を主な VPN プロトコルとして使用してください。
前提条件
- リモートアクセス VPN が設定されている。
手順
config setup
セクションの/etc/ipsec.conf
ファイルに以下のオプションを追加します。listen-tcp=yes
UDP で最初の試行に失敗した場合に TCP カプセル化をフォールバックオプションとして使用するには、クライアントの接続定義に以下の 2 つのオプションを追加します。
enable-tcp=fallback tcp-remoteport=4500
または、UDP を永続的にブロックしている場合は、クライアントの接続設定で以下のオプションを使用します。
enable-tcp=yes tcp-remoteport=4500
6.11. IPsec 接続を高速化するために、ESP ハードウェアオフロードの自動検出と使用を設定
Encapsulating Security Payload (ESP) をハードウェアにオフロードすると、Ethernet で IPsec 接続が加速します。デフォルトでは、Libreswan は、ハードウェアがこの機能に対応しているかどうかを検出するため、ESP ハードウェアのオフロードを有効にします。機能が無効になっているか、明示的に有効になっている場合は、自動検出に戻すことができます。
前提条件
- ネットワークカードは、ESP ハードウェアオフロードに対応します。
- ネットワークドライバーは、ESP ハードウェアのオフロードに対応します。
- IPsec 接続が設定され、動作する。
手順
-
ESP ハードウェアオフロードサポートの自動検出を使用する接続の
/etc/ipsec.d/
ディレクトリーにある Libreswan 設定ファイルを編集します。 -
接続の設定で
nic-offload
パラメーターが設定されていないことを確認します。 nic-offload
を削除した場合は、ipsec
を再起動します。# systemctl restart ipsec
検証
ネットワークカードが ESP ハードウェアオフロードサポートに対応している場合は、以下の手順に従って結果を検証します。
IPsec 接続が使用するイーサネットデバイスの
tx_ipsec
およびrx_ipsec
カウンターを表示します。# ethtool -S enp1s0 | egrep "_ipsec" tx_ipsec: 10 rx_ipsec: 10
IPsec トンネルを介してトラフィックを送信します。たとえば、リモート IP アドレスに ping します。
# ping -c 5 remote_ip_address
イーサネットデバイスの
tx_ipsec
およびrx_ipsec
カウンターを再度表示します。# ethtool -S enp1s0 | egrep "_ipsec" tx_ipsec: 15 rx_ipsec: 15
カウンターの値が増えると、ESP ハードウェアオフロードが動作します。
関連情報
6.12. IPsec 接続を加速化するためにボンディングでの ESP ハードウェアオフロードの設定
Encapsulating Security Payload (ESP) をハードウェアにオフロードすると、IPsec 接続が加速します。フェイルオーバーの理由でネットワークボンディングを使用する場合、ESP ハードウェアオフロードを設定する要件と手順は、通常のイーサーネットデバイスを使用する要件と手順とは異なります。たとえば、このシナリオでは、ボンディングでオフロードサポートを有効にし、カーネルはボンディングのポートに設定を適用します。
前提条件
- ボンディングのすべてのネットワークカードが、ESP ハードウェアオフロードをサポートしている。
-
ネットワークドライバーが、ボンドデバイスで ESP ハードウェアオフロードに対応している。RHEL では、
ixgbe
ドライバーのみがこの機能をサポートします。 - ボンディングが設定されており動作する。
-
ボンディングで
active-backup
モードを使用している。ボンディングドライバーは、この機能の他のモードはサポートしていません。 - IPsec 接続が設定され、動作する。
手順
ネットワークボンディングで ESP ハードウェアオフロードのサポートを有効にします。
# nmcli connection modify bond0 ethtool.feature-esp-hw-offload on
このコマンドにより、
bond0
接続での ESP ハードウェアオフロードのサポートが有効になります。bond0
接続を再度アクティブにします。# nmcli connection up bond0
ESP ハードウェアオフロードに使用すべき接続の
/etc/ipsec.d/
ディレクトリーにある Libreswan 設定ファイルを編集し、nic-offload=yes
ステートメントを接続エントリーに追加します。conn example ... nic-offload=yes
ipsec
サービスを再起動します。# systemctl restart ipsec
検証
ボンディングのアクティブなポートを表示します。
# grep "Currently Active Slave" /proc/net/bonding/bond0 Currently Active Slave: enp1s0
アクティブなポートの
tx_ipsec
カウンターおよびrx_ipsec
カウンターを表示します。# ethtool -S enp1s0 | egrep "_ipsec" tx_ipsec: 10 rx_ipsec: 10
IPsec トンネルを介してトラフィックを送信します。たとえば、リモート IP アドレスに ping します。
# ping -c 5 remote_ip_address
アクティブなポートの
tx_ipsec
カウンターおよびrx_ipsec
カウンターを再度表示します。# ethtool -S enp1s0 | egrep "_ipsec" tx_ipsec: 15 rx_ipsec: 15
カウンターの値が増えると、ESP ハードウェアオフロードが動作します。
6.13. システム全体の暗号化ポリシーをオプトアウトする IPsec 接続の設定
接続向けのシステム全体の暗号化ポリシーのオーバーライド
RHEL のシステム全体の暗号化ポリシーでは、%default
と呼ばれる特別な接続が作成されます。この接続には、ikev2
オプション、esp
オプション、および ike
オプションのデフォルト値が含まれます。ただし、接続設定ファイルに上記のオプションを指定すると、デフォルト値を上書きできます。
たとえば、次の設定では、AES および SHA-1 または SHA-2 で IKEv1 を使用し、AES-GCM または AES-CBC で IPsec (ESP) を使用する接続が可能です。
conn MyExample ... ikev2=never ike=aes-sha2,aes-sha1;modp2048 esp=aes_gcm,aes-sha2,aes-sha1 ...
AES-GCM は IPsec (ESP) および IKEv2 で利用できますが、IKEv1 では利用できません。
全接続向けのシステム全体の暗号化ポリシーの無効化
すべての IPsec 接続のシステム全体の暗号化ポリシーを無効にするには、/etc/ipsec.conf
ファイルで次の行をコメントアウトします。
include /etc/crypto-policies/back-ends/libreswan.config
次に、接続設定ファイルに ikev2=never
オプションを追加してください。
6.14. IPsec VPN 設定のトラブルシューティング
IPsec VPN 設定に関連する問題は主に、一般的な理由が原因で発生する可能性が高くなっています。このような問題が発生した場合は、問題の原因が以下のシナリオのいずれかに該当するかを確認して、対応するソリューションを適用します。
基本的な接続のトラブルシューティング
VPN 接続関連の問題の多くは、管理者が不適当な設定オプションを指定してエンドポイントを設定した新しいデプロイメントで発生します。また、互換性のない値が新たに実装された場合に、機能していた設定が突然動作が停止する可能性があります。管理者が設定を変更した場合など、このような結果になることがあります。また、管理者が暗号化アルゴリズムなど、特定のオプションに異なるデフォルト値を使用して、ファームウェアまたはパッケージの更新をインストールした場合などです。
IPsec VPN 接続が確立されていることを確認するには、次のコマンドを実行します。
# ipsec trafficstatus
006 #8: "vpn.example.com"[1] 192.0.2.1, type=ESP, add_time=1595296930, inBytes=5999, outBytes=3231, id='@vpn.example.com', lease=100.64.13.5/32
出力が空の場合や、エントリーで接続名が表示されない場合など、トンネルが破損します。
接続に問題があることを確認するには、以下を実行します。
vpn.example.com 接続をもう一度読み込みます。
# ipsec auto --add vpn.example.com 002 added connection description "vpn.example.com"
次に、VPN 接続を開始します。
# ipsec auto --up vpn.example.com
ファイアウォール関連の問題
最も一般的な問題は、IPSec エンドポイントの 1 つ、またはエンドポイント間にあるルーターにあるファイアウォールで Internet Key Exchange (IKE) パケットがドロップされるという点が挙げられます。
IKEv2 の場合には、以下の例のような出力は、ファイアウォールに問題があることを示しています。
# ipsec auto --up vpn.example.com 181 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #15: initiating IKEv2 IKE SA 181 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #15: STATE_PARENT_I1: sent v2I1, expected v2R1 010 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #15: STATE_PARENT_I1: retransmission; will wait 0.5 seconds for response 010 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #15: STATE_PARENT_I1: retransmission; will wait 1 seconds for response 010 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #15: STATE_PARENT_I1: retransmission; will wait 2 seconds for ...
IKEv1 の場合は、最初のコマンドの出力は以下のようになります。
# ipsec auto --up vpn.example.com 002 "vpn.example.com" #9: initiating Main Mode 102 "vpn.example.com" #9: STATE_MAIN_I1: sent MI1, expecting MR1 010 "vpn.example.com" #9: STATE_MAIN_I1: retransmission; will wait 0.5 seconds for response 010 "vpn.example.com" #9: STATE_MAIN_I1: retransmission; will wait 1 seconds for response 010 "vpn.example.com" #9: STATE_MAIN_I1: retransmission; will wait 2 seconds for response ...
