Red Hat Training
A Red Hat training course is available for RHEL 8
さまざまな種類のサーバーのデプロイメント
Web サーバーとリバースプロキシー、ネットワークファイルサービス、データベースサーバー、メールトランスポートエージェント、およびプリンターのセットアップと設定
概要
多様性を受け入れるオープンソースの強化
Red Hat では、コード、ドキュメント、Web プロパティーにおける配慮に欠ける用語の置き換えに取り組んでいます。まずは、マスター (master)、スレーブ (slave)、ブラックリスト (blacklist)、ホワイトリスト (whitelist) の 4 つの用語の置き換えから始めます。この取り組みは膨大な作業を要するため、今後の複数のリリースで段階的に用語の置き換えを実施して参ります。詳細は、Red Hat CTO である Chris Wright のメッセージ をご覧ください。
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第1章 Apache HTTP Web サーバーの設定
1.1. Apache HTTP Web サーバーの概要
Web サーバー は、Web 経由でクライアントにコンテンツを提供するネットワークサービスです。これは通常 Web ページを指しますが、他のドキュメントも当てはまります。Web サーバーは、ハイパーテキスト転送プロトコル (HTTP) を使用するため、HTTP サーバーとも呼ばれます。
Apache HTTP Server (httpd
) は、Apache Software Foundation が開発したオープンソースの Web サーバーです。
Red Hat Enterprise Linux の以前のリリースからアップグレードする場合は、適切に httpd
サービス設定を更新する必要があります。本セクションでは、新たに追加された機能の一部と、以前の設定ファイルの更新を説明します。
1.2. Apache HTTP Server への主な変更点
Apache HTTP Server が、RHEL 7 のバージョン 2.4.6 から、RHEL 8 のバージョン 2.4.37 に更新されました。この更新バージョンには新機能がいくつか含まれていますが、外部モジュールの設定および Application Binary Interface (ABI) のレベルでは、RHEL 7 バージョンとの後方互換性を維持します。
新機能は次のとおりです。
-
httpd
モジュール含まれるmod_http2
パッケージにより、HTTP/2
に対応するようになりました。 -
systemd ソケットのアクティベーションが対応します。詳細は、man ページの
httpd.socket(8)
を参照してください。
新しいモジュールが複数追加されています。
-
mod_proxy_hcheck
- プロキシーのヘルスチェックモジュール -
mod_proxy_uwsgi
- Web Server Gateway Interface (WSGI) プロキシー -
mod_proxy_fdpass
- クライアントのソケットを別のプロセスに渡す -
mod_cache_socache
- HTTP キャッシュ (例: memcache バックエンドを使用) -
mod_md
- ACME プロトコルの SSL/TLS 証明書サービス
-
以下のモジュールはデフォルトで読み込まれるようになりました。
-
mod_request
-
mod_macro
-
mod_watchdog
-
-
新しいサブパッケージ
httpd-filesystem
が追加されています。これには、Apache HTTP Server の基本的なディレクトリーレイアウト (ディレクトリーの適切な権限を含む) が含まれます。 -
インスタンス化されたサービスのサポート
httpd@.service
が導入されました。詳細は、man ページのhttpd.service
を参照してください。
-
新しい
httpd-init.service
が%post script
に置き換わり、自己署名の鍵ペアmod_ssl
を作成します。
-
(
Let's Encrypt
などの証明書プロバイダーで使用するため) 自動証明書管理環境 (ACME) プロトコルを使用した、TLS 証明書の自動プロビジョニングおよび更新に、mod_md
パッケージで対応するようになりました。 -
Apache HTTP Server が、
PKCS#11
モジュールを利用して、ハードウェアのセキュリティートークンから、TLS 証明書および秘密鍵を直接読み込むようになりました。これにより、mod_ssl
設定で、PKCS#11
URL を使用して、SSLCertificateKeyFile
ディレクティブおよびSSLCertificateFile
ディレクティブに、TLS 秘密鍵と、必要に応じて TLS 証明書をそれぞれ指定できるようになりました。 /etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルの新しいListenFree
ディレクティブに対応するようになりました。Listen
ディレクティブと同様、ListenFree
は、サーバーがリッスンする IP アドレス、ポート、または IP アドレスとポートの組み合わせに関する情報を提供します。ただし、ListenFree
を使用すると、IP_FREEBIND
ソケットオプションがデフォルトで有効になります。したがって、httpd
は、ローカルではない IP アドレス、または今はまだ存在していない IP アドレスにバインドすることもできます。これにより、httpd
がソケットをリッスンできるようになり、httpd
がバインドしようとするときに、基になるネットワークインターフェイスまたは指定した動的 IP アドレスを起動する必要がなくなります。ListenFree
ディレクティブは、現在 RHEL 8 でのみ利用できます。ListenFree
の詳細は、以下の表を参照してください。表1.1 ListenFree ディレクティブの構文、状態、およびモジュール
構文 状態 モジュール ListenFree [IP-address:]portnumber [protocol]
MPM
event、worker、prefork、mpm_winnt、mpm_netware、mpmt_os2
その他の主な変更点は次の通りです。
以下のモジュールが削除されました。
-
mod_file_cache
mod_nss
代わりに
mod_ssl
を使用します。mod_nss
からの移行に関する詳細は、「Apache Web Server 設定で秘密鍵と証明書を使用できるように NSS データベースからの証明書のエクスポート」 を参照してください。-
mod_perl
-
-
RHEL 8 の Apache HTTP Server が使用するデフォルトの DBM 認証データベースのデフォルトタイプが、
SDBM
からdb5
に変更になりました。 -
Apache HTTP Server の
mod_wsgi
モジュールが Python 3 に更新されました。WSGI アプリケーションは Python 3 でしか対応していないため、Python 2 から移行する必要があります。 Apache HTTP Server を使用してデフォルトで設定されたマルチプロセッシングモジュール (MPM) は、マルチプロセスのフォークモデル (
prefork
として知られています) から、高パフォーマンスのマルチスレッドモデルevent
に変更しました。スレッドセーフではないサードパーティーのモジュールは、交換または削除する必要があります。設定した MPM を変更するには、
/etc/httpd/conf.modules.d/00-mpm.conf
ファイルを編集します。詳細は、man ページのhttpd.service(8)
を参照してください。- suEXEC によりユーザーに許可される最小 UID および GID はそれぞれ 1000 および 500 です (以前は 100 および 100 でした)。
-
/etc/sysconfig/httpd
ファイルは、httpd
サービスへの環境変数の設定に対応するインターフェイスではなくなりました。systemd サービスに、httpd.service(8)
の man ページが追加されています。 -
httpd
サービスを停止すると、デフォルトで自動停止が使用されます。 -
mod_auth_kerb
モジュールが、mod_auth_gssapi
モジュールに置き換わりました。
1.3. 設定の更新
Red Hat Enterprise Linux 7 で使用されている Apache HTTP Server バージョンから設定ファイルを更新するには、以下のいずれかのオプションを選択します。
-
/etc/sysconfig/httpd
を使用して環境変数を設定する場合は、代わりに systemd ドロップインファイルを作成します。 - サードパーティーのモジュールを使用する場合は、そのモジュールがスレッド化 MPM と互換性があることを確認してください。
- suexec を使用する場合は、ユーザーおよびグループの ID が新しい最小値に合致していることを確認します。
以下のコマンドを使用すると、設定に誤りがないかどうかを確認できます。
# apachectl configtest
Syntax OK
1.4. Apache 設定ファイル
デフォルトでは、httpd
は起動後に設定ファイルを読み取ります。次の表に、設定ファイルの場所のリストを示します。
表1.2 httpd サービスの設定ファイル
パス | 詳細 |
---|---|
| 主要設定ファイル。 |
| 主要設定ファイル内に含まれている設定ファイル用の補助ディレクトリー。 |
| Red Hat Enterprise Linux にパッケージ化されたインストール済みの動的モジュールを読み込む設定ファイルの補助ディレクトリー。デフォルト設定では、この設定ファイルが最初に処理されます。 |
デフォルト設定はほとんどの状況に適していますが、その他の設定オプションを使用することもできます。変更を有効にするには、まず Web サーバーを再起動します。
設定に誤りがないことを確認するには、シェルプロンプトで以下のコマンドを実行します。
# apachectl configtest
Syntax OK
間違いからの復元を容易にするため、編集する前にオリジナルファイルのコピーを作成します。
1.5. httpd サービスの管理
本セクションでは、httpd
サービスを起動、停止、および再起動する方法を説明します。
前提条件
- Apache HTTP Server がインストールされている。
手順
httpd
サービスを起動するには、以下を入力します。# systemctl start httpd
httpd
サービスを停止するには、以下を入力します。# systemctl stop httpd
httpd
サービスを再起動するには、以下を入力します。# systemctl restart httpd
1.6. シングルインスタンスの Apache HTTP Server 設定
シングルインスタンスの Apache HTTP Server を設定して、静的 HTML コンテンツを提供できます。
Web サーバーに関連付けられた全ドメインにサーバーから同じコンテンツを提供する必要がある場合は、この手順に従います。異なるドメインに異なるコンテンツを提供する場合は、名前ベースの仮想ホストを設定します。詳細は Apache 名ベースの仮想ホストの設定 を参照してください。
手順
httpd
パッケージをインストールします。# yum install httpd
firewalld
を使用する場合は、ローカルのファイアウォールで TCP ポート80
を開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=80/tcp # firewall-cmd --reload
httpd
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now httpd
必要に応じて、HTML ファイルを
/var/www/html/
ディレクトリーに追加します。注記/var/www/html/
にコンテンツを追加する場合には、httpd
を実行するユーザーが、デフォルトでファイルとディレクトリーを読み取れるようにする必要があります。コンテンツの所有者は、root
ユーザーおよびroot
ユーザーグループ、または管理者別のユーザーまたはグループのいずれかになります。コンテンツの所有者がroot
ユーザーおよびroot
ユーザーグループの場合には、他のユーザーがファイルを読み取れるようにする必要があります。すべてのファイルとディレクトリーの SELinux コンテキストはhttpd_sys_content_t
である必要があります。これはデフォルトで/var/www
ディレクトリー内の全コンテンツに適用されます。
検証手順
Web ブラウザーで
http://server_IP_or_host_name/
に接続します。/var/www/html/
ディレクトリーが空であるか、index.html
またはindex.htm
ファイルが含まれていない場合は、Apache がRed Hat Enterprise Linux Test Page
を表示します。/var/www/html/
に異なる名前の HTML ファイルが含まれる場合は、http://server_IP_or_host_name/example.html
など、そのファイル名に URL を指定して読み込むことができます。
関連情報
- Apache マニュアル: Apache HTTP サーバーマニュアルのインストール
-
httpd.service(8)
man ページを参照してください。
1.7. Apache 名前ベースの仮想ホストの設定
名前ベースの仮想ホストを使用すると、Apache は、サーバーの IP アドレスに解決されるドメイン別に異なるコンテンツを提供できます。
別々のドキュメントルートディレクトリーを使用して、example.com
ドメインと example.net
ドメインの両方に仮想ホストを設定できます。どちらの仮想ホストも静的 HTML コンテンツを提供します。
前提条件
クライアントおよび Web サーバーは、
example.com
およびexample.net
ドメインを Web サーバーの IP アドレスに解決します。これらのエントリーは DNS サーバーに手動で追加する必要がある点に注意してください。
手順
httpd
パッケージをインストールします。# yum install httpd
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルを編集します。example.com
ドメイン向けに以下の仮想ホスト設定を追加します。<VirtualHost *:80> DocumentRoot "/var/www/example.com/" ServerName example.com CustomLog /var/log/httpd/example.com_access.log combined ErrorLog /var/log/httpd/example.com_error.log </VirtualHost>
これらの設定は以下を設定します。
-
<VirtualHost *:80>
ディレクティブの全設定は、この仮想ホストに固有のものです。 -
DocumentRoot
は、仮想ホストの Web コンテンツへのパスを設定します。 ServerName
は、この仮想ホストがコンテンツを提供するドメインを設定します。複数のドメインを設定するには、
ServerAlias
パラメーターを設定に追加し、追加のドメインをスペース区切りで、このパラメーターに指定します。-
CustomLog
は、仮想ホストのアクセスログへのパスを設定します。 ErrorLog
は、仮想ホストのエラーログへのパスを設定します。注記Apache は、
ServerName
およびServerAlias
パラメーターに設定したドメインどれにも一致しない要求の場合でも、設定で最初に検出された仮想マシンを使用します。これには、サーバーの IP アドレス対してに送信される要求も含まれます。
-
example.net
ドメイン向けに同様の仮想ホスト設定を追加します。<VirtualHost *:80> DocumentRoot "/var/www/example.net/" ServerName example.net CustomLog /var/log/httpd/example.net_access.log combined ErrorLog /var/log/httpd/example.net_error.log </VirtualHost>
両方の仮想ホストのドキュメントルートを作成します。
# mkdir /var/www/example.com/ # mkdir /var/www/example.net/
DocumentRoot
パラメーターのパスが/var/www/
内にない設定を行う場合は、両方のドキュメントルートにhttpd_sys_content_t
コンテキストを設定します。# semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/srv/example.com(/.*)?" # restorecon -Rv /srv/example.com/ # semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/srv/example.net(/.\*)?" # restorecon -Rv /srv/example.net/
以下のコマンドは、
/srv/example.com/
および/srv/example.net/
ディレクトリーにhttpd_sys_content_t
コンテキストを設定します。policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールしてrestorecon
コマンドを実行する必要があります。firewalld
を使用する場合は、ローカルのファイアウォールでポート80
を開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=80/tcp # firewall-cmd --reload
httpd
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now httpd
検証手順
仮想ホストのドキュメントルートごとに異なるサンプルファイルを作成します。
# echo "vHost example.com" > /var/www/example.com/index.html # echo "vHost example.net" > /var/www/example.net/index.html
-
ブラウザーを使用して
http://example.com
に接続します。Web サーバーは、example.com
仮想ホストからのサンプルファイルを表示します。 -
ブラウザーを使用して
http://example.net
に接続します。Web サーバーは、example.net
仮想ホストからのサンプルファイルを表示します。
1.8. Apache HTTP Web サーバーの Kerberos 認証の設定
Apache HTTP Web サーバーで Kerberos 認証を実行するために、RHEL 8 は mod_auth_gssapi
Apache モジュールを使用します。Generic Security Services API (GSSAPI
) は、Kerberos などのセキュリティーライブラリーを使用する要求を行うアプリケーションのインターフェイスです。gssproxy
サービスでは、httpd
サーバーに特権の分離を実装できます。これにより、セキュリティーの観点からこのプロセスが最適化されます。
削除した mod_auth_kerb
モジュールは、mod_auth_gssapi
モジュールに置き換わります。
前提条件
-
httpd
パッケージおよびgssproxy
パッケージがインストールされている。 -
Apache Web サーバーが設定され、
httpd
サービスが実行している。
1.8.1. IdM 環境で GSS-Proxy の設定
この手順では、Apache HTTP Web サーバーで Kerberos 認証を実行するように GSS-Proxy
を設定する方法を説明します。
手順
サービスプリンシパルを作成し、HTTP/<SERVER_NAME>@realm プリンシパルの
keytab
ファイルへのアクセスを有効にします。# ipa service-add HTTP/<SERVER_NAME>
/etc/gssproxy/http.keytab
ファイルに保存されているプリンシパルのkeytab
を取得します。# ipa-getkeytab -s $(awk '/^server =/ {print $3}' /etc/ipa/default.conf) -k /etc/gssproxy/http.keytab -p HTTP/$(hostname -f)
このステップでは、パーミッションを 400 に設定すると、
root
ユーザーのみがkeytab
ファイルにアクセスできます。apache
ユーザーは異なります。以下の内容で
/etc/gssproxy/80-httpd.conf
ファイルを作成します。[service/HTTP] mechs = krb5 cred_store = keytab:/etc/gssproxy/http.keytab cred_store = ccache:/var/lib/gssproxy/clients/krb5cc_%U euid = apache
gssproxy
サービスを再起動して、有効にします。# systemctl restart gssproxy.service # systemctl enable gssproxy.service
関連情報
-
gssproxy(8)
の man ページ -
gssproxy-mech(8)
の man ページ -
gssproxy.conf(5)
の man ページ
1.8.2. Apache HTTP Web サーバーが共有するディレクトリーに Kerberos 認証の設定
この手順では、/var/www/html/private/
ディレクトリーに Kerberos 認証を設定する方法を説明します。
前提条件
-
gssproxy
サービスが設定され、実行されている。
手順
/var/www/html/private/
ディレクトリーを保護するようにmod_auth_gssapi
を設定します。<Location /var/www/html/private> AuthType GSSAPI AuthName "GSSAPI Login" Require valid-user </Location>
システムユニット設定のドロップインファイルを作成します。
# systemctl edit httpd.service
次のパラメーターをシステムのドロップインファイルに追加します。
[Service] Environment=GSS_USE_PROXY=1
systemd
設定をリロードします。# systemctl daemon-reload
httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd.service
検証手順
Kerberos チケットを取得します。
# kinit
- ブラウザーで、保護されているディレクトリーの URL を開きます。
1.9. Apache HTTP サーバーで TLS 暗号化の設定
デフォルトでは、Apache は暗号化されていない HTTP 接続を使用してクライアントにコンテンツを提供します。本セクションでは、TLS 暗号化を有効にし、Apache HTTP Server で頻繁に使用される暗号化関連の設定を行う方法を説明します。
前提条件
- Apache HTTP Server がインストールされ、実行している。
1.9.1. Apache HTTP Server への TLS 暗号化の追加
example.com
ドメインの Apache HTTP サーバーで TLS 暗号化を有効にすることができます。
前提条件
- Apache HTTP Server がインストールされ、実行している。
秘密鍵が
/etc/pki/tls/private/example.com.key
ファイルに保存されている。秘密鍵および証明書署名要求 (CSR) を作成する方法と、認証局 (CA) からの証明書を要求する方法は、CA のドキュメントを参照してください。または、お使いの CA が ACME プロトコルに対応している場合は、
mod_md
モジュールを使用して、TLS 証明書の取得およびプロビジョニングを自動化できます。-
TLS 証明書は
/etc/pki/tls/certs/example.com.crt
ファイルに保存されます。別のパスを使用する場合は、この手順で対応する手順を調整します。 -
認証局証明書は
/etc/pki/tls/certs/ca.crt
に保存されています。別のパスを使用する場合は、この手順で対応する手順を調整します。 - クライアントおよび Web サーバーは、サーバーのホスト名を Web サーバーの IP アドレスに対して解決します。
手順
mod_ssl
パッケージをインストールします。# yum install mod_ssl
/etc/httpd/conf.d/ssl.conf
ファイルを編集し、以下の設定を<VirtualHost _default_:443>
ディレクティブに追加します。サーバー名を設定します。
ServerName example.com
重要サーバー名は、証明書の
Common Name
フィールドに設定されているエントリーと一致している必要があります。必要に応じて、証明書の
Subject Alt Names
(SAN) フィールドに追加のホスト名が含まれる場合に、これらのホスト名にも TLS 暗号化を提供するようにmod_ssl
を設定できます。これを設定するには、ServerAliases
パラメーターと対応する名前を追加します。ServerAlias www.example.com server.example.com
秘密鍵、サーバー証明書、および CA 証明書へのパスを設定します。
SSLCertificateKeyFile "/etc/pki/tls/private/example.com.key" SSLCertificateFile "/etc/pki/tls/certs/example.com.crt" SSLCACertificateFile "/etc/pki/tls/certs/ca.crt"
セキュリティー上の理由から、
root
ユーザーのみが秘密鍵ファイルにアクセスできるように設定します。# chown root:root /etc/pki/tls/private/example.com.key # chmod 600 /etc/pki/tls/private/example.com.key
警告秘密鍵に権限のないユーザーがアクセスした場合は、証明書を取り消し、新しい秘密鍵を作成し、新しい証明書を要求します。そうでない場合は、TLS 接続が安全ではなくなります。
firewalld
を使用する場合は、ローカルのファイアウォールでポート443
を開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=443/tcp # firewall-cmd --reload
httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
注記パスワードで秘密鍵ファイルを保護した場合は、
httpd
サービスの起動時に毎回このパスワードを入力する必要があります。
検証手順
-
ブラウザーを使用して、
https://example.com
に接続します。
1.9.2. Apache HTTP サーバーでサポートされる TLS プロトコルバージョンの設定
デフォルトでは、RHEL の Apache HTTP Server は、最新のブラウザーにも互換性のある安全なデフォルト値を定義するシステム全体の暗号化ポリシーを使用します。たとえば、DEFAULT
ポリシーでは、TLSv1.2
および TLSv1.3
プロトコルバージョンのみが Apache で有効になるように定義します。
Apache HTTP Server がサポートする TLS プロトコルのバージョンを手動で設定できます。たとえば、環境が特定の TLS プロトコルバージョンのみを有効にする必要がある場合には、以下の手順に従います。
-
お使いの環境のクライアントで、セキュリティーの低い
TLS1
(TLSv1.0) プロトコルまたはTLS1.1
プロトコルも使用できるようにする必要がある場合。 -
Apache が
TLSv1.2
プロトコルまたはTLSv1.3
プロトコルのみに対応するように設定する場合。
前提条件
- Apache HTTP Server への TLS 暗号化の追加 で説明されているとおり、TLS 暗号化がサーバーで有効になります。
手順
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルを編集し、TLS プロトコルバージョンを設定する<VirtualHost>
ディレクティブに以下の設定を追加します。たとえば、TLSv1.3
プロトコルのみを有効にするには、以下を実行します。SSLProtocol -All TLSv1.3
httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
検証手順
以下のコマンドを使用して、サーバーが
TLSv1.3
に対応していることを確認します。# openssl s_client -connect example.com:443 -tls1_3
以下のコマンドを使用して、サーバーが
TLSv1.2
に対応していないことを確認します。# openssl s_client -connect example.com:443 -tls1_2
サーバーがプロトコルに対応していない場合には、このコマンドは以下のエラーを返します。
140111600609088:error:1409442E:SSL routines:ssl3_read_bytes:tlsv1 alert protocol version:ssl/record/rec_layer_s3.c:1543:SSL alert number 70
- 必要に応じて、他の TLS プロトコルバージョンのコマンドを繰り返し実行します。
関連情報
-
update-crypto-policies(8)
の man ページ - Using system-wide cryptographic policies.
-
SSLProtocol
パラメーターの詳細については、Apache マニュアルのmod_ssl
のドキュメント Apache HTTP サーバーマニュアルのインストール を参照してください。
1.9.3. Apache HTTP サーバーで対応している暗号の設定
デフォルトでは、Apache HTTP サーバーは、安全なデフォルト値を定義するシステム全体の暗号化ポリシーを使用します。これは、最近のブラウザーとも互換性があります。システム全体の暗号化で使用可能な暗号化のリストは、/etc/crypto-policies/back-ends/openssl.config
ファイルを参照してください。
Apache HTTP Server がサポートする暗号を手動で設定できます。お使いの環境で特定の暗号が必要な場合は、以下の手順に従います。
前提条件
- Apache HTTP Server への TLS 暗号化の追加 で説明されているとおり、TLS 暗号化がサーバーで有効になります。
手順
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルを編集し、TLS 暗号を設定する<VirtualHost>
ディレクティブにSSLCipherSuite
パラメーターを追加します。SSLCipherSuite "EECDH+AESGCM:EDH+AESGCM:AES256+EECDH:AES256+EDH:!SHA1:!SHA256"
この例では、
EECDH+AESGCM
、EDH+AESGCM
、AES256+EECDH
、およびAES256+EDH
暗号のみを有効にし、SHA1
およびSHA256
メッセージ認証コード (MAC) を使用するすべての暗号を無効にします。httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
検証手順
Apache HTTP Server が対応する暗号化のリストを表示するには、以下を行います。
nmap
パッケージをインストールします。# yum install nmap
nmap
ユーティリティーを使用して、対応している暗号を表示します。# nmap --script ssl-enum-ciphers -p 443 example.com ... PORT STATE SERVICE 443/tcp open https | ssl-enum-ciphers: | TLSv1.2: | ciphers: | TLS_ECDHE_RSA_WITH_AES_256_GCM_SHA384 (ecdh_x25519) - A | TLS_DHE_RSA_WITH_AES_256_GCM_SHA384 (dh 2048) - A | TLS_ECDHE_RSA_WITH_CHACHA20_POLY1305_SHA256 (ecdh_x25519) - A ...
関連情報
-
update-crypto-policies(8)
の man ページ - Using system-wide cryptographic policies.
- SSLCipherSuite
1.10. TLS クライアント証明書認証の設定
クライアント証明書認証を使用すると、管理者は、証明書で認証したユーザーのみが Web サーバーのリソースにアクセスできるようにすることが可能です。/var/www/html/Example/
ディレクトリーにクライアント証明書認証を設定できます。
Apache HTTP Server が TLS 1.3 プロトコルを使用する場合、特定のクライアントには追加の設定が必要です。たとえば、Firefox で、about:config
メニューの security.tls.enable_post_handshake_auth
パラメーターを true
に設定します。詳細は、Transport Layer Security version 1.3 in Red Hat Enterprise Linux 8 を参照してください。
前提条件
- Apache HTTP Server への TLS 暗号化の追加 で説明されているとおり、TLS 暗号化がサーバーで有効になります。
手順
/etc/httpd/conf/httpd.conf
ファイルを編集し、以下の設定をクライアント認証を設定する<VirtualHost>
ディレクティブに追加します。<Directory "/var/www/html/Example/"> SSLVerifyClient require </Directory>
SSLVerifyClient require
の設定では、/var/www/html/Example/
ディレクトリーのコンテンツにクライアントがアクセスする前に、サーバーがクライアント証明書を正常に検証する必要があることを定義します。httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
検証手順
curl
ユーティリティーを使用して、クライアント認証なしでhttps://example.com/Example/
URL にアクセスします。$ curl https://example.com/Example/ curl: (56) OpenSSL SSL_read: error:1409445C:SSL routines:ssl3_read_bytes:tlsv13 alert certificate required, errno 0
このエラーは、Web サーバーにクライアント証明書認証が必要であることを示しています。
クライアントの秘密鍵と証明書、および CA 証明書を
curl
に指定して、クライアント認証で同じ URL にアクセスします。$ curl --cacert ca.crt --key client.key --cert client.crt https://example.com/Example/
要求に成功すると、
curl
は/var/www/html/Example/
ディレクトリーに保存されているindex.html
ファイルを表示します。
関連情報
1.11. ModSecurity を使用した Web サーバー上の Web アプリケーションの保護
ModSecurity は、Apache、Nginx、IIS などのさまざまな Web サーバーでサポートされているオープンソースの Web アプリケーションファイアウォール (WAF) であり、Web アプリケーションのセキュリティーリスクを軽減します。ModSecurity は、サーバーを設定するためのカスタマイズ可能なルールセットを提供します。
mod_security-crs
パッケージには、クロス Web サイトスクリプティング、不正なユーザーエージェント、SQL インジェクション、トロイの木馬、セッションハイジャック、およびその他の不正使用に対するルールを含むコアルールセット (CRS) が含まれています。
1.11.1. Apache 用 ModSecurity Web ベースアプリケーションファイアウォールのデプロイ
ModSecurity をデプロイして、Web サーバー上で Web ベースアプリケーションの実行に関連するリスクを軽減するには、Apache HTTP サーバー用の mod_security
および mod_security_crs
パッケージをインストールします。mod_security_crs
パッケージは、ModSecurity Web ベースのアプリケーションファイアウォール (WAF) モジュールのコアルールセット (CRS) を提供します。
手順
mod_security
、mod_security_crs
、およびhttpd
パッケージをインストールします。# yum install -y mod_security mod_security_crs httpd
httpd
サーバーを起動します。# systemctl restart httpd
検証
ModSecurity Web ベースアプリケーションファイアウォールが Apache HTTPサーバーで有効になっていることを確認します。
# httpd -M | grep security security2_module (shared)
/etc/httpd/modsecurity.d/activated_rules/
ディレクトリーにmod_security_crs
によって提供されるルールが含まれていることを確認します。# ls /etc/httpd/modsecurity.d/activated_rules/ ... REQUEST-921-PROTOCOL-ATTACK.conf REQUEST-930-APPLICATION-ATTACK-LFI.conf ...
1.11.2. ModSecurity へのカスタムルールの追加
ModSecurity コアルールセット (CRS) に含まれるルールがシナリオに適合せず、追加の攻撃の可能性を防ぎたい場合は、カスタムルールを ModSecurity Web ベースアプリケーションファイアウォールで使用されるルールセットに追加できます。次の例は、単純なルールの追加を示しています。より複雑なルールを作成するには、ModSecurity Wiki Web サイトのリファレンスマニュアルを参照してください。
前提条件
- ModSecurity for Apache がインストールされ、有効になっている。
手順
任意のテキストエディターで
/etc/httpd/conf.d/mod_security.conf
ファイルを開きます。以下はその例です。# vi /etc/httpd/conf.d/mod_security.conf
SecRuleEngine On
で始まる行の後に、次のサンプルルールを追加します。SecRule ARGS:data "@contains evil" "deny,status:403,msg:'param data contains evil data',id:1"
前のルールでは、
data
パラメーターにevil
の文字列が含まれている場合、ユーザーによるリソースの使用を禁止しています。- 変更を保存し、エディターを終了します。
httpd
サーバーを再起動します。# systemctl restart httpd
検証
test.html
ページを作成します。# echo "mod_security test" > /var/www/html/test.html
httpd
サーバーを再起動します。# systemctl restart httpd
HTTP リクエストの
GET
変数に悪意のあるデータが含まれないtest.html
をリクエストします。$ curl http://localhost/test.html?data=good mod_security test
HTTP リクエストの
GET
変数に悪意のあるデータが含まれるtest.html
をリクエストします。$ curl localhost/test.html?data=xxxevilxxx <!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//IETF//DTD HTML 2.0//EN"> <html><head> <title>403 Forbidden</title> </head><body> <h1>Forbidden</h1> <p>You do not have permission to access this resource.</p> </body></html>
/var/log/httpd/error_log
ファイルを確認し、param data containing an evil data
メッセージでアクセスを拒否するログエントリーを見つけます。[Wed May 25 08:01:31.036297 2022] [:error] [pid 5839:tid 139874434791168] [client ::1:45658] [client ::1] ModSecurity: Access denied with code 403 (phase 2). String match "evil" at ARGS:data. [file "/etc/httpd/conf.d/mod_security.conf"] [line "4"] [id "1"] [msg "param data contains evil data"] [hostname "localhost"] [uri "/test.html"] [unique_id "Yo4amwIdsBG3yZqSzh2GuwAAAIY"]
関連情報
1.12. Apache HTTP Server のマニュアルのインストール
Apache HTTP Server のマニュアルをインストールできます。このマニュアルには、以下のような詳細なドキュメントが含まれます。
- 設定パラメーターおよびディレクティブ
- パフォーマンスチューニング
- 認証設定
- モジュール
- コンテンツのキャッシュ
- セキュリティーに関するヒント
- TLS 暗号化の設定
マニュアルをインストールした後は、Web ブラウザーを使用して表示できます。
前提条件
- Apache HTTP Server がインストールされ、実行している。
手順
httpd-manual
パッケージをインストールします。# yum install httpd-manual
必要に応じて、デフォルトでは、Apache HTTP Server に接続するすべてのクライアントはマニュアルを表示できます。
192.0.2.0/24
サブネットなど、特定の IP 範囲へのアクセスを制限するには、/etc/httpd/conf.d/manual.conf
ファイルを編集し、Require ip 192.0.2.0/24
設定を<Directory "/usr/share/httpd/manual">
ディレクティブに追加します。<Directory "/usr/share/httpd/manual"> ... Require ip 192.0.2.0/24 ... </Directory>
httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
検証手順
-
Apache HTTP Server のマニュアルを表示するには、Web ブラウザーで
http://host_name_or_IP_address/manual/
に接続します。
1.13. Apache モジュールの操作
httpd
サービスはモジュラーアプリケーションであり、多数の 動的共有オブジェクト (DSO) で拡張できます。動的共有オブジェクト は、必要に応じて実行時に動的にロードまたはアンロードできるモジュールです。これらのモジュールは /usr/lib64/httpd/modules/
ディレクトリーにあります。
1.13.1. DSO モジュールのロード
管理者は、サーバーがロードするモジュールを設定することにより、サーバーに含める機能を選択できます。特定の DSO モジュールを読み込むには、LoadModule
ディレクティブを使用します。別のパッケージが提供するモジュールは、多くの場合、/etc/httpd/conf.modules.d/
ディレクトリーに独自の設定ファイルがあることに注意してください。
前提条件
-
httpd
パッケージをインストールしている。
手順
/etc/httpd/conf.modules.d/
ディレクトリーの設定ファイルでモジュール名を検索します。# grep mod_ssl.so /etc/httpd/conf.modules.d/*
モジュール名が見つかった設定ファイルを編集し、モジュールの
LoadModule
ディレクティブをコメント解除します。LoadModule ssl_module modules/mod_ssl.so
RHEL パッケージがモジュールを提供していないなどの理由でモジュールが見つからなかった場合は、次のディレクティブを使用して
/etc/httpd/conf.modules.d/30-example.conf
などの設定ファイルを作成します。LoadModule ssl_module modules/<custom_module>.so
httpd
サービスを再起動します。# systemctl restart httpd
1.13.2. カスタム Apache モジュールのコンパイル
独自のモジュールを作成し、モジュールのコンパイルに必要なインクルードファイル、ヘッダーファイル、および APache eXtenSion
(apxs
) ユーティリティーを含む httpd-devel
パッケージを使用してビルドできます。
前提条件
-
httpd-devel
パッケージがインストールされている。
手順
次のコマンドでカスタムモジュールをビルドします。
# apxs -i -a -c module_name.c
検証手順
- DSO モジュールのロード で説明されている方法でモジュールをロードします。
1.14. Apache Web Server 設定で秘密鍵と証明書を使用できるように NSS データベースからの証明書のエクスポート
RHEL 8 では Apache Web Server に mod_nss
モジュールが提供されなくなります。Red Hat は mod_ssl
モジュールの使用を推奨します。たとえば、RHEL 7 から RHEL 8 へ Web サーバーを移行したなどして、秘密鍵と証明書を Network Security Services (NSS) データベースに保存する場合は、以下の手順に従って、Privacy Enhanced Mail (PEM) 形式の鍵および証明書を抽出します。次に Apache HTTP サーバーでの TLS 暗号化の設定 で説明されているとおり、mod_ssl
設定でファイルを使用できます。
この手順では、NSS データベースが /etc/httpd/alias/
に保存され、エクスポートした秘密鍵と証明書を /etc/pki/tls/
ディレクトリーに保存することを前提としています。
前提条件
- 秘密鍵、証明書、および認証局 (CA) の証明書は NSS データベースに保存されます。
手順
NSS データベースの証明書をリスト表示します。
# certutil -d /etc/httpd/alias/ -L Certificate Nickname Trust Attributes SSL,S/MIME,JAR/XPI Example CA C,, Example Server Certificate u,u,u
次の手順では、証明書のニックネームが必要です。
秘密鍵を抽出するには、鍵を PKCS #12 ファイルに一時的にエクスポートする必要があります。
秘密鍵に関連付けられた証明書のニックネームを使用して、鍵を PKCS #12 ファイルにエクスポートします。
# pk12util -o /etc/pki/tls/private/export.p12 -d /etc/httpd/alias/ -n "Example Server Certificate" Enter password for PKCS12 file: password Re-enter password: password pk12util: PKCS12 EXPORT SUCCESSFUL
PKCS #12 ファイルにパスワードを設定する必要があります。次の手順では、このパスワードが必要です。
PKCS #12 ファイルから秘密鍵をエクスポートします。
# openssl pkcs12 -in /etc/pki/tls/private/export.p12 -out /etc/pki/tls/private/server.key -nocerts -nodes Enter Import Password: password MAC verified OK
PKCS #12 の一時ファイルを削除します。
# rm /etc/pki/tls/private/export.p12
/etc/pki/tls/private/server.key
にパーミッションを設定し、root
ユーザーのみがこのファイルにアクセスできるようにします。# chown root:root /etc/pki/tls/private/server.key # chmod 0600 /etc/pki/tls/private/server.key
NSS データベースのサーバー証明書のニックネームを使用して CA 証明書をエクスポートします。
# certutil -d /etc/httpd/alias/ -L -n "Example Server Certificate" -a -o /etc/pki/tls/certs/server.crt
/etc/pki/tls/certs/server.crt
にパーミッションを設定し、root
ユーザーのみがこのファイルにアクセスできるようにします。# chown root:root /etc/pki/tls/certs/server.crt # chmod 0600 /etc/pki/tls/certs/server.crt
NSS データベースの CA 証明書のニックネームを使用して、CA 証明書をエクスポートします。
#
certutil -d /etc/httpd/alias/ -L -n "Example CA" -a -o /etc/pki/tls/certs/ca.crt
Apache HTTP サーバーでの TLS 暗号化の設定 に従い、Apache Web サーバーを設定します。
-
SSLCertificateKeyFile
パラメーターを/etc/pki/tls/private/server.key
に設定します。 -
SSLCertificateFile
パラメーターを/etc/pki/tls/certs/server.crt
に設定します。 -
SSLCACertificateFile
パラメーターを/etc/pki/tls/certs/ca.crt
に設定します。
-
関連情報
-
certutil(1)
man ページ -
pk12util(1)
の man ページ -
pkcs12(1ssl)
の man ページ
1.15. 関連情報
-
httpd(8)
-
httpd.service(8)
-
httpd.conf(5)
-
apachectl(8)
- GSS-Proxy を使用した Apache httpd の操作。
- PKCS #11 で暗号化ハードウェアを使用するようにアプリケーションを設定
第2章 NGINX の設定および設定
NGINX は、次のように使用できる高パフォーマンスなモジュラーサーバーです。
- Web サーバー
- リバースプロキシー
- ロードバランサー
本セクションでは、このシナリオで NGINX を行う方法を説明します。
2.1. NGINX のインストールおよび準備
Red Hat は、アプリケーションストリームを使用して NGINX の異なるバージョンを提供します。以下を実行できます。
- ストリームを選択し、NGINX をインストールします。
- ファイアウォールで必要なポートを開きます。
-
nginx
サービスの有効化および開始
デフォルト設定を使用すると、NGINX はポート 80
の Web サーバーとして実行され、/usr/share/nginx/html/
ディレクトリーからコンテンツを提供します。
前提条件
- RHEL 8 がインストールされている。
- ホストが Red Hat カスタマーポータルにサブスクライブしている。
-
firewalld
サービスが有効化され、開始されている。
手順
利用可能な NGINX モジュールストリームを表示します。
# yum module list nginx Red Hat Enterprise Linux 8 for x86_64 - AppStream (RPMs) Name Stream Profiles Summary nginx 1.14 [d] common [d] nginx webserver nginx 1.16 common [d] nginx webserver ... Hint: [d]efault, [e]nabled, [x]disabled, [i]nstalled
デフォルト以外のストリームをインストールする場合は、そのストリームを選択します。
# yum module enable nginx:stream_version
nginx
パッケージをインストールします。# yum install nginx
NGINX がファイアウォールでサービスを提供するポートを開きます。たとえば、
firewalld
で HTTP (ポート 80) および HTTPS (ポート 443) のデフォルトポートを開くには、次のコマンドを実行します。# firewall-cmd --permanent --add-port={80/tcp,443/tcp} # firewall-cmd --reload
nginx
サービスがシステムの起動時に自動的に起動するようにします。# systemctl enable nginx
必要に応じて、
nginx
サービスを起動します。# systemctl start nginx
デフォルト設定を使用しない場合は、この手順を省略し、サービスを起動する前に NGINX を適切に設定します。
検証手順
yum
ユーティリティーを使用して、nginx
パッケージがインストールされていることを確認します。# yum list installed nginx Installed Packages nginx.x86_64 1:1.14.1-9.module+el8.0.0+4108+af250afe @rhel-8-for-x86_64-appstream-rpms
NGINX がサービスを提供するポートが firewalld で開いていることを確認します。
# firewall-cmd --list-ports 80/tcp 443/tcp
nginx
サービスが有効になっていることを確認します。# systemctl is-enabled nginx enabled
関連情報
- Subscription Manager の詳細は、Subscription Manager の使用および設定 ガイドを参照してください。
- アプリケーションストリーム、モジュール、およびインストールパッケージの詳細は、ユーザー空間コンポーネントのインストール、管理、および削除 を参照してください。
- ファイアウォールの設定に関する詳細は、ネットワークのセキュリティー保護 を参照してください。
2.2. ドメインごとに異なるコンテンツを提供する Web サーバーとしての NGINX の設定
デフォルトでは、NGINX は Web サーバーとして機能し、サーバーの IP アドレスに関連付けられた全ドメイン名のクライアントに、同じコンテンツを提供します。この手順では、NGINX を設定する方法を説明します。
-
/var/www/example.com/
ディレクトリーのコンテンツで、example.com
ドメインに対するリクエストに対応する。 -
/var/www/example.net/
ディレクトリーのコンテンツで、example.net
ドメインに対するリクエストに対応する。 -
その他の全リクエスト (たとえば、サーバーの IP アドレスまたはサーバーの IP アドレスに関連付けられたその他のドメイン) に
/usr/share/nginx/html/
ディレクトリーのコンテンツを指定します。
前提条件
- NGINX がインストールされている
クライアントおよび Web サーバーは、
example.com
およびexample.net
ドメインを Web サーバーの IP アドレスに解決します。これらのエントリーは DNS サーバーに手動で追加する必要がある点に注意してください。
手順
/etc/nginx/nginx.conf
ファイルを編集します。デフォルトでは、
/etc/nginx/nginx.conf
ファイルには catch-all 設定がすでに含まれています。設定からこの部分を削除した場合は、以下のserver
ブロックを/etc/nginx/nginx.conf
ファイルのhttp
ブロックに追加し直します。server { listen 80 default_server; listen [::]:80 default_server; server_name _; root /usr/share/nginx/html; }
これらの設定は以下を設定します。
-
listen
ディレクティブは、サービスがリッスンする IP アドレスとポートを定義します。この場合、NGINX は IPv4 と IPv6 の両方のアドレスのポート80
でリッスンします。default_server
パラメーターは、NGINX がこのserver
ブロックを IP アドレスとポートに一致するリクエストのデフォルトとして使用していることを示します。 -
server_name
パラメーターは、このserver
ブロックに対応するホスト名を定義します。server_name
を_
に設定すると、このserver
ブロックのホスト名を受け入れるように NGINX を設定します。 -
root
ディレクティブは、このserver
ブロックの Web コンテンツへのパスを設定します。
-
example.com
ドメインの同様のserver
ブロックをhttp
ブロックに追加します。server { server_name example.com; root /var/www/example.com/; access_log /var/log/nginx/example.com/access.log; error_log /var/log/nginx/example.com/error.log; }
-
access_log
ディレクティブは、このドメインに別のアクセスログファイルを定義します。 -
error_log
ディレクティブは、このドメインに別のエラーログファイルを定義します。
-
example.net
ドメインの同様のserver
ブロックをhttp
ブロックに追加します。server { server_name example.net; root /var/www/example.net/; access_log /var/log/nginx/example.net/access.log; error_log /var/log/nginx/example.net/error.log; }
両方のドメインのルートディレクトリーを作成します。
# mkdir -p /var/www/example.com/ # mkdir -p /var/www/example.net/
両方のルートディレクトリーに
httpd_sys_content_t
コンテキストを設定します。# semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/var/www/example.com(/.*)?" # restorecon -Rv /var/www/example.com/ # semanage fcontext -a -t httpd_sys_content_t "/var/www/example.net(/.\*)?" # restorecon -Rv /var/www/example.net/
これらのコマンドは、
/var/www/example.com/
ディレクトリーおよび/var/www/example.net/
ディレクトリーにhttpd_sys_content_t
コンテキストを設定します。policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールしてrestorecon
コマンドを実行する必要があります。両方のドメインのログディレクトリーを作成します。
# mkdir /var/log/nginx/example.com/ # mkdir /var/log/nginx/example.net/
nginx
サービスを再起動します。# systemctl restart nginx
検証手順
仮想ホストのドキュメントルートごとに異なるサンプルファイルを作成します。
# echo "Content for example.com" > /var/www/example.com/index.html # echo "Content for example.net" > /var/www/example.net/index.html # echo "Catch All content" > /usr/share/nginx/html/index.html
-
ブラウザーを使用して
http://example.com
に接続します。Web サーバーは、/var/www/example.com/index.html
ファイルからのサンプルコンテンツを表示します。 -
ブラウザーを使用して
http://example.net
に接続します。Web サーバーは、/var/www/example.net/index.html
ファイルからのサンプルコンテンツを表示します。 -
ブラウザーを使用して
http://IP_address_of_the_server
に接続します。Web サーバーは、/usr/share/nginx/html/index.html
ファイルからのサンプルコンテンツを表示します。
2.3. NGINX Web サーバーへの TLS 暗号化の追加
example.com
ドメインの NGINX Web サーバーで TLS 暗号化を有効にすることができます。
前提条件
- NGINX がインストールされている。
秘密鍵が
/etc/pki/tls/private/example.com.key
ファイルに保存されている。秘密鍵および証明書署名要求 (CSR) を作成する方法と、認証局 (CA) からの証明書を要求する方法は、CA のドキュメントを参照してください。
-
TLS 証明書は
/etc/pki/tls/certs/example.com.crt
ファイルに保存されます。別のパスを使用する場合は、この手順で対応する手順を調整します。 - CA 証明書がサーバーの TLS 証明書ファイルに追加されている。
- クライアントおよび Web サーバーは、サーバーのホスト名を Web サーバーの IP アドレスに対して解決します。
-
ポート
443
が、ローカルのファイアウォールで開放されている。
手順
/etc/nginx/nginx.conf
ファイルを編集し、設定のhttp
ブロックに以下のserver
ブロックを追加します。server { listen 443 ssl; server_name example.com; root /usr/share/nginx/html; ssl_certificate /etc/pki/tls/certs/example.com.crt; ssl_certificate_key /etc/pki/tls/private/example.com.key; }
セキュリティー上の理由から、
root
ユーザーのみが秘密鍵ファイルにアクセスできるように設定します。# chown root:root /etc/pki/tls/private/example.com.key # chmod 600 /etc/pki/tls/private/example.com.key
警告秘密鍵に権限のないユーザーがアクセスした場合は、証明書を取り消し、新しい秘密鍵を作成し、新しい証明書を要求します。そうでない場合は、TLS 接続が安全ではなくなります。
nginx
サービスを再起動します。# systemctl restart nginx
検証手順
-
ブラウザーを使用して、
https://example.com
に接続します。
2.4. HTTP トラフィックのリバースプロキシーとしての NGINX の設定
NGINX Web サーバーは、HTTP トラフィックのリバースプロキシーとして機能するように設定できます。たとえば、この機能を使用すると、リモートサーバーの特定のサブディレクトリーに要求を転送できます。クライアント側からは、クライアントはアクセス先のホストからコンテンツを読み込みます。ただし、NGINX は実際のコンテンツをリモートサーバーから読み込み、クライアントに転送します。
この手順では、Web サーバーの /example
ディレクトリーへのトラフィックを、URL https://example.com
に転送する方法を説明します。
前提条件
- NGINX は、NGINX のインストールと準備 の説明に従ってインストールされます。
- 必要に応じて、TLS 暗号化がリバースプロキシーで有効になっている。
手順
/etc/nginx/nginx.conf
ファイルを編集し、リバースプロキシーを提供するserver
ブロックに以下の設定を追加します。location /example { proxy_pass https://example.com; }
location
ブロックでは、NGINX が/example
ディレクトリー内の全要求をhttps://example.com
に渡すことを定義します。SELinux ブール値パラメーター
httpd_can_network_connect
を1
に設定して、SELinux が NGINX がトラフィックを転送できるように設定します。# setsebool -P httpd_can_network_connect 1
nginx
サービスを再起動します。# systemctl restart nginx
検証手順
-
ブラウザーを使用して
http://host_name/example
に接続すると、https://example.com
の内容が表示されます。
2.5. NGINX の HTTP ロードバランサーとしての設定
NGINX リバースプロキシー機能を使用してトラフィックを負荷分散できます。この手順では、HTTP ロードバランサーとして NGINX を設定して、アクティブな接続数が最も少ないサーバーがどれかを基にして、要求を異なるサーバーに送信する方法を説明します。どちらのサーバーも利用できない場合には、この手順でフォールバックを目的とした 3 番目のホストも定義します。
前提条件
- NGINX は、NGINX のインストールと準備 の説明に従ってインストールされます。
手順
/etc/nginx/nginx.conf
ファイルを編集し、以下の設定を追加します。http { upstream backend { least_conn; server server1.example.com; server server2.example.com; server server3.example.com backup; } server { location / { proxy_pass http://backend; } } }
backend
という名前のホストグループのleast_conn
ディレクティブは、アクティブな接続数が最も少ないサーバーがどれかを基にして、NGINX が要求をserver1.example.com
またはserver2.example.com
に送信することを定義します。NGINX は、他の 2 つのホストが利用できない場合は、server3.example.com
のみをバックアップとして使用します。proxy_pass
ディレクティブをhttp://backend
に設定すると、NGINX はリバースプロキシーとして機能し、backend
ホストグループを使用して、このグループの設定に基づいて要求を配信します。least_conn
負荷分散メソッドの代わりに、以下を指定することができます。- ラウンドロビンを使用し、サーバー全体で要求を均等に分散する方法はありません。
-
ip_hash
: クライアントの IPv4 アドレスのオクテットの内、最初の 3 つ、または IPv6 アドレス全体から計算されたハッシュに基づいて、あるクライアントアドレスから同じサーバーに要求を送信します。 -
hash
: ユーザー定義のキーに基づいてサーバーを判断します。これは、文字列、変数、または両方の組み合わせになります。consistent
パラメーターは、ユーザー定義のハッシュ化された鍵の値に基づいて、NGINX がすべてのサーバーに要求を分散するように設定します。 -
random
: 無作為に選択されたサーバーに要求を送信します。
nginx
サービスを再起動します。# systemctl restart nginx
2.6. 関連情報
- 公式の NGINX のドキュメントについては、https://nginx.org/en/docs/ を参照してください。Red Hat はこのドキュメントを管理しておらず、インストールした NGINX バージョンで機能しない可能性があることに注意してください。
- PKCS #11 で暗号化ハードウェアを使用するようにアプリケーションを設定
第3章 Samba をサーバーとして使用
Samba は、Red Hat Enterprise Linux にサーバーメッセージブロック (SMB) プロトコルを実装します。SMB プロトコルは、ファイル共有、共有プリンターなど、サーバーのリソースにアクセスするのに使用されます。また、Samba は、Microsoft Windows が使用する分散コンピューティング環境のリモートプロシージャコール (DCE RPC) のプロトコルを実装します。
Samba は以下のように実行できます。
- Active Directory (AD) または NT4 ドメインメンバー
- スタンドアロンサーバー
NT4 プライマリードメインコントローラー (PDC) またはバックアップドメインコントローラー (BDC)
注記Red Hat は、NT4 ドメインに対応する Windows バージョンの既存のインストールでのみ、PDC モードおよび BDC モードをサポートします。Red Hat では、新しい Samba NT4 ドメインを設定しないことを推奨します。これは、Windows 7 および Windows Server 2008 R2 以降の Microsoft オペレーティングシステムが NT4 ドメインに対応していないためです。
Red Hat は、Samba を AD ドメインコントローラー (DC) として実行することはサポートしていません。
インストールモードとは関係なく、必要に応じてディレクトリーやプリンターを共有できます。これにより、Samba がファイルサーバーおよびプリントサーバーとして機能できるようになります。
3.1. さまざまな Samba サービスおよびモードについて
samba
パッケージは複数のサービスを提供します。環境と設定するシナリオに応じて、これらのサービスが 1 つ以上必要となり、Samba をさまざまなモードで設定します。
3.1.1. Samba サービス
Samba は以下のサービスを提供します。
smbd
このサービスは、SMB プロトコルを使用してファイル共有およびプリントサービスを提供します。また、サービスは、リソースのロックと、接続ユーザーの認証を担当します。ドメインメンバーを認証するには、
smbd
にwinbindd
が必要です。smb
systemd
サービスが起動し、smbd
デーモンが停止します。smbd
サービスを使用するには、samba
パッケージをインストールします。nmbd
このサービスは、NetBIOS over IPv4 プロトコルを使用してホスト名および IP 解決を提供します。名前解決に加え、
nmbd
サービスで SMB ネットワークを参照して、ドメイン、作業グループ、ホスト、ファイル共有、およびプリンターを探すことができます。このため、サービスはこの情報をブロードキャストクライアントに直接報告するか、ローカルまたはマスターのブラウザーに転送します。nmb
systemd
サービスは、nmbd
デーモンを起動し、停止します。最近の SMB ネットワークは、クライアントおよび IP アドレスの解決に DNS を使用することに注意してください。Kerberos の場合は、稼働中の DNS 設定が必要です。
nmbd
サービスを使用するには、samba
パッケージをインストールします。winbindd
このサービスは、ローカルシステムの AD または NT4 のドメインユーザーおよびグループを使用する Name Service Switch (NSS) のインターフェイスを提供します。これにより、たとえばドメインユーザーを、Samba サーバーにホストされるサービスや他のローカルサービスに認証できます。
winbind
systemd
サービスは、winbindd
デーモンを開始および停止します。Samba をドメインメンバーとして設定する場合は、
smbd
サービスの前にwinbindd
を起動する必要があります。そうしないと、ドメインユーザーおよびグループはローカルシステムで使用できなくなります。winbindd
サービスを使用するには、samba-winbind
パッケージをインストールします。重要Red Hat は、ドメインユーザーおよびグループをローカルシステムに提供するために、Samba を、
winbindd
サービスを使用するサーバーとして実行することのみをサポートします。Windows アクセス制御リスト (ACL) のサポート、NT LAN Manager (NTLM) のフォールバックがないなど、特定の制限により、SSSD に対応しません。
3.1.2. Samba セキュリティーサービス
/etc/samba/smb.conf
ファイルの [global]
セクションの security
パラメーターは、Samba がサービスに接続しているユーザーを認証する方法を管理します。Samba をインストールするモードに応じて、パラメーターは異なる値に設定する必要があります。
- AD ドメインメンバーに、
security = ads
を設定する。 このモードでは、Samba は Kerberos を使用して AD ユーザーを認証します。
Samba をドメインメンバーとして設定する方法の詳細については、Samba を AD ドメインメンバーサーバーとして設定 を参照してください。
- スタンドアロンサーバーで、
security = user
を設定する。 このモードでは、Samba がローカルデータベースを使用して接続ユーザーを認証します。
Samba をスタンドアロンサーバーとしてセットアップする方法の詳細については、スタンドアロンサーバーとしての Samba の設定 を参照してください。
- NT4 PDC または BDC に
security = user
を設定する。 - Samba は、このモードでは、ユーザーをローカルまたは LDAP データベースに認証します。
- NT4 ドメインメンバーで、
security = domain
を設定する。 Samba は、このモードでは、NT4 PDC または BDC にユーザーを接続する認証を行います。このモードは、AD ドメインメンバーには使用できません。
Samba をドメインメンバーとして設定する方法の詳細については、Samba を AD ドメインメンバーサーバーとして設定 を参照してください。
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページのsecurity
パラメーター
3.1.3. Samba サービスおよび Samba クライアントユーティリティーが設定を読み込み、再読み込みするシナリオ
以下は、Samba サービスおよびユーティリティーによる設定の読み込み、再読み込み時について説明します。
Samba サービスは、設定を再読み込みする時:
- 3 分ごとに自動更新
-
手動要求の場合に
smbcontrol all reload-config
コマンドを実行するとします。
- Samba クライアントユーティリティーは、起動時にのみ設定を読み取ります。
security
などの特定のパラメーターの適用には、smb
サービスの再起動が必要です。再読み込みだけでは十分ではないことに注意してください。
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページのHow configuration changes are apply
セクション -
smbd(8)
、nmbd(8)
、およびwinbindd(8)
man ページ
3.1.4. 安全な方法での Samba 設定の編集
Samba サービスは、3 分ごとに設定を自動的に再読み込みします。testparm
ユーティリティーでの設定の検証前にサービスが変更を再読み込みしないように、安全な方法で Samba 設定を編集できます。
前提条件
- Samba がインストールされている。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルのコピーを作成します。# cp /etc/samba/smb.conf /etc/samba/samba.conf.copy
- コピーして作成したファイルを編集し、必要な変更を加えます。
/etc/samba/samba.conf.copy
ファイルの設定を確認します。# testparm -s /etc/samba/samba.conf.copy
testparm
がエラーを報告した場合は、修正してもう一度コマンドを実行します。/etc/samba/smb.conf
ファイルを新しい設定に上書きします。# mv /etc/samba/samba.conf.copy /etc/samba/smb.conf
Samba サービスが設定を自動的に再読み込みするか、手動で設定を再読み込みするまで待ちます。
# smbcontrol all reload-config
3.2. testparm ユーティリティーを使用した smb.conf ファイルの検証
testparm
ユーティリティーは、/etc/samba/smb.conf
ファイルの Samba 設定が正しいことを確認します。このユーティリティーは、無効なパラメーターおよび値を検出しますが、ID マッピングなどの間違った設定も検出します。testparm
が問題を報告しないと、Samba サービスは /etc/samba/smb.conf
ファイルを正常に読み込みます。testparm
は、設定されたサービスが利用可能であること、または期待通りに機能するかを確認できないことに注意してください。
Red Hat では、このファイルの変更後に毎回 testparm
を使用して、/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証することが推奨されます。
前提条件
- Samba をインストールしている。
-
/etc/samba/smb.conf
ファイルが存在する。
手順
root
ユーザーでtestparm
ユーティリティーを実行します。# testparm Load smb config files from /etc/samba/smb.conf rlimit_max: increasing rlimit_max (1024) to minimum Windows limit (16384) Unknown parameter encountered: "log levell" Processing section "[example_share]" Loaded services file OK. ERROR: The idmap range for the domain * (tdb) overlaps with the range of DOMAIN (ad)! Server role: ROLE_DOMAIN_MEMBER Press enter to see a dump of your service definitions # Global parameters [global] ... [example_share] ...
