カーネル管理ガイド
RHEL で Linux カーネルを管理するためにモジュール、kpatch、または kdump を使用
概要
前書き
カーネル管理ガイド では、カーネルの活用方法を説明し、複数の実用的なタスクを紹介します。本書では、カーネルモジュールを使用する情報から始まり、sysfs
ファシリティーとの対話、カーネルの手動アップグレード、および kpatch の使用を説明します。また、クラッシュダンプメカニズムも紹介します。 これは、カーネルに障害が発生した場合に、vmcore
コレクションを設定してテストする手順を説明します。
また、カーネル管理ガイド では、カーネル管理のユースケースも説明し、コマンドラインオプションの参考資料や、カーネルの設定項目 (スイッチとも呼ばれる)、カーネル機能の概要も紹介します。
第1章 カーネルモジュールの使用
本章では、以下を説明します。
- カーネルモジュールの概要
- kmod ユーティリティーを使用して、モジュールとその依存関係を管理する方法
- モジュールパラメーターを設定して、カーネルモジュールの動作を制御する方法
- 起動時に、モジュールを読み込む方法
本章で説明するカーネルモジュールのユーティリティーを使用するには、最初に root で以下を実行して、ご使用のシステムに kmod パッケージがインストールされていることを確認します。
# yum install kmod
1.1. カーネルモジュールの概要
Linux カーネルは、モノリシックとして設計されています。しかし、各ユースケースで必要とされる追加またはオプションのモジュールでコンパイルされています。つまり、動的に読み込まれる カーネルモジュール を使用してカーネル機能を拡張することができます。カーネルモジュールは、以下のものを提供できます。
- 新しいハードウェアへのサポートを強化するデバイスドライバー
-
GFS2
またはNFS
などのファイルシステムのサポート
カーネル自体と同様に、モジュールは動作をカスタマイズするパラメーターを取ることができます。ただし、デフォルトのパラメーターでほとんどのケースで十分に機能します。また、利用可能なパラメーターに使用できる全モジュールやモジュール固有の情報をクエリーできます。さらには、実行中のカーネルに対してモジュールを動的にロード/アンロード (削除) することも可能です。kmod パッケージにより提供される、このようなユーティリティーの多くは、動作の実行時にモジュールの依存関係を考慮するため、手動による依存関係の追跡が必要になることはほぼありません。
最新のシステムでは、必要に応じて、さまざまなメカニズムによりカーネルモジュールが自動的に読み込まれます。ただし、モジュールを手動で読み込むか、削除しないといけない場合もあります。たとえば、どちらのモジュールも基本的な機能は提供できるものの、いずれかのモジュールが好まれる場合か、モジュールが不正な動作をしている場合などです。
1.2. 読み込み済みモジュールの一覧表示
lsmod
コマンドを実行すると、現在カーネルに読み込み済みの全カーネルモジュールを一覧表示できます。 以下に例を示します。
# lsmod Module Size Used by tcp_lp 12663 0 bnep 19704 2 bluetooth 372662 7 bnep rfkill 26536 3 bluetooth fuse 87661 3 ebtable_broute 12731 0 bridge 110196 1 ebtable_broute stp 12976 1 bridge llc 14552 2 stp,bridge ebtable_filter 12827 0 ebtables 30913 3 ebtable_broute,ebtable_nat,ebtable_filter ip6table_nat 13015 1 nf_nat_ipv6 13279 1 ip6table_nat iptable_nat 13011 1 nf_conntrack_ipv4 14862 4 nf_defrag_ipv4 12729 1 nf_conntrack_ipv4 nf_nat_ipv4 13263 1 iptable_nat nf_nat 21798 4 nf_nat_ipv4,nf_nat_ipv6,ip6table_nat,iptable_nat [output truncated]
lsmod
の出力では、3 つのコラムを表示します。
モジュール
- メモリーに現在読み込まれているカーネルモジュールの名前
Size (サイズ)
- カーネルモジュールが使用するメモリー量 (キロバイト単位)
Used by (使用フィールド)
- Module フィールドにある依存関係の数を表す小数点
- 依存する Module の名前をコンマ区切りにした文字列。この一覧を使用して、アンロードしたいモジュールに依存しているモジュールすべてを最初にアンロードできます。
最後に、lsmod
の出力は /proc/modules
擬似ファイルの内容ほど詳細ではないので、はるかに読み取りやすくなっている点に留意してください。
1.3. モジュール情報の表示
modinfo module_name
コマンドを使用してカーネルモジュールに関する詳細情報を表示できます。
カーネルモジュール名を kmod ユーティリティーのいずれかの引数として入力する場合には、その名前の末尾に拡張子 .ko
を付けないでください。カーネルモジュール名には拡張子はありません。ただし、対応するファイルには拡張子があります。
例1.1 lsmod を使用したカーネルモジュール情報の一覧表示
Intel PRO/1000 ネットワークドライバーである e1000e
モジュールに関する情報を表示するには、root
で以下のコマンドを入力します。
# modinfo e1000e filename: /lib/modules/3.10.0-121.el7.x86_64/kernel/drivers/net/ethernet/intel/e1000e/e1000e.ko version: 2.3.2-k license: GPL description: Intel(R) PRO/1000 Network Driver author: Intel Corporation,
1.4. セキュアブート用のカーネルモジュールの署名
Red Hat Enterprise Linux 7 には UEFI セキュアブート機能が含まれているので、Red Hat Enterprise Linux 7 は UEFI セキュアブートが有効になっているシステム上でインストールし、実行できます。Red Hat Enterprise Linux 7 では、UEFI システムでセキュアブートを使用する必要がないことにご留意ください。
セキュアブートが有効な場合は、UEFI オペレーティングシステムのブートローダー、Red Hat Enterprise Linux カーネル、およびすべてのカーネルモジュールを秘密鍵で署名し、それに対応する公開鍵で認証する必要があります。それらが署名・認証されてなければ、システムは起動プロセスを終了できません。
Red Hat Enterprise Linux 7 ディストリビューションには、以下が含まれます。
- 署名付きブートローダー
- 署名付きカーネル
- 署名付きカーネルモジュール
また、署名された第 1 ステージのブートローダーと署名されたカーネルには、組み込み Red Hat 公開鍵が含まれています。これらの署名済みバイナリーおよび組み込み鍵により、Red Hat Enterprise Linux 7 は UEFI セキュアブート対応のシステムで、UEFI ファームウェアが提供する Microsoft UEFI セキュアブート認証局キーを使用してインストール、ブート、および実行できます。
セキュアブートのサポートは、すべての UEFI ベースのシステムに含まれるわけではありません。
以下のセクションでは、セキュアブートが有効になっている UEFI ベースのビルドシステム上で Red Hat Enterprise Linux 7 に使用する、プライベートで構築されたカーネルモジュールへの自己署名に必要な手順を説明しています。また、カーネルモジュールの展開を希望するターゲットシステムに公開鍵をインポートするのに利用可能なオプションについても説明しています。
カーネルモジュールに署名して読み込むには、以下を行う必要があります。
1.4.1. 前提条件
外部でビルドされたカーネルモジュールに署名できるようにするには、次の表にリストされているユーティリティをビルドシステムにインストールします。
表1.1 必要なユーティリティー
ユーティリティー | 提供するパッケージ | 使用対象 | 目的 |
---|---|---|---|
|
| ビルドシステム | 公開および秘密 X.509 鍵のペアを生成 |
|
| ビルドシステム | カーネルモジュールの署名に使用する Perl スクリプト |
|
| ビルドシステム | 署名スクリプトの実行に使用する Perl インタープリター |
|
| ターゲットシステム | 公開鍵を手動で登録する際に使用するオプションのユーティリティ |
|
| ターゲットシステム | システムキーリングに公開鍵を表示する際に使用するオプションのツール |
カーネルモジュールを構築、署名するビルドシステムは、UEFI セキュアブートを有効にする必要がなく、UEFI ベースのシステムである必要すらありません。
1.4.2. カーネルモジュールの認証
Red Hat Enterprise Linux 7 では、カーネルモジュールの読み込み時に、カーネルのシステムキーリング上の公開 X.509 鍵を使ってモジュールの署名をチェックします。使用される鍵は、カーネルのシステムブラックリストのキーリングにあるものを除きます。次のセクションでは、キー/キーリングのソースの概要、システム内のさまざまなソースからロードされたキーの例を示します。また、ユーザーは、カーネルモジュールの認証に必要なものを確認することができます。
1.4.2.1. カーネルモジュール認証に使用する公開鍵のソース
ブート中にカーネルは、以下の表にある永続的キーストア一式から X.509 鍵をシステムキーリングまたはシステムのブラックリストに読み込みます。
表1.2 システムキーリングのソース
X.509 鍵のソース | キー追加に関するユーザー能力 | UEFI セキュアブートの状態 | ブート中に読み込まれる鍵 |
---|---|---|---|
カーネルに埋め込み | × | - |
|
UEFI セキュアブート "db" | 限定的 | 有効でない | いいえ |
有効 |
| ||
UEFI セキュアブート "dbx" | 限定的 | 有効でない | いいえ |
有効 |
| ||
| いいえ | 有効でない | いいえ |
有効 |
| ||
Machine Owner Key (MOK) リスト | はい | 有効でない | いいえ |
有効 |
|
システムが UEFI ベースでない場合、または UEFI セキュアブートが有効になっていない場合は、カーネルに組み込まれた鍵のみがシステムのキーリングに読み込まれます。この場合、カーネルの再構築なしでキーセットを拡張することはできません。
システムのブラックリストキーリングは、無効にされた X.509 鍵の一覧です。ブラックリストにある鍵でモジュールが署名されていると、公開鍵がシステムのキーリングにあったとしても、モジュールは認証に失敗します。
システムのキーリング上にある鍵についての情報は、 keyctl
ユーティリティーを使うと表示できます。以下は、UEFI セキュアブートが有効になっていない Red Hat Enterprise Linux 7 システムからの短い出力例です。
# keyctl list %:.system_keyring 3 keys in keyring: ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux Driver Update Program (key 3): bf57f3e87... ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux kernel signing key: 4249689eefc77e95880b... ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux kpatch signing key: 4d38fd864ebe18c5f0b7...
以下は、UEFI セキュアブートが有効になっている Red Hat Enterprise Linux 7 システムからの短い出力例です。
# keyctl list %:.system_keyring 6 keys in keyring: ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux Driver Update Program (key 3): bf57f3e87... ...asymmetric: Red Hat Secure Boot (CA key 1): 4016841644ce3a810408050766e8f8a29... ...asymmetric: Microsoft Corporation UEFI CA 2011: 13adbf4309bd82709c8cd54f316ed... ...asymmetric: Microsoft Windows Production PCA 2011: a92902398e16c49778cd90f99e... ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux kernel signing key: 4249689eefc77e95880b... ...asymmetric: Red Hat Enterprise Linux kpatch signing key: 4d38fd864ebe18c5f0b7...
上記の出力では、UEFI セキュアブート「db」鍵から加わった 2 つの鍵と、shim.efi
ブートローダーに組み込まれている Red Hat Secure Boot (CA key 1)
が示されています。UEFI セキュアブート関連のソースを使用してキーを識別するカーネルコンソールメッセージを検索することもできます。これには、UEFI セキュアブート db、組み込み shim、および MOK リストが含まれます。
# dmesg | grep 'EFI: Loaded cert' [5.160660] EFI: Loaded cert 'Microsoft Windows Production PCA 2011: a9290239... [5.160674] EFI: Loaded cert 'Microsoft Corporation UEFI CA 2011: 13adbf4309b... [5.165794] EFI: Loaded cert 'Red Hat Secure Boot (CA key 1): 4016841644ce3a8...
1.4.2.2. カーネルモジュール認証の要件
本セクションでは、UEFI セキュアブート機能が有効なシステムでカーネルモジュールを読み込むために必要な条件を説明します。
UEFI セキュアブートが有効な場合、または module.sig_enforce
カーネルパラメーターが指定されている場合は、システムのキーリングの鍵を使用して認証された署名済みカーネルモジュールのみを読み込むことができます。また、公開鍵は、システムのブラックリストキーリング上に存在すべきではありません。
UEFI セキュアブートが無効で module.sig_enforce
カーネルパラメーターが指定されていない場合は、公開鍵なしで、未署名カーネルモジュールと署名済みカーネルモジュールを読み込むことができます。これは、以下の表で説明されています。
表1.3 カーネルモジュールの読み込み認証要件
モジュールの署名 | 公開鍵ありおよび署名が有効 | UEFI セキュアブートの状態 | sig_enforce | モジュールの読み込み | カーネルの汚染 |
---|---|---|---|---|---|
署名なし | - | 有効でない | 有効でない | 成功 | はい |
有効でない | 有効 | 失敗 | - | ||
有効 | - | 失敗 | - | ||
署名あり | いいえ | 有効でない | 有効でない | 成功 | はい |
有効でない | 有効 | 失敗 | - | ||
有効 | - | 失敗 | - | ||
署名あり | はい | 有効でない | 有効でない | 成功 | いいえ |
有効でない | 有効 | 成功 | いいえ | ||
有効 | - | 成功 | いいえ |
1.4.3. 公開および秘密 X.509 鍵のペアの生成
セキュアブートを有効化したシステム上でカーネルモジュールを使用する作業を正常に行うには、公開および秘密 X.509 鍵ペアを生成する必要があります。後で秘密鍵を使用してカーネルモジュールに署名します。セキュアブートで署名済みモジュールを検証するには、適切な公開鍵を Machine Owner Key (MOK) に追加する必要があります。手順は、「システム管理者が手動で公開鍵を MOK リストに追加する」を参照してください。
このキーペア生成のパラメーターの一部は、設定ファイルで指定するのが最適です。
キーペア生成のパラメーターで設定ファイルを作成します。
# cat << EOF > configuration_file.config [ req ] default_bits = 4096 distinguished_name = req_distinguished_name prompt = no string_mask = utf8only x509_extensions = myexts [ req_distinguished_name ] O = Organization CN = Organization signing key emailAddress = E-mail address [ myexts ] basicConstraints=critical,CA:FALSE keyUsage=digitalSignature subjectKeyIdentifier=hash authorityKeyIdentifier=keyid EOF
X.509 公開鍵と秘密鍵のペアを以下の例のように作成します。
# openssl req -x509 -new -nodes -utf8 -sha256 -days 36500 \ -batch -config configuration_file.config -outform DER \ -out my_signing_key_pub.der \ -keyout my_signing_key.priv
公開鍵は
my_signing_key_pub.der
ファイルに書き込まれます。この秘密鍵はmy_signing_key.priv
ファイルに書き込まれます。カーネルモジュールを認証、読み込むすべてのシステムに公開鍵を登録します。
詳細は「公開鍵のターゲットシステムでの登録」を参照してください。
強力なセキュリティー対策とアクセスポリシーを適用して、秘密鍵の内容を保護します。悪用すれば、この鍵は、一致する公開鍵で認証されるシステムのセキュリティに危害を与えるために使用できます。
1.4.4. 公開鍵のターゲットシステムでの登録
セキュアブートが有効になっている UFEI ベースのマシンで Red Hat Enterprise Linux 7 を起動すると、無効化したキーの dbx データベースにあるものを除いて、セキュアブート db キーデータベースにあるすべてのパブリックキーのシステムキーにカーネルがロードされます。以下のセクションでは、システムキーリングが公開鍵を使用してカーネルモジュールを認証できるように、ターゲットシステムで公開鍵をインポートする方法を説明します。
1.4.4.1. 公開鍵を含むファクトリーファームウェアイメージ
システムでカーネルモジュールの認証を実現するために、ファクトリーファームウェアイメージで公開鍵を UEFI セキュアブート鍵データベースに組み入れるようシステムベンダーに要求することを検討します。
1.4.4.2. システム管理者が手動で公開鍵を MOK リストに追加する
Machine Owner Key (MOK) 機能を使用して、UEFI セキュアブートキーデータベースを拡張することができます。セキュアブートが有効になっている UEFI ベースのシステムで Red Hat Enterprise Linux 7 が起動すると、鍵データベースの鍵に加えて、MOK リストの鍵もシステムキーリングに追加されます。MOK リストの鍵は、セキュアブートデータベースの鍵と同様に永続的かつ安全な方法で保存されますが、これらは別個の機能です。MOK 機能は shim.efi
、MokManager.efi
、 grubx64.efi
、および Red Hat Enterprise Linux 7 mokutil
ユーティリティーによってサポートされます。
MOK 鍵の登録は、各ターゲットシステムの UEFI システムコンソールでユーザーが物理的に手動で対応する必要があります。それにもかかわらず、MOK 機能は、新規生成された鍵ペアのテストとこれで署名されたカーネルモジュールのテストにおいて便利な方法を提供します。
公開鍵を MOK リストに追加するには、以下に従います。
公開鍵を MOK リストに追加するようリクエストします。
# mokutil --import my_signing_key_pub.der
この MOK 登録リクエストに関するパスワードの入力と確認が求められます。
マシンを再起動します。
この保留中の MOK 鍵の登録リクエストは
shim.efi
によって認識され、MokManager.efi
を起動して UEFI コンソールからの登録を完了できます。このリクエストに関連付けたパスワードを入力し、登録を確認します。
公開鍵が MOK リストに永続的に追加されます。
鍵が MOK リストに追加されると、UEFI セキュアブートが有効になっているシステムの起動時に毎回、この鍵はシステムのキーリングに自動的に追加されます。
1.4.5. 秘密鍵を使用したカーネルモジュールの署名
カーネルモジュールの準備が完了していることを前提とします。
Perl スクリプトを使用して、秘密鍵でカーネルモジュールに署名します。
# perl /usr/src/kernels/$(uname -r)/scripts/sign-file \ sha256 \ my_signing_key.priv\ my_signing_key_pub.der\ my_module.ko
注記Perl スクリプトを使用するには、署名するカーネルモジュールファイルの他に、秘密および公開鍵の両方を含むファイルを提供する必要があります。
カーネルモジュールは ELF イメージ形式で、Perl スクリプトは署名を計算して、カーネルモジュールファイルの ELF イメージに直接追加します。
modinfo
ユーティリティーを使うと、カーネルモジュールの署名がある場合は、それについての情報を表示できます。modinfo
の使用についての情報は、「モジュール情報の表示」を参照してください。この追加された署名は ELF イメージセクションには含まれず、また ELF イメージの正式な一部ではありません。このため、
readelf
のようなユーティリティーは、この署名をカーネルモジュールに表示することができません。これでカーネルモジュールの読み込み準備が完了しました。署名済みのカーネルモジュールは、UEFI セキュアブートが無効となっているシステムまたは UEFI 以外のシステムでも読み込み可能であることに注意してください。つまり、署名済みのカーネルモジュールと署名なしのカーネルモジュールの両方を提供する必要はないことになります。
1.4.6. 署名済みカーネルモジュールの読み込み
公開鍵が登録されてシステムキーリングに格納されたら、 mokutil
を使って公開鍵を MOK リストに追加します。次に、modprobe
コマンドを使用して、カーネルモジュールを手動で読み込みます。
オプションで、公開鍵の登録前にカーネルモジュールを読み込まないことを確認します。
現在読み込み済みのカーネルモジュールを一覧表示する方法は、「読み込み済みモジュールの一覧表示」を参照してください。
現在のブートで、システムキーリングに追加されている鍵を確認します。
# keyctl list %:.system_keyring
公開鍵はまだ登録されていないので、このコマンドの出力には表示されません。
公開鍵の登録をリクエストします。
# mokutil --import my_signing_key_pub.der
再起動して、UEFI コンソールでの登録を完了します。
# reboot
システムキーリングの鍵を再度確認します。
# keyctl list %:.system_keyring
モジュールを必要なカーネルの
/extra/
ディレクトリーにコピーします。# cp my_module.ko /lib/modules/$(uname -r)/extra/
モジュールの依存関係の一覧を更新します。
# depmod -a
カーネルモジュールを読み込み、正常にロードされたことを確認します。
# modprobe -v my_module # lsmod | grep my_module
オプションで、起動時にモジュールを読み込むには、そのモジュールを
/etc/modules-loaded.d/my_module.conf
ファイルに追加します。# echo "my_module" > /etc/modules-load.d/my_module.conf
第2章 sysctl およびカーネルの設定項目の使用
2.1. カーネルの設定項目の概要
カーネルの設定項目を使用することで、Red Hat Enterprise Linux の起動時に、またはシステムを実行中にオンデマンドで動作をカスタマイズできます。ハードウェアのパラメーターによっては、起動時のみに指定され、システムが実行し始めると変更できないものもありますが、ほとんどの場合は必要に応じて変更でき、次の起動に向けてパーマネント設定ができます。
2.2. カーネルの設定項目の使用方法
カーネルの設定項目を修正するには、以下の 3 つの方法があります。
-
sysctl
コマンドの使用 -
/etc/sysctl.d/
ディレクトリーで設定ファイルを手動で変更する方法 -
シェルを使用して
/proc/sys
にマウントされた仮想ファイルシステムと対話する方法
すべての起動時パラメーターが sysfs サブシステムの制御下にあるわけではありません。いくつかのハードウェア固有のオプションは、カーネルのコマンドライン上に設定する必要がありますが、これらのオプションについては、本ガイドの Kernel Parameters セクションを参照してください。
2.2.1. sysctl コマンドの使用
sysctl