IPsec の設定に使用される IKE プロトコルは暗号化されているため、tcpdump
ツールを使用して、トラブルシューティングできるサブセットは一部のみです。ファイアウォールが IKE パケットまたは IPsec パケットをドロップしている場合は、tcpdump
ユーティリティーを使用して原因を見つけることができます。ただし、tcpdump
は IPsec VPN 接続に関する他の問題を診断できません。
eth0
インターフェイスで VPN および暗号化データすべてのネゴシエーションを取得するには、次のコマンドを実行します。# tcpdump -i eth0 -n -n esp or udp port 500 or udp port 4500 or tcp port 4500
アルゴリズム、プロトコル、およびポリシーが一致しない場合
VPN 接続では、エンドポイントが IKE アルゴリズム、IPsec アルゴリズム、および IP アドレス範囲に一致する必要があります。不一致が発生した場合には接続は失敗します。以下の方法のいずれかを使用して不一致を特定した場合は、アルゴリズム、プロトコル、またはポリシーを調整して修正します。
リモートエンドポイントが IKE/IPsec を実行していない場合は、そのパケットを示す ICMP パケットが表示されます。以下に例を示します。
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 000 "vpn.example.com"[1] 192.0.2.2 #16: ERROR: asynchronous network error report on wlp2s0 (192.0.2.2:500), complainant 198.51.100.1: Connection refused [errno 111, origin ICMP type 3 code 3 (not authenticated)] ...
IKE アルゴリズムが一致しない例:
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 003 "vpn.example.com"[1] 193.110.157.148 #3: dropping unexpected IKE_SA_INIT message containing NO_PROPOSAL_CHOSEN notification; message payloads: N; missing payloads: SA,KE,Ni
IPsec アルゴリズムが一致しない例:
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 182 "vpn.example.com"[1] 193.110.157.148 #5: STATE_PARENT_I2: sent v2I2, expected v2R2 {auth=IKEv2 cipher=AES_GCM_16_256 integ=n/a prf=HMAC_SHA2_256 group=MODP2048} 002 "vpn.example.com"[1] 193.110.157.148 #6: IKE_AUTH response contained the error notification NO_PROPOSAL_CHOSEN
また、IKE バージョンが一致しないと、リモートエンドポイントが応答なしの状態でリクエストをドロップする可能性がありました。これは、すべての IKE パケットをドロップするファイアウォールと同じです。
IKEv2 (Traffic Selectors - TS) の IP アドレス範囲が一致しない例:
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 1v2 "vpn.example.com" #1: STATE_PARENT_I2: sent v2I2, expected v2R2 {auth=IKEv2 cipher=AES_GCM_16_256 integ=n/a prf=HMAC_SHA2_512 group=MODP2048} 002 "vpn.example.com" #2: IKE_AUTH response contained the error notification TS_UNACCEPTABLE
IKEv1 の IP アドレス範囲で一致しない例:
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 031 "vpn.example.com" #2: STATE_QUICK_I1: 60 second timeout exceeded after 0 retransmits. No acceptable response to our first Quick Mode message: perhaps peer likes no proposal
IKEv1 で PreSharedKeys (PSK) を使用する場合には、どちらでも同じ PSK に配置されなければ、IKE メッセージ全体の読み込みができなくなります。
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 003 "vpn.example.com" #1: received Hash Payload does not match computed value 223 "vpn.example.com" #1: sending notification INVALID_HASH_INFORMATION to 192.0.2.23:500
IKEv2 では、 mismatched-PSK エラーが原因で AUTHENTICATION_FAILED メッセージが表示されます。
# ipsec auto --up vpn.example.com ... 002 "vpn.example.com" #1: IKE SA authentication request rejected by peer: AUTHENTICATION_FAILED
最大伝送単位 (MTU)
ファイアウォールが IKE または IPSec パケットをブロックする以外で、ネットワークの問題の原因として、暗号化パケットのパケットサイズの増加が最も一般的です。ネットワークハードウェアは、最大伝送単位 (MTU) を超えるパケットを 1500 バイトなどのサイズに断片化します。多くの場合、断片化されたパケットは失われ、パケットの再アセンブルに失敗します。これにより、小さいサイズのパケットを使用する ping テスト時には機能し、他のトラフィックでは失敗するなど、断続的な問題が発生します。このような場合に、SSH セッションを確立できますが、リモートホストに 'ls -al /usr' コマンドに入力した場合など、すぐにターミナルがフリーズします。
この問題を回避するには、トンネル設定ファイルに mtu=1400
のオプションを追加して、MTU サイズを縮小します。
または、TCP 接続の場合は、MSS 値を変更する iptables ルールを有効にします。
# iptables -I FORWARD -p tcp --tcp-flags SYN,RST SYN -j TCPMSS --clamp-mss-to-pmtu
各シナリオで上記のコマンドを使用して問題が解決されない場合は、set-mss
パラメーターで直接サイズを指定します。
# iptables -I FORWARD -p tcp --tcp-flags SYN,RST SYN -j TCPMSS --set-mss 1380
ネットワークアドレス変換 (NAT)
IPsec ホストが NAT ルーターとしても機能すると、誤ってパケットが再マッピングされる可能性があります。以下の設定例はこの問題について示しています。
conn myvpn left=172.16.0.1 leftsubnet=10.0.2.0/24 right=172.16.0.2 rightsubnet=192.168.0.0/16 …
アドレスが 172.16.0.1 のシステムには NAT ルールが 1 つあります。
iptables -t nat -I POSTROUTING -o eth0 -j MASQUERADE
アドレスが 10.0.2.33 のシステムがパケットを 192.168.0.1 に送信する場合に、ルーターは IPsec 暗号化を適用する前にソースを 10.0.2.33 から 172.16.0.1 に変換します。
次に、ソースアドレスが 10.0.2.33 のパケットは conn myvpn
設定と一致しなくなるので、IPsec ではこのパケットが暗号化されません。
この問題を解決するには、ルーターのターゲット IPsec サブネット範囲の NAT を除外するルールを挿入します。以下に例を示します。
iptables -t nat -I POSTROUTING -s 10.0.2.0/24 -d 192.168.0.0/16 -j RETURN
カーネル IPsec サブシステムのバグ
たとえば、バグが原因で IKE ユーザー空間と IPsec カーネルの同期が解除される場合など、カーネル IPsec サブシステムに問題が発生する可能性があります。このような問題がないかを確認するには、以下を実行します。
$ cat /proc/net/xfrm_stat
XfrmInError 0
XfrmInBufferError 0
...
