Red Hat Training

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ソフトウェアのパッケージ化および配布

Red Hat Enterprise Linux 8

RPM パッケージ管理システムを使用したソフトウェアのパッケージ化

Red Hat Customer Content Services

概要

RPM パッケージマネージャーを使用して、ソフトウェアを RPM パッケージにパッケージ化します。パッケージ化用のソースコードを準備し、ソフトウェアをパッケージ化して、Python プロジェクトや RubyGems を RPM パッケージにパッケージ化するなど、高度なパッケージ化シナリオを調査します。

多様性を受け入れるオープンソースの強化

Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ を参照してください。

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第1章 RPM の概要

RPM Package Manager (RPM) は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)、CentOS、および Fedora で実行できるパッケージ管理システムです。RPM を使用すると、これらのオペレーティングシステム用に作成したソフトウェアを配布、管理、および更新できます。

RPM パッケージ管理システムには、従来のアーカイブファイルでソフトウェアを配布する場合と比べて、次のような利点があります。

  • RPM は、ソフトウェアを個別にインストール、更新、または削除できるパッケージの形式で管理されるため、オペレーティングシステムのメンテナンスが容易になります。
  • RPM パッケージは圧縮アーカイブと同様にスタンドアロンのバイナリーファイルであるため、RPM によりソフトウェアの配布が簡素化されます。これらのパッケージは、特定のオペレーティングシステムとハードウェアアーキテクチャー向けにビルドされています。RPM には、コンパイルされた実行可能ファイルやライブラリーなどのファイルが含まれています。これらのファイルは、パッケージのインストール時にファイルシステム上の適切なパスに配置されます。

RPM を使用すると、次のタスクを実行できます。

  • パッケージ化されたソフトウェアをインストール、アップグレード、削除する。
  • パッケージソフトウェアの詳細情報を問い合わせる。
  • パッケージ化されたソフトウェアの整合性を検証する。
  • ソフトウェアソースから独自のパッケージをビルドし、ビルド手順を完了する。
  • GNU Privacy Guard (GPG) ユーティリティーを使用して、パッケージにデジタル署名する。
  • パッケージを YUM リポジトリーに公開する。

Red Hat Enterprise Linux では、RPM は YUM や PackageKit などの上位レベルのパッケージ管理ソフトウェアに完全に統合されています。RPM には独自のコマンドラインインターフェイスが用意されていますが、ほとんどのユーザーはこのようなソフトウェアを通じて RPM を操作するだけで済みます。ただし、RPM パッケージをビルドする場合は、rpmbuild(8) などの RPM ユーティリティーを使用する必要があります。

1.1. RPM パッケージ

RPM パッケージは、ファイルのアーカイブと、これらのファイルのインストールと消去に使用されるメタデータで構成されます。具体的には、RPM パッケージには次の要素が含まれています。

  • GPG 署名

    GPG 署名は、パッケージの整合性を検証するために使用されます。

  • RPM ヘッダー (パッケージのメタデータ)

    RPM パッケージマネージャーは、このメタデータを使用して、パッケージの依存関係、ファイルのインストール先、その他の情報を確認します。

  • ペイロード

    ペイロードは、システムにインストールするファイルを含む cpio アーカイブです。

RPM パッケージには 2 つの種類があります。いずれも、同じファイル形式とツールを使用しますが、コンテンツが異なるため、目的が異なります。

  • ソース RPM (SRPM)

    SRPM には、ソースコードと SPEC ファイルが含まれます。これには、ソースコードをバイナリー RPM にビルドする方法が書かれています。必要に応じて、SRPM にはソースコードへのパッチを含めることができます。

  • バイナリー RPM

    バイナリー RPM には、ソースおよびパッチから構築されたバイナリーが含まれます。

1.2. RPM パッケージ化ユーティリティーのリスト

パッケージを構築するための rpmbuild(8) プログラムに加えて、RPM はパッケージの作成プロセスを容易にするその他のユーティリティーを提供します。これらのプログラムは rpmdevtools パッケージにあります。

前提条件

  • rpmdevtools パッケージがインストールされている。

    # yum install rpmdevtools

手順

  • RPM パッケージ化ユーティリティーをリスト表示するには、次のいずれかの方法を使用します。

    • rpmdevtools パッケージによって提供される特定のユーティリティーとその簡単な説明をリストするには、次のように入力します。

      $ rpm -qi rpmdevtools
    • すべてのユーティリティーをリストするには、次のように入力します。

      $ rpm -ql rpmdevtools | grep ^/usr/bin

関連情報

  • RPM ユーティリティーの man ページ

第2章 RPM パッケージ化を行うためのソフトウェアの作成

RPM パッケージ化用のソフトウェアを準備するには、ソースコードとは何か、およびソフトウェアの作成方法を理解する必要があります。

2.1. ソースコードとは

ソースコードとは、人間が判読できるコンピューターへの命令で、計算の実行方法を記述したものです。ソースコードは、プログラミング言語で書かれています。

3 つの異なるプログラミング言語で書かれた次のバージョンの Hello World プログラムにより、RPM パッケージマネージャーの主な使用例を説明します。

  • Bash で書かれた Hello World

    bello プロジェクトは、BashHello World を実装しています。この実装には bello シェルスクリプトのみが含まれています。このプログラムの目的は、コマンドラインで Hello World を出力することです。

    bello ファイルには次の内容が含まれています。

    #!/bin/bash
    
    printf "Hello World\n"
  • Python で書かれた Hello World

    pello プロジェクトは、PythonHello World を実装しています。この実装には pello.py プログラムのみが含まれています。このプログラムの目的は、コマンドラインで Hello World を出力することです。

    pello.py ファイルには次の内容が含まれています。

    #!/usr/bin/python3
    
    print("Hello World")
  • C で書かれた Hello World

    cello プロジェクトは、C で Hello World を実装しています。この実装には cello.cMakefile ファイルのみが含まれています。したがって、作成される tar.gz アーカイブには、LICENSE ファイルに加えて 2 つのファイルが含まれます。このプログラムの目的は、コマンドラインで Hello World を出力することです。

    cello.c ファイルには次の内容が含まれています。

    #include <stdio.h>
    
    int main(void) {
        printf("Hello World\n");
        return 0;
    }
注記

パッケージ化プロセスは、Hello World プログラムのバージョンごとに異なります。

2.2. ソフトウェアの作成方法

次のいずれかの方法を使用して、人間が判読できるソースコードをマシンコードに変換できます。

2.2.1. ネイティブにコンパイルされたソフトウェア

ネイティブにコンパイルされたソフトウェアは、生成されたバイナリーの実行ファイルでマシンコードにコンパイルされるプログラミング言語で書かれたソフトウェアです。ネイティブにコンパイルされたソフトウェアはスタンドアロンソフトウェアです。

注記

ネイティブにコンパイルされた RPM パッケージは、アーキテクチャー固有のパッケージです。

64 ビット (x86_64) AMD または Intel のプロセッサーを使用するコンピューターでこのようなソフトウェアをコンパイルすると、32 ビット (x86) AMD または Intel プロセッサーでは実行できません。生成されるパッケージには、名前でアーキテクチャーが指定されています。

2.2.2. インタープリター型ソフトウェア

BashPython などの一部のプログラミング言語は、マシンコードにコンパイルできません。代わりに、言語インタープリターまたは言語仮想マシンが、事前の変換を行わずにプログラムのソースコードを逐次実行します。

注記

インタープリター型のプログラミング言語でのみ書かれたソフトウェアは、アーキテクチャーに依存しません。そのため、作成される RPM パッケージの名前には noarch 文字列が付きます。

インタープリター言語で書かれたソフトウェアは、そのまま解釈することも、バイトコンパイルすることもできます。

  • そのまま解釈されるソフトウェア

    このタイプのソフトウェアをコンパイルする必要はありません。そのまま解釈されるソフトウェアは、インタープリターによって直接実行されます。

  • バイトコンパイルされるソフトウェア

    このタイプのソフトウェアはまずバイトコードにコンパイルする必要があり、その後言語仮想マシンによって実行されます。

    注記

    一部のバイトコンパイル言語は、そのまま解釈することも、バイトコンパイルすることもできます。

RPM を使用してソフトウェアをビルドおよびパッケージ化する方法は、これら 2 つのソフトウェアタイプで異なることに注意してください。

2.3. ソースからのソフトウェアのビルド

ソフトウェア構築プロセス中に、ソースコードは、RPM を使用してパッケージ化できるソフトウェアアーティファクトに変換されます。

2.3.1. ネイティブにコンパイルされたコードからのソフトウェアのビルド

次のいずれかの方法を使用して、コンパイル言語で書かれたソフトウェアを実行可能ファイルにビルドできます。

  • 手動ビルド
  • 自動ビルド

次のセクションでは、手動 または 自動 ビルドを使用して、C プログラミング言語で記述された Hello World プログラムをビルドする方法を説明します。

2.3.1.1. cello ソフトウェアの手動ビルド

手動ビルドを使用して、コンパイル言語で書かれたソフトウェアをビルドできます。

C で書かれた Hello World (cello.c) には次の内容が含まれています。

#include <stdio.h>

int main(void) {
    printf("Hello World\n");
    return 0;
}

手順

  1. GNU コンパイラーコレクション から C コンパイラーを起動し、ソースコードをバイナリーにコンパイルします。

    $ gcc -g -o cello cello.c
  2. 作成されたバイナリー cello を実行します。

    $ ./cello
    Hello World

2.3.1.2. cello プログラムの自動ビルドの設定

大規模なソフトウェアでは、自動ビルドが一般的に使用されます。Makefile ファイルを作成し、GNU make ユーティリティーを実行することで、自動ビルドを設定できます。

手順

  1. 次の内容を含む Makefile ファイルを cello.c と同じディレクトリーに作成します。

    cello:
    	gcc -g -o cello cello.c
    clean:
    	rm cello

    cello:clean: の下の行は、行頭にタブ文字 (タブ) を追加する必要があることに注意してください。

  2. ソフトウェアをビルドします。

    $ make
    make: 'cello' is up to date.
  3. ビルドが現在のディレクトリーですでに利用可能であるため、make clean コマンドを入力してから、make コマンドを再度入力します。

    $ make clean
    rm cello
    
    $ make
    gcc -g -o cello cello.c

    GNU make システムが既存のバイナリーを検出するため、この時点でプログラムを再度ビルドしても効果がないことに注意してください。

    $ make
    make: 'cello' is up to date.
  4. プログラムを実行します。

    $ ./cello
    Hello World

2.3.2. ソースコードの解釈

次のいずれかの方法を使用して、インタープリター型プログラミング言語で記述されたソースコードをマシンコードに変換できます。

  • バイトコンパイル

    ソフトウェアのバイトコンパイル手順は、次の要素によって異なります。

    • プログラミング言語
    • 言語の仮想マシン
    • その言語で使用するツールおよびプロセス

      注記

      たとえば Python で書かれたソフトウェアをバイトコンパイルできます。配布を目的とした Python ソフトウェアは多くの場合バイトコンパイルされますが、このドキュメントで説明されている方法では行われません。説明されている手順は、コミュニティー標準に準拠することではなく、簡素化することを目的としたものです。実際の Python ガイドラインは Software Packaging and Distribution を参照してください。

    Python ソースコードは、そのまま解釈することもできます。ただし、バイトコンパイルされたバージョンの方が高速です。したがって、RPM パッケージの作成者は、エンドユーザーに配布するために、バイトコンパイルされたバージョンをパッケージ化する傾向があります。

  • 直接解釈

    Bash などのシェルスクリプト言語で書かれたソフトウェアは、常に直接解釈によって実行されます。

次のセクションでは、Python で書かれた Hello World プログラムをバイトコンパイル する方法と、Bash で書かれた Hello World プログラムをそのまま解釈 する方法を説明します。

2.3.2.1. pello プログラムのバイトコンパイル

Python ソースコードの直接解釈ではなくバイトコンパイルを選択すると、より高速なソフトウェアを作成できます。

Python プログラミング言語 (pello.py) で記述された Hello World プログラムには、次の内容が含まれています。

print("Hello World")

手順

  1. pello.py ファイルをバイトコンパイルします。

    $ python -m compileall pello.py
  2. ファイルのバイトコンパイルされたバージョンが作成されたことを確認します。

    $ $ ls __pycache__
    pello.cpython-311.pyc

    出力内のパッケージのバージョンは、インストールされている Python のバージョンによって異なる場合があることに注意してください。

  3. pello.py でプログラムを実行します。

    $ python pello.py
    Hello World

2.3.2.2. bello プログラムの直接解釈

Bash シェルの組み込み言語 (bello) で記述された Hello World プログラムには、次の内容が含まれています。

#!/bin/bash

printf "Hello World\n"
注記

bello ファイルの先頭にある シバン (#!) 記号は、プログラミング言語のソースコードの一部ではありません。

シバン を使用して、テキストファイルを実行可能ファイルに変換します。システムのプログラムローダーが、シバン を含む行を解析してバイナリー実行可能ファイルへのパスを取得し、それがプログラミング言語インタープリターとして使用されます。

手順

  1. ソースコードを含むファイルを実行可能ファイルにします。

    $ chmod +x bello
  2. 作成したファイルを実行します。

    $ ./bello
    Hello World

第3章 RPM パッケージ化を行うためのソフトウェアの準備

次のセクションでは、RPM パッケージ化用のソフトウェアを準備する方法を説明します。

3.1. ソフトウェアへのパッチの適用

ソフトウェアをパッケージ化する場合、バグの修正や設定ファイルの変更など、元のソースコードに特定の変更を加えることが必要になる場合があります。RPM パッケージでは、元のソースコードをそのままにして、パッチを適用するだけで済みます。

パッチは、ソースコードファイルを更新するテキストです。パッチは 2 つのバージョンのテキストの差を示すものであるため、diff 形式を使用します。diff ユーティリティーを使用してパッチを作成し、patch ユーティリティーを使用してそのパッチをソースコードに適用できます。

注記

ソフトウェア開発者は多くの場合、Git などのバージョン管理システムを使用してコードベースを管理します。このようなツールでは、diff やパッチソフトウェアを独自の方法で作成できます。

次のセクションでは、C プログラミング言語で記述された Hello World プログラムのパッチを作成 する方法と、このプログラムにパッチを適用する する方法を説明します。

3.1.1. cello プログラムのパッチファイルの作成

diff ユーティリティーを使用して、元のソースコードからパッチを作成できます。

手順

  1. 元のソースコードを保持します。

    $ cp -p cello.c cello.c.orig

    -p オプションは、モード、所有権、およびタイムスタンプを保持します。

  2. 必要に応じて cello.c を変更します。

    #include <stdio.h>
    
    int main(void) {
        printf("Hello World from my very first patch!\n");
        return 0;
    }
  3. パッチを生成します。

    $ diff -Naur cello.c.orig cello.c
    --- cello.c.orig        2016-05-26 17:21:30.478523360 -0500
    + cello.c     2016-05-27 14:53:20.668588245 -0500
    @@ -1,6 +1,6 @@
     #include<stdio.h>
    
     int main(void){
    -    printf("Hello World!\n");
    +    printf("Hello World from my very first patch!\n");
         return 0;
     }
    \ No newline at end of file

    + で始まる行は、- で始まる行を置き換えます。

    注記

    diff コマンドには Naur オプションを指定することを推奨します。ほとんどのユースケースに適しているためです。

    • -N (--new-file)

      -N オプションは、存在しないファイルを空のファイルとして処理します。

    • -a (--text)

      -a オプションは、すべてのファイルをテキストとして扱います。その結果、diff ユーティリティーがバイナリーとして分類されたファイルを無視しなくなります。

    • -u (-U NUM または --unified[=NUM])

      -u オプションは、統一されたコンテキストの出力の NUM 行 (デフォルトは 3 行) の形式で出力を返します。これは、パッチファイルで一般的に使用される、コンパクトで読みやすい形式です。

    • -r (--recursive)

      -r オプションは、diff ユーティリティーが検出したサブディレクトリーを再帰的に比較します。

    ただし、この場合は、-u オプションのみが必要であることに注意してください。

  4. ファイルにパッチを保存します。

    $ diff -Naur cello.c.orig cello.c > cello.patch
  5. 元の cello.c を復元します。

    $ mv cello.c.orig cello.c

    RPM パッケージマネージャーは RPM パッケージをビルドするときに、変更されたファイルではなく元のファイルを使用するため、元の cello.c を保持する必要があります。詳細は、SPEC ファイルでの作業 を参照してください。

関連情報

  • diff(1) man ページ

3.1.2. cello プログラムへのパッチ適用

patch ユーティリティーを使用してソフトウェアにパッチを適用できます。

手順

  1. パッチファイルの出力先を patch コマンド変更します。

    $ patch < cello.patch
    patching file cello.c
  2. cello.c の内容に必要な変更が反映されていることを確認します。

    $ cat cello.c
    #include<stdio.h>
    
    int main(void){
        printf("Hello World from my very first patch!\n");
        return 1;
    }
  3. パッチを適用した cello.c プログラムをビルドします。

    $ make
    gcc -g -o cello cello.c
  4. ビルドした cello.c プログラムを実行します。

    $ ./cello
    Hello World from my very first patch!

