6.5. テクノロジープレビュー

本パートでは、Red Hat Enterprise Linux 8.1 で利用可能なテクノロジープレビュー機能を説明します。

テクノロジープレビューに対する Red Hat のサポート範囲の詳細は、テクノロジープレビューのサポート範囲 を参照してください。

6.5.1. ネットワーク

TIPC の完全サポート

TIPC (Transparent Inter Process Communication) は、不安定にペアリングされたノードのクラスターで効率的な通信を行うために特別に設計されたプロトコルです。これは、カーネルモジュールとして機能し、iproute2 パッケージに tipc ツールを提供します。これにより、クラスターのどこにいるかにかかわらず、その他のアプリケーションと迅速かつ確実に通信できるアプリケーションを作成できます。この機能は、RHEL 8 で完全に対応するようになりました。

(BZ#1581898)

eBPF がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Traffic Control (tc) カーネルサブシステムと tc ツールは、テクノロジープレビューとして、eBPF (extended Berkeley Packet Filtering) プログラムをパケットとして追加し、入力および出力の両方のキューイング規則に対するアクションを実行できます。これにより、カーネルネットワークデータパスでのプログラミング可能なパケット処理が可能になります。

(BZ#1699825)

nmstate がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Nmstate は、ホストのネットワーク API です。テクノロジープレビューとして利用できる nmstate パッケージでは、ライブラリーおよび nmstatectl コマンドラインユーティリティーを利用でき、ホストのネットワーク設定を宣言型で管理できます。ネットワークの状態は事前定義済みのスキーマで説明されています。現在の状態と、必要な状態への変更の報告は、両者ともこのスキーマに一致します。

詳細は、/usr/share/doc/nmstate/README.md ファイルおよび /usr/share/doc/nmstate/examples ディレクトリーにあるサンプルを参照してください。

(BZ#1674456)

AF_XDP がテクノロジープレビューとして利用可能に

AF_XDP (Address Family eXpress Data Path) ソケットは、高性能パケット処理用に設計されています。さらに処理するために、XDP を取り入れ、プログラムにより選択されたパケットの効率的なリダイレクトをユーザー空間アプリケーションに付与します。

(BZ#1633143)

XDP がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

eXpress Data Path (XDP) 機能はテクノロジープレビューとして利用でき、カーネルの入力データパスの初期段階にある高性能パケット処理に、eBPF (extended Berkeley Packet Filter) プログラムを追加する手段を提供します。これにより、効率的なプログラム可能なパケット分析、フィルタリング、および操作が可能になります。

(BZ#1503672)

KTLS がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Red Hat Enterprise Linux 8 では、Kernel Transport Layer Security (KTLS) がテクノロジープレビューとして提供されます。KTLS は、AES-GCM 暗号化のカーネルで対称暗号化アルゴリズムまたは複号アルゴリズムを使用して TLS レコードを処理します。KTLS は、この機能に対応するネットワークインターフェイスコントローラー (NIC) に TLS レコード暗号化をオフロードするインターフェイスも提供します。

(BZ#1570255)

systemd-resolved サービスがテクノロジープレビューとして利用できるようになりました。

systemd-resolved サービスは、ローカルアプリケーションに名前解決を提供します。このサービスは、DNS スタブリゾルバー、LLMNR (Link-Local Multicast Name Resolution)、およびマルチキャスト DNS リゾルバーとレスポンダーのキャッシュと検証を実装します。

systemd パッケージが systemd-resolved を提供している場合でも、このサービスはサポートされていないテクノロジープレビューであることに注意してください。

(BZ#1906489)

6.5.2. カーネル

RHEL 8 では、Control Group v2 がテクノロジープレビューとして利用可能に

Control Group v2 メカニズムは、統一された階層制御グループです。Control Group v2 は、プロセスを階層的に編成し、制御された設定可能な方法で、階層に従ってシステムリソースを分配します。

以前のバージョンとは異なり、Control Group v2 には階層が 1 つしかありません。このように階層が単純であるため、Linux カーネルでは次のことが可能になります。

