10.8. macvlan ネットワークの設定

クラスター管理者は、高度にカスタマイズされた macvlan Container Network Interface (CNI) プラグインを使用して、クラスターの追加ネットワークを設定できます。Pod がネットワークに割り当てられている場合、プラグインはホストの親インターフェイスからサブインターフェイスを作成します。各サブデバイスに対して固有のハードウェアの MAC アドレスが生成されます。

重要

このプラグインがサブインターフェイス用に生成する固有の MAC アドレスは、クラウドプロバイダーのセキュリティーポリシーとの互換性がない場合があります。

CNI オブジェクトで設定を指定します。この方法では、YAML 設定を使用する場合に利用できない追加の設定オプションを指定できます。

10.8.1. macvlan CNI プラグインを使用した追加ネットワーク割り当ての作成

Cluster Network Operator (CNO) は追加ネットワークの定義を管理します。作成する追加ネットワークを指定する場合、CNO は NetworkAttachmentDefinition オブジェクトを自動的に作成します。

重要

Cluster Network Operator が管理する NetworkAttachmentDefinition オブジェクトは編集しないでください。これを実行すると、追加ネットワークのネットワークトラフィックが中断する可能性があります。

前提条件

  • OpenShift CLI (oc) をインストールしている。
  • cluster-admin 権限を持つユーザーとしてログインしている。

手順

クラスターの追加ネットワークを作成するには、以下の手順を実施します。

  1. 以下のコマンドを実行して CNO CR を編集します。

    $ oc edit networks.operator.openshift.io cluster
  2. 以下のサンプル CR のように、作成される追加ネットワークの設定を追加して、作成している CR を変更します。

    以下の YAML は、macvlan CNI プラグインを設定します。

    apiVersion: operator.openshift.io/v1
    kind: Network
    metadata:
      name: cluster
    spec:
      additionalNetworks: 1
      - name: test-network-1
        namespace: test-1
        type: Raw
        rawCNIConfig: '{
          "cniVersion": "0.3.1",
          "name": "test-network-1",
          "type": "macvlan",
          "master": "eth1",
          "ipam": {
            "type": "static",
            "addresses": [
              {
                "address": "192.168.1.23/24"
              }
            ]
          }
        }'
    1
    追加ネットワーク割り当て定義の設定を指定します。
  3. 変更を保存し、テキストエディターを終了して、変更をコミットします。
  4. 以下のコマンドを実行して、CNO が NetworkAttachmentDefinition オブジェクトを作成していることを確認します。<namespace> を、ネットワーク割り当ての設定時に指定した namespace に置き換えます。CNO がオブジェクトを作成するまでに遅延が生じる可能性があります。

    $ oc get network-attachment-definitions -n <namespace>

    出力例

    NAME                 AGE
    test-network-1       14m

10.8.1.1. macvlan CNI プラグインの設定

macvlan Container Network Interface (CNI) プラグインを使用する追加のネットワーク割り当ての設定は、以下の 2 つの部分に分けて提供されます。

  • Cluster Network Operator (CNO) の設定
  • CNI プラグインの設定

CNO 設定では、追加ネットワーク割り当ての名前と割り当てを作成する namespace を指定します。このプラグインは、CNO 設定の rawCNIConfig パラメーターで指定される JSON オブジェクトで設定されます。

以下の YAML は、CNO の設定パラメーターについて説明しています。

Cluster Network Operator YAML の設定

name: <name> 1
namespace: <namespace> 2
rawCNIConfig: '{ 3
  ...
}'
type: Raw

1
作成している追加ネットワーク割り当ての名前を指定します。名前は指定された namespace 内で一意である必要があります。
2
ネットワークの割り当てを作成する namespace を指定します。値を指定しない場合、default の namespace が使用されます。
3
以下のテンプレートに基づく CNI プラグイン設定を JSON 形式で指定します。

以下のオブジェクトは、macvlan CNI プラグインの設定パラメーターについて説明しています。

macvlan CNI プラグイン JSON 設定オブジェクト

{
  "cniVersion": "0.3.1",
  "name": "<name>", 1
  "type": "macvlan",
  "mode": "<mode>", 2
  "master": "<master>", 3
  "mtu": <mtu>, 4
  "ipam": { 5
    ...
  }
}

1
作成している追加ネットワーク割り当ての名前を指定します。名前は指定された namespace 内で一意である必要があります。
2
仮想ネットワークのトラフィックの可視性を設定します。bridgepassthruprivate、または vepa のいずれかである必要があります。値が指定されない場合、デフォルト値は bridge になります。
3
仮想インターフェイスに関連付けるイーサネットインターフェイス。値が指定されない場合、ホストシステムのプライマリーイーサネットインターフェイスが使用されます。
4
最大転送単位 (MTU) を指定された値に設定します。デフォルト値はカーネルによって自動的に設定されます。
5
IPAM CNI プラグインの設定オブジェクトを指定します。プラグインは、割り当て定義についての IP アドレスの割り当てを管理します。
10.8.1.1.1. macvlan 設定の例