3.2. LICENSE ファイルの作成

ソフトウェアライセンスファイルは、ソースコードで何ができるか、何ができないかをユーザーに通知するものです。

ソースコードに対するライセンスがないということは、そのコードに対するすべての権利を作成者が保持し、誰もソースコードから複製、配布、または派生著作物を作成できないことを意味します。

重要

作成したソフトウェア は、ソフトウェアライセンスを使用して配布することを推奨します。

手順

  • 必要なライセンスステートメントを含む LICENSE ファイルを作成します。

    $ vim LICENSE

例3.1 GPLv3 LICENSE ファイルのテキストの例

$ cat /tmp/LICENSE
This program is free software: you can redistribute it and/or modify it under the terms of the GNU General Public License as published by the Free Software Foundation, either version 3 of the License, or (at your option) any later version.

This program is distributed in the hope that it will be useful, but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU General Public License for more details.

You should have received a copy of the GNU General Public License along with this program. If not, see http://www.gnu.org/licenses/.

3.3. tarball へのソースコードの追加

tarball は、.tar.gz または .tgz の接尾辞が付いたアーカイブファイルです。tarball へのソースコードの追加は、後でパッケージ化して配布するソフトウェアをリリースする一般的な方法です。

次のセクションでは、3 つのバージョンの Hello World プログラムgzip で圧縮した tarball に追加する方法を説明します。

3.3.1. bello プログラムを tarball に追加する

bello プロジェクトは、BashHello World を実装しています。この実装には bello シェルスクリプトのみが含まれています。したがって、作成される tar.gz アーカイブには、LICENSE ファイルのほかにファイルが 1 つだけ含まれます。

前提条件

  • bello プログラムのバージョン 0.1 を使用する。

手順

  1. 必要なファイルをすべて 1 つのディレクトリーに追加します。

    $ mkdir bello-0.1
    
    $ mv ~/bello bello-0.1/
    
    $ mv LICENSE bello-0.1/
  2. 配布用のアーカイブを作成します。

    $ tar -cvzf bello-0.1.tar.gz bello-0.1
    bello-0.1/
    bello-0.1/LICENSE
    bello-0.1/bello
  3. 作成したアーカイブを ~/rpmbuild/SOURCES/ ディレクトリーに移動します。これは、rpmbuild コマンドがパッケージをビルドするためのファイルを保存するデフォルトのディレクトリーです。

    $ mv bello-0.1.tar.gz ~/rpmbuild/SOURCES/

3.3.2. pello プログラムを tarball に追加する

pello プロジェクトは、PythonHello World を実装しています。この実装には pello.py プログラムのみが含まれています。したがって、作成される tar.gz アーカイブには、LICENSE ファイルのほかにファイルが 1 つだけ含まれます。

前提条件

  • pello プログラムのバージョン 0.1.1 を使用する。

手順

  1. 必要なファイルをすべて 1 つのディレクトリーに追加します。

    $ mkdir pello-0.1.1
    
    $ mv pello.py pello-0.1.1/
    
    $ mv LICENSE pello-0.1.1/
  2. 配布用のアーカイブを作成します。

    $ tar -cvzf pello-0.1.1.tar.gz pello-0.1.1
    pello-0.1.1/
    pello-0.1.1/LICENSE
    pello-0.1.1/pello.py
  3. 作成したアーカイブを ~/rpmbuild/SOURCES/ ディレクトリーに移動します。これは、rpmbuild コマンドがパッケージをビルドするためのファイルを保存するデフォルトのディレクトリーです。

    $ mv pello-0.1.1.tar.gz ~/rpmbuild/SOURCES/

3.3.3. cello プログラムを tarball に追加する

cello プロジェクトは、C で Hello World を実装しています。この実装には cello.cMakefile ファイルのみが含まれています。したがって、作成される tar.gz アーカイブには、LICENSE ファイルに加えて 2 つのファイルが含まれます。

注記

patch ファイルは、プログラムとともにアーカイブで配布されません。RPM パッケージマネージャーは、RPM のビルド時にパッチを適用します。パッチは、tar.gz アーカイブとともに ~/rpmbuild/SOURCES/ ディレクトリーに配置されます。

前提条件

  • cello プログラムのバージョン 1.0 を使用する。

手順

  1. 必要なファイルをすべて 1 つのディレクトリーに追加します。

    $ mkdir cello-1.0
    
    $ mv cello.c cello-1.0/
    
    $ mv Makefile cello-1.0/
    
    $ mv LICENSE cello-1.0/
  2. 配布用のアーカイブを作成します。

    $ tar -cvzf cello-1.0.tar.gz cello-1.0
    cello-1.0/
    cello-1.0/Makefile
    cello-1.0/cello.c
    cello-1.0/LICENSE
  3. 作成したアーカイブを ~/rpmbuild/SOURCES/ ディレクトリーに移動します。これは、rpmbuild コマンドがパッケージをビルドするためのファイルを保存するデフォルトのディレクトリーです。

    $ mv /tmp/cello-1.0.tar.gz ~/rpmbuild/SOURCES/

第4章 ソフトウェアのパッケージ化

次のセクションでは、RPM パッケージマネージャーを使用したパッケージ化プロセスの基本を説明します。

4.1. RPM パッケージ化を行うためのワークスペースの設定

rpmdev-setuptree ユーティリティーを使用して、RPM のパッケージ化ワークスペースとなるディレクトリーレイアウトを設定できます。

前提条件

  • rpmdevtools パッケージをインストールしている。これにより、RPM をパッケージ化するためのユーティリティーがいくつか提供されます。

    # yum install rpmdevtools

手順

  • rpmdev-setuptree ユーティリティーを実行します。

    $ rpmdev-setuptree
    
    $ tree ~/rpmbuild/
    /home/user/rpmbuild/
    |-- BUILD
    |-- RPMS
    |-- SOURCES
    |-- SPECS
    `-- SRPMS
    
    5 directories, 0 files

作成されるディレクトリーの目的は、以下のとおりです。

ディレクトリー

目的

BUILD

パッケージを構築すると、ここにさまざまな %buildroot ディレクトリーが作成されます。これは、ログ出力で十分な情報を得られない場合に、失敗したビルドを調べるのに場合に便利です。

RPMS

バイナリー RPM は、さまざまなアーキテクチャーのサブディレクトリー (例: x86_64 および noarch) に作成されます。

SOURCES

ここでは、このパッケージャーは、圧縮したソースコードアーカイブとパッチを配置します。rpmbuild コマンドは、これらを検索します。

SPECS

パッケージャーは、SPEC ファイルをここに配置します。

SRPMS

rpmbuild を使用してバイナリー RPM の代わりに SRPM を構築すると、生成される SRPM がここに作成されます。

4.2. SPEC ファイルとは

SPEC ファイルには、RPM を構築するのに rpmbuild ユーティリティーが使用するレシピが含まれています。SPEC ファイルは、一連のセクションで命令を定義することで、ビルドシステムに必要な情報を提供します。このセクションは、PreambleBody で定義されます。Preamble では、Body に使用されている一連のメタデータ項目が含まれています。Body は、命令の主要部分を示しています。

次のセクションでは、SPEC ファイルの各セクションを説明します。

4.2.1. Preamble 項目

以下の表では、RPM SPEC ファイルの Preamble セクションで頻繁に使用されるディレクティブの一部を示しています。

表4.1 RPM SPEC ファイルの Preamble セクションで使用される項目

SPEC ディレクティブ定義

Name

SPEC ファイル名と一致する必要があるパッケージのベース名。

Version

ソフトウェアのアップストリームのバージョン番号。

Release

このバージョンのソフトウェアがリリースされた回数。通常、初期値は 1%{?dist} に設定し、パッケージの新規リリースごとに増加させます。新しい Version のソフトウェアを構築するときに、1 にリセットされます。

Summary

パッケージの 1 行の概要

License

パッケージ化しているソフトウェアのライセンス。

URL

プログラムに関する詳細情報の完全な URL。多くの場合、この URL は、パッケージ化しているソフトウェアのアップストリームプロジェクトの Web サイトです。

Source0

アップストリームのソースコードの圧縮アーカイブへのパスまたは URL (パッチを適用していないものや、パッチは別の場所で処理されます)。これは、たとえば、パッケージャーのローカルストレージではなく、アップストリームページなどのアーカイブの、アクセス可能で信頼できるストレージを参照している必要があります。必要に応じて、SourceX ディレクティブを追加して、たとえば、Source1、Source2、Source3 など、毎回数を増やすことができます。

Patch

必要に応じて、ソースコードに適用する最初のパッチの名前。

ディレクティブは、パッチの末尾に数字を付けて、または付けずに適用できます。

数値を指定しないと、内部的にエントリーに割り当てられます。Patch0、Patch1、Patch2、Patch3 などを使用して、明示的に数字を指定することもできます。

このパッチは、%patch0、%patch1、%patch2 といったマクロを使用して、1 つずつ適用できます。マクロは、RPM SPEC ファイルの Body セクションの %prep ディレクティブ内で適用されます。または、%autounconfined マクロを使用できます。これは、SPEC ファイルに指定されている順序ですべてのパッチを自動的に適用します。

BuildArch

パッケージがアーキテクチャーに依存していない場合は (たとえば、インタープリター型のプログラミング言語ですべて書かれた場合など)、これを BuildArch: noarch に設定します。設定しないと、パッケージは構築されるマシンのアーキテクチャー (x86_64 など) を自動的に継承します。

BuildRequires

コンパイル言語で書かれたプログラムを構築するのに必要なコンマ区切りまたは空白区切りのリスト。BuildRequires のエントリーは複数になる場合があります。各エントリーに対する行が、SPEC ファイル行に含まれます。

Requires

インストール後のソフトウェアの実行に必要なパッケージのコンマ区切りまたは空白区切りのリスト。Requires のエントリーは複数ある場合があります。これらは、SPEC ファイル行に独自の行を持ちます。

ExcludeArch

ソフトウェアの一部が特定のプロセッサーアーキテクチャーで動作しない場合には、そのアーキテクチャーを除外できます。

Conflicts

ConflictsRequires と逆の意味を持ちます。Conflicts に一致するパッケージが存在すると、すでにインストールされているパッケージに Conflict タグがあるか、インストールされるパッケージにある場合は、そのパッケージを独立してインストールすることができません。

Obsoletes

このディレクティブでは、rpm コマンドが直接コマンドラインで使用されるか、更新が更新または依存関係リゾルバーにより実行されるかによって、更新の方法が変更されます。コマンドラインで使用すると、RPM により、インストールしているパッケージに一致するすべての古いパッケージが削除されます。更新または依存関係リゾルバーを使用する場合は、一致する Obsoletes: を含むパッケージが更新として追加され、一致するパッケージを置き換えます。

Provides

Provides がパッケージに追加されると、名前以外の依存関係でパッケージを参照できます。

Name のディレクティブ、Version のディレクティブ、および Release のディレクティブは、RPM パッケージのファイル名から設定されます。RPM パッケージの担当者やシステム管理者は、これら 3 つのディレクティブを N-V-R または NVR と呼びます。これは、RPM パッケージのファイル名に NAME-VERSION-RELEASE 形式が含まれるためです。

以下の例は、rpm コマンドを実行して、特定のパッケージの NVR 情報を取得する方法を示しています。

例4.1 bash パッケージの NVR 情報を出力する rpm のクエリー

# rpm -q bash
bash-4.4.19-7.el8.x86_64

ここでは、bash がパッケージ名で、4.4.19 がバージョン番号を示し、7.el8 がリリースを意味しています。最後のマーカーの x86_64 は、アーキテクチャーを意味しています。NVR とは異なり、アーキテクチャーのマーカーは RPM パッケージャーで直接管理されていませんが、rpmbuild ビルド環境で定義されます。ただし、これはアーキテクチャーに依存しない noarch パッケージです。

4.2.2. Body 項目

RPM SPEC ファイルの Body section で使用される項目は次のとおりです。

表4.2 RPM SPEC ファイルの Body セクションで使用される項目

SPEC ディレクティブ定義

%description

RPM でパッケージ化されているソフトウェアの完全な説明。この説明は、複数の行や、複数の段落にまでわたることがあります。

%prep

Source0 でアーカイブをデプロイメントするなど、構築するソフトウェアを準備する単一または一連のコマンド。このディレクティブには、シェルスクリプトを含めることができます。

%build

ソフトウェアをマシンコード (コンパイル言語の場合) またはバイトコード (一部のインタープリター言語の場合) にビルドするための 1 つまたは一連のコマンド。

%install

%builddir (ビルドが行われた場所) から、パッケージ化するファイルのディレクトリー構造を含む %buildroot ディレクトリーに、希望のビルドアーティファクトをコピーする単一または一連のコマンド。これは通常、ファイルを ~/rpmbuild/BUILD から /rpmbuild/buildroot にコピーして、必要なディレクトリーを /rpmbuild/buildroot に作成することを意味します。これは、エンドユーザーがパッケージをインストールするときではなく、パッケージを作成する時にのみ実行されます。詳細は SPEC ファイルの使用 を参照してください。

%check

ソフトウェアをテストする単一または一連のコマンド。これには通常、ユニットテストなどが含まれます。

%files

エンドユーザーのシステムにインストールされるファイルのリスト。

%changelog

異なる Version または Release ビルド間でパッケージに行われた変更の記録。

4.2.3. 高度な項目

SPEC ファイルには、ScriptletsTriggers などの高度な項目を追加することもできます。

これは、ビルドプロセスではなく、エンドユーザーのシステムのインストールプロセスのさまざまな地点で有効になります。

4.3. BuildRoots

RPM のパッケージ化のコンテキストでは、buildroot が chroot 環境となります。ビルドアーティファクトは、エンドユーザーシステムの将来の階層と同じファイルシステム階層を使用してここに配置され、buildroot はルートディレクトリーとして機能します。ビルドアーティファクトの配置は、エンドユーザーシステムのファイルシステム階層の標準に準拠する必要があります。

buildroot のファイルは、後で dhcpd アーカイブに置かれ、RPM の主要部分になります。RPM がエンドユーザーのシステムにインストールされている場合、これらのファイルは root ディレクトリーに抽出され、階層が正しく保持されます。

注記

Red Hat Enterprise Linux 6 以降では、rpmbuild プログラムには独自のデフォルトが設定されています。これらのデフォルトをオーバーライドすると、いくつかの問題が発生します。したがって、このマクロの独自の値を定義することは推奨できません。%{buildroot} マクロは、rpmbuild ディレクトリーのデフォルトで使用できます。

4.4. RPM マクロ

rpm マクロ は、特定の組み込み機能が使用されている場合に、ステートメントのオプションの評価に基づいて、条件付きで割り当てられる直接的なテキスト置換です。したがって、RPM は、ユーザーに変わってテキストの置換を行うことができます。

使用例では、SPEC ファイルでパッケージ化されたソフトウェアの Version を複数回参照しています。%{version} マクロで 1 回だけ Version を定義し、SPEC ファイル全体でこのマクロを使用します。すべては、以前に定義した Version に自動的に置き換えられます。

注記

見たことのないマクロが表示されている場合は、次のコマンドを使用してマクロを評価できます。

$ rpm --eval %{_MACRO}

%{_bindir} マクロおよび %{_libexecdir} マクロの評価

$ rpm --eval %{_bindir}
/usr/bin

$ rpm --eval %{_libexecdir}
/usr/libexec

一般的に使用されるマクロの 1 つに %{?dist} マクロがあります。これは、ビルドに使用されるディストリビューション (ディストリビューションタグ) を示します。

# On a RHEL 8.x machine
$ rpm --eval %{?dist}
.el8

4.5. SPEC ファイルでの作業

新しいソフトウェアをパッケージ化するには、SPEC ファイルを作成する必要があります。

SPEC ファイルは次の方法で作成できます。

  • 新しい SPEC ファイルを最初から手動で作成します。
  • rpmdev-newspec ユーティリティーを使用します。

    このユーティリティーは、空の SPEC ファイルを作成します。このファイルに必要なディレクティブとフィールドを入力します。

注記

プログラマーに焦点を合わせたテキストエディターの中には、独自の SPEC テンプレートで新しい .spec ファイルを事前に準備しているものもあります。rpmdev-newspec ユーティリティーでは、エディターに依存しないアプローチを利用できます。

次のセクションでは、Hello World! プログラムの 3 つの実装例を使用します。

ソフトウェアの名前

例の説明

bello

raw インタープリタープログラミング言語で書かれたプログラム。ソースコードを構築する必要はなく、インストールのみが必要である場合を示しています。事前にコンパイル済みのバイナリーをパッケージ化する必要がある場合、バイナリーは単なるファイルであるため、この方法を使用することもできます。

pello

バイトコンパイルインタプリタ-プログラム言語で書かれたプログラム。ソースコードをバイトコンパイルし、バイトコード (生成される、事前に最適化されたファイル) をインストールする方法を示します。

cello

ネイティブコンパイル言語で書かれたプログラム。ソースコードをマシンコードにコンパイルし、生成される実行可能ファイルをインストールする一般的なプロセスを示します。

Hello World! の実装は次のとおりです。

前提条件として、これらの実装は、~/rpmbuild/SOURCES ディレクトリーに置く必要があります。

Hello World! プログラムの実装の詳細は、 ソースコードとは を参照してください。

次のセクションでは、SPEC ファイルの使用方法を説明します。

4.5.1. rpmdev-newspec を使用した新規 SPEC ファイルの作成

rpmdev-newspec ユーティリティーを使用して Hello World! の 3 つの実装それぞれに SPEC ファイルを作成するには、次の手順を実行します。

手順

  1. ~/rpmbuild/SPECS ディレクトリーに移動し、rpmdev-newspec ユーティリティーを使用します。

    $ cd ~/rpmbuild/SPECS
  2. Hello World! の 3 つの実装それぞれに SPEC ファイルを作成します。rpmdev-newspec ユーティリティーを使用してプログラムします。

    $ rpmdev-newspec bello
    bello.spec created; type minimal, rpm version >= 4.11.
    
