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5.3. IdM クライアントとしての Linux システムの設定

Red Hat Enterprise Linux クライアントのクライアント設定プロセスを開始する前に、準備する要素が 2 つあります。
  • Kerberos ID (管理ユーザー) を利用できるようにするか、クライアントマシンの登録プロセスを開始する前に、ワンタイムパスワードを使用してクライアントマシンをサーバーのクライアントマシンに手動で追加し、クライアントマシンを Kerberos ドメインに接続する手段を設定する必要があります。
  • DNS レコードにサービスを提供するネットワーク上に Active Directory サーバーがある場合には、Active Directory の DNS レコードが原因で、クライアントによる IdM サーバーアドレスの自動検出ができなくなる可能性があります。ipa-client-install スクリプトでは、IdM に追加されたレコードの代わりに Active Directory の DNS レコードを取得します。
    この場合は、IdM サーバーアドレスを ipa-client-install スクリプトに直接指定する必要があります。

5.3.1. クライアントのインストール (完全な例)

  1. クライアントパッケージをインストールします。このパッケージは、システムをクライアントとして簡単に設定でき、SSSD のインストールや設定も行います。
    通常のユーザーシステムの場合には、ipa-client パッケージのみが必要です。
    [root@client ~]# yum install ipa-client
    管理者マシンには、ipa-admintools パッケージも必要です。
    [root@client ~]# yum install ipa-client ipa-admintools
  2. IdM サーバーを DNS サーバーとして設定し、クライアントと同じドメインに配置した場合には、クライアントの /etc/resolv.conf ファイルにあるネームサーバー一覧の最初のエントリーとして、サーバーの IP アドレスを追加します。
    ヒント
    ドメイン内のマシンがすべて IdM クライアントである場合は、IdM サーバーのアドレスを DHCP 設定に追加します。
  3. クライアントの設定コマンドを実行します。
    [root@client ~]# ipa-client-install --enable-dns-updates
    --enable-dns-updates オプションを使用すると、クライアントマシンの IP アドレスに DNS が更新されます。このオプションは、IdM サーバーが統合 DNS でインストールされている場合か、ネットワーク上の DNS サーバーで GSS-TSIG プロトコルを使用して DNS エントリーを更新できる場合にのみ、使用するようにしてください。
    ipa-client-install のオプションは、ipa-client-install の man ページに一覧表示されています。
  4. プロンプトが表示されたら、IdM DNS ドメインのドメイン名を入力します。
    DNS discovery failed to determine your DNS domain
    Please provide the domain name of your IPA server (ex: example.com): example.com
  5. プロンプトが表示されたら、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名を入力します。または、クライアントのインストールスクリプトに --server オプションを使用して、IdM サーバーの完全修飾ドメイン名を指定します。
    DNS discovery failed to find the IPA Server
    Please provide your IPA server name (ex: ipa.example.com): server.example.com
    重要
    これは、数字、アルファベット文字、およびハイフン (-) のみが使用された有効な DNS 名でなければなりません。ホスト名にアンダースコアなどの他の文字が含まれていると、DNS が正常に機能しなくなります。
  6. 次にクライアントのスクリプトは、Kerberos ID を入力するようにプロンプトを表示し、その ID を使用して問い合わせを行い、Kerberos レルムに参加します。これらの認証情報を指定すると、クライアントは IdM Kerberos ドメインに参加して設定を完了できます。
    Continue to configure the system with these values? [no]: y 
    User authorized to enroll computers: admin 
    Synchronizing time with KDC... 
    Password for admin@EXAMPLE.COM: 
    Successfully retrieved CA cert 
    Subject: CN=Certificate Authority,O=EXAMPLE.COM 
    Issuer: CN=Certificate Authority,O=EXAMPLE.COM 
    Valid From: Tue Aug 13 09:29:07 2013 UTC 
    Valid Until: Sat Aug 13 09:29:07 2033 UTC 
    Enrolled in IPA realm EXAMPLE.COM 
    Created /etc/ipa/default.conf 
    New SSSD config will be created 
    Configured /etc/sssd/sssd.conf 
    Configured /etc/krb5.conf for IPA realm EXAMPLE.COM 
    Failed to update DNS records. 
    Adding SSH public key from /etc/ssh/ssh_host_rsa_key.pub 
    Adding SSH public key from /etc/ssh/ssh_host_dsa_key.pub 
    Could not update DNS SSHFP records. 
    SSSD enabled 
    Configured /etc/openldap/ldap.conf 
    NTP enabled 
    Configured /etc/ssh/ssh_config 
    Configured /etc/ssh/sshd_config 
    Client configuration complete.
  7. クライアントが IdM ドメインに正常に接続でき、基本的なタスクを実行できることをテストします。たとえば、IdM ツールを使用して、ユーザーおよびグループ情報を取得できることを確認します。
    [jsmith@client ~]$ id
    [jsmith@client ~]$ getent passwd admin
    [jsmith@client ~]$ getent group admins
  8. NFS サーバーがすでに設定されている場合は、クライアントシステムに NFS を設定して Kerberos と連携させます。
    NFS サーバーは、ドメイン内に設定しておく必要があります。詳細は、「自動マウントの設定」を参照してください。
    ヒント
    NFS の設定時に発生する可能性のあるエラーをトラブルシューティングできるように、/etc/sysconfig/nfs ファイルでデバッグ情報を有効にします。
    RPCGSSDARGS="-vvv"
    RPCSVCGSSDARGS="-vvv"
    1. IdM サーバーで、NFS クライアントの NFS サービスプリンシパルを追加します。
      [root@client ~]# kinit admin
      [root@client ~]# ipa service-add nfs/ipaclient.example.com@EXAMPLE
      注記
      これは、ipa コマンドを使用できるように、ipa-admintools パッケージがインストールされているマシンから実行する必要があります。
    2. IdM サーバーで、NFS サービスプリンシパルの keytab を取得します。
      [root@client ~]# ipa-getkeytab -s server.example.com -p nfs/ipaclient.example.com@EXAMPLE -k /tmp/krb5.keytab
    3. IdM サーバーから IdM クライアントに keytab をコピーします。たとえば、以下のようになります。
      [root@client ~]# scp /tmp/krb5.keytab root@client.example.com:/etc/krb5.keytab
    4. NFS サーバーで /etc/exports ファイルを設定します。
      /ipashare       gss/krb5p(rw,no_root_squash,subtree_check,fsid=0)
    5. マウントポイントを作成します。
      [root@client ~]# mkdir /mnt/ipashare
    6. クライアントで NFS 共有をマウントします。-o sec 設定は、NFS サーバーの /etc/exports ファイルで使用する設定と同じものを使用します。
      [root@client ~]# mount -v -t nfs4 -o sec=krb5p nfs.example.com:/ /mnt/ipashare