  • 所有者のロールに基づいたプロセスの分類
  • 複数の階層でポリシーが競合する問題の解消

Control Group v2 では、多くのコントローラーに対応しています。

  • CPU コントローラーにより、CPU サイクルの配分が調整されます。このコントローラーには以下が実装されています。

    • 通常のスケジューリングポリシーに対する重みおよび絶対帯域幅制限のモデル
    • 実時間スケジューリングポリシーに対する絶対帯域幅割り当てモデル
  • メモリーコントローラーは、メモリー配分を調整します。現在、次の種類のメモリー使用量が追跡されます。

    • ユーザー側のメモリー (ページキャッシュと匿名メモリー)
    • dentry、inode などのカーネルデータ構造
    • TCP ソケットバッファー
  • I/O コントローラーは、I/O リソースの配分を制限します。
  • ライトバックコントローラーは、メモリーコントローラーおよび I/O コントローラーの両方と対話し、Control Group v2 に固有のものです。

上記の情報は、Control Group v2 に基づいています。ここでは、個別の Control Group v2 コントローラーに関する情報を参照できます。

(BZ#1401552)

テクノロジープレビューとしての kexec fast reboot

kexec fast reboot 機能は、引き続きテクノロジープレビューとして利用できます。kexec fast reboot により、再起動が大幅に速くなります。この機能を使用するには、kexec カーネルを手動で読み込み、オペレーティングシステムを再起動します。

(BZ#1769727)

eBPF がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

eBPF (extended Berkeley Packet Filter) は、限られた一連の関数にアクセスできる制限付きサンドボックス環境において、カーネル領域でのコード実行を可能にするカーネル内の仮想マシンです。

仮想マシンには、さまざまな種類のマップの作成に対応した、新しいシステムコール bpf() が含まれ、特別なアセンブリーのコードでプログラムをロードすることも可能です。そして、このコードはカーネルにロードされ、実行時コンパイラーでネイティブマシンコードに変換されます。bpf() は、root ユーザーなど、CAP_SYS_ADMIN が付与されているユーザーのみが利用できます。詳細は、man ページの bpf(2) を参照してください。

ロードしたプログラムは、データを受信して処理するために、さまざまなポイント (ソケット、トレースポイント、パケット受信) に割り当てることができます。

eBPF 仮想マシンを使用する Red Hat には、多くのコンポーネントが同梱されています。各コンポーネントの開発フェーズはさまざまです。そのため、現在すべてのコンポーネントが完全にサポートされている訳ではありません。特定のコンポーネントがサポート対象と示されていない限り、すべてのコンポーネントはテクノロジープレビューとして提供されます。

現在、以下の重要な eBPF コンポーネントはテクノロジープレビューとして利用できます。

  • BPF Compiler Collection (BCC) ツールパッケージは、eBPF 仮想マシンを使用する動的なカーネル追跡ユーティリティーのコレクションです。BCC ツールパッケージは、64 ビット ARM アーキテクチャー、IBM Power Systems、リトルエンディアン、および IBM Z のアーキテクチャーでテクノロジープレビューとして利用できます。これは、AMD および Intel 64 ビットアーキテクチャーで完全にサポートされていることにご留意ください。
  • eBPF 仮想マシンを使用する高レベルの追跡言語 bpftrace
  • XDP (eXpress Data Path) 機能は、eBPF 仮想マシンを使用してカーネルでの高速パケット処理を有効にするネットワーキングテクノロジーです。

(BZ#1559616)

テクノロジープレビューとして利用できる Soft-RoCE

Remote Direct Memory Access (RDMA) over Converged Ethernet (RoCE) は、RDMA over Ethernet を実装するネットワークプロトコルです。Soft-RoCE は、RoCE v1 および RoCE v2 の 2 つのプロトコルバージョンに対応する RoCE のソフトウェア実装です。Soft-RoCE ドライバーの rdma_rxe は、RHEL 8 ではサポートされていないテクノロジープレビューとして利用できます。

(BZ#1605216)

6.5.3. ハードウェアの有効化

igc ドライバーが、RHEL 8 ではテクノロジープレビューとして利用できるようになりました。

igc Intel 2.5G Ethernet Linux 有線 LAN ドライバーは、テクノロジープレビューとして、RHEL 8 の全アーキテクチャーで利用できるようになりました。ethtool ユーティリティーは igc 有線 LAN もサポートします。

(BZ#1495358)

