9.5. 移行コントローラーオプション

移行計画の制限を編集したり、永続ボリュームのサイズ変更を有効にしたり、大規模な移行およびパフォーマンスを向上させる MigrationController カスタムリソース (CR) でキャッシュされた Kubernetes クライアントを有効にすることもできます。

9.5.1. 大規模な移行についての制限の引き上げ

MTC (Migration Toolkit for Containers) を使用した大規模な移行の場合には、移行オブジェクトおよびコンテナーリソースで制限を引き上げることができます。

重要

実稼働環境で移行を実行する前に、これらの変更をテストする必要があります。

手順

  1. MigrationController カスタムリソース (CR) マニフェストを編集します。

    $ oc edit migrationcontroller -n openshift-migration
  2. 以下のパラメーターを更新します。

    ...
    mig_controller_limits_cpu: "1" 1
    mig_controller_limits_memory: "10Gi" 2
    ...
    mig_controller_requests_cpu: "100m" 3
    mig_controller_requests_memory: "350Mi" 4
    ...
    mig_pv_limit: 100 5
    mig_pod_limit: 100 6
    mig_namespace_limit: 10 7
    ...
    1
    MigrationController CR で利用可能な CPU の数を指定します。
    2
    MigrationController CR で利用可能なメモリー量を指定します。
    3
    MigrationController CR 要求で利用可能な CPU ユニットの数を指定します。100m は 0.1 CPU ユニット (100 * 1e-3) を表します。
    4
    MigrationController CR 要求で利用可能なメモリーの量を指定します。
    5
    移行可能な永続ボリュームの数を指定します。
    6
    移行可能な Pod の数を指定します。
    7
    移行可能な namespace の数を指定します。
  3. 更新されたパラメーターを使用して変更を検証する移行計画を作成します。

    移行計画が MigrationController CR の制限を超える場合、MTC コンソールには移行計画を保存する際に警告メッセージが表示されます。

9.5.2. ボリュームの直接移行での永続ボリュームサイズ変更の有効化

ボリュームの直接移行用に永続ボリューム (PV) のサイズ変更を有効にして、宛先クラスターでディスク領域が不足しないようにします。

PV のディスク使用量が設定されたレベルに達すると、MigrationController カスタムリソース (CR) は永続ボリューム要求 (PVC) で必要なストレージ容量と実際のプロビジョニング容量とを比較します。次に、この CR は宛先クラスターに必要な領域を計算します。

pv_resizing_threshold パラメーターは、PV のサイズ変更が使用されるタイミングを決定します。デフォルトのしきい値は 3% です。つまり、PV のディスク使用量が 97% を超える場合に PV のサイズ変更が発生します。PV のサイズ変更はディスク使用量が低いレベルで実行されるように、このしきい値を引き上げることができます。

PVC の容量は以下の基準に従って計算されます。

  • PVC の要求されるストレージ容量 (spec.resources.requests.storage) が実際のプロビジョニングされた容量 (status.capacity.storage) と等しくない場合には、より大きい値が使用されます。
  • PV が PVC 経由でプロビジョニングされ、その後に変更されて PV および PVC の容量が一致しなくなった場合に、より大きい値が使用されます。

前提条件

  • PVC は、MigrationController CR がコマンドを実行できるように実行中の Pod 1 つ以上に割り当てる必要があります。

手順

  1. ホストクラスターにログインします。
  2. MigrationController CR のパッチを適用して PV のサイズ変更を有効にします。

    $ oc patch migrationcontroller migration-controller -p '{"spec":{"enable_dvm_pv_resizing":true}}' \ 1
      --type='merge' -n openshift-migration
    1
    PV のサイズ変更を無効にするには、値を false に設定します。
  3. 必要に応じて、pv_resizing_threshold パラメーターを更新して、しきい値を増やします。

    $ oc patch migrationcontroller migration-controller -p '{"spec":{"pv_resizing_threshold":41}}' \ 1
      --type='merge' -n openshift-migration
    1
    デフォルト値は 3 です。

    しきい値を超えると、以下のステータスメッセージが MigPlan CR ステータスに表示されます。

    status:
      conditions:
    ...
      - category: Warn
        durable: true
        lastTransitionTime: "2021-06-17T08:57:01Z"
        message: 'Capacity of the following volumes will be automatically adjusted to avoid disk capacity issues in the target cluster:  [pvc-b800eb7b-cf3b-11eb-a3f7-0eae3e0555f3]'
        reason: Done
        status: "False"
        type: PvCapacityAdjustmentRequired
    注記

    AWS gp2 ストレージの場合に、gp2 がボリューム使用量とサイズを計算する方法が原因で、pv_resizing_threshold が 42% 以上でない限り、このメッセージが表示されます。(BZ#1973148)

9.5.3. キャッシュされた Kubernetes クライアントの有効化

移行時にパフォーマンスを向上させるために、キャッシュされた Kubernetes クライアントを MigrationController カスタムリソース (CR) で有効にできます。パフォーマンスに関する利点は、異なるリージョンのクラスター間で移行する場合や、ネットワークレイテンシーが大きい場合の移行時に発揮されます。

注記

委譲されたタスク (例: 直接ボリューム移行または Velero バックアップおよび復元用の Rsync バックアップ) では、キャッシュされたクライアントのパフォーマンスは向上されません。

MigrationController CR は MigCluster CR との対話に必要なすべての API リソースをキャッシュするため、キャッシュされたクライアントには追加のメモリーが必要です。通常 API サーバーに送信される要求は、代わりにキャッシュに転送されます。このキャッシュは API サーバーで更新がないかを監視します。

キャッシュされたクライアントを有効にした後に OOMKilled エラーが発生すると、MigrationController CR のメモリー制限および要求を増やすことができます。

手順

  1. 以下のコマンドを実行して、キャッシュされたクライアントを有効化します。

    $ oc -n openshift-migration patch migrationcontroller migration-controller --type=json --patch \
      '[{ "op": "replace", "path": "/spec/mig_controller_enable_cache", "value": true}]'
  2. オプション: 以下のコマンドを実行して MigrationController CR メモリーの制限を増やします。

    $ oc -n openshift-migration patch migrationcontroller migration-controller --type=json --patch \
      '[{ "op": "replace", "path": "/spec/mig_controller_limits_memory", "value": <10Gi>}]'
  3. オプション: 以下のコマンドを実行して MigrationController CR メモリー要求を増やします。

    $ oc -n openshift-migration patch migrationcontroller migration-controller --type=json --patch \
      '[{ "op": "replace", "path": "/spec/mig_controller_requests_memory", "value": <350Mi>}]'