15.2.2. OVN-Kubernetes デフォルト CNI ネットワークプロバイダーへの移行

クラスター管理者は、クラスターのデフォルトの Container Network Interface (CNI) ネットワークプロバイダーを OVN-Kubernetes に変更できます。移行時に、クラスター内のすべてのノードを再起動する必要があります。

重要

移行の実行中はクラスターを利用できず、ワークロードが中断される可能性があります。サービスの中断が許容可能な場合にのみ移行を実行します。

前提条件

  • ネットワークポリシーの分離モードで OpenShift SDN CNI クラスターネットワークプロバイダーで設定されたクラスター。
  • OpenShift CLI (oc) をインストールすること。
  • cluster-admin ロールを持つユーザーとしてのクラスターへのアクセス。
  • etcd データベースの最新のバックアップが利用可能である。
  • 再起動は、ノードごとに手動でトリガーできます。
  • クラスターは既知の正常な状態にあり、エラーがないこと。

手順

  1. クラスターネットワークの設定のバックアップを作成するには、以下のコマンドを入力します。

    $ oc get Network.config.openshift.io cluster -o yaml > cluster-openshift-sdn.yaml
  2. 移行のすべてのノードを準備するには、以下のコマンドを入力して Cluster Network Operator 設定オブジェクトに migration フィールドを設定します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
      --patch '{ "spec": { "migration": {"networkType": "OVNKubernetes" } } }'
    注記

    この手順では、OVN-Kubernetes はすぐにデプロイしません。その代わりに、migration フィールドを指定すると、新規マシン設定が OVN-Kubernetes デプロイメントの準備に向けてクラスター内のすべてのノードに適用されるように Machine Config Operator (MCO) がトリガーされます。

  3. オプション: ネットワークインフラストラクチャーの要件を満たすように OVN-Kubernetes の以下の設定をカスタマイズできます。

    • Maximum transmission unit (MTU)
    • Geneve (Generic Network Virtualization Encapsulation) オーバーレイネットワークポート

    以前の設定のいずれかをカスタマイズするには、以下のコマンドを入力してカスタマイズします。デフォルト値を変更する必要がない場合は、パッチのキーを省略します。

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "ovnKubernetesConfig":{
              "mtu":<mtu>,
              "genevePort":<port>
        }}}}'
    mtu
    Geneve オーバーレイネットワークの MTU。この値は通常は自動的に設定されますが、クラスターにあるノードすべてが同じ MTU を使用しない場合、これを最小のノード MTU 値よりも 100 小さく設定する必要があります。
    port
    Geneve オーバーレイネットワークの UDP ポート。値が指定されない場合、デフォルトは 6081 になります。ポートは、OpenShift SDN で使用される VXLAN ポートと同じにすることはできません。VXLAN ポートのデフォルト値は 4789 です。

    mtu フィールドを更新するパッチコマンドの例

    $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type=merge \
      --patch '{
        "spec":{
          "defaultNetwork":{
            "ovnKubernetesConfig":{
              "mtu":1200
        }}}}'

  4. MCO がそれぞれのマシン設定プールのマシンを更新すると、各ノードが 1 つずつ再起動します。すべてのノードが更新されるまで待機する必要があります。以下のコマンドを実行してマシン設定プールのステータスを確認します。

    $ oc get mcp

    正常に更新されたノードには、UPDATED=trueUPDATING=falseDEGRADED=false のステータスがあります。

    注記

    デフォルトで、MCO はプールごとに一度に 1 つのマシンを更新するため、移行にかかる合計時間がクラスターのサイズと共に増加します。

  5. ホスト上の新規マシン設定のステータスを確認します。

    1. マシン設定の状態と適用されたマシン設定の名前を一覧表示するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc describe node | egrep "hostname|machineconfig"

      出力例

      kubernetes.io/hostname=master-0
      machineconfiguration.openshift.io/currentConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig: rendered-master-c53e221d9d24e1c8bb6ee89dd3d8ad7b
      machineconfiguration.openshift.io/reason:
      machineconfiguration.openshift.io/state: Done

      以下のステートメントが true であることを確認します。

      • machineconfiguration.openshift.io/state フィールドの値は Done です。
      • machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドの値は、machineconfiguration.openshift.io/desiredConfig フィールドの値と等しくなります。
    2. マシン設定が正しいことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get machineconfig <config_name> -o yaml | grep ExecStart

      ここで、<config_name> は、 machineconfiguration.openshift.io/currentConfig フィールドのマシン設定の名前になります。

      マシン設定には、systemd 設定に以下の更新を含める必要があります。

      ExecStart=/usr/local/bin/configure-ovs.sh OVNKubernetes
    3. ノードが NotReady 状態のままになっている場合、マシン設定デーモン Pod のログを調べ、エラーを解決します。