    $ rpmdev-newspec cello
    cello.spec created; type minimal, rpm version >= 4.11.
    
    $ rpmdev-newspec pello
    pello.spec created; type minimal, rpm version >= 4.11.

    ~/rpmbuild/SPECS/ ディレクトリーに、bello.speccello.spec、および pello.spec という名前の 3 つの SPEC ファイルが追加されます。

  3. 作成されたファイルを調べます。

    ファイル内のディレクティブは、SPEC ファイルとは で説明されているディレクティブを表します。次のセクションでは、rpmdev -newspec の出力ファイルの特定のセクションを作成します。

注記

rpmdev-newspec ユーティリティーは、特定の Linux ディストリビューションに固有のガイドラインや規則を使用しません。ただし、このドキュメントは Red Hat Enterprise Linux を対象としているため、RPM の Buildroot を参照する際には $RPM_BUILD_ROOT 表記よりも %{buildroot} 表記を優先し、SPEC ファイル全体にわたり定義または指定されている他のすべてのマクロとの一貫性を確保しています。

4.5.2. RPM を作成するための元の SPEC ファイルの変更

RPM パッケージを作成するために rpmdev-newspec ユーティリティーによって提供される出力 SPEC ファイルを変更するには、次の手順を実行します。

前提条件

  • 特定のプログラムのソースコードが、~/rpmbuild/SOURCES/ ディレクトリーに置かれている。
  • 未入力の ~/rpmbuild/specs/<name>.spec SPEC ファイルを rpmdev-newspec ユーティリティーで作成している。

手順

  1. rpmdev-newspec ユーティリティーで生成される ~/rpmbuild/specs/<name>.spec ファイルの出力テンプレートを開きます。

    1. rpmdev-newspec によってグループ化された次のディレクティブを含む SPEC ファイルの最初のセクションを作成します。

      Name
      Name はすでに rpmdev-newspec の引数として指定されています。
      Version
      Version を、ソースコードのアップストリームのリリースバージョンと一致するように設定します。
      Release
      Release は、1%{?dist} に自動的に設定されます。最初は 1 となります。アップストリームリリースの Version を変更せずにパッケージを更新するとき (パッチを追加する場合など) は、必ず初期値を増やします。新しいアップストリームリリースが行われたら、Release1 にリセットします。
      Summary
      Summary は、ソフトウェアに関する 1 行の短い説明です。
    2. LicenseURL、および Source0 ディレクティブを入力します。

      License

      License フィールドは、アップストリームリリースのソースコードに関連するソフトウェアライセンスです。SPEC ファイルで License にラベルを付ける方法は、使用する RPM ベースの特定の Linux ディストリビューションガイドラインによって異なります。

      たとえば、GPLv3+ を使用できます。

      URL
      URL フィールドは、アップストリームのソフトウェア Web サイトへの URL を指定します。一貫性を保つために、%{name} の RPM マクロ変数を利用し、https://example.com/%{name} を使用します。
      Source
      Source0 フィールドは、アップストリームのソフトウェアソースコードへの URL を指定します。これは、パッケージ化している特定のバージョンのソフトウェアに直接リンクする必要があります。本ドキュメントの URL の例には、将来変更される可能性があるハードコーディングした値が含まれています。同様に、リリースのバージョンも変更される可能性があります。今後の変更を簡素化するには、%{name} マクロと %{version} マクロを使用します。これらを使用して、SPEC ファイルの 1 つのフィールドのみを更新する必要があります。
    3. BuildRequires ディレクティブ、Requires ディレクティブ、および BuildArch ディレクティブを入力します。

      BuildRequires
      BuildRequires は、パッケージのビルドタイム依存関係を指定します。
      Requires
      Requires は、パッケージのランタイム依存関係を指定します。
      BuildArch
      これは、ネイティブにコンパイルされた拡張機能がない、インタープリター型プログラミング言語で書かれたソフトウェアです。したがって、noarch 値とともに BuildArch ディレクティブを追加します。これは、このパッケージを構築するプロセッサーアーキテクチャーに制限する必要がないことを RPM に指定します。
    4. %description%prep%build%install%files%license ディレクティブを入力します。これらのディレクティブは、マルチライン、マルチインストラクション、または実行するスクリプト処理タスクを定義することができるため、セクションの見出しと考えることができます。

      %description
      %description は、Summary よりも長く詳細なソフトウェアの説明です。このディレクティブには 1 つ以上の段落を含めます。
      %prep
      % prep セクションでは、ビルド環境の準備方法を指定します。通常、これには、ソースコードの圧縮アーカイブのデプロイメント、パッチの適用、および SPEC ファイルの後半で使用するためにソースコードでによる情報の解析が含まれます。このセクションでは、ビルトインの % setup -q マクロを使用できます。
      %build
      %build セクション では、ソフトウェアを構築する方法を指定します。
      %install

      %install セクションには、ソフトウェアを構築してから BUILDROOT ディレクトリーにインストールする方法に関する rpmbuild の説明が記載されています。

      このディレクトリーは空の chroot ベースディレクトリーで、エンドユーザーの root ディレクトリーに似ています。ここでは、インストールしたファイルを格納するディレクトリーを作成できます。このようなディレクトリーを作成するには、パスをハードコードせずに RPM マクロを使用します。

      %files

      %files セクションは、この RPM によるファイルのリストと、エンドユーザーシステム上のファイルの完全なパス場所を指定します。

      このセクションでは、組み込みのマクロを使用して、さまざまなファイルのロールを示すことができます。これは、rpm コマンドを使用してパッケージファイルのマニフェストメタデータをクエリーする場合に便利です。たとえば、LICENSE ファイルがソフトウェアライセンスファイルであることを示すには、%license マクロを使用します。

    5. 最後のセクションの %changelog は、パッケージの各 Version-Release に対する日付入りのエントリーのリストです。これらは、ソフトウェアの変更ではなく、パッケージの変更を記録します。パッケージ変更の例: パッチの追加、%build セクションのビルド手順の変更。

      %changelog セクションの最初の行は * 文字で始まり、その後に Day-of-Week Month Day Year Name Surname <email> - Version-Release

      実際の変更エントリーについては、次のルールに従ってください。

      • 各変更エントリーには、変更ごとに複数の項目を含めることができます。
      • 各項目は新しい行で始まります。
      • 各項目は - 文字で始まります。

これで、必要なプログラム用に SPEC ファイル全体を作成できるようになりました。

4.5.3. bash で書かれたプログラム用の SPEC ファイルサンプル

以下に示す、bash で書かれた bello プログラムの SPEC ファイルの例を参考として使用できます。

bash で記載された bello の SPEC ファイルの例

Name:           bello
Version:        0.1
Release:        1%{?dist}
Summary:        Hello World example implemented in bash script

License:        GPLv3+
URL:            https://www.example.com/%{name}
Source0:        https://www.example.com/%{name}/releases/%{name}-%{version}.tar.gz

Requires:       bash

BuildArch:      noarch

%description
The long-tail description for our Hello World Example implemented in
bash script.

%prep
%setup -q

%build

%install

mkdir -p %{buildroot}/%{_bindir}

install -m 0755 %{name} %{buildroot}/%{_bindir}/%{name}

%files
%license LICENSE
%{_bindir}/%{name}

%changelog
* Tue May 31 2016 Adam Miller <maxamillion@fedoraproject.org> - 0.1-1
- First bello package
- Example second item in the changelog for version-release 0.1-1

  • bello のビルドステップがないため、パッケージのビルドタイム依存関係を指定する BuildRequires ディレクティブが削除されました。bash は、raw インタープリタープログラミング言語で、ファイルはシステム上のその場所にインストールされます。
  • パッケージのランタイム依存関係を指定する Requires ディレクティブは、bash のみを含めます。これは、bello スクリプトを実行するには bash シェル環境のみが必要なためです。
  • bash はビルド不要のため、ソフトウェアの構築方法を示す %build セクションは空白です。
注記

bello をインストールする場合は、インストール先のディレクトリーを作成し、そこに実行可能な bash スクリプトファイルをインストールする必要があります。したがって、%install セクションで install コマンドを使用できます。RPM マクロを使用すると、パスをハードコーディングせずにこれを行うことができます。

4.5.4. Python で書かれたプログラムの SPEC ファイルサンプル

以下に示す、Python プログラミング言語で書かれた pello プログラムの SPEC ファイルの例を参考として使用できます。

Python で書かれた pello プログラムの SPEC ファイルサンプル

Name:           pello
Version:        0.1.1
Release:        1%{?dist}
Summary:        Hello World example implemented in Python

License:        GPLv3+
URL:            https://www.example.com/%{name}
Source0:        https://www.example.com/%{name}/releases/%{name}-%{version}.tar.gz

BuildRequires:  python
Requires:       python
Requires:       bash

BuildArch:      noarch

%description
The long-tail description for our Hello World Example implemented in Python.

%prep
%setup -q

%build

python -m compileall %{name}.py

%install

mkdir -p %{buildroot}/%{_bindir}
mkdir -p %{buildroot}/usr/lib/%{name}

cat > %{buildroot}/%{_bindir}/%{name} <<EOF
#!/bin/bash
/usr/bin/python /usr/lib/%{name}/%{name}.pyc
EOF

chmod 0755 %{buildroot}/%{_bindir}/%{name}

install -m 0644 %{name}.py* %{buildroot}/usr/lib/%{name}/

%files
%license LICENSE
%dir /usr/lib/%{name}/
%{_bindir}/%{name}
/usr/lib/%{name}/%{name}.py*

%changelog
* Tue May 31 2016 Adam Miller <maxamillion@fedoraproject.org> - 0.1.1-1
  - First pello package

重要

pello バイトコンパイルインタープリター言語で書かれたプログラムです。したがって、生成されるファイルにはエントリーが含まれないため、シバンは使用しません。

シバンは使用しないため、以下のアプローチのいずれかを適用する必要があります。

  • 実行ファイルを呼び出す、バイトコンパイル以外のシェルスクリプトを作成します。
  • プログラムの実行にエントリーポイントとしてバイトコンパイルされない小規模の Python コードを提供します。

これらのアプローチは特に、事前にコンパイルされたコードのパフォーマンス向上が大きい、数千行ものコードを含む大規模ソフトウェアプロジェクトに便利です。

  • Requires ディレクティブ (パッケージにランタイム依存関係を指定) には、以下の 2 つのパッケージが含まれます。

    • 実行時にバイトコンパイルコードを実行するには、python パッケージが必要です。
    • 小規模なエントリーポイントスクリプトを実行するには、bash パッケージが必要。
  • BuildRequires ディレクティブは、パッケージのビルド時の依存関係を指定し、python パッケージのみを含みます。pello プログラムでは、バイトコンパイルビルドプロセスを実行するために、python パッケージが必要です。
  • %build セクションは、ソフトウェアを構築する方法を指定します。つまり、ソフトウェアがバイトコンパイルされるということになります。

pello をインストールするには、ラッパースクリプトを作成する必要があります。これは、シバンがバイトコンパイル言語で該当しないためです。このスクリプトは、次のいずれかの方法で作成できます。

  • 個別のスクリプトを作成し、それを個別の SourceX ディレクティブとして使用します。
  • SPEC ファイルにファイルをインラインで作成します。

この例では、SPEC ファイルにラッパースクリプトのインラインを作成し、SPEC ファイル自体がスクリプト可能であるこを示しています。このラッパースクリプトは、こちら のドキュメントを使用して Python バイトコンパイルコードを実行します。

この例の %install セクションは、アクセスできるように、バイトコンパイルファイルをシステム上のライブラリーディレクトリーにインストールする必要があるという事実に一致します。

4.5.5. C で書かれたプログラムの SPEC ファイルサンプル

以下に示す、C プログラミング言語で書かれた cello プログラムの SPEC ファイルの例を参考として使用できます。

C 言語で書かれた cello の SPEC ファイルの例

Name:           cello
Version:        1.0
Release:        1%{?dist}
Summary:        Hello World example implemented in C

License:        GPLv3+
URL:            https://www.example.com/%{name}
Source0:        https://www.example.com/%{name}/releases/%{name}-%{version}.tar.gz

Patch0:         cello-output-first-patch.patch

BuildRequires:  gcc
BuildRequires:  make

%description
The long-tail description for our Hello World Example implemented in
C.

