1.2.13.3.4. 詳細の RHCOS インストールリファレンス

このセクションでは、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) の手動インストールプロセスを変更できるようにするネットワーク設定および他の高度なオプションについて説明します。以下の表では、RHCOS ライブインストーラーおよび coreos-installer コマンドで使用できるカーネル引数およびコマンドラインのオプションを説明します。

RHCOS ブートプロンプトでのルーティングおよびボンディングのオプション

ISO イメージから RHCOS をインストールする場合、そのイメージを起動してノードのネットワークを設定する際に手動でカーネル引数を追加できます。ネットワークの引数が使用される場合、インストールはデフォルトで DHCP を使用するように設定されます。

重要

ネットワーク引数を追加する場合、rd.neednet=1 カーネル引数も追加する必要があります。

以下の表では、ライブ ISO インストールに ip=nameserver=、および bond= カーネル引数を使用する方法を説明します。

注記

順序は、カーネル引数の ip=nameserver=、および bond= を追加する場合に重要です。

ISO のルーティングおよびボンディングのオプション

以下の表は、Red Hat Enterprise Linux CoreOS (RHCOS) ノードのネットワーク設定の例を示しています。これらは、システムの起動時に dracut ツールに渡されるネットワークオプションです。dracut でサポートされるネットワークオプションの詳細は、man ページの dracut.cmdline を参照してください。

詳細

IP アドレスを設定するには、DHCP (ip=dhcp) を使用するか、または個別の静的 IP アドレス (ip=<host_ip>) を設定します。次に、各ノードの DNS サーバーの IP アドレス (nameserver=<dns_ip>) を特定します。この例では、以下を設定します。

  • ノードの IP アドレス: 10.10.10.2
  • ゲートウェイアドレス: 10.10.10.254
  • ネットワーク: 255.255.255.0
  • ホスト名: core0.example.com
  • DNS サーバーアドレス: 4.4.4.41
ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp1s0:none
nameserver=4.4.4.41

複数の ip= エントリーを指定して、複数のネットワークインターフェイスを指定します。

ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp1s0:none
ip=10.10.10.3::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp2s0:none

オプション: rd.route= value を設定して、追加のネットワークへのルートを設定できます。

追加のネットワークゲートウェイがプライマリーネットワークゲートウェイと異なる場合、デフォルトゲートウェイはプライマリーネットワークゲートウェイである必要があります。

デフォルトゲートウェイを設定するには、以下の手順に従います。

ip=::10.10.10.254::::

追加ネットワークのルートを設定するには、以下を実行します。

rd.route=20.20.20.0/24:20.20.20.254:enp2s0

2 つ以上のネットワークインターフェイスがあり、1 つのインターフェイスのみが使用される場合などに、1 つのインターフェイスで DHCP を無効にします。

ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp1s0:none
ip=::::core0.example.com:enp2s0:none

複数のネットワークインターフェイスを持つシステムで、DHCP および静的 IP 設定を組み合わせることができます。

ip=enp1s0:dhcp
ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp2s0:none

オプション: vlan= パラメーターを使用して、個別のインターフェイスに VLAN を設定できます。

ネットワークインターフェイスに VLAN を設定し、静的 IP アドレスを使用するには、以下を実行します。

ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:enp2s0.100:none
vlan=enp2s0.100:enp2s0

ネットワークインターフェイス上に VLAN を設定し、DHCP を使用するには、以下を行います。

ip=enp2s0.100:dhcp
vlan=enp2s0.100:enp2s0

各サーバーに nameserver= エントリーを追加して、複数の DNS サーバーを指定できます。

nameserver=1.1.1.1
nameserver=8.8.8.8

オプション: 複数のネットワークインターフェイスを単一のインターフェイスにボンディングすることは、bond= オプションを使用によってサポートされます。次の 2 つの例では、以下のようになります。

  • ボンディングされたインターフェイスを設定する構文は bond=name[:network_interfaces][:options] です。
  • name は、ボンディングデバイス名 (bond0) で、network_interfaces は物理 (イーサネット) インターフェイス (em1,em2) のコンマ区切り一覧を表します。options はボンディングオプションのコンマ区切りの一覧です。modinfo bonding を入力して、利用可能なオプションを表示します。
  • Bond= を使用してボンディングされたインターフェイスを作成する場合は、IP アドレスの割り当て方法とボンディングされたインターフェイスのその他の情報を指定する必要があります。