6.5.4. ファイルシステムおよびストレージ

NVMe/TCP がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

TCP/IP ネットワーク (NVMe/TCP) および対応する nvme-tcp.ko および nvmet -tcp.ko カーネルモジュールへのアクセスおよび共有がテクノロジープレビューとして追加されました。

ストレージクライアントまたはターゲットのいずれかとしての NVMe/TCP の使用は、nvme-cli パッケージおよび nvmetcli パッケージに含まれるツールで管理できます。

NVMe/TCP では、RDMA (Remote Direct Memory Access) およびファイバーチャネル (NVMe/FC) を含む、既存の NVMe over fabrics(NVMe-of) トランスポートとともにストレージトランスポートオプションを利用できます。

(BZ#1696451)

ファイルシステム DAX が、テクノロジープレビューとして ext4 および XFS で利用可能になりました。

Red Hat Enterprise Linux 8.1 では、ファイルシステムの DAX がテクノロジープレビューとして利用できます。DAX は、永続メモリーをそのアドレス空間に直接マッピングする手段をアプリケーションに提供します。DAX を使用するには、システムで利用可能な永続メモリーの形式が必要になります。通常は、NVDIMM (Non-Volatile Dual In-line Memory Module) の形式で、DAX に対応するファイルシステムを NVDIMM に作成する必要があります。また、ファイルシステムは dax マウントオプションでマウントする必要があります。これにより、dax をマウントしたファイルシステムのファイルの mmap が、アプリケーションのアドレス空間にストレージを直接マッピングされます。

(BZ#1627455)

OverlayFS

OverlayFS は、ユニオンファイルシステムのタイプです。これにより、あるファイルシステムを別のファイルシステムに重ねることができます。変更は上位のファイルシステムに記録され、下位のファイルシステムは変更しません。これにより、ベースイメージが読み取り専用メディアにあるコンテナーや DVD-ROM などのファイルシステムイメージを、複数のユーザーが共有できるようになります。詳細は、Linux カーネルのドキュメント https://www.kernel.org/doc/Documentation/filesystems/overlayfs.txt を参照してください

OverlayFS は、ほとんどの状況で引き続きテクノロジープレビューになります。したがって、カーネルは、この技術がアクティブになると警告を記録します。

以下の制限下で、対応しているコンテナーエンジン (podmancri-o、または buildah) とともに使用すると、OverlayFS に完全対応となります。

  • OverlayFS は、コンテナーエンジンのグラフドライバーとしての使用のみの対応となります。その使用は、コンテナーの COW コンテンツのみに対応し、永続ストレージには対応していません。非 OverlayFS ボリュームに永続ストレージを配置する必要があります。デフォルトのコンテナーエンジン設定のみを使用できます。つまり、あるレベルのオーバーレイ、1 つの下位ディレクトリー、および下位と上位の両方のレベルが同じファイルシステムにあります。
  • 下層ファイルシステムとして使用に対応しているのは現在 XFS のみです。

また、OverlayFS の使用には、以下のルールと制限が適用されます。

  • OverlayFS カーネル ABI とユーザー空間の動作については安定しているとみなされていないため、今後の更新で変更が加えられる可能性があります。
  • OverlayFS は、POSIX 標準の制限セットを提供します。OverlayFS を使用してアプリケーションをデプロイする前に、アプリケーションを十分にテストしてください。以下のケースは、POSIX に準拠していません。

    • O_RDONLY で開いているファイルが少ない場合は、ファイルの読み取り時に st_atime の更新を受け取りません。
    • O_RDONLY で開いてから、MAP_SHARED でマッピングした下位ファイルは、後続の変更と一貫性がありません。
    • 完全に準拠した st_ino 値または d_ino 値は、RHEL 8 ではデフォルトで有効になっていませんが、モジュールオプションまたはマウントオプションを使用して、この値の完全な POSIX コンプライアンスを有効にできます。

      一貫した inode 番号を付けるには、xino=on マウントオプションを使用します。

      redirect_dir=on オプションおよび index=on オプションを使用して、POSIX コンプライアンスを向上させることもできます。この 2 つのオプションにより、上位レイヤーの形式は、このオプションなしでオーバーレイと互換性がありません。つまり、redirect_dir=on または index=on でオーバーレイを作成し、オーバーレイをアンマウントしてから、このオプションなしでオーバーレイをマウントすると、予期しない結果またはエラーが発生することがあります。