上記の出力例では、存在しないパラメーターと間違った ID マッピングの設定が報告されます。
-
testparm
が設定内の間違ったパラメーター、値、またはその他のエラーを報告する場合は、問題を修正してから再度ユーティリティーを実行してください。
3.3. Samba をスタンドアロンサーバーとして設定
Samba は、ドメインのメンバーではないサーバーとして設定できます。このインストールモードでは、Samba はユーザーを中央 DC ではなくローカルデータベースに認証します。また、ゲストアクセスを有効にして、ユーザーが、認証なしで 1 つまたは複数のサービスに接続できるようにすることもできます。
3.3.1. スタンドアロンサーバーのサーバー設定の設定
Samba スタンドアロンサーバーのサーバー設定を設定できます。
手順
samba
パッケージをインストールします。# yum install samba
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集して、以下のパラメーターを設定します。[global] workgroup = Example-WG netbios name = Server security = user log file = /var/log/samba/%m.log log level = 1
この設定では、
Example-WG
ワークグループに、スタンドアロンサーバー (Server
) を定義します。また、この設定により最小レベル (1
) でのログ記録が可能になり、ログファイルは/var/log/samba/
ディレクトリーに保存されます。Samba は、log file
パラメーターの%m
マクロを、接続しているクライアントの NetBIOS 名までデプロイメントします。これにより、クライアントごとに個別のログファイルが有効になります。オプションで、ファイルまたはプリンターの共有を設定します。参照:
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
認証が必要な共有を設定する場合は、ユーザーアカウントを作成します。
詳細は ローカルユーザーアカウントの作成および有効化 を参照してください。
firewall-cmd
ユーティリティーを使用して必要なポートを開き、ファイアウォール設定を再読み込みします。# firewall-cmd --permanent --add-service=samba # firewall-cmd --reload
smb
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now smb
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページ
3.3.2. ローカルユーザーアカウントの作成および有効化
共有への接続時にユーザーが認証を行えるようにするには、オペレーティングシステムと Samba データベースの両方で Samba ホストにアカウントを作成する必要があります。Samba では、ファイルシステムオブジェクトでアクセス制御リスト (ACL) を検証するオペレーティングシステムアカウントと、接続ユーザーの認証を行う Samba アカウントが必要です。
passdb backend = tdbsam
のデフォルト設定を使用すると、Samba はユーザーアカウントを /var/lib/samba/private/passdb.tdb
データベースに保存します。
example
という名前のローカル Samba ユーザーを作成できます。
前提条件
- Samba が、スタンドアロンサーバーとしてインストールされている。
手順
オペレーティングシステムアカウントを作成します。
# useradd -M -s /sbin/nologin example
このコマンドは、ホームディレクトリーを作成せずに、
example
アカウントを追加します。アカウントが Samba への認証のみに使用される場合は、/sbin/nologin
コマンドをシェルとして割り当て、アカウントがローカルでログインしないようにします。オペレーティングシステムのアカウントにパスワードを設定して、これを有効にします。
# passwd example Enter new UNIX password:
password
Retype new UNIX password:password
passwd: password updated successfullySamba は、オペレーティングシステムのアカウントに設定されたパスワードを使用して認証を行いません。ただし、アカウントを有効にするには、パスワードを設定する必要があります。アカウントが無効になると、そのユーザーが接続した時に Samba がアクセスを拒否します。
Samba データベースにユーザーを追加し、そのアカウントにパスワードを設定します。
# smbpasswd -a example New SMB password:
password
Retype new SMB password:password
Added user example.このアカウントを使用して Samba 共有に接続する場合に、このパスワードを使用して認証を行います。
Samba アカウントを有効にします。
# smbpasswd -e example Enabled user example.
3.4. Samba ID マッピングの理解および設定
Windows ドメインは、ユーザーおよびグループを一意のセキュリティー識別子 (SID) で区別します。ただし、Linux では、ユーザーおよびグループごとに一意の UID と GID が必要です。Samba をドメインメンバーとして実行する場合は、winbindd
サービスが、ドメインユーザーおよびグループに関する情報をオペレーティングシステムに提供します。
winbindd
サービスが、ユーザーおよびグループの一意の ID を Linux に提供するようにするには、/etc/samba/smb.conf
ファイルで ID マッピングを設定する必要があります。
- ローカルデータベース (デフォルトドメイン)
- Samba サーバーがメンバーになっている AD または NT4 のドメイン
- ユーザーがこの Samba サーバーのリソースにアクセスする必要のある信頼ドメイン
Samba は、特定の設定に対して異なる ID マッピングバックエンドを提供します。最も頻繁に使用されるバックエンドは、以下の通りです。
バックエンド | ユースケース |
---|---|
|
|
| AD ドメインのみ |
| AD ドメインおよび NT4 ドメイン |
|
AD、NT4、および |
3.4.1. Samba ID 範囲の計画
Linux の UID および GID を AD に保存するか、Samba がそれを生成するように設定するかに関係なく、各ドメイン設定には、他のドメインと重複しない一意の ID 範囲が必要です。
重複する ID 範囲を設定すると、Samba が正常に機能しなくなります。
例3.1 一意の ID 範囲
以下は、デフォルト (*
)、AD-DOM
、および TRUST-DOM
のドメインの非オーバーランディングの ID マッピング範囲を示しています。
[global] ... idmap config * : backend = tdb idmap config * : range = 10000-999999 idmap config AD-DOM:backend = rid idmap config AD-DOM:range = 2000000-2999999 idmap config TRUST-DOM:backend = rid idmap config TRUST-DOM:range = 4000000-4999999
1 つのドメインに割り当てられるのは 1 つの範囲だけです。したがって、ドメイン範囲間で十分な容量を残しておきます。これにより、ドメインが拡大した場合に、後で範囲を拡張できます。
後で別の範囲をドメインに割り当てると、このユーザーおよびグループが作成したファイルおよびディレクトリーの所有権が失われます。
3.4.2. * デフォルトドメイン
ドメイン環境では、以下の各 ID マッピング設定を追加します。
- Samba サーバーがメンバーとなっているドメイン
- Samba サーバーにアクセスできる信頼された各ドメイン
ただし、Samba が、その他のすべてのオブジェクトに、デフォルトドメインから ID を割り当てます。これには以下が含まれます。
- ローカルの Samba ユーザーおよびグループ
-
Samba の組み込みアカウントおよびグループ (
BUILTIN\Administrators
など)
Samba が正常に機能できるようにするには、説明に従ってデフォルトのドメインを設定する必要があります。
割り当てられた ID を永続的に格納するには、デフォルトのドメインバックエンドを書き込み可能にする必要があります。
デフォルトドメインには、以下のいずれかのバックエンドを使用できます。
tdb
デフォルトのドメインを、
tdb
バックエンドを使用するように設定する場合は、ID 範囲を設定します。この ID 範囲には、将来作成されるオブジェクトや、定義されたドメイン ID マッピング設定には含まれないオブジェクトを追加できます。たとえば、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションで以下を設定します。idmap config * : backend = tdb idmap config * : range = 10000-999999
詳細は、TDB ID マッピングバックエンドの使用 を参照してください。
autorid
autorid
バックエンドを使用するように、デフォルトのドメインを設定する場合、ドメイン用の ID マッピング設定を追加するかどうかは任意になります。たとえば、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションで以下を設定します。idmap config * : backend = autorid idmap config * : range = 10000-999999
詳細は、autorid ID マッピングバックエンドの使用 を参照してください。
3.4.3. tdb ID マッピングバックエンドの使用
winbindd
サービスは、デフォルトで書き込み可能な tdb
ID マッピングバックエンドを使用して、セキュリティー識別子 (SID)、UID、および GID のマッピングテーブルを格納します。これには、ローカルユーザー、グループ、組み込みプリンシパルが含まれます。
このバックエンドは、*
デフォルトドメインにのみ使用してください。以下に例を示します。
idmap config * : backend = tdb idmap config * : range = 10000-999999
関連情報
3.4.4. ad ID マッピングバックエンドの使用
ad
ID マッピングバックエンドを使用するように Samba AD メンバーを設定できます。
ad
ID マッピングバックエンドは、読み取り専用 API を実装し、AD からアカウントおよびグループの情報を読み取ります。これには、以下の利点があります。
- ユーザーとグループの全設定は、AD に集中的に保存されます。
- ユーザーおよびグループの ID は、このバックエンドを使用するすべての Samba サーバーで一貫しています。
- ID は、破損する可能性のあるローカルデータベースには保存されないため、ファイルの所有権は失われません。
ad
ID マッピングバックエンドは、一方向の信頼を使用する Active Directory ドメインに対応していません。一方向の信頼で Active Directory のドメインメンバーを設定する場合は、tdb
、 rid
、または autorid
のいずれかの ID マッピングバックエンドを使用します。
ad バックエンドは、AD から以下の属性を読み込みます。
AD 属性名 | オブジェクトの種類 | マッピング先 |
---|---|---|
| ユーザーおよびグループ | オブジェクトのユーザー名またはグループ名 |
| ユーザー | ユーザー ID (UID) |
| グループ | グループ ID (GID) |
| ユーザー | ユーザーのシェルのパス |
| ユーザー | ユーザーのホームディレクトリーのパス |
| ユーザー | プライマリーグループ ID |
[a]
idmap config DOMAIN:unix_nss_info = yes を設定している場合に限り、Samba がこの属性を読み込みます。
[b]
idmap config DOMAIN:unix_primary_group = yes を設定している場合に限り、Samba がこの属性を読み込みます。
|
前提条件
-
ユーザーおよびグループはいずれも、AD で一意の ID が設定され、ID が、
/etc/samba/smb.conf
ファイルで設定されている範囲内にある。ID が範囲外にあるオブジェクトは、Samba サーバーでは利用できません。 - ユーザーおよびグループには、AD ですべての必須属性が設定されている。必要な属性がないと、ユーザーまたはグループは Samba サーバーで使用できなくなります。必要な属性は、設定によって異なります。前提条件:
- Samba をインストールしている。
-
ID マッピングを除く Samba 設定が
/etc/samba/smb.conf
ファイルにある。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションを編集します。デフォルトドメイン (
*
) に ID マッピング設定が存在しない場合は追加します。以下に例を示します。idmap config * : backend = tdb idmap config * : range = 10000-999999
AD ドメインの
ad
ID マッピングバックエンドを有効にします。idmap config DOMAIN : backend = ad
AD ドメインのユーザーおよびグループに割り当てられている ID の範囲を設定します。以下に例を示します。
idmap config DOMAIN : range = 2000000-2999999
重要この範囲は、このサーバーの他のドメイン設定と重複させることはできません。また、この範囲には、今後割り当てられる ID がすべて収まる大きさを設定する必要があります。詳細は、Samba ID 範囲の計画 を参照してください。
Samba が AD から属性を読み取る際に RFC 2307 スキーマを使用するように設定します。
idmap config DOMAIN : schema_mode = rfc2307
Samba が、対応する AD 属性からログインシェルおよびユーザーホームディレクトリーのパスを読み取るようにする場合は、以下を設定します。
idmap config DOMAIN : unix_nss_info = yes
または、すべてのユーザーに適用される、ドメイン全体のホームディレクトリーのパスおよびログインシェルを統一して設定できます。以下に例を示します。
template shell = /bin/bash template homedir = /home/%U
デフォルトでは、Samba は、ユーザーオブジェクトの
primaryGroupID
属性を、Linux のユーザーのプライマリーグループとして使用します。または、代わりにgidNumber
属性に設定されている値を使用するように Samba を設定できます。idmap config DOMAIN : unix_primary_group = yes
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
- * デフォルトドメイン
-
smb.conf(5)
およびidmap_ad(8)
man ページ -
smb.conf(5)
man ページのVARIABLE SUBSTITUTIONS
セクション
3.4.5. rid ID マッピングバックエンドの使用
rid
ID マッピングバックエンドを使用するように Samba ドメインメンバーを設定できます。
Samba は、Windows SID の相対識別子 (RID) を使用して、Red Hat Enterprise Linux で ID を生成できます。
RID は、SID の最後の部分です。たとえば、ユーザーの SID が S-1-5-21-5421822485-1151247151-421485315-30014
の場合、対応する RID は 30014
になります。
rid
ID マッピングバックエンドは、AD ドメインおよび NT4 ドメインのアルゴリズムマッピングスキームに基づいてアカウントおよびグループの情報を計算する読み取り専用 API を実装します。バックエンドを設定する場合は、idmap config DOMAIN : range
パラメーターで、RID の最小値および最大値を設定する必要があります。Samba は、このパラメーターで設定される RID の最小値および最大値を超えるユーザーまたはグループをマッピングしません。
読み取り専用のバックエンドとして、rid
は、BUILTIN
グループなど、新しい ID を割り当てることができません。したがって、*
デフォルトドメインにはこのバックエンドを使用しないでください。
rid バックエンドを使用した利点
- 設定された範囲内の RID があるドメインユーザーとグループはすべて、自動的にドメインメンバーで利用可能になります。
- ID、ホームディレクトリー、およびログインシェルを手動で割り当てる必要はありません。
rid バックエンドを使用した場合の短所
- すべてのドメインユーザーは、割り当てられた同じログインシェルとホームディレクトリーを取得します。ただし、変数を使用できます。
-
同じ ID 範囲設定で
rid
バックエンドを使用している Samba ドメインメンバーでは、ユーザー ID とグループ ID が同じになります。 - ドメインメンバーで個々のユーザーまたはグループを除外して、利用できないようにすることはできません。設定されている範囲外にあるユーザーとグループのみが除外されます。
-
異なるドメインのオブジェクトの RID が同じ場合は、
winbindd
サービスが ID の計算に使用する式に基づき、複数ドメインの環境で重複する ID が発生する場合があります。
前提条件
- Samba をインストールしている。
-
ID マッピングを除く Samba 設定が
/etc/samba/smb.conf
ファイルにある。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションを編集します。デフォルトドメイン (
*
) に ID マッピング設定が存在しない場合は追加します。以下に例を示します。idmap config * : backend = tdb idmap config * : range = 10000-999999
ドメインの
rid
ID マッピングバックエンドを有効にします。idmap config DOMAIN : backend = rid
今後割り当てられるすべての RID が収まる大きさの範囲を設定します。以下に例を示します。
idmap config DOMAIN : range = 2000000-2999999
Samba は、そのドメインの RID がその範囲内にないユーザーおよびグループを無視します。
重要この範囲は、このサーバーの他のドメイン設定と重複させることはできません。また、この範囲には、今後割り当てられる ID がすべて収まる大きさを設定する必要があります。詳細は、Samba ID 範囲の計画 を参照してください。
すべてのマッピングユーザーに割り当てられるシェルおよびホームディレクトリーのパスを設定します。以下に例を示します。
template shell = /bin/bash template homedir = /home/%U
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
- * デフォルトドメイン
-
smb.conf(5)
man ページのVARIABLE SUBSTITUTIONS
セクション -
RID からのローカル ID の計算については、
idmap_rid(8)
man ページを参照してください。
3.4.6. autorid ID マッピングバックエンドの使用
autorid
ID マッピングバックエンドを使用するように Samba ドメインメンバーを設定できます。
autorid
バックエンドは、rid
ID マッピングバックエンドと同様の動作をしますが、異なるドメインに対して自動的に ID を割り当てることができます。これにより、以下の状況で autorid
バックエンドを使用できます。
-
*
デフォルトドメインのみ -
*
デフォルトドメインと追加のドメインでは、追加のドメインごとに ID マッピング設定を作成する必要はありません。 - 特定のドメインのみ
デフォルトドメインに autorid
を使用する場合は、ドメイン用の ID マッピング設定を追加するかどうかは任意です。
このセクションの一部は、Samba Wiki に公開されているドキュメント idmap config autorid に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
autorid バックエンドを使用した利点
- 設定された範囲内に計算した UID と GID があるすべてのドメインユーザーおよびグループは、ドメインメンバーで自動的に利用可能になります。
- ID、ホームディレクトリー、およびログインシェルを手動で割り当てる必要はありません。
- 複数ドメイン環境内の複数のオブジェクトが同じ RID を持つ場合でも、重複する ID はありません。
短所
- Samba ドメインメンバー間では、ユーザー ID とグループ ID は同じではありません。
- すべてのドメインユーザーは、割り当てられた同じログインシェルとホームディレクトリーを取得します。ただし、変数を使用できます。
- ドメインメンバーで個々のユーザーまたはグループを除外して、利用できないようにすることはできません。計算された UID または GID が、設定された範囲外にあるユーザーとグループのみが除外されます。
前提条件
- Samba をインストールしている。
-
ID マッピングを除く Samba 設定が
/etc/samba/smb.conf
ファイルにある。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションを編集します。*
デフォルトドメインのautorid
ID マッピングバックエンドを有効にします。idmap config * : backend = autorid
既存および将来の全オブジェクトに ID を割り当てられる大きさの範囲を設定します。以下に例を示します。
idmap config * : range = 10000-999999
Samba は、このドメインで計算した ID が範囲内にないユーザーおよびグループを無視します。
警告範囲を設定し、Samba がそれを使用して開始してからは、範囲の上限を小さくすることはできません。範囲にその他の変更を加えると、新しい ID 割り当てが発生し、ファイルの所有権が失われる可能性があります。
必要に応じて、範囲サイズを設定します。以下に例を示します。
idmap config * : rangesize = 200000
Samba は、
idmap config * : range
パラメーターに設定されている範囲からすべての ID を取得するまで、各ドメインのオブジェクトにこの数の連続 ID を割り当てます。注記rangesize を設定する場合は、適宜範囲を調整する必要があります。この範囲は rangesize の倍数である必要があります。
すべてのマッピングユーザーに割り当てられるシェルおよびホームディレクトリーのパスを設定します。以下に例を示します。
template shell = /bin/bash template homedir = /home/%U
必要に応じて、ドメイン用の ID マッピング設定を追加します。個別のドメインの設定が利用できない場合、Samba は以前に設定した
*
デフォルトドメインのautorid
バックエンド設定を使用して ID を計算します。重要この範囲は、このサーバーの他のドメイン設定と重複させることはできません。また、この範囲には、今後割り当てられる ID がすべて収まる大きさを設定する必要があります。詳細は、Samba ID 範囲の計画 を参照してください。
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
-
idmap_autorid(8)
man ページのTHE MAPPING FORMULAS
セクション -
idmap_autorid(8)
man ページのrangesize
パラメーターの説明 -
smb.conf(5)
man ページのVARIABLE SUBSTITUTIONS
セクション
3.5. Samba を AD ドメインメンバーサーバーとして設定
AD または NT4 のドメインを実行している場合は、Samba を使用して Red Hat Enterprise Linux サーバーをメンバーとしてドメインに追加し、以下を取得します。
- その他のドメインメンバーのドメインリソースにアクセスする
-
sshd
などのローカルサービスに対してドメインユーザーを認証する - サーバーにホストされているディレクトリーおよびプリンターを共有して、ファイルサーバーおよびプリントサーバーとして動作する
3.5.1. RHEL システムの AD ドメインへの参加
Samba Winbind は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) システムを Active Directory (AD) に接続するための System Security Services Daemon (SSSD) の代替手段です。realmd
を使用して Samba Winbind を設定することで、RHEL システムを AD ドメインに参加させることができます。
手順
AD で Kerberos 認証に非推奨の RC4 暗号化タイプが必要な場合は、RHEL でこの暗号のサポートを有効にします。
# update-crypto-policies --set DEFAULT:AD-SUPPORT
以下のパッケージをインストールします。
# yum install realmd oddjob-mkhomedir oddjob samba-winbind-clients \ samba-winbind samba-common-tools samba-winbind-krb5-locator
ドメインメンバーでディレクトリーまたはプリンターを共有するには、
samba
パッケージをインストールします。# yum install samba
既存の Samba 設定ファイル
/etc/samba/smb.conf
をバックアップします。# mv /etc/samba/smb.conf /etc/samba/smb.conf.bak
ドメインに参加します。たとえば、ドメイン
ad.example.com
に参加するには、以下のコマンドを実行します。# realm join --membership-software=samba --client-software=winbind ad.example.com
上記のコマンドを使用すると、
realm
ユーティリティーが自動的に以下を実行します。-
ad.example.com
ドメインのメンバーシップに/etc/samba/smb.conf
ファイルを作成します。 -
ユーザーおよびグループの検索用の
winbind
モジュールを、/etc/nsswitch.conf
ファイルに追加します。 -
/etc/pam.d/
ディレクトリーの PAM (プラグ可能な認証モジュール) 設定ファイルを更新します。 -
winbind
サービスを起動し、システムの起動時にサービスを起動できるようにします。
-
-
必要に応じて、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの別の ID マッピングバックエンド、またはカスタマイズした ID マッピングを設定します。詳細は、SambaID マッピングの理解と設定 を参照してください。 winbind
サービスが稼働していることを確認します。# systemctl status winbind ... Active: active (running) since Tue 2018-11-06 19:10:40 CET; 15s ago
重要Samba がドメインのユーザーおよびグループの情報をクエリーできるようにするには、
smb
を起動する前にwinbind
サービスを実行する必要があります。samba
パッケージをインストールしてディレクトリーおよびプリンターを共有している場合は、smb
サービスを有効化して開始します。# systemctl enable --now smb
-
必要に応じて、Active Directory へのローカルログインを認証する場合は、
winbind_krb5_localauth
プラグインを有効にします。MIT Kerberos 用のローカル承認プラグインの使用
検証手順
AD ドメインの AD 管理者アカウントなど、AD ユーザーの詳細を表示します。
# getent passwd "AD\administrator" AD\administrator:*:10000:10000::/home/administrator@AD:/bin/bash
AD ドメイン内のドメインユーザーグループのメンバーをクエリーします。
# getent group "AD\Domain Users" AD\domain users:x:10000:user1,user2
オプションで、ファイルやディレクトリーに権限を設定する際に、ドメインのユーザーおよびグループを使用できることを確認します。たとえば、
/srv/samba/example.txt
ファイルの所有者をAD\administrator
に設定し、グループをAD\Domain Users
に設定するには、以下のコマンドを実行します。# chown "AD\administrator":"AD\Domain Users" /srv/samba/example.txt
Kerberos 認証が期待どおりに機能することを確認します。
AD ドメインメンバーで、
administrator@AD.EXAMPLE.COM
プリンシパルのチケットを取得します。# kinit administrator@AD.EXAMPLE.COM
キャッシュされた Kerberos チケットを表示します。
# klist Ticket cache: KCM:0 Default principal: administrator@AD.EXAMPLE.COM Valid starting Expires Service principal 01.11.2018 10:00:00 01.11.2018 20:00:00 krbtgt/AD.EXAMPLE.COM@AD.EXAMPLE.COM renew until 08.11.2018 05:00:00
利用可能なドメインの表示:
# wbinfo --all-domains BUILTIN SAMBA-SERVER AD
関連情報
- 非推奨の RC4 暗号化を使用しない場合は、AD で AES 暗号化タイプを有効にすることができます。詳細は、
- GPO を使用した Active Directory で AES 暗号化タイプの有効化
-
realm(8)
man ページ
3.5.2. MIT Kerberos 用のローカル承認プラグインの使用
winbind
サービスは、Active Directory ユーザーをドメインメンバーに提供します。特定の状況では、管理者が、ドメインメンバーで実行している SSH サーバーなどのローカルサービスに対して、ドメインユーザーが認証を行えるようにします。Kerberos を使用してドメインユーザーを認証している場合は、winbind
サービスを介して、winbind_krb5_localauth
プラグインが Kerberos プリンシパルを Active Directory アカウントに正しくマッピングできるようにします。
たとえば、Active Directory ユーザーの sAMAccountName
属性を EXAMPLE
に設定し、小文字のユーザー名でユーザーがログインしようとすると、Kerberos はユーザー名を大文字で返します。その結果、エントリーは認証の失敗に一致しません。
winbind_krb5_localauth
プラグインを使用すると、アカウント名が正しくマッピングされます。これは GSSAPI 認証にのみ適用され、初期のチケット付与チケット (TGT) の取得には該当しません。
前提条件
- Samba が Active Directory のメンバーとして設定されている。
- Red Hat Enterprise Linux が、Active Directory に対してログイン試行を認証している。
-
winbind
サービスが実行している。
手順
/etc/krb5.conf
ファイルを編集し、以下のセクションを追加します。
[plugins] localauth = { module = winbind:/usr/lib64/samba/krb5/winbind_krb5_localauth.so enable_only = winbind }
関連情報
-
winbind_krb5_localauth(8)
man ページ.
3.6. IdM ドメインメンバーでの Samba の設定
Red Hat Identity Management (IdM) ドメインに参加しているホスト上で Samba をセットアップできます。IdM のユーザー、および可能であれば、信頼された Active Directory (AD) ドメインのユーザーは、Samba が提供する共有およびプリンターサービスにアクセスできます。
IdM ドメインメンバーで Samba を使用する機能は、テクノロジープレビュー機能で、特定の制限が含まれています。たとえば、IdM 信頼コントローラーは Active Directory グローバルカタログサービスをサポートしておらず、分散コンピューティング環境/リモートプロシージャコール (DCE/RPC) プロトコルを使用した IdM グループの解決をサポートしていません。結果として、AD ユーザーは、他の IdM クライアントにログインしている場合、IdM クライアントでホストされている Samba 共有とプリンターにのみアクセスできます。Windows マシンにログインしている AD ユーザーは、IdM ドメインメンバーでホストされている Samba 共有にアクセスできません。
IdM ドメインメンバーに Samba をデプロイしているお客様は、ぜひ Red Hat にフィードバックをお寄せください。
AD ドメインのユーザーが Samba によって提供される共有およびプリンターサービスにアクセスする必要がある場合は、AES 暗号化タイプが AD になっていることを確認してください。詳細は、GPO を使用した Active Directory での AES 暗号化タイプの有効化 を参照してください。
前提条件
- ホストは、クライアントとして IdM ドメインに参加している。
- IdM サーバーとクライアントの両方が RHEL 8.1 以降で実行されている必要がある。
3.6.1. Samba をドメインメンバーにインストールするための IdM ドメインの準備
IdM クライアントに Samba を設定する前に、IdM サーバーで ipa-adtrust-install
ユーティリティーを使用して IdM ドメインを準備する必要があります。
ipa-adtrust-install
コマンドを自動的に実行するシステムは、AD 信頼コントローラーになります。ただし、ipa-adtrust-install
は、IdM サーバーで 1 回のみ実行する必要があります。
前提条件
- IdM サーバーがインストールされている。
- パッケージをインストールし、IdM サービスを再起動するには、root 権限が必要です。
手順
必要なパッケージをインストールします。
[root@ipaserver ~]# yum install ipa-server-trust-ad samba-client
IdM 管理ユーザーとして認証します。
[root@ipaserver ~]# kinit admin
ipa-adtrust-install
ユーティリティーを実行します。[root@ipaserver ~]# ipa-adtrust-install
統合 DNS サーバーとともに IdM がインストールされていると、DNS サービスレコードが自動的に作成されます。
IdM が統合 DNS サーバーなしで IdM をインストールすると、
ipa-adtrust-install
は、続行する前に DNS に手動で追加する必要があるサービスレコードのリストを出力します。スクリプトにより、
/etc/samba/smb.conf
がすでに存在し、書き換えられることが求められます。WARNING: The smb.conf already exists. Running ipa-adtrust-install will break your existing Samba configuration. Do you wish to continue? [no]:
yes
このスクリプトは、従来の Linux クライアントが信頼できるユーザーと連携できるようにする互換性プラグインである
slapi-nis
プラグインを設定するように求めるプロンプトを表示します。Do you want to enable support for trusted domains in Schema Compatibility plugin? This will allow clients older than SSSD 1.9 and non-Linux clients to work with trusted users. Enable trusted domains support in slapi-nis? [no]:
yes
プロンプトが表示されたら、IdM ドメインの NetBIOS 名を入力するか、Enter を押して提案された名前を使用します。
Trust is configured but no NetBIOS domain name found, setting it now. Enter the NetBIOS name for the IPA domain. Only up to 15 uppercase ASCII letters, digits and dashes are allowed. Example: EXAMPLE. NetBIOS domain name [IDM]:
SID 生成タスクを実行して、既存ユーザーに SID を作成するように求められます。
Do you want to run the ipa-sidgen task? [no]:
yes
これはリソースを集中的に使用するタスクであるため、ユーザー数が多い場合は別のタイミングで実行できます。
(必要に応じて) デフォルトでは、Windows Server 2008 以降での動的 RPC ポートの範囲は
49152-65535
として定義されます。ご使用の環境に異なる動的 RPC ポート範囲を定義する必要がある場合は、Samba が異なるポートを使用するように設定し、ファイアウォール設定でそのポートを開くように設定します。以下の例では、ポート範囲を55000-65000
に設定します。[root@ipaserver ~]# net conf setparm global 'rpc server dynamic port range' 55000-65000 [root@ipaserver ~]# firewall-cmd --add-port=55000-65000/tcp [root@ipaserver ~]# firewall-cmd --runtime-to-permanent
ipa
サービスを再起動します。[root@ipaserver ~]# ipactl restart
smbclient
ユーティリティーを使用して、Samba が IdM からの Kerberos 認証に応答することを確認します。[root@ipaserver ~]#
smbclient -L server.idm.example.com -U user_name --use-kerberos=required
lp_load_ex: changing to config backend registry Sharename Type Comment --------- ---- ------- IPC$ IPC IPC Service (Samba 4.15.2) ...
3.6.2. IdM クライアントでの Samba サーバーのインストールおよび設定
IdM ドメインに登録されたクライアントに Samba をインストールして設定できます。
前提条件
- IdM サーバーとクライアントの両方が RHEL 8.1 以降で実行されている必要がある。
- IdM ドメインは、ドメインメンバーに Samba をインストールするための IdM ドメインの準備 の説明に従って準備されます。
- IdM に AD で設定された信頼がある場合は、Kerberos の AES 暗号化タイプを有効にします。たとえば、グループポリシーオブジェクト (GPO) を使用して、AES 暗号化の種類を有効にします。詳細は、GPO を使用した Active Directory での AES 暗号化の有効化 を参照してください。
手順
ipa-client-samba
パッケージをインストールします。[root@idm_client]# yum install ipa-client-samba
ipa-client-samba
ユーティリティーを使用して、クライアントを準備し、初期 Samba 設定を作成します。[root@idm_client]# ipa-client-samba Searching for IPA server... IPA server: DNS discovery Chosen IPA master: idm_server.idm.example.com SMB principal to be created: cifs/idm_client.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM NetBIOS name to be used: IDM_CLIENT Discovered domains to use: Domain name: idm.example.com NetBIOS name: IDM SID: S-1-5-21-525930803-952335037-206501584 ID range: 212000000 - 212199999 Domain name: ad.example.com NetBIOS name: AD SID: None ID range: 1918400000 - 1918599999 Continue to configure the system with these values? [no]: yes Samba domain member is configured. Please check configuration at /etc/samba/smb.conf and start smb and winbind services
デフォルトでは、
ipa-client-samba
は、ユーザーが接続したときにそのユーザーのホームディレクトリーを動的に共有するために、/etc/samba/smb.conf
ファイルに[homes]
セクションが自動的に追加されます。ユーザーがこのサーバーにホームディレクトリーがない場合、または共有したくない場合は、/etc/samba/smb.conf
から次の行を削除します。[homes] read only = no
ディレクトリーとプリンターを共有します。詳細は、以下を参照してください。
ローカルファイアウォールで Samba クライアントに必要なポートを開きます。
[root@idm_client]# firewall-cmd --permanent --add-service=samba-client [root@idm_client]# firewall-cmd --reload
smb
サービスおよびwinbind
サービスを有効にして開始します。[root@idm_client]# systemctl enable --now smb winbind
検証手順
samba-client
パッケージがインストールされている別の IdM ドメインメンバーで次の検証手順を実行します。
Kerberos 認証を使用して、Samba サーバー上の共有をリスト表示します。
$
smbclient -L idm_client.idm.example.com -U user_name --use-kerberos=required
lp_load_ex: changing to config backend registry Sharename Type Comment --------- ---- ------- example Disk IPC$ IPC IPC Service (Samba 4.15.2) ...
関連情報
-
ipa-client-samba(1)
の man ページ
3.6.3. IdM が新しいドメインを信頼する場合は、ID マッピング設定を手動で追加
Samba では、ユーザーがリソースにアクセスする各ドメインの ID マッピング設定が必要です。IdM クライアントで実行している既存の Samba サーバーでは、管理者が Active Directory (AD) ドメインに新しい信頼を追加した後、ID マッピング設定を手動で追加する必要があります。
前提条件
- IdM クライアントで Samba を設定している。その後、IdM に新しい信頼が追加されている。
- Kerberos の暗号化タイプ DES および RC4 は、信頼できる AD ドメインで無効にしている。セキュリティー上の理由から、RHEL 8 はこのような弱い暗号化タイプに対応していません。
手順
ホストのキータブを使用して認証します。
[root@idm_client]# kinit -k
ipa idrange-find
コマンドを使用して、新しいドメインのベース ID と ID 範囲のサイズの両方を表示します。たとえば、次のコマンドはad.example.com
ドメインの値を表示します。[root@idm_client]# ipa idrange-find --name="AD.EXAMPLE.COM_id_range" --raw --------------- 1 range matched --------------- cn: AD.EXAMPLE.COM_id_range ipabaseid: 1918400000 ipaidrangesize: 200000 ipabaserid: 0 ipanttrusteddomainsid: S-1-5-21-968346183-862388825-1738313271 iparangetype: ipa-ad-trust ---------------------------- Number of entries returned 1 ----------------------------
次の手順で、
ipabaseid
属性およびipaidrangesize
属性の値が必要です。使用可能な最高の ID を計算するには、次の式を使用します。
maximum_range = ipabaseid + ipaidrangesize - 1
前の手順の値を使用すると、
ad.example.com
ドメインで使用可能な最大 ID は1918599999
(1918400000 + 200000 - 1) です。/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集し、ドメインの ID マッピング設定を[global]
セクションに追加します。idmap config AD : range = 1918400000 - 1918599999 idmap config AD : backend = sss
ipabaseid
属性の値を最小値として指定し、前の手順で計算された値を範囲の最大値として指定します。smb
サービスおよびwinbind
サービスを再起動します。[root@idm_client]# systemctl restart smb winbind
検証手順
Kerberos 認証を使用して、Samba サーバー上の共有をリスト表示します。
$
smbclient -L idm_client.idm.example.com -U user_name --use-kerberos=required
lp_load_ex: changing to config backend registry Sharename Type Comment --------- ---- ------- example Disk IPC$ IPC IPC Service (Samba 4.15.2) ...
3.6.4. 関連情報
3.7. POSIX ACL を使用した Samba ファイル共有の設定
Samba は、Linux サービスとして、POSIX ACL との共有に対応します。chmod
などのユーティリティーを使用して、Samba サーバーの権限をローカルに管理できます。拡張属性に対応するファイルシステムに共有が保存されている場合は、複数のユーザーおよびグループで ACL を定義できます。
代わりにきめ細かい Windows ACL を使用する必要がある場合は、Windows ACL を使用する共有の設定 を参照してください。
このセクションの一部は、Samba Wiki に公開されているドキュメント Setting up a Share Using POSIX ACLs に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
3.7.1. POSIX ACL を使用する共有の追加
/srv/samba/example/
ディレクトリーのコンテンツを提供し、POSIX ACL を使用する example
という名前の共有を作成できます。
前提条件
Samba が、以下のいずれかのモードで設定されている。
手順
ディレクトリーが存在しない場合は作成します。以下に例を示します。
# mkdir -p /srv/samba/example/
SELinux を、
enforcing
モードで実行する場合は、そのディレクトリーにsamba_share_t
コンテキストを設定します。# semanage fcontext -a -t samba_share_t "/srv/samba/example(/.*)?" # restorecon -Rv /srv/samba/example/
ディレクトリーにファイルシステムの ACL を設定します。詳細は、以下を参照してください。
/etc/samba/smb.conf
ファイルにサンプル共有を追加します。たとえば、共有の write-enabled を追加するには、次のコマンドを実行します。[example] path = /srv/samba/example/ read only = no
注記ファイルシステムの ACL に関係なく、
read only = no
を設定しないと、Samba がディレクトリーを読み取り専用モードで共有します。/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
firewall-cmd
ユーティリティーを使用して必要なポートを開き、ファイアウォール設定を再読み込みします。# firewall-cmd --permanent --add-service=samba # firewall-cmd --reload
smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
3.7.2. POSIX ACL を使用する Samba 共有での標準的な Linux ACL の設定
Linux の標準 ACL は、所有者、グループ、その他の未定義ユーザーの権限の設定に対応します。ユーティリティーの chown
、chgrp
、および chmod
を使用して ACL を更新できます。正確な制御が必要な場合は、より複雑な POSIX ACL を使用します。以下を参照してください。
Setting extended ACLs on a Samba share that uses POSIX ACLs.
以下の手順では、/srv/samba/example/
ディレクトリーの所有者を root
ユーザーに設定し、Domain Users
グループに読み取りおよび書き込みの権限を付与して、他のすべてのユーザーのアクセスを拒否します。
前提条件
- ACL を設定する Samba 共有がある。
手順
# chown root:"Domain Users" /srv/samba/example/ # chmod 2770 /srv/samba/example/
ディレクトリーで set-group-ID (SGID) ビットを有効にすると、新しいディレクトリーエントリーを作成したユーザーのプライマリーグループに設定する通常の動作の代わりに、すべての新しいファイルとサブディレクトリーのデフォルトグループが、そのディレクトリーグループのデフォルトグループに自動的に設定されます。
関連情報
-
chown(1)
およびchmod(1)
の man ページ
3.7.3. POSIX ACL を使用する Samba 共有での拡張 ACL の設定
共有ディレクトリーが保存されているファイルシステムが拡張 ACL に対応している場合は、それを使用して複雑な権限を設定できます。拡張 ACL には、複数のユーザーおよびグループの権限を指定できます。
拡張 POSIX ACL を使用すると、複数のユーザーおよびグループで複雑な ACL を設定できます。ただし、設定できるのは以下の権限のみです。
- アクセスなし
- 読み取りアクセス
- 書き込みアクセス
- 完全な制御
フォルダーの作成やデータの追加
など、詳細な Windows 権限が必要な場合は、Windows ACL を使用するように共有を設定します。Windows ACL で共有の設定
以下の手順では、共有で拡張 ACL を有効にする方法を説明します。また、拡張 ACL の設定例も含まれています。
前提条件
- ACL を設定する Samba 共有がある。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルの共有セクションで以下のパラメーターを有効にして、拡張 ACL の ACL 継承を有効にします。inherit acls = yes
詳細は、man ページの
smb.conf(5)
のパラメーターの説明を参照してください。smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
ディレクトリーの ACL を設定します。以下に例を示します。
例3.2 拡張 ACL の設定
以下の手順は、
/srv/samba/example/
ディレクトリーに対して、Domain Admins
グループに読み取り、書き込み、および実行の権限、Domain Users
グループに対する読み取りおよび実行の権限を設定し、その他の全員のアクセスを拒否します。ユーザーアカウントのプライマリーグループへの自動許可権限を無効にします。
# setfacl -m group::--- /srv/samba/example/ # setfacl -m default:group::--- /srv/samba/example/
ディレクトリーのプライマリーグループは、さらに動的な
CREATOR GROUP
プリンシパルにマッピングされます。Samba 共有で拡張 POSIX ACL を使用すると、このプリンシパルは自動的に追加され、削除できません。ディレクトリーに権限を設定します。
Domain Admins
グループに読み取り、書き込み、および実行の権限を付与します。# setfacl -m group:"DOMAIN\Domain Admins":rwx /srv/samba/example/
Domain Users
グループに読み取りおよび実行の権限を付与します。# setfacl -m group:"DOMAIN\Domain Users":r-x /srv/samba/example/
その他
の ACL エントリーに権限を設定し、その他の ACL エントリーに一致しないユーザーへのアクセスを拒否します。# setfacl -R -m other::--- /srv/samba/example/
この設定は、このディレクトリーにのみ適用されます。Windows では、これらの ACL は
このフォルダーのみ
のモードにマッピングされます。前の手順で設定した権限を、このディレクトリーに作成した新規ファイルシステムのオブジェクトから継承できるようにするには、以下のコマンドを実行します。
# setfacl -m default:group:"DOMAIN\Domain Admins":rwx /srv/samba/example/ # setfacl -m default:group:"DOMAIN\Domain Users":r-x /srv/samba/example/ # setfacl -m default:other::--- /srv/samba/example/
この設定では、プリンシパルの
このフォルダーのみ
モードが、このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
に設定されます。
Samba は、手順に設定されている権限を、以下の Windows ACL にマッピングします。
プリンシパル アクセス 適用先 Domain\Domain Admins
完全な制御
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
Domain\Domain Users
読み取りおよび実行
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
Everyone
[a]なし
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
owner (Unix User\owner) [b]
完全な制御
このフォルダーのみ
primary_group (Unix User\primary_group) [c]
なし
このフォルダーのみ
完全な制御
サブフォルダーおよびファイルのみ
なし
サブフォルダーおよびファイルのみ
[a] Samba は、このプリンシパルの権限をその他
の ACL エントリーからマッピングします。[b] Samba は、ディレクトリーの所有者をこのエントリーにマッピングします。[c] Samba は、ディレクトリーのプライマリーグループをこのエントリーにマッピングします。[d] 新規ファイルシステムオブジェクトでは、作成者はこのプリンシパルの権限を自動的に継承します。[e] POSIX ACL を使用する共有では、このプリンシパルの設定または削除には対応していません。[f] 新規ファイルシステムオブジェクトの場合、作成者のプライマリーグループは、自動的にこのプリンシパルの権限を継承します。
3.8. POSIX ACL を使用する共有への権限の設定
必要に応じて、Samba 共有へのアクセスを制限または許可するには、/etc/samba/smb.conf
ファイルの共有のセクションに特定のパラメーターを設定します。
共有ベースの権限は、ユーザー、グループ、またはホストが共有にアクセスできるかどうかを管理します。この設定は、ファイルシステムの ACL には影響しません。
共有ベースの設定を使用して共有へのアクセスを制限します。たとえば、特定のホストからのアクセスを拒否します。
前提条件
- POSIX ACL との共有が設定されている。
3.8.1. ユーザーおよびグループに基づいた共有アクセスの設定
ユーザーおよびグループに基づいたアクセス制御により、特定のユーザーおよびグループの共有へのアクセスを許可または拒否できます。
前提条件
- ユーザーまたはグループベースのアクセスを設定する Samba 共有がある。
手順
たとえば、
Domain Users
グループの全メンバーが、ユーザー
アカウントのアクセスが拒否されている時に共有にアクセスできるようにするには、共有の設定に以下のパラメーターを追加します。valid users = +DOMAIN\"Domain Users" invalid users = DOMAIN\user
無効なユーザー
パラメーターの優先度は、有効なユーザー
パラメーターよりも高くなります。たとえば、ユーザー
アカウントがDomain Users
グループのメンバーである場合に上述の例を使用すると、このアカウントへのアクセスは拒否されます。Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページ
3.8.2. ホストベースの共有アクセスの設定
ホストベースのアクセス制御により、クライアントのホスト名、IP アドレス、または IP 範囲に基づいて、共有へのアクセスを許可または拒否できます。
以下の手順では、IP アドレスの 127.0.0.1
、IP 範囲の 192.0.2.0/24
、およびホストの client1.example.com
を有効にして共有にアクセスする方法と、client2.example.com
ホストへのアクセスを拒否する方法を説明します。
前提条件
- ホストベースのアクセスを設定する Samba 共有がある。
手順
以下のパラメーターを、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの共有の設定に追加します。hosts allow = 127.0.0.1 192.0.2.0/24 client1.example.com hosts deny = client2.example.com
hosts deny
パラメーターは、hosts allow
よりも優先順位が高くなります。たとえば、client1.example.com
がhosts allow
パラメーターにリスト表示されている IP アドレスに解決すると、このホストへのアクセスは拒否されます。Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページ
3.9. Windows ACL で共有の設定
Samba は、共有およびファイルシステムオブジェクトへの Windows ACL の設定に対応します。これを使用すると、以下が可能になります。
- きめ細かな Windows ACL を使用する
- Windows を使用して共有権限およびファイルシステムの ACL を管理する
または、POSIX ACL を使用するように共有を設定することもできます。詳細は、POSIX ACL を使用する Samba ファイル共有の設定 を参照してください。
このセクションの一部は、Samba Wiki に公開されているドキュメント Setting up a Share Using Windows ACLs に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
3.9.1. SeDiskPrivilege 特権の付与
Windows ACL を使用する共有に対する権限を設定できるのは、SeDiskOperatorPrivilege
特権が付与されているユーザーおよびグループのみです。
手順
たとえば、
SeDiskOperatorPrivilege
特権をDOMAIN\Domain Admins
グループに付与するには、以下のコマンドを実行します。# net rpc rights grant "DOMAIN\Domain Admins" SeDiskOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: Successfully granted rights.
注記ドメイン環境では、
SeDiskOperatorPrivilege
をドメイングループに付与します。これにより、ユーザーのグループメンバーシップを更新し、権限を集中的に管理できます。SeDiskOperatorPrivilege
が付与されているすべてのユーザーおよびグループをリスト表示するには、以下のコマンドを実行します。# net rpc rights list privileges SeDiskOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter administrator's password: SeDiskOperatorPrivilege: BUILTIN\Administrators DOMAIN\Domain Admins
3.9.2. Windows ACL サポートの有効化
Windows ACL に対応する共有を設定するには、Samba でこの機能を有効にする必要があります。
前提条件
- ユーザー共有が Samba サーバーに設定されている。
手順
すべての共有に対してグローバルに有効にするには、次の設定を
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションに追加します。vfs objects = acl_xattr map acl inherit = yes store dos attributes = yes
または、共有のセクションに同じパラメーターを追加して、個別の共有に対して Windows ACL サポートを有効にできます。
smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
3.9.3. Windows ACL を使用する共有の追加
/srv/samba/example/
ディレクトリーのコンテンツを共有し、Windows ACL を使用する example
という名前の共有を作成できます。
手順
ディレクトリーが存在しない場合は作成します。以下に例を示します。
# mkdir -p /srv/samba/example/
SELinux を、
enforcing
モードで実行する場合は、そのディレクトリーにsamba_share_t
コンテキストを設定します。# semanage fcontext -a -t samba_share_t "/srv/samba/example(/.)?"* # restorecon -Rv /srv/samba/example/
/etc/samba/smb.conf
ファイルにサンプル共有を追加します。たとえば、共有の write-enabled を追加するには、次のコマンドを実行します。[example] path = /srv/samba/example/ read only = no
注記ファイルシステムの ACL に関係なく、
read only = no
を設定しないと、Samba がディレクトリーを読み取り専用モードで共有します。すべての共有の
[global]
セクションで Windows ACL サポートを有効にしていない場合は、以下のパラメーターを[example]
セクションに追加して、この共有に対してこの機能を有効にします。vfs objects = acl_xattr map acl inherit = yes store dos attributes = yes
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
firewall-cmd
ユーティリティーを使用して必要なポートを開き、ファイアウォール設定を再読み込みします。# firewall-cmd --permanent --add-service=samba # firewall-cmd --reload
smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
3.9.4. Windows ACL を使用する共有の共有権限とファイルシステム ACL の管理
Windows ACL を使用する Samba 共有で共有権限およびファイルシステムの ACL を管理するには、コンピューターの管理
などの Windows アプリケーションを使用します。詳細は、Windows のドキュメントを参照してください。または、smbcacls
ユーティリティーを使用して ACL を管理します。
Windows からファイルシステムの権限を変更するには、SeDiskOperatorPrivilege
権限が付与されたアカウントを使用する必要があります。
3.10. smbcacls で SMB 共有上の ACL の管理
smbcacls
ユーティリティーは、SMB 共有に保存されたファイルおよびディレクトリーの ACL をリスト表示、設定、および削除できます。smbcacls
を使用して、ファイルシステムの ACL を管理できます。
- 高度な Windows ACL または POSIX ACL を使用するローカルまたはリモートの Samba サーバー
- Red Hat Enterprise Linux で、Windows でホストされる共有の ACL をリモートで管理
3.10.1. アクセス制御エントリー
ファイルシステムオブジェクトの各 ACL エントリーには、以下の形式のアクセス制御エントリー (ACE) が含まれます。
security_principal:access_right/inheritance_information/permissions
例3.3 アクセス制御エントリー
AD\Domain Users
グループに、Windows 上の このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
に適用される 変更
権限がある場合、ACL には以下の ACE が含まれます。
AD\Domain Users:ALLOWED/OI|CI/CHANGE
ACE には、以下が含まれます。
- セキュリティープリンシパル
- セキュリティープリンシパルは、ACL の権限が適用されるユーザー、グループ、または SID です。
- アクセス権
-
オブジェクトへのアクセスが許可または拒否されるかどうかを定義します。値は
ALLOWED
またはDENIED
です。 - 継承情報
次の値を取ります。
表3.1 継承の設定
値 詳細 マップ先 OI
オブジェクトの継承
このフォルダーおよびファイル
CI
コンテナーの継承
このフォルダーおよびサブフォルダー
IO
継承のみ
ACE は、現在のファイルまたはディレクトリーには適用されません。
ID
継承済
親ディレクトリーから ACE が継承されました。
また、値は以下のように組み合わせることができます。
表3.2 継承設定の組み合わせ
値の組み合わせ Windows の 適用先
設定にマップします。OI|CI
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
OI|CI|IO
サブフォルダーおよびファイルのみ
CI|IO
サブディレクトリーのみ
OI|IO
ファイルのみ
- 権限
この値は、Windows の権限または
smbcacls
エイリアスを表す 16 進値になります。1 つ以上の Windows の権限を表す 16 進値。
次の表に、Windows の高度な権限とそれに対応する値を 16 進法で表示します。
表3.3 Windows の権限とそれに対応する smbcacls 値を 16 進法で設定
Windows の権限 16 進値 完全な制御
0x001F01FF
フォルダーのスキャンおよびファイルの実行
0x00100020
フォルダーのリスト表示 / データの読み取り
0x00100001
属性の読み取り
0x00100080
拡張属性の読み取り
0x00100008
ファイルの作成/データの書き込み
0x00100002
フォルダーの作成/データの追加
0x00100004
属性の書き込み
0x00100100
拡張属性の書き込み
0x00100010
サブフォルダーおよびファイルの削除
0x00100040
削除
0x00110000
権限の読み取り
0x00120000
権限の変更
0x00140000
所有権の取得
0x00180000
ビット単位の
OR
演算を使用すると、複数の権限を 1 つの 16 進値として組み合わせることができます。詳細は、ACE マスク計算 を参照してください。smbcacls
エイリアス。以下の表には、利用可能なエイリアスが表示されます。表3.4 既存の smbcacls エイリアスとそれに対応する Windows の権限
smbcacls
エイリアスWindows の権限へのマッピング -R
読み取り
READ
読み取りおよび実行
W
主な機能:
- ファイルの作成/データの書き込み
- フォルダーの作成/データの追加
- 属性の書き込み
- 拡張属性の書き込み
- 権限の読み取り
D
削除
%P
権限の変更
O
所有権の取得
X
スキャン / 実行
CHANGE
修正
FULL
完全な制御
注記権限を設定する際に、1 文字のエイリアスを組み合わせることができます。たとえば、Windows の権限の
Read
およびDelete
を適用するようにRD
を設定できます。ただし、1 文字以外のエイリアスを複数組み合わせたり、エイリアスと 16 進値を組み合わせることはできません。
3.10.2. smbcacls を使用した ACL の表示
SMB 共有で ACL を表示するには、smbcacls
ユーティリティーを使用します。--add
などの操作パラメーターを付けずに smbcacls
を実行すると、ユーティリティーは、ファイルシステムオブジェクトの ACL を表示します。
手順
たとえば、//server/example
共有のルートディレクトリーの ACL をリスト表示するには、以下のコマンドを実行します。
# smbcacls //server/example / -U "DOMAIN\administrator"
Enter DOMAIN\administrator's password:
REVISION:1
CONTROL:SR|PD|DI|DP
OWNER:AD\Administrators
GROUP:AD\Domain Users
ACL:AD\Administrator:ALLOWED/OI|CI/FULL
ACL:AD\Domain Users:ALLOWED/OI|CI/CHANGE
ACL:AD\Domain Guests:ALLOWED/OI|CI/0x00100021
コマンドの出力は以下のようになります。
-
REVISION
- セキュリティー記述子の内部 Windows NT ACL リビジョン -
CONTROL
- セキュリティー記述子の制御 -
OWNER
- セキュリティー記述子の所有者の名前または SID -
GROUP
- セキュリティー記述子のグループの名前または SID -
ACL
エントリー。詳細は、アクセス制御エントリー を参照してください。
3.10.3. ACE マスク計算
ほとんどの場合、ACE を追加または更新するときは、既存の smbcacls エイリアスとそれに対応する Windows アクセス許可に リストされている smbcacls
エイリアスを使用します。
ただし、Windows の権限と それに対応する smbcacls 値を 16 進法でリストしたように高度な Windows の権限 を設定する場合は、ビット単位の OR
操作を使用して正しい値を計算する必要があります。以下のシェルコマンドを使用して値を計算できます。
# echo $(printf '0x%X' $(( hex_value_1 | hex_value_2 | ... )))
例3.4 ACE マスクの計算
以下の権限を設定します。
- フォルダーのスキャン / ファイルの実行 (0x00100020)
- フォルダーのリスト表示 / データの読み取り (0x00100001)
- 属性の読み取り (0x00100080)
以前の権限の 16 進値を計算するには、以下を入力します。
# echo $(printf '0x%X' $(( 0x00100020 | 0x00100001 | 0x00100080 )))
0x1000A1
ACE を設定または更新する場合は、戻り値を使用します。
3.10.4. smbcacls を使用した ACL の追加、更新、および削除
smbcacls
ユーティリティーに渡すパラメーターに応じて、ファイルまたはディレクトリーから ACL を追加、更新、および削除できます。
ACL の追加
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
の CHANGE
権限を AD\Domain Users
グループに付与する //server/example
共有のルートに ACL を追加するには、以下のコマンドを実行します。
# smbcacls //server/example / -U "DOMAIN\administrator --add ACL:"AD\Domain Users":ALLOWED/OI|CI/CHANGE
ACL の更新
ACL の更新は、新しい ACL の追加に似ています。ACL を更新する場合は、--modify
パラメーターと既存のセキュリティープリンシパルを使用して ACL を上書きします。smbcacls
が ACL リスト内でセキュリティープリンシパルを検出すると、ユーティリティーは権限を更新します。これを行わないと、以下のエラーでコマンドが失敗します。
ACL for SID principal_name not found
たとえば、AD\Domain Users
グループの権限を更新し、このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
の READ
に設定するには、以下のコマンドを実行します。
# smbcacls //server/example / -U "DOMAIN\administrator --modify ACL:"AD\Domain Users":ALLOWED/OI|CI/READ
ACL の削除
ACL を削除するには、正確な ACL を持つ --delete
パラメーターを smbcacls
ユーティリティーに渡します。以下に例を示します。
# smbcacls //server/example / -U "DOMAIN\administrator --delete ACL:"AD\Domain Users":ALLOWED/OI|CI/READ
3.11. ユーザーが Samba サーバーのディレクトリーを共有できるようにする
Samba サーバーでは、root 権限なしでユーザーがディレクトリーを共有できるように設定できます。
3.11.1. ユーザーの共有機能の有効化
ユーザーがディレクトリーを共有できるようにするには、管理者が Samba でユーザー共有を有効にする必要があります。
たとえば、ローカルの example
グループのメンバーのみがユーザー共有を作成できるようにするには、以下を実行します。
手順
ローカルの
example
グループが存在しない場合は作成します。# groupadd example
ユーザー共有の定義を保存し、その権限を正しく設定するために、Samba 用のディレクトリーを準備します。以下に例を示します。
ディレクトリーを作成します。
# mkdir -p /var/lib/samba/usershares/
example
グループの書き込み権限を設定します。# chgrp example /var/lib/samba/usershares/ # chmod 1770 /var/lib/samba/usershares/
- このディレクトリーの他のユーザーが保存したファイルの名前変更や削除を禁止するように sticky ビットを設定します。
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集し、以下を[global]
セクションに追加します。ユーザー共有の定義を保存するように設定したディレクトリーのパスを設定します。以下に例を示します。
usershare path = /var/lib/samba/usershares/
このサーバーで Samba を作成できるユーザー共有の数を設定します。以下に例を示します。
usershare max shares = 100
usershare max shares
パラメーターにデフォルトの0
を使用すると、ユーザー共有が無効になります。必要に応じて、ディレクトリーの絶対パスのリストを設定します。たとえば、Samba が
/data
ディレクトリーおよび/srv
ディレクトリーのサブディレクトリーの共有のみを許可するように設定するには、以下を設定します。usershare prefix allow list = /data /srv
設定可能なユーザー共有関連のパラメーターのリストは、man ページの
smb.conf(5)
のUSERSHARES
セクションを参照してください。/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
これで、ユーザーが、ユーザー共有を作成できるようになりました。
3.11.2. ユーザー共有の追加
Samba でユーザー共有機能を有効にすると、ユーザーは net usershare add
コマンドを実行して、root
権限なしで Samba サーバーのディレクトリーを共有できます。
net usershare add
コマンドの構文:
net usershare add
share_name path [[ comment ] | [ ACLs ]] [ guest_ok=y|n ]
ユーザー共有の作成時に ACL を設定する場合は、ACL の前に comment パラメーターを指定する必要があります。空のコメントを設定するには、空の文字列を二重引用符で囲みます。
管理者が、/etc/samba/smb.conf
ファイルの [global]
セクションで usershare allow guests = yes
に設定すると、ユーザーはユーザー共有上でのみゲストアクセスを有効にできることに注意してください。
例3.5 ユーザー共有の追加
ユーザーが、Samba サーバーで /srv/samba/
ディレクトリーを共有する場合があります。共有には、example
という名前を付け、コメントを設定しないようにし、ゲストユーザーがアクセスできるようにします。また、共有権限は、AD\Domain Users
グループへのフルアクセスと、その他のユーザーへの読み取り権限を設定する必要があります。この共有を追加するには、そのユーザーで以下を実行します。
$ net usershare add example /srv/samba/ "" "AD\Domain Users":F,Everyone:R guest_ok=yes
3.11.3. ユーザー共有の設定の更新
ユーザー共有の設定を更新するには、同じ共有名と新しい設定で net usershare add
コマンドを使用して共有を上書きします。ユーザー共有の追加 を参照します。
3.11.4. 既存のユーザー共有に関する情報の表示
ユーザーは、Samba サーバーで net usershare info
コマンドを実行して、ユーザーの共有および設定を表示できます。
前提条件
- ユーザー共有が Samba サーバーに設定されている。
手順
任意のユーザーが作成したすべてのユーザー共有を表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ net usershare info -l [share_1] path=/srv/samba/ comment= usershare_acl=Everyone:R,host_name\user:F, guest_ok=y ...