上記のコマンドの出力でゼロ以外の値が表示されると、問題があることを示しています。この問題が発生した場合は、新しい サポートケース を作成し、1 つ前のコマンドの出力と対応する IKE ログを添付してください。
Libreswan のログ
デフォルトでは、Libreswan は syslog
プロトコルを使用してログに記録します。journalctl
コマンドを使用して、IPsec に関連するログエントリーを検索できます。ログへの対応するエントリーは pluto
IKE デーモンにより送信されるため、以下のように、キーワード pluto を検索します。
$ journalctl -b | grep pluto
ipsec
サービスのライブログを表示するには、次のコマンドを実行します。
$ journalctl -f -u ipsec
ロギングのデフォルトレベルで設定問題が解決しない場合は、/etc/ipsec.conf
ファイルの config setup
セクションに plutodebug=all
オプションを追加してデバッグログを有効にします。
デバッグロギングは多くのエントリーを生成し、journald
サービスまたは syslogd
サービスレートのいずれかが syslog
メッセージを制限する可能性があることに注意してください。完全なログを取得するには、ロギングをファイルにリダイレクトします。/etc/ipsec.conf
を編集し、config setup
セクションに logfile=/var/log/pluto.log
を追加します。
関連情報
- ログファイルを使用した問題のトラブルシューティング
-
tcpdump(8)
およびipsec.conf(5)
の man ページ - firewalld の使用および設定
6.15. 関連情報
-
ipsec(8)
、ipsec.conf(5)
、ipsec.secrets(5)
、ipsec_auto(8)
、およびipsec_rsasigkey(8)
の man ページ -
/usr/share/doc/libreswan-version/
ディレクトリー - アップストリームプロジェクトの Web サイト
- The Libreswan プロジェクトの Wiki
- All Libreswan のすべての man ページ
- NIST Special Publication 800-77:Guide to IPsec VPNs
第7章 VPN RHEL システムロールを使用した IPsec との vpn
接続の設定
vpn
システムロールを使用すると、Red Hat Ansible Automation Platform を使用して RHEL システムで VPN 接続を設定できます。これを使用して、ホスト間、ネットワーク間、VPN リモートアクセスサーバー、およびメッシュ設定をセットアップできます。
ホスト間接続の場合、ロールは、必要に応じてキーを生成するなど、デフォルトのパラメーターを使用して、vpn_connections
のリスト内のホストの各ペア間に VPN トンネルを設定します。または、リストされているすべてのホスト間にオポチュニスティックメッシュ設定を作成するように設定することもできます。このロールは、hosts
の下にあるホストの名前が Ansible インベントリーで使用されているホストの名前と同じであり、それらの名前を使用してトンネルを設定できることを前提としています。
vpn
RHEL システムロールは現在、VPN プロバイダーとして IPsec 実装であ る Libreswan のみをサポートしています。
7.1. vpn
システムロールを使用して IPsec でホスト間 VPN の作成
vpn
システムロールを使用して、コントロールノードで Ansible Playbook を実行することにより、ホスト間接続を設定できます。これにより、インベントリーファイルにリストされているすべての管理対象ノードが設定されます。
前提条件
-
1 つ以上の 管理対象ノード (
vpn
システムロールで設定するシステム) へのアクセスおよびパーミッション。 コントロールノード (このシステムから Red Hat Ansible Core は他のシステムを設定) へのアクセスおよびパーミッション。
コントロールノードでは、
-
ansible-core
パッケージおよびrhel-system-roles
パッケージがインストールされている。
-
RHEL 8.0-8.5 では、別の Ansible リポジトリーへのアクセス権を指定されており、Ansible をベースにする自動化用の Ansible Engine 2.9 が含まれています。Ansible Engine には、ansible
、ansible-playbook
などのコマンドラインユーティリティー、docker
や podman
などのコネクター、プラグインとモジュールが多く含まれています。Ansible Engine を入手してインストールする方法の詳細は、ナレッジベースのアーティクル記事 How to download and install Red Hat Ansible Engine を参照してください。
RHEL 8.6 および 9.0 では、Ansible Core (ansible-core
パッケージとして提供) が導入されました。これには、Ansible コマンドラインユーティリティー、コマンド、およびビルトイン Ansible プラグインのセットが含まれています。RHEL は、AppStream リポジトリーを介してこのパッケージを提供し、サポート範囲は限定的です。詳細については、ナレッジベースの Scope of support for the Ansible Core package included in the RHEL 9 and RHEL 8.6 and later AppStream repositories を参照してください。
- マネージドノードが記載されているインベントリーファイルがある。
手順
以下の内容を含む新しい
playbook.yml
ファイルを作成します。- name: Host to host VPN hosts: managed_node1, managed_node2 roles: - rhel-system-roles.vpn vars: vpn_connections: - hosts: managed_node1: managed_node2: vpn_manage_firewall: true vpn_manage_selinux: true
この Playbook は、システムロールによって自動生成されたキーを使用した事前共有キー認証を使用して、
managed_node1からmanaged_node2
への接続を設定します。vpn_manage_firewall
とvpn_manage_selinux
は両方ともtrue
に設定されているため、vpn
ロールはfirewall
ロールとselinux
ロールを使用して、vpn
ロールが使用するポートを管理します。オプション: ホストの
vpn_connections
リストに次のセクションを追加して、マネージドホストから、インベントリーファイルに記述されていない外部ホストへの接続を設定します。vpn_connections: - hosts: managed_node1: managed_node2: external_node: hostname: 192.0.2.2
これは、追加の接続 (
managed_node1からexternal_node
) へと (managed_node2からexternal_node
) を設定します。
接続はマネージドノードでのみ設定され、外部ノードでは設定されません。
オプション:
vpn_connections
内の追加セクション (コントロールプレーンやデータプレーンなど) を使用して、マネージドノードに複数の VPN 接続を指定できます。- name: Multiple VPN hosts: managed_node1, managed_node2 roles: - rhel-system-roles.vpn vars: vpn_connections: - name: control_plane_vpn hosts: managed_node1: hostname: 192.0.2.0 # IP for the control plane managed_node2: hostname: 192.0.2.1 - name: data_plane_vpn hosts: managed_node1: hostname: 10.0.0.1 # IP for the data plane managed_node2: hostname: 10.0.0.2
-
オプション: 設定に合わせて変数を変更できます。詳細は、
/usr/share/doc/rhel-system-roles/vpn/README.md
ファイルを参照してください。 オプション: Playbook の構文を確認します。
# ansible-playbook --syntax-check /path/to/file/playbook.yml -i /path/to/file/inventory_file
インベントリーファイルで Playbook を実行します。
# ansible-playbook -i /path/to/file/inventory_file /path/to/file/playbook.yml
検証
マネージドノードで、接続が正常にロードされていることを確認します。
# ipsec status | grep connection.name
connection.nameを、このノードからの接続の名前 (たとえば、
managed_node1-to-managed_node2
) に置き換えます。
デフォルトでは、ロールは、各システムの観点から作成する接続ごとにわかりやすい名前を生成します。たとえば、managed_node1
と managed_node2
との間の接続を作成するときに、managed_node1
上のこの接続のわかりやすい名前は managed_node1-to-managed_node2
ですが、managed_node2
では、この接続の名前は managed_node2-to-managed_node1
となります。
マネージドノードで、接続が正常に開始されたことを確認します。
# ipsec trafficstatus | grep connection.name
オプション: 接続が正常に読み込まれなかった場合は、次のコマンドを入力して手動で接続を追加します。これにより、接続の確立に失敗した理由を示す、より具体的な情報が提供されます。
# ipsec auto --add connection.name
注記接続の読み込みおよび開始のプロセス中に発生した可能性のあるエラーは、ログに報告されます。ログは、
/var/log/pluto.log
にあります。これらのログは解析が難しいため、代わりに接続を手動で追加して、標準出力からログメッセージを取得してみてください。
7.2. vpn
システムロールを使用して IPsec でオポチュニスティックメッシュ VPN 接続の作成
vpn
システムロールを使用して、コントロールノードで Ansible Playbook を実行することにより、認証に証明書を使用するオポチュニスティックメッシュ VPN 接続を設定できます。これにより、インベントリーファイルにリストされているすべての管理対象ノードが設定されます。
証明書による認証は、Playbook で auth_method: cert
パラメーターを定義することによって設定されます。vpn
システムロールは、/etc/ipsec.d
ディレクトリーで定義されている IPsec ネットワークセキュリティーサービス (NSS) 暗号ライブラリーに必要な証明書が含まれていることを前提としています。デフォルトでは、ノード名が証明書のニックネームとして使用されます。この例では、これは managed_node1
です。インベントリーで cert_name
属性を使用して、さまざまな証明書名を定義できます。
次の手順例では、Ansible Playbook を実行するシステムであるコントロールノードは、両方のマネージドノード (192.0.2.0/24) と同じクラスレスドメイン間ルーティング (CIDR) 番号を共有し、IP アドレスは 192.0.2.7 になります。したがって、コントロールノードは、CIDR 192.0.2.0/24 用に自動的に作成されるプライベートポリシーに該当します。