      1. Pod を一覧表示するには、以下のコマンドを入力します。

        $ oc get pod -n openshift-machine-config-operator

        出力例

        NAME                                         READY   STATUS    RESTARTS   AGE
        machine-config-controller-75f756f89d-sjp8b   1/1     Running   0          37m
        machine-config-daemon-5cf4b                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-7wzcd                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-fc946                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-g2v28                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-gcl4f                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-daemon-l5tnv                  2/2     Running   0          43h
        machine-config-operator-79d9c55d5-hth92      1/1     Running   0          37m
        machine-config-server-bsc8h                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-hklrm                  1/1     Running   0          43h
        machine-config-server-k9rtx                  1/1     Running   0          43h

        設定デーモン Pod の名前は以下の形式になります。machine-config-daemon-<seq><seq> 値は、ランダムな 5 文字の英数字シーケンスになります。

      2. 以下のコマンドを入力して、直前の出力に表示される最初のマシン設定デーモン Pod の Pod ログを表示します。

        $ oc logs <pod> -n openshift-machine-config-operator

        ここで、pod はマシン設定デーモン Pod の名前になります。

      3. 直前のコマンドの出力で示されるログ内のエラーを解決します。
  6. 移行を開始するには、以下のコマンドのいずれかを使用して、OVN-Kubernetes クラスターネットワークプロバイダーを設定します。

    • クラスターネットワークの IP アドレスブロックを変更せずにネットワークプロバイダーを指定するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.config.openshift.io cluster \
        --type='merge' --patch '{ "spec": { "networkType": "OVNKubernetes" } }'
    • 別のクラスターネットワーク IP アドレスブロックを指定するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.config.openshift.io cluster \
        --type='merge' --patch '{
          "spec": {
            "clusterNetwork": [
              {
                "cidr": "<cidr>",
                "hostPrefix": "<prefix>"
              }
            ]
            "networkType": "OVNKubernetes"
          }
        }'

      ここで、cidr は CIDR ブロックであり、prefix はクラスター内の各ノードに割り当てられる CIDR ブロックのスライスです。OVN-Kubernetes ネットワークプロバイダーはこのブロックを内部で使用するため、100.64.0.0/16 CIDR ブロックと重複する CIDR ブロックは使用できません。

      重要

      移行時に、サービスネットワークのアドレスブロックを変更することはできません。

  7. Multus デーモンセットのロールアウトが完了したことを確認してから、後続の手順を続行します。

    $ oc -n openshift-multus rollout status daemonset/multus

    Multus Pod の名前の形式は multus-<xxxxx> です。ここで、 <xxxxx> は文字のランダムなシーケンスになります。Pod が再起動するまでにしばらく時間がかかる可能性があります。

    出力例

    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 1 out of 6 new pods have been updated...
    ...
    Waiting for daemon set "multus" rollout to finish: 5 of 6 updated pods are available...
    daemon set "multus" successfully rolled out

  8. 移行を完了するには、クラスター内の各ノードを再起動します。たとえば、以下のような bash スクリプトを使用できます。このスクリプトは、ssh を使用して各ホストに接続でき、sudo がパスワードを要求しないように設定されていることを前提としています。

    #!/bin/bash
    
    for ip in $(oc get nodes  -o jsonpath='{.items[*].status.addresses[?(@.type=="InternalIP")].address}')
    do
       echo "reboot node $ip"
       ssh -o StrictHostKeyChecking=no core@$ip sudo shutdown -r -t 3
    done

    ssh アクセスが使用できない場合、インフラストラクチャープロバイダーの管理ポータルから各ノードを再起動できる場合があります。

  9. 移行が正常に完了したことを確認します。

    1. CNI ネットワークプロバイダーが OVN-Kubernetes であることを確認するには、以下のコマンドを入力します。status.networkType の値は OVNKubernetes である必要があります。

      $ oc get network.config/cluster -o jsonpath='{.status.networkType}{"\n"}'
    2. クラスターノードが Ready 状態にあることを確認するには、以下のコマンドを実行します。

      $ oc get nodes
    3. Pod がエラー状態ではないことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get pods --all-namespaces -o wide --sort-by='{.spec.nodeName}'

      ノードの Pod がエラー状態にある場合は、そのノードを再起動します。

    4. すべてのクラスター Operator が異常な状態にないことを確認するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc get co

      すべてのクラスター Operator のステータスは、 AVAILABLE="True"PROGRESSING="False"DEGRADED="False" になります。クラスター Operator が利用できないか、またはそのパフォーマンスが低下する場合には、クラスター Operator のログで詳細を確認します。

  10. 以下の手順は、移行に成功し、クラスターの状態が正常である場合にのみ実行します。

    1. CNO 設定オブジェクトから移行設定を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "migration": null } }'
    2. OpenShift SDN ネットワークプロバイダーのカスタム設定を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc patch Network.operator.openshift.io cluster --type='merge' \
        --patch '{ "spec": { "defaultNetwork": { "openshiftSDNConfig": null } } }'
    3. OpenShift SDN ネットワークプロバイダー namespace を削除するには、以下のコマンドを入力します。

      $ oc delete namespace openshift-sdn