Red Hat Training

A Red Hat training course is available for RHEL 8

第2章 Pacemaker の使用の開始

Pacemaker クラスターの作成に使用するツールとプロセスに慣れるために、次の手順を実行できます。ここで説明する内容は、クラスターソフトウェアの概要と、作業用のクラスターを設定せずに管理する方法に関心のあるユーザーを対象としています。

注記

ここで説明する手順では、2 つ以上のノードとフェンシングデバイスの設定が必要となるサポート対象の Red Hat クラスターは作成されません。Red Hat のサポートポリシー、要件、および制限の詳細は、RHEL 高可用性クラスターのサポートポリシー を参照してください。

2.1. Pacemaker の使用方法

ここでは、Pacemaker を使用してクラスターを設定する方法、クラスターのステータスを表示する方法、およびクラスターサービスを設定する方法を学習します。この例では、Apache HTTP サーバーをクラスターリソースとして作成し、リソースに障害が発生した場合のクラスターの応答方法を表示します。

この例では、以下のように設定されています。

  • ノード: z1.example.com
  • Floating IP アドレス: 192.168.122.120

前提条件

  • RHEL 8 を実行しているノード 1 つ
  • このノードで静的に割り当てられている IP アドレスの 1 つと同じネットワーク上にあるフローティング IP アドレス
  • /etc/hosts ファイルに、実行中のノード名が含まれている

手順

  1. High Availability チャンネルから Red Hat High Availability Add-On ソフトウェアパッケージをインストールし、pcsd サービスを起動して有効にします。

    # yum install pcs pacemaker fence-agents-all
    ...
    # systemctl start pcsd.service
    # systemctl enable pcsd.service

    firewalld デーモンを実行している場合は、Red Hat High Availability Add-On で必要なポートを有効にします。

    # firewall-cmd --permanent --add-service=high-availability
    # firewall-cmd --reload
  2. クラスターの各ノードにユーザー hacluster のパスワードを設定し、pcs コマンドを実行するノードにあるクラスターの各ノードに対して、hacluster ユーザーの認証を行います。この例では、ノードを 1 つだけ使用し、そのノードからコマンドを実行していますが、このステップはサポート対象の Red Hat High Availability マルチノードクラスターを設定する際に必要となるため、この手順に含まれています。

    # passwd hacluster
    ...
    # pcs host auth z1.example.com
  3. メンバーを 1 つ含む my_cluster という名前のクラスターを作成し、クラスターのステータスを確認します。この 1 つのコマンドで、クラスターが作成され、起動します。

    # pcs cluster setup my_cluster --start z1.example.com
    ...
    # pcs cluster status
    Cluster Status:
     Stack: corosync
     Current DC: z1.example.com (version 2.0.0-10.el8-b67d8d0de9) - partition with quorum
     Last updated: Thu Oct 11 16:11:18 2018
     Last change: Thu Oct 11 16:11:00 2018 by hacluster via crmd on z1.example.com
     1 node configured
     0 resources configured
    
    PCSD Status:
      z1.example.com: Online
  4. Red Hat High Availability クラスターでは、クラスターのフェンシングを設定することが必要になります。この要件が必要になる理由は Fencing in a Red Hat High Availability Cluster を参照してください。ただし、ここでは基本的な Pacemaker コマンドの使用方法を説明することを目的としているため、stonith-enabled クラスターのオプションを false に設定し、フェンシングを無効にします。

    警告

    stonith-enabled=false の使用は、実稼働クラスターには完全に適していません。これにより、障害が発生したノードが適切にフェンスされていることを装うようにクラスターに指示されます。

    # pcs property set stonith-enabled=false
  5. システムに Web ブラウザーを設定し、Web ページを作成して簡単なテキストメッセージを表示します。firewalld デーモンを実行している場合は、httpd で必要なポートを有効にします。

    注記

    システムの起動時に使用する場合は、systemctl enable で、クラスターが管理するサービスを有効にしないでください。

    # yum install -y httpd wget
    ...
    # firewall-cmd --permanent --add-service=http
    # firewall-cmd --reload
    
    # cat <<-END >/var/www/html/index.html
    <html>
    <body>My Test Site - $(hostname)</body>
    </html>
    END

    Apache リソースエージェントが Apache のステータスを取得できるようにするため、既存の設定に以下の内容を追加して、ステータスサーバーの URL を有効にします。

