4.7.3. ルールユニットのアイデンティティーの競合

保護されたルールユニットを使用したルール実行のシナリオでは、1 つのルールが複数のルールユニットを保護することができます。同時に、複数のルールが 1 つのルールユニットを保護してから有効にすることもできます。このような 2 通りの保護シナリオでは、ルールユニットには、アイデンティティーの競合を避けるための明確に定義されたアイデンティティーが必要です。

デフォルトでは、ルールユニットのアイデンティティーはルールユニットクラス名で、RuleUnitExecutor によりシングルトンクラスとして処理されます。この識別動作は、RuleUnit インターフェイスの getUnitIdentity() のデフォルトメソッドにエンコードされています。

RuleUnit インターフェイスのデフォルトのアイデンティティーメソッド

default Identity getUnitIdentity() {
    return new Identity( getClass() );
}

場合によっては、ルールユニット間のアイデンティティーの競合を避けるために、このデフォルトの識別動作をオーバーライドする必要があります。

たとえば、以下の RuleUnit クラスには、あらゆる種類のオブジェクトを許可する DataSource 定義が含まれています。

Unit0 ルールユニットクラスの例

public class Unit0 implements RuleUnit {
    private DataSource<Object> input;

    public DataSource<Object> getInput() {
        return input;
    }
}

このルールユニットには、2 つの条件 (OOPath 表記) に基づいて別のルールユニットを保護する、以下の DRL ルールが含まれています。

ルールユニットの DRL ルール GuardAgeCheck の例

package org.mypackage.myunit
unit Unit0

rule GuardAgeCheck
  when
    $i: /input#Integer
    $s: /input#String
  then
    drools.guard( new AgeCheckUnit($i) );
    drools.guard( new AgeCheckUnit($s.length()) );
end

保護された AgeCheckUnit ルールユニットは、一連の persons の年齢を検証します。AgeCheckUnit には、確認用の personsDataSource の定義、検証用の minAge 変数、および結果を集計する List が含まれます。

AgeCheckUnit ルールユニットの例

public class AgeCheckUnit implements RuleUnit {
    private final int minAge;
    private DataSource<Person> persons;
    private List<String> results;

    public AgeCheckUnit( int minAge ) {
        this.minAge = minAge;
    }

    public DataSource<Person> getPersons() {
        return persons;
    }

    public int getMinAge() {
        return minAge;
    }

    public List<String> getResults() {
        return results;
    }
}

AgeCheckUnit ルールユニットには、データソースの persons の検証を実行する以下の DRL ルールが含まれます。

ルールユニットの DRL ルール CheckAge の例

package org.mypackage.myunit
unit AgeCheckUnit

rule CheckAge
  when
    $p : /persons{ age > minAge }
  then
    results.add($p.getName() + ">" + minAge);
end

この例では、RuleUnitExecutor クラスを作成し、これらの 2 つのルールユニットが含まれる KIE ベースにクラスをバインドして、同じルールユニットの DataSource 定義を 2 つ作成します。

executor 定義とデータソース定義の例

RuleUnitExecutor executor = RuleUnitExecutor.create().bind( kbase );

DataSource<Object> input = executor.newDataSource( "input" );
DataSource<Person> persons = executor.newDataSource( "persons",
                                                     new Person( "John", 42 ),
                                                     new Person( "Sally", 4 ) );

List<String> results = new ArrayList<>();
executor.bindVariable( "results", results );

一部のオブジェクトを入力データソースに挿入し、Unit0 ルールユニットを実行できるようになりました。

挿入されたオブジェクトを使用したルールユニット実行の例

ds.insert("test");
ds.insert(3);
ds.insert(4);
executor.run(Unit0.class);

実行結果一覧の例

[Sally>3, John>3]

この例では、AgeCheckUnit という名前のルールユニットはシングルトンクラスと見なされ、1 回のみ実行されます。この時、minAge 変数は 3 に設定されます。入力データソースに挿入された文字列 "test" および整数 4 の両方は、minAge 変数が 4 に設定された 2 回目の実行をトリガーする可能性もあります。しかし、同じアイデンティティーを持つ別のルールユニットがすでに評価されているため、2 回目の実行はありません。

このルールユニットのアイデンティティーの競合を解決するには、AgeCheckUnit クラスの getUnitIdentity() メソッドをオーバーライドして、ルールユニットアイデンティティーに minAge 変数も含めます。

getUnitIdentity() メソッドをオーバーライドする変更された AgeCheckUnit ルールユニット

public class AgeCheckUnit implements RuleUnit {

    ...

    @Override
    public Identity getUnitIdentity() {
        return new Identity(getClass(), minAge);
    }
}

このオーバーライドにより、以前のルールユニットの実行例は、以下の出力を生成します。

変更したルールユニットの実行結果一覧の例

[John>4, Sally>3, John>3]

minAge34 に設定されたルールユニットは、2 つの異なるルールユニットとみなされるようになり、両方とも実行されます。