  • XFS で使用されるコマンド:

    • XFS ファイルシステムは、オーバーレイとして使用する -n ftype=1 オプションを有効にして作成する必要があります。
    • システムのインストール時に作成された rootfs およびファイルシステムを使用して、Anaconda キックスタートに --mkfsoptions=-n ftype=1 パラメーターを設定します。
    • インストール後に新しいファイルシステムを作成する場合は、# mkfs -t xfs -n ftype=1 /PATH/TO/DEVICE コマンドを実行します。
    • 既存のファイルシステムがオーバーレイとして使用できるかどうかを確認するには、# xfs_info /PATH/TO/DEVICE | grep ftype コマンドを実行して、ftype=1 オプションが有効になっているかどうかを確認します。
  • SELinux セキュリティーラベルは、OverlayFS で対応するすべてのコンテナーエンジンでデフォルトで有効になっています。
  • このリリースでは、OverlayFS に関連する既知の問題がいくつかあります。詳細は、Linux カーネルドキュメントのNon-standard behavior (https://www.kernel.org/doc/Documentation/filesystems/overlayfs.txt) を参照してください。

(BZ#1690207)

Straits がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Stratis は、新しいローカルストレージマネージャーです。ユーザーへの追加機能を備えたストレージプールに、管理されるファイルシステムを提供します。

Stratis を使用すると、次のようなストレージタスクをより簡単に実行できます。

  • スナップショットおよびシンプロビジョニングを管理する
  • 必要に応じてファイルシステムのサイズを自動的に大きくする
  • ファイルシステムを維持する

Stratis ストレージを管理するには、バックグランドサービス stratisd と通信する stratis ユーティリティーを使用します。

Stratis はテクノロジープレビューとして提供されます。

詳細については、Stratis のドキュメント (Stratis ファイルシステムの設定) を参照してください。

(JIRA:RHELPLAN-1212)

IdM ホストにログインした IdM および AD ユーザーが利用可能な Samba サーバーを、テクノロジープレビューとして、IdM ドメインメンバーに設定できるようになりました。

今回の更新で、Identity Management (IdM) ドメインメンバーに Samba サーバーを設定できるようになりました。同じ名前パッケージに含まれる新しい ipa-client-samba ユーティリティーは、Samba 固有の Kerberos サービスプリンシパルを IdM に追加し、IdM クライアントを準備します。たとえば、ユーティリティーは、sss ID マッピングバックエンドの ID マッピング設定で /etc/samba/smb.conf を作成します。その結果、管理者が IdM ドメインメンバーに Samba を設定できるようになりました。

IdM 信頼コントローラーが Global Catalog Service をサポートしないため、AD が登録した Windows ホストは Windows で IdM ユーザーおよびグループを見つけることができません。さらに、IdM 信頼コントローラーは、Distributed Computing Environment / Remote Procedure Calls (DCE/RPC) プロトコルを使用する IdM グループの解決をサポートしません。これにより、AD ユーザーは、IdM クライアントから Samba の共有およびプリンターにしかアクセスできません。

詳細は、IdM ドメインメンバーでの Samba の設定 を参照してください。

(JIRA:RHELPLAN-13195)

6.5.5. 高可用性およびクラスター

Pacemaker の podman バンドルがテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Pacemaker コンテナーバンドルは、テクノロジープレビューとして利用できるコンテナーバンドル機能を使用して、podman コンテナープラットフォームで動作するようになりました。この機能はテクノロジープレビューとして利用できますが、例外が 1 つあります。Red Hat は、Red Hat Openstack 用の Pacemaker バンドルの使用に完全対応します。

(BZ#1619620)

テクノロジープレビューとして利用可能な corosync-qdevice のヒューリスティック

ヒューリスティックは、起動、クラスターメンバーシップの変更、corosync-qnetd への正常な接続でローカルに実行され、任意で定期的に実行される一連のコマンドです。すべてのコマンドが時間どおりに正常に終了すると (返されるエラーコードがゼロである場合)、ヒューリスティックは渡されますが、それ以外の場合は失敗します。ヒューリスティックの結果は corosync-qnetd に送信され、クオーラムとなるべきパーティションを判断するための計算に使用されます。