%prep
%setup -q

%patch0

%build
make %{?_smp_mflags}

%install
%make_install

%files
%license LICENSE
%{_bindir}/%{name}

%changelog
* Tue May 31 2016 Adam Miller <maxamillion@fedoraproject.org> - 1.0-1
- First cello package

  • パッケージのビルド時依存関係を指定する BuildRequires ディレクティブには、コンパイルビルドプロセスを実行するために必要な 2 つのパッケージが含まれます。

    • gcc パッケージ
    • make パッケージ
  • この例では、パッケージにランタイム依存関係を指定する Requires ディレクティブは省略されています。すべてのランタイム要件は rpmbuild により処理されます。cello プログラムはコア C 標準ライブラリー以外のものは必要としません。
  • %build セクションは、この例では cello プログラムの Makefile が作成されたという事実を反映しています。そのため、rpmdev-newspec ユーティリティーによって提供される GNU make コマンドを使用できます。ただし、設定スクリプトを指定していないため、%configure に対する呼び出しを削除する必要があります。

cello プログラムは、rpmdev-newspec コマンドで提供される %make_install マクロを使用してインストールできます。これは、cello プログラムの Makefile が利用できるため可能です。

4.6. RPM のビルド

rpmbuild コマンドを使用して RPM パッケージをビルドできます。このコマンドは、特定のディレクトリーと rpmdev -setuptree ユーティリティーで設定された構造と同じファイル構造を想定します。

rpmbuild コマンドでは、ユースケースや期待する結果によって組み合わせる引数が異なります。主なユースケースは以下の 2 つです。

  • ソース RPM のビルド
  • バイナリー RPM のビルド

    • ソース RPM からのバイナリー RPM の再ビルド
    • SPEC ファイルからのバイナリー RPM のビルド
    • ソース RPM からのバイナリー RPM のビルド

次のセクションでは、プログラムの SPEC ファイルを作成した後に RPM をビルドする方法を説明します。

4.6.1. ソース RPM のビルド

ソース RPM をビルドするには、次の手順を実行します。

前提条件

  • パッケージ化するプログラムの SPEC ファイルがすでにある。

手順

  • 指定の SPEC ファイルを使用して rpmbuild コマンドを実行します。

    $ rpmbuild -bs specfile

    specfile は、SPEC ファイルの名前に置き換えます。-bs オプションは、ビルドソースを表します。

検証手順

  • rpmbuild/SRPMS ディレクトリーに、生成されたソース RPM が含まれていることを確認します。ディレクトリーは、rpmbuild で必要な構造の一部です。

例4.2 bello、pello、および cello のソース RPM のビルド。

以下は、bellopello、および cello プロジェクトのソース RPM をビルドする例です。

  1. ~/rpmbuild/SPECS/ ディレクティブに移動します。このディレクティブには、作成した SPEC ファイルが含まれています。

    $ cd ~/rpmbuild/SPECS/
  2. 指定の SPEC ファイルを使用して rpmbuild コマンドを実行します。

    $ rpmbuild -bs bello.spec
    Wrote: /home/admiller/rpmbuild/SRPMS/bello-0.1-1.el8.src.rpm
    
    $ rpmbuild -bs pello.spec
    Wrote: /home/admiller/rpmbuild/SRPMS/pello-0.1.2-1.el8.src.rpm
    
    $ rpmbuild -bs cello.spec
    Wrote: /home/admiller/rpmbuild/SRPMS/cello-1.0-1.el8.src.rpm

4.6.2. ソース RPM からのバイナリー RPM の再ビルド

ソース RPM (SRPM) からバイナリー RPM を再ビルドするには、次の手順を実行します。

手順

  • bellopello、および cello を SRPM から再ビルドするには、次を実行します。

    $ rpmbuild --rebuild ~/rpmbuild/SRPMS/bello-0.1-1.el8.src.rpm
    [output truncated]
    
    $ rpmbuild --rebuild ~/rpmbuild/SRPMS/pello-0.1.2-1.el8.src.rpm
    [output truncated]
    
    $ rpmbuild --rebuild ~/rpmbuild/SRPMS/cello-1.0-1.el8.src.rpm
    [output truncated]
注記

rpmbuild --rebuild の呼び出しには以下が含まれます。

  • SRPM の内容 (SPEC ファイルおよびソースコード) を ~/rpmbuild/ ディレクトリーにインストールします。
  • インストールされたコンテンツを使用して RPM をビルドします。
  • SPEC ファイルとソースコードを削除します。

ビルド後に SPEC ファイルとソースコードを保持するには、次のいずれかの手順を実行します。

  • RPM をビルドするときは、--rebuild オプションの代わりに --recompile オプションを指定して rpmbuild コマンドを使用します。
  • bellopello、および cello の SRPM をインストールします。

    $ rpm -Uvh ~/rpmbuild/SRPMS/bello-0.1-1.el8.src.rpm
    Updating / installing…​
       1:bello-0.1-1.el8               [100%]
    
    $ rpm -Uvh ~/rpmbuild/SRPMS/pello-0.1.2-1.el8.src.rpm
    Updating / installing…​
    …​1:pello-0.1.2-1.el8              [100%]
    
    $ rpm -Uvh ~/rpmbuild/SRPMS/cello-1.0-1.el8.src.rpm
    Updating / installing…​
    …​1:cello-1.0-1.el8            [100%]

バイナリー RPM の作成時に生成される出力は詳細なもので、これはデバッグに役立ちます。この出力は各種例によって異なり、SPEC ファイルに一致します。

生成されるバイナリー RPM は 、~/rpmbuild/RPMS/YOURARCH ディレクトリー (YOURARCH はアーキテクチャー) に配置されます。パッケージがアーキテクチャー固有でない場合は ~/rpmbuild/RPMS/noarch/ ディレクトリーに配置されます。

4.6.3. SPEC ファイルからのバイナリー RPM のビルド

bellopello、および cello バイナリー RPM を SPEC ファイルからビルドするには、次の手順を実行します。

手順

  • bb オプションを指定して、rpmbuild コマンドを実行します。

    $ rpmbuild -bb ~/rpmbuild/SPECS/bello.spec
    
    $ rpmbuild -bb ~/rpmbuild/SPECS/pello.spec
    
    $ rpmbuild -bb ~/rpmbuild/SPECS/cello.spec

4.6.4. ソース RPM からのバイナリー RPM のビルド

ソース RPM から任意の種類の RPM をビルドします。これを行うには、次の手順を実行します。

手順

  • 次のいずれかのオプションとソースパッケージを指定して、rpmbuild コマンドを実行します。

    # rpmbuild {-ra|-rb|-rp|-rc|-ri|-rl|-rs} [rpmbuild-options] source-package

    source-package は、ソース RPM の名前に置き換えます。

関連情報

  • rpmbuild(8) man ページ

4.7. RPM のサニティーチェック

パッケージを作成した後、パッケージの品質をチェックする必要があります。

パッケージの品質をチェックするための主なツールは rpmlint です。

rpmlint ツールは、以下のことを行います。

  • RPM の保守性の向上。
  • RPM の静的な分析の実行によるサニティーチェック。
  • RPM の静的な分析の実行による、エラーチェック。

rpmlint ツールは、バイナリー RPM、ソース RPM (SRPM)、および SPEC ファイルをチェックできます。したがって、このツールはパッケージ化のすべての段階で役立ちます。

rpmlint のガイドラインは厳密なものです。したがって、次の例に示すように、エラーや警告の一部をスキップしてもよい場合があります。

注記

以下のセクションで説明する例では、rpmlint にオプションを指定せずに実行しており、詳細な出力が得られません。各エラーまたは警告の詳細な説明は、代わりに rpmlint -i を実行してください。

4.7.1. bello のサニティーチェック

次のセクションでは、bello SPEC ファイルと bello バイナリー RPM を例に、RPM のサニティーチェックを行うときに発生する可能性のある警告とエラーを調べます。

4.7.1.1. bello SPEC ファイルのサニティーチェック

次の例の出力を調べて、bello SPEC ファイルのサニティーチェックを行う方法を確認してください。

例4.3 bello の SPEC ファイルでの rpmlint コマンド実行の出力

以下は、bello SPEC ファイルに対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint bello.spec
bello.spec: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/bello/releases/bello-0.1.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
0 packages and 1 specfiles checked; 0 errors, 1 warnings.

bello.spec については、警告が 1 つだけあります。invalid-url Source0という警告は、Source0 ディレクティブにリストされている URL に到達できないことを意味します。example.com URL は存在しないため、この出力は当然です。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。

例4.4 bello の SRPM で rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、bello ソース RPM (SRPM) に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/SRPMS/bello-0.1-1.el8.src.rpm
bello.src: W: invalid-url URL: https://www.example.com/bello HTTP Error 404: Not Found
bello.src: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/bello/releases/bello-0.1.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
1 packages and 0 specfiles checked; 0 errors, 2 warnings.

bello SRPM については、invalid-url URL という新しい警告があります。この警告は、URL ディレクティブで指定された URL に到達できないことを意味します。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。

4.7.1.2. bello バイナリー RPM のサニティーチェック

バイナリー RPM をチェックする場合、rpmlint コマンドは次の項目をチェックします。

  • ドキュメント
  • man ページ
  • ファイルシステム階層規格の一貫した使用

次の例の出力を調べて、bello バイナリー RPM のサニティーチェックを行う方法を確認してください。

例4.5 bello のバイナリー RPM での rpmlint コマンドの実行の出力

以下は、bello バイナリー RPM に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/RPMS/noarch/bello-0.1-1.el8.noarch.rpm
bello.noarch: W: invalid-url URL: https://www.example.com/bello HTTP Error 404: Not Found
bello.noarch: W: no-documentation
bello.noarch: W: no-manual-page-for-binary bello
1 packages and 0 specfiles checked; 0 errors, 3 warnings.

no-documentation および no-manual-page-for-binary という警告は、ユーザーがドキュメントや man ページを提供しなかったため、RPM にドキュメントや man ページがないことを意味します。出力の警告を別にすれば、RPM は rpmlint チェックに合格しています。

4.7.2. pello のサニティーチェック

次のセクションでは、pello SPEC ファイルと pello バイナリー RPM を例に、RPM のサニティーチェックを行うときに発生する可能性のある警告とエラーを調べます。

4.7.2.1. pello SPEC ファイルのサニティーチェック

次の例の出力を調べて、pello SPEC ファイルのサニティーチェックを行う方法を確認してください。

例4.6 pello の SPEC ファイルで rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、pello SPEC ファイルに対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint pello.spec
pello.spec:30: E: hardcoded-library-path in %{buildroot}/usr/lib/%{name}
pello.spec:34: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/%{name}.pyc
pello.spec:39: E: hardcoded-library-path in %{buildroot}/usr/lib/%{name}/
pello.spec:43: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/
pello.spec:45: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/%{name}.py*
pello.spec: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/pello/releases/pello-0.1.2.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
0 packages and 1 specfiles checked; 5 errors, 1 warnings.
  • invalid-url Source0という警告は、Source0 ディレクティブにリストされている URL に到達できないことを意味します。example.com URL は存在しないため、この出力は当然です。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。
  • hardcoded-library-path というエラーは、ライブラリーパスをハードコーディングする代わりに %{_libdir} マクロを使用することを提案しています。この例では、これらのエラーは無視しても問題はありません。ただし、実稼働環境に導入するパッケージの場合は、すべてのエラーを慎重に確認してください。

例4.7 pello の SRPM で rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、pello ソース RPM (SRPM) に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/SRPMS/pello-0.1.2-1.el8.src.rpm
pello.src: W: invalid-url URL: https://www.example.com/pello HTTP Error 404: Not Found
pello.src:30: E: hardcoded-library-path in %{buildroot}/usr/lib/%{name}
pello.src:34: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/%{name}.pyc
pello.src:39: E: hardcoded-library-path in %{buildroot}/usr/lib/%{name}/
pello.src:43: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/
pello.src:45: E: hardcoded-library-path in /usr/lib/%{name}/%{name}.py*
pello.src: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/pello/releases/pello-0.1.2.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
1 packages and 0 specfiles checked; 5 errors, 2 warnings.

invalid-url URL エラーは、到達不能な URL ディレクティブに関するものです。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。

4.7.2.2. pello バイナリー RPM のサニティーチェック

バイナリー RPM をチェックする場合、rpmlint コマンドは次の項目をチェックします。

  • ドキュメント
  • man ページ
  • ファイルシステム階層規格の一貫した使用

次の例の出力を調べて、pello バイナリー RPM のサニティーチェックを行う方法を確認してください。

例4.8 pello のバイナリー RPM での rpmlint コマンドの実行の出力

以下は、pello バイナリー RPM に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/RPMS/noarch/pello-0.1.2-1.el8.noarch.rpm
pello.noarch: W: invalid-url URL: https://www.example.com/pello HTTP Error 404: Not Found
pello.noarch: W: only-non-binary-in-usr-lib
pello.noarch: W: no-documentation
pello.noarch: E: non-executable-script /usr/lib/pello/pello.py 0644L /usr/bin/env
pello.noarch: W: no-manual-page-for-binary pello
1 packages and 0 specfiles checked; 1 errors, 4 warnings.
  • no-documentation および no-manual-page-for-binary という警告は、ユーザーがドキュメントや man ページを提供しなかったため、RPM にドキュメントや man ページがないことを意味します。
  • Only-non-binary-in-usr-lib という警告は、/usr/lib/ ディレクトリーにバイナリーでないアーティファクトしかないことを意味します。このディレクトリーは通常、バイナリーファイルである共有オブジェクトファイル用に予約されています。したがって、rpmlint は、/usr/lib/ 内の少なくとも 1 つ以上のファイルがバイナリーであることを想定します。

    これは、ファイルシステム階層規格への準拠についての rpmlint チェック例です。通常、ファイルを正しく配置するには RPM マクロを使用します。この例では、この警告は無視しても問題はありません。

  • non-executable-script というエラーは、/usr/lib/pello/pello.py ファイルに実行権限がないことを意味します。ファイルにシバンが含まれているため、rpmlint ツールは、ファイルが実行ファイルであること想定します。この例では、このファイルは実行権限なしのままにし、このエラーを無視します。

出力の警告とエラーを別にすれば、RPM は rpmlint チェックに合格しています。

4.7.3. cello のサニティーチェック

次のセクションでは、cello SPEC ファイルと cello バイナリー RPM を例に、RPM のサニティーチェックを行うときに発生する可能性のある警告とエラーを調べます。

4.7.3.1. cello SPEC ファイルのサニティーチェック

次の例の出力を調べて、cello SPEC ファイルのサニティーチェックを行う方法を確認します。

例4.9 cello の SPEC で rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、cello SPEC ファイルに対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/SPECS/cello.spec
/home/admiller/rpmbuild/SPECS/cello.spec: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/cello/releases/cello-1.0.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
0 packages and 1 specfiles checked; 0 errors, 1 warnings.

cello.spec については、警告が 1 つだけあります。invalid-url Source0という警告は、Source0 ディレクティブにリストされている URL に到達できないことを意味します。example.com URL は存在しないため、この出力は当然です。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。

例4.10 cello の SRPM で rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、cello ソース RPM (SRPM) に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/SRPMS/cello-1.0-1.el8.src.rpm
cello.src: W: invalid-url URL: https://www.example.com/cello HTTP Error 404: Not Found
cello.src: W: invalid-url Source0: https://www.example.com/cello/releases/cello-1.0.tar.gz HTTP Error 404: Not Found
1 packages and 0 specfiles checked; 0 errors, 2 warnings.

cello SRPM については、invalid-url URL という新しい警告があります。この警告は、URL ディレクティブで指定された URL に到達できないことを意味します。この URL が今後有効になると仮定して、この警告を無視します。

4.7.3.2. cello バイナリー RPM のサニティーチェック

バイナリー RPM をチェックする場合、rpmlint コマンドは次の項目をチェックします。

  • ドキュメント
  • man ページ
  • ファイルシステム階層規格の一貫した使用

次の例の出力を調べて、cello バイナリー RPM のサニティーチェックを行う方法を確認してください。

例4.11 cello のバイナリー RPM で rpmlint コマンドを実行した場合の出力

以下は、cello バイナリー RPM に対して実行した rpmlint コマンドの出力例です。

$ rpmlint ~/rpmbuild/RPMS/x86_64/cello-1.0-1.el8.x86_64.rpm
cello.x86_64: W: invalid-url URL: https://www.example.com/cello HTTP Error 404: Not Found
cello.x86_64: W: no-documentation
cello.x86_64: W: no-manual-page-for-binary cello
1 packages and 0 specfiles checked; 0 errors, 3 warnings.

no-documentation および no-manual-page-for-binary という警告は、ユーザーがドキュメントや man ページを提供しなかったため、RPM にドキュメントや man ページがないことを意味します。

出力の警告を別にすれば、RPM は rpmlint チェックに合格しています。

4.8. RPM アクティビティーの syslog へのロギング

RPM アクティビティーまたはトランザクションはすべて、システムロギングプロトコル (syslog) によりログに記録できます。

前提条件

  • syslog プラグインがシステムにインストールされている。

    # yum install rpm-plugin-syslog
    注記

    syslog メッセージのデフォルトの場所は /var/log/messages ファイルです。ただし、別の場所を使用してメッセージを格納するように syslog を設定できます。

RPM アクティビティーの更新を確認するには、次の手順を実行します。

手順

  1. syslog メッセージを保存するように設定したファイルを開くか、デフォルトの syslog 設定を使用する場合は、/var/log/messages ファイルを開きます。
  2. [RPM] 文字列を含む新しい行を検索します。

4.9. RPM コンテンツの抽出

特定の状況 (RPM に必要なパッケージが破損している場合など) では、パッケージの内容を抽出する必要があります。この場合、RPM インストールが破損しているにもかかわらず機能している場合は、rpm2archive ユーティリティーを使用して、.rpm ファイルを tar アーカイブに変換し、パッケージのコンテンツを使用できます。

