18.4. Graphics スタック
RHEL 8 では、グラフィカルユーザーインターフェースを構築するプロトコルを 2 つ使用できます。
- X11
- Wayland
X11 プロトコルは、X.Org をディスプレイサーバーとして使用します。このプロトコルに基づいたグラフィックスの表示は、オプションでしかなかった RHEL 7 と同じように機能します。
RHEL 8 の Wayland プロトコルは、GNOME Shell コンポジターおよびディスプレイサーバーとして使用します。これはさらに Wayland の GNOME Shell として参照されます。
RHEL 8 の新規インストールでは Wayland の GNOME Shell が自動的に選択され、Wayland プロトコルがデフォルトで使用されます。ただし、Wayland における現在の制限 のため、または Wayland で X11 が優先される環境 では、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」 で説明されるように、X.Org に切り替えたり、GNOME 環境およびディスプレイサーバーで必要な組み合わせを選択できます。
本セクションでは、以下を説明します。
- Wayland と X11 の主な相違点
- 現在の Wayland 制限
- X11 が Wayland より優先される環境
18.4.1. Wayland と X11 の主な違い
X11 アプリケーション
クライアントアプリケーションは、Wayland プロトコルにポートする必要があり、GTK などの Wayland バックエンドを持つグラフィカルツールキットを使用して、Wayland に基づいたコンポジターおよびディスプレイサーバーとネイティブに動作できるようにします。
Wayland にポートできないレガシーな X11 アプリケーションは、Xwayland を、X11 レガシークライアントと Wayland コンポジターとの間のプロキシーとして自動的に使用します。Xwayland は、X11 サーバーと Wayland クライアントの両方として機能します。Xwayland の役割は、X11 のレガシーアプリケーションが、Wayland に基づいたディスプレイサーバーとともに動作するように、X11 プロトコルから Wayland プロトコルへ、または Wayland プロトコルから X11 プロトコルへ変換します。
Wayland の GNOME Shell では、Xwayland が、システムの起動時に自動的に起動します。これにより、Wayland の GNOME Shell を使用する際に X11 のレガシーアプリケーションが想定通りに動作するようになります。ただし、X11 プロトコルと Wayland プロトコルは異なり、X11 固有の機能を使用するクライアントは、Xwayland では動作が異なる可能性があります。このようなクライアントでは、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」に説明されるとおりに、X.Org ディスプレイサーバーに切り替えることができます。
libinput
RHEL 8 は、新しい統合入力スタック libinput
を使用して、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、タブレット、トラックボール、ポインティングスティックなど、共通するすべてのデバイスタイプを管理します。この統合スタックは、X.Org および Wayland の GNOME Shell コンポジターに使用されます。
Wayland の GNOME Shell は、すべてのデバイスに直接 libinput
を使用し、切り替え可能なドライバーは利用できません。X.Org
では、libinput
は、X.Org libinput
ドライバーとして実装されます。X.Org
におけるドライバーサポートは、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。
ジェスチャー
Wayland の GNOME Shell は、新しいタッチパットおよびタッチスクリーンのジェスチャーに対応します。以下のようなジェスチャーが含まれます。
- 4 本の指で、上下にドラッグしてワークスペースを切り替えます。
- 3 本の指をそれぞれ近づけて、アクティビティー概要を開きます。
関連情報
- Wayland と X11 の相違点は、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。
18.4.2. 現在の Wayland 制限
現在、Wayland ディスプレイプロトコルを使用すると、重要な制限が複数あります。
- 専用の Nvidia バイナリードライバーには対応していません。
- 従来の VNC ツールは一部利用できません。
- XDMCP (X Display Manager Control Protocol) には対応していません。
その他の制限事項は次のとおりです。
- X.Org* 画面操作ユーティリティーは利用できません。
-
Wayland ではレイアウト、回転、解像度の処理が異なるため、
xrandr
ユーティリティーはサポートされません。 -
ALT+F2/r
メソッドを使用して GNOME Shell を再起動することはできません。 - 安定性の問題により、仮想環境では、Wayland の代わりに X11 を使用することが推奨されます。
-
Wayland は、
libinput
ドライバーが処理できないカスタムまたはニッチなデバイスには対応していません。
現在の詳細な Wayland 制限は、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。
18.4.3. X11 が Wayland よりも推奨される環境
一部の環境では、X11 が Wayland より優先されます。
- 仮想マシン環境で使用される Cirrus グラフィックス
- Matrox グラフィックス
- Aspeed グラフィックス
- 仮想マシン環境で使用される QXL グラフィックス
- 専用ドライバーで使用された場合の Nvidia グラフィックス
Nvidia グラフィックスはデフォルトで、オープンソースドライバーの Nouveau
を使用します。Nouveau
は、Wayland の GNOME Shell で対応しているため、制限なしで、Nouveau
で Nvidia グラフィックスを使用できます。ただし、Wayland の GNOME Shell でのプロプライエタリー Nvidia バイナリードライバーを持つ Nvidia グラフィックスの使用はサポートされていません。この場合は、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」に説明されているように、X.Org に切り替えます。
Wayland が利用できない環境の現在の一覧は、/usr/lib/udev/rules.d/61-gdm.rules
ファイルで確認できます。