以下の例では、macvlan-net という名前の追加のネットワークを設定します。

name: macvlan-net
namespace: work-network
type: Raw
rawCNIConfig: |-
  {
    "cniVersion": "0.3.1",
    "name": "macvlan-net",
    "type": "macvlan",
    "master": "eth1",
    "mode": "bridge",
    "ipam": {
      "type": "dhcp"
      }
  }

10.8.1.2. IPAM CNI プラグインの設定

IPAM Container Network Interface (CNI) プラグインは、他の CNI プラグインに IP アドレス管理 (IPAM) を提供します。

IP アドレスの割り当てには、以下の方法を使用できます。

  • 静的割り当て。
  • DHCP サーバーを使用した動的割り当て。指定する DHCP サーバーは、追加のネットワークから到達可能である必要があります。
  • Whereabouts IPAM CNI プラグインを使用した動的割り当て。
10.8.1.2.1. 静的 IP アドレス割り当ての設定

以下の JSON は、静的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。

静的割り当ての設定

{
  "ipam": {
    "type": "static",
    "addresses": [ 1
      {
        "address": "<address>", 2
        "gateway": "<gateway>" 3
      }
    ],
    "routes": [ 4
      {
        "dst": "<dst>", 5
        "gw": "<gw>" 6
      }
    ],
    "dns": { 7
      "nameservers": ["<nameserver>"], 8
      "domain": "<domain>", 9
      "search": ["<search_domain>"] 10
    }
  }
}

1
仮想インターフェイスに割り当てる IP アドレスを記述する配列。IPv4 と IPv6 の IP アドレスの両方がサポートされます。
2
指定する IP アドレスおよびネットワーク接頭辞。たとえば、10.10.21.10/24 を指定すると、追加のネットワークに IP アドレスの 10.10.21.10 が割り当てられ、ネットマスクは 255.255.255.0 になります。
3
egress ネットワークトラフィックをルーティングするデフォルトのゲートウェイ。
4
Pod 内で設定するルートを記述する配列。
5
CIDR 形式の IP アドレス範囲 (192.168.17.0/24、またはデフォルトルートの 0.0.0.0/0)。
6
ネットワークトラフィックがルーティングされるゲートウェイ。
7
オプション: DNS 設定。
8
DNS クエリーの送信先となる 1 つ以上の IP アドレスの配列。
9
ホスト名に追加するデフォルトのドメイン。たとえば、ドメインが example.com に設定されている場合、example-host の DNS ルックアップクエリーは example-host.example.com として書き換えられます。
10
DNS ルックアップのクエリー時に非修飾ホスト名に追加されるドメイン名の配列 (例: example-host)。
10.8.1.2.2. 動的 IP アドレス割り当ての設定

以下の JSON は、DHCP を使用した動的 IP アドレスの割り当ての設定について説明しています。

DHCP リースの更新

Pod は、作成時に元の DHCP リースを取得します。リースは、クラスターで実行している最小限の DHCP サーバーデプロイメントで定期的に更新する必要があります。

DHCP サーバーのデプロイメントをトリガーするには、以下の例にあるように Cluster Network Operator 設定を編集して shim ネットワーク割り当てを作成する必要があります。

shim ネットワーク割り当ての定義例

apiVersion: operator.openshift.io/v1
kind: Network
metadata:
  name: cluster
spec:
  ...
  additionalNetworks:
  - name: dhcp-shim
    namespace: default
    type: Raw
    rawCNIConfig: |-
      {
        "name": "dhcp-shim",
        "cniVersion": "0.3.1",
        "type": "bridge",
        "ipam": {
          "type": "dhcp"
        }
      }

DHCP 割り当ての設定

{
  "ipam": {
    "type": "dhcp"
  }
}

10.8.1.2.3. Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定

Whereabouts CNI プラグインにより、DHCP サーバーを使用せずに IP アドレスを追加のネットワークに動的に割り当てることができます。

以下の JSON は、Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定について説明しています。

Whereabouts 割り当て設定

{
  "ipam": {
    "type": "whereabouts",
    "range": "<range>", 1
    "exclude": ["<exclude_part>, ..."], 2
  }
}

1
IP アドレスと範囲を CIDR 表記で指定します。IP アドレスは、この範囲内のアドレスから割り当てられます。
2
オプション: CIDR 表記で IP アドレスおよび範囲の一覧を指定します。除外されたアドレス範囲内の IP アドレスは割り当てられません。
10.8.1.2.4. 静的 IP アドレス割り当ての設定例

静的 IP アドレスの割り当てに IPAM を設定することができます。

{
  "ipam": {
    "type": "static",
      "addresses": [
        {
          "address": "191.168.1.7"
        }
      ]
  }
}
10.8.1.2.5. DHCP を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定例

DHCP に IPAM を設定できます。

{
  "ipam": {
    "type": "dhcp"
  }
}
10.8.1.2.6. Whereabouts を使用した動的 IP アドレス割り当ての設定例

Whereabouts を使用するように IPAM を設定できます。

{
  "ipam": {
    "type": "whereabouts",
    "range": "192.0.2.192/27",
    "exclude": [
       "192.0.2.192/30",
       "192.0.2.196/32"
    ]
  }
}