注記

RPM インストールが著しく破損している場合は、rpm2cpio ユーティリティーを使用して RPM パッケージファイルを cpio アーカイブに変換できます。

rpm2archive ユーティリティーを使用して RPM ペイロードを tar アーカイブに変換するには、次の手順を実行します。

手順

  • RPM ファイルに対して rpm2archive コマンドを実行します。

    $ rpm2archive filename.rpm

    filename を、.rpm ファイルの名前に置き換えます。

    作成されたファイルには .tgz 接尾辞が付きます。たとえば、bash パッケージのアーカイブを作成するには、次のコマンドを実行します。

    $ rpm2archive bash-4.4.19-6.el8.x86_64.rpm
    $ bash-4.4.19-6.el8.x86_64.rpm.tgz
    bash-4.4.19-6.el8.x86_64.rpm.tgz

第5章 高度なトピック

本セクションでは、入門的なチュートリアルの範囲外のトピックについて説明しますが、実際の RPM パッケージ化で役に立ちます。

5.1. RPM パッケージへの署名

RPM パッケージに署名して、第三者がコンテンツを変更できないようにすることができます。セキュリティーのレイヤーを追加するには、パッケージをダウンロードするときに HTTPS プロトコルを使用します。

rpm-sign パッケージで提供される --addsign オプションを使用して、パッケージに署名できます。

前提条件

  • GPG キーの作成 の説明に従って、GNU Privacy Guard (GPG) キーを作成しました。

5.1.1. GPG キーの作成

パッケージの署名に必要な GNU Privacy Guard (GPG) キーを作成するには、次の手順を使用します。

手順

  1. GPG キーペアを生成します。

    # gpg --gen-key
  2. 生成されたキーペアを確認します。

    # gpg --list-keys
  3. 公開鍵をエクスポートします。

    # gpg --export -a '<Key_name>' > RPM-GPG-KEY-pmanager

    <Key_name> を、選択した実際の鍵の名前に置き換えます。

  4. エクスポートした公開鍵を RPM データベースにインポートします。

    # rpm --import RPM-GPG-KEY-pmanager

5.1.2. パッケージに署名するための RPM の設定

パッケージに署名するには、%_gpg_name RPM マクロを指定する必要があります。

以下の手順では、パッケージの署名に使用する RPM を設定する方法を説明します。

手順

  • $HOME/.rpmmacros%_gpg_name を定義するには、以下のコマンドを実行します。

    %_gpg_name Key ID

    Key ID を、パッケージの署名に使用する GNU Privacy Guard (GPG) キー ID に置き換えます。有効な GPG キー ID の値は、鍵を作成したユーザーの氏名またはメールアドレスです。

5.1.3. RPM パッケージへの署名の追加

一般的に、パッケージは署名なしでビルドされます。署名はパッケージのリリース直前に追加されます。

RPM パッケージに署名を追加するには、rpm -sign パッケージで使用できる --addsign を指定します。

手順

  • パッケージに署名を追加します。

    $ rpm --addsign package-name.rpm

    package-name を、署名する RPM パッケージの名前に置き換えます。

    注記

    署名の秘密鍵のロックを解除するには、パスワードを入力する必要があります。

5.2. マクロの詳細

本セクションでは、選択したビルトイン RPM マクロについて説明します。そのようなマクロの完全なリストは、RPM ドキュメンテーション を参照してください。

5.2.1. 独自のマクロの定義する

次のセクションでは、カスタムマクロの作成方法を説明します。

手順

  • RPM SPEC ファイルに以下の行を含めます。

    %global <name>[(opts)] <body>

<body> の周りの空白すべてが削除されます。名前は英数字と _ で設定できます。最低でも 3 文字で指定する必要があります。(opts) フィールドの指定は任意です。

  • Simple マクロには、(opts) フィールドは含まれません。この場合、再帰的なマクロ拡張のみが実行されます。
  • Parametrized マクロには、(opts) フィールドが含まれます。括弧で囲まれている opts 文字列は、マクロ呼び出しの開始時に argc/argv 処理の getopt (3) に渡されます。
注記

古い RPM SPEC ファイルは、代わりに % define <name> <body> マクロパターンを使用します。%define マクロと %global マクロの違いは次のとおりです。

  • %define にはローカルスコープがあります。これは、SPEC ファイルの特定の部分に適用されます。使用時に、%define マクロの本文が展開されます。
  • %global にはグローバルスコープがあります。これは SPEC ファイル全体に適用されます。%global マクロの本文は、定義時に展開されます。
重要

マクロは、コメントアウトされた場合でも、マクロ名が SPEC ファイルの %changelog に指定されている場合でも評価されます。マクロをコメントアウトするには %% を使用します。例: %%global

関連情報

5.2.2. %setup マクロの使用

このセクションでは、%setup マクロの異なるバリアントを使用して、ソースコード tarball でパッケージを構築する方法を説明します。マクロバリアントは組み合わせることができることに注意してください。rpmbuild の出力は、%setup マクロにおける標準的な挙動を示しています。各フェーズの開始時に、マクロは以下の例のように Executing(%…​) を出力します。

例5.1 %setup マクロの出力例

Executing(%prep): /bin/sh -e /var/tmp/rpm-tmp.DhddsG

シェルの出力は、set -x enabled で設定されます。/var/tmp/rpm-tmp.DhddsG の内容を表示するには、--debug オプションを指定します。これは、rpmbuild により、ビルドの作成後に一時ファイルが削除されるためです。環境変数の設定の後に、以下のような設定が表示されます。

cd '/builddir/build/BUILD'
rm -rf 'cello-1.0'
/usr/bin/gzip -dc '/builddir/build/SOURCES/cello-1.0.tar.gz' | /usr/bin/tar -xof -
STATUS=$?
if [ $STATUS -ne 0 ]; then
  exit $STATUS
fi
cd 'cello-1.0'
/usr/bin/chmod -Rf a+rX,u+w,g-w,o-w .

%setup マクロ:

  • 正しいディレクトリーで作業していることを確認します。
  • 以前のビルドで残ったファイルを削除します。
  • ソース tarball をデプロイメントします。
  • 一部のデフォルト権限を設定します。

5.2.2.1. %setup -q マクロの使用

-q オプションでは、%setup マクロの冗長性が制限されます。tar -xvof の代わりに tar -xof のみが実行されます。このオプションは、最初のオプションとして使用します。

5.2.2.2. %setup -n マクロの使用

- n オプションは、拡張 tarball からディレクトリー名を指定します。

展開した tarball のディレクトリーの名前が、想定される名前 (%{name}-%{version} と異なる場合に、これを使用すると、%setup マクロのエラーが発生することがあります。

たとえば、パッケージ名が cello で、ソースコードが hello-1.0.tgz でアーカイブされ、hello/ ディレクトリーが含まれている場合、SPEC ファイルのコンテンツは次のようになります。

Name: cello
Source0: https://example.com/%{name}/release/hello-%{version}.tar.gz
…
%prep
%setup -n hello

5.2.2.3. %setup -c マクロの使用

-c オプションは、ソースコード tarball にサブディレクトリーが含まれておらず、デプロイメント後に、アーカイブのファイルで現在のディレクトリーを埋める場合に使用されます。

次に、-c オプションによりディレクトリーが作成され、以下のようにアーカイブデプロイメント手順に映ります。

/usr/bin/mkdir -p cello-1.0
cd 'cello-1.0'

このディレクトリーは、アーカイブ拡張後も変更されません。

5.2.2.4. %setup -D マクロおよび %setup -T マクロの使用

- D オプションは、ソースコードのディレクトリーの削除を無効するため、%setup マクロを複数回使用する場合に特に便利です。-D オプションでは、次の行は使用されません。

rm -rf 'cello-1.0'

- T オプションは、スクリプトから以下の行を削除して、ソースコード tarball の拡張を無効にします。

/usr/bin/gzip -dc '/builddir/build/SOURCES/cello-1.0.tar.gz' | /usr/bin/tar -xvvof -

5.2.2.5. %setup -a マクロおよび %setup -b マクロの使用

-a オプションおよび -b オプションは、特定のソースを拡張します。

  • -b オプションは before を表します。このオプションは、作業ディレクトリーに移動する前に特定のソースを展開します。
  • -a オプションは after を表します。このオプションは、移動した後にそれらのソースを展開します。これらの引数は、SPEC ファイルのプリアンブルからのソース番号です。

以下の例では、cello-1.0.tar.gz アーカイブに空の example ディレクトリーが含まれています。サンプルは、別の example.tar.gz tarball に同梱されており、同じ名前のディレクトリーに展開されます。この場合、作業ディレクトリーに移動してから Source1 を展開する場合は、-a 1 を指定します。

Source0: https://example.com/%{name}/release/%{name}-%{version}.tar.gz
Source1: examples.tar.gz
…
%prep
%setup -a 1

次の例では、サンプルは別の cello-1.0-examples.tar.gz tarball にあります。これは cello-1.0/examples に展開されます。この場合、作業ディレクトリーに移動する前に、-b 1 を指定して Source1 を展開します。

Source0: https://example.com/%{name}/release/%{name}-%{version}.tar.gz
Source1: %{name}-%{version}-examples.tar.gz
…
%prep
%setup -b 1

5.2.3. %files セクション共通の RPM マクロ

次の表は、SPEC ファイルの %files セクションに必要な高度な RPM マクロのリストを示しています。

表5.1 %files セクションの高度な RPM マクロ

マクロ定義

%license

%license マクロは、LICENSE ファイルとしてリストされているファイルを識別します。このファイルは、RPM によってインストールされ、適切にラベル付けされます。例: %license LICENSE.

%doc

%doc マクロは、ドキュメントとしてリストされているファイルを識別します。このファイルは、RPM によってインストールされ、適切にラベル付けされます。%doc マクロは、パッケージ化するソフトウェアに関するドキュメントのほか、コード例やさまざまな付随項目にも使用されます。コード例が含まれている場合は、ファイルから実行可能モードを削除するように注意する必要があります。例: %doc README

%dir

%dir マクロは、パスがこの RPM によって所有されているディレクトリーであることを確認します。これは、RPM ファイルマニフェストが、アンインストール時にどのディレクトリーをクリーンアップするかを正確に認識できるようにするために重要です。例: %dir %{_libdir}/%{name}

%config(noreplace)

%config(noreplace) マクロは、後続のファイルが設定ファイルであることを確認し、ファイルが元のインストールチェックサムから変更されている場合、パッケージのインストールまたは更新時にファイルを上書き (または置換) しないようにします。変更がある場合は、アップグレード時またはインストール時にファイル名の末尾に .rpmnew を追加してファイルが作成され、ターゲットシステム上の既存ファイルまたは変更されたファイルが変更されないようにします。例: %config(noreplace) %{_sysconfdir}/%{name}/%{name}.conf

5.2.4. ビルトインマクロの表示

Red Hat Enterprise Linux では、複数のビルトイン RPM マクロを提供しています。

手順

  1. ビルトイン RPM マクロをすべて表示するには、以下のコマンドを実行します。

    rpm --showrc
    注記

    出力のサイズは非常に大きくなります。結果を絞り込むには、grep コマンドとともに上記のコマンドを使用します。

  2. システムの RPM バージョン用の RPM マクロに関する情報を確認するには、以下のコマンドを実行します。

    rpm -ql rpm
    注記

    RPM マクロは、出力ディレクトリー構造の macros というタイトルのファイルです。

5.2.5. RPM ディストリビューションマクロ

パッケージ化しているソフトウェアの言語実装や、ディストリビューションの特定のガイドラインに基づいて提供する推奨 RPM マクロセットは、ディストリビューションによって異なります。

多くの場合、推奨される RPM マクロセットは RPM パッケージとして提供され、yum パッケージマネージャーでインストールできます。

インストールすると、マクロファイルは、/usr/lib/rpm/macros.d/ ディレクトリーに配置されます。

手順

  • raw RPM マクロ定義を表示するには、以下のコマンドを実行します。

    rpm --showrc

上記の出力では、raw RPM マクロ定義が表示されます。

  • RPM のパッケージ化を行う際のマクロの機能や、マクロがどう役立つかを確認するには、rpm --eval コマンドに、引数として使用するマクロの名前を付けて実行します。

    rpm --eval %{_MACRO}

関連情報

  • rpm man ページ

5.2.6. カスタムマクロの作成

~/.rpmmacros ファイル内のディストリビューションマクロは、カスタムマクロで上書きできます。加えた変更は、マシン上のすべてのビルドに影響します。

警告

~/.rpmmacros ファイルで新しいマクロを定義することは推奨されません。このようなマクロは、ユーザーがパッケージを再構築する可能性がある他のマシンには存在しません。

手順

  • マクロを上書きするには、次のコマンドを実行します。

    %_topdir /opt/some/working/directory/rpmbuild

上記の例から、rpmde-setuptree ユーティリティーを使用して、すべてのサブディレクトリーを含むディレクトリーを作成できます。このマクロの値は、デフォルトでは ~/rpmbuild です。

%_smp_mflags -l3

上記のマクロは、Makefile に渡すためによく使用されます。たとえば、make %{?_smp_mflags} と、ビルドフェーズ時に多数の同時プロセスを設定します。デフォルトでは、-jX に設定されています。X は多数のコアです。コア数を変すると、パッケージビルドの速度アップまたはダウンを行うことができます。

5.3. Epoch、Scriptlets、Triggers

このセクションでは、RMP SPEC ファイルの高度なディレクティブを表す EpochScriptletTriggers について説明します。

これらのディレクティブはすべて、SPEC ファイルだけでなく、生成された RPM がインストールされているエンドマシンにも影響します。

5.3.1. Epoch ディレクティブ

Epoch ディレクティブでは、バージョン番号に基づいて加重依存関係を定義できます。

このディレクティブが RPM SPEC ファイルにない場合、Epoch ディレクティブは全く設定されません。これは、Epoch を設定しないと Epoch が 0 になるという一般的な考え方に反しています。ただし、yum ユーティリティーは、depsolve の目的で、0 の Epoch と同様に設定されていない Epoch を処理します。

ただし、SPEC ファイルでの Epoch の リストは通常省略されます。これは、多くの場合、Epoch 値を導入すると、パッケージのバージョンを比較する際に、想定される RPM 動作がスキューされるためです。

例5.2 Epoch の使用

Epoch: 1 および Version: 1.0foobar パッケージをインストールし、他のユーザーが Version 2.0foobar をパッケージ化します。ただし、Epoch ディレクティブがない場合、新しいバージョンは更新とはみなされません。RPM パッケージ用のバージョン管理を示す従来の Name-Version-Release ラッパーよりも、Epoch バージョンが推奨されている理由。

Epoch を使用することはほとんどありません。ただし、Epoch は 、通常、アップグレードの順序の問題を解決するために使用されます。この問題は、ソフトウェアバージョン番号のスキームや、エンコードに基づいて確実に比較できないアルファベット文字を組み込んだバージョンにおける、アップストリームによる変更の副次的効果として見られる場合があります。

5.3.2. Scriptlets ディレクティブ

Scriptlets は、パッケージがインストールまたは削除される前または後に実行される一連の RPM ディレクティブです。

Scriptlets は、ビルド時またはスタートアップスクリプト内で実行できないタスクにのみ使用します。

共通の Scriptlet ディレクティブのセットがあります。これは、SPEC ファイルセクションのヘッダー (%build%install など) と似ています。これは、標準の POSIX シェルスクリプトとしてよく書かれる、マルチラインのコードセグメントによって定義されます。ただし、ターゲットマシンのディストリビューションの RPM が対応する他のプログラミング言語で書くこともできます。RPM ドキュメントには、利用可能な言語の完全なリストが含まれます。

以下の表には、実行順の Scriptlet ディレクティブのリストが含まれます。スクリプトを含むパッケージは、%pre%post ディレクティブの間にインストールされ、%preun ディレクティブと %postun ディレクティブ間でアンインストールされることに注意してください。

表5.2 Scriptlet ディレクティブ

ディレクティブ定義

%pretrans

パッケージのインストールまたは削除の直前に実行されるスクリプトレット。

%pre

ターゲットシステムにパッケージをインストールする直前に実行されるスクリプトレット。

%post

ターゲットシステムにパッケージがインストールされた直後に実行されるスクリプトレット。

%preun

ターゲットシステムからパッケージをアンインストールする直前に実行されるスクリプトレット。

%postun

ターゲットシステムからパッケージをアンインストールした直後に実行されるスクリプトレット。

%posttrans

トランザクションの最後に実行されるスクリプトレット。

5.3.3. スクリプトレット実行の無効化

以下の手順では、rpm コマンドと --no_scriptlet_name_ オプションを使用して、スクリプトレットの実行を無効にする方法を説明します。

手順

  • たとえば、%pretrans スクリプトレットの実行を無効にするには、次のコマンドを実行します。

    # rpm --nopretrans

    -- noscripts オプションも使用できます。これは、以下のすべてと同等になります。

    • --nopre
    • --nopost
    • --nopreun
    • --nopostun
    • --nopretrans
    • --noposttrans