を使用して、カーネルの設定項目を表示し、読み取り、設定します。表示または読み取りの際のカーネルの設定項目のフィルター、そしてカーネルの設定項目の一時的または永続的な設定が可能となります。
変数の表示
# sysctl -a
変数の読み取り
# sysctl kernel.version kernel.version = #1 SMP Fri Jan 19 13:19:54 UTC 2018
変数の一時的な書き込み
# sysctl <tunable class>.<tunable>=<value>
変数の永続的な書き込み
# sysctl -w <tunable class>.<tunable>=<value> >> /etc/sysctl.conf
2.2.2. /etc/sysctl.d 内のファイルの変更
起動時にデフォルトをオーバーライドするには、手動で /etc/sysctl.d
にファイルを追加することも可能です。
/etc/sysctl.d
に新規ファイルを作成します。# vim /etc/sysctl.d/99-custom.conf
以下の形式で、設定したい変数を 1 行に 1 つずつ入れていきます。
<tunable class>.<tunable> = <value> + <tunable class>.<tunable> = <value>
- ファイルを保存します。
-
変更を有効にするためにマシンを再起動するか
、または
sysctl -p /etc/sysctl.d/99-custom.conf
を実行して再起動せずに変更を適用します。
2.3. 制御可能な設定項目について
設定項目は、カーネルのサブシステムによっていくつかのグループに分けられます。Red Hat Enterprise Linux システムにおける設定項目には、以下のクラスがあります。
表2.1 sysctl インターフェースの表
クラス | サブシステム |
---|---|
abi | 実行ドメインおよびパーソナリティー |
crypto | 暗号化インターフェース |
debug | カーネルのデバッグインターフェース |
dev | デバイスの詳細 |
fs | グローバルおよび固有のファイルシステムの設定項目 |
kernel | グローバルなカーネルの設定項目 |
net | ネットワークの設定項目 |
sunrpc | Sun Remote Procedure Call (NFS) |
user | ユーザー名前空間の制限 |
vm | メモリー、バッファー、およびキャッシュのチューニングと管理 |
2.3.1. ネットワークインターフェースのパラメーター
システム管理者は、ネットワークの設定項目を経由して実行中のシステムのネットワーク設定を変更できます。
ネットワークの設定項目は、/proc/sys/net
ディレクトリーにあります。このディレクトリーには、さまざまなネットワークのトピックに関する複数のサブディレクトリーがあります。システム管理者はこれらのサブディレクトリー内のファイルを変更し、ネットワーク設定を調整する必要があります。
以下は、最も頻繁に使用されるディレクトリーです。
-
/proc/sys/net/core/
-
/proc/sys/net/ipv4/
/proc/sys/net/core/
ディレクトリーには、カーネルとネットワーク層との間の相互作用を制御する各種の設定が含まれます。これらの設定項目のをいくつか調整することで、たとえば、受信キューのサイズを増加したり、ネットワークインターフェース専用の接続およびメモリーの最大値を上げたりすることで、システムのパフォーマンスを向上させることができます。システムのパフォーマンスは、個々の問題のさまざまな側面に左右されることに留意してください。
/proc/sys/net/ipv4/
ディレクトリーには、追加のネットワーク設定が含まれます。これは、システムに対する攻撃を防止したり、システムをルーターとして機能させるように使用している場合に役立ちます。ディレクトリーには、IP および TCP の両方の変数が格納されています。これらの変数についての詳細は、/usr/share/doc/kernel-doc-<version>/Documentation/networking/ip-sysctl.txt
を参照してください。
/proc/sys/net/ipv4/
ディレクトリー内のその他のディレクトリーは、ネットワークスタックのさまざまな側面に対応しています。
-
/proc/sys/net/ipv4/conf/
- 各システムインターフェースを異なる方法で設定できるようにします。これには、未設定のデバイス用のデフォルト設定の使用や、すべての特殊設定をオーバーライドする設定が含まれます。 -
/proc/sys/net/ipv4/neigh/
- システムに直接接続されたホストとの通信用の設定や、2 ステップ以上ギャップのあるシステム用の異なる設定も含まれています。 -
/proc/sys/net/ipv4/route/
- システム上の任意のインターフェースとのルーティングに適用される指定値が含まれます。
ネットワークの設定項目の一覧は、IPv4 インターフェースと関連し、/proc/sys/net/ipv4/{all,<interface_name>}/
ディレクトリーからアクセスできます。
以下のパラメーターの説明は、カーネルドキュメントのサイトを参考にしています。[1]
- log_martians
カーネルログに無効なアドレスを持つパケットをログします。
Type デフォルト ブール値
0
1 つ以上の
conf/{all,interface}/log_martians
が TRUE に設定されている場合に有効です。Further Resources
- accept_redirects
ICMP のリダイレクトメッセージを受信します。
Type デフォルト ブール値
1
インターフェース用の accept_redirects が、以下の条件下で有効となります。
-
conf/{all,interface}/accept_redirects
はどちらも TRUE です (インターフェースの転送が有効な場合)。 -
1 つ以上の
conf/{all,interface}/accept_redirects
が TRUE です (インターフェースの転送は無効な場合)。
「ICMP リダイレクトを無効にする方法」を参照してください。
-
- 転送
インターフェース上で IP 転送を有効にします。
Type デフォルト ブール値
0
Further Resources
- mc_forwarding
マルチキャストルーティングを実施します。
Type デフォルト ブール値
0
- 読み取り専用値
- マルチキャストルーティングのデーモンが必要です。
-
インターフェース用にマルチキャストルーティングを有効にするには、
conf/all/mc_forwarding
は TRUE に設定される必要があります。
Further Resources
- medium_id
接続しているメディアがデバイスを区別するために使用する任意の値です。
Type デフォルト 整数
0
備考
- 同じメディア上の 2 つのデバイスにおいて、このうちの 1 つでしかブロードキャストパケットが 受信されない場合、2 つのデバイスの id 値が異なる可能性があります。
- デフォルト値の 0 は、メディアに対してそのデバイスが唯一のインターフェースであることを意味します。
- 値が -1 の場合、メディアが不明であることを示します。
- 現在は、proxy_arp の動作を変更するために使用されています。
- proxy_arp の機能は、異なるメディアに接続された 2 つのデバイスの間で転送されたパケット用に有効となります。
Further Resources - たとえば、「Using the "medium_id" feature in Linux 2.2 and 2.4」 を参照してください。
- proxy_arp
Proxy ARP の実行
Type デフォルト ブール値
0
インターフェースの proxy_arp は、1 つ以上の
conf/{all,interface}/proxy_arp
が TRUE に設定されている場合に有効にされます。それ以外の場合は無効にされます。
- proxy_arp_pvlan
プライベート VLAN Proxy ARP
Type デフォルト ブール値
0
RFC 3069 などの機能をサポートするために、Proxy ARP が同じインターフェースに応答できるようにします。
- secure_redirects
インターフェースの現在のゲートウェイリストにリストされているゲートウェイに対する ICMP リダイレクトメッセージのみを受信します。
Type デフォルト ブール値
1
備考
- 無効となった場合でも、RFC1122 リダイレクトルールが引き続き適用されます。
- shared_media によってオーバーライドされます。
-
インターフェースの secure_redirects は、1 つ以上の
conf/{all,interface}/secure_redirects
が TRUE に設定される場合に有効にされます。
- send_redirects
ルーターの場合、リダイレクトを送信します。
Type デフォルト ブール値
1
注
インターフェースの send_redirects は、1 つ以上のconf/{all,interface}/send_redirects
が TRUE に設定される場合に有効にされます。
- bootp_relay
ローカル用としてこのホストに予定されていないソースアドレス 0.b.c.d のパケットを受信します。
Type デフォルト ブール値
0
注記
- これらのパケットを管理するために BOOTP デーモンを有効にする必要があります。
-
インターフェースの BOOTP リレーを有効にするには、
conf/all/bootp_relay
を TRUE に設定する必要もあります。 - 実装されていない場合は、『Red Hat Enterprise Linux ネットワークガイド』の「DHCP リレーエージェント」を参照してください。
- accept_source_route
SRR オプションのあるパケットを受信します。
Type デフォルト ブール値
1
注記
-
インターフェース上の SRR オプションのあるパケットを許可するには、
conf/all/accept_source_route
を TRUE に設定する必要があります。
-
インターフェース上の SRR オプションのあるパケットを許可するには、
- accept_local
ローカルソースアドレスのあるパケットを受信します。
Type デフォルト ブール値
0
注記
- これは、適切なルーティングとのコンビネーションにて、2 つのローカルインターフェース間のパケットをワイヤー上で移動し、適切に受信させるために使用することができます。
-
accept_local を有効にするには、
rp_filter
をゼロ以外の値に設定する必要があります。
- route_localnet
ルーティング中は、ループバックアドレスを martian ソースまたは宛先として考慮しません。
Type デフォルト ブール値
0
注記
- これにより、ローカルルーティング目的での 127/8 の使用が有効となります。
- rp_filter
ソースの検証を有効化
Type デフォルト 整数
0
値 Effect 0
ソースの検証はありません。
1
RFC3704 厳密な逆方向パスで定義された厳密モード
2
RFC3704 緩やかな逆方向パスで定義された緩やかなモード
注記
- RFC3704 における現在の推奨プラクティスは、DDos 攻撃による IP スプーフィングを回避するために厳密モードを有効にすることです。
- 非対称のルーティングまたは別の複雑なルーティングを使用する場合は、緩やかなモードが推奨されます。
-
{interface} でソースの検証を行う際に、
conf/{all,interface}/rp_filter
の最大値が使用されます。
- arp_filter
Type デフォルト ブール値
0
値 Effect 0
(デフォルト) カーネルは、別のインターフェースからのアドレスの ARP 要求に対応できます。正常な通信の可能性を向上させるので、通常は理にかなっています。
1
同じサブネットで複数のネットワークインターフェースを持つことを可能にします。また、カーネルがインターフェースから ARP 要求 の IP パケットをルーティングするかどうかに基づいて、各インターフェースの ARP が応答できるようにします (したがって、これを機能させるためにはソースベースのルーティングを使用する必要があります)。つまり、ARP 要求に応答するカード (通常は 1) の制御が可能となります。
注記
- IP アドレスは、特定のインターフェースではなく、Linux の完全なホストが所有します。この動作が問題を起こすのは、負荷分散などのより複雑なセットアップの場合だけです。
-
インターフェースの
arp_filter
は、1 つ以上のconf/{all,interface}/arp_filter
が TRUE に設定される場合に有効にされます。
- arp_announce
インターフェース上に送信された ARP 要求の IP パケットからローカルソースの IP アドレスを発表するための異なる制限レベルを定義します。
Type デフォルト 整数
0
値 Effect 0
(デフォルト) 任意のインターフェース上に設定された任意のローカルアドレスを使用します。
1
このインターフェースでは、出力先のサブネットにないローカルアドレスは使用しないようにします。このインターフェースを経由してアクセス可能な出力先ホストが、ARP 要求のソース IP アドレスが受信側インターフェース上に設定されるロジカルなネットワークの一環となるよう要求した場合、このモードは役立ちます。要求を生成する際、出力先 IP を含むすべてのサブネットを確認し、そのようなサブネットからのソースアドレスである場合は保持します。そのようなサブネットがない場合は、レベル 2 のルールにしたがってソースアドレスを選択します。
2
この出力先には常に最適のローカルアドレスを使用します。このモードでは、IP パケットのソースアドレスを無視し、出力先ホストとの対話には好みのローカルアドレスを選択するようにします。このようなローカルアドレスは、出力先 IP アドレスを含む発信インターフェース上のすべてのサブネット上にある主要な IP アドレスを探すことで選択されます。適切なローカルアドレスが見つからない場合は、発信インターフェース上またはその他すべてのインターフェース上にある最初のローカルアドレスを選択します。この時、アナウンスするソース IP アドレスに関係なく、要求に対する応答があることを期待します。
備考
-
conf/{all,interface}/arp_announce
の最大値が使用されます。 - 制限レベルを上げると、解決済み出力先から応答がある可能性が高くなり、制限レベルを下げると、より有効な送信者情報をアナウンスします。
-
- arp_ignore
受信した ARP 要求に対して応答するさまざまなモードを定義します。 この ARP 要求は、ローカル出力先 IP アドレスを解決するものです。
Type デフォルト 整数
0
値 Effect 0
(デフォルト): 任意のインターフェース上に設定された任意のローカル出力先 IP アドレスに応答します。
1
出力先 IP アドレスが受信インターフェース上で設定されたローカルアドレスの場合にのみ応答します。
2
出力先 IP アドレスが受信インターフェース上で設定されたローカルアドレスで、送信者の IP アドレスと出力先 IP アドレスの両方がこのインターフェース上の同じサブネットの一部である場合にのみ応答します。
3
スコープホストで設定されたローカルアドレスには応答しません。グローバルおよびリンク用のアドレス解決のみに応答します。
4-7
予備
8
ローカルアドレスの場合はすべて、応答しません。 {interface} 上で ARP 要求が受信された際に conf/{all,interface}/arp_ignore の最大値が使用されます。
備考
- arp_notify
アドレスおよびデバイスの変更を通知するモードを定義します。
Type デフォルト ブール値
0
値 Effect 0
何もしません。
1
デバイスの停止またはハードウェアのアドレス変更の際、余計な ARP 要求を生成します。
注記
- arp_accept
IP がまだ ARP テーブルに存在しない余計な ARP フレームの動作を定義します。
Type デフォルト ブール値
0
値 Effect 0
ARP テーブルに新しいエントリーを作成しません。
1
ARP テーブルに新しいエントリーを作成します。
注記
この設定がオンの場合、応答および要求の両タイプの余計な ARP が、ARP テーブルをアップデートするようトリガーします。ARP テーブルが余計な ARP フレームの IP アドレスをすでに格納している場合、この設定がオンまたはオフであることに関係なく、ARP テーブルがアップデートされます。
- app_solicit
マルチキャストプローブへドロップバックする前にネットリンクを経由してユーザー空間の ARP デーモンに送信するプローブの最大数 (mcast_solicit を参照してください)。
Type デフォルト 整数
0
注記
mcast_solicit を参照してください。
- disable_policy
このインターフェースの IPSEC ポリシー (SPD) を無効にします。
Type デフォルト ブール値
0
needinfo
- disable_xfrm
いかなるポリシーであろうと、このインターフェースの IPSEC 暗号化を無効にします。
Type デフォルト ブール値
0
needinfo
- igmpv2_unsolicited_report_interval
次の未承諾の IGMPv1 または IGMPv2 レポートの再送信が実行されるミリ秒単位の間隔。
Type デフォルト 整数
10000
注記
ミリ秒
- igmpv3_unsolicited_report_interval
次の未承諾の IGMPv3 レポートの再送信が実行されるミリ秒単位の間隔。
Type デフォルト 整数
1000
注記
ミリ秒
- tag
必要に応じて使用可能な数字の書き込みが可能です。
Type デフォルト 整数
0
- xfrm4_gc_thresh
IPv4 宛先キャッシュエントリー用のガベージコレクションを開始するしきい値。
Type デフォルト 整数
1
注記
この値が 2 倍になると、システムは新しい割り当てを拒否します。
2.3.2. グローバルなカーネルの設定項目
システム管理者は、グローバルカーネルパラメーターを経由して実行中のシステムの一般的な設定を構成および変更できます。
グローバルカーネルの調整可能なパラメーターは、/proc/sys/kernel/
ディレクトリーにあり、名前付きの制御ファイルとして直接置かれるか、または各種の設定トピックに対応する複数のサブディレクトリーに分類されます。グローバルカーネルパラメーターを調整するには、システム管理者が制御ファイルを修正する必要があります。
以下のパラメーターの説明は、カーネルドキュメントのサイトを参考にしています。[2]
- dmesg_restrict
非特権ユーザーが
dmesg
コマンドを実行してカーネルのログバッファーのメッセージを表示することができないようにするかどうかを示します。詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- core_pattern
コアダンプファイルのパターン名を指定します。
最大長 デフォルト 128 文字
"core"
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- hardlockup_panic
ハードロックアップが検出された場合にカーネルパニックを制御します。
Type 値 Effect 整数
0
カーネルが、ハードロックアップでパニックを発生させません。
整数
1
ハードロックアップでのカーネルパニック
パニックを発生させるためには、システムで、最初にハードロックアップを検出する必要があります。検出は、nmi_watchdog パラメーターで制御されます。
Further Resources
- softlockup_panic
ソフトロックアップが検出されるとカーネルパニックを制御します。
Type 値 Effect 整数
0
カーネルが、ソフトロックアップでパニックにならない
整数
1
カーネルが、ソフトロックアップでパニックになる
RHEL 7 では、この値のデフォルトは 0 です。
softlockup_panic
の詳細は、「kernel_parameters」を参照してください。
- kptr_restrict
制限は、
/proc
またはその他のインターフェースを経由してカーネルアドレスを公開する際の制限が置かれているかどうかを示します。Type デフォルト 整数
0
値 Effect 0
出力前にカーネルアドレスのハッシュ値を計算します。
1
出力されたカーネルポインターを、特定の条件下で、0 に置き換えます。
2
出力されたカーネルポインターを、無条件に 0 に置き換えます。
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- nmi_watchdog
x86 システムで、ハードロックアップ検出を制御します。
Type デフォルト 整数
0
値 Effect 0
ロックアップ検出を無効にします。
1
ロックアップ検出を有効にします。
ハードロックアップ検出は、各 CPU で割り込みに応答する機能を監視します。
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- watchdog_thresh
ウォッチドッグの
hrtimer
、NMI イベント、およびソフトロックアップまたはハードロックアップのしきい値を制御します。デフォルトのしきい値 ソフトロックアップのしきい値 10 秒
2 *
watchdog_thresh
このパラメーターを 0 (ゼロ) に設定すると、ロックアップ検出を無効にします。
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- panic, panic_on_oops, panic_on_stackoverflow, panic_on_unrecovered_nmi, panic_on_warn, panic_on_rcu_stall, hung_task_panic
このパラメーターは、カーネルがパニックを発生する状況を指定します。
一連の
panic
パラメーターの詳細は、 Kernel sysctl ドキュメントを参照してください。
- printk, printk_delay, printk_ratelimit, printk_ratelimit_burst, printk_devkmsg
このようなパラメーターは、カーネルエラーメッセージのログへの記録または出力を制御します。
一連の
printk
パラメーターの詳細は、Kernel sysctl ドキュメントを参照してください。
- shmall, shmmax, shm_rmid_forced
このパラメーターは、共有メモリーの制限を制御します。
一連の
shm
パラメーターの詳細は、 Kernel sysctl ドキュメントを参照してください。
- threads-max
fork()
システムコールが作成するスレッドの最大数を制御します。最小値 最大値 20
FUTEX_TID_MASK (0x3fffffff) で指定
threads-max
値は、利用可能な RAM ページに対して確認されます。スレッド構造が、利用可能な RAM ページを使用し過ぎている場合は、それに応じてthreads-max
が小さくなります。詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- pid_max
PID 割り当てラップ値。
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- numa_balancing
このパラメーターは、 NUMA メモリーの自動分散を有効または無効にします。NUMA マシンでは、CPU がリモートメモリーにアクセスするかどうかについてパフォーマンスのペナルティーがあります。
詳細は「Kernel sysctl documentation」を参照してください。
- numa_balancing_scan_period_min_ms, numa_balancing_scan_delay_ms, numa_balancing_scan_period_max_ms, numa_balancing_scan_size_mb
このパラメーターは、そのタスクが実行しているローカルのメモリーノードへデータが移行する必要がある場合に、ページが適切に配置されているかどうかを検出します。
一連の
numa_balancing_scan
パラメーターの詳細は、Kernel sysctl ドキュメントを参照してください。
第3章 カーネルパラメーターおよび値の表示
3.1. カーネルコマンドラインパラメーター
カーネル引数の別名を持つカーネルコマンドラインパラメーターは、Red Hat Enterprise Linux の動作をカスタマイズするために起動時のみに使用されます。
3.1.1. カーネルコマンドラインパラメーターの設定
本セクションは、GRUB2 ブートローダーを使用して、AMD64 システムおよび Intel 64 システム、および zipl を使用する IBM Z で、カーネルコマンドラインパラメーターを変更する方法を説明します。
カーネルコマンドラインパラメーターは、 boot/grub/grub.cfg
設定ファイルに保存されています。この設定ファイルは、GRUB2 ブートローダーによって生成されます。この設定ファイルは編集しません。このファイルへの変更ができるのは、設定スクリプトのみです。
AMD64 および Intel 64 システムならびに IBM Power Systems ハードウェア向けに、GRUB2 のカーネルコマンドラインパラメーターを変更します 。
-
vim や Gedit などのプレーンテキストエディターを使用して、
/etc/default/grub
設定ファイルをroot
で開きます。 このファイルで、以下のように
GRUB_CMDLINE_LINUX
で始まる行を見つけます。GRUB_CMDLINE_LINUX="rd.lvm.lv=rhel/swap
crashkernel=auto
rd.lvm.lv=rhel/root rhgb quiet"- 必要なカーネルコマンドラインパラメーターの値を変更します。続いてファイルを保存し、エディターを終了します。
編集された
default
ファイルを使用して GRUB2 設定を再生成します。BIOS ファームウェアを使用しているシステムの場合は次のコマンドを実行します。#
grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfgUEFI ファームウェアを使用しているシステムの場合は次のコマンドを実行します。
#
grub2-mkconfig -o /boot/efi/EFI/redhat/grub.cfg
上記の手順を完了するとブートローダーが再設定され、設定ファイルに指定したカーネルコマンドラインパラメーターが、次回の再起動後に適用されます。
IBM Z ハードウェア用に zipl のカーネルコマンドラインパラメーターの変更
-
vim や Gedit などのプレーンテキストエディターを使用して、
/etc/zipl.conf
設定ファイルをroot
で開きます。 -
このファイル内で
parameters=
セクションを見つけ、必要なパラメーターを編集するか、またはない場合にはパラメーターを追加します。続いてファイルを保存し、エディターを終了します。 zipl 設定を再生成します。
#
zipl注記オプションを何も付けずに
zipl
コマンドのみを実行すると、デフォルト値が使用されます。使用できるオプションの一覧については、zipl(8)
の man ページを参照してください。
上記の手順を完了するとブートローダーが再設定され、設定ファイルに指定したカーネルコマンドラインパラメーターが、次回の再起動後に適用されます。
3.1.2. 制御可能なカーネルコマンドラインパラメーター
カーネルコマンドラインパラメーターの全一覧は、https://www.kernel.org/doc/Documentation/admin-guide/kernel-parameters.txt を参照してください。
3.1.2.1. ハードウェア固有のカーネルコマンドラインパラメーター
- pci=option[,option…]
PCI ハードウェアサブシステムの動作を指定
設定 Effect earlydump
[X86] カーネルが何らかの変更をする前に PCI 設定領域をダンプします。
off
[X86] PCI バスを調べません。
noaer
[PCIE] PCIEAER カーネルパラメーターが有効な場合、このカーネル起動オプションを使用して PCIE Advanced Error Reporting (AER) の使用を無効にすることができます。
noacpi
[X86] Interrupt Request (IRQ) ルーティングまたは PCI スキャニング用に Advanced Configuration and Power Interface (ACPI) は使用しません。
bfsort
PCI デバイスを幅優先順に並べ替えます。この並べ替えは、古い (⇐ 2.4) カーネルに対応するデバイスの順番となります。
nobfsort
PCI デバイスを幅優先順に並べ替えません。
その他の PCI オプションは、
kernel-doc-<version>.noarch
パッケージのディスクドキュメントに記載されています。ここでは、'<version>' は対応するカーネルバージョンに置き換える必要があります。- acpi=option
Advanced Configuration and Power Interface (ACPI) の動作を指定します。
設定 Effect acpi=off
ACPI の無効化
acpi=ht
ACPI の起動テーブル構文解析を使用しますが、ACPI インタープリターは有効にしません
これにより、ハイパースレッディングで 必要ではない 任意の ACPI 機能が無効となります。acpi=force
ACPI サブシステムの有効化が必要
acpi=strict
ACPI 仕様と完全に準拠していないプラットフォームに対する ACPI 層の耐性を低くします。
acpi_sci=<value>
ACPI SCI の割り込みをセットアップします。 ここで <value> は、エッジ、レベル、ハイ、ローのうちの 1 つとなります。
acpi=noirq
IRQ ルーティングに ACPI は使用しません。
acpi=nocmcff
訂正されたエラーの firmware first (FF) モードを無効にします。これにより、ファームウェアが FF フラグを設定したかどうかを確認する HEST CMC エラーソースの構文解析が無効となります。この場合、訂正されたエラー報告が重複する可能性があります。
第4章 カーネル機能
本章では、多くのユーザー空間ツールを有効にするカーネル機能の目的および使用について説明します。また、これらのツールの詳細についてのリソースも紹介します。
4.1. Control groups
4.1.1. コントロールグループの概要
コントロールグループの名前空間は、Red Hat Enterprise Linux 7.5 ではテクノロジープレビューとして提供されています。
Linux コントロールグループ (cgroup) は、システムハードウェアの使用上の制限を有効にし、cgroup 内で実行する個々のプロセスが cgroup の設定で許可された分だけ活用していることを確認します。
コントロールグループ は、名前空間 が有効にしたリソースの使用量を制限します。たとえば、ネットワーク名前空間により、あるプロセスの特定のネットワークカードへのアクセスが可能となり、cgroup はこのプロセスのカードの使用量が 50%を超えないように確認し、他のプロセスが帯域幅を確実に利用できるようにします。
コントロールグループの名前空間は、/proc/self/ns/cgroup インターフェースを経由して個々の cgroup の仮想化ビューを提供します。
目的は、グローバルな名前空間から cgroup への特権付きデータの漏えいを回避し、コンテナーマイグレーションなどの他の機能を有効にすることです。
現在、コンテナーを単一の cgroup と関連付けることが格段に容易となっていることから、コンテナーにはより一貫した cgroup のビューがあります。また、コンテナー内部のタスクを有効にし、属している cgroup の仮想化ビューが可能となります。
4.1.2. 名前空間の概要
名前空間は、分離したシステムリソースの仮想化ビューを可能にするカーネル機能です。システムリソースからプロセスを分離することで、プロセスが対話できるものを指定および制御できます。名前空間は、コントロールグループにとって不可欠なものです。
4.1.3. サポートしている名前空間
以下の名前空間は、Red Hat Enterprise Linux 7.5 以降でサポートされています。
Mount
- マウント名前空間は、ファイルシステムのマウントポイントを分離します。これにより各プロセスは明確なファイルシステム領域を持つことができ、その領域内で操作します。
UTS
- ホスト名および NIS ドメイン名
IPC
- System V IPC、POSIX メッセージキュー
PID
- プロセス ID
Network
- ネットワークデバイス、スタック、ポートなど。
User
- ユーザーおよびグループ ID
コントロールグループ
- cgroup の分離
コントロールグループの使用方法は、『リソース管理ガイド』 で説明しています。
4.2. カーネルソースチェッカー
Linux カーネルモジュールのソースチェッカー (ksc) は、所定のカーネルモジュール内におけるホワイトリスト以外の記号を確認するツールです。Red Hat パートナーもこのツールを使用して、Red Hat Bugzilla データベースにバグを報告することで、ホワイトリストに含まれる記号のレビューを要求できます。
4.2.1. 用途
本ツールは "-k" オプションでモジュールへのパスを受け取ります。
# ksc -k e1000e.ko Checking against architecture x86_64 Total symbol usage: 165 Total Non white list symbol usage: 74 # ksc -k /path/to/module
出力は、$HOME/ksc-result.txt
に保存されます。ホワイトリストへ追加された記号のレビューが要求されると、ホワイトリストに記載されていないそれぞれの記号の使用方法についての説明が ksc-result.txt
ファイルに追加される必要があります。"-p" オプションで ksc
を実行することで、リクエストバグを報告できます。
KSC は現在、xz 圧縮をサポートしていません。 ksc ツールは、xz 圧縮方法を処理できず、以下のエラーメッセージを表示します。
Invalid architecture, (Only kernel object files are supported)
この制限がなくなるまで、システム管理者は ksc ツールを実行する前に、xz 圧縮を使用して任意のサードパーティーモジュールを手動で展開する必要があります。
4.3. ファイルの Direct Access (DAX)
「file system dax」または「fs dax」として知られるファイルの Direct Access により、アプリケーションは、デバイスへのアクセスをバッファーするためにページキャッシュを使用することなく、dax 対応のストレージデバイスへのデータの読み取りおよび書き込みが可能となります。
この機能は、'ext4' または 'xfs' ファイルシステムを使用する場合に利用でき、-o dax
でファイルシステムをマウントするか、または dax
を /etc/fstab
のマウントエントリーの options セクションに追加して有効にされます。
コードのサンプルを含む詳細については、kernel-doc
パッケージを参照してください。これは、/usr/share/doc/kernel-doc-<version>/Documentation/filesystems/dax.txt
に保存されており、'<version>' は対応するカーネルバージョン番号になります。
4.4. ユーザー空間用のメモリー保護キー (別名 PKU または PKEYS)
メモリー保護キーは、ページベースの保護を強化するメカニズムを提供しますが、アプリケーションが保護ドメインを変更した時にページテーブルを修正する必要はありません。これは、各ページテーブルエントリーで以前無視されていた 4 ビットを「保護キー」に割り当て、可能なキーを 16 個提供することで有効となります。
メモリー保護キーは、いくつかの Intel CPU チップセットのハードウェア機能です。プロセッサーがこの機能をサポートしているかどうかを判別するには、/proc/cpuinfo
で pku
の有無を確認します。
$ grep pku /proc/cpuinfo
この機能をサポートするために、CPU は各キーに対して 2 つの別々のビット (Access Disable と Write Disable) を持つ、ユーザーがアクセス可能な新しいレジスター (PKRU) を提供します。この新しいレジスターの読み取りおよび書き込み用の新しい命令が 2 つ (RDPKRU と WRPKRU) 存在します。
プログラミングのサンプルについての詳細は、kernel-doc
パッケージで提供される/usr/share/doc/kernel-doc-*/Documentation/x86/protection-keys.txt
を参照してください。
4.5. Kernel Adress Space Layout Randomization
Kernel Adress Space Layout Randomization (KASLR) は 2 つの部分で構成され、これらが共に機能して Linux カーネルのセキュリティーを強化します。
- カーネルテキスト KASLR
- メモリー管理の KASLR
カーネルテキストの物理アドレスと仮想アドレスの場所が、個別にランダム化されます。カーネルの物理アドレスは 64 TB の任意の場所に配置できますが、カーネルの仮想アドレスは、[0xffffffff80000000, 0xffffffffc0000000] の間の 1 GB 領域に制限されます。
メモリー管理の KASLR には 3 つのセクションがあり、これらのセクションの開始アドレスは特定のエリアでランダム化されます。したがって、悪意のコードが、カーネルアドレス領域にその記号が置かれていることを知る必要がある場合に、KASLR は悪意のコードにカーネルの実行を挿入またはリダイレクトしないようにすることができます。
メモリー管理の KASLR には、以下の 3 つのセクションがあります。
- 直接マッピングセクション
- vmalloc セクション
- vmemmap セクション
KASLR コードが Linux カーネルにコンパイルされ、デフォルトで有効になりました。これを明示的に無効にするには、nokaslr
カーネルオプションをカーネルコマンドラインに追加します。
4.6. Advanced Error Reporting (AER)
AER と、AER で使用できるもの
AER を有効にする適切な方法を説明して、pcie_ports=native パラメーターおよび acpi=nocmcff パラメーターを記載します。使用する環境と、予測される悪影響を説明します。
第5章 手動のカーネルアップグレード
Red Hat Enterprise Linux カーネルは、サポートしているハードウェアとの整合性と互換性を保てるように、Red Hat Enterprise Linux カーネルチームがカスタムを構築します。リリースする前に、カーネルは Red Hat が定める厳格な品質保証テストセットをパスしなければなりません。
Red Hat Enterprise Linux カーネルは、Yum または PackageKit パッケージマネージャーを使用し、簡単にアップグレードして検証できるように、RPM 形式でパッケージされます。PackageKit は自動的に Red Hat コンテンツ配信ネットワークサーバーをクエリーし、カーネルパッケージなど利用可能な更新が含まれれるパッケージを通知します。
本章は、yum
ではなく、rpm
コマンドを使用して手動でカーネルパッケージを更新する必要のあるユーザー のみ を対象としています。
できる限り Yum または PackageKit パッケージマネージャーを使用して新しいカーネルをインストールしてください。 理由は、これらのツールは常に新しいカーネルを インストール するからです。他の方法で現行バージョンを入れ替えると (失敗した場合) システムが起動できなくなる可能性が出てきます。
Red Hat では、カスタムのカーネルは サポートされていません。ただし、ソリューションの記事からガイダンスを取得できます。
yum を使用したカーネルパッケージのインストールの詳細は、『システム管理者のガイド』の関連のセクションを参照してください。
Red Hat コンテンツ配信ネットワークに関する情報は、『システム管理者のガイド』の関連セクションを参照してください。
5.1. カーネルパッケージの概要
Red Hat Enterprise Linux には以下のカーネルパッケージが含まれています。
- kernel: シングルコア、マルチコア、マルチプロセッサーシステム用のカーネルが含まれます。
- kernel-debug: カーネル診断ができるように複数のデバッグオプションが有効になっているカーネルが含まれます。 デバッグオプションが有効になっているとパフォーマンスが低下します。
- kernel-devel: kernel パッケージに対して、モジュールを構築するのに十分なカーネルヘッダーと makefiles を含んでいます。
- kernel-debug-devel: カーネル診断ができるように複数のデバッグオプションが有効になっている開発バージョンのカーネルが含まれます。 デバッグオプションが有効になっているとパフォーマンスが低下します。
kernel-doc: カーネルソースからのドキュメントファイルです。これらのファイルには、同梱で配布される Linux カーネルとデバイスドライバーのさまざまな部分が文書化されています。このパッケージをインストールすると、オプションへの参照が提供され、読み込み時に Linux カーネルモジュールに渡すことができます。
デフォルトでは、これらのファイルは
/usr/share/doc/kernel-doc-kernel_version/
ディレクトリーに配置されます。- kernel-headers: Linux カーネルと、ユーザー空間ライブラリーおよびプログラムとの間のインターフェースを指定する C ヘッダーファイルが含まれます。ヘッダーファイルは、ほとんどの標準プログラムを構築するのに必要な構造と定数を定義します。
- linux-firmware: さまざまなデバイス操作に必要なファームウェアすべてを含んでいます。
- perf: Linux カーネルのパフォーマンスモニタリングを有効にする perf ツールを含んでいます。
- kernel-abi-whitelists: Red Hat Enterprise Linux カーネル ABI に関連する情報を含んでいます。 これには、外部の Linux カーネルモジュールが必要とするカーネル記号の一覧と実施を支援する yum プラグインが含まれます。
- kernel-tools: Linux カーネル操作のツールとサポートドキュメントが含まれています。
5.2. アップグレードへの準備
カーネルをアップグレードする前に、予防的な前準備手順の実行をお薦めします。
まず、問題が発生した場合に備えてシステム用に機能するブートメディアがあることを確認します。ブートローダーで新しいカーネルをブートするように正しく設定されていない場合には、このメディアを使って Red Hat Enterprise Linux をブートすることができます。
USB メディアは多くの場合、ペンドライブ、サムディスク または キー などと呼ばれるフラッシュデバイスの形式、または、外部接続のハードディスクとして提供されています。このタイプのほとんどすべてのメディアが VFAT
ファイルシステムとしてフォーマットされます。ext2
、ext3
、 ext4
、または VFAT
などとしてフォーマットされているメディア上でブート可能な USB メディアを作成できます。
ディストリビューションのイメージファイル、または最低限ブートメディア (minimal boot media) イメージを USB メディアに転送することができます。デバイスには十分な空き領域があることを確認してください。約 4 GB がディストリビューション DVD イメージ用に必要で、約 700 MB がディストリビューション CD イメージ用に、そして約 10 MB が最低限ブートメディアイメージ用に必要です。
Red Hat Enterprise Linux インストール DVD、またはインストール CD-ROM #1 からの boot.iso
ファイルのコピーと、約 16 MB の空き領域を持つ VFAT
ファイルシステムでフォーマットした USB ストレージデバイスが必要になります。
USB ストレージデバイスの使用方法は『How to format a USB key』 および『How to manually mount a USB flash drive in a non-graphical environment solution』を参照してください。
以下の手順では、コピー先のファイルと同じパス名を指定しなければ、USB ストレージデバイス上にある既存のファイルは影響を受けません。USB ブートメディアを作成するには、 root
ユーザーとして以下のコマンドを実行します。
-
syslinux パッケージがインストールされていない場合は、これをインストールします。これを実行するには、root で
yum install syslinux
コマンドを実行します。 USB ストレージデバイス上に SYSLINUX ブートローダーをインストールします。
# syslinux /dev/sdX1
ここでの sdX はデバイス名です。
boot.iso
と USB ストレージデバイス用にマウントポイントを作成します。# mkdir /mnt/isoboot /mnt/diskboot
boot.iso
をマウントします。# mount -o loop boot.iso /mnt/isoboot
USB ストレージデバイスをマウントします。
# mount /dev/sdX1 /mnt/diskboot
ISOLINUX ファイルを
boot.iso
から USB ストレージデバイスにコピーします。# cp /mnt/isoboot/isolinux/* /mnt/diskboot
boot.iso
からのisolinux.cfg
ファイルを、USB デバイスのsyslinux.cfg
ファイルとして使用します。# grep -v local /mnt/isoboot/isolinux/isolinux.cfg > /mnt/diskboot/syslinux.cfg
boot.iso
と USB ストレージデバイスをアンマウントします。# umount /mnt/isoboot /mnt/diskboot
- このブートメディアでマシンを再起動して、ブートできることを確認してから他の操作に移ります。
別の方法として、フロッピードライブがあるシステム上でブートディスクを作成するには、mkbootdisk パッケージをインストールして、mkbootdisk
コマンドを root
で実行します。このパッケージをインストールした後に使用法について確認するには、man mkbootdisk
man ページを参照してください。
どのカーネルパッケージがインストールされているかを判別するには、シェルプロンプトで yum list installed "kernel-*"
コマンドを実行します。出力では、システムのアーキテクチャーに応じて、以下のパッケージのすべてか、または一部が示されます。 バージョン番号は異なる場合があります。
# yum list installed "kernel-*" kernel.x86_64 3.10.0-54.0.1.el7 @rhel7/7.0 kernel-devel.x86_64 3.10.0-54.0.1.el7 @rhel7 kernel-headers.x86_64 3.10.0-54.0.1.el7 @rhel7/7.0
この出力から、カーネルのアップグレード用にダウンロードすべきパッケージを判断します。シングルプロセッサーのシステムでは、必要なパッケージは kernel パッケージのみです。別のパッケージの説明は、「カーネルパッケージの概要」を参照してください。
5.3. アップグレードされたカーネルのダウンロード
システム用に更新されたカーネルが利用可能かを判定する手段は数種類あります。
- セキュリティーエラータ — セキュリティー問題を修復するカーネルを含む、セキュリティーエラータについての詳細は、カスタマーポータルを参照してください。
- Red Hat コンテンツ配信ネットワーク: Red Hat コンテンツ配信ネットワークにサブスクライブするシステムについては、yum パッケージマネージャーが最新カーネルをダウンロードし、システム上のカーネルをアップグレードできます。Dracut ユーティリティーは、必要な場合は初期 RAM ファイルシステムイメージを作成し、新規カーネルを起動するためにブートローダーを設定します。Red Hat コンテンツ配信ネットワークからパッケージをインストールする方法は、『システム管理者のガイド』の関連のセクションを参照してください。Red Hat コンテンツ配信ネットワークにシステムを登録する方法は、『システム管理者のガイド』の関連のセクションを参照してください。
更新されたカーネルを Red Hat Network からダウンロードとしてインストールするのに yum を使用する場合は、「初期 RAM ファイルシステムイメージの確認」 および 「ブートローダーの確認」 の指示にのみ従ってください。カーネルはデフォルトで起動するように変更しないでください。Red Hat Network によって、デフォルトのカーネルが最新バージョンに自動的に変更します。カーネルを手動でインストールするには、「アップグレードの実行」 に進んでください。
5.4. アップグレードの実行
必要なパッケージをすべて取り込んだ後は、既存カーネルをアップグレードします。
新しいカーネルに問題がある場合を考え、古いカーネルの維持を強く推奨します。
シェルプロンプトで、カーネル RPM パッケージを格納しているディレクトリーに移動します。rpm
コマンドに -i
引数を使用して古いカーネルを残します。-U
オプションは、現在インストールされているカーネルを上書きして、ブートローダーの問題を生じさせるので、これは使用 しないでください。以下に例を示します。
# rpm -ivh kernel-kernel_version.arch.rpm
次の手順では、初期 RAM ファイルシステムイメージが作成されているかどうかを検証します。詳細は「初期 RAM ファイルシステムイメージの確認」を参照してください。
5.5. 初期 RAM ファイルシステムイメージの確認
初期 RAM ファイルシステムイメージの仕事は、IDE、SCSI、RAID などのブロックデバイスモジュールをプレロードすることです。そうすることで、それらのモジュールが通常配備されている root ファイルシステムがアクセス可能になりマウントできるようになります。 Red Hat Enterprise Linux 7 システムでは、パッケージマネージャーの Yum、PackageKit、または RPM のいずれかを使用して新しいカーネルをインストールする場合は、常に Dracut ユーティリティーがインストールスクリプトにより呼び出され、initramfs (初期 RAM ファイルシステムイメージ) を作成します。
/etc/sysctl.conf
ファイルまたは別の sysctl
設定ファイルを変更してカーネル属性を変更し、変更した設定がブートプロセスの初期段階で使用される場合には、dracut -f
コマンドを使用して、初期 RAM ファイルシステムイメージの再起動が必要になる場合があります。たとえば、ネットワーク関連の変更を受けて、ネットワークにアタッチされたストレージから起動する場合などです。
IBM eServer System i (「IBM eServer System i 上の初期 RAM ファイルシステムイメージとカーネルの検証」 を参照) 以外のすべてのアーキテクチャー上では、dracut
コマンドを実行すると initramfs
を作成できます。ただし、initramfs
は手動で作成する必要はありません。このステップは、カーネルとその関連パッケージが Red Hat によって提供される RPM パッケージからインストールされているか、またはアップグレードされている場合には自動的に実行されます。
以下の手順に従って、現在のカーネルバージョンに該当する initramfs
が存在していること、それが grub.cfg
設定ファイル内で正しく指定されているかを検証できます。
初期 RAM ファイルシステムイメージの確認