コマンドを実行するユーザーが作成した共有のみをリスト表示するには、
-l
パラメーターを省略します。特定の共有に関する情報のみを表示するには、共有名またはワイルドカードをコマンドに渡します。たとえば、名前が
share_
で始まる共有の情報を表示する場合は、以下のコマンドを実行します。$ net usershare info -l share_*
3.11.5. ユーザー共有のリスト表示
Samba サーバーで設定を行わずに利用可能なユーザー共有のみをリスト表示するには、net usershare list
コマンドを使用します。
前提条件
- ユーザー共有が Samba サーバーに設定されている。
手順
任意のユーザーが作成した共有をリスト表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ net usershare list -l share_1 share_2 ...
コマンドを実行するユーザーが作成した共有のみをリスト表示するには、
-l
パラメーターを省略します。特定の共有のみをリスト表示するには、共有名またはワイルドカードをコマンドに渡します。たとえば、名前が
share_
で始まる共有のみをリスト表示するには、以下のコマンドを実行します。$ net usershare list -l share_*
3.11.6. ユーザー共有の削除
ユーザー共有を削除するには、共有を作成したユーザーまたは root
ユーザーで、net usershare delete
コマンドを実行します。
前提条件
- ユーザー共有が Samba サーバーに設定されている。
手順
$ net usershare delete share_name
3.12. 認証なしでアクセスを許可する共有の設定
特定の状況では、認証なしでユーザーが接続できるディレクトリーを共有します。これを設定するには、共有でゲストアクセスを有効にします。
共有に認証を使用しないと、セキュリティーリスクとなる場合があります。
3.12.1. 共有へのゲストアクセスの有効化
共有でゲストアクセスが有効になっている場合、Samba はゲスト接続を、guest account
パラメーターで設定したオペレーティングシステムアカウントにマッピングします。少なくとも以下のいずれかの条件が満たされると、ゲストユーザーはこの共有のファイルにアクセスできます。
- アカウントがファイルシステムの ACL にリスト表示されます。
-
その他
のユーザーの POSIX 権限はこれを許可します。
例3.6 ゲスト共有の権限
ゲストアカウントを nobody
(デフォルト) にマッピングするように Samba を設定している場合は、下記の例の ACL が、以下を行うようになります。
-
ゲストユーザーが
file1.txt
の読み込みを許可する -
ゲストユーザーによる
file2.txt
の読み込みおよび修正を許可する -
ゲストユーザーが
file3.txt
を読み込んだり修正しないようにする
-rw-r--r--. 1 root root 1024 1. Sep 10:00 file1.txt -rw-r-----. 1 nobody root 1024 1. Sep 10:00 file2.txt -rw-r-----. 1 root root 1024 1. Sep 10:00 file3.txt
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集します。これが、このサーバーで設定した最初のゲスト共有である場合は、以下を行います。
[global]
セクションにmap to guest = Bad User
を設定し ます。[global] ... map to guest = Bad User
この設定により、ユーザー名が存在しない限り、Samba は間違ったパスワードを使用したログイン試行を拒否します。指定したユーザー名がなく、ゲストアクセスが共有で有効になっている場合、Samba は接続をゲストのログインとして処理します。
デフォルトでは、Samba は、Red Hat Enterprise Linux の
nobody
アカウントにゲストアカウントをマッピングします。または、別のアカウントを設定することもできます。以下に例を示します。[global] ... guest account = user_name
このパラメーターに設定するアカウントは、Samba サーバーにローカルに存在する必要があります。セキュリティー上の理由から、Red Hat は有効なシェルを割り当てていないアカウントを使用することを推奨しています。
guest ok = yes
の設定を、[example]
共有セクションに追加します。[example] ... guest ok = yes
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
3.13. MacOS クライアント向けの Samba の設定
fruit
仮想ファイルシステム (VFS) の Samba モジュールは、Apple サーバーメッセージブロック (SMB) クライアントとの互換性を強化します。
3.13.1. MacOS クライアントにファイル共有を提供する Samba 設定の最適化
fruit
モジュールは、Samba の MacOS クライアントとの互換性を強化します。Samba サーバーでホストされているすべての共有に対してモジュールを設定して、MacOS クライアント向けにファイル共有を最適化できます。
fruit
モジュールをシステム全体で有効にします。MacOS を使用するクライアントは、クライアントがサーバーへの最初の接続を確立する時に、サーバーメッセージブロックバージョン 2 (SMB2) Apple (AAPL) プロトコル拡張をネゴシエートします。クライアントが最初に AAPL 拡張機能を有効にせずに共有に接続すると、クライアントはサーバーの共有に拡張機能を使用しません。
前提条件
- Samba が、ファイルサーバーとして設定されている。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集し、[global]
セクションの VFS モジュールfruit
およびstreams_xattr
を有効にします。vfs objects = fruit streams_xattr
重要streams_xattr
を有効にする前に、fruit
モジュールを有効にする必要があります。fruit
モジュールは、別のデータストリーム (ADS) を使用します。このため、streams_xattr
モジュールも有効にする必要があります。必要に応じて、共有で macOS Time Machine のサポートを提供する場合は、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの共有設定に次の設定を追加します。fruit:time machine = yes
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
-
vfs_fruit(8)
の man ページ ファイル共有の設定
3.14. smbclient ユーティリティーを使用した SMB 共有へのアクセス
smbclient ユーティリティーを使用すると、コマンドラインの FTP クライアントと同様に、SMB サーバーのファイル共有にアクセスできます。たとえば、ファイルを共有にアップロードしたり、共有からダウンロードしたりできます。
前提条件
-
samba-client
パッケージがインストールされている。
3.14.1. smbclient 対話モードの動作
たとえば、DOMAIN\user
アカウントを使用して サーバー
でホストされる example
共有に認証するには、以下のコマンドを実行します。
# smbclient -U "DOMAIN\user" //server/example Enter domain\user's password: Try "help" to get a list of possible commands. smb: \>
smbclient
が共有に正常に接続すると、ユーティリティーはインタラクティブモードになり、以下のプロンプトが表示されます。
smb: \>
対話式シェルで利用可能なすべてのコマンドを表示するには、以下のコマンドを実行します。
smb: \> help
特定のコマンドのヘルプを表示するには、以下のコマンドを実行します。
smb: \> help command_name
関連情報
-
smbclient(1)
man ページ
3.14.2. 対話モードでの smbclient の使用
-c
パラメーターを指定せずに smbclient
を使用すると、ユーティリティーは対話モードを開始します。以下の手順では、SMB 共有に接続し、サブディレクトリーからファイルをダウンロードする方法を説明します。
手順
共有に接続します。
# smbclient -U "DOMAIN\user_name" //server_name/share_name
/example/
ディレクトリーに移動します。smb: \>
d /example/
ディレクトリー内のファイルをリスト表示します。
smb: \example\>
ls
. D 0 Thu Nov 1 10:00:00 2018 .. D 0 Thu Nov 1 10:00:00 2018 example.txt N 1048576 Thu Nov 1 10:00:00 2018 9950208 blocks of size 1024. 8247144 blocks availableexample.txt
ファイルをダウンロードします。smb: \example\>
get example.txt
getting file \directory\subdirectory\example.txt of size 1048576 as example.txt (511975,0 KiloBytes/sec) (average 170666,7 KiloBytes/sec)共有から切断します。
smb: \example\>
exit
3.14.3. スクリプトモードでの smbclient の使用
-c
パラメーターを smbclient
に渡すと、リモートの SMB 共有でコマンドを自動的に実行できます。これにより、スクリプトで smbclient
を使用できます。
以下の手順では、SMB 共有に接続し、サブディレクトリーからファイルをダウンロードする方法を説明します。
手順
-
以下のコマンドで共有に接続して
example
ディレクトリーに移動し、example.txt
ファイルをダウンロードします。
# smbclient -U DOMAIN\user_name //server_name/share_name -c "cd /example/ ; get example.txt ; exit"
3.15. プリントサーバーとしての Samba の設定
Samba をプリントサーバーとして設定すると、ネットワーク上のクライアントが Samba を使用して印刷できます。さらに、Windows クライアントは、(Samba サーバーが設定されている場合は) Samba サーバーからドライバーをダウンロードすることもできます。
このセクションの一部は、Samba Wiki に公開されているドキュメント Setting up Samba as a Print Server に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
前提条件
Samba が、以下のいずれかのモードで設定されている。
3.15.1. Samba でのプリントサーバーのサポートの有効化
デフォルトでは、プリントサーバーサポートは Samba で有効になっていません。Samba をプリントサーバーとして使用するには、Samba を適切に設定する必要があります。
印刷ジョブとプリンター操作には、リモートプロシージャコール (RPC) が必要です。デフォルトでは、Samba は RPC を管理するためにオンデマンドで rpcd_spoolss
サービスを開始します。最初の RPC 呼び出し中、または CUPS でプリンターリストを更新するときに、Samba は CUPS からプリンター情報を取得します。これには、プリンターごとに約 1 秒かかる場合があります。そのため、プリンターが 50 台を超える場合は、rpcd_spoolss
設定を調整してください。
前提条件
プリンターが CUPS サーバーで設定されている。
CUPS でプリンターを設定する方法は、プリントサーバーの CUPS Web コンソール (https://print_server_host_name:631/help) で提供されているドキュメントを参照してください。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集します。[printers]
セクションを追加して、Samba で印刷バックエンドを有効にします。[printers] comment = All Printers path = /var/tmp/ printable = yes create mask = 0600
重要[printers]
共有名はハードコーディングされており、変更はできません。CUPS サーバーが別のホストまたはポートで実行されている場合は、
printers
セクションで設定を指定します。cups server = printserver.example.com:631
多数のプリンターがある場合は、待機秒数を CUPS に接続されているプリンターの数よりも大きい値に設定します。たとえば、100 台のプリンターがある場合は、
[global]
セクションに次のように設定します。rpcd_spoolss:idle_seconds = 200
この設定が環境内でスケーリングされない場合は、
[global]
セクションでrpcd_spoolss
ワーカーの数も増やします。rpcd_spoolss:num_workers = 10
デフォルトでは、
rpcd_spoolss
は 5 つのワーカーを開始します。
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
firewall-cmd
ユーティリティーを使用して必要なポートを開き、ファイアウォール設定を再読み込みします。# firewall-cmd --permanent --add-service=samba # firewall-cmd --reload
smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
サービスを再起動すると、Samba は CUPS バックエンドに設定したすべてのプリンターを自動的に共有します。特定のプリンターのみを手動で共有する場合は、特定のプリンターの手動共有 を参照してください。
検証
印刷ジョブを送信します。たとえば、PDF ファイルを印刷するには、次のように入力します。
# smbclient -Uuser //sambaserver.example.com/printer_name -c "print example.pdf"
3.15.2. 特定のプリンターの手動共有
Samba をプリントサーバーとして設定している場合、Samba は、デフォルトで CUPS バックエンドで設定されたプリンターをすべて共有します。以下の手順では、特定のプリンターのみを共有する方法を説明します。
前提条件
- Samba がプリントサーバーとして設定されている。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集します。[global]
セクションで、以下の設定で自動プリンター共有を無効にします。load printers = no
共有するプリンターごとにセクションを追加します。たとえば、Samba で CUPS バックエンドで
example
という名前のプリンターをExample-Printer
として共有するには、以下のセクションを追加します。[Example-Printer] path = /var/tmp/ printable = yes printer name = example
各プリンターに個別のスプールディレクトリーは必要ありません。
[printers]
セクションに設定したのと同じ spool ディレクトリーを、プリンターのpath
パラメーターに設定できます。
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
3.16. Samba プリントサーバーでの Windows クライアント用の自動プリンタードライバーダウンロードの設定
Windows クライアント用に Samba プリントサーバーを実行している場合は、ドライバーをアップロードし、プリンターを事前設定できます。ユーザーがプリンターに接続すると、Windows により、ドライバーが自動的にクライアントにダウンロードされ、インストールされます。ユーザーがインストールするのに、ローカル管理者の権限を必要としません。また、Windows は、トレイの数などの事前設定済みのドライバー設定を適用します。
このセクションの一部は、Samba Wiki で公開されているドキュメント Setting up Automatic Printer Driver Downloads for Windows Clients に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
前提条件
- Samba がプリントサーバーとして設定されている。
3.16.1. プリンタードライバーに関する基本情報
本セクションでは、プリンタードライバーに関する一般的な情報を説明します。
対応しているドライバーモデルのバージョン
Samba は、Windows 2000 以降および Windows Server 2000 以降でサポートされているプリンタードライバーのモデルバージョン 3 のみに対応します。Samba は、Windows 8 および Windows Server 2012 で導入されたドライバーモデルのバージョン 4 には対応していません。ただし、これ以降の Windows バージョンは、バージョン 3 のドライバーにも対応しています。
パッケージ対応ドライバー
Samba は、パッケージ対応ドライバーに対応していません。
アップロードするプリンタードライバーの準備
Samba プリントサーバーにドライバーをアップロードする場合は、以下を行います。
- ドライバーが圧縮形式で提供されている場合は、ドライバーをデプロイメントします。
一部のドライバーでは、Windows ホストにドライバーをローカルにインストールするセットアップアプリケーションを起動する必要があります。特定の状況では、インストーラーはセットアップの実行中にオペレーティングシステムの一時フォルダーに個別のファイルを抽出します。アップロードにドライバーファイルを使用するには、以下のコマンドを実行します。
- インストーラーを起動します。
- 一時フォルダーから新しい場所にファイルをコピーします。
- インストールをキャンセルします。
プリントサーバーへのアップロードをサポートするドライバーは、プリンターの製造元にお問い合わせください。
クライアントに 32 ビットおよび 64 ビットのプリンター用ドライバーを提供
32 ビットと 64 ビットの両方の Windows クライアントのプリンターにドライバーを提供するには、両方のアーキテクチャーに対して、同じ名前のドライバーをアップロードする必要があります。たとえば、32 ビットのドライバー Example PostScript
および 64 ビットのドライバー Example PostScript (v1.0)
をアップロードする場合は、その名前が一致しません。その結果、ドライバーのいずれかをプリンターに割り当てることしかできなくなり、両方のアーキテクチャーでそのドライバーが使用できなくなります。
3.16.2. ユーザーがドライバーをアップロードおよび事前設定できるようにする
プリンタードライバーをアップロードおよび事前設定できるようにするには、ユーザーまたはグループに SePrintOperatorPrivilege
特権が付与されている必要があります。printadmin
グループにユーザーを追加する必要があります。Red Hat Enterprise Linux に samba
パッケージをインストールすると、このグループが自動的に作成されます。printadmin
グループには、1000 未満で利用可能な一番小さい動的システムの GID が割り当てられます。
手順
たとえば、
SePrintOperatorPrivilege
権限をprintadmin
グループに付与するには、以下のコマンドを 実行します。# net rpc rights grant "printadmin" SePrintOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: Successfully granted rights.
注記ドメイン環境では、
SePrintOperatorPrivilege
をドメイングループに付与します。これにより、ユーザーのグループメンバーシップを更新し、権限を集中的に管理できます。SePrintOperatorPrivilege
が付与されているユーザーとグループのリストを表示するには、以下を実行します。# net rpc rights list privileges SePrintOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter administrator's password: SePrintOperatorPrivilege: BUILTIN\Administrators DOMAIN\printadmin
3.16.3. print$ 共有の設定
Windows のオペレーティングシステムは、プリントサーバーの共有 print$
から、プリンタードライバーをダウンロードします。この共有名は Windows でハードコーディングされており、変更はできません。
以下の手順は、/var/lib/samba/drivers/
ディレクトリーを print$
として共有し、ローカルの printadmin
グループのメンバーがプリンタードライバーをアップロードすることを有効にする方法を説明します。
手順
[print$]
セクションを/etc/samba/smb.conf
ファイルに追加します。[print$] path = /var/lib/samba/drivers/ read only = no write list = @printadmin force group = @printadmin create mask = 0664 directory mask = 2775
以下の設定を使用します。
-
printadmin
グループのメンバーだけがプリンタードライバーを共有にアップロードできます。 -
新規に作成されたファイルおよびディレクトリーのグループは
printadmin
に設定されます。 -
新規ファイルの権限は
664
に設定されます。 -
新しいディレクトリーの権限は、
2775
に設定されます。
-
全プリンター向けに 64 ビットドライバーのみをアップロードするには、
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションに以下の設定を含めます。spoolss: architecture = Windows x64
この設定がないと、少なくとも 32 ビットバージョンでアップロードしたドライバーのみが表示されます。
/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
printadmin
グループが存在しない場合は作成します。# groupadd printadmin
SePrintOperatorPrivilege
権限を、printadmin
グループに付与します。# net rpc rights grant "printadmin" SePrintOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: Successfully granted rights.
SELinux を、
enforcing
モードで実行する場合は、そのディレクトリーにsamba_share_t
コンテキストを設定します。# semanage fcontext -a -t samba_share_t "/var/lib/samba/drivers(/.*)?" # restorecon -Rv /var/lib/samba/drivers/
/var/lib/samba/drivers/
ディレクトリーに権限を設定します。POSIX ACL を使用する場合は、以下を設定します。
# chgrp -R "printadmin" /var/lib/samba/drivers/ # chmod -R 2775 /var/lib/samba/drivers/
Windows ACL を使用する場合は、以下を設定します。
プリンシパル アクセス 適用先 CREATOR OWNER
完全な制御
サブフォルダーおよびファイルのみ
認証されたユーザー
読み取りおよび実行、フォルダーのコンテンツのリスト表示、読み取り
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
printadmin
完全な制御
このフォルダー、サブフォルダー、およびファイル
Windows での ACL の設定に関する詳細は、Windows のドキュメントを参照してください。
3.16.4. クライアントが Samba プリントサーバーを信頼できるようにする GPO の作成
セキュリティー上の理由から、最新の Windows オペレーティングシステムでは、クライアントが、信頼できないサーバーから、パッケージ対応ではないプリンタードライバーをダウンロードできないようにします。プリントサーバーが AD のメンバーである場合は、Samba サーバーを信頼するために、ドメインに Group Policy Object (GPO) を作成できます。
前提条件
- Samba プリントサーバーが、AD ドメインのメンバーである。
- GPO の作成に使用する Windows コンピューターに、RSAT (Windows Remote Server Administration Tools) がインストールされている。詳細は、Windows のドキュメントを参照してください。
手順
-
AD ドメインの
管理者
ユーザーなど、グループポリシーの編集が可能なアカウントを使用して、Windows コンピューターにログインします。 -
Group Policy Management Console
を開きます。 AD ドメインを右クリックし、
Create a GPO in this domain, and Link it here
を選択します。-
Legacy Printer Driver Policy
などの GPO の名前を入力して、OK
をクリックします。新しい GPO がドメインエントリーの下に表示されます。 -
新たに作成した GPO を右クリックして
Edit
を選択し、Group Policy Management Editor
を開きます。 Computer Configuration → Policies → Administrative Templates → Printers の順にクリックします。
ウィンドウの右側で、
Point and Print Restriction
をダブルクリックして、ポリシーを編集します。ポリシーを有効にし、以下のオプションを設定します。
-
Users can only point and print to these servers
を選択し、このオプションの横にあるフィールドに、Samba プリントサーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) を入力します。 Security Prompts
の両チェックボックスで、Do not show warning or elevation prompt
を選択します。
-
- OK をクリックします。
Package Point and Print - Approved servers
をダブルクリックして、ポリシーを編集します。-
ポリシーを有効にして、
Show
ボタンをクリックします。 Samba プリントサーバーの FQDN を入力します。
-
OK
をクリックして、Show Contents
ウィンドウとポリシーのプロパティーウィンドウの両方を閉じます。
-
ポリシーを有効にして、
-
Group Policy Management Editor
を閉じます。 -
Group Policy Management Console
を閉じます。
Windows ドメインメンバーがこのグループポリシーを適用すると、ユーザーがプリンターに接続する際に、プリンタードライバーが Samba サーバーから自動的にダウンロードされます。
関連情報
- グループポリシーの使用については、Windows のドキュメントを参照してください。
3.16.5. ドライバーのアップロードおよびプリンターの事前設定
Windows クライアントで Print Management
アプリケーションを使用してドライバーをアップロードし、Samba プリントサーバーでホストされるプリンターを事前設定します。詳細は、Windows のドキュメントを参照してください。
3.17. FIPS モードが有効なサーバーでの Samba の実行
本セクションでは、FIPS モードが有効な状態で Samba を実行する制限の概要を説明します。また、Samba を実行している Red Hat Enterprise Linux ホストで FIPS モードを有効にする手順も提供します。
3.17.1. FIPS モードでの Samba の使用制限
以下の Samba モードと機能は、指定された条件下で FIPS モードで動作します。
- Samba は、AES 暗号化を使用する Kerberos 認証を使用する Active Directory (AD) または Red Hat Identity Management (IdM) 環境でのみ、ドメインメンバーとして使用できます。
- Active Directory ドメインメンバーのファイルサーバーとして Samba を使用する。ただし、クライアントは Kerberos を使用してサーバーに対して認証する必要があります。
FIPS のセキュリティーが強化されているため、FIPS モードが有効な場合は、以下の Samba 機能およびモードは機能しません。
- RC4 暗号がブロックされていることによる NT LAN Manager (NTLM) 認証
- サーバーメッセージブロックバージョン 1 (SMB1) プロトコル
- NTLM 認証を使用することによるスタンドアロンファイルサーバーモード
- NT4- スタイルのドメインコントローラー
- NT4- スタイルのドメインメンバーRed Hat は、IdM がバックグラウンドで使用するプライマリードメインコントローラー (PDC) 機能のサポートを継続することに留意してください。
- Samba サーバーに対するパスワード変更Active Directory ドメインコントローラーに対して Kerberos を使用してパスワードの変更のみを実行できます。
以下の機能は FIPS モードでテストされていないため、Red Hat ではサポートされていません。
- プリントサーバーとしての Samba の実行
3.17.2. FIPS モードでの Samba の使用
Samba を実行する RHEL ホストで FIPS モードを有効にすることができます。
前提条件
- Samba が Red Hat Enterprise Linux ホストに設定されている。
- Samba は、FIPS モードでサポートされるモードで実行する。
手順
RHEL で FIPS モードを有効にします。
# fips-mode-setup --enable
サーバーを再起動します。
# reboot
testparm
ユーティリティーを使用して、設定を確認します。# testparm -s
コマンドがエラーや非互換性を表示する場合は、Samba が正常に機能するように修正してください。
3.18. Samba サーバーのパフォーマンスチューニング
特定の状況で Samba のパフォーマンスを向上させることができる設定と、パフォーマンスに悪影響を与える可能性がある設定について説明します。
このセクションの一部は、Samba Wiki に公開されているドキュメント Performance Tuning に掲載されています。ライセンスは、CC BY 4.0 にあります。著者および貢献者は、Wiki ページの history タブを参照してください。
前提条件
- Samba が、ファイルサーバーまたはプリントサーバーとして設定されている。
3.18.1. SMB プロトコルバージョンの設定
新しい SMB バージョンごとに機能が追加され、プロトコルのパフォーマンスが向上します。最新の Windows および Windows Server オペレーティングシステムは、常に最新のプロトコルバージョンに対応しています。Samba がプロトコルの最新バージョンも使用している場合は、Samba に接続する Windows クライアントで、このパフォーマンス改善を活用できます。Samba では、server max protocol のデフォルト値が、対応している安定した SMB プロトコルの最新バージョンに設定されます。
常に最新の安定した SMB プロトコルバージョンを有効にするには、server max protocol
パラメーターを設定しないでください。このパラメーターを手動で設定する場合は、最新のプロトコルバージョンを有効にするために、それぞれ新しいバージョンの SMB プロトコルで設定を変更する必要があります。
次の手順では、server max protocol
パラメーターでデフォルト値を使用する方法を説明します。
手順
-
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションから、server max protocol
パラメーターを削除します。 Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
3.18.2. 大量のファイルを含むディレクトリーとの共有の調整
Linux は、大文字と小文字を区別するファイル名に対応しています。このため、Samba はファイルの検索時またはアクセス時に、大文字と小文字のファイル名のディレクトリーをスキャンする必要があります。小文字または大文字のいずれかでのみ新しいファイルを作成するように共有を設定すると、パフォーマンスが向上します。
前提条件
- Samba が、ファイルサーバーとして設定されている。
手順
共有の全ファイルの名前を小文字に変更します。
注記この手順の設定を使用すると、小文字以外の名前が付けられたファイルは表示されなくなります。
共有のセクションに、以下のパラメーターを設定します。
case sensitive = true default case = lower preserve case = no short preserve case = no
パラメーターの詳細は、man ページの
smb.conf(5)
を参照してください。/etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
Samba 設定を再読み込みします。
# smbcontrol all reload-config
この設定が適用されと、この共有に新たに作成されるすべてのファイルの名前が小文字になります。この設定により、Samba はディレクトリーを大文字と小文字で分けたスキャンが不要になり、パフォーマンスが向上します。
3.18.3. パフォーマンスが低下する可能性のある設定
デフォルトでは、Red Hat Enterprise Linux のカーネルは、ネットワークパフォーマンスが高くなるように調整されています。たとえば、カーネルはバッファーサイズに自動チューニングメカニズムを使用しています。/etc/samba/smb.conf
ファイルに socket options
パラメーターを設定すると、このカーネル設定が上書きされます。その結果、このパラメーターの設定により、ほとんどの場合は、Samba ネットワークのパフォーマンスが低下します。
カーネルの最適化された設定を使用するには、/etc/samba/smb.conf
の [global]
セクションから socket options
パラメーターを削除します。
3.19. Samba がデフォルトの SMB バージョンよりも前のバージョンのクライアントと互換対応するような設定
Samba は、サポート対象の最小サーバーメッセージブロック (SMB) バージョンに妥当で安全なデフォルト値を使用します。ただし、以前の SMB バージョンを必要とするクライアントがある場合は、Samba を設定してサポートできます。
3.19.1. Samba サーバーで対応している最小 SMB プロトコルバージョンの設定
Samba では、/etc/samba/smb.conf
ファイルの server min protocol
パラメーターは、Samba サーバーが対応する SMB (server message block) プロトコルの最小バージョンを定義します。SMB プロトコルの最小バージョンを変更できます。
デフォルトでは、RHEL 8.2 以降の Samba では、SMB2 以降のプロトコルバージョンのみに対応します。Red Hat は、非推奨の SMB1 プロトコルを使用することは推奨されません。ただし、お使いの環境で SMB1 が必要な場合は、server min protocol
パラメーターを手動で NT1
に設定して、SMB1 を再度有効にできます。
前提条件
- Samba がインストールされ、設定されている。
手順
/etc/samba/smb.conf
ファイルを編集し、server min protocol
パラメーターを追加して、そのサーバーが対応する最小 SMB プロトコルバージョンに設定できます。たとえば、最小の SMB プロトコルバージョンをSMB3
に設定するには、以下を追加します。server min protocol = SMB3
smb
サービスを再起動します。# systemctl restart smb
関連情報
-
smb.conf(5)
man ページ
3.20. 頻繁に使用される Samba コマンドラインユーティリティー
本章では、Samba サーバーで作業する場合によく使用されるコマンドを説明します。
3.20.1. net ads join コマンドおよび net rpc join コマンドの使用
net
ユーティリティーの join
サブコマンドを使用すると、Samba を AD ドメインまたは NT4 ドメインに参加させることができます。ドメインに参加するには、/etc/samba/smb.conf
ファイルを手動で作成し、必要に応じて PAM などの追加設定を更新する必要があります。
Red Hat は、realm
ユーティリティーを使用してドメインに参加させることを推奨します。realm
ユーティリティーは、関連するすべての設定ファイルを自動的に更新します。
手順
以下の設定で
/etc/samba/smb.conf
ファイルを手動で作成します。AD ドメインメンバーの場合:
[global] workgroup = domain_name security = ads passdb backend = tdbsam realm = AD_REALM
NT4 ドメインメンバーの場合:
[global] workgroup = domain_name security = user passdb backend = tdbsam
-
/etc/samba/smb.conf
ファイルの[global]
セクションに、*
デフォルトドメインおよび参加するドメイン用の ID マッピング設定を追加します。 /etc/samba/smb.conf
ファイルを検証します。# testparm
ドメイン管理者としてドメインに参加します。
AD ドメインに参加するには、以下のコマンドを実行します。
# net ads join -U "DOMAIN\administrator"
NT4 ドメインに参加するには、以下のコマンドを実行します。
# net rpc join -U "DOMAIN\administrator"
/etc/nsswitch.conf
ファイルのデータベースエントリーpasswd
およびgroup
にwinbind
ソースを追加します。passwd: files
winbind
group: fileswinbind
winbind
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now winbind
必要に応じて、
authselect
ユーティリティーを使用して PAM を設定します。詳細は、man ページの
authselect(8)
を参照してください。AD 環境では、必要に応じて Kerberos クライアントを設定します。
詳細は、Kerberos クライアントのドキュメントを参照してください。
3.20.2. net rpc rights コマンドの使用
Windows では、アカウントおよびグループに特権を割り当て、共有での ACL の設定やプリンタードライバーのアップロードなどの特別な操作を実行できます。Samba サーバーでは、net rpc rights
コマンドを使用して権限を管理できます。
設定可能な権限のリスト表示
利用可能な特権とその所有者をすべて表示するには、net rpc rights list
コマンドを使用します。以下に例を示します。
# net rpc rights list -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: SeMachineAccountPrivilege Add machines to domain SeTakeOwnershipPrivilege Take ownership of files or other objects SeBackupPrivilege Back up files and directories SeRestorePrivilege Restore files and directories SeRemoteShutdownPrivilege Force shutdown from a remote system SePrintOperatorPrivilege Manage printers SeAddUsersPrivilege Add users and groups to the domain SeDiskOperatorPrivilege Manage disk shares SeSecurityPrivilege System security
特権の付与
アカウントまたはグループへの特権を付与するには、net rpc rights grant
コマンドを使用します。
たとえば、SePrintOperatorPrivilege
権限を、DOMAIN\printadmin
グループに付与します。
# net rpc rights grant "DOMAIN\printadmin" SePrintOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: Successfully granted rights.
特権の取り消し
アカウントまたはグループから特権を取り消すには、net rpc rights revoke
コマンドを使用します。
たとえば、DOMAIN\printadmin
グループから SePrintOperatorPrivilege
権限を取り消すには、以下のコマンドを実行します。
# net rpc rights remoke "DOMAIN\printadmin" SePrintOperatorPrivilege -U "DOMAIN\administrator" Enter DOMAIN\administrator's password: Successfully revoked rights.
3.20.3. net rpc share コマンドの使用
net rpc share
コマンドは、ローカルまたはリモートの Samba または Windows サーバーの共有のリスト表示、追加、および削除を行う機能を提供します。
共有のリスト表示
SMB サーバーの共有をリスト表示するには、net rpc share list
コマンドを使用します。必要に応じて、-S server_name
パラメーターをコマンドに渡して、リモートサーバーの共有をリスト表示します。以下に例を示します。
# net rpc share list -U "DOMAIN\administrator" -S server_name Enter DOMAIN\administrator's password: IPC$ share_1 share_2 ...
/etc/samba/smb.conf
ファイルのセクション内に browseable = no
が設定されている Samba サーバーでホストされている共有は、出力には表示されません。
共有の追加
net rpc share add
コマンドを使用すると、SMB サーバーに共有を追加できます。
たとえば、C:\example\
ディレクトリーを共有するリモートの Windows サーバーに、共有 example
を追加するには、以下のコマンドを実行します。
# net rpc share add example="C:\example" -U "DOMAIN\administrator" -S server_name
Windows のディレクトリー名を指定する際は、パスの末尾のバックスラッシュを省略する必要があります。
このコマンドを使用して Samba サーバーに共有を追加するには、以下を行います。
-
-U
パラメーターで指定したユーザーは、出力先サーバーでSeDiskOperatorPrivilege
特権が付与されている必要があります。 -
共有セクションを、
/etc/samba/smb.conf
ファイルに追加し、Samba を再読み込みするスクリプトを記述する必要があります。スクリプトは、/etc/samba/smb.conf
の[global]
セクションのadd share command
パラメーターで設定する必要があります。詳細は、man ページのsmb.conf(5)
のadd share コマンド
の説明を参照してください。
共有の削除
net rpc share delete
コマンドを使用すると、SMB サーバーから共有を削除できます。
たとえば、example という名前の共有を、リモートの Windows サーバーから削除するには、以下のコマンドを実行します。
# net rpc share delete example -U "DOMAIN\administrator" -S server_name
このコマンドを使用して Samba サーバーから共有を削除するには、以下のコマンドを実行します。
-
-U
パラメーターで指定したユーザーは、SeDiskOperatorPrivilege
特権が付与されている必要があります。 -
/etc/samba/smb.conf
ファイルから共有のセクションを削除し、Samba を再読み込みするスクリプトを記述する必要があります。スクリプトは、/etc/samba/smb.conf
の[global]
セクションのdelete share command
パラメーターで設定する必要があります。詳細は、man ページのsmb.conf(5)
のdelete share コマンド
の説明を参照してください。
3.20.4. net user コマンドの使用
net user
コマンドを使用すると、AD DC または NT4 PDC で以下の操作を実行できます。
- すべてのユーザーアカウントのリストを表示
- ユーザーの追加
- ユーザーの削除
AD ドメイン用の ads
、NT4 ドメイン用の rpc
などの接続方法の指定は、ドメインユーザーアカウントをリスト表示する場合にのみ必要です。その他のユーザー関連のサブコマンドは、接続メソッドを自動検出できます。
-U user_name
パラメーターをコマンドに渡して、要求されたアクションを実行できるユーザーを指定します。
ドメインユーザーアカウントのリスト表示
AD ドメイン内のユーザーをリスト表示するには、以下を実行します。
# net ads user -U "DOMAIN\administrator"
NT4 ドメインのユーザーをリスト表示するには、以下を実行します。
# net rpc user -U "DOMAIN\administrator"
ユーザーアカウントのドメインへの追加
Samba ドメインメンバーの場合は、net user add
コマンドを使用して、ユーザーアカウントをドメインに追加できます。
たとえば、user
アカウントをドメインに追加します。
以下のアカウントを追加します。
# net user add user password -U "DOMAIN\administrator" User user added
必要に応じて、リモートプロシージャコール (RPC) シェルを使用して、AD DC または NT4 PDC でアカウントを有効にします。以下に例を示します。
# net rpc shell -U DOMAIN\administrator -S DC_or_PDC_name Talking to domain DOMAIN (S-1-5-21-1424831554-512457234-5642315751) net rpc>
user edit disabled user: no
Set user's disabled flag from [yes] to [no] net rpc>exit
ドメインからのユーザーアカウントの削除
Samba ドメインメンバーの場合は、net user delete
コマンドを使用して、ドメインからユーザーアカウントを削除できます。
たとえば、ドメインから user
アカウントを削除するには、以下のコマンドを実行します。
# net user delete user -U "DOMAIN\administrator" User user deleted
3.20.5. rpcclient ユーティリティーの使用
rpcclient
ユーティリティーを使用すると、ローカルまたはリモートの SMB サーバーでクライアント側の Microsoft Remote Procedure Call (MS-RPC) 機能を手動で実行できます。ただし、ほとんどの機能は、Samba が提供する個別のユーティリティーに統合されています。rpcclient
は、MS-PRC 関数のテストにのみ使用します。
前提条件
-
samba-client
パッケージがインストールされている。
例
たとえば、rpcclient
ユーティリティーを使用して以下を行うことができます。
プリンターのスプールサブシステム (SPOOLSS) を管理します。
例3.7 プリンターへのドライバーの割り当て
# rpcclient server_name -U "DOMAIN\administrator" -c 'setdriver "printer_name" "driver_name"' Enter DOMAIN\administrators password: Successfully set printer_name to driver driver_name.
SMB サーバーに関する情報を取得します。
例3.8 すべてのファイル共有および共有プリンターのリスト表示
# rpcclient server_name -U "DOMAIN\administrator" -c 'netshareenum' Enter DOMAIN\administrators password: netname: Example_Share remark: path: C:\srv\samba\example_share\ password: netname: Example_Printer remark: path: C:\var\spool\samba\ password:
Security Account Manager Remote (SAMR) プロトコルを使用して操作を実行します。
例3.9 SMB サーバー上のユーザーのリスト表示
# rpcclient server_name -U "DOMAIN\administrator" -c 'enumdomusers' Enter DOMAIN\administrators password: user:[user1] rid:[0x3e8] user:[user2] rid:[0x3e9]
スタンドアロンサーバーまたはドメインメンバーに対してコマンドを実行すると、ローカルデータベースのユーザーのリストが表示されます。ADDC または NT4 PDC に対してコマンドを実行すると、ドメインユーザーのリストが表示されます。
関連情報
-
rpcclient(1)
man ページ
3.20.6. samba-regedit アプリケーションの使用
プリンター設定などの特定の設定は、Samba サーバーのレジストリーに保存されます。ncurses ベースの samba-regedit
アプリケーションを使用して、Samba サーバーのレジストリーを編集できます。
前提条件
-
samba-client
パッケージがインストールされている。
手順
アプリケーションを起動するには、次のコマンドを入力します。
# samba-regedit
次のキーを使用します。
- カーソルを上下に動かして、レジストリーツリーと値の間を移動します。
- Enter - キーを開くか、値を編集します。
-
Tab -
Key
ペインとValue
ペインを切り替えます。 - Ctrl+C - アプリケーションを閉じます。
3.20.7. smbcontrol ユーティリティーの使用
smbcontrol
ユーティリティーを使用すると、smbd
、nmbd
、winbindd
、またはこのすべてのサービスにコマンドメッセージを送信できます。この制御メッセージは、設定の再読み込みなどのサービスを指示します。
前提条件
-
samba-common-tools
パッケージがインストールされている。
手順
-
reload-config
メッセージタイプをall
宛に送信して、smbd
、nmbd
、winbindd
サービスの設定をリロードします。
# smbcontrol all reload-config
関連情報
-
smbcontrol(1)
man ページ
3.20.8. smbpasswd ユーティリティーの使用
smbpasswd
ユーティリティーは、ローカルの Samba データベースでユーザーアカウントおよびパスワードを管理します。
前提条件
-
samba-common-tools
パッケージがインストールされている。
手順
ユーザーとしてコマンドを実行すると、
smbpasswd
はコマンドを実行するユーザーの Samba パスワードを変更します。以下に例を示します。[user@server ~]$ smbpasswd New SMB password: password Retype new SMB password: password
root
でsmbpasswd
を実行すると、たとえば以下のようにユーティリティーを使用できます。新しいユーザーを作成します。
[root@server ~]# smbpasswd -a user_name New SMB password:
password
Retype new SMB password:password
Added user user_name.注記Samba データベースにユーザーを追加する前に、ローカルのオペレーティングシステムにアカウントを作成する必要があります。基本的なシステム設定の設定の コマンドラインでの新規ユーザーの追加 セクションを参照してください。
Samba ユーザーを有効にします。
[root@server ~]# smbpasswd -e user_name Enabled user user_name.
Samba ユーザーを無効にします。
[root@server ~]# smbpasswd -x user_name Disabled user user_name
ユーザーを削除します。
[root@server ~]# smbpasswd -x user_name Deleted user user_name.
関連情報
-
smbpasswd(8)
man ページ
3.20.9. smbstatus ユーティリティーの使用
smbstatus
ユーティリティーは以下について報告します。
-
各
smbd
デーモンの PID ごとの接続を Samba サーバーに接続します。このレポートには、ユーザー名、プライマリーグループ、SMB プロトコルのバージョン、暗号、および署名の情報が含まれます。 -
Samba 共有ごとの接続このレポートには、
smbd
デーモンの PID、接続しているマシンの IP、接続が確立された時点のタイムスタンプ、暗号、および署名情報が含まれます。 - ロックされたファイルのリスト。レポートエントリーには、日和見ロック (oplock) タイプなどの詳細が含まれます。
前提条件
-
samba
パッケージがインストールされている。 -
smbd
サービスが実行している。
手順
# smbstatus Samba version 4.15.2 PID Username Group Machine Protocol Version Encryption Signing ....------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 963 DOMAIN\administrator DOMAIN\domain users client-pc (ipv4:192.0.2.1:57786) SMB3_02 - AES-128-CMAC Service pid Machine Connected at Encryption Signing: ....--------------------------------------------------------------------------- example 969 192.0.2.1 Thu Nov 1 10:00:00 2018 CEST - AES-128-CMAC Locked files: Pid Uid DenyMode Access R/W Oplock SharePath Name Time ....-------------------------------------------------------------------------------------------------------- 969 10000 DENY_WRITE 0x120089 RDONLY LEASE(RWH) /srv/samba/example file.txt Thu Nov 1 10:00:00 2018
関連情報
-
smbstatus(1)
man ページ
3.20.10. smbtar ユーティリティーの使用
smbtar
ユーティリティーは、SMB 共有またはそのサブディレクトリーのコンテンツのバックアップを作成し、そのコンテンツを tar
アーカイブに保存します。または、コンテンツをテープデバイスに書き込むこともできます。
前提条件
-
samba-client
パッケージがインストールされている。
手順
以下のコマンドを使用して、
//server/example/
共有上のdemo
ディレクトリーのコンテンツをバックアップして、/root/example.tar
アーカイブにコンテンツを保存するには、以下を実行します。# smbtar -s server -x example -u user_name -p password -t /root/example.tar
関連情報
-
smbtar(1)
の man ページ
3.20.11. wbinfo ユーティリティーの使用
wbinfo
ユーティリティーは、winbindd
サービスが作成および使用する情報をクエリーし、返します。
前提条件
-
samba-winbind-clients
パッケージがインストールされている。
手順
たとえば、以下のように、wbinfo
を使用できます。
ドメインユーザーのリストを表示します。
# wbinfo -u AD\administrator AD\guest ...
ドメイングループのリストを表示します。
# wbinfo -g AD\domain computers AD\domain admins AD\domain users ...
ユーザーの SID を表示します。
# wbinfo --name-to-sid="AD\administrator" S-1-5-21-1762709870-351891212-3141221786-500 SID_USER (1)
ドメインおよび信頼に関する情報を表示します。
# wbinfo --trusted-domains --verbose Domain Name DNS Domain Trust Type Transitive In Out BUILTIN None Yes Yes Yes server None Yes Yes Yes DOMAIN1 domain1.example.com None Yes Yes Yes DOMAIN2 domain2.example.com External No Yes Yes
関連情報
-
wbinfo(1)
man ページ
3.21. 関連情報
-
smb.conf(5)
man ページ -
/usr/share/docs/samba-version/
ディレクトリーには、Samba プロジェクトが提供する一般的なドキュメント、サンプルスクリプト、および LDAP スキーマファイルが含まれています。 - Setting up Samba and the Clustered Trivial Database (CDTB) to share directories stored on an GlusterFS volume
- Red Hat Enterprise Linux での SMB 共有のマウント
第4章 BIND DNS サーバーのセットアップおよび設定
BIND は、Internet Engineering Task Force (IETF) の DNS 標準およびドラフト標準に完全に準拠した機能豊富な DNS サーバーです。たとえば、管理者は BIND を次のように頻繁に使用します。
- ローカルネットワークでの DNS サーバーのキャッシング
- ゾーンの権威 DNS サーバー
- ゾーンに高可用性を提供するセカンダリーサーバー
4.1. SELinux を使用した BIND の保護または change-root 環境での BIND の実行に関する考慮事項
BIND インストールを保護するには、次のことができます。
change-root 環境なしで
named
サービスを実行します。この場合、enforcing
モードの SELinux は、既知の BIND セキュリティー脆弱性の悪用を防ぎます。デフォルトでは、Red Hat Enterprise Linux は SELinux をenforcing
モードで使用します。重要RHEL で SELinux を
enforcing
モードで使用して BIND を実行すると、change-root 環境で BIND を実行するよりも安全です。name-chroot
サービスを change-root 環境で実行します。管理者は、change-root 機能を使用して、プロセスとそのサブプロセスのルートディレクトリーが
/
ディレクトリーとは異なるものであることを定義できます。named-chroot
サービスを開始すると、BIND はそのルートディレクトリーを/var/named/chroot/
に切り替えます。その結果、サービスはmount --bind
コマンドを使用して、/etc/named-chroot.files
にリストされているファイルおよびディレクトリーを/var/named/chroot/
で使用できるようにし、プロセスは/var/named/chroot/
以外のファイルにアクセスできません。
BIND を使用する場合:
-
通常モードでは、
named
サービスを使用します。 -
change-root 環境では、
named-chroot
サービスを使用します。これには、named-chroot
パッケージを追加でインストールする必要があります。
関連情報
-
named(8)
man ページのRed Hat SELinux BIND security profile
セクション
4.2. BIND 管理者リファレンスマニュアル
bind
パッケージに含まれる総合的な BIND Administrator Reference Manual
には、次の内容が記載されています。
- 設定例
- 高度な機能に関するドキュメント
- 設定リファレンス
- セキュリティーに関する考慮事項
bind
パッケージがインストールされているホストで BIND Administrator Reference Manual
を表示するには、ブラウザーで /usr/share/doc/bind/Bv9ARM.html
ファイルを開きます。
4.3. BIND をキャッシュ DNS サーバーとして設定する
デフォルトでは、BIND DNS サーバーは、成功したルックアップと失敗したルックアップを解決してキャッシュします。その後、サービスはキャッシュから同じレコードへの要求に応答します。これにより、DNS ルックアップの速度が大幅に向上します。
前提条件
- サーバーの IP アドレスは静的です。
手順
bind
パッケージおよびbind-utils
パッケージをインストールします。# yum install bind bind-utils
これらのパッケージは BIND 9.11 を提供します。BIND 9.16 が必要な場合は、
bind9.16
およびbind9.16-utils
パッケージをインストールしてください。BIND を change-root 環境で実行する場合は、
bind-chroot
パッケージをインストールします。# yum install bind-chroot
デフォルトである
enforcing
モードで SELinux を使用するホストで BIND を実行すると、より安全になることに注意してください。/etc/named.conf
ファイルを編集し、options
ステートメントに次の変更を加えます。listen-on
およびlisten-on-v6
ステートメントを更新して、BIND がリッスンする IPv4 インターフェイスおよび IPv6 インターフェイスを指定します。listen-on port 53 { 127.0.0.1; 192.0.2.1; }; listen-on-v6 port 53 { ::1; 2001:db8:1::1; };
allow-query
ステートメントを更新して、クライアントがこの DNS サーバーにクエリーを実行できる IP アドレスおよび範囲を設定します。allow-query { localhost; 192.0.2.0/24; 2001:db8:1::/64; };
allow-recursion
ステートメントを追加して、BIND が再帰クエリーを受け入れる IP アドレスおよび範囲を定義します。allow-recursion { localhost; 192.0.2.0/24; 2001:db8:1::/64; };
警告サーバーのパブリック IP アドレスで再帰を許可しないでください。そうしないと、サーバーが大規模な DNS 増幅攻撃の一部になる可能性があります。
デフォルトでは、BIND は、ルートサーバーから権限のある DNS サーバーに再帰的にクエリーを実行することにより、クエリーを解決します。または、プロバイダーのサーバーなど、他の DNS サーバーにクエリーを転送するように BIND を設定することもできます。この場合、BIND がクエリーを転送する DNS サーバーの IP アドレスのリストを含む
forwarders
ステートメントを追加します。forwarders { 198.51.100.1; 203.0.113.5; };
フォールバック動作として、フォワーダーサーバーが応答しないと、BIND はクエリーを再帰的に解決します。この動作を無効にするには、
forward only;
ステートメントを追加します。
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
着信 DNS トラフィックを許可するように
firewalld
ルールを更新します。# firewall-cmd --permanent --add-service=dns # firewall-cmd --reload
BIND を開始して有効にします。
# systemctl enable --now named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl enable --now named-chroot
コマンドを使用して、サービスを有効にして開始します。
検証
新しく設定した DNS サーバーを使用してドメインを解決します。
# dig @localhost www.example.org ... www.example.org. 86400 IN A 198.51.100.34 ;; Query time: 917 msec ...
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。初めてレコードをクエリーした後、BIND はエントリーをそのキャッシュに追加します。
前のクエリーを繰り返します。
# dig @localhost www.example.org ... www.example.org. 85332 IN A 198.51.100.34 ;; Query time: 1 msec ...
エントリーがキャッシュされるため、エントリーの有効期限が切れるまで、同じレコードに対するそれ以降のリクエストは大幅に高速化されます。
次のステップ
- この DNS サーバーを使用するようにネットワーク内のクライアントを設定します。DHCP サーバーが DNS サーバー設定をクライアントに提供する場合は、それに応じて DHCP サーバーの設定を更新します。
関連情報
- SELinux を使用した BIND の保護または change-root 環境での BIND の実行に関する考慮事項
-
named.conf(5)
man ページ -
/usr/share/doc/bind/sample/etc/named.conf
- BIND 管理者リファレンスマニュアル
4.4. BIND DNS サーバーでのログの設定
bind
パッケージによって提供されるデフォルトの /etc/named.conf
ファイル内の設定は、default_debug
チャネルを使用し、メッセージのログを /var/named/data/named.run
ファイルに記録します。default_debug
チャネルは、サーバーのデバッグレベルがゼロ以外の場合にのみエントリーをログに記録します。
さまざまなチャネルおよびカテゴリーを使用して、BIND を設定して、定義された重大度でさまざまなイベントを個別のファイルに書き込むことができます。
前提条件
- BIND は、たとえばキャッシングネームサーバーとしてすでに設定されています。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
/etc/named.conf
ファイルを編集し、category
およびchannel
フレーズをlogging
ステートメントに追加します。次に例を示します。logging { ... category notify { zone_transfer_log; }; category xfer-in { zone_transfer_log; }; category xfer-out { zone_transfer_log; }; channel zone_transfer_log { file "/var/named/log/transfer.log" versions 10 size 50m; print-time yes; print-category yes; print-severity yes; severity info; }; ... };
この設定例では、BIND はゾーン転送に関連するメッセージのログを
/var/named/log/transfer.log
に記録します。BIND は最大10
バージョンのログファイルを作成し、最大サイズが50
MB に達するとローテーションします。category
句は、BIND がカテゴリーのメッセージを送信するチャネルを定義します。channel
句は、バージョン数、最大ファイルサイズ、および BIND がチャネルにログ記録する必要がある重大度レベルを含むログメッセージの宛先を定義します。イベントのタイムスタンプ、カテゴリー、および重大度のログ記録を有効にするなどの追加設定はオプションですが、デバッグ目的で役立ちます。ログディレクトリーが存在しない場合は作成し、このディレクトリーの
named
ユーザーに書き込み権限を付与します。# mkdir /var/named/log/ # chown named:named /var/named/log/ # chmod 700 /var/named/log/
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
BIND を再起動します。
# systemctl restart named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl restart named-chroot
コマンドを使用してサービスを再起動します。
検証
ログファイルの内容を表示します。
# cat /var/named/log/transfer.log ... 06-Jul-2022 15:08:51.261 xfer-out: info: client @0x7fecbc0b0700 192.0.2.2#36121/key example-transfer-key (example.com): transfer of 'example.com/IN': AXFR started: TSIG example-transfer-key (serial 2022070603) 06-Jul-2022 15:08:51.261 xfer-out: info: client @0x7fecbc0b0700 192.0.2.2#36121/key example-transfer-key (example.com): transfer of 'example.com/IN': AXFR ended
関連情報
-
named.conf(5)
man ページ - BIND 管理者リファレンスマニュアル
4.5. BIND ACL の作成
BIND の特定の機能へのアクセスを制御することで、サービス拒否 (DoS) などの不正アクセスや攻撃を防ぐことができます。BIND アクセス制御リスト (acl
) ステートメントは、IP アドレスと範囲のリストです。各 ACL には、指定された IP アドレスと範囲を参照するために allow-query
などのいくつかのステートメントで使用できるニックネームがあります。
BIND は、ACL で最初に一致したエントリーのみを使用します。たとえば、ACL { 192.0.2/24; !192.0.2.1; }
を定義し、IP アドレス 192.0.2.1
でホストが接続すると、2 番目のエントリーでこのアドレスが除外されていてもアクセスが許可されます。
BIND には次の組み込み ACL があります。
-
none
: どのホストとも一致しません。 -
any
: すべてのホストに一致します。 -
localhost
: ループバックアドレス127.0.0.1
と::1
、および BIND を実行するサーバー上のすべてのインターフェイスの IP アドレスに一致します。 -
localnets
: ループバックアドレス127.0.0.1
と::1
、および BIND を実行するサーバーが直接接続しているすべてのサブネットに一致します。
前提条件
- BIND は、たとえばキャッシングネームサーバーとしてすでに設定されています。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
/etc/named.conf
ファイルを編集して、次の変更を行います。acl
ステートメントをファイルに追加します。たとえば、127.0.0.1
、192.0.2.0/24
、および2001:db8:1::/64
に対してinternal-networks
という名前の ACL を作成するには、次のように入力します。acl internal-networks { 127.0.0.1; 192.0.2.0/24; 2001:db8:1::/64; }; acl dmz-networks { 198.51.100.0/24; 2001:db8:2::/64; };
ACL のニックネームをサポートするステートメントで使用します。たとえば、次のようになります。
allow-query { internal-networks; dmz-networks; }; allow-recursion { internal-networks; };
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
検証
設定された ACL を使用する機能をトリガーするアクションを実行します。たとえば、この手順の ACL は、定義された IP アドレスからの再帰クエリーのみを許可します。この場合は、ACL の定義に含まれていないホストで次のコマンドを入力して、外部ドメインの解決を試みます。
# dig +short @192.0.2.1 www.example.com
コマンドが出力を返さないと、BIND はアクセスを拒否し、ACL は機能しています。クライアントで詳細な出力を得るには、
+short
オプションを指定せずにコマンドを使用します。# dig @192.0.2.1 www.example.com ... ;; WARNING: recursion requested but not available ...
関連情報
-
The BIND Administrator Reference Manual の
Access control lists
セクション。
4.6. BIND DNS サーバーでのゾーンの設定
DNS ゾーンは、ドメインスペース内の特定のサブツリーのリソースレコードを含むデータベースです。たとえば、example.com
ドメインを担当している場合は、BIND でそのゾーンを設定できます。その結果、クライアントは www.example.com
をこのゾーンで設定された IP アドレスに解決できます。
4.6.1. ゾーンファイルの SOA レコード
SOA (Start of Authority) レコードは、DNS ゾーンで必要なレコードです。このレコードは、たとえば、複数の DNS サーバーがゾーンだけでなく DNS リゾルバーに対しても権限を持っている場合に重要です。
BIND の SOA レコードの構文は次のとおりです。
name class type mname rname serial refresh retry expire minimum
読みやすくするために、管理者は通常、ゾーンファイル内のレコードを、セミコロン (;
) で始まるコメントを使用して複数の行に分割します。SOA レコードを分割する場合は、括弧でレコードをまとめることに注意してください。
@ IN SOA ns1.example.com. hostmaster.example.com. ( 2022070601 ; serial number 1d ; refresh period 3h ; retry period 3d ; expire time 3h ) ; minimum TTL
完全修飾ドメイン名 (FQDN) の末尾にあるドットに注意してください。FQDN は、ドットで区切られた複数のドメインラベルで設定されます。DNS ルートには空のラベルがあるため、FQDN はドットで終わります。したがって、BIND はゾーン名を末尾のドットなしで名前に追加します。末尾にドットがないホスト名 (例: ns1.example.com
) は、ns1.example.com.example.com.
に展開されます。これは、プライマリーネームサーバーの正しいアドレスではありません。
SOA レコードのフィールドは次のとおりです。
-
name
: ゾーンの名前 (つまりorigin
)。このフィールドを@
に設定すると、BIND はそれを/etc/named.conf
で定義されたゾーン名に展開します。 -
class
: SOA レコードでは、このフィールドを常に Internet (IN
) に設定する必要があります。 -
type
: SOA レコードでは、このフィールドを常にSOA
に設定する必要があります。 -
mname
(マスター名): このゾーンのプライマリーネームサーバーのホスト名。 -
rname
(責任者名): このゾーンの責任者の電子メールアドレス。形式が異なりますのでご注意ください。アットマーク (@
) をドット (.
