Red Hat Training

A Red Hat training course is available for Red Hat Enterprise Linux

デスクトップの移行および管理ガイド

Red Hat Enterprise Linux 7

RHEL 7 における GNOME 3 デスクトップの移行計画、デプロイメント、設定、および管理

Marie Doleželová

Red Hat Customer Content Services

Petr Kovář

Red Hat Customer Content Services

Jana Heves

Red Hat Customer Content Services

概要

本書 『デスクトップの移行および管理ガイド』 では、Red Hat Enterprise Linux 7 における GNOME 3 デスクトップの移行計画、導入、設定および管理について説明します。本書は Red Hat Enterprise Linux システムに関する基本的な知識を有するシステム管理者を対象としています。

第1章 GNOME 3 デスクトップの紹介

1.1. GNOME 3 とは

GNOME 3 は Red Hat Enterprise Linux 7 のデフォルトのデスクトップ環境です。GNOME 3 は GNOME デスクトップの次期メジャーバージョンであり、新たなユーザーインターフェイスを導入すると共に、Red Hat Enterprise Linux 5 および 6 に同梱されている以前のバージョンの GNOME 2 デスクトップに大幅な機能改善を加えています。

図1.1 GNOME 3 デスクトップ (GNOME クラシック)

GNOME 3 デスクトップ (GNOME クラシック)
GNOME 3 は、生産性向上を重視した作業環境を提供します。強力な検索機能を使用して 1 つの場所からユーザーのすべての作業にアクセスすることができます。たとえば、手持ちのタスクに集中する必要のある場合は通知機能をオフにすることができます。
重要
適切に機能させるには、GNOME ではシステムが 3D アクセラレーション に対応する必要があります。これには、ベアメタルシステムや VMWare などのハイパーバイザーソリューションが含まれます。
VMWare 仮想マシンで GNOME が起動しなかったり、適切に実行できない場合は、次のソリューションを参照してください: Why does the GUI fails to start on my VMware virtual machine?.
GNOME 3 は数多くの強力なコンポーネントの上に構築されています。
GNOME Shell
GNOME Shell は最新かつ直感的なグラフィカルユーザーインターフェイスです。これは、視覚効果およびハードウェアアクセラレーションサポートを含む⾼品質のユーザーエクスペリエンスを提供します。
GNOME クラシック
GNOME クラシックは新旧機能を組み合わせたものであり、GNOME 2 の慣れ親しんだルックアンドフィールを維持しつつ GNOME Shell の強力な新機能と 3-D 機能を提供します。GNOME クラシックは Red Hat Enterprise Linux 7 におけるデフォルトの GNOME セッションおよび GNOME Shell モードです。
GSettings
GSettings は、古い GNOME バージョンで見つかった GConf に代わる設定ストレージシステムです。GConf から GSettings への移行に関する詳細は、3章GSettings および dconf を参照してください。GSettings を使用したデスクトップの設定に関する詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。
GVFS
GVFS は完全な仮想ファイルシステムインフラストラクチャーを提供し、GNOME デスクトップでストレージを処理します。GVFS により、GNOME 3 はオンラインのドキュメントストレージサービス、カレンダー、および連絡先リストと適切に統合されるため、すべてのデータが同じ場所からアクセスできるようになります。GVFS の詳細は、15章仮想ファイルシステムおよびディスク管理 を参照してください。
GTK+
GTK+ は、グラフィカルユーザーインターフェイスを作成するためのマルチプラットフォームツールキットで、機能豊富な機能豊富な API を提供します。GTK+ により、GNOME 3 はアプリケーションの外観を変更したり、グラフィックのスムーズな外観を提供したりできます。さらに、GTK+ には、オブジェクト指向プログラミングサポート(GObject)、国際文字セットおよびテキストレイアウトの幅広いサポート(Pango)、またはアクセシビリティーインターフェイス(ATK)のセットなど、多くの機能が含まれています。

1.2. GNOME Shell とは

GNOME Shell は GNOME デスクトップのユーザーインターフェイスであり、GNOME 3 の主要テクノロジーです。これは、ウィンドウの切り替え、アプリケーションの起動または通知の表示などの基本的なユーザーインターフェイス機能を提供します。
GNOME Shell はユーザーインターフェイスの革新的な概念を導入し、最新のグラフィックスハードウェア搭載のシステム上のハードウェアアクセラレーションを含む、高品質のユーザーエクスペリエンスを提供します。
GNOME Shell ユーザーインターフェイスの主要コンポーネントには以下が含まれます。
トップバー
画面最上部にある水平のバーからは、アクティビティー 画面、時計およびカレンダー、システムステータスアイコン、画面左上のシステムメニューなど、GNOME Shell の基本的な機能の一部にアクセスできます。
システムメニュー
システムメニュー は右上隅にあります。このメニューからは、設定の更新や Wi-Fi 接続情報の確認、ユーザーの切り替え、コンピューターのシャットダウンなどができます。
アクティビティー画面
アクティビティー画面 は、ユーザーがアプリケーションやウィンドウを実行したり、それらの切り替えを行うことのできるウィンドウおよびアプリケーションビューを特長としています。
上部の 検索エントリー を使用すると、アプリケーション、ドキュメント、ファイル、設定ツールなど、デスクトップで利用可能なさまざまな項目を検索できます。
左側の垂直バーは ダッシュ と呼ばれ、これにはお気に入りのアプリケーションや実行中のアプリケーションの一覧が含まれます。
ワークスペースリスト は右側に表示され、ユーザーは複数のワークスペース間で切り替えを行ったり、アプリケーションやウィンドウをあるワークスペースから別のワークスペースに移動したりできます。
メッセージトレイ
メッセージトレイ は画面下部の水平バーで、ユーザーが Super+M を押すと表示されます。ここから保留中の通知にアクセスできます。
GNOME クラシック固有のコンポーネント
GNOME クラシック は Red Hat Enterprise Linux 7 におけるデフォルトの GNOME Shell モードです。これは、GNOME Shell の外観と共に GNOME Shell 動作のいくつかの側面を変更しています。これには、ウィンドウリストのある下部バーと、トップバーの アプリケーション および 場所 メニューが含まれます。GNOME クラシックの詳細は、「GNOME クラシックとは」 を参照してください。

1.2.1. ハードウェアアクセラレーションおよびソフトウェアレンダリング

GNOME Shell は視覚的な効果を特長としており、OpenGL ベースのグラフィックスライブラリーである Clutter が提供するハードウェアアクセラレーションサポートを利用します。
ハードウェアアクセラレーションが適切に機能するには、グラフィックスドライバーは GL 1.2 およびマルチテクスチャー拡張機能、または GL 1.3 をサポートする必要があります。または、ドライバーが GLES 1.1 または GLES 2.0 のサポートを提供する必要があります。多くの GPU モデルおよびドライバーは GL または GLES のサポートを適切に実装しないため、それらの GPU およびドライバーを搭載したシステムではハードウェアアクセラレーションは利用できない場合があることに注意してください。
GPU およびドライバー要件を満たさない、仮想マシンを含むシステムでは、ソフトウェアレンダリングを使用して、ハードウェアアクセラレーションがサポートされているシステムの場合と同じ GNOME 3 のユーザーエクスペリエンスを提供します。ソフトウェアレンダリングは、llvmpipe ドライバーによって提供されます。
システムがソフトウェアレンダリングおよび llvmpipe ドライバーを使用しているかどうかを確認するには、glxinfo コマンドを実行します。
$ glxinfo | grep renderer
OpenGL renderer string: Gallium 0.4 on llvmpipe (LVVM 3.3, 128 bits)
ソフトウェアレンダラーは完全に準拠した OpenGL 実装を提供しないため、一部のプログラムが複数のアプリケーション間で GLX 状態の一貫したビューを提供する X サーバーに依存する場合に、それらのプログラムは適切に機能しない可能性があることに注意してください。お使いのハードウェアをアップグレードするか、またはハードウェアアクセラレーションを完全にサポートする GPU およびドライバーを搭載したシステム上でこれらのプログラムを実行してください。

1.3. GNOME クラシックとは

GNOME クラシックは従来のデスクトップエクスペリエンスを好むユーザー向けの GNOME Shell 機能およびモードです。GNOME クラシックは GNOME 3 テクノロジーをベースとしており、ユーザーインターフェイスには多くの変更が加えられています。
アプリケーション および 場所 メニュー
アプリケーション メニューは画面の左上に表示されます。ユーザーはここから、カテゴリー別にまとまっているアプリケーションにアクセスできます。ユーザーは、そのメニューから アクティビティー画面 を開くこともできます。
場所 メニューは、トップバーアプリケーション メニューの 横に表示されます。ユーザーは、DownloadsPictures などの重要なフォルダーにすばやくアクセスできます。
タスクバー
タスクバーは画面の一番下に表示されます。以下の機能が含まれます。
  • ウィンドウリスト
  • ウィンドウリストの横に表示される通知アイコン。
  • 通知アイコンの横に表示される現在のワークスペースの短い識別子および利用可能なワークスペースの合計数。
4 つの使用可能なワークスペース
GNOME クラシックでは、ユーザーが利用できるワークスペースの数はデフォルトで 4 に設定されています。
最小化および最大化ボタン
GNOME クラシックのウィンドウのタイトルバーは、ユーザーがウィンドウリストに対してウィンドウを簡単に最小化したり、デスクトップ上のすべてのスペースを占めるようにウィンドウを最大化したりすることを可能にする最小化ボタンおよび最大化ボタンを特長としています。
従来の Super+Tab ウィンドウスイッチャー。
GNOME クラシックでは、Super+Tab ウィンドウスイッチャーのウィンドウはアプリケーションごとにグループ化されません。
システムメニュー
システムメニュー は右上隅にあります。このメニューからは、設定の更新や Wi-Fi 接続情報の確認、ユーザーの切り替え、コンピューターのシャットダウンなどができます。

図1.2 電卓アプリケーションおよびアプリケーションメニューにアクセサリサブメニューのある GNOME クラシック

電卓アプリケーションおよびアプリケーションメニューにアクセサリサブメニューのある GNOME クラシック

1.3.1. GNOME クラシックの拡張機能

GNOME クラシックは、GNOME Shell 拡張機能 のセットとして配布されます。GNOME クラシック拡張機能は、GNOME クラシックセッションの実行に必要なコンポーネントを提供する gnome-classic-session パッケージの依存パッケージとしてインストールされます。GNOME クラシック拡張機能は Red Hat Enterprise Linux 7 でデフォルトで有効にされるため、GNOME クラシックは Red Hat Enterprise Linux 7 のデフォルトデスクトップユーザーインターフェイスになります。
  • AlternateTab (alternate-tab@gnome-shell-extensions.gcampax.github.com),
  • アプリケーションメニュー(apps-menu@gnome-shell-extensions.gcampax.github.com)
  • 新規インスタンス(launch-new-instance@gnome-shell-extensions.gcampax.github.com)を起動します。
  • Places Status Indicator (places-menu@gnome-shell-extensions.gcampax.github.com)
  • ウィンドウリスト(window-list@gnome-shell-extensions.gcampax.github.com)。

1.3.2. GNOME クラシックと GNOME 間の切り替え

ユーザー は サイン イン の横にある歯車をクリックして、GNOME クラシックから GNOME に切り替えることができます。歯車からドロップダウンメニューが開かれ、GNOME クラシックを選択することができます。
ユーザーセッション内で GNOME クラシックから GNOME に切り替えるには、以下のコマンドを実行します。
$ gnome-shell --mode=user -r &
同じユーザーセッション内で GNOME クラシックに戻すには、以下のコマンドを実行します。
$ gnome-shell --mode=classic -r &

1.3.3. デフォルトセッションとしての GNOME クラシックを無効にする

Red Hat Enterprise Linux 7 上で新たに作成されるすべてのユーザーについては、GNOME クラシックはデフォルトセッションとして設定されます。特定のユーザーの設定を上書きするには、/var/lib/AccountsService/users/username ファイルでユーザーのアカウントサービスを変更する必要があります。その方法は、「ユーザーデフォルトセッションの設定」 を参照してください。

詳細情報の入手

ユーザーは、gnome-user-docs パッケージで提供される GNOME ヘルプで GNOME 3、GNOME Shell、または GNOME クラシックの使用に関する詳細情報を参照できます。GNOME Help にアクセスするには、Super キーを押してアクティビティーの 概要 に入りhelp入力 してから Enter キーを押します。

1.4. アクセシビリティーに関する注意点

GNOME デスクトップには、さまざまな障害や特殊なニーズを持つユーザーをサポートし、一般的な支援機器と連携して動作する支援技術が備わっています。Universal access メニュー は、さまざまな障害を持つユーザーにクイックセットアップを提供します。アイコンは上部バーにある人が円で囲まれたものです。
すべてのアクセシビリティ機能は GNOME ヘルプ に記載されています。これは、アクティビティーの概要 を開き、ヘルプ と入力することで簡単にアクセスできます。GNOME Help メニューから Universal access を選択します。
注記
視覚障害のあるユーザーとして GNOME にアクセスするには、Super+Alt+S のキーの組み合わせを押します。これはスクリーンリーダーに切り替わります。これでスクリーンリーダーがオンになります。Orca スクリーンリーダーに関する詳細は、help page を参照してください。

パート I. 移行計画

移行計画は、Red Hat Enterprise Linux のデフォルトのデスクトップ環境を Red Hat Enterprise Linux 5 および 6 に同梱される GNOME 2 から GNOME 3 に移行することに焦点を当てています。本書のこの第 1 部では、特定のコンポーネントに対する変更点の概略、およびコンポーネントが持つ新機能について 1 つずつ説明していきます。
本書では、GNOME デスクトップ環境への変更のみに言及します。Red Hat Enterprise Linux 7 の他の部分への変更については、以下を参照してください。
  • Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイド』: GRUB 2 ブートローダー、パッケージ管理、systemd、プリンター設定などのコンポーネント用。
  • Red Hat Enterprise Linux 7 移行計画ガイド』: Red Hat Enterprise Linux 6 と Red Hat Enterprise Linux 7 間の動作における主な変更点および互換性についての概要は、このガイドを参照してください。また移行計画ガイドでは、Red Hat Enterprise Linux 7 へのアップグレードを支援する Red Hat 提供のツールを紹介しています。
  • Red Hat Enterprise Linux 7 インストールガイド』 の Red Hat Enterprise Linux 7 のインストールおよび Anaconda インストーラーの使用に関する詳細情報が記載されています。
これらのドキュメントは、http://access.redhat.com/site/documentation/Red_Hat_Enterprise_Linux/ を参照してください。

第2章 logind

logind (または具体的には systemd-logind)は、ユーザーログインを管理するシステムサービスです。このサービスは以下を行います。
  • ユーザーおよびセッション、それらのセッションおよびアイドル状態の追跡
  • ユーザープロセスの制御グループの作成
  • システムのシャットダウンまたはスリープなどの操作のために PolicyKit ベースのアクセスをユーザーに提供
  • アプリケーション用にシャットダウン/スリープを抑止するロジックの実装
  • 電源/スリープハードウェアキーの処理
  • 複数のユーザー用のマルチシート管理、セッション切り替え管理、およびデバイスアクセス管理
  • 仮想端末 (コンソール) のアクティブ化時のテキストログイン (getty) の自動起動およびユーザーランタイムディレクトリーの管理
logind サービスは、Red Hat Enterprise Linux 7 の新しい初期化システムである systemd と密接に統合されており、Red Hat Enterprise Linux 6 の upstart 初期化システムに置き換わります。この変更により、数多くの新機能が導入されました。以下は、これらの内のとりわけ大きな変更点の要約です。
ConsoleKit
ConsoleKit フレームワークは、Red Hat Enterprise Linux 7 では非推奨になりました。同等の機能は systemd によって提供されるようになりました。ConsoleKitlogind はいずれも、現在実行中のユーザーセッションを追跡するサービスです。
注記
ConsoleKit には、システム上のアクティブなセッションが変更されたときにいつでも任意のシェルスクリプトを実行する機能がありました(仮想端末の切り替えを使用)。この機能は提供されなくなりました。
/var/log/ConsoleKit/history ファイル
以前のバージョンでは、ConsoleKit はログファイルを /var/log/ConsoleKit/history に送信していましたが、現在 logind はサポートしませんでした。このファイルは、システム上のすべてのログインとログアウトを追跡する従来の wtmp ファイルおよび utmp ファイルに置き換えられました。/var/log/ConsoleKit/history は、異なる形式の wtmp ファイルと同様の情報を提供していました。機能的に重複しているため、logindwtmp ファイルのロールのみを採用しています。
seat.d スクリプト
ConsoleKit は使用されなくなったため、seat.d スクリプトは ConsoleKit フレームワークを補完しなくなり、systemd-logind に置き換えられました。
ck-list-sessions コマンド
ConsoleKit は、通常のユーザーだけでなく、GDM による GUI アクセスも含む、最近のユーザーに関する詳細情報を返す ck-list-sessions コマンドを提供していました。比較可能な結果には、loginctl コマンドを実行してアクセスできるようになりました。
$ loginctl list-sessions
マルチシートサポート
logindGDM とともに、ユーザーが別のモニター、マウス、またはキーボードをマシンにアタッチできる マルチシート 機能が提供されます。これを実行すると、追加のログイン画面が表示され、ユーザーは別のマシンを使用しているかのようにログインできます。
システム上で利用可能なシートをリスト表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ loginctl list-seats
システム上で特定のシートのステータスを表示するには、以下のコマンドを実行します。
$ loginctl seat-status seat
ここで、seat はシートの名前です(例: seat0 )。
特定のハードウェアを特定のシートに割り当てるには、以下のコマンドを実行します。
# loginctl attach seat device
ここで、seat はシートの名前になります(例: seat1 )。device は、/sys /devices/ pci0000:00/0000:00:02.0/drm/card0 などの /sys デバイス パスで指定されたデバイス名です。
割り当てを変更するには、ハードウェアを別のシートに割り当てるか、loginctl flush-devices コマンドを使用します。

詳細情報の入手

systemd- logind.service(8)- logind の man ページは、logind の使用方法と機能に関する詳細情報を提供します。また、systemd-logind が提供する API (ログイン D-Bus API ドキュメント)にも対応しています。
logind.conf(5): logind.conf の man ページでは、ログインマネージャー設定ファイルについて説明しています。
loginctl(1): systemd ログインマネージャーの man ページには、マルチシート機能の詳細情報が含まれています。

第3章 GSettings および dconf

Red Hat Enterprise Linux 7 における主な変更点の 1 つは、GConf (ユーザー設定の保存用)から GSettings の高レベル設定システムと dconf バックエンドの組み合わせへの移行です。
GConf
前述のように、GConf 設定システムは 2 つのシステムに置き換えられました。
  • GSettings API
  • dconf バックエンド。これは、システムのハードウェアおよびソフトウェア設定の詳細を単一のコンパクトなバイナリー形式で収集する低レベルの設定システムおよびプログラムとして機能します。
gsettings コマンドラインツールと dconf ユーティリティーはどちらもユーザー設定を表示し、変更するために使用されます。gsettings ユーティリティーはターミナルで直接実行し、dconf ユーティリティーは設定データベースの編集に dconf-editor GUI を使用します。dconf-editor および gsettings ユーティリティーの詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。
gconftool
gconftool-2 ツールは gsettings および dconf に置き換えられました。同様に、gconf-editordconf-editor に置き換えられました。
上書き
キーファイル の概念が Red Hat Enterprise Linux 7 に導入されました。dconf ユーティリティーを使用すると、システム管理者がデフォルトのオーバーライドを直接インストールすることでデフォルト設定を 上書き できます。たとえば、すべてのユーザーにデフォルトの背景を設定することは、/etc/ dconf /db/local.d/ などのキーファイルディレクトリーのキーファイルに配置される dconf オーバーライドを使用して実行されます。デフォルト値と上書きについての詳細は、「カスタムデフォルト値の設定」 を参照してください。
設定のロック
dconf システムでは、ユーザーのカスタマイズを防ぐために、個別の設定または設定サブパスをロックダウンできるようになりました。設定のロック方法は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。
NFS および dconf
NFS で共有されているホームディレクトリーで dconf ユーティリティーを使用するには、追加の設定が必要です。このトピックの詳細については、「NFS でのユーザー設定の保存」 を参照してください。

詳細情報の入手

GSettings および dconf を使用してユーザー設定を行う方法についての詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。

第4章 PolicyKit

PolicyKit ユーティリティーは、特権プログラム( メカニズムとも呼ばれます)が使用する承認 API を提供するフレームワークで、非特権プログラム(サブジェクト とも呼ばれます)にサービスを提供し ます。以下は、PolicyKit の変更またはそのシステム名 polkit に関する詳細です。

4.1. ポリシー設定

新機能に関連して、認証ルールは JavaScript .rules ファイルで定義されるようになりました。これは、同じファイルがルールと管理者ステータスの両方を定義するために使用されることを意味します。以前は、この情報は *. pkla と *.conf の 2 つの異なるファイルに保存されていました。これは、キー/値のペアを使用して追加のローカル認証を定義していました。
これらの新しい .rules ファイルは 2 つの場所に保存されます。ローカルのカスタマイズ用の polkit ルールは /etc/polkit-1/rules.d/ ディレクトリーに保存されますが、サードパーティーのパッケージは /usr/share/polkit-1/rules.d/ に保存されます。
既存の .conf および .pkla 設定ファイルは保持され、.rules ファイルとともに存在します。polkit は、互換性の問題とともに Red Hat Enterprise Linux 7 用にアップグレードされました。
ルールの優先におけるロジックが変更されました。polkitd は、.rules ファイルを辞書式順序で、/etc/polkit-1/rules.d および / usr/share/polkit-1/rules.d ディレクトリーから読み取りするようになりました。2 つのファイルの名前が同一である場合、/etc 内のファイルは /usr のファイルよりも先に処理されます。さらに、既存のルールは /etc/polkit-1/rules.d/49-polkit-pkla-compat.rules ファイルによって適用されます。したがって、それらは /usr または /etc のいずれかで .rules ファイルで上書きでき、辞書的な順序で 49-polkit-pkla-compat の前に来る名前になります。古いルールが上書きされないようにする最も簡単な方法は、その他すべての .rules ファイルの名前を 49 よりも大きな数字で始めることです。
以下は、.rules ファイルの例です。これは、システムデバイスに storage グループ用のファイルシステムをマウントすることを許可するルールを作成します。ルールは /etc/polkit-1/rules.d/10-enable-mount.rules ファイルに保存されます。