再生中の SSH 接続の損失を防ぐために、コントロールノードの明確なポリシーがポリシーのリストに含まれています。ポリシーリストには、CIDR がデフォルトと等しい項目もあることに注意してください。これは、この Playbook がデフォルトポリシーのルールを上書きして、private-or-clear ではなく private にするためです。
前提条件
1 つ以上の 管理対象ノード (
vpn
システムロールで設定するシステム) へのアクセスおよびパーミッション。-
すべてのマネージドノードで、
/etc/ipsec.d
ディレクトリーの NSS データベースには、ピア認証に必要なすべての証明書が含まれています。デフォルトでは、ノード名が証明書のニックネームとして使用されます。
-
すべてのマネージドノードで、
コントロールノード (このシステムから Red Hat Ansible Core は他のシステムを設定) へのアクセスおよびパーミッション。
コントロールノードでは、
-
ansible-core
パッケージおよびrhel-system-roles
パッケージがインストールされている。
-
RHEL 8.0-8.5 では、別の Ansible リポジトリーへのアクセス権を指定されており、Ansible をベースにする自動化用の Ansible Engine 2.9 が含まれています。Ansible Engine には、ansible
、ansible-playbook
などのコマンドラインユーティリティー、docker
や podman
などのコネクター、プラグインとモジュールが多く含まれています。Ansible Engine を入手してインストールする方法の詳細は、ナレッジベースのアーティクル記事 How to download and install Red Hat Ansible Engine を参照してください。
RHEL 8.6 および 9.0 では、Ansible Core (ansible-core
パッケージとして提供) が導入されました。これには、Ansible コマンドラインユーティリティー、コマンド、およびビルトイン Ansible プラグインのセットが含まれています。RHEL は、AppStream リポジトリーを介してこのパッケージを提供し、サポート範囲は限定的です。詳細については、ナレッジベースの Scope of support for the Ansible Core package included in the RHEL 9 and RHEL 8.6 and later AppStream repositories を参照してください。
- マネージドノードが記載されているインベントリーファイルがある。
手順
以下の内容を含む新しい
playbook.yml
ファイルを作成します。- name: Mesh VPN hosts: managed_node1, managed_node2, managed_node3 roles: - rhel-system-roles.vpn vars: vpn_connections: - opportunistic: true auth_method: cert policies: - policy: private cidr: default - policy: private-or-clear cidr: 198.51.100.0/24 - policy: private cidr: 192.0.2.0/24 - policy: clear cidr: 192.0.2.7/32 vpn_manage_firewall: true vpn_manage_selinux: true
注記vpn_manage_firewall
とvpn_manage_selinux
は両方ともtrue
に設定されているため、vpn
ロールはfirewall
ロールとselinux
ロールを使用して、vpn
ロールが使用するポートを管理します。-
オプション: 設定に合わせて変数を変更できます。詳細は、
/usr/share/doc/rhel-system-roles/vpn/README.md
ファイルを参照してください。 オプション: Playbook の構文を確認します。
# ansible-playbook --syntax-check playbook.yml
インベントリーファイルで Playbook を実行します。
# ansible-playbook -i inventory_file /path/to/file/playbook.yml
7.3. 関連情報
-
VPN システムロールで使用するパラメーターの詳細と、
vpn
システムロールに関する追加情報は、/usr/share/doc/rhel-system-roles/vpn/README.md
ファイルを参照してください。 -
ansible-playbook
コマンドの詳細は、ansible-playbook(1)
man ページを参照してください。
第8章 ネットワークサービスのセキュリティー保護
Red Hat Enterprise Linux 9 は、さまざまな種類のネットワークサーバーをサポートしています。RHEL 9 ネットワークサービスを使用すると、システムのセキュリティーが DoS 攻撃 (Denial of Service)、DDoS 攻撃 (Distributed Denial of Service)、スクリプト脆弱性攻撃、バッファーオーバーフロー攻撃など、さまざまな種類の攻撃のリスクにさらされる可能性があります。
攻撃に対するシステムのセキュリティーを強化するには、使用しているアクティブなネットワークサービスを監視することが重要です。たとえば、ネットワークサービスがマシンで実行されている場合に、そのデーモンはネットワークポートでの接続をリッスンするのでセキュリティーが低下する可能性があります。ネットワークに対する攻撃に対する公開を制限するには、未使用のすべてのサービスをオフにする必要があります。
8.1. rpcbind サービスのセキュリティー保護
rpcbind
サービスは、Network Information Service (NIS) や Network File System (NFS) などの Remote Procedure Calls (RPC) サービス用の動的ポート割り当てデーモンです。その認証メカニズムは弱く、制御するサービスに幅広いポート範囲を割り当てる可能性があるため、rpcbind
をセキュア化することが重要です。
すべてのネットワークへのアクセスを制限し、サーバーのファイアウォールルールを使用して特定の例外を定義することにより、rpcbind
のセキュリティーを確保できます。
-
NFSv3
サーバーでは、rpcbind
サービスが必要です。 -
NFSv4
では、rpcbind
サービスがネットワークをリッスンする必要がありません。
前提条件
-
rpcbind
パッケージがインストールされている。 -
Firewalld
パッケージがインストールされ、サービスが実行されている。
手順
次に、ファイアウォールルールを追加します。
TCP 接続を制限し、
111
ポート経由の192.168.0.0/24
ホストからのパッケージだけを受け入れます。# firewall-cmd --add-rich-rule='rule family="ipv4" port port="111" protocol="tcp" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop'
TCP 接続を制限し、
111
ポート経由のローカルホストからのパッケージだけを受け入れます。# firewall-cmd --add-rich-rule='rule family="ipv4" port port="111" protocol="tcp" source address="127.0.0.1" accept'
UDP 接続を制限し、
111
ポート経由の192.168.0.0/24
ホストからのパッケージだけを受け入れます。# firewall-cmd --permanent --add-rich-rule='rule family="ipv4" port port="111" protocol="udp" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop'
ファイアウォール設定を永続化するには、ファイアウォールルールを追加するときに
--permanent
オプションを使用します。
ファイアウォールをリロードして、新しいルールを適用します。
# firewall-cmd --reload
検証手順
ファイアウォールルールをリストします。
# firewall-cmd --list-rich-rule rule family="ipv4" port port="111" protocol="tcp" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop rule family="ipv4" port port="111" protocol="tcp" source address="127.0.0.1" accept rule family="ipv4" port port="111" protocol="udp" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop
関連情報
-
NFSv4-only
サーバーの詳細は、Configuring an NFSv4-only server セクションを参照してください。 - firewalld の使用および設定
8.2. rpc.mountd サービスのセキュリティー保護
rpc.mountd
デーモンは、NFS マウントプロトコルのサーバー側を実装します。NFS マウントプロトコルは、NFS バージョン 3 (RFC 1813) で使用されます。
rpc.mountd
サービスは、サーバーにファイアウォールルールを追加することでセキュリティー保護できます。すべてのネットワークへのアクセスを制限し、ファイアウォールルールを使用して特定の例外を定義できます。
前提条件
-
rpc.mountd
パッケージがインストールされている。 -
Firewalld
パッケージがインストールされ、サービスが実行されている。
手順
以下のように、サーバーにファイアウォールルールを追加します。
192.168.0.0/24
ホストからのmountd
接続を許可します。# firewall-cmd --add-rich-rule 'rule family="ipv4" service name="mountd" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop'
ローカルホストからの
mountd
接続を受け入れます。# firewall-cmd --permanent --add-rich-rule 'rule family="ipv4" source address="127.0.0.1" service name="mountd" accept'
ファイアウォール設定を永続化するには、ファイアウォールルールを追加するときに
--permanent
オプションを使用します。
ファイアウォールをリロードして、新しいルールを適用します。
# firewall-cmd --reload
検証手順
ファイアウォールルールをリストします。
# firewall-cmd --list-rich-rule rule family="ipv4" service name="mountd" source address="192.168.0.0/24" invert="True" drop rule family="ipv4" source address="127.0.0.1" service name="mountd" accept
関連情報
8.3. NFS サービスの保護
Kerberos を使用してすべてのファイルシステム操作を認証および暗号化して、ネットワークファイルシステムバージョン 4 (NFSv4) のセキュリティーを保護できます。ネットワークアドレス変換 (NAT) またはファイアウォールで NFSv4 を使用する場合に、/etc/default/nfs
ファイルを変更することで委譲をオフにできます。委譲は、サーバーがファイルの管理をクライアントに委譲する手法です。
対照的に、NFSv3 ではファイルのロックとマウントに Kerberos は使用されません。
NFS サービスは、すべてのバージョンの NFS で TCP を使用してトラフィックを送信します。このサービスは、RPCSEC_GSS