) に置き換える必要があります。 serial
: このゾーンファイルのバージョン番号。セカンダリーネームサーバーは、プライマリーサーバーのシリアル番号の方が大きい場合にのみ、ゾーンのコピーを更新します。形式は任意の数値にすることができます。一般的に使用される形式は
<year><month><day><two-digit-number>
です。この形式を使用すると、理論的には、ゾーンファイルを 1 日に 100 回まで変更できます。-
refresh
: ゾーンが更新された場合は、プライマリーサーバーをチェックする前にセカンダリーサーバーが待機する時間。 -
retry
: 試行が失敗した後、セカンダリーサーバーがプライマリーサーバーへのクエリーを再試行するまでの時間。 -
expire
: 以前の試行がすべて失敗した場合に、セカンダリーサーバーがプライマリーサーバーへのクエリーを停止した後の時間。 -
minimum
: RFC 2308 は、このフィールドの意味を負のキャッシュ時間に変更しました。準拠リゾルバーは、NXDOMAIN
名エラーをキャッシュする期間を決定するために使用します。
refresh
、retry
、expire
、および maximum
フィールドの数値は、時間を秒単位で定義します。ただし、読みやすくするために、時間の接尾辞 (m
は分、h
は時間、d
は日など) を使用してください。たとえば、3h
は 3 時間を表します。
4.6.2. BIND プライマリーサーバーでの正引きゾーンの設定
正引きゾーンは、名前を IP アドレスやその他の情報にマップします。たとえば、ドメイン example.com
を担当している場合は、BIND で転送ゾーンを設定して、www.example.com
などの名前を解決できます。
前提条件
- BIND は、たとえばキャッシングネームサーバーとしてすでに設定されています。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
/etc/named.conf
ファイルにゾーン定義を追加します。zone "example.com" { type master; file "example.com.zone"; allow-query { any; }; allow-transfer { none; }; };
これらの設定により、次が定義されます。
-
このサーバーは、
example.com
ゾーンのプライマリーサーバー (type master
) です。 -
/var/named/example.com.zone
ファイルはゾーンファイルです。この例のように相対パスを設定すると、このパスは、options
ステートメントのdirectory
に設定したディレクトリーからの相対パスになります。 - どのホストもこのゾーンにクエリーを実行できます。または、IP 範囲または BIND アクセス制御リスト (ACL) のニックネームを指定して、アクセスを制限します。
- どのホストもゾーンを転送できません。ゾーン転送を許可するのは、セカンダリーサーバーをセットアップする際に限られ、セカンダリーサーバーの IP アドレスに対してのみ許可します。
-
このサーバーは、
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
たとえば、次の内容で
/var/named/example.com.zone
ファイルを作成します。$TTL 8h @ IN SOA ns1.example.com. hostmaster.example.com. ( 2022070601 ; serial number 1d ; refresh period 3h ; retry period 3d ; expire time 3h ) ; minimum TTL IN NS ns1.example.com. IN MX 10 mail.example.com. www IN A 192.0.2.30 www IN AAAA 2001:db8:1::30 ns1 IN A 192.0.2.1 ns1 IN AAAA 2001:db8:1::1 mail IN A 192.0.2.20 mail IN AAAA 2001:db8:1::20
このゾーンファイル:
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 8 時間に設定します。時間の
h
などの時間接尾辞がない場合、BIND は値を秒として解釈します。 - ゾーンに関する詳細を含む、必要な SOA リソースレコードが含まれています。
-
このゾーンの権威 DNS サーバーとして
ns1.example.com
を設定します。ゾーンを機能させるには、少なくとも 1 つのネームサーバー (NS
) レコードが必要です。ただし、RFC 1912 に準拠するには、少なくとも 2 つのネームサーバーが必要です。 -
example.com
ドメインのメールエクスチェンジャー (MX
) としてmail.example.com
を設定します。ホスト名の前の数値は、レコードの優先度です。値が小さいエントリーほど優先度が高くなります。 -
www.example.com
、mail.example.com
、およびns1.example.com
の IPv4 アドレスおよび IPv6 アドレスを設定します。
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 8 時間に設定します。時間の
named
グループだけがそれを読み取ることができるように、ゾーンファイルに安全なアクセス許可を設定します。# chown root:named /var/named/example.com.zone # chmod 640 /var/named/example.com.zone
/var/named/example.com.zone
ファイルの構文を確認します。# named-checkzone example.com /var/named/example.com.zone zone example.com/IN: loaded serial 2022070601 OK
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
検証
example.com
ゾーンからさまざまなレコードをクエリーし、出力がゾーンファイルで設定したレコードと一致することを確認します。# dig +short @localhost AAAA www.example.com 2001:db8:1::30 # dig +short @localhost NS example.com ns1.example.com. # dig +short @localhost A ns1.example.com 192.0.2.1
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。
4.6.3. BIND プライマリーサーバーでの逆引きゾーンの設定
逆ゾーンは、IP アドレスを名前にマップします。たとえば、IP 範囲 192.0.2.0/24
を担当している場合は、BIND で逆引きゾーンを設定して、この範囲の IP アドレスをホスト名に解決できます。
クラスフルネットワーク全体の逆引きゾーンを作成する場合は、それに応じてゾーンに名前を付けます。たとえば、クラス C ネットワーク 192.0.2.0/24
の場合は、ゾーンの名前が 2.0.192.in-addr.arpa
です。192.0.2.0/28
など、異なるネットワークサイズの逆引きゾーンを作成する場合は、ゾーンの名前が 28-2.0.192.in-addr.arpa
です。
前提条件
- BIND は、たとえばキャッシングネームサーバーとしてすでに設定されています。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
/etc/named.conf
ファイルにゾーン定義を追加します。zone "2.0.192.in-addr.arpa" { type master; file "2.0.192.in-addr.arpa.zone"; allow-query { any; }; allow-transfer { none; }; };
これらの設定により、次が定義されます。
-
2.0.192.in-addr.arpa
逆引きゾーンのプライマリーサーバー (type master
) としてのこのサーバー。 -
/var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone
ファイルはゾーンファイルです。この例のように相対パスを設定すると、このパスは、options
ステートメントのdirectory
に設定したディレクトリーからの相対パスになります。 - どのホストもこのゾーンにクエリーを実行できます。または、IP 範囲または BIND アクセス制御リスト (ACL) のニックネームを指定して、アクセスを制限します。
- どのホストもゾーンを転送できません。ゾーン転送を許可するのは、セカンダリーサーバーをセットアップする際に限られ、セカンダリーサーバーの IP アドレスに対してのみ許可します。
-
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
たとえば、次の内容で
/var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone
ファイルを作成します。$TTL 8h @ IN SOA ns1.example.com. hostmaster.example.com. ( 2022070601 ; serial number 1d ; refresh period 3h ; retry period 3d ; expire time 3h ) ; minimum TTL IN NS ns1.example.com. 1 IN PTR ns1.example.com. 30 IN PTR www.example.com.
このゾーンファイル:
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 8 時間に設定します。時間の
h
などの時間接尾辞がない場合、BIND は値を秒として解釈します。 - ゾーンに関する詳細を含む、必要な SOA リソースレコードが含まれています。
-
ns1.example.com
をこの逆引きゾーンの権威 DNS サーバーとして設定します。ゾーンを機能させるには、少なくとも 1 つのネームサーバー (NS
) レコードが必要です。ただし、RFC 1912 に準拠するには、少なくとも 2 つのネームサーバーが必要です。 -
192.0.2.1
および192.0.2.30
アドレスのポインター (PTR
) レコードを設定します。
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 8 時間に設定します。時間の
named
グループのみがそれを読み取ることができるように、ゾーンファイルに安全なアクセス許可を設定します。# chown root:named /var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone # chmod 640 /var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone
/var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone
ファイルの構文を確認します。# named-checkzone 2.0.192.in-addr.arpa /var/named/2.0.192.in-addr.arpa.zone zone 2.0.192.in-addr.arpa/IN: loaded serial 2022070601 OK
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
検証
逆引きゾーンからさまざまなレコードをクエリーし、出力がゾーンファイルで設定したレコードと一致することを確認します。
# dig +short @localhost -x 192.0.2.1 ns1.example.com. # dig +short @localhost -x 192.0.2.30 www.example.com.
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。
4.6.4. BIND ゾーンファイルの更新
サーバーの IP アドレスが変更された場合など、特定の状況では、ゾーンファイルを更新する必要があります。複数の DNS サーバーが 1 つのゾーンを担ってる場合は、この手順をプライマリーサーバーでのみ実行してください。ゾーンのコピーを保存する他の DNS サーバーは、ゾーン転送を通じて更新を受け取ります。
前提条件
- ゾーンが設定されました。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
オプション:
/etc/named.conf
ファイル内のゾーンファイルへのパスを特定します。options { ... directory "/var/named"; } zone "example.com" { ... file "example.com.zone"; };
ゾーンの定義の
file
ステートメントで、ゾーンファイルへのパスを見つけます。相対パスは、options
ステートメントのdirectory
に設定されたディレクトリーからの相対パスです。ゾーンファイルを編集します。
- 必要な変更を行います。
SOA (Start of Authority) レコードのシリアル番号を増やします。
重要シリアル番号が以前の値以下の場合、セカンダリーサーバーはゾーンのコピーを更新しません。
ゾーンファイルの構文を確認します。
# named-checkzone example.com /var/named/example.com.zone zone example.com/IN: loaded serial 2022062802 OK
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
検証
追加、変更、または削除したレコードを照会します。たとえば、次のようになります。
# dig +short @localhost A ns2.example.com 192.0.2.2
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。
4.6.5. 自動鍵生成およびゾーン保守機能を使用した DNSSEC ゾーン署名
DNSSEC (Domain Name System Security Extensions) でゾーンに署名して、認証およびデータの整合性を確保できます。このようなゾーンには、追加のリソースレコードが含まれます。クライアントはそれらを使用して、ゾーン情報の信頼性を検証できます。
ゾーンの DNSSEC ポリシー機能を有効にすると、BIND は次のアクションを自動的に実行します。
- キーを作成します。
- ゾーンに署名します
- 鍵の再署名や定期的な交換など、ゾーンを維持します。
外部 DNS サーバーがゾーンの信頼性を検証できるようにするには、ゾーンの公開キーを親ゾーンに追加する必要があります。これを行う方法の詳細については、ドメインプロバイダーまたはレジストリーにお問い合わせください。
この手順では、BIND に組み込まれている default
の DNSSEC ポリシーを使用します。このポリシーは、単一の ECDSAP256SHA
鍵署名を使用します。または、独自のポリシーを作成して、カスタムキー、アルゴリズム、およびタイミングを使用します。
前提条件
-
BIND 9.16 以降がインストールされている。この要件を満たすには、
bind
の代わりにbind9.16
パッケージをインストールします。 - DNSSEC を有効にするゾーンが設定されている。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。 - サーバーは時刻をタイムサーバーと同期します。DNSSEC 検証では、正確なシステム時刻が重要です。
手順
/etc/named.conf
ファイルを編集し、DNSSEC を有効にするゾーンにdnssec-policy default;
を追加します。zone "example.com" { ... dnssec-policy default; };
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。BIND は公開鍵を
/var/named/K<zone_name>.+<algorithm>+<key_ID>.key
ファイルに保存します。このファイルを使用して、親ゾーンが必要とする形式でゾーンの公開鍵を表示します。DS レコード形式:
# dnssec-dsfromkey /var/named/Kexample.com.+013+61141.key example.com. IN DS 61141 13 2 3E184188CF6D2521EDFDC3F07CFEE8D0195AACBD85E68BAE0620F638B4B1B027
DNSKEY 形式:
# grep DNSKEY /var/named/Kexample.com.+013+61141.key example.com. 3600 IN DNSKEY 257 3 13 sjzT3jNEp120aSO4mPEHHSkReHUf7AABNnT8hNRTzD5cKMQSjDJin2I3 5CaKVcWO1pm+HltxUEt+X9dfp8OZkg==
- ゾーンの公開鍵を親ゾーンに追加するように要求します。これを行う方法の詳細については、ドメインプロバイダーまたはレジストリーにお問い合わせください。
検証
DNSSEC 署名を有効にしたゾーンのレコードについて、独自の DNS サーバーにクエリーを実行します。
# dig +dnssec +short @localhost A www.example.com 192.0.2.30 A 13 3 28800 20220718081258 20220705120353 61141 example.com. e7Cfh6GuOBMAWsgsHSVTPh+JJSOI/Y6zctzIuqIU1JqEgOOAfL/Qz474 M0sgi54m1Kmnr2ANBKJN9uvOs5eXYw==
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。公開鍵が親ゾーンに追加され、他のサーバーに伝播されたら、サーバーが署名付きゾーンへのクエリーで認証済みデータ (
ad
) フラグを設定することを確認します。# dig @localhost example.com +dnssec ... ;; flags: qr rd ra ad; QUERY: 1, ANSWER: 2, AUTHORITY: 0, ADDITIONAL: 1 ...
4.7. BIND DNS サーバー間のゾーン転送の設定
ゾーン転送により、ゾーンのコピーを持つすべての DNS サーバーが最新のデータを使用することが保証されます。
前提条件
- 将来のプライマリーサーバーでは、ゾーン転送を設定するゾーンが設定されている。
- 将来のセカンダリーサーバーでは、BIND はキャッシュネームサーバーなどとして設定されている。
-
両方のサーバーで、
named
サービスまたはnamed-chroot
サービスが実行している。
手順
既存のプライマリーサーバーで、以下を行います。
共有キーを作成し、
/etc/named.conf
ファイルに追加します。# tsig-keygen example-transfer-key | tee -a /etc/named.conf key "example-transfer-key" { algorithm hmac-sha256; secret "q7ANbnyliDMuvWgnKOxMLi313JGcTZB5ydMW5CyUGXQ="; };
このコマンドは、
tsig-keygen
コマンドの出力を表示し、自動的に/etc/named.conf
に追加します。後でセカンダリーサーバーでもコマンドの出力が必要になります。
/etc/named.conf
ファイルのゾーン定義を編集します。allow-transfer
ステートメントで、サーバーがゾーンを転送するためにexample-transfer-key
ステートメントで指定されたキーを提供する必要があることを定義します。zone "example.com" { ... allow-transfer { key example-transfer-key; }; };
または、
allow-transfer
ステートメントで BIND アクセス制御リスト (ACL) ニックネームを使用します。デフォルトでは、ゾーンが更新された後、BIND は、このゾーンにネームサーバー (
NS
) レコードを持つすべてのネームサーバーに通知します。セカンダリーサーバーのNS
レコードをゾーンに追加する予定がない場合は、BIND がこのサーバーに通知するように設定できます。そのために、このセカンダリーサーバーの IP アドレスを含むalso-notify
ステートメントをゾーンに追加します。zone "example.com" { ... also-notify { 192.0.2.2; 2001:db8:1::2; }; };
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
将来のセカンダリーサーバーで、以下を行います。
/etc/named.conf
ファイルを次のように編集します。プライマリーサーバーと同じキー定義を追加します。
key "example-transfer-key" { algorithm hmac-sha256; secret "q7ANbnyliDMuvWgnKOxMLi313JGcTZB5ydMW5CyUGXQ="; };
/etc/named.conf
ファイルにゾーン定義を追加します。zone "example.com" { type slave; file "slaves/example.com.zone"; allow-query { any; }; allow-transfer { none; }; masters { 192.0.2.1 key example-transfer-key; 2001:db8:1::1 key example-transfer-key; }; };
これらの設定状態:
-
このサーバーは、
example.com
ゾーンのセカンダリーサーバー (type slave
) です。 -
/var/named/slaves/example.com.zone
ファイルはゾーンファイルです。この例のように相対パスを設定すると、このパスは、options
ステートメントのdirectory
に設定したディレクトリーからの相対パスになります。このサーバーがセカンダリーであるゾーンファイルをプライマリーサーバーから分離するには、それを/var/named/slaves/
ディレクトリーなどに保存します。 - どのホストもこのゾーンにクエリーを実行できます。または、IP 範囲または ACL ニックネームを指定して、アクセスを制限します。
- このサーバーからゾーンを転送できるホストはありません。
-
このゾーンのプライマリーサーバーの IP アドレスは
192.0.2.1
および2001:db8:1::2
です。または、ACL ニックネームを指定できます。このセカンダリーサーバーは、example-transfer-key
という名前のキーを使用して、プライマリーサーバーに対する認証を行います。
-
このサーバーは、
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
-
オプション: プライマリーサーバーのゾーンファイルを変更し、新しいセカンダリーサーバーの
NS
レコードを追加します。
検証
セカンダリーサーバーで次の手順を実行します。
named
サービスのsystemd
ジャーナルエントリーを表示します。# journalctl -u named ... Jul 06 15:08:51 ns2.example.com named[2024]: zone example.com/IN: Transfer started. Jul 06 15:08:51 ns2.example.com named[2024]: transfer of 'example.com/IN' from 192.0.2.1#53: connected using 192.0.2.2#45803 Jul 06 15:08:51 ns2.example.com named[2024]: zone example.com/IN: transferred serial 2022070101 Jul 06 15:08:51 ns2.example.com named[2024]: transfer of 'example.com/IN' from 192.0.2.1#53: Transfer status: success Jul 06 15:08:51 ns2.example.com named[2024]: transfer of 'example.com/IN' from 192.0.2.1#53: Transfer completed: 1 messages, 29 records, 2002 bytes, 0.003 secs (667333 bytes/sec)
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
journalctl -u named-chroot
コマンドを使用してジャーナルエントリーを表示します。BIND がゾーンファイルを作成したことを確認します。
# ls -l /var/named/slaves/ total 4 -rw-r--r--. 1 named named 2736 Jul 6 15:08 example.com.zone
デフォルトでは、セカンダリーサーバーはゾーンファイルを未修正のバイナリー形式で保存することに注意してください。
セカンダリーサーバーから転送されたゾーンのレコードをクエリーします。
# dig +short @192.0.2.2 AAAA www.example.com 2001:db8:1::30
この例では、この手順で設定したセカンダリーサーバーが IP アドレス
192.0.2.2
でリッスンしていると想定しています。
4.8. DNS レコードを上書きするように BIND で応答ポリシーゾーンを設定する
管理者は、DNS のブロックとフィルタリングを使用して、DNS 応答を書き換えて、特定のドメインまたはホストへのアクセスをブロックできます。BIND では、応答ポリシーゾーン (RPZ) がこの機能を提供します。NXDOMAIN
エラーを返す、クエリーに応答しないなど、ブロックされたエントリーに対してさまざまなアクションを設定できます。
環境内に複数の DNS サーバーがある場合は、この手順を使用してプライマリーサーバーで RPZ を設定し、後でゾーン転送を設定して、セカンダリーサーバーで RPZ を使用できるようにします。
前提条件
- BIND は、たとえばキャッシングネームサーバーとしてすでに設定されています。
-
named
またはnamed-chroot
サービスが実行しています。
手順
/etc/named.conf
ファイルを編集し、次の変更を行います。options
ステートメントにresponse-policy
定義を追加します。options { ... response-policy { zone "rpz.local"; }; ... }
response-policy
のzone
ステートメントで RPZ のカスタム名を設定できます。ただし、次のステップのゾーン定義で同じ名前を使用する必要があります。前の手順で設定した RPZ の
zone
定義を追加します。zone "rpz.local" { type master; file "rpz.local"; allow-query { localhost; 192.0.2.0/24; 2001:db8:1::/64; }; allow-transfer { none; }; };
これらの設定状態:
-
このサーバーは、
rpz.local
という名前の RPZ のプライマリーサーバー (type master
) です。 -
/var/named/rpz.local
ファイルはゾーンファイルです。この例のように相対パスを設定すると、このパスは、options
ステートメントのdirectory
に設定したディレクトリーからの相対パスになります。 -
allow-query
で定義されたホストは、この RPZ をクエリーできます。または、IP 範囲または BIND アクセス制御リスト (ACL) のニックネームを指定して、アクセスを制限します。 - どのホストもゾーンを転送できません。ゾーン転送を許可するのは、セカンダリーサーバーをセットアップする際に限られ、セカンダリーサーバーの IP アドレスに対してのみ許可します。
-
このサーバーは、
/etc/named.conf
ファイルの構文を確認します。# named-checkconf
コマンドが出力を表示しない場合は、構文に間違いがありません。
たとえば、次の内容で
/var/named/rpz.local
ファイルを作成します。$TTL 10m @ IN SOA ns1.example.com. hostmaster.example.com. ( 2022070601 ; serial number 1h ; refresh period 1m ; retry period 3d ; expire time 1m ) ; minimum TTL IN NS ns1.example.com. example.org IN CNAME . *.example.org IN CNAME . example.net IN CNAME rpz-drop. *.example.net IN CNAME rpz-drop.
このゾーンファイル:
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 10 分に設定します。時間の
h
などの時間接尾辞がない場合、BIND は値を秒として解釈します。 - ゾーンに関する詳細を含む、必要な SOA (Start of Authority) リソースレコードが含まれます。
-
このゾーンの権威 DNS サーバーとして
ns1.example.com
を設定します。ゾーンを機能させるには、少なくとも 1 つのネームサーバー (NS
) レコードが必要です。ただし、RFC 1912 に準拠するには、少なくとも 2 つのネームサーバーが必要です。 -
このドメイン内の
example.org
およびホストへのクエリーに対してNXDOMAIN
エラーを返します。 -
このドメイン内の
example.net
およびホストにクエリーを破棄します。
アクションおよび例の完全なリストは、IETF draft: DNS Response Policy Zones (RPZ) を参照してください。
-
リソースレコードのデフォルトの有効期限 (TTL) 値を 10 分に設定します。時間の
/var/named/rpz.local
ファイルの構文を確認します。# named-checkzone rpz.local /var/named/rpz.local zone rpz.local/IN: loaded serial 2022070601 OK
BIND をリロードします。
# systemctl reload named
change-root 環境で BIND を実行する場合は、
systemctl reload named-chroot
コマンドを使用してサービスをリロードします。
検証
NXDOMAIN
エラーを返すように RPZ で設定されているexample.org
のホストを解決しようとします。# dig @localhost www.example.org ... ;; ->>HEADER<<- opcode: QUERY, status: NXDOMAIN, id: 30286 ...
この例では、BIND が同じホストで実行し、
localhost
インターフェイスでクエリーに応答することを前提としています。RPZ でクエリーを破棄するように設定されている
example.net
ドメイン内のホストの解決を試みます。# dig @localhost www.example.net ... ;; connection timed out; no servers could be reached ...
4.9. dnstap を使用して DNS クエリーを記録する
ネットワーク管理者は、ドメインネームシステム (DNS) の詳細を記録して、DNS トラフィックパターンの分析、DNS サーバーのパフォーマンスの監視、DNS 問題のトラブルシューティングを行うことができます。受信する名前クエリーの詳細を監視してログに記録する高度な方法が必要な場合は、named
サービスから送信されたメッセージを記録する dnstap
インターフェイスを使用します。DNS クエリーをキャプチャーおよび記録して、Web サイトまたは IP アドレスに関する情報を収集できます。
前提条件
-
bind-9.11.26-2
パッケージ以降のバージョンがインストールされている。
BIND
バージョンがすでにインストールされ、実行されている場合、新しいバージョンの BIND
を追加すると、既存のバージョンが上書きされます。
手順
/etc/named.conf
ファイルのoptions
ブロックを編集して、dnstap
とターゲットファイルを有効にします。options { # ... dnstap { all; }; # Configure filter dnstap-output file "/var/named/data/dnstap.bin"; # ... }; # end of options
ログに記録する DNS トラフィックのタイプを指定するには、
/etc/named.conf
ファイルのdnstap
ブロックにdnstap
フィルターを追加します。次のフィルターを使用できます。-
auth
: 権威ゾーンの応答または回答。 -
client
: 内部クライアントクエリーまたは回答。 -
forwarder
: 転送クエリーまたは応答。 -
resolver
: 反復的解決クエリーまたは応答。 -
update
: 動的ゾーン更新要求。 -
all
: 上記のオプションのいずれか。 query
またはresponse
:query
またはresponse
キーワードを指定しない場合、dnstap
は両方を記録します。注記dnstap
フィルターでは、dnstap {}
ブロック内に;
で区切った複数の定義を含めます。次の構文を使用してください。dnstap { ( all | auth | client | forwarder | resolver | update ) [ ( query | response ) ]; … };
-
変更を適用するために、
named
サービスを再起動します。# systemctl restart named.service
アクティブなログの定期的なロールアウトを設定します。
次の例では、
cron
スケジューラーは、ユーザーが編集したスクリプトの内容を 1 日に 1 回実行します。roll
オプションに値3
指定し、dnstap
が最大 3 つのバックアップログファイルを作成できるようにしています。この値3
は、dnstap-output
変数のversion
パラメーターをオーバーライドし、バックアップログファイルの数を 3 に制限します。また、バイナリーログファイルは別のディレクトリーに移動されて名前が変更されます。3 つのバックアップログファイルがすでに存在する場合でも、ファイルの接尾辞が.2
に達することはありません。サイズ制限に基づくバイナリーログの自動ローリングで十分な場合は、このステップを省略できます。Example: sudoedit /etc/cron.daily/dnstap #!/bin/sh rndc dnstap -roll 3 mv /var/named/data/dnstap.bin.1 /var/log/named/dnstap/dnstap-$(date -I).bin # use dnstap-read to analyze saved logs sudo chmod a+x /etc/cron.daily/dnstap
dnstap-read
ユーティリティーを使用して、人間が判読できる形式でログを処理および分析します。次の例では、
dnstap-read
ユーティリティーは出力をYAML
ファイル形式で出力します。Example: dnstap-read -y [file-name]
第5章 NFS サーバーのデプロイ
ネットワークファイルシステム (NFS) プロトコルを使用すると、リモートユーザーはネットワーク経由で共有ディレクトリーをマウントし、ローカルにマウントされたときと同じように使用できます。また、リソースを、ネットワークの集中化サーバーに統合できるようになります。
5.1. NFSv4 のマイナーバージョンの主な機能
NFSv4 の各マイナーバージョンでは、パフォーマンスとセキュリティーの向上を目的とした機能強化が行われています。これらの改善点を使用して NFSv4 の可能性を最大限に活用し、ネットワーク全体で効率的かつ信頼性の高いファイル共有を確保します。
NFSv4.2 の主な機能
- サーバー側コピー
- サーバー側コピーは、ネットワーク上でデータをやり取りせずにサーバー上のファイルをコピーする NFS サーバーの機能です。
- スパースファイル
- ファイルに 1 つ以上の空のスペースまたはギャップを含めることができます。ギャップとは、ゼロのみで設定される未割り当てまたは初期化されていないデータブロックです。これにより、アプリケーションはスパースファイル内のホールの位置をマッピングできるようになります。
- 領域の予約
- クライアントは、データを書き込む前にストレージサーバー上のスペースを予約または割り当てることができます。これにより、サーバーのスペースが不足するのを防ぎます。
- ラベル付き NFS
- データアクセス権を強制し、NFS ファイルシステム上の個々のファイルに対して、クライアントとサーバーとの間の SELinux ラベルを有効にします。
- レイアウトの機能強化
- Parallel NFS (pNFS) サーバーがより優れたパフォーマンス統計を収集できるようにする機能を提供します。
NFSv4.1 の主な機能
- pNFS のクライアント側のサポート
- クラスター化されたサーバーへの高速 I/O のサポートにより、複数のマシンにデータを保存し、データへの直接アクセスとメタデータの更新の同期が可能になります。
- Sessions
- セッションは、クライアントに属する接続に関連したサーバーの状態を維持します。これらのセッションは、各リモートプロシージャコール (RPC) 操作の接続の確立と終了に関連するオーバーヘッドを削減することにより、パフォーマンスと効率を向上させます。
NFSv4.0 の主な機能
- RPC とセキュリティー
-
RPCSEC_GSS
フレームワークは、RPC セキュリティーを強化します。NFSv4 プロトコルでは、帯域内セキュリティーネゴシエーションのための新しい操作が導入されています。これにより、クライアントはファイルシステムリソースに安全にアクセスするためのサーバーポリシーをクエリーできるようになります。 - 手順と運用構造
-
NFS 4.0 では
COMPOUND
プロシージャが導入されており、クライアントは複数の操作を 1 つのリクエストにマージして RPC を削減できます。 - ファイルシステムモデル
NFS 4.0 は階層ファイルシステムモデルを保持し、ファイルをバイトストリームとして扱い、国際化のために名前を UTF-8 でエンコードします。
ファイルハンドルの種類
揮発性ファイルハンドルを使用すると、サーバーはファイルシステムの変更に適応でき、クライアントは永続的なファイルハンドルを必要とせずに必要に応じて適応できるようになります。
属性タイプ
ファイル属性構造には、必須属性、推奨属性、および名前付き属性が含まれており、それぞれが異なる目的を果たします。NFSv3 から派生した必須属性はファイルタイプを区別するために不可欠ですが、ACL などの推奨属性は強化されたアクセス制御を提供します。
マルチサーバー名前空間
ネームスペースは複数のサーバーにまたがり、属性に基づいてファイルシステム転送を簡素化し、参照、冗長性、シームレスなサーバー移行をサポートします。
- OPEN および CLOSE 操作
- これらの操作により、ファイルの検索、作成、セマンティック共有を 1 カ所で組み合わせることができ、ファイルアクセス管理をより効率的に行うことができます。
- ファイルのロック
- ファイルのロックはプロトコルの一部であるため、RPC コールバックの必要がなくなります。ファイルのロック状態は、リースベースのモデルに基づいてサーバーによって管理され、リースの更新に失敗すると、サーバーによって状態が解放される場合があります。
- クライアントのキャッシュと委任
- キャッシュは以前のバージョンと似ており、属性およびディレクトリーのキャッシュのタイムアウトはクライアントによって決定されます。NFS 4.0 の委任により、サーバーはクライアントに特定の責任を割り当てることができ、特定のファイル共有セマンティクスが保証され、サーバーとの即時対話なしでローカルファイル操作が可能になります。
5.2. AUTH_SYS 認証方法
AUTH_SYS
メソッドは AUTH_UNIX
とも呼ばれ、クライアント認証メカニズムです。AUTH_SYS
を使用すると、クライアントはユーザーのユーザー ID (UID) とグループ ID (GID) をサーバーに送信し、ファイルにアクセスするときにそのアイデンティティーと権限を確認します。クライアントが提供する情報に依存するため、設定を誤ると不正アクセスを受けやすくなるため、安全性が低いと考えられています。
マッピングメカニズムにより、UID と GID の割り当てがシステム間で異なる場合でも、NFS クライアントはサーバー上の適切な権限でファイルにアクセスできるようになります。UID と GID は、次のメカニズムによって NFS クライアントとサーバーの間でマッピングされます。
- ダイレクトマッピング
UID と GID は、ローカルシステムとリモートシステムの間で NFS サーバーとクライアントによって直接マッピングされます。これには、NFS ファイル共有に参加しているすべてのシステムにわたって、一貫した UID と GID の割り当てが必要です。たとえば、クライアント上の UID 1000 を持つユーザーは、サーバー上の UID 1000 を持つユーザーがアクセスできる共有上のファイルにのみアクセスできます。
NFS 環境での ID 管理を簡素化するために、管理者は多くの場合、LDAP やネットワーク情報サービス (NIS) などの集中サービスを利用して、複数のシステムにわたる UID および GID マッピングを管理します。
- ユーザーとグループ ID のマッピング
-
NFS サーバーとクライアントは、
idmapd
サービスを使用して、異なるシステム間で UID と GID を変換し、一貫した識別と権限の割り当てを実現できます。
5.3. AUTH_GSS 認証方式
Kerberos は、安全でないネットワーク上でクライアントとサーバーの安全な認証を可能にするネットワーク認証プロトコルです。対称キー暗号化を使用しており、ユーザーとサービスを認証するには信頼できるキー配布センター (KDC) が必要です。
AUTH_SYS
とは異なり、RPCSEC_GSS
Kerberos メカニズムを使用すると、サーバーは、どのユーザーがファイルにアクセスしているかを正確に表すためにクライアントに依存しません。代わりに、暗号を使用してサーバーにユーザーを認証し、悪意のあるクライアントがそのユーザーの Kerberos 認証情報を持たずにユーザーになりすますことがないようにします。
/etc/exports
ファイルでは、sec
オプションにより、共有が提供する Kerberos セキュリティーの 1 つまたは複数のメソッドが定義され、クライアントはこれらのメソッドの 1 つを使用して共有をマウントできます。sec
オプションは次の値をサポートします。
-
sys
: 暗号化保護なし (デフォルト) -
krb5
- 認証のみ -
krb5i
: 認証と完全性保護 -
krb5p
: 認証、整合性チェック、トラフィック暗号化
メソッドが提供する暗号化機能が増えるほど、パフォーマンスが低下することに注意してください。
5.4. エクスポートされたファイルシステムのファイル権限
エクスポートされたファイルシステムのファイルアクセス許可により、NFS 経由でファイルとディレクトリーにアクセスするクライアントのファイルとディレクトリーへのアクセス権が決まります。
NFS ファイルシステムがリモートホストによってマウントされると、各共有ファイルが保護されるのはそのファイルシステムのアクセス許可だけになります。同じユーザー ID (UID) 値を共有する 2 人のユーザーが同じ NFS ファイルシステムを異なるクライアントシステムにマウントする場合、互いのファイルを変更できます。
NFS は、クライアント上の root
ユーザーをサーバー上の root
ユーザーと同等に扱います。ただし、デフォルトでは、NFS サーバーは、NFS 共有にアクセスするときに root を
nobody
アカウントにマップします。root_squash
オプションはこの動作を制御します。
関連情報
-
exports(5)
man ページ
5.5. NFS サーバーに必要なサービス
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、カーネルモジュールとユーザー空間プロセスを組み合わせて使用して、NFS ファイル共有を提供します。
表5.1 NFS サーバーに必要なサービス
サービス名 | NFS バージョン | 詳細 |
---|---|---|
| 3, 4 | 共有 NFS ファイルシステムに対する要求を処理する NFS カーネルモジュール。 |
| 3 |
このプロセスは、ローカルのリモートプロシージャコール (RPC) サービスからポート予約を受け入れ、それらを利用可能またはアドバタイズして、対応するリモート RPC サービスがそれらにアクセスできるようにします。 |
| 3, 4 |
このサービスは、NFSv3 クライアントからの 要求された NFS 共有が現在 NFS サーバーによってエクスポートされており、クライアントがその共有にアクセスできることを確認します。 |
| 3, 4 | このプロセスは、サーバーが定義する明示的な NFS バージョンとプロトコルをアドバタイズします。カーネルと連携して、NFS クライアントが接続するたびにサーバースレッドを提供するなど、NFS クライアントの動的な要求に応えます。
|
| 3 | このカーネルモジュールは、クライアントがサーバー上のファイルをロックできるようにする Network Lock Manager (NLM) プロトコルを実装します。RHEL は、NFS サーバーの実行時にモジュールを自動的にロードします。 |
| 3, 4 | このサービスは、リモートユーザーにユーザークォータ情報を提供します。 |
| 4 | このプロセスは、NFSv4 名 (`user@domain` の形式の文字列) とローカルユーザー ID およびグループ ID の間でマッピングする NFSv4 クライアントおよびサーバーのアップコールを提供します。 |
| 3, 4 |
このサービスは、 |
| 4 | このサービスは、サーバーの再起動と組み合わせたネットワーク分割中に他のクライアントが競合するロックを取得した場合に、サーバーがロックの再利用を許可しないようにする NFSv4 クライアント追跡デーモンを提供します。 |
| 3 | このサービスは、ローカルホストの再起動時に他の NFSv3 クライアントに通知を提供し、リモート NFSv3 ホストの再起動時にカーネルに通知を提供します。 |
関連情報
-
rpcbind (8)
、rpc.mountd (8)
、rpc.nfsd (8)
、rpc.statd (8)
、rpc.rquotad (8)
、rpc.idmapd (8)
、nfsdcld (8) の
man ページ
5.6. /etc/exports 設定ファイル
/etc/exports
ファイルは、サーバーがエクスポートするディレクトリーを制御します。各行には、エクスポートポイント、ディレクトリーのマウントを許可されている空白で区切られたクライアントのリスト、および各クライアントのオプションが含まれます。
<directory> <host_or_network_1>(<options_1>) <host_or_network_n>(<options_n>)...
/etc/exports
エントリーの個々の部分は次のとおりです。
- <export>
- エクスポートされるディレクトリー。
- <host_or_network>
- エクスポートが共有されるホストまたはネットワーク。たとえば、ホスト名、IP アドレス、または IP ネットワークを指定できます。
- <options>
- ホストまたはネットワークのオプション。
クライアントとオプションの間にスペースを追加すると、動作が変わります。たとえば、次の行は同じ意味を持ちません。
/projects client.example.com(rw) /projects client.example.com (rw)
最初の行では、サーバーは client.example.com
のみに読み取り/書き込みモードで /projects
ディレクトリーをマウントすることを許可し、他のホストは共有をマウントできません。ただし、2 行目の client.example.com
と (rw)
の間にスペースがあるため、サーバーはディレクトリーを読み取り専用モード (デフォルト設定) で client.example.com
にエクスポートしますが、他のすべてのホストは共有をマウントできます。読み書きモードで。
NFS サーバーは、エクスポートされたディレクトリーごとに次のデフォルト設定を使用します。
表5.2 /etc/exports 内のエントリーのデフォルトオプション
デフォルト設定 | 詳細 |
---|---|
| ディレクトリーを読み取り専用モードでエクスポートします。 |
| NFS サーバーは、以前の要求による変更がディスクに書き込まれるまでは要求に応答しません。 |
| サーバーは、別の書き込み要求が保留されていると疑われる場合、ディスクへの書き込みを遅延します。 |
|
クライアントの |
5.7. NFSv4 専用サーバーの設定
ネットワーク内に NFSv3 クライアントが存在しない場合は、NFSv4 またはその特定のマイナープロトコルバージョンのみをサポートするように NFS サーバーを設定できます。サーバー上で NFSv4 のみを使用すると、ネットワークに対して開かれるポートの数が減ります。
手順
nfs-utils
パッケージをインストールします。# dnf install nfs-utils
/etc/nfs.conf
ファイルを編集し、次の変更を加えます。[nfsd]
セクションのvers3
パラメーターを無効にして、NFSv3 を無効にします。[nfsd] vers3=n
オプション: 特定の NFSv4 マイナーバージョンのみが必要な場合は、すべての
vers4.<minor_version>
パラメーターのコメントを解除し、それに応じて設定します。次に例を示します。[nfsd] vers3=n # vers4=y vers4.0=n vers4.1=n vers4.2=y
この設定では、サーバーは NFS バージョン 4.2 のみを提供します。
重要特定の NFSv4 マイナーバージョンのみが必要な場合は、マイナーバージョンのパラメーターのみを設定します。マイナーバージョンの予期しないアクティブ化または非アクティブ化を避けるために、
vers4
パラメーターのコメントを解除しないでください。デフォルトでは、vers4
パラメーターはすべての NFSv4 マイナーバージョンを有効または無効にします。ただし、vers4 を
他のvers
パラメーターと組み合わせて設定すると、この動作が変わります。
すべての NFSv3 関連サービスを無効にします。
# systemctl mask --now rpc-statd.service rpcbind.service rpcbind.socket
オプション: 共有するディレクトリーを作成します。例:
# mkdir -p /nfs/projects/
既存のディレクトリーを共有する場合は、この手順をスキップしてください。
/nfs/projects/
ディレクトリーに必要な権限を設定します。# chmod 2770 /nfs/projects/ # chgrp users /nfs/projects/
これらのコマンドは、
/nfs/projects/
ディレクトリーのユーザー
グループに書き込み権限を設定し、このディレクトリーに作成された新しいエントリーに同じグループが自動的に設定されるようにします。共有する各ディレクトリーの
/etc/exports
ファイルにエクスポートポイントを追加します。/nfs/projects/ 192.0.2.0/24(rw) 2001:db8::/32(rw)
このエントリーは、
/nfs/projects/
ディレクトリーを共有し、192.0.2.0/24
および2001:db8::/32
サブネット内のクライアントに読み取りおよび書き込みアクセスでアクセスできるようにします。firewalld
で関連するポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-service nfs # firewall-cmd --reload
NFS サーバーを有効にして起動します。
# systemctl enable --now nfs-server
検証
サーバー上で、サーバーが設定した NFS バージョンのみを提供していることを確認します。
# cat /proc/fs/nfsd/versions -3 +4 -4.0 -4.1 +4.2
クライアントで次の手順を実行します。
nfs-utils
パッケージをインストールします。# dnf install nfs-utils
エクスポートされた NFS 共有をマウントします。
# mount server.example.com:/nfs/projects/ /mnt/
users
グループのメンバーであるユーザーとして、/mnt/
にファイルを作成します。# touch /mnt/file
ディレクトリーをリスト表示して、ファイルが作成されたことを確認します。
# ls -l /mnt/ total 0 -rw-r--r--. 1 demo users 0 Jan 16 14:18 file
5.8. オプションの NFSv4 サポートを使用した NFSv3 サーバーの設定
まだ NFSv3 クライアントを使用しているネットワークでは、NFSv3 プロトコルを使用して共有を提供するようにサーバーを設定します。ネットワーク内に新しいクライアントもある場合は、さらに NFSv4 を有効にすることができます。デフォルトでは、Red Hat Enterprise Linux NFS クライアントはサーバーが提供する最新の NFS バージョンを使用します。
手順
nfs-utils
パッケージをインストールします。# dnf install nfs-utils
オプション: デフォルトでは、NFSv3 と NFSv4 が有効になっています。NFSv4 が必要ない場合、または特定のマイナーバージョンのみが必要な場合は、すべての
vers4.<minor_version>
パラメーターのコメントを解除し、それに応じて設定します。[nfsd] # vers3=y # vers4=y vers4.0=n vers4.1=n vers4.2=y
この設定では、サーバーは NFS バージョン 3 と 4.2 のみを提供します。
重要特定の NFSv4 マイナーバージョンのみが必要な場合は、マイナーバージョンのパラメーターのみを設定します。マイナーバージョンの予期しないアクティブ化または非アクティブ化を避けるために、
vers4
パラメーターのコメントを解除しないでください。デフォルトでは、vers4
パラメーターはすべての NFSv4 マイナーバージョンを有効または無効にします。ただし、vers4 を
他のvers
パラメーターと組み合わせて設定すると、この動作が変わります。デフォルトでは、NFSv3 RPC サービスはランダムポートを使用します。ファイアウォール設定を有効にするには、
/etc/nfs.conf
ファイルで固定ポート番号を設定します。[lockd]
セクションで、nlockmgr
RPC サービスの固定ポート番号を設定します。次に例を示します。[lockd] port=5555
この設定を使用すると、サービスはこのポート番号を UDP プロトコルと TCP プロトコルの両方に自動的に使用します。
[statd]
セクションで、rpc.statd
サービスの固定ポート番号を設定します。次に例を示します。[statd] port=6666
この設定を使用すると、サービスはこのポート番号を UDP プロトコルと TCP プロトコルの両方に自動的に使用します。
オプション: 共有するディレクトリーを作成します。例:
# mkdir -p /nfs/projects/
既存のディレクトリーを共有する場合は、この手順をスキップしてください。
/nfs/projects/
ディレクトリーに必要な権限を設定します。# chmod 2770 /nfs/projects/ # chgrp users /nfs/projects/
これらのコマンドは、
/nfs/projects/
ディレクトリーのユーザー
グループに書き込み権限を設定し、このディレクトリーに作成された新しいエントリーに同じグループが自動的に設定されるようにします。共有する各ディレクトリーの
/etc/exports
ファイルにエクスポートポイントを追加します。/nfs/projects/ 192.0.2.0/24(rw) 2001:db8::/32(rw)
このエントリーは、
/nfs/projects/
ディレクトリーを共有し、192.0.2.0/24
および2001:db8::/32
サブネット内のクライアントに読み取りおよび書き込みアクセスでアクセスできるようにします。firewalld
で関連するポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-service={nfs,rpc-bind,mountd} # firewall-cmd --permanent --add-port={5555/tcp,5555/udp,6666/tcp,6666/udp} # firewall-cmd --reload
NFS サーバーを有効にして起動します。
# systemctl enable --now rpc-statd nfs-server
検証
サーバー上で、サーバーが設定した NFS バージョンのみを提供していることを確認します。
# cat /proc/fs/nfsd/versions +3 +4 -4.0 -4.1 +4.2
クライアントで次の手順を実行します。
nfs-utils
パッケージをインストールします。# dnf install nfs-utils
エクスポートされた NFS 共有をマウントします。
# mount -o vers=<version> server.example.com:/nfs/projects/ /mnt/
共有が指定された NFS バージョンでマウントされていることを確認します。
# mount | grep "/mnt" server.example.com:/nfs/projects/ on /mnt type nfs (rw,relatime,vers=3,...
users
グループのメンバーであるユーザーとして、/mnt/
にファイルを作成します。# touch /mnt/file
ディレクトリーをリスト表示して、ファイルが作成されたことを確認します。
# ls -l /mnt/ total 0 -rw-r--r--. 1 demo users 0 Jan 16 14:18 file
5.9. NFS サーバーでのクォータサポートの有効化
ユーザーまたはグループが保存できるデータの量を制限したい場合は、ファイルシステムにクォータを設定できます。NFS サーバーでは、rpc-rquotad
サービスにより、クォータが NFS クライアント上のユーザーにも適用されるようになります。
手順
エクスポートするディレクトリーでクォータが有効になっていることを確認します。
外部ファイルシステムの場合は、次のように入力します。
# quotaon -p /nfs/projects/ group quota on /nfs/projects (/dev/sdb1) is on user quota on /nfs/projects (/dev/sdb1) is on project quota on /nfs/projects (/dev/sdb1) is off
XFS ファイルシステムの場合は、次のように入力します。
# findmnt /nfs/projects TARGET SOURCE FSTYPE OPTIONS /nfs/projects /dev/sdb1 xfs rw,relatime,seclabel,attr2,inode64,logbufs=8,logbsize=32k,usrquota,grpquota
クォータ -rpc
パッケージをインストールします。# dnf install rpc-quotad
オプション: デフォルトでは、クォータ RPC サービスはポート 875 で実行されます。サービスを別のポートで実行する場合は、
/etc/sysconfig/rpc-rquotad
ファイルのRPCRQUOTADOPTS
変数に-p <port_number>
を追加します。RPCRQUOTADOPTS="-p __<port_number>__"
オプション: デフォルトでは、リモートホストはクォータの読み取りのみが可能です。クライアントがクォータを設定できるようにするには、
/etc/sysconfig/rpc-rquotad
ファイルのRPCRQUOTADOPTS
変数に-S
オプションを追加します。RPCRQUOTADOPTS="-S"
firewalld
でポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=875/udp # firewall-cmd --reload
rpc-quotad
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now rpc-rquotad
検証
クライアント上:
エクスポートされた共有をマウントします。
# mount server.example.com:/nfs/projects/ /mnt/
クォータを表示します。コマンドは、エクスポートされたディレクトリーのファイルシステムによって異なります。以下に例を示します。
マウントされているすべての ext ファイルシステム上の特定のユーザーのクォータを表示するには、次のように入力します。
# quota -u <user_name> Disk quotas for user demo (uid 1000): Filesystem space quota limit grace files quota limit grace server.example.com:/nfs/projects 0K 100M 200M 0 0 0
XFS ファイルシステム上のユーザーとグループのクォータを表示するには、次のように入力します。
# xfs_quota -x -c "report -h" /mnt/ User quota on /nfs/projects (/dev/vdb1) Blocks User ID Used Soft Hard Warn/Grace ---------- --------------------------------- root 0 0 0 00 [------] demo 0 100M 200M 00 [------]
関連情報
-
クォータ (1)
マンページ -
xfs_quota(8)
man page
5.10. NFS サーバーでの NFS over RDMA の有効化
リモートダイレクトメモリーアクセス (RDMA) は、クライアントシステムがストレージサーバーのメモリーから独自のメモリーにデータを直接転送できるようにするプロトコルです。これにより、ストレージのスループットが向上し、サーバーとクライアント間のデータ転送の遅延が減少し、両端の CPU 負荷が軽減されます。NFS サーバーとクライアントの両方が RDMA 経由で接続されている場合、クライアントは NFSoRDMA を使用して、エクスポートされたディレクトリーをマウントできます。
前提条件
- NFS サービスが実行され、設定されています
- InfiniBand または RDMA over Converged Ethernet (RoCE) デバイスがサーバーにインストールされています。
- IP over InfiniBand (IPoIB) がサーバー上で設定されており、InfiniBand デバイスには IP アドレスが割り当てられています。
手順
rdma-core
パッケージをインストールします。# dnf install rdma-core
パッケージがすでにインストールされている場合は、
/etc/rdma/modules
/rdma.conf ファイル内のxprtrdma
モジュールとsvcrdma
モジュールのコメントが解除されていることを確認します。# NFS over RDMA client support xprtrdma # NFS over RDMA server support svcrdma
オプション: デフォルトでは、NFS over RDMA はポート 20049 を使用します。別のポートを使用する場合は、
/etc/nfs.conf
ファイルの[nfsd]
セクションでrdma-port
設定を設定します。rdma-port=_<port>_
firewalld
で NFSoRDMA ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port={20049/tcp,20049/udp} # firewall-cmd --reload
20049 以外のポートを設定する場合は、ポート番号を調整します。
nfs-server
サービスを再起動します。# systemctl restart nfs-server
検証
InfiniBand ハードウェアを備えたクライアントで、次の手順を実行します。
以下のパッケージをインストールします。
# dnf install nfs-utils rdma-core
エクスポートされた NFS 共有を RDMA 経由でマウントします。
# mount -o rdma server.example.com:/nfs/projects/ /mnt/
デフォルト (20049) 以外のポート番号を設定する場合は、コマンドに
port= <port_number>
を渡します。# mount -o rdma,port=<port_number> server.example.com:/nfs/projects/ /mnt/
共有が
rdma
オプションを使用してマウントされていることを確認します。# mount | grep "/mnt" server.example.com:/nfs/projects/ on /mnt type nfs (...,proto=rdma,...)
5.11. Red Hat Identity management ドメインでの Kerberos を使用した NFS サーバーのセットアップ
Red Hat Identity management (IdM) を使用している場合は、NFS サーバーを IdM ドメインに参加させることができます。これにより、ユーザーとグループを一元管理し、認証、整合性保護、トラフィック暗号化に Kerberos を使用できるようになります。
前提条件
- NFS サーバーは Red Hat Identity management (IdM) ドメインに 登録されます。
- NFS サーバーが実行され、設定されています。
手順
IdM 管理者として Kerberos チケットを取得します。
# kinit admin
nfs/<FQDN>
サービスプリンシパルを作成します。# ipa service-add nfs/nfs_server.idm.example.com
IdM から
nfs
サービスプリンシパルを取得し、/etc/krb5.keytab
ファイルに保存します。# ipa-getkeytab -s idm_server.idm.example.com -p nfs/nfs_server.idm.example.com -k /etc/krb5.keytab
オプション:
/etc/krb5.keytab
ファイル内のプリンシパルを表示します。# klist -k /etc/krb5.keytab Keytab name: FILE:/etc/krb5.keytab KVNO Principal ---- -------------------------------------------------------------------------- 1 nfs/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 1 nfs/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 1 nfs/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 1 nfs/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 7 host/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 7 host/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 7 host/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM 7 host/nfs_server.idm.example.com@IDM.EXAMPLE.COM
デフォルトでは、ホストを IdM ドメインに参加させるときに、IdM クライアントはホストプリンシパルを
/etc/krb5.keytab
ファイルに追加します。ホストプリンシパルが見つからない場合は、ipa-getkeytab -s idm_server.idm.example.com -p host/nfs_server.idm.example.com -k/etc/krb5.keytab
コマンドを使用して追加します。ipa-client-automount
ユーティリティーを使用して、IdM ID のマッピングを設定します。# ipa-client-automount Searching for IPA server... IPA server: DNS discovery Location: default Continue to configure the system with these values? [no]: yes Configured /etc/idmapd.conf Restarting sssd, waiting for it to become available. Started autofs
/etc/exports
ファイルを更新し、クライアントオプションに Kerberos セキュリティーメソッドを追加します。以下に例を示します。/nfs/projects/ 192.0.2.0/24(rw,sec=krb5i)
クライアントが複数のセキュリティー方式から選択できるようにしたい場合は、コロンで区切って指定します。
/nfs/projects/ 192.0.2.0/24(rw,sec=krb5:krb5i:krb5p)
エクスポートされたファイルシステムをリロードします。
# exportfs -r
第6章 Squid キャッシングプロキシーサーバーの設定
Squid は、コンテンツをキャッシュして帯域幅を削減し、Web ページをより迅速に読み込むプロキシーサーバーです。本章では、HTTP、HTTPS、FTP のプロトコルのプロキシーとして Squid を設定する方法と、アクセスの認証および制限を説明します。
6.1. 認証なしで Squid をキャッシングプロキシーとして設定
認証なしで Squid をキャッシュプロキシーとして設定できます。以下の手順では、IP 範囲に基づいてプロキシーへのアクセスを制限します。
前提条件
-
/etc/squid/squid.conf
ファイルが、squid
パッケージにより提供されている。このファイルを編集した場合は、ファイルを削除して、パッケージを再インストールしている。
手順
squid
パッケージをインストールします。# yum install squid
/etc/squid/squid.conf
ファイルを編集します。localnet
アクセス制御リスト (ACL) を、プロキシーを使用できる IP 範囲と一致するように変更します。acl localnet src 192.0.2.0/24 acl localnet 2001:db8:1::/64
デフォルトでは、
/etc/squid/squid.conf
ファイルにはlocalnet
ACL で指定されたすべての IP 範囲のプロキシーを使用できるようにするhttp_access allow localnet
ルールが含まれます。http_access allow localnet
ルールの前に、localnet
の ACL をすべて指定する必要があります。重要環境に一致しない既存の
acl localnet
エントリーをすべて削除します。以下の ACL はデフォルト設定にあり、HTTPS プロトコルを使用するポートとして
443
を定義します。acl SSL_ports port 443
ユーザーが他のポートでも HTTPS プロトコルを使用できるようにするには、ポートごとに ACL を追加します。
acl SSL_ports port port_number
Squid が接続を確立できるポートに設定する
acl Safe_ports
ルールの一覧を更新します。たとえば、プロキシーを使用するクライアントがポート 21 (FTP)、80 (HTTP)、443 (HTTPS) のリソースにのみアクセスできるようにするには、その設定の以下のacl Safe_ports
ステートメントのみを保持します。acl Safe_ports port 21 acl Safe_ports port 80 acl Safe_ports port 443
デフォルトでは、設定には
http_access deny !Safe_ports
ルールが含まれ、Safe_ports
ACL で定義されていないポートへのアクセス拒否を定義します。cache_dir
パラメーターにキャッシュの種類、キャッシュディレクトリーへのパス、キャッシュサイズ、さらにキャッシュの種類ごとの設定を設定します。cache_dir ufs /var/spool/squid 10000 16 256
この設定により、以下が可能になります。
-
Squid は、
ufs
キャッシュタイプを使用します。 -
Squid は、キャッシュを
/var/spool/squid/
ディレクトリーに保存します。 -
キャッシュのサイズが
10000
MB まで大きくなります。 -
Squid は、
16
個の レベル 1 サブディレクトリーを/var/spool/squid/
ディレクトリーに作成します。 Squid は、レベル 1 の各ディレクトリーに
256
個のサブディレクトリーを作成します。cache_dir
ディレクティブを設定しないと、Squid はキャッシュをメモリーに保存します。
-
Squid は、
cache_dir
パラメーターに/var/spool/squid/
以外のキャッシュディレクトリーを設定する場合は、以下を行います。キャッシュディレクトリーを作成します。
# mkdir -p path_to_cache_directory
キャッシュディレクトリーの権限を設定します。
# chown squid:squid path_to_cache_directory
SELinux を
enforcing
モードで実行する場合は、squid_cache_t
コンテキストをキャッシュディレクトリーに設定します。# semanage fcontext -a -t squid_cache_t "path_to_cache_directory(/.*)?" # restorecon -Rv path_to_cache_directory
semanage
ユーティリティーがシステムで利用できない場合は、policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールします。
ファイアウォールで
3128
ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=3128/tcp # firewall-cmd --reload
squid
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now squid
検証手順
プロキシーが正しく機能することを確認するには、curl
ユーティリティーを使用して Web ページをダウンロードします。
# curl -O -L "https://www.redhat.com/index.html" -x "proxy.example.com:3128"
curl
でエラーが表示されず、index.html
ファイルが現在のディレクトリーにダウンロードされている場合は、プロキシーが動作します。
6.2. LDAP 認証を使用したキャッシングプロキシーとしての Squid の設定
Squid を、LDAP を使用してユーザーを認証するキャッシングプロキシーとして設定できます。この手順では、認証されたユーザーのみがプロキシーを使用できるように設定します。
前提条件
-
/etc/squid/squid.conf
ファイルが、squid
パッケージにより提供されている。このファイルを編集した場合は、ファイルを削除して、パッケージを再インストールしている。 -
uid=proxy_user,cn=users,cn=accounts,dc=example,dc=com
などのサービスユーザーが LDAP ディレクトリーに存在します。Squid はこのアカウントを使用して認証ユーザーを検索します。認証ユーザーが存在する場合、Squid はこのユーザーをディレクトリーにバインドして、認証を確認します。
手順
squid
パッケージをインストールします。# yum install squid
/etc/squid/squid.conf
ファイルを編集します。basic_ldap_auth
ヘルパーユーティリティーを設定するには、/etc/squid/squid.conf
に以下の設定エントリーを追加します。auth_param basic program /usr/lib64/squid/basic_ldap_auth -b "cn=users,cn=accounts,dc=example,dc=com" -D "uid=proxy_user,cn=users,cn=accounts,dc=example,dc=com" -W /etc/squid/ldap_password -f "(&(objectClass=person)(uid=%s))" -ZZ -H ldap://ldap_server.example.com:389
以下では、上記の
basic_ldap_auth
ヘルパーユーティリティーに渡されるパラメーターを説明します。-
-b base_DN
は LDAP 検索ベースを設定します。 -
-D proxy_service_user_DN
は、Squid が、ディレクトリー内の認証ユーザーを検索する際に使用するアカウントの識別名 (DN) を設定します。 -
-W path_to_password_file
は、プロキシーサービスユーザーのパスワードが含まれるファイルへのパスを設定します。パスワードファイルを使用すると、オペレーティングシステムのプロセスリストにパスワードが表示されなくなります。 -f LDAP_filter
は 、DAP 検索フィルターを指定します。Squid は、%s
変数を、認証ユーザーにより提供されるユーザー名に置き換えます。上記の例の
(&(objectClass=person)(uid=%s))
フィルターは、ユーザー名がuid
属性に設定された値と一致する必要があり、ディレクトリーエントリーにperson
オブジェクトクラスが含まれることを定義します。-ZZ
は、STARTTLS
コマンドを使用して、LDAP プロトコルで TLS 暗号化接続を強制します。以下の状況で-ZZ
を省略します。- LDAP サーバーは、暗号化された接続にを対応しません。
- URL に指定されたポートは、LDAPS プロトコルを使用します。
- -H LDAP_URL パラメーターは、プロトコル、ホスト名、IP アドレス、および LDAP サーバーのポートを URL 形式で指定します。
-
以下の ACL およびルールを追加して、Squid で、認証されたユーザーのみがプロキシーを使用できるように設定します。
acl ldap-auth proxy_auth REQUIRED http_access allow ldap-auth
重要http_access deny all
ルールの前にこの設定を指定します。次のルールを削除して、
localnet
ACL で指定された IP 範囲のプロキシー認証の回避を無効にします。http_access allow localnet
以下の ACL はデフォルト設定にあり、HTTPS プロトコルを使用するポートとして
443
を定義します。acl SSL_ports port 443
ユーザーが他のポートでも HTTPS プロトコルを使用できるようにするには、ポートごとに ACL を追加します。
acl SSL_ports port port_number
Squid が接続を確立できるポートに設定する
acl Safe_ports
ルールの一覧を更新します。たとえば、プロキシーを使用するクライアントがポート 21 (FTP)、80 (HTTP)、443 (HTTPS) のリソースにのみアクセスできるようにするには、その設定の以下のacl Safe_ports
ステートメントのみを保持します。acl Safe_ports port 21 acl Safe_ports port 80 acl Safe_ports port 443
デフォルトでは、設定には
http_access deny !Safe_ports
ルールが含まれ、Safe_ports
ACL で定義されていないポートへのアクセス拒否を定義します。cache_dir
パラメーターにキャッシュの種類、キャッシュディレクトリーへのパス、キャッシュサイズ、さらにキャッシュの種類ごとの設定を設定します。cache_dir ufs /var/spool/squid 10000 16 256
この設定により、以下が可能になります。
-
Squid は、
ufs
キャッシュタイプを使用します。 -
Squid は、キャッシュを
/var/spool/squid/
ディレクトリーに保存します。 -
キャッシュのサイズが
10000
MB まで大きくなります。 -
Squid は、
16
個の レベル 1 サブディレクトリーを/var/spool/squid/
ディレクトリーに作成します。 Squid は、レベル 1 の各ディレクトリーに
256
個のサブディレクトリーを作成します。cache_dir
ディレクティブを設定しないと、Squid はキャッシュをメモリーに保存します。
-
Squid は、
cache_dir
パラメーターに/var/spool/squid/
以外のキャッシュディレクトリーを設定する場合は、以下を行います。キャッシュディレクトリーを作成します。
# mkdir -p path_to_cache_directory
キャッシュディレクトリーの権限を設定します。
# chown squid:squid path_to_cache_directory
SELinux を
enforcing
モードで実行する場合は、squid_cache_t
コンテキストをキャッシュディレクトリーに設定します。# semanage fcontext -a -t squid_cache_t "path_to_cache_directory(/.*)?" # restorecon -Rv path_to_cache_directory
semanage
ユーティリティーがシステムで利用できない場合は、policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールします。
LDAP サービスユーザーのパスワードを
/etc/squid/ldap_password
ファイルに保存し、ファイルに適切なパーミッションを設定します。# echo "password" > /etc/squid/ldap_password # chown root:squid /etc/squid/ldap_password # chmod 640 /etc/squid/ldap_password
ファイアウォールで
3128
ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=3128/tcp # firewall-cmd --reload
squid
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now squid
検証手順
プロキシーが正しく機能することを確認するには、curl
ユーティリティーを使用して Web ページをダウンロードします。
# curl -O -L "https://www.redhat.com/index.html" -x "user_name:password@proxy.example.com:3128"
curl がエラーを表示せず、index.html
ファイルが現在のディレクトリーにダウンロードされている場合は、プロキシーが動作します。
トラブルシューティングの手順
ヘルパーユーティリティーが正しく機能していることを確認するには、以下の手順を行います。
auth_param
パラメーターで使用したのと同じ設定で、ヘルパーユーティリティーを手動で起動します。# /usr/lib64/squid/basic_ldap_auth -b "cn=users,cn=accounts,dc=example,dc=com" -D "uid=proxy_user,cn=users,cn=accounts,dc=example,dc=com" -W /etc/squid/ldap_password -f "(&(objectClass=person)(uid=%s))" -ZZ -H ldap://ldap_server.example.com:389
有効なユーザー名とパスワードを入力し、Enter を押します。
user_name password
ヘルパーユーティリティーが
OK
を返すと、認証に成功しました。
6.3. kerberos 認証を使用したキャッシングプロキシーとしての Squid の設定
Squid を、Kerberos を使用して Active Directory (AD) に対してユーザーを認証するキャッシングプロキシーとして設定できます。この手順では、認証されたユーザーのみがプロキシーを使用できるように設定します。
前提条件
-
/etc/squid/squid.conf
ファイルが、squid
パッケージにより提供されている。このファイルを編集した場合は、ファイルを削除して、パッケージを再インストールしている。
手順
以下のパッケージをインストールします。
# yum install squid krb5-workstation
AD ドメイン管理者として認証します。
# kinit administrator@AD.EXAMPLE.COM
Squid 用のキータブを作成し、これを
/etc/squid/HTTP.keytab
ファイルに保存します。# export KRB5_KTNAME=FILE:/etc/squid/HTTP.keytab # net ads keytab CREATE -U administrator
HTTP
サービスプリンシパルをキータブに追加します。# net ads keytab ADD HTTP -U administrator
キータブファイルの所有者を
squid
ユーザーに設定します。# chown squid /etc/squid/HTTP.keytab
必要に応じて、キータブファイルに、プロキシーサーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) の
HTTP
サービスプリンシパルが含まれていることを確認します。# klist -k /etc/squid/HTTP.keytab Keytab name: FILE:/etc/squid/HTTP.keytab KVNO Principal ---- --------------------------------------------------- ... 2 HTTP/proxy.ad.example.com@AD.EXAMPLE.COM ...