例4.1 システムデバイスへのファイルシステムのマウントの許可

polkit.addRule(function(action, subject) {
    if (action.id == "org.freedesktop.udisks2.filesystem-mount-system" &&
        subject.isInGroup("storage")) {
        return polkit.Result.YES;
    }
});

詳細は、以下を参照してください。

  • polkit(8)- JavaScript ルールおよび優先順位ルールの説明の man ページです。
  • pkla-admin-identities(8)および pkla-check-authorization(8)- .conf および .pkla ファイル形式をそれぞれドキュメントの man ページです。

4.2. デフォルトポリシー

デフォルト設定により、wheel グループのメンバーが root パスワードが求められることなく、各自のパスワードを使用して管理操作用に認証されるようになりました。デフォルトのポリシーは /etc/polkit-1/rules.d/50-default.rules で定義されます。
GNOME 設定のユーザーパネルで、アカウントを 管理者 に設定できます。GNOME 初期セットアップ 時にユーザーを最初に作成すると、デフォルトでは 管理者 アカウント(wheel グループのメンバー)を作成します。
注記
sudo ユーザーは別のユーザーのセキュリティー権限でプログラムを実行できますが、管理者 は wheel グループのメンバーであり、ユーザーが制限されたコマンドを実行できるようにする特別なシステム特権を追加で提供します。

4.3. スクリプトでの権限の検査

pkcheck ユーティリティーは、プロセスがアクションを承認するかどうかを確認する pkcheck ユーティリティーが、--process オプションで指定したパラメーターの新しい形式をサポートするようになりました。これにより、競合状態を回避することで pkcheck を安全に実行できます。新しい形式は以下のようになります。
$ pkcheck --process pid,start-time,uid 
重要
--process オプションには、pid または pid,start-time のベア形式を使用しないでください。pkcheck を呼び出すすべてのスクリプトは、競合状態を回避するために、新しい形式 pidstart-timeuid を使用する必要があります。
詳細は、pkcheck(1)の man ページを参照してください。

4.4. polkit 設定の拡張

バックエンド権限の実装を置き換えるためのサポートが削除されました。同様のレベルの柔軟性は、外部プログラムを呼び出す JavaScript .rules ファイルを作成して実現できます。
PolkitBackendActionLookup 実装(認証ダイアログにデータを提供するために使用されるインターフェイス)を置き換えるサポートも、Red Hat Enterprise Linux 7 の polkit から削除されました。
polkit の詳細は、 polkit (8) man ページを参照してください。

第5章 GDM

GDMGNOME Display Manager で、グラフィカルログイン環境を提供します。GNOME 2 から GNOME 3 への移行後、GDM は他の init システムに対応しなくなったため、systemd でのみ設定できます。
gdm パッケージ
gdm パッケージが、X Window System の従来の表示ログインマネージャーを提供していた xorg-x11-xdm に置き換わりました。前述のように、gdm パッケージは、起動、ログアウトのすぐ後やユーザーの切り替え時に表示されるグラフィカルログイン画面を提供します。
GDM および logind
GDM は、ユーザーの定義と追跡に logind を使用するようになりました。詳細は、2章logind を参照してください。システム管理者は、GDM カスタム設定ファイルで自動ログインを手動でセットアップすることもできます( /etc/gdm/custom.conf )。
custom.conf
GDM 設定が /etc/gdm/custom.conf に表示されるようになりました。ただし、後方互換性のために、/etc/gdm/gdm.conf が見つかった場合は、custom.conf の代わりに使用されます。Red Hat は、アップグレード時に、古い gdm.conf ファイルを削除し、カスタム設定を custom.conf に移行することを推奨します。

詳細情報の入手

GDM の詳細は、「GDM とは」 を参照してください。
ユーザーセッションの設定および管理の詳細は、「ユーザーセッション」 を参照してください。
ログイン画面の外観のカスタマイズは、「ログイン画面のカスタマイズ」 を参照してください。

第6章 GNOME Shell 拡張機能

Red Hat Enterprise Linux 7 の GNOME Shell はアプレットをサポートしません。アプレットは Red Hat Enterprise Linux 5 および 6 のデフォルトの GNOME 2 インターフェイスをカスタマイズするために使用されてきました。GNOME 3 では、アプレットの代わりに GNOME Shell 拡張機能 を使用します。拡張機能は、ウィンドウ管理やアプリケーションの起動を含め、デフォルトの GNOME Shell インターフェイスとその各部分を変更することができます。

6.1. 時計アプレットの置き換え

Red Hat Enterprise Linux 5 および 6 の GNOME 2 は、GNOME 2 パネルから日付、時間、およびカレンダーへのアクセスを提供する Clock アプレットを特長としていました。Red Hat Enterprise Linux 7 では、このアプレットは gnome-clocks パッケージで提供される Clocks アプリケーションに置き換えられました。ユーザーは、GNOME Shell のトップバーのカレンダーをクリックし、Open Clocks を選択して、そのアプリケーションにアクセスできます。

図6.1 時計を開く

時計を開く

詳細情報の入手

GNOME Shell 拡張機能およびこれらを設定し、管理する方法の詳細は、「GNOME Shell 拡張機能とは」 を参照してください。

第7章 gnome-session

gnome-session プログラムも Red Hat Enterprise Linux 7 で更新されています。このプログラムはこれまでと同じ方法で GNOME デスクトップを起動しますが、そのコンポーネントの一部は変更されました。
gnome-session-properties
gnome-session-properties アプリケーションは、引き続き gnome-session パッケージに含まれます。ただし、その機能は個々のユーザーの起動プログラムを管理したり、ログアウト時に現在実行中のアプリケーションを保存することに制限されています。後者の機能については Red Hat Enterprise Linux 6 の機能が保持されています。
名前付きセッション
Save now ボタンは、セッションを特定の時間に保存し、名前を付けることができます。保存されたセッションはログイン時に復元されます。gnome-session-propertiesログアウトする際に実行中のアプリケーションを自動的に記憶 すると、保存されたアプリケーションのリストもログイン時に表示されます。
この更新により、複数のレイアウトを作成したり、それらの名前を変更したり、1 つのユーザーアカウントに対して複数のユーザーセッションを選択することも可能になりました。

詳細情報の入手

セッション管理の詳細は、14章セッション管理 を参照してください。
すべてのユーザー用に起動 (自動起動) アプリケーションを管理する方法については、「全ユーザー用の自動起動アプリケーションの追加」 を参照してください。

第8章 国際化

8.1. 入力メソッド

Red Hat Enterprise Linux 7 における GNOME デスクトップのデフォルトの入力フレームワークは IBus (Intelligent Input Bus) です。これは GNOME 3 に統合されており、入力メソッドを選択するためのユーザーインターフェイスが組み込まれています。

8.1.1. 入力メソッドの設定および切り替え

ユーザーは、GNOME 設定の 地域と言語 パネルを使用して入力メソッドを設定できます。入力メソッドの使用方法についての詳細は GNOME Help を参照してください。これにアクセスするには、Super キーを押してアクティビティーの 概要 に入りhelp入力 してから Enter を押します。
GNOME 以外のセッションでは、IBus は ibus-setup ツールで XKB レイアウトと入力メソッドの両方を設定し、ショートカットでそれらを切り替えることができます。
入力ソースを切り替えるためのデフォルトのショートカットは Super+Space です。Red Hat Enterprise Linux 6 では、ショートカットは Ctrl+Space でした。

8.1.2. IBus の予測的入力メソッド

ibus-typing-booster は、IBus プラットフォームの予測的入力メソッドです。これは部分的な入力に基づいて完全な単語を予測し、より迅速で正確なテキスト入力を可能にします。ユーザーは、提案のリストから必要な単語を選択できます。ibus-typing-booster は、言語の提案を作成するために Hunspell ディクショナリーを使用することもできます。

8.1.3. im-chooser に置き換わる GNOME デスクトップの IBus

IBus は GNOME デスクトップと統合されているため、IBus 以外の入力メソッドの使用を除き、im-chooser は非推奨になりました。

8.2. ファイルの場所の変更

Red Hat Enterprise Linux 7 では、以下の変更が入力メソッドおよびフォント設定ファイル、およびディレクトリーの場所に対して加えられました。
  • .xinputrc ファイルはユーザーのホームディレクトリーから ~/.config/imsettings/ ディレクトリーに移動されました。
  • .imsettings.log ファイルはユーザーのホームディレクトリーから移動し、~/.cache/imsettings/log にあります。
  • ~/.fonts.conf ファイルは非推奨になりました。ユーザーには、ファイルを ~/.config/fontconfig/ ディレクトリーに移動することが推奨されます。
  • ~/.fonts.conf.d ディレクトリーは非推奨になりました。ユーザーはディレクトリーを ~/.config/fontconfig/ ディレクトリーに移動することが推奨されます。
  • /etc/fonts/conf.avail/ ディレクトリーにあるすべての無効な fontconfig 設定ファイルは、/usr/share/fontconfig/conf.avail/ ディレクトリーに移動します。古い場所を参照するローカルのシンボリックリンクがある場合は、それらを必ず更新するようにしてください。

パート II. 設定および管理

Red Hat Enterprise Linux 7 デスクトップ移行および管理ガイド』の第 2 部では、GNOME デスクトップを設定し、管理するための各種の方法について説明します。

第9章 GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定

9.1. 用語の説明: GSettings、gsettings、および dconf

このセクションでは、混乱しやすいいくつかの用語について定義します。
dconf
dconf は、ユーザー設定を管理するキーベースの設定システムです。これは、Red Hat Enterprise Linux 7 で使用される GSettings のバックエンドです。dconf は、GDM、アプリケーション、プロキシー設定など、さまざまな設定を管理します。
dconf
dconf コマンドラインユーティリティーは、個別の値またはディレクトリー全体を dconf データベースとの間で読み書きするために使用されます。
GSettings
GSettings は、アプリケーション設定用の高レベルの API、dconf のフロントエンドです。
gsettings
gsettings コマンドラインツールは、ユーザー設定を表示および変更するために使用されます。

9.2. ユーザーおよびシステム設定

dconf を使用すると、システム管理者およびユーザーは複数の設定レベルの制御が可能になります。
  • 管理者は、すべてのユーザーに適用されるデフォルト設定を定義できます。
  • ユーザーは、各自の設定でデフォルトを上書きできます。
  • オプションで、管理者はユーザーが上書きできないように設定をロックすることもできます。詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。

9.3. デスクトップアプリケーションの GSettings 値の参照

GSettings の値を表示および編集するには、以下の 2 つのツールを使用できます。
  • dconf-editor GUI ツール。
  • gsettings コマンドラインユーティリティー。
注記
デフォルトでは dconf-editor がシステムにインストールされていない可能性があります。これをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
# yum install dconf-editor
dconf-editorgsettings ユーティリティーの両方を使用すると、システムおよびアプリケーション設定のオプションを参照し、変更できます。これらのユーティリティーを使用してグラフィカルユーザーインターフェイスに存在しない設定も変更することもできます。
dconf-editor は、設定を参照および編集するための GUI を提供します。設定の階層はツリービューで表示され、説明、タイプ、デフォルト値などの各設定の追加情報も表示します。GSettings を使用して、dconf の値を表示および設定できます。また、コマンドおよび設定に対する Bash 補完も含まれます。GSettings を使用すると、シェルスクリプトの設定を自動化できます。
dconf-editorgsettings ユーティリティーの両方が、現在のユーザーの GSettings データベースを参照し、変更することを目的としています。これは、これらのツールは通常のユーザーとして常に実行する必要があることを意味します。

図9.1 org.gnome.destop.background GSettings キーを表示する dconf-editor

org.gnome.destop.background GSettings キーを表示する dconf-editor

詳細情報の入手

dconf-editor ツールの詳細は、 dconf-editor (1)の man ページを参照してください。
gsettings ユーティリティーの詳細は、gsettings(1)の man ページを参照してください。

9.4. dconf プロファイルとは

プロファイルは、dconf システムが収集するシステムのハードウェアおよびソフトウェア設定データベースの一覧です。dconf プロファイルを使用すると、同一のシステムを比較して、ハードウェアまたはソフトウェアの問題のトラブルシューティングを行うことができます。
dconf システムはそのプロファイルをテキストファイルに保存します。$DCONF_PROFILE 環境変数は、/etc/dconf/profile/ ディレクトリーからファイルへの相対パス、またはユーザーのホームディレクトリーなどの絶対パスを指定できます。
dconf プロファイル で設定されるキーペアは、設定した値に問題がなければ、デフォルト設定を上書きします。

9.4.1. dconf プロファイルの選択

起動時に、dconf は変数が設定されているかどうかにかかわらず、$DCONF_PROFILE 環境変数を参照します。設定されている場合、dconf は名前付きプロファイルを開こうとし、失敗した場合は中止します。
環境変数が設定されていない限り、dconfuser という名前のプロファイルを開こうとします。この手順が依然として失敗すると、dconf は内部に組み込まれた設定にフォールバックします。
プロファイルの各行は、1 つの dconf データベースを指定します。最初の行は変更を書き込むために使用されるデータベースを示し、残りの行は読み取り専用データベースを表示しています。以下は、/etc/dconf/profile/user に格納されているプロファイルの例です。
user-db:user
system-db:local
system-db:site
このサンプルプロファイルは 3 つのデータベースを指定しています。user は、通常 ~/.config/dconf にあるユーザーデータベースの名前です。local および site は、/etc/dconf/db/ にあるシステムデータベースです。
重要
セッションの dconf プロファイルはログイン時に判断されるため、ユーザーはログアウトし、ログインして新しい dconf ユーザープロファイルをセッションに適用する必要があります。

9.5. カスタムデフォルト値の設定

マシン全体のデフォルト設定は、dconf プロファイルにキーのデフォルトを指定して設定できます。これらのデフォルトはユーザーが上書きできます。
キーのデフォルトを設定するには、ユーザー プロファイルが存在し、キーの値を dconf データベースに追加する必要があります。

例9.1 デフォルト背景の設定

  1. /etc/dconf/profile/userユーザー プロファイルがまだ存在しない場合は、作成します。
    user-db:user
    system-db:local
    localdconf データベースの名前です。
  2. ローカルデータベースの キーファイル/etc/dconf/db/local.d/01-backgroundに作成します。 これには以下のデフォルト設定が含まれます。
    # dconf path
    [org/gnome/desktop/background]
    
    # GSettings key names and their corresponding values
    picture-uri='file:///usr/local/share/backgrounds/wallpaper.jpg'
    picture-options='scaled'
    primary-color='000000'
    secondary-color='FFFFFF'
    キーファイル のデフォルト設定では、以下の GSettings キーが使用されます。

    表9.1 org.gnome.desktop.background スキーマの GSettings キー

    キー名設定可能な値説明
    picture-options"none"、"wallpaper"、"centered"、"scaled"、"stretched"、"zoom"、"spanned"wallpaper_filename で指定したイメージをどのように描画するか設定します。
    picture-uriファイル名とパス背景のイメージに使用する URI。背景はローカル (file://) URI のみをサポートすることに注意してください。
    primary-colorデフォルト: 000000グラデーション時の左側または上側の色、あるいは単色時の色です。
    secondary-colorデフォルト: FFFFFFグラデーション時の右側または下側の色です。単色時には使用されません。
  3. 設定に応じて キーファイル を編集します。詳細は、「デスクトップアプリケーションの GSettings 値の参照」 を参照してください。
  4. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
重要
ユーザー プロファイルを作成または変更した場合は、変更が適用される前にログアウトしてから再度ログインする必要があります。
ユーザー プロファイルを作成しない場合は、dconf コマンドラインユーティリティーを使用して、dconf データベースで個別の値またはディレクトリー全体を読み書きできます。詳細は、dconf(1)の man ページを参照してください。

9.5.1. 特定の設定のロックダウン

dconf のロックダウンモードは、ユーザーが特定の設定を変更できないようにするのに役立つツールです。
GSettings キーをロックダウンするには、keyfile ディレクトリー(例: /etc/dconf/db/local.d/ locks /)に locks サブディレクトリーを作成する必要があります。このディレクトリー内のファイルには、ロックするキーのリストが含まれ、このディレクトリーには任意の数のファイルを追加することができます。
重要
ロックダウンを使用したシステム設定を強制しない場合、ユーザーは各自の設定でシステム設定を簡単に上書きすることができます。ユーザーが行ったすべての設定は、システム設定を強制するロックダウンがない限り、システム設定よりも優先されます。
以下の例は、デフォルトの壁紙の設定をロックする方法について説明しています。ロックする必要のあるその他の設定については以下の手順に従ってください。

例9.2 デフォルトの壁紙のロックダウン

  1. 「デフォルトデスクトップ背景のカスタマイズ」 の手順に従って、デフォルトの壁紙を設定します。
  2. /etc/dconf/db/local.d/locks/ という名前の新しいディレクトリーを作成します。
  3. /etc/dconf/db/local.d/locks/00-default-wallpaper に新規ファイルを作成します。 以下の内容で、1 行につき 1 つのキーを一覧表示します。
    # Prevent users from changing values for the following keys:
    /org/gnome/desktop/background/picture-uri
    /org/gnome/desktop/background/picture-options
    /org/gnome/desktop/background/primary-color
    /org/gnome/desktop/background/secondary-color
  4. システムデータベースを更新します。
    # dconf update

9.6. GSettings キーのプロパティー

GSettings キーは、dconf データベースに 1 回のみ設定できます。同じキーを dconf データベースの異なる場所で異なる値に設定すると、それらのいずれかのみが有効になります。つまり、1 つのキー設定が別の設定で上書きされます。
dconf システムデータベースでは、各キーには 1 つの値のみを指定できます。一部のキーに複数の値がある場合、配列タイプという値のタイプが使用されています。この値タイプでは、値を複数要素のコンマ区切りのリストとして指定できます。以下は、配列値の例になります。
key=['option1', 'option2']

例9.3 org.gnome.desktop.input-sources.xkb-options GSettings キー

org.gnome.desktop.input-sources.xkb-options GSettings キーを設定すると、以下のようになります。これは 1 回のみ設定できるため、値に 2 つの要素が必要な場合、それらを同じ設定ファイルに指定する必要があります。この値は配列タイプであるため、これには複数の要素を持たせることができます。
[org/gnome/desktop/input-sources]
# Enable Ctrl-Alt-Backspace for all users
# Set the Right Alt key as the Compose key and enable it
xkb-options=['terminate:ctrl_alt_bksp', 'compose:ralt']

9.7. NFS でのユーザー設定の保存

ネットワークファイルシステム(NFS)ホームディレクトリーの使用時に dconf が正常に機能するには、dconf キーファイルバックエンド を使用する必要があります。
dconf キーファイルバックエンド を使用する場合、glib2-fam パッケージがシステムにインストールされている必要があることに注意してください。そうでない場合は、リモートマシンに対する設定変更についての通知は適切に機能しません。

手順9.1 dconf キーファイルバックエンドの設定

  1. システムに glib2-fam パッケージがインストールされていることを確認します。
    1. システムは Optional チャンネルにサブスクライブする必要があります。システムを Optional チャンネルにサブスクライブする方法については、Red Hat Subscription Management (RHSM)を使用して Optional チャンネルと Supplementary チャンネル、-devel パッケージにアクセスする方法 を参照してください。
    2. 以下のコマンドを実行して glib2-fam パッケージをインストールします。
      # yum install glib2-fam
  2. すべてのクライアントで /etc/dconf/profile/user ファイルを作成または編集します。
  3. このファイルの先頭に、以下の行を追加します。
    service-db:keyfile/user
dconf キーファイルバックエンド は、ユーザーが次にログインしたときにのみ有効になります。キーファイルをポーリングして更新が行われたかどうかを判断するため、設定が即座に更新されないことがあります。

第10章 デフォルトの外観

GNOME 3 デスクトップの外観および機能は、個別ユーザーとすべてのユーザー向けにシステム管理者によってカスタマイズできます。システム管理者は、すべてのユーザーに対してカスタマイズされたデフォルトのデスクトップ設定を提供でき、ユーザーによる変更を防ぐためにそれらの機能をロックダウンすることもできます。
本章では、インストールプログラム(Anaconda)、システム起動ユーティリティー(GRUBPlymouth)、ログイン画面、フォント、キーボードレイアウト、スクリーンシールド、およびデスクトップ背景をカスタマイズする方法を説明します。

10.1. Anaconda のブランド化

会社で独自のカスタマイズされたディストリビューションを構築している場合は、Red Hat Enterprise Linux 7 インストーラー Anaconda で使用されるブランドグラフィックスと製品名を変更できます。
Anaconda グラフィックおよび製品名の変更に関する詳細は、Red Hat Enterprise Linux 7 の Anaconda Customization Guide を参照してください。

10.2. ブートローダー画面

Red Hat Enterprise Linux 7 ブートローダーは GRUB 2 です。GRUB 2 の外観の一部を変更できます。以下のセクションでは、ディストリビューション名、メニューの色、および背景のイメージを変更する方法を示します。

10.2.1. ディストリビューション名

デフォルトでは、GRUB 2 はディストリビューション名を含むタイトルを表示します。/etc/default/grub ファイルの GRUB_DISTRIBUTOR 変数をカスタマイズしてタイトルを変更できます。

手順10.1 ディストリビューション名の設定

  1. root で /etc/default/grub ファイルを開きます。
  2. GRUB_DISTRIBUTOR 変数を使用して独自のディストリビューション名を指定します。以下は、/etc/default/grub ファイルの抜粋です。GRUB_DISTRIBUTOR 変数で 2 番目の行を更新します。
    GRUB_TIMEOUT=5
    GRUB_DISTRIBUTOR=Our Corporate Distro V1.2
    GRUB_DEFAULT=saved
    GRUB_DISABLE_SUBMENU=true
    ...
    
