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第29章 Chrony スイートを使用した NTP の設定
IT では、さまざまな理由で正確な時間の維持が重要です。たとえばネットワーキングでは、パケットとログのタイムスタンプが正確であることが必要になります。Linux システムでは、NTP
プロトコルがユーザー領域で実行しているデーモンにより実装されます。
ユーザー領域のデーモンは、カーネルで実行しているシステムクロックを更新します。システムクロックは、さまざまなクロックソースを使用して時間を維持します。一般的に使用されるのは Time Stamp Counter (TSC) です。TSC は、最後にリセットされた時点からのサイクル数を計測する CPU レジスターです。非常に高速でハイレゾリューションであり、中断も発生しません。
Red Hat Enterprise Linux 8 以降、NTP
プロトコルは chronyd
デーモンにより実装されます。このデーモンは、chrony
パッケージのリポジトリーから利用できます。
次のセクションでは、chrony スイートを使用して NTP を設定する方法を説明します。
29.1. chrony スイートの概要
chrony は Network Time Protocol (NTP)
の実装です。chrony を使用すると、以下のことができます。
-
システムクロックを、
NTP
サーバーと同期する - システムクロックを、GPS レシーバーなどの基準クロックと同期する
- システムクロックを、手動で入力した時間と同期する
-
ネットワーク内の他のコンピューターにタイムサービスを提供する
NTPv4(RFC 5905)
サーバーまたはピアとして
chrony は、ネットワーク接続が頻繁に切断される、ネットワークの混雑が長時間続く、温度が変わる (一般的なコンピューターのクロックは温度に敏感) といったさまざまな状況や、継続して実行されない、または仮想マシンで実行されているといったシステムにおいても、良好に動作します。
インターネット上で同期している 2 つのマシン間の一般的精度は数ミリ秒以内、LAN 上のマシン間では数十マイクロ秒以内です。ハードウェアのタイムスタンプまたはハードウェア基準クロックは、同期している 2 つのマシン間の精度をサブマイクロ秒レベルにまで高めることができます。
chrony は、ユーザー領域で実行する chronyd
と、chronyd
のパフォーマンスを監視し、実行時にさまざまなオペレーティングパラメーターを変更するのに使用できるコマンドラインプログラムである chronyc で設定されます。
chrony デーモンである chronyd
は、コマンドラインユーティリティーの chronyc を使用して監視と管理を行います。このユーティリティーは、chronyd
の現在の状態に対してクエリーを実行し、その設定を変更する多数のコマンド入力を可能にするコマンドプロンプトを提供します。デフォルトでは、chronyd
は chronyc のローカルインスタンスのコマンドのみを受け付けますが、リモートホストから監視コマンドを受け付けるように設定することも可能です。リモートアクセスは制限する必要があります。