DHCP を使用するようにボンディングされたインターフェイスを設定するには、ボンドの IP アドレスを dhcp に設定します。以下に例を示します。

bond=bond0:em1,em2:mode=active-backup
ip=bond0:dhcp

静的 IP アドレスを使用するようにボンディングされたインターフェイスを設定するには、必要な特定の IP アドレスと関連情報を入力します。以下に例を示します。

bond=bond0:em1,em2:mode=active-backup
ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:bond0:none

オプション: vlan= パラメーターを使用して、ボンディングされたインターフェイスに VLAN を設定できます。

ボンディングされたインターフェイスを VLAN で設定し、DHCP を使用するには、以下を行います。

ip=bond0.100:dhcp
bond=bond0:em1,em2:mode=active-backup
vlan=bond0.100:bond0

ボンディングされたインターフェイスを VLAN で設定し、静的 IP アドレスを使用するには、以下を行います。

ip=10.10.10.2::10.10.10.254:255.255.255.0:core0.example.com:bond0.100:none
bond=bond0:em1,em2:mode=active-backup
vlan=bond0.100:bond0

オプション: team= パラメーターを使用することで、ボンディングの代わりにネットワークチーミングを使用できます。この例では、以下のように設定されています。

  • チームインターフェイス設定の構文は team= name [:network_interfaces] です。

    name はチームデバイス名 (team0)、network_interfacesは物理 (イーサネット) インターフェイス (em1、em2) のコンマ区切りリストを表します。

注記

RHCOS が次のバージョンの RHEL に切り替わると、チーミングは非推奨になる予定です。詳細は、Red Hat ナレッジベースアーティクル libvirt-lxc を使用した Linux コンテナー (廃止) を参照してください。

ネットワークチームを設定する方法:

team=team0:em1,em2
ip=team0:dhcp
ISO または PXE インストールの coreos.inst ブートオプション

ほとんどの標準的なインストールブート引数をライブインストーラーに渡すことはできますが、RHCOS ライブインストーラーに固有の引数がいくつかあります。

  • ISO の場合、RHCOS インストーラーを中断してこれらのオプションを追加できます。
  • PXE または iPXE の場合、PXE カーネルを起動する前にこれらのオプションを APPEND 行に追加する必要があります。ライブの PXE インストールを中断することはできません。

以下の表は、ISO および PXE インストールの RHCOS ライブインストーラーブートオプションを示しています。

表1.26 coreos.inst ブートオプション

引数説明

coreos.inst.install_dev

必須。インストール先のシステムのブロックデバイス。sda は許可されていますが、 /dev/sda などの完全パスを使用することが推奨されます。

coreos.inst.ignition_url

オプション: インストール済みシステムに埋め込む Ignition 設定の URL。URL が指定されていない場合、Ignition 設定は埋め込まれません。

coreos.inst.save_partlabel

オプション: インストール時に保存するパーティションのコンマ区切りのラベル。glob 形式のワイルドカードが許可されます。指定したパーティションは存在する必要はありません。

coreos.inst.save_partindex

オプション: インストール時に保存するパーティションのコンマ区切りのインデックス。範囲 m-n は許可され、 m または n のいずれかを省略できます。指定したパーティションは存在する必要はありません。

coreos.inst.insecure

オプション: coreos.inst.image_url で署名なしと指定される OS イメージを許可します。

coreos.inst.image_url

オプション: 指定した RHCOS イメージをダウンロードし、インストールします。

  • この引数は実稼働環境では使用できず、デバッグの目的でのみ使用することが意図されています。
  • この引数は、ライブメディアに一致しないバージョンの RHCOS をインストールするために使用できますが、インストールするバージョンに一致するメディアを使用することが推奨されます。
  • coreos.inst.image_url を使用している場合は、coreos.inst.insecure も使用する必要があります。これは、ベアメタルメディアが OpenShift Container Platform について GPG で署名されていないためです。
  • HTTP プロトコルおよび HTTPS プロトコルのみがサポートされます。

coreos.inst.skip_reboot

オプション: システムはインストール後に再起動しません。インストールが完了するとプロンプトが表示され、インストール時に生じる内容を検査できます。この引数は実稼働環境では使用できず、デバッグの目的でのみ使用することが意図されています。

coreos.inst.platform_id

オプション: RHCOS イメージがインストールされるプラットフォームの Ignition プラットフォーム ID。デフォルトは metal です。このオプションは、VMware などのクラウドプロバイダーから Ignition 設定を要求するかどうかを決定します。例: coreos.inst.platform_id=vmware

ignition.config.url

オプション: ライブ起動の Ignition 設定の URL。たとえば、これは coreos-installer の起動方法をカスタマイズしたり、インストール前後にコードを実行するために使用できます。これはインストール済みシステムの Ignition 設定である coreos.inst.ignition_url とは異なります。