関連情報

  • rpm(8) man ページ

5.3.4. スクリプトレットマクロ

Scriptlets ディレクティブは、RPM マクロでも機能します。

以下の例は、systemd スクリプトレットマクロの使用を示しています。これにより、systemd は新しいユニットファイルについて通知されるようになります。

$ rpm --showrc | grep systemd
-14: __transaction_systemd_inhibit      %{__plugindir}/systemd_inhibit.so
-14: _journalcatalogdir /usr/lib/systemd/catalog
-14: _presetdir /usr/lib/systemd/system-preset
-14: _unitdir   /usr/lib/systemd/system
-14: _userunitdir       /usr/lib/systemd/user
/usr/lib/systemd/systemd-binfmt %{?*} >/dev/null 2>&1 || :
/usr/lib/systemd/systemd-sysctl %{?*} >/dev/null 2>&1 || :
-14: systemd_post
-14: systemd_postun
-14: systemd_postun_with_restart
-14: systemd_preun
-14: systemd_requires
Requires(post): systemd
Requires(preun): systemd
Requires(postun): systemd
-14: systemd_user_post  %systemd_post --user --global %{?*}
-14: systemd_user_postun        %{nil}
-14: systemd_user_postun_with_restart   %{nil}
-14: systemd_user_preun
systemd-sysusers %{?*} >/dev/null 2>&1 || :
echo %{?*} | systemd-sysusers - >/dev/null 2>&1 || :
systemd-tmpfiles --create %{?*} >/dev/null 2>&1 || :

$ rpm --eval %{systemd_post}

if [ $1 -eq 1 ] ; then
        # Initial installation
        systemctl preset  >/dev/null 2>&1 || :
fi

$ rpm --eval %{systemd_postun}

systemctl daemon-reload >/dev/null 2>&1 || :

$ rpm --eval %{systemd_preun}

if [ $1 -eq 0 ] ; then
        # Package removal, not upgrade
        systemctl --no-reload disable  > /dev/null 2>&1 || :
        systemctl stop  > /dev/null 2>&1 || :
fi

5.3.5. Triggers ディレクティブ

Triggers は、パッケージのインストールおよびアンインストール時に対話できる手段を提供する RPM ディレクティブです。

警告

Triggers は、含まれるパッケージの更新など、予期できないタイミングで実行できます。Triggers はデバッグが難しいため、予期せず実行されたときに破損しないように、安定したな方法で実装する必要があります。このため、Red Hat では、Trigger の使用は最小限に抑えることを推奨します。

1 つのパッケージアップグレードの実行順序と、既存の各 Triggers の詳細は、以下のとおりです。

all-%pretrans
…​
any-%triggerprein (%triggerprein from other packages set off by new install)
new-%triggerprein
new-%pre      for new version of package being installed
…​           (all new files are installed)
new-%post     for new version of package being installed

any-%triggerin (%triggerin from other packages set off by new install)
new-%triggerin
old-%triggerun
any-%triggerun (%triggerun from other packages set off by old uninstall)

old-%preun    for old version of package being removed
…​           (all old files are removed)
old-%postun   for old version of package being removed

old-%triggerpostun
any-%triggerpostun (%triggerpostun from other packages set off by old un
            install)
…​
all-%posttrans

上記の項目は、/usr/share/doc/rpm-4.*/triggers ファイルにあります。

5.3.6. SPEC ファイルでのシェルスクリプト以外のスクリプトの使用

SPEC ファイルの -p スクリプトレットオプションを指定すると、ユーザーはデフォルトのシェルスクリプトインタープリター (-p /bin/sh) の代わりに特定のインタープリターを起動することができます。

次の手順では、pello.py プログラムのインストール後にメッセージを出力するスクリプトの作成方法を説明します。

手順

  1. pello.spec ファイルを開きます。
  2. 以下の行を見つけます。

    install -m 0644 %{name}.py* %{buildroot}/usr/lib/%{name}/
  3. 上記の行の下に、以下を挿入します。

    %post -p /usr/bin/python3
    print("This is {} code".format("python"))
  4. RPM のビルド の説明に従ってパッケージをビルドします。
  5. パッケージをインストールします。

    # yum install /home/<username>/rpmbuild/RPMS/noarch/pello-0.1.2-1.el8.noarch.rpm
  6. インストール後に出力メッセージを確認します。

    Installing       : pello-0.1.2-1.el8.noarch                              1/1
    Running scriptlet: pello-0.1.2-1.el8.noarch                              1/1
    This is python code
注記

Python 3 スクリプトを使用するには、SPEC ファイルの install -m に次の行を含めます。

%post -p /usr/bin/python3

Lua スクリプトを使用するには、SPEC ファイルの install -m に次の行を含めます。

%post -p <lua>

これにより、SPEC ファイル内で任意のインタープリターを指定できます。

5.4. RPM 条件

RPM 条件により、さまざまなバージョンの SPEC ファイルを条件付きで含めることができます。

条件を含めるには通常、次を処理します。

  • アーキテクチャー固有のセクション
  • オペレーティングシステム固有のセクション
  • さまざまなバージョンのオペレーティング間の互換性の問題
  • マクロの存在と定義

5.4.1. RPM 条件構文

RPM 条件では、次の構文を使用します。

expression が真であれば、以下のアクションを実行します。

%if expression
…​
%endif

expression が真であれば、別のアクションを実行し、別の場合には別のアクションを実行します。

%if expression
…​
%else
…​
%endif

5.4.2. %if 条件

次の例は、%if RPM 条件の使用法を示しています。

例5.3 Red Hat Enterprise Linux 8 と他のオペレーティングシステム間の互換性を処理するために %if を使用

%if 0%{?rhel} == 8
sed -i '/AS_FUNCTION_DESCRIBE/ s/^/#/' configure.in
sed -i '/AS_FUNCTION_DESCRIBE/ s/^/#/' acinclude.m4
%endif

この条件では、AS_FUNCTION_DESCRIBE マクロのサポート上、RHEL 8 と他のオペレーティングシステム間の互換性が処理されます。パッケージが RHEL 用にビルドされている場合、%rhel マクロが定義され、RHEL バージョンに展開されます。値が 8 の場合、パッケージは RHEL 8 用にビルドされ、RHEL 8 で対応していない AS_FUNCTION_DESCRIBE への参照が autoconfig スクリプトから削除されます。

例5.4 %if 条件を使用したマクロの定義の処理

%define ruby_archive %{name}-%{ruby_version}
%if 0%{?milestone:1}%{?revision:1} != 0
%define ruby_archive %{ruby_archive}-%{?milestone}%{?!milestone:%{?revision:r%{revision}}}
%endif

この条件では、マクロの定義を処理します。%milestone マクロまたは %revision マクロが設定されている場合は、アップストリームの tarball の名前を定義する %ruby_archive マクロが再定義されます。

5.4.3. %if 条件の特殊なバリアント

%ifarch 条件、%ifnarch 条件、%ifos 条件は、%if 条件の特殊なバリアントです。これらのバリアントは一般的に使用されるため、独自のマクロがあります。

%ifarch 条件

%ifarch 条件は、アーキテクチャー固有の SPEC ファイルのブロックを開始するために使用されます。この後に、アーキテクチャー指定子が続きます。これらは、それぞれコンマまたは空白で区切ります。

例5.5 %ifarch 条件の使用例

%ifarch i386 sparc
…​
%endif

%ifarch%endif の間にある SPEC ファイルのすべてのコンテンツは、32 ビット AMD および Intel のアーキテクチャー、または SunMAJOROS ベースのシステムでのみ処理されます。

%ifnarch 条件

% ifnarch 条件には、%ifarch 条件よりもリバース論理があります。

例5.6 %ifnarch 条件の使用例

%ifnarch alpha
…​
%endif

SPEC ファイルの % ifnarch% endif との間のすべてのコンテンツは、Digital Alpha/AXP ベースのシステムで処理されない場合に限り処理されます。

%ifos 条件

%ifos 条件は、ビルドのオペレーティングシステムに基づいて処理を制御するために使用されます。その後に複数のオペレーティングシステム名を指定できます。

例5.7 %ifos 条件の使用例

%ifos linux
…​
%endif

SPEC ファイルの %ifos%endif と の間のすべてのコンテンツは、ビルドが Linux システムで実行された場合にのみ処理されます。

5.5. Python 3 RPM のパッケージ化

ほとんどの Python プロジェクトは、パッケージ化に Setuptools を使用して、setup.py ファイルにパッケージ情報を定義します。Setuptools パッケージ化の詳細は Setuptools ドキュメント を参照してください。

Python プロジェクトを RPM パッケージにパッケージ化することもできます。これには、Setuptools パッケージ化と比較して以下の利点があります。

  • その他の RPM のパッケージの依存関係の指定 (Python 以外も含む)
  • 電子署名

    電子署名を使用すると、RPM パッケージの内容は、オペレーティングシステムのその他の部分とともに検証、統合、およびテストできます。

5.5.1. Python パッケージ用の SPEC ファイルの説明

SPEC ファイルには、RPM のビルドに rpmbuild ユーティリティーを使用する命令が含まれています。命令は、一連のセクションに含まれています。SPEC ファイルには、セクションが定義されている 2 つの主要部分があります。

  • プリアンブル (ボディーに使用されている一連のメタデータ項目が含まれています)
  • ボディー (命令の主要部分が含まれています)

Python プロジェクトの RPM SPEC ファイルには、非 Python RPM SPEC ファイルと比較していくつかの詳細があります。特に注目すべきは、Python ライブラリーの RPM パッケージ名に、Python 3.6 の場合は python3、Python 3.8 の場合は python38、Python 3.9 の場合は python39、Python 3.11 の場合は python3.11 など、バージョンを判別する接頭辞を常に含める必要があります。

その他の詳細は、次の SPEC ファイルの python3-detox パッケージの例 に記載されています。その詳細の説明は、例の下に記載されている注意事項を参照してください。

%global modname detox                                                1

Name:           python3-detox                                        2
Version:        0.12
Release:        4%{?dist}
Summary:        Distributing activities of the tox tool
License:        MIT
URL:            https://pypi.io/project/detox
Source0:        https://pypi.io/packages/source/d/%{modname}/%{modname}-%{version}.tar.gz

BuildArch:      noarch

BuildRequires:  python36-devel                                       3
BuildRequires:  python3-setuptools
BuildRequires:  python36-rpm-macros
BuildRequires:  python3-six
BuildRequires:  python3-tox
BuildRequires:  python3-py
BuildRequires:  python3-eventlet

%?python_enable_dependency_generator                                 4

%description

Detox is the distributed version of the tox python testing tool. It makes efficient use of multiple CPUs by running all possible activities in parallel.
Detox has the same options and configuration that tox has, so after installation you can run it in the same way and with the same options that you use for tox.

    $ detox

%prep
%autosetup -n %{modname}-%{version}

%build
%py3_build                                                           5

%install
%py3_install

%check
%{__python3} setup.py test                                           6

%files -n python3-%{modname}
%doc CHANGELOG
%license LICENSE
%{_bindir}/detox
%{python3_sitelib}/%{modname}/
%{python3_sitelib}/%{modname}-%{version}*

%changelog
...
1
modname マクロには、Python プロジェクトの名前が含まれます。この例では detox となります。
2
Python プロジェクトを RPM にパッケージ化する場合は、常にプロジェクトの元の名前に接頭辞 python3 を追加する必要があります。ここでの元の名前は detox で、RPM の名前python3-detox です。
3
BuildRequires は、このパッケージのビルドおよびテストに必要なパッケージを指定します。BuildRequires では、Python パッケージをビルドするのに必要なツールを提供する項目 (python36-devel および python3-setuptools) が常に含まれます。/usr/bin/python3 インタープリターディレクティブを持つファイルが自動的に /usr/bin/python3.6 に変更されるように、python36-rpm-macros パッケージが必要です。
4
すべての Python パッケージが正しく動作するためには、その他のパッケージがいくつか必要です。このようなパッケージも、SPEC ファイルで指定する必要があります。依存関係を指定するには、%python_enable_dependency_generator マクロを使用して、setup.py ファイルに定義した依存関係を自動的に使用できます。パッケージに、Setuptools で指定していない依存関係がある場合は、追加の Requires ディレクティブ内に指定します。
5
%py3_build マクロおよび %py3_install マクロは、setup.py build コマンドおよび setup.py install コマンドを実行します。それぞれには、インストール場所、使用するインタープリター、その他の詳細を指定する引数を用います。
6
check セクションは、Python の正しいバージョンを実行するマクロを提供します。%{__python3} マクロには、Python 3 インタープリターのパス (/usr/bin/python3 など) が含まれます。リテラルパスではなく、マクロを使用することが常に推奨されます。

5.5.2. Python 3 RPM の一般的なマクロ

SPEC ファイルでは、値をハードコーディングするのではなく、以下の Python 3 RPM のマクロのテーブルで説明されているマクロを常に使用します。

マクロ名では、バージョンを指定しない python ではなく、python3 または python2 を使用してください。SPEC ファイルの BuildRequires セクションで特定の Python 3 バージョンを python36-rpm-macrospython38-rpm-macrospython39-rpm-macros、または python3.11-rpm-macros に設定します。

表5.3 Python 3 RPM 用のマクロ

マクロ一般的な定義説明

%{__python3}

/usr/bin/python3

Python 3 のインタープリター

%{python3_version}

3.6

Python 3 インタープリターのフルバージョン

%{python3_sitelib}

/usr/lib/python3.6/site-packages

pure-Python モジュールのインストール先

%{python3_sitearch}

/usr/lib64/python3.6/site-packages

アーキテクチャー固有の拡張を含むモジュールがインストールされている場合

%py3_build

 

システムパッケージに適した引数で setup.py build コマンドを実行します。

%py3_install

 

システムパッケージに適した引数で setup.py install コマンドを実行します。

5.5.3. Python RPM の自動 Provides

Python プロジェクトをパッケージ化する際、以下のディレクトリーが存在する場合は、作成される RPM に以下のディレクトリーが含まれていることを確認してください。

  • .dist-info
  • .egg-info
  • .egg-link

このディレクトリーから、RPM ビルドプロセスは自動的に仮想 pythonX.Ydist Provides (python3.6dist(detox) など) を生成します。この仮想 Provides は、%python_enable_dependency_generator マクロにより指定されるパッケージにより提供されます。

5.6. Python スクリプトでインタープリターディレクティブの処理

Red Hat Enterprise Linux 8 では、実行可能な Python スクリプトは、少なくとも主要な Python バージョンを明示的に指定するインタープリターディレクティブ (別名 hashbangs または shebangs) を使用することが想定されます。以下に例を示します。

#!/usr/bin/python3
#!/usr/bin/python3.6
#!/usr/bin/python3.8
#!/usr/bin/python3.9
#!/usr/bin/python3.11
#!/usr/bin/python2

/usr/lib/rpm/redhat/brp-mangle-shebangs BRP (buildroot policy) スクリプトは、RPM パッケージをビルドする際に自動的に実行され、実行可能なすべてのファイルでインタープリターディレクティブを修正しようとします。

BRP スクリプトは、以下のようにあいまいなインタープリターディレクティブを含む Python スクリプトを検出すると、エラーを生成します。

#!/usr/bin/python

または

#!/usr/bin/env python

5.6.1. Python スクリプトでインタープリターディレクティブの変更

RPM ビルド時にビルドエラーが発生する Python スクリプト内のインタープリターディレクティブを変更します。

前提条件

  • Python スクリプトのインタープリターディレクティブの一部でビルドエラーが発生する。

手順

インタープリターディレクティブを変更するには、以下のタスクのいずれかを実行します。

  • platform-python-devel パッケージから pathfix.py スクリプトを適用します。

    # pathfix.py -pn -i %{__python3} PATH …​

    複数の PATH を指定できます。PATH がディレクトリーの場合、pathfix.py はあいまいなインタープリターディレクティブを持つスクリプトだけでなく、^[a-zA-Z0-9_]+\.py$ のパターンに一致する Python スクリプトを再帰的にスキャンします。このコマンドを %prep セクション、または %install セクションに追加します。