/etc/squid/squid.conf
ファイルを編集します。negotiate_kerberos_auth
ヘルパーユーティリティーを設定するには、/etc/squid/squid.conf
部に以下の設定エントリーを追加します。auth_param negotiate program /usr/lib64/squid/negotiate_kerberos_auth -k /etc/squid/HTTP.keytab -s HTTP/proxy.ad.example.com@AD.EXAMPLE.COM
以下は、上記の例で
negotiate_kerberos_auth
ヘルパーユーティリティーに渡されるパラメーターを説明します。-
-k file
は、キータブファイルへのパスを設定します。squid ユーザーには、このファイルに対する読み取り権限があることに注意してください。 -s HTTP/host_name@kerberos_realm
は、Squid が使用する Kerberos プリンシパルを設定します。必要に応じて、以下のパラメーターのいずれかまたは両方をヘルパーユーティリティーに渡すことによりロギングを有効にできます。
-
-i
は、認証ユーザーなどの情報メッセージをログに記録します。 -d
は、デバッグロギングを有効にします。Squid は、ヘルパーユーティリティーから、
/var/log/squid/cache.log
ファイルにデバッグ情報のログに記録します。
-
以下の ACL およびルールを追加して、Squid で、認証されたユーザーのみがプロキシーを使用できるように設定します。
acl kerb-auth proxy_auth REQUIRED http_access allow kerb-auth
重要http_access deny all
ルールの前にこの設定を指定します。次のルールを削除して、
localnet
ACL で指定された IP 範囲のプロキシー認証の回避を無効にします。http_access allow localnet
以下の ACL はデフォルト設定にあり、HTTPS プロトコルを使用するポートとして
443
を定義します。acl SSL_ports port 443
ユーザーが他のポートでも HTTPS プロトコルを使用できるようにするには、ポートごとに ACL を追加します。
acl SSL_ports port port_number
Squid が接続を確立できるポートに設定する
acl Safe_ports
ルールの一覧を更新します。たとえば、プロキシーを使用するクライアントがポート 21 (FTP)、80 (HTTP)、443 (HTTPS) のリソースにのみアクセスできるようにするには、その設定の以下のacl Safe_ports
ステートメントのみを保持します。acl Safe_ports port 21 acl Safe_ports port 80 acl Safe_ports port 443
デフォルトでは、設定には
http_access deny !Safe_ports
ルールが含まれ、Safe_ports
ACL で定義されていないポートへのアクセス拒否を定義します。cache_dir
パラメーターにキャッシュの種類、キャッシュディレクトリーへのパス、キャッシュサイズ、さらにキャッシュの種類ごとの設定を設定します。cache_dir ufs /var/spool/squid 10000 16 256
この設定により、以下が可能になります。
-
Squid は、
ufs
キャッシュタイプを使用します。 -
Squid は、キャッシュを
/var/spool/squid/
ディレクトリーに保存します。 -
キャッシュのサイズが
10000
MB まで大きくなります。 -
Squid は、
16
個の レベル 1 サブディレクトリーを/var/spool/squid/
ディレクトリーに作成します。 Squid は、レベル 1 の各ディレクトリーに
256
個のサブディレクトリーを作成します。cache_dir
ディレクティブを設定しないと、Squid はキャッシュをメモリーに保存します。
-
Squid は、
cache_dir
パラメーターに/var/spool/squid/
以外のキャッシュディレクトリーを設定する場合は、以下を行います。キャッシュディレクトリーを作成します。
# mkdir -p path_to_cache_directory
キャッシュディレクトリーの権限を設定します。
# chown squid:squid path_to_cache_directory
SELinux を
enforcing
モードで実行する場合は、squid_cache_t
コンテキストをキャッシュディレクトリーに設定します。# semanage fcontext -a -t squid_cache_t "path_to_cache_directory(/.*)?" # restorecon -Rv path_to_cache_directory
semanage
ユーティリティーがシステムで利用できない場合は、policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールします。
ファイアウォールで
3128
ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=3128/tcp # firewall-cmd --reload
squid
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now squid
検証手順
プロキシーが正しく機能することを確認するには、curl
ユーティリティーを使用して Web ページをダウンロードします。
# curl -O -L "https://www.redhat.com/index.html" --proxy-negotiate -u : -x "proxy.ad.example.com:3128"
curl
がエラーを表示せず、index.html
ファイルが現在のディレクトリーに存在すると、プロキシーが機能します。
トラブルシューティングの手順
Kerberos 認証を手動でテストするには、以下を行います。
AD アカウントの Kerberos チケットを取得します。
# kinit user@AD.EXAMPLE.COM
必要に応じて、キーを表示します。
# klist
negotiate_kerberos_auth_test
ユーティリティーを使用して認証をテストします。# /usr/lib64/squid/negotiate_kerberos_auth_test proxy.ad.example.com
ヘルパーユーティリティーがトークンを返す場合は、認証に成功しました。
Token: YIIFtAYGKwYBBQUCoIIFqDC...
6.4. Squid でのドメイン拒否リストの設定
多くの場合、管理者は特定のドメインへのアクセスをブロックする必要があります。本セクションでは、Squid でドメインの拒否リストを設定する方法を説明します。
前提条件
- Squid が設定され、ユーザーはプロキシーを使用できます。
手順
/etc/squid/squid.conf
ファイルを編集し、以下の設定を追加します。acl domain_deny_list dstdomain "/etc/squid/domain_deny_list.txt" http_access deny all domain_deny_list
重要ユーザーまたはクライアントへのアクセスを許可する最初の
http_access allow
ステートメントの前にこれらのエントリーを追加します。/etc/squid/domain_deny_list.txt
ファイルを作成し、ブロックするドメインを追加します。たとえば、サブドメインを含むexample.com
へのアクセスをブロックして、example.net
をブロックするには、以下を追加します。.example.com example.net
重要squid 設定の
/etc/squid/domain_deny_list.txt
ファイルを参照している場合は、このファイルは空にすることはできません。このファイルが空の場合、Squid は起動できません。squid
サービスを再開します。# systemctl restart squid
6.5. Squid サービスが特定のポートまたは IP アドレスをリッスンするように設定
デフォルトでは、Squid プロキシーサービスは、すべてのネットワークインターフェイスの 3128
ポートでリッスンします。ポートを変更し、Squid が特定の IP アドレスをリッスンするように設定できます。
前提条件
-
squid
パッケージがインストールされている。
手順
/etc/squid/squid.conf
ファイルを編集します。Squid サービスがリッスンするポートを設定するには、
http_port
パラメーターにポート番号を設定します。たとえば、ポートを8080
に設定するには、以下を設定します。http_port 8080
Squid サービスがリッスンする IP アドレスを設定するには、
http_port
パラメーターに IP アドレスとポート番号を設定します。たとえば、Squid が、3128
ポートの IP アドレス192.0.2.1
でのみリッスンするように設定するには、以下を設定します。http_port 192.0.2.1:3128
複数の
http_port
パラメーターを設定ファイルに追加して、Squid が複数のポートおよび IP アドレスでリッスンするように設定します。http_port 192.0.2.1:3128 http_port 192.0.2.1:8080
Squid が別のポートをデフォルト (
3128
) として使用するように設定する場合は、以下のようになります。ファイアウォールのポートを開きます。
# firewall-cmd --permanent --add-port=port_number/tcp # firewall-cmd --reload
enforcing モードで SELinux を実行した場合は、ポートを
squid_port_t
ポートタイプ定義に割り当てます。# semanage port -a -t squid_port_t -p tcp port_number
semanage
ユーティリティーがシステムで利用できない場合は、policycoreutils-python-utils
パッケージをインストールします。
squid
サービスを再開します。# systemctl restart squid
6.6. 関連情報
-
設定パラメーター
usr/share/doc/squid-<version>/squid.conf.documented
第7章 データベースサーバー
7.1. データベースサーバーの概要
データベースサーバーは、データベース管理システム (DBMS) の機能を提供するサービスです。DBMS は、データベース管理のためのユーティリティーを提供し、エンドユーザー、アプリケーション、およびデータベースと対話します。
Red Hat Enterprise Linux 8 は、以下のデータベース管理システムを提供します。
- MariaDB 10.3
- MariaDB 10.5 - RHEL 8.4 以降で利用できます。
- MySQL 8.0
- PostgreSQL 10
- PostgreSQL 9.6
- PostgreSQL 12 - RHEL 8.1.1 以降で利用できます。
- PostgreSQL 13 - RHEL 8.4 以降で利用できます。
- PostgreSQL 15 - RHEL 8.8 以降で利用できます。
7.2. MariaDB の使用
MariaDB サーバーは、MySQL テクノロジーに基づくオープンソースの高速で堅牢なデータベースサーバーです。MariaDB は、データを構造化情報に変換して、データにアクセスする SQL インターフェイスを提供するリレーショナルデータベースです。これには、複数のストレージエンジンとプラグイン、および地理的な情報システム (GIS) および JSON (JavaScript Object Notation) 機能が含まれます。
RHEL システムに MariaDB をインストールして設定する方法、MariaDB データをバックアップする方法、MariaDB の以前のバージョンから移行する方法、および MariaDB Galera クラスター を使用してデータベースを複製する方法について説明します。
7.2.1. MariaDB のインストール
RHEL 8 では、MariaDB サーバーは、それぞれ個別のストリームにより提供される以下のバージョンで利用できます。
- MariaDB 10.3
- MariaDB 10.5 - RHEL 8.4 以降で利用できます。
MariaDB をインストールするには、以下の手順を行います。
手順
mariadb
モジュールからストリーム (バージョン) を選択し、server
プロファイルを指定して MariaDB サーバーパッケージをインストールします。以下に例を示します。# yum module install mariadb:10.3/server
mariadb
サービスを起動します。# systemctl start mariadb.service
mariadb
サービスが、システムの起動時に起動するようにします。# systemctl enable mariadb.service
MariaDB 10.3 に推奨: MariaDB をインストールする際のセキュリティーを向上させるには、次のコマンドを実行します。
$ mysql_secure_installation
このコマンドは、完全にインタラクティブなスクリプトを起動して、プロセスの各ステップのプロンプトを表示します。このスクリプトを使用すると、次の方法でセキュリティーを改善できます。
- root アカウントのパスワードの設定
- 匿名ユーザーの削除
リモート root ログインの拒否 (ローカルホスト外)
注記mysql_secure_installation スクリプトは、MariaDB 10.5 以降では価値がなくなりました。セキュリティーの強化は、MariaDB 10.5 以降のデフォルトの動作の一部です。
RPM パッケージが競合しているため、RHEL 8 では MariaDB および MySQL データベースサーバーを同時にインストールすることはできません。RHEL 7 用の Red Hat Software Collections では、コンポーネントの同時インストールが可能です。RHEL 8 では、コンテナー内で異なるバージョンのデータベースサーバーを使用できます。
7.2.2. MariaDB の設定
MariaDB サーバーをネットワーク用に設定するには、以下の手順に従います。
手順
/etc/my.cnf.d/mariadb-server.cnf
ファイルの[mysqld]
セクションを編集します。以下の設定ディレクティブを設定できます。bind-address
: サーバーがリッスンするアドレスです。設定可能なオプションは以下のとおりです。- ホスト名
- IPv4 アドレス
- IPv6 アドレス
skip-networking
: サーバーが TCP/IP 接続をリッスンするかどうかを制御します。以下の値が使用できます。- 0 - すべてのクライアントをリッスンする
- 1 - ローカルクライアントのみをリッスンする
-
port
: MariaDB が TCP/IP 接続をリッスンするポート。
mariadb
サービスを再起動します。# systemctl restart mariadb.service
7.2.3. MariaDB サーバーでの TLS 暗号化の設定
デフォルトでは、MariaDB は暗号化されていない接続を使用します。安全な接続のために、MariaDB サーバーで TLS サポートを有効にし、暗号化された接続を確立するようにクライアントを設定します。
7.2.3.1. MariaDB サーバーに CA 証明書、サーバー証明書、および秘密鍵を配置する
MariaDB サーバーで TLS 暗号化を有効にする前に、認証局 (CA) 証明書、サーバー証明書、および秘密鍵を MariaDB サーバーに保存します。
前提条件
Privacy Enhanced Mail(PEM) 形式の以下のファイルがサーバーにコピーされています。
-
サーバーの秘密鍵:
server.example.com.key.pem
-
サーバー証明書:
server.example.com.crt.pem
-
認証局 (CA) 証明書:
ca.crt.pem
秘密鍵および証明書署名要求 (CSR) の作成や、CA からの証明書要求に関する詳細は、CA のドキュメントを参照してください。
-
サーバーの秘密鍵:
手順
CA およびサーバー証明書を
/etc/pki/tls/certs/
ディレクトリーに保存します。# mv <path>/server.example.com.crt.pem /etc/pki/tls/certs/ # mv <path>/ca.crt.pem /etc/pki/tls/certs/
MariaDB サーバーがファイルを読み込めるように、CA およびサーバー証明書にパーミッションを設定します。
# chmod 644 /etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem /etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
証明書は、セキュアな接続が確立される前は通信の一部であるため、任意のクライアントは認証なしで証明書を取得できます。そのため、CA およびサーバーの証明書ファイルに厳密なパーミッションを設定する必要はありません。
サーバーの秘密鍵を
/etc/pki/tls/private/
ディレクトリーに保存します。# mv <path>/server.example.com.key.pem /etc/pki/tls/private/
サーバーの秘密鍵にセキュアなパーミッションを設定します。
# chmod 640 /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem # chgrp mysql /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem
承認されていないユーザーが秘密鍵にアクセスできる場合は、MariaDB サーバーへの接続は安全ではなくなります。
SELinux コンテキストを復元します。
# restorecon -Rv /etc/pki/tls/
7.2.3.2. MariaDB サーバーでの TLS の設定
セキュリティーを向上させるには、MariaDB サーバーで TLS サポートを有効にします。その結果、クライアントは TLS 暗号化を使用してサーバーでデータを送信できます。
前提条件
- MariaDB サーバーをインストールしている。
-
mariadb
サービスが実行している。 Privacy Enhanced Mail(PEM) 形式の以下のファイルがサーバー上にあり、
mysql
ユーザーが読み取りできます。-
サーバーの秘密鍵:
/etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem
-
サーバー証明書:
/etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem
-
認証局 (CA) 証明書
/etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
-
サーバーの秘密鍵:
- サーバー証明書のサブジェクト識別名 (DN) またはサブジェクトの別名 (SAN) フィールドは、サーバーのホスト名と一致します。
手順
/etc/my.cnf.d/mariadb-server-tls.cnf
ファイルを作成します。以下の内容を追加して、秘密鍵、サーバー、および CA 証明書へのパスを設定します。
[mariadb] ssl_key = /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem ssl_cert = /etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem ssl_ca = /etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
証明書失効リスト (CRL) がある場合は、それを使用するように MariaDB サーバーを設定します。
ssl_crl = /etc/pki/tls/certs/example.crl.pem
必要に応じて、MariaDB 10.5.2 以降を実行する場合は、暗号化せずに接続を拒否できます。この機能を有効にするには、以下を追加します。
require_secure_transport = on
必要に応じて、MariaDB 10.4.6 以降を実行する場合は、サーバーが対応する TLS バージョンを設定できます。たとえば、TLS 1.2 および TLS 1.3 をサポートするには、以下を追加します。
tls_version = TLSv1.2,TLSv1.3
デフォルトでは、サーバーは TLS 1.1、TLS 1.2、および TLS 1.3 をサポートします。
mariadb
サービスを再起動します。# systemctl restart mariadb
検証
トラブルシューティングを簡素化するには、ローカルクライアントが TLS 暗号化を使用するように設定する前に、MariaDB サーバーで以下の手順を実行します。
MariaDB で TLS 暗号化が有効になっていることを確認します。
# mysql -u root -p -e "SHOW GLOBAL VARIABLES LIKE 'have_ssl';" +---------------+-----------------+ | Variable_name | Value | +---------------+-----------------+ | have_ssl | YES | +---------------+-----------------+
have_ssl
変数がyes
に設定されている場合、TLS 暗号化が有効になります。MariaDB サービスが特定の TLS バージョンのみをサポートするように設定している場合は、
tls_version
変数を表示します。# mysql -u root -p -e "SHOW GLOBAL VARIABLES LIKE 'tls_version';" +---------------+-----------------+ | Variable_name | Value | +---------------+-----------------+ | tls_version | TLSv1.2,TLSv1.3 | +---------------+-----------------+
7.2.3.3. 特定のユーザーアカウントに TLS で暗号化された接続を要求する
機密データにアクセスできるユーザーは、ネットワーク上で暗号化されていないデータ送信を回避するために、常に TLS で暗号化された接続を使用する必要があります。
すべての接続にセキュアなトランスポートが必要なサーバーで設定できない場合は (require_secure_transport = on
)、TLS 暗号化を必要とするように個別のユーザーアカウントを設定します。
前提条件
- MariaDB サーバーで TLS サポートが有効になっている。
- セキュアなトランスポートを必要とするように設定するユーザーが存在する。
- クライアントは、サーバーの証明書を発行した CA 証明書を信頼している。
手順
管理ユーザーとしてMariaDB サーバーに接続します。
# mysql -u root -p -h server.example.com
管理ユーザーがリモートでサーバーにアクセスする権限を持たない場合は、MariaDB サーバーでコマンドを実行し、
localhost
に接続します。REQUIRE SSL
句を使用して、ユーザーが TLS 暗号化接続を使用して接続する必要があるよう強制します。MariaDB [(none)]> ALTER USER 'example'@'%' REQUIRE SSL;
検証
TLS 暗号化を使用して、
example
ユーザーとしてサーバーに接続します。# mysql -u example -p -h server.example.com --ssl ... MariaDB [(none)]>
エラーが表示されず、インタラクティブな MariaDB コンソールにアクセスできる場合は、TLS との接続は成功します。
TLS を無効にして、
example
ユーザーとして接続を試みます。# mysql -u example -p -h server.example.com --skip-ssl ERROR 1045 (28000): Access denied for user 'example'@'server.example.com' (using password: YES)
このユーザーに TLS が必要だが無効になっているため、サーバーはログインの試行を拒否しました (
--skip-ssl
)。
7.2.4. MariaDB クライアントでの TLS 暗号化のグローバルな有効化
MariaDB サーバーが TLS 暗号化に対応している場合は、安全な接続のみを確立し、サーバー証明書を検証するようにクライアントを設定します。この手順では、サーバー上のすべてのユーザーで TLS サポートを有効にする方法を説明します。
7.2.4.1. デフォルトで TLS 暗号化を使用するように MariaDB クライアントを設定する
RHEL では、MariaDB クライアントが TLS 暗号化を使用するようにグローバルに設定でき、サーバー証明書の Common Name (CN) が、ユーザーが接続するホスト名と一致することを検証します。これにより、man-in-the-middle 攻撃 (中間者攻撃) を防ぎます。
前提条件
- MariaDB サーバーで TLS サポートが有効になっている。
- サーバー証明書を発行した認証局 (CA) が RHEL で信頼されていない場合は、CA 証明書がクライアントにコピーされています。
手順
RHEL が、サーバー証明書を発行した CA を信頼しない場合は、以下を行います。
CA 証明書を
/etc/pki/ca-trust/source/anchors/
ディレクトリーにコピーします。# cp <path>/ca.crt.pem /etc/pki/ca-trust/source/anchors/
すべてのユーザーが CA 証明書ファイルを読み取りできるようにするパーミッションを設定します。
# chmod 644 /etc/pki/ca-trust/source/anchors/ca.crt.pem
CA 信頼データベースを再構築します。
# update-ca-trust
以下の内容で
/etc/my.cnf.d/mariadb-client-tls.cnf
ファイルを作成します。[client-mariadb] ssl ssl-verify-server-cert
これらの設定は、MariaDB クライアントが TLS 暗号化 (
ssl
) を使用し、クライアントがホスト名をサーバー証明書 (ssl-verify-server-cert
) の CN と比較することを定義します。
検証
ホスト名を使用してサーバーに接続し、サーバーの状態を表示します。
# mysql -u root -p -h server.example.com -e status ... SSL: Cipher in use is TLS_AES_256_GCM_SHA384
SSL
エントリーにCipher in use is…
が含まれている場合、接続は暗号化されています。このコマンドで使用するユーザーには、リモートで認証するパーミッションがあることに注意してください。
接続するホスト名がサーバーの TLS 証明書のホスト名と一致しない場合、
ssl-verify-server-cert
パラメーターにより接続が失敗します。たとえば、localhost
に接続する場合は、以下のようになります。# mysql -u root -p -h localhost -e status ERROR 2026 (HY000): SSL connection error: Validation of SSL server certificate failed
関連情報
-
mysql(1)
man ページの--ssl*
パラメーターの説明。
7.2.5. MariaDB データのバックアップ
Red Hat EnterpriseLinux 8 で MariaDB データベースからデータをバックアップする主な方法は 2 つあります。
- 論理バックアップ
- 物理バックアップ
論理バックアップ は、データの復元に必要な SQL ステートメントで設定されます。この種類のバックアップは、情報およびレコードをプレーンテキストファイルにエクスポートします。
物理バックアップに対する論理バックアップの主な利点は、移植性と柔軟性です。データは、物理バックアップではできない他のハードウェア設定である MariaDB バージョンまたはデータベース管理システム (DBMS) で復元できます。
mariadb.service
が稼働している場合は、論理バックアップを実行できることに注意してください。論理バックアップには、ログと設定ファイルが含まれません。
物理バックアップ は、コンテンツを格納するファイルおよびディレクトリーのコピーで設定されます。
物理バックアップは、論理バックアップと比較して、以下の利点があります。
- 出力が少なくなる。
- バックアップのサイズが小さくなる。
- バックアップおよび復元が速くなる。
- バックアップには、ログファイルと設定ファイルが含まれる。
mariadb.service
が実行していない場合や、データベースのすべてのテーブルがロックされていて、バックアップ中に変更しないようにする場合は、物理バックアップを実行する必要があります。
以下のいずれかの MariaDB バックアップ方法で、MariaDB データベースのデータのバックアップを使用できます。
-
mysqldump
を使用した論理バックアップ -
Mariabackup
ユーティリティーを使用した物理的なオンラインバックアップ - ファイルシステムのバックアップ
- バックアップソリューションとしてレプリケーションを使用
7.2.5.1. mysqldump を使用した論理バックアップの実行
mysqldump クライアントはバックアップユーティリティーで、バックアップ目的でデータベースまたはデータベースの集合をダンプしたり、別のデータベースサーバーに転送したりできます。通常、mysqldump の出力は、サーバーテーブル構造を再作成する、それにデータを取り込む、またはその両方の SQL ステートメントで設定されます。mysqldump は、XML および (CSV などの) コンマ区切りテキスト形式など、他の形式でファイルを生成することもできます。
mysqldump バックアップを実行するには、以下のいずれかのオプションを使用できます。
- 選択したデータベースを 1 つまたは複数バックアップ
- すべてのデータベースをバックアップする。
- あるデータベースのテーブルのサブセットのバックアップを作成する。
手順
単一のデータベースをダンプするには、以下を実行します。
# mysqldump [options] --databases db_name > backup-file.sql
複数のデータベースを一度にダンプするには、次のコマンドを実行します。
# mysqldump [options] --databases db_name1 [db_name2 …] > backup-file.sql
すべてのデータベースをダンプするには、以下を実行します。
# mysqldump [options] --all-databases > backup-file.sql
1 つ以上のダンプされたフルデータベースをサーバーにロードし直すには、以下を実行します。
# mysql < backup-file.sql
データベースをリモート MariaDB サーバーにロードするには、以下を実行します。
# mysql --host=remote_host < backup-file.sql
あるデータベースでテーブルのサブセットをダンプするには、
mysqldump
コマンドの末尾に、選択したテーブルのリストを追加します。# mysqldump [options] db_name [tbl_name …] > backup-file.sql
1 つのデータベースからダンプされたテーブルのサブセットをロードするには、以下を実行します。
# mysql db_name < backup-file.sql
注記この時点で、db_name データベースが存在している必要があります。
mysqldump がサポートするオプションのリストを表示するには、以下を実行します。
$ mysqldump --help
関連情報
- mysqldump を使用した論理バックアップの詳細は、MariaDB Documentation を参照してください。
7.2.5.2. Mariabackup ユーティリティーを使用した物理的なオンラインバックアップの実行
Mariabackup は、Percona XtraBackup テクノロジーをベースとしたユーティリティーです。これにより、InnoDB、Aria、および MyISAM テーブルの物理的なオンラインバックアップを実行できます。このユーティリティーは、AppStream リポジトリーから mariadb-backup
パッケージで提供されます。
Mariabackup は、MariaDB サーバーの完全バックアップ機能に対応します。これには、暗号化されたデータおよび圧縮データが含まれます。
前提条件
mariadb-backup
パッケージがシステムにインストールされている。# yum install mariadb-backup
- Mariabackup には、バックアップを実行するユーザーの認証情報を指定する必要があります。認証情報はコマンドラインまたは設定ファイルで指定できます。
-
Mariabackup のユーザーは、
RELOAD
、LOCK TABLES
、およびREPLICATION CLIENT
の権限が必要です。
Mariabackup を使用してデータベースのバックアップを作成するには、以下の手順を行います。
手順
コマンドラインで認証情報を提供する間にバックアップを作成するには、以下を実行します。
$ mariabackup --backup --target-dir <backup_directory> --user <backup_user> --password <backup_passwd>
target-dir
オプションは、バックアップファイルを格納するディレクトリーを定義します。完全バックアップを実行する場合は、ターゲットディレクトリーが空であるか、存在しない必要があります。ユーザー
オプションおよびパスワード
オプションにより、ユーザー名とパスワードを設定できます。設定ファイルに認証情報を設定してバックアップを作成するには、次のコマンドを実行します。
-
/etc/my.cnf.d/
ディレクトリーに設定ファイルを作成します (例:/etc/my.cnf.d/mariabackup.cnf
)。 以下の行を新規ファイルの
[xtrabackup]
セクションまたは[mysqld]
セクションに追加します。[xtrabackup] user=myuser password=mypassword
バックアップを実行します。
$ mariabackup --backup --target-dir <backup_directory>
-
Mariabackup は、設定ファイルの [mariadb]
セクションのオプションは読み込みません。MariaDB サーバーにデフォルト以外のデータディレクトリーが指定されている場合は、Mariabackup がデータディレクトリーを見つけることができるように、設定ファイルの [xtrabackup]
セクションまたは [mysqld]
セクションでこのディレクトリーを指定する必要があります。
デフォルト以外のデータディレクトリーを指定するには、MariaDB 設定ファイルの [xtrabackup]
セクションまたは [mysqld]
セクションに以下の行を追加します。
datadir=/var/mycustomdatadir
7.2.5.3. Mariabackup ユーティリティーを使用したデータの復元
バックアップが完了したら、mariabackup
コマンドに以下のいずれかのオプションを使用して、バックアップからデータを復元できます。
-
--copy-back
を使用すると、元のバックアップファイルを保持できます。 -
--move-back
は、バックアップファイルをデータディレクトリーに移動し、元のバックアップファイルを削除します。
Mariabackup ユーティリティーを使用してデータを復元するには、以下の手順に従います。
前提条件
mariadb
サービスが実行されていないことを確認します。# systemctl stop mariadb.service
- データディレクトリーが空であることを確認します。
-
Mariabackup のユーザーは、
RELOAD
、LOCK TABLES
、およびREPLICATION CLIENT
の権限が必要です。
手順
mariabackup
コマンドを実行します。データを復元し、元のバックアップファイルを保持するには、
--copy-back
オプションを使用します。$ mariabackup --copy-back --target-dir=/var/mariadb/backup/
データを復元し、元のバックアップファイルを削除するには、
--move-back
オプションを使用します。$ mariabackup --move-back --target-dir=/var/mariadb/backup/
ファイルの権限を修正します。
データベースを復元するとき、Mariabackup は、バックアップのファイルおよびディレクトリーの権限を保持します。ただし、Mariabackup は、ユーザーおよびグループがデータベースを復元する際にファイルをディスクに書き込みます。バックアップの復元後、MariaDB サーバーのユーザーおよびグループ (通常は共に
mysql
) が一致するように、データディレクトリーの所有者の調整が必要になる場合があります。たとえば、ファイルの所有権を
mysql
ユーザーおよびグループに再帰的に変更するには、次のコマンドを実行します。# chown -R mysql:mysql /var/lib/mysql/
mariadb
サービスを起動します。# systemctl start mariadb.service
7.2.5.4. ファイルシステムのバックアップの実行
MariaDB データファイルのファイルシステムバックアップを作成するには、MariaDB データディレクトリーの内容をバックアップ場所にコピーします。
現在の設定またはログファイルのバックアップも作成するには、以下の手順の中から任意の手順を選択します。
手順
mariadb
サービスを停止します。# systemctl stop mariadb.service
データファイルを必要な場所にコピーします。
# cp -r /var/lib/mysql /backup-location
必要に応じて、設定ファイルを必要な場所にコピーします。
# cp -r /etc/my.cnf /etc/my.cnf.d /backup-location/configuration
必要に応じて、ログファイルを必要な場所にコピーします。
# cp /var/log/mariadb/* /backup-location/logs
mariadb
サービスを起動します。# systemctl start mariadb.service
バックアップされたデータをバックアップ場所から
/var/lib/mysql
ディレクトリーに読み込む際は、mysql:mysql
が/var/lib/mysql
内のすべてのデータの所有者であることを確認してください。# chown -R mysql:mysql /var/lib/mysql
7.2.5.5. バックアップソリューションとしてレプリケーションを使用
レプリケーションは、ソースサーバー用の代替バックアップソリューションです。ソースサーバーの複製となるレプリカサーバーを作成すると、ソースに影響を与えずにレプリカでバックアップを実行できます。ソースは、レプリカをシャットダウンする間に依然として実行でき、レプリカからデータのバックアップを作成できます。
レプリケーション自体は、バックアップソリューションとしては十分ではありません。レプリケーションは、ハードウェア障害からソースサーバーを保護しますが、データ損失に対する保護は保証していません。この方法とともに、レプリカでその他のバックアップソリューションを使用することが推奨されます。
7.2.6. MariaDB 10.3 への移行
RHEL 7 には、MySQL データベースファミリーからのサーバーのデフォルトの実装として、MariaDB 5.5 が同梱されています。新しいバージョンの MariaDB データベースサーバーは、RHEL 7 の Software Collections として利用できます。RHEL 8 は、MariaDB 10.3、MariaDB 10.5、および MySQL 8.0 を提供します。
ここでは、MariaDB の RHEL 7 または Red Hat Software Collections バージョンから MariaDB 10.3 への移行を説明します。RHEL 8 内で MariaDB 10.3 から MariaDB 10.5 へ移行する場合は、MariaDB 10.3 から MariaDB 10.5 へのアップグレード を参照してください。
7.2.6.1. RHEL 7 と RHEL 8 のバージョンにおける MariaDB の主な相違点
MariaDB 5.5 および MariaDB 10.3 における最も重要な変更点を以下に示します。
- 10.1 以降、同期マルチソースクラスターのMariaDB Galera クラスター は、MariaDB の標準部分です。
- ARCHIVE ストレージエンジンはデフォルトで有効ではなくなるため、プラグインを明示的に有効にする必要があります。
- BLACKHOLE ストレージエンジンはデフォルトで有効ではなくなるため、プラグインを明示的に有効にする必要があります。
InnoDB は、MariaDB 10.1 以前のバージョンで使用されていた XtraDB ではなく、デフォルトのストレージエンジンとして使用されます。
詳細は、Why does MariaDB 10.2 use InnoDB instead of XtraDB? を参照してください。
-
新しい
mariadb-connector-c
パッケージは、MySQL と MariaDB に共通のクライアントライブラリーを提供します。このライブラリーは、データベースサーバー MySQL および MariaDB のすべてのバージョンで使用できます。その結果、Red Hat Enterprise Linux 8 に同梱される MySQL サーバーまたは MariaDB サーバーのいずれかに構築されるアプリケーションの 1 つに接続できます。
MariaDB 5.5 から MariaDB 10.3 に移行するには、MariaDB への移行 の説明に従って複数の設定変更を実行する必要があります。
7.2.6.2. 設定変更
MariaDB 5.5 から MariaDB 10.3 への推奨される移行パスは、最初に MariaDB 10.0 にアップグレードしてから、1 バージョンずつ順次アップグレードすることです。
一度に 1 つのマイナーバージョンをアップグレードする主な利点は、変更に対するデータと設定の両方を含む、データベースの適合に優れている点です。アップグレードは、RHEL 8 (MariaDB 10.3) で利用可能なものと同じメジャーバージョンで終了します。これにより、設定変更やその他の問題が大幅に低下します。
MariaDB 5.5 から MariaDB 10.0 への移行時の設定の変更の詳細は、Red Hat Software Collections の MariaDB 10.0 への移行 を参照してください。
以下の後続バージョンの MariaDB への以降と、必要な設定変更は、以下のドキュメントで説明します。
- Red Hat Software Collections ドキュメントの Migrating to MariaDB 10.1
- Red Hat Software Collections ドキュメントの Migrating to MariaDB 10.2
- Red Hat Software Collections ドキュメントの Migrating to MariaDB 10.3
MariaDB 5.5 から MariaDB 10.3 へ直接移行することもできますが、上記の移行ドキュメントに記載されている違いにより必要とされる設定変更をすべて実行する必要があります。
7.2.6.3. mysql_upgrade ユーティリティーを使用したインプレースアップグレード
データベースファイルを RHEL 8 に移行するには、RHEL 7 の MariaDB ユーザーは、mysql_upgrade
ユーティリティーを使用してインプレースアップグレードを実行する必要があります。mysql_upgrade
ユーティリティーは、mariadb-server-utils
サブパッケージにより提供され、mariadb-server
パッケージの依存関係としてインストールされます。
インプレースアップグレードを実行するには、RHEL 8 システムの /var/lib/mysql/
データディレクトリーにバイナリーデータファイルをコピーして、mysql_upgrade
ユーティリティーを使用する必要があります。
この方法を使用すると、以下からデータを移行できます。
- Red Hat Enterprise Linux 7 バージョンの MariaDB 5.5
Red Hat Software Collections のバージョンは、以下の通りです。
- MariaDB 5.5 (サポート対象外になりました)
- MariaDB 10.0 (サポート対象外になりました)
- MariaDB 10.1 (サポート対象外になりました)
- MariaDB 10.2 (サポート対象外になりました)
MariaDB 10.3
MariaDB 10.3 へのアップグレードは、バージョンごとに連続して行うことが推奨されます。移行は、Release Notes for Red Hat Software Collections で該当する章を参照してください。
RHEL 7 バージョンの MariaDB からアップグレードする場合は、ソースデータは /var/lib/mysql/
ディレクトリーに保存されます。Red Hat Software Collections バージョンの MariaDB の場合、ソースデータディレクトリーは /var/opt/rh/<collection_name>/lib/mysql/
です (/opt/rh/mariadb55/root/var/lib/mysql/
データディレクトリーを使用する mariadb55
を除く)。
mysql_upgrade ユーティリティーを使用してアップグレード を実行するには、以下の手順を行います。
前提条件
- アップグレードを実行する前に、MariaDB データベースに保存されている全データのバックアップを作成します。
手順
RHEL 8 システムに
mariadb-server
パッケージがインストールされていることを確認します。# yum install mariadb-server
データのコピー時に、
mariadb
サービスがソースおよびターゲットのシステムで稼働していないことを確認します。# systemctl stop mariadb.service
-
ソースの場所から RHEL 8 ターゲットシステムの
/var/lib/mysql/
ディレクトリーにデータをコピーします。 ターゲットシステムでコピーされたファイルに適切なパーミッションと SELinux コンテキストを設定します。
# restorecon -vr /var/lib/mysql
ターゲットシステムで、MariaDB サーバーを起動します。
# systemctl start mariadb.service
mysql_upgrade
コマンドを実行して、内部テーブルをチェックし、修復します。$ mysql_upgrade
-
アップグレードが完了したら、
/etc/my.cnf.d/
ディレクトリー内のすべての設定ファイルに MariaDB 10.3 に対して有効なオプションのみが含まれていることを確認します。
インプレースアップグレードに関連する特定のリスクと既知の問題があります。たとえば、一部のクエリーが動作しなかったり、アップグレード前とは異なる順序で実行される場合があります。これらのリスクと問題、およびインプレースアップグレードに関する全般的な情報は、MariaDB 10.3 Release Notes を参照してください。
7.2.7. MariaDB 10.3 から MariaDB 10.5 へのアップグレード
ここでは、RHEL 8 における MariaDB 10.3 から MariaDB 10.5 への移行について説明します。
7.2.7.1. MariaDB 10.3 と MariaDB 10.5 の主な相違点
MariaDB 10.3 と MariaDB 10.5 の間の重要な変更点には以下が含まれます。
-
MariaDB はデフォルトで
unix_socket
認証プラグインを使用するようになりました。このプラグインを使用すると、ローカルの UNIX ソケットファイルを介して MariaDB に接続する際に、オペレーティングシステムの資格情報を使用できます。 -
MariaDB
は、mariadb-*
という名前のバイナリーと、mariadb-*
バイナリーを指すmysql*
シンボリックリンクを追加します。たとえば、mysqladmin
、mysqlaccess
、およびmysqlshow
のシンボリックリンクは、mariadb-admin
、mariadb-access
、およびmariadb-show
のバイナリーをそれぞれポイントします。 -
各ユーザーロールに合わせて、
SUPER
特権が複数の特権に分割されました。その結果、一部のステートメントで必要な特権が変更されました。 -
並列のレプリケーションでは、
slave_parallel_mode
はデフォルトでoptimistic
に設定されるようになりました。 -
InnoDB ストレージエンジンで、変数のデフォルトが変更されました (
innodb_adaptive_hash_index
はOFF
へ、innodb_checksum_algorithm
はfull_crc32
へ変更)。 MariaDB は、以前使用された
readline
ライブラリーではなく、MariaDB コマンド履歴 (.mysql_history
ファイル) を管理する基盤となるソフトウェアのlibedit
実装を使用するようになりました。この変更は、.mysql_history
ファイルを直接使用しているユーザーに影響します。.mysql_history
は MariaDB または MySQL アプリケーションによって管理されるファイルであるため、ユーザーは直接ファイルでは機能しないことに注意してください。人間が判読可能な外観は偶然です。注記セキュリティーを強化するために、履歴ファイルの維持を考慮することができます。コマンド履歴の記録を無効にするには、以下を実行します。
-
存在する場合は、
.mysql_history
ファイルを削除します。 以下のいずれかの方法を使用します。
-
MYSQL_HISTFILE
変数を/dev/null
に設定し、これをシェルの起動ファイルに追加します。 .mysql_history
ファイルを/dev/null
へのシンボリックリンクに変更します。$ ln -s /dev/null $HOME/.mysql_history
-
-
存在する場合は、
MariaDB Galera クラスター がバージョン 4 にアップグレードされ、以下の主な変更点が加えられました。
- Galera は、サイズ制限なしのトランザクションの複製をサポートする、新しいストリーミングレプリケーション機能を追加します。ストリーミングレプリケーションの実行時に、クラスターは小さなフラグメントでトランザクションを複製します。
- Galera が Global Transaction ID (GTID) に完全に対応するようになりました。
-
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルのwsrep_on
オプションのデフォルト値が1
から0
に変更され、エンドユーザーが必要な追加オプションを設定せずにwsrep
レプリケーションを開始できないようにします。
MariaDB 10.5 の PAM プラグインへの変更には、以下が含まれます。
-
MariaDB 10.5 は、PAM (Pluggable Authentication Modules) プラグインの新バージョンを追加します。PAM プラグインバージョン 2.0 は、個別の
setuid root
ヘルパーバイナリーを使用して PAM 認証を実行します。これにより、MariaDB が追加の PAM モジュールを使用できるようになります。 -
ヘルパーバイナリーは、
mysql
グループのユーザーによってのみ実行できます。デフォルトでは、グループにはmysql
ユーザーのみが含まれます。Red Hat では、このヘルパーユーティリティーを介してスロットルまたはログの記録をせずにパスワード推測攻撃を防ぐために、管理者がmysql
グループにユーザーをさらに追加しないことを推奨しています。 -
MariaDB 10.5 では、プラグ可能な認証モジュール (PAM) プラグインとその関連ファイルが新しいパッケージ
mariadb-pam
に移動しました。したがって、MariaDB
に PAM 認証を使用しないシステムに、新しいsetuid root
バイナリーが導入されることはありません。 -
mariadb-pam
パッケージには、両方の PAM プラグインバージョンが含まれています。バージョン 2.0 はデフォルトで、バージョン 1.0 はauth_pam_v1
共有オブジェクトライブラリーとして利用できます。 -
MariaDB サーバーでは、
mariadb-pam
パッケージはデフォルトでインストールされません。MariaDB 10.5 で PAM 認証プラグインを利用できるようにするには、mariadb-pam
パッケージを手動でインストールします。
7.2.7.2. RHEL 8 バージョンの MariaDB 10.3 から MariaDB 10.5 へのアップグレード
この手順では、yum
および mariadb-upgrade
ユーティリティーを使用して、mariadb:10.3
モジュールストリームから mariadb:10.5
モジュールストリームにアップグレードする方法を説明します。
mariadb-upgrade
ユーティリティーは、mariadb-server-utils
サブパッケージにより提供され、mariadb-server
パッケージの依存関係としてインストールされます。
前提条件
- アップグレードを実行する前に、MariaDB データベースに保存されている全データのバックアップを作成します。
手順
MariaDB サーバーを停止します。
# systemctl stop mariadb.service
以下のコマンドを実行して、後続のストリームに切り替えるためのシステムの準備が整っているかどうかを判断します。
# yum distro-sync
このコマンドは、Nothing to do.Complete! のメッセージで終了する必要があります。詳細は、後続のストリームへの切り替え を参照してください。
システムで
mariadb
モジュールをリセットします。# yum module reset mariadb
新しい
mariadb:10.5
モジュールストリームを有効にします。# yum module enable mariadb:10.5
インストール済みパッケージを同期し、ストリーム間の変更を実行します。
# yum distro-sync
これにより、インストールされている MariaDB パッケージがすべて更新されます。
-
/etc/my.cnf.d/
にあるオプションファイルに MariaDB 10.5 に対して有効なオプションのみが含まれるように、設定を調整します。詳細は、MariaDB 10.4 および MariaDB 10.5 のアップストリームドキュメントを参照してください。 MariaDB サーバーを起動します。
スタンドアロンを実行しているデータベースをアップグレードする場合:
# systemctl start mariadb.service
Galera クラスターノードをアップグレードする場合:
# galera_new_cluster
mariadb
サービスが自動的に起動します。
mariadb-upgrade ユーティリティーを実行して、内部テーブルをチェックし、修復します。
スタンドアロンを実行しているデータベースをアップグレードする場合:
# mariadb-upgrade
Galera クラスターノードをアップグレードする場合:
# mariadb-upgrade --skip-write-binlog
インプレースアップグレードに関連する特定のリスクと既知の問題があります。たとえば、一部のクエリーが動作しなかったり、アップグレード前とは異なる順序で実行される場合があります。これらのリスクと問題、およびインプレースアップグレードに関する全般的な情報は、MariaDB 10.5 Release Notes を参照してください。
7.2.8. Galera で MariaDB を複製する
本セクションでは、Red Hat Enterprise Linux 8 の Galera ソリューションを使用して、MariaDB データベースを複製する方法を説明します。
7.2.8.1. MariaDB Galera クラスターの概要
Galera レプリケーションは、複数の MariaDB サーバーで設定される同期マルチソース MariaDB Galera クラスター の作成に基づいています。レプリカが通常読み取り専用である従来のプライマリー/レプリカ設定とは異なり、MariaDB Galera クラスターのノードはすべて書き込み可能にすることができます。
Galera レプリケーションと MariaDB データベースとの間のインターフェイスは、書き込みセットレプリケーション API (wsrep API) で定義されます。
MariaDB Galera クラスター の主な機能は以下のとおりです。
- 同期のレプリケーション
- アクティブ/アクティブのマルチソーストポロジー
- クラスターノードへの読み取りおよび書き込み
- 自動メンバーシップ制御、失敗したノードのクラスターからの削除
- 自動ノードの参加
- 行レベルの並列レプリケーション
- ダイレクトクライアント接続: ユーザーはクラスターノードにログインし、レプリケーションの実行中にノードを直接操作できます。
同期レプリケーションとは、サーバーがトランザクションに関連付けられた書き込みセットをクラスター内のすべてのノードにブロードキャストすることで、コミット時にトランザクションをレプリケートすることを意味します。クライアント (ユーザーアプリケーション) はデータベース管理システム (DBMS) に直接接続し、ネイティブの MariaDB と同様の動作が発生します。
同期レプリケーションは、クラスター内の 1 つのノードで発生した変更が、クラスター内の他のノードで同時に発生することを保証します。
そのため、同期レプリケーションには、非同期のレプリケーションと比べて次のような利点があります。
- 特定のクラスターノード間の変更の伝播に遅延がない
- すべてのクラスターノードには常に一貫性がある
- いずれかのクラスターノードがクラッシュしても、最新の変更は失われない
- すべてのクラスターノードのトランザクションが並列に実行する
- クラスター全体にわたる因果関係
7.2.8.2. MariaDB Galera クラスターを構築するためのコンポーネント
MariaDB Galera クラスター を構築するには、システムに以下のパッケージをインストールする必要があります。
-
mariadb-server-galera
: MariaDB Galera クラスター のサポートファイルとスクリプトが含まれます。 -
mariadb-server
: MariaDB アップストリームがパッチを適用し、書き込みセットレプリケーション API (wsrep API) を組み込みます。この API は、Galera レプリケーションと MariaDB との間のインターフェイスを提供します。 galera
: MariaDB アップストリームがパッチを適用し、MariaDB の完全サポートを追加します。galera
パッケージには、以下の内容が含まれます。- Galera Replication Library は、レプリケーション機能全体を提供します。
- Galera Arbitrator ユーティリティーは、スプリットブレインのシナリオで投票に参加するクラスターメンバーとして使用できます。ただし、Galera Arbitrator は実際のレプリケーションには参加できません。
-
Galera Arbitrator ユーティリティーのデプロイに使用される Galera Systemd service および Galera wrapper script。RHEL 8 の MariaDB 10.3 および MariaDB 10.5 には、Red Hat バージョンの
garbd
systemd サービスと、/usr/lib/systemd/system/garbd.service
ファイルおよび/usr/sbin/garbd-wrapper
ファイルにそれぞれあるgalera
パッケージのラッパースクリプトが含まれています。RHEL 8.6 以降、MariaDB 10.3 および MariaDB 10.5 は、/usr/share/doc/galera/garb-systemd
および/usr/share/doc/galera/garbd.service
にあるこれらのファイルのアップストリームバージョンも提供するようになりました。
7.2.8.3. MariaDB Galera クラスターのデプロイメント
前提条件
mariadb
モジュールからストリーム (バージョン) を選択し、galera
プロファイルを指定して、MariaDB Galera クラスター パッケージをインストールします。以下に例を示します。# yum module install mariadb:10.3/galera
これにより、以下のパッケージがインストールされます。
-
mariadb-server-galera
-
mariadb-server
galera
mariadb-server-galera
パッケージがmariadb-server
パッケージおよびgalera
パッケージを依存関係としてプルします。MariaDB Galera Cluster をビルドするためにインストールする必要があるパッケージについては、MariaDB クラスターをビルドするためのコンポーネント を参照してください。
-
MariaDB サーバーのレプリケーション設定は、システムを初めてクラスターに追加する前に更新する必要があります。
デフォルト設定は、
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルで配布されます。MariaDB Galera クラスター をデプロイする前に、以下の文字列で開始するように、すべてのノードの
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルにwsrep_cluster_address
オプションを設定します。gcomm://
初期ノードでは、
wsrep_cluster_address
を空のリストとして設定できます。wsrep_cluster_address="gcomm://"
その他のすべてのノードに
wsrep_cluster_address
を設定して、実行中のクラスターに属するノードへのアドレスを追加します。以下に例を示します。wsrep_cluster_address="gcomm://10.0.0.10"
Galera Cluster アドレスの設定方法は、Galera Cluster Address を参照してください。
手順
ノードで以下のラッパーを実行して、新規クラスターの最初のノードをブートストラップします。
# galera_new_cluster
このラッパーにより、MariaDB サーバーデーモン (
mysqld
) に--wsrep-new-cluster
オプションが指定されて実行されるようになります。このオプションは、接続する既存クラスターがないという情報を提供します。したがって、ノードは新規 UUID を作成し、新しいクラスターを特定します。注記mariadb
サービスは、複数の MariaDB サーバープロセスと対話する systemd メソッドをサポートします。したがって、複数の MariaDB サーバーを実行している場合は、インスタンス名を接尾辞として指定して、特定のインスタンスをブートストラップできます。# galera_new_cluster mariadb@node1
各ノードで次のコマンドを実行して、その他のノードをクラスターに接続します。
# systemctl start mariadb
その結果、ノードはクラスターに接続し、それ自体をクラスターの状態と同期します。
7.2.8.4. 新規ノードの MariaDB Galera クラスターへの追加
新規ノードを MariaDB Galera クラスター に追加するには、以下の手順に従います。
この手順に従って、既存のノードを再接続することもできます。
手順
特定のノードで、
/etc/my.cnf.d/galera.cnf
設定ファイルの[mariadb]
セクション内にあるwsrep_cluster_address
オプションで、1 つ以上の既存クラスターメンバーにアドレスを指定します。[mariadb] wsrep_cluster_address="gcomm://192.168.0.1"
新規ノードを既存クラスターノードのいずれかに接続すると、クラスター内のすべてのノードを表示できるようになります。
ただし、
wsrep_cluster_address
のクラスターの全ノードを表示することが推奨されます。したがって、1 つ以上のクラスターノードがダウンしても、その他のクラスターノードに接続することでノードがクラスターに参加できます。すべてのメンバーがメンバーシップに同意すると、クラスターの状態が変更します。新規ノードの状態がクラスターの状態と異なる場合、新しいノードは Incremental State Transfer (IST) または State Snapshot Transfer (SST) のいずれかを要求し、他のノードとの一貫性を確保します。
7.2.8.5. MariaDB Galera クラスターの再起動
すべてのノードを同時にシャットダウンすると、クラスターが終了し、実行中のクラスターは存在しなくなります。ただし、クラスターのデータは引き続き存在します。
クラスターを再起動するには、MariaDB Galera クラスターの設定の説明に従って、最初のノードをブートストラップします。
クラスターがブートストラップされず、最初のノードの mysqld
が systemctl start mariadb
コマンドでのみ起動した場合、ノードは /etc/my.cnf.d/galera.cnf
ファイルの wsrep_cluster_address
オプションに記載されている少なくとも 1 つのノードに接続しようとします。ノードが現在実行していない場合は、再起動に失敗します。
7.2.9. MariaDB クライアントアプリケーションの開発
Red Hat では、MariaDB クライアントライブラリーに対して MariaDB クライアントアプリケーションを開発することを推奨します。
MariaDB クライアントライブラリーに対してアプリケーションを構築するために必要な開発ファイルとプログラムは、mariadb-connector-c-devel
パッケージによって提供されます。
直接ライブラリー名を使用する代わりに、mariadb-connector-c-devel
パッケージで配布されている mariadb_config
プログラムを使用します。このプログラムは、正しいビルドフラグが返されることを保証します。
7.3. MySQL の使用
MySQL サーバーは、オープンソースの高速で堅牢なデータベースサーバーです。MySQL は、データを構造化情報に変換して、データにアクセスする SQL インターフェイスを提供するリレーショナルデータベースです。これには、複数のストレージエンジンとプラグイン、および地理的な情報システム (GIS) および JSON (JavaScript Object Notation) 機能が含まれます。
RHEL システムに MySQL をインストールして設定する方法、MySQL データをバックアップする方法、MySQL の以前のバージョンから移行する方法、および MySQL を複製する方法について説明します。
7.3.1. MySQL のインストール
RHEL 8 では、MySQL 8.0 サーバーは mysql:8.0
モジュールストリームとして利用できます。
MySQL をインストールするには、以下の手順に従います。
手順
mysql
モジュールから8.0
ストリーム (バージョン) を選択し、server
プロファイルを指定して、MySQL サーバーパッケージをインストールします。# yum module install mysql:8.0/server
mysqld
サービスを開始します。# systemctl start mysqld.service
mysqld
サービスを有効にして、起動時に起動するようにします。# systemctl enable mysqld.service
推奨手順: MySQL のインストール時にセキュリティーを強化するには、次のコマンドを実行します。
$ mysql_secure_installation
このコマンドは、完全にインタラクティブなスクリプトを起動して、プロセスの各ステップのプロンプトを表示します。このスクリプトを使用すると、次の方法でセキュリティーを改善できます。
- root アカウントのパスワードの設定
- 匿名ユーザーの削除
- リモート root ログインの拒否 (ローカルホスト外)
RPM パッケージが競合しているため、RHEL 8 では MySQL および MariaDB データベースサーバーを同時にインストールすることはできません。RHEL 7 用の Red Hat Software Collections では、コンポーネントの同時インストールが可能です。RHEL 8 では、コンテナー内で異なるバージョンのデータベースサーバーを使用できます。
7.3.2. MySQL の設定
MySQL サーバーをネットワーク用に設定するには、以下の手順に従います。
手順
/etc/my.cnf.d/mysql-server.cnf
ファイルの[mysqld]
セクションを編集します。以下の設定ディレクティブを設定できます。bind-address
: サーバーがリッスンするアドレスです。設定可能なオプションは以下のとおりです。- ホスト名
- IPv4 アドレス
- IPv6 アドレス
skip-networking
: サーバーが TCP/IP 接続をリッスンするかどうかを制御します。以下の値が使用できます。- 0 - すべてのクライアントをリッスンする
- 1 - ローカルクライアントのみをリッスンする
-
port
: MySQL が TCP/IP 接続をリッスンするポート。
mysqld
サービスを再起動します。# systemctl restart mysqld.service
7.3.3. MySQL サーバーでの TLS 暗号化の設定
デフォルトでは、MySQL は暗号化されていない接続を使用します。安全な接続のために、MySQL サーバーで TLS サポートを有効にし、暗号化された接続を確立するようにクライアントを設定します。
7.3.3.1. MySQL サーバーに CA 証明書、サーバー証明書、および秘密鍵を配置する
MySQL サーバーで TLS 暗号化を有効にする前に、認証局 (CA) 証明書、サーバー証明書、および秘密鍵を MySQL サーバーに保存します。
前提条件
Privacy Enhanced Mail(PEM) 形式の以下のファイルがサーバーにコピーされています。
-
サーバーの秘密鍵:
server.example.com.key.pem
-
サーバー証明書:
server.example.com.crt.pem
-
認証局 (CA) 証明書:
ca.crt.pem
秘密鍵および証明書署名要求 (CSR) の作成や、CA からの証明書要求に関する詳細は、CA のドキュメントを参照してください。
-
サーバーの秘密鍵:
手順
CA およびサーバー証明書を
/etc/pki/tls/certs/
ディレクトリーに保存します。# mv <path>/server.example.com.crt.pem /etc/pki/tls/certs/ # mv <path>/ca.crt.pem /etc/pki/tls/certs/
MySQL サーバーがファイルを読み込めるように、CA およびサーバー証明書にパーミッションを設定します。
# chmod 644 /etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem /etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
証明書は、セキュアな接続が確立される前は通信の一部であるため、任意のクライアントは認証なしで証明書を取得できます。そのため、CA およびサーバーの証明書ファイルに厳密なパーミッションを設定する必要はありません。
サーバーの秘密鍵を
/etc/pki/tls/private/
ディレクトリーに保存します。# mv <path>/server.example.com.key.pem /etc/pki/tls/private/
サーバーの秘密鍵にセキュアなパーミッションを設定します。
# chmod 640 /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem # chgrp mysql /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem
承認されていないユーザーが秘密鍵にアクセスできる場合は、MySQL サーバーへの接続は安全ではなくなります。
SELinux コンテキストを復元します。
# restorecon -Rv /etc/pki/tls/
7.3.3.2. MySQL サーバーでの TLS の設定
セキュリティーを強化するには、MySQL サーバーで TLS サポートを有効にします。その結果、クライアントは TLS 暗号化を使用してサーバーでデータを送信できます。
前提条件
- MySQL サーバーをインストールしている。
-
mysqld
サービスが実行されている。 Privacy Enhanced Mail(PEM) 形式の以下のファイルがサーバー上にあり、
mysql
ユーザーが読み取りできます。-
サーバーの秘密鍵:
/etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem
-
サーバー証明書:
/etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem
-
認証局 (CA) 証明書
/etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
-
サーバーの秘密鍵:
- サーバー証明書のサブジェクト識別名 (DN) またはサブジェクトの別名 (SAN) フィールドは、サーバーのホスト名と一致します。
手順
/etc/my.cnf.d/mysql-server-tls.cnf
ファイルを作成します。以下の内容を追加して、秘密鍵、サーバー、および CA 証明書へのパスを設定します。
[mysqld] ssl_key = /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem ssl_cert = /etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem ssl_ca = /etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
証明書失効リスト (CRL) がある場合は、それを使用するように MySQL サーバーを設定します。
ssl_crl = /etc/pki/tls/certs/example.crl.pem
オプション: 暗号化なしの接続試行を拒否します。この機能を有効にするには、以下を追加します。
require_secure_transport = on
オプション: サーバーがサポートする必要がある TLS バージョンを設定します。たとえば、TLS 1.2 および TLS 1.3 をサポートするには、以下を追加します。
tls_version = TLSv1.2,TLSv1.3
デフォルトでは、サーバーは TLS 1.1、TLS 1.2、および TLS 1.3 をサポートします。
mysqld
サービスを再起動します。# systemctl restart mysqld
検証
トラブルシューティングを簡素化するには、ローカルクライアントが TLS 暗号化を使用するように設定する前に、MySQL サーバーで以下の手順を実行します。
MySQL で TLS 暗号化が有効になっていることを確認します。
# mysql -u root -p -h <MySQL_server_hostname> -e "SHOW session status LIKE 'Ssl_cipher';" +---------------+------------------------+ | Variable_name | Value | +---------------+------------------------+ | Ssl_cipher | TLS_AES_256_GCM_SHA384 | +---------------+------------------------+
MySQL サーバーが特定の TLS バージョンのみをサポートするように設定している場合は、
tls_version
変数を表示します。# mysql -u root -p -e "SHOW GLOBAL VARIABLES LIKE 'tls_version';" +---------------+-----------------+ | Variable_name | Value | +---------------+-----------------+ | tls_version | TLSv1.2,TLSv1.3 | +---------------+-----------------+
サーバーが正しい CA 証明書、サーバー証明書、および秘密鍵ファイルを使用していることを確認します。