カーネルモジュールの一部として Kerberos ユーザーおよびグループ認証をサポートします。
NFS を利用すると、リモートのホストがネットワーク経由でファイルシステムをマウントし、そのファイルシステムを、ローカルにマウントしているファイルシステムのように操作できるようになります。集約サーバーのリソースを統合して、ファイルシステムを共有するときに /etc/nfsmount.conf
ファイルの NFS マウントオプションをさらにカスタマイズできます。
8.3.1. NFS サーバーのセキュリティーを保護するエクスポートオプション
NFS サーバーは、/etc/exports
ファイル内のどのファイルシステムにどのファイルシステムをエクスポートするかなど、ディレクトリーとホストのリスト構造を決定します。
エクスポートファイルの構文に余分なスペースがあると、設定が大幅に変更される可能性があります。
以下の例では、/tmp/nfs/
ディレクトリーは bob.example.com
ホストと共有され、読み取りおよび書き込みのパーミッションを持ちます。
/tmp/nfs/ bob.example.com(rw)
以下の例は上記と同じになりますが、同じディレクトリーを読み取り専用パーミッションで bob.example.com
ホストに共有し、ホスト名の後の 1 つのスペース文字が原因で読み取りと書き込み権限で すべてのユーザー に共有します。
/tmp/nfs/ bob.example.com (rw)
showmount -e <hostname>
コマンドを入力すると、システム上の共有ディレクトリーを確認できます。
/etc/exports
ファイルで次のエクスポートオプションを使用します。
ファイルシステムのサブディレクトリーのエクスポートは安全ではないため、ファイルシステム全体をエクスポートします。攻撃者は、部分的にエクスポートされたファイルシステムで、エクスポートされていない部分にアクセスする可能性があります。
- ro
-
ro
オプションを使用して、NFS ボリュームを読み取り専用としてエクスポートします。 - rw
rw
オプションを使用して、NFS ボリュームに対する読み取りおよび書き込み要求の両方を許可します。書き込みアクセスが許可されると攻撃のリスクが高まるため、このオプションは注意して使用してください。注記シナリオとして
rw
オプションを使用してディレクトリーをマウントする必要がある場合は、起こりうるリスクを軽減するために、すべてのユーザーがディレクトリーを書き込み可能にしないようにしてください。- root_squash
-
root_squash
オプションを使用して、uid
/gid
0 からの要求を匿名のuid
/gid
にマッピングします。これは、bin
ユーザーやstaff
グループなど、同様に機密である可能性の高い他のuid
またはgid
には適用されません。 - no_root_squash
-
root squashing をオフにするには、
no_root_squash
オプションを使用します。デフォルトでは、NFS 共有はroot
ユーザーを、非特権ユーザーであるnobody
ユーザーに変更します。これにより、root
が作成したすべてのファイルの所有者がnobody
に変更され、setuid
ビットが設定されたプログラムのアップロードができなくなります。no_root_squash
オプションを使用すると、リモートの root ユーザーは共有ファイルシステムの任意のファイルを変更し、他のユーザーに対してアプリケーションが Trojans に感染した状態のままにします。 - secure
-
secure
オプションを使用して、エクスポートを予約ポートに制限します。デフォルトでは、サーバーは予約済みポートからのクライアント通信のみを許可します。ただし、多くのネットワークで、クライアント上でroot
ユーザーになるのは簡単です。そのため、サーバーで予約されたポートからの通信が特権であると仮定することは安全ではありません。そのため、予約ポートの制限は効果が限定的です。Kerberos、ファイアウォール、および特定クライアントへのエクスポートを制限することに依存すると良いでしょう。
また、NFS サーバーをエクスポートする際に、以下のベストプラクティスを考慮してください。
- 一部のアプリケーションでは、パスワードをプレーンテキストまたは弱い暗号化形式で保存するため、ホームディレクトリーをエクスポートすることはリスクがあります。アプリケーションコードを確認して改善することで、リスクを軽減できます。
- 一部のユーザーは SSH キーにパスワードを設定していないため、この場合もホームディレクトリーによるリスクが発生します。パスワードの使用を強制するか、Kerberos を使用することで、これらのリスクを軽減できます。
-
NFS エクスポートを必要なクライアントのみに制限します。NFS サーバーで
showmount -e
コマンドを使用して、サーバーのエクスポート内容を確認します。特に必要のないものはエクスポートしないでください。 - 攻撃のリスクを減らすために、不要なユーザーがサーバーにログインできないようにしてください。サーバーにアクセスできるユーザーを定期的に確認してください。
関連情報
- Secure NFS with Kerberos when using Red Hat Identity Management
- NFS サーバーの設定
-
exports(5)
およびnfs(5)
の man ページ
8.3.2. NFS クライアントのセキュリティーを保護するマウントオプション
mount
コマンドに次のオプションを渡すと、NFS ベースのクライアントのセキュリティーを強化できます。
- nosuid
-
nosuid
オプションを使用してset-user-identifier
またはset-group-identifier
ビットを無効にします。これにより、リモートユーザーがsetuid
プログラムを実行してより高い特権を取得するのを防ぎ、setuid
オプションの反対となるこのオプションを使用できます。 - noexec
-
noexec
オプションを使用して、クライアント上の実行可能なファイルをすべて無効にします。これを使用して、ユーザーが共有ファイルシステムに配置されたファイルを誤って実行するのを防ぎます。 - nodev
-
nodev
オプションを使用して、クライアントがデバイスファイルをハードウェアデバイスとして処理するのを防ぎます。 - resvport
-
resvport
オプションを使用して、通信を予約済みポートに制限し、特権送信元ポートを使用してサーバーと通信できます。予約済みポートは、root
ユーザーなどの特権ユーザーおよびプロセス用に予約されています。 - 秒
-
NFS サーバーの
sec
オプションを使用して、マウントポイント上のファイルにアクセスするための RPCGSS セキュリティーフレーバーを選択します。有効なセキュリティーフレーバーは、none
、sys
、krb5
、krb5i
、およびkrb5p
です。
krb5-libs
パッケージが提供する MIT Kerberos ライブラリーは、新しいデプロイメントで Data Encryption Standard (DES) アルゴリズムに対応しなくなりました。DES は、セキュリティーと互換性の理由から、Kerberos ライブラリーでは非推奨であり、デフォルトで無効になっています。互換性の理由でご使用の環境で DES が必要な場合を除き、DES の代わりに新しくより安全なアルゴリズムを使用してください。
関連情報
8.3.3. ファイアウォールでの NFS のセキュリティー保護
NFS サーバーでファイアウォールを保護するには、必要なポートのみを開いてください。他のサービスには NFS 接続ポート番号を使用しないでください。
前提条件
-
nfs-utils
パッケージがインストールされている。 -
Firewalld
パッケージがインストールされ、実行されている。
手順
-
NFSv4 では、ファイアウォールは TCP ポート
2049
を開く必要があります。 NFSv3 では、
2049
で 4 つのポートを追加で開きます。rpcbind
サービスは NFS ポートを動的に割り当て、ファイアウォールルールの作成時に問題が発生する可能性があります。このプロセスを簡素化するには、/etc/nfs.conf
ファイルを使用して、使用するポートを指定します。-
mountd
セクションのmountd
(rpc.mountd
) の TCP および UDP ポートをport= <value>
形式で設定します。 -
statd
セクションのstatd
(rpc.statd
) の TCP および UDP ポートをport= <value>
形式で設定します。
-
/etc/nfs.conf
ファイルで NFS ロックマネージャー (nlockmgr
) の TCP および UDP ポートを設定します。-
lockd
セクションのnlockmgr
(rpc.statd
) の TCP ポートをport=value
形式で設定します。または、/etc/modprobe.d/lockd.conf
ファイルのnlm_tcpport
オプションを使用することもできます。 -
lockd
セクションのnlockmgr
(rpc.statd
) の UDP ポートをudp-port=value
形式で設定します。または、/etc/modprobe.d/lockd.conf
ファイルのnlm_udpport
オプションを使用することもできます。
-
検証手順
NFS サーバー上のアクティブなポートと RPC プログラムをリスト表示します。
$ rpcinfo -p
関連情報
- Secure NFS with Kerberos when using Red Hat Identity Management
-
exports(5)
およびnfs(5)
の man ページ
8.4. FTP サービスのセキュリティー保護
ファイル転送プロトコル (FTP) を使用して、ネットワーク経由でファイルを転送できます。ユーザー認証を含むサーバーとの FTP トランザクションがす s べて暗号化されているわけではないため、サーバーが安全に設定されていることを確認する必要があります。
RHEL 9 は、2 つの FTP サーバーを提供します。
- Red Hat Content Accelerator (tux): FTP 機能を持つカーネルスペースの Web サーバー。
- Very Secure FTP Daemon (vsftpd): スタンドアロンの、セキュリティー指向の FTP サービスの実装。
vsftpd
FTP サービスをセットアップするためのセキュリティーガイドラインを以下に示します。
8.4.1. FTP グリーティングバナーのセキュリティー保護
ユーザーが FTP サービスに接続すると、FTP はグリーティングバナーを表示します。このバナーにはデフォルトで、バージョン情報が含まれており、攻撃者がシステムの弱点を特定するのに役立つ場合があります。デフォルトのバナーを変更することで、攻撃者がこの情報にアクセスできないようにします。
/etc/banners/ftp.msg
ファイルを編集して、単一行のメッセージを直接含めるか、複数行のメッセージを含めることができる別のファイルを参照して、カスタムバナーを定義できます。
手順
1 行のメッセージを定義するには、次のオプションを
/etc/vsftpd/vsftpd.conf
ファイルに追加します。ftpd_banner=Hello, all activity on ftp.example.com is logged.
別のファイルでメッセージを定義するには以下を実行します。
バナーメッセージを含む
.msg
ファイルを作成します。(例:/etc/vendors/ftp .msg
)######### Hello, all activity on ftp.example.com is logged. #########
複数のバナーの管理を簡素化するには、すべてのバナーを
/etc/vendors/
ディレクトリーに配置します。バナーファイルへのパスを
/etc/vsftpd/vsftpd.conf
ファイルのbanner_file
オプションに追加します。banner_file=/etc/banners/ftp.msg
検証
変更されたバナーを表示します。
$ ftp localhost Trying ::1… Connected to localhost (::1). Hello, all activity on ftp.example.com is logged.