  3. root として以下のコマンドを実行して、変更が有効になるようにします。
    grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg
    注記
    /etc/default/grub ディレクトリーは、変更するたびに更新する必要があります。
また、/etc/grub.d/ 40_custom のプレーンテキストファイルを変更するか、/etc/grub.d/ ディレクトリーに別のファイルを追加することで、GRUB 2 画面に表示されるテキストの色またはフォントを変更できます。以下のディレクティブから選択します。
  • set color_normal=foreground/background
  • set color_highlight=foreground/background
  • set menu_color_normal=foreground/background
  • set menu_color_highlight=foreground/background
セマンティクスおよびこれらの変数の許可される値の詳細は、grub(8)の man ページを参照してください。

10.2.2. GRUB 2 の背景

デフォルトのセットアップでは GRUB の背景が設定されていません。しかし、イメージをブートローダー画面に追加することはできます。
GRUB 2 のバックグラウンドイメージを設定する前に、 GRUB 2 Unicode フォントを gfxterm グラフィカルターミナル用にインストールする必要があります。デフォルトではフォントは提供されないため、既存の TTF または OTF ファイルを、GRUB 2 で使用される PF2 形式に変換することが前提条件となります。
grub2-mkfont コマンドを実行すると、既存の TTF または OTF ファイルを PF2 形式に変換します。grub2-mkconfig で記述されたデフォルト設定で正しく機能するように、出力ファイル unicode.pf2 に名前を付けます。

例10.1 TTF ファイルの PF2 形式への変換

この例では、LiberationSerif-Bold.ttf から .pf2 形式への変換を示しています。新しい .pf2 形式ファイルは、/grub2/fonts/ ディレクトリーの既存の unicode.pf2 と混同しないように unicode2 呼ばれます。
grub2-mkfont --output=/boot/grub2/fonts/unicode2.pf2 --size=24 /usr/share/fonts/liberation/LiberationSerif-Bold.ttf
これで、GRUB 2 の背景イメージを設定できるようになりました。イメージファイルは boot/ ディレクトリーの外に置くことができます。

手順10.2 イメージのブートローダー画面への追加

  1. root で /etc/default/grub ファイルを開きます。
  2. ファイル内の以下の設定変数を編集します。
    GRUB_TERMINAL=gfxterm
    GRUB_BACKGROUND=path_to_the_image.png
    サポートされる形式は PNG、JPG、JPEG、および TGA です。
  3. 背景イメージを使用して新しい設定ファイルを作成します。
    grub2-mkconfig -o /boot/grub2/grub.cfg
  4. システムを再起動します。
必要な場合は、イメージのサイズが画面に合うように調整されます。

10.3. Plymouth

Plymouth は、Red Hat Enterprise Linux 7 のグラフィカルブートシステムとロガーで、カーネルベースのモード設定(KMS)およびダイレクトレンダリングマネージャー(DRM)を利用します。plymouth は、 ブート中のユーザーの対話も処理します。
起動画面の外観は、各種の静的または動的なグラフィカルテーマを選択してカスタマイズできます。新規のテーマは既存のテーマをベースにして作成することができます。

10.3.1. テーマのブランド化

Plymouth の各テーマは、テーマデータファイルとコンパイルされた スプラッシュプラグインモジュール で設定されます。データファイルの拡張子は .plymouth で、/usr/share/plymouth/themes/ ディレクトリーにインストールされます。
設定データは、キーと値の形式で [Plymouth Theme] セクションに指定されます。グループの有効なキーは、NameDescription、および ModuleName です。最初の 2 つのキーは説明しませんが、3 番目のキーは Plymouth スプラッシュプラグインモジュールの名前を指定します。複数の異なるプラグインが起動時に異なるアニメーションと各種テーマの基礎となる実装を提供します。

例10.2 サンプル .plymouth ファイル

[Plymouth Theme]
Name=Charge
Description=A theme that features the shadowy hull of my logo charge up and finally burst into full form.
ModuleName=two-step

手順10.3 Plymouth テーマの変更

  1. 既存の Plymouth テーマを検索し、最も適切なテーマを選択します。次のコマンドを実行します。
    # yum search plymouth-theme
    または、plymouth-set-default-theme --list コマンドを実行して、インストールされたテーマを表示します。
    plymouth パッケージのインストール時にすべてのテーマをインストールすることもできます。ただし、これは不必要なパッケージを数多くインストールすることにもなります。
    # yum install plymouth\*
  2. plymouth-set-default-theme theme_nameコマンドで新規テーマをデフォルト として設定します。

    例10.3 デフォルトテーマとしての spinfinity の設定

    spinfinity テーマを選択してから、以下を実行します。
    # plymouth-set-default-theme spinfinity
  3. 編集後に initrd デーモンを再構築します。再構築しないと、テーマはブート画面に表示されません。以下を実行してこれを実行します。
    # dracut -f

10.3.2. 新規 Plymouth テーマの作成

所定のテーマリストから選択せずに、独自のテーマを作成することができます。最も簡単な方法は、既存テーマをコピーし、これを変更する方法です。

手順10.4 既存テーマから独自テーマを作成

  1. plymouth/ ディレクトリーのコンテンツ全体をコピーします。テンプレートディレクトリーとして、たとえば、Red Hat Enterprise Linux 7 のデフォルトのテーマである /usr/share/plymouth/themes/charge/charge.plymouth を使用します。これは、2 ステップのスプラッシュプラグインを使用します(two-step は 2 つの段階のブート負荷で、起動時刻を同期してアニメーションの進捗状態から開始し、短期的な 1 回限りのアニメーションで終了します)。
    [Plymouth Theme]
    Name=Charge
    Description=A theme that features the shadowy hull of my logo charge up and finally burst into full form.
    ModuleName=two-step
    
    [two-step]
    ImageDir=/usr/share/plymouth/themes/charge
    HorizontalAlignment=.5
    VerticalAlignment=.5
    Transition=none
    TransitionDuration=0.0
    BackgroundStartColor=0x202020
    BackgroundEndColor=0x202020
    
  2. charge.plymouth ファイルを次の形式で /usr/share/plymouth/themes/newtheme/ ディレクトリーに保存します。
    newtheme.plymouth
  3. 設定に合わせて /usr/share/plymouth/themes/newtheme /newtheme.plymouth ファイルの設定を更新し、色、アライメント、または遷移を変更します。
  4. 以下のコマンドを実行して newtheme をデフォルトとして設定します。
    # plymouth-set-default-theme newtheme
  5. 以下のコマンドを実行して、テーマを変更した後に initrd デーモンを再構築します。
    # dracut -f

10.3.2.1. ブランド化されたロゴの使用

一部のプラグインはスプラッシュアニメーションの一部としてブランド化されたロゴを表示します。独自のロゴをテーマに追加する必要がある場合、以下の短い手順に従ってください。
重要
ブランド化されたロゴのイメージ形式は .png 形式でなければならないことに注意してください。
Plymouth の詳細は、plymouth(8)の man ページを参照してください。

10.4. ログイン画面のカスタマイズ

GNOME ログイン画面には、カスタマイズできるいくつかの要素が含まれています。これらはシステム管理者のみが変更でき、この変更はすべてのユーザーに影響を及ぼします。このセクションでは、Greeter テキスト、キーボードのレイアウト、およびユーザーリストをカスタマイズする方法を説明します。

10.4.2. テキストバナーの表示

ログイン画面のテキストバナーは、以下の GSettings キーによって制御されます (GSettings の詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください)。
org.gnome.login-screen.banner-message-enable
バナーメッセージの表示を有効にします。
org.gnome.login-screen.banner-message-text
ログイン画面にテキストバナーのメッセージを表示します。
GDM は独自の dconf プロファイルを使用するため、そのプロファイルの設定を変更することでテキストバナーを設定できます。

手順10.7 ログイン画面上のテキストバナーの表示

  1. 以下の行を含む /etc/dconf/profile/ gdm で gdm プロファイルを作成または編集します。
    user-db:user
    system-db:gdm
    file-db:/usr/share/gdm/greeter-dconf-defaults
    GDMdconf データベースの名前です。
  2. マシン全体の設定用に gdm データベースを /etc/dconf/db/gdm.d/01-banner-message に作成します。
    [org/gnome/login-screen]
    banner-message-enable=true
    banner-message-text='Type the banner message here'
    
    注記
    バナーメッセージには文字数の制限はありません。GNOME Shell は長いテキストを自動検出して、2 行にします。ただし、バナーメッセージのテキストを外部ファイルから読み取ることはできません。
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
バナーテキストはユーザーリストから選択した場合やボックスへの入力を開始する際に表示されます。次回のログイン時にパスワードを挿入するとテキストが表示されます。

10.4.2.1. バナーメッセージが更新されなかったら ?

バナーメッセージが表示されない場合は、dconf update コマンドを実行してください。
バナーメッセージが更新されない場合は、GDM の再起動を試行します。詳細は、「GDM の再起動」 を参照してください。

10.4.3. 複数のキーボードレイアウトの表示

ユーザーがログイン画面で選択できる代替キーボードのレイアウトは追加することができます。
これは、通常デフォルトとは異なるキーボードのレイアウトを使用するユーザーや、ログイン画面でキーボードの複数レイアウトを利用可能にしておく必要のあるユーザーにとって役立ちます。ただし、この選択はログイン画面の使用時のみに適用されます。いったんログインすると、ユーザー独自の設定が優先されます。

手順10.8 システムのキーボードレイアウト設定の変更

  1. ! layout という名前のセクションの /usr/share/X11/xkb/rules/base.lst ファイルで、必要な言語レイアウトのコードを見つけます。
  2. 以下のように localectl ツールを使用して、システムのキーボードレイアウト設定を変更します。
    $ localectl set-x11-keymap layout
    コンマ区切りのリストで複数のレイアウトを指定することができます。たとえば、es をデフォルトレイアウトとして、us をセカンダリーレイアウトとして設定するには、以下のコマンドを実行します。
    $ localectl set-x11-keymap es,us
  3. ログアウトし、定義されたレイアウトがログイン画面のトップバーで利用可能な状態にあることを確認します。
localectl ツールを使用して、マシン全体のデフォルトのキーボードモデル、バリアント、およびオプションを指定することもできます。詳細は、localectl(1)の man ページを参照してください。

10.4.4. ログイン画面ユーザーリストの無効化

GSettings キー org.gnome.login-screen.disable-user-list を設定すると、ログイン画面に表示されるユーザーリストを無効にできます。
ユーザーリストが無効にされている場合、ユーザーはログインのプロンプト時にユーザー名とパスワードを入力する必要があります。

手順10.9 org.gnome.login-screen.disable-user-list キーの設定

  1. 以下の行を含む /etc/dconf/profile/ gdm で gdm プロファイルを作成または編集します。
    user-db:user
    system-db:gdm
    file-db:/usr/share/gdm/greeter-dconf-defaults
    GDMdconf データベースの名前です。
  2. マシン全体の設定用に gdm データベースを /etc/dconf/db/gdm.d/00-login-screen に作成します。
    [org/gnome/login-screen]
    # Do not show the user list
    disable-user-list=true
    
  3. dconf ユーティリティーを更新してシステムデータベースを更新します。
    # dconf update

10.5. デスクトップ背景のカスタマイズ

dconf ユーティリティーを使用して、デフォルトの背景を設定し、追加の背景を追加したり、複数の背景を追加したりできます。
システムのユーザーがこれらの設定をデフォルトから変更することを許可されていない場合、システム管理者は locks ディレクトリーを使って設定をロックする必要があります。ロックしない場合は、各ユーザーはそれぞれの設定に合わせて設定をカスタマイズすることができます。詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。

10.5.1. デフォルトデスクトップ背景のカスタマイズ

関連する GSettings キーを org.gnome.desktop.background スキーマに設定して、デフォルトのデスクトップ背景とその外観を設定できます。
GSettings の詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。

手順10.10 デフォルト背景の設定

  1. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-background に作成します。
    # Specify the dconf path
    [org/gnome/desktop/background]
    
    # Specify the path to the desktop background image file
    picture-uri='file:///usr/local/share/backgrounds/wallpaper.jpg'
    # Specify one of the rendering options for the background image:
    # 'none', 'wallpaper', 'centered', 'scaled', 'stretched', 'zoom', 'spanned'
    picture-options='scaled'
    # Specify the left or top color when drawing gradients or the solid color
    primary-color='000000'
    # Specify the right or bottom color when drawing gradients
    secondary-color='FFFFFF'
  2. ユーザーの設定を上書きして、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/background で設定を変更できないようにします。
    # List the keys used to configure the desktop background
    /org/gnome/desktop/background/picture-uri
    /org/gnome/desktop/background/picture-options
    /org/gnome/desktop/background/primary-color
    /org/gnome/desktop/background/secondary-color
    詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

10.5.2. 背景の追加

システムユーザーが、追加の背景を利用できるようにすることができます。
  1. org.gnome.desktop.background スキーマ で追加の背景の外観を指定する filename.xml ファイルを作成します (ファイル名に関する要件はありません)。以下は最も頻繁に使用されるスキーマのリストです。

    表10.1 org.gnome.desktop.background スキーマの GSettings キー

    キー名設定可能な値説明
    picture-options"none"、"wallpaper"、"centered"、"scaled"、"stretched"、"zoom"、"spanned"wallpaper_filename で指定したイメージをどのように描画するか設定します。
    color-shading-type"horizontal"、"vertical"、および "solid"背景の色調をどのように変化させるか設定します。
    primary-colordefault: #023c88グラデーション時の左側または上側の色、あるいは単色時の色です。
    secondary-colordefault: #5789caグラデーション時の右側または下側の色です。単色時には使用されません。
    オプションの範囲は、dconf-editor GUI または gsettings コマンドラインユーティリティーにあります。詳細は、「デスクトップアプリケーションの GSettings 値の参照」 を参照してください。
  2. ファイル .xml ファイルを /usr/share/gnome-background-properties/ ディレクトリーに保存します。
ユーザーが右上にある名前をクリックして Settings を選択し、表の Personal セクションで Background を選択すると、利用可能な新しい背景が表示されます。
サンプルを参照して org.gnome.desktop.background GSettings キーが実際にどのように実装されるかを確認してください。

例10.4 追加の背景ファイル

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<!DOCTYPE wallpapers SYSTEM "gnome-wp-list.dtd">
<wallpapers>
  <wallpaper deleted="false">
    <name>Company Background</name>
    <name xml:lang="de">Firmenhintergrund</name>
    <filename>/usr/local/share/backgrounds/company-wallpaper.jpg</filename>
    <options>zoom</options>
    <shade_type>solid</shade_type>
    <pcolor>#ffffff</pcolor>
    <scolor>#000000</scolor>
  </wallpaper>
</wallpapers>
1 つの設定ファイルに、複数の <wallpaper> 要素を指定して複数の背景を追加することができます。
2 つの <wallpaper> 要素を含み、2 つの異なる背景を追加する .xml ファイルの例については以下を参照してください。

例10.5 2 つの壁紙要素を含む追加の背景ファイル

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<!DOCTYPE wallpapers SYSTEM "gnome-wp-list.dtd">
<wallpapers>
  <wallpaper deleted="false">
    <name>Company Background</name>
    <name xml:lang="de">Firmenhintergrund</name>
    <filename>/usr/local/share/backgrounds/company-wallpaper.jpg</filename>
    <options>zoom</options>
    <shade_type>solid</shade_type>
    <pcolor>#ffffff</pcolor>
    <scolor>#000000</scolor>
  </wallpaper>
  <wallpaper deleted="false">
    <name>Company Background 2</name>
    <name xml:lang="de">Firmenhintergrund 2</name>
    <filename>/usr/local/share/backgrounds/company-wallpaper-2.jpg</filename>
    <options>zoom</options>
    <shade_type>solid</shade_type>
    <pcolor>#ff0000</pcolor>
    <scolor>#00ffff</scolor>
  </wallpaper>
</wallpapers>

10.5.3. スクリーンシールドの設定

スクリーンシールド は、システムがロックされるとすぐに下にスライドする画面です。これは、org.gnome.desktop.screensaver.picture-uri GSettings キーによって制御されます。GDM は独自の dconf プロファイルを使用するため、そのプロファイルの設定を変更することでデフォルトの背景を設定できます。
GSettings および dconf の詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。

手順10.11 スクリーンシールドへのロゴの追加

  1. マシン全体の設定用に gdm データベースを /etc/dconf/db/gdm.d/01-screensaver に作成します。
    [org/gnome/desktop/screensaver]
    picture-uri='file:///opt/corp/background.jpg'
    
    /opt/corp/background.jpg を、スクリーンシールドとして使用するイメージファイルへのパスに置き換えます。
    サポートされる形式は PNG、JPG、JPEG、および TGA です。イメージのサイズは、画面のサイズに合わせる必要がある場合に調整されます。
  2. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  3. システムワイドの設定を有効にするには、ログアウトする必要があります。
次回の画面ロック時に、新規のスクリーンシールドが背景に表示されます。手前には時間、日付および曜日が表示されます。

10.5.3.1. スクリーンシールドが更新されなかったら ?

システムデータベースを更新するために root として dconf update コマンドを実行していることを確認します。
バックグラウンドが更新されない場合は、GDM の再起動を試行します。詳細は、「GDM の再起動」 を参照してください。

10.6. フォントの設定

Red Hat Enterprise Linux 7 は、フォント管理およびカスタマイズに fontconfig ユーティリティーを使用します。fontconfig はフォント管理を簡素化し、アンチエイリアス機能などの表示機能を提供します。本セクションでは、以下のフォント管理タスクについて説明します。
  • 新規フォントの追加 (特定ユーザー向けおよび全ユーザー向けの両方)
  • 見つからないフォントの代わりに使用するフォントの指定
  • フォントエイリアスの設定
  • 言語ごとのフォント設定の定義
  • フォントのプロパティーのカスタマイズ
システムで利用可能なフォントの一覧をコンパイルするために、fontconfig は、デフォルトで /etc/fonts/fonts.conf 設定ファイルに記載されているディレクトリーを検索します。
fontconfig として知られるシステムにインストールされているすべてのフォントを一覧表示するには、fc-list コマンドを使用できます。
$ fc-list : file
fc-list の詳細は、 fc-list (1)の man ページを参照してください。
fontconfig およびその設定の詳細は、fonts-conf(5)の man ページを参照してください。

10.6.1. すべてのユーザー用のフォントの追加

フォント処理に fontconfig を使用するアプリケーションのユーザーが利用できる追加フォントをインストールできます。

手順10.12 追加フォントのインストール

  1. root ユーザーとして、/usr/local/share/fonts/ ディレクトリーを作成し、そこにフォントをコピーします。
    一部のフォントには、太字、イタリックなどの複数のファイルがあるため、インストールしている各フォントファミリーのサブディレクトリーを作成します。
  2. 以下のコマンドを実行してフォントキャッシュが更新されていることを確認します。
    # fc-cache /usr/local/share/fonts/
重要
fontconfig は新規のフォントを検出し、それらを利用可能にします。一部のアプリケーションは、ユーザーセッションとは異なり、新規フォントの使用を可能にするために再起動する必要があることがあります。

10.6.2. 代替ディレクトリーを使用したすべてのユーザー用のフォントの追加

または、ディレクトリーが /etc/fonts/fonts.conf ファイルに一覧表示されている場合は、/usr/local/share/fonts/ 以外のシステムディレクトリーにフォントをインストールすることもできます。
そのディレクトリーが /etc/fonts/fonts.conf ファイルに一覧表示されて いない 場合は、/etc/fonts/local.conf にマシン全体の独自の設定ファイルを作成する必要があります。
重要
/etc/fonts/fonts.conf ファイルは、fontconfig ライブラリーの更新時に置き換えられるため、編集しないでください。

手順10.13 追加フォントのインストール

  1. root ユーザーとして、フォントのあるディレクトリーを含むマシン全体の独自の /etc/fonts/local.conf 設定ファイルを作成します。
         
    <?xml version="1.0"?>
    <!DOCTYPE fontconfig SYSTEM "fonts.dtd">
    <fontconfig>
        <dir>/PATH/TO/YOUR/DIRECTORY_NAME</dir>
    </fontconfig>
    
  2. ディレクトリーのパーミッションが 755 に設定されていることを確認します。
    # chmod -R 755 /PATH/TO/YOUR/DIRECTORY_NAME
  3. fc-cache コマンドでフォントキャッシュを更新する際にディレクトリー名を指定します。
    # fc-cache DIRECTORY_NAME

10.6.3. 個別ユーザー用のフォントの追加

フォント処理に fontconfig を使用するアプリケーションで、特定のユーザーが利用できる追加フォントをシステムにインストールできます。

手順10.14 追加フォントのインストール

  1. フォントを ~/.local/share/fonts/ ディレクトリーにコピーしてインストールします。
  2. 以下のコマンドを実行してフォントキャッシュが更新されていることを確認します。
    $ fc-cache ~/.local/share/fonts
重要
fontconfig は新規のフォントを検出し、それらを利用可能にします。変更を確認するには、実行中のアプリケーションの再起動が必要になることがあります。ユーザーセッションを再起動する必要はありません。

10.6.4. フォントの置き換え

アプリケーションがシステムで利用できないフォントを要求すると、fontconfig/etc/fonts/fonts.conf 設定ファイルを読み取り、要求されるフォントの代わりに最も類似した利用可能なフォントを判別します。個別の文字も、要求されるフォントにない場合は置き換えが可能です。
特定のフォントのフォント置換を設定するには、Fonts Tweak Tool を使用できます。このツールはユーザー別の設定の場合にのみ使用できることに注意してください。

図10.1 Fonts Tweak Tool を使用したフォントの置き換え

Fonts Tweak Tool を使用したフォントの置き換え
Fonts Tweak Tool は、システムにデフォルトでインストールされないことがあります。これをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
# yum install fonts-tweak-tool

手順10.15 フォントの置き換え

  1. Super キーを押して アクティビティーの概要 を開き、Fonts Tweak Tool と入力してから Enter キーを押して Fonts Tweak Tool を起動します。
  2. Font Substitutions タブをクリックします。
  3. 左側のペインの左下にある + ボタンをクリックし、置き換えるフォントの名前を選択または入力してから、Add をクリックします。
  4. 右側のペインの左下にある + ボタンをクリックし、最初のフォントの置き換えに使用するフォントの名前を選択してから Add をクリックします。
  5. Close をクリックします。
これで、選択した利用可能なフォントが古いフォントに置き換わります。