# mysql -u root -e "SHOW GLOBAL VARIABLES WHERE Variable_name REGEXP '^ssl_ca|^ssl_cert|^ssl_key';" +-----------------+-------------------------------------------------+ | Variable_name | Value | +-----------------+-------------------------------------------------+ | ssl_ca | /etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem | | ssl_capath | | | ssl_cert | /etc/pki/tls/certs/server.example.com.crt.pem | | ssl_key | /etc/pki/tls/private/server.example.com.key.pem | +-----------------+-------------------------------------------------+
7.3.3.3. 特定のユーザーアカウントに TLS で暗号化された接続を要求する
機密データにアクセスできるユーザーは、ネットワーク上で暗号化されていないデータ送信を回避するために、常に TLS で暗号化された接続を使用する必要があります。
すべての接続にセキュアなトランスポートが必要なサーバーで設定できない場合は (require_secure_transport = on
)、TLS 暗号化を必要とするように個別のユーザーアカウントを設定します。
前提条件
- MySQL サーバーで TLS サポートが有効になっている。
- セキュアなトランスポートを必要とするように設定するユーザーが存在する。
- CA 証明書がクライアントに保存されている。
手順
管理ユーザーとして MySQL サーバーに接続します。
# mysql -u root -p -h server.example.com
管理ユーザーがリモートでサーバーにアクセスする権限を持たない場合は、MySQL サーバーでコマンドを実行し、
localhost
に接続します。REQUIRE SSL
句を使用して、ユーザーが TLS 暗号化接続を使用して接続する必要があるよう強制します。MySQL [(none)]> ALTER USER 'example'@'%' REQUIRE SSL;
検証
TLS 暗号化を使用して、
example
ユーザーとしてサーバーに接続します。# mysql -u example -p -h server.example.com ... MySQL [(none)]>
エラーが表示されず、インタラクティブな MySQL コンソールにアクセスできる場合は、TLS との接続は成功します。
デフォルトでは、サーバーが TLS 暗号化を提供している場合、クライアントは自動的にその TLS 暗号化を使用します。したがって、
--ssl-ca=ca.crt.pem
および--ssl-mode=VERIFY_IDENTITY
オプションは必須ではありません。ただし、これらのオプションを使用するとクライアントはサーバーの ID を検証するため、セキュリティーが向上します。TLS を無効にして、
example
ユーザーとして接続を試みます。# mysql -u example -p -h server.example.com --ssl-mode=DISABLED ERROR 1045 (28000): Access denied for user 'example'@'server.example.com' (using password: YES)
このユーザーには TLS が必要なのにもかかわらず無効になっているため、サーバーはログインの試行を拒否しました (
--ssl-mode=DISABLED
)。
関連情報
7.3.4. MySQL クライアントで CA 証明書の検証を使用して TLS 暗号化をグローバルで有効にする
MySQL サーバーが TLS 暗号化に対応している場合は、安全な接続のみを確立し、サーバー証明書を検証するようにクライアントを設定します。この手順では、サーバー上のすべてのユーザーで TLS サポートを有効にする方法を説明します。
7.3.4.1. デフォルトで TLS 暗号化を使用するように MySQL クライアントを設定する
RHEL では、MySQL クライアントが TLS 暗号化を使用するようにグローバルに設定でき、サーバー証明書の Common Name (CN) が、ユーザーが接続するホスト名と一致することを検証します。これにより、man-in-the-middle 攻撃 (中間者攻撃) を防ぎます。
前提条件
- MySQL サーバーで TLS サポートが有効になっている。
-
CA 証明書は、クライアントの
/etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
ファイルに保存されます。
手順
以下の内容で
/etc/my.cnf.d/mysql-client-tls.cnf
ファイルを作成します。[client] ssl-mode=VERIFY_IDENTITY ssl-ca=/etc/pki/tls/certs/ca.crt.pem
これらの設定は、MySQL クライアントが TLS 暗号化を使用すること、およびクライアントがホスト名をサーバー証明書の CN と比較すること (
ssl-mode=VERIFY_IDENTITY
) を定義します。さらに、CA 証明書 (ssl-ca
) へのパスも指定します。
検証
ホスト名を使用してサーバーに接続し、サーバーの状態を表示します。
# mysql -u root -p -h server.example.com -e status ... SSL: Cipher in use is TLS_AES_256_GCM_SHA384
SSL
エントリーにCipher in use is…
が含まれている場合、接続は暗号化されています。このコマンドで使用するユーザーには、リモートで認証するパーミッションがあることに注意してください。
接続するホスト名がサーバーの TLS 証明書のホスト名と一致しない場合、
ssl-mode=VERIFY_IDENTITY
パラメーターにより接続が失敗します。たとえば、localhost
に接続する場合は、以下のようになります。# mysql -u root -p -h localhost -e status ERROR 2026 (HY000): SSL connection error: error:0A000086:SSL routines::certificate verify failed
関連情報
-
mysql(1)
man ページの--ssl*
パラメーターの説明。
7.3.5. MySQL データのバックアップ
Red Hat Enterprise Linux 8 でMySQL データベースからデータをバックアップする主な方法は 2 つあります。
- 論理バックアップ
- 物理バックアップ
論理バックアップ は、データの復元に必要な SQL ステートメントで設定されます。この種類のバックアップは、情報およびレコードをプレーンテキストファイルにエクスポートします。
物理バックアップに対する論理バックアップの主な利点は、移植性と柔軟性です。データは、物理バックアップではできない他のハードウェア設定である MySQL バージョンまたはデータベース管理システム (DBMS) で復元できます。
mysqld.service
が実行されている場合は、論理バックアップを実行できることに注意してください。論理バックアップには、ログと設定ファイルが含まれません。
物理バックアップ は、コンテンツを格納するファイルおよびディレクトリーのコピーで設定されます。
物理バックアップは、論理バックアップと比較して、以下の利点があります。
- 出力が少なくなる。
- バックアップのサイズが小さくなる。
- バックアップおよび復元が速くなる。
- バックアップには、ログファイルと設定ファイルが含まれる。
mysqld.service
が実行されていない場合、またはバックアップ中の変更を防ぐためにデータベース内のすべてのテーブルがロックされている場合は、物理バックアップを実行する必要があることに注意してください。
以下の MySQL バックアップアプローチのいずれかを使用して、MySQL データベースからデータをバックアップできます。
-
mysqldump
を使用した論理バックアップ - ファイルシステムのバックアップ
- バックアップソリューションとしてレプリケーションを使用
7.3.5.1. mysqldump を使用した論理バックアップの実行
mysqldump クライアントはバックアップユーティリティーで、バックアップ目的でデータベースまたはデータベースの集合をダンプしたり、別のデータベースサーバーに転送したりできます。通常、mysqldump の出力は、サーバーテーブル構造を再作成する、それにデータを取り込む、またはその両方の SQL ステートメントで設定されます。mysqldump は、XML および (CSV などの) コンマ区切りテキスト形式など、他の形式でファイルを生成することもできます。
mysqldump バックアップを実行するには、以下のいずれかのオプションを使用できます。
- 選択したデータベースを 1 つまたは複数バックアップ
- すべてのデータベースをバックアップする。
- あるデータベースのテーブルのサブセットのバックアップを作成する。
手順
単一のデータベースをダンプするには、以下を実行します。
# mysqldump [options] --databases db_name > backup-file.sql
複数のデータベースを一度にダンプするには、次のコマンドを実行します。
# mysqldump [options] --databases db_name1 [db_name2 ...] > backup-file.sql
すべてのデータベースをダンプするには、以下を実行します。
# mysqldump [options] --all-databases > backup-file.sql
1 つ以上のダンプされたフルデータベースをサーバーにロードし直すには、以下を実行します。
# mysql < backup-file.sql
データベースをリモート MySQL サーバーにロードするには、以下を実行します。
# mysql --host=remote_host < backup-file.sql
あるデータベースでリテラルなテーブルのサブセットをダンプするには、
mysqldump
コマンドの末尾に、選択したテーブルのリストを追加します。# mysqldump [options] db_name [tbl_name ...] > backup-file.sql
1 つのデータベースからダンプされたリテラルなテーブルのサブセットをロードするには、次のコマンドを実行します。
# mysql db_name < backup-file.sql
注記この時点で、db_name データベースが存在している必要があります。
mysqldump がサポートするオプションのリストを表示するには、以下を実行します。
$ mysqldump --help
7.3.5.2. ファイルシステムのバックアップの実行
MySQL データファイルのファイルシステムバックアップを作成するには、MySQL データディレクトリーの内容をバックアップ場所にコピーします。
現在の設定またはログファイルのバックアップも作成するには、以下の手順の中から任意の手順を選択します。
手順
mysqld
サービスを停止します。# systemctl stop mysqld.service
データファイルを必要な場所にコピーします。
# cp -r /var/lib/mysql /backup-location
必要に応じて、設定ファイルを必要な場所にコピーします。
# cp -r /etc/my.cnf /etc/my.cnf.d /backup-location/configuration
必要に応じて、ログファイルを必要な場所にコピーします。
# cp /var/log/mysql/* /backup-location/logs
mysqld
サービスを開始します。# systemctl start mysqld.service
バックアップされたデータをバックアップ場所から
/var/lib/mysql
ディレクトリーに読み込む際は、mysql:mysql
が/var/lib/mysql
内のすべてのデータの所有者であることを確認してください。# chown -R mysql:mysql /var/lib/mysql
7.3.5.3. バックアップソリューションとしてレプリケーションを使用
レプリケーションは、ソースサーバー用の代替バックアップソリューションです。ソースサーバーの複製となるレプリカサーバーを作成すると、ソースに影響を与えずにレプリカでバックアップを実行できます。ソースは、レプリカをシャットダウンする間に依然として実行でき、レプリカからデータのバックアップを作成できます。
MySQLデータベースを複製する方法の手順については、MySQL の複製 を参照してください。
レプリケーション自体は、バックアップソリューションとしては十分ではありません。レプリケーションは、ハードウェア障害からソースサーバーを保護しますが、データ損失に対する保護は保証していません。この方法とともに、レプリカでその他のバックアップソリューションを使用することが推奨されます。
7.3.6. MySQL 8.0 の RHEL 8 バージョンへの移行
RHEL 7 には、MySQL データベースファミリーからのサーバーのデフォルトの実装として、MariaDB 5.5 が同梱されています。RHEL 7 用の Red Hat Software Collections オファリングは、MySQL 8.0 と MariaDB のいくつかのバージョンを提供します。RHEL 8 は、MySQL 8.0、MariaDB 10.3、および MariaDB 10.5 を提供します。
この手順では、mysql_upgrade
ユーティリティーを使用した MySQL 8.0 の Red Hat Software Collections バージョンから MySQL 8.0 の RHEL8 バージョンへの移行について説明します。mysql_upgrade
ユーティリティーは、mysql-server
パッケージによって提供されます。
MySQLの Red Hat Software Collections バージョンでは、ソースデータディレクトリーは /var/opt/rh/rh-mysql80/lib/mysql/
です。RHEL 8 では、MySQL データは /var/lib/mysql/
ディレクトリーに保存されます。
前提条件
- アップグレードを実行する前に、MySQL データベースに保存されているすべてのデータをバックアップすること。
手順
mysql-server
パッケージが RHEL 8 システムにインストールされていることを確認します。# yum install mysql-server
データのコピー時に、
mysqld
サービスがソースシステムとターゲットシステムのどちらでも実行されていないことを確認してください。# systemctl stop mysqld.service
-
RHEL 7 ソースシステムの
/var/opt/rh/rh-mysql80/lib/mysql/
ディレクトリーから RHEL 8 ターゲットシステムの/var/lib/mysql/
ディレクトリーにデータをコピーします。 ターゲットシステムでコピーされたファイルに適切なパーミッションと SELinux コンテキストを設定します。
# restorecon -vr /var/lib/mysql
mysql:mysql
が、/var/lib/mysql
ディレクトリー内のすべてのデータの所有者であることを確認してください。# chown -R mysql:mysql /var/lib/mysql
ターゲットシステムで MySQL サーバーを起動します。
# systemctl start mysqld.service
注意: MySQL の以前のバージョンでは、内部テーブルをチェックおよび修復するために
mysql_upgrade
コマンドが必要でした。これは、サーバーの起動時に自動的に実行されるようになりました。
7.3.7. MySQL の複製
MySQL には、基本的なものから高度なものまで、レプリケーション用のさまざまな設定オプションが用意されています。このセクションでは、グローバルトランザクション識別子 (GTID) を使用して、新しくインストールした MySQL サーバーに MySQL でレプリケートするトランザクションベースの方法について説明します。GTID を使用すると、トランザクションの識別と整合性の検証が簡素化されます。
MySQL でレプリケーションを設定するには、以下を行う必要があります。
レプリケーションに既存の MySQL サーバーを使用する場合は、最初にデータを同期する必要があります。詳細は、アップストリームのドキュメント を参照してください。
7.3.7.1. MySQL ソースサーバーの設定
MySQL ソースサーバーがデータベースサーバーで行われたすべての変更を適切に実行および複製するために必要な設定オプションを設定できます。
前提条件
- ソースサーバーがインストールされている。
手順
[mysqld]
セクションの/etc/my.cnf.d/mysql-server.cnf
ファイルに以下のオプションを含めます。bind-address=source_ip_adress
このオプションは、レプリカからソースへの接続に必要です。
server-id=id
id は一意である必要があります。
log_bin=path_to_source_server_log
このオプションは、MySQL ソースサーバーのバイナリーログファイルへのパスを定義します。例:
log_bin=/var/log/mysql/mysql-bin.log
gtid_mode=ON
このオプションは、サーバー上でグローバルトランザクション識別子 (GTID) を有効にします。
enforce-gtid-consistency=ON
サーバーは、GTID を使用して安全にログに記録できるステートメントのみの実行を許可することにより、GTID の整合性を強化します。
オプション:
binlog_do_db=db_name
選択したデータベースのみを複製する場合は、このオプションを使用します。選択した複数のデータベースを複製するには、各データベースを個別に指定します。
binlog_do_db=db_name1 binlog_do_db=db_name2 binlog_do_db=db_name3
オプション:
binlog_ignore_db=db_name
このオプションを使用して、特定のデータベースをレプリケーションから除外します。
mysqld
サービスを再起動します。# systemctl restart mysqld.service
7.3.7.2. MySQL レプリカサーバーの設定
レプリケーションを成功させるために MySQL レプリカサーバーに必要な設定オプションを設定できます。
前提条件
- レプリカサーバーがインストールされている。
手順
[mysqld]
セクションの/etc/my.cnf.d/mysql-server.cnf
ファイルに以下のオプションを含めます。server-id=id
id は一意である必要があります。
relay-log=path_to_replica_server_log
リレーログは、レプリケーション中に MySQL レプリカサーバーによって作成されたログファイルのセットです。
log_bin=path_to_replica_sever_log
このオプションは、MySQL レプリカサーバーのバイナリーログファイルへのパスを定義します。例:
log_bin=/var/log/mysql/mysql-bin.log
このオプションはレプリカでは必須ではありませんが、強く推奨します。
gtid_mode=ON
このオプションは、サーバー上でグローバルトランザクション識別子 (GTID) を有効にします。
enforce-gtid-consistency=ON
サーバーは、GTID を使用して安全にログに記録できるステートメントのみの実行を許可することにより、GTID の整合性を強化します。
log-replica-updates=ON
このオプションにより、ソースサーバーから受信した更新がレプリカのバイナリーログに記録されます。
skip-replica-start=ON
このオプションは、レプリカサーバーの起動時に、レプリカサーバーがレプリケーションスレッドを開始しないようにします。
オプション:
binlog_do_db=db_name
特定のデータベースのみを複製する場合は、このオプションを使用します。複数のデータベースを複製するには、各データベースを個別に指定します。
binlog_do_db=db_name1 binlog_do_db=db_name2 binlog_do_db=db_name3
オプション:
binlog_ignore_db=db_name
このオプションを使用して、特定のデータベースをレプリケーションから除外します。
mysqld
サービスを再起動します。# systemctl restart mysqld.service
7.3.7.3. MySQL ソースサーバーでのレプリケーションユーザーの作成
レプリケーションユーザーを作成し、このユーザーにレプリケーショントラフィックに必要なパーミッションを付与する必要があります。この手順は、適切なパーミッションを持つレプリケーションユーザーを作成する方法を示しています。これらの手順は、ソースサーバーでのみ実行してください。
前提条件
- ソースサーバーは、MySQL ソースサーバーの設定 で説明されているように、インストールおよび設定されている。
手順
レプリケーションユーザーを作成します。
mysql> CREATE USER 'replication_user'@'replica_server_ip' IDENTIFIED WITH mysql_native_password BY 'password';
ユーザーにレプリケーション権限を付与します。
mysql> GRANT REPLICATION SLAVE ON *.* TO 'replication_user'@'replica_server_ip';
MySQL データベースの付与テーブルを再読み込みします。
mysql> FLUSH PRIVILEGES;
ソースサーバーを読み取り専用状態に設定します。
mysql> SET @@GLOBAL.read_only = ON;
7.3.7.4. レプリカサーバーをソースサーバーに接続する
MySQL レプリカサーバーでは、認証情報とソースサーバーのアドレスを設定する必要があります。次の手順を使用して、レプリカサーバーを実装します。
前提条件
- ソースサーバーは、MySQL ソースサーバーの設定 で説明されているように、インストールおよび設定されている。
- レプリカサーバーは、MySQL レプリカサーバーの設定 で説明されているように、インストールおよび設定されている。
- レプリケーションユーザーを作成している。MySQL ソースサーバーでのレプリケーションユーザーの作成 を参照してください。
手順
レプリカサーバーを読み取り専用状態に設定します。
mysql> SET @@GLOBAL.read_only = ON;
レプリケーションソースを設定します。
mysql> CHANGE REPLICATION SOURCE TO -> SOURCE_HOST='source_ip_address', -> SOURCE_USER='replication_user', -> SOURCE_PASSWORD='password', -> SOURCE_AUTO_POSITION=1;
MySQL レプリカサーバーでレプリカスレッドを開始します。
mysql> START REPLICA;
ソースサーバーとレプリカサーバーの両方で、読み取り専用状態の設定を解除します。
mysql> SET @@GLOBAL.read_only = OFF;
オプション: デバッグの目的で、レプリカサーバーのステータスを検査します。
mysql> SHOW REPLICA STATUS\G;
注記レプリカサーバーの起動または接続に失敗した場合は、
SHOW MASTER STATUS
コマンドの出力に表示されるバイナリーログファイルの位置に続く特定の数のイベントをスキップできます。たとえば、定義された位置から最初のイベントをスキップします。mysql> SET GLOBAL SQL_SLAVE_SKIP_COUNTER=1;
レプリカサーバーを再起動してみてください。
オプション: レプリカサーバーでレプリカスレッドを停止します。
mysql> STOP REPLICA;
7.3.7.5. 検証手順
ソースサーバーにサンプルデータベースを作成します。
mysql> CREATE DATABASE test_db_name;
-
test_db_name
データベースが、レプリカサーバーで複製されていることを確認します。 ソースサーバーまたはレプリカサーバーのいずれかで以下のコマンドを実行して、MySQL サーバーのバイナリーログファイルに関するステータス情報を表示します。
mysql> SHOW MASTER STATUS;
ソースで実行されたトランザクションの GTID のセットを示す
Executed_Gtid_Set
列は、空であってはなりません。注記レプリカサーバーで
SHOW SLAVE STATUS
を使用すると、同じ GTID のセットがExecuted_Gtid_Set
行に表示されます。
7.3.7.6. 関連情報
7.3.8. MySQL クライアントアプリケーションの開発
Red Hat では、MySQL クライアントアプリケーションを MariaDB クライアントライブラリーに対して開発することを推奨します。クライアントとサーバー間の通信プロトコルは、MariaDB と MySQL の間で互換性があります。MariaDB クライアントライブラリーは、MySQL 実装に固有の限られた数の機能を除き、ほとんどの一般的な MySQL シナリオで動作します。
MariaDB クライアントライブラリーに対してアプリケーションを構築するために必要な開発ファイルとプログラムは、mariadb-connector-c-devel
パッケージによって提供されます。
直接ライブラリー名を使用する代わりに、mariadb-connector-c-devel
パッケージで配布されている mariadb_config
プログラムを使用します。このプログラムは、正しいビルドフラグが返されることを保証します。
7.4. PostgreSQL の使用
PostgreSQL サーバーは、SQL 言語をベースにした、オープンソースの堅牢かつ拡張性に優れたデータベースサーバーです。PostgreSQL サーバーは、オブジェクトリレーショナルデータベースシステムを提供します。これにより、広範なデータセットと多数の同時ユーザーを管理できます。このような理由から、PostgreSQL サーバーは、大量のデータを管理するためにクラスターで使用できます。
PostgreSQL サーバーには、データの整合性の確保、耐障害性のある環境やアプリケーションの構築を行うための機能が含まれます。PostgreSQL サーバーを使用すると、データベースを再コンパイルすることなく、独自のデータ型、カスタム関数、またはさまざまなプログラミング言語のコードでデータベースを拡張できます。
RHEL システムに PostgreSQL をインストールして設定する方法、PostgreSQL データをバックアップする方法、および PostgreSQL の以前のバージョンから移行する方法について説明します。
7.4.1. PostgreSQL のインストール
RHEL 8 では、PostgreSQL サーバーは複数のバージョンで利用でき、各バージョンは個別のストリームで提供されます。
- PostgreSQL 10 - デフォルトのストリーム
- PostgreSQL 9.6
- PostgreSQL 12 - RHEL 8.1.1 以降で利用できます。
- PostgreSQL 13 - RHEL 8.4 以降で利用できます。
- PostgreSQL 15 - RHEL 8.8 以降で利用できます。
設計上、同じモジュールの複数のバージョン (ストリーム) を並行してインストールすることはできません。したがって、postgresql
モジュールから利用可能なストリームのいずれかを選択する必要があります。RHEL 7 用の Red Hat Software Collections では、コンポーネントの同時インストールが可能です。RHEL 8 では、コンテナー内で異なるバージョンのデータベースサーバーを使用できます。
PostgreSQL をインストールするには、以下の手順に従います。
手順
postgresql
モジュールからストリーム (バージョン) を選択し、サーバープロファイルを指定して PostgreSQL サーバーパッケージをインストールします。以下に例を示します。# yum module install postgresql:15/server
postgres
のスーパーユーザーが自動的に作成されます。データベースクラスターを初期化します。
# postgresql-setup --initdb
Red Hat は、デフォルトの
/var/lib/pgsql/data
ディレクトリーにデータを保存することを推奨します。postgresql
サービスを開始します。# systemctl start postgresql.service
postgresql
サービスが、システムの起動時に起動するようにします。# systemctl enable postgresql.service
モジュールストリームの使用方法は、ユーザー空間コンポーネントのインストール、管理、および削除 を参照してください。
RHEL 8 内の以前の postgresql
ストリームからアップグレードする場合は、後続のストリームへの切り替え および 「RHEL 8 バージョンの PostgreSQL への移行」 に記載されている両手順を実行します。
7.4.2. PostgreSQL ユーザーの作成
PostgreSQL ユーザーは以下のタイプのものです。
-
postgres
UNIX システムユーザー: PostgreSQL サーバーおよびクライアントアプリケーション (pg_dump
など) を実行する場合にのみ使用してください。データベース作成およびユーザー管理などの、PostgreSQL 管理上の対話的な作業には、postgres
システムユーザーを使用しないでください。 -
データベースのスーパーユーザー: デフォルトの
postgres
PostgreSQL スーパーユーザーは、postgres
システムユーザーとは関係ありません。pg_hba.conf
ファイルのpostgres
のスーパーユーザーのアクセスを制限することができます。制限しない場合には、その他のパーミッションの制限はありません。他のデータベースのスーパーユーザーを作成することもできます。 特定のデータベースアクセスパーミッションを持つロール:
- データベースユーザー: デフォルトでログインするパーミッションがある。
- ユーザーのグループ: グループ全体のパーミッションを管理できるようにします。
ロールはデータベースオブジェクト (テーブルや関数など) を所有することができ、SQL コマンドを使用してオブジェクト権限を他のロールに割り当てることができます。
標準のデータベース管理権限には SELECT
、INSERT
、UPDATE
、DELETE
、TRUNCATE
、REFERENCES
、TRIGGER
、CREATE
、CONNECT
、TEMPORARY
、EXECUTE
、および USAGE
が含まれます。
ロール属性は、LOGIN
、SUPERUSER
、CREATEDB
、および CREATEROLE
などの特別な権限です。
Red Hat は、スーパーユーザーではないロールとしてほとんどのタスクを実行することを推奨します。一般的な方法として、CREATEDB
および CREATEROLE
の権限を持つロールを作成し、このロールをデータベースおよびロールのすべてのルーチン管理に使用します。
前提条件
- PostgreSQL サーバーがインストールされている
- データベースクラスターが初期化されている
手順
ユーザーを作成するには、ユーザーのパスワードを設定し、ユーザーに
CREATEROLE
およびCREATEDB
の権限を割り当てます。postgres=# CREATE USER mydbuser WITH PASSWORD 'mypasswd' CREATEROLE CREATEDB;
mydbuser をユーザー名に、mypasswd をユーザーのパスワードに置き換えます。
例7.1 PostgreSQL データベースの初期化、作成、接続
この例では、PostgreSQL データベースを初期化方法、日常的なデータベース管理権限を持つデータベースユーザーの作成方法、および管理権限を持つデータベースユーザーを介して任意のシステムアカウントからアクセスできるデータベースの作成方法を示します。
PosgreSQL サーバーをインストールします。
# yum module install postgresql:13/server
データベースクラスターを初期化します。
# postgresql-setup --initdb * Initializing database in '/var/lib/pgsql/data' * Initialized, logs are in /var/lib/pgsql/initdb_postgresql.log
パスワードハッシュアルゴリズムを
scram-sha-256
に設定します。/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルで、次の行を変更します。#password_encryption = md5 # md5 or scram-sha-256
更新後は次のようになります。
password_encryption = scram-sha-256
/var/lib/pgsql/data/pg_hba.conf
ファイルで、IPv4 ローカル接続用に次の行を変更します。host all all 127.0.0.1/32 ident
更新後は次のようになります。
host all all 127.0.0.1/32 scram-sha-256
postgresql サービスを起動します。
# systemctl start postgresql.service
postgres
という名前のシステムユーザーとしてログインします。# su - postgres
PostgreSQL インタラクティブターミナルを起動します。
$ psql psql (13.7) Type "help" for help. postgres=#
オプション: 現在のデータベース接続に関する情報を取得します。
postgres=# \conninfo You are connected to database "postgres" as user "postgres" via socket in "/var/run/postgresql" at port "5432".
mydbuser
という名前のユーザーを作成し、mydbuser
のパスワードを設定して、CREATEROLE
およびCREATEDB
の権限をmydbuser
に割り当てます。postgres=# CREATE USER mydbuser WITH PASSWORD 'mypasswd' CREATEROLE CREATEDB; CREATE ROLE
これで、
mydbuser
ユーザーは、日常的なデータベース管理操作 (データベースの作成とユーザーインデックスの管理) を実行できるようになりました。\q
メタコマンドを使用して、インタラクティブターミナルからログアウトします。postgres=# \q
postgres
ユーザーセッションからログアウトします。$ logout
mydbuser
として PostgreSQL ターミナルにログインし、ホスト名を指定して、初期化中に作成されたデフォルトのpostgres
データベースに接続します。# psql -U mydbuser -h 127.0.0.1 -d postgres Password for user mydbuser: Type the password. psql (13.7) Type "help" for help. postgres=>
mydatabase
という名前のデータベースを作成します。postgres=> CREATE DATABASE mydatabase; CREATE DATABASE postgres=>
セッションからログアウトします。
postgres=# \q
mydbuser
として mydatabase に接続します。# psql -U mydbuser -h 127.0.0.1 -d mydatabase Password for user mydbuser: psql (13.7) Type "help" for help. mydatabase=>
オプション: 現在のデータベース接続に関する情報を取得します。
mydatabase=> \conninfo You are connected to database "mydatabase" as user "mydbuser" on host "127.0.0.1" at port "5432".
7.4.3. PostgreSQL の設定
PostgreSQL データベースでは、データおよび設定ファイルはすべて、データベースクラスターと呼ばれる 1 つのディレクトリーに保存されます。Red Hat は、設定ファイルを含むすべてのデータをデフォルトの /var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーに保存することを推奨しています。
PostgreSQL 設定は、以下のファイルで設定されます。
-
postgresql.conf
: データベースのクラスターパラメーターの設定に使用されます。 -
postgresql.auto.conf
:postgresql.conf
と同様の基本的な PostgreSQL 設定を保持します。ただし、このファイルはサーバーの制御下にあります。これは、ALTER SYSTEM
クエリーにより編集され、手動で編集することはできません。 -
pg_ident.conf
: 外部認証メカニズムから PostgreSQL ユーザー ID へのユーザー ID のマッピングに使用されます。 -
pg_hba.conf
: PostgreSQL データベースのクライアント認証の設定に使用されます。
PostgreSQL 設定を変更するには、以下の手順に従います。
手順
-
各設定ファイル (例:
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
) を編集します。 postgresql
サービスを再起動して、変更を有効にします。# systemctl restart postgresql.service
例7.2 PostgreSQL データベースクラスターパラメーターの設定
以下の例では、/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルのデータベースクラスターパラメーターの基本設定を示しています。
# This is a comment log_connections = yes log_destination = 'syslog' search_path = '"$user", public' shared_buffers = 128MB password_encryption = scram-sha-256
例7.3 PostgreSQL でのクライアント認証の設定
以下の例では、/var/lib/pgsql/data/pg_hba.conf
ファイルでクライアント認証を設定する方法を説明します。
# TYPE DATABASE USER ADDRESS METHOD local all all trust host postgres all 192.168.93.0/24 ident host all all .example.com scram-sha-256
7.4.4. PostgreSQL サーバーにおける TLS 暗号化の設定
デフォルトでは、PostgreSQL は暗号化されていない接続を使用します。よりセキュアな接続のために、PostgreSQL サーバーで Transport Layer Security (TLS) サポートを有効にし、暗号化された接続を確立するようにクライアントを設定できます。
前提条件
- PostgreSQL サーバーがインストールされている
- データベースクラスターが初期化されている
手順
OpenSSL ライブラリーをインストールします。
# yum install openssl
TLS 証明書とキーを生成します。
# openssl req -new -x509 -days 365 -nodes -text -out server.crt \ -keyout server.key -subj "/CN=dbhost.yourdomain.com"
dbhost.yourdomain.com を データベースのホストとドメイン名に置き換えます。
署名済み証明書と秘密鍵をデータベースサーバー上の必要なロケーションにコピーします。
# cp server.{key,crt} /var/lib/pgsql/data/.
署名付き証明書と秘密鍵の所有者とグループの所有権を
postgres
ユーザーに変更します。# chown postgres:postgres /var/lib/pgsql/data/server.{key,crt}
所有者だけが読み取れるように、秘密鍵の権限を制限します。
# chmod 0400 /var/lib/pgsql/data/server.key
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルの次の行を変更して、パスワードハッシュアルゴリズムをscram-sha-256
に設定します。#password_encryption = md5 # md5 or scram-sha-256
更新後は次のようになります。
password_encryption = scram-sha-256
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルの次の行を変更して、SSL/TLS を使用するように PostgreSQL を設定します。#ssl = off
更新後は次のようになります。
ssl=on
/var/lib/pgsql/data/pg_hba.conf
ファイルの IPv4 ローカル接続で次の行を変更して、TLS を使用するクライアントからの接続のみを受け入れるように、すべてのデータベースへのアクセスを制限します。host all all 127.0.0.1/32 ident
更新後は次のようになります。
hostssl all all 127.0.0.1/32 scram-sha-256
または、次の行を新たに追加して、単一のデータベースとユーザーのアクセスを制限できます。
hostssl mydatabase mydbuser 127.0.0.1/32 scram-sha-256
mydatabase をデータベース名に、mydbuser をユーザー名に置き換えます。
postgresql
サービスを再起動して、変更を有効にします。# systemctl restart postgresql.service
検証
接続が暗号化されていることを手動で確認するには、以下を行います。
mydbuser ユーザーとして PostgreSQL データベースに接続し、ホスト名とデータベース名を指定します。
$ psql -U mydbuser -h 127.0.0.1 -d mydatabase Password for user mydbuser:
mydatabase をデータベース名に、mydbuser をユーザー名に置き換えます。
現在のデータベース接続に関する情報を取得します。
mydbuser=> \conninfo You are connected to database "mydatabase" as user "mydbuser" on host "127.0.0.1" at port "5432". SSL connection (protocol: TLSv1.3, cipher: TLS_AES_256_GCM_SHA384, bits: 256, compression: off)
PostgreSQL への接続が暗号化されているかどうかを検証する簡単なアプリケーションを作成できます。この例は、
libpq-devel
パッケージで提供されるlibpq
クライアントライブラリーを使用する C で記述されたアプリケーションを示しています。#include <stdio.h> #include <stdlib.h> #include <libpq-fe.h> int main(int argc, char* argv[]) { //Create connection PGconn* connection = PQconnectdb("hostaddr=127.0.0.1 password=mypassword port=5432 dbname=mydatabase user=mydbuser"); if (PQstatus(connection) ==CONNECTION_BAD) { printf("Connection error\n"); PQfinish(connection); return -1; //Execution of the program will stop here } printf("Connection ok\n"); //Verify TLS if (PQsslInUse(connection)){ printf("TLS in use\n"); printf("%s\n", PQsslAttribute(connection,"protocol")); } //End connection PQfinish(connection); printf("Disconnected\n"); return 0; }
mypassword をパスワードに、mydatabase をデータベース名に、myduser をユーザー名に置き換えます。
注記-lpq
オプションを使用して、コンパイルのためにpq
ライブラリーをロードする必要があります。たとえば、GCC コンパイラーを使用してアプリケーションをコンパイルするには、次のようにします。$ gcc source_file.c -lpq -o myapplication
この source_file.c には上記のサンプルコードが含まれており、myapplication はセキュアな PostgreSQL 接続を検証するためのアプリケーションの名前です。
例7.4 TLS 暗号化を使用した PostgreSQL データベースの初期化、作成、接続
この例では、PostgreSQL データベースの初期化方法、データベースユーザーとデータベースの作成方法、セキュアな接続を使用したデータベースへの接続方法を示します。
PosgreSQL サーバーをインストールします。
# yum module install postgresql:13/server
データベースクラスターを初期化します。
# postgresql-setup --initdb * Initializing database in '/var/lib/pgsql/data' * Initialized, logs are in /var/lib/pgsql/initdb_postgresql.log
OpenSSL ライブラリーをインストールします。
# yum install openssl
TLS 証明書とキーを生成します。
# openssl req -new -x509 -days 365 -nodes -text -out server.crt \ -keyout server.key -subj "/CN=dbhost.yourdomain.com"
dbhost.yourdomain.com を データベースのホストとドメイン名に置き換えます。
署名済み証明書と秘密鍵をデータベースサーバー上の必要なロケーションにコピーします。
# cp server.{key,crt} /var/lib/pgsql/data/.
署名付き証明書と秘密鍵の所有者とグループの所有権を
postgres
ユーザーに変更します。# chown postgres:postgres /var/lib/pgsql/data/server.{key,crt}
所有者だけが読み取れるように、秘密鍵の権限を制限します。
# chmod 0400 /var/lib/pgsql/data/server.key
パスワードハッシュアルゴリズムを
scram-sha-256
に設定します。/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルで、次の行を変更します。#password_encryption = md5 # md5 or scram-sha-256
更新後は次のようになります。
password_encryption = scram-sha-256
SSL/TLS を使用するように PostgreSQL を設定します。
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルで、次の行を変更します。#ssl = off
更新後は次のようになります。
ssl=on
postgresql
サービスを開始します。# systemctl start postgresql.service
postgres
という名前のシステムユーザーとしてログインします。# su - postgres
postgres
ユーザーとして PostgreSQL インタラクティブターミナルを起動します。$ psql -U postgres psql (13.7) Type "help" for help. postgres=#
mydbuser
という名前のユーザーを作成し、mydbuser
のパスワードを設定します。postgres=# CREATE USER mydbuser WITH PASSWORD 'mypasswd'; CREATE ROLE postgres=#
mydatabase
という名前のデータベースを作成します。postgres=# CREATE DATABASE mydatabase; CREATE DATABASE postgres=#
すべての権限を
mydbuser
ユーザーに付与します。postgres=# GRANT ALL PRIVILEGES ON DATABASE mydatabase TO mydbuser; GRANT postgres=#
インタラクティブターミナルからログアウトします。
postgres=# \q
postgres
ユーザーセッションからログアウトします。$ logout
/var/lib/pgsql/data/pg_hba.conf
ファイルの IPv4 ローカル接続で次の行を変更して、TLS を使用するクライアントからの接続のみを受け入れるように、すべてのデータベースへのアクセスを制限します。host all all 127.0.0.1/32 ident
更新後は次のようになります。
hostssl all all 127.0.0.1/32 scram-sha-256
postgresql
サービスを再起動して、変更を有効にします。# systemctl restart postgresql.service
mydbuser
ユーザーとして PostgreSQL データベースに接続し、ホスト名とデータベース名を指定します。$ psql -U mydbuser -h 127.0.0.1 -d mydatabase Password for user mydbuser: psql (13.7) SSL connection (protocol: TLSv1.3, cipher: TLS_AES_256_GCM_SHA384, bits: 256, compression: off) Type "help" for help. mydatabase=>
7.4.5. PostgreSQL データのバックアップ
PostgreSQL データをバックアップするには、以下のいずれかの方法を使用します。
- SQL ダンプ
- Backing up with SQL dump を参照してください。
- ファイルシステムレベルのバックアップ
- File system level backup を参照してください。
- 継続的アーカイブ
- 継続的アーカイブ を参照してください。
7.4.5.1. SQL ダンプを使用した PostgreSQL データのバックアップ
SQL ダンプのメソッドは、SQL コマンドを使用したダンプファイルの生成に基づいています。ダンプがデータベースサーバーにアップロードされると、ダンプ時と同じ状態でデータベースが再作成されます。
SQL ダンプは、以下の PostgreSQL クライアントアプリケーションによって保証されます。
- pg_dump は、ロールまたはテーブル空間に関するクラスター全体の情報なしに単一のデータベースをダンプします。
- pg_dumpall は、指定のクラスターに各データベースをダンプし、ロールやテーブル空間定義などのクラスター全体のデータを保持します。
デフォルトでは、pg_dump
コマンドおよび pg_dumpall
コマンドは、結果を標準出力に書き込みます。ダンプをファイルに保存するには、出力を SQL ファイルにリダイレクトします。作成される SQL ファイルは、テキスト形式またはその他の形式のいずれかになります。これにより並列処理が可能になり、オブジェクトの復元をより詳細に制御できます。
データベースにアクセスできる任意のリモートホストから、SQL ダンプを実行できます。
7.4.5.1.1. SQL ダンプの長所と短所
SQL ダンプには、他の PostgreSQL バックアップ方法と比較して、以下の長所があります。
- SQL ダンプは、サーバーのバージョン固有ではない唯一の PostgreSQL バックアップメソッドです。pg_dump ユーティリティーの出力は、PostgreSQL の後続のバージョンに再読み込みできます。これは、ファイルシステムレベルのバックアップ、または継続的なアーカイブにはできません。
- SQL ダンプは、32 ビットサーバーから 64 ビットサーバーへなど、異なるアーキテクチャーにデータベースを転送する際に有効な唯一の方法です。
- SQL ダンプは、内部的に一貫性のあるダンプを提供します。ダンプは、pg_dump の実行開始時のデータベースのスナップショットを表します。
- pg_dump ユーティリティーは、実行中のデータベースの他の操作をブロックしません。
SQL ダンプの短所は、ファイルシステムレベルのバックアップと比較して時間がかかることです。
7.4.5.1.2. pg_dump を使用した SQL ダンプの実行
クラスター全体の情報なしに単一のデータベースをダンプするには、pg_dump ユーティリティーを使用します。
前提条件
-
ダンプするすべてのテーブルへの読み取りアクセスが必要です。データベース全体をダンプするには、
postgres
のスーパーユーザーまたはデータベースの管理者権限を持つユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。
手順
クラスター全体の情報なしでデータベースをダンプします。
$ pg_dump dbname > dumpfile
pg_dump が接続するデータベースサーバーを指定するには、以下のコマンドラインオプションを使用します。
ホストを定義する
-h
オプションデフォルトのホストは、ローカルホストか、
PGHOST
環境変数で指定されているものです。ポートを定義する
-p
オプションデフォルトのポートは、
PGPORT
環境変数またはコンパイル済みデフォルトで示されます。
7.4.5.1.3. pg_dumpall を使用した SQL ダンプの実行
特定のデータベースクラスターで各データベースをダンプし、クラスター全体のデータを保持するには、pg_dumpall ユーティリティーを使用します。
前提条件
-
postgres
スーパーユーザーまたはデータベースの管理者権限を持つユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。
手順
データベースクラスターのすべてのデータベースをダンプし、クラスター全体のデータを保存します。
$ pg_dumpall > dumpfile
pg_dumpall が接続するデータベースサーバーを指定するには、以下のコマンドラインオプションを使用します。
ホストを定義する
-h
オプションデフォルトのホストは、ローカルホストか、
PGHOST
環境変数で指定されているものです。ポートを定義する
-p
オプションデフォルトのポートは、
PGPORT
環境変数またはコンパイル済みデフォルトで示されます。デフォルトのデータベースを定義する
-l
オプションこのオプションにより、初期化時に自動的に作成された
postgres
データベースとは異なるデフォルトのデータベースを選択できます。
7.4.5.1.4. pg_dump を使用したダンプされたデータベースの復元
pg_dump ユーティリティーを使用してダンプした SQL ダンプからデータベースを復元するには、以下の手順に従います。
前提条件
-
postgres
スーパーユーザーまたはデータベースの管理者権限を持つユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。
手順
新しいデータベースを作成します。
$ createdb dbname
- ダンプされたデータベースのオブジェクトを所有するか、オブジェクトに対する権限が許可されたユーザーがすべて存在していることを検証してください。このようなユーザーが存在しない場合、復元は元の所有権と権限でオブジェクトの再作成に失敗します。
psql ユーティリティーを実行して、pg_dump ユーティリティーが作成したテキストファイルのダンプを復元します。
$ psql dbname < dumpfile
ここでの
dumpfile
は、pg_dump
コマンドの出力になります。非テキストファイルのダンプを復元するには、代わりにpg_restore
ユーティリティーを使用します。$ pg_restore non-plain-text-file
7.4.5.1.5. pg_dumpall を使用したダンプされたデータベースの復元
pg_dumpall ユーティリティーを使用してダンプしたデータベースクラスターからデータを復元するには、以下の手順に従います。
前提条件
-
postgres
スーパーユーザーまたはデータベースの管理者権限を持つユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。
手順
- ダンプされたデータベースのオブジェクトを所有するか、オブジェクトに対する権限が許可されたユーザーがすべて、すでに存在していることを検証してください。このようなユーザーが存在しない場合、復元は元の所有権と権限でオブジェクトの再作成に失敗します。
psql ユーティリティーを実行して、pg_dumpall ユーティリティーにより作成されたテキストファイルのダンプを復元します。
$ psql < dumpfile
ここでの
dumpfile
は、pg_dumpall
コマンドの出力になります。
7.4.5.1.6. 別のサーバーでのデータベースの SQL ダンプの実行
pg_dump および psql はパイプに対する読み書きが可能であるため、あるサーバーから別のサーバーにデータベースを直接ダンプできます。
手順
データベースを、サーバーから別のサーバーにダンプするには、以下のコマンドを実行します。
$ pg_dump -h host1 dbname | psql -h host2 dbname
7.4.5.1.7. 復元中の SQL エラーの処理
デフォルトでは、SQL エラーが発生した場合、psql は実行を継続します。これにより、データベースの復元は一部のみとなります。
デフォルトの動作を変更するには、ダンプを復元する際に以下のいずれかの方法を使用します。
前提条件
-
postgres
スーパーユーザーまたはデータベースの管理者権限を持つユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。
手順
ON_ERROR_STOP
変数を設定して SQL エラーが発生した場合は、終了ステータスが 3 で psql を終了します。$ psql --set ON_ERROR_STOP=on dbname < dumpfile
ダンプ全体が単一のトランザクションとして復元されるように指定して、復元が完全に完了するかキャンセルされるようにします。
psql
ユーティリティーを使用してテキストファイルのダンプを復元する場合:$ psql -1
pg_restore
ユーティリティーを使用してテキストファイル以外のダンプを復元する場合:$ pg_restore -e
この方法を使用する場合は、多少のエラーでも、すでに何時間も実行している復元操作をキャンセルできます。
7.4.5.1.8. 関連情報
7.4.5.2. ファイルシステムレベルのバックアップを使用した PostgreSQL データのバックアップ
ファイルシステムレベルのバックアップを実行するには、PostgreSQL データベースファイルを別の場所に作成します。たとえば、以下のいずれかの方法を使用できます。
- tar ユーティリティーを使用してアーカイブファイルを作成します。
- rsync ユーティリティーを使用して、ファイルを別の場所にコピーします。
- データディレクトリーの一貫したスナップショットを作成します。
7.4.5.2.1. ファイルシステムのバックアップを作成する利点と制限
ファイルシステムレベルのバックアップは、他の PostgreSQL バックアップ方法と比較して、以下の長所があります。
- 通常、ファイルシステムレベルのバックアップは、SQL ダンプよりも高速です。
ファイルシステムレベルのバックアップは、他の PostgreSQL バックアップ方法と比較して、以下の制限があります。
- このバックアップメソッドは、RHEL 7 から RHEL 8 にアップグレードし、アップグレードしたシステムにデータを移行する場合には適していません。ファイルシステムレベルのバックアップは、アーキテクチャーと RHEL メジャーバージョンに固有のものです。アップグレードに成功しなかった場合は、RHEL 7 システムでデータを復元できますが、RHEL 8 システムではデータを復元できません。
- データをバックアップおよび復元する前に、データベースサーバーをシャットダウンする必要があります。
- 特定のファイルまたはテーブルを個々にバックアップまたは復元することはできません。ファイルシステムのバックアップは、データベースクラスター全体を完全にバックアップおよび復元する場合にのみ機能します。
7.4.5.2.2. ファイルシステムレベルのバックアップの実行
ファイルシステムレベルのバックアップを実行するには、次の手順を使用します。
手順
データベースクラスターの場所を選択し、このクラスターを初期化します。
# postgresql-setup --initdb
postgresql サービスを停止します。
# systemctl stop postgresql.service
任意のメソッドを使用してファイルシステムのバックアップを作成します (例:
tar
アーカイブ)。$ tar -cf backup.tar /var/lib/pgsql/data
postgresql サービスを起動します。
# systemctl start postgresql.service
7.4.5.3. 継続的にアーカイブして PostgreSQL データのバックアップを作成
7.4.5.3.1. 継続的なアーカイブの概要
PostgreSQL は、データベースのデータファイルに対するすべての変更を、クラスターのデータディレクトリーの pg_wal/
サブディレクトリーで利用可能なログ先行書き込み (WAL) ファイルに記録します。このログは、主にクラッシュからの復元を目的としています。クラッシュ後、最後のチェックポイント以降に作成されたログエントリーを使用して、データベースの整合性まで復元できます。
オンラインバックアップとも呼ばれる継続的なアーカイブメソッドは、WAL ファイルを、稼働中のサーバーまたはファイルシステムレベルのバックアップで実行されるベースバックアップの形式でデータベースクラスターのコピーと組み合わせます。
データベース復元が必要な場合は、データベースクラスターのコピーからデータベースを復元してから、バックアップを作成した WAL ファイルからログを再生して、システムを現在の状態にすることができます。
継続的なアーカイブメソッドでは、少なくとも最後のベースバックアップの開始時間までさかのぼって、アーカイブされたすべての WAL ファイルの連続したシーケンスを保持する必要があります。そのため、基本バックアップの理想的な頻度は、次の条件により異なります。
- アーカイブされた WAL ファイルで利用可能なストレージボリューム。
- 復元が必要な場合の、データ復元の最大許容期間。最後のバックアップからの期間が長い場合、システムはより多くの WAL セグメントを再生するため、回復に時間がかかります。
pg_dump および pg_dumpall SQL ダンプは、継続的にアーカイブするバックアップソリューションの一部として使用することができません。SQL ダンプは論理バックアップを生成しますが、WAL 再生で使用する上で十分な情報は含まれていません。
継続的なアーカイブメソッドを使用してデータベースのバックアップと復元を実行するには、以下の手順に従います。
データを復元するには、連続アーカイブを使用したデータベースの復元 の手順に従います。
7.4.5.3.2. 継続的なアーカイブの長所と短所
継続的なアーカイブは、PostgreSQL のその他のバックアップ方法と比較して、以下の利点があります。
- 継続的なバックアップメソッドでは、バックアップ内の内部不整合がログ再生により修正されるため、整合性が完全に取れないベースバックアップを使用することができます。したがって、実行中の PostgreSQL サーバーでベースバックアップを実行できます。
-
ファイルシステムのスナップショットは必要ありません。
tar
または同様のアーカイブユーティリティーで十分です。 - 継続的にバックアップを行うには、継続的に WAL ファイルをアーカイブします。これは、ログ再生用の WAL ファイルの順序が無限に長くなる可能性があるためです。これは、特に大規模なデータベースで有用です。
- 継続的バックアップは、特定の時点への復旧 (ポイントインタイムリカバリー) をサポートします。WAL エントリーを最後まで再生する必要はありません。再生はいつでも停止でき、ベースバックアップを作成してから、データベースをいつでもその状態に復元できます。
- 一連の WAL ファイルが同じベースのバックアップファイルで読み込まれた別のマシンが継続的に利用可能である場合は、任意の時点で、データベースで現在に一番近いコピーで、他のマシンを復元できます。
継続的なアーカイブには、その他の PostgreSQL バックアップ方法と比較して、以下の短所があります。
- 継続バックアップ方法は、サブセットではなく、データベースクラスター全体の復元のみをサポートします。
- 継続的にバックアップするには、大きなアーカイブストレージが必要です。
7.4.5.3.3. WAL アーカイブの設定
稼働中の PostgreSQL サーバーでは、ログ先行書き込み (WAL) レコードのシーケンスを生成します。サーバーは、このシーケンスを WAL セグメントファイルに物理的に分割します。このファイルには、WAL シーケンスの位置を反映する数値名が与えられます。WAL のアーカイブを使用しない場合は、セグメントファイルは再利用され、より大きなセグメント番号に名前が変更されます。
WAL データをアーカイブする場合、各セグメントファイルの内容がキャプチャーされ、新しい場所に保存されてから、セグメントファイルが再利用されます。別のマシン上の NFS マウントディレクトリー、テープドライブ、または CD など、コンテンツの保存場所には複数のオプションがあります。
WAL レコードには、設定ファイルへの変更が含まれていないことに注意してください。
WAL のアーカイブを有効にするには、以下の手順に従います。
手順
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
ファイルで以下を行います。-
wal_level
設定パラメーターをreplica
以降に設定します。 -
archive_mode
パラメーターをon
に設定します。 -
archive_command
設定パラメーターでシェルコマンドを指定します。cp
コマンド、別のコマンド、またはシェルスクリプトを使用できます。
-
postgresql
サービスを再起動して、変更を適用します。# systemctl restart postgresql.service
- アーカイブコマンドをテストして、既存のファイルを上書きせず、失敗するとゼロ以外の終了ステータスを返すことを確認します。
- データを保護するには、セグメントファイルがグループまたはワールド読み取りアクセスを持たないディレクトリーにアーカイブされていることを確認してください。
archive コマンドは、完了した WAL セグメントでのみ実行されます。WAL トラフィックをほとんど生成しないサーバーでは、トランザクションの完了とアーカイブストレージへの安全な記録の間にかなりの遅延が生じる可能性があります。アーカイブされていないデータの古さを制限するには、以下を行います。
-
archive_timeout
パラメーターを設定して、サーバーが特定の頻度で新しい WAL セグメントファイルに切り替えるように強制します。 -
pg_switch_wal
パラメーターを使用して、セグメント切り替えを強制し、トランザクションが終了後すぐにアーカイブされるようにします。
例7.5 WAL セグメントをアーカイブするためのシェルコマンド
この例は、archive_command
設定パラメーターに設定できる簡単なシェルコマンドを示しています。
以下のコマンドは、完了したセグメントファイルを必要な場所にコピーします。
archive_command = 'test ! -f /mnt/server/archivedir/%f && cp %p /mnt/server/archivedir/%f'
%p
パラメーターは、アーカイブするファイルの相対パスに置き換えられ、%f
パラメーターはファイル名に置き換えられます。
このコマンドは、アーカイブ可能な WAL セグメントを /mnt/server/archivedir/
ディレクトリーにコピーします。%p
パラメーターおよび %f
パラメーターを置き換えると、実行されたコマンドは以下のようになります。
test ! -f /mnt/server/archivedir/00000001000000A900000065 && cp pg_wal/00000001000000A900000065 /mnt/server/archivedir/00000001000000A900000065
アーカイブされる新規ファイルごとに同様のコマンドが生成されます。
関連情報
7.4.5.3.4. ベースバックアップの作成
ベースバックアップは、複数の方法で作成できます。ベースバックアップを実行する最も簡単な方法は、実行中の PostgreSQL サーバーで pg_basebackup ユーティリティーを使用することです。
ベースバックアッププロセスは、WAL アーカイブ領域に保存され、ベースバックアップに必要な最初の WAL セグメントファイルにちなんで名付けられたバックアップ履歴ファイルを作成します。
バックアップ履歴ファイルは、開始時間および終了時間、およびバックアップの WAL セグメントが含まれる小さなテキストファイルです。ラベル文字列を使用して関連するダンプファイルを特定した場合は、バックアップ履歴ファイルを使用して復元するダンプファイルを判断できます。
データを確実に復元できるようにするために、複数のバックアップセットを維持することを検討してください。
ベースバックアップを実行するには、以下の手順を行います。
前提条件
-
postgres
スーパーユーザー、データベースの管理者権限のあるユーザー、または少なくともREPLICATION
パーミッションを持つ別のユーザーとして、コマンドを実行する必要があります。 - ベースバックアップ中およびベースバックアップ後に生成されたすべての WAL セグメントファイルを保持する必要があります。
手順
pg_basebackup
ユーティリティーを使用してベースバックアップを実行します。個々のファイル (プレーン形式) としてベースバックアップを作成するには、以下を実行します。
$ pg_basebackup -D backup_directory -Fp
backup_directory を希望のバックアップの場所に置き換えます。
テーブル空間を使用し、サーバーと同じホストでベースバックアップを実行する場合は、
--tablespace-mapping
オプションも使用する必要があります。そうしないと、バックアップを同じ場所に書き込もうとすると、バックアップが失敗します。tar
アーカイブ (tar
および圧縮形式) としてベースバックアップを作成するには、以下を実行します。$ pg_basebackup -D backup_directory -Ft -z
backup_directory を希望のバックアップの場所に置き換えます。
このようなデータを復元するには、ファイルを正しい場所に手動で抽出する必要があります。
- ベースバックアッププロセスが完了すると、バックアップ履歴ファイルで指定されている、データベースクラスターのコピーとバックアップ中に使用された WAL セグメントファイルを安全にアーカイブします。
- ベースバックアップで使用されている WAL セグメントファイルよりも数値が小さい WAL セグメントを削除します。これらはベースバックアップよりも古く、復元には必要ないためです。
pg_basebackup が接続するデータベースサーバーを指定するには、以下のコマンドラインオプションを使用します。
ホストを定義する
-h
オプションデフォルトのホストは、ローカルホストまたは
PGHOST
環境変数により指定されたホストです。ポートを定義する
-p
オプションデフォルトのポートは、
PGPORT
環境変数またはコンパイル済みデフォルトで示されます。
7.4.5.3.5. 継続的なアーカイブバックアップを使用したデータベースの復元
継続バックアップを使用してデータベースを復元するには、以下の手順を行います。
手順
サーバーを停止します。
# systemctl stop postgresql.service
必要なデータを一時的な場所にコピーします。
必要に応じて、クラスターデータのディレクトリー全体と、すべてのテーブル空間をコピーします。既存データベースのコピーを 2 つ保持するには、システムに十分な空き領域が必要になることに注意してください。
十分な容量がない場合は、クラスターの
pg_wal
ディレクトリーの内容を保存します。これには、システムがダウンする前にアーカイブされなかったログが含まれます。- クラスターデータディレクトリー、および使用しているテーブル空間のルートディレクトリー下の既存ファイルおよびサブディレクトリーをすべて削除します。
ベースバックアップからデータベースファイルを復元します。
以下の点を確認してください。
-
ファイルは、正しい所有権 (
root
ではなくデータベースシステムのユーザー) で復元されます。 - ファイルは、正しい権限で復元されます。
-
pg_tblspc/
サブディレクトリーのシンボリックリンクが正しく復元されます。
-
ファイルは、正しい所有権 (
pg_wal/
サブディレクトリーにあるファイルをすべて削除します。このファイルは、ベースバックアップから作成されるため、非推奨になりました。
pg_wal/
をアーカイブしていない場合は、適切な権限で再作成します。-
手順 2 で保存したアーカイブされていない WAL セグメントファイルを
pg_wal/
にコピーします。 クラスターデータディレクトリーの
recovery.conf
リカバリーコマンドファイルを作成し、restore_command
設定パラメーターにシェルコマンドを指定します。cp
コマンド、別のコマンド、またはシェルスクリプトを使用できます。以下に例を示します。restore_command = 'cp /mnt/server/archivedir/%f "%p"'
サーバーを起動します。
# systemctl start postgresql.service
サーバーは復元モードに入り、引き続き必要なアーカイブファイル (WAL) を読み込みます。
外部エラーにより復元が終了した場合は、サーバーを再起動して復元を続行します。復元プロセスが完了すると、サーバーは
recovery.conf
の名前をrecovery. done
に変更します。これにより、サーバーが通常のデータベース操作を開始した後に、誤ってリカバリーモードに戻るのを防ぐことができます。データベースのコンテンツを確認して、データベースが必要な状態に復元されたことを検証します。
データベースが必要な状態に復元されていない場合は、手順 1 に戻ります。データベースが必要な状態に復元された場合は、
pg_hba.conf
ファイルでクライアント認証設定を復元して接続できるようにします。
継続バックアップを使用した復元の詳細は、PostgreSQL ドキュメント を参照してください。
7.4.5.3.6. 関連情報
7.4.6. RHEL 8 バージョンの PostgreSQL への移行
Red Hat Enterprise Linux 7 には、PostgreSQL 9.2 が、PostgreSQL サーバーのデフォルトバージョンとして含まれます。また、RHEL 7 の Software Collections として、複数の PostgreSQL のバージョンが提供されます。
Red Hat Enterprise Linux 8 は、PostgreSQL 10 (デフォルトの postgresql
ストリーム)、PostgreSQL 9.6、PostgreSQL 12、PostgreSQL 13、および PostgreSQL 15 を提供します。
Red Hat Enterprise Linux 上の PostgreSQL のユーザーは、データベースファイルの移行パスを使用できます。
高速アップグレードメソッドは、ダンプおよび復元のプロセスよりも速くなります。ただし、場合によっては高速アップグレードが機能せず、ダンプおよび復元プロセスしか使用できない場合があります。そのようなケースには、以下が含まれます。
- アーキテクチャー間のアップグレード
-
plpython
またはplpython2
拡張を使用するシステム。RHEL 8 AppStream リポジトリーにはpostgresql-plpython3
パッケージのみが含まれ、postgresql-plpython2
パッケージは含まれません。 - 高速アップグレードは、PostgreSQLの Red Hat Software Collections バージョンからの移行ではサポートされません。
