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10.6.3. SysV Init スクリプトのユニットファイルへの変換
SysV init スクリプトをユニットファイルに変換する前に、すでに別の場所で変換が行われていないことを確認します。Red Hat Enterprise Linux 7 にインストールされるすべてのコアサービスにデフォルトのユニットファイルが同梱されていますが、数多くのサードパーティーソフトウェアパッケージにも同様のことが言えます。
init スクリプトをユニットファイルに変換するには、スクリプトを分析し、そこから必要な情報を抽出することが必要になります。このデータに基づいて、「カスタムユニットファイルの作成」 の説明通りにユニットファイルを作成できます。init スクリプトはサービスのタイプによって大きく異なるため、この章で概略されているよりも多くの設定オプションの変換を使用しなければならない場合もあります。init スクリプトで利用できるカスタマイズの一部のレベルは systemd ユニットでサポートされなくなっていることに注意してください。「互換性の変更点」 を参照してください。
変換に必要とされるほとんどの情報はスクリプトのヘッダーに提供されます。以下の例は、Red Hat Enterprise Linux 6 で postfix
サービスを起動するために使用される init スクリプトの開始セクションになります。
#!/bin/bash # # postfix Postfix Mail Transfer Agent # # chkconfig: 2345 80 30 # description: Postfix is a Mail Transport Agent, which is the program \ # that moves mail from one machine to another. # processname: master # pidfile: /var/spool/postfix/pid/master.pid # config: /etc/postfix/main.cf # config: /etc/postfix/master.cf ### BEGIN INIT INFO # Provides: postfix MTA # Required-Start: $local_fs $network $remote_fs # Required-Stop: $local_fs $network $remote_fs # Default-Start: 2 3 4 5 # Default-Stop: 0 1 6 # Short-Description: start and stop postfix # Description: Postfix is a Mail Transport Agent, which is the program that # moves mail from one machine to another. ### END INIT INFO
上記の例では、# chkconfig および # description で始まる行のみが必須になり、init ファイルによってはその他の記載はない可能性もあります。# BEGIN INIT INFO と # END INIT INFO 行に囲まれたテキストは Linux Standard Base (LSB) ヘッダー と呼ばれています。LSB ヘッダーを指定している場合は、サービスの説明、依存関係、およびデフォルトのランレベルを定義するディレクティブがこれに含まれます。次に、新規のユニットファイルに必要なデータを収集する分析タスクの概要が続きます。postfix init スクリプトはサンプルとして使用されます。作成される postfix ユニットは 例10.17「postfix.service ユニットファイル」 を参照してください。
サービス説明の検索
#description で始まる行で、スクリプトに関する説明情報を確認します。この説明は、サービス名と共に、ユニットファイルの [Unit] セクションの Description
オプションで使用します。LSB ヘッダーの #Short-Description 行および #Description 行に同様のデータが含まれる場合があります。
サービス依存関係の検索
LSB ヘッダーには、サービス間の依存関係を形成する複数のディレクティブが含まれる場合があります。そのほとんどは systemd ユニットオプションに変換できます。表10.12「LSB ヘッダーの依存関係オプション」 を参照してください。
表10.12 LSB ヘッダーの依存関係オプション
LSB オプション | 説明 | 同等のユニットファイル |
---|---|---|
| サービスの起動ファシリティー名を指定します。この名前は他の init スクリプトで参照できます ( "$" 接頭辞を使用)。ただし、ユニットファイルが他のユニットをファイル名で参照できるようになったため、これは不要になりました。 | – |
|
必要なサービスの起動ファシリティー名が含まれます。これは、並び順の依存関係として変換され、起動ファシリティー名は、対応するサービスまたはそのサービスが属するターゲットに置き換えられます。たとえば、 |
|
| Required-Start よりも弱い依存関係を設定します。Should-Start 依存関係が失敗しても、サービスの起動には影響を及ぼしません。 |
|
| 負の依存関係を設定します。 |
|
サービスのデフォルトターゲットの検索
#chkconfig で始まる行には 3 つの数値があります。最も重要な値は最初の数値で、サービスが起動するデフォルトのランレベルを示しています。これらのランレベルを同等の systemd ターゲットにマップするには、表10.6「SysV ランレベルと systemd ターゲットの比較」 を使用します。次に、そのターゲットを、ユニットファイルの [Install] セクションの WantedBy
