2.6. コンテナーのコンテンツのセキュリティー保護

コンテナー内のコンテンツのセキュリティーを確保するには、まず信頼できるベースイメージ (Red Hat Universal Base Images など) を使用し、信頼できるソフトウェアを追加する必要があります。コンテナーイメージのセキュリティーを継続的に確認するには、Red Hat およびサードパーティーのツールの両方を使用してイメージをスキャンできます。

2.6.1. コンテナー内のセキュリティー

アプリケーションとインフラストラクチャーは、すぐに利用できるコンポーネントで設定されています。その多くは、Linux オペレーティングシステム、JBoss Web Server、PostgreSQL、および Node.js などのオープンソースパッケージです。

これらのパッケージのコンテナー化されたバージョンも利用できます。ただし、パッケージの出所や、ビルドした人、パッケージの中に悪質なコードが含まれているかどうかを確認する必要があります。

確認するべき点には以下が含まれます。

  • コンテナーの内容がインフラストラクチャーを危険にさらす可能性はあるか ?
  • アプリケーション層に既知の脆弱性が存在するか ?
  • ランタイムおよびオペレーティングシステム層は最新の状態にあるか ?

Red Hat Universal Base Images (UBI) でコンテナーをビルドすることにより、コンテナーイメージのベースが Red Hat Enterprise Linux に含まれる同じ RPM パッケージのソフトウェアで設定されるものであることを確認できます。UBI イメージの使用または再配布にサブスクリプションは必要ありません。

コンテナー自体のセキュリティーが継続的に保護されるようにするには、RHEL から直接使用されるか、または OpenShift Container Platform に追加されているセキュリティースキャン機能は、使用しているイメージに脆弱性がある場合に警告を出します。OpenSCAP イメージスキャンは RHEL で利用でき、Red Hat Quay Container Security Operator は、OpenShift Container Platform で使用されるコンテナーイメージをチェックするために追加できます。

2.6.2. UBI を使用した再配布可能なイメージの作成

コンテナー化されたアプリケーションを作成するには、通常オペレーティングシステムによって提供されるコンポーネントを提供する信頼されたベースイメージの使用から開始します。これらには、ライブラリー、ユーティリティー、およびその他の機能が含まれます。これらは、アプリケーションがオペレーティングシステムのファイルシステムで認識することが予想されます。

Red Hat Universal Base Images (UBI) は、独自のコンテナーのビルドを試行される方に、まず Red Hat Enterprise Linux rpm パッケージやその他のコンテンツで作成されたコンテナーを使用するよう奨励するために作成されています。このような UBI イメージは、セキュリティーパッチを適用し、独自のソフトウェアを組み込むためにビルドされたコンテナーイメージと共に自由に使用し、再配布するために定期的に更新されます。

Red Hat Ecosystem Catalog を検索して、異なる UBI イメージを見つけ、そのイメージの正常性を確認します。セキュアなコンテナーイメージを作成する場合は、以下の 2 つの一般的な UBI イメージのタイプを使用することを検討できるかもしれません。

  • UBI: RHEL 7 および 8 の標準 UBI イメージ (ubi7/ubi および ubi8/ubi)、およびそれらのシステムをベースとする最小イメージ (ubi7/ubi-minimal および ubi8/ubi-mimimal) があります。これらのイメージはすべて、標準の yum コマンドおよび dnf コマンドを使用して、ビルドするコンテナーイメージに追加できる RHEL ソフトウェアの空きのリポジトリーを参照するように事前に設定されています。Red Hat は、Fedora や Ubuntu などの他のディストリビューションでこのイメージを使用することを推奨しています。
  • Red Hat Software Collections: Red Hat Ecosystem Catalog で rhscl/ を検索し、特定タイプのアプリケーションのベースイメージとして使用するために作成されたイメージを見つけます。たとえば、Apache httpd (rhscl/httpd-*)、 Python (rhscl/python-*)、Ruby (rhscl/ruby-*)、Node.js (rhscl/nodejs-*) および Perl (rhscl/perl-*) rhscl イメージがあります。

UBI イメージは自由に利用でき、再配布可能ですが、このイメージに対する Red Hat のサポートは、Red Hat 製品サブスクリプションでのみ利用できることに注意してください。

標準、最小および init UBI イメージを使用し、これを使用してビルドする方法については、Red Hat Enterprise Linux ドキュメントの Red Hat Universal Base イメージの使用 を参照してください。