8.4.2. FTP での匿名アクセスとアップロードの防止
デフォルトでは、vsftpd
パッケージをインストールすると、/var/ftp/
ディレクトリーと、ディレクトリーに対する読み取り専用権限を持つ匿名ユーザー用のディレクトリーツリーが作成されます。匿名ユーザーはデータにアクセスできるため、これらのディレクトリーに機密データを保存しないでください。
システムのセキュリティーを強化するために、匿名ユーザーが特定のディレクトリーにファイルをアップロードできるが、データは読み取れないように、FTP サーバーを設定できます。次の手順では、匿名ユーザーが root
ユーザー所有のディレクトリーにファイルをアップロードできるが変更できないようにする必要があります。
手順
/var/ftp/pub/
ディレクトリーに書き込み専用ディレクトリーを作成します。# mkdir /var/ftp/pub/upload # chmod 730 /var/ftp/pub/upload # ls -ld /var/ftp/pub/upload drwx-wx---. 2 root ftp 4096 Nov 14 22:57 /var/ftp/pub/upload
/etc/vsftpd/vsftpd.conf
ファイルに以下の行を追加します。anon_upload_enable=YES anonymous_enable=YES
-
オプション: システムで SELinux が有効で Enforcing に設定されている場合には、SELinux ブール属性
allow_ftpd_anon_write
およびallow_ftpd_full_access
を有効にします。
匿名ユーザーによるディレクトリーの読み取りと書き込みを許可すると、盗まれたソフトウェアのリポジトリーになってしまう可能性があります。
8.4.3. FTP のユーザーアカウントのセキュリティー保護
FTP は、認証のために安全でないネットワークを介して暗号化されていないユーザー名とパスワードを送信します。システムユーザーが自分のユーザーアカウントからサーバーにアクセスできないようにして、FTP のセキュリティーを向上させることができます。
以下の手順のうち、お使いの設定に該当するものをできるだけ多く実行してください。
手順
/etc/vsftpd/vsftpd.conf
ファイルに次の行を追加して、vsftpd
サーバーのすべてのユーザーアカウントを無効にします。local_enable=NO
-
/etc/pam.d/vsftpd
PAM 設定ファイルにユーザー名を追加して、特定のアカウントまたは特定のアカウントグループ (root
ユーザーやsudo
権限を持つユーザーなど) の FTP アクセスを無効にします。 -
/etc/vsftpd/ftpusers
ファイルにユーザー名を追加して、ユーザーアカウントを無効にします。
8.4.4. 関連情報
-
ftpd_selinux(8)
の man ページ
8.5. HTTP サーバーのセキュリティー保護
8.5.1. httpd.conf のセキュリティー強化
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルでセキュリティーオプションを設定して、Apache HTTP のセキュリティーを強化できます。
システムで実行されているすべてのスクリプトが正しく機能することを常に確認してから、本番環境に移行してください。
root
ユーザーのみが、スクリプトまたは Common Gateway Interface (CGI) を含むディレクトリーへの書き込み権限を持っていることを確認してください。ディレクトリーの所有権を書き込み権限を持つ root
ユーザーに変更するには、次のコマンドを入力します。
# chown root directory-name # chmod 755 directory-name
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルで、次のオプションを設定できます。
- FollowSymLinks
- このディレクティブはデフォルトで有効になっており、ディレクトリー内のシンボリックリンクをたどります。
- Indexes
- このディレクティブはデフォルトで有効になっています。訪問者がサーバー上のファイルを閲覧できないようにするには、このディレクティブを削除してください。
- UserDir
-
このディレクティブは、システム上にユーザーアカウントが存在することを確認できるため、デフォルトでは無効になっています。
/root/
以外のすべてのユーザーディレクトリーのユーザーディレクトリーブラウジングをアクティブにするには、UserDir enabled
とUserDir disabled
の root ディレクティブを使用します。無効化されたアカウントのリストにユーザーを追加するには、UserDir disabled
行にスペースで区切られたユーザーのリストを追加します。 - ServerTokens
このディレクティブは、クライアントに送り返されるサーバー応答ヘッダーフィールドを制御します。以下のパラメーターを使用するとログの出力をカスタマイズできます。
- ServerTokens Full
以下のように、Web サーバーのバージョン番号、サーバーのオペレーティングシステムの詳細、インストールされている Apache モジュールなど、利用可能なすべての情報を提供します。
Apache/2.4.37 (Red Hat Enterprise Linux) MyMod/1.2
- ServerTokens Full-Release
以下のように、利用可能なすべての情報をリリースバージョンとともに提供します。
Apache/2.4.37 (Red Hat Enterprise Linux) (Release 41.module+el8.5.0+11772+c8e0c271)
- ServerTokens Prod / ServerTokens ProductOnly
以下のように、Web サーバー名を提供します。
Apache
- ServerTokens Major
以下のように、Web サーバーのメジャーリリースバージョンを提供します。
Apache/2
- ServerTokens Minor
以下のように、Web サーバーのマイナーリリースバージョンを提供します。
Apache/2.4
- ServerTokens Min / ServerTokens Minimal
以下のように、Web サーバーの最小リリースバージョンを提供します。
Apache/2.4.37
- ServerTokens OS
以下のように、Web サーバーのリリースバージョンとオペレーティングシステムを提供します。
Apache/2.4.37 (Red Hat Enterprise Linux)
ServerTokens Prod
オプションを使用して、攻撃者がシステムに関する貴重な情報を入手するリスクを軽減します。
IncludesNoExec
ディレクティブを削除しないでください。デフォルトでは、Server-Side Includes (SSI) モジュールは、コマンドを実行できません。これを変更すると、攻撃者がシステムにコマンドを入力できるようになる可能性があります。
httpd モジュールの削除
httpd
モジュールを削除して、HTTP サーバーの機能を制限できます。これを行うには、/etc/httpd/conf.modules.d/
または /etc/httpd/conf.d/
ディレクトリーの設定ファイルを編集します。たとえば、プロキシーモジュールを削除するためには、以下のコマンドを実行します。
echo '# All proxy modules disabled' > /etc/httpd/conf.modules.d/00-proxy.conf
8.5.2. Nginx サーバー設定のセキュリティー保護
Nginx は、高性能の HTTP およびプロキシーサーバーです。次の設定オプションを使用して、Nginx 設定を強化できます。
手順
バージョン文字列を無効にするには、
server_tokens
設定オプションを変更します。server_tokens off;
このオプションは、サーバーのバージョン番号などの追加の情報表示を停止します。以下のようにこの設定では、Nginx によって処理されるすべての要求のサーバー名のみが表示されます。
$ curl -sI http://localhost | grep Server Server: nginx
特定の
/etc/nginx/
conf ファイルに、特定の既知の Web アプリケーションの脆弱性を軽減するセキュリティーヘッダーを追加します。たとえば、
X-Frame-Options
ヘッダーオプションは、Nginx が提供するコンテンツのフレーム化がされないように、ドメイン外のページを拒否して、クリックジャッキング攻撃を軽減します。add_header X-Frame-Options "SAMEORIGIN";
たとえば、
x-content-type
ヘッダーは、特定の古いブラウザーでの MIME タイプのスニッフィングを防ぎます。add_header X-Content-Type-Options nosniff;
また、
X-XSS-Protection
ヘッダーは、クロスサイトスクリプティング (XSS) フィルタリングを有効にし、Nginx での応答に含まれる可能性がある、悪意のあるコンテンツをブラウザーがレンダリングしないようにします。add_header X-XSS-Protection "1; mode=block";
たとえば、一般に公開されるサービスを制限し、訪問者からのサービスと受け入れを制限できます。
limit_except GET { allow 192.168.1.0/32; deny all; }
スニペットは、
GET
とHEAD
を除くすべてのメソッドへのアクセスを制限します。以下のように、HTTP メソッドを無効にできます。
# Allow GET, PUT, POST; return "405 Method Not Allowed" for all others. if ( $request_method !~ ^(GET|PUT|POST)$ ) { return 405; }
- Nginx Web サーバーによって提供されるデータを保護するように SSL を設定できます。これは、HTTPS 経由でのみ提供することを検討してください。さらに、Mozilla SSL Configuration Generator を使用して、Nginx サーバーで SSL を有効にするための安全な設定プロファイルを生成できます。生成された設定により、既知の脆弱なプロトコル (SSLv2 や SSLv3 など)、暗号、ハッシュアルゴリズム (3DES や MD5 など) が確実に無効化されます。また、SSL サーバーテストを使用して、設定した内容が最新のセキュリティー要件を満たしていることを確認できます。
8.6. 認証されたローカルユーザーへのアクセスを制限することによる PostgreSQL のセキュリティー保護
PostgreSQL は、オブジェクトリレーショナルデータベース管理システム (DBMS) です。Red Hat Enterprise Linux では、PostgreSQL は postgresql-server
パッケージによって提供されます。
クライアント認証を設定して、攻撃のリスクを減らすことができます。データベースクラスターのデータディレクトリーに保存されている pg_hba.conf
設定ファイルは、クライアント認証を制御します。手順に従って、ホストベースの認証用に PostgreSQL を設定します。
手順
PostgreSQL をインストールします。