10.6.5. フォントエイリアスの設定

Fonts Tweak Tool は、各ロケールについて、個別のユーザーが異なるフォントエイリアスを設定できるようにします。
  • Sans Serif
  • Serif
  • Monospace
  • Cursive
  • Fantasy
上記のエイリアスは、serif および monospace タイプなどの一般的なフォントのタイプを表すために使用されます。アプリケーションおよびユーザーは、システム上にインストールされた特定のフォントを指定する必要なく、これらのエイリアスを参照することができます。
ユーザーはこれらのエイリアスのそれぞれにカスタムフォントを選択して、システムデフォルトのフォントを上書きできます。
Fonts Tweak Tool は、システムにデフォルトでインストールされないことがあります。これをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
# yum install fonts-tweak-tool

図10.2 Fonts Tweak Tool を使用したフォントエイリアスの設定

Fonts Tweak Tool を使用したフォントエイリアスの設定

手順10.16 フォントエイリアスの設定

  1. Super キーを押して アクティビティーの概要 を開き、Fonts Tweak Tool と入力してから Enter キーを押して Fonts Tweak Tool を起動します。
  2. Font Aliases タブをクリックします。
  3. 左側のペインの左下にある + ボタンをクリックし、フォントエイリアスを設定するロケールの名前を選択または入力してから、Add をクリックします。
    使用されているロケールかどうかにかかわらず、デフォルトのフォントエイリアスを設定するには、ロケールのリストからデフォルトを選択します。
  4. 右側のペインで、システムのデフォルトの上書きに必要なフォントエイリアスを見つけ、ドロップダウンリストからカスタムフォントを選択します。
  5. Close をクリックします。
これで、システムのデフォルトエイリアスを上書きし、新規のカスタムフォントを選択できました。

10.6.6. 複数言語の順序

Fonts Tweak Tool を使用すると、複数の言語をユーザーインターフェイスに設定したユーザーは、言語がアプリケーションに表示される順序を変更できます。この機能は、ラテンおよびラテン以外のフォントの両方を使用し、ラテン文字を表示するのにラテン以外をベースとするフォントを使用する必要のないユーザーにとってとくに便利です。
たとえば、言語として日本語と英語を設定し、英語のラテン文字を日本語のラテン以外をベースとするフォントと共に表示することを避ける場合は、英語をプライマリー言語として設定し、日本語をセカンダリーとして設定します。次に、ラテンベースのフォントは英語の文字を表示するために使用され、ラテン以外をベースとするフォントは日本語の文字のみを表示するためにのみ使用されます。
Fonts Tweak Tool は、システムにデフォルトでインストールされないことがあります。これをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
# yum install fonts-tweak-tool

手順10.17 複数言語の設定

  1. Super キーを押して アクティビティーの概要 を開き、Fonts Tweak Tool と入力してから Enter キーを押して Fonts Tweak Tool を起動します。
  2. Language Ordering タブをクリックします。
  3. ウィンドウの左下にある + ボタンをクリックし、プライマリーとして設定する言語の名前を選択または入力してから、Add をクリックします。
  4. 別の言語を追加するには、ウィンドウの左下にある + ボタンをクリックし、セカンダリーとして設定する言語の名前を選択してから 追加 をクリックします。
    このステップを繰り返して言語を追加します。
  5. Close をクリックします。
重要
ユーザーインターフェイスに、アプリケーションの言語が表示される順序を設定することができます。
複数の言語が設定されている場合、一部のアプリケーション( xterm やその他の Xft アプリケーションなど)は、ユーザー言語のすべての文字を適切に表示しない場合があります。これは、それらのアプリケーションまたはアプリケーションが使用しているレンダリングライブラリーにフォールバックフォントのサポートがないためです。

10.6.7. フォントプロパティーの設定

Fonts Tweak Tool を使用すると、ユーザーはさまざまなフォントプロパティーを変更でき、ユーザーごとのフォント設定をより細かく設定することができます。
Fonts Tweak Tool は、システムにデフォルトでインストールされないことがあります。これをインストールするには、以下のコマンドを実行します。
# yum install fonts-tweak-tool

手順10.18 フォントプロパティーの変更

  1. Super キーを押して アクティビティーの概要 を開き、Fonts Tweak Tool と入力してから Enter キーを押して Fonts Tweak Tool を起動します。
  2. Fonts Properties タブをクリックします。
  3. ウィンドウの左下にある + ボタンをクリックし、プロパティーを変更するフォントの名前を選択または入力してから、Add をクリックします。
    このステップを繰り返してフォントを追加します。
  4. 必要に応じてフォントのプロパティーを変更します。
  5. Close をクリックします。
追加されたフォントに応じて、ユーザーが Fonts Properties タブで設定できるフォントプロパティーの一部には以下が含まれます。
Use the embedded bitmap font if available (組み込みビットマップフォントの使用 (ある場合))。
これは、アウトラインフォントよりもビットマップフォントを好むユーザーにとって便利です。埋め込みビットマップフォントを使用するには、適切なフォントを追加し、がある場合は Use embedded bitmap font をクリックします。
Use the JIS X 2013:2004 glyphs (JIS X 2013:2004 グリフの使用)。
JIS X 2013:2000 以前のものではなく、JIS X 2013:2004 標準の日本語のグリフを使用するには、JIS X 2013:2004 をサポートするフォントを追加してから Features リストの jp04 をクリックします。

第11章 GNOME Shell 拡張機能

本章では、GNOME Shell 拡張機能のシステム全体の設定について説明します。拡張機能の表示方法、それらを有効にする方法、有効にされた拡張機能のリストをロックする方法、またはいくつかの拡張機能をシステムのユーザーの必須機能としてセットアップする方法について学ぶことができます。
GNOME Shell 拡張機能の設定時に dconf を使用し、以下の 2 つの GSettings キーを設定します。
  • org.gnome.shell.enabled-extensions
  • org.gnome.shell.development-tools
dconf および GSettings の詳細は、9章GSettings および dconf を使用したデスクトップの設定 を参照してください。

11.1. GNOME Shell 拡張機能とは

GNOME Shell 拡張機能は、デフォルトの GNOME Shell インターフェイスと、ウィンドウ管理やアプリケーション起動などの各部分のカスタマイズを可能にします。
各 GNOME Shell 拡張機能は一意の識別子である UUID で識別されます。UUID は拡張機能がインストールされるディレクトリーの名前にも使用されます。拡張機能は、~/.local/share/gnome-shell/extensions/uuidに拡張子をインストールするか、/ usr/share/gnome-shell/extensions/uuid のマシン全体にインストールできます。
UUID 識別子はグローバルに一意です。UUID を選択する際には、特定の攻撃を回避するために以下のプロパティーを前提としている必要があることに注意してください。
  • UUID にはユニコード文字を含めることはできません。
  • GNOME プロジェクトと関連付けられているものとして表示することができないため、UUID には gnome.org の末尾を含めることはできません。
  • UUID には英数字文字、ピリオド (.)、at (@) の記号、および下線 (_) のみを含める必要があります。
重要
サードパーティーの GNOME Shell 拡張機能を Red Hat Enterprise Linux に実装する前に、以下の文書に必ず目を通し、サードパーティーソフトウェアについての Red Hat サポートポリシーを確認するようにしてください。
インストールされた拡張機能を表示するに は、Glass、GNOME Shell の 統合デバッガー、およびインスペクターツールを使用できます。

手順11.1 インストールされた拡張機能の表示

  1. Alt+F2 を押します。
  2. lg を入力し、Enter を押して Looking Glass を開きます。
  3. Looking Glass のトップバーで Extensions をクリックし、インストールされている拡張機能のリストを表示します。

図11.1 Looking Glass でインストールされている拡張機能を表示

Looking Glass でインストールされている拡張機能を表示

11.2. マシン全体の拡張機能の有効化

システムの全ユーザーが拡張機能を利用できるようにするには、それらの拡張機能を /usr/share/gnome-shell/extensions ディレクトリーにインストールします。
デフォルトで有効な機能拡張を設定するには org.gnome.shell.enabled-extensions キーを設定する必要があります。ただし、現在すでにログインしているユーザーに対して追加の拡張機能を有効にする方法はありません。また、独自の GNOME 拡張機能をインストールして有効にした既存のユーザーには適用されません。

手順11.2 マシン全体の拡張機能の有効化

  1. マシン全体の設定用に local データベースファイルを /etc/dconf/db/local.d/00-extensions に作成します。
    [org/gnome/shell]
    # List all extensions that you want to have enabled for all users
    enabled-extensions=['myextension1@myname.example.com', 'myextension2@myname.example.com']
    
    enabled-extensions キーは、拡張機能の UUID (myextension1@myname.example.com および myextension2@myname.example.com) を使用して有効にした拡張機能を指定します。
  2. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  3. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

11.3. 有効にされた拡張機能のロックダウン

GNOME Shell では、org.gnome.shell.enabled-extensions および org.gnome.shell.development-tools キーをロックすることにより、ユーザーが拡張機能を有効または無効にすることができます。
org.gnome.shell.development-tools キーをロックすると、ユーザーは GNOME Shell の統合デバッガーおよびインスペクターツール(Glass の検索)を使用して必須の拡張機能を無効にできなくなります。

手順11.3 有効にした拡張機能のロックダウン

  1. マシン全体の設定用に local データベースファイルを /etc/dconf/db/local.d/00-extensions に作成します。
    [org/gnome/shell]
    # List all extensions that you want to have enabled for all users
    enabled-extensions=['myextension1@myname.example.com', 'myextension2@myname.example.com']
    # Disable access to Looking Glass
    development-tools=false
    
    enabled-extensions キーは、拡張機能の UUID (myextension1@myname.example.com および myextension2@myname.example.com) を使用して有効にした拡張機能を指定します。
    development-tools キーは、Looking Glass へのアクセスを無効にするために false に設定されます。
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/extensions で設定を変更できないようにします。
    # Lock the list of mandatory extensions and access to Looking Glass
    /org/gnome/shell/enabled-extensions
    /org/gnome/shell/development-tools
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
org.gnome.shell.enabled-extensions キーおよび org.gnome.shell.development-tools キーをロックすると、org.gnome.shell.enabled-extensions キーに記載されていない ~/.local/share/gnome-shell/extensions または /usr/share/gnome-shell/extensions にインストールされる拡張機能は GNOME Shell によって読み込まれないため、ユーザーが使用できなくなります。

11.4. 必須の拡張機能のセットアップ

GNOME Shell では、ユーザーが使用する必要がある拡張機能セットを指定できます。これを行うには、拡張機能を /usr/share/gnome-shell/extensions ディレクトリーにインストールしてから、org.gnome.shell.enabled-extensions キーおよび org.gnome.shell.development-tools キーをロックします。
org.gnome.shell.development-tools キーをロックすると、ユーザーは GNOME Shell の統合デバッガーおよびインスペクターツール(Glass の検索)を使用して必須の拡張機能を無効にできなくなります。

手順11.4 必須の拡張機能の設定

  1. マシン全体の設定用に local データベースファイルを /etc/dconf/db/local.d/00-extensions-mandatory に作成します。
    [org/gnome/shell]
    # List all mandatory extensions
    enabled-extensions=['myextension1@myname.example.com', 'myextension2@myname.example.com']
    # Disable access to Looking Glass
    development-tools=false
    
    enabled-extensions キーは、拡張機能の UUID (myextension1@myname.example.com および myextension2@myname.example.com) を使用して有効にした拡張機能を指定します。
    development-tools キーは、Looking Glass へのアクセスを無効にするために false に設定されます。
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/extensions-mandatory で設定を変更できないようにします。
    # Lock the list of mandatory extensions and access to Looking Glass
    /org/gnome/shell/enabled-extensions
    /org/gnome/shell/development-tools
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

第12章 アプリケーションの統合

アプリケーションを GNOME デスクトップと統合する場合、システム管理者は通常、アプリケーションメニュー構造や MIME タイプのカスタマイズに関連するタスクを実行します。以下に例を示します。
  • サブメニューを作成または変更して、アプリケーションのメニュー項目を追加または変更するか、アプリケーション メニュー構造をカスタマイズします。メニューのカスタマイズについての詳細は、「メニューのカスタマイズ」 を参照してください。
  • アクティビティー 画面 の GNOME Shell ダッシュボード に表示されるデフォルトのお気に入りアプリケーションをカスタマイズします。その方法は、「デフォルトのお気に入りアプリケーションのカスタマイズ」 を参照してください。
  • アプリケーションの MIME タイプを追加または変更し、アプリケーションを特定の MIME タイプに関連付けます。MIME タイプの設定方法の詳細は、「ファイルの関連付けの設定」 を参照してください。

12.1. メニューのカスタマイズ

GNOME メニューシステムは freedesktop.org デスクトップメニュー仕様 に基づいており、設定およびデータファイルの 3 つの主なセットから設定されています。
デスクトップエントリーファイル(.desktop)
.desktop ファイルは、各メニュー項目(名前、実行するコマンド、アイコンなど)に関するデータを提供します。.desktop エントリーファイルは、メニュー階層のメニュー項目の場所と、アクティビティー画面 でアプリケーション検索に使用されるキーワードも指定 します
システム .desktop ファイルは /usr/share/applications/ ディレクトリーにあります。ユーザー固有の .desktop ファイルは ~/.local/share/applications/ ディレクトリーにあります。
以下は、~/.local/share/applications/myapplication1 .desktop という名前のサンプルの .desktop ファイルです。
[Desktop Entry]
Type=Application
Name=My Application 1
Icon=myapplication1
Exec=myapplication1
Categories=Network;WebBrowser;
MimeType=application/x-newtype
上記のファイルは、アプリケーションの名前(My Application 1)、アプリケーションのアイコン(myapplication1)、およびアプリケーションを実行するコマンド(myapplication1)を指定します。また、アプリケーションを指定のカテゴリー(Network;WebBrowser;)に配置し、アプリケーションを application/x-newtype MIME タイプに関連付けます。
メニュー定義ファイル(.menu)
.menu ファイルは、メニューとメニュー項目の両方の順序、階層、マージを指定する XML 設定ファイルです。
マシン全体の .menu ファイルは、/etc/xdg/menus/ ディレクトリーにあります。ユーザー固有の .menu ファイルは ~/.config/menus/ ディレクトリーにあり、マシン全体の .menu ファイルで指定される値を上書きするために使用できます。
特に、/etc/xdg/menus/applications.menu ファイルには、アプリケーション メニューレイアウトの定義が含まれます。
ディレクトリーエントリーファイル(.directory)
.directory ファイルは、名前などの各メニューに関するデータを提供し、/usr/share/desktop-directories/ にあります。

詳細情報の入手

デスクトップエントリーファイルについての詳細は、freedesktop.org の Web サイトより 『Desktop Entry Specification』 を参照してください。
GNOME メニューシステムの実装方法の詳細は、freedesktop.org の Web サイトより 『Desktop Menu Specification』 を参照してください。

12.1.1. 個別ユーザーのメニュー項目の削除

特定ユーザーの アプリケーション メニューのカスタマイズは、デフォルトで ~/.config/menus/gnome-applications.menu 定義ファイルに保存されます。このファイルの場所は、$XDG_DATA_HOME 環境変数を設定して上書きできます。
アプリケーション メニューのデフォルト 上書きするには、まず gnome-applications.menu ファイルを作成する必要があります。アプリケーション メニューおよびそのサブメニューから項目を削除すると、アクティビティー 画面 の アプリケーション ビューからも削除されるため、ユーザーが アクティビティー画面 内でその項目を検索できなくなることに注意し てください

手順12.1 例: アクセサリサブメニューから電卓メニュー項目を削除

  1. /usr/share/applications/ ディレクトリーのコンテンツを参照し、削除するメニュー項目に対応する .desktop ファイルを確認します。
    $ grep -r "Name=Calculator" /usr/share/applications/
    /usr/share/applications/gcalctool.desktop:Name=Calculator
    上記のように Calculator メニュー項目は /usr/share/applications/gcalctool.desktop ファイルに対応します。
  2. ~/.config/menus/gnome-applications.menu ファイルを作成します。
    <!DOCTYPE Menu PUBLIC "-//freedesktop//DTD Menu 1.0//EN"
    "http://www.freedesktop.org/standards/menu-spec/1.0/menu.dtd">
    
    <Menu>
      <Name>Applications</Name>
      <MergeFile type="parent">/etc/xdg/menus/gnome-applications.menu</MergeFile>
    
    <!-- Removes the Calculator from the Accessories submenu -->
      <Menu>
        <Name>Accessories</Name>
        <Exclude>
          <Filename>gcalctool.desktop</Filename>
        </Exclude>
      </Menu>
    <!-- END of Calculator removal content -->
    
    </Menu>
    上記のように、ファイルには、サブメニューの名前(Accessories)、.desktop ファイルの名前(gcalctool .desktop )を指定し、<Menu> 要素が含まれる <Exclude> セクションが含まれます。

12.1.2. すべてのユーザーのメニュー項目の削除

すべて ユーザーの アプリケーション メニューのカスタマイズは、デフォルトで /etc/xdg/menus/applications.menu 定義ファイルに保存されます。このファイルの場所は、$XDG_CONFIG_DIRS 環境変数を設定して上書きできます。
アプリケーション メニューのデフォルトを上書きするには、.menu ファイルを編集する必要があります。アプリケーション メニューおよびそのサブメニューから項目を削除すると、アクティビティー 画面 の アプリケーション ビューからも削除されるため、ユーザーが アクティビティー画面 内でその項目を検索できなくなることに注意し てください

手順12.2 例: アクセサリサブメニューから電卓メニュー項目を削除

  1. /usr/share/applications/ ディレクトリーのコンテンツを参照し、削除するメニュー項目に対応する .desktop ファイルを確認します。
    $ grep -r "Name=Calculator" /usr/share/applications/
    /usr/share/applications/gcalctool.desktop:Name=Calculator
    上記のように Calculator メニュー項目は /usr/share/applications/gcalctool.desktop ファイルに対応します。
  2. /etc/xdg/menus/applications.menu ファイルを編集し、以下のように <Menu> 要素を使用して、.menu ファイルの最後にある最後の </Menu> タグの前に新しい <Exclude> セクションを追加します。
    <!-- Removes the Calculator from the Accessories submenu -->
    
      <Menu>
        <Name>Accessories</Name>
        <Exclude>
          <Filename>gcalctool.desktop</Filename>
        </Exclude>
      </Menu>
    
    <!-- END of Calculator removal content -->
    
    </Menu> <!-- End Applications -->

12.1.3. 個別ユーザーのサブメニューの削除

特定ユーザーの アプリケーション メニューのカスタマイズは、デフォルトで ~/.config/menus/gnome-applications.menu 定義ファイルに保存されます。このファイルの場所は、$XDG_DATA_HOME 環境変数を設定して上書きできます。
アプリケーション メニューのデフォルト 上書きするには、まず gnome-applications.menu ファイルを作成する必要があります。アプリケーション メニューからサブメニューを削除すると、アクティビティー 画面 の アプリケーション ビューからそのサブメニュー内に含まれるすべてのメニュー項目も削除されるため、ユーザーがアクティビティー画面 内からこれらのアイテムを検索できなく なります

例12.1 アプリケーションメニューからシステムツールサブメニューを削除

~/.config/menus/gnome-applications.menu ファイルを作成します。
<!DOCTYPE Menu PUBLIC "-//freedesktop//DTD Menu 1.0//EN"
"http://www.freedesktop.org/standards/menu-spec/1.0/menu.dtd">

<Menu>
  <Name>Applications</Name>
  <MergeFile type="parent">/etc/xdg/menus/gnome-applications.menu</MergeFile>

<!-- Removes the System Tools submenu from the Applications menu-->

  <Menu>
    <Name>System Tools</Name>
    <Deleted/>
  </Menu>

<!-- END of System Tools removal content -->

</Menu>
上記のように、ファイルには、サブメニュー (<Menu>) の名前を指定する System Tools セクションが含まれ、<Deleted/> タグが組み込まれます。

12.1.4. すべてのユーザーのサブメニューの削除

すべて ユーザーの アプリケーション メニューのカスタマイズは、デフォルトで /etc/xdg/menus/applications.menu 定義ファイルに保存されます。このファイルの場所は、$XDG_CONFIG_DIRS 環境変数を設定して上書きできます。
アプリケーション メニューのデフォルトを上書きするには、.menu ファイルを編集する必要があります。アプリケーション メニューからサブメニューを削除すると、アクティビティー 画面 の アプリケーション ビューからそのサブメニュー内に含まれるすべてのメニュー項目も削除されるため、ユーザーがアクティビティー画面 内からこれらのアイテムを検索できなく なります

例12.2 アプリケーションメニューからシステムツールサブメニューを削除

/etc/xdg/menus/applications.menu ファイルを編集し、以下のように <Menu> 要素を使用して、.menu ファイルの最後にある最後の </Menu> タグの前に新しい <Deleted/> セクションを追加します。
<!-- Removes the System Tools submenu from the Applications menu-->

  <Menu>
    <Name>System Tools</Name>
    <Deleted/>
  </Menu>

<!-- END of System Tools removal content -->

</Menu>

12.2. デフォルトのお気に入りアプリケーションのカスタマイズ

お気に 入り のアプリケーションは、アクティビティー 画面 の GNOME Shell ダッシュボード に表示されます。dconf を使用して個々のユーザーのお気に入りのアプリケーションを設定したり、すべてのユーザーに同じお気に入りアプリケーションを設定したりできます。

12.2.1. 個別ユーザーの異なるお気に入りアプリケーションを設定

~/.config/dconf/user にあるユーザーデータベースファイルを変更することで、個々のユーザーのデフォルトのお気に入りアプリケーションを設定できます。以下の例では、dconf を使用して、geditTerminal、および Nautilus をユーザーのデフォルトのお気に入りとして設定します。ユーザーは、このサンプルコードを使用して、リストを後で変更することもできます。

例12.3 /etc/dconf/profile の内容:

# This line allows the user to change the default favorites later
user-db:user

例12.4 ~/.config/dconf/user の内容:

# Set gedit, terminal and nautilus as default favorites
[org/gnome/shell]
favorite-apps = ['gedit.desktop', 'gnome-terminal.desktop', 'nautilus.desktop']
注記
上記の設定をロックダウンして、ユーザーがこれらの設定を変更できないようにすることもできます。詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。

12.2.2. すべてのユーザーに同じお気に入りアプリケーションを設定

すべてのユーザーに同じお気に入りを設定するには、dconf キーファイルを使用してシステムデータベースファイルを変更する必要があります。以下のサンプルでは、dconf プロファイルを編集してから、キーファイルを作成して、組織の最初の floor 内のすべての従業員にデフォルトのお気に入りアプリケーションを設定します。

例12.5 /etc/dconf/profile の内容:

user-db:user

# This line defines a system database called first_floor
system-db:first_floor
注記
ユーザー データベースファイルの設定は first_floor データベースファイルの設定よりも優先されますが、first_floor データベースファイルで導入されたロックは、ユーザー にある設定よりも優先されます。ロックについての詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。

例12.6 /etc/dconf/db/first_floor.d/00_floor1_settings の内容:

# This sample sets gedit, terminal and nautilus as default favorites
# for all users in the first floor
[org/gnome/shell]
favorite-apps = ['gedit.desktop', 'gnome-terminal.desktop', 'nautilus.desktop']
dconf update コマンドを実行して、変更をシステムデータベースに組み込みます。
システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

12.3. ファイルの関連付けの設定

12.3.1. MIME タイプとは

GNOME において、MIME (Multipurpose Internet Mail Extension) タイプは、ファイルの形式を特定するために使用されます。GNOME デスクトップは以下を実行するために MIME タイプを使用します。
  • デフォルトで特定のファイル形式を開くアプリケーションを決定します。
  • 特定のファイル形式を開くことができる他のアプリケーションの登録。
  • ファイル アプリケーションのファイルプロパティーダイアログなどで、ファイルのタイプを記述する文字列を指定します。
  • ファイル アプリケーションのファイルプロパティーダイアログなどで、特定のファイル形式を表すアイコンを指定します。
MIME タイプ名は指定された形式に従います。
media-type/subtype-identifier

例12.7 MIME タイプの形式

image/jpeg は MIME タイプの例です。ここで、image はメディアタイプで、jpeg はサブタイプの識別子です。
GNOME は、以下を判別するために freedesktop.org 共有 MIME 情報仕様に従います。
  • すべての MIME タイプ仕様ファイルを保存するためのマシン全体およびユーザー固有の場所。
  • 特定のファイル形式を開くために使用できるアプリケーションをデスクトップ環境で認識できるように MIME タイプを登録する方法。
  • どのアプリケーションがどのファイル形式を開くかをユーザーが変更する方法。

12.3.1.1. MIME データベースとは

MIME データベースは、GNOME が既知の MIME タイプについての情報を保存するために使用するすべての MIME タイプ仕様ファイルの集合です。
システム管理者の観点からの MIME データベースの最も重要な部分は、/usr/share/mime/packages/ ディレクトリーです。ここには、既知の MIME タイプの情報を指定する MIME タイプ関連のファイルが保存されます。このようなファイルの例は /usr/share/mime/packages/freedesktop.org.xml で、デフォルトでシステムで利用可能な標準の MIME タイプに関する情報を指定します。このファイルは、shared-mime-info パッケージによって提供されます。
詳細情報の入手
MIME タイプシステムについての説明の詳細は、freedesktop.org の Web サイトより 『freedesktop.org Shared MIME Info の仕様』 を参照してください。

12.3.2. 全ユーザー用のカスタム MIME タイプの追加

システム上のすべてのユーザーにカスタム MIME タイプを追加し、その MIME タイプのデフォルトアプリケーションを登録するには、/usr/share/mime/packages/ ディレクトリーに新規の MIME タイプ仕様ファイルと、/usr/share/applications/ ディレクトリーに .desktop ファイルを作成する必要があります。

手順12.3 全ユーザー用のカスタム application/x-newtype MIME タイプの追加

  1. /usr/share/mime/packages/application-x-newtype.xml ファイルを作成します。
    <?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
    
    <mime-info xmlns="http://www.freedesktop.org/standards/shared-mime-info">
      <mime-type type="application/x-newtype">
        <comment>new mime type</comment>
        <glob pattern="*.xyz"/>
      </mime-type>
    </mime-info>
    上記のサンプル application-x-newtype.xml ファイルは新規の MIME タイプ application/x-newtype を定義し、.xyz 拡張子の付いたファイル名をその MIME タイプに割り当てます。
  2. たとえば、myapplication1 .desktop という名前の新しい .desktop ファイルを作成し、/usr/share/applications/ ディレクトリーに配置します。
    [Desktop Entry]
    Type=Application
    MimeType=application/x-newtype
    Name=My Application 1
    Exec=myapplication1 field_code
    上記のサンプル myapplication1.desktop ファイルは、MIME タイプ application/x-newtypeMy Application 1 という名前のアプリケーションに関連付けます。これは、コマンド myapplication1 によって実行されます。
    myapplication1 の起動方法に基づいて、デスクトップエントリー仕様 からそれぞれのフィールドコードを選択します。たとえば、複数のファイルを開くことができるアプリケーションの場合は、次のように使用します。
    Exec=myapplication1 %F
  3. 変更を有効にするには、root として MIME データベースを更新します。
    # update-mime-database /usr/share/mime
  4. root としてアプリケーションデータベースを更新します。
    # update-desktop-database /usr/share/applications
  5. *.xyz ファイルを MIME タイプ application/x-newtype に正常に関連付けたことを確認するには、まず test.xyz などの空のファイルを作成します。
    $ touch test.xyz
    次に、gvfs-info コマンドを実行します。
    $ gvfs-info test.xyz | grep "standard::content-type"
      standard::content-type: application/x-newtype
    
  6. myapplication1.desktop が MIME タイプ application/x-newtype のデフォルトの登録アプリケーションとして正しく設定されていることを確認するには、gvfs-mime --query コマンドを実行します。
    $ gvfs-mime --query application/x-newtype
    Default application for 'application/x-newtype': myapplication1.desktop
    Registered applications:
    	myapplication1.desktop
    Recommended applications:
    	myapplication1.desktop

12.3.3. 個別ユーザー用のカスタム MIME タイプの追加

個別ユーザーのカスタム MIME タイプを追加し、その MIME タイプのデフォルトアプリケーションを登録するには、~/.local/share/ mime/packages/ ディレクトリーに新規の MIME タイプ仕様ファイルと ~/.local/share/applications/ ディレクトリーに .desktop ファイルを作成する必要があります。

手順12.4 個別ユーザー用のカスタム application/x-newtype MIME タイプの追加

  1. ~/.local/share/mime/packages/application-x-newtype.xml ファイルを作成します。
    <?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
    <mime-info xmlns="http://www.freedesktop.org/standards/shared-mime-info">
      <mime-type type="application/x-newtype">
        <comment>new mime type</comment>
        <glob pattern="*.xyz"/>
      </mime-type>
    </mime-info>
    上記のサンプル application-x-newtype.xml ファイルは新規の MIME タイプ application/x-newtype を定義し、.xyz 拡張子の付いたファイル名をその MIME タイプに割り当てます。
  2. たとえば、myapplication1 .desktop という名前の新しい .desktop ファイルを作成し、~/.local/share/applications/ ディレクトリーに配置します。
    [Desktop Entry]
    Type=Application
    MimeType=application/x-newtype
    Name=My Application 1
    Exec=myapplication1 field_code
    上記のサンプル myapplication1.desktop ファイルは、application/x-newtype MIME タイプを My Application 1 という名前のアプリケーションに関連付けます。これは、コマンド myapplication1 によって実行されます。
    myapplication1 の起動方法に基づいて、デスクトップエントリー仕様 からそれぞれのフィールドコードを選択します。たとえば、複数のファイルを開くことができるアプリケーションの場合は、次のように使用します。
    Exec=myapplication1 %F
  3. 変更を有効にするために MIME データベースを更新します。
    $ update-mime-database ~/.local/share/mime
  4. アプリケーションデータベースを更新します。
    $ update-desktop-database ~/.local/share/applications
  5. *.xyz ファイルを MIME タイプ application/x-newtype に正常に関連付けたことを確認するには、まず test.xyz などの空のファイルを作成します。
    $ touch test.xyz
    次に、gvfs-info コマンドを実行します。
    $ gvfs-info test.xyz | grep "standard::content-type"
      standard::content-type: application/x-newtype
    
  6. myapplication1.desktop が MIME タイプ application/x-newtype のデフォルトの登録アプリケーションとして正しく設定されていることを確認するには、gvfs-mime --query コマンドを実行します。
    $ gvfs-mime --query application/x-newtype
    Default application for 'application/x-newtype': myapplication1.desktop
    Registered applications:
    	myapplication1.desktop
    Recommended applications:
    	myapplication1.desktop

12.3.4. 全ユーザー用のデフォルトの登録済みアプリケーションの上書き

/usr/share/applications/mimeapps.list および /usr/share/applications/[desktop environment name]-mimeapps.list ファイルは、パッケージによってインストールされたデフォルトです。これは、デフォルトで特定の MIME タイプを開くために登録されるアプリケーションを指定します。
システム上のすべてのユーザーのシステムデフォルトを上書きするには、システム管理者は、デフォルトの登録アプリケーションを上書きする MIME タイプの一覧で /etc/xdg/mimeapps.list ファイルまたは /etc/xdg/desktop environment name]-mimeapps. list ファイルを作成する必要があります。
設定が適用される順序は次のとおりです。
  1. /usr/share/applications/
  2. /etc/xdg/
特定の位置内に、設定がこの順で適用されます。
  1. mimeapps.list
  2. [desktop environment name]-mimeapps.list
このように、システム管理者の設定は、パッケージ設定よりも優先されます。そして、その中でも、デスクトップ固有の設定は、デスクトップ環境を指定していない設定よりも優先されます。
7.5 より前の Red Hat Enterprise Linux バージョンは、mimeapps.list ファイルの代わりに defaults.list ファイルを使用していました。

手順12.5 全ユーザー用のデフォルトの登録済みアプリケーションの上書き

  1. /usr/share/applications/mimeapps.list ファイルを参照して、デフォルトの登録アプリケーションを変更する MIME タイプを判別します。たとえば、mimeapps.list ファイルの以下のサンプルは、text/html および application/xhtml+xml MIME タイプのデフォルトの登録アプリケーションを指定します。
    [Default Applications]
    text/html=firefox.desktop
    application/xhtml+xml=firefox.desktop
    
    デフォルトのアプリケーション(Firefox)は、対応する .desktop ファイル(firefox .desktop )を指定して定義されます。他のアプリケーションの .desktop ファイルのデフォルトの場所は /usr/share/applications/ です。
  2. /etc/xdg/mimeapps.list ファイルを作成します。このファイルで、MIME タイプとそれらの対応するデフォルトの登録アプリケーションを指定します。
    [Default Applications]
    text/html=myapplication1.desktop
    application/xhtml+xml=myapplication2.desktop
    これにより、text/html MIME タイプのデフォルト登録アプリケーションが myapplication1.desktop に設定され、application/xhtml+xml MIME タイプのデフォルトの登録アプリケーションが myapplication2.desktop に設定されます。
    これらの設定が適切に機能するには、myapplication1.desktop および myapplication 2.desktop ファイルの両方が /usr/share/applications/ ディレクトリーに置かれていることを確認します。
  3. gvfs-mime query コマンドを使用して、デフォルトの登録アプリケーションが正しく設定されていることを確認できます。
    $gvfs-mime query text/html
    Default application for 'text/html': myapplication1.desktop
    Registered applications:
    	myapplication1.desktop
    	firefox.desktop
    Recommended applications:
    	myapplication1.desktop
    	firefox.desktop

12.3.5. 個別ユーザー用のデフォルトの登録済みアプリケーションの上書き

/usr/share/applications/mimeapps.list および /usr/share/applications/[desktop environment name]-mimeapps.list ファイルは、パッケージによってインストールされたデフォルトです。これは、デフォルトで特定の MIME タイプを開くために登録されるアプリケーションを指定します。
個々のユーザーのシステムデフォルトを上書きするには、~/.local/share/applications/mimeapps.list または ~/.local/share/applications/[desktop environment id]-mimeapps.list ファイルを、デフォルトの登録アプリケーションを上書きする MIME タイプの一覧で作成する必要があります。
設定が適用される順序は次のとおりです。
  1. /usr/share/applications/
  2. /etc/xdg/
  3. ~/.local/share/application/
特定の位置内に、設定がこの順で適用されます。
  1. mimeapps.list
  2. [desktop environment name]-mimeapps.list
このように、ユーザーの設定は、システム管理者の設定よりも優先され、システム管理者の設定は、パッケージの設定よりも優先されます。そして、その中でも、デスクトップ固有の設定は、デスクトップ環境を指定していない設定よりも優先されます。
7.5 より前の Red Hat Enterprise Linux バージョンは、mimeapps.list ファイルの代わりに defaults.list ファイルを使用していました。

手順12.6 個別ユーザー用のデフォルトの登録済みアプリケーションの上書き

  1. /usr/share/applications/mimeapps.list ファイルを参照して、デフォルトの登録アプリケーションを変更する MIME タイプを判別します。たとえば、mimeapps.list ファイルの以下のサンプルは、text/html および application/xhtml+xml MIME タイプのデフォルトの登録アプリケーションを指定します。
    [Default Applications]
    text/html=firefox.desktop
    application/xhtml+xml=firefox.desktop
    
    デフォルトのアプリケーション(Firefox)は、対応する .desktop ファイル(firefox .desktop )を指定して定義されます。他のアプリケーションの .desktop ファイルのシステムのデフォルト場所は /usr/share/applications/ です。個々のユーザーの .desktop ファイルは ~/.local/share/applications/ に保存できます。
  2. ~/.local/share/applications/mimeapps.list ファイルを作成します。このファイルで、MIME タイプとそれらの対応するデフォルトの登録アプリケーションを指定します。
    [Default Applications]
    text/html=myapplication1.desktop
    application/xhtml+xml=myapplication2.desktop
    これにより、text/html MIME タイプのデフォルト登録アプリケーションが myapplication1.desktop に設定され、application/xhtml+xml MIME タイプのデフォルトの登録アプリケーションが myapplication2.desktop に設定されます。
    これらの設定が適切に機能するには、myapplication1.desktop および myapplication 2.desktop ファイルの両方が /usr/share/applications/ ディレクトリーに置かれていることを確認します。
  3. gvfs-mime --query コマンドを使用して、デフォルトの登録アプリケーションが正しく設定されていることを確認できます。
    $gvfs-mime --query text/html
    Default application for 'text/html': myapplication1.desktop
    Registered applications:
    	myapplication1.desktop
    	firefox.desktop
    Recommended applications:
    	myapplication1.desktop
    	firefox.desktop

第13章 GNOME デスクトップ機能のカスタマイズ

この章では、3 つの主要なデスクトップ機能について説明します。読み終えたら、すべてのユーザーに対して X サーバーをデフォルトですぐに終了する方法、Compose キー を有効にする方法、またはユーザーのコマンドラインアクセスを無効にする方法を把握できます。
変更を有効にするには、dconf ユーティリティーを更新する必要があります。ログアウトしてから再びログインすると変更点が反映されます。

13.1. オンラインアカウントの有効化および無効化

GNOME Online Accounts (GOA)は、個人ネットワークアカウントを設定し、GNOME デスクトップおよびアプリケーションに自動的に統合されます。ユーザーは、Online Accounts アプリケーションを使用して、Google、Facebook、Flickr、selfCloud などのオンラインアカウントを追加できます。
システム管理者は以下を実行できます。
  • すべてのオンラインアカウントの有効化
  • いくつかのオンラインアカウントの選択的な有効化
  • すべてのオンラインアカウントの無効化

手順13.1 オンラインアカウントの設定

  1. システムに gnome-online-accounts パッケージがない場合は、root で以下のコマンドを実行してインストールします。
    # yum install gnome-online-accounts
  2. /etc/dconf/db/local.d/goa にローカルデータベースのキーファイルを作成します。これには以下の設定が含まれます。
    • 一部のプロバイダーのみを選択的に有効にする場合:
      [org/gnome/online-accounts]
      whitelisted-providers= ['google', 'facebook']
      
    • すべてのプロバイダーを無効にする場合:
      [org/gnome/online-accounts]
      whitelisted-providers= ['']
    • すべての利用可能なプロバイダーを許可する場合:
      [org/gnome/online-accounts]
      whitelisted-providers= ['all']
  3. 設定をロックダウンして、ユーザーが設定を上書きできないようにします。
    1. 存在しない場合は、/etc/dconf/db/local.d/locks/ という名前の新規ディレクトリーを作成します。
    2. 以下の内容で、/etc/dconf/db/local.d/locks/goa に新しいファイルを作成します。
      # Prevent users from changing values for the following key:
      /org/gnome/online-accounts
  4. システムデータベースを更新して、変更を適用します。
    # dconf update
  5. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

13.2. Ctrl+Alt バックスペースショートカットの有効化

Ctrl+Alt+Backspace ショートカットキーの組み合わせは、X サーバーを終了するために使用されます。とくに以下の場合は X サーバーを終了する必要があります。
  • プログラムが X サーバーの動作を終了させた。
  • すぐにログインセッションから切り替える必要がある。
  • 障害のあるプログラムを起動した。
  • 各種の理由で現行セッションで操作できない。
  • 画面がフリーズした。
Ctrl+Alt+Backspace ショートカットがすべてのユーザーに対してデフォルトで X サーバーを強制的に終了できるようにするには、org.gnome.desktop.input-sources.xkb-options GSettings キーを設定する必要があります。(GSettings キーの詳細は、「GSettings キーのプロパティー」 を参照してください。)

手順13.2 Ctrl-Alt-Backspace ショートカットの有効化

  1. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-input-sources に作成します。
    [org/gnome/desktop/input-sources]
    # Enable Ctrl-Alt-Backspace for all users
    xkb-options=['terminate:ctrl_alt_bksp']
    
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/input-sources で設定を変更できないようにします。
    # Lock the list of enabled XKB options
    /org/gnome/desktop/input-sources/xkb-options
    
  3. システムデータベースを更新して、変更を適用します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
Ctrl+Alt+Backspace キーの組み合わせが有効になりました。すべてのユーザーは X サーバーをすぐにかつ簡単に終了でき、これを実行するとログインプロンプトに戻ることができます。

13.3. Compose キーの有効化

Compose キー は、キーボードにない特殊記号や文字を入力できるようにする機能です。GNOME デスクトップでは、キーボード上の既存のキーの 1 つを Compose キー として定義できます。Compose キー は、Compose キーシーケンスとして知られる他のキーと組み合わせて、頻繁に入力する特殊文字を入力します。

例13.1 Compose キーの使用

Compose キー を押してリリースした場合には、AE (大文字で)を入力します。これを小文字で入力するとæを取得できます。
Compose キー を有効にし、キーボード上の特定のキーを Compose キー として設定するには、org.gnome.desktop.input-sources.xkb-options GSettings キーを設定します。これで設定はシステム上のすべてのユーザー用にデフォルトで有効にされます。(GSettings キーの詳細は、「GSettings キーのプロパティー」 を参照してください。)

手順13.3 Compose キーとして右側の Alt キーを設定

  1. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-input-sources に作成します。
    [org/gnome/desktop/input-sources]
    # Set the Right Alt key as the Compose key and enable it
    xkb-options=['compose:ralt']
    
    Right Alt 以外のキーを設定する場合は、ralt を、xkeyboard-config(7) man ページ、セクション 『Compose キーの位置 で指定したキー』 の名前に置き換えます。
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/input-sources で設定を変更できないようにします。
    # Lock the list of enabled XKB options
    /org/gnome/desktop/input-sources/xkb-options
    
  3. システムデータベースを更新して、変更を適用します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
これで、正しい Alt キーを Compose キー として使用できるようになりました。Compose キーを押してリリースしてから、キー の組み合わせを入力して特定の記号を取得します。
注記
システム管理者としてローカルデータベースの編集後にロックを設定する場合、ユーザーは他の xkb オプションを追加することはできません。ロックにより、ユーザーが Alt+Shift などのキーの組み合わせを設定してキーボードレイアウトを切り替えることができなくなります。

13.4. コマンドラインアクセスの無効化

デスクトップユーザー向けのコマンドラインのアクセスを無効にするには、数多くの異なるコンテキストで設定を変更する必要があります。以下の手順ではデスクトップユーザーがコマンドラインへアクセスするパーミッションを削除するわけではなく、デスクトップユーザーがコマンドラインにアクセスする方法を削除することに注意してください。
  • org.gnome.desktop.lockdown.disable-command-line GSettings キーを設定します。これにより、ユーザーが端末にアクセスしたり、実行するコマンドラインを指定したりできなくなります( Alt+F2 コマンドプロンプト)。
  • X サーバー設定を変更して、Ctrl+Alt+関数キー ショートカットを使用して、仮想端末(VT)への切り替えを無効にします。
  • GNOME Shell の アプリケーション メニューおよび アクティビティー画面 から、端末 および端末へのアクセスを提供するその他のアプリケーション を削除します。これは、削除するアプリケーションのメニュー項目を削除することにより行われます。メニュー項目の削除方法は、「すべてのユーザーのメニュー項目の削除」 を参照してください。

13.4.1. org.gnome.desktop.lockdown.disable-command-line キーの設定

  1. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-lockdown に作成します。
    [org/gnome/desktop/lockdown]
    # Disable command-line access
    disable-command-line=true
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/lockdown で設定を変更できないようにします。
    # Lock the disabled command-line access
    /org/gnome/desktop/lockdown
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

13.4.2. 仮想端末切り替えの無効化

通常、ユーザーは Ctrl+Alt+ファンクションキー ショートカット( Ctrl+Alt+F2など)を使用して、GNOME デスクトップおよび X サーバーから仮想端末に切り替えることができます。すべての仮想端末へのアクセスを無効にするには、/etc/X11/xorg.conf.d/ ディレクトリーの X 設定ファイルの Serverflags セクションに DontVTSwitch オプションを追加します。