root
のように、/boot
ディレクトリーのコンテンツを一覧表示し、最新 (最近の) バージョン番号でカーネル (vmlinuz-kernel_version
) およびinitramfs-kernel_version
を見つけます。例5.1 カーネルと initramfs バージョンの一致を確認
# ls /boot config-3.10.0-67.el7.x86_64 config-3.10.0-78.el7.x86_64 efi grub grub2 initramfs-0-rescue-07f43f20a54c4ce8ada8b70d33fd001c.img initramfs-3.10.0-67.el7.x86_64.img initramfs-3.10.0-67.el7.x86_64kdump.img initramfs-3.10.0-78.el7.x86_64.img initramfs-3.10.0-78.el7.x86_64kdump.img initrd-plymouth.img symvers-3.10.0-67.el7.x86_64.gz symvers-3.10.0-78.el7.x86_64.gz System.map-3.10.0-67.el7.x86_64 System.map-3.10.0-78.el7.x86_64 vmlinuz-0-rescue-07f43f20a54c4ce8ada8b70d33fd001c vmlinuz-3.10.0-67.el7.x86_64 vmlinuz-3.10.0-78.el7.x86_64
例5.1「カーネルと initramfs バージョンの一致を確認」は以下の点を示しています。
-
3 つのカーネルがインストールされています (より正確には、3 つのカーネルファイルが
/boot
ディレクトリーにあります)。 -
最新のカーネルは
vmlinuz-3.10.0-78.el7.x86_64
であり、 カーネルバージョンに一致する
initramfs
ファイルinitramfs-3.10.0-78.el7.x86_64kdump.img
も存在します。重要/boot
ディレクトリーで、いくつかのinitramfs-kernel_versionkdump.img
ファイルを見つけることができる場合があります。それらは、カーネルのデバッグ目的で Kdump メカニズムで作成される特殊ファイルであり、システムの起動には使用されず、無視しても問題ありません。kdump
についての詳細は、『Red Hat Enterprise Linux 7 カーネルクラッシュダンプガイド』を参照してください。
-
3 つのカーネルがインストールされています (より正確には、3 つのカーネルファイルが
使用している
initramfs-kernel_version
ファイルが/boot
ディレクトリーにある最新カーネルのバージョンと一致しない場合や他の特定の状況では、Dracut ユーティリティーを使用してinitramfs
ファイルを生成する必要がある場合があります。dracut
をオプションなしでroot
で単純に呼び出すと、それが/boot
で、そのディレクトリーにある最新カーネル用のinitramfs
ファイルを生成するようになります。# dracut
dracut
が既存のinitramfs
を上書きする必要がある場合は (たとえば、initramfs
が破損している場合など)、-f
、--force
オプションを使用する必要があります。そうでない場合には、dracut
は既存のinitramfs
ファイルの上書きを拒否します。# dracut Does not override existing initramfs (/boot/initramfs-3.10.0-78.el7.x86_64.img) without --force
dracut initramfs_name kernel_version
を呼び出すことで現行ディレクトリーに initramfs を作成できます。# dracut "initramfs-$(uname -r).img" $(uname -r)
事前に読み込む特定のカーネルモジュールを指定する必要がある場合には、
/etc/dracut.conf
設定ファイルのadd_dracutmodules+="module more_modules "
ディレクティブの括弧内にそれらのモジュールの名前 (.ko
などのファイル名のサフィックスを除く) を追加します。dracut で作成したinitramfs
イメージファイルのファイルコンテンツを一覧表示するには、lsinitrd initramfs_file
コマンドを使用します。# lsinitrd /boot/initramfs-3.10.0-78.el7.x86_64.img Image: /boot/initramfs-3.10.0-78.el7.x86_64.img: 11M ======================================================================== dracut-033-68.el7 ======================================================================== drwxr-xr-x 12 root root 0 Feb 5 06:35 . drwxr-xr-x 2 root root 0 Feb 5 06:35 proc lrwxrwxrwx 1 root root 24 Feb 5 06:35 init -> /usr/lib/systemd/systemd drwxr-xr-x 10 root root 0 Feb 5 06:35 etc drwxr-xr-x 2 root root 0 Feb 5 06:35 usr/lib/modprobe.d [output truncated]
オプションおよび使用方法についての詳細は、
man dracut
およびman dracut.conf
を参照してください。/boot/grub2/grub.cfg
設定ファイルを検査して、起動しているカーネルバージョンのinitramfs-kernel_version.img
ファイルが存在することを確認します。以下に例を示します。# grep initramfs /boot/grub2/grub.cfg initrd16 /initramfs-3.10.0-123.el7.x86_64.img initrd16 /initramfs-0-rescue-6d547dbfd01c46f6a4c1baa8c4743f57.img
詳細は「ブートローダーの確認」を参照してください。
IBM eServer System i 上の初期 RAM ファイルシステムイメージとカーネルの検証
IBM eServer System i のマシンでは、初期 RAM ファイルシステムとカーネルファイルは1 つのファイルに統合してあり、これは addRamDisk
コマンドで作成されます。カーネルとその関連パッケージがインストールされているか、または Red Hat 配布の RPM パッケージでアップグレードされている場合は、このステップは自動的に実行されるので、手動で実行する必要はありません。このファイルが作成されたことを確認するには、 root
で以下のコマンドを実行し、/boot/vmlinitrd-kernel_version
ファイルがすでに存在していることを確認します。
# ls -l /boot/
kernel_version は、先程インストールしたカーネルバージョンと一致する必要があります。
初期 RAM ファイルシステムイメージへの変更を戻す方法
たとえば、システムの設定を間違えたことで起動しなくなったような場合は、以下の手順に従って初期 RAM ファイルシステムイメージに加えた変更を戻す必要があります。
初期 RAM ファイルシステムイメージへの変更を戻す方法
- GRUB メニューでレスキューカーネルを選択してシステムを再起動します。
-
initramfs
の誤動作を引き起こしている間違った設定を変更します。 root で以下のコマンドを実行して、正しい設定で
initramfs
を作成し直します。# dracut --kver kernel_version --force
上記の手順は、vm.nr_hugepages
を sysctl.conf
ファイルに誤って設定した場合などに役立ちます。sysctl.conf
ファイルは initramfs
に含まれるため、新規の vm.nr_hugepages
設定は、initramfs
に適用され、 initramfs
の再ビルドが行われます。ただし、設定が間違っているので、新規の initramfs
は破損しており、新規にビルドされるカーネルは起動しないため、上記の手順を使用した設定の修正が必要になります。
初期 RAM ファイルシステムイメージのコンテンツの一覧表示
initramfs
に含まれるファイルを一覧表示するには、root で以下のコマンドを実行します。
# lsinitrd
/etc
ディレクトリーにあるファイルだけを表示するには、以下のコマンドを使用します。
# lsinitrd | grep etc/
現行カーネルの initramfs
に保存されている特定ファイルのコンテンツを出力するには、-f
オプションを使用します。
# lsinitrd -f filename
たとえば、sysctl.conf
のコンテンツを出力するには、以下のコマンドを実行します。
# lsinitrd -f /etc/sysctl.conf
カーネルのバージョンを使用するには、--kver
オプションを使用します。
# lsinitrd --kver kernel_version -f /etc/sysctl.conf
たとえば、カーネルバージョン 3.10.0-327.10.1.el7.x86_64 に関する情報を一覧表示するには、以下のコマンドを使用します。
# lsinitrd --kver 3.10.0-327.10.1.el7.x86_64 -f /etc/sysctl.conf
5.6. ブートローダーの確認
yum
コマンドまたは rpm
コマンドのいずれかで、カーネルをインストールできます。
rpm
を使用してカーネルをインストールすると、カーネルパッケージはブートローダー設定ファイル内にその新しいカーネル用のエントリーを作成します。
いずれのコマンドも、/etc/sysconfig/kernel
設定ファイルに以下の設定を含める場合にのみ、新しいカーネルがデフォルトのカーネルとして起動するよう設定することに留意してください。
DEFAULTKERNEL=kernel UPDATEDEFAULT=yes
DEFAULTKERNEL
オプションは、デフォルトのカーネルパッケージタイプを指定します。UPDATEDEFAULT
オプションは、新規カーネルパッケージがデフォルトで新しいカーネルにするかを指定します。
第6章 カーネルライブパッチでパッチの適用
Red Hat Enterprise Linux カーネルのライブパッチソリューションを使用して、システムの再起動またはプロセスの再起動を行わずに、実行中のカーネルにパッチを当てることができます。
このソリューションでは、システム管理者は以下を行うことができます。
- 重大なセキュリティーパッチをカーネルに即座に適用することが可能。
- 長時間実行しているタスクの完了、ユーザーのログオフ、スケジュールダウンタイムを待つ必要がない。
- システムのアップタイムをより制御し、セキュリティーや安定性を犠牲にしない。
重要な、重要なすべての CVE は、カーネルライブパッチソリューションで解決されるわけではありません。この目的は、セキュリティー関連パッチに必要な再起動を減らすことであり、完全になくすことではありません。ライブパッチの範囲の詳細は、「RHEL 7 はライブカーネルパッチ (kpatch) をサポートしていますか?」 を参照してください。
カーネルのライブマイグレーションパッチと、その他のカーネルサブコンポーネントとの間に、いくらか非互換性が存在します。カーネルのライブパッチを使用する前に、「kpatch の制限」セクションを慎重に確認してください。
6.1. kpatch の制限
-
kpatch
機能は、汎用のカーネルアップグレードメカニズムではありません。システムをすぐに再起動できない場合など、単純なセキュリティーおよびバグ修正の更新を適用する場合に使用します。 -
パッチの読み込み中または読み込み後は、
SystemTap
またはkprobe
ツールを使用しないでください。このようなプローブが削除されるまでは、パッチが適用できなくなる可能性があります。
6.2. サードパーティーのライブパッチサポート
kpatch
ユーティリティーは、Red Hat リポジトリー提供の RPM モジュールを含む、Red Hat がサポートする唯一のカーネルライブパッチユーティリティーです。Red Hat は、Red Hat 提供でないライブカーネルパッチはサポートしません。
サードパーティーのライブパッチのサポートは、パッチを提供しているベンダーにお問い合わせください。
サードパーティーのライブパッチを実行しているシステムの場合、Red Hat は、Red Hat が同梱し、サポートしているソフトウェアの複製を求める権利を有します。これが可能でない場合、Red Hat は、同じ動作が発生するかどうかを確認するために、ライブパッチを適用せずに、お使いのテスト環境で同じようなシステムとワークロードの展開を求めます。
サードパーティソフトウェアサポートポリシーの詳細は、「Red Hat グローバルサポートサービスは、サードパーティーのソフトウェア、ドライバー、そして認定されていないハードウェアおよびハイパーバイザー、もしくはゲストのオペレーティングシステムについてどのようなサポートを提供していますか?」を参照してください。
6.3. カーネルライブパッチへのアクセス
ライブのカーネルパッチ機能は、RPM パッケージとして提供されるカーネルモジュール (.ko
ファイル) として実装されます。
すべてのお客様は、通常のチャンネルから提供されるカーネルライブパッチにアクセスできます。ただし、延長サポートサービスにサブスクライブしていないお客様は、次のマイナーリリースが利用可能になると、現行のマイナーリリースに対する新しいパッチへのアクセスを失うことになります。たとえば、標準のサブスクリプションを購入しているお客様は、RHEL 8.3 がリリースされるまで RHEL 8.2 のライブパッチのみを行うことができます。
6.4. カーネルライブパッチのコンポーネント
カーネルのライブパッチのコンポーネントは、以下のようになります。
- カーネルパッチモジュール
- カーネルライブパッチの配信メカニズム
- パッチが適用されるカーネル用に構築したカーネルモジュール。
- パッチモジュールには、カーネルに必要な修正のコードが含まれます。
-
パッチモジュールは、
livepatch
カーネルサブシステムで登録し、置き換えられる機能に対応するポインターと共に、置き換えられる元の機能の情報を提供します。カーネルパッチモジュールは RPM として提供されます。 -
命名規則は
kpatch_<kernel version>_<kpatch version>_<kpatch release>
です。名前の「kernel version」の部分の ピリオド および ハイフン が アンダースコア に置き換えられています。
kpatch
ユーティリティー- パッチモジュールを管理するためのコマンドラインユーティリティー。
kpatch
サービス-
multiuser.target
で必要なsystemd
サービスこのターゲットは、システムの起動時にカーネルパッチをロードします。
6.5. カーネルライブパッチの仕組み
kpatch
カーネルパッチソリューションは、livepatch
カーネルサブシステムを使用して、古い機能を新規機能にリダイレクトします。ライブカーネルパッチがシステムに適用されると、以下が発生します。
-
カーネルパッチモジュールは
/var/lib/kpatch/
ディレクトリーにコピーされ、次回の起動時にsystemd
によってカーネルに再適用するために登録されます。 -
実行中のカーネルに kpatch モジュールがロードされ、新しいコードのメモリー内の場所を指定するポインターを使用して、このパッチが適用された機能が
ftrace
メカニズムに登録されます。 -
パッチが適用された機能にカーネルがアクセスすると、
ftrace
メカニズムによってカーネルがリダイレクトされます。これにより、元の機能はバイパスされ、カーネルはパッチが適用されたバージョンの機能にリダイレクトされます。
図6.1 カーネルライブパッチの仕組み

6.6. カーネルライブパッチの有効化
カーネルパッチモジュールは RPM パッケージに含まれ、パッチが適用されたカーネルバージョンに固有のものとなります。各 RPM パッケージは、徐々に蓄積されていきます。
以下のサブセクションでは、指定のカーネルに対して、将来のすべての累積パッチの更新を受け取る方法を説明します。
Red Hat は、Red Hat がサポートするシステムに適用されたサードパーティーのライブパッチをサポートしません。
6.6.1. ライブパッチストリームへのサブスクライブ
この手順では、特定のライブパッチパッケージをインストールする方法を説明します。そうすることで、指定のカーネルのライブパッチストリームをサブスクライブし、今後のカーネルに対する累計なライブパッチ更新をすべて受けることができます。
ライブパッチは累積的であるため、特定のカーネルにデプロイされている個々のパッチを選択できません。
前提条件
- root 権限
手順
必要に応じて、カーネルバージョンを確認します。
# uname -r 3.10.0-1062.el7.x86_64
カーネルのバージョンに一致するライブパッチパッケージを検索します。
# yum search $(uname -r)
ライブパッチパッケージをインストールします。
# yum install "kpatch-patch = $(uname -r)"
上記のコマンドでは、特定カーネルにのみに最新の累積パッチをインストールし、適用します。
パッケージのバージョンが 1-1 以上であれば、ライブパッチパッケージには、パッチモジュールが含まれます。この場合、ライブパッチパッケージのインストール時に、カーネルにパッチが自動的に適用されます。
また、カーネルパッチモジュールは、今後の起動時に
systemd
システムおよびサービスマネージャーによって読み込まれる/var/lib/kpatch/
ディレクトリーにインストールされます。注記指定のカーネルに利用可能なライブパッチがない場合は、空のライブパッチパッケージがインストールされます。空のライブパッケージには、kpatch_version-kpatch_release 0-0 (例:
kpatch-patch-3_10_0-1062-0-0.el7.x86_64.rpm
) が含まれます。空の RPM のインストールを行うと、指定のカーネルの将来のすべてのライブパッチにシステムがサブスクライブされます。必要に応じて、カーネルがパッチを当てていることを確認します。
# kpatch list Loaded patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 [enabled] Installed patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 (3.10.0-1062.el7.x86_64) …
この出力は、カーネルパッチモジュールがカーネルに読み込まれていることを示しています。つまり、カーネルには、
kpatch-patch-3_10_0-1062-1-1.el7.x86_64.rpm
パッケージの最新の修正でパッチが適用されます。
関連情報
-
kpatch
コマンドラインユーティリティーについての詳細は、kpatch(1)
man ページを参照してください。 - RHEL 7 のソフトウェアパッケージの詳細は、『システム管理者のガイド の関連セクションを参照してください。
6.7. カーネルパッチモジュールの更新
カーネルパッチモジュールが配信され、RPM パッケージを通じて適用されているため、累計のカーネルパッチモジュール更新は、他の RPM パッケージの更新と似ています。
前提条件
- root 権限
- 「ライブパッチストリームへのサブスクライブ」で説明されているように、システムがライブパッチストリームにサブスクライブされています。
手順
現在のカーネルの新しい累積バージョンを更新します。
# yum update "kpatch-patch = $(uname -r)"
上記のコマンドは、現在実行中のカーネルに利用可能な更新を自動的にインストールし、適用します。これには、新たにリリースされた累計なライブパッチが含まれます。
もしくは、インストールしたすべてのカーネルパッチモジュールを更新します。
# yum update "kpatch-patch*"
システムが同じカーネルで再起動すると、カーネルのライブパッチが kpatch.service
サービスによって自動的に再度実行されます。
関連情報
- ソフトウェアパッケージの更新の詳細情報は、『システム管理者のガイド』の関連のセクションを参照してください。
6.8. カーネルライブパッチの無効化
システム管理者が、Red Hat Enterprise Linux カーネルライブパッチソリューション関連の不足の悪影響に遭遇した場合は、このメカニズムを無効化する選択肢があります。以下のセクションでは、ライブパッチソリューションを無効にする方法を説明します。
現在、Red Hat はシステムの再起動なしで、ライブパッチを元に戻すことはサポートしていません。ご不明な点がございましたら、サポートチームまでお問い合わせください。
6.8.1. ライブパッチパッケージの削除
以下の手順は、ライブパッチパッケージを削除して、Red Hat Enterprise Linux カーネルのライブパッチソリューションを無効にする方法を説明します。
前提条件
- root 権限
- ライブパッチパッケージがインストールされている。
手順
ライブパッチパッケージを選択します。
# yum list installed | grep kpatch-patch kpatch-patch-3_10_0-1062.x86_64 1-1.el7 @@commandline …
上記の出力例は、インストールしたライブパッチパッケージを一覧表示します。
ライブパッチパッケージを削除します。
# yum remove kpatch-patch-3_10_0-1062.x86_64
ライブパッチパッケージが削除されると、カーネルは次回の再起動までパッチが当てられたままになりますが、カーネルパッチモジュールはディスクから削除されます。次回の再起動後に、この一致するカーネルにはパッチが適用されません。
- システムを再起動します。
ライブパッチパッケージが削除されたことを確認します。
# yum list installed | grep kpatch-patch
パッケージが正常に削除された場合、このコマンドでは何も出力されません。
必要に応じて、カーネルのライブパッチソリューションが無効になっていることを確認します。
# kpatch list Loaded patch modules:
この出力例では、現在読み込まれているパッチモジュールがないため、カーネルにパッチが適用されておらず、ライブパッチソリューションがアクティブでないことが示されています。
関連情報
-
kpatch
コマンドラインユーティリティーについての詳細は、kpatch(1)
man ページを参照してください。 - ソフトウェアパッケージの使用方法は、『システム管理者のガイド』 の関連のセクションを参照してください。
6.8.2. カーネルパッチモジュールのアンインストール
以下の手順では、Red Hat Enterprise Linux カーネルライブパッチソリューションが、後続のブートでカーネルパッチモジュールを適用しないようにする方法を説明します。
前提条件
- root 権限
- ライブパッチパッケージがインストールされている。
- カーネルパッチモジュールがインストールされ、ロードされている。
手順
カーネルパッチモジュールを選択します。
# kpatch list Loaded patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 [enabled] Installed patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 (3.10.0-1062.el7.x86_64) …
選択したカーネルパッチモジュールをアンインストールします。
# kpatch uninstall kpatch_3_10_0_1062_1_1 uninstalling kpatch_3_10_0_1062_1_1 (3.10.0-1062.el7.x86_64)
アンインストールしたカーネルモジュールが読み込まれていることに注意してください。
# kpatch list Loaded patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 [enabled] Installed patch modules: <NO_RESULT>
選択したモジュールをアンインストールすると、カーネルは次回の再起動までパッチが当てられますが、カーネルパッチモジュールはディスクから削除されます。
- システムを再起動します。
必要に応じて、カーネルパッチモジュールがアンインストールされていることを確認します。
# kpatch list Loaded patch modules:
上記の出力例では、ロードまたはインストールされたカーネルパッチモジュールが表示されていません。したがって、カーネルにパッチが適用されておらず、カーネルのライブパッチソリューションはアクティブではありません。
関連情報
-
kpatch
コマンドラインユーティリティーの詳細は、kpatch(1)
man ページを参照してください。
6.8.3. kpatch.service の無効化
以下の手順では、Red Hat Enterprise Linux カーネルライブパッチソリューションが、後続のブートでカーネルパッチモジュールをグローバルに適用しないようにする方法を説明します。
前提条件
- root 権限
- ライブパッチパッケージがインストールされている。
- カーネルパッチモジュールがインストールされ、ロードされている。
手順
kpatch.service
が有効にされていることを確認します。# systemctl is-enabled kpatch.service enabled
kpatch.service
を無効にします。# systemctl disable kpatch.service Removed /etc/systemd/system/multi-user.target.wants/kpatch.service.
適用されたカーネルモジュールが依然としてロードされていることに注意してください。
# kpatch list Loaded patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 [enabled] Installed patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 (3.10.0-1062.el7.x86_64)
- システムを再起動します。
オプションで、
kpatch.service
のステータスを確認します。# systemctl status kpatch.service ● kpatch.service - "Apply kpatch kernel patches" Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/kpatch.service; disabled; vendor preset: disabled) Active: inactive (dead)
この出力サンプルでは、
kpatch.service
が無効にされており、実行されていないことを証明しています。したがって、カーネルのライブパッチソリューションはアクティブではありません。カーネルパッチモジュールがアンロードされたことを確認します。
# kpatch list Loaded patch modules: Installed patch modules: kpatch_3_10_0_1062_1_1 (3.10.0-1062.el7.x86_64)
上記の出力例では、カーネルパッチモジュールがインストールされていても、カーネルにパッチが適用されていないことを示しています。
関連情報
-
kpatch
コマンドラインユーティリティーについての詳細は、kpatch(1)
man ページを参照してください。 -
systemd
システムおよびサービスマネージャー、ユニット設定ファイル、それらの場所、およびsystemd
ユニットタイプの詳細な一覧については、『システム管理者のガイド』の関連のセクションを参照してください。
第7章 カーネルクラッシュダンプガイド
7.1. kdump について
7.1.1. kdump と kexec について
kdump とは、システムのメモリー内容を保存して後で分析できるようにカーネルのクラッシュをダンプする仕組みを指します。kdump は kexec に依存し、この kexec を使用して、別のカーネルのコンテキストから Linux カーネルを起動し、BIOS を迂回して通常は失われてしまう 1 番目のカーネルメモリーの内容を保持することができます。
システムクラッシュが発生すると kdump は kexec を使用して 2 番目のカーネルで起動します (キャプチャーカーネル)。この 2 番目のカーネルはシステムメモリーの予約部分に収納されていて 1 番目のカーネルからはアクセスできません。2 番目のカーネルは起動するとクラッシュしたカーネルメモリーの内容 (クラッシュダンプ) をキャプチャーして保存します。
カーネルクラッシュダンプは、障害時に唯一利用可能な情報である可能性があるので、ビジネスに不可欠な環境ではこのデータの重要性を過小評価してはいけません。Red Hat は、システム管理者に対して、通常のカーネル更新サイクルで kexec-tools
を定期的に更新し、テストすることを推奨しています。これは、新しいカーネル機能が実装されている場合に特に重要です。
HP Watchdog タイマー (hpwdt) ドライバーは、RHEV ハイパーバイザーとして実行中されている HP システムで事前に読み込まれるため、これらのシステムは NMI ウォッチドッグを使用できます。kexec-tools-2.0.15-33.el7.x86_64 から開始する更新された kexec-tools パッケージは hpwdt ドライバーを事前に読み込みます。
ドライバー bnx2x および bmx2fc が kdump カーネルのブラックリストに入れられ、2 つ目のカーネルがパニックを生じさせ、ダンプはキャプチャーされません。
7.1.2. メモリー要件
kdump でカーネルクラッシュダンプをキャプチャーしてさらに分析ができるように保存するにはシステムメモリーの一部をキャプチャーカーネル用に永続的に予約する必要があります。予約するとその部分はメインカーネルでは使用できなくなります。
メモリー要件は、特定のシステムパラメーターによって異なります。主な要因は、システムのハードウェアアーキテクチャーです。以下のコマンドをシェルプロンプトで入力してマシンの正確なアーキテクチャー名を特定し (x86_64
など)、これを標準出力に表示します。
uname -m
予約すべきメモリーサイズを左右する別の要因として搭載しているシステムメモリーの総量が影響します。たとえば、x86_64 アーキテクチャーでは予約メモリーは 4 KB のメモリーごとに、160 MB + 2 ビットになります。搭載されている物理メモリーの合計が 1 TB のシステムの場合には 224 MB (160 MB + 64 MB) ということになります。システムアーキテクチャーごとの kdump メモリー要件と物理メモリー量についての詳細は 「kdump メモリー要件」を参照してください。
多くのシステムでは必要なメモリー量は kdump によって自動的に算出、予約が行われます。この動作はデフォルトで有効になっていますが、利用可能な合計メモリーサイズが一定以上搭載されているシステムに限られます。この自動割り当て動作に必要なメモリーサイズはシステムのアーキテクチャーによって異なります。システムアーキテクチャーに基づいた自動メモリー割り当てに必要な最小メモリーサイズの一覧は、「メモリー自動予約の最小しきい値」を参照してください。
システムメモリーが自動割り当ての動作に必要な最小メモリーに満たない場合、または独自の予約メモリーサイズを必要とするような場合には予約メモリーを手動で設定することができます。コマンドラインでこの作業を行う場合は 「メモリー使用量の設定」を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースでこの作業を行う場合は「メモリー使用量の設定」を参照してください。
kdump サービスを設定したら、自動メモリー割り当てであっても設定のテストを行うことを強く推奨します。設定のテスト方法については「kdump 設定のテスト」を参照してください。
7.2. kdump のインストールと設定
7.2.1. kdump のインストール
多くの場合、Red Hat Enterprise Linux 7 の新規インストールで、kdump
サービスはデフォルトでインストールされ、アクティブにされます。グラフィカルインターフェースまたはテキストインターフェースを使って対話形式でインストールする場合には、Anaconda インストーラーに kdump の設定画面があります。インストーラー画面には、Kdump
というタイトルが付けられ、メイン画面の Installation Summary
からアクセスできます。kdump を有効にするかどうかとどの程度メモリーを予約するかについてのみ選択できます。kdump のメモリー要件の詳細は、「kdump メモリー要件」を参照してください。インストーラーの kdump 設定画面は 『Red Hat Enterprise Linux 7 インストールガイド』 で説明しています。
Red Hat Enterprise Linux の以前のリリースでは Firstboot ユーティリティーで kdump の設定ができました。このユーティリティーはインストールの終了後、システムをはじめて再起動すると自動的に実行されていました。Red Hat Enterprise Linux 7.1 からは kdump の設定がインストーラー内に移動しています。
カスタムのキックスタートを使ったインストールなど一部のインストール方法では、デフォルトで kdump をインストールしない場合または有効にしない場合があります。お使いのシステムでも同様で、kdump を追加でインストールする必要がある場合には、root
で以下のコマンドをシェルプロンプトから実行します。
#
yum install kexec-tools
お使いのシステムアーキテクチャー向けの kexec-tools パッケージが含まれるカスタムのリポジトリーか、アクティブなサブスクリプションがシステムにある場合に、上記のコマンドで kdump およびその他に必要なパッケージすべてが確実にインストールされます。
システムに kdump がインストールされているかわからない場合は、rpm
を使用して確認できます。
$
rpm -q kexec-tools
この他、グラフィカルな設定ツールもあります。ただし上記のコマンドを使った場合に、デフォルトではグラフィカルな設定ツールはインストールされません。「グラフィカルユーザーインターフェースでの kdump の設定」 で説明されているようにこのユーティリティーをインストールするには、 root
で以下のコマンドを使用します。
#
yum install system-config-kdump
Yum を使用した Red Hat Enterprise Linux 7 の新規パッケージのインストール方法は『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
Red Hat Enterprise Linux 7.4 以降では、Intel IOMMU
ドライバーが kdump
でサポートされます。7.3 以前のバージョンのカーネルを実行する場合は、 Intel IOMMU
サポートを有効にすることが推奨されます。
7.2.2. コマンドラインで kdump の設定
7.2.2.1. メモリー使用量の設定
kdump カーネル用に予約されるメモリーは必ずシステムの起動時にその予約が行われます。 つまり、メモリーのサイズはシステムのブートローダー設定で指定されています。
kdump カーネル用に予約するメモリーを指定するには、 crashkernel=
オプションを必要な値に設定します。たとえば、128 MB のメモリーを予約するには、以下を使用します。
crashkernel=128M
crashkernel=
オプションを GRUB2 ブートローダーを使用して AMD64 および Intel 64 システムおよび IBM Power Systems サーバーで変更したり、zipl を使用して IBM Z で変更する方法については、「「カーネルコマンドラインパラメーターの設定」」を参照してください。
crashkernel=
オプションは、複数の方法で定義できます。「kdump メモリー要件」 で説明されているガイドラインに従い、auto
値を指定すると、システムの合計メモリーに基づいた、予約されたメモリーの自動設定が可能になります。メモリーサイズが大きいシステムでは、オペレーティングシステムに設定された上限について、crashkernel=auto
オプションが指定されたアーキテクチャーに従って計算されます。
この動作を変更するには、auto
値を特定のメモリー量に置き換えます。
crashkernel=
オプションは、とくにメモリー量の少ないシステムの場合に役立ちます。たとえば、128 MB のメモリーを予約するには、以下を使用します。
crashkernel=128M
搭載しているメモリーの合計サイズに応じて予約メモリーサイズが可変するように設定することもできます。変数のメモリー予約の構文は crashkernel=<range1>:<size1>,<range2>:<size2>
です。以下に例を示します。
crashkernel=512M-2G:64M,2G-:128M
上記の例では、システムメモリーの合計が 512 MB 以上 2 GB 未満の場合、64 MB のメモリーを予約します。メモリー合計サイズが 2 GB を超える場合は、128 MB が kdump 用に予約されます。
システムによっては、特定の固定オフセットを指定して、メモリーの予約を行う必要があります。オフセットが設定されると、予約メモリーはそこから開始されます。予約メモリーをオフセットするには、以下の構文を使用します。
crashkernel=128M@16M
上記の例の場合、kdump は 128 MB のメモリー予約を 16 MB (物理アドレス 0x01000000) から開始することになります。オフセットパラメーターを 0 に設定する、または完全に省略すると kdump により自動的にオフセットが設定されます。上記のように、変数メモリー予約を設定する場合にもこの構文を使用します。この場合、オフセットは常に最後に指定されます (例: crashkernel=512M-2G:64M,2G-:128M@16M
)。
7.2.2.2. kdump タイプの設定
カーネルクラッシュがキャプチャーされると、コアダンプはローカルファイルシステムのファイルとして保存したり、デバイスに直接書き込みしたり、NFS
(Network File System) または SSH
(Secure Shell) プロトコルを使用してネットワーク上で送信したりすることができます。現時点で設定できるのは、これらのオプションの 1 つのみです。デフォルトのオプションでは、vmcore
ファイルをローカルファイルシステムの /var/crash
ディレクトリーに保存します。
vmcore
ファイルをローカルファイルシステムの /var/crash/
ディレクトリーに保存するには、以下を実行します。
/etc/kdump.conf
ファイルを編集し、パスを指定します。path /var/crash
オプション
path /var/crash
は、kdump
がvmcore
ファイルを保存するファイルシステムパスを表します。/etc/kdump.conf
ファイルでダンプターゲットを指定する場合、path
は指定されたダンプターゲットの相対パスになります。/etc/kdump.conf
ファイルでダンプターゲットを指定しない場合、path
はルートディレクトリーの絶対パスを表します。現在のシステムにマウントされている内容に応じて、ダンプターゲットと調整されるダンプパスが自動的に適用されます。
kdump
は、ダンプターゲットが /var/crash
にマウントされ、オプション path
も /etc/kdump.conf
ファイルの /var/crash
として設定される場合、/var/crash/var/crash
ディレクトリーに vmcore
ファイルを保存します。たとえば、以下の例では、ext4
ファイルシステムはすでに /var/crash
にマウントされ、path
も /var/crash
として設定されます。
grep -v ^# etc/kdump.conf | grep -v ^$ ext4 /dev/mapper/vg00-varcrashvol path /var/crash core_collector makedumpfile -c --message-level 1 -d 31
これにより、/var/crash/var/crash
パスが生成されます。この問題を解決するには、path /var/crash
ではなく、path /
オプションを使用します。
ダンプの場所を変更するには、root
としてテキストエディターで /etc/kdump.conf
設定ファイルを開き、以下のようにオプションを編集します。
コアダンプの保存先のローカルディレクトリーを変更する場合は、#path /var/crash
行の先頭にあるハッシュ記号 ("#") を取り除き、値を変更先のディレクトリーパスに置き換えます。
path /usr/local/cores
Red Hat Enterprise Linux 7 では、path
ディレクティブを使用して kdump のダンプ出力先として定義されているディレクトリーが kdump
systemd サービスの起動時に存在していなければなりません。存在しない場合、サービスは失敗します。この動作は、サービスの起動時にそのディレクトリーが存在しない場合に自動的に作成されていた Red hat Enterprise Linux の以前のリリースのものとは異なります。
オプションで、ファイルを別のパーティションに書き込む場合は、#ext4
で始まる行のいずれかで同じ手順を実行します。ここでは、デバイス名 (#ext4 /dev/vg/lv_kdump
行)、ファイルシステムのラベル (#ext4 LABEL=/boot
行)、または UUID ( #ext4 UUID=03138356-5e61-4ab3-b58e-27507ac41937
行) のいずれかを使用できます。ファイルシステムタイプと、デバイス名、ラベル、UUID を希望の値に変更します。以下に例を示します。
ext4 UUID=03138356-5e61-4ab3-b58e-27507ac41937
LABEL=
または UUID=
を使用してストレージデバイスを指定することが推奨されます。/dev/sda3
などのディスクデバイス名については、再起動後の一貫性は保証されません。永続的なディスクデバイスの命名については『Red Hat Enterprise Linux 7 ストレージ管理ガイド』を参照してください。
s390x ハードウェア上の DASD にダンプする場合には、続行する前に /etc/dasd.conf
でダンプデバイスが正しく指定されている必要があります。
ダンプをデバイスに直接書き込む場合は、#raw /dev/vg/lv_kdump
の行頭にあるハッシュ記号 (#) を取り除き、値をダンプ出力先のデバイス名に置き換えます。以下に例を示します。
raw /dev/sdb1
NFS
プロトコルを使用してリモートのマシンにダンプを保存するには、#nfs my.server.com:/export/tmp
の行頭にあるハッシュ記号 ("#") を取り除き、値を有効なホスト名およびディレクトリーパスに置き換えます。以下に例を示します。
nfs penguin.example.com:/export/cores
SSH
プロトコルを使用してダンプをリモートマシンに保存するには、#ssh user@my.server.com
の行頭にあるハッシュ記号 ("#") を取り除き、値を有効なユーザー名およびホスト名に置き換えます。設定に SSH キーも含める場合は、#sshkey /root/.ssh/kdump_id_rsa
の行頭にあるハッシュ記号 ("#") を取り除き、値をダンプの出力先となるサーバー上で有効なキーの場所に変更します。以下に例を示します。
ssh john@penguin.example.com sshkey /root/.ssh/mykey
SSH サーバーの設定方法およびキーベースの認証設定については『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
対応しているダンプ出力先と非対応のダンプ出力先のタイプ別一覧は表7.4「対応している kdump のダンプ出力先」を参照してください。
7.2.2.3. コアコレクターの設定
vmcore
ダンプファイルのサイズを小さくするために、kdump
では外部アプリケーション (コアコレクター) を指定して、データの圧縮や必要に応じた関連性のないすべての情報の除外を実行できます。現在、完全にサポートされている唯一のコアコレクターは makedumpfile
です。
コアコレクターを有効にするには root
としてテキストエディターで /etc/kdump.conf
設定ファイルを開き、#core_collector makedumpfile -l --message-level 1 -d 31
行の先頭にあるハッシュ記号 (#) を取り除き 、以下のようにコマンドラインオプションを編集します。
ダンプファイルの圧縮を有効にするには、-l
パラメーターを追加します。以下に例を示します。
core_collector makedumpfile -l
ダンプから特定のページを取り除くには、-d value
パラメーターを追加します。ここで、値 は、 表7.5「サポートしているフィルターレベル」で説明されているように、省略するページの値の合計になります。ゼロと未使用ページを除外する場合は次のようになります。
core_collector makedumpfile -d 17 -c
利用可能なオプションの詳細一覧は、 makedumpfile(8)
man ページを参照してください。
7.2.2.4. デフォルト動作の設定
デフォルトでは、kdump
が、「kdump タイプの設定」 で指定したダンプ出力先でコアダンプの作成に失敗すると、 kdump
は vmcore を保存せずにシステムを再起動します。この動作を変更するには、root
で /etc/kdump.conf
設定ファイルをテキストエディターで開き、#default shell
の行頭にあるハッシュ記号 ("#") を取り除き、表7.6「サポートしているデフォルトの動作」で説明されているように値を必要な動作に変更します。
以下に例を示します。
default reboot
7.2.2.5. サービスの有効化
起動時に kdump
デーモンを開始するには、シェルプロンプトで root
として以下を入力します。
systemctl
enable
kdump.service
これにより、multi-user.target
のサービスが有効になります。同様に、systemctl
disable
kdump
を入力すると、 kdump
が無効になります。現行セッションでサービスを開始するには、以下のコマンドを root
で使用します。
systemctl
start
kdump.service
Red Hat Enterprise Linux 7 では、kdump の出力先として定義さてるディレクトリーが、kdump
systemd サービスの起動時に存在していなければなりません。存在しない場合、サービスは失敗します。この動作は、サービスの起動時にそのディレクトリーが存在しない場合に自動的に作成されていた Red hat Enterprise Linux の以前のリリースのものとは異なります。
systemd およびサービスの設定全般については『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
7.2.3. グラフィカルユーザーインターフェースでの kdump の設定
Kernel Dump Configuration ユーティリティーを起動するには、パネルから → → を選択するか、またはシェルプロンプトで system-config-kdump
を入力します。図7.1「基本設定」に示すウィンドウが表示されます。
このユーティリティーを使用すると、kdump
の設定できるほか、起動時にサービスの開始を有効または無効にすることもできます。設定が完了したら をクリックして変更を保存します。認証が済んでいる場合を除きスーパーユーザーのパスワード入力が求められます。また、設定の変更を適用するにはシステムの再起動が必要な旨を示すメッセージが表示されます。
SELinux
が Enforcing モードで実行されている IBM Z または PowerPC システムでは、カーネルダンプ設定ユーティリティーを起動する前に kdumpgui_run_bootloader のブール値を有効にする必要があります。このブール値により、system-config-kdump が bootloader_t SELinux ドメインのブートローダーで実行できるようになります。このブール値を永続的に有効化するには、root として以下のコマンドを実行します。
# setsebool -P kdumpgui_run_bootloader 1
s390x ハードウェア上の DASD にダンプする場合には、続行する前に /etc/dasd.conf
でダンプデバイスが正しく指定されている必要があります。
7.2.3.1. メモリー使用量の設定
Basic Settings
タブを使用すると、kdump
カーネル用に予約されるメモリー量を設定できます。これを実行するには、Manual settings
ラジオボタンを選択し、New kdump Memory
フィールドの横にある上下矢印ボタンをクリックして予約するメモリーサイズを増減させます。Usable Memory
フィールドは随時変更され、システムで使用できるメモリーの残量が表示されることに留意してください。kdump のメモリー要件については 「メモリー要件」 を参照してください。
図7.1 基本設定

7.2.3.2. kdump タイプの設定
Target Settings
タブでは vmcore
ダンプのターゲットの場所を指定できます。ダンプはローカルのファイルシステムにファイルとして保存するか、デバイスに直接書き込むか、または NFS
(Network File System) や SSH
(Secure Shell) プロトコルを使用してネットワーク経由で送信することができます。
図7.2 出力先

ローカルファイルシステムにダンプを保存するには Local filesystem
ラジオボタンを選択します。オプションで、Partition
ドロップダウンリストから別のパーティションを選択し、Path
フィールドで出力先ディレクトリーを選択して設定をカスタマイズすることもできます。
Red Hat Enterprise Linux 7 では、kdump の出力先として定義さてるディレクトリーが、kdump
systemd サービスの起動時に存在していなければなりません。存在しない場合、サービスは失敗します。この動作は、サービスの起動時にそのディレクトリーが存在しない場合に自動的に作成されていた Red hat Enterprise Linux の以前のリリースのものとは異なります。
デバイスに直接ダンプを書き込む場合は、Raw device
ラジオボタンを選択し、必要な出力先デバイスをその横にあるドロップダウンリストから選択します。
ネットワーク接続経由でリモートマシンにダンプを送信するには、Network
ラジオボタンを選択します。NFS
プロトコルを使用するには、NFS
ラジオボタンを選択して Server name
および Path to directory
フィールドに入力します。SSH
プロトコルを使用するには、SSH
ラジオボタンを選択して Server name
、Path to directory
、および User name
フィールドにリモートサーバーアドレス、ターゲットディレクトリー、有効なユーザー名をそれぞれ入力します。
SSH サーバーの設定方法およびキーベースの認証設定については『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。現在サポートしている出力先の一覧については 表7.4「対応している kdump のダンプ出力先」 を参照してください。
7.2.3.3. コアコレクターの設定
Filtering Settings
タブを使用すると、vmcore
ダンプのフィルタリングレベルを選択できます。
図7.3 フィルタリング

ダンプから zero page
、 cache page
、cache private
、user data
、または free page
を実行するには、該当するラベルの横にあるチェックボックスを選択します。
7.2.3.4. デフォルト動作の設定
kdump
がコアダンプを作成できない場合に実行する動作を選択するには、Action if dumping fails
ドロップダウンリストから適切なオプションを選択します。利用可能なオプションは以下の通りです。
- rootfs および reboot へのダンプ を使用すると、コアをローカルに保存して、システムを再起動します。
- Reboot システムを再起動するデフォルトの動作
- シェルの開始 アクティブなシェルプロンプトでユーザーを表示します。
- halt システムを停止します。
- Poweroff システムの電源を切ります。
図7.4 フィルタリング

makedumpfile
コアコレクターに渡されるオプションをカスタマイズするには、 Core collector
テキストフィールドを編集します。詳細は、「コアコレクターの設定」 を参照してください。
7.2.3.5. サービスの有効化
起動時に kdump
サービスを開始するには、ツールバーで ボタンをクリックしてから ボタンをクリックします。これにより、サービスが有効にされ、multi-user.target
のサービスがアクティブになります。 ボタンをクリックして ボタンをクリックするとサービスが直ちに無効になります。
Red Hat Enterprise Linux 7 では、kdump の出力先として定義さてるディレクトリーが、kdump
systemd サービスの起動時に存在していなければなりません。存在しない場合、サービスは失敗します。この動作は、サービスの起動時にそのディレクトリーが存在しない場合に自動的に作成されていた Red hat Enterprise Linux の以前のリリースのものとは異なります。
systemd の出力先およびサービスの設定全般については『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
7.3. kdump のカーネルドライバーのブラックリスト化
カーネルドライバーのブラックリスト化により、それらの読み込みや使用が禁止されます。/etc/sysconfig/kdump
ファイルでドライバーを追加すると、kdump initramfs
がブラックリストに指定されたモジュールを読み込むことができなくなります。
カーネルドライバーをブラックリストに指定すると、 oom
Killer その他のカーネルのクラッシュに関する障害が発生しなくなります。カーネルドライバーをブラックリストに指定するには、/etc/sysconfig/kdump
ファイルで KDUMP_COMMANDLINE_APPEND=
変数を更新し、以下のブラックリストオプションのいずれかを指定できます。
-
rd.driver.blacklist=<modules>
-
modprobe.blacklist=<modules>
手順
ブラックリストに指定するカーネルモジュールを選択します。
$ lsmod Module Size Used by fuse 126976 3 xt_CHECKSUM 16384 1 ipt_MASQUERADE 16384 1 uinput 20480 1 xt_conntrack 16384 1
lsmod
コマンドは、現在実行中のカーネルに読み込まれるモジュールの一覧を表示します。/etc/sysconfig/kdump
ファイルのKDUMP_COMMANDLINE_APPEND=
行を以下のように更新します。KDUMP_COMMANDLINE_APPEND="rd.driver.blacklist=hv_vmbus,hv_storvsc,hv_utils,hv_netvsc,hid-hyperv"
/etc/sysconfig/kdump
ファイルのKDUMP_COMMANDLINE_APPEND=
行を以下のように更新することもできます。KDUMP_COMMANDLINE_APPEND="modprobe.blacklist=emcp modprobe.blacklist=bnx2fc modprobe.blacklist=libfcoe modprobe.blacklist=fcoe"
kdump サービスを再起動します。
$ systemctl restart kdump
7.4. kdump 設定のテスト
以下のコマンドでは、カーネルがクラッシュします。次の手順を行う場合は十分に注意してください。 実稼働のシステムでは絶対に実行しないでください。
設定をテストするには、kdump
を有効にしてシステムを再起動し、サービスが実行中であることを確認します。
~]# systemctl is-active kdump active
次に、シェルプロンプトで以下のコマンドを入力します。
echo 1 > /proc/sys/kernel/sysrq
echo c > /proc/sysrq-trigger
これにより、Linux カーネルが強制的にクラッシュし、address-YYYY-MM-DD-HH:MM:SS/vmcore
ファイルが設定で選択した場所にコピーされます (デフォルトは /var/crash/
)。
このアクションは、設定の妥当性を確認するのに加え、典型的なテストロードで実行された場合にクラッシュダンプが完了するまでの所要時間を記録するために使用できます。
7.4.1. 関連情報
7.4.1.1. インストールされているドキュメント
-
kdump.conf(5): 利用できるオプションの詳細なドキュメントを含む
/etc/kdump.conf
設定ファイルの man ページです。 -
zipl.conf(5):
/etc/zipl.conf
設定ファイルの man ページです。 -
zipl(8): IBM Z 用の
zipl
ブートローダーユーティリティーの man ページです。 -
makedumpfile(8):
makedumpfile
コアコレクターの man ページです。 - kexec(8) — kexec の man ページです。
- crash(8) — crash ユーティリティの man ページです。
-
/usr/share/doc/kexec-tools-version/kexec-kdump-howto.txt
-kdump
および kexec のインストールと使用についての概要
7.4.1.2. オンラインドキュメント
- https://access.redhat.com/site/solutions/6038
-
kexec
およびkdump
設定についての Red Hat ナレッジベースアーティクル - https://access.redhat.com/site/solutions/223773
-
サポートしている
kdump
ターゲットについての Red Hat ナレッジベースアーティクル。 - https://github.com/crash-utility/crash
- crash ユーティリティー Git リポジトリー。
- https://www.gnu.org/software/grub/
- GRUB2 ブートローダーのホームページとドキュメントです。
7.5. ファームウェア支援ダンプの仕組み
7.5.1. ファームウェア支援ダンプについて
kexec
および kdump
のメカニズムは、AMD64 および Intel 64 システムでコアダンプをキャプチャーする信頼できる証明済みの方法です。ただし、特に小規模システムおよびメインフレームシステムのような長い歴史を持つハードウェアでは、オンボードファームウェアを活用してメモリの領域を分離し、クラッシュ分析に重要なデータの偶発的な上書きを防ぐことができます。
本章では、利用可能なファームウェア支援ダンプの手法について紹介し、ファームウェア支援ダンプを Red Hat Enterprise Linux でどのように活用するかについて説明します。
7.5.2. IBM PowerPC ハードウェアにおける fadump の使用
ファームウェア支援ダンプ (fadump
) は、IBM PowerPC LPARS で利用可能な kexec-kdump
に代わる信頼性の高い仕組みです。ファームウェア支援ダンプでは、PCI および I/O デバイスが再初期化され、完全にリセットされたシステムから、vmcore がキャプチャーされます。この仕組みでは、クラッシュの発生時にファームウェアを使ってメモリーが保持されますが、kdump
ユーザー空間スクリプトが再利用して vmcore を保存します。
そのために、fadump
では、クラッシュ発生時にシステムファームウェアを使って保持する必要のあるメモリー領域を登録します。これらの領域には、ブートメモリー、システムレジスター、およびハードウェアのページテーブルエントリー (PTE) を除く、すべてのシステムメモリーコンテンツが含まれます。
fadump の仕組みについての詳細 (PowerPC 固有のハードウェアのリセット方法を含む)、/usr/share/doc/kexec-tools-X.y.z/fadump-howto.txt
を確認してください。ここで、「X.y.z」 は、お使いのシステムにインストールされている kexec-tools のバージョン番号に対応します。
boot memory
として知られる、保持されないメモリー領域は、クラッシュの発生後にカーネルを正常に起動するのに必要な RAM の容量になります。デフォルトのブートメモリーサイズは、256 MB または全システム RAM の 5% のいずれか大きい方です。
kexec
で開始されるイベントとは異なり、fadump
プロセスでは実稼働用のカーネルを使用してクラッシュダンプを復元します。クラッシュ後の起動時に、PowerPC ハードウェアはデバイスノード /proc/device-tree/rtas/ibm,kernel-dump
が procfs
で利用できるようにし、fadump 対応の kdump
スクリプトは vmcore を保存するためにこれをチェックします。この処理が完了すると、システムは正しく再起動されます。
fadump の有効化
-
「kdump のインストールと設定」 で説明されているように
kdump
をインストールし、設定します。 fadump=on
を/etc/default/grub
のGRUB_CMDLINE_LINUX
行に追加します。GRUB_CMDLINE_LINUX="rd.lvm.lv=rhel/swap crashkernel=auto rd.lvm.lv=rhel/root rhgb quiet
fadump=on
"(オプション)デフォルトを許可する代わりに予約されたブートメモリーを指定する場合、
/etc/default/grub
でcrashkernel=xxM
をGRUB_CMDLINE_LINUX
に設定します。ここで、xx は必要なメモリーサイズ (メガバイト単位) になります。GRUB_CMDLINE_LINUX="rd.lvm.lv=rhel/swap crashkernel=xxM rd.lvm.lv=rhel/root rhgb quiet fadump=on"
すべてのブート設定オプションと同様に、必要になる前に設定をテストすることを強く推奨します。クラッシュカーネルより、起動時に Out of Memory (OOM) エラーが発生する場合は、クラッシュカーネルが正常に起動できるまで crashkernel=
で指定する値を増やします。この場合は、トライアンドエラーが必要になることがあります。
7.5.3. IBM Z におけるファームウェア支援ダンプの手法
IBM Z には 2 つのファームウェア支援ダンプメカニズムがあります。それらは、Stand-alone Dump
および VMDUMP
です。
これらのシステムでは kdump インフラストラクチャーがサポートされ使用されています。Red Hat Enterprise Linux での設定は、「kdump のインストールと設定」に説明があります。ただし、IBM Z ハードウェアが提供するこれらのファームウェア支援の手法を使用すると、いくつかのメリットが得られます。
スタンドアロンダンプ (SADMP) メカニズムはシステムコンソールから開始および制御され、IPL 起動可能デバイス上に保管される必要があります。
VMDUMP は SADMP と類似しています。このツールもシステムコンソールから開始されますが、得られるダンプをハードウェアからコピーし、解析のためにそれをシステムに格納する仕組みがあります。
(他のハードウェアベースのダンプメカニズムと同様に) これらの手法のメリットの 1 つは、(kdump サービスが開始される前の) 起動初期段階におけるマシンの状態をキャプチャーできるという点です。
VMDUMP には、ハードウェアからコピーしたダンプファイルを Red Hat Enterprise Linux システムに格納する仕組みがありますが、IBM Z ハードウェアコンソールから、SADMP および VMDUMP の両方の設定および制御が管理されます。
IBM は、stand-alone dump programの記事で SADMP について、VMDUMP の記事で VMDUMP について詳細に説明しています。
また、IBM は、Using the Dump Tools on Red Hat Enterprise Linux 記事で Red Hat Linux Enterprise Linux 7 でダンプツールを使用するための一連のドキュメントを用意しています。
7.5.4. Fujitsu PRIMEQUEST システムにおける sadump の使用
Fujitsu の sadump
メカニズムは、kdump が正常に完了できない場合にフォールバックダンプキャプチャーが実行されるように設計されています。
sadump
プロセスは、システムの ManageMent Board (MMB) インターフェースから手動で呼び出します。
このシステムでは、通常通り kdump を X86_64 サーバーに対して設定し、さらに以下の追加ステップを実施して sadump
を有効にする必要があります。
/etc/sysctl.conf
で以下の行を追加または編集し、kdump が sadump
について予想通りに起動するようにします。
kernel.panic=0 kernel.unknown_nmi_panic=1
上記の手順に加えて、/etc/kdump.conf
にいくつかのオプションを追加して、sadump に対して kdump が正常に動作するようにする必要もあります。
特に、kdump の後にシステムが再起動しないようにする必要があります。kdump がコアの保存に失敗した後にシステムが再起動すると、sadump を呼び出す機会が失われます。
そのために、/etc/kdump.conf
の default
アクションを halt または shell のいずれかに設定します。
default shell
sadump 用にハードウェアを設定する方法は、『FUJITSU Server PRIMEQUEST 2000 Series Installation Manual』を参照してください。
7.6. コアダンプの分析
システムクラッシュの原因を確認するには、crash ユーティリティーを使用します。これにより、GDB (GNU Debugger) と非常によく似たインタラクティブなプロンプトを利用できます。このユーティリティーを使用すると、実行中の Linux システムおよび netdump
、 diskdump
、 xendump
、または kdump
によって作成されるコアダンプを対話形式で分析できます。
7.6.1. crash ユーティリティーのインストール
crash 分析ツールをインストールするには、 root
でシェルプロンプトから以下のコマンドを実行します。
yum install crash
crash に加え、実行中のカーネルに対応する kernel-debuginfo パッケージもインストールしておく必要があります。kernel-debuginfo をインストールするには、debuginfo-install
コマンドを root
で使用します。
debuginfo-install kernel
Yum を使用した Red Hat Enterprise Linux の新規パッケージのインストール方法については『Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』を参照してください。
7.6.2. crash ユーティリティーの実行
シェルプロンプトで次の形式のコマンドを入力してユーティリティーを起動します。
crash
/usr/lib/debug/lib/modules/<kernel>/vmlinux
\/var/crash/<timestamp>/vmcore
kdump
で取得したのと同じ <kernel> のバージョンを使用します。現在実行中のカーネルを判別するには、uname -r
コマンドを使用します。
例7.1 crash ユーティリティーの実行
~]# crash /usr/lib/debug/lib/modules/2.6.32-69.el6.i686/vmlinux \ /var/crash/127.0.0.1-2010-08-25-08:45:02/vmcore crash 5.0.0-23.el6 Copyright (C) 2002-2010 Red Hat, Inc. Copyright (C) 2004, 2005, 2006 IBM Corporation Copyright (C) 1999-2006 Hewlett-Packard Co Copyright (C) 2005, 2006 Fujitsu Limited Copyright (C) 2006, 2007 VA Linux Systems Japan K.K. Copyright (C) 2005 NEC Corporation Copyright (C) 1999, 2002, 2007 Silicon Graphics, Inc. Copyright (C) 1999, 2000, 2001, 2002 Mission Critical Linux, Inc. This program is free software, covered by the GNU General Public License, and you are welcome to change it and/or distribute copies of it under certain conditions. Enter "help copying" to see the conditions. This program has absolutely no warranty. Enter "help warranty" for details. GNU gdb (GDB) 7.0 Copyright (C) 2009 Free Software Foundation, Inc. License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <http://gnu.org/licenses/gpl.html> This is free software: you are free to change and redistribute it. There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law. Type "show copying" and "show warranty" for details. This GDB was configured as "i686-pc-linux-gnu"... KERNEL: /usr/lib/debug/lib/modules/2.6.32-69.el6.i686/vmlinux DUMPFILE: /var/crash/127.0.0.1-2010-08-25-08:45:02/vmcore [PARTIAL DUMP] CPUS: 4 DATE: Wed Aug 25 08:44:47 2010 UPTIME: 00:09:02 LOAD AVERAGE: 0.00, 0.01, 0.00 TASKS: 140 NODENAME: hp-dl320g5-02.lab.bos.redhat.com RELEASE: 2.6.32-69.el6.i686 VERSION: #1 SMP Tue Aug 24 10:31:45 EDT 2010 MACHINE: i686 (2394 Mhz) MEMORY: 8 GB PANIC: "Oops: 0002 [#1] SMP " (check log for details) PID: 5591 COMMAND: "bash" TASK: f196d560 [THREAD_INFO: ef4da000] CPU: 2 STATE: TASK_RUNNING (PANIC) crash>
7.6.3. メッセージバッファーの表示
カーネルメッセージバッファーを表示するには、対話式プロンプトで log
コマンドを入力します。
例7.2 カーネルメッセージバッファーの表示
crash> log
... several lines omitted ...
EIP: 0060:[<c068124f>] EFLAGS: 00010096 CPU: 2
EIP is at sysrq_handle_crash+0xf/0x20
EAX: 00000063 EBX: 00000063 ECX: c09e1c8c EDX: 00000000
ESI: c0a09ca0 EDI: 00000286 EBP: 00000000 ESP: ef4dbf24
DS: 007b ES: 007b FS: 00d8 GS: 00e0 SS: 0068
Process bash (pid: 5591, ti=ef4da000 task=f196d560 task.ti=ef4da000)
Stack:
c068146b c0960891 c0968653 00000003 00000000 00000002 efade5c0 c06814d0
<0> fffffffb c068150f b7776000 f2600c40 c0569ec4 ef4dbf9c 00000002 b7776000
<0> efade5c0 00000002 b7776000 c0569e60 c051de50 ef4dbf9c f196d560 ef4dbfb4
Call Trace:
[<c068146b>] ? __handle_sysrq+0xfb/0x160
[<c06814d0>] ? write_sysrq_trigger+0x0/0x50
[<c068150f>] ? write_sysrq_trigger+0x3f/0x50
[<c0569ec4>] ? proc_reg_write+0x64/0xa0
[<c0569e60>] ? proc_reg_write+0x0/0xa0
[<c051de50>] ? vfs_write+0xa0/0x190
[<c051e8d1>] ? sys_write+0x41/0x70
[<c0409adc>] ? syscall_call+0x7/0xb
Code: a0 c0 01 0f b6 41 03 19 d2 f7 d2 83 e2 03 83 e0 cf c1 e2 04 09 d0 88 41 03 f3 c3 90 c7 05 c8 1b 9e c0 01 00 00 00 0f ae f8 89 f6 <c6> 05 00 00 00 00 01 c3 89 f6 8d bc 27 00 00 00 00 8d 50 d0 83
EIP: [<c068124f>] sysrq_handle_crash+0xf/0x20 SS:ESP 0068:ef4dbf24
CR2: 0000000000000000
このコマンドの使用方法についての詳細を確認するには、 help log
を入力します。
カーネルメッセージバッファーには、システムクラッシュに関する最も重要な情報が含まれています。したがって、これは常に最初に vmcore-dmesg.txt
ファイルにダンプされます。これは、たとえば、ターゲットの場所にスペースがないために、vmcore
ファイル全体の取得の試行に失敗する場合に便利です。デフォルトで、vmcore-dmesg.txt
は /var/crash/
ディレクトリーにあります。
7.6.4. バックトレースの表示
カーネルスタックトレースを表示するには、対話式プロンプトで bt
コマンドを入力します。bt <pid>
を使用して、単一プロセスのバックトレースを表示できます。
例7.3 カーネルスタックトレースの表示
crash> bt PID: 5591 TASK: f196d560 CPU: 2 COMMAND: "bash" #0 [ef4dbdcc] crash_kexec at c0494922 #1 [ef4dbe20] oops_end at c080e402 #2 [ef4dbe34] no_context at c043089d #3 [ef4dbe58] bad_area at c0430b26 #4 [ef4dbe6c] do_page_fault at c080fb9b #5 [ef4dbee4] error_code (via page_fault) at c080d809 EAX: 00000063 EBX: 00000063 ECX: c09e1c8c EDX: 00000000 EBP: 00000000 DS: 007b ESI: c0a09ca0 ES: 007b EDI: 00000286 GS: 00e0 CS: 0060 EIP: c068124f ERR: ffffffff EFLAGS: 00010096 #6 [ef4dbf18] sysrq_handle_crash at c068124f #7 [ef4dbf24] __handle_sysrq at c0681469 #8 [ef4dbf48] write_sysrq_trigger at c068150a #9 [ef4dbf54] proc_reg_write at c0569ec2 #10 [ef4dbf74] vfs_write at c051de4e #11 [ef4dbf94] sys_write at c051e8cc #12 [ef4dbfb0] system_call at c0409ad5 EAX: ffffffda EBX: 00000001 ECX: b7776000 EDX: 00000002 DS: 007b ESI: 00000002 ES: 007b EDI: b7776000 SS: 007b ESP: bfcb2088 EBP: bfcb20b4 GS: 0033 CS: 0073 EIP: 00edc416 ERR: 00000004 EFLAGS: 00000246
このコマンドの使用方法についての詳細を確認するには、 help bt
を入力します。
7.6.5. プロセスの状態表示
システム内のプロセスのステータスを表示するには、対話式プロンプトで ps
コマンドを入力します。単一プロセスのステータスを表示するには、ps <pid>
を使用できます。
例7.4 システム内のプロセスの状態表示
crash> ps
PID PPID CPU TASK ST %MEM VSZ RSS COMM
> 0 0 0 c09dc560 RU 0.0 0 0 [swapper]
> 0 0 1 f7072030 RU 0.0 0 0 [swapper]
0 0 2 f70a3a90 RU 0.0 0 0 [swapper]
> 0 0 3 f70ac560 RU 0.0 0 0 [swapper]
1 0 1 f705ba90 IN 0.0 2828 1424 init
... several lines omitted ...
5566 1 1 f2592560 IN 0.0 12876 784 auditd
5567 1 2 ef427560 IN 0.0 12876 784 auditd
5587 5132 0 f196d030 IN 0.0 11064 3184 sshd
> 5591 5587 2 f196d560 RU 0.0 5084 1648 bash
このコマンドの使用方法についての詳細を確認するには、 help ps
を入力します。
7.6.6. 仮想メモリー情報の表示
基本的な仮想メモリーの情報を表示するには、対話式プロンプトで vm
コマンドを入力します。vm <pid>
を使用して、単一プロセスの情報を表示できます。
例7.5 現在のコンテキストの仮想メモリー情報の表示
crash> vm
PID: 5591 TASK: f196d560 CPU: 2 COMMAND: "bash"
MM PGD RSS TOTAL_VM
f19b5900 ef9c6000 1648k 5084k
VMA START END FLAGS FILE
f1bb0310 242000 260000 8000875 /lib/ld-2.12.so
f26af0b8 260000 261000 8100871 /lib/ld-2.12.so
efbc275c 261000 262000 8100873 /lib/ld-2.12.so
efbc2a18 268000 3ed000 8000075 /lib/libc-2.12.so
efbc23d8 3ed000 3ee000 8000070 /lib/libc-2.12.so
efbc2888 3ee000 3f0000 8100071 /lib/libc-2.12.so
efbc2cd4 3f0000 3f1000 8100073 /lib/libc-2.12.so
efbc243c 3f1000 3f4000 100073
efbc28ec 3f6000 3f9000 8000075 /lib/libdl-2.12.so
efbc2568 3f9000 3fa000 8100071 /lib/libdl-2.12.so
efbc2f2c 3fa000 3fb000 8100073 /lib/libdl-2.12.so
f26af888 7e6000 7fc000 8000075 /lib/libtinfo.so.5.7
f26aff2c 7fc000 7ff000 8100073 /lib/libtinfo.so.5.7
efbc211c d83000 d8f000 8000075 /lib/libnss_files-2.12.so
efbc2504 d8f000 d90000 8100071 /lib/libnss_files-2.12.so
efbc2950 d90000 d91000 8100073 /lib/libnss_files-2.12.so
f26afe00 edc000 edd000 4040075
f1bb0a18 8047000 8118000 8001875 /bin/bash
f1bb01e4 8118000 811d000 8101873 /bin/bash
f1bb0c70 811d000 8122000 100073
f26afae0 9fd9000 9ffa000 100073
... several lines omitted ...
このコマンドの使用方法についての詳細を確認するには、 help vm
を入力します。
7.6.7. オープンファイルの表示
開かれたファイルについての情報を表示するには、対話式プロンプトで files
コマンドを入力します。files <pid>
を使用して、選択された 1 つのプロセスによってのみ開かれているファイルを表示できます。
例7.6 現在のコンテキストのオープンファイルについての情報の表示
crash> files
PID: 5591 TASK: f196d560 CPU: 2 COMMAND: "bash"
ROOT: / CWD: /root
FD FILE DENTRY INODE TYPE PATH
0 f734f640 eedc2c6c eecd6048 CHR /pts/0
1 efade5c0 eee14090 f00431d4 REG /proc/sysrq-trigger
2 f734f640 eedc2c6c eecd6048 CHR /pts/0
10 f734f640 eedc2c6c eecd6048 CHR /pts/0
255 f734f640 eedc2c6c eecd6048 CHR /pts/0
このコマンドの使用方法についての詳細を確認するには、 help files
を入力します。
7.6.8. ユーティリティーの終了
対話式プロンプトを終了し、crash を終了するには、exit
または q
を入力します。
例7.7 crash ユーティリティーの終了
crash> exit ~]#
7.7. よくある質問
クラスター化された環境で kdump を使用する場合には、何に注意したら良いですか?
「RHEL 6 および 7 の High Availability アドオンで使用できるように kdump を設定する」の記事で、High Availability アドオンを使用しているシステム管理者が利用可能なオプションを説明しています。
起動初期に kdump が失敗します。 どのようにしてブートログをキャプチャーするのですか?
2 番目のカーネルの起動に問題がある場合は、起動初期のブートログを確認する必要があります。 問題のあるマシンに対するシリアルコンソールを有効にすることで、このログを取得することができます。
「RHEL7 でシリアルターミナルを設定する」の記事で、起動初期のブートメッセージへアクセスするために必要な設定が説明されています。
デバッグ用に、どのようにして makedumpfile からのメッセージを増やすのですか?
makedumpfile
が失敗する場合は、問題点を把握するためにログのレベルを引き上げる必要があります。これはダンプレベルの設定とは異なり、core_collector
行エントリーで /etc/kdump.conf
を編集し、message_level
オプション makedumpfile
に対して引き上げて実行します。
デフォルトで makedumpfile
はレベル 1 に設定されており、これは、出力を進捗インジケーターに制限します。このメッセージレベルを 31 に設定すると、すべてのデバッグ情報を有効にできます。メッセージレベル 31 では、進捗インジケーター、共通メッセージ、エラーメッセージ、デバッグメッセージ、およびレポートメッセージの詳細を出力します。
メッセージレベルのオプションの詳細は、makedumpfile (8)
man ページを参照してください。
core_collector 設定の行は、設定時には以下のようになっているはずです。
core_collector makedumpfile -l --message-level 1 -d 31
どのようにして Dracut をデバッグするのですか?
dracut
は initramfs のビルドに失敗する場合があります。失敗する場合は、問題を切り分けるために dracut
のログレベルを引き上げます。
/etc/kdump.conf
を編集し、 dracut_args
行を、必要なすべての dracut 引数と共にオプションの -L 5
を含めるように変更します。
dracut_args
に他のオプションが設定されていない場合、結果は以下のようになります。
dracut_args -L 5
仮想マシンで利用可能なダンプの手法は何ですか?
多くの場合、クラッシュやパニックの後にマシンからメモリーダンプを取得するには、kdump
の仕組みがあれば十分です。これは、ベアメタルのインストールと同じように設定することができます。
ただし、場合によっては、ハイパーバイザーと直接連携してクラッシュダンプを取得する必要がある場合があります。これを実行するために、libvirt
で 2 つの仕組みを使用できます。それらは pvpanic
および virsh dump
です。これらの手法は 『仮想化の導入および管理ガイド』 に記載されています。
pvpanic
の仕組みについては、『仮想化の導入および管理ガイド』の「パニックデバイスの設定」に記載されています。
virsh dump
コマンドについては、『仮想化の導入および管理ガイド』の「ドメインのコアのダンプファイルの作成」で説明されています。
Red Hat サポートサービスに大きなサイズのダンプをアップロードする場合はどうしたらいいですか ?
分析のため、Red Hat グローバルサポートサービスにカーネルクラッシュのダンプファイルを送信していただく必要がある場合があります。ただし、ダンプファイルのサイズはフィルターで特定の情報に絞り込んだ場合でも非常に大きくなる可能性があります。新しいサポートケースの起票時に、250 MB を超えるファイルは Red Hat カスタマーポータルからは直接アップロードできないため、Red Hat では大きなサイズのファイルのアップロード用に FTP サーバーを用意しています。
FTP サーバーのアドレスは dropbox.redhat.com
で、ファイルは /incoming/
ディレクトリーにアップロードされます。ご使用の FTP クライアントを passive モードに設定しておく必要があります。 ご使用のファイアウォールでこのモードを使用できない場合は、origin-dropbox.redhat.com
サーバーを active モードで使用してください。
アップロードするファイルは必ず gzip などで圧縮し、ファイル名にはわかりやすい名前を付けてください。ファイル名にサポートケース番号を使用されることをお薦めします。必要なファイルをすべてアップロードしたらサポートケース担当のエンジニアへ正確なファイル名とその SHA1 または MD5 チェックサムをお知らせください。
詳細な説明については「Ret Hat サポートチームにファイル (vmcore、rhev logcollector、sosreport、ヒープダンプ、ログファイルなど) を送付する」を参照ください。
クラッシュダンプが完了するまでに、どれくらい時間がかかりますか?
この情報は、障害復旧計画の目的で、ダンプ完了の所要時間を把握するために、多くの場合に必要となります。ただし、この時間の長さは、ディスクにコピーされるメモリー量と、RAM とストレージ間のインターフェースの速度に大きく左右されます。
テストがどのようなタイミングで行われても、システムは典型的な負荷をかけた状態で稼働させておく必要があります。そうでないと、除外されるページによって、完全に負荷がかかった実稼働システムにおける kdump の動作で誤った見解が提示される可能性があります。特にこの違いは、大量のメモリーが使用されている状況でより顕著に見られます。
ダンプの所要時間を評価する場合に、ストレージインターフェースもプランニング時に考慮する必要があります。ネットワーク制約事項が原因で、ローカルに接続された SATA ディスクと比べると、ssh
などを使用した接続ダンプは完了までに長く時間がかかる可能性があります。
インストール時に Kdump をどのように設定するのですか?
キックスタートまたは対話型の GUI を使用すれば、わずかなオプションを指定するだけでインストール時に kdump を設定することができます。
anaconda インストール GUI を使用した kdump の設定については、『インストールガイド』の「Kdump」セクションに詳しい説明が記載されています。
kickstart 構文は以下の通りです。
%addon com_redhat_kdump [--disable,enable] [--reserve-mb=[auto,value]] %end
キックスタートに対するこのアドオンにより、kdump 機能の無効化/有効化や、オプションとして予約メモリーサイズの定義 (自動のデフォルトオプションを明示的に呼び出す、またはメガバイト単位で数値を指定する) が可能になります。 なお、スイッチ全体が省略された場合も、デフォルトオプションが呼び出されます。
キックスタートを使用してシステムのデプロイメントを自動化する方法の詳細は、『インストールガイド』の「キックスタートを使ったインストール」を参照してください。
キックスタートアドオン構文の詳細については、『インストールガイド』の「キックスタート構文の参考資料」を参照してください。
7.8. サポートしている kdump の設定とダンプ出力先
7.8.1. kdump メモリー要件
kdump でカーネルクラッシュダンプをキャプチャーしてさらに分析ができるように保存するにはシステムメモリーの一部をキャプチャーカーネル用に永続的に予約する必要があります。
コマンドラインでメモリー設定を変更する方法は、「メモリー使用量の設定」を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースで予約メモリーの設定を変更する方法については 「メモリー使用量の設定」 を参照してください。
表 7.1 では、CPU アーキテクチャーに基づく kdump
の最小メモリー要件と、RHEL 7 バージョンを含む kernel
パッケージで利用可能な物理メモリーの合計を一覧表示しています。
表7.1 kernel
パッケージで kdump
用に必要な最小メモリー
アーキテクチャー | 使用可能なメモリー | 最小予約メモリー |
---|---|---|
AMD64 および Intel 64 ( | 2 GB より小さい | 0 MB の RAM |
2 GB 以上 | 161 MB + 64 MB (1 TB の RAM あたり) | |
RHEL 7.4 における 64 ビット ARM アーキテクチャー ( | 該当なし | 512 MB の RAM |
RHEL 7.5 における 64 ビット ARM アーキテクチャー ( | 2GB 未満 | 0 MB の RAM |
2 GB 以上 | 512 MB の RAM | |
IBM POWER ( | 2 GB より小さい | 0 MB の RAM |
2 GB から 4 GB | 384 MB のメモリー | |
4 GB から 16 GB | 512 GB の RAM | |
16 GB から 64 GB | 1 GB のメモリー | |
64 GB から 128 GB | 2 GB のメモリー | |
128 GB 以上 | 4 GB の RAM | |
IBM Z ( | 4 GB より小さい | 0 MB の RAM |
4 GB 以上 | 161 MB + 64 MB (1 TB の RAM あたり) |
表 7.2 では、CPU アーキテクチャーに基づく kdump
の最小メモリー要件と、RHEL 7.4 および 7.5 バージョンを含む kernel-alt
パッケージで利用可能な物理メモリーの合計を一覧表示しています。
表7.2 kernel-alt
パッケージで kdump
用に必要な最小メモリー
アーキテクチャー | 使用可能なメモリー | 最小予約メモリー |
---|---|---|
64 ビット ARM アーキテクチャー ( | 2 GB より小さい | 0 MB の RAM |
2 GB 以上 | 512 MB の RAM | |
IBM POWER ( | 2 GB より小さい | 0 MB の RAM |
2 GB から 4 GB | 384 MB のメモリー | |
4 GB から 16 GB | 512 GB の RAM | |
16 GB から 64 GB | 1 GB のメモリー | |
64 GB から 128 GB | 2 GB のメモリー | |
128 GB 以上 | 4 GB の RAM |
さまざまな Red Hat Enterprise Linux テクノロジーの機能や制限に関する詳しい情報は、https://access.redhat.com/articles/rhel-limits を参照してください。
7.8.2. メモリー自動予約の最小しきい値
一部のシステムでは、ブートローダーの設定ファイルで crashkernel=auto
パラメーターを使用するか、またはグラフィカル設定ユーティリティーで自動割り当ての設定を有効にすると、kdump 用のメモリーを自動的に割り当てることができます。ただし、この自動予約が機能するには、合計メモリーの特定量のメモリーを利用できる必要があります。この容量はシステムのアーキテクチャーによって異なります。
次の表は、自動メモリー割り当てのしきい値の一覧です。システムのメモリーが以下に示すしきい値を下回る場合は手動でメモリー予約を行う必要があります。
コマンドラインで設定を変更する方法については 「メモリー使用量の設定」 を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースで予約メモリーのサイズを変更する方法については 「メモリー使用量の設定」 を参照してください。
表7.3 自動メモリー予約に必要な最小メモリーサイズ
アーキテクチャー | 必要なメモリー |
---|---|
AMD64 および Intel 64 ( | 2 GB |
IBM POWER ( | 2 GB |
IBM Z ( | 4 GB |
7.8.3. サポートしている kdump のダンプ出力先
カーネルクラッシュをキャプチャーする際、コアダンプを直接デバイスに書き込んでローカルファイルシステムにファイルとして保存するか、またはネットワーク経由で送信することができます。現在サポートしているダンプ出力先および kdump による非サポートが明確なダンプ出力先の全一覧を以下に示します。
コマンドラインでターゲットタイプを設定する方法は、「kdump タイプの設定」を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースでデフォルト動作を設定する方法については 「kdump タイプの設定」 を参照してください。
表7.4 対応している kdump のダンプ出力先
Type | 対応しているダンプ出力先 | 対応していないダンプ出力先 |
---|---|---|
Raw デバイス | ローカルで添付されたすべての raw ディスクとパーティション | |
ローカルファイルシステム |
直接接続されているディスクドライブ、ハードウェア RAID 論理ドライブ、LVM デバイス、 |
|
リモートディレクトリー |
|
|
|
| |
ハードウェアおよびソフトウェアイニシエーター上で |
| マルチパスベースのストレージ |
| ||
| ||
ワイヤレスネットワークインターフェースを使ってアクセスするリモートディレクトリー |
ソフトウェア FCoE
のダンプ出力先へダンプすると、OOM (Out of Memory) エラーが発生します。この場合は、デフォルトの crashkernel=auto
パラメーターの値を大きくします。このカーネルブートパラメーターを設定する方法は 「メモリー使用量の設定」 を参照してください。
7.8.4. 対応している kdump のフィルターレベル
ダンプファイルのサイズを縮小するには、kdump は makedumpfile
コアコレクターを使用してデータを圧縮し、オプションで関連性のない情報を除外します。以下の表には、makedumpfile
ユーティリティーで現在対応しているフィルターレベルの詳細な一覧を示します。
コマンドラインでコアコレクターを設定する方法は、「コアコレクターの設定」を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースでデフォルト動作を設定する方法については 「コアコレクターの設定」 を参照してください。
表7.5 サポートしているフィルターレベル
オプション | 詳細 |
---|---|
| ゼロページ |
| キャッシュページ |
| キャッシュプライベート |
| ユーザーページ |
| フリーページ |
makedumpfile
コマンドは、Red Hat Enterprise Linux 7.3 以降の透過的な Huge Page および hugetlbfs ページの削除をサポートします。これらのどうちらのタイプの hugepages User Page も考慮し、これらを -8
レベルを使用して削除します。
7.8.5. サポートしているデフォルトの動作
kdump がコアダンプの作成に失敗すると、デフォルトでは、オペレーティングシステムが再起動します。第 1 ダンプ出力先へのコアダンプの保存に失敗した場合、kdump に別の動作を行うよう設定することができます。kdump で現在サポートしているデフォルト動作を以下に示します。
コマンドラインでデフォルト動作を設定する方法については 「デフォルト動作の設定」 を参照してください。グラフィカルユーザーインターフェースでデフォルト動作を設定する方法については 「デフォルト動作の設定」 を参照してください。
表7.6 サポートしているデフォルトの動作
オプション | 詳細 |
---|---|
| root ファイルシステムにコアダンプの保存を試行します。ネットワーク上のダンプ出力先と併用する場合に特に便利なオプションです。ネットワーク上のダンプ出力先にアクセスできない場合、ローカルにコアダンプを保存するよう kdump の設定を行います。システムは、後で再起動します。 |
| システムを再起動します。コアダンプは失われます。 |
| システムを停止します。コアダンプは失われます。 |
| システムの電源を切ります。コアダンプは失われます。 |
| initramfs 内から shell セッションを実行して、ユーザーが手動でコアダンプを記録できるようにします。 |
7.8.6. kdumpサイズの見積もり
kdump
環境のプランニングや構築の際に、ダンプファイルに必要な容量がどれくらいか把握してからこれを作成する必要があります。makedumpfile
コマンドは、これを実行する際に役立ちます。
以下のように、--mem-usage
機能を使用して、ダンプファイルに必要な領域を見積もります。
# makedumpfile -f --mem-usage /proc/kcore
-f
オプションを使用した --mem-usage
機能は、カーネルバージョン v4.11 以降で動作します。
v4.11 よりも前のバージョンのカーネルでは、--mem-usage
をオプション -f
を指定して使用する前に、カーネルにアップストリームのコミット 464920104bf7 でパッチが適用されていることを確認します。
--mem-usage
オプションでは、除外可能なページに関する有用なレポートが提供され、これを使用して、割り当てるダンプレベルを判断することができます。このコマンドは、システムに通常の負荷をかけた状態で実行する必要があります。そうでない場合に、makedumpfile
は実稼働環境で必要とされる値よりも小さい値を返します。
[root@hostname ~]# makedumpfile -f --mem-usage /proc/kcore TYPE PAGES EXCLUDABLE DESCRIPTION ---------------------------------------------------------------------- ZERO 501635 yes Pages filled with zero CACHE 51657 yes Cache pages CACHE_PRIVATE 5442 yes Cache pages + private USER 16301 yes User process pages FREE 77738211 yes Free pages KERN_DATA 1333192 no Dumpable kernel data
makedumpfile
コマンドは pages にレポートを出します。つまり、カーネルページサイズ (Red Hat Enterprise Linux カーネルの場合、AMD64 および Intel 64 のアーキテクチャーでは 4 キロバイト、IBM POWER アーキテクチャーの場合は 64 キロバイト) に対して使用中のメモリーのサイズを計算する必要があります。
7.9. kexec を使用したカーネルの再起動
7.9.1. kexec によるカーネルの再起動
kexec
システムコールを使用すると現在実行中のカーネルから別のカーネルを読み込んだり、起動したりすることが可能で、カーネル内のブートローダーとして機能します。
kexec
ユーティリティーは、kexec
システムコールのカーネルおよび initramfs
イメージを読み込み、別のカーネルで起動します。
以下のセクションでは、`kexec` ユーティリティーを使用して別のカーネルで再起動する際に kexec
システムコールを手動で呼び出す方法を説明します。
kexec
ユーティリティーを実行します。# kexec -l /boot/vmlinuz-3.10.0-1040.el7.x86_64 --initrd=/boot/initramfs-3.10.0-1040.el7.x86_64.img --reuse-cmdline
このコマンドは、
kexec
システムコールのカーネルおよび initramfs イメージを手動で読み込みます。システムを再起動します。
# reboot
このコマンドはカーネルを検出し、すべてのサービスをシャットダウンしてから、
kexec
システムコールを呼び出して直前の手順で指定したカーネルに再起動します。
kexec -e
コマンドを使用してカーネルを再起動すると、システムは、次のカーネルを起動する前に標準のシャットダウンシーケンスを通過しません。そのため、データ損失や応答しないシステムが発生する可能性があります。
7.10. kdump に関連する Portal Labs
Portal Labs は簡単な Web アプリケーションで、システム管理者がさまざまなシステムタスクを実施するのに役立ちます。現在、Kdump に焦点を当てているラボが 2 つあります。Kdump Helper および Kernel Oops Analyzer
7.10.1. Kdump ヘルパー
Kdump Helper は、一連の質問および操作で構成され、kdump
の設定ファイルの準備を支援します。
Lab のワークフローには、クラスター化された環境およびスタンドアロン環境の両方に関する手順が含まれています。
7.10.2. Kernel Oops Analyzer
Kernel Oops Analyzer ツールを使うと、Oops メッセージを処理して、クラッシュダンプスタックを解析することなく既知のソリューションがあるかどうかを確認することができます。
Kernel Oops Analyzer では、makedumpfile
からの情報を使用し、クラッシュしたマシンの Oops メッセージとナレッジベースの既知の問題を比較します。これにより、予期せぬ障害が発生しても、システム管理者はすばやく既知の問題の可能性を除外して、詳細な解析を依頼するためにサポートチケットを発行することができます。
第8章 カーネル整合性サブシステムによるセキュリティーの強化
8.1. カーネル整合性サブシステム
整合性サブシステムは、システムのデータの整合性を維持するカーネルの一部を構成します。このサブシステムは、ユーザーが特定のシステムファイルに望ましくない変更を行うことを防ぎ、システムを初期状態に維持するのに役立ちます。
カーネル整合性サブシステムは、2 つの主要なコンポーネントで構成されています。
- Integrity Measurement Architecture (IMA)
- ファイルのコンテンツの測定を、それが実行され、開かれるたびに実行します。ユーザーは、カスタムポリシーを適用してこの動作を変更できます。
- カーネルのメモリー領域内に測定値を配置すると、システムのユーザーが変更できなくなります。
- ローカルおよびリモートのユーザーが測定値を検証できるようにします。
- Extended Verification Module (EVM)
- IMA 測定や SELinux 属性など、システムのセキュリティーに関連するファイルの拡張属性 (xattr としても知られている) を保護するには、対応する値を暗号でハッシュ化します。
IMA と EVM のどちらにも、追加機能を備えた多くの機能拡張が含まれます。以下に例を示します。
- IMA-Appraisal
- 現在のファイルの内容を、カーネルメモリー内の測定ファイルに先に保存した値に対してローカルで検証します。現在の測定が以前の測定に一致しない場合、この拡張機能は特定のファイルで操作が実行されることを禁止します。
- EVM デジタル署名
-
カーネルのキーリングに保存されている暗号鍵を使用して、デジタル署名を使用できるようにします。EVM デジタル署名は、コンテンツハッシュ (
security.ima
) が含まれるファイルの xattr 値の送信元および整合性を確認します。
-
カーネルのキーリングに保存されている暗号鍵を使用して、デジタル署名を使用できるようにします。EVM デジタル署名は、コンテンツハッシュ (
機能拡張は相互に補完しますが、それぞれを独立して設定し、使用することができます。
カーネル整合性サブシステムは、TPM (Trusted Platform Module)を使用して、システムセキュリティーをさらに強化できます。TPM は、重要な暗号化機能についての TNC (Trusted Computing Group) による仕様です。TPM は通常、プラットフォームのマザーボードに接続される専用ハードウェアとして実装され、ハードウェアチップの保護された改ざん防止領域から暗号化機能を提供することで、ソフトウェアベースの攻撃を防ぎます。TPM 機能の一部は次のとおりです。
- 乱数ジェネレーター
- 暗号化キーのジェネレーターと安全なストレージ
- ハッシュジェネレーター
- リモート認証
8.2. Integrity Measurement Architecture
Integrity Measurement Architecture (IMA) は、カーネル整合性サブシステムに属するコンポーネントです。IMA は、アクセス前にファイルのハッシュを測定し、保存し、評価することにより、ローカルファイルのコンテンツを維持することを目的としています。これにより、信頼性のないデータの読み取りおよび実行を防ぐことができ、システムのセキュリティーが強化されます。
8.3. Extended Verification Module
Extended Verification Module (EVM) は、ファイルの拡張属性 (xattr) の変更を監視するカーネル整合性サブシステムに属するコンポーネントです。Integrity Measurement Architecture (IMA) を含む多くのセキュリティー指向のテクノロジーは、コンテンツハッシュなどの機密ファイル情報を拡張属性に保存します。EVM は、この拡張属性と特別な鍵から別のハッシュを作成します。これはシステムの起動時に読み込まれます。結果のハッシュは、拡張属性が使用されるたびに検証されます。たとえば、IMA がファイルを評価する場合です。
8.4. 信頼できる鍵および暗号化された鍵
信頼できる 鍵および 暗号化された鍵 は、カーネルキーリングサービスによって使用されるカーネルが生成する可変長の対称鍵です。このタイプのキーは、暗号化されていない形式でユーザー空間に表示されないため、整合性を検証できます。したがって、それらは Extended Verification Module (EVM) により、実行中のシステムの整合性を検証し、確認するために使用できます。ユーザーレベルのプログラムがアクセス可能なのは、暗号化された ブロブ の形式での鍵のみです。
信頼できる鍵は、Trusted Platform Module (TPM) チップというハードウェアが必要になります。これは、鍵を作成し、暗号化 (保護) するために使用されます。TPM は storage root key (SRK) という 2048 ビットの RSA 鍵を使用して鍵を保護します。
信頼でき、暗号化された鍵についての詳細は、『RHEL 7 セキュリティーガイド』の「Trusted and Encrypted Keys」セクションを参照してください。
8.5. Integrity Measurement Architecture および Extended Verification Module の有効化
Integrity Measurement Architecture (IMA) および Extended Verification Module (EVM) は、さまざまな方法でシステムセキュリティーを強化するカーネル整合性サブシステムのコンポーネントです。IMA および EVM を設定すると、ファイルに署名できるため、システムのセキュリティーを強化できます。
前提条件
-
ima-evm-utils
およびkeyutils
パッケージがシステムにインストールされている。 -
securityfs
ファイルシステムが/sys/kernel/security/
ディレクトリーにマウントされている。 /sys/kernel/security/ima/
ディレクトリーが存在する。# mount … securityfs on /sys/kernel/security type securityfs (rw,nosuid,nodev,noexec,relatime) …
手順
IMA および EVM を有効にするためにシステムを準備します。
以下のカーネルコマンドラインパラメーターを追加します。
# grubby --update-kernel=/boot/vmlinuz-$(uname -r) --args="ima_appraise=fix ima_appraise_tcb evm=fix"
このコマンドは、現在のブートエントリーの fix モードで IMA および EVM を有効にし、ユーザーが IMA 測定を収集し、更新できるようにします。
ima_appraise_tcb
カーネルコマンドラインパラメーターにより、カーネルがデフォルトの Trusted Computing Base (TCB) 測定ポリシーと評価手順を使用することを確認できます。評価手順では、以前および現在の測定が一致しないファイルへのアクセスを禁止します。- 変更を有効にするために再起動します。
オプションで、カーネルコマンドラインに新しいパラメーターが含まれることを確認します。
# cat /proc/cmdline BOOT_IMAGE=/vmlinuz-3.10.0-1136.el7.x86_64 root=/dev/mapper/rhel-root ro crashkernel=auto spectre_v2=retpoline rd.lvm.lv=rhel/root rd.lvm.lv=rhel/swap rhgb quiet LANG=en_US.UTF-8 ima_appraise=fix ima_appraise_tcb evm=fix
EVM の公開鍵および非公開鍵のペアを作成し、設定します。
EVM の新規のキーリングを作成します。
# evm_kr_id=$(keyctl newring _evm @u)
このコマンドは
_evm
キーリングを作成し、これを@u
システムユーザーキーリングに割り当てます。次に、_evm
のキーリング ID がevm_kr_id
変数に割り当てられ、これにより次回の処理がより容易になります。オプションで、新たに作成されたキーリングを表示します。
# keyctl show Session Keyring 1025767139 --alswrv 0 0 keyring: _ses 548660789 --alswrv 0 65534 \_ keyring: _uid.0 456142548 --alswrv 0 0 \_ keyring: _evm
キーのディレクトリーを作成します。
# mkdir -p /etc/keys/
1024 ビットの RSA 秘密鍵を
/etc/keys/privkey.pem
ファイルに生成します。# openssl genrsa -out /etc/keys/privkey.pem 1024 Generating RSA private key, 1024 bit long modulus .......++++++ ...++++++ e is 65537 (0x10001)
以前に作成した
/etc/keys/privkey.pem
秘密鍵を使用して、対応する RSA 公開鍵を/etc/keys/pubkey.pem
ファイルに派生させます。# openssl rsa -pubout -in /etc/keys/privkey.pem -out /etc/keys/pubkey.pem writing RSA key
公開鍵を専用の EVM キーリングにインポートします。
# evmctl import --rsa /etc/keys/pubkey.pem $evm_kr_id 1054989579
このコマンドは、
/etc/keys/pubkey.pem
公開鍵を_evm
キーリングにインポートします。その後、_evm
キーリングはカーネルキーリングに割り当てられます。鍵のシリアル番号は、先の例の 2 行目にあります。オプションで、新たにインポートされた鍵を表示します。
# keyctl show Session Keyring 1025767139 --alswrv 0 0 keyring: _ses 548660789 --alswrv 0 65534 \_ keyring: _uid.0 456142548 --alswrv 0 0 \_ keyring: _evm 1054989579 --alswrv 0 0 \_ user: FA0EF80BF06F80AC
注記この非対称鍵のペアは、
evmctl sign
コマンドを使用して、ファイルの拡張属性の内容にデジタル署名するために使用できます。拡張属性は後でカーネルによって検証されます。カーネルマスターキーを作成して、EVM 鍵を保護します。
# dd if=/dev/urandom bs=1 count=32 2>/dev/null | keyctl padd user kmk-user @u
カーネルマスターキー (
kmk
) は、カーネル領域メモリーに完全に保持されます。カーネルマスターキーkmk
の 32 バイトの値は、/dev/urandom
ファイルからランダムなバイトで生成され、ユーザー (@u
) キーリングに置かれます。
kmk
鍵に基づいて暗号化された EVM 鍵を作成します。# keyctl add encrypted evm-key "new user:kmk 64" @u 351426499
このコマンドは
kmk
を使用して、64 バイトのユーザーキー (evm-key
という名前) を生成し、これをユーザー (@u
) キーリングに配置します。鍵のシリアル番号は、先の例の 2 行目にあります。重要ユーザーキーに evm-key という名前を付ける必要があります。これは、EVM サブシステムが予想し、使用する名前であるためです。
EVM をアクティベートします。
# echo 1 > /sys/kernel/security/evm
EVM が初期化されていることを確認します。
dmesg | tail -1 […] EVM: initialized
8.6. Integrity Measurement Architecture によるファイルのハッシュの収集
Integrity Measurement Architecture (IMA) の最初の操作段階は、 Measurement フェーズです。ここでは、ファイルのハッシュを作成し、それらをファイルの拡張属性 (xattrs) として保存することができます。以下のセクションでは、ファイルのハッシュを作成し、検証する方法を説明します。
前提条件
-
ima-evm-utils
,attr
、およびkeyutils
パッケージがシステムにインストールされている。 - 「Integrity Measurement Architecture および Extended Verification Module の有効化」 で説明されているように、Integrity Measurement Architecture (IMA) および Extended Verification Module (EVM) は有効にされている。
手順
テストファイルを作成します。
# echo <Test_text> > test_file
秘密鍵でファイルに署名します。
# evmctl sign --imahash --key /etc/keys/privkey.pem test_file
test_file
ファイルのハッシュを作成すると、IMA はファイルが破損していないことを確認します。EVM は、test_file
の拡張属性に保存されるハッシュコンテンツに署名することで、IMA ハッシュに間違いがないことを確認します。オプションで、署名されたファイルの拡張属性を確認します。
# getfattr -m . -d test_file file: test_file security.evm=0sAwICztVdCQCAZLtD7qAezGl8nGLgqFZzMzQp7Fm1svUet2Hy7TyI2vtT9/9ZfBTKMK6Mjoyk0VX+DciS85XOCYX6WnV1LF2P/pmPRfputSEq9fVD4SWfKKj2rI7qwpndC1UqRX1BbN3aRUYeoKQdPdl6Cz+cX4d7vS56FJkFhPGlhq/UQbBnd80= security.ima=0sAfgqQ5/05X4w/ltZEfbogdI9+KM5 security.selinux="unconfined_u:object_r:admin_home_t:s0"
この出力例は、SELinux および IMA および EVM ハッシュ値に関連する拡張属性を示しています。EVM は、
security.evm
拡張属性を追加し、ファイルコンテンツの整合性に直接関連するsecurity.ima
などの他のファイルの xattrs へのオフラインでの改ざんを検出します。security.evm
フィールドの値は、秘密鍵で生成されたハッシュベースのメッセージ認証コード (HMAC-SHA1) にあります。
関連情報
- カーネル整合性サブシステムの詳細は、公式のアップストリーム wiki ページ を参照してください。
- TPM の詳細は、「Trusted Computing Group resources」を参照してください。
- 暗号化された鍵の作成に関する詳細は、『RHEL 7 セキュリティーガイド』の「Trusted and Encrypted Keys」セクションを参照してください。
第9章 改訂履歴
0.1-6
2019 年 8 月 6 日 (火) Jaroslav Klech (jklech@redhat.com)
- 7.7 GA 公開用ドキュメントバージョン
0.1-5
2018 年 10 月 19 日 (金) Jaroslav Klech (jklech@redhat.com)
- 7.6 GA 公開用ドキュメントバージョン。
0.1-4
2018 年 3 月 26 日 (月)、Marie Doleželová (mdolezel@redhat.com)
- 7.5 GA 公開用ドキュメントバージョン
0.1-3
2018 年 1 月 5 日 (月) Mark Flitter (mflitter@redhat.com)
- 7.5 ベータ版公開用ドキュメントバージョン
0.1-2
2017 年 7 月 31 日 (月)、Mark Flitter (mflitter@redhat.com)
- 7.4 GA 公開用ドキュメントバージョン
0.1-0
2017 年 4 月 20 日 (木)、Mark Flitter (mflitter@redhat.com)
- レビュー向けの初期ビルド
法律上の通知
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