Red Hat Training

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1.2.2. 水平方向のスケーラビリティ

Red Hat Enterprise Linux 6 のパフォーマンス改善は、スケーラビリティにフォーカスが置かれています。パフォーマンスを高める機能は主に、ワークロードの範囲において異なるエリアでプラットホームのパフォーマンスに与える影響を基に評価されています。つまり、孤立した Web サーバーからサーバーファームのメインフレームにいたるまでです。
スケーラビリティにフォーカスすることで、Red Hat Enterprise Linux は異なるタイプのワークロードや目的に適した多様性を維持できます。同時に、ビジネスが拡大してワークロードが増えるのに合わせて、サーバー環境の再構築が (費用と工数の面で) 法外ではなく、より直感的なものになることを意味します。
Red Hat は、水平的スケーラビリティ垂直的スケーラビリティ の両方で Red Hat Enterprise Linux を改善してきました。しかし、水平的スケーラビリティのユースケースの方がより広く適用可能です。水平的スケーラビリティの考えの基となっているのは、複数の標準的コンピューター を使って高いワークロードを分散し、パフォーマンスと信頼性を高めるというものです。
通常のサーバーファームでは、これらの標準的コンピューターは、1U ラックマウント型サーバーおよびブレードサーバーになります。各標準的コンピューターはシンプルな 2 ソケットシステムの小型のものです。ただし、サーバーファームのなかには、ソケット数の多い大型システムを使用するものもあります。エンタープライズグレードのネットワークには大型と小型のシステムを組み合わせるものもあります。その場合は、大型システムは高パフォーマンスサーバー (例えばデータベースサーバー) で、小型システムは専用のアプリケーションサーバー (例えば Web もしくはメールサーバー) になります。
このタイプのスケーラビリティは、IT インフラストラクチャーの拡大をシンプルなものにします。適当なロードの中規模ビジネスでは、ピザボックスサーバー 2 台ですべてのニーズを満たすことも可能です。従業員数が増え、オペレーションを拡大し、売上高が増えるなどすると、IT 要件はボリュームも複雑性も増すことになります。水平的スケーラビリティを用いれば、既存マシンと (ほぼ) 同一設定のマシンを新たに導入するというシンプルなことが可能になります。
要約すると、水平的スケーラビリティはシステムハードウェア管理を簡素化する抽象化レイヤーを追加します。Red Hat Enterprise Linux プラットホームを水平方向に拡張するように開発することで、IT サービスの機能およびパフォーマンス向上は新しくかつ設定が容易なマシンを追加するという簡単なものになります。

1.2.2.1. パラレルコンピューティング

ユーザーが Red Hat Enterprise Linux の水平的スケーラビリティの利益が受けられるのは、システムハードウェア管理が簡素化されるという理由だけではありません。現行ハードウェアの発達トレンドに、水平的スケーラビリティの開発指針が適していることもその理由です。
以下の点を考えてみましょう。複雑なエンタープライズアプリケーションのほとんどでは同時実行の必要がある数千ものタスクがあり、これらタスク間の連携方法は異なります。以前のコンピューターではこれらのタスクの処理にシングルコアのプロセッサーを使用していましたが、現在は利用可能なプロセッサーのほとんどがマルチコアです。実質的には現代のコンピューターは、マルチコアを 1 つのソケットに置いて、シングルソケットのデスクトップやラップトップをマルチプロセッサーのシステムにしています。
2010 年には、標準的な Intel および AMD のプロセッサーは 2-16 コアでした。これらのプロセッサーはピザボックスおよびブレードサーバーでは一般的になっており、今では最大 40 コアも格納可能です。これら低コストで高パフォーマンスのシステムは、大型システムの機能と特徴をメインストリームにもたらしています。
システムのパフォーマンスと使用率を最高のものにするには、各コアが常に稼働している必要があります。つまり、32 コアのブレードサーバーをフル活用するには、32 の個別のタスクを実行する必要があります。1 つのブレードシャーシにこのような 32 コアのブレードが 10 台収まると、全体の構成では最低 320 のタスクが同時処理できることになります。これらのタスクが 1 つのジョブの一部であれば、これらは連携する必要があります。
Red Hat Enterprise Linux は、ハードウェアの開発トレンドにうまく適応し、そのようなトレンドからビジネスが恩恵を十分に得られるように開発されました。「分散システム」 では、 Red Hat Enterprise Linux の水平的スケーラビリティを可能にしている技術を詳細にわたって説明しています。