  • パッケージ化した Python スクリプトを、想定される形式に準拠するように変更します。この目的のために、pathfix.py は、RPM ビルドプロセス以外でも使用できます。pathfix.py を RPM ビルド以外で実行する場合は、上記の例の %{__python3} を、/usr/bin/python3 などのインタープリターディレクティブのパスに置き換えます。

パッケージ化された Python スクリプトに Python 3.6 以外のバージョンが必要な場合は、上記のコマンドを調整して必要なバージョンを含めます。

5.6.2. カスタムパッケージの /usr/bin/python3 インタープリターディレクティブの変更

デフォルトでは、/usr/bin/python3 の形式でのインタープリターディレクティブは、Red Hat Enterprise Linux のシステムツールに使用される platform-python パッケージから Python を参照するインタープリターディレクティブに置き換えられます。カスタムパッケージの /usr/bin/python3 インタープリターディレクティブを変更して、AppStream リポジトリーからインストールした特定バージョンの Python を参照できます。

手順

  • Python の特定バージョンのパッケージを構築するには、対応する python パッケージの python*-rpm-macros サブパッケージを SPEC ファイルの BuildRequires セクションに追加します。たとえば、Python 3.6 の場合は、以下の行を追加します。

    BuildRequires:  python36-rpm-macros

    これにより、カスタムパッケージの /usr/bin/python3 インタープリターディレクティブは、自動的に /usr/bin/python3.6 に変換されます。

注記

BRP スクリプトがインタープリターディレクティブを確認したり、変更したりしないようにするには、以下の RPM ディレクティブを使用します。

%undefine __brp_mangle_shebangs

5.7. RubyGems パッケージ

本セクションでは、RubyGems パッケージの概要と、RPM への再パッケージ化方法を説明します。

5.7.1. RubyGems の概要

Ruby は、ダイナミックなインタープリター言語で、反映的なオブジェクト指向の汎用プログラミング言語です。

Ruby で書かれたプログラムは、特定の Ruby パッケージ形式を提供する RubyGems プロジェクトを使用してパッケージ化されます。

RubyGems で作成したパッケージは gems と呼ばれ、RPM に再パッケージ化することもできます。

注記

本書は、gem 接頭辞とともに RubyGems の概念に関する用語を参照します。たとえば、.gemspec は gem specification に使用され、RPM に関連する用語は非修飾になります。

5.7.2. RubyGems が RPM に関連している仕組み

RubyGems は、Ruby 独自のパッケージ形式を表します。ただし、RubyGems には RPM が必要とするメタデータと同様のものが含まれ、RubyGems から RPM への変換が可能になります。

Ruby Packaging Guidelines では、以下の方法で RubyGems パッケージを RPM に再パッケージ化できます。

  • このような RPM は、残りすべてのディストリビューションに適合します。
  • RPM パッケージ化された正しい gem をインストールすると、エンドユーザーで gem の依存関係を満たすことができます。

RubyGems は、SPEC ファイル、パッケージ名、依存関係などの RPM と同様の用語を使用します。

残りの RHEL RPM ディストリビューションに合わせるには、RubyGems で作成したパッケージが以下の規則に従う必要があります。

  • gems の名前は以下のパターンに従います。

    rubygem-%{gem_name}
  • シバンの行を実装するには、以下の文字列を使用する必要があります。

    #!/usr/bin/ruby

5.7.3. RubyGems パッケージからの RPM パッケージの作成

RubyGems パッケージのソース RPM を作成するには、以下のファイルが必要です。

  • gem ファイル
  • RPM SPEC ファイル

次のセクションでは、RubyGems が作成したパッケージから RPM パッケージを作成する方法を説明します。

5.7.3.1. RubyGems SPEC ファイル規則

RubyGems SPEC ファイルは、以下の規則を満たす必要があります。

  • gem の仕様の名前である %{gem_name} の定義が含まれる。
  • パッケージのソースは、リリースされた gem アーカイブの完全な URL であること。パッケージのバージョンは、gem のバージョンであること。
  • ビルドに必要なマクロをプルできるように、以下のように定義された BuildRequires: ディレクティブが含まれる。

    BuildRequires:rubygems-devel
  • RubyGems Requires または Provides は自動生成されるため、含まれません。
  • Ruby バージョンの互換性を明示的に指定しない限り、以下のように定義された BuildRequires: ディレクティブは含まれません。

    Requires: ruby(release)

    RubyGems で自動生成された依存関係 (Requires:ruby (rubygems)) で十分です。

5.7.3.2. RubyGems マクロ

以下の表は、RubyGems で作成したパッケージで役に立つマクロをリスト表示します。これらのマクロは、rubygems-devel パッケージで提供されています。

表5.4 RubyGems マクロ

マクロ名拡張パス用途

%{gem_dir}

/usr/share/gems

gem 構造のトップディレクトリー。

%{gem_instdir}

%{gem_dir}/gems/%{gem_name}-%{version}

gem の実際のコンテンツが含まれるディレクトリー。

%{gem_libdir}

%{gem_instdir}/lib

gem のライブラリーディレクトリー。

%{gem_cache}

%{gem_dir}/cache/%{gem_name}-%{version}.gem

キャッシュした gem。

%{gem_spec}

%{gem_dir}/specifications/%{gem_name}-%{version}.gemspec

gem 仕様ファイル。

%{gem_docdir}

%{gem_dir}/doc/%{gem_name}-%{version}

gem の RDoc ドキュメンテーション。

%{gem_extdir_mri}

%{_libdir}/gems/ruby/%{gem_name}-%{version}

gem 拡張のディレクトリー。

5.7.3.3. RubyGems SPEC ファイルの例

gem を構築するための SPEC ファイルの例と、その特定のセクションの説明を次に示します。

RubyGems SPEC ファイルの例

%prep
%setup -q -n  %{gem_name}-%{version}

# Modify the gemspec if necessary
# Also apply patches to code if necessary
%patch0 -p1

%build
# Create the gem as gem install only works on a gem file
gem build ../%{gem_name}-%{version}.gemspec

# %%gem_install compiles any C extensions and installs the gem into ./%%gem_dir
# by default, so that we can move it into the buildroot in %%install
%gem_install

%install
mkdir -p %{buildroot}%{gem_dir}
cp -a ./%{gem_dir}/* %{buildroot}%{gem_dir}/

# If there were programs installed:
mkdir -p %{buildroot}%{_bindir}
cp -a ./%{_bindir}/* %{buildroot}%{_bindir}

# If there are C extensions, copy them to the extdir.
mkdir -p %{buildroot}%{gem_extdir_mri}
cp -a .%{gem_extdir_mri}/{gem.build_complete,*.so} %{buildroot}%{gem_extdir_mri}/

次の表は、RubyGems SPEC ファイルの特定項目の詳細を説明します。

表5.5 RubyGems' SPEC ディレクティブの詳細

SPEC ディレクティブRubyGems の詳細

%prep

RPM は gem アーカイブを直接デプロイメントできるため、gem unpack コマンドを実行して gem からソースを抽出できます。%setup -n %{gem_name}-%{version} マクロは、gem がデプロイメントされたディレクトリーを提供します。同じディレクトリーレベルでは、%{gem_name}-%{version}.gemspec ファイルが自動的に作成されます。このファイルは、後で gem を再構築したり、.gemspec を変更したり、コードにパッチを適用したりするために使用されます。

%build

このディレクティブには、ソフトウェアをマシンコードに構築するためのコマンドまたは一連のコマンドが含まれます。%gem_install マクロは gem アーカイブでのみ動作し、gem は次の gem ビルドで再作成されます。作成した gem ファイルは、%gem_install により使用され、一時ディレクトリー (デフォルトでは /%{gem_dir}) にコードを構築してインストールします。%gem_install マクロは両者とも、コードを 1 つのステップで構築してインストールします。ビルドしたソースはインストール前に、自動的に作成される一時ディレクトリーに配置されます。

%gem_install マクロは、2 つの追加オプションを受け付けます。そのうちの 1 つは -n <gem_file> で、インストールに使用される gem を上書きできます。もうひとつは、- d <install_dir> で、gem インストール先を上書きできます。なお、このオプションの使用は推奨されません。

%gem_install マクロは、%{buildroot} へのインストールに使用することはできません。

%install

インストールは、%{buildroot} 階層で実行されます。必要なディレクトリーを作成し、一時ディレクトリーにインストールされているものを、%{buildroot} 階層にコピーできます。この gem が共有オブジェクトを作成すると、これらはアーキテクチャー固有の %{gem_extdir_MRI} パスに移動されます。

5.7.3.4. gem2rpm を使用した RubyGems パッケージの RPM SPEC ファイルへの変換

gem2rpm ユーティリティーは、RubyGems パッケージを RPM SPEC ファイルに変換します。

以下のセクションでは、次の方法を説明します。

  • gem2rpm ユーティリティーのインストール
  • すべての gem2rpm オプションの表示
  • gem2rpm を使用して RubyGems パッケージを RPM SPEC ファイルへ変換する
  • gem2rpm テンプレートの変更
5.7.3.4.1. GFS2 のインストール

以下の手順では、gem2rpm ユーティリティーのインストール方法を説明します。

手順

  • RubyGems.org から gem2rpm にインストールするには、以下のコマンドを実行します。
$ gem install gem2rpm
5.7.3.4.2. gem2rpm のすべてのオプションの表示

以下の手順では、gem2rpm ユーティリティーのすべてのオプションを表示する方法を説明します。

手順

  • gem2rpm のすべてのオプションを表示するには、以下を実行してください。

    gem2rpm --help
5.7.3.4.3. gem2rpm を使用して RubyGems パッケージを RPM SPEC ファイルへ変換

以下の手順では、gem2rpm ユーティリティーを使用して、RubyGems パッケージを RPM SPEC ファイルに変換する方法を説明します。

手順

  • 最新バージョンの gem ダウンロードし、この gem 用の RPM SPEC ファイルを生成します。

    $ gem2rpm --fetch <gem_name> > <gem_name>.spec

説明した手順では、gem のメタデータの情報に基づいて RPM SPEC ファイルを作成します。ただし、gem は、通常 RPM (ライセンスや変更ログなど) で提供される重要な情報に欠けています。したがって、生成された SPEC ファイルを編集する必要があります。

5.7.3.4.4. gem2rpm テンプレート

gem2rpm テンプレートとは、次の表に示す変数を含む標準の埋め込み Ruby (ERB) ファイルです。

表5.6 gem2rpm テンプレート内の変数

変数説明

package

gem の Gem::Package 変数。

spec

gem の Gem ::Specification 変数 (format.spec と同じ)。

config

仕様のテンプレートヘルパーで使用されるデフォルトのマクロまたはルールを再定義できる Gem 2RPM::Configuration 変数。

runtime_dependencies

パッケージランタイム依存関係のリストを示す Gem2RPM::RpmDependencyList 変数。

development_dependencies

パッケージ開発依存関係のリストを示す Gem2RPM::RpmDependencyList 変数。

テスト

Gem 2RPM::testsuite 変数は、実行を許可するテストフレームワークのリストを示します。

files

パッケージ内のファイルにフィルターが適用されていないリストを示す Gem 2RPM::RpmFileList 変数。

main_files

メインパッケージに適したファイルのリストを提供する Gem2RPM::RpmFileList 変数。

doc_files

-doc サブパッケージに適したファイルのリストを提供する Gem 2RPM::RpmFileList 変数。

format

gem の Gem::Format 変数。この変数は現在非推奨になっています。

5.7.3.4.5. 利用可能な gem2rpm テンプレートのリスト表示

以下の手順では、利用可能な gem2rpm テンプレートのリストを表示する方法を説明します。

手順

  • 利用可能なテンプレートをすべて表示するには、以下を実行します。

    $ gem2rpm --templates
5.7.3.4.6. gem2rpm テンプレートの編集

生成された SPEC ファイルを編集する代わりに、RPM SPEC ファイルの生成元となるテンプレートを編集できます。

gem2rpm のテンプレートを変更する場合は、以下の手順を行います。

手順

  1. デフォルトのテンプレートを保存します。

    $ gem2rpm -T > rubygem-<gem_name>.spec.template
  2. 必要に応じてテンプレートを編集します。
  3. 編集したテンプレートを使用して SPEC ファイルを生成します。

    $ gem2rpm -t rubygem-<gem_name>.spec.template <gem_name>-<latest_version.gem > <gem_name>-GEM.spec

これで、RPM のビルド の説明に従って、編集したテンプレートを使用して RPM パッケージをビルドできるようになりました。

5.8. Perl スクリプトで RPM パッケージを処理する方法

RHEL 8 以降、Perl プログラミング言語はデフォルトの buildroot に含まれていません。そのため、Perl スクリプトを含む RPM パッケージは、RPM SPEC ファイルの BuildRequires: ディレクティブを使用して、Perl の依存関係を明示的に指定する必要があります。

5.8.2. 特定の Perl モジュールの使用

特定の Perl モジュールがビルド時に必要な場合は、以下の手順に従います。

手順

  • RPM SPEC ファイルに以下の構文を適用します。

    BuildRequires: perl(MODULE)
    注記

    この構文は Perl コアモジュールにも適用します。これは、perl パッケージを同時に移動し、タイムアウトするためです。

5.8.3. 特定の Perl バージョンへのパッケージの制限

パッケージを特定の Perl バージョンに限定するには、以下の手順に従います。

手順

  • RPM SPEC ファイルの希望のバージョン制約で perl (:VERSION) 依存関係を使用します。

    たとえば、パッケージを Perl バージョン 5.22 以降に制限するには、以下を使用します。

    BuildRequires: perl(:VERSION) >= 5.22
警告

perl パッケージのバージョンには、エポック番号が含まれるため、バージョンに対する比較は行わないでください。

5.8.4. パッケージが正しい Perl インタープリターを使用することを確認

Red Hat は、完全に互換性がない複数の Perl インタープリターを提供しています。そのため、Perl モジュールを提供するすべてのパッケージは、ビルド時に使用されたものと同じ Perl インタープリターをランタイムで使用する必要があります。

これを確認するには、以下の手順に従います。

手順

  • Perl モジュールを提供するすべてのパッケージについては、バージョン化された MODULE_compat Requires を RPM SPEC ファイルに含めます。

    Requires:  perl(:MODULE_COMPAT_%(eval `perl -V:version`; echo $version))

第6章 RHEL 8 の新機能

本セクションでは、Red Hat Enterprise Linux 7 と 8 における RPM パッケージ化の主な変更点を説明します。

6.1. Weak 依存関係のサポート

Weak 依存関係 は、Requires ディレクティブのバリアントです。これらのバリアントは、Epoch-Version-Release 範囲比較で仮想 Provides: とパッケージ名に対して一致します。

Weak 依存関係 には、以下の表でまとめているように、2 つの強み (weakhint) と 2 つの方向 (forwardbackward) があります。

注記

forward 方向は Requires: に類似しています。backward には、以前の依存関係システムには類似していません。

表6.1 Weak の依存関係の強みと方向の組み合わせが可能

強み/方向ForwardBackward

Weak

推奨:

補助:

Hint

提案:

強化:

Weak 依存関係 ポリシーの主な利点は以下のとおりです。

  • デフォルトのインストール機能の豊富さを維持しつつ、最小限のインストールが可能です。
  • パッケージは、仮想の柔軟性を維持しながら、特定のプロバイダーの設定を指定できます。

6.1.1. Weak 依存関係の概要

デフォルトでは、Weak 依存関係 は、通常の Requires: と同様に扱われます。一致するパッケージが YUM トランザクションに含まれます。パッケージの追加でとエラーが発生する場合、デフォルトでは YUM は依存関係を無視します。そのため、ユーザーは Weak 依存関係 により追加されるパッケージを除外したり、後で削除したりできます。

使用の条件

Weak 依存関係 は、パッケージが依然として依存関係なしで機能している場合に限り使用できます。

注記

Weak の要件を追加することなく、非常に限定的な機能を持つパッケージを作成できます。

使用例

Weak の依存関係 は特に、目的が単一で、パッケージの全機能セットを必要としない仮想マシンやコンテナーを構築するなど、合理的なユースケースのためにインストールを最小限に抑えることができる場合に使用します。

Weak 依存関係 の一般的なユースケースは、以下のとおりです。

  • ドキュメント

    • ドキュメントビューアーがない場合でも正常に処理されるドキュメントビューアー
  • プラグインまたはアドオン

    • 対応ファイル形式
    • 対応プロトコル

6.1.2. Hints の強度

Hints はデフォルトで、YUM で無視されます。これは、GUI ツールで使用することで、デフォルトでインストールされていないアドオンパッケージを利用できます。ただし、インストールされているパッケージと組み合わせることで役に立ちます。

パッケージの主なユースケースの要件には、Hints を使用しないでください。代わりに、このような要件を強固な依存関係または Weak 依存関係 に含めます。

パッケージ設定

YUMWeak の依存関係Hints を使用して、複数の同等に有効なパッケージ間の選択肢がある場合に使用するパッケージを決定します。インストールされているパッケージまたはインストールされるパッケージの依存関係で指示されるパッケージが推奨されます。

依存関係の解決に関する通常のルールは、この機能の影響を受けないことに注意してください。たとえば、Weak 依存関係 は、古いバージョンのパッケージが強制的に選ばれるようにすることはできません。

依存関係に複数のプロバイダーがある場合は、必須となるパッケージで Suggests: を追加して、どのオプションが優先されるかについて依存関係リゾルバーにヒントを提供することができます。

メインパッケージおよび他のプロバイダーが、必要なパッケージにヒントを追加することが、より簡素化されたソリューションであるということに同意する場合にのみ Enhances: が使用されます。

例6.1 Hints を使用した、ある特定のパッケージの優先

Package A: Requires: mysql

Package mariadb: Provides: mysql

Package community-mysql: Provides: mysql

community-mysql パッケージよりも mariadb パッケージを優先する場合は、以下を使用します。

Suggests: mariadb to Package A.

