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5.12. マルチレベルのセキュリティー (MLS)

マルチレベルのセキュリティー技術とは、Bell-La Padula Mandatory Access Model を強制するセキュリティースキームを指します。MLS では、ユーザーとプロセスは サブジェクト (subjects) と呼ばれ、ファイル、デバイス、システムのその他のパッシブコンポーネントは オブジェクト (objects) と呼ばれます。サブジェクトとオブジェクトの両方がセキュリティーレベルでラベル付けされ、これはサブジェクトのクリアランスとオブジェクトの分類を必要とします。各セキュリティーレベルは sensitivity (秘密度) category (カテゴリ) で構成されています。例えば、社内のリリーススケジュールは、社内ドキュメントカテゴリの部外秘の秘密度で保管されています。
図5.1「クリアランスレベル」 は、米国の国防コミュニティーが最初に設計したクリアランスレベルを示しています。上記の例の社内スケジュールに当てはめると、部外秘カテゴリのドキュメントを閲覧できるのは、部外秘クリアランスを獲得したユーザーのみとなります。しかし、部外秘クリアランスのみを持つユーザーは、より高いレベルのクリアランスを必要とするドキュメントの閲覧はできません。このようなユーザーは、より低いレベルのクリアランスのドキュメントには読み取り専用アクセスが許可され、より高いレベルのクリアランスのドキュメントには書き込みアクセスが許可されます。
クリアランスレベル

図5.1 クリアランスレベル

図5.2「MLS を使ったデータフローの許可」 は、「秘密」セキュリティーレベルで実行しているサブジェクトと異なるセキュリティーレベルのオブジェクト間で許可されるすべてのデータフローを示しています。簡潔に説明すると、Bell-LaPadula モデルは no read up (上方読み取りは不可) no write down (下方書き込みは不可) という 2 つの特性を強制します。
MLS を使ったデータフローの許可

図5.2 MLS を使ったデータフローの許可

5.12.1. MLS とシステム権限

MLS アクセスルールは、常に従来のアクセスパーミッション (ファイルパーミッション) と組み合わせて使われます。例えば、「秘密」のセキュリティーレベルを持つユーザーが任意アクセス制御 (DAC) を使って他のユーザーによるファイルへのアクセスを遮断すると、「最高秘密」のセキュリティーレベルをもつユーザーによるアクセスも遮断されます。SELinux の MLS ポリシールールは、DAC ルールの 後に チェックされることを覚えておくことが重要です。より高いセキュリティークリアランスが、任意にファイルシステムを閲覧する許可を自動的に与えるわけではありません。
トップレベルのクリアランスを持つユーザーは、マルチレベルシステム上で自動的に管理者権限を獲得するわけではありません。このようなユーザーは、コンピューター上の全情報へのアクセスがありますが、これは管理者権限とは別のものです。