新しいバージョンの PostgreSQL に移行するための前提条件として、すべての PostgreSQL データベースをバックアップします。
データベースをダンプし、SQL ファイルのバックアップを実行することは、ダンプおよび復元プロセスで必要であり、高速アップグレードメソッドとして推奨されます。
新しいバージョンの PostgreSQL に移行する前に、移行する PostgreSQL バージョンと、移行元と移行先のバージョンの間にあるすべて PostgreSQL バージョンの アップストリームの互換性ノート を参照してください。
7.4.6.1. PostgreSQL 13 と PostgreSQL 15 間の主な違い
PostgreSQL 15 では、以下の後方互換性のない変更が導入されました。
パブリックスキーマのデフォルトパーミッション
パブリックスキーマのデフォルトパーミッションは、PostgreSQL 15 で変更されています。新規に作成されたユーザーは、GRANT ALL ON SCHEMA public TO myuser;
コマンドを使用して、権限を明示的に付与する必要があります。
以下の例は、PostgreSQL 13 以前で動作します。
postgres=# CREATE USER mydbuser; postgres=# \c postgres mydbuser postgres=$ CREATE TABLE mytable (id int);
以下の例は PostgreSQL 15 で動作します。
postgres=# CREATE USER mydbuser; postgres=# GRANT ALL ON SCHEMA public TO mydbuser; postgres=# \c postgres mydbuser postgres=$ CREATE TABLE mytable (id int);
pg_hba.conf
ファイルで mydbuser
アクセスが適切に設定されていることを確認してください。詳細は、PostgreSQL ユーザーの作成 を参照してください。
PQsendQuery()
がパイプラインモードでサポートされなくなる
PostgreSQL 15 以降、libpq
PQsendQuery()
関数はパイプラインモードでサポートされなくなりました。影響を受けるアプリケーションを変更して、代わりに PQsendQueryParams()
関数を使用します。
7.4.6.2. pg_upgrade ユーティリティーを使用した高速アップグレード
高速アップグレードでは、バイナリーデータファイルを /var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーにコピーし、pg_upgrade
ユーティリティーを使用する必要があります。
この方法を使用すると、データを移行できます。
- RHEL 7 システムバージョンの PostgreSQL 9.2 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 10 へ
- RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 10 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 12 へ
- RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 12 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 13 へ
- RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 13 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL 15 へ
RHEL 8 内の以前の postgresql
ストリームからアップグレードする場合は 後続のストリームへの切り替え の説明に従い、PostgreSQL データを移行します。
RHEL 内の PostgreSQL バージョンの組み合わせと、Red Hat Software Collections バージョンの PostgreSQL から RHEL への移行には、アップグレードのダンプおよび復元 を使用します。
以下の手順では、高速アップグレードメソッドを使用して、RHEL 7 システムバージョンの PostgreSQL 9.2 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL へ移行する方法を説明します。
前提条件
-
アップグレードを実行する前に、PostgreSQL データベースに保存されているすべてのデータのバックアップを作成します。デフォルトでは、すべてのデータは、RHEL 7 および RHEL 8 システムの両方の
/var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーに保存されます。
手順
RHEL 8 システムで、移行するストリーム (バージョン) を有効にします。
# yum module enable postgresql:stream
stream は、選択した PostgreSQL サーバーのバージョンに置き換えます。
PostgreSQL 10 を提供するデフォルトストリームを使用する場合は、この手順を省略できます。
RHEL 8 システムで、
postgresql-server
パッケージおよびpostgresql-upgrade
パッケージをインストールします。# yum install postgresql-server postgresql-upgrade
必要に応じて、RHEL 7 で PostgreSQL サーバーモジュールを使用している場合は、その 2 つのバージョンを RHEL 8 システムにインストールし、PostgreSQL 9.2 (
postgresql-upgrade
パッケージでインストール) および対象バージョンの PostgreSQL (postgresql-server
パッケージでインストール) の両方に対してコンパイルします。サードパーティーの PostgreSQL サーバーモジュールをコンパイルする必要がある場合は、postgresql-devel
パッケージとpostgresql-upgrade-devel
パッケージの両方に対してビルドしてください。以下の項目を確認します。
-
基本設定 - RHEL 8 システムで、サーバーがデフォルトの
/var/lib/pgsql/data
ディレクトリーを使用し、データベースが正しく初期化され、有効になっているかどうかを確認します。さらに、データファイルは、/usr/lib/systemd/system/postgresql.service
ファイルに記載されているパスと同じパスに保存する必要があります。 - PostgreSQL サーバー - システムは複数の PostgreSQL サーバーを実行できます。これらのすべてのサーバーのデータディレクトリーが独立して処理されていることを確認してください。
-
PostgreSQL サーバーモジュール - RHEL 7 で使用されていた PostgreSQL サーバーモジュールも、RHEL 8 システムにインストールされていることを確認してください。プラグインは、
/usr/lib64/pgsql/
ディレクトリー (32 ビットシステムの/usr/lib/pgsql/
ディレクトリー) にインストールされます。
-
基本設定 - RHEL 8 システムで、サーバーがデフォルトの
データのコピー時に、
postgresql
サービスがソースおよびターゲットのシステムで稼働していないことを確認します。# systemctl stop postgresql.service
-
データベースファイルをソースの場所から RHEL 8 システムの
/var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーにコピーします。 PostgreSQL ユーザーで以下のコマンドを実行して、アップグレードプロセスを実行します。
# postgresql-setup --upgrade
これでバックグラウンドで
pg_upgrade
プロセスが開始します。障害が発生すると、
postgresql-setup
は通知のエラーメッセージを提供します。/var/lib/pgsql/data-old
から新規クラスターに、以前の設定をコピーします。高速アップグレードは、新しいデータスタックで以前の設定を再利用せず、設定がゼロから生成されることに注意してください。古い設定と新しい設定を手動で組み合わせたい場合は、データディレクトリーの *.conf ファイルを使用します。
新しい PostgreSQL サーバーを起動します。
# systemctl start postgresql.service
新しいデータベースクラスターを分析します。
PostgreSQL 13 以前の場合:
su postgres -c '~/analyze_new_cluster.sh'
PostgreSQL 15 の場合:
su postgres -c 'vacuumdb --all --analyze-in-stages'
システムの起動時に、新しい PostgreSQL サーバーを自動的に起動させる場合は、次のコマンドを実行します。
# systemctl enable postgresql.service
7.4.6.3. ダンプおよび復元のアップグレード
ダンプおよび復元のアップグレードを使用する場合は、すべてのデータベースのコンテンツを SQL ファイルのダンプファイルにダンプする必要があります。
ダンプおよび復元のアップグレードは高速アップグレード方法よりも低速であり、生成された SQL ファイルで手動修正が必要になる場合があります。
この方法を使用すると、以下からデータを移行できます。
- Red Hat Enterprise Linux 7 システムバージョンの PostgreSQL 9.2
- 以前の Red Hat Enterprise Linux 8 バージョンの PostgreSQL
Red Hat Software Collections の PostgreSQL の以前のバージョンまたは同等バージョン:
- PostgreSQL 9.2 (サポート対象外になりました)
- PostgreSQL 9.4 (サポート対象外になりました)
- PostgreSQL 9.6 (サポート対象外になりました)
- PostgreSQL 10
- PostgreSQL 12
- PostgreSQL 13
RHEL 7 および RHEL 8 システムでは、PostgreSQL データは、デフォルトで /var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーに保存されます。Red Hat Software Collections バージョンの PostgreSQLの場合、デフォルトのデータディレクトリーは /var/opt/rh/collection_name/lib/pgsql/data/
です (/opt/rh/postgresql92/root/var/lib/pgsql/data/
ディレクトリーを使用する postgresql92
を除く)。
RHEL 8 内の以前の postgresql
ストリームからアップグレードする場合は 後続のストリームへの切り替え の説明に従い、PostgreSQL データを移行します。
ダンプおよび復元のアップグレードを実行するには、ユーザーを root
に変更します。
以下の手順では、RHEL 7 システムバージョンの PostgreSQL 9.2 から、RHEL 8 バージョンの PostgreSQL への移行方法を説明します。
手順
RHEL 7 システムで PostgreSQL 9.2 サーバーを起動します。
# systemctl start postgresql.service
RHEL 7 システムで、すべてのデータベースのコンテンツを
pgdump_file.sql
ファイルにダンプします。su - postgres -c "pg_dumpall > ~/pgdump_file.sql"
データベースが正しくダンプされたことを確認します。
su - postgres -c 'less "$HOME/pgdump_file.sql"'
これにより、ダンプされた sql ファイルのパスが
/var/lib/pgsql/pgdump_file.sql
に表示されます。RHEL 8 システムで、移行するストリーム (バージョン) を有効にします。
# yum module enable postgresql:stream
stream は、選択した PostgreSQL サーバーのバージョンに置き換えます。
PostgreSQL 10 を提供するデフォルトストリームを使用する場合は、この手順を省略できます。
RHEL 8 システムで、
postgresql-server
パッケージをインストールします。# yum install postgresql-server
必要に応じて、RHEL 7 で PostgreSQL サーバーモジュールを使用している場合は、RHEL 8 システムにもインストールしてください。サードパーティーの PostgreSQL サーバーモジュールをコンパイルする必要がある場合は、
postgresql-devel
パッケージに対してビルドします。RHEL 8 システムで、新しい PostgreSQL サーバーのデータディレクトリーを初期化します。
# postgresql-setup --initdb
RHEL 8 システムで、
pgdump_file.sql
を PostgreSQL ホームディレクトリーにコピーし、ファイルが正しくコピーされたことを確認します。su - postgres -c 'test -e "$HOME/pgdump_file.sql" && echo exists'
RHEL 7 システムから設定ファイルをコピーします。
su - postgres -c 'ls -1 $PGDATA/*.conf'
コピーされる設定ファイルは、以下のとおりです。
-
/var/lib/pgsql/data/pg_hba.conf
-
/var/lib/pgsql/data/pg_ident.conf
-
/var/lib/pgsql/data/postgresql.conf
-
RHEL 8 システムで、新しい PostgreSQL サーバーを起動します。
# systemctl start postgresql.service
RHEL 8 システムで、ダンプされた sql ファイルからデータをインポートします。
su - postgres -c 'psql -f ~/pgdump_file.sql postgres'
Red Hat Software Collections バージョンの PostgreSQL からアップグレードする場合は、scl enable collection_name
が含まれるようにコマンドを調整します。たとえば、rh-postgresql96
Software Collection からデータをダンプする場合は、以下のコマンドを使用します。
su - postgres -c 'scl enable rh-postgresql96 "pg_dumpall > ~/pgdump_file.sql"'
第8章 Postfix SMTP サーバーのデプロイと設定
システム管理者は、Postfix などのメールトランスポートエージェント (MTA) を使用して、電子メールインフラストラクチャーを設定し、SMTP プロトコルを使用してホスト間で電子メールメッセージを転送できます。Postfix は、メールのルーティングと配信を行うサーバー側アプリケーションです。Postfix を使用して、ローカルメールサーバーの設定、null クライアントメールリレーの作成、複数のドメインの宛先としての Postfix サーバーの使用、検索用ファイルに代わる LDAP ディレクトリーの選択を行うことができます。
Postfix の主な機能:
- 一般的なメール関連の脅威から保護するためのセキュリティー機能
- 仮想ドメインおよびエイリアスのサポートを含むカスタマイズオプション
8.1. 主な Postfix 設定ファイルの概要
postfix
パッケージは、/etc/postfix/
ディレクトリーに複数の設定ファイルを提供します。
電子メールインフラストラクチャーを設定するには、次の設定ファイルを使用します。
-
main.cf
— Postfix のグローバル設定が含まれています。 -
master.cf
— メール配信を実現するために、さまざまなプロセスとの Postfix の対話を指定します。 -
access
— Postfix に接続できるホストなどのアクセスルールを指定します。 -
transport
— 電子メールアドレスをリレーホストにマッピングします。 -
aliases
— ユーザー ID エイリアスを説明するメールプロトコルで必要な設定可能な一覧が含まれます。このファイルは、/etc/
ディレクトリーにあることに留意してください。
8.2. Postfix SMTP サーバーのインストールおよび設定
電子メールメッセージを受信、保存、配信するように Postfix SMTP サーバーを設定できます。システムのインストール時にメールサーバーパッケージが選択されていない場合、Postfix はデフォルトで利用できません。Postfix をインストールするには、以下の手順を実行します。
前提条件
- root アクセスがある。
- システムを登録する。
Sendmail を無効にして削除するには、以下を実行します。
# yum remove sendmail
手順
Postfix をインストールします。
# yum install postfix
Postfix を設定するには、
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集し、以下の変更を加えます。デフォルトでは、Postfix は
loopback
インターフェイスでのみメールを受信します。特定のインターフェイスをリッスンするように Postfix を設定するには、inet_interfaces
パラメーターをこれらのインターフェイスの IP アドレスに更新します。inet_interfaces = 127.0.0.1/32, [::1]/128, 192.0.2.1, [2001:db8:1::1]
すべてのインターフェイスをリッスンするように Postfix を設定するには、以下を設定します。
inet_interfaces = all
gethostname()
関数によって返される完全修飾ドメイン名 (FQDN) とは異なるホスト名を Postfix が使用するようにしたい場合は、myhostname
パラメーターを追加します。myhostname = <smtp.example.com>
たとえば、Postfix はこのホスト名を、処理するメールのヘッダーに追加します。
ドメイン名が
myhostname
パラメーターのものと異なる場合は、mydomain
パラメーターを追加します。mydomain = <example.com>
myorigin
パラメーターを追加し、mydomain
の値に設定します。myorigin = $mydomain
この設定では、Postfix はホスト名ではなく、ローカルで投稿されたメールの発信元としてドメイン名を使用します。
mynetworks
パラメーターを追加し、メールの送信が許可される信頼できるネットワークの IP 範囲を定義します。mynetworks = 127.0.0.1/32, [::1]/128, 192.0.2.1/24, [2001:db8:1::1]/64
インターネットなどの信頼できないネットワークからのクライアントがこのサーバー経由でメールを送信できるようにする必要がある場合は、後の手順でリレー制限を設定する必要があります。
main.cf
ファイルの Postfix 設定が正しいか確認します。$ postfix check
postfix
サービスが起動時に開始できるように有効化し、開始します。# systemctl enable --now postfix
smtp トラフィックがファイアウォールを通過することを許可し、ファイアウォールルールをリロードします。
# firewall-cmd --permanent --add-service smtp # firewall-cmd --reload
検証
postfix
サービスが実行していることを確認します。# systemctl status postfix
オプション: 出力が停止し、待機中、またはサービスが実行されていない場合は、
postfix
サービスを再起動します。# systemctl restart postfix
オプション:
/etc/postfix/
ディレクトリーの設定ファイル内のオプションを変更した後、postfix
サービスをリロードして、これらの変更を適用します。# systemctl reload postfix
システム上のローカルユーザー間の電子メール通信を確認します。
# echo "This is a test message" | mail -s <SUBJECT> <user@mydomain.com>
クライアント (server1) からメールサーバー (server2) へ、ドメイン外のメールアドレスにメールを送信して、メールサーバーがオープンリレーではないことを確認します。
次のように、server1 の
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集します。relayhost = <ip_address_of_server2>
次のように、server2 の
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集します。mynetworks = <ip_address_of_server2>
server1 で、以下のメールを送信します。
# echo "This is an open relay test message" | mail -s <SUBJECT> <user@example.com>
/var/log/maillog
ファイルを確認します。554 Relay access denied - the server is not going to relay. 250 OK or similar - the server is going to relay.
トラブルシューティング
-
エラーが発生した場合は、
/var/log/maillog
を確認してください。
関連情報
-
/etc/postfix/main.cf
設定ファイル -
/usr/share/doc/postfix/README_FILES
ディレクトリー - firewalld の使用および設定
8.3. Postfix サーバーの TLS 設定のカスタマイズ
電子メールトラフィックを暗号化してよりセキュアにするために、自己署名証明書の代わりに、信頼できる認証局 (CA) からの証明書を使用し、Transport Layer Security (TLS) セキュリティー設定をカスタマイズするように Postfix を設定できます。RHEL 8 では、TLS 暗号化プロトコルが Postfix サーバーでデフォルトで有効になっています。基本的な Postfix TLS 設定には、受信 SMTP 用の自己署名証明書と、発信 SMTP の日和見 TLS が含まれています。
前提条件
- root アクセスがある。
-
サーバーに
postfix
パッケージがインストールされている。 - 信頼できる認証局 (CA) によって署名された証明書と秘密鍵を持っている。
以下のファイルを Postfix サーバーにコピーしている。
-
サーバー証明書:
/etc/pki/tls/certs/postfix.pem
-
秘密鍵y:
/etc/pki/tls/private/postfix.key
-
サーバー証明書:
手順
以下の行を
/etc/postfix/main.cf
ファイルに追加して、Postfix が実行されているサーバー上の証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定します。smtpd_tls_cert_file = /etc/pki/tls/certs/postfix.pem smtpd_tls_key_file = /etc/pki/tls/private/postfix.key
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集して、受信した SMTP 接続を認証されたユーザーのみに制限します。smtpd_tls_auth_only = yes
postfix
サービスをリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
TLS 暗号化を使用してメールを送信するようにクライアントを設定します。
注記Postfix クライアント TLS アクティビティーに関する追加情報を取得するには、
/etc/postfix/main.cf
の次の行を変更して、ログレベルを0
から1
に増やします。smtp_tls_loglevel = 1
8.4. すべての電子メールをメールリレーに転送するように Postfix を設定する
すべての電子メールをメールリレーに転送する場合は、Postfix サーバーを Null クライアントとして設定できます。この設定では、Postfix はメールを別のメールサーバーに転送するだけで、メールの受信はできません。
前提条件
- root アクセスがある。
-
サーバーに
postfix
パッケージがインストールされている。 - メールを転送するリレーホストの IP アドレスまたはホスト名がある。
手順
Postfix がローカルの電子メール配信を受け入れ、それが Null クライアントになるのを防ぐには、
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集し、以下の変更を加えます。mydestination
パラメーターを空の値に等しくなるように設定して、すべてのメールを転送するように Postfix を設定します。mydestination =
この設定では、Postfix サーバーはメールの宛先ではなく、null クライアントとして機能します。
Null クライアントからメールを受信するメールリレーサーバーを指定します。
relayhost = <[ip_address_or_hostname]>
リレーホストはメール配信を行います。
<ip_address_or_hostname>
を角括弧で囲みます。メールを配信するために、ループバックインターフェイスでのみリッスンするように Postfix メールサーバーを設定します。
inet_interfaces = loopback-only
Postfix がすべての送信メールの送信者ドメインをリレーメールサーバーの企業ドメインに書き換えるには、以下を設定します。
myorigin = <relay.example.com>
ローカルメール配信を無効にするには、設定ファイルの最後に次のディレクティブを追加します。
local_transport = error: local delivery disabled
mynetworks
パラメーターを追加して、Postfix が 127.0.0.0/8 IPv4 ネットワークと [::1]/128 IPv6 ネットワークから送信されたローカルシステムからの電子メールをメールリレーサーバーに転送するようにします。mynetworks = 127.0.0.0/8, [::1]/128
main.cf
ファイルの Postfix 設定が正しいか確認します。$ postfix check
postfix
サービスを再起動して変更を適用します。# systemctl restart postfix
検証
電子メール通信がメールリレーに転送されていることを確認します。
# echo "This is a test message" | mail -s <SUBJECT> <user@example.com>
トラブルシューティング
-
エラーが発生した場合は、
/var/log/maillog
を確認してください。
関連情報
-
/etc/postfix/main.cf
設定ファイル
8.5. Postfix を複数のドメインの宛先として設定する
Postfix を、複数のドメインのメールを受信できるメールサーバーとして設定できます。この設定では、Postfix は、指定されたドメイン内のアドレスに送信された電子メールの最終宛先として機能します。以下を設定できます。
- 同じ電子メール宛先を指す複数の電子メールアドレスを設定する。
- 複数のドメインの受信メールを同じ Postfix サーバーにルーティングする。
前提条件
- root アクセスがある。
- Postfix サーバーを設定している。
手順
/etc/postfix/virtual
仮想エイリアスファイルで、各ドメインのメールアドレスを指定します。各電子メールアドレスを新しい行に追加します。<info@example.com> <user22@example.net> <sales@example.com> <user11@example.org>
この例では、Postfix は info@example.com に送信されたすべての電子メールを user22@example.net にリダイレクトし、sales@example.com に送信された電子メールを user11@example.org にリダイレクトします。
仮想エイリアスマップのハッシュファイルを作成します。
# postmap /etc/postfix/virtual
このコマンドは、
/etc/postfix/virtual.db
ファイルを作成します。/etc/postfix/virtual
ファイルを更新した後に、このコマンドを常に再実行する必要があります。Postfix
/etc/postfix/main.cf
設定ファイルで、virtual_alias_maps
パラメーターを追加して、ハッシュファイルを指すようにします。virtual_alias_maps = hash:/etc/postfix/virtual
postfix
サービスをリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
- 仮想メールアドレスの 1 つに電子メールを送信して、設定をテストします。
トラブルシューティング
-
エラーが発生した場合は、
/var/log/maillog
を確認してください。
8.6. LDAP ディレクトリーの検索テーブルとしての使用
Lightweight Directory Access Protocol (LDAP) サーバーを使用してアカウント、ドメイン、またはエイリアスを保存する場合は、LDAP サーバーを検索テーブルとして使用するように Postfix を設定できます。検索用ファイルの代わりに LDAP を使用すると、中央データベースを使用できます。
前提条件
- root アクセスがある。
-
サーバーに
postfix
パッケージがインストールされている。 - 必要なスキーマおよびユーザークレデンシャルを持つ LDAP サーバーがある。
-
Postfix を実行しているサーバーに
postfix-ldap
プラグインがインストールされている。
手順
以下の内容で
/etc/postfix/ldap-aliases.cf
ファイルを作成して、LDAP 検索パラメーターを設定します。LDAP サーバーのホスト名を指定します。
server_host = <ldap.example.com>
LDAP 検索のベースドメイン名を指定します。
search_base = dc=<example>,dc=<com>
-
オプション: 要件に応じて LDAP 検索フィルターと属性をカスタマイズします。ディレクトリーを検索するフィルターのデフォルトは
query_filter = mailacceptinggeneralid=%s
です。
以下の内容を追加して、LDAP ソースを
/etc/postfix/main.cf
設定ファイルの検索テーブルとして有効にします。virtual_alias_maps = ldap:/etc/postfix/ldap-aliases.cf
postmap
コマンドを実行して LDAP 設定を確認します。これは、構文エラーまたは接続の問題をチェックします。# postmap -q @<example.com> ldap:/etc/postfix/ldap-aliases.cf
postfix
サービスをリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
-
テストメールを送信して、LDAP 検索が正しく機能していることを確認します。
/var/log/maillog
のメールログでエラーがないか確認します。
関連情報
-
/usr/share/doc/postfix/README_FILES/LDAP_README
ファイル -
/usr/share/doc/postfix/README_FILES/DATABASE_README
ファイル
8.7. 認証されたユーザーのリレーを行う送信メールサーバーとしての Postfix の設定
認証されたユーザーのメールをリレーするように Postfix を設定できます。このシナリオでは、SMTP 認証、TLS 暗号化、および送信者アドレス制限を備えた送信メールサーバーとして Postfix を設定することで、ユーザーが自分自身を認証し、自分の電子メールアドレスを使用して SMTP サーバー経由でメールを送信できるようにします。
前提条件
- root アクセスがある。
- Postfix サーバーを設定している。
手順
Postfix を送信メールサーバーとして設定するには、
/etc/postfix/main.cf
ファイルを編集し、以下を追加します。SMTP 認証を有効にします。
smtpd_sasl_auth_enable = yes broken_sasl_auth_clients = yes
TLS を使用しないアクセスを無効にします。
smtpd_tls_auth_only = yes
認証されたユーザーに対してのみメールリレーを許可します。
smtpd_relay_restrictions = permit_mynetworks permit_sasl_authenticated defer_unauth_destination
オプション: ユーザーが自分の電子メールアドレスを送信者としてのみ使用するように制限します。
smtpd_sender_restrictions = reject_sender_login_mismatch
postfix
サービスをリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
- TLS および SASL をサポートする SMTP クライアントで認証します。テストメールを送信して、SMTP 認証が正しく機能していることを確認します。
8.8. 同じホストで実行している Postfix から Dovecot への電子メールの配信
UNIX ソケット経由で LMTP を使用して、受信メールを同じホスト上の Dovecot に配信するように Postfix を設定できます。このソケットは、ローカルマシンの Postfix と Dovecot との間の直接通信を有効にします。
前提条件
- root アクセスがある。
- Postfix サーバーを設定している。
- Dovecot サーバーを設定している。Dovecot IMAP および POP3 サーバーの設定と管理 を参照してください。
- Dovecot サーバーに LMTP ソケットを設定している。LMTP ソケットと LMTPS リスナーの設定 を参照してください。
手順
/etc/postfix/main.cf
ファイルの Dovecot にメールを配信するために LMTP プロトコルと UNIX ドメインソケットを使用するように Postfix を設定します。仮想メールボックスを使用する場合は、次のコンテンツを追加します。
virtual_transport = lmtp:unix:/var/run/dovecot/lmtp
仮想以外のメールボックスを使用する場合は、次のコンテンツを追加します。
mailbox_transport = lmtp:unix:/var/run/dovecot/lmtp
postfix
をリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
-
テストメールを送信して、LMTP ソケットが正常に動作することを確認します。
/var/log/maillog
のメールログでエラーがないか確認します。
8.9. Postfix から別のホストで実行されている Dovecot への電子メールの配信
ネットワーク経由で Postfix メールサーバーと Dovecot 配信エージェントの間にセキュアな接続を確立できます。これを行うには、メールサーバー間でのメール配信にネットワークソケットを使用するように LMTP サービスを設定します。デフォルトでは、LMTP プロトコルは暗号化されていません。ただし、TLS 暗号化を設定した場合、Dovecot は LMTP サービスに同じ設定を自動的に使用します。続いて、SMTP サーバーは、LMTP 経由で STARTTLS
コマンドを使用してそれに接続できます。
前提条件
- root アクセスがある。
- Postfix サーバーを設定している。
- Dovecot サーバーを設定している。Dovecot IMAP および POP3 サーバーの設定と管理 を参照してください。
- Dovecot サーバーに LMTP サービスを設定している。LMTP ソケットと LMTPS リスナーの設定 を参照してください。
手順
以下の内容を追加して、
/etc/postfix/main.cf
ファイルで Dovecot にメールを配信するために LMTP プロトコルと INET ドメインソケットを使用するように Postfix を設定します。mailbox_transport = lmtp:inet:<dovecot_host>:<port>
<dovecot_host>
を Dovecot サーバーの IP アドレスまたはホスト名に置き換え、<port>
を LMTP サービスのポート番号に置き換えます。postfix
サービスをリロードして変更を適用します。# systemctl reload postfix
検証
- リモート Dovecot サーバーがホストするアドレスにテストメールを送信し、Dovecot ログをチェックして、メールが正常に配信されたことを確認します。
8.10. Postfix サービスを保護する
Postfix は、SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) を使用して他の MTA 間で電子メッセージを配信したり、クライアントや配信エージェントに電子メールを送信したりするメール転送エージェント (MTA) です。MTA は相互間のトラフィックを暗号化できますが、デフォルトではそうしない場合があります。設定をより安全な値に変更することで、さまざまな攻撃に対するリスクを軽減することもできます。
8.10.1. Postfix ネットワーク関連のセキュリティーリスクの軽減
攻撃者がネットワーク経由でシステムに侵入するリスクを軽減するには、次のタスクをできるだけ多く実行してください。
ネットワークファイルシステム (NFS) 共有ボリュームで
/var/spool/postfix/
メールスプールディレクトリーを共有しないでください。NFSv2 と NFSv3 は、ユーザー ID とグループ ID に対する制御を維持しません。したがって、2 人以上のユーザーが同じ UID を持っていると、互いのメールを受信して読むことができ、セキュリティー上のリスクが生じます。注記SECRPC_GSS
カーネルモジュールは UID ベースの認証を使用しないため、この規則は Kerberos を使用する NFSv4 には適用されません。ただし、セキュリティーリスクを軽減するために、メールスプールディレクトリーを NFS 共有ボリュームに配置しないでください。-
Postfix サーバーの悪用の可能性を減らすために、メールユーザーは電子メールプログラムを使用して Postfix サーバーにアクセスする必要があります。メールサーバーでシェルアカウントを許可せず、
/etc/passwd
ファイル内のすべてのユーザーシェルを/sbin/nologin
に設定します (root
ユーザーは例外の可能性があります)。 -
Postfix をネットワーク攻撃から保護するために、デフォルトではローカルループバックアドレスのみをリッスンするように設定されています。これは、
/etc/postfix/main.cf
ファイルのinet_interfaces = localhost
行を表示することで確認できます。これにより、Postfix はネットワークからではなく、ローカルシステムからのメールメッセージ (cron
ジョブのレポートなど) のみを受け入れるようになります。これはデフォルトの設定で、Postfix をネットワーク攻撃から保護します。localhost の制限を取り除き、Postfix がすべてのインターフェイスでリッスンできるようにするには、/etc/postfix/main.cf
でinet_interfaces
パラメーターをall
に設定します。
8.10.2. DoS 攻撃を制限するための Postfix 設定オプション
攻撃者は、トラフィックでサーバーをあふれさせたり、クラッシュを引き起こす情報を送信したりして、サービス拒否 (DoS) 攻撃を引き起こす可能性があります。/etc/postfix/main.cf
ファイルで制限を設定することにより、このような攻撃のリスクを軽減するようにシステムを設定できます。既存のディレクティブの値を変更するか、<directive> = <value> 形式のカスタム値で新しいディレクティブを追加できます。
DoS 攻撃を制限するには、次のディレクティブリストを使用します。
- smtpd_client_connection_rate_limit
-
このディレクティブは、時間単位ごとにクライアントがこのサービスに対して行うことができる接続試行の最大数を制限します。デフォルト値は
0
です。これは、クライアントが時間単位で Postfix が受け入れることができる数と同じ数の接続を行うことができることを意味します。デフォルトでは、ディレクティブは信頼できるネットワークのクライアントを除外します。 - anvil_rate_time_unit
-
このディレクティブは、レート制限を計算する時間単位です。デフォルト値は
60
秒です。 - smtpd_client_event_limit_exceptions
- このディレクティブは、接続およびレート制限コマンドからクライアントを除外します。デフォルトでは、ディレクティブは信頼できるネットワークのクライアントを除外します。
- smtpd_client_message_rate_limit
- このディレクティブは、単位時間当たりのクライアントからリクエストへのメッセージ配信の最大数を定義します (Postfix が実際にそれらのメッセージを受け入れるかどうかに関係なく)。
- default_process_limit
-
このディレクティブは、特定のサービスを提供する Postfix 子プロセスのデフォルトの最大数を定義します。
master.cf
ファイル内の特定のサービスについては、このルールを無視できます。デフォルトでは、値は100
です。 - queue_minfree
-
このディレクティブは、キューファイルシステムでメールを受信するために必要な空き容量の最小量を定義します。このディレクティブは現在、Postfix SMTP サーバーがメールを受け入れるかどうかを決定するために使用されています。デフォルトでは、Postfix SMTP サーバーは、空き容量が
message_size_limit
の 1.5 倍未満の場合に、MAIL FROM
コマンドを拒否します。空き容量の最小値をこれよりも高く指定するには、message_size_limit
の 1.5 倍以上のqueue_minfree
値を指定します。デフォルトのqueue_minfree
値は0
です。 - header_size_limit
-
このディレクティブは、メッセージヘッダーを格納するためのメモリーの最大量をバイト単位で定義します。ヘッダーが大きい場合、余分なヘッダーは破棄されます。デフォルトでは、値は
102400
バイトです。 - message_size_limit
-
このディレクティブは、エンベロープ情報を含むメッセージの最大サイズをバイト単位で定義します。デフォルトでは、値は
10240000
バイトです。
8.10.3. Postfix が SASL を使用する設定
Postfix は Simple Authentication and Security Layer (SASL) ベースの SMTP 認証 (AUTH) をサポートしています。SMTP AUTH は Simple Mail Transfer Protocol の拡張です。現在、Postfix SMTP サーバーは次の方法で SASL 実装をサポートしています:
- Dovecot SASL
- Postfix SMTP サーバーは、UNIX ドメインソケットまたは TCP ソケットのいずれかを使用して、Dovecot SASL 実装と通信できます。Postfix と Dovecot アプリケーションが別のマシンで実行している場合は、この方法を使用します。
- Cyrus SASL
- 有効にすると、SMTP クライアントは、サーバーとクライアントの両方でサポートおよび受け入れられる認証方法を使用して、SMTP サーバーで認証する必要があります。
前提条件
-
dovecot
パッケージがシステムにインストールされている
手順
Dovecot をセットアップします。
/etc/dovecot/conf.d/10-master.conf
ファイルに次の行を含めます。service auth { unix_listener /var/spool/postfix/private/auth { mode = 0660 user = postfix group = postfix } }
前の例では、Postfix と Dovecot の間の通信に UNIX ドメインソケットを使用しています。また、
/var/spool/postfix/
ディレクトリーにあるメールキュー、およびpostfix
ユーザーとグループの下で実行しているアプリケーションを含む Postfix SMTP サーバーのデフォルト設定を想定しています。オプション: TCP 経由で Postfix 認証リクエストをリッスンするように Dovecot をセットアップします。
service auth { inet_listener { port = port-number } }
/etc/dovecot/conf.d/10-auth.conf
ファイルのauth_mechanisms
パラメーターを編集して、電子メールクライアントが Dovecot での認証に使用する方法を指定します。auth_mechanisms = plain login
auth_mechanisms
パラメーターは、さまざまなプレーンテキストおよび非プレーンテキストの認証方法をサポートしています。
/etc/postfix/main.cf
ファイルを変更して Postfix をセットアップします。Postfix SMTP サーバーで SMTP 認証を有効にします。
smtpd_sasl_auth_enable = yes
SMTP 認証用の Dovecot SASL 実装の使用を有効にします。
smtpd_sasl_type = dovecot
Postfix キューディレクトリーに相対的な認証パスを指定します。相対パスを使用すると、Postfix サーバーが
chroot
で実行しているかどうかに関係なく、設定が確実に機能することに注意してください。smtpd_sasl_path = private/auth
この手順では、Postfix と Dovecot の間の通信に UNIX ドメインソケットを使用します。
通信に TCP ソケットを使用する場合に、別のマシンで Dovecot を探すように Postfix を設定するには、次のような設定値を使用します。
smtpd_sasl_path = inet: ip-address : port-number
前の例で、ip-address を Dovecot マシンの IP アドレスに置き換え、port-number を Dovecot の
/etc/dovecot/conf.d/10-master.conf
ファイルで指定されたポート番号に置き換えます。Postfix SMTP サーバーがクライアントに提供する SASL メカニズムを指定します。暗号化されたセッションと暗号化されていないセッションに異なるメカニズムを指定できることに注意してください。
smtpd_sasl_security_options = noanonymous, noplaintext smtpd_sasl_tls_security_options = noanonymous
前のディレクティブは、暗号化されていないセッションでは匿名認証が許可されず、暗号化されていないユーザー名またはパスワードを送信するメカニズムが許可されていないことを指定しています。暗号化セッション (TLS を使用) の場合、非匿名認証メカニズムのみが許可されます。
第9章 Dovecot IMAP および POP3 サーバーの設定と管理
Dovecot は、セキュリティーを重視する高パフォーマンスのメール配信エージェント (MDA) です。IMAP または POP3 互換の電子メールクライアントを使用して Dovecot サーバーに接続し、電子メールを読んだりダウンロードしたりできます。
Dovecot の主な機能:
- セキュリティーを重視する設計と実装
- 大規模環境でのパフォーマンスを向上させるために、高可用性を実現する双方向レプリケーションをサポート
-
高パフォーマンスの
dbox
メールボックス形式だけでなく、互換性の理由からmbox
とMaildir
もサポート - 破損したインデックスファイルの修正などの自己修復機能
- IMAP 標準への準拠
- IMAP および POP3 クライアントのバグを回避するための回避策をサポート
9.1. PAM 認証を使用した Dovecot サーバーのセットアップ
Dovecot は、ユーザーデータベースとして Name Service Switch (NSS) インターフェイスをサポートし、認証バックエンドとして Pluggable Authentication Module (PAM) フレームワークをサポートします。この設定により、Dovecot は、NSS を介してサーバー上でローカルに利用可能なユーザーにサービスを提供できます。
アカウントが次の場合に PAM 認証を使用します。
-
/etc/passwd
ファイルでローカルに定義されている。 - リモートデータベースに保存されているが、System Security Services Daemon (SSSD) またはその他の NSS プラグインを介してローカルで利用できる。
9.1.1. Dovecot のインストール
dovecot
パッケージは以下を提供します。
-
dovecot
サービスとそれを管理するユーティリティー - Dovecot がオンデマンドで開始するサービス (認証など)
- サーバーサイドメールフィルタリングなどのプラグイン
-
/etc/dovecot/
ディレクトリーの設定ファイル -
/usr/share/doc/dovecot/
ディレクトリーのドキュメント
手順
dovecot
パッケージをインストールします。# yum install dovecot
注記Dovecot がすでにインストールされていて、クリーンな設定ファイルが必要な場合は、
/etc/dovecot/
ディレクトリーを名前変更するか削除してください。その後、パッケージを再インストールします。設定ファイルを削除しないと、yum uninstall dovecot
コマンドは/etc/dovecot/
内の設定ファイルをリセットしません。
次のステップ
9.1.2. Dovecot サーバーでの TLS 暗号化の設定
Dovecot はセキュアなデフォルト設定を提供します。たとえば、TLS はデフォルトで有効になっており、認証情報と暗号化されたデータをネットワーク経由で送信します。Dovecot サーバーで TLS を設定するには、証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定するだけです。さらに、Diffie-Hellman パラメーターを生成して使用し、Perfect Forward Secrecy (PFS) を提供することで、TLS 接続のセキュリティーを強化できます。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
次のファイルが、サーバー上のリストされた場所にコピーされました。
-
サーバー証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt
-
秘密鍵:
/etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
-
認証局 (CA) 証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
-
サーバー証明書:
-
サーバー証明書の
Subject DN
フィールドのホスト名は、サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) と一致します。
手順
秘密鍵ファイルにセキュアな権限を設定します。
# chown root:root /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key # chmod 600 /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
Diffie-Hellman パラメーターを使用してファイルを生成します。
# openssl dhparam -out /etc/dovecot/dh.pem 4096
サーバーのハードウェアとエントロピーによっては、4096 ビットの Diffie-Hellman パラメーターを生成するのに数分かかる場合があります。
/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
ファイルで証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定します。ssl_cert
およびssl_key
パラメーターを更新し、サーバーの証明書と秘密鍵へのパスを使用するように設定します。ssl_cert = </etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt ssl_key = </etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
ssl_ca
パラメーターをコメント解除し、CA 証明書へのパスを使用するように設定します。ssl_ca = </etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
ssl_dh
パラメーターをコメント解除し、Diffie-Hellman パラメーターファイルへのパスを使用するように設定します。ssl_dh = </etc/dovecot/dh.pem
重要Dovecot がファイルからパラメーターの値を確実に読み取るようにするには、パスの先頭に
<
文字を付ける必要があります。
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/SSL.DovecotConfiguration.txt
9.1.3. 仮想ユーザーを使用するための Dovecot の準備
デフォルトでは、Dovecot はサービスを使用するユーザーとして、ファイルシステム上で多くのアクションを実行します。ただし、1 人のローカルユーザーを使用してこれらのアクションを実行するように Dovecot バックエンドを設定すると、複数の利点があります。
- Dovecot は、ユーザーの ID (UID) を使用する代わりに、特定のローカルユーザーとしてファイルシステムアクションを実行します。
- ユーザーは、サーバー上でローカルに利用できる必要はありません。
- すべてのメールボックスとユーザー固有のファイルを 1 つのルートディレクトリーに保存できます。
- ユーザーは UID とグループ ID (GID) を必要としないため、管理作業が軽減されます。
- サーバー上のファイルシステムにアクセスできるユーザーは、これらのファイルにアクセスできないため、メールボックスやインデックスを危険にさらす可能性はありません。
- レプリケーションのセットアップはより簡単です。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
手順
vmail
ユーザーを作成します。# useradd --home-dir /var/mail/ --shell /usr/sbin/nologin vmail
Dovecot は後でこのユーザーを使用してメールボックスを管理します。セキュリティー上の理由から、この目的で
dovecot
またはdovenull
システムユーザーを使用しないでください。/var/mail/
以外のパスを使用する場合は、それに SELinux コンテキストmail_spool_t
を設定します。例:# semanage fcontext -a -t mail_spool_t "<path>(/.*)?" # restorecon -Rv <path>
/var/mail/
への書き込み権限をvmail
ユーザーにのみ付与します。# chown vmail:vmail /var/mail/ # chmod 700 /var/mail/
/etc/dovecot/conf.d/10-mail.conf
ファイルのmail_location
パラメーターをコメント解除し、メールボックスの形式と場所を設定します。mail_location = sdbox:/var/mail/%n/
この設定の場合:
-
Dovecot は、
single
モードで高パフォーマンスのdbox
メールボックス形式を使用します。このモードでは、サービスは、maildir
形式と同様に、各メールを個別のファイルに保存します。 -
Dovecot はパス内の
%n
変数をユーザー名に解決します。これは、各ユーザーがメールボックス用に個別のディレクトリーを持つようにするために必要です。
-
Dovecot は、
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/VirtualUsers.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailLocation.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailboxFormat.dbox.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Variables.txt
9.1.4. PAM を Dovecot 認証バックエンドとして使用する
デフォルトでは、Dovecot は Name Service Switch (NSS) インターフェイスをユーザーデータベースとして使用し、Pluggable Authentication Module (PAM) フレームワークを認証バックエンドとして使用します。
設定をカスタマイズして Dovecot を環境に適応させ、仮想ユーザー機能を使用して管理を簡素化します。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
- 仮想ユーザー機能が設定されています。
手順
/etc/dovecot/conf.d/10-mail.conf
ファイルのfirst_valid_uid
パラメーターを更新して、Dovecot に対して認証できる最小のユーザー ID (UID) を定義します。first_valid_uid = 1000
デフォルトでは、
1000
以上の UID を持つユーザーが認証を受けることができます。必要に応じて、last_valid_uid
パラメーターを設定して、Dovecot がログインを許可する最大の UID を定義することもできます。/etc/dovecot/conf.d/auth-system.conf.ext
ファイルで、次のようにoverride_fields
パラメーターをuserdb
セクションに追加します。userdb { driver = passwd override_fields = uid=vmail gid=vmail home=/var/mail/%n/ }
固定値のため、Dovecot は
/etc/passwd
ファイルからこれらの設定をクエリーしません。そのため、/etc/passwd
に定義されたホームディレクトリーが存在する必要はありません。
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/PasswordDatabase.PAM.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/VirtualUsers.Home.txt
9.1.5. Dovecot 設定の完了
Dovecot をインストールして設定したら、firewalld
サービスで必要なポートを開き、サービスを有効にして開始します。その後、サーバーをテストできます。
前提条件
以下は Dovecot で設定されています。
- TLS 暗号化
- 認証バックエンド
- クライアントは認証局 (CA) 証明書を信頼します。
手順
IMAP または POP3 サービスのみをユーザーに提供する場合は、
/etc/dovecot/dovecot.conf
ファイルのprotocol
パラメーターをコメント解除し、必要なプロトコルに設定します。たとえば、POP3 を必要としない場合は、次のように設定します。protocols = imap lmtp
デフォルトでは、
imap
、pop3
、およびlmtp
プロトコルが有効になっています。ローカルファイアウォールでポートを開きます。たとえば、IMAPS、IMAP、POP3S、および POP3 プロトコルのポートを開くには、次のように入力します。
# firewall-cmd --permanent --add-service=imaps --add-service=imap --add-service=pop3s --add-service=pop3 # firewall-cmd --reload
dovecot
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now dovecot
検証
Dovecot に接続して電子メールを読むには、Mozilla Thunderbird などのメールクライアントを使用します。メールクライアントの設定は、使用するプロトコルによって異なります。
表9.1 Dovecot サーバーへの接続設定
デフォルトでは、Dovecot は TLS を使用しない接続ではプレーンテキスト認証を受け入れないため、この表には暗号化されていない接続の設定がリストされていないことに注意してください。
デフォルト以外の値を含む設定を表示します。
# doveconf -n
関連情報
-
firewall-cmd(1)
man ページ
9.2. LDAP 認証を使用した Dovecot サーバーのセットアップ
インフラストラクチャーが LDAP サーバーを使用してアカウントを保存している場合、それに対して Dovecot ユーザーを認証できます。この場合、アカウントをディレクトリーで集中管理するため、ユーザーは Dovecot サーバー上のファイルシステムにローカルでアクセスする必要はありません。
複数の Dovecot サーバーをレプリケーションでセットアップして、メールボックスを高可用性にする予定がある場合にも、集中管理されたアカウントは利点があります。
9.2.1. Dovecot のインストール
dovecot
パッケージは以下を提供します。
-
dovecot
サービスとそれを管理するユーティリティー - Dovecot がオンデマンドで開始するサービス (認証など)
- サーバーサイドメールフィルタリングなどのプラグイン
-
/etc/dovecot/
ディレクトリーの設定ファイル -
/usr/share/doc/dovecot/
ディレクトリーのドキュメント
手順
dovecot
パッケージをインストールします。# yum install dovecot
注記Dovecot がすでにインストールされていて、クリーンな設定ファイルが必要な場合は、
/etc/dovecot/
ディレクトリーを名前変更するか削除してください。その後、パッケージを再インストールします。設定ファイルを削除しないと、yum uninstall dovecot
コマンドは/etc/dovecot/
内の設定ファイルをリセットしません。
次のステップ
9.2.2. Dovecot サーバーでの TLS 暗号化の設定
Dovecot はセキュアなデフォルト設定を提供します。たとえば、TLS はデフォルトで有効になっており、認証情報と暗号化されたデータをネットワーク経由で送信します。Dovecot サーバーで TLS を設定するには、証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定するだけです。さらに、Diffie-Hellman パラメーターを生成して使用し、Perfect Forward Secrecy (PFS) を提供することで、TLS 接続のセキュリティーを強化できます。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
次のファイルが、サーバー上のリストされた場所にコピーされました。
-
サーバー証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt
-
秘密鍵:
/etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
-
認証局 (CA) 証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
-
サーバー証明書:
-
サーバー証明書の
Subject DN
フィールドのホスト名は、サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) と一致します。
手順
秘密鍵ファイルにセキュアな権限を設定します。
# chown root:root /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key # chmod 600 /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
Diffie-Hellman パラメーターを使用してファイルを生成します。
# openssl dhparam -out /etc/dovecot/dh.pem 4096
サーバーのハードウェアとエントロピーによっては、4096 ビットの Diffie-Hellman パラメーターを生成するのに数分かかる場合があります。
/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
ファイルで証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定します。ssl_cert
およびssl_key
パラメーターを更新し、サーバーの証明書と秘密鍵へのパスを使用するように設定します。ssl_cert = </etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt ssl_key = </etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
ssl_ca
パラメーターをコメント解除し、CA 証明書へのパスを使用するように設定します。ssl_ca = </etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
ssl_dh
パラメーターをコメント解除し、Diffie-Hellman パラメーターファイルへのパスを使用するように設定します。ssl_dh = </etc/dovecot/dh.pem
重要Dovecot がファイルからパラメーターの値を確実に読み取るようにするには、パスの先頭に
<
文字を付ける必要があります。
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/SSL.DovecotConfiguration.txt
9.2.3. 仮想ユーザーを使用するための Dovecot の準備
デフォルトでは、Dovecot はサービスを使用するユーザーとして、ファイルシステム上で多くのアクションを実行します。ただし、1 人のローカルユーザーを使用してこれらのアクションを実行するように Dovecot バックエンドを設定すると、複数の利点があります。
- Dovecot は、ユーザーの ID (UID) を使用する代わりに、特定のローカルユーザーとしてファイルシステムアクションを実行します。
- ユーザーは、サーバー上でローカルに利用できる必要はありません。
- すべてのメールボックスとユーザー固有のファイルを 1 つのルートディレクトリーに保存できます。
- ユーザーは UID とグループ ID (GID) を必要としないため、管理作業が軽減されます。
- サーバー上のファイルシステムにアクセスできるユーザーは、これらのファイルにアクセスできないため、メールボックスやインデックスを危険にさらす可能性はありません。
- レプリケーションのセットアップはより簡単です。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
手順
vmail
ユーザーを作成します。# useradd --home-dir /var/mail/ --shell /usr/sbin/nologin vmail
Dovecot は後でこのユーザーを使用してメールボックスを管理します。セキュリティー上の理由から、この目的で
dovecot
またはdovenull
システムユーザーを使用しないでください。/var/mail/
以外のパスを使用する場合は、それに SELinux コンテキストmail_spool_t
を設定します。例:# semanage fcontext -a -t mail_spool_t "<path>(/.*)?" # restorecon -Rv <path>
/var/mail/
への書き込み権限をvmail
ユーザーにのみ付与します。# chown vmail:vmail /var/mail/ # chmod 700 /var/mail/
/etc/dovecot/conf.d/10-mail.conf
ファイルのmail_location
パラメーターをコメント解除し、メールボックスの形式と場所を設定します。mail_location = sdbox:/var/mail/%n/
この設定の場合:
-
Dovecot は、
single
モードで高パフォーマンスのdbox
メールボックス形式を使用します。このモードでは、サービスは、maildir
形式と同様に、各メールを個別のファイルに保存します。 -
Dovecot はパス内の
%n
変数をユーザー名に解決します。これは、各ユーザーがメールボックス用に個別のディレクトリーを持つようにするために必要です。
-
Dovecot は、
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/VirtualUsers.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailLocation.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailboxFormat.dbox.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Variables.txt
9.2.4. LDAP を Dovecot 認証バックエンドとして使用する
通常、LDAP ディレクトリー内のユーザーは、ディレクトリーサービスに対して自分自身を認証できます。Dovecot は、これを使用して、ユーザーが IMAP または POP3 サービスにログインする場合、ユーザーを認証できます。この認証方法には、次のとおり、多くの利点があります。
- 管理者は、ディレクトリーでユーザーを集中管理できます。
- LDAP アカウントには、特別な属性は必要ありません。LDAP サーバーから認証を受けることができれば十分です。したがって、この方法は、LDAP サーバーで使用されるパスワード保存方式とは無関係です。
- ユーザーは、Name Service Switch (NSS) インターフェイスと Pluggable Authentication Module (PAM) フレームワークを介して、サーバー上でローカルに利用できる必要はありません。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
- 仮想ユーザー機能が設定されています。
- LDAP サーバーへの接続は、TLS 暗号化をサポートします。
- Dovecot サーバー上の RHEL は、LDAP サーバーの認証局 (CA) 証明書を信頼します。
- ユーザーが LDAP ディレクトリーの異なるツリーに保存されている場合、ディレクトリーを検索するための Dovecot 専用の LDAP アカウントが存在します。このアカウントには、他のユーザーの識別名 (DN) を検索する権限が必要です。
手順
/etc/dovecot/conf.d/10-auth.conf
ファイルで認証バックエンドを設定します。不要な
auth-*.conf.ext
認証バックエンド設定ファイルのinclude
ステートメントをコメントアウトします。次に例を示します。#!include auth-system.conf.ext
次の行をコメント解除して、LDAP 認証を有効にします。
!include auth-ldap.conf.ext
/etc/dovecot/conf.d/auth-ldap.conf.ext
ファイルを編集し、次のようにoverride_fields
パラメーターをuserdb
セクションに追加します。userdb { driver = ldap args = /etc/dovecot/dovecot-ldap.conf.ext override_fields = uid=vmail gid=vmail home=/var/mail/%n/ }
固定値のため、Dovecot は LDAP サーバーからこれらの設定をクエリーしません。したがって、これらの属性も存在する必要はありません。
次の設定で
/etc/dovecot/dovecot-ldap.conf.ext
ファイルを作成します。LDAP 構造に応じて、次のいずれかを設定します。
ユーザーが LDAP ディレクトリーの異なるツリーに保存されている場合は、動的 DN 検索を設定します。
dn = cn=dovecot_LDAP,dc=example,dc=com dnpass = password pass_filter = (&(objectClass=posixAccount)(uid=%n))
Dovecot は、指定された DN、パスワード、およびフィルターを使用して、ディレクトリー内の認証ユーザーの DN を検索します。この検索では、Dovecot はフィルター内の
%n
をユーザー名に置き換えます。LDAP 検索で返される結果は 1 つだけであることに注意してください。すべてのユーザーが特定のエントリーに保存されている場合は、DN テンプレートを設定します。
auth_bind_userdn = cn=%n,ou=People,dc=example,dc=com
LDAP サーバーへの認証バインドを有効にして、Dovecot ユーザーを確認します。
auth_bind = yes
URL を LDAP サーバーに設定します。
uris = ldaps://LDAP-srv.example.com
セキュリティー上の理由から、LDAP プロトコル上で LDAPS または
STARTTLS
コマンドを使用した暗号化された接続のみを使用してください。後者の場合は、さらにtls = yes
を設定に追加します。証明書の検証を機能させるには、LDAP サーバーのホスト名が TLS 証明書で使用されているホスト名と一致する必要があります。
LDAP サーバーの TLS 証明書の検証を有効にします。
tls_require_cert = hard
ベース DN には、ユーザーの検索を開始する DN を設定します。
base = ou=People,dc=example,dc=com
検索範囲を設定します。
scope = onelevel
Dovecot は、指定されたベース DN のみを
onelevel
スコープで検索し、サブツリーもsubtree
スコープで検索します。
/etc/dovecot/dovecot-ldap.conf.ext
ファイルにセキュアな権限を設定します。# chown root:root /etc/dovecot/dovecot-ldap.conf.ext # chmod 600 /etc/dovecot/dovecot-ldap.conf.ext
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/example-config/dovecot-ldap.conf.ext
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/UserDatabase.Static.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/AuthDatabase.LDAP.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/AuthDatabase.LDAP.AuthBinds.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/AuthDatabase.LDAP.PasswordLookups.txt
9.2.5. Dovecot 設定の完了
Dovecot をインストールして設定したら、firewalld
サービスで必要なポートを開き、サービスを有効にして開始します。その後、サーバーをテストできます。
前提条件
以下は Dovecot で設定されています。
- TLS 暗号化
- 認証バックエンド
- クライアントは認証局 (CA) 証明書を信頼します。
手順
IMAP または POP3 サービスのみをユーザーに提供する場合は、
/etc/dovecot/dovecot.conf
ファイルのprotocol
パラメーターをコメント解除し、必要なプロトコルに設定します。たとえば、POP3 を必要としない場合は、次のように設定します。protocols = imap lmtp
デフォルトでは、
imap
、pop3
、およびlmtp