6.1.3. Forwared と Backward の依存関係

Forward 依存関係Requires と同様に、インストールするパッケージに対して評価されます。最も一致するパッケージもインストールされます。

一般的には、Forward 依存関係 が優先されます。システムに追加された別のパッケージを取得する場合は、この依存関係をパッケージに追加します。

Backward 依存関係 の場合、一致するパッケージもインストールされていると、その依存関係を含むパッケージがインストールされます。

Backward 依存関係 は主に、そのプラグイン、アドオン、エクステンション機能をディストリビューションやその他サードパーティーパッケージにアタッチできるサードパーティーベンダー向けに設計されています。

6.2. ブール型依存関係のサポート

バージョン 4.13 以降では、RPM は以下の依存関係でブール式を処理できます。

  • Requires
  • Recommends
  • Suggests
  • supplements
  • Enhances
  • Conflicts

このセクションでは、ブール値の依存関係構文 を説明し、ブール値演算子 のリストを紹介して、ブール値の依存関係のセマンティクス およびブール値の 依存関係のセマンティクス について説明します。

6.2.1. ブール値の依存関係構文

ブール値は、常に括弧で囲まれています。

これは、通常の依存関係から構築されます。

  • 名前のみまたは名前
  • 比較
  • バージョンの説明

6.2.2. ブール値の演算子

RPM 4.13 では、以下のブール値演算子が導入されました。

表6.2 RPM 4.13 で導入されたブール値演算子

ブール値演算子説明使用例

and

用語が真となるには、すべてのオペランドを満たす必要があります。

Conflicts: (pkgA and pkgB)

または

用語が真となるには、いずれかのオペランドを満たす必要があります。

Requires: (pkgA >= 3.2 or pkgB)

if

第 2 のオペランドが満たされる場合、第 1 オペランドも満たされる必要があります (リバースインプリケーション)

Recommends: (myPkg-langCZ if langsupportCZ)

if else

if 演算子と同じで、2 番目のオペランドが一致しない場合は、第 3 オペランドが満たされる必要があります。

Requires: myPkg-backend-mariaDB if mariaDB else sqlite

RPM 4.14 では、以下のブール値演算子がさらに導入されています。

表6.3 RPM 4.14 で導入されたブール値演算子

ブール値演算子説明使用例

with

用語が真となるには、すべてのオペランドが同じパッケージで満たされる必要があります。

Requires: (pkgA-foo with pkgA-bar)

without

最初のオペランドを満たすが、2 番目のオペランドを満たさない単一のパッケージが必要

Requires: (pkgA-foo without pkgA-bar)

unless

2 番目のオペランドが満たされない場合、最初のオペランドを満たす必要があります (リバースネガティブインプリケーション)。

Conflicts: (myPkg-driverA unless driverB)

unless else

unless 演算子と同じで、2 番目のオペランドが一致しない場合は、第 3 オペランドが満たされる必要があります。

Conflicts: (myPkg-backend-SDL1 unless myPkg-backend-SDL2 else SDL2)

重要

if 演算子と or 演算子は同じコンテキストで使用できず、unless 演算子は and と同じコンテキストで使用できません。

6.2.3. ネスト化

以下の例のように、オペランド自体をブール式として使用できます。

このような場合は、オペランドを括弧で囲む必要もあります。andor 演算子を組み合わせて、括弧で囲った同じ 1 セットと同じ演算子を繰り返すことができます。

例6.2 ブール式として適用されるオペランドの使用例

Requires: (pkgA or pkgB or pkgC)
Requires: (pkgA or (pkgB and pkgC))
Supplements: (foo and (lang-support-cz or lang-support-all))
Requires: (pkgA with capB) or (pkgB without capA)
Supplements: ((driverA and driverA-tools) unless driverB)
Recommends: myPkg-langCZ and (font1-langCZ or font2-langCZ) if langsupportCZ

6.2.4. セマンティクス

ブール値の依存関係 を使用しても、通常の依存関係のセマンティックは変更されません。

ブール値の依存関係 が使用されている場合は、名前が一致するものをすべてチェックし、一致する名前のブール値をブール値演算子で集計します。

重要

Conflicts: を除くすべての依存関係では、インストールを防ぐために、結果が True である必要があります。Conflicts: については、インストールを防ぐために、結果が False である必要があります。

警告

Provides は依存関係ではないため、ブール式を含めることはできません。

6.2.5. if 演算子の出力の理解

if 演算子もブール値を返します。これは、直感的に理解しやすいものです。ただし、以下の例では、if の直感的な使用が誤解を招く可能性がある場合を示しています。

例6.3 if 演算子の出力の誤解

このステートメントは、pkgB がインストールされていない場合には真になります。ただし、このステートメントを、デフォルトの結果が偽であるところで使用すると、事が複雑になります。

Requires: (pkgA if pkgB)

このステートメントは、pkgB がインストールされていて、pkgA がインストールされていない場合に競合します。

Conflicts: (pkgA if pkgB)

そのため、以下を使用することが推奨されます。

Conflicts: (pkgA and pkgB)

if 演算子が or にネストされている場合も同様です。

Requires: ((pkgA if pkgB) or pkgC or pkg)

pkgB がインストールされていない場合に if が真となるため、用語が完全に真となります。pkgB がインストールされている場合にのみ pkgA が役立つ場合は、代わりに and を使用します。

Requires: ((pkgA and pkgB) or pkgC or pkg)

6.3. ファイルトリガーのサポート

File triggersRPM スクリプトレット の一種です。

これらはパッケージの SPEC ファイルで定義されます。

Triggers と同様、これらはあるパッケージで宣言されますが、一致するファイルを含む別のパッケージをインストールまたは削除したときに実行されます。

ファイルトリガー の一般的な用途は、レジストリーまたはキャッシュを更新することです。このようなユースケースでは、レジストリーまたはキャッシュを含む、または管理するパッケージにも、単一または複数の ファイルトリガー が含まれている必要があります。ファイルトリガー を含めると、パッケージがそれ自体の更新を制御する場合と比べて時間を短縮できます。

6.3.1. ファイルトリガー構文

ファイルトリガー の構文は以下のとおりです。

%file_trigger_tag [FILE_TRIGGER_OPTIONS] — PATHPREFIX…​
body_of_script

詳細は以下のようになります。

file_trigger_tag は、ファイルトリガーのタイプを定義します。使用可能なタイプは次のとおりです。

  • filetriggerin
  • filetriggerun
  • filetriggerpostun
  • transfiletriggerin
  • transfiletriggerun
  • transfiletriggerpostun

FILE_TRIGGER_OPTIONS は、-P オプションを除き、RPM スクリプトレットオプションと同じ目的で使用されます。

トリガーの優先度は数字で定義されます。この数字が大きいほど、ファイルトリガースクリプトの実行優先度が高くなります。優先度が 100000 を超えるトリガーは、標準のスクリプトレットの前に実行され、その他のトリガーは標準のスクリプトレットの後に実行されます。デフォルトの優先度は 1000000 に設定されています。

各タイプのすべてのファイルトリガーには、1 つ以上のパス接頭辞とスクリプトが含まれている必要があります。

6.3.2. ファイルトリガー構文の例

次の例は、File triggers の構文を示しています。

%filetriggerin — /lib, /lib64, /usr/lib, /usr/lib64
/usr/sbin/ldconfig

このファイルトリガーは、/usr/lib または /lib で始まるパスを含むパッケージのインストール後に、/usr/bin/ldconfig を直接実行します。/usr/lib または /lib で始まるパスを持つ複数のファイルがパッケージに含まれている場合でも、ファイルトリガーは 1 度のみ実行されます。ただし、/usr/lib または /lib で始まるファイル名はすべて、以下のようにスクリプト内でフィルタリングできるように、トリガースクリプトの標準入力に渡されます。

%filetriggerin — /lib, /lib64, /usr/lib, /usr/lib64
grep "foo" && /usr/sbin/ldconfig

このファイルトリガーは、/usr/lib で始まり、foo を同時に含むファイルがある各パッケージに対して /usr/bin/ldconfig を実行します。接頭辞に一致するファイルには、通常のファイル、ディレクトリー、シンボリックリンクなど、すべての種類のファイルが含まれることに注意してください。

6.3.3. ファイルトリガータイプ

ファイルトリガー には、以下の 2 つの主要タイプがあります。

ファイルトリガー は、以下のように、実行時間に基づいてさらに分割されます。

  • パッケージのインストールまたは消去の前または後
  • トランザクションの前または後

6.3.3.1. パッケージファイルトリガーごとの実行

パッケージごとに 1 回実行される ファイルトリガー:

  • %filetriggerin
  • %filetriggerun
  • %filetriggerpostun
%filetriggerin

このファイルトリガーは、このトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上パッケージに含まれている場合にパッケージのインストール後に実行されます。また、これはこのファイルトリガーを含むパッケージのインストール後に実行されます。rpmdb データベースにこのファイルトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上存在します。

%filetriggerun

このトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上このパッケージに含まれている場合、このファイルトリガーはパッケージのアンインストールの前に実行されます。また、これはこのファイルトリガーを含むパッケージをアンインストールする前に実行されます。rpmdb には、このファイルトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上あります。

%filetriggerpostun

このファイルトリガーは、このトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上含まれている場合に、パッケージのアンインストール後に実行されます。

6.3.3.2. トランザクションファイルトリガーごとに 1 の回実行

トランザクションごとに 1 回実行される ファイルトリガー:

  • %transfiletriggerin
  • %transfiletriggerun
  • %transfiletriggerpostun
%transfiletriggerin

このファイルトリガーはトランザクション後に、このトリガーの接頭辞に一致する 1 つ以上のファイルを含むすべてのインストール済みパッケージに対して実行されます。このトランザクションにこのファイルトリガーを含むパッケージがあり、rpmdb にこのトリガーの接頭辞に一致するファイルがつ以上ある場合は、トランザクションの後にも実行されます。

%transfiletriggerun

このファイルトリガーは、以下の条件を満たすすべてのパッケージのトランザクションの前に 1 度だけ実行されます。

  • このトランザクションでパッケージがアンインストールされます。
  • パッケージには、このトリガーの接頭辞に一致する 1 つ以上のファイルが含まれています。

このトランザクションにこのファイルトリガーを含むパッケージがあり、rpmdb にこのトリガーの接頭辞に一致するファイルが 1 つ以上ある場合は、トランザクションの前にも実行されます。

%transfiletriggerpostun

このファイルトリガーは、トランザクション後に、このトリガーの接頭辞に一致する 1 つ以上のファイルを含むすべてのアンインストール済みパッケージに対して実行されます。

注記

このトリガータイプでは、トリガーファイルのリストは利用できません。

そのため、ライブラリーを含む複数のパッケージをインストールまたはアンインストールすると、トランザクション全体の最後で ldconfig キャッシュが更新されます。これにより、キャッシュが各パッケージに対して個別に更新されていた RHEL 7 に比べて、パフォーマンスが大幅に改善されます。また、すべてのパッケージの SPEC ファイルで ldconfig と %postun を呼び出していたスクリプレットが必要ではなくなりました。

6.3.4. glibc でのファイルトリガーの使用例

次の例は、glibc パッケージ内での File triggers の実際の使用法を示しています。

RHEL 8 では、インストールまたはアンインストールトランザクションの最後に ldconfig コマンドを呼び出すために、ファイルトリガーglibc に実装されています。

これは、glibc SPEC ファイルに以下のスクリプトレットを含めることで実現されました。

%transfiletriggerin common -P 2000000 – /lib /usr/lib /lib64 /usr/lib64
/sbin/ldconfig
%end
%transfiletriggerpostun common -P 2000000 – /lib /usr/lib /lib64 /usr/lib64
/sbin/ldconfig
%end

そのため、複数のパッケージのインストールまたはアンインストールを行うと、トランザクション全体が終了してから、インストールしたすべてのライブラリーに対して ldconfig キャッシュが更新されます。そのため、個別のパッケージの RPM SPEC ファイルに ldconfig を呼び出すスクリプトレットを含める必要はありません。これにより、RHEL 7 に比べてパフォーマンスが改善され、各パッケージに対してキャッシュが別途更新されるようになりました。

6.4. より厳密な SPEC パーサー

SPEC パーサーに、いくつかの変更が行われました。したがって、以前は無視されていた新しい問題を特定できます。

6.5. 4 GB を超えるファイルのサポート

Red Hat Enterprise Linux 8 では、RPM は 64 ビットの変数とタグを使用できます。これにより、4 GB を超えるファイルやパッケージで動作可能になりました。

6.5.1. 64 ビット RPM タグ

64 ビットバージョンとそれ以前の 32 ビットバージョンには、複数の RPM タグがあります。64 ビットバージョンの名前の前には LONG 文字列があることに注意してください。

表6.4 32 ビットバージョンと 64 ビットバージョンの両方で利用可能な RPM タグ

32 ビットバリアントタグ名62 ビットバリアントタグ名タグ説明

RPMTAG_SIGSIZE

RPMTAG_LONGSIGSIZE

ヘッダーおよび圧縮ペイロードサイズ。

RPMTAG_ARCHIVESIZE

RPMTAG_LONGARCHIVESIZE

非圧縮ペイロードサイズ。

RPMTAG_FILESIZES

RPMTAG_LONGFILESIZES

ファイルサイズの配列。

RPMTAG_SIZE

RPMTAG_LONGSIZE

すべてのファイルサイズの合計。

6.5.2. コマンドラインでの 64 ビットタグの使用

LONG 拡張機能は、コマンドラインで常に有効になります。rpm -q --QF コマンドを含むスクリプトを以前使用していた場合は、これらのタグ名に long を追加できます。

rpm -qp --qf="[%{filenames} %{longfilesizes}\n]"

6.6. その他の機能

Red Hat Enterprise Linux 8 の RPM のパッケージ化に関連するその他の新機能は、以下のとおりです。

  • 非冗長モードで出力を確認する簡易署名
  • 強制ペイロード検証のサポート
  • 署名チェックの強制モードのサポート
  • マクロの追加と廃止事項

関連情報

RPM、RPM のパッケージ化、RPM のビルドに関連するさまざまなトピックについては、以下を参照してください。これらの一部は高度なもので、本書に記載されている入門資料の発展となります。

Red Hat Software Collections Overview - Red Hat Software Collections は、最新の安定したバージョンで継続的に更新される開発ツールを提供します。

Red Hat Software Collections - Packaging Guide は、Software Collections の概要と、これらの構築およびパッケージする方法について説明しています。RPM を使用したソフトウェアパッケージングの基本知識がある開発者およびシステム管理者は、このガイドを使用して Software Collections を開始できます。

Mock - Mock は、さまざまなアーキテクチャー向けのコミュニティー対応パッケージビルドソリューションと、ビルドホストと異なる Fedora または RHEL バージョンを提供します。

RPM ドキュメント - 公式の RPM ドキュメント

Fedora Packaging Guidelines - Fedora の公式パッケージングガイドラインで、RPM ベースのすべてのディストリビューションに役に立ちます。

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