# yum install postgresql-server
次のいずれかのオプションを使用して、データベースストレージ領域を初期化します。
initdb
ユーティリティーの使用:$ initdb -D /home/postgresql/db1/
-D
オプションを指定したinitdb
コマンドを実行すると、指定したディレクトリーがまだ存在しない場合は作成します (例:/home/postgresql/db1/
)。このディレクトリーには、データベースに保存されているすべてのデータと、クライアント認証設定ファイルが含まれています。postgresql-setup
スクリプトの使用:$ postgresql-setup --initdb
デフォルトでは、スクリプトは
/var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーを使用します。このスクリプトは、基本的なデータベースクラスター管理でシステム管理者を支援します。
認証されたローカルユーザーが自分のユーザー名でデータベースにアクセスできるようにするには、
pg_hba.conf
ファイルの以下の行を変更します。local all all trust
これは、データベースユーザーを作成し、ローカルユーザーを作成しないレイヤー型アプリケーションを使用する場合に、問題となることがあります。システム上のすべてのユーザー名を明示的に制御しない場合は、
pg_hba.conf
ファイルからlocal
の行を削除してください。データベースを再起動して、変更を適用します。
# systemctl restart postgresql
前のコマンドはデータベースを更新し、設定ファイルの構文も検証します。
8.7. Memcached サービスのセキュリティー保護
Memcached は、オープンソースの高性能分散メモリーオブジェクトキャッシングシステムです。データベースの負荷を軽減して、動的 Web アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。
Memcached は、データベース呼び出し、API 呼び出し、またはページレンダリングの結果から、文字列やオブジェクトなどの任意のデータの小さなチャンクを格納するメモリー内のキーと値のストアです。Memcached を使用すると、十分に活用されていない領域から、より多くのメモリーを必要とするアプリケーションにメモリーを割り当てることができます。
2018 年に、パブリックインターネットに公開されている Memcached サーバーを悪用することによる DDoS 増幅攻撃の脆弱性が発見されました。これらの攻撃は、トランスポートに UDP プロトコルを使用する Memcached 通信を利用します。この攻撃は増幅率が高いため、効果的です。数百バイトのサイズの要求は、数メガバイトまたは数百メガバイトのサイズの応答を生成することができます。
ほとんどの場合、memcached
サービスはパブリックインターネットに公開する必要はありません。このような弱点には、リモートの攻撃者が memcached に保存されている情報を漏洩または変更できるなど、独自のセキュリティー問題があります。
このセクションに従って、DDoS 攻撃の可能性に対して Memcached サービスを使用してシステムを強化します。
8.7.1. DDoS に対する Memcached の強化
セキュリティーリスクを軽減するために、以下の手順のうち、お使いの設定に該当するものをできるだけ多く実行してください。
手順
LAN にファイアウォールを設定してください。Memcached サーバーにローカルネットワークだけでアクセスできるようにする必要がある場合は、
memcached
サービスで使用されるポートに外部トラフィックをルーティングしないでください。たとえば、許可されたポートのリストからデフォルトのポート11211
を削除します。# firewall-cmd --remove-port=11211/udp # firewall-cmd --runtime-to-permanent
アプリケーションと同じマシンで単一の memcached サーバーを使用する場合、ローカルホストトラフィックのみをリッスンするように
memcached
を設定します。/etc/sysconfig/memcached
ファイルのOPTIONS
値を変更します。OPTIONS="-l 127.0.0.1,::1"
Simple Authentication and Security Layer (SASL) 認証を有効にします。
/etc/sasl2/memcached.conf
ファイルで、以下のように修正または追加します。sasldb_path: /path.to/memcached.sasldb
SASL データベースにアカウントを追加します。
# saslpasswd2 -a memcached -c cacheuser -f /path.to/memcached.sasldb
memcached
のユーザーとグループがデータベースにアクセスできることを確認します。# chown memcached:memcached /path.to/memcached.sasldb
/etc/sysconfig/memcached
ファイルのOPTIONS
パラメーターに-S
値を追加して、Memcached で SASL サポートを有効にします。OPTIONS="-S"
Memcached サーバーを再起動して、変更を適用します。
# systemctl restart memcached
- SASL データベースで作成したユーザー名とパスワードを、お使いのアプリケーションの Memcached クライアント設定に追加します。
memcached クライアントとサーバー間の通信を TLS で暗号化します。
/etc/sysconfig/memcached
ファイルのOPTIONS
パラメーターに-Z
値を追加して、TLS を使用した Memcached クライアントとサーバー間の暗号化通信を有効にします。OPTIONS="-Z"
-
-o ssl_chain_cert
オプションを使用して、証明書チェーンファイルパスを PEM 形式で追加します。 -
-o ssl_key
オプションを使用して、秘密鍵ファイルのパスを追加します。
第9章 MACsec を使用した同じ物理ネットワーク内のレイヤー 2 トラフィックの暗号化
MACsec を使用して、2 つのデバイス間の通信を (ポイントツーポイントで) セキュリティー保護できます。たとえば、ブランチオフィスがメトロイーサネット接続を介してセントラルオフィスに接続されている場合、オフィスを接続する 2 つのホストで MACsec を設定して、セキュリティーを強化できます。
Media Access Control Security (MACsec) は、イーサーネットリンクで異なるトラフィックタイプを保護するレイヤー 2 プロトコルです。これには以下が含まれます。
- DHCP (Dynamic Host Configuration Protocol)
- アドレス解決プロトコル (ARP)
-
インターネットプロトコルのバージョン 4 / 6 (
IPv4
/IPv6
) - TCP や UDP などの IP 経由のトラフィック
MACsec はデフォルトで、LAN 内のすべてのトラフィックを GCM-AES-128 アルゴリズムで暗号化および認証し、事前共有キーを使用して参加者ホスト間の接続を確立します。共有前の鍵を変更する場合は、MACsec を使用するネットワーク内のすべてのホストで NM 設定を更新する必要があります。
MACsec 接続は、親としてイーサネットネットワークカード、VLAN、トンネルデバイスなどのイーサネットデバイスを使用します。暗号化した接続のみを使用して他のホストと通信するように、MACsec デバイスでのみ IP 設定を指定するか、親デバイスに IP 設定を指定することもできます。後者の場合、親デバイスを使用して、暗号化されていない接続と暗号化された接続用の MACsec デバイスで他のホストと通信できます。
MACsec には特別なハードウェアは必要ありません。たとえば、ホストとスイッチの間のトラフィックのみを暗号化する場合を除き、任意のスイッチを使用できます。このシナリオでは、スイッチが MACsec もサポートする必要があります。
つまり、MACsec を設定する方法は 2 つあります。
- ホスト対ホスト
- 他のホストに切り替えるホスト
MACsec は、同じ (物理または仮想) LAN のホスト間でのみ使用することができます。
9.1. nmcli を使用した MACsec 接続の設定
nmcli
ツールを使用して、MACsec を使用するようにイーサーネットインターフェイスを設定できます。たとえば、イーサネット経由で接続された 2 つのホスト間に MACsec 接続を作成できます。
手順
MACsec を設定する最初のホストで:
事前共有鍵の接続アソシエーション鍵 (CAK) と接続アソシエーション鍵名 (CKN) を作成します。
16 バイトの 16 進 CAK を作成します。
# dd if=/dev/urandom count=16 bs=1 2> /dev/null | hexdump -e '1/2 "%04x"' 50b71a8ef0bd5751ea76de6d6c98c03a
32 バイトの 16 進 CKN を作成します。
# dd if=/dev/urandom count=32 bs=1 2> /dev/null | hexdump -e '1/2 "%04x"' f2b4297d39da7330910a74abc0449feb45b5c0b9fc23df1430e1898fcf1c4550
- 両方のホストで、MACsec 接続を介して接続します。
MACsec 接続を作成します。
# nmcli connection add type macsec con-name macsec0 ifname macsec0 connection.autoconnect yes macsec.parent enp1s0 macsec.mode psk macsec.mka-cak 50b71a8ef0bd5751ea76de6d6c98c03a macsec.mka-ckn f2b4297d39da7330910a74abc0449feb45b5c0b9fc23df1430e1898fcf1c4550
前の手順で生成された CAK および CKN を
macsec.mka-cak
およびmacsec.mka-ckn
パラメーターで使用します。この値は、MACsec で保護されるネットワーク内のすべてのホストで同じである必要があります。MACsec 接続で IP を設定します。
IPv4
設定を指定します。たとえば、静的IPv4
アドレス、ネットワークマスク、デフォルトゲートウェイ、および DNS サーバーをmacsec0
接続に設定するには、以下のコマンドを実行します。# nmcli connection modify macsec0 ipv4.method manual ipv4.addresses '192.0.2.1/24' ipv4.gateway '192.0.2.254' ipv4.dns '192.0.2.253'
IPv6
設定を指定しますたとえば、静的IPv6
アドレス、ネットワークマスク、デフォルトゲートウェイ、および DNS サーバーをmacsec0
接続に設定するには、以下のコマンドを実行します。# nmcli connection modify macsec0 ipv6.method manual ipv6.addresses '2001:db8:1::1/32' ipv6.gateway '2001:db8:1::fffe' ipv6.dns '2001:db8:1::fffd'