2.6.3. RHEL におけるセキュリティースキャン

Red Hat Enterprise Linux (RHEL) システムでは、openscap-utils パッケージで OpenSCAP スキャンを利用できます。RHEL では、openscap-podman コマンドを使用して、イメージで脆弱性の有無をスキャンできます。Red Hat Enterprise Linux ドキュメントの Scanning containers and container images for vulnerabilities を参照してください。

OpenShift Container Platform では、RHEL スキャナーを CI/CD プロセスで利用することができます。たとえば、ソースコードのセキュリティー上の欠陥をテストする静的コード解析ツールや、既知の脆弱性などのメタデータを提供するために使用するオープンソースライブラリーを特定するソフトウェアコンポジション解析ツールを統合することができます。

2.6.3.1. OpenShift イメージのスキャン

OpenShift Container Platform で実行され、Red Hat Quay レジストリーからプルされるコンテナーイメージの場合、Operator を使用してそれらのイメージの脆弱性を一覧表示できます。Red Hat Quay Container Security Operator を OpenShift Container Platform に追加して、選択した namespace に追加されたイメージの脆弱性レポートを提供することができます。

Red Hat Quay のコンテナーイメージスキャンは、Clair セキュリティースキャナー によって実行されます。Red Hat Quay では、Clair は RHEL、CentOS、Oracle、Alpine、Debian、および Ubuntu のオペレーティングシステムソフトウェアでビルドされたイメージの脆弱性を検索し、報告することができます。

2.6.4. 外部サービスの統合

OpenShift Container Platform は、オブジェクトのアノテーション (object annotations) を利用して機能を拡張します。脆弱性スキャナーなどの外部ツールはイメージオブジェクトにメタデータのアノテーションを付けることで、結果の要約を表示したり、Pod の実行を制御したりできます。本セクションでは、このアノテーションの認識される形式について説明します。 この形式を使用することで、アノテーションをコンソールで安全に使用し、ユーザーに役立つデータを表示することができます。

2.6.4.1. イメージのメタデータ

イメージの品質データには、パッケージの脆弱性およびオープンソースソフトウェア (OSS) ライセンスのコンプライアンスなどの様々なタイプがあります。さらに、複数のプロバイダーがこのメタデータを提供する場合があります。このため、以下のアノテーションの形式が保持されます。

quality.images.openshift.io/<qualityType>.<providerId>: {}

表2.1 アノテーションキーの形式

コンポーネント説明許可される値

qualityType

メタデータのタイプ

vulnerability
license
operations
policy

providerId

プロバイダー ID の文字列

openscap
redhatcatalog
redhatinsights
blackduck
jfrog

2.6.4.1.1. アノテーションキーの例
quality.images.openshift.io/vulnerability.blackduck: {}
quality.images.openshift.io/vulnerability.jfrog: {}
quality.images.openshift.io/license.blackduck: {}
quality.images.openshift.io/vulnerability.openscap: {}

イメージの品質アノテーションの値は、以下の形式に従った構造化データになります。

表2.2 アノテーション値の形式

フィールド必須 ?説明タイプ

name

はい

プロバイダーの表示名

文字列

timestamp

はい

スキャンのタイムスタンプ

文字列

description

いいえ

簡単な説明

文字列

reference

はい

情報ソースの URL または詳細情報。ユーザーのデータ検証に必要。

文字列

scannerVersion

いいえ

スキャナーバージョン

文字列

compliant

いいえ

コンプライアンスの合否

ブール値

summary

いいえ

検出された問題の要約

一覧 (以下の表を参照)

summary フィールドは、以下の形式に従う必要があります。

表2.3 要約フィールド値の形式

フィールド説明タイプ

label

コンポーネントの表示ラベル (例: critical、important、moderate、low または health)

文字列

data

このコンポーネントのデータ (例: 検出された脆弱性の数またはスコア)

