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9.10. ICMP リクエストの管理

Internet Control Message Protocol (ICMP) は、接続問題 (要求されているサービスが利用できないなど) を示すエラーメッセージと運用情報を送信するために、様々なネットワークデバイスにより使用されているサポート対象のプロトコルです。ICMP は、システム間でデータを交換するのに使用されていないため、TCP、UDP などの転送プロトコルとは異なります。

ただし、ICMP メッセージ (特に echo-request および echo-reply) を利用して、ネットワークに関する情報を明らかにし、その情報をさまざまな不正行為に悪用することが可能です。したがって、firewalld は、ネットワーク情報を保護するため、ICMP リクエストをブロックできます。

9.10.1. ICMP リクエストのリスト表示およびブロック

ICMP リクエストのリスト表示

ICMP リクエストは、/usr/lib/firewalld/icmptypes/ ディレクトリーにある各 XML ファイルで説明されています。リクエストの説明は、このファイルを参照してください。firewall-cmd コマンドは、ICMP リクエストの操作を制御します。

  • 利用可能な ICMP タイプのリストを表示するには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --get-icmptypes
  • ICMP リクエストは、IPv4、IPv6、またはその両方のプロトコルで使用できます。ICMP リクエストが使用されているプロトコルを表示するには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --info-icmptype=<icmptype>
  • ICMP リクエストのステータスは、リクエストが現在ブロックされている場合は yes、ブロックされていない場合は no となります。ICMP リクエストが現在ブロックされているかどうかを確認するには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --query-icmp-block=<icmptype>

ICMP リクエストのブロックまたはブロックの解除

サーバーが ICMP リクエストをブロックした場合は、通常の情報が提供されません。ただし、情報が全く提供されないというわけではありません。クライアントは、特定の ICMP リクエストがブロックされている (拒否されている) 情報を受け取ります。ICMP リクエストは、特に IPv6 トラフィックを使用すると、接続問題が発生することがあるため、注意深く検討する必要があります。

  • ICMP リクエストが現在ブロックされているかどうかを確認するには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --query-icmp-block=<icmptype>
  • ICMP リクエストをブロックするには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --add-icmp-block=<icmptype>
  • ICMP リクエストのブロックを削除するには、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --remove-icmp-block=<icmptype>

情報を提供せずに ICMP リクエストのブロック

通常、ICMP リクエストをブロックすると、ブロックしていることをクライアントは認識します。したがって、ライブの IP アドレスを傍受している潜在的な攻撃者は、IP アドレスがオンラインであることを確認できます。この情報を完全に非表示にするには、ICMP リクエストをすべて破棄する必要があります。

  • すべての ICMP リクエストをブロックして破棄するには、次のコマンドを実行します。
  • ゾーンのターゲットを DROP に設定します。

    # firewall-cmd --permanent --set-target=DROP

これで、明示的に許可されるトラフィックを除き、ICMP リクエストを含むすべてのトラフィックが破棄されます。

特定の ICMP リクエストをブロックして破棄し、その他のリクエストを許可するには、以下を行います。

  1. ゾーンのターゲットを DROP に設定します。

    # firewall-cmd --permanent --set-target=DROP
  2. すべての ICMP リクエストを一度にブロックする、ICMP ブロックの反転を追加します。

    # firewall-cmd --add-icmp-block-inversion
  3. 許可する ICMP リクエストに ICMP ブロックを追加する場合は、次のコマンドを実行します。

    # firewall-cmd --add-icmp-block=<icmptype>
  4. 新しい設定を永続化します。

    # firewall-cmd --runtime-to-permanent

ブロックの反転 は、ICMP リクエストブロックの設定を反転します。そのため、ゾーンのターゲットが DROP に変更されたため、ブロックされていないリクエストはすべてブロックされます。ブロックされているリクエストはブロックされません。これは、リクエストのブロックを解除する場合は、ブロックコマンドを使用する必要があることを示しています。

ブロックの反転を、完全許可の設定に戻すには、以下を行います。

  1. ゾーンのターゲットを default または ACCEPT に戻すには、次のコマンドを設定します。

    # firewall-cmd --permanent --set-target=default
  2. ICMP リクエストに追加したすべてのブロックを削除します。

    # firewall-cmd --remove-icmp-block=<icmptype>
  3. ICMP ブロックの反転を削除します。

    # firewall-cmd --remove-icmp-block-inversion
  4. 新しい設定を永続化します。

    # firewall-cmd --runtime-to-permanent

9.10.2. GUI を使用した ICMP フィルターの設定

  • ICMP フィルターを有効または無効にするには、firewall-config ツールを起動して、フィルターをかけるメッセージのネットワークゾーンを選択します。ICMP フィルター タブを選択し、フィルターをかける ICMP メッセージの各タイプのチェックボックスを選択します。フィルターを無効にするには、チェックボックスの選択を外します。これは方向ごとに設定され、デフォルトではすべてが許可されます。
  • ICMP フィルター の反転を有効にするには、右側の フィルターの反転 チェックボックスをクリックします。マークがついた ICMP タイプだけが許可され、その他はすべて拒否されます。DROP ターゲットを使用するゾーンでは破棄されます。