接続をアクティベートします。
# nmcli connection up macsec0
検証
トラフィックが暗号化されていることを確認します。
# tcpdump -nn -i enp1s0
オプション: 暗号化されていないトラフィックを表示します。
# tcpdump -nn -i macsec0
MACsec の統計を表示します。
# ip macsec show
integrity-only (encrypt off) および encryption (encrypt on) の各タイプの保護に対して個々のカウンターを表示します。
# ip -s macsec show
9.2. 関連情報
第10章 Postfix サービスを保護する
Postfix は、SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) を使用して他の MTA 間で電子メッセージを配信したり、クライアントや配信エージェントに電子メールを送信したりするメール転送エージェント (MTA) です。MTA は相互間のトラフィックを暗号化できますが、デフォルトではそうしない場合があります。設定をより安全な値に変更することで、さまざまな攻撃に対するリスクを軽減することもできます。
10.1. Postfix ネットワーク関連のセキュリティーリスクの軽減
攻撃者がネットワーク経由でシステムに侵入するリスクを軽減するには、次のタスクをできるだけ多く実行してください。
ネットワークファイルシステム (NFS) 共有ボリュームで
/var/spool/postfix/
メールスプールディレクトリーを共有しないでください。NFSv2 と NFSv3 は、ユーザー ID とグループ ID に対する制御を維持しません。したがって、2 人以上のユーザーが同じ UID を持っていると、互いのメールを受信して読むことができ、セキュリティー上のリスクが生じます。注記SECRPC_GSS
カーネルモジュールは UID ベースの認証を使用しないため、この規則は Kerberos を使用する NFSv4 には適用されません。ただし、セキュリティーリスクを軽減するために、メールスプールディレクトリーを NFS 共有ボリュームに配置しないでください。-
Postfix サーバーの悪用の可能性を減らすために、メールユーザーは電子メールプログラムを使用して Postfix サーバーにアクセスする必要があります。メールサーバーでシェルアカウントを許可せず、
/etc/passwd
ファイル内のすべてのユーザーシェルを/sbin/nologin
に設定します (root
ユーザーは例外の可能性があります)。 -
Postfix をネットワーク攻撃から保護するために、デフォルトではローカルループバックアドレスのみをリッスンするように設定されています。これは、
/etc/postfix/main.cf
ファイルのinet_interfaces = localhost
行を表示することで確認できます。これにより、Postfix はネットワークからではなく、ローカルシステムからのメールメッセージ (cron
ジョブのレポートなど) のみを受け入れるようになります。これはデフォルトの設定で、Postfix をネットワーク攻撃から保護します。localhost の制限を取り除き、Postfix がすべてのインターフェイスでリッスンできるようにするには、/etc/postfix/main.cf
でinet_interfaces
パラメーターをall
に設定します。
10.2. DoS 攻撃を制限するための Postfix 設定オプション
攻撃者は、トラフィックでサーバーをあふれさせたり、クラッシュを引き起こす情報を送信したりして、サービス拒否 (DoS) 攻撃を引き起こす可能性があります。/etc/postfix/main.cf
ファイルで制限を設定することにより、このような攻撃のリスクを軽減するようにシステムを設定できます。既存のディレクティブの値を変更するか、<directive> = <value> 形式のカスタム値で新しいディレクティブを追加できます。
DoS 攻撃を制限するには、次のディレクティブリストを使用します。
- smtpd_client_connection_rate_limit
-
このディレクティブは、時間単位ごとにクライアントがこのサービスに対して行うことができる接続試行の最大数を制限します。デフォルト値は
0
です。これは、クライアントが時間単位で Postfix が受け入れることができる数と同じ数の接続を行うことができることを意味します。デフォルトでは、ディレクティブは信頼できるネットワークのクライアントを除外します。 - anvil_rate_time_unit
-
このディレクティブは、レート制限を計算する時間単位です。デフォルト値は
60
秒です。 - smtpd_client_event_limit_exceptions
- このディレクティブは、接続およびレート制限コマンドからクライアントを除外します。デフォルトでは、ディレクティブは信頼できるネットワークのクライアントを除外します。
- smtpd_client_message_rate_limit
- このディレクティブは、単位時間当たりのクライアントからリクエストへのメッセージ配信の最大数を定義します (Postfix が実際にそれらのメッセージを受け入れるかどうかに関係なく)。
- default_process_limit
-
このディレクティブは、特定のサービスを提供する Postfix 子プロセスのデフォルトの最大数を定義します。
master.cf
ファイル内の特定のサービスについては、このルールを無視できます。デフォルトでは、値は100
です。 - queue_minfree
-
このディレクティブは、キューファイルシステムでメールを受信するために必要な空き容量の最小量を定義します。このディレクティブは現在、Postfix SMTP サーバーがメールを受け入れるかどうかを決定するために使用されています。デフォルトでは、Postfix SMTP サーバーは、空き容量が
message_size_limit
の 1.5 倍未満の場合に、MAIL FROM
コマンドを拒否します。空き容量の最小値をこれよりも高く指定するには、message_size_limit
の 1.5 倍以上のqueue_minfree
値を指定します。デフォルトのqueue_minfree
値は0
です。 - header_size_limit
-
このディレクティブは、メッセージヘッダーを格納するためのメモリーの最大量をバイト単位で定義します。ヘッダーが大きい場合、余分なヘッダーは破棄されます。デフォルトでは、値は
102400
バイトです。 - message_size_limit
-
このディレクティブは、エンベロープ情報を含むメッセージの最大サイズをバイト単位で定義します。デフォルトでは、値は
10240000
バイトです。
10.3. Postfix が SASL を使用する設定
Postfix は Simple Authentication and Security Layer (SASL) ベースの SMTP 認証 (AUTH) をサポートしています。SMTP AUTH は Simple Mail Transfer Protocol の拡張です。現在、Postfix SMTP サーバーは次の方法で SASL 実装をサポートしています:
- Dovecot SASL
- Postfix SMTP サーバーは、UNIX ドメインソケットまたは TCP ソケットのいずれかを使用して、Dovecot SASL 実装と通信できます。Postfix と Dovecot アプリケーションが別のマシンで実行している場合は、この方法を使用します。
- Cyrus SASL
- 有効にすると、SMTP クライアントは、サーバーとクライアントの両方でサポートおよび受け入れられる認証方法を使用して、SMTP サーバーで認証する必要があります。
前提条件
-
dovecot
パッケージがシステムにインストールされている
手順
Dovecot をセットアップします。
/etc/dovecot/conf.d/10-master.conf
ファイルに次の行を含めます。service auth { unix_listener /var/spool/postfix/private/auth { mode = 0660 user = postfix group = postfix } }
前の例では、Postfix と Dovecot の間の通信に UNIX ドメインソケットを使用しています。また、
/var/spool/postfix/
ディレクトリーにあるメールキュー、およびpostfix
ユーザーとグループの下で実行しているアプリケーションを含む Postfix SMTP サーバーのデフォルト設定を想定しています。オプション: TCP 経由で Postfix 認証リクエストをリッスンするように Dovecot をセットアップします。
service auth { inet_listener { port = port-number } }
/etc/dovecot/conf.d/10-auth.conf
ファイルのauth_mechanisms
パラメーターを編集して、電子メールクライアントが Dovecot での認証に使用する方法を指定します。auth_mechanisms = plain login
auth_mechanisms
パラメーターは、さまざまなプレーンテキストおよび非プレーンテキストの認証方法をサポートしています。
/etc/postfix/main.cf
ファイルを変更して Postfix をセットアップします。Postfix SMTP サーバーで SMTP 認証を有効にします。
smtpd_sasl_auth_enable = yes
SMTP 認証用の Dovecot SASL 実装の使用を有効にします。
smtpd_sasl_type = dovecot
Postfix キューディレクトリーに相対的な認証パスを指定します。相対パスを使用すると、Postfix サーバーが
chroot
で実行しているかどうかに関係なく、設定が確実に機能することに注意してください。smtpd_sasl_path = private/auth
この手順では、Postfix と Dovecot の間の通信に UNIX ドメインソケットを使用します。
通信に TCP ソケットを使用する場合に、別のマシンで Dovecot を探すように Postfix を設定するには、次のような設定値を使用します。
smtpd_sasl_path = inet: ip-address : port-number
前の例で、ip-address を Dovecot マシンの IP アドレスに置き換え、port-number を Dovecot の
/etc/dovecot/conf.d/10-master.conf
ファイルで指定されたポート番号に置き換えます。Postfix SMTP サーバーがクライアントに提供する SASL メカニズムを指定します。暗号化されたセッションと暗号化されていないセッションに異なるメカニズムを指定できることに注意してください。
smtpd_sasl_security_options = noanonymous, noplaintext smtpd_sasl_tls_security_options = noanonymous
前のディレクティブは、暗号化されていないセッションでは匿名認証が許可されず、暗号化されていないユーザー名またはパスワードを送信するメカニズムが許可されていないことを指定しています。暗号化セッション (TLS を使用) の場合、非匿名認証メカニズムのみが許可されます。