文字列

severityIndex

順序付けおよびグラフィック表示の割り当てを可能にするコンポーネントのインデックス。値は 0..3 の範囲内にあり、0 = low になります。

整数

reference

情報ソースの URL または詳細情報。オプション。

文字列

2.6.4.1.2. アノテーション値の例

以下の例は、脆弱性の要約データおよびコンプライアンスのブール値を含むイメージの OpenSCAP アノテーションを示しています。

OpenSCAP アノテーション

{
  "name": "OpenSCAP",
  "description": "OpenSCAP vulnerability score",
  "timestamp": "2016-09-08T05:04:46Z",
  "reference": "https://www.open-scap.org/930492",
  "compliant": true,
  "scannerVersion": "1.2",
  "summary": [
    { "label": "critical", "data": "4", "severityIndex": 3, "reference": null },
    { "label": "important", "data": "12", "severityIndex": 2, "reference": null },
    { "label": "moderate", "data": "8", "severityIndex": 1, "reference": null },
    { "label": "low", "data": "26", "severityIndex": 0, "reference": null }
  ]
}

以下の例は、詳細情報として外部 URL と正常性のインデックスデータを含むイメージの Red Hat Ecosystem Catalog のコンテナーイメージのセクション のアノテーションを示しています。

Red Hat Container Catalog アノテーション

{
  "name": "Red Hat Ecosystem Catalog",
  "description": "Container health index",
  "timestamp": "2016-09-08T05:04:46Z",
  "reference": "https://access.redhat.com/errata/RHBA-2016:1566",
  "compliant": null,
  "scannerVersion": "1.2",
  "summary": [
    { "label": "Health index", "data": "B", "severityIndex": 1, "reference": null }
  ]
}

2.6.4.2. イメージオブジェクトのアノテーション

OpenShift Container Platform のエンドユーザーはイメージストリームオブジェクトに対して操作を行いますが、セキュリティーメタデータでアノテーションが付けられるのはイメージオブジェクトです。イメージオブジェクトはクラスター全体でそのスコープが設定され、多くのイメージストリームおよびタグで参照される可能性のある単一イメージをポイントします。

2.6.4.2.1. アノテーションが使用されている CLI コマンドの例

<image> をイメージダイジェストに置き換えます (例: sha256:401e359e0f45bfdcf004e258b72e253fd07fba8cc5c6f2ed4f4608fb119ecc2)。

$ oc annotate image <image> \
    quality.images.openshift.io/vulnerability.redhatcatalog='{ \
    "name": "Red Hat Ecosystem Catalog", \
    "description": "Container health index", \
    "timestamp": "2020-06-01T05:04:46Z", \
    "compliant": null, \
    "scannerVersion": "1.2", \
    "reference": "https://access.redhat.com/errata/RHBA-2020:2347", \
    "summary": "[ \
      { "label": "Health index", "data": "B", "severityIndex": 1, "reference": null } ]" }'

2.6.4.3. Pod 実行の制御

images.openshift.io/deny-execution イメージポリシーを使用して、イメージを実行するかどうかをプログラムで制御します。

2.6.4.3.1. アノテーションの例
annotations:
  images.openshift.io/deny-execution: true

2.6.4.4. 統合リファレンス

ほとんどの場合、脆弱性スキャナーなどの外部ツールはイメージの更新を監視し、スキャンを実施し、関連するイメージオブジェクトに結果のアノテーションを付けるスクリプトまたはプラグインを開発します。この自動化では通常、OpenShift Container Platform 4.8 REST API を呼び出してアノテーションを作成します。REST API の一般的な情報については、OpenShift Container Platform REST API を参照してください。

2.6.4.4.1. REST API 呼び出しの例

curl を使用する以下の呼び出しの例では、アノテーションの値を上書きします。<token><openshift_server><image_id>、および <image_annotation> の値を置き換えてください。

パッチ API 呼び出し

$ curl -X PATCH \
  -H "Authorization: Bearer <token>" \
  -H "Content-Type: application/merge-patch+json" \
  https://<openshift_server>:6443/apis/image.openshift.io/v1/images/<image_id> \
  --data '{ <image_annotation> }'

以下は、PATCH ペイロードデータの例です。

パッチ呼び出しデータ

{
"metadata": {
  "annotations": {
    "quality.images.openshift.io/vulnerability.redhatcatalog":
       "{ 'name': 'Red Hat Ecosystem Catalog', 'description': 'Container health index', 'timestamp': '2020-06-01T05:04:46Z', 'compliant': null, 'reference': 'https://access.redhat.com/errata/RHBA-2020:2347', 'summary': [{'label': 'Health index', 'data': '4', 'severityIndex': 1, 'reference': null}] }"
    }
  }
}