(BZ#1784200)

新しい fence-agents-heuristics-ping フェンスエージェント

Pacemaker は、テクノロジープレビューとして fence_heuristics_ping エージェントに対応するようになりました。このエージェントの目的は、実際にはフェンシングを行わず、フェンシングレベルの動作を新しい方法で活用する実験的なフェンスエージェントのクラスを開くことです。

ヒューリスティックエージェントが、実際のフェンシングを行うフェンスエージェントと同じフェンシングレベルで設定されいて、そのエージェントよりも順番が前に設定されているとします。その場合、フェンシグを行うエージェントで off 操作を行う前に、ヒューリスティックエージェントで、この操作を行います。このヒューリスティックエージェントが off アクションに対して失敗する場合、このフェンシングレベルが成功しないのはすでに明らかです。そのため、Pacemaker フェンシングは、フェンシングを行うエージェントで off 操作を行うステップをスキップします。ヒューリスティックエージェントはこの動作を利用して、特定の条件下で、実際のフェンシングを行うエージェントがフェンシングできないようにできます。

サービスを適切に引き継ぐことができないことを事前に把握できる場合は、ノードがピアをフェンシングする意味がないのであれば、ユーザーは特に 2 ノードクラスターでこのエージェントを使用できます。たとえば、ネットワークアップリンクに到達してサービスがクライアントに到達できない場合は、ノードがサービスを引き継ぐ意味はありません。これは、ルーターへの ping が検出できる状況が考えられます。

(BZ#1775847)

6.5.6. ID 管理

Identity Management JSON-RPC API がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Identity Management (IdM) では API が利用できます。API を表示するために、IdM は、テクノロジープレビューとして API ブラウザーも提供します。

Red Hat Enterprise Linux 7.3 では、複数のバージョンの API コマンドを有効にするために、IdM API が拡張されました。以前は、機能拡張により、互換性のない方法でコマンドの動作が変更することがありました。IdM API を変更しても、既存のツールおよびスクリプトを引き続き使用できるようになりました。これにより、以下が可能になります。

  • 管理者は、管理しているクライアント以外のサーバーで、IdM の以前のバージョンもしくは最近のバージョンを使用できます。
  • サーバーで IdM のバージョンを変更しても、開発者は特定バージョンの IdM コールを使用できます。

すべてのケースでサーバーとの通信が可能になります。たとえば、ある機能向けの新オプションが新しいバージョンに追加されていて、通信の一方の側でこれを使用していたとしても、特に問題はありません。

API の使用方法は Identity Management API を使用して IdM サーバーに接続する (テクノロジープレビュー) を参照してください。

(BZ#1664719)

DNSSEC が IdM でテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

統合 DNS のある Identity Management (IdM) サーバーは、DNS プロトコルのセキュリティーを強化する DNS に対する拡張セットである DNS Security Extensions (DNSSEC) に対応するようになりました。IdM サーバーでホストされる DNS ゾーンは、DNSSEC を使用して自動的に署名できます。暗号鍵は、自動的に生成およびローテートされます。

DNSSEC で DNS ゾーンの安全性を強化する場合は、以下のドキュメントを参照することが推奨されます。

統合 DNS のある IdM サーバーは、DNSSEC を使用して、他の DNS サーバーから取得した DNS 回答を検証することに注意してください。これが、推奨される命名方法に従って設定されていない DNS ゾーンの可用性に影響を与える可能性があります。

(BZ#1664718)

6.5.7. グラフィックインフラストラクチャー

64 ビット ARM アーキテクチャーで VNC リモートコンソールがテクノロジープレビューとして利用可能に

64 ビットの ARM アーキテクチャーでは、Virtual Network Computing (VNC) リモートコンソールがテクノロジープレビューとして利用できます。グラフィックススタックの残りの部分は、現在、64 ビット ARM アーキテクチャーでは検証されていません。

(BZ#1698565)

