第18章 デスクトップおよびグラフィックス

18.1. GNOME Shell がデフォルトのデスクトップ環境になる

RHEL 8 では、GNOME Shell がデフォルトのデスクトップ環境として配布されます。

KDE Plasma Workspaces (KDE) に関連するすべてのパッケージが削除され、デフォルトの GNOME デスクトップ環境の代替として KDE を使用することができなくなりました。

Red Hat は、KDE を使用する RHEL 7 から、RHEL 8 GNOME への移行は対応しません。KDE を使用する RHEL 7 を使用している場合は、データのバックアップを取得し、GNOME Shell で RHEL 8 をインストールします。

18.2. GNOME Shell への主な変更点

RHEL 8 では、GNOME Shell (バージョン 3.28) が配布されます。

本セクションでは、以下を説明します。

  • GNOME Shell (バージョン 3.28) に関連する機能強化を説明します。
  • GNOME Shell 環境とディスプレイプロトコルのデフォルトの組み合わせにおける変更を説明します。
  • デフォルトでは利用できない機能にアクセスする方法を説明します。
  • ソフトウェア管理の GNOME ツールにおける変更を説明します。

18.2.1. RHEL 8 の GNOME シェル (バージョン 3.28)

RHEL 8 では、GNOME シェルのバージョン 3.28 が利用できます。以下は、主な変更点です。

  • GNOME Boxes の新機能
  • 新しいオンスクリーンキーボード
  • デバイスサポートの拡張 (最も大きな統合は Thunderbolt 3 インターフェース)
  • GNOME ソフトウェア、dconf-editor、および GNOME ターミナルの改善

18.2.2. GNOME Shell 環境

GNOME 3 は、基本的な環境を 2 つ提供します。

  • GNOME Standard
  • GNOME クラシック

いずれの環境でも、グラフィカルインターフェースを構築するプロトコルを 2 つ使用できます。

  • X11 プロトコル (X.Org をディスプレイサーバーとして使用)
  • Wayland プロトコル。GNOME ShellWayland コンポジターおよびディスプレイサーバーとして使用します。

    ディスプレイサーバーに関するこのソリューションは、GNOME Shell on Wayland と呼ばれています。

RHEL 8 のデフォルトの組み合わせは、GNOME Shell on Wayland を使用した GNOME 標準環境です。

ただし、GNOME Shell 環境と、グラフィックスのプロトコルスタックに切り替える場合があります。詳細は「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」を参照してください。

両方の GNOME Shell 環境を使用する方法は『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

18.2.3. デスクトップアイコン

RHEL 8 では、デスクトップアイコン機能は Nautilus ファイルマネージャーではなく、デスクトップアイコンの gnome-shell 拡張により提供されるようになりました。

拡張機能を使用できるようにするには、Appstream リポジトリーで利用可能な gnome-shell-extension-desktop-icons パッケージをインストールする必要があります。

RHEL 8 のデスクトップアイコンの詳細は『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

18.2.4. 分数スケール

GNOME Shell on Wayland セッションでは、分数のスケーリング機能が利用できます。この機能は、GUI を分数でスケールでき、特定のディスプレイでスケールした GUI の出現を改善します。

この機能は現在試験的なものなので、デフォルトでは無効になっていることに注意してください。

分数スケールを有効にするには、次のコマンドを実行します。

# gsettings set org.gnome.mutter experimental-features "['scale-monitor-framebuffer']"

18.2.5. パッケージ管理用 GNOME ソフトウェア

RHEL 7 のグラフィカル環境におけるパッケージ管理に、一連のツールを提供する gnome-packagekit パッケージが利用できなくなりました。

RHEL 8 では、アプリケーションと gnome-shell 拡張機能のインストールと更新を可能にする GNOME Software ユーティリティーにより同様の機能が提供されます。GNOME Software は、gnome-software パッケージで配布されます。

GNOME ソフトウェア を使用したアプリケーションのインストール方法は『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

18.2.6. sudo でグラフィカルアプリケーションを開く

sudo コマンドを使用して、端末でグラフィカルアプリケーションを開くには、次の操作が必要になります。

X11 アプリケーション

アプリケーションは、X11 ディスプレイプロトコルを使用し、X サーバーのローカルユーザーの root は、アクセス制御リストを追加します。その結果、rootXwayland に接続できるようになり、これにより X11 プロトコルが Wayland プロトコル、または逆方向に翻訳されます。

例18.1 X サーバーアクセス制御リストへ root を追加して、sudo で xclock を開く

$ xhost +si:localuser:root

$ sudo xclock

Wayland アプリケーション

アプリケーションが Wayland ネイティブの場合は、-E オプションが含まれます。

例18.2 sudo で GNOME Calculator を開く

$ sudo -E gnome-calculator

もしくは、sudo およびアプリケーションの名前を入力すると、アプリケーションを開く操作に失敗し、次のエラーメッセージが表示されます。

No protocol specified
Unable to init server: could not connect: connection refused
# Failed to parse arguments: Cannot open display

18.3. GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択

さまざまな GNOME 環境の組み合わせおよびグラフィックプロトコルスタックを切り替えるために、以下の手順を使用します。

手順

  1. ログイン画面 (GDM) で、Sign In ボタンの横にある歯車をクリックします。

    注記

    ロック画面からはこのオプションにアクセスできません。最初に RHEL 8 を起動するか、現在のセッションからログアウトすると、ログイン画面が表示されます。

    gnome environments new

  2. 表示されるドロップダウンメニューから、オプションを選択します。

    注記

    ログイン画面に表示されるメニューで、X.Org ディスプレイサーバーが X11 ディスプレイサーバーとして表示されます。

重要

GNOME 環境、および上記手順のグラフィックプロトコルスタックの変更は、ユーザーがログアウトしたり、コンピューターの電源を落としたり、システムを再起動しても持続します。