ISO インストールの coreos-installer オプション

また、コマンドラインから coreos-installer コマンドを直接呼び出して RHCOS をインストールすることもできます。先の表のカーネル引数は、起動時に coreos-installer を自動的に呼び出すためのショートカットを提供しますが、シェルプロンプトから実行している場合は、同様の引数を coreos-installer に直接渡すことができます。

以下の表は、ライブインストール時にシェルプロンプトから coreos-installer コマンドに渡すことのできるオプションとサブコマンドを示しています。

表1.27 coreos-installer コマンドラインオプション、引数、およびサブコマンド

コマンドラインオプション

オプション

詳細

-u--image-url <url>

イメージの URL を手動で指定します。

-f--image-file <path>

ローカルイメージファイルを手動で指定します。

-i, --ignition-file <path>

ファイルから Ignition 設定を埋め込みます。

-I--ignition-url <URL>

URL から Ignition 設定を埋め込みます。

--ignition-hash <digest>

Ignition 設定の type-value をダイジェスト値を取得します。

-p--platform <name>

Ignition プラットフォーム ID を上書きします。

--append-karg <arg>…​

デフォルトのカーネル引数を追加します。

--delete-karg <arg>…​

デフォルトのカーネル引数を削除します。

-n--copy-network

インストール環境からネットワーク設定をコピーします。

重要

--copy-network オプションは、/etc/NetworkManager/system-connections にあるネットワーク設定のみをコピーします。特に、システムのホスト名はコピーされません。

--network-dir <path>

-n を指定して使用する場合。デフォルトは /etc/NetworkManager/system-connections/ です。

--save-partlabel <lx>..

このラベル glob でパーティションを保存します。

--save-partindex <id>…​

この数または範囲でパーティションを保存します。

--offline

オフラインインストールを強制的に実行します。

--insecure

署名の検証を省略します。

--insecure-ignition

HTTPS またはハッシュなしで Ignition URL を許可します。

--architecture <name>

ターゲット CPU アーキテクチャー。デフォルトは x86_64 です。

--preserve-on-error

エラー時のパーティションテーブルは消去しないでください。

-h--help

ヘルプ情報を表示します。

コマンドライン引数

引数

詳細

<device>

宛先デバイス。

coreos-installer 組み込み Ignition コマンド

コマンド

詳細

$ coreos-installer iso ignition embed <options> --ignition-file <file_path> <ISO_image>

Ignition 設定を ISO イメージに埋め込みます。

coreos-installer iso ignition show <options> <ISO_image>

ISO イメージから埋め込まれた Ignition 設定を表示します。

coreos-installer iso ignition remove <options> <ISO_image>

ISO イメージから埋め込まれた Ignition 設定を削除します。

coreos-installer ISO Ignition options

オプション

詳細

-f, --force

既存の Ignition 設定を上書きします。

-i--ignition-file <path>

使用される Ignition 設定。デフォルトは stdin です。

-o--output <path>

新しい出力ファイルに ISO を書き込みます。

-h--help

ヘルプ情報を表示します。

coreos-installer PXE Ignition commands

コマンド

詳細

これらのオプションすべてがすべてのサブコマンドで使用できる訳ではないことに注意してください。

coreos-installer pxe ignition wrap <options>

イメージに Ignition 設定をラップします。

coreos-installer pxe ignition unwrap <options> <image_name>

イメージでラップされた Ignition 設定を表示します。

coreos-installer pxe ignition unwrap <options> <initrd_name>

initrd イメージでラップされた Ignition 設定を表示します。

coreos-installer PXE Ignition オプション

オプション

詳細

-i--ignition-file <path>

使用される Ignition 設定。デフォルトは stdin です。

-o, --output <path>

新しい出力ファイルに ISO を書き込みます。

-h--help

ヘルプ情報を表示します。