6.5.8. Red Hat Enterprise Linux システムロール

RHEL システムロールの postfix ロールが、テクノロジープレビューとして利用可能になりました。

Red Hat Enterprise Linux システムロールは、Red Hat Enterprise Linux サブシステムの設定インターフェイスを提供します。これにより、Ansible ロールを介したシステム設定が簡単になります。このインターフェイスにより、Red Hat Enterprise Linux の複数のバージョンにわたるシステム設定の管理と、新しいメジャーリリースの導入が可能になります。

rhel-system-roles パッケージは、AppStream リポジトリーを介して配布されます。

postfix ロールは、テクノロジープレビューとして利用可能です。

以下のロールが完全にサポートされています。

  • kdump
  • network
  • selinux
  • storage
  • timesync

詳細は、ナレッジベースの RHEL システムロール に関する記事を参照してください。

(BZ#2213183)

rhel-system-roles-sap がテクノロジープレビューとして利用可能になりました。

rhel-system-roles-sap パッケージは、SAP 向けの Red Hat Enterprise Linux (RHEL) システムロールを提供します。これは、RHEL システムの設定を自動化して SAP ワークロードロードを実行するたに使用できます。これらのロールは、関連する SAP ノート記載のベストプラクティスに基づいて最適な設定を自動的に適用することで、SAP ワークロードを実行するようにシステムを設定する時間を大幅に短縮できます。アクセスは、RHEL for SAP Solutions 製品に限定されます。サブスクリプションに関するサポートが必要な場合は、Red Hat カスタマーサポートまでご連絡ください。

rhel-system-roles-sap パッケージの以下の新しいロール がテクノロジープレビューとして利用できます。

  • sap-preconfigure
  • sap-netweaver-preconfigure
  • sap-hana-preconfigure

詳細は、Red Hat Enterprise Linux System Roles for SAP を参照してください。

注記: RHEL 8.1 for SAP Solutions は、Intel 64 アーキテクチャーおよび IBM POWER9 で SAP HANA とともに使用できるように検証される予定です。その他の SAP アプリケーションやデータベース製品 (SAP、SAP ASE など) は、RHEL 8.1 の機能を使用できます。検証されたリリースと SAP サポートの最新情報は、SAP Notes 2369910 および 2235581 を参照してください。

(BZ#1660832)

rhel-system-roles-sap がバージョン 1.1.1 にリベース

RHBA-2019:4258 アドバイザリーにより、rhel-system-roles-sap パッケージが更新され、複数のバグ修正が追加されました。以下に例を示します。

  • SAP システムロールは、英語以外のロケールのホストで動作します。
  • kernel.pid_maxsysctl モジュールで設定されます。
  • nproc は、HANA に対して無制限に設定されます (SAP ノート 2772999 のステップ 9 を参照)。
  • ハードプロセス制限は、ソフトプロセス制限よりも前に設定されます。
  • プロセス制限を設定するコードが、sap-preconfigure ロールと同じように動作するようになりました。
  • handlers/main.yml は、uefi 以外のシステムでのみ機能し、uefi システムではメッセージなしで無視されます。
  • rhel-system-roles の未使用の依存関係を削除
  • sap_hana_preconfigure_packages から libssh2 を削除
  • 特定の CPU 設定がサポートされていない場合の障害を防ぐために、追加チェックを追加
  • true および false をすべて小文字に変換
  • 最小限のパッケージ処理を更新
  • ホスト名およびドメイン名を正しく設定
  • 多くのマイナーな修正

rhel-system-roles-sap パッケージはテクノロジープレビューとして利用できます。

(BZ#1766622)

6.5.9. 仮想化

Hyper-V の RHEL ゲストで、Intel ネットワークアダプターが SR-IOV をサポートするようになりました。

テクノロジープレビューとして、Hyper-V ハイパーバイザーで実行している Red Hat Enterprise Linux のゲストオペレーティングシステムは、ixgbevf および ixgbevf ドライバーがサポートする Intel ネットワークアダプターに、シングルルート I/O 仮想化 (SR-IOV) 機能を使用することができるようになりました。この機能は、以下の条件が満たされると有効になります。

  • ネットワークインターフェイスコントローラー (NIC) に対して SR-IOV サポートが有効になっている
  • 仮想 NIC の SR-IOV サポートが有効になっている
  • 仮想スイッチの SR-IOV サポートが有効になっている
  • NIC の VF (Virtual Function) は、仮想マシンに接続されている

この機能は現在、Microsoft Windows Server 2019 および 2016 でサポートされています。

(BZ#1348508)

