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第5章 Red Hat High Availability クラスターでのアクティブ/パッシブ Apache HTTP サーバーの設定

以下の手順では、2 ノードの Red Hat Enterprise Linux High Availability Add-On クラスターでアクティブ/パッシブ Apache HTTP サーバーを設定します。このユースケースでは、クライアントは Floating IP アドレスを使用して Apache HTTP サーバーにアクセスします。Web サーバーは、クラスターにある 2 つのノードのいずれかで実行します。Web サーバーが実行しているノードが正常に動作しなくなると、Web サーバーはクラスターの 2 番目のノードで再起動し、サービスの中断は最小限に抑えられます。

以下の図は、クラスターがネットワーク電源スイッチと共有ストレージで設定された 2 ノードの Red Hat High Availability クラスターであるクラスターの高レベルの概要を示しています。クライアントは仮想 IP を使用して Apache HTTP サーバーにアクセスするため、クラスターノードはパブリックネットワークに接続されます。Apache サーバーは、ノード 1 またはノード 2 のいずれかで実行します。いずれのノードも、Apache のデータが保持されるストレージにアクセスできます。この図では、Web サーバーが ノード 1 で実行しており、ノード 1 が正常に動作しなくなると、ノード 2 がサーバーを実行できます。

図5.1 2 ノードの Red Hat High Availability クラスターの Apache

2 ノードの Red Hat High Availability クラスターの Apache

このユースケースでは、システムに以下のコンポーネントが必要です。

  • 各ノードに電源フェンスが設定されている 2 ノードの Red Hat High Availability クラスター。プライベートネットワークが推奨されますが、必須ではありません。この手順では、Pacemaker を使用した Red Hat High Availability クラスターの作成 で説明されているサンプルのクラスターを使用します。
  • Apache に必要なパブリック仮想 IP アドレス。
  • iSCSI、ファイバーチャネル、またはその他の共有ネットワークデバイスを使用する、クラスター内のノードの共有ストレージ。

クラスターは、Web サーバーで必要な LVM リソース、ファイルシステムリソース、IP アドレスリソース、Web サーバーリソースなどのクラスターコンポーネントを含む Apache リソースグループで設定されます。このリソースグループは、クラスター内のあるノードから別のノードへのフェイルオーバーが可能なため、いずれのノードでも Web サーバーを実行できます。このクラスターのリソースグループを作成する前に、以下の手順を実行します。

  1. 論理ボリューム my_lv 上に XFS ファイルシステムを設定します。
  2. Web サーバーを設定します。

上記の手順をすべて完了したら、リソースグループと、そのグループに追加するリソースを作成します。

5.1. Pacemaker クラスターで XFS ファイルシステムを使用して LVM ボリュームを設定する

この手順では、クラスターのノード間で共有されているストレージに LVM 論理ボリュームを作成します。

注記

LVM ボリュームと、クラスターノードで使用するパーティションおよびデバイスは、クラスターノード以外には接続しないでください。

次の手順では、LVM 論理ボリュームを作成し、そのボリューム上に Pacemaker クラスターで使用する XFS ファイルシステムを作成します。この例では、LVM 論理ボリュームを作成する LVM 物理ボリュームを保管するのに、共有パーティション /dev/sdb1 が使用されます。

手順

  1. クラスターの両ノードで以下の手順を実行し、LVM システム ID の値を、システムの uname 識別子の値に設定します。LVM システム ID を使用すると、クラスターのみがボリュームグループをアクティブにできるようになります。

    1. /etc/lvm/lvm.conf 設定ファイルの system_id_source 設定オプションを uname に設定します。

      # Configuration option global/system_id_source.
      system_id_source = "uname"
    2. ノードの LVM システム ID が、ノードの uname に一致することを確認します。