プロトコルが有効になっています。ローカルファイアウォールでポートを開きます。たとえば、IMAPS、IMAP、POP3S、および POP3 プロトコルのポートを開くには、次のように入力します。
# firewall-cmd --permanent --add-service=imaps --add-service=imap --add-service=pop3s --add-service=pop3 # firewall-cmd --reload
dovecot
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now dovecot
検証
Dovecot に接続して電子メールを読むには、Mozilla Thunderbird などのメールクライアントを使用します。メールクライアントの設定は、使用するプロトコルによって異なります。
表9.2 Dovecot サーバーへの接続設定
デフォルトでは、Dovecot は TLS を使用しない接続ではプレーンテキスト認証を受け入れないため、この表には暗号化されていない接続の設定がリストされていないことに注意してください。
デフォルト以外の値を含む設定を表示します。
# doveconf -n
関連情報
-
firewall-cmd(1)
man ページ
9.3. MariaDB SQL 認証を使用した Dovecot サーバーのセットアップ
ユーザーとパスワードを MariaDB SQL サーバーに保存する場合、それをユーザーデータベースと認証バックエンドとして使用するように、Dovecot を設定できます。この設定では、アカウントをデータベースで集中管理するため、ユーザーは Dovecot サーバー上のファイルシステムにローカルアクセスできません。
複数の Dovecot サーバーをレプリケーションでセットアップして、メールボックスを高可用性にする予定がある場合にも、集中管理されたアカウントは利点があります。
9.3.1. Dovecot のインストール
dovecot
パッケージは以下を提供します。
-
dovecot
サービスとそれを管理するユーティリティー - Dovecot がオンデマンドで開始するサービス (認証など)
- サーバーサイドメールフィルタリングなどのプラグイン
-
/etc/dovecot/
ディレクトリーの設定ファイル -
/usr/share/doc/dovecot/
ディレクトリーのドキュメント
手順
dovecot
パッケージをインストールします。# yum install dovecot
注記Dovecot がすでにインストールされていて、クリーンな設定ファイルが必要な場合は、
/etc/dovecot/
ディレクトリーを名前変更するか削除してください。その後、パッケージを再インストールします。設定ファイルを削除しないと、yum uninstall dovecot
コマンドは/etc/dovecot/
内の設定ファイルをリセットしません。
次のステップ
9.3.2. Dovecot サーバーでの TLS 暗号化の設定
Dovecot はセキュアなデフォルト設定を提供します。たとえば、TLS はデフォルトで有効になっており、認証情報と暗号化されたデータをネットワーク経由で送信します。Dovecot サーバーで TLS を設定するには、証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定するだけです。さらに、Diffie-Hellman パラメーターを生成して使用し、Perfect Forward Secrecy (PFS) を提供することで、TLS 接続のセキュリティーを強化できます。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
次のファイルが、サーバー上のリストされた場所にコピーされました。
-
サーバー証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt
-
秘密鍵:
/etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
-
認証局 (CA) 証明書:
/etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
-
サーバー証明書:
-
サーバー証明書の
Subject DN
フィールドのホスト名は、サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN) と一致します。
手順
秘密鍵ファイルにセキュアな権限を設定します。
# chown root:root /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key # chmod 600 /etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
Diffie-Hellman パラメーターを使用してファイルを生成します。
# openssl dhparam -out /etc/dovecot/dh.pem 4096
サーバーのハードウェアとエントロピーによっては、4096 ビットの Diffie-Hellman パラメーターを生成するのに数分かかる場合があります。
/etc/dovecot/conf.d/10-ssl.conf
ファイルで証明書と秘密鍵ファイルへのパスを設定します。ssl_cert
およびssl_key
パラメーターを更新し、サーバーの証明書と秘密鍵へのパスを使用するように設定します。ssl_cert = </etc/pki/dovecot/certs/server.example.com.crt ssl_key = </etc/pki/dovecot/private/server.example.com.key
ssl_ca
パラメーターをコメント解除し、CA 証明書へのパスを使用するように設定します。ssl_ca = </etc/pki/dovecot/certs/ca.crt
ssl_dh
パラメーターをコメント解除し、Diffie-Hellman パラメーターファイルへのパスを使用するように設定します。ssl_dh = </etc/dovecot/dh.pem
重要Dovecot がファイルからパラメーターの値を確実に読み取るようにするには、パスの先頭に
<
文字を付ける必要があります。
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/SSL.DovecotConfiguration.txt
9.3.3. 仮想ユーザーを使用するための Dovecot の準備
デフォルトでは、Dovecot はサービスを使用するユーザーとして、ファイルシステム上で多くのアクションを実行します。ただし、1 人のローカルユーザーを使用してこれらのアクションを実行するように Dovecot バックエンドを設定すると、複数の利点があります。
- Dovecot は、ユーザーの ID (UID) を使用する代わりに、特定のローカルユーザーとしてファイルシステムアクションを実行します。
- ユーザーは、サーバー上でローカルに利用できる必要はありません。
- すべてのメールボックスとユーザー固有のファイルを 1 つのルートディレクトリーに保存できます。
- ユーザーは UID とグループ ID (GID) を必要としないため、管理作業が軽減されます。
- サーバー上のファイルシステムにアクセスできるユーザーは、これらのファイルにアクセスできないため、メールボックスやインデックスを危険にさらす可能性はありません。
- レプリケーションのセットアップはより簡単です。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
手順
vmail
ユーザーを作成します。# useradd --home-dir /var/mail/ --shell /usr/sbin/nologin vmail
Dovecot は後でこのユーザーを使用してメールボックスを管理します。セキュリティー上の理由から、この目的で
dovecot
またはdovenull
システムユーザーを使用しないでください。/var/mail/
以外のパスを使用する場合は、それに SELinux コンテキストmail_spool_t
を設定します。例:# semanage fcontext -a -t mail_spool_t "<path>(/.*)?" # restorecon -Rv <path>
/var/mail/
への書き込み権限をvmail
ユーザーにのみ付与します。# chown vmail:vmail /var/mail/ # chmod 700 /var/mail/
/etc/dovecot/conf.d/10-mail.conf
ファイルのmail_location
パラメーターをコメント解除し、メールボックスの形式と場所を設定します。mail_location = sdbox:/var/mail/%n/
この設定の場合:
-
Dovecot は、
single
モードで高パフォーマンスのdbox
メールボックス形式を使用します。このモードでは、サービスは、maildir
形式と同様に、各メールを個別のファイルに保存します。 -
Dovecot はパス内の
%n
変数をユーザー名に解決します。これは、各ユーザーがメールボックス用に個別のディレクトリーを持つようにするために必要です。
-
Dovecot は、
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/VirtualUsers.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailLocation.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailboxFormat.dbox.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Variables.txt
9.3.4. Dovecot 認証バックエンドとして MariaDB SQL データベースを使用する
Dovecot は、MariaDB データベースからアカウントとパスワードを読み取り、これを使用して、ユーザーが IMAP または POP3 サービスにログインする場合、ユーザーを認証できます。この認証方法の利点は次のとおりです。
- 管理者は、データベースでユーザーを集中管理できます。
- ユーザーはサーバー上でローカルにアクセスできません。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
- 仮想ユーザー機能が設定されています。
- MariaDB サーバーへの接続では、TLS 暗号化がサポートされます。
-
dovecotDB
データベースは MariaDB に存在し、users
テーブルには、少なくともusername
およびpassword
列が含まれています。 -
password
列には、Dovecot がサポートするスキームで暗号化されたパスワードが含まれています。 -
パスワードは、同じスキームを使用するか、
{pw-storage-scheme}
接頭辞を使用します。 -
MariaDB ユーザー
dovecot
は、dovecotDB
データベースのusers
テーブルに対する読み取り権限を持っています。 -
MariaDB サーバーの TLS 証明書を発行した認証局 (CA) の証明書は、Dovecot サーバーの
/etc/pki/tls/certs/ca.crt
ファイルに保存されます。
手順
dovecot-mysql
パッケージをインストールします。# yum install dovecot-mysql
/etc/dovecot/conf.d/10-auth.conf
ファイルで認証バックエンドを設定します。不要な
auth-*.conf.ext
認証バックエンド設定ファイルのinclude
ステートメントをコメントアウトします。次に例を示します。#!include auth-system.conf.ext
次の行をコメント解除して、SQL 認証を有効にします。
!include auth-sql.conf.ext
/etc/dovecot/conf.d/auth-sql.conf.ext
ファイルを編集し、override_fields
パラメーターをuserdb
セクションに次のように追加します。userdb { driver = sql args = /etc/dovecot/dovecot-sql.conf.ext override_fields = uid=vmail gid=vmail home=/var/mail/%n/ }
固定値のため、Dovecot はこれらの設定を SQL サーバーからクエリーしません。
次の設定で
/etc/dovecot/dovecot-sql.conf.ext
ファイルを作成します。driver = mysql connect = host=mariadb_srv.example.com dbname=dovecotDB user=dovecot password=dovecotPW ssl_ca=/etc/pki/tls/certs/ca.crt default_pass_scheme = SHA512-CRYPT user_query = SELECT username FROM users WHERE username='%u'; password_query = SELECT username AS user, password FROM users WHERE username='%u'; iterate_query = SELECT username FROM users;
データベースサーバーに対して TLS 暗号化を使用するには、
ssl_ca
オプションに MariaDB サーバー証明書を発行した CA の証明書のパスを設定します。証明書の検証を機能させるには、MariaDB サーバーのホスト名が TLS 証明書で使用されているホスト名と一致する必要があります。データベースのパスワード値に
{pw-storage-scheme}
接頭辞が含まれている場合は、default_pass_scheme
設定を省略できます。ファイル内のクエリーは、次のように設定する必要があります。
-
user_query
パラメーターの場合、クエリーは Dovecot ユーザーのユーザー名を返す必要があります。また、クエリーは 1 つの結果のみを返す必要があります。 -
password_query
パラメーターの場合、クエリーはユーザー名とパスワードを返す必要があり、Dovecot はuser
およびpassword
変数でこれらの値を使用する必要があります。したがって、データベースが異なる列名を使用している場合は、AS
SQL コマンドを使用して、結果の列の名前を変更してください。 -
iterate_query
パラメーターの場合、クエリーはすべてのユーザーのリストを返す必要があります。
-
/etc/dovecot/dovecot-sql.conf.ext
ファイルにセキュアな権限を設定します。# chown root:root /etc/dovecot/dovecot-sql.conf.ext # chmod 600 /etc/dovecot/dovecot-sql.conf.ext
次のステップ
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/example-config/dovecot-sql.conf.ext
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Authentication.PasswordSchemes.txt
9.3.5. Dovecot 設定の完了
Dovecot をインストールして設定したら、firewalld
サービスで必要なポートを開き、サービスを有効にして開始します。その後、サーバーをテストできます。
前提条件
以下は Dovecot で設定されています。
- TLS 暗号化
- 認証バックエンド
- クライアントは認証局 (CA) 証明書を信頼します。
手順
IMAP または POP3 サービスのみをユーザーに提供する場合は、
/etc/dovecot/dovecot.conf
ファイルのprotocol
パラメーターをコメント解除し、必要なプロトコルに設定します。たとえば、POP3 を必要としない場合は、次のように設定します。protocols = imap lmtp
デフォルトでは、
imap
、pop3
、およびlmtp
プロトコルが有効になっています。ローカルファイアウォールでポートを開きます。たとえば、IMAPS、IMAP、POP3S、および POP3 プロトコルのポートを開くには、次のように入力します。
# firewall-cmd --permanent --add-service=imaps --add-service=imap --add-service=pop3s --add-service=pop3 # firewall-cmd --reload
dovecot
サービスを有効にして開始します。# systemctl enable --now dovecot
検証
Dovecot に接続して電子メールを読むには、Mozilla Thunderbird などのメールクライアントを使用します。メールクライアントの設定は、使用するプロトコルによって異なります。
表9.3 Dovecot サーバーへの接続設定
デフォルトでは、Dovecot は TLS を使用しない接続ではプレーンテキスト認証を受け入れないため、この表には暗号化されていない接続の設定がリストされていないことに注意してください。
デフォルト以外の値を含む設定を表示します。
# doveconf -n
関連情報
-
firewall-cmd(1)
man ページ
9.4. 2 つの Dovecot サーバー間のレプリケーションの設定
双方向のレプリケーションを使用すると、Dovecot サーバーを高可用性にすることができ、IMAP および POP3 クライアントは両方のサーバーのメールボックスにアクセスできます。Dovecot は、各メールボックスのインデックスログの変更を追跡し、競合を安全な方法で解決します。
両方の複製パートナーでこの手順を実行します。
レプリケーションは、サーバーペア間でのみ機能します。したがって、大規模なクラスターでは、複数の独立したバックエンドペアが必要になります。
前提条件
- 両方のサーバーが同じ認証バックエンドを使用します。できれば、LDAP または SQL を使用して、アカウントを集中管理してください。
-
Dovecot ユーザーデータベース設定は、ユーザーリストをサポートします。これを確認するには、
doveadm user '*'
コマンドを使用します。 -
Dovecot は、ユーザー ID (UID) ではなく、
vmail
ユーザーとしてファイルシステム上のメールボックスにアクセスします。
手順
/etc/dovecot/conf.d/10-replication.conf
ファイルを作成し、その中で次の手順を実行します。notify
およびreplication
プラグインを有効にします。mail_plugins = $mail_plugins notify replication
service replicator
セクションを追加します。service replicator { process_min_avail = 1 unix_listener replicator-doveadm { mode = 0600 user = vmail } }
これらの設定により、
dovecot
サービスの開始時に、Dovecot は 1 つ以上のレプリケータープロセスを開始します。さらに、このセクションはreplicator-doveadm
ソケットの設定を定義します。service aggregator
セクションを追加して、replication-notify-fifo
パイプとreplication-notify
ソケットを設定します。service aggregator { fifo_listener replication-notify-fifo { user = vmail } unix_listener replication-notify { user = vmail } }
service doveadm
セクションを追加して、レプリケーションサービスのポートを定義します。service doveadm { inet_listener { port = 12345 } }
doveadm
レプリケーションサービスのパスワードを設定します。doveadm_password = replication_password
パスワードは、両方のサーバーで同じにする必要があります。
レプリケーションパートナーを設定します。
plugin { mail_replica = tcp:server2.example.com:12345 }
オプション: 並列
dsync
プロセスの最大数を定義します。replication_max_conns = 20
replication_max_conns
のデフォルト値は10
です。
/etc/dovecot/conf.d/10-replication.conf
ファイルにセキュアな権限を設定します。# chown root:root /etc/dovecot/conf.d/10-replication.conf # chmod 600 /etc/dovecot/conf.d/10-replication.conf
Dovecot が
doveadm
レプリケーションポートを開くことができるように、SELinux ブール値nis_enabled
を有効にします。setsebool -P nis_enabled on
レプリケーションパートナーのみがレプリケーションポートにアクセスできるように、
firewalld
ルールを設定します。次に例を示します。# firewall-cmd --permanent --zone=public --add-rich-rule="rule family="ipv4" source address="192.0.2.1/32" port protocol="tcp" port="12345" accept" # firewall-cmd --permanent --zone=public --add-rich-rule="rule family="ipv6" source address="2001:db8:2::1/128" port protocol="tcp" port="12345" accept" # firewall-cmd --reload
IPv4 アドレスのサブネットマスク
/32
と IPv6 アドレスのサブネットマスク/128
は、指定されたアドレスへのアクセスを制限します。- この手順は、他のレプリケーションパートナーでも実行します。
Dovecot をリロードします。
# systemctl reload dovecot
検証
- 1 つのサーバーのメールボックスでアクションを実行し、Dovecot が変更を他のサーバーにレプリケートしたかどうかを確認します。
レプリケーターステータスを表示します。
# doveadm replicator status Queued 'sync' requests 0 Queued 'high' requests 0 Queued 'low' requests 0 Queued 'failed' requests 0 Queued 'full resync' requests 30 Waiting 'failed' requests 0 Total number of known users 75
特定のユーザーのレプリケーターステータスを表示します。
# doveadm replicator status example_user username priority fast sync full sync success sync failed example_user none 02:05:28 04:19:07 02:05:28 -
関連情報
-
dsync(1)
man ページ -
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Replication.txt
9.5. ユーザーを IMAP メールボックスに自動的に登録する
通常、IMAP サーバー管理者は、Dovecot が Sent
や Trash
などの特定のメールボックスを自動的に作成し、ユーザーをそれらに登録することを望んでいます。これは設定ファイルに設定できます。
さらに、特殊用途のメールボックス を定義できます。多くの場合、IMAP クライアントは、メールの送信など、特別な目的のためにメールボックスを定義することをサポートしています。ユーザーが正しいメールボックスを手動で選択して設定する必要がないようにするために、IMAP サーバーは IMAP LIST
コマンドで special-use
属性を送信できます。その後、クライアントはこの属性を使用して、送信済みメールのメールボックスなどを識別および設定できます。
前提条件
- Dovecot が設定されている。
手順
/etc/dovecot/conf.d/15-mailboxes.conf
ファイルのinbox
namespace セクションを更新します。auto = subscribe
設定を、ユーザーが利用できるようにする必要がある各特殊用途のメールボックスに追加します。次に例を示します。namespace inbox { ... mailbox Drafts { special_use = \Drafts auto = subscribe } mailbox Junk { special_use = \Junk auto = subscribe } mailbox Trash { special_use = \Trash auto = subscribe } mailbox Sent { special_use = \Sent auto = subscribe } ... }
メールクライアントがより特殊用途のメールボックスをサポートしている場合は、同様のエントリーを追加できます。
special_use
パラメーターは、Dovecot がspecial-use
属性でクライアントに送信する値を定義します。オプション: 特別な目的のない他のメールボックスを定義する場合は、ユーザーの受信トレイにそれらの
mailbox
セクションを追加します。次に例を示します。namespace inbox { ... mailbox "Important Emails" { auto = <value> } ... }
auto
パラメーターは、次のいずれかの値に設定できます。-
subscribe
: メールボックスを自動的に作成し、ユーザーを登録します。 -
create
: ユーザーを登録せずに、メールボックスを自動的に作成します。 -
no
(デフォルト): Dovecot はメールボックスを作成することも、ユーザーを登録することもしません。
-
Dovecot をリロードします。
# systemctl reload dovecot
検証
IMAP クライアントを使用してメールボックスにアクセスします。
auto = subscribe
が設定されたメールボックスは、自動的に表示されます。クライアントが特殊用途のメールボックスと定義された目的をサポートしている場合、クライアントはそれらを自動的に使用します。
関連情報
- RFC 6154: 特殊用途メールボックスの IMAP LIST 拡張
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/MailboxSettings.txt
9.6. LMTP ソケットと LMTPS リスナーの設定
Postfix などの SMTP サーバーは、Local Mail Transfer Protocol (LMTP) を使用して電子メールを Dovecot に配信します。SMTP サーバーが実行されている場合:
- Dovecot と同じホストで、LMTP ソケットを使用します。
別のホストで、LMTP サービスを使用する
デフォルトでは、LMTP プロトコルは暗号化されていません。ただし、TLS 暗号化を設定した場合、Dovecot は LMTP サービスに同じ設定を自動的に使用します。その後、SMTP サーバーは、LMTPS プロトコルまたは LMTP 上の
STARTTLS
コマンドを使用して接続できます。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
- LMTP サービスを設定する場合、Dovecot で TLS 暗号化が設定されます。
手順
LMTP プロトコルが有効になっていることを確認します。
# doveconf -a | egrep "^protocols" protocols = imap pop3 lmtp
出力に
lmtp
が含まれている場合、プロトコルは有効になっています。lmtp
プロトコルが無効になっている場合は、/etc/dovecot/dovecot.conf
ファイルを編集し、protocols
パラメーターの値にlmtp
を追加します。protocols = ... lmtp
LMTP ソケットまたはサービスが必要かどうかに応じて、
/etc/dovecot/conf.d/10-master.conf
ファイルのservice lmtp
セクションで次の変更を行います。LMTP ソケット: デフォルトでは、Dovecot は自動的に
/var/run/dovecot/lmtp
ソケットを作成します。オプション: 所有権と権限をカスタマイズします。
service lmtp { ... unix_listener lmtp { mode = 0600 user = postfix group = postfix } ... }
LMTP サービス:
inet_listener
サブセクションを追加します。service lmtp { ... inet_listener lmtp { port = 24 } ... }
SMTP サーバーのみが LMTP ポートにアクセスできるように、
firewalld
ルールを設定します。次に例を示します。# firewall-cmd --permanent --zone=public --add-rich-rule="rule family="ipv4" source address="192.0.2.1/32" port protocol="tcp" port="24" accept" # firewall-cmd --permanent --zone=public --add-rich-rule="rule family="ipv6" source address="2001:db8:2::1/128" port protocol="tcp" port="24" accept" # firewall-cmd --reload
IPv4 アドレスのサブネットマスク
/32
と IPv6 アドレスのサブネットマスク/128
は、指定されたアドレスへのアクセスを制限します。Dovecot をリロードします。
# systemctl reload dovecot
検証
LMTP ソケットを設定した場合は、Dovecot がソケットを作成したことと、権限が正しいことを確認します。
# ls -l /var/run/dovecot/lmtp srw-------. 1 postfix postfix 0 Nov 22 17:17 /var/run/dovecot/lmtp
LMTP ソケットまたはサービスを使用して、Dovecot に電子メールを送信するように、SMTP サーバーを設定します。
LMTP サービスを使用する場合は、SMTP サーバーが LMTPS プロトコルを使用するか、
STARTTLS
コマンドを送信して暗号化された接続を使用するようにしてください。
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/LMTP.txt
9.7. Dovecot で IMAP または POP3 サービスを無効にする
デフォルトでは、Dovecot は IMAP および POP3 サービスを提供します。そのうちの 1 つだけが必要な場合は、もう 1 つを無効にして、攻撃サーフェスを減らすことができます。
前提条件
- Dovecot がインストールされています。
手順
/etc/dovecot/dovecot.conf
ファイルのprotocols
パラメーターをコメント解除し、必要なプロトコルを使用するように設定します。たとえば、POP3 を必要としない場合は、次のように設定します。protocols = imap lmtp
デフォルトでは、
imap
、pop3
、およびlmtp
プロトコルが有効になっています。Dovecot をリロードします。
# systemctl reload dovecot
ローカルファイアウォールで不要になったポートを閉じます。たとえば、POP3S および POP3 プロトコルのポートを閉じるには、次のように入力します。
# firewall-cmd --remove-service=pop3s --remove-service=pop3 # firewall-cmd --reload
検証
dovecot
プロセスによって開かれたLISTEN
モードのすべてのポートを表示します。# ss -tulp | grep dovecot tcp LISTEN 0 100 0.0.0.0:993 0.0.0.0:* users:(("dovecot",pid=1405,fd=44)) tcp LISTEN 0 100 0.0.0.0:143 0.0.0.0:* users:(("dovecot",pid=1405,fd=42)) tcp LISTEN 0 100 [::]:993 [::]:* users:(("dovecot",pid=1405,fd=45)) tcp LISTEN 0 100 [::]:143 [::]:* users:(("dovecot",pid=1405,fd=43))
この例では、Dovecot は TCP ポート
993
(IMAPS) と143
(IMAP) のみをリッスンします。ソケットを使用する代わりにポートをリッスンするようにサービスを設定した場合、Dovecot は LMTP プロトコルのポートのみを開くことに注意してください。
関連情報
-
firewall-cmd(1)
man ページ
9.8. Dovecot IMAP サーバーで Sieve を使用してサーバーサイドメールフィルタリングを有効にする
ManageSieve プロトコルを使用して、Sieve スクリプトをサーバーにアップロードできます。Sieve スクリプトは、受信メールに対してサーバーが検証して実行するルールとアクションを定義します。たとえば、ユーザーは Sieve を使用して特定の送信者からの電子メールを転送でき、管理者はグローバルフィルターを作成して、スパムフィルターによってフラグが付けられたメールを別の IMAP フォルダーに移動できます。
ManageSieve
プラグインは、Sieve スクリプトと ManageSieve プロトコルのサポートを Dovecot IMAP サーバーに追加します。
TLS 接続を介した ManageSieve プロトコルの使用をサポートするクライアントのみを使用してください。このプロトコルの TLS を無効にすると、クライアントはネットワーク経由で認証情報をプレーンテキストで送信します。
前提条件
- Dovecot が設定され、IMAP メールボックスを提供します。
- TLS 暗号化は Dovecot で設定されます。
- メールクライアントは、TLS 接続を介して ManageSieve プロトコルをサポートします。
手順
dovecot-pigeonhole
パッケージをインストールします。# yum install dovecot-pigeonhole
/etc/dovecot/conf.d/20-managesieve.conf
の次の行をコメント解除して、sieve
プロトコルを有効にします。protocols = $protocols sieve
この設定により、すでに有効になっている他のプロトコルに加えて、Sieve が有効になります。
firewalld
で ManageSieve ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-service=managesieve # firewall-cmd --reload
Dovecot をリロードします。
# systemctl reload dovecot
検証
クライアントを使用し、Sieve スクリプトをアップロードします。次の接続設定を使用します。
- ポート: 4190
- 接続セキュリティー: SSL/TLS
- 認証方法: PLAIN
- Sieve スクリプトをアップロードしたユーザーに電子メールを送信します。電子メールがスクリプトのルールと一致する場合は、サーバーが定義されたアクションを実行することを確認します。
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Pigeonhole.Sieve.Plugins.IMAPSieve.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Pigeonhole.Sieve.Troubleshooting.txt
-
firewall-cmd(1)
man ページ
9.9. Dovecot が設定ファイルを処理する方法
dovecot
パッケージは、メインの設定ファイル /etc/dovecot/dovecot.conf
、および /etc/dovecot/conf.d/
ディレクトリー内の複数の設定ファイルを提供します。Dovecot は、サービスの開始時にファイルを組み合わせて設定を構築します。
複数の設定ファイルの主な利点は、設定をグループ化し、読みやすくすることです。単一の設定ファイルを使用する場合は、代わりに /etc/dovecot/dovecot.conf
ですべての設定を維持し、そのファイルからすべての include
および include_try
ステートメントを削除できます。
関連情報
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/ConfigFile.txt
-
/usr/share/doc/dovecot/wiki/Variables.txt
第10章 印刷の設定
Red Hat Enterprise Linux では、Common UNIX Printing System (CUPS) によって印刷を管理します。ユーザーはホスト上の CUPS でプリンターを設定して印刷します。さらに、CUPS でプリンターを共有し、ホストをプリントサーバーとして使用できます。
CUPS は次のプリンターへの印刷をサポートしています。
- AirPrint™ および IPP Everywhere™ プリンター
- 従来の PostScript Printer description (PPD) ベースのドライバーを備えたネットワークおよびローカル USB プリンター
10.1. CUPS のインストールと設定
CUPS を使用してローカルホストから印刷できます。このホストを使用してネットワーク内でプリンターを共有し、プリントサーバーとして機能させることもできます。
手順
cups
パッケージをインストールします。# yum install cups
CUPS をプリントサーバーとして設定する場合は、
/etc/cups/cupsd.conf
ファイルを編集し、次の変更を加えます。CUPS をリモートで設定する場合、またはこのホストをプリントサーバーとして使用する場合は、CUPS がリッスンする IP アドレスとポートを設定します。
Listen 192.0.2.1:631 Listen [2001:db8:1::1]:631
デフォルトでは、CUPS は
localhost
インターフェイス (127.0.0.1
および::1
) でのみリッスンします。IPv6 アドレスは角括弧で囲んで指定します。重要信頼できないネットワーク (インターネットなど) からのアクセスを許可するインターフェイスをリッスンするように CUPS を設定しないでください。
<Location />
ディレクティブでそれぞれの IP 範囲を許可することで、サービスにアクセスできる IP 範囲を設定します。<Location /> Allow from 192.0.2.0/24 Allow from [2001:db8:1::1]/32 Order allow,deny </Location>
<Location /admin>
ディレクティブで、CUPS 管理サービスにアクセスできる IP アドレスと範囲を設定します。<Location /admin> Allow from 192.0.2.15/32 Allow from [2001:db8:1::22]/128 Order allow,deny </Location>
この設定では、IP アドレス
192.0.2.15
および2001:db8:1::22
を持つホストのみが管理サービスにアクセスできます。オプション: Web インターフェイスで設定ファイルとログファイルへのアクセスを許可する IP アドレスと範囲を設定します。
<Location /admin/conf> Allow from 192.0.2.15/32 Allow from [2001:db8:1::22]/128 ... </Location> <Location /admin/log> Allow from 192.0.2.15/32 Allow from [2001:db8:1::22]/128 ... </Location>
firewalld
サービスを実行し、CUPS へのリモートアクセスを設定する場合は、firewalld
で CUPS ポートを開きます。# firewall-cmd --permanent --add-port=631/tcp # firewall-cmd --reload
複数のインターフェイスを持つホストで CUPS を実行する場合は、必要なネットワークにアクセスを制限することを検討してください。
cups
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now cups
検証
ブラウザーを使用して、
http://<hostname>:631
にアクセスします。Web インターフェイスに接続できれば、CUPS は動作しています。Administration
タブなどの一部の機能では、認証と HTTPS 接続が必要であることに注意してください。デフォルトでは、CUPS は HTTPS アクセスに自己署名証明書を使用するため、認証時の接続はセキュアではありません。
10.2. CUPS サーバーでの TLS 暗号化の設定
CUPS は TLS 暗号化接続をサポートしており、デフォルトでは、サービスは認証を必要とするすべてのリクエストに対して暗号化接続を強制します。証明書が設定されていない場合、CUPS は秘密鍵と自己署名証明書を作成します。これで十分なのは、ローカルホスト自体から CUPS にアクセスする場合だけです。ネットワーク経由でセキュアに接続するには、認証局 (CA) によって署名されたサーバー証明書を使用します。
暗号化を使用しなかった場合、または自己署名証明書を使用した場合、中間者 (MITM) 攻撃により、次のような情報が漏洩する可能性があります。
- Web インターフェイスを使用して CUPS を設定する際の管理者の認証情報
- ネットワーク経由で印刷ジョブを送信する際の機密データ
前提条件
- CUPS が設定されている。
- 秘密鍵の作成 が完了していて、その秘密鍵に対するサーバー証明書が CA から発行されている。
- 中間証明書をサーバー証明書にアタッチしている (サーバー証明書を検証するために中間証明書が必要な場合)。
- CUPS にはサービスが鍵を読み取るときにパスワードを入力するオプションがないため、秘密鍵はパスワードで保護されません。
証明書の正規名 (
CN
) またはサブジェクト代替名 (SAN) フィールドが、次のいずれかと一致する。- CUPS サーバーの完全修飾ドメイン名 (FQDN)
- DNS によってサーバーの IP アドレスに解決されるエイリアス
- 秘密鍵とサーバー証明書ファイルが、Privacy Enhanced Mail (PEM) 形式を使用している。
- クライアントが CA 証明書を信頼している。
手順
/etc/cups/cups-files.conf
ファイルを編集し、次の設定を追加して自己署名証明書の自動作成を無効にします。CreateSelfSignedCerts no
自己署名証明書と秘密鍵を削除します。
# rm /etc/cups/ssl/<hostname>.crt /etc/cups/ssl/<hostname>.key
オプション: サーバーの FQDN を表示します。
# hostname -f server.example.com
オプション: 証明書の
CN
フィールドと SAN フィールドを表示します。# openssl x509 -text -in /etc/cups/ssl/server.example.com.crt Certificate: Data: ... Subject: CN = server.example.com ... X509v3 extensions: ... X509v3 Subject Alternative Name: DNS:server.example.com ...
サーバー証明書の
CN
または SAN フィールドにサーバーの FQDN とは異なるエイリアスが含まれている場合は、ServerAlias
パラメーターを/etc/cups/cupsd.conf
ファイルに追加します。ServerAlias alternative_name.example.com
この場合、以降の手順で FQDN の代わりに代替名を使用します。
秘密鍵とサーバー証明書を
/etc/cups/ssl/
ディレクトリーに保存します。次に例を示します。# mv /root/server.key /etc/cups/ssl/server.example.com.key # mv /root/server.crt /etc/cups/ssl/server.example.com.crt
重要CUPS では、秘密鍵に
<fqdn>.key
、サーバー証明書ファイルに<fqdn>.crt
という名前を付ける必要があります。エイリアスを使用する場合は、ファイルに<alias>.key
および<alias>.crt
という名前を付ける必要があります。root
ユーザーのみがこのファイルを読み取ることができるように、秘密鍵にセキュアなパーミッションを設定します。# chown root:root /etc/cups/ssl/server.example.com.key # chmod 600 /etc/cups/ssl/server.example.com.key
証明書は、セキュアな接続を確立する前のクライアントとサーバー間の通信の要素であるため、どのクライアントも認証なしで証明書を取得できます。したがって、サーバー証明書ファイルに厳密なパーミッションを設定する必要はありません。
SELinux コンテキストを復元します。
# restorecon -Rv /etc/cups/ssl/
デフォルトでは、CUPS は、Web インターフェイスの
/admin
ページで管理タスクを実行する場合など、タスクで認証が必要な場合にのみ暗号化接続を強制します。CUPS サーバー全体の暗号化を強制するには、
/etc/cups/cupsd.conf
ファイル内のすべての<Location>
ディレクティブにEncryption Required
を追加します。次に例を示します。<Location /> ... Encryption Required </Location>
CUPS を再起動します。
# systemctl restart cups
検証
-
ブラウザーを使用して、
https://<hostname>:631/admin/
にアクセスします。接続が成功すれば、CUPS で TLS 暗号化が正しく設定されています。 -
サーバー全体の暗号化を必須とするように設定した場合は、
http://<hostname>:631/
にアクセスします。この場合、CUPS はUpgrade Required
というエラーを返します。
トラブルシューティング
cups
サービスのsystemd
ジャーナルエントリーを表示します。# journalctl -u cups
HTTPS プロトコルを使用した Web インターフェイスへの接続に失敗した後、ジャーナルに
Unable to encrypt connection: Error while reading file
というエラーが含まれている場合は、秘密鍵とサーバー証明書ファイルの名前を確認します。
10.3. Web インターフェイスで CUPS サーバーを管理するための管理権限の付与
デフォルトでは、sys
、root
、および wheel
グループのメンバーは、Web インターフェイスで管理タスクを実行できます。しかし、他の特定のサービスもこれらのグループを使用します。たとえば、wheel
グループのメンバーは、デフォルトで、sudo
を使用して root
権限でコマンドを実行できます。CUPS 管理者が他のサービスで予期しない権限を取得しないようにするには、CUPS 管理者専用のグループを使用します。
前提条件
- CUPS が設定されている。
- 使用するクライアントの IP アドレスに、Web インターフェイスの管理領域にアクセスする権限がある。
手順
CUPS 管理者用のグループを作成します。
# groupadd cups-admins
Web インターフェイスでサービスを管理する必要があるユーザーを、
cups-admins
グループに追加します。# usermod -a -G cups-admins <username>
/etc/cups/cups-files.conf
ファイルのSystemGroup
パラメーターの値を更新し、cups-admin
グループを追加します。SystemGroup sys root wheel cups-admins
cups-admin
グループのみに管理アクセス権を与える必要がある場合は、パラメーターから他のグループ名を削除します。CUPS を再起動します。
# systemctl restart cups
検証
ブラウザーを使用して、
https://<hostname_or_ip_address>:631/admin/
にアクセスします。注記ユーザーは HTTPS プロトコルを使用する場合のみ、Web UI の管理領域にアクセスできます。
-
管理タスクの実行を開始します。たとえば、
Add printer
をクリックします。 Web インターフェイスで、ユーザー名とパスワードの入力を求められます。続行するには、
cups-admins
グループのメンバーであるユーザーの認証情報を使用して認証します。認証が成功すると、このユーザーは管理タスクを実行できます。
10.4. プリンタードライバーを含むパッケージの概要
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、CUPS 用のプリンタードライバーを含むさまざまなパッケージを提供しています。これらのパッケージの概要と、パッケージに含まれるドライバーが対応するベンダーを以下に示します。
表10.1 ドライバーパッケージのリスト
パッケージ名 | プリンター用ドライバー |
---|---|
| Zebra、Dymo |
| Kodak |
| Brother、Canon、Epson、Gestetner、HP、Infotec、Kyocera、Lanier、Lexmark、NRG、Ricoh、Samsung、Savin、Sharp、Toshiba、Xerox など |
| Brother、Canon、Epson、Fujitsu、HP、Infotec、Kyocera、Lanier、NRG、Oki、Minolta、Ricoh、Samsung、Savin、Xerox など |
| HP |
| HP |
| Samsung、Xerox など |
パッケージによっては、同じプリンターベンダーまたはモデル用の、異なる機能を持つドライバーが含まれている場合があることに注意してください。
必要なパッケージをインストールした後、CUPS Web インターフェイスまたは lpinfo -m
コマンドを使用してドライバーのリストを表示できます。
10.5. プリンターがドライバーレス印刷をサポートしているかどうかの確認
CUPS はドライバーレス印刷をサポートしています。つまり、ハードウェア固有のソフトウェアをプリンターに提供しなくても印刷できます。ドライバーレス印刷を使用するには、プリンターからクライアントにその機能を通知し、次のいずれかの標準をプリンターで使用する必要があります。
- AirPrint™
- IPP Everywhere™
- Mopria®
- Wi-Fi Direct Print Services
ipptool
ユーティリティーを使用すると、プリンターがドライバーレス印刷をサポートしているかどうかを確認できます。
前提条件
- プリンターまたはリモートプリントサーバーが、インターネット印刷プロトコル (IPP) をサポートしている。
- ホストが、プリンターまたはリモートプリントサーバーの IPP ポートに接続できる。デフォルトの IPP ポートは 631 です。
手順
ipp-versions-supported
属性とdocument-format-supported
属性を照会し、get-printer-attributes
テストに合格することを確認します。リモートプリンターの場合は、次のように入力します。
# ipptool -tv ipp://<ip_address_or_hostname>:631/ipp/print get-printer-attributes.test | grep -E "ipp-versions-supported|document-format-supported|get-printer-attributes" Get printer attributes using get-printer-attributes [PASS] ipp-versions-supported (1setOf keyword) = ... document-format-supported (1setOf mimeMediaType) = ...
リモートプリントサーバー上のキューの場合は、次のように入力します。
# ipptool -tv ipp://<ip_address_or_hostname>:631/printers/<queue_name> get-printer-attributes.test | grep -E "ipp-versions-supported|document-format-supported|get-printer-attributes" Get printer attributes using get-printer-attributes [PASS] ipp-versions-supported (1setOf keyword) = ... document-format-supported (1setOf mimeMediaType) = ...
ドライバーレス印刷が機能することを確認するには、出力で次のことを確認します。
-
get-printer-attributes
テストがPASS
を返す。 - プリンターがサポートする IPP バージョンが 2.0 以降である。
形式のリストに次のいずれかが含まれている。
-
application/pdf
-
image/urf
-
image/pwg-raster
-
-
カラープリンターの場合、前述の形式のいずれかに加えて、
image/jpeg
が出力に含まれている。
10.6. Web インターフェイスを使用した CUPS へのプリンターの追加
ユーザーが CUPS 経由で印刷できるようにするには、事前にプリンターを追加する必要があります。ネットワークプリンターと、USB 経由などで CUPS ホストに直接接続されているプリンターの両方を使用できます。
CUPS ドライバーレス機能を使用するか、PostScript Printer Description (PPD) ファイルを使用してプリンターを追加できます。
CUPS はドライバーレス印刷を優先しており、ドライバーの使用は非推奨です。
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、mDNS レスポンダーにクエリーを実行することでリクエストを解決する、Name Service Switch Multicast DNS プラグイン (nss-mdns
) を提供しません。そのため、RHEL では、mDNS を使用したローカルドライバーレスプリンターの自動検出とインストールは利用できません。この問題を回避するには、1 台のプリンターを手動でインストールするか、cups-browsed
を使用してリモートプリントサーバーで使用可能な多数の印刷キューを自動的にインストールします。
前提条件
- CUPS が設定されている。
- CUPS でプリンターを管理する権限を持っている。
- CUPS をプリントサーバーとして使用する場合は、ネットワーク上でデータをセキュアに送信するために TLS 暗号化を設定 している。
- プリンターがドライバーレス印刷をサポートしている (この機能を使用する場合)。
手順
ブラウザーを使用して、
https://<hostname>:631/admin/
にアクセスします。Web インターフェイスには HTTPS プロトコルを使用して接続する必要があります。使用しないと、セキュリティー上の理由から、CUPS が後のステップで認証できなくなります。
- Add printer をクリックします。
- ユーザーがまだ認証されていない場合、CUPS は管理ユーザーの認証情報の入力を求めます。許可されたユーザーのユーザー名とパスワードを入力します。
- ドライバーレス印刷を使用せず、追加するプリンターが自動的に検出された場合は、それを選択し、Continue をクリックします。
プリンターが検出されなかった場合は、以下を実行します。
プリンターがサポートするプロトコルを選択します。
プリンターがドライバーレス印刷をサポートしており、この機能を使用する場合は、
ipp
またはipps
プロトコルを選択します。- Continue をクリックします。
プリンターまたはリモートプリントサーバー上のキューへの URL を入力します。
- Continue をクリックします。
名前を入力し、必要に応じて説明と場所を入力します。CUPS をプリントサーバーとして使用し、他のクライアントが CUPS を介してこのプリンターで印刷できるようにする場合は、Share this printer も選択します。
Make リストからプリンターの製造元を選択します。プリンターの製造元がリストにない場合は、Generic を選択するか、プリンターの PPD ファイルをアップロードします。
- Continue をクリックします。
プリンターのモデルを選択します。
- プリンターがドライバーレス印刷をサポートしている場合は、IPP Everywhere を選択します。なお、以前にプリンター固有のドライバーをローカルにインストールしていた場合は、リストに <printer_name> - IPP Everywhere などのエントリーも含まれている可能性があります。
- プリンターがドライバーレス印刷をサポートしていない場合は、モデルを選択するか、プリンターの PPD ファイルをアップロードします。
- Add Printer をクリックします。
Set printer options ページの設定とタブは、ドライバーとプリンターがサポートする機能によって異なります。このページを使用して、用紙サイズなどのデフォルトのオプションを設定します。
- Set default options をクリックします。
検証
- Web インターフェイスで Printers タブを開きます。
- プリンターの名前をクリックします。
Maintenance リストで、Print test page を選択します。
トラブルシューティング
-
ドライバーレス印刷を使用していて印刷がうまくいかない場合は、
lpadmin
ユーティリティーを使用してコマンドラインでプリンターを追加します。詳細は、lpadmin ユーティリティーを使用した CUPS へのプリンターの追加 を参照してください。
10.7. lpadmin ユーティリティーを使用した CUPS へのプリンターの追加
ユーザーが CUPS 経由で印刷できるようにするには、事前にプリンターを追加する必要があります。ネットワークプリンターと、USB 経由などで CUPS ホストに直接接続されているプリンターの両方を使用できます。
CUPS ドライバーレス機能を使用するか、PostScript Printer Description (PPD) ファイルを使用してプリンターを追加できます。
CUPS はドライバーレス印刷を優先しており、ドライバーの使用は非推奨です。
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は、mDNS レスポンダーにクエリーを実行することでリクエストを解決する、Name Service Switch Multicast DNS プラグイン (nss-mdns
) を提供しません。そのため、RHEL では、mDNS を使用したローカルドライバーレスプリンターの自動検出とインストールは利用できません。この問題を回避するには、1 台のプリンターを手動でインストールするか、cups-browsed
を使用してリモートプリントサーバーで使用可能な多数の印刷キューを自動的にインストールします。
前提条件
- CUPS が設定されている。
- プリンターがドライバーレス印刷をサポートしている (この機能を使用する場合)。
- プリンターが、ポート 631 (IPP)、9100 (ソケット)、または 515 (LPD) でデータを受信する。ポートは、プリンターへの接続に使用する方法によって異なります。
手順
CUPS にプリンターを追加します。
ドライバーレスサポートを使用してプリンターを追加するには、次のように入力します。
# lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.200/ipp/print -m everywhere
お使いのプリンターで
-m everything
オプションが機能しない場合は、-m driverless:<uri>
を試してください (例:-m driverless:ipp://192.0.2.200/ipp/print
)。ドライバーレスサポートを使用してリモートプリントサーバーのキューを追加するには、次のように入力します。
# lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.201/printers/example-queue -m everywhere
お使いのプリンターで
-m everything
オプションが機能しない場合は、-m driverless:<uri>
を試してください (例:-m driverless:ipp://192.0.2.200/printers/example-queue
)。ファイル内のドライバーを使用してプリンターを追加するには、次のように入力します。
# lpadmin -p Demo-printer -E -v socket://192.0.2.200/ -P /root/example.ppd
ファイル内のドライバーを使用してリモートプリントサーバーのキューを追加するには、次のように入力します。
# lpadmin -p Demo-printer -E -v ipp://192.0.2.201/printers/example-queue -P /root/example.ppd
ローカルドライバーデータベース内のドライバーを使用してプリンターを追加するには、次の手順を実行します。
データベース内のドライバーをリスト表示します。
# lpinfo -m ... drv:///sample.drv/generpcl.ppd Generic PCL Laser Printer ...
データベース内のドライバーへの URI を使用してプリンターを追加します。
# lpadmin -p Demo-printer -E -v socket://192.0.2.200/ -m drv:///sample.drv/generpcl.ppd
これらのコマンドでは、次のオプションを使用します。
-
-p <printer_name>
: CUPS 内のプリンターの名前を設定します。 -
-E
: プリンターを有効にします。CUPS はそのプリンターのジョブを受け付けます。このオプションは-p
の後に指定する必要があることに注意してください。詳細は、man ページのオプションの説明を参照してください。 -
-v <uri>
: プリンターまたはリモートプリントサーバーキューへの URI を設定します。 -
-m <driver_uri>
: ローカルドライバーデータベースから取得した指定のドライバー URI に基づいて PPD ファイルを設定します。 -
-P <PPD_file>
: PPD ファイルへのパスを設定します。
検証
使用可能なプリンターを表示します。
# lpstat -p printer Demo-printer is idle. enabled since Fri 23 Jun 2023 09:36:40 AM CEST
テストページを印刷します。
# lp -d Demo-printer /usr/share/cups/data/default-testpage.pdf
10.8. Web インターフェイスを使用した CUPS プリンターのメンテナンスおよび管理タスクの実行
プリンター管理者は、場合によってはプリントサーバー上でさまざまなタスクを実行する必要があります。以下に例を示します。
- 技術者がプリンターを修理している間のプリンターの一時停止などのメンテナンスタスク
- プリンターのデフォルト設定の変更などの管理タスク
これらのタスクは、CUPS の Web インターフェイスを使用して実行できます。
前提条件
- CUPS が設定されている。
- CUPS でプリンターを管理する権限を持っている。
- CUPS をプリントサーバーとして使用する場合は、ネットワーク上で認証情報をプレーンテキストで送信しないように TLS 暗号化を設定 している。
- プリンターが CUPS にすでに存在する。
手順
ブラウザーを使用して、
https://<hostname>:631/printers/
にアクセスします。Web インターフェイスには HTTPS プロトコルを使用して接続する必要があります。使用しないと、セキュリティー上の理由から、CUPS が後のステップで認証できなくなります。
- 設定するプリンターの名前をクリックします。
メンテナンスタスクを実行するか管理タスクを実行するかに応じて、対応するリストから必要なアクションを選択します。
- ユーザーがまだ認証されていない場合、CUPS は管理ユーザーの認証情報の入力を求めます。許可されたユーザーのユーザー名とパスワードを入力します。
- タスクを実行します。
10.9. Samba を使用した Kerberos 認証による Windows プリントサーバーへの印刷
samba-krb5-printing
ラッパーを使用すると、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) にログインした Active Directory (AD) ユーザーは、Kerberos を使用して Active Directory (AD) に対して認証して、Windows プリントサーバーに印刷ジョブを転送するローカルの CUPS プリントサーバーに印刷を出力できます。
この設定の利点は、RHEL 上の CUPS の管理者が、設定で固定ユーザー名およびパスワードを保存する必要がないことです。CUPS は、印刷ジョブを送信するユーザーの Kerberos チケットで AD に対して認証します。
Red Hat は、ローカルシステムから CUPS への印刷ジョブの送信のみをサポートしています。Samba プリントサーバー上のプリンターの再共有はサポートしていません。
前提条件
- ローカルの CUPS インスタンスに追加するプリンターが、AD プリントサーバーで共有されている。
- AD のメンバーとして RHEL ホストに参加している。
-
CUPS が RHEL にインストールされており、
cups
サービスが実行されている。 -
プリンターの PostScript Printer description (PPD) ファイルが
/usr/share/cups/model/
ディレクトリーに保存されている。
手順
samba-krb5-printing
、samba-client
、およびkrb5-workstation
パッケージをインストールします。# yum install samba-krb5-printing samba-client krb5-workstation
必要に応じて、ドメイン管理者として認証を行い、Windows プリントサーバーで共有されるプリンターの一覧を表示します。
# smbclient -L win_print_srv.ad.example.com -U administrator@AD_KERBEROS_REALM --use-kerberos=required Sharename Type Comment --------- ---- ------- ... Example Printer Example ...
必要に応じて、CUPS モデルのリストを表示して、プリンターの PPD 名を指定します。
lpinfo -m ... samsung.ppd Samsung M267x 287x Series PXL ...
次のステップでプリンターを追加する場合は、PPD ファイルの名前が必要です。
CUPS にプリンターを追加します。
# lpadmin -p "example_printer" -v smb://win_print_srv.ad.example.com/Example -m samsung.ppd -o auth-info-required=negotiate -E
このコマンドでは次のオプションを使用します。
-
-p printer_name
は、CUPS にプリンターの名前を設定します。 -
-v URI_to_Windows_printer
は、Windows プリンターに URI を設定します。smb://host_name/printer_share_name
という形式を使用します。 -
-m PPD_file
は、プリンターが使用する PPD ファイルを設定します。 -
-o auth-info-required=negotiate
は、印刷ジョブをリモートサーバーに転送する際に CUPS が Kerberos 認証を使用するように設定します。 -
-E
はプリンターを有効にします。CUPS はそのプリンターのジョブを受け付けます。
-
検証
- AD ドメインユーザーとして RHEL ホストにログインします。
AD ドメインユーザーとして認証します。
# kinit domain_user_name@AD_KERBEROS_REALM
ローカルの CUPS プリントサーバーに追加したプリンターにファイルを出力します。
# lp -d example_printer file
10.10. cups-browsed を使用してリモートプリントサーバーのプリンターをローカルに統合する
cups-browsed
サービスは、DNS サービス検出 (DNS-SD) と CUPS ブラウジングを使用して、共有リモートプリンターのすべて、またはフィルタリング後のサブセットを、ローカルの CUPS サービスで自動的に利用できるようにします。
たとえば、管理者はワークステーションでこの機能を使用して、信頼できるプリントサーバーのプリンターのみをアプリケーションの印刷ダイアログで使用できるようにすることができます。プリントサーバーが多数のプリンターを共有している場合、リストに表示されるプリンターの数を減らすために、参照するプリンターを特定の条件でフィルタリングするように cup-browsed
を設定することもできます。
アプリケーションの印刷ダイアログが DNS-SD などの他のメカニズムを使用してリモートプリンターのリストを表示している場合、cups-browsed
は影響を及ぼしません。また、cups-browsed
サービスは、ユーザーがリストにないプリンターに手動でアクセスすることを妨げるものではありません。
前提条件
- CUPS サービスがローカルホストで設定されている。
リモート CUPS プリントサーバーが存在する。このサーバーには次の条件が適用されます。
- サーバーが、クライアントからアクセス可能なインターフェイスでリッスンしている。
-
/etc/cups/cups.conf
ファイル内のサーバーの<Location />
ディレクティブにあるAllow from
パラメーターにより、クライアントの IP アドレスからのアクセスが許可されている。 - サーバーがプリンターを共有している。
- ファイアウォールルールにより、クライアントからサーバーの CUPS ポートへのアクセスが許可されている。
手順
/etc/cups/cups-browsed.conf
ファイルを編集し、次の変更を加えます。ポーリングするリモート CUPS サーバーごとに
BrowsePoll
パラメーターを追加します。BrowsePoll remote_cups_server.example.com BrowsePoll 192.0.2.100:1631
リモート CUPS サーバーが 631 とは異なるポートでリッスンする場合は、ホスト名または IP アドレスに
<port>
を追加します。オプション: フィルターを設定して、ローカル CUPS サービスに表示されるプリンターを制限します。たとえば、名前に
sales_
が含まれるキューをフィルタリングするには、次のパラメーターを追加します。BrowseFilter name sales_
さまざまなフィールド名でフィルタリングしたり、フィルターを無効にしたり、正確な値を照合したりできます。詳細は、
cups-browsed.conf(5)
マニュアルページのパラメーターの説明と例を参照してください。オプション: ポーリング間隔とタイムアウトを変更して、参照サイクルの数を制限します。
BrowseInterval 1200 BrowseTimeout 6000
プリンターが参照リストから消えるのを避けるために、
BrowseInterval
とBrowseTimeout
の両方を同じ比率で増やしてください。つまり、BrowseInterval
の値を 5 以上の整数で乗算し、その計算結果の値をBrowseTimeout
に使用します。デフォルトでは、
cups-browsed
は 60 秒ごとにリモートサーバーをポーリングし、タイムアウトは 300 秒です。ただし、キューの数が多いプリントサーバーでこれらのデフォルト値を使用すると、大量のリソースが消費される可能性があります。
cups-browsed
サービスを有効にして起動します。# systemctl enable --now cups-browsed
検証
使用可能なプリンターをリスト表示します。
# lpstat -v device for Demo-printer: implicitclass://Demo-printer/ ...
プリンターの出力に
implicitclass
が含まれていれば、cups-browsed
が CUPS でプリンターを管理しています。
関連情報
-
cups-browsed.conf(5)
man ページ
10.11. systemd ジャーナルの CUPS ログへのアクセス
デフォルトでは、CUPS はログメッセージを systemd
ジャーナルに保存します。これには、以下のものが含まれます。
- エラーメッセージ
- アクセスログエントリー
- ページログエントリー
前提条件
手順
ログエントリーを表示します。
すべてのログエントリーを表示するには、次のように入力します。
# journalctl -u cups
特定の印刷ジョブのログエントリーを表示するには、次のように入力します。
# journalctl -u cups JID=<print_job_id>
特定の期間内のログエントリーを表示するには、次のように入力します。
# journalectl -u cups --since=<YYYY-MM-DD> --until=<YYYY-MM-DD>
YYYY
は年に、MM
は月に、DD
は日に置き換えます。
関連情報
-
journalctl(1)
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10.12. systemd ジャーナルではなくファイルにログを保存するように CUPS を設定する
デフォルトでは、CUPS はログメッセージを systemd
ジャーナルに保存します。ログメッセージをファイルに保存するように CUPS を設定することもできます。
前提条件
手順
/etc/cups/cups-files.conf
ファイルを編集し、AccessLog
、ErrorLog
、およびPageLog
パラメーターを、これらのログファイルを保存するパスに設定します。AccessLog /var/log/cups/access_log ErrorLog /var/log/cups/error_log PageLog /var/log/cups/page_log
/var/log/cups/
以外のディレクトリーにログを保存するように CUPS を設定する場合は、このディレクトリーにcupd_log_t
SELinux コンテキストを設定します。たとえば、次のように設定します。# semanage fcontext -a -t cupsd_log_t "/var/log/printing(/.*)?" # restorecon -Rv /var/log/printing/
cups
サービスを再起動します。# systemctl restart cups
検証
ログファイルを表示します。
# cat /var/log/cups/access_log # cat /var/log/cups/error_log # cat /var/log/cups/page_log
/var/log/cups/
以外のディレクトリーにログを保存するように CUPS を設定した場合は、ログディレクトリーの SELinux コンテキストがcupd_log_t
であることを確認します。# ls -ldZ /var/log/printing/ drwxr-xr-x. 2 lp sys unconfined_u:object_r:cupsd_log_t:s0 6 Jun 20 15:55 /var/log/printing/
10.13. CUPS ドキュメントへのアクセス
CUPS では、CUPS サーバーにインストールされているサービスのドキュメントにブラウザーからアクセスできます。このドキュメントには次のものが含まれます。
- コマンドラインによるプリンターの管理やアカウンティングなどに関する管理ドキュメント
- man ページ
- 管理 API などのプログラミングドキュメント
- 参考資料
- Specifications
前提条件
- CUPS がインストールされ、実行されている。
- 使用するクライアントの IP アドレスに、Web インターフェイスにアクセスする権限がある。
手順
ブラウザーを使用して、
http://<hostname_or_ip_address>:631/help/
にアクセスします。-
Online Help Documents
のエントリーを展開し、参照するドキュメントを選択します。