RHEL 8 Hyper-V 仮想マシンで KVM 仮想化が利用可能になりました。

ネストされた KVM 仮想化は、テクノロジープレビューとして、Microsoft Hyper-V ハイパーバイザーで使用できるようになりました。これにより、Hyper-V ホストで実行している RHEL 8 ゲストシステムで仮想マシンを作成できます。

この機能は、現在 Intel システムでのみ有効です。また、ネストされた仮想化は、Hyper-V でデフォルトで有効になっていない場合があります。これを有効にするには、以下の Microsoft ドキュメントを参照してください。

https://docs.microsoft.com/en-us/virtualization/hyper-v-on-windows/user-guide/nested-virtualization

(BZ#1519039)

KVM 仮想マシンの AMD SEV。

テクノロジープレビューとして、RHEL 8 に、KVM ハイパーバイザーを使用する AMD EPYC ホストマシン用のセキュア暗号化仮想化 (SEV) 機能が同梱されます。仮想マシンで有効になっている場合は、ホストが仮想マシンのデータにアクセスできないように、SEV が仮想マシンメモリーを暗号化します。ホストがマルウェアに感染した場合は、これにより仮想マシンのセキュリティーが向上します。

1 台のホストでこの機能を同時に使用できる仮想マシンの数は、ホストのハードウェアによって決まります。現在の AMD EPYC プロセッサーは、SEV を使用して 15 台以下の稼働中の仮想マシンに対応します。

また、SEV が起動できるように設定された仮想マシンでは、ハードメモリー制限のある仮想マシンも設定する必要があります。これを行うには、仮想マシンの XML 設定に以下を追加します。

<memtune>
  <hard_limit unit='KiB'>N</hard_limit>
</memtune>

N に推奨される値は、ゲストの RAM + 256 MiB 以上になります。たとえば、ゲストに 2 GiB の RAM が割り当てられている場合、N は 2359296 以上になります。

(BZ#1501618, BZ#1501607, JIRA:RHELPLAN-7677)

Intel vGPU

テクノロジープレビューとして、物理 Intel GPU デバイスを、仲介デバイス と呼ばれる複数の仮想デバイスに分割できるようになりました。この仲介デバイスは、仮想 GPU として複数の仮想マシンに割り当てることができます。これにより、この仮想マシンが、1 つの物理 Intel GPU のパフォーマンスを共有します。

選択した Intel GPU のみが vGPU 機能と互換性があることに注意してください。また、物理 GPU を仮想マシンに割り当てると、ホストが GPU を使用できなくなるため、ホストのグラフィカルディスプレイ出力が機能しない可能性があります。

(BZ#1528684)

IBM POWER 9 でネストされた仮想化システムが利用可能に

テクノロジープレビューとして、IBM POWER 9 システムで稼働する RHEL 8 ホストマシンでネストされた仮想化機能を使用することが可能になりました。ネストされた仮想化により、KVM 仮想マシンをハイパーバイザーとして機能させることができます。これにより、仮想マシン内で仮想マシンを実行できます。

ネストされた仮想化は、AMD64 および Intel 64 のシステムで引き続きテクノロジープレビューとして利用できます。

また、ネストされた仮想環境では、IBM POWER 9、ホスト、ゲスト、ネストされたゲストのすべてで、以下のいずれかのオペレーティングシステムが実行している必要があります。

  • RHEL 8
  • RHEL 7 for POWER 9

(BZ#1505999, BZ#1518937)

入れ子仮想マシンの作成

入れ子仮想化はテクノロジープレビューとして、RHEL 8 の KVM 仮想マシンで利用できます。この機能を使用すると、物理ホストで実行される仮想マシンはハイパーバイザーとして動作し、独自の仮想マシンをホストできます。

入れ子仮想化は、AMD64 および Intel 64 アーキテクチャーでのみ利用でき、入れ子ホストは RHEL 7 または RHEL 8 仮想マシンである必要があります。

(JIRA:RHELPLAN-14047)

6.5.10. コンテナー

podman-machine コマンドはサポート対象外です。

仮想マシンを管理するための podman-machine コマンドは、テクノロジープレビューとしてのみ利用可能です。代わりに、コマンドラインから直接 Podman を実行してください。

(JIRA:RHELDOCS-16861)