      # lvm systemid
        system ID: z1.example.com
      # uname -n
        z1.example.com
  2. LVM ボリュームを作成し、そのボリューム上に XFS ファイルシステムを作成します。/dev/sdb1 パーティションは共有されるストレージであるため、この手順のこの部分は、1 つのノードでのみ実行してください。

    注記

    LVM ボリュームグループに、iSCSI ターゲットなど、リモートブロックストレージに存在する 1 つ以上の物理ボリュームが含まれている場合は、Red Hat は、Pacemaker が起動する前にサービスが開始されるように設定することを推奨します。Pacemaker クラスターによって使用されるリモート物理ボリュームの起動順序の設定については、Pacemaker で管理されないリソース依存関係の起動順序の設定 を参照してください。

    1. パーティション /dev/sdb1 に LVM 物理ボリュームを作成します。

      [root@z1 ~]# pvcreate /dev/sdb1
        Physical volume "/dev/sdb1" successfully created
      注記

      LVM ボリュームグループに、iSCSI ターゲットなど、リモートブロックストレージに存在する 1 つ以上の物理ボリュームが含まれている場合は、Red Hat は、Pacemaker が起動する前にサービスが開始されるように設定することを推奨します。Pacemaker クラスターによって使用されるリモート物理ボリュームの起動順序の設定については、Pacemaker で管理されないリソース依存関係の起動順序の設定 を参照してください。

    2. 物理ボリューム /dev/sdb1 で構成されるボリュームグループ my_vg を作成します。

      RHEL 8.5 以降では、--setautoactivation n フラグを指定して、クラスターで Pacemaker が管理するボリュームグループが起動時に自動的にアクティブにならないようにします。作成する LVM ボリュームに既存のボリュームグループを使用している場合は、ボリュームグループで vgchange --setautoactivation n コマンドを使用して、このフラグをリセットできます。

      [root@z1 ~]# vgcreate --setautoactivation n my_vg /dev/sdb1
        Volume group "my_vg" successfully created

      RHEL 8.4 以前の場合は、以下のコマンドでボリュームグループを作成します。

      [root@z1 ~]# vgcreate my_vg /dev/sdb1
        Volume group "my_vg" successfully created

      RHEL 8.4 以前においてクラスターの Pacemaker が管理するボリュームグループが起動時に自動でアクティベートされないようにする方法は、複数のクラスターノードでボリュームグループがアクティブにならないようにする方法 を参照してください。

    3. 新規ボリュームグループには、実行中のノードで、かつボリュームグループの作成元であるノードのシステム ID があることを確認します。

      [root@z1 ~]# vgs -o+systemid
        VG    #PV #LV #SN Attr   VSize  VFree  System ID
        my_vg   1   0   0 wz--n- <1.82t <1.82t z1.example.com
    4. ボリュームグループ my_vg を使用して、論理ボリュームを作成します。

      [root@z1 ~]# lvcreate -L450 -n my_lv my_vg
        Rounding up size to full physical extent 452.00 MiB
        Logical volume "my_lv" created

      lvs コマンドを使用して論理ボリュームを表示してみます。

      [root@z1 ~]# lvs
        LV      VG      Attr      LSize   Pool Origin Data%  Move Log Copy%  Convert
        my_lv   my_vg   -wi-a---- 452.00m
        ...
    5. 論理ボリューム my_lv 上に XFS ファイルシステムを作成します。

      [root@z1 ~]# mkfs.xfs /dev/my_vg/my_lv
      meta-data=/dev/my_vg/my_lv       isize=512    agcount=4, agsize=28928 blks
               =                       sectsz=512   attr=2, projid32bit=1
      ...
  3. (RHEL 8.5 以降) lvm.conf ファイルで use_devicesfile = 1 を設定してデバイスファイルの使用を有効にした場合は、クラスター内の 2 番目のノードのデバイスファイルに共有デバイスを追加します。デフォルトでは、デバイスファイルの使用は有効になっていません。

    [root@z2 ~]# lvmdevices --adddev /dev/sdb1