手順13.4 仮想端末へのアクセスの無効化

  1. /etc/X11/xorg.conf.d/ ディレクトリーに X 設定ファイルを作成または編集します。
    注記
    通常これらのホスト固有の設定ファイル名は 2 けたの数字とハイフンで始まり、常に .conf 拡張子が付きます。したがって、次のファイル名は /etc/X11/xorg.conf.d/10-xorg.conf になります。
    Section "Serverflags"
    
    Option "DontVTSwitch" "yes"
    
    EndSection
  2. 変更を有効にするには、X サーバーを再起動します。

13.5. 印刷のロックダウン

ユーザーに印刷ダイアログボックスが表示されないように、無効にすることができます。これは、ユーザーに一時的なアクセスを提供する場合や、ユーザーがネットワークプリンターで印刷できないようにする場合に役に立ちます。
重要
この機能は、この機能をサポートするアプリケーションでのみ機能します。すべての GNOME およびサードパーティーアプリケーションでこの機能が有効になっているわけではありません。この機能をサポートしないアプリケーションには、これらの変更による影響はありません。
org.gnome.desktop.lockdown.disable-printing キーをロックすると、アプリケーションが表示されなくなります。以下の手順に従います。

手順13.5 org.gnome.desktop.lockdown.disable-printing 鍵のロックダウン

  1. ユーザープロファイルがない場合は作成します(/etc/dconf/profile/user)。
    user-db:user
    system-db:local
    
  2. マシン全体の設定用に local データベースを etc/dconf/db/local.d/00-lockdown に作成します。
    [org/gnome/desktop/lockdown]
      
    # Prevent applications from printing
    disable-printing=true
    
  3. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/lockdown で設定を変更できないようにします。
    # List the keys used to configure lockdown
    /org/gnome/desktop/lockdown/disable-printing
    
  4. 以下を実行してシステムデータベースを更新します。
    # dconf update
これらのステップの実行後は、このロックダウンキーをサポートするアプリケーションは印刷を無効にします。このようなアプリケーションには、EvolutionEvinceEye of GNOMEEpiphany、および Gedit があります。

13.6. ディスク上のファイル保存のロック

保存 ダイアログおよび 名前を付けて 保存 ダイアログは無効 できます。これは、ユーザーに一時的なアクセスを提供する場合や、ユーザーがコンピューターにファイルを保存できないようにする場合に役立ちます。
重要
この機能は、この機能をサポートするアプリケーションでのみ機能します。すべての GNOME およびサードパーティーアプリケーションでこの機能が有効になっているわけではありません。この機能をサポートしないアプリケーションには、これらの変更による影響はありません。
org.gnome.desktop.lockdown.disable-save-to-disk キーをロックして、アプリケーションが保存されないようにすることができます。以下の手順に従います。

手順13.6 org.gnome.desktop.lockdown.disable-save-to-disk 鍵のロックダウン

  1. user プロファイルがない場合は、/etc/dconf/profile/user に作成します。
    user-db:user
    system-db:local
    
  2. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-lockdown ファイルに作成します。
    [org/gnome/desktop/lockdown]
    
    # Prevent the user from saving files on disk
    disable-save-to-disk=true
    
  3. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/lockdown で設定を変更できないようにします。
    # Lock this key to disable saving files on disk
    /org/gnome/desktop/lockdown/disable-save-to-disk
    
  4. 以下を実行してシステムデータベースを更新します。
    # dconf update
これらの手順を実行すると、このロックダウンキー(例: VideosImage Viewer、evolution、Document Viewer、または GNOME Shell )に対応するアプリケーションは、"Save As" ダイアログを無効にします。

13.7. パーティション再設定のロック

polkit を使用すると、個別の操作のパーミッションを設定できます。udisks2 の場合、ディスク管理サービスのユーティリティーは、/usr/share/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy にあります。このファイルには、システム管理者が上書きできる操作およびデフォルト値のセットが含まれます。
重要
/etc に保存される polkit 設定は、/usr/share/ のパッケージで提供される設定を上書きすることに注意してください。

手順13.7 ユーザーによるディスク設定の変更を回避する

  1. /usr/share/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy と同じ内容のファイルを作成します。
    cp /usr/share/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy /etc/share/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy
    /usr/share/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy ファイルは変更しないでください。 変更は次のパッケージの更新によって上書きされます。
  2. 不要なアクションを削除し、以下の行を /etc/polkit-1/actions/org.freedesktop.udisks2.policy ファイルに追加します
      <action id="org_freedesktop_udisks2_modify-device">
         <message>Authentication is required to modify the disks settings</message>
        <defaults>
          <allow_any>no</allow_any>
          <allow_inactive>no</allow_inactive>
          <allow_active>yes</allow_active>
        </defaults>
      </action>
    
    root ユーザーのみがこの操作を実行できるようにする必要がある場合は、noauth_admin に置き換えます。
  3. 変更を保存します。
ユーザーがディスク設定を変更しようとすると、以下のメッセージが返されます。
Authentication is required to modify the disks settings

13.8. ユーザーのログアウトおよび切り替えのロックダウン

ユーザーがログアウトできないようにするには、以下の手順に従います。
  1. 以下の行を含む /etc/dconf/profile/user プロファイルを作成します。
    user-db:user
    system-db:local
    local dconf データベースの名前です。
  2. ディレクトリー /etc/dconf/db/local.d/ がまだ存在しない場合は作成します。
  3. キーファイル /etc/dconf/db/local.d/00-logout を作成して、ローカル データベースに情報を提供します。
    [org/gnome/desktop/lockdown]
    # Prevent the user from user switching
    disable-log-out=true
    
  4. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/lockdown で設定を変更できないようにします。
    # Lock this key to disable user logout
    /org/gnome/desktop/lockdown/disable-log-out
    
  5. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  6. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
重要
ユーザーは別のユーザーに切り替わることで、ログアウトのロックダウンを逃れることができます。こうすると、管理者の意図に反することになります。このシナリオを防ぐために、ユーザーの切り替えも無効にすることが推奨されます。

手順13.8 ユーザーが別のユーザーアカウントに切り替えられないようにする

  1. 以下の行を含む /etc/dconf/profile/user プロファイルを作成します。
    user-db:user
    system-db:local
    local dconf データベースの名前です。
  2. ディレクトリー /etc/dconf/db/local.d/ がまだ存在しない場合は作成します。
  3. キーファイル /etc/dconf/db/local.d/00-user-switching を作成して、ローカル データベースに情報を提供します。
    [org/gnome/desktop/lockdown]
    # Prevent the user from user switching
    disable-user-switching=true
    
  4. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/lockdown で設定を変更できないようにします。
    # Lock this key to disable user switching
    /org/gnome/desktop/lockdown/disable-user-switching
    
  5. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  6. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

13.9. シングルアプリケーションモード

シングルアプリケーションモードでは、シェルを再構築してインタラクティブなキオスクにします。管理者は標準デスクトップの特定の動作をロックダウンし、ユーザーに対して制限を設けることで特定の機能に特化します。
(通信やエンターテイメント、教育など) 多くのフィールドにおいて幅広い機能でシングルアプリケーションモードを設定することで、セルフサービスマシンやイベントマネージャー、登録ポイントなどとして使用することができます。

手順13.9 シングルアプリケーションモードの設定

  1. 以下の内容で以下のファイルを作成します。
    • /usr/bin/redhat-kiosk
      
      #!/bin/sh
      
      if [ ! -e ~/.local/bin/redhat-kiosk ]; then
          mkdir -p ~/.local/bin ~/.config
          cat > ~/.local/bin/redhat-kiosk << EOF
      #!/bin/sh
      # This script is located in ~/.local/bin.
      # It's provided as an example script to show how
      # the kiosk session works.  At the moment, the script
      # just starts a text editor open to itself, but it
      # should get customized to instead start a full screen
      # application designed for the kiosk deployment.
      # The "while true" bit just makes sure the application gets
      # restarted if it dies for whatever reason.
      
      while true; do
          gedit ~/.local/bin/redhat-kiosk
      done
      
      EOF
      
          chmod +x ~/.local/bin/redhat-kiosk
          touch ~/.config/gnome-initial-setup-done
      fi
      
      exec ~/.local/bin/redhat-kiosk "$@"
      
      重要
      /usr/bin/redhat-kiosk ファイルは実行可能である必要があります。
      gedit ~/.local/bin/redhat-kiosk コードを、kiosk セッションで実行するコマンドに置き換えます。この例では、http://mine-kios-web-app という名前のキオスクデプロイメント用に設計されたフルスクリーンアプリケーションを起動します。
      [...]
      while true; do
          firefox --kiosk http://mine-kios-web-app
      done
      [...]
      
    • /usr/share/applications/com.redhat.Kiosk.Script.desktop
      [Desktop Entry]
      Name=Kiosk
      Type=Application
      Exec=redhat-kiosk
      
    • /usr/share/applications/com.redhat.Kiosk.WindowManager.desktop
      [Desktop Entry]
      Type=Application
      Name=Mutter
      Comment=Window manager
      Exec=/usr/bin/mutter
      Categories=GNOME;GTK;Core;
      OnlyShowIn=GNOME;
      NoDisplay=true
      X-GNOME-Autostart-Phase=DisplayServer
      X-GNOME-Provides=windowmanager;
      X-GNOME-Autostart-Notify=true
      X-GNOME-AutoRestart=false
      X-GNOME-HiddenUnderSystemd=true
      
    • /usr/share/gnome-session/sessions/redhat-kiosk.session
      [GNOME Session]
      Name=Kiosk
      RequiredComponents=com.redhat.Kiosk.WindowManager;com.redhat.Kiosk.Script;
      
    • /usr/share/xsessions/com.redhat.Kiosk.desktop
      [Desktop Entry]
      Name=Kiosk
      Comment=Kiosk mode
      Exec=/usr/bin/gnome-session --session=redhat-kiosk
      DesktopNames=Red-Hat-Kiosk;GNOME;
      
  2. GDM サービスを再起動します。
    systemctl restart gdm.service
  3. kiosk セッション用に別のユーザーを作成し、kiosk セッションのセッションタイプとして Kiosk を選択します。

    図13.1 kiosk セッションの選択

    kiosk セッションの選択
Kiosk セッションを開始すると、ユーザーは kiosk デプロイメント用に設計された完全な screen アプリケーションを起動します。

13.10. ノート PC を閉じた際にコンピューターがサスペンドしないようにする

ノート PC を閉じると、コンピューターは節電のためサスペンドします。この動作の設定を変更すると、ノート PC を閉じてもサスペンドしないようにすることができます。
警告
マシンによっては、特にバックパックなど狭いところに入れた状態でノート PC を閉じたまま作動させ続けるとオーバーヒートしてしまう場合があります。このため、サスペンドにするデフォルト設定を変更する場合は、ご自分の状況に適したものかを検討してください。

手順13.10 ノート PC を閉じた際のスイッチ設定

  1. /etc/systemd/logind.conf ファイルを開いて編集します。
  2. ファイルで HandleLidSwitch=suspend 行を探します。開始時に # 文字で引用されている場合は、引用符を解除されます。
    この行がファイルにない場合は、行を追加します。
  3. デフォルトの suspend パラメーターを に置き換えます。
    • lock ロックする画面
    • ignore 何もしない場合は、
    • poweroff コンピューターをオフにする場合。
    以下に例を示します。
    [Login]
    HandleLidSwitch=lock
  4. 変更を保存してエディターを終了します。
  5. 次のコマンドを実行して、次回の再起動時に変更が保存されるようにします。
    # systemctl restart systemd-logind.service
    警告
    サービスを強制的に再起動すると、ログインしているデスクトップユーザーの現在実行中の GNOME セッションが割り込まれることに留意してください。これにより、ユーザーが保存していないデータは削除される可能性があります。
/etc/systemd/logind.conf ファイルの詳細は、logind.conf (5) の man ページを参照してください。

13.11. グラフィカルターゲットモードで電源ボタンを押した際の動作の変更

マシンをグラフィカルログイン画面またはユーザーセッションで起動すると、電源 ボタンをクリックすると、デフォルトでマシンがサスペンドされます。これは、ユーザーが物理的に 電源 ボタンを押した場合や、リモートコンソールから仮想 電源 ボタンを押す場合にも発生します。電源 ボタンを押した際に別の動作を実現するには、dconf でこのボタンの機能を設定します。
たとえば、電源 ボタンを押した後にシステムをシャットダウンする場合は、以下の手順を使用します。

手順13.11 dconf を使用して、電源 ボタンを押した後にシャットダウンするようにシステムを設定する

  1. システム全体の設定用に local データベースを/etc/dconf/db/local.d/01-power ファイルに作成します。
    [org/gnome/settings-daemon/plugins/power]
    power-button-action='interactive'
    
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/01-power ファイルで設定を変更できないようにします。
    /org/gnome/settings-daemon/plugins/power/power-button-action
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
この設定は、電源 ボタンを押した後にシステムシャットダウンを開始します。システム動作の設定を変更するには、特定のボタンの動作を設定します。

特定ボタンのオプション

nothing
何も実行しません。
suspend
システムをサスペンドします。
hibernate
システムを休止状態にします。
interactive
何を実行するかをユーザーに質問するポップアップクエリーを表示します。
対話モードでは、電源ボタンを押すと、60 秒後に自動的にシステムの電源がオフになります。
ただし、次の図のように、ポップアップクエリーとは別の動作を選択できます。

図13.2 対話モードのポップアップクエリー

対話モードのポップアップクエリー

第14章 セッション管理

14.1. GDM とは

GNOME Display Manager (GDM)は、バックグラウンドで実行中のグラフィカルログインプログラムで、ローカルログインとリモートログインの両方で X サーバーを実行および管理します。
GDM は、X ディスプレイマネージャーである XDM の代替です。ただし、GDMXDM から派生せず、元の XDM コードは含まれません。さらに、GDM にはグラフィカル設定ツールに対応していないため、GDM 設定を変更するには /etc/gdm/custom.conf 設定ファイルを編集する必要があります。

14.1.1. GDM の再起動

ログイン画面のバナーメッセージ、ログイン画面のロゴ、ログイン画面の背景などのシステム設定に変更を加える場合は、変更を有効にするために GDM を再起動する必要があります。
警告
サービスを強制的に再起動すると、ログインしているデスクトップユーザーの現在実行中の GNOME セッションが割り込まれることに留意してください。これにより、ユーザーが保存していないデータは削除される可能性があります。
GDM サービスを再起動するには、以下のコマンドを実行します。
# systemctl restart gdm.service
Red Hat Enterprise Linux 7 でのサービス管理方法は、Red Hat Enterprise Linux 7 システム管理者のガイドを参照してください。

14.1.2. GDM 設定の結果を表示

GDM 設定の結果を表示するには、次のコマンドを実行します。
             $ DCONF_PROFILE=gdm gsettings list-recursively org.gnome.login-screen 

14.2. 認証

14.2.1. エンタープライズ認証情報を使用した GNOME へのログイン

お使いのネットワークで Active Directory または Identity Management ドメインが利用可能な場合で、ドメインアカウントをお持ちの場合は、ドメインの認証情報を使用して GNOME にログインすることができます。
マシンがドメインアカウントに対して正常に設定されている場合、ユーザーはそれぞれのアカウントを使用して GNOME にログインすることができます。ログインプロンプトで、ドメインユーザー名の後に @ 記号、ドメイン名を入力します。たとえば、ドメイン名が example.com で、ユーザー名が User の場合、以下を入力します。
User@example.com
マシンがドメインアカウントに対してすでに設定されている場合、ログイン形式について説明する役に立つヒントが表示されるはずです。

14.2.1.1. ようこそ画面でエンタープライズ認証情報を選択

マシンをエンタープライズ認証情報用に設定していない場合は、GNOME 初期セットアップ プログラムの一部である Welcome 画面で更新できます。

手順14.1 エンタープライズ認証情報の設定

  1. Login welcome 画面で、Use Enterprise Login を選択します。
  2. 事前に入力されていない場合は、Domain フィールドにドメイン名を入力します。
  3. 関連フィールドにドメインアカウントのユーザーおよびパスワードを入力します。
  4. Next をクリックします。
ドメインの設定方法によっては、続行する前にドメイン管理者の名前とパスワードを求めるプロンプトが表示されることがあります。

14.2.1.2. GNOME へのログインにエンタープライズ認証情報を使用するように変更する

すでに初期セットアップが完了している場合で、GNOME にログインするためにドメインアカウントを開始する必要がある場合、GNOME 設定のユーザーパネルからこれを実行できます。

手順14.2 エンタープライズ認証情報の設定

  1. 上部のバーで自分の名前をクリックし、メニューから Settings を選択します。
  2. 項目の一覧から、Users を選択します。
  3. アンロック ボタンをクリックして、コンピューター管理者のパスワードを入力します。
  4. ウィンドウの左下にある + ボタンをクリックします。
  5. Enterprise Login ペインを選択します。
  6. Enterprise アカウントのドメイン、ユーザー、およびパスワードを入力し、Add をクリックします。
ドメインの設定方法により、次に進むためにドメイン管理者の名前およびパスワードを求めるプロンプトが表示される場合があります。

14.2.1.3. トラブルシューティングおよび詳細セットアップ

realm コマンドとそのさまざまなサブコマンドを使用して、エンタープライズログイン機能のトラブルシューティングを行うことができます。たとえば、エンタープライズログイン用にマシンが設定されているかどうかを確認するには、以下のコマンドを実行します。
$ realm list
ネットワーク管理者は、ワークステーションを関連ドメインに事前に参加させておくことが奨励されています。これは、kickstart realm join コマンドを使用するか、スクリプトから自動的に realm join を実行して実行できます。
詳細情報の入手
Red Hat Enterprise Linux 7 Windows 統合ガイド: Red Hat Enterprise Linux 7 の 『Windows 統合ガイド』 では、realmd を使用した Active Directory ドメインへの接続に関する詳細情報が記載されています。

14.2.2. スマートカード認証の有効化

スマートカード認証を有効にするには、以下のステップを続けて実行します。
  1. スマートカードのプロンプトを許可するよう GDM を設定する
  2. スマートカードを使用したログインを許可するようオペレーティングシステムを設定する

1.スマートカードのプロンプトを許可するよう GDM を設定する

スマートカード認証のプロンプトを許可するには、以下の 2 つの GDM 設定方法があります。
dconf エディター GUI

手順14.3 dconf エディター GUI を使用してスマートカード認証を有効にする

  1. org.gnome.login-screen enable-password-authentication dcof キーのチェックボックスを外します。
  2. org.gnome.login-screen enable-smartcard-authentication dcof キーのボックスにチェックを入れます。
dconf-tool

手順14.4 dconf-tool を使用してスマートカード認証を有効にする

  1. /etc/dconf/db/gdm.d ディレクトリーにキーファイルを作成します。
  2. 以下の内容をキーファイルに追加します。
    [org/gnome/login-screen]
    enable-password-authentication='false'
    enable-smartcard-authentication='true'
    
  3. システム dconf データベースを更新します。
    # dconf update

2.スマートカードを使用したログインを許可するようオペレーティングシステムを設定する

GDM をスマートカード認証用に設定したら、system-config-authentication ツールを使用してシステムを設定し、ユーザーがスマートカードを使用できるようにし、グラフィカル環境で GDM に有効な認証方法を使用できるようにします。ツールは authconfig-gtk パッケージで提供されます。
スマートカード認証を許可するようにシステムを設定し、system-config-authentication ツールの詳細は、Red Hat Enterprise Linux 7 システムレベルの認証ガイドを 参照してください。

14.2.3. 指紋認証の有効化

ユーザーが登録済みのフィンガープリントを使用してログインできるようにするには、system-config-authentication ツールを使用してフィンガープリント認証を有効にします。ツールは authconfig-gtk パッケージで提供されます。
フィンガープリント認証および system-config-authentication ツールの詳細は、Red Hat Enterprise Linux 7 システムレベルの認証ガイド を参照してください。

14.3. ユーザーセッション

14.3.1. ユーザーセッションにおける標準プロセス

工場出荷時のデフォルトの GNOME セッションでは、デーモン と呼ばれるプログラムはバックグラウンドプロセスとしてシステム上で実行されます。デフォルトで実行される以下のデーモンを見つけることができるはずです。
dbus-daemon
dbus-daemon は、プログラムが互いにメッセージを交換するために使用できるメッセージバスデーモンを提供します。dbus-daemon は D-Bus ライブラリーで実装され、2 つのアプリケーション間の 1 対 1 の通信を提供します。
詳細情報は、dbus-daemon(1)の man ページを参照してください。
gnome-keyring-daemon
さまざまなプログラムや Web サイトのユーザー名とパスワードなどの認証情報は、gnome-keyring-daemon を使用してセキュアに保存されます。この情報は、キーリングファイルと呼ばれる暗号化されたファイルに書き込まれ、ユーザーのホームディレクトリーに保存されます。
詳細は、gnome-keyring-daemon(1)の man ページを参照してください。
gnome-session
gnome-session プログラムは、GDM などのディスプレイマネージャーを使用して GNOME デスクトップ環境を実行します。ユーザーのデフォルトのセッションは、システム管理者によるシステムのインストール時に設定されます。gnome-session は通常、システムで正常に実行された最後のセッションを読み込みます。
詳細は、gnome-session(1)の man ページを参照してください。
gnome-settings-daemon
gnome-settings-daemon は、GNOME セッションと、セッション内で実行されるすべてのプログラムの設定を処理します。
詳細は、gnome-settings-daemon(1)の man ページを参照してください。
gnome-shell
gnome-shell は、プログラムの起動、ディレクトリーの参照、ファイルの表示など、GNOME のコアユーザーインターフェイス機能を提供します。
詳細は、gnome-shell(1)の man ページを参照してください。
pulseaudio
pulseaudio は、Red Hat Enterprise Linux のサウンドサーバーで、プログラムは Pulseaudio デーモンを使用してオーディオを出力できます。
詳細は、pulseaudio(1)の man ページを参照してください。
ユーザーのセットアップにより、とりわけ以下の内のいくつかを確認できる場合があります。
  • dconf-service
  • ibus
  • at-spi2-dbus-launcher
  • at-spi2-registryd
  • gnome-shell-calendar-server
  • goa-daemon
  • gsd-printer
  • さまざま な evolution ファクトリープロセス
  • 各種の GVFS プロセス