18.4. Graphics スタック

RHEL 8 では、グラフィカルユーザーインターフェースを構築するプロトコルを 2 つ使用できます。

  • X11
  • Wayland

X11 プロトコルは、X.Org をディスプレイサーバーとして使用します。このプロトコルに基づいたグラフィックスの表示は、オプションでしかなかった RHEL 7 と同じように機能します。

RHEL 8 の Wayland プロトコルは、GNOME Shell コンポジターおよびディスプレイサーバーとして使用します。これはさらに GNOME Shell on Wayland として参照されます。

RHEL 8 の新規インストールでは Wayland の GNOME Shell が自動的に選択され、Wayland プロトコルがデフォルトで使用されます。ただし、Wayland における現在の制限 のため、または Wayland で X11 が優先される環境 では、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」 で説明されるように、X.Org に切り替えたり、GNOME 環境およびディスプレイサーバーで必要な組み合わせを選択できます。

本セクションでは、以下を説明します。

  • WaylandX11 の主な相違点
  • 現在の Wayland 制限
  • X11Wayland より優先される環境

18.4.1. Wayland と X11 の主な違い

X11 アプリケーション

クライアントアプリケーションは、Wayland プロトコルにポートする必要があり、グラフィカルツールキットを使用して、GTK などの Wayland バックエンドを持つグラフィカルツールキットを使用して、Wayland に基づいたコンポジターおよびディスプレイサーバーとネイティブに動作できるようにします。

Wayland にポートできないレガシー X11 アプリケーションは、Xwayland を、X11 レガシークライアントと Wayland コンポジターとの間のプロキシーとして自動的に使用します。Xwayland 機能は、X11 サーバーおよび Wayland クライアントの両方として機能します。Xwayland の役割は、X11 のレガシーアプリケーションが、Wayland に基づいたディスプレイサーバーとともに動作するように、X11 プロトコルから Wayland プロトコルへ、またはWayland プロトコルから X11 プロトコルへ変換します。

GNOME Shell on Wayland では、Xwayland が、システムの起動時に自動的に起動します。これにより、Wayland の GNOME Shell の使用時に、X11 のアプリケーションの大部分が期待通りに動作するようになります。このようなクライアントでは、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」 に説明されるとおりに、X.Org ディスプレイサーバーに切り替えることができます。

libinput

RHEL 8 は、新しい統合入力スタック libinput を使用して、マウス、タッチパッド、タッチスクリーン、タブレット、トラックボール、ポインティングスティックなど、共通するすべてのデバイスタイプを管理します。この統合スタックは、X.Org および GNOME Shell on Wayland コンポジターに使用されます。

GNOME Shell on Wayland は、すべてのデバイスに直接 libinput を使用します。X.Org では、libinput は、X.Org libinput ドライバーとして実装されます。X.Org におけるドライバーサポートは、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

ジェスチャー

GNOME Shell on Wayland は、新しいタッチパットおよびタッチスクリーンのジェスチャーに対応します。以下のようなジェスチャーが含まれます。

  • 4 本の指で、上下にドラッグしてワークスペースを切り替えます。
  • 3 本の指をそれぞれ近づけて、アクティビティー概要 (Activities Overview) を開きます。
その他の情報

WaylandX11 の相違点は、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

18.4.2. 現在の Wayland 制限

現在、Wayland ディスプレイプロトコルを使用すると、重要な制限が複数あります。

  • 専用の Nvidia バイナリードライバーには対応していません。
  • 従来の VNC ツールは一部利用できません。
  • XDMCP (X Display Manager Control Protocol) はサポートされていません。

その他の制限事項は次のとおりです。

  • X.Org* 画面操作ユーティリティーは利用できません。
  • Wayland ではレイアウト、回転、解像度の処理が異なるため、xrandr ユーティリティーはサポートされません。
  • ALT+F2/r を使用して GNOME Shell を再起動できません。
  • 安定性の問題により、仮想環境では、Wayland の代わりに X11 を使用することが推奨されます。
  • Wayland は、libinput ドライバーが処理できないカスタムまたはニッチなデバイスには対応していません。

現在の詳細な Wayland 制限は、『デスクトップからの RHEL システムの管理』を参照してください。

18.4.3. X11 が Wayland よりも推奨される環境

一部の環境では、X11Wayland より優先されます。

  • VM 環境で使用される Cirrus グラフィックス
  • Matrox グラフィックス
  • Aspeed グラフィックス
  • VM 環境で使用される QXL グラフィックス
  • 専用ドライバーで使用された場合の Nvidia グラフィックス
重要

Nvidia グラフィックスは、デフォルトで、オープンソースドライバーである Nouveau を使用します。Nouveau は、GNOME Shell on Wayland でサポートされるため、制限なしで Nouveau を使用して Nvidia グラフィックスを使用できますが、プロプライエタリー Nvidia バイナリードライバーを持つ Nvidia グラフィックスを使用することは、GNOME Shell on Wayland ではサポートされていません。この場合は、「GNOME 環境およびディスプレイプロトコルの選択」に説明されているように、X.Org に切り替えます。

注記

Wayland が利用できない環境の現在の一覧は、/usr/lib/udev/rules.d/61-gdm.rules ファイルで確認できます。