第17章 低レイテンシーのノード向けの Performance Addon Operator

17.1. 低レイテンシー

Telco / 5G の領域でのエッジコンピューティングの台頭は、レイテンシーと輻輳を軽減し、アプリケーションのパフォーマンスを向上させる上で重要なロールを果たします。

簡単に言うと、レイテンシーは、データ (パケット) が送信側から受信側に移動し、受信側の処理後に送信側に戻るスピードを決定します。レイテンシーによる遅延を最小限に抑えた状態でネットワークアーキテクチャーを維持することが 5 G のネットワークパフォーマンス要件を満たすのに鍵となります。4G テクノロジーと比較し、平均レイテンシーが 50ms の 5G では、レイテンシーの数値を 1ms 以下にするようにターゲットが設定されます。このレイテンシーの減少により、ワイヤレスのスループットが 10 倍向上します。

Telco 領域にデプロイされるアプリケーションの多くは、ゼロパケットロスに耐えられる低レイテンシーを必要とします。パケットロスをゼロに調整すると、ネットワークのパフォーマンス低下させる固有の問題を軽減することができます。詳細は、Tuning for Zero Packet Loss in Red Hat OpenStack Platform (RHOSP) を参照してください。

エッジコンピューティングの取り組みは、レイテンシーの削減にも役立ちます。コンピュート能力が文字通りクラウドのエッジ上にあり、ユーザーの近く置かれること考えてください。これにより、ユーザーと離れた場所にあるデータセンター間の距離が大幅に削減されるため、アプリケーションの応答時間とパフォーマンスのレイテンシーが短縮されます。

管理者は、すべてのデプロイメントを可能な限り低い管理コストで実行できるように、多数のエッジサイトおよびローカルサービスを一元管理できるようにする必要があります。また、リアルタイムの低レイテンシーおよび高パフォーマンスを実現するために、クラスターの特定のノードをデプロイし、設定するための簡単な方法も必要になります。低レイテンシーノードは、Cloud-native Network Functions (CNF) や Data Plane Development Kit (DPDK) などのアプリケーションに役立ちます。

現時点で、OpenShift Container Platform はリアルタイムの実行および低レイテンシーを実現するために OpenShift Container Platform クラスターでソフトウェアを調整するメカニズムを提供します (約 20 マイクロ秒未満の応答時間)。これには、カーネルおよび OpenShift Container Platform の設定値のチューニング、カーネルのインストール、およびマシンの再設定が含まれます。ただし、この方法では 4 つの異なる Operator を設定し、手動で実行する場合に複雑であり、間違いが生じる可能性がある多くの設定を行う必要があります。

OpenShift Container Platform は、OpenShift アプリケーションの低レイテンシーパフォーマンスを実現するために自動チューニングを実装する Performance Addon Operator を提供します。クラスター管理者は、このパフォーマンスプロファイル設定を使用することにより、より信頼性の高い方法でこれらの変更をより容易に実行することができます。管理者は、カーネルを kernel-rt に更新するかどうかを指定し、Pod の infra コンテナーなどのクラスターおよびオペレーティングシステムのハウスキーピング向けに CPU を予約して、アプリケーションコンテナーがワークロードを実行するように CPU を分離することができます。

17.1.1. 低レイテンシーおよびリアルタイムのアプリケーションのハイパースレッディングについて

ハイパースレッディングは、物理 CPU プロセッサーコアが 2 つの論理コアとして機能することを可能にする Intel プロセッサーテクノロジーで、2 つの独立したスレッドを同時に実行します。ハイパースレッディングにより、並列処理が効果的な特定のワークロードタイプのシステムスループットを向上できます。デフォルトの OpenShift Container Platform 設定では、ハイパースレッディングがデフォルトで有効にされることが予想されます。

通信アプリケーションの場合、可能な限りレイテンシーを最小限に抑えられるようにアプリケーションインフラストラクチャーを設計することが重要です。ハイパースレッディングは、パフォーマンスを低下させる可能性があり、低レイテンシーを必要とするコンピュート集約型のワークロードのスループットにマイナスの影響を及ぼす可能性があります。ハイパースレッディングを無効にすると、予測可能なパフォーマンスが確保され、これらのワークロードの処理時間が短縮されます。

注記

ハイパースレッディングの実装および設定は、OpenShift Container Platform を実行しているハードウェアによって異なります。ハードウェアに固有のハイパースレッディング実装についての詳細は、関連するホストハードウェアのチューニング情報を参照してください。ハイパースレッディングを無効にすると、クラスターのコアごとにコストが増大する可能性があります。