オプションに記述します。たとえば、postfix
はこれまではランレベル 2、3、4、および 5 で起動しました。これは、Red Hat Enterprise Linux 7 では multi-user.target と graphical.target に変換されます。ただし、graphical.target は multiuser.target に依存するため、例10.17「postfix.service ユニットファイル」 の説明にあるように、両方を記述する必要はありません。また、LSB ヘッダーの #Default-Start および #Default-Stop 行に、デフォルト、および動作するべきでないランレベルの情報がある場合は、そちらも参照してください。
#chkconfig 行で指定した他の 2 つの値は、init スクリプトの起動およびシャットダウンの優先順位を表します。この値は、init スクリプトが読み込まれる場合は systemd により解釈されますが、同等のユニットファイルはありません。
サービスで使用されるファイルの検索
init スクリプトでは、専用ディレクトリーから関数ライブラリーを読み込み、設定ファイル、環境ファイル、および PID ファイルのインポートを許可します。環境変数は init スクリプトヘッダーの #config で始まる行で指定し、EnvironmentFile
ユニットファイルオプションに変換されます。#pidfile init スクリプト行に指定した PID ファイルは、PIDFile
オプションでユニットファイルにインポートされます。
init スクリプトヘッダーに含まれない主要な情報は、サービス実行ファイルへのパス、またはサービスで必要になる可能性のあるその他のファイルへのパスです。以前のバージョンの Red Hat Enterprise Linux では、init スクリプトは、カスタム定義のアクションと共に 起動、停止、再起動 などのデフォルトアクションのサービスの動作を定義する Bash ケースステートメントを使用しました。postfix
init スクリプトからの以下の抜粋は、サービス起動時に実行するコードのブロックを示しています。
conf_check() { [ -x /usr/sbin/postfix ] || exit 5 [ -d /etc/postfix ] || exit 6 [ -d /var/spool/postfix ] || exit 5 } make_aliasesdb() { if [ "$(/usr/sbin/postconf -h alias_database)" == "hash:/etc/aliases" ] then # /etc/aliases.db might be used by other MTA, make sure nothing # has touched it since our last newaliases call [ /etc/aliases -nt /etc/aliases.db ] || [ "$ALIASESDB_STAMP" -nt /etc/aliases.db ] || [ "$ALIASESDB_STAMP" -ot /etc/aliases.db ] || return /usr/bin/newaliases touch -r /etc/aliases.db "$ALIASESDB_STAMP" else /usr/bin/newaliases fi } start() { [ "$EUID" != "0" ] && exit 4 # Check that networking is up. [ ${NETWORKING} = "no" ] && exit 1 conf_check # Start daemons. echo -n $"Starting postfix: " make_aliasesdb >/dev/null 2>&1 [ -x $CHROOT_UPDATE ] && $CHROOT_UPDATE /usr/sbin/postfix start 2>/dev/null 1>&2 && success || failure $"$prog start" RETVAL=$? [ $RETVAL -eq 0 ] && touch $lockfile echo return $RETVAL }
init スクリプトの拡張性により、start()
関数ブロックから呼び出される conf_check()
および make_aliasesdb()
の 2 つのカスタム関数を指定することができました。さらに詳しくみると、上記コードでは外部のファイルおよびディレクトリーが複数記述されています (主なサービス実行ファイル /usr/sbin/postfix
、設定ディレクトリー /etc/postfix/
、/var/spool/postfix/
、および /usr/sbin/postconf/
ディレクトリー) 。
systemd は、事前に定義されたアクションのみをサポートしますが、オプションの ExecStart
、ExecStartPre
、ExecStartPost
、ExecStop
、ExecReload
でカスタムの実行ファイルを有効にできます。Red Hat Enterprise Linux 7 の postfix
の場合、/usr/sbin/postfix
はサポートスクリプトと共に、サービスの起動時に実行されます。postfix
ユニットファイルの詳細は、例10.17「postfix.service ユニットファイル」 を参照してください。
複雑な init スクリプトを変換する際には、スクリプトのすべてのステートメントの目的を理解している必要があります。一部のステートメントはオペレーティングシステムのバージョンに固有のものであるため、そのステートメントを変換する必要はありません。一方、新規の環境では、サービス実行ファイルおよびサポートファイルやユニットファイルで調整が一部必要となる場合があります。