    # cat <<-END > /etc/httpd/conf.d/status.conf
    <Location /server-status>
    SetHandler server-status
    Order deny,allow
    Deny from all
    Allow from 127.0.0.1
    Allow from ::1
    </Location>
    END
  6. クラスターが管理するリソース IPaddr2 および apache を作成します。IPaddr2 は Floating IP であるため、物理ノードに関連付けられている IP アドレスは使用できません。IPaddr2 の NIC デバイスを指定しない場合は、そのノードで使用される、静的に割り当てられた IP アドレスと同じネットワークに Floating IP が存在する必要があります。

    利用可能なリソースタイプのリストを表示する場合は、pcs resource list コマンドを使用します。指定したリソースタイプに設定できるパラメーターを表示する場合は、pcs resource describe resourcetype コマンドを使用します。たとえば、以下のコマンドは、apache タイプのリソースに設定できるパラメーターを表示します。

    # pcs resource describe apache
    ...

    この例では、IP アドレスリソースと apache リソースの両方が apachegroup グループに含まれるように設定します。これにより、両リソースが一緒に保存され、作業用のマルチノードクラスターを設定する際に、同じノードで実行できます。

    # pcs resource create ClusterIP ocf:heartbeat:IPaddr2 ip=192.168.122.120 --group apachegroup
    
    # pcs resource create WebSite ocf:heartbeat:apache configfile=/etc/httpd/conf/httpd.conf statusurl="http://localhost/server-status" --group apachegroup
    
    # pcs status
    Cluster name: my_cluster
    Stack: corosync
    Current DC: z1.example.com (version 2.0.0-10.el8-b67d8d0de9) - partition with quorum
    Last updated: Fri Oct 12 09:54:33 2018
    Last change: Fri Oct 12 09:54:30 2018 by root via cibadmin on z1.example.com
    
    1 node configured
    2 resources configured
    
    Online: [ z1.example.com ]
    
    Full list of resources:
    
    Resource Group: apachegroup
        ClusterIP  (ocf::heartbeat:IPaddr2):       Started z1.example.com
        WebSite    (ocf::heartbeat:apache):        Started z1.example.com
    
    PCSD Status:
      z1.example.com: Online
    ...

    クラスターリソースを設定したら、pcs resource config コマンドを使用して、そのリソースに設定したオプションを表示します。

    # pcs resource config WebSite
    Resource: WebSite (class=ocf provider=heartbeat type=apache)
     Attributes: configfile=/etc/httpd/conf/httpd.conf statusurl=http://localhost/server-status
     Operations: start interval=0s timeout=40s (WebSite-start-interval-0s)
                 stop interval=0s timeout=60s (WebSite-stop-interval-0s)
                 monitor interval=1min (WebSite-monitor-interval-1min)
  7. ブラウザーで、設定済みの Floating IP アドレスを使用して作成した Web サイトを開くように指定します。定義したテキストメッセージが表示されるはずです。
  8. Apache Web サービスを停止し、クラスターのステータスを確認します。killall -9 を使用して、アプリケーションレベルのクラッシュをシミュレートします。

    # killall -9 httpd

    クラスターのステータスを確認します。Web サービスは停止したためアクションは失敗しますが、クラスターソフトウェアがサービスを再起動したため、Web サイトに引き続きアクセスできることが確認できるはずです。

    # pcs status
    Cluster name: my_cluster
    ...
    Current DC: z1.example.com (version 1.1.13-10.el7-44eb2dd) - partition with quorum
    1 node and 2 resources configured
    
    Online: [ z1.example.com ]
    
    Full list of resources:
    
    Resource Group: apachegroup
        ClusterIP  (ocf::heartbeat:IPaddr2):       Started z1.example.com
        WebSite    (ocf::heartbeat:apache):        Started z1.example.com
    
    Failed Resource Actions:
    * WebSite_monitor_60000 on z1.example.com 'not running' (7): call=13, status=complete, exitreason='none',
        last-rc-change='Thu Oct 11 23:45:50 2016', queued=0ms, exec=0ms
    
    PCSD Status:
        z1.example.com: Online

    サービスが再開すると、障害が発生したリソースの障害 (failure) ステータスが削除されるため、クラスターステータスを確認する際に、障害が発生したアクションの通知が表示されなくなります。

    # pcs resource cleanup WebSite
  9. クラスターと、クラスターのステータスを確認したら、ノードでクラスターサービスを停止します。(この手順を試すために、実際にサービスを起動したノードが 1 つだけであっても) --all パラメーターを追加してください。これにより実際のマルチノードクラスターの全ノードでクラスターサービスが停止します。

    # pcs cluster stop --all