14.3.2. ユーザーデフォルトセッションの設定

デフォルトのセッションは、AccountsService と呼ばれるプログラムから取得されます。accountsservice はこの情報を /var/lib/ AccountsService /users/ ディレクトリーに保存します。
注記
GNOME 2 では、ユーザーのホームディレクトリーの .dmrc ファイルを使用してデフォルトのセッションを作成しました。この .dmrc ファイルは使用されなくなりました。

手順14.5 ユーザーのデフォルトセッションの指定

  1. 以下のコマンドを実行して、gnome-session-xsession パッケージがインストールされていることを確認します。
    # yum install gnome-session-xsession
  2. 利用可能な各セッションの .desktop ファイルがある /usr/share/xsessions ディレクトリーに移動します。.desktop ファイルの内容を参照して、使用するセッションを決定します。
  3. ユーザーのデフォルトセッションを指定するには、/var/lib/AccountsService/users/username ファイル でユーザーの アカウントサービス を更新します。
    [User]
    Language=
    XSession=gnome
    この例では、/usr/share/xsessions/gnome.desktop ファイルを使用して GNOME がデフォルトのセッションとして設定されています。Red Hat Enterprise Linux 7 のシステムのデフォルトは GNOME クラシック( /usr/share/xsessions/gnome-classic.desktop ファイル)であることに注意してください。
ユーザーのデフォルトセッションを指定した後は、ユーザーがログイン画面から別のセッションを指定しない限り、ユーザーの次回のログイン時にこのセッションが使用されます。

14.3.3. カスタムセッションの作成

カスタマイズされた設定で独自のセッションを作成するには、以下のステップに従います。
  1. /etc/X11/sessions/new-session .desktop に .desktop ファイルを作成します。ファイルが以下のエントリーを指定していることを確認します。
    [Desktop Entry]
    Encoding=UTF-8
    Type=Application
    Name=Custom Session
    Comment=This is our custom session
    Exec=gnome-session --session=new-session
    Exec エントリーは、実行するコマンドを、場合によっては引数と共に指定します。gnome-session --session=new-sessionコマンドを使用してカスタムセッション を実行できます。
    gnome-session で使用できるパラメーターの詳細は、 gnome-session (1)の man ページを参照してください。
  2. /usr/share/gnome-session/sessions/new-session.session にカスタムセッションファイルを作成します。このファイルには、セッション の名前と必要なコンポーネントを指定できます。
    [GNOME Session]
    Name=Custom Session
    RequiredComponents=gnome-shell-classic;gnome-settings-daemon;
    RequiredComponents で指定した項目には、対応する .desktop ファイルが /usr/share/applications/ にある必要があることに注意してください。
カスタムセッションファイルの設定後、新しいセッションは GDM ログイン画面のセッションリストで利用可能になります。

14.3.4. ユーザーセッションログの表示

ユーザーセッションの問題に関する詳細情報を確認する場合は、systemd ジャーナルを表示できます。Red Hat Enterprise Linux 7 は systemdベースのシステムであるため、ユーザーセッションログデータはバイナリー形式で systemd ジャーナルに直接保存されます。
注記
Red Hat Enterprise Linux 6 では、ユーザーセッションのログデータは ~/.xsession-errors ファイルに保存されていましたが、このファイルは使用されなくなりました。

手順14.6 ユーザーセッションログの表示

  1. 次のコマンドを実行して、ユーザー ID (uid)を確認します。
    $ id --user
    1000
  2. 上記で判別されたユーザー ID のジャーナルログを表示します。
    $ journalctl _UID=1000

詳細情報の入手

journalctl(1)の man ページには、systemd ジャーナルの使用状況に関する詳細情報が記載されています。
Red Hat Enterprise Linux 7 で systemd ジャーナルを使用する方法は、 Red Hat Enterprise Linux 7 システムレベルの認証ガイドを参照してください。

14.3.5. 全ユーザー用の自動起動アプリケーションの追加

ユーザーのログイン時にアプリケーションを自動的に起動するには、そのアプリケーションの .desktop ファイルを /etc/xdg/autostart/ ディレクトリーに作成する必要があります。
個々のユーザーの自動起動(スタートアップ)アプリケーションを管理するには、gnome-session-properties アプリケーションを使用します。

手順14.7 全ユーザー用の自動起動 (スタートアップ) アプリケーションの追加

  1. /etc/xdg/autostart/ ディレクトリーに .desktop ファイルを作成します。
    [Desktop Entry]
    Type=Application
    Name=Files
    Exec=nautilus -n
    OnlyShowIn=GNOME;
    AutostartCondition=GSettings org.gnome.desktop.background show-desktop-icons
  2. Files をアプリケーションの名前に置き換えます。
  3. nautilus -n をアプリケーションを実行するために使用するコマンドに置き換えます。
  4. AutostartCondition キーを使用して GSettings キーの値を確認することができます。
    セッションマネージャーは、キーの値が true である場合にアプリケーションを自動的に実行します。キーの値が実行中のセッションで変更される場合、セッションマネージャーは、直前のキーの値に基づいてアプリケーションを起動または停止します。

14.3.6. 自動ログインの設定

Administrator アカウントタイプのユーザーは、GNOME SettingsUsers パネルから Automatic Login を有効にできます。システム管理者は、以下のように GDM カスタム設定ファイルで自動ログインを手動でセットアップすることもできます。

例14.1 ユーザー john の自動ログインの設定

/etc/gdm/custom.conf ファイルを編集し、ファイル内の [daemon] セクションが以下を指定していることを確認します。
[daemon]
AutomaticLoginEnable=True
AutomaticLogin=john
john を自動的にログインできるように設定するユーザーに置き換えます。

14.3.7. 自動ログアウトの設定

特定の期間アイドル状態であったユーザーセッションは自動的に終了できます。対応する GSettings キーを設定してからこれをロックし、マシンがバッテリーまたは主電源を使用しているかに応じて異なる動作を設定できます。
警告
アイドルセッションが自動的に終了する場合、ユーザーは保存していないデータを失う可能性があることに注意してください。

手順14.8 電源搭載マシンの自動ログアウトの設定

  1. マシン全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-autologout に作成します。
    [org/gnome/settings-daemon/plugins/power]
    # Set the timeout to 900 seconds when on mains power
    sleep-inactive-ac-timeout=900
    # Set action after timeout to be logout when on mains power
    sleep-inactive-ac-type='logout'
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/autologout で設定を変更できないようにします。
    # Lock automatic logout settings
    /org/gnome/settings-daemon/plugins/power/sleep-inactive-ac-timeout
    /org/gnome/settings-daemon/plugins/power/sleep-inactive-ac-type
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
関連する GSettings キーは以下のとおりです。
  • org.gnome.settings-daemon.plugins.power.sleep-inactive-ac-timeout
    コンピューターが AC 電源から実行している場合にスリープ状態に切り替わる前に非アクティブな状態にする必要がある秒数です。
  • org.gnome.settings-daemon.plugins.power.sleep-inactive-ac-type
    コンピューターが AC 電源から実行している場合にタイムアウトが経過するとどうなるかを設定します。
  • org.gnome.settings-daemon.plugins.power.sleep-inactive-battery-timeout
    コンピューターが電源から実行している場合にスリープ状態に切り替わる前に非アクティブな状態にする必要のある秒数です。
  • org.gnome.settings-daemon.plugins.power.sleep-inactive-battery-type
    コンピューターがバッテリー電源から実行している場合にタイムアウトが経過したらどうなるかを設定します。
使用できる値一覧のキーで gsettings range コマンドを実行できます。以下に例を示します。
$ gsettings range org.gnome.settings-daemon.plugins.power sleep-inactive-ac-type
enum
'blank'
'suspend'
'shutdown'
'hibernate'
'interactive'
'nothing'
'logout'

14.3.8. 画面の明るさとアイドル時間の設定

以下の GSettings キーを設定することにより、明るさのレベルを下げるよう設定するほか、明るさのレベルおよびアイドル時間を設定することができます。

例14.2 明るさのレベルを下げる設定

デバイスがしばらくアイドル状態になったときに明るさのレベルを下げるように設定するには、/etc/dconf/db/local.d/00-power にマシン全体の設定用に local データベースを作成します。 以下に例を示します。
[org/gnome/settings-daemon/plugins/power]
idle-dim=true

例14.3 明るさのレベルの設定

明るさのレベルを変更するには、/etc/dconf/db/local.d/00-power でマシン全体の設定用に local データベースを作成し、30 を使用する整数値に置き換えます。
[org/gnome/settings-daemon/plugins/power]
idle-brightness=30

例14.4 アイドル時間の設定

画面が空白になり、デフォルトのスクリーンセーバーが表示されるまでのアイドル時間を設定するには、/etc/dconf/db/local.d/00-session にマシン全体の設定用に local データベースを作成し、900 を使用する整数値に置き換えます。
[org/gnome/desktop/session]
idle-delay=uint32 900
上記に示されるように、整数値と共に uint32 が含まれている必要があります。
root で dconf update コマンドを実行して、変更をシステムデータベースに組み込む。
システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。
注記
上記の設定をロックダウンして、ユーザーがこれらの設定を変更できないようにすることもできます。ロックについての詳細は、「特定の設定のロックダウン」 を参照してください。

14.3.9. ユーザーのアイドル時の画面のロック

スクリーンセーバーを有効にし、ユーザーがアイドル状態になるとスクリーンが自動的にロックされるようにするには、dconf プロファイルを作成し、GSettings キーペアを設定してからこれをロックし、ユーザーがこれを編集できないようにします。

手順14.9 スクリーンセーバーの有効化および画面のロック

  1. システム全体の設定用に local データベースを /etc/dconf/db/local.d/00-screensaver に作成します。
    [org/gnome/desktop/session]
    # Set the lock time out to 180 seconds before the session is considered idle
    idle-delay=uint32 180
    [org/gnome/desktop/screensaver]
    # Set this to true to lock the screen when the screensaver activates
    lock-enabled=true
    # Set the lock timeout to 180 seconds after the screensaver has been activated
    lock-delay=uint32 180
    以下に示すように、整数キーの値と共に uint32 を組み込む必要があります。
  2. ユーザーの設定を上書きし、ユーザーが /etc/dconf/db/local.d/locks/screensaver ファイルで設定を変更できないようにします。
    # Lock desktop screensaver settings
    /org/gnome/desktop/session/idle-delay
    /org/gnome/desktop/screensaver/lock-enabled
    /org/gnome/desktop/screensaver/lock-delay
    
  3. システムデータベースを更新します。
    # dconf update
  4. システム全体の設定に変更を適用するために、ユーザーは、一度ログアウトしてログインし直す必要があります。

14.3.10. スクリーンキャストの録画

GNOME Shell には、セッション中にデスクトップまたはアプリケーションのアクティビティーを記録し、録画を webm 形式で高解像度ビデオファイルとして配信できる組み込みスクリーンキャストレコーダーが特長とされています。

手順14.10 スクリーンキャストの作成

  1. 録画を開始するには、Ctrl+Alt+Shift+R を押します。
    レコーダーがスクリーンアクティビティーをキャプチャーする際に、画面の右下の隅に赤い円が表示されます。
  2. 録画を停止するには、Ctrl+Alt+Shift+R を押します。画面の右下隅にあった赤い円は表示されなくなります。
  3. ~/Videos フォルダーに移動します。ここには、Screencast で始まるファイル名の録画されたビデオがあり、録画の日時が含まれます。
組み込みレコーダーは、マルチモニターのセットアップのすべてのモニターを含め、常に画面全体をキャプチャーすることに注意してください。

第15章 仮想ファイルシステムおよびディスク管理

15.1. GVFS

GVFS (GNOME Virtual File System)は、GNOME デスクトップが構築されるライブラリーによって提供される仮想ファイルシステムインターフェイスの拡張です。GVFS は完全な仮想ファイルシステムインフラストラクチャーを提供し、GNOME デスクトップのストレージを処理します。
GVFS は、Web ブラウザーで使用される URL アドレスと構文的に似た URI (Uniform Resource Identifier)標準に基づく完全な識別のアドレスを使用します。schema://user@server/path 形式のこれらのアドレスは、サービスの種類を判別する主要な情報です。

15.2. GVFS のバックエンド

GVFS には数多くのバックエンドがあり、これらは特定タイプのリソースへのアクセスを提供します。以下は、利用可能な GVFS バックエンドとその仕様の一覧です。

表15.1 利用可能なバックエンド

バックエンド説明
afcMTP (メディア転送プロトコル) と同様。ファイルを Apple iDevice で表示します (USB 経由で接続)。
afpMac オペレーションシステム X およびオリジナルの Mac オペレーションシステムのファイルサービスにアクセスする Apple Filing Protocol (AFP) クライアント。
archive読み取り専用で各種のアーカイブファイル (ZIP、TAR) を処理します。
burn新規の CD/DVD/BD メディアコンテンツの一時ストレージとしてアプリケーションを書き込んで使用される仮想バックエンド。
cdda別個の Waveform オーディオファイル形式 (WAV) ファイルでオーディオ CD を表示します。
computerアクティブなマウントと物理ボリュームを統合している仮想バックエンド。signpost と同様の動作になります。以前は、Computer ビューで Nautilus によって使用されていました。
dav、davsセキュアなバリアントを含む WebDAV クライアント。認証はマウント時にのみ可能であり、後で実行されるフォルダーごとの再認証はサポートしません。
dns-sdネットワークの参照時に使用される DNS Service Discovery – Avahi クライアント。検出されたサービスに対する永続的な URI を形成します。
ftp当面の間は FTPS サポートのない、全機能が搭載された FTP (ファイル転送プロトコル) クライアント。デフォルトでは、パッシブ転送に対応します。
gphoto2USB または FireWire 経由で割り当てられたカメラにアクセスするイメージ転送プロトコル (PTP) クライアント。
httpすべての HTTP 要求を処理します。クライアントアプリケーションの Web からファイルを簡単にダウンロードできます。
locatest単純なテストバックエンドプロキシーファイル:/// URI(エラー挿入サポートあり)。
mtpメディアプレーヤーおよびスマートフォンのメモリーにアクセスするためのメディア転送プロトコルバックエンド。
networkネットワークのブラウズ用。周辺の Avahi および Samba サーバーを表示。
obexftpBluetooth クライアント。
recentGNOME アプリケーションで使用される最近のファイルを一覧表示するために GtkFileChooser で使用されるバックエンド。
sftp完全機能搭載の SFTP (SSH ファイル転送プロトコル) クライアント。
smbSamba および Windows 共有にアクセス。
trash削除されたファイルの復元を可能にする trash バックエンド。
注記
一部のバックエンドは別個にパッケージ化され、デフォルトではインストールされません。追加のバックエンドをインストールするには、yum パッケージマネージャーを使用します。
バックエンドのサービスを使用するには、URI 文字列を形成する必要があります。この文字列は GVFS で使用される基本的な識別子で、サービスのタイプ(バックエンド ID)、絶対パス、およびユーザー名(必要な場合)などの固有の識別に必要なすべての情報が含まれます。この情報は、Nautilus アドレスバーと GTK+ のオープンダイアログまたは保存ダイアログで確認できます。
以下の例は、URI 文字列の非常に基本的な形式であり、ftp.myserver.net ドメインで実行される FTP (ファイル転送プロトコル) サーバーの root ディレクトリー (/) を参照しています。

例15.1 root ディレクトリーを参照する URI 文字列

ftp://ftp.myserver.net/
以下の例では、認証を使用して指定されたパスのテキストファイルを参照しています。

例15.2 テキストファイルを参照する URI 文字列

ssh://joe@ftp.myserver.net/home/joe/todo.txt

15.3. マウント、アンマウントおよび取り出し

仮想ファイルシステムでは、特定のリソースが自動的にマウントされるように設定されますが、最も一般的な方法は手動でマウントをトリガーする方法です。

手順15.1 手動マウント

  1. Nautilus でファイルを開きます(つまり Files アプリケーション)。
  2. 画面の上部にある場所バーに、整形式の URI 文字列を入力します。ロケーションバーが表示されない場合は、Ctrl+L を押します。
    または、Nautilus でサーバーへの接続 ダイアログが表示されており、これは Files Connect to server に移動すると表示されます。
  3. ログイン認証情報が要求される際は、名前およびパスワードを関連するエントリーボックスに入力します。
  4. マウントプロセスが完了すると、ファイルを使って作業することができます。
リソースをアンマウントする必要がある場合は、以下の簡単な手順に従います。

手順15.2 アンマウント

  1. 選択されたマウントの取り出しアイコンをクリックします。
  2. マウントが表示されなくなるか、または安全な削除についての通知が表示されるまで待機します。
重要
パフォーマンス上の理由により、データがキャッシュされるか、またはバックグラウンドで低速で書き込まれる場合があります。データをデバイスまたはリモートリソースで安全に配信するには、リモートリソースのプラグを外したり、接続を解除することはできません。
マウントはアプリケーション間で共有され、実行中のデスクトップセッション内でグローバルに追跡されます。これは、マウントをトリガーしたアプリケーションを中止した場合でも、そのマウントがその他のアプリケーションで引き続き利用可能になることを意味します。同様に、マウントがバックエンドで制限されていない限り、複数のアプリケーションが同時にマウントにアクセスできます (一部のプロトコルは、設計上の理由により単一チャネルのみを許可します)。
重要
GVFS マウント(および物理ボリュームも含む)は、所有者のみに制限され、他のユーザーにはプライバシーの悪用が許可されません。

15.4. ブックマークの管理

参照をブックマークすることにより、その参照を所定の場所に保存できます。

手順15.3 場所をブックマークする方法:

  1. ブックマークするフォルダーまたはファイルを選択します。
  2. Ctrl+D を押します。
ブックマークの初回アクティブ化時に、GVFS サブシステムは既存のマウントを検索し、存在しない場合は新規のマウントを生成します。このように、オープンまたは保存ダイアログ内であっても認証を行うことができます。
ブックマーク は GTK+ および GNOME デスクトップに適切に統合されています。標準の GTK+ を表示するすべてのアプリケーションは、ダイアログの左側のパネルでブックマークを一覧表示する( GtkFileChooserと呼ばれている)ダイアログのブックマークを一覧表示します。また、Nautilus とそのクローンは、サイドバーまたはより汎用的には Files メニューにブックマークを表示します。
注記
ページがブックマークされていない場合、ブックマーク ラベルは表示されません。
ブックマーク のほかにも、利用可能なすべての GVFS ボリュームおよびマウントが GtkFileChooser サイドバーに一覧表示されます。ブックマークと GVFS ボリュームが単一の項目に統合され、重複や混乱を防ぐことがあります。その後、ブックマークGVFS マウントと同様にエジックアイコンを持つことができます。
ブックマーク~/.config/gtk-3.0/bookmarks ファイルにあります。以下の例では、ブックマークした場所は ~/Music~/Pictures、~/Videos、~ /Downloads、および ~/ bin です。これにより、~/.config/gtk-3.0/bookmarks ファイルの内容は以下のようになります。

例15.3 ~/.config/gtk-3.0/bookmarks ファイル

file:///home/username/Music
file:///home/username/Pictures
file:///home/username/Videos
file:///home/username/Downloads
file:///home/username/bin
username を使用するユーザー名に置き換えます。

手順15.4 ブックマークを編集する方法:

  1. トップバーの Files メニューを開きます。
  2. ブックマークエディターを開くには、ブックマークをクリックします。

15.5. デフォルトサーバーリストの設定

システム管理者の観点からは、すべてのユーザーのブックマークのグループを 1 度に設定できません。ただし、システム管理者は、ユーザーのファイル共有にアクセスできます。
Nautilus は、XBEL 形式の ~/.config/nautilus/servers ファイルにファイル共有サーバーの一覧を保存します。ファイル共有サーバーリストをこのファイルに追加すると、ユーザーはファイル共有に簡単にアクセスできるようになります。
備考
XBEL (XML Bookmark Exchange Language) は URI (Uniform Resource Identifiers) を共有できる XML 標準です。GNOME では、XBEL は Nautilus などのアプリケーションでデスクトップのブックマークを共有するために使用されます。
以下の例では、Nautilus~/.config/nautilus/servers ファイルに URI ftp://ftp.gnome.org/ を持つ GNOME FTP というタイトルのブックマークを作成します。

例15.4 ~/.config/nautilus/servers ファイル

<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<xbel version="1.0"
      xmlns:bookmark="http://www.freedesktop.org/standards/desktop-bookmarks"
      xmlns:mime="http://www.freedesktop.org/standards/shared-mime-info">
   <bookmark href="<input>ftp://ftp.gnome.org/</input>">
      <title><input>GNOME FTP</input></title>
   </bookmark>
</xbel>

15.6. GNOME 仮想ファイルシステムをその他すべてのアプリケーションに表示する

GVFS マウントにアクセスできる GIO ライブラリーでビルドされたアプリケーションのほかに、GVFS はアクティブな GVFS マウントを公開する FUSE デーモンも提供します。これは、すべてのアプリケーションが標準の POSIX API を使用してアクティブな GVFS マウントにアクセスできることを意味します。
ただし、追加のアプリケーションライブラリーの依存関係や新規の VFS サブシステムの固有な要素が不適切か、または複雑になり過ぎる可能性のあるアプリケーションもあります。このような理由により、また互換性を強化するために、GVFSFUSE (Filesin Userspace)デーモンを提供します。このデーモンは、標準の POSIX (Portable Operating System Interface)アクセスのマウントを介してアクティブなマウントを公開します。このデーモンは、受信要求を透過的に変換して、アプリケーションのローカルファイルシステムを模倣します。
重要
異なる設計による変換は、100% の機能互換性がなく、アプリケーションと GVFS バックエンドの特定の組み合わせで問題が発生する可能性があります。
FUSE デーモンは GVFS マスターデーモンで自動的に起動し、そのマウントはフォールバックとして /run/user/UID/gvfs または ~/.gvfs ファイルに配置します。手動参照は、GVFS マウントごとに個別のディレクトリーがあることを示しています。非ネイティブアプリケーションで GVFS の場所からドキュメントを開く場合、変換されたパスが引数として渡されます。ネイティブ GIO アプリケーションの場合、このパスをネイティブの URI に自動的に変換し直すことに注意してください。

15.7. GVFS マウントのパスワード管理

通常の GVFS マウントは、リソースが匿名認証を許可するか、または全く必要としない限り、アクティブ化時に認証情報を要求します。標準の GTK+ ダイアログに表示されるため、ユーザーはパスワードを保存するかどうかを選択することができます。

手順15.5 例: 認証されたマウントプロセス

  1. Files を開き、Ctrl+L を押してアドレスバーをアクティブにします。
  2. 認証が必要なサービスの整形式の URI 文字列を入力します(例: sftp://localhost/)。
  3. 認証情報ダイアログが表示され、ユーザー名、パスワードおよびパスワード保存オプションが尋ねられます。
  4. 認証情報を入力し、確認します。
永続的な保管が選択される場合、パスワードはユーザーのキーリングに保存されます。GNOME キーリング は、シークレットストレージの中心的な場所です。これは、ログイン時にデフォルトで提供されるパスワードを使用してデスクトップのセッション開始時に暗号化され、自動的にロック解除されます。これが異なるパスワードで保護される場合、パスワードは初回の使用時に設定されます。
保存されたパスワードと GNOME キーリング 自体を管理するために、Seahorse アプリケーションが提供されます。このアプリケーションでは、個々のレコードを削除したり、パスワードを変更したりすることができます。Seahorse の詳細は、デスクトップに直接組み込まれた Seahorse のヘルプマニュアルを参照してください。

15.8. GNOME における GVFS ツールおよび xdg-utils

GVFS には、スクリプト作成やテストに役立つ可能性のあるいくつかのコマンドが付属しています。POSIX コマンドに相当するコマンドのセットが提供されます。
  • gvfs-cat
  • gvfs-less
  • gvfs-mkdir
  • gvfs-mount
  • gvfs-rename
  • gvfs-set-attribute
  • gvfs-copy
  • gvfs-ls
  • gvfs-move
  • gvfs-rm
  • gvfs-trash
  • gvfs-info
  • gvfs-save
  • gvfs-tree
さらに、GVFS 固有の制御を強化するために、追加のコマンドが提供されます。
  • gvfs-monitor-dir
  • gvfs-monitor-file
  • gvfs-mime
  • gvfs-open
これらのコマンドはすべてネイティブの GIO クライアントであり、フォールバック FUSE デーモンを実行する必要はありません。この目的は、POSIX コマンドのドロップイン置換ではなく、実際にはスイッチの範囲はほとんどサポートされていません。基本的な形態として、URI 文字列 (ローカルパスの代わり) が引数として取られます。
これにより、xdg-tools (freedesktop.org 相互運用性プロジェクト)内で GNOME が適切にサポートされるようになります。たとえば、一般的に使用される xdg-open は、実行中の GNOME セッションが検出されると gvfs-open を実際に呼び出し、正しい場所からファイルタイプの関連付けを読み取ります。
以下は、GVFS コマンドのいくつかの使用例です。
  • ローカルファイルシステムの /tmp にあるすべてのファイルを一覧表示するには、次のコマンドを実行します。
      $ gvfs-ls file:///tmp
  • 以下のコマンドは、リモートマシンからテキストファイルの内容をリスト表示します。
      $ gvfs-cat ssh://joe@ftp.myserver.net/home/joe/todo.txt
  • 参照されたテキストファイルをローカルの /tmp ディレクトリーにコピーするには、以下を実行します。
      $ gvfs-copy ssh://joe@ftp.myserver.net/home/joe/todo.txt /tmp/
注記
ユーザーの利便性のために、bash 補完は パッケージの一部として提供されます。

15.9. GVFS メタデータの使用

GVFS には、特定のファイルにバインドされる単純なキー/値のペア情報のセットとして実装されているメタデータストレージがあります。そのため、アイコンの位置、最後に再生された場所、ドキュメントの場所、メール、メモなど、ランタイム情報用に設計された小規模なデータを保存するためのユーザーまたはアプリケーション用のツールがあります。
ファイルまたはディレクトリーが移動される際は常に、メタデータも適宜移動するため、メタデータはそれぞれのファイルに接続されたままの状態になります。GVFS はすべてのメタデータをプライベートに保存するため、これはマシン上でのみ利用可能になります。ただし、GVFS マウントおよびリムーバブルメディアも追跡されます。
注記
リムーバブルメディアは、/media ディレクトリーではなく、/run/media/ にマウントされるようになりました。
メタデータを表示し、操作するには、以下いずれかを使用します。
  • gvfs-info コマンド
  • gvfs-set-attribute コマンド
  • その他ネイティブ GIO で属性を使用する方法。
以下の例では、カスタムメタデータ属性が設定されています。特定の gvfs-info 呼び出しと、移動または名前変更後のデータの永続性の違いに注意してください( gvfs-info コマンドの出力に注意してください)。

例15.5 カスタムメタデータ属性の設定

$ touch /tmp/myfile
$ gvfs-info -a 'metadata::*' /tmp/myfile
attributes:
$ gvfs-set-attribute -t string /tmp/myfile 'metadata::mynote' 'Please remember to delete this file!'
$ gvfs-info -a 'metadata::*' /tmp/myfile
attributes:
  metadata::mynote: Please remember to delete this file!
$ gvfs-move /tmp/myfile /tmp/newfile
$ gvfs-info -a 'metadata::*' /tmp/newfile
attributes:
  metadata::mynote: Please remember to delete this file!

15.10. トラブルシューティング

15.10.1. アクティブな VFS マウントが表示されない

アクティブな VFS マウントが表示されない場合、これはアプリケーションがネイティブ GIO クライアントではないことを意味しています。通常、ネイティブ GIO クライアントは GNOME ライブラリー (glib、gio) を使用するすべての GNOME アプリケーションです。サービス gvfs-fuse は、GIO 以外のクライアントのフォールバックとして提供されます。
アクティブだが表示できない VFS マウントの原因を特定するには、gvfs-fuse プロセスが実行されているかどうかを確認します。gvfs-fuse は自動的に実行されるため、最初にログアウトしてログインすることは推奨されていません。
または、VFS 互換性マウントを端末で手動で起動します。
  1. id コマンドを実行して、/run/user/ UID /gvfs/ パスのUID(システムユーザー ID)を検索します( gvfsd-fuse デーモンには、サービスを公開することになっているパスが必要です)。
    または、/run/user/UID/gvfs/ パスが利用できない場合に、gvfsd-fuse はホームディレクトリーの .gvfs パスを使用します。
  2. /usr/libexec/ gvfsd-fuse -f /run/user/UID/gvfs コマンドを実行して、gvfsd-fuse デーモンを起動します。
  3. これで VFS マウントが利用可能になり、アプリケーション内でパスを手動で参照することができます。

15.10.2. 接続されている USB デバイスが表示されない

特定の状況では、フラッシュドライブに接続する際に、GNOME デスクトップがこれを表示しない場合があります。ドライブが非表示である場合は、以下を意味します。
  • Disks アプリケーションでデバイスを表示できません。
  • udisks デーモンの現在の状態を一覧表示する udisksctl dump コマンドを実行し、すべてのオブジェクトに関する情報を表示しますが、フラッシュドライブはその中に含まれていない。
  • dmesg コマンドを実行している。ログの末尾には USB デバイスの検出に関連するメッセージと検出されたパーティションのリストがあるが、フラッシュドライブはその中に含まれていない。
フラッシュドライブが表示されない場合は、DisksShow in user interface フラグを設定してみてください。
  1. Super キーを押してアクティビティーの 概要に入りDisks と入力してから Enter を押して、Disks を開きます。
  2. Volumes アクションメニューで、Edit Mount Options... をクリックします。
  3. Show in user interface をクリックします。
  4. OK をクリックして確定します。
フラッシュドライブがまだ表示されない場合は、ドライブを削除してから再度接続することを試行します。
ストレージの詳細は、ストレージ 管理ガイド を参照してください

15.10.3. Nautilus が不明または不要なパーティションを表示する

デバイスはデフォルトでユーザーインターフェイスに表示されないため、デバイスが /etc/fstab ファイルに一覧表示されているかどうかを確認します。/etc/fstab ファイルは通常、オペレーティングシステムで使用することが意図されているディスクパーティションを一覧表示し、それらがマウントされる方法を示します。特定のマウントオプションによって、ボリュームをユーザーインターフェイスに表示したり、または表示しないようにすることができます。
ボリュームを非表示にするソリューションの 1 つは、Disks アプリケーションの Mount Options ウィンドウ で ユーザーインターフェイスで Show の選択を解除することです。
  1. Super キーを押してアクティビティーの 概要に入りDisks と入力してから Enter を押して、Disks を開きます。
  2. Volumes アクションメニューで、Edit Mount Options... をクリックします。
  3. Show in user interface の選択を解除し、OK をクリックして確認します。

15.10.4. リモートファイルシステムへの接続が使用できない

クライアントの接続が仮想ファイルシステム (またはリモートディスク) のマウントから予期せずに切断され、その後に自動的に再接続されないためにエラーメッセージが返されるという状況が数多くあります。これらの状況を引き起こすいくつかの原因には以下が含まれます。
  • 接続が割り込まれる (たとえば、ラップトップが Wi-Fi 接続から切断される)。
  • ユーザーが一定の期間非アクティブになり、サーバーによって接続が切断される (アイドルタイムアウト)。
  • コンピューターがスリープモードから再起動する。
解決策としては、ファイルシステムのアンマウントおよびマウントを実行し、リソースに再接続してみることができます。
注記
接続をより頻繁に無効にする必要がある場合は、GNOME 設定 の ネットワーク パネルで設定を確認し ます

15.10.5. ディスクが使用中の場合はどうすればよいか

ディスクがビジーであるという通知を受け取った場合は、ディスクにアクセスしているプログラムを特定します。その後、実行中のプログラムを通常の方法で終了することができます。または、システムモニター を使用してプログラムを強制終了することもできます。

システムのプロセスを表示する場所と表示方法

  • lsof コマンドを実行して、プロセスと共に開いているファイルの一覧を取得します。lsof が利用できない場合は、実行中のプロセスの一覧を提供する ps ax コマンドを実行します。
  • または、System Monitor アプリケーションを使用して、GUI で実行中のプロセスを表示できます。
  • 以下のコマンドを実行して iotop をインストールしていることを確認します。
    # yum install iotop
    次に、root として iotop を実行して、システムプロセスを表示します。
プログラムを決定したら、以下のようにプログラムを終了または強制終了します。
  • コマンドラインで kill コマンドを実行します。
  • System Monitor で、プログラムのプロセス名のある行を右クリックし、プロセスの終了 または 強制 終了 ドロップダウンメニュー項目をクリックします。

第16章 ハードウェアの設定

16.1. タブレット

16.1.1. 新規タブレット向けサポートの追加

libwacom は、Wacom モデルに関するデータを保存するタブレット情報クライアントライブラリーです。このライブラリーは、GNOME の gnome-settings-daemon コンポーネントと Wacom Tablet 設定パネルの両方で使用されます。
新規タブレットのサポートを libwacom に追加するには、新しいタブレット定義ファイルを作成する必要があります。タブレット定義ファイルは libwacom-data パッケージに含まれています。このパッケージがインストールされた場合には、タブレット定義ファイルが /usr/share/libwacom/ ディレクトリーでローカルで利用できます。
画面のマッピングを正しく使用するには、タブレットのサポートを libwacom データベースおよび udev ルールファイルに含める必要があります。
重要
デバイスが libwacom でサポートされていない一般的なインジケーターは、GNOME セッションでは正常に機能しても、デバイスは画面に正しくマッピングされていないことを示しています。

手順16.1 タブレット記述の追加

  1. libwacom-list-local-devices ツールを使用して、libwacom が認識するすべてのローカルデバイスを一覧表示します。
    デバイスが一覧にないが、カーネルのイベントデバイス( /proc/bus/input/devicesを参照)および X セッション(xinput 一覧を参照)として利用可能な場合、デバイスは libwacom のデータベースにありません。
  2. 新規のタブレット定義ファイルを作成します。以下の data/wacom.example を使用して必要な行を編集します。
    注記
    新規の .tablet ファイルはすでに利用可能な場合があるので、まずアップストリームのリポジトリー https://sourceforge.net/p/linuxwacom/libwacom/ci/master/tree/ を確認してください。お使いのタブレットモデルがリストにある場合は、そのファイルをローカルマシンにコピーすれば十分です。
    # Example model file description for a tablet
    [Device]
    
    # The product is the product name announced by the kernel
    Product=Intuos 4 WL 6x9
    
    # Vendor name of this tablet
    Vendor=Wacom
    
    # DeviceMatch includes the bus (usb, serial), the vendor ID and the actual
    # product ID 
    DeviceMatch=usb:056a:00bc
    
    # Class of the tablet. Valid classes include Intuos3, Intuos4, Graphire, Bamboo, Cintiq
    Class=Intuos4
    
    # Exact model of the tablet, not including the size.
    Model=Intuos 4 Wireless
    
    # Width in inches, as advertised by the manufacturer
    Width=9
    
    # Height in inches, as advertised by the manufacturer
    Height=6
    
    # Optional features that this tablet supports
    # Some features are dependent on the actual tool used, e.g. not all styli
    # have an eraser and some styli have additional custom axes (e.g. the
    # airbrush pen). These features describe those available on the tablet.
    #
    # Features not set in a file default to false/0
    
    [Features]
    # This tablet supports styli (and erasers, if present on the actual stylus)
    Stylus=true
    
    # This tablet supports touch.
    Touch=false
    
    # This tablet has a touch ring (Intuos4 and Cintiq 24HD)
    Ring=true
    # This tablet has a second touch ring (Cintiq 24HD)
    Ring2=false
    
    # This tablet has a vertical/horizontal scroll strip
    VStrip=false
    HStrip=false
    
    # Number of buttons on the tablet
    Buttons=9
    
    # This tablet is built-in (most serial tablets, Cintiqs) 
    BuiltIn=false
  3. .tablet の接尾辞を付けて新規ファイルを追加、インストールします。
    cp the-new-file.tablet /usr/share/libwacom/
    インストールが完了すると、タブレットは libwacom のデータベースの一部になります。このタブレットは libwacom-list-local-devices で利用可能になります。
  4. 新規ファイル /etc/udev/rules/99-libwacom-override.rules を以下の内容で作成し、設定が上書きされないようにします。
    ACTION!="add|change", GOTO="libwacom_end"
    KERNEL!="event[0-9]*", GOTO="libwacom_end"
    
    [new tablet match entries go here]
    
    LABEL="libwacom_end"
    
  5. システムを再起動します。

16.1.2. ワコムタブレット設定の保存場所

Wacom タブレットの設定は、/org/gnome/settings-daemon/peripherals/wacom/machine-id-device-id キーの GSettings に保存されます。machine-id は D-Bus マシン ID で、device-id はタブレットデバイス ID です。タブレットの設定スキーマは org.gnome.settings-daemon.peripherals.wacom です。
同様に、スタイラス設定は /org/gnome/settings-daemon/peripherals/wacom/device-id/tool-id キーに保存されます。tool-id は、プロフェッショナルで使用されるスタイラスの識別子です。tool-id に対応しないコンシューマーでは、代わりに汎用識別子が使用されます。スタイラスの設定スキーマは org.gnome.settings-daemon.peripherals.wacom.stylus で、イレーサー org.gnome.settings-daemon.peripherals.wacom.eraser 用です。
特定のマシンで使用されるタブレット設定パスの詳細一覧を取得するには、gnome-settings-daemon-devel パッケージが提供する gsd-list-wacom ツールを使用できます。
gnome-settings-daemon-devel パッケージがシステムにインストールされていることを確認するには、システムが Optional チャンネルにサブスクライブしていることを確認してから以下のコマンドを実行します。
# yum install gnome-settings-daemon-devel
システムを Optional チャネルにサブスクライブする方法については、以下のリソースを参照してください。
パッケージがインストールされていることを確認した後に、以下のコマンドを実行します。
$ /usr/libexec/gsd-list-wacom
設定パスで machine-iddevice-id、および tool-id を使用すると、マシンごとに別個のタブレット設定を持つ共有ホームディレクトリーの使用が可能になります。

16.1.3. マシン間でホームディレクトリーを共有する際にワコムの設定は 1 台のマシンのみに適用される

この理由は、ワコムタブレットの D-Bus マシン ID (machine-id) がタブレット設定を保存する /org/gnome/settings-daemon/peripherals/wacom/machine-id-device-id GSettings キーの設定パスに組み込まれているためです。

付録A KDE Plasma ワークスペース

デフォルトの GNOME デスクトップ環境の代替として、Red Hat Enterprise Linux 7 は KDE Plasma ワークスペースのバージョン 4 (以前は K デスクトップ環境)を提供し、異なる作業スタイルや設定と一致するようにしています。
インストールプロセス中に KDE Plasma Workspaces をデフォルトのデスクトップとして設定するか、現在のデスクトップ環境を KDE Plasma Workspaces に変更する方法については、Red Hat Enterprise Linux 7 インストールガイド を参照してください。KDE Plasma Workspaces の詳細は、や などのアップストリームの Web サイトを参照し https://docs.kde.org/https://www.kde.org/ ください。

付録B Red Hat ドキュメントへのアクセス

B.1. 製品ドキュメント

https://access.redhat.com/site/documentation/ にある Red Hat 製品ドキュメント は一元的な情報源です。ドキュメントは現在 22 言語で翻訳されており、リリースノート、テクニカルノートからインストールガイド、ユーザーガイドおよびリファレンスガイドまでの各種の文書が HTML、PDF、および EPUB 形式で提供されています。
以下は、本書に直接的または間接的に関連するドキュメントの簡潔なリストです。

B.2. Red Hat Access GUI

もう 1 つの推奨情報源として、デスクトップアプリケーションの Red Hat Access GUI があります。Red Hat ナレッジベース、リソース、および機能を使用して、ヘルプ、回答、診断サービスを利用できます。Red Hat カスタマーポータル でアクティブなアカウントをお持ちの場合は、ナレッジベースをキーワードで簡単に検索して追加情報およびヒントにアクセスできます。GNOME デスクトップをインストールすることを選択した場合は、Red Hat Access GUI はすでにインストールされています。
このツールの利点、インストールおよび使用方法については、Red Hat Access GUI を参照してください。

付録C 謝辞

このテキストの一部は、GNOME Desktop System Administration Guideに最初に登場しました (Copyright © 2014 The GNOME Project, Michael Hill, Jim Campbell, Jeremy Bicha, Ekaterina Gerasimova, minnie_eg, Aruna Sankaranarayanan, Sindhu S, Shobha Tyagi, Shaun McCance, David King, and others)。ライセンスはCreative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported Licenseです。
Red Hat Enterprise Linux 7 デスクトップ移行および管理ガイド』の編集チームは、GNOME コミュニティーのメンバーの皆様に対し、『GNOME デスクトップシステム管理ガイド』 への貴重な寄稿に謝意を表します。

付録D 改訂履歴

改訂履歴
改訂 0.1-95Mon Aug 05 2018Marie Doleželová
7.7 GA 公開用バージョン
改訂 0.1-87Wed Jul 26 2017Jana Heves
7.4 GA 公開用バージョン
改訂 0.1-86Mon Oct 17 2016Marie Doleželová
7.3 GA リリースのバージョン
改訂 0.1-85Mon Oct 17 2016Marie Doleželová
7.3 GA リリースのバージョン
改訂 0.1-84Wed 17 Aug 2016Marie Doleželová
Red Hat Enterprise Linux 7.3 Beta リリース用のガイド。
改訂 0.1-83Fri 01 Apr 2016Jana Heves
GNOME のバージョン 3.14 へのリベースを反映して再発行。
改訂 0.1-82Wed 11 Nov 2015Jana Heves
Red Hat Enterprise Linux 7.2 向けリリース用のガイド。
改訂 0.1-80Wed 24 Jun 2015Petr Kovář
Red Hat Enterprise Linux 7 の Anaconda Customization Guide へのリンクを追加。
改訂 0.1-78Tue 07 Apr 2015Petr Kovář
オンラインアカウントの有効化および無効化』 のセクションを追加。
改訂 0.1-76Tue 17 Feb 2015Petr Kovář
Red Hat Enterprise Linux 7.1 リリース用のガイド。
改訂 0.1-74Thu 04 Dec 2014Petr Kovář
Red Hat Enterprise Linux 7.1 Beta リリース用のガイド。
改訂 0.1-69Mon 02 Jun 2014Petr Kovář
Red Hat Enterprise Linux 7.0 リリース用のガイド。
改訂 0.1-35Wed 11 Dec 2013Petr Kovář
Red Hat Enterprise Linux 7.0 Beta リリース用のガイド。

法律上の通知

Copyright © 2018 Red Hat, Inc.
This document is licensed by Red Hat under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License.If you distribute this document, or a modified version of it, you must provide attribution to Red Hat, Inc. and provide a link to the original.If the document is modified, all Red Hat trademarks must be removed.
Red Hat, as the licensor of this document, waives the right to enforce, and agrees not to assert, Section 4d of CC-BY-SA to the fullest extent permitted by applicable law.
Red Hat, Red Hat Enterprise Linux, the Shadowman logo, the Red Hat logo, JBoss, OpenShift, Fedora, the Infinity logo, and RHCE are trademarks of Red Hat, Inc., registered in the United States and other countries.
Linux® is the registered trademark of Linus Torvalds in the United States and other countries.
Java® is a registered trademark of Oracle and/or its affiliates.
XFS® is a trademark of Silicon Graphics International Corp. or its subsidiaries in the United States and/or other countries.
MySQL® is a registered trademark of MySQL AB in the United States, the European Union and other countries.
Node.js® is an official trademark of Joyent.Red Hat is not formally related to or endorsed by the official Joyent Node.js open source or commercial project.
The OpenStack® Word Mark and OpenStack logo are either registered trademarks/service marks or trademarks/service marks of the OpenStack Foundation, in the United States and other countries and are used with the OpenStack Foundation's permission.We are not affiliated with, endorsed or sponsored by the OpenStack Foundation, or the OpenStack community